JP2002142800A - 細胞の形態解析方法および記憶媒体 - Google Patents

細胞の形態解析方法および記憶媒体

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JP2002142800A
JP2002142800A JP2000345576A JP2000345576A JP2002142800A JP 2002142800 A JP2002142800 A JP 2002142800A JP 2000345576 A JP2000345576 A JP 2000345576A JP 2000345576 A JP2000345576 A JP 2000345576A JP 2002142800 A JP2002142800 A JP 2002142800A
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cell
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micronucleus
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Chino Sasaoka
ち乃 笹岡
Kunihiko Miura
邦彦 三浦
Naoaki Okamoto
直明 岡本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ゲノム変異誘発物質の検出感度の向上と、構造
異常と数的異常の識別能の向上を図る細胞の形態解析方
法および記憶媒体を提供すること。 【解決手段】任意の細胞周期における複数の細胞につい
て各々の形態情報を得る工程と、前記複数の細胞を、各
々の前記形態情報を基に複数の形態項目に分類する工程
と、分類された前記複数の細胞について、前記形態項目
ごとに出現状態を示す分布を求める工程と、求められた
分布に基づいて、前記複数の細胞からなる細胞集団にお
けるゲノム変異の存在を判定する工程と、を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞傷害の由来を
推測する細胞の形態解析方法および記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、化学物質の発がん能を推測するた
めに、DNAへの傷害性、すなわち変異原性の評価が行
なわれていた。この変異原性を検出するための試験とし
て、培養細胞を用いた染色体異常試験がある。これは、
細胞に対する傷害作用(細胞質傷害)から、がん原性や
生殖細胞に対しての遺伝的影響(ゲノム傷害)まで幅広
く予測できる試験であり、染色体の形状の変化(構造異
常)あるいは数の増減(数的異常)を、顕微鏡下で形態
学的に検出する試験法である。しかし、この試験法を行
なうには染色体の観察に熟練が必要なため、観察が簡便
なin vitro小核試験への代替え化が検討されて
いる。
【0003】前述した染色体異常試験で観察された細胞
の染色体に傷害が生じている場合、分裂期を経て次の間
期に入ることにより小核が形成される。in vitr
o小核試験では、分裂期を経た間期細胞に出現した小核
(核より小さく核膜で囲まれた核様物体)の出現数を計
測することで、化学物質の遺伝毒性を推測する染色体異
常試験の代替えが可能になる。この代替え化は、国際的
な試験法ハーモニゼーション(日米EU国際調和、In
ternational Conference Ha
rmonization(ICH))の流れによって促
進されているが、我が国においても、労働省や厚生省な
どが専門委員による研究会を開始し、ガイドライン化の
準備が進められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】(1)従来の小核試験
では、単核細胞における小核の出現以外の細胞情報(そ
の他の細胞情報)は用いられていなかった。
【0005】上述したin vitro小核試験の観察
方法については、目視観察の他に、画像解析やフローサ
イトメトリーを用いた機器計測も行なわれているが、い
ずれも小核の出現数のみを計測の対象としている。ま
た、間期核の主核の形態に関しては、特に報告はされて
いない。
【0006】この小核試験には、分裂間期にある細胞を
そのまま、すなわち単核細胞のみを観察対象とする場合
と、サイトカラシンBという細胞質分裂阻害剤による処
理をして細胞分裂を経た細胞(二核細胞)のみを観察対
象とする場合がある。しかし、いずれの場合において
も、小核出現頻度の上昇を検出する観察対象の細胞は、
単核細胞あるいは二核細胞のみであり、多核細胞や分裂
期細胞など小核頻度の算出に関係しない細胞は観察対象
外とされていた。
【0007】(2)従来では、小核試験の結果が陽性と
なったとしても、その由来が構造異常か数的異常かは分
からなかった。
【0008】染色体異常試験における異常の種類は大別
して、染色体や染色分体の構造に異常が起こる構造異常
と、染色体数が変化してしまう数的異常の二つに分けら
れる。染色体異常を誘発する化学物質の性格を知る上
で、それが構造異常誘発物質か数的異常誘発物質かを判
別することが、染色体異常試験の一つの課題となってい
る。
【0009】MMCやMNNGといった構造異常誘発物
質については、主核に対してその直径1/3程度までの
大きさの核を対象として集計した場合、ほとんどの物質
について有意な結果が得られている。すなわち、染色体
異常試験と小核試験の結果の一致が得られる。一方、数
的異常誘発物質に関しては、コルヒチンやビンブラスチ
ンといった代表的なものは、やはり主核に対して1/3
程度の小核が1個または複数個、有意に誘発されると報
告されている。
【0010】しかし誘発された小核からは、処理した物
質の性格、すなわち構造異常誘発性を持つものか、数的
異常誘発性を持つものかの区別がつけられなかった。ま
た、大きな小核と標準的な小核との判別は、目視による
計測のためあいまいになる。また、染色体異常試験で数
的異常を誘発すると判定された物質でも、実際は小核を
誘発しにくいという事例も報告されている。その一方
で、数的異常誘発物質は必ずしも大きな小核を誘発しな
い、という報告もされている。
【0011】過去には、数的異常により比較的大きな小
核(主核に対して1/3〜1/2程度)が多く誘発され
る、との報告もされている(日本化学物質安全・情報セ
ンター(JETOC):平成2年度報告書、pp27−
42 生体外染色体異常試験の精度に関する研究、19
91)。しかし、大きな小核と標準的な小核の判別は、
目視による計測のためあいまいであり、時として、「比
較的大きな小核」を「主核の直径の1/2〜1/4」と
する場合もある(JETOC:平成6年度報告書、p
p.61、1995)。また、われわれの研究でも、数
的異常誘発物質(ビンブラスチン)を処理した場合に、
必ずしも「大きな小核」が増加していないことが明らか
となっている(JETOC:平成8年度報告書、図
1)。
【0012】加えて従来では、染色体異常は小核の大き
さのみでしか区別されておらず、従って小核を誘発する
化学物質は、染色体異常を誘発することが確認できて
も、その小核が「構造異常」由来のものか「数的異常」
由来のものかは判別できなかった。つまり、習慣的にい
われていた『誘発された小核の大きさから、染色体断片
が染色体(whole chromosome)かを判
別し、それがすなわち「構造異常誘発性」か「数的異常
誘発性」を判別する』という方法は、染色体異常試験の
結果とは、一致しない場合が多かった。
【0013】よって、この従来の小核出現数の測定のみ
という判別方法では、被験物質の構造異常誘発性と数的
異常誘発性との区別が不完全であった。そのため、動原
体の検出(αサテライトDNAプローブを用いたFIS
H、免疫染色(CREST)法、C−band法)な
ど、追加の解析も必要であった(Tinwell an
d Ashby(1991)Micronucleus
morphologyas a means to
distinguish aneugensand c
lastogens in the mouse bo
ne marrow micronucleus as
say.Mutagenesis,6,pp193−1
98)。
【0014】(3)従来では、染色体異常試験で倍数体
を誘発する物質にて小核の誘発が陰性となる場合、すな
わち数的異常誘発物質で陰性結果を与える場合もあっ
た。
【0015】一般的なin vitro小核試験では、
主核に対して1/2未満の小核を集計対象とし、その中
で、標準的な小核(主核に対して1/3程度)、比較的
大きな小核(1/3〜1/2程度)、および複数出現し
ている小核、の三つに分類されている。また、染色体異
常試験で数的異常を誘発すると判定された物質でも、実
際は小核を誘発しにくいという事例も報告されている。
【0016】in vitro小核試験への代替え化が
検討されるなかで、一番重要であるのが染色体異常試験
との結果の一致である。これまで、多々の化学物質につ
いて検討が進められ、in vitro小核試験の結果
は、構造異常誘発物質については染色体異常試験の染色
体異常の結果(陰性または陽性)と一致することが報告
されてきた(Matsushima et al.(1
999)Validation study of t
he in vitro micronucleus
test in a Chinese hamster
lung cell line(CHL/IU).M
utagenesis,14,pp563−568)。
【0017】しかし一方で、機構論的に倍数体(染色体
異常試験で検出する)は誘発するものの、小核(in
vitro小核試験で検出する)は誘発しないサイトカ
ラシンBのような物質の存在も知られており、数的異常
と構造異常の識別とともに、検出感度向上の必要性はよ
り重要性を増してきている。
【0018】(4)以上の問題は、画像解析装置を用い
てin vitro小核試験の結果を解析し、誘発され
た小核の大きさを客観的に計測することにより真の値を
求める画像解析ソフトウェアにおいても同様の状況にあ
る。
【0019】本発明の目的は、ゲノム変異誘発物質の検
出感度の向上と、構造異常と数的異常の識別能の向上を
図る細胞の形態解析方法および記憶媒体を提供すること
にある。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し目的を
達成するために、本発明の細胞の形態解析方法および記
憶媒体は以下の如く構成されている。
【0021】(1)本発明の細胞の形態解析方法は、任
意の細胞周期における複数の細胞について各々の形態情
報を得る工程と、前記複数の細胞を、各々の前記形態情
報を基に複数の形態項目に分類する工程と、分類された
前記複数の細胞について、前記形態項目ごとに出現状態
を示す分布を求める工程と、求められた分布に基づい
て、前記複数の細胞からなる細胞集団におけるゲノム変
異の存在を判定する工程と、を有する。
【0022】(2)本発明の細胞の形態解析方法は上記
(1)に記載の方法であり、かつ前記複数の細胞の分類
に際し、複数の核を有する細胞を、二つの核を有する細
胞と三つ以上の核を有する細胞とに分類する。
【0023】(3)本発明の細胞の形態解析方法は上記
(1)または(2)に記載の方法であり、かつ前記形態
情報を得るに際し、各細胞を細胞核に特異的な色素で染
色し、顕微鏡下で前記細胞核の形状を解析する。
【0024】(4)本発明の細胞の形態解析方法は上記
(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法であり、かつ
前記複数の細胞として、核異常細胞と分裂期細胞を対象
とする。
【0025】(5)本発明の記憶媒体は、コンピュータ
読み取り可能であり、コンピュータで、任意の細胞周期
における複数の細胞について各々の形態情報を得る工程
と、前記複数の細胞を、各々の前記形態情報を基に複数
の形態項目に分類する工程と、を実行させるためのプロ
グラムを記憶している。
【0026】上記手段を講じた結果、それぞれ以下のよ
うな作用を奏する。
【0027】(1)本発明では、哺乳動物由来の細胞に
生じた生物学的な傷害を簡便に解析するために、細胞の
形態情報を利用している。すなわち、遺伝情報(ゲノ
ム)変異に至る傷害を解析し得るin vitro小核
試験などの手法において、傷害の由来を推測する際に、
個々の細胞の形態情報を利用している。これにより、細
胞におけるゲノム変異の由来の推測を、特殊なマーカ等
による検出などを行なわずに、簡便に行なうことが可能
となる。
【0028】本発明によれば、小核試験の結果を従来の
染色体異常試験の結果と一致させ得ることが達成され
る。すなわち、間期核の形態から、細胞周期が分裂中期
の核のみを対象としている染色体異常試験と同等の生物
学的情報が得られる。具体的には、in vitro染
色体異常試験において陽性結果が得られ、染色体異常が
誘発されることが知られているにもかかわらず、in
vitro小核試験では陰性結果になる数的異常誘発物
質に対して、ゲノム変異が生じていることを示すことに
より、染色体異常試験の結果を一致させ得る。また、i
n vitro小核試験において、誘発された小核に対
して、由来(構造異常によるものか数的異常によるもの
か)を推測するために必要だった動原体検出アッセイ等
の追加試験を不要にし得る。これにより、小核試験にお
けるゲノム変異検出能の向上が可能となる。
【0029】また、熟練した観察技術が不要となり、誰
でも簡単に細胞のゲノム変異を検出・判定することが可
能となり、さらに解析対象となる細胞数を増加すること
ができ、検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0030】(2)本発明によれば、従来の小核試験法
では観察対象とされていなかった核異常細胞のうち、多
核細胞を、さらに二核細胞と三個以上の核を持つ細胞と
に分類・集計することで、特に二核細胞の出現によって
倍数体誘発というゲノム変異を検出することができる。
【0031】(3)本発明によれば、細胞核の形状を正
確に解析することができる。
【0032】(4)本発明によれば、個々の細胞核の形
態によってゲノム変異の由来を推測する際に、従来のi
n vitro小核試験では解析対象外とされていた核
異常細胞あるいは分裂期細胞なども観察対象とし、適切
な分類をしその情報を用いることにより、ゲノム変異由
来の正確な推測が可能になり、真の解析結果が得られ
る。
【0033】(5)本発明によれば、個々の細胞の形態
を客観的かつ容易に分類・集計することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態に係
る画像解析装置の構成を示す図である。図1に示す画像
解析装置は、顕微鏡で得られた細胞の画像を基に、染色
体に発生した異常を解析するものである。この装置は、
主に、細胞を顕微鏡的に画像化する画像入力部をなす蛍
光顕微鏡Aと画像解析部をなすパーソナル・コンピュー
タ(PC)Bとで構成されている。
【0035】蛍光顕微鏡Aの本体1には、二次元上で自
動的に走査されるステージ2が設けられており、このス
テージ2には蛍光標識(生物学的染色)を施された細胞
からなる標本Sが載置されている。また、本体1とステ
ージ2には、標本Sに焦点を合わせるようステージ2を
観察光軸a方向へ駆動するオートフォーカス装置3が連
結されている。
【0036】蛍光顕微鏡Aの観察光軸a上には、標本S
が位置するとともに、レボルバー4に取り付けられた対
物レンズ5、本体1内に設けられたダイクロイックミラ
ー6、細胞質(RNA)/核(DNA)で発した蛍光を
特異的に検出するために、観察光軸a上に配置されるフ
ィルターを変換するフィルター変換部7、鏡筒8内に設
けられたハーフミラー9、及び顕微鏡画像の入力用のC
CDカメラ10が配置されている。鏡筒8には接眼レン
ズ11が取り付けられている。また、本体1には、標本
S上に励起光を投射するための光源12が設けられてい
る。
【0037】パーソナル・コンピュータ(PC)Bは、
制御部20と細胞質・核計測部30を備えており、細胞
質・核計測部30は、閾値設定部31、ブロブ解析部3
2、輪郭形状解析部33、及び画像判定部34を有して
いる。なお、細胞質・核計測部30はプログラムとして
図示しないメモリーに記憶されており、制御部20によ
り実行される。
【0038】制御部20には、細胞質・核計測部30を
記憶した上記メモリーと分類・集計部40が接続されて
いるとともに、入力部21と表示部22が接続されてい
る。また制御部20には、ステージ2、オートフォーカ
ス装置3、フィルター変換部7、及びCCDカメラ10
が接続されている。また、細胞質・核計測部30を記憶
した上記メモリーはCCDカメラ10に接続されてい
る。分類・集計部40は、後述するように細胞の形態の
分類と集計を行なう。
【0039】光源12から発した光がダイクロイックミ
ラー6にて反射され、対物レンズ5を介して標本Sを励
起すると、標本Sで発せられた蛍光が、対物レンズ5、
ダイクロイックミラー6、及びハーフミラー9を介して
CCDカメラ10に取込まれる。
【0040】CCDカメラ10に取り込まれた細胞の画
像情報は、細胞質・核計測部30に送られ、後に詳述す
る解析処理が実行される。閾値設定部31では基準閾値
と多段階閾値の設定がなされ、ブロブ解析部32では細
胞画像に対して従来から知られているブロブ解析が行な
われ、輪郭形状解析部33では細胞の輪郭形状が解析さ
れ、画像判定部34では輪郭形状解析部33で解析され
た細胞群のうち小核を形成した間期細胞が主核と対応付
けて計数される。
【0041】制御部20はCPUからなり、本画像解析
装置の全ての構成ユニットの動作を連続的に実行させる
ものである。入力部21はキーボード、タッチパネル、
マウス等からなり、制御部20に対して、解析したい情
報の種類の追加、変更等が行なわれる。表示部22はC
RT、プリンタ等からなり、制御部20により統計処理
された統計データが表示される。
【0042】表1は、従来のin vitro小核試験
における観察分類法および小核試験の成績を示す表であ
る。
【0043】
【表1】
【0044】ここでは、典型的な数的異常誘発物質(ビ
ンブラスチン)で処理を行なっており、小核が顕著に誘
発されていることが分かる。しかし、主に典型的な小核
(MN−T)が誘発されているため、逆にこの結果のみ
では、この小核誘発が構造異常作用によるものか、数的
異常作用によるものかの判別はできない。
【0045】そこで本実施の形態では、顕微鏡下で無作
為に選んだ1000個の細胞の形態を以下の様に分類す
る。
【0046】A)正常な単核細胞(小核保有細胞を含
む) B)大型の小核(核断片)を持つ細胞 C)核の大きさが等しい二核細胞 D)核の大きさが不均等な二核細胞 E)多核細胞(三核細胞以上) F)核異常細胞(傷害を強く受けている単核細胞) G)分裂期細胞 すなわち本実施の形態では、各用量あたり1000個の
間期細胞を観察し、小核を持つ細胞数を記録する。観察
の対象とする細胞は単核細胞のみとし、細胞質が明確に
観察されるもののみとする。小核は、染色性が主核とほ
ぼ同等であり、その輪郭が明確で、主核より離れて存在
するものを対象にする。そして、一つあるいは複数の小
核を持つ細胞を、一つの小核保有細胞としてカウントす
る。
【0047】また、大きさが主核の直径の1/2程度ま
でのものを小核として集計する。典型(標準)的な小核
とは、大きさが主核の直径の1/3程度のものとし、1
/3を基準に「非常に小さい小核(主核直径の1/10
未満)をもった単核細胞」「典型的な小核(主核の直径
の1/3程度まで)をもった単核細胞」「大きな小核
(主核直径の1/3〜1/2まで)をもった単核細胞に
分類する。また、複数の小核が出現する単核細胞も観察
対象とし、小核保有細胞に分類する。
【0048】一方、数的異常誘発物質で処理した小核試
験では、構造異常誘発物質と比較して、多くの多核細胞
および分裂細胞が出現することが知られている。そこ
で、小核の観察とは別に、同じ標本についてすべての細
胞を対象に、その主核の形態を解析する。すなわち、小
核の観察では従来と同様に、染色状態が良好で細胞質が
完全に保存されており、かつ主核の形状が不整でない
(円形に近い)細胞のみを対象にし、1000細胞中の
小核の出現率を計測する。
【0049】図2は、本実施の形態における観察とその
観察結果の分類方法および集計方法の手順を示すフロー
チャートであり、図3はその分類を実現するための画像
解析ソフトウェアの解析処理手順を示すフローチャート
である。
【0050】以下、図1を基に観察とその観察結果の分
類方法および集計方法の手順を説明する。
【0051】1)ステップS1で、観察者は個々の細胞
の顕微鏡観察が可能なよう、エアドライ法によりスライ
ドグラス上にin vitro小核標本を作製する。
【0052】この場合、観察者は各細胞に対して被験物
質処理を行なった後、接着細胞であれば0.25%トリ
プシン等を用いて剥離し、浮遊細胞であれば培養液ごと
細胞を回収する。そして、単離した細胞に5mLの75
mMKCLを加えて室温で7分間静置した後、カルノア
溶液で固定し、細胞質を保持し細胞の塊を少なくするた
め1%メタノールを含む酢酸溶液で置換した後、通常の
エアドライ法にて標本を作製する。
【0053】可能であれば、特願平11−336284
号に記載されている標本作製方法を施すことで、細胞単
離率が一層向上する。この標本作製方法では、所望の細
胞を準備し、その細胞を低張処理し半固定した後、さら
にその半固定で使用した固定液よりも高濃度の固定液に
よって半固定し、得られた細胞を固定し、その細胞の懸
濁液を支持体上に、個々の細胞を分散させた状態で配置
する。また、初めの半固定を行なうために使用する固定
液は、低張処理用溶液の体積の10分の1以下の体積で
添加され、かつ次の半固定を行なうために使用する固定
液は、前記低張処理用溶液の体積と略同じ量になるよう
添加される。また、前記懸濁液の濃度は少なくとも1×
10個/mLであり、かつその滴下は、約1〜10μ
Lずつ複数回、スライドグラス上の同位置に行なう。
【0054】2)ステップS2で、観察者は各細胞に対
してアクリジン・オレンジ(AO)染色を行ない、ステ
ップS3で、B励起照明系にて×200で観察を行な
う。あるいは、ステップS2で、ギムザ染色を行ない、
ステップS3で、明視野観察系にて×400で観察を行
なう。
【0055】この場合、観察者は各細胞に対して40μ
g/mLの濃度のA.O.溶液を用いる簡易染色法を施
して、染色直後にB励起照明機構を備えた蛍光顕微鏡A
下で、×200倍で観察を行なう。このときA.O.染
色により、細胞核部分(緑色)と細胞質部分(赤色)と
を色別して観察することができる。あるいは、各細胞を
1/15MのSoerensenリン酸緩衝液(pH
6.8)で希釈した3.5%ギムザ溶液で染色し、明視
野観察系にて×400倍で観察する。このとき、ギムザ
染色により細胞核部分は濃染され、細胞質部分は淡染さ
れる。
【0056】3)ステップS4で、細胞質・核計測部3
0により、あるいは観察者の観察により、分裂間期にあ
る正常な1000個の単核細胞中の小核保有細胞を集計
する。この場合、通常の小核試験結果を得ることにな
る。
【0057】この小核試験では、通常、一つの濃度の標
本につき正常な1000個の細胞を対象として、それら
の細胞中の小核の出現数を集計する。「小核」の観察対
象となる細胞として、単離していて細胞質がよく保存さ
れており、かつサイズ的に主だった核(主核)の個数が
一つだけの細胞を対象とする。小核は、主核の直径の1
/3程度の大きさのものを対象とする。
【0058】従来「大きな小核」に分類してきた、主核
の直径1/3から1/2の大きさにあたる核断片は、小
核の分類から外した。これは、この大きさの核断片が生
じた場合、主核がさらに細胞分裂を繰り返す可能性は低
い、と考えられるためである。主核の直径1/2未満の
大きさの核断片は、主核の形態分析時に分類集計する。
また、主核の直径1/2以上の大きさの核断片について
は、主核との大きさと比較し、核の大きさが等しい二核
細胞、核の大きさが不均等な二核細胞および多核細胞に
分類する。
【0059】一方、従来「非常に小さい小核」に分類し
てきた核断片は、細胞にとっての影響が確認できないた
め、小核の分類からは除外した。よって小核は、主核の
直径1/3程度の大きさの核断片のみを標準的なものと
して集計する。
【0060】次にステップS5で、観察者は標本から無
作為に1000個の分裂間期あるいは分裂期にある細胞
(その他の細胞、と称す)を抽出し、分類・集計部40
により、あるいは観察者の観察により、間期細胞を分類
・集計する。この場合、本発明の手法による集計結果を
得ることになる。
【0061】この場合、無作為に観察した1000個の
細胞における主核の形態を、上記にも示した以下のよう
な6種類に分類する。
【0062】 A)正常な単核細胞(小核保有細胞を含む) B)大型の小核(核断片)を持つ細胞 C)核の大きさが等しい二核細胞 D)核の大きさが不均等な二核細胞 E)多核細胞(三核細胞以上) F)核異常細胞(傷害を強く受けている単核細胞) G)分裂期細胞 ここで、B)は、直径が主核の1/3〜1/2である
「核断片」を保有している細胞を示す。過去の報告で
は、このサイズの「小核」を保有する細胞の頻度の上昇
により、数的異常誘発物質が識別できるとされていた
が、現在では国際的に「小核」には分類されない。D)
は、細胞質内に存在する二つの核が、サイズは等しくな
いものの、直径にして主核の1/2以内に収まっている
場合を示す。これは、機構的にB)とE)の混合作用に
よると考えられる。C)およびE)は、主に数的異常誘
発物質の作用としての多極分裂の結果生じると考えられ
る。F)は、核の形状が円形から明らかに逸脱している
場合を示す。G)には、分裂前期から分裂終期までの細
胞を含めるものとする。完全に分裂期を脱して核膜が形
成された場合、二つの単核細胞になるか、二核細胞にな
るかのどちらかと考えられる。なお、以上の分類に際し
ては、細胞質中に小核があるか否かを区別しない。
【0063】4)ステップS6で、観察者は上記ステッ
プS4,S5で得たそれぞれの結果を、Fisher正
確確率法により検定する。
【0064】この場合、観察者は上記ステップS4の
「正常な単核細胞」および上記ステップS5の「その他
の細胞」について、それぞれ1000個の細胞を分母と
して出現率を算出する。「正常な単核細胞」における小
核保有細胞の出現率の算出に際しては、小核の有無を問
わず単核細胞の数を分母に、個数に係わらず小核を保有
する単核細胞の数を分子におく。また、「その他の細
胞」における多核細胞や分裂期細胞などの出現頻度の解
析には、単核を含めたすべての細胞の数を分母に、それ
ぞれの形状を示す細胞の数を分子におく。特に、多核細
胞とは区別して核の大きさが等しい二核細胞(上記3)
のC))を独立して分類・集計し、その出現率を算出す
る。
【0065】そして観察者は、Fisherの正確確率
法(Fisher’s exacttest)により、
核が各形態をなす細胞の出現確率を求め、その出現確率
が危険率(α=0.05)以下であるか否かによって、
統計学的に有意な誘発であるか否かを判定する。
【0066】この検定の結果、ステップS7で、小核試
験により陽性結果が得られた場合、すなわち小核保有単
核細胞の頻度が有意に上昇していたら、ステップS8
で、観察者は、当該被験物質はゲノム変異(染色体構造
異常あるいは数的異常)を誘発していると判断する。そ
して、誘発された小核の由来が構造異常誘発性による
か、数的異常誘発性によるかを判定する。
【0067】この場合、ステップS9で、上記ステップ
S5の「その他の細胞」の集計結果において、B)大型
の小核を持つ細胞、C)核の大きさが等しい二核細胞、
D)核の大きさが不均等な二核細胞、E)多核細胞、
G)分裂期細胞のいずれかの頻度が有意に上昇していれ
ば、ステップS10で、染色体傷害による数的異常誘発
性が有ると判定する。また、ステップS11で、上記ス
テップS5の「その他の細胞」の集計結果において、
F)核異常細胞の頻度が有意に上昇していれば、ステッ
プS12で、染色体傷害による構造異常誘発性が有ると
判定する。
【0068】上記ステップS6の検定の結果、ステップ
S13で、小核試験により陰性結果が得られたものの、
「その他の細胞」の主核の変異の誘発により陽性結果が
得られたとする。この場合、ステップS14で、上記ス
テップS5の「その他の細胞」の集計結果において、
B)大型の小核を持つ細胞、C)核の大きさが等しい二
核細胞、D)核の大きさが不均等な二核細胞、E)多核
細胞、G)分裂期細胞のいずれかの頻度が上昇していれ
ば、ステップS15で、細胞傷害による数的異常誘発性
が有ると判定する。また、ステップS16で、上記ステ
ップS5の「その他の細胞」の集計結果において、F)
核異常細胞の頻度が有意に上昇していれば、ステップS
17で、ゲノム変異誘発性は無いと判定する。
【0069】上記ステップS6の検定の結果、ステップ
S18で、小核試験および「その他の間期細胞」の試験
のいずれも陰性結果が得られた場合、ステップS17
で、ゲノム変異誘発性は無いと判定する。以上の一連の
処理を、濃度の異なる複数の標本について行なう。
【0070】このように、小核保有単核細胞の誘発頻度
が上昇しているか否かにかかわらず、核の大きさが等し
い二核細胞、核の大きさが不均等な二核細胞、多核細
胞、および分裂期細胞のいずれか、あるいはすべてが有
意に増加していたら、当該被験物質はゲノム変異のうち
数的異常を誘発していると判定される。
【0071】以下、図3を基に、図2に示したステップ
S3〜S5における分類・集計処理を画像解析ソフトウ
ェアで実行した場合の解析処理手順について説明する。
【0072】まずステップS101で、×200または
×400の対物レンズ5で細胞像を取得する。初めにス
テップS102で、細胞質部分(AO染色の場合にはR
画像、ギムザ染色の場合には淡染画像)を抽出する。こ
の場合、「欠け検出」により接触細胞を分離する。
【0073】制御部20はフィルター変換部7にて、細
胞質(RNA)の蛍光波長を特異的に吸収・励起するた
めのフィルター(赤色用フィルター)を観察光軸a上に
配置させる。これにより、標本Sにおける細胞質(RN
A)の画像が対物レンズ5を介してCCDカメラ10に
取込まれ、画像データとして細胞質・核計測部30に入
力される。
【0074】次に細胞質・核計測部30は、入力した細
胞質(RNA)画像に対して画像の輝度補正を行ない、
閾値設定部31にて基準閾値(基準輝度)を設定し、細
胞質(RNA)の画像データを2値化することにより、
解析対象画像を抽出する。
【0075】そして、ブロブ解析部32は従来のブロブ
解析法により、細胞質の画像の重心・面積(ピクセル数
の総和)・体積(各ピクセルの蛍光輝度の総和)・真円
度・長さと幅の比率などを分析する。ここで、真円度、
及び長さと幅の比率から、単独の細胞ではなく複数の細
胞が重なり合った疑いがあるものについては、輪郭形状
解析部33にて輪郭形状解析を行なう。これにより、近
接した複数の細胞が独立した個々の細胞に分離される。
【0076】次にステップS103で、細胞質中の細胞
核部分(AO染色の場合にはG画像、ギムザ染色の場合
には濃染画像)を抽出する。この場合、「欠け検出」に
より接触核を分離する。
【0077】制御部20はフィルター変換部7にて、核
(DNA)の蛍光波長を特異的に吸収・励起するための
フィルター(緑色用フィルター)を観察光軸a上に配置
させる。これにより、標本Sにおける核(主核・小核:
DNA)の画像が対物レンズ5を介してCCDカメラ1
0に取込まれ、画像データとして細胞質・核計測部30
に入力される。
【0078】次に細胞質・核計測部30は、入力した核
(DNA)画像に対して画像の輝度補正を行ない、閾値
設定部31にて閾値(輝度)を設定し、核(DNA)の
画像データを2値化することにより、解析対象画像を抽
出する。
【0079】次に、ブロブ解析部32は従来のブロブ解
析法により、核の画像の矩形・面積・体積・真円度・長
さと幅の比率などを分析する。ここで、面積比(細胞質
/核)を算出して、ある一定の値以上のものを観察対象
細胞としてラベル化する。また、体積比(核/細胞)を
算出して、ある一定の値以上のものを主核、前記一定の
値未満のものを小核としてラベル化する。
【0080】さらに、輪郭形状解析部33にて輪郭形状
解析を行なうことにより、近接した複数個の主核が分離
される。そして細胞質・核計測部30は、主核の個数を
認識し、主核(核部)の数が1個または2個以上の細胞
を分類し、それらを観察対象の細胞として決定する。
【0081】そして、上述した画像解析処理の結果、小
核が存在する場合、画像判定部34はその小核の個数を
主核と対応付けるとともに、主核と小核を画像解析され
た細胞質と対応付け、各観察対象の細胞ごとに小核を計
数し、全観察対象の細胞中における小核を保有する間期
細胞の出現頻度を集計する。
【0082】その後、予め設定されている段階数(例え
ば5段階)分の画像解析処理が終了するまで、上記閾値
に対して予め指定されている差分を順次加えて新たな閾
値とし、上記の画像解析処理を行なう。以上のような多
段階閾値による核の解析が行なわれることで、小核が細
胞中により多く存在する結果が取得される。
【0083】ここで核部が一つの場合には、ステップS
104で、分類・集計部40は真円度により形状判定
し、「小核のない単核細胞」(上記A))か「分裂期細
胞」(上記G))かを判定する。
【0084】また核部が複数の場合には、ステップS1
05で、分類・集計部40は核部のサイズを画素数とし
て認識する。そしてステップS106で、分類・集計部
40は画素数が「主核」に相当する核部があるか否かを
判定する。ここで、核部がある場合、ステップS107
で、その個数を算出する。
【0085】核部が2個以上の場合、ステップS108
で、「主核」が3個以上あれば、分類・集計部40は多
核細胞(上記E))であると判定する。ステップS10
9で、「主核」が2個ある場合には、分類・集計部40
はそれぞれの画素数を比較する。この場合、ステップS
110で画素数の差が25%未満であれば、分類・集計
部40はサイズの等しい二核細胞(上記C))であると
判定する。一方、ステップS111で画素数の差が25
%以上であれば、分類・集計部40はサイズの不均等な
二核細胞(上記D))であると判定する。
【0086】上記ステップS107で、「主核」の個数
が1個の場合、ステップS112で、分類・集計部40
は小さな核部(小核)のサイズを認識する。そして、ス
テップS113で、「小核」の画素数が主核の10%未
満であれば、分類・集計部40は小核保有単核細胞(上
記A))であると判定する。また、ステップS114
で、「小核」の画素数が主核の10%〜25%であれ
ば、分類・集計部40は大型の小核をもつ細胞(上記
B))であると判定する。
【0087】一方、上記ステップS106で、画素数が
「主核」に相当する核部がない場合、ステップS115
で、分類・集計部40は細胞質の真円度を判定する。そ
して、ステップS116で、細胞質が円形に近い場合、
分類・集計部40は多核細胞(上記E))であると判定
する。また、ステップS117で、細胞質が円形から離
れている場合、分類・集計部40は核異常細胞(上記
F))であると判定する。
【0088】上記ステップS101〜S117の一連の
処理を、ステップS118で、「小核」の有無に関わら
ず、正常な単核細胞1000個、及びそれ以外の細胞
(その他の細胞)1000個について完了した時点で終
了する。その後、分類・集計部40は、分類された上記
A)〜G)の各形態の細胞の数を集計する。なお、この
分類・集計処理は、観察者が目視と計数により行なって
もよい。
【0089】従来では、細胞集団の性状を解析する試
験、例えば創薬領域における安全性試験にて、個々の細
胞画像における細胞核の形態情報を一定の基準すなわち
分類・集計法によって分類する手法として、in vi
tro染色体異常試験が行なわれていた。これは、例え
ば医薬品製造過程で必須の安全性試験の中で、哺乳類培
養細胞を用いるin vitro変異原性試験、すなわ
ち環境変異原等により誘発される染色体変異の結果を尺
度として遺伝情報(ゲノム)の傷害の程度を簡便に予測
するin vitro遺伝毒性試験のうち、ゲノム変異
の由来が染色体の構造異常または数的異常の2種類から
なる場合の試験である。このin vitro染色体異
常試験の代替法として、上述したようにin vitr
o小核試験のガイドライン化が検討されている。本実施
の形態では、2種類のゲノム変異の由来を細胞形態学的
な特徴により分類する場合に、その分類と集計を、各種
記憶媒体に記憶された画像解析ソフトウェア(プログラ
ム)をパーソナル・コンピュータBで実行することによ
り客観的に行なっている。
【0090】in vitro小核試験を染色体異常試
験の代替え試験とするには、染色体異常試験と同等の情
報を得る必要がある。しかし、従来のin vitro
小核試験では、染色体異常試験と同等の結果が得られな
いという欠点がある。すなわち、従来のin vitr
o小核試験では、染色体異常試験で陽性結果の物質、特
に数的異常誘発物質で、陰性結果が得られる場合があ
る。また、in vitro小核試験で陽性結果が得ら
れても、誘発された小核が構造異常由来か数的異常由来
かを判別できない。本実施の形態では、in vitr
o小核試験において、従来は観察対象外であった細胞も
観察分類することで、従来の欠点を補っている。
【0091】本実施の形態では、数的異常誘発物質が高
確率で多核細胞、特に二核細胞、および分裂期細胞を誘
発する現象を背景に、二核細胞、多核細胞、および分裂
期細胞の誘発された割合を同時に評価することで、数的
異常誘発性を確認することができ、in vitro小
核試験にこの情報を加えることで、染色体異常試験と同
等の結果が得られる。
【0092】すなわち、数的異常誘発物質で処理した場
合、多極分裂もしくは細胞質分裂阻害が生じ、その結
果、核分裂の異常から二核細胞や多核細胞が生じる。そ
して、二核細胞、多核細胞、および分裂細胞の誘発され
た割合が、溶媒対照群と比較して有意かつ用量依存的上
昇をする現象を利用し、小核の誘発の有無に関わらず、
数的異常誘発作用を推定できる。
【0093】このように本実施の形態では、従来の小核
試験では観察対象外とされていた細胞についても観察を
行なえるとともに、先行例(JETOC:平成10年度
報告書、pp.17、1998)では、単核細胞を観察
するときに視野に入った「その他の細胞」について計数
のみをしていたのを、「その他の細胞」を一定数観察す
ることにより、各種「その他の細胞」の出現率を算出す
ることを可能としている。さらに、「その他の細胞」の
計数に加えて、次の新しい分類・集計基準を取り入れ、
構造異常か数的異常かの識別を可能としている。
【0094】なお、本発明は上記実施の形態のみに限定
されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施でき
る。
【0095】
【実施例】細胞質分裂阻害剤であるサイトカラシンBや
加熱食品中のヘテロサイクリック・アミンの一種である
メチルAαCは、染色体異常試験では倍数体を誘発する
ため、数的異常誘発物質となる。しかし、サイトカラシ
ンBは細胞質分裂阻害作用を誘発するため、小核は誘発
しない。メチルAαCも同様の機構を示すと想定され、
従来の評価方法では小核試験の結果が陰性となる。
【0096】そこで本実施例では、メチルAαCの作用
が上記実施の形態の手法により検出できるか否かを検証
するために、ヒト由来のリンパ芽球様細胞やその他培養
細胞において倍数体を誘発するメチルAαCによって4
8時間連続処理を行ない、細胞を2段階半固定した後エ
アドライ法により標本を作製し、A.O.染色後、B励
起蛍光顕微鏡にて×200で観察を行なった。まず、小
核の有無を単核細胞1000個について観察した後、さ
らに間期および分裂期細胞を1000個観察し、それぞ
れ分類した項での細胞の出現率(/1000)を算出し
た。
【0097】図4は、メチルAαC処理細胞における形
態異常細胞の濃度に対する出現率を示す図であり、
(a)は従来法による観察結果、(b)は本実施例によ
る観察結果を示している。
【0098】図4の(a)では、典型的な小核を保有す
る細胞の出現率は上昇しておらず、従来法の小核試験で
は陰性結果が得られることが分かる。しかし図4の
(b)に示すように、本発明の手法にて種々の形態を示
す細胞を分類・集計していくと、等しい大きさの二核細
胞(上記C))が顕著に増加していることが明らかとな
る。すなわち本被験物質では、細胞質の分裂を阻害する
ことにより倍数体を誘発するという機構が推測される。
なお、図4の(b)では、上記D)(核の大きさが不均
等な二核細胞)については出現が検出されなかったた
め、図示していない。
【0099】以上の結果より、上記実施の形態による手
法は、ゲノム傷害の検出ならびにゲノム傷害誘発機構の
推定、特に従来のin vitro小核試験では機構論
的に陰性結果を示す数的異常誘発物質をも検出できる、
極めて有効な手法であると結論できる。
【0100】
【発明の効果】本発明の細胞の形態解析方法および記憶
媒体によれば、細胞の情報を形態的な特徴を通じて客観
的に解析することができ、細胞分裂の後期および終期だ
けでなく、間期にある細胞からも細胞形態を容易に分類
・集計し、かつ観察し、化学物質の特性を推測すること
ができる。
【0101】本発明では、細胞の新しい分類基準を用い
ることで、がん化に至る細胞傷害等の検出精度が向上す
る。すなわち、哺乳動物細胞を用いた変異原性試験のう
ち、in vitro小核試験において、一定の分類集
計法に基づいてゲノム変異が生じているか否かを判定
し、ゲノム変異が生じている場合には、その由来が染色
体構造異常かあるいは染色体数的異常かを識別すること
ができる。このように、一定の分類基準に従って集計さ
れた個々の細胞の形態情報を活用することにより、がん
原性の予測精度等が向上する。
【0102】すなわち本発明によれば、ゲノム変異誘発
物質の検出感度の向上と、構造異常と数的異常の識別能
の向上を図る細胞の形態解析方法および記憶媒体を提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像解析装置の構成
を示す図。
【図2】本発明の実施の形態における観察とその観察結
果の分類方法および集計方法の手順を示すフローチャー
ト。
【図3】本発明の実施の形態における分類を実現するた
めの画像解析ソフトウェアの解析処理手順を示すフロー
チャート。
【図4】本発明の実施例に係るメチルAαC処理細胞に
おける形態異常細胞の濃度に対する出現率を示す図。
【符号の説明】
A…蛍光顕微鏡 B…パーソナル・コンピュータ(PC) 1…本体 2…ステージ 3…オートフォーカス装置 4…レボルバー 5…対物レンズ 6…ダイクロイックミラー 7…フィルター変換部 8…鏡筒 9…ハーフミラー 10…CCDカメラ 11…接眼レンズ 12…光源 20…制御部 21…入力部 22…表示部 30…細胞質・核計測部 31…閾値設定部 32…ブロブ解析部 33…輪郭形状解析部 34…画像判定部 40…分類・集計部 S…標本
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡本 直明 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 4B024 AA11 AA19 CA01 CA11 GA25 4B063 QA20 QQ08 QQ12 QQ42 QQ52 QR41 QR77 QS11 QS36 QS39 QX02 5B057 AA10 BA02 BA11 BA25 DA12 DC09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】任意の細胞周期における複数の細胞につい
    て各々の形態情報を得る工程と、 前記複数の細胞を、各々の前記形態情報を基に複数の形
    態項目に分類する工程と、 分類された前記複数の細胞について、前記形態項目ごと
    に出現状態を示す分布を求める工程と、 求められた分布に基づいて、前記複数の細胞からなる細
    胞集団におけるゲノム変異の存在を判定する工程と、 を有することを特徴とする細胞の形態解析方法。
  2. 【請求項2】前記複数の細胞の分類に際し、複数の核を
    有する細胞を、二つの核を有する細胞と三つ以上の核を
    有する細胞とに分類することを特徴とする請求項1に記
    載の細胞の形態解析方法。
  3. 【請求項3】前記形態情報を得るに際し、各細胞を細胞
    核に特異的な色素で染色し、顕微鏡下で前記細胞核の形
    状を解析することを特徴とする請求項1または2に記載
    の細胞の形態解析方法。
  4. 【請求項4】前記複数の細胞として、核異常細胞と分裂
    期細胞を対象とすることを特徴とする請求項1乃至3の
    いずれかに記載の細胞の形態解析方法。
  5. 【請求項5】コンピュータで、 任意の細胞周期における複数の細胞について各々の形態
    情報を得る工程と、 前記複数の細胞を、各々の前記形態情報を基に複数の形
    態項目に分類する工程と、 を実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ
    読み取り可能な記憶媒体。
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