JP2002143727A - 回転霧化静電塗装装置 - Google Patents

回転霧化静電塗装装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】塗装パターンを拡大しつつ、塗装品質の高い回
転霧化静電塗装装置を提供する。 【解決手段】内周面に塗料が供給される回転可能な複数
のベルカップと、前記ベルカップの背面からシェーピン
グエアーを供給する複数のエアー吹出し口とを有し、前
記複数のベルカップは、それぞれ異なる内周径を有する
とともに前記各ベルカップの中心が同一線上に位置する
ように設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車ボディ等へ
の塗装処理に用いられる回転霧化静電塗装装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ベルカップ外周方向に向けてシェーピン
グエアーを吹出す回転霧化静電塗装処理においては、シ
ェーピングエアーが斜めに当たるため塗装効率の低下や
色味の劣化という問題が生じていた。この問題に対し、
シェーピングエアーの吹出し角度をベルカップの回転軸
に対して鋭角とする発明が、本願発明者から提案されて
いる(特願2000−313407号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】<第1の課題>しかし
ながら、シェーピングエアーの吹出し角度を鋭角とする
場合には、これに伴って塗装パターン幅が減少してしま
い、塗装対象物が大きい場合や塗装面積が大きい場合で
は塗装時間の延長を招いてしまうという問題がある。ま
た、この課題に対し、単にベルカップの内径を拡大して
も塗装膜厚の分布が不均一(ドーナツ状)となってしま
い塗装の質が低下してしまう。
【0004】<第2の課題>さらに、本発明では上記課
題を解決するため、内周径の異なる複数のベルカップを
同芯円状に設けることでパターン幅の拡大及び膜厚の均
一化を図るが、内周のベルカップによる塗装と外周のベ
ルカップによる塗装とでは両者の塗装膜厚が異なり、全
体として塗装品質が劣化するという問題が生じてしま
う。本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてな
されたものであり、パターン幅を拡大しつつ高品質の塗
装を行うことができる回転霧化静電塗装装置を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成す
るために、請求項1記載の回転霧化静電塗装装置は、複
数のベルカップが実質的に同芯円状に設けられたことを
特徴とする。この発明では、複数のベルカップが実質的
に同芯円状に2重、3重又はそれ以上幾重にも重なるよ
うに設けられているため、重なった各ベルカップの内周
面に供給された塗料は内側面をつたって外縁から飛び出
すこととなり、塗装対象物方向から見た場合には何重も
の円から霧化塗料が吹き出された状態となる。すると、
霧化した塗料微粒子は均一に広く拡散して塗装対象物に
塗着することとなる。この発明により、ベルカップの内
径を拡大して塗装パターン幅の拡大を図るとともに塗装
パターンの均一化を図ることができ、広い面積の被塗布
物にも対応することができる回転霧化静電塗装装置を提
供することができる。
【0006】(2)上記目的を達成するために、請求項
2記載の回転霧化静電塗装装置は、ベルカップの背面か
らシェーピングエアーを供給するエアー吹き出し口が、
前記ベルカップの回転軸方向に対して0〜20°の角度
で前記シェーピングエアーを吹出すように設けられたこ
とを特徴とする。この発明では、シェーピングエアーが
ベルカップの回転軸方向に対して0〜20°の角度で吹
出される。このシェーピングエアーが、ベルカップの遠
心力により微粒化されて(ベルカップの)外周方向に飛
び出した微粒子の進行方向を制御して、被塗物面に向け
て略垂直方向に導く。すると、塗料微粒子は、ベルカッ
プの外周方向に向けて拡がらずに、被塗物面に垂直に衝
突し、塗装面に対して面平行に塗着することとなる。こ
の発明によれば、シェーピングエアーによって塗料微粒
子が横流れすることなく被塗装物面に塗着するため塗着
効率の高い回転霧化静電塗装装置を提供することができ
る。また、メタリックフレークなどが被塗物面に対して
面平行に並べられることから色味の向上を図ることがで
き、一定の色味の塗装を得るという観点からも、塗着効
率が高い回転霧化静電塗装装置を提供することができ
る。複数のベルカップを同芯円上に重ねた場合には、パ
ターン幅を拡大しながら塗着効率の向上を図ることがで
き、結果として設置ベルカップの数を低減し、塗装時間
を短縮し、塗装品質を高める回転霧化静電塗装装置を提
供することができる。
【0007】(3)上記目的を達成するために、請求項
3記載の回転霧化静電塗装装置は、前記複数のベルカッ
プの回転駆動をそれぞれ制御する駆動制御手段を備えた
ことを特徴とする。この発明では、回転霧化静電塗装装
置に設けられた複数のベルカップの回転駆動がそれぞれ
制御されうるため、塗料を吹き出すベルカップの面積を
調整することができ、大きな塗装面に対しては内周から
外周までのベルカップをすべて駆動させ、小さな塗装面
に対しては、内周のベルカップのみを駆動させて対応す
ることができる。また、塗装の厚さや塗料の塗布密度に
応じてベルカップの駆動のオンオフを制御することがで
きるため(重ねて設置されたベルカップを一つおきに駆
動させるなど)、塗装条件に応じたベルカップの駆動制
御を行うことができる。 この発明によれば、パターン
幅の広狭に応じた塗装を行うことができるため、オーバ
ースプレーを防止するとともに、使用する塗料を節約し
うる回転霧化静電塗装装置を提供することができる。
【0008】(4)上記目的を達成するために、請求項
4記載の回転霧化静電塗装装置は、前記駆動制御手段
が、前記複数のベルカップの回転数をそれぞれ制御する
ことを特徴とする。この発明では、駆動制御手段により
ベルカップの回転数がそれぞれ制御されるため、同芯円
状に重ねたベルカップの外周の大きさに応じて適切な回
転数でベルカップを駆動することができる。この発明に
よれば、内径の異なるベルカップを重ねて設けたことに
より生じる塗装膜厚分布の不均一を解消することがで
き、高い品質の塗装を行うことができる回転霧化静電塗
装装置を提供することができる。
【0009】(5)上記目的を達成するために、請求項
5記載の回転霧化静電塗装装置は、前記駆動制御手段
は、前記複数のベルカップの周速が実質的に同一となる
ようにベルカップの回転数をそれぞれ制御することを特
徴とする。この発明では、駆動制御手段によりベルカッ
プの周速が実質的に同一となるようにベルカップの回転
数が制御されるため、大きさの異なるベルカップの外周
の周速が一定となり、各ベルカップの外縁にて塗料微粒
子に与えられる力が一定となる。すなわち、塗料の微粒
子化のために与えられる力の大きさが同等となるため、
内径の異なるベルカップであっても塗着時の塗料の微粒
子径が略同一となり、塗装面の品質は向上する。この発
明によれば、同芯円状に重ねたベルカップから飛び出す
微粒子の微粒子径を均一とすることができ、高品質の塗
装を行うことができる回転霧化静電塗装装置を提供する
ことができる。
【0010】(6)上記目的を達成するため、請求項6
記載の回転霧化静電塗装装置は、複数のベルカップへの
塗料供給をそれぞれ制御する塗料供給制御手段を有する
ことを特徴とする。この発明では、ベルカップの塗料供
給がベルカップごとに行われるため、同芯円状に重ねて
設けられたベルカップをそれぞれ独立に機能させること
ができる。この発明により、複数のベルカップのうち内
側のベルカップのみ機能させる、外側のベルカップのみ
機能させる、すべてのベルカップを機能させる、又はひ
とつおきにベルカップを機能させる等と機能形態を変化
させることができ、塗装対象面積に応じて塗布パターン
を変化させることができるため、オーバースプレーを防
止し、塗料を節約できる回転霧化静電塗装装置を提供す
ることができる。
【0011】
【発明の効果】(1)請求項1に係る発明によれば、ベ
ルカップの内径を拡大して塗装パターン幅の拡大を図る
とともに塗装パターンの均一化を図ることができ、広い
面積の被塗布物にも対応することができる回転霧化静電
塗装装置を提供することができる。
【0012】(2)請求項2に係る発明によれば、シェ
ーピングエアーによって塗料微粒子が横流れすることな
く被塗装物面に塗着するため塗着効率の高い回転霧化静
電塗装装置を提供することができる。また、メタリック
フレークなどの塗料微粒子が被塗物面に対して面平行に
並べられることから色味の向上を図ることができ、一定
の色味の塗装を得るという観点からも、塗着効率が高い
回転霧化静電塗装装置を提供することができる。複数の
ベルカップを同芯円上に重ねた場合には、パターン幅を
拡大しながら塗着効率の向上を図ることができ、結果と
して設置ベルカップの数を低減し、塗装時間を短縮し、
塗装品質を高める回転霧化静電塗装装置を提供すること
ができる。
【0013】(3)請求項3に係る発明によれば、パタ
ーン幅の広狭に応じた塗装を行うことができるため、オ
ーバースプレーを防止するとともに、使用する塗料を節
約しうる回転霧化静電塗装装置を提供することができ
る。
【0014】(4)請求項4に係る発明によれば、内径
の異なるベルカップを重ねて設けたことにより生じる塗
装膜厚分布の不均一を解消することができ、高い品質の
塗装を行うことができる回転霧化静電塗装装置を提供す
ることができる。
【0015】(5)請求項5に係る発明によれば、同芯
円状に重ねたベルカップから飛び出す微粒子の微粒子径
を均一とすることができ、高品質の塗装を行うことがで
きる回転霧化静電塗装装置を提供することができる。
【0016】(6)請求項6に係る発明によれば、複数
のベルカップのうち内側のベルカップのみ機能させる、
外側のベルカップのみ機能させる、すべてのベルカップ
を機能させる、又はひとつおきにベルカップを機能させ
る等と機能形態を変化させることができ、塗装対象面積
に応じて塗布パターンを変化させることができるため、
オーバースプレーを防止し、塗料を節約できる回転霧化
静電塗装装置を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。図1は、本発明の回転霧化静電塗装
装置の実施形態を示す図であり、図2は、吹出し角度を
説明する図であり、図3は、本実施形態の回転霧化静電
塗装装置の塗着効率を比較する図であり、図4は、本実
施形態の回転霧化静電塗装装置の色味(IV値)を比較
する図であり、図5は実施形態の回転霧化静電塗装装置
のパターン幅を比較する図であり、図6はベルカップの
内径に応じてベルカップの回転数と塗料の微粒化径とを
対応づけた回転数情報の一例を示す図であり、図7は本
実施形態の回転霧化静電塗装装置の塗装パターンの分布
を比較する図である。
【0018】<構成>図1は、本発明の回転霧化静電塗
装装置の実施形態を示す図である。図1に示すように、
本実施形態の回転霧化静電塗装装置100は、ハウジン
グ6内に回転軸21が図外のモータにより回転可能に支
持されており、この回転軸21の先端方向にベルカップ
2(2A、2B)が設けられている。このベルカップ2
の回転機構は、回転軸をモータにより回転駆動させてベ
ルカップ2を回転させるものであっても、ベルカップ2
を空気流により回転させるものであってもよい。本実施
形態では2つのベルカップ2を設けており、第1のベル
カップ2A(内心側)と第2のベルカップ2B(外周
側)とを有している。本実施形態ではベルカップの数が
2つの場合を示したが、ベルカップの数は限定されるこ
となく、いくつであってもよい。
【0019】このベルカップ2は駆動制御手段4により
回転駆動、停止、回転数の制御等が行われる。この駆動
制御はベルカップの回転軸に作用してもよいし、ベルカ
ップを回転させるエアタービン4に作用してもよい。
【0020】ハウジング6とベルカップ2との間には環
状のシェーピングエアーリング7が、ベルカップ2ごと
に設けられている。このシェーピングエアーリング7と
ベルカップ2側近傍には環状のシェーピングエアーの通
路が形成される。このシェーピングエアーは、ベルカッ
プ2A、2Bの背面にベルカップ2A、2Bの外周に沿
って複数設けられたエアー吹出し口1から供給される。
このシェーピングエアーは、各ベルカップごとにその背
面から供給されることが好ましいが、同芯円状に重なり
合ったベルカップ2の間隔が狭い場合には、適宜、シェ
ーピングエアーリング7、シェーピングエアー吹き出し
口1をまとめて構成し、シェーピングエアーの供給経路
を統合することも可能である。
【0021】また、このように複数の供給経路を介して
供給されるシェーピングエアーの吹き出し角度は、すべ
て0度から20度であることが好ましいが、任意のベル
カップの背面から供給されるシェーピングエアーの吹き
出し角度を0度から20度とすることも、複数のベルカ
ップ2のうち最も外側に位置するベルカップ2Bの背面
から供給されるシェーピングエアーの吹き出し角度のみ
を0度から20度とすることも可能である。この場合、
外側のシェーピングエアーは、内側のすべてのベルカッ
プ2A、2Bから吹き出された霧化された塗料を包み込
む、いわゆるエアーカーテンを形成する。
【0022】ここで、図2を参照して、シェーピングエ
アーの吹き出し口について説明する。図2は、シェーピ
ングエアーの吹出し角度を説明する図である。図2に示
すように、吹出し角度とは、シェーピングエアー吹出し
方向S’とベルカップの回転軸21の方向とが、なす角
度である。本願に係る発明では、このシェーピングエア
ー吹出し角度を0〜20°の角度とすることを特徴とし
ている。図1に示した本実施形態における吹き出し口1
(ベルカップ2B(外周側)の外側)は、吹出し角度を
0°、すなわち、シェーピングエアーが、ベルカップ2
の回転軸方向21に対して0°で吹出されるように設け
られている。
【0023】また、ベルカップの内周面先端へ塗料を供
給する塗料供給経路3と、塗料が噴出する塗料ノズル3
1とを有している。メタリックフレーク等の塗料は、供
給経路3を介して複数のベルカップ2A、2Bへ供給さ
れる。この塗料の供給は、塗料供給制御手段5であるト
リガーバルブ5において制御される。このトリガーバル
ブ5はベルカップ2A、2Bへのそれぞれの供給を制御
する。
【0024】<作用>次に作用について説明する。ベル
カップ2A、2Bへ供給された塗料は、塗料ノズル31
から噴出されると、ベルカップ2A、2Bの回転力によ
り円周方向外側に向けて霧状に放出されて、被対象物の
面上に塗着する。このとき、本実施形態のように設けら
れたエアー吹出し口1が、ベルカップ2の背面から回転
軸方向に対して0〜20°の角度でシェーピングエアー
を吹出す。すると、円周方向外側に拡がる塗料は、シェ
ーピングエアーにより進行方向を変えられて被塗物面に
対し略垂直方向に衝突し塗装面に対して面平行に塗着す
る。本実施形態では、シェーピングエアー吹出し角度
を、0°とした。
【0025】本実施形態における回転霧化静電塗装装置
100の作用を確認するために、その塗着効率、色味、
パターン幅について、検討した。その結果を図3、図
4、図5に示す。具体的には、図3は、本実施形態の回
転霧化静電塗装装置の塗着効率を比較する図、図4は、
本実施形態の回転霧化静電塗装装置の色味(IV値)を
比較する図、図5は、本実施形態の回転霧化静電塗装装
置のパターン幅を比較する図である(図中S.Aとある
のは、シェーピングエアーの略である)。
【0026】これらの検討は、回転軸21に対してシェ
ーピングエアー吹出し角度が、−10°から60°回転
霧化静電塗装装置を作成し、シェーピングエアー吹出し
角度が0°から20°の範囲にある回転霧化静電塗装装
置100(本実施形態)と、シェーピングエアー吹出し
角度が30°から45°の従来の回転霧化静電塗装装置
(比較例)とを比較して行った。
【0027】塗着効率 図3は塗着効率を示し、シェーピングエアー流量が50
0Nl/minの場合(太線で示す)と、シェーピングエ
アー流量が300Nl/minの場合(細線で示す)のそ
れぞれにおいて、シェーピングエアー吹出し角度を−1
0°から60°の範囲で変化させ、シェーピングエアー
吹出し角度(°)に対する塗着効率(%)をプロットし
た。その結果、吹出し角度が0°から20°において
は、シェーピングエアー流量が500Nl/minの場合
には塗着効率が95から100%の範囲で推移し、シェ
ーピングエアー流量が300Nl/minの場合には塗着
効率が80から90%の範囲で推移した。これにより、
本実施形態では、比較例(吹出し角度が30〜50°)
よりも塗着効率が向上することがわかった。特に、0°
に近いほうが塗着効率が向上することがわかった。
【0028】色味 図4は色味(IV値)を示し、シェーピングエアー流量
が500Nl/minの場合(太線で示す)と、シェーピ
ングエアー流量が300Nl/minの場合(細線で示
す)のそれぞれにおいて、シェーピングエアー吹出し角
度を−10°から60°の範囲で変化させ、シェーピン
グエアー吹出し角度(°)に対する色味(IV値)をプ
ロットした。その結果、吹出し角度が0°から20°に
おいては、シェーピングエアー流量が500Nl/min
の場合には塗着効率が230から250の範囲で推移
し、シェーピングエアー流量が300Nl/minの場合
には塗着効率が180から200の範囲で推移した。こ
れにより、本実施形態では、比較例(吹出し角度が30
〜50°)よりも色味(IV値)が向上することがわか
った。特に、0°に近いほうが色味(IV値)が向上し
た。
【0029】パターン幅 図5はパターン幅を示す。シェーピングエアー吹出し角
度を−10°から60°の範囲で変化させ、シェーピン
グエアー吹出し角度(°)に対するパターン幅(mm)を
プロットした。その結果、吹出し角度が0°から20°
においては、パターン幅が150mmから200mmの範囲
で推移し、吹出し角度が30°から45°においては、
パターン幅が250mmから300mmの範囲で推移した。
これにより、本実施形態では、比較例(吹出し角度が3
0〜50°)よりもパターン幅が少なくなることがわか
った。
【0030】膜厚の分布 内径の異なる複数のベルカップ2A、2B等を同芯円状
に複数設け、背面から吹き出し角度が0〜20度のシェ
ーピングエアーを吹き出すことによって、塗装幅の拡大
を図るとともに塗着効率の向上と色味の向上を図ること
ができるが、これに伴って塗装膜厚が不均一となる傾向
があることがわかった。塗装膜厚が不均一となると塗装
品質が低下するおそれがある。そこで、本実施形態の回
転霧化静電塗装装置100は、このような問題を解決
し、ベルカップ2の回転数を制御して塗装膜厚を平均化
するものである。
【0031】同一の回転数で回転させた場合、ベルカッ
プ2の内径が異なるとベルカップ2の周速に差異が生
じ、ベルカップ2の外縁で塗料微粒子に与えられる力
(向心力、遠心力)に違いが生じる。この結果、ベルカ
ップの回転力により微粒子化する塗料粒子の微粒子径に
差異が生じる。図6において、内径が異なる2つのベル
カップ(50φ、150φ)について、ベルカップ2の
回転数ごとの塗料微粒化径を具体的に示した。図6に示
すように同じ回転数(10Krpm)にて、内径の異なるベ
ルカップ(50φと150φ)を回転させると、内径5
0φのベルカップ2Aから噴出された塗料の微粒化径は
25μmとなり、内径150φのベルカップ2Bから噴
出された塗料の微粒化径は17μmとなった。同一回転
数での回転においては内径が大きいベルカップ2bの方
が周速が速くなり、ベルカップ2Bの外縁で塗料微粒子
が受ける力が大きくなるため、その微粒子化が進むこと
がわかる。このように微粒化径の異なる塗料を同時に塗
布すれば、塗装の膜厚が不均一となってしまう。
【0032】一方、ベルカップ2の内径が異なる場合で
あっても、周速が同じであれば微粒化径が同一となる場
合がある。図6に示すように、内径50φのベルカップ
2Aを回転数10Krpmで回転させた場合と、内径150
φのベルカップ2Bを回転数30Krpmで回転させた場合
とは、それらベルカップ2から塗布される塗料の微粒化
径は17μmと同一となる。
【0033】このように、微粒化径が同一となるように
ベルカップ2A、2Bの回転数を制御すれば複数のベル
カップ2から噴出される塗料の微粒化径が等しくなり、
塗装膜が均一となって高い品質の塗装を行うことができ
る。
【0034】複数の異なる内径を有するベルカップによ
り塗布した塗料の膜厚分布を図7に示した。図7は、本
実施形態の回転霧化静電塗装装置の塗装パターンの分布
を比較する図である。塗装の質を検討するため、塗装膜
厚について、0mm地点を規準として−250mmから+2
50mmまでの各ポイントにおける膜厚(μm)を測定し
プロットした。図7中、内径φ50のベルカップを回転
数10Krpmで回転した場合の膜厚分布を2点鎖線で示
し、内径φ150のベルカップを回転数10Krpmで回転
した場合の膜厚分布を1点鎖線で示した。図7で示すよ
うにベルカップの内径が小さい場合には塗布パターンは
0地点付近にピークがあるが、ベルカップの内径を単に
大きくすると、塗布パターンがドーナツ状となってしま
う。これら2つのベルカップをあわせて同時に塗布して
も膜厚を均一とする塗布を行うことはできない。
【0035】一方、図7中実線で示した塗布パターン
は、内径φ150のベルカップを回転数10Krpmで回転
させ、内径φ50のベルカップを回転数30Krpmで回転
させた場合である。このように、回転数を適宜制御する
ことによって、内径の異なるベルカップ2A,2Bの周
速を同じくすることができるため、結果として、塗布パ
ターンを拡大しつつ膜厚が均一な塗布を行うことができ
る。
【0036】なお、以上説明した実施形態は、本発明の
理解を容易にするために記載されたものであって、本発
明を限定するために記載されたものではない。したがっ
て、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技
術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転霧化静電塗装装置の実施形態を示
す図である。
【図2】吹出し角度を説明する図である。
【図3】本実施形態の回転霧化静電塗装装置の塗着効率
を比較する図である。
【図4】本実施形態の回転霧化静電塗装装置の色味(I
V値)を比較する図である。
【図5】本実施形態の回転霧化静電塗装装置のパターン
幅を比較する図である。
【図6】ベルカップの内径に応じてベルカップの回転数
と塗料の微粒化径とを対応づけた回転数情報の一例を示
す図である。
【図7】本実施形態の回転霧化静電塗装装置の塗装パタ
ーンの分布を比較する図である。
【符号の説明】
100…回転霧化静電塗装装置 1…エアー吹出し口 2…ベルカップ 2A…第1のベルカップ 2B…第2のベルカップ 21…(ベルカップ)回転軸 3…塗料供給経路、フィードチューブ 31…塗料ノズル 4…駆動制御手段、エアタービン 41…回転制御機能 5…塗料供給制御手段(トリガーバルブ) 6…ハウジング 7…シェーピングエアーリング S…シェーピングエアー S’…シェーピングエアー吹出し方向 P…塗料

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のベルカップが実質的に同芯円状に
    設けられた回転霧化静電塗装装置。
  2. 【請求項2】 ベルカップの背面からシェーピングエア
    ーを供給するエアー吹き出し口が、前記ベルカップの回
    転軸方向に対して0〜20°の角度で前記シェーピング
    エアーを吹出すように設けられた請求項1記載の回転霧
    化静電塗装装置。
  3. 【請求項3】前記複数のベルカップの回転駆動をそれぞ
    れ制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とする請求
    項1又は2記載の回転霧化静電塗装装置。
  4. 【請求項4】 前記駆動制御手段が、前記複数のベルカ
    ップの回転数をそれぞれ制御することを特徴とする請求
    項3記載の回転霧化静電塗装装置。
  5. 【請求項5】 前記駆動制御手段は、前記複数のベルカ
    ップの周速が実質的に同一となるようにベルカップの回
    転数をそれぞれ制御することを特徴とする請求項3記載
    の回転霧化静電塗装装置。
  6. 【請求項6】 前記複数のベルカップへの塗料供給をそ
    れぞれ制御する塗料供給制御手段を有することを特徴と
    する請求項1〜5記載の回転霧化静電塗装装置。
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