JP2002126617A - 塗膜形成方法及び積層塗膜 - Google Patents

塗膜形成方法及び積層塗膜

Info

Publication number
JP2002126617A
JP2002126617A JP2000326501A JP2000326501A JP2002126617A JP 2002126617 A JP2002126617 A JP 2002126617A JP 2000326501 A JP2000326501 A JP 2000326501A JP 2000326501 A JP2000326501 A JP 2000326501A JP 2002126617 A JP2002126617 A JP 2002126617A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
coating film
coating
paint
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000326501A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Yamamoto
健史 山本
Koichi Obara
浩一 小原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Paint Co Ltd filed Critical Nippon Paint Co Ltd
Priority to JP2000326501A priority Critical patent/JP2002126617A/ja
Publication of JP2002126617A publication Critical patent/JP2002126617A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 塗装工程短縮、コスト削減及び環境負荷低減
を目指す3ウエット1ベーク塗装方法において、従来の
3コート膜に匹敵する優れた外観、耐溶剤性及び耐食性
を有するだけでなく、優れた耐衝撃性(耐チッピング
性)をも有する塗膜を形成することができる塗膜形成方
法を提供する。 【解決手段】 電着塗料は、溶解性パラメーターがδa
である樹脂(a)を含む粒子Aと、溶解性パラメーター
がδbである樹脂(b)及び硬化剤を含む粒子Bとを含
有するものであり、(δb−δa)の値が1.0以上で
あり、電着塗料から形成される電着塗膜のうち、粒子A
から形成される樹脂膜の動的ガラス転移温度は、−11
0〜10℃であり、粒子Aのみで造膜して得られる塗膜
の伸び率は、200%以上であり、電着塗料から形成さ
れる電着塗膜のうち、粒子Bから形成される樹脂膜の動
的ガラス転移温度は、60〜150℃であることを特徴
とする塗膜形成方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料産業、なかで
も自動車塗装分野において有用かつ新規な塗膜形成方法
に関するものであり、更に詳細には、得られる塗膜の物
性、特に耐チッピング性に優れた積層塗膜を得ることが
できる塗膜形成方法、及び、それにより得られる積層塗
膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、塗料分野、特に自動車塗装分野に
おいて、省資源、省コスト及び環境負荷(VOC及びH
APs等)削減の課題を解決するため、塗装工程の短縮
化が強く求められている。即ち、従来の自動車塗装仕上
げ手順においては、電着塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗
膜がそれぞれの塗装後に焼付けされる3コート3ベーク
塗装方法によって行われていたが、近年、電着塗装後に
電着塗膜を焼付けた後、その上に、中塗り塗装、ベース
塗装及びクリヤー塗装の3つの塗装工程をウエットオン
ウエットで施し、これらウエット塗膜の一括した焼付け
を行う3ウエット塗装システムにより焼付け工程数を削
減し、しかも、従来の3コート3ベーク塗装方法により
得られる3コート膜と同等の外観、耐食性及び耐衝撃性
(耐チッピング性)を保持することが求められている。
【0003】上記耐衝撃性、特に走行中の自動車車体へ
の小石等の障害物の衝突によるいわゆる耐チッピング性
に関しては、従来の3コート3ベーク塗装方法では、耐
チッピング性を有する特有の中塗り塗膜を設けること等
により、耐チッピング性を確保することができたが、上
記の3ウエット塗装システムにおいて従来のベース塗料
を使用すると、得られる塗膜になじみ、反転等の不具合
が発生して外観が劣ることとなるため使用することがで
きず、3ウエット塗装システムにより得られる塗膜は、
耐衝撃性及び耐チッピング性が低いという欠点があっ
た。
【0004】特開昭62−65765号公報には、塗膜
に対する衝撃吸収能を有する樹脂層(いわゆる耐チッピ
ングプライマー層)を多層膜形成の途中、とりわけ電着
塗膜と中塗り塗膜の中間において施すことが開示されて
いる。しかしながら、そのような工程を自動車車体の塗
装工程中に更に組み入れることは、上記の省工程及び省
コストを求める市場ニーズにはそぐわない。
【0005】ところで、一般的には、自動車車体等に形
成された積層塗膜のうち、中塗り塗膜が主として上記耐
チッピング性を発揮する役割を担うものであるが、電着
塗膜に耐チッピング性を付与する技術も存在する。
【0006】特公昭56−41670公報、特表平3−
504396号公報及び特開平7−82340号公報に
は、バインダー全体の衝撃吸収性を向上させることを目
的として、予めアミン変性エポキシ系カチオン樹脂と耐
衝撃吸収能を有するエラストマー成分とを反応させて樹
脂組成物として一体化させた電着塗料組成物が開示され
ている。これらの電着塗料用樹脂組成物は、本来相溶性
に乏しいアミン変性エポキシ樹脂とエラストマー(ゴ
ム)成分とを反応させて分子レベルにおいて一体化して
いるために、塗料の貯蔵安定性は高いが、充分な耐衝撃
性(耐チッピング性)を付与する程度にエラストマー成
分の反応量を増量すると、相反事象として耐食性が低下
するために、上記3ウエット塗装に対して充分な機能発
現が困難であった。
【0007】特開平5−230402号公報、特開平7
−207196号公報及び特開平9−208865号公
報においては、エラストマー(ゴム)成分に対して親水
性(極性)又は反応性官能基を導入し、アミン変性エポ
キシ系カチオン樹脂との相溶性を向上させることによっ
て、塗料貯蔵安定性を確保することを特徴とする電着塗
料組成物が開示されている。これらの電着塗料用樹脂組
成物では、エラストマー(ゴム)成分は電着塗料のメイ
ンバインダーであるアミン変性エポキシ系カチオン樹脂
とは別個に樹脂設計しているが、上記と同様に、充分な
耐衝撃性(耐チッピング性)を付与する程度にエラスト
マー成分の配合を増量すると、相反事象として耐食性が
低下するために、前記3ウェット塗装に対して充分な機
能発現が困難であった。また、エラストマー(ゴム)成
分への極性官能基の導入は、樹脂のガラス転移温度を不
必要に上昇させる為に、弾性率が低下し、耐衝撃性(耐
チッピング性)の低下を招く等の問題点もあった。
【0008】更に、上述の技術は、いずれも電着塗膜に
対して耐衝撃性を付与するためのエラストマー(ゴム)
成分と耐食性を付与するためのアミン変性エポキシ系カ
チオン樹脂との相溶性を確保した上で、単層構造からな
る電着塗膜を形成しようとするものである。その場合、
塗料貯蔵安定性は高いものの、耐衝撃性(耐チッピング
性)と耐食性の両立化レベルが充分でなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、塗装
工程短縮、コスト削減及び環境負荷低減を目指す3ウエ
ット1ベーク塗装方法において、従来の3コート膜に匹
敵する優れた外観、耐溶剤性及び耐食性を有するだけで
なく、優れた耐衝撃性(耐チッピング性)をも有する塗
膜を形成することができる塗膜形成方法を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、被塗装物上
に、電着塗料を塗装した後、加熱硬化して電着塗膜を形
成する工程(I)、上記電着塗膜の上に、中塗り塗料を
塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程(I
I)、上記中塗り塗膜の上に、ベース塗料を塗布して、
未硬化のベース塗膜を形成する工程(III)、上記ベ
ース塗膜の上に、クリヤー塗料を塗布して、未硬化のク
リヤー塗膜を形成する工程(IV)、並びに、上記未硬
化の中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に
加熱硬化させて、積層塗膜を得る工程(V)を含む塗膜
形成方法であって、上記電着塗料は、溶解性パラメータ
ーがδaである樹脂(a)を含む粒子Aと、溶解性パラ
メーターがδbである樹脂(b)及び硬化剤を含む粒子
Bとを含有するものであり、(1)(δb−δa)の値
が1.0以上であり、(2)上記電着塗料から形成され
る電着塗膜のうち、上記粒子Aから形成される樹脂膜の
動的ガラス転移温度は、−110〜10℃であり、上記
粒子Aのみで造膜して得られる塗膜の伸び率は、200
%以上であり、(3)上記電着塗料から形成される電着
塗膜のうち、上記粒子Bから形成される樹脂膜の動的ガ
ラス転移温度は、60〜150℃であり、かつ、上記ベ
ース塗料は、樹脂固形分総量に基づく固形分比で、水酸
基含有樹脂(c)10〜70重量%、水酸基と反応しう
る硬化剤(d)10〜70重量%及び非水ディスパージ
ョン樹脂(e)5〜50重量%からなり、更に、顔料を
含有するものであることを特徴とする塗膜形成方法であ
る。以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0011】本特許出願人は、中塗り塗料、ベース塗料
及びクリヤー塗料をウエットオンウエットで塗布し、こ
れらの3層を一度に焼付け硬化させる3ウエット1ベー
ク塗装方法において、中塗り塗料を塗布し硬化した後に
ベース塗料及びクリヤー塗料を塗装する従来の3ウエッ
ト2ベーク法で得られる積層塗膜と同等以上の優れた仕
上がり外観の積層塗膜を得ることができるベース塗料に
ついて、特願2000−227307号として特許出願
した。しかし、上記ベース塗料組成物を使用して3ウエ
ット1ベーク塗装方法により得られる積層塗膜は、従来
の3ウエット2ベーク法で得られる積層塗膜と比較し
て、耐衝撃性、特に走行中の自動車車体への小石等の障
害物の衝突によるいわゆる耐チッピング性に難点があっ
た。
【0012】本発明は、防食性を持つ樹脂層と耐衝撃性
(耐チッピング性)を持つ樹脂層とからなる複層構造の
電着塗膜を形成させることによって、その上に、中塗り
塗料並びに上記特願2000−227307号のベース
塗料、次いでクリヤー塗料をウエットオンウエットで塗
装し,3層を一度に焼き付け硬化させた場合に、防食
性、耐衝撃性及び仕上がり外観を高度に両立した積層塗
膜を得ることができるものである。
【0013】本発明の塗膜形成方法は、被塗装物上に、
電着塗料を塗装した後、加熱硬化して電着塗膜を形成す
る工程(I)、上記電着塗膜の上に、中塗り塗料を塗布
して、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程(II)、上
記中塗り塗膜の上に、ベース塗料を塗布して、未硬化の
ベース塗膜を形成する工程(III)、上記ベース塗膜
の上に、クリヤー塗料を塗布して、未硬化のクリヤー塗
膜を形成する工程(IV)、並びに、上記未硬化の中塗
り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に加熱硬化
させて、積層塗膜を得る工程(V)を含むものである。
【0014】工程(I) 本発明において、上記工程(I)は、被塗装物上に、電
着塗料を塗装した後、加熱硬化して電着塗膜を形成する
ものである。電着塗料 上記電着塗料は、溶解性パラメーターがδaである樹脂
(a)を含む粒子Aと、溶解性パラメーターがδbであ
る樹脂(b)及び硬化剤を含む粒子Bとを含有するもの
であって、(1)(δb−δa)の値が1.0以上であ
り、(2)上記電着塗料から形成される電着塗膜のう
ち、上記粒子Aから形成される樹脂膜の動的ガラス転移
温度は、−110〜10℃であり、上記粒子Aのみで造
膜して得られる塗膜の伸び率は、200%以上であり、
(3)上記電着塗料から形成される電着塗膜のうち、上
記粒子Bから形成される樹脂膜の動的ガラス転移温度
は、60〜150℃であるものである。
【0015】上記電着塗料は、互いに不相溶な2種類の
樹脂成分を使用することによって、複層構造を有する電
着塗膜を形成させ、このうち、被塗装物上に接する側は
防食性を有する樹脂層とし、空気に接する側は耐衝撃性
(耐チッピング性)を有する樹脂層を形成させて、防食
性及び耐衝撃性を高度に両立することができるものであ
る。
【0016】上記電着塗料は、溶解性パラメーターがδ
aである樹脂(a)を含む粒子Aと、溶解性パラメータ
ーがδbである樹脂(b)及び硬化剤を含む粒子Bとを
含有するものである。本明細書において、粒子A及び粒
子Bとは、それぞれ別個のエマルションとして調製され
るものであり、電着塗料の調製において両方のエマルシ
ョンは混合されるが、塗料中において互いに融着するこ
となく別個の粒子として存在するものを意味する。
【0017】上記電着塗料においては、上記樹脂(a)
の溶解性パラメーターδaと上記樹脂(b)の溶解性パ
ラメーターδbとの差(δb−δa)の値が、1.0以
上である。上記(δb−δa)の値が1.0以上である
互いに不相溶又は難相溶の2種類の樹脂成分を選択する
ことによって、複層構造を持つ電着塗膜を形成すること
ができる。
【0018】一般に、樹脂間の溶解性パラメーターの差
は、0.5以上であれば相溶性を失い、塗膜が分離構造
を呈すると考えられている。しかしながら、上記電着塗
料においては、明瞭に層分離した塗膜構造を形成するこ
とが必要であるため、少なくとも1.0以上の溶解性パ
ラメーター差が必要となる。1.0未満であると、電着
塗装した場合に、明瞭に層分離した塗膜構造が形成され
ず、耐衝撃性、特に耐チッピング性と耐食性との両立化
レベルが充分ではなくなる。
【0019】上記溶解性パラメーターδとは、一般にS
P(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるもので
あって、樹脂の親水性又は疎水性の度合いを示す尺度で
あり、樹脂間の相溶性を判断する上でも重要な尺度とな
るものである。上記溶解性パラメーターは、当業者に公
知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものである
(K.W.Suh,D.H.Clarke,J.Pol
ymer.Sci.,A−1,5,1671(196
7))。
【0020】上記樹脂(a)及び上記樹脂(b)につい
ては、溶解性パラメーターの大きいもの、即ち、樹脂
(b)の方が、金属等の表面極性の高い導電性基材表面
に対する親和性が高いため、樹脂(b)を含む粒子Bか
ら形成される電着塗膜は、加熱・硬化時に金属材料等か
らなる導電性基材に接する側に形成される。一方、樹脂
(a)を含む粒子Aは、空気層側に移動して樹脂層を形
成することになる。このように双方の樹脂の溶解性パラ
メーターの差異が樹脂層の分離を引き起こす推進力にな
ると考えられる。
【0021】上記樹脂層の分離状態を確認するために
は、電着塗膜の断面をビデオマイクロスコープによって
目視観察するか、走査型電子顕微鏡(SEM観察)によ
って観察する方法が挙げられる。また、各樹脂層を構成
する樹脂成分を同定するには、例えば、全反射型フーリ
エ変換赤外光度計(FTIR−ATR)を使用すること
ができる。
【0022】上記電着塗料から形成される電着塗膜のう
ち、上記樹脂(a)を含む粒子Aから形成される樹脂膜
の動的ガラス転移温度は、−110〜10℃である。1
0℃を超えると、粒子Aから得られる塗膜の柔軟性や耐
衝撃性に劣ることとなり、−110℃未満のものは実際
には調製が困難である。好ましくは、−100〜−30
℃である。上記動的ガラス転移温度の測定は、上記電着
塗料を用いて基材上に電着塗装後、硬化させて形成した
電着塗膜を水銀を用いて剥離し、レオバイブロン(オリ
エンテック社製)やレオメトリックスダイナミックアナ
ライザー(レオメトリックス社製)等の動的粘弾性測定
装置による測定にて行うことができる。
【0023】上記樹脂(a)を含む粒子Aは、粒子Aの
みで造膜して得られる塗膜の伸び率が200%以上であ
る。200%未満では、得られる塗膜の弾性に劣ること
となる。好ましくは、500%以上である。上記伸び率
は、JIS K 6301に従って、測定することがで
きる。
【0024】上記樹脂(a)としては上記の特性を有す
る範囲の樹脂であれば特に種類は限定されるものではな
いが、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン
等の共役ジエン系単量体のホモポリマー、又は、共役ジ
エン系単量体とエチレン、プロピレン、エチリデン、ノ
ルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジ
エン、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニ
トリル、イソブチレン、(メタ)アクリル酸(エステ
ル)等の単量体とのランダム若しくはブロックコポリマ
ー;ジイソシアネートとジオールとの重付加反応によっ
て合成されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー;テ
レフタル酸ジメチル、1,4−ブタンジオール、ポリ
(テトラメチレン)グリコール等を原料としエステル交
換反応及び重縮合反応によって合成されるポリエステル
系熱可塑性エラストマー;ラクタム、ジカルボン酸、ポ
リエーテルジオールを原料とし、エステル交換及び重縮
合反応によって合成されるポリアミド系熱可塑性エラス
トマー等を挙げることができる。
【0025】上記電着塗料において、上記樹脂(a)
は、耐衝撃性レベルの発現可能性、経済性(コスト)及
び汎用性から見て、50重量%以上の共役ジエン系単量
体からなる単量体成分を重合してなるエラストマー(ゴ
ム)であることが好ましい。50重量%未満であると、
塗膜形成時において上記のガラス転移温度及び伸び率を
有する樹脂層を構成することが困難になる結果、耐衝撃
性及び耐チッピング性が低下する。より好ましくは60
重量%以上、更に好ましくは65重量%以上の共役ジエ
ン系単量体からなる単量体成分を重合してなるエラスト
マーである。
【0026】上記の樹脂(a)の分子中には、分子構造
の途中及び/又は末端に、水酸基、アミノ基、ビニル
基、カルボキシル基、ウレタン基、ウレア基等の反応性
基や極性基を含んでいてもよい。上記反応性基や極性基
は、樹脂(a)を調製する際に反応性基や極性基を有す
る単量体を含む単量体成分を共重合するか、又は、共重
合して得られた樹脂(a)に対して公知の方法により導
入することができる。
【0027】上記共重合は、ラジカル重合開始剤の存在
下で行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤として
は、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラ
ウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート等
のパーオキシド系開始剤が挙げられる。これらの開始剤
の使用量は、重合性単量体合計100重量部あたり0.
2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部が好まし
い。
【0028】上記樹脂(a)が数平均分子量1万未満の
オリゴマー(液状ゴム)である場合には、粘着性が高
く、そのままでは耐衝撃性能が低いので、耐衝撃性等の
塗膜性能を発現させるために塗膜形成時に硬化反応を行
わせしめる必要がある。この場合、ヒドロキシル価が2
0〜200の範囲となるように水酸基を含有することが
好ましい。ヒドロキシル価が20未満では塗膜の硬化不
良を招き、充分な伸び率等のゴム性能が発現しない。2
00を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する
結果、耐水性が低下することがある。更に、硬化塗膜の
硬度が上昇する結果、充分な伸び率が発現しない。
【0029】上記樹脂(a)が数平均分子量1万以上の
高分子量である場合、硬化させなくても粘着性が少な
く、充分に耐衝撃性能を示すものであれば、塗膜形成に
おいて特に硬化反応させる必要は無い。上記の場合は、
予め樹脂構造中に反応性基及び極性基を付与しておく必
要は無い。
【0030】上記樹脂(a)の分子量に関しては特に限
定されるものではないが、数平均分子量として1,00
0〜200,000の範囲のものが好ましい。1,00
0未満であると、塗膜形成時において効果的に架橋反応
せしめたとしても、伸び率が200%を超える塗膜を得
ることは困難である。200,000を超えると、樹脂
溶液の粘度が高いために得られた樹脂の乳化分散等の操
作上ハンドリングが困難なばかりか、得られた電着塗膜
の膜外観が著しく低下してしまうことがある。また、高
粘度のために、塗膜焼付け時における層分離性が困難と
なる場合がある。
【0031】上記樹脂(a)は、樹脂(b)とは別個に
水性媒体中に乳化分散することにより、粒子Aを構成す
る。上記樹脂(a)は、上記反応性基及び極性基のうち
のアミノ基等のカチオン性基をウレタン化反応等によっ
て導入した上で、そのままか、又は、中和剤によって水
性媒体中に自己乳化分散可能な形態を成してもよい。又
は、別途カチオン性乳化剤を適用して水性媒体中に乳化
分散することも可能である。その際に、必要に応じて、
例えば硬化剤の適当量を樹脂に包含させて乳化分散して
も良い。上記中和剤としては、塩酸、硝酸、リン酸等の
無機酸;蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチル
グリシン酸等の有機酸を挙げることができる。上記電着
塗料においては、樹脂(a)を含む粒子A全体の疎水性
が上がり、明瞭に層分離した複層構造を得ることができ
るため、カチオン性乳化剤を使用して樹脂(a)を水性
媒体中に乳化分散することが好ましい。
【0032】上記カチオン性乳化剤としては、カチオン
性基を含むものであれば特に限定されないが、数平均分
子量1,000〜200,000であるものが好まし
い。1,000未満であると、塗膜の耐水性等に悪影響
が出る場合がある。200,000を超えると、塗膜焼
き付けの際、系が高粘度となる為に層分離が阻害される
おそれがある。
【0033】上記樹脂(a)の乳化分散性を確保するた
めに、上記カチオン性乳化剤中のカチオン基含有量、即
ち、乳化剤中のアミノ基、アンモニウム塩基及びスルホ
ニウム塩基含有量は、アミン価相当量として30〜15
0程度であることが好ましい。30未満であると、樹脂
(a)に対する乳化分散性に劣り、150を超えると、
塗膜の耐水性等に悪影響が出る場合がある。上記カチオ
ン性乳化剤の配合量は、樹脂(a)の固形分100重量
部に対して、固形分換算で10〜50重量%の範囲が好
ましい。10重量%未満では、エマルションの分散安定
性が乏しくなり、50重量%を超えると、塗膜耐水性が
悪くなるばかりか、樹脂(a)に基づく耐衝撃性等の特
徴が充分発現され難くなる。
【0034】上記カチオン性乳化剤は、樹脂主鎖に対し
て、公知の方法による適当な反応を施してカチオン性基
を付与することによって、調製することができる。上記
カチオン性乳化剤の樹脂骨格としては特に限定されず、
例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、液状ゴム(エラ
ストマー)、ポリウレタン、ポリエーテル及びこれらを
基にした変性樹脂等を挙げることができる。
【0035】上記アクリル樹脂を樹脂骨格とする場合に
は、例えば、分子内に複数のエポシキ基を含むアクリル
共重合体とアミンとの開環付加反応によって合成するこ
とができる。即ち、グリシジル(メタ)アクリレート等
のエポキシ基を有するアクリル系単量体を他の単量体と
共重合体することによって得られたエポキシ基含有アク
リル樹脂に対して、エポキシ基の全部をアミン類との反
応によって開環し、カチオン性アクリル樹脂を得ること
ができる。
【0036】上記アミン類としては特に限定されず、例
えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミ
ン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノ
ールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノー
ルアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエ
タノールアミン酸塩等の1級、2級又は3級アミン酸塩
を挙げることができる。また、アミノエチルエタノール
アミンメチルイソブチルケチミン等のケチミンブロック
1級アミノ基含有2級アミンも使用することができる。
これらのアミン類は、全てのエポキシ環を開環させるた
めに、エポキシ環に対して少なくとも当量で反応させる
必要がある。
【0037】上記カチオン性アクリル樹脂はまた、アミ
ノ基を有するアクリル系単量体を他の単量体と共重合す
ることによって、直接合成する方法によっても得ること
ができる。上記アミノ基を有するアクリル系単量体とし
ては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ
ート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート等が挙げられる。上記エポキシ基を含むアク
リル系単量体又はアミノ基を有するアクリル系単量体と
共重合体させる他の単量体としては特に限定されず、例
えば、ヒドロキシル基含有アクリル単量体、他のアクリ
ル系単量体、非アクリル系単量体等を挙げることができ
る。上記ヒドロキシル基含有アクリル単量体は、硬化反
応性を向上することができるため、用いることが好まし
い。
【0038】上記エポキシ樹脂を樹脂骨格とするものに
ついては、樹脂中のエポキシ基に対して、上記と同様の
変性を行うことにより、カチオン性基を導入することが
できる。上記液状ゴム(エラストマー)、ポリウレタン
及びポリエーテルを樹脂骨格とするものについては、分
子末端及び/又は分子構造の途中に存在する水酸基、カ
ルボキシル基、エポキシ基等に対して、アミンのウレタ
ン化反応又は付加反応によって、カチオン性基を導入す
ることができる。
【0039】上記カチオン性乳化剤は、硬化反応性を付
与するための1級水酸基の導入や上記樹脂(a)に対す
る吸着性を向上させるためのステアリル基、ドデシル
基、オクチル基等の長鎖アルキル基の導入が行われてい
てもよい。これらは、主鎖中の官能基に対して、ヒドロ
キシ基を有する2級アミンや長鎖アルキル基を有する2
級アミンを反応させることにより行うか、又は、そのよ
うな基を有する単量体を用いて共重合することにより導
入することができる。
【0040】上記カチオン性乳化剤は、上記カチオン性
基が親水基としての役割を果たす。更に、カチオン性乳
化剤中に存在する可とう性を有する主鎖部分及びアルキ
ル基、ベンゼン構造等の疎水部分により、上記樹脂
(a)との吸着相互作用を確保することができる。上記
カチオン性乳化剤は、そのままで水性媒体中に溶解又は
分散させることができる。
【0041】上記粒子Aは、硬化剤を含むものであって
もよい。上記硬化剤としては、イソシアネート硬化剤、
メラミン硬化剤、アマイド系硬化剤等を挙げることがで
きる。好ましくは、ブロックドポリイソシアネートであ
る。上記ブロックドポリイソシアネートの原料であるポ
リイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソ
シアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメ
チルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソ
シアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4′−
メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂
環族ポリイソシアネート;4,4′−ジフェニルメタン
ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリ
レンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート及び
これらの多量体が挙げられる。これらを適当な封止剤で
ブロック化することにより、上記ブロックドポリイソシ
アネートを得ることができる。
【0042】上記封止剤の例としては、n−ブタノー
ル、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノー
ル、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メ
チルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(又は芳
香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシル
エーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシル
エーテル等のセロソルブ類;フェノール、パラーt−ブ
チルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチ
ルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイ
ソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シ
クロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラ
クタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム類が挙げられ
る。オキシム類及びラクタム類は、低温で解離するため
樹脂硬化性の観点から、好ましい。上記封止剤によるブ
ロック化率については、塗料の貯蔵安定性確保のため
に、100%にしておくことが好ましい。上記ポリイソ
シアネート及び上記封止剤は、単独で用いてもよく、2
種以上を併用してもよい。また、得られるブロックドポ
リイソシアネートは、塗膜物性や硬化度の調節等の都合
により、複数種を組み合わせて使用しても良い。
【0043】上記工程(I)において、上記樹脂(a)
を含む粒子Aからなる樹脂層を硬化させる場合、上記硬
化剤のうち少なくとも1種類の溶解性パラメーター(δ
i)は、樹脂(a)の溶解性パラメーターδa及び樹脂
(b)の溶解性パラメーターδbの中間値、即ち、δa
<δi<δbに設定することが好ましい。これによっ
て、二層分離後のそれぞれの層へのブロックドポリイソ
シアネートの分配溶解を可能とし、樹脂(a)を含む層
の硬化性の確保と樹脂(b)を含む層の同時硬化を両立
化せしめることができるため、複層膜中の層間密着性の
向上と更に上塗り塗装後の多層外観の向上をもたらすこ
とができる。更に、上記樹脂(a)を含む粒子Aからな
る樹脂層へのブロックドポリイソシアネートの分配溶解
を促進するための手段として、ブロック化されていない
イソシアネート基を一部有するブロックドポリイソシア
ネートと上記樹脂(a)の有する水酸基とを予め反応さ
せておいて、樹脂(a)を含む層と樹脂(b)を含む層
の同時硬化に伴う層分離の際に、樹脂(a)と硬化剤と
を一緒に移行させるような工夫をすることも可能であ
る。
【0044】上記ブロックドポリイソシアネートの樹脂
(a)に対する配合比は、硬化塗膜の利用目的などで必
要とされる架橋度に応じて異なるが、塗膜物性や上塗り
塗装適合性を考慮すると、樹脂(a)の固形分100重
量部に対して、固形分で10〜50重量%の範囲が好ま
しい。10重量%未満では塗膜硬化不良を招く結果、機
械的強度等の塗膜物性が低くなることがあり、また、上
塗り塗装時に塗料シンナーによって塗膜が侵される等外
観不良を招く場合がある。50重量%を超えると、逆に
過剰に硬化が進んでしまい、耐衝撃性等の塗膜物性不良
等を招くことがある。
【0045】上記電着塗料から形成される電着塗膜のう
ち、上記樹脂(b)を含む粒子Bから形成される樹脂膜
の動的ガラス転移温度は、60〜150℃である。60
℃未満では、樹脂(a)の溶解性パラメーターδaとの
差を1.0以上とすることができず、得られる塗膜の防
食性にも劣る。150℃を超えると、得られる塗膜が硬
くなりすぎて、クラック等が起こる場合がある。好まし
くは、80〜140℃である。上記動的ガラス転移温度
の測定は、上述の方法に従って行うことができる。
【0046】上記樹脂(b)は、導電性基材に対して優
れた防錆性を発現する点から、カチオン変性エポキシ樹
脂が好ましい。上記カチオン変性エポキシ樹脂は、出発
原料樹脂分子内のエポキシ環を1級アミン、2級アミン
又は3級アミン酸塩等のアミン類との反応によって開環
して製造することができる。上記出発原料樹脂は、ビス
フェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、
フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環
式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成
物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポ
キシ樹脂であることが好ましい。また他の出発原料樹脂
の例として、特開平5−306327号公報に記載され
たオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることがで
きる。このエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物又
はジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エ
タノール等の低級アルコールでブロックして得られたビ
スウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によ
って得られるものである。
【0047】上記出発原料樹脂は、アミン類によるエポ
キシ環の開環反応の前に、2官能のポリエステルポリオ
ール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2
塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができ
る。同様に、アミン類によるエポキシ環の開環反応の前
に、分子量又はアミン当量の調節、熱フロー性の改良等
を目的として、一部のエポキシ環に対して2−エチルヘ
キサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモ
ノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコー
ルモノ−2−エチルヘキシルエーテルのようなモノヒド
ロキシ化合物を付加して用いることもできる。
【0048】上記アミン類としては、上記カチオン性乳
化剤において例示したものを挙げることができる。上記
エポキシ樹脂へのカチオン性基の導入方法としては、特
開平11−209663号公報記載の製造方法に従っ
て、エポキシ環をスルホニウム塩に変性するのも好まし
い。
【0049】上記カチオン変性エポキシ樹脂の数平均分
子量は、1,500〜5,000の範囲が好ましい。
1,500未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性及び
耐食性等の物性が劣ることがある。5,000を超える
場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばか
りか、得られた樹脂の粘度が高くなり、乳化分散等の操
作上ハンドリングが困難となることがある。更に、加熱
・硬化時のフロー性が悪く塗膜外観を著しく損ねる場合
がある。
【0050】上記樹脂(b)は、ヒドロキシル価が50
〜250の範囲となるように分子設計することが好まし
い。ヒドロキシル価が50未満では塗膜の硬化不良を招
き、反対に250を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸
基が残存し、耐水性が低下することがある。
【0051】上記樹脂(b)を含む粒子Bは、硬化剤を
含有するものである。上記硬化剤としては、加熱時に樹
脂成分を硬化させることが可能であればその種類は特に
限定されないが、上記例示したものを挙げることができ
る。なかでも、電着樹脂の硬化剤として好適なブロック
ドポリイソシアネートが挙げられる。上記硬化剤の配合
量としては、上述したものを挙げることができる。
【0052】上記樹脂(b)は、上記硬化剤とともに、
そのままエマルションとして水中に乳化分散させるか、
又は、各樹脂中のアミノ基を中和できる量の中和剤で中
和処理し、カチオン化エマルションとして水中に乳化分
散させる。エマルションを調製する際に、上記例示した
カチオン性乳化剤を使用することも可能である。上記乳
化分散の方法としては、上述のものを挙げることができ
る。
【0053】上記電着塗料は、上述のようにして得られ
た粒子Aと粒子Bとを混合することによって調製するこ
とができる。上記粒子Aを構成する樹脂(a)と上記粒
子Bを構成する樹脂(b)との配合比率は、固形分に基
づく重量比で、5/95〜70/30であることが好ま
しい。上記範囲を外れると、電着塗装、焼き付け後の硬
化塗膜が複層構造とならず、配合比率の高い方の樹脂が
連続相を形成し、低い方の樹脂が分散相を形成する海島
構造(又は、ミクロドメイン構造)になってしまうこと
がある。また、層構造になった場合でも複層構造のうち
のいずれか一方の層厚が極端に薄くなるために、耐衝撃
性(耐チッピング性)又は耐食性のいずれかが著しく劣
るために好ましくない。より好ましくは10/90〜6
0/40の範囲である。
【0054】上記粒子Aから形成される樹脂層の乾燥膜
厚としては、1〜20μmが好ましい。1μm未満であ
ると、得られる塗膜の耐衝撃吸収性が期待できない。2
0μmを超えると、表面粗度が大きくなるために、塗膜
外観が低下する。より好ましくは3〜15μmである。
上記粒子Bから形成される樹脂層は、従来の電着塗膜に
要求される防錆性、塗膜外観、隠蔽性を確保するため
に、乾燥膜厚として5〜40μmであることが好まし
い。5μm未満では、塗膜耐食性が不足する。40μm
を超えると、表面粗度が大きくなるために、塗膜外観が
低下し、ワキ等の塗膜欠陥の発生が著しくなる。より好
ましくは10〜30μmである。
【0055】上記電着塗料は、通常、顔料を含むもので
ある。上記顔料としては、通常塗料に使用されるものな
らば特に限定されず、例えば、アゾキレート系顔料、不
溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔
料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、
ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリ
ノン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄鉛、
黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタ
ン、グラファイト等の無機着色顔料;炭酸カルシウム、
硫酸バリウム、カオリン、珪酸アルミ(クレー)、タル
ク等の体質顔料;リンモリブデン酸アルミ、珪酸鉛、硫
酸鉛、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート等
の防錆顔料等が挙げられる。なかでも、電着塗装後の複
層硬化膜を担う顔料としてとくに重要なものは、カーボ
ンブラック、二酸化チタン、珪酸アルミ(クレー)及び
リンモリブデン酸アルミである。上記二酸化チタンは着
色顔料として隠蔽性が高く、しかも安価であることか
ら、電着塗膜用に最適である。なお、上記顔料は単独で
使用することもできるが、目的に合わせて複数使用する
のが一般的である。上記顔料は、一般的に用いられてい
るカチオン性顔料分散樹脂で予め分散を行い、顔料分散
ペーストを調整した後、上記電着塗料の調製に際して適
当量を配合することができる。
【0056】上記顔料の配合量としては、全顔料重量
(P)に対する電着塗料中の顔料以外の全ビヒクル成分
の重量(V)の比率P/Vで、1/10〜1/3の範囲
であることが好ましい。上記顔料以外の全ビヒクル成分
とは、塗料を構成する顔料以外の全固形成分を意味す
る。1/10未満では、顔料不足により塗膜に対する水
分等の腐食要因の遮断性が過度に低下し、実用レベルで
の耐食性を発現できないことがある。1/3を超える
と、顔料過多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性
が低下して塗膜外観が著しく悪くなることがある。
【0057】上記電着塗料は、防錆剤、界面活性剤(消
泡剤)等の添加剤の適量を配合することができる。上記
防錆剤としては、近年鉛等の有害な重金属を排する市場
要求から、亜鉛、セリウム、ネオジム、プラセオジム等
の希土類金属の有機酸塩が、水溶性であり使用が容易な
ものとして挙げられる。例えば、酢酸亜鉛、酢酸セリウ
ム及び酢酸ネオジム等を、上記粒子Bを調製する際に配
合し、樹脂エマルションによる包含又は吸着の形態で適
量を添加することができる。
【0058】上記電着塗料は、固形分濃度が15〜25
重量%の範囲となるように調整することが好ましい。固
形分濃度の調節には水性媒体、例えば、水単独又は水と
親水性有機溶剤との混合物を使用して行う。また、電着
塗料中には少量の添加剤を導入しても良い。添加剤とし
ては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性
剤、塗膜表面平滑剤、及び、有機スズ化合物等の硬化促
進剤等を挙げることができる。
【0059】電着塗膜形成方法 上記工程(I)の電着塗膜形成方法は、上記電着塗料を
被塗装物上に電着塗装して電着皮膜を得る工程(1)、
及び、得られた電着皮膜を加熱して硬化させて、複層電
着塗膜を得る工程(2)からなるものである。上記工程
(1)の電着塗装は、一般的には、被塗装物である導電
性基材に陰極(カソード極)端子を接続し、上記電着塗
料の浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条
件において行うことができる。
【0060】上記工程(1)によって得られた電着皮膜
は、工程(2)における加熱によって、各樹脂固有の溶
解性パラメーターに応じて配向して層分離が起こり、粒
子Aから形成される層が空気に直接接する側であり、粒
子Bから形成される層が被塗装物に直接接する側となる
複層構造の電着硬化膜となる。上記工程(2)における
加熱は、一般的には、140〜200℃、好ましくは1
60〜180℃で10〜30分間行われる。
【0061】上記層分離性を向上するために、上記工程
(1)の後にプレヒートを施してもよい。上記プレヒー
トは、上記工程(2)における加熱と同じ温度で行うこ
とにより、上記工程(2)と連続して行うこともできる
が、本発明においては、電着塗料の硬化温度未満で加熱
することが好ましい。これによって、塗膜外観を損なわ
ずに層分離性を向上することができる。この場合の加熱
温度としては、60〜130℃が挙げられ、加熱時間
は、加熱温度等により変わるが、1〜10分程度が挙げ
られる。上記工程(1)及び工程(2)における加熱方
法は、当初から目的温度に調節した加熱設備に塗装物を
入れる方法と、塗装物を入れた後に昇温する方法があ
る。
【0062】上記被塗装物としては特に限定されず、例
えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等;これらの
金属を含む合金及び鋳造物が挙げられる。具体的には、
乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体及
び部品が挙げられる。これらの金属は、電着塗装が行わ
れる前に、予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理され
たものが特に好ましい。
【0063】上記電着塗料においては、樹脂(a)が樹
脂(b)とは別個に乳化分散されているので、樹脂
(a)と樹脂(b)との相溶性を考慮しなくとも塗料安
定性を確保することができる。特開平5−230402
号公報、特開平7−207196号公報及び特開平9−
208865号公報等に記載されているように、樹脂成
分間の相溶性を確保するために樹脂(a)にエポキシ基
等の極性官能基を導入した場合には、得られる塗膜の伸
び率や弾性率が低下する問題があるが、上記電着塗料で
はそのような変性を必要としないため、電着塗膜に高度
な耐衝撃吸収性能を付与することができる。
【0064】工程(II) 本発明において、上記工程(II)は、上記電着塗膜の
上に、中塗り塗料を塗布して、未硬化の中塗り塗膜を形
成するものである。中塗り塗料 上記中塗り塗膜は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面
平滑性を確保(外観向上)し、耐衝撃性、耐チッピング
性等の塗膜物性を付与するために形成されるものであ
る。上記中塗り塗料としては特に限定されず、例えば、
塗膜形成性樹脂、硬化剤、顔料及びその他の添加剤から
なるものを挙げることができる。
【0065】上記塗膜形成性樹脂としては特に限定され
ず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキ
ド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、こ
れらはアミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネート樹
脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。顔料分散性や
作業性の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル
樹脂とメラミン樹脂との組み合わせが好ましい。
【0066】上記中塗り塗料を水性型塗料で用いる場合
には、塗膜形成性樹脂として、米国特許第515112
5号及び第5183504号等に記載されている塗膜形
成性樹脂を用いることができる。特に、米国特許第51
83504号に記載のアクリルアミド基、水酸基及び酸
基を有するアクリル樹脂とメラミン樹脂とを組み合わせ
た塗膜形成性樹脂は仕上がり、外観性能の点で良好であ
る。
【0067】上記顔料としては特に限定されず、従来の
中塗り塗料に用いられるものが挙げられ、例えば、上記
電着塗料に含み得る顔料として上述したものを挙げるこ
とができる。上記顔料としてカーボンブラックと二酸化
チタンを主要顔料とした標準的なグレー系中塗り塗料を
用いることもできるし、上塗り塗料と明度又は色相等を
合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた
いわゆるカラー中塗り塗料を用いることもできる。
【0068】上記中塗り塗料中の顔料濃度(PWC)
は、一般的には10〜70重量%である。70重量%を
超えると塗膜外観が低下する。上記中塗り塗料は、一般
には溶液型のものが好ましく用いられ、有機溶剤型、水
性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型
のいずれでもよい。上記中塗り塗料は、塗膜形成性樹
脂、硬化剤、顔料及びその他の添加剤を、ニーダー、ロ
ール等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の方法
によって得ることができる。
【0069】このようにして得られる中塗り塗料の不揮
発分は、塗装時で40〜70重量%であることが好まし
く、より好ましくは45〜60重量%である。40重量
%未満であると、溶剤が多すぎるので、ハイソリッド系
塗料とすることができず、体積収縮率が大きくなるの
で、塗膜の仕上がり外観に劣る場合がある。70重量%
を超えると、粘性が高すぎるので塗膜外観に劣ったり、
作業性が低くなる場合がある。
【0070】本発明においては、中塗り塗料、ベース塗
料及びクリヤー塗料ともに、ハイソリッド系のものを用
いることがより好ましい。上記中塗り塗料のみならず、
ベース塗料及びクリヤー塗料もハイソリッド系のものを
用いることによって、3コート1ベーク法によって塗装
した場合に、トータルとしての体積収縮率を小さくする
ことができるので、仕上がり外観が非常に優れた塗膜を
得ることができる。
【0071】中塗り塗膜形成方法 上記中塗り塗料を、上記工程(I)で得られた電着塗膜
上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、通
称「リアクトガン」と言われるエアー静電スプレー;通
称「マイクロ・マイクロ(μμ)ベル」、「マイクロ
(μ)ベル」、「メタベル」等と言われる回転霧化式の
静電塗装機等を用いることにより行うことができる。好
ましくは、回転霧化式の静電塗装機等を用いる方法であ
る。
【0072】上記中塗り塗料の塗膜の乾燥膜厚は、用途
により変化するが、5〜40μmであることが好まし
い。40μmを超えると、鮮映性が低下したり、塗装時
にムラ、流れ等の不具合が起こることがあり、5μm未
満であると、下地が隠蔽できず、膜切れが発生したりす
る。
【0073】本発明において、工程(II)〜(IV)
で中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜をそれぞれ
未硬化で形成するとは、中塗り塗料、ベース塗料及びク
リヤー塗料をウエット・オン・ウエットでこの順番に塗
装することを意味するものである。本明細書において未
硬化とは、例えば、プレヒートを行った後の状態を含む
概念である。上記プレヒートとしては、塗布した後に、
例えば、室温〜100℃未満で1〜10分間放置又は加
熱する工程である。良好な仕上がり外観を得ることを目
的として、水性中塗り塗料を塗布した後及び水性ベース
塗料を塗布した後にプレヒートを行うことが好ましい。
【0074】工程(III) 本発明において、上記工程(III)は、上記中塗り塗
膜の上に、ベース塗料を塗布して、未硬化のベース塗膜
を形成するものである。ベース塗料 上記ベース塗料は、樹脂固形分総量に基づく固形分比
で、水酸基含有樹脂(c)10〜70重量%、水酸基と
反応しうる硬化剤(d)10〜70重量%及び非水ディ
スパージョン樹脂(e)5〜50重量%からなり、更
に、顔料を含有するものである。
【0075】上記水酸基含有樹脂(c)は、水酸基を含
有し、ベース塗料に使用される媒体に溶解するものを意
味し、例えば、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹
脂等が挙げられる。溶解性パラメーターを高く設計する
ことができる点よりアクリル樹脂を用いることが好まし
い。上記ポリエステル樹脂としては、ポリオールとポリ
カルボン酸又はその無水物からなるものを使用すること
ができる。
【0076】上記水酸基含有樹脂(c)は、水酸基価5
0〜250、酸価1〜50mgKOH/g、溶解性パラ
メーター9.5〜12であるものが好ましい。水酸基
価、酸価及び溶解性パラメーターがこれらの範囲の上限
を超えると、塗膜にした場合の耐水性が低下する。水酸
基価及び酸価が下限未満であると、塗料の硬化性が低下
し、また、溶解性パラメーターが下限未満であると、中
塗り塗料やクリヤー塗料とのなじみが起こる。
【0077】上記水酸基含有樹脂(c)の数平均分子量
は、1000〜10000が挙げられるが、1100〜
5000が好ましく、より好ましくは1200〜300
0である。上記範囲のものを使用することによって、ベ
ース塗料をハイソリッド系とすることができるので、焼
き付け硬化させた時の体積収縮が小さくなり、塗膜の仕
上がり外観を向上することができる。
【0078】上記水酸基含有樹脂(c)は、樹脂固形分
総量に対して、固形分で10〜70重量%含まれるもの
である。10重量%未満であると、得られる塗膜が脆く
なったり、また、塗膜外観が低下したりして、塗膜の基
本的性能が劣る。70重量%を超えると、非水ディスパ
ージョン樹脂(e)の配合割合が減少する結果、塗膜の
仕上がり外観が低下する。好ましくは、10〜50重量
%、より好ましくは、20〜50重量%である。
【0079】上記ベース塗料は、水酸基と反応しうる硬
化剤(d)を含むものである。上記硬化剤(d)として
は特に限定されず、例えば、メラミン樹脂及び/又はブ
ロックイソシアネート樹脂等が挙げられる。上記硬化剤
(d)は、樹脂固形分総量に対して、固形分で10〜7
0重量%含まれるものである。10重量%未満である
と、硬化が不充分となることがあり、塗膜物性に劣る。
70重量%を超えても、不経済であり、更に、塗膜の仕
上がり外観が低下する。好ましくは、20〜50重量%
である。上記水酸基含有樹脂(c)と水酸基と反応しう
る硬化剤(d)との組み合わせは特に限定されないが、
顔料分散性や作業性の点から、アクリル樹脂及び/又は
ポリエステル樹脂とメラミン樹脂とを組み合わせること
が好ましい。
【0080】上記ベース塗料は、非水ディスパージョン
樹脂(e)を含むものである。上記非水ディスパージョ
ン樹脂(e)は、溶解性パラメーターの高いコア部分と
溶解性パラメーターの低いシェル部分からなるものであ
る。コア部分が高い溶解性パラメーターを有しているの
で、塗料中の溶剤に不溶である結果、溶剤による膨潤率
をも小さくすることができ、更に、粘性付与剤として働
き、層間でなじみや反転が生じることを防いで、中塗り
塗膜やクリヤー塗膜との微妙な混じり合いにより起こる
色戻りを防止することができる。溶解性パラメーターの
低いシェル部分は、分散安定剤としての働きを担う。更
に、この非水ディスパージョン樹脂(e)は非架橋粒子
であるので、焼き付け時の最低粘度を小さくすることが
できる。また、この粒子自体も上記水酸基と反応しうる
硬化剤(d)によって架橋することができ、この場合塗
膜形成成分となり得ることから、添加量を高くすること
が可能である。従って、上記非水ディスパージョン樹脂
(e)によって、電着塗膜の下地隠蔽性が大きく、ムジ
肌を抑制することができ、鮮映性、光沢性も高い塗膜外
観を得ることができる。
【0081】上記非水ディスパージョン樹脂(e)は、
溶解性パラメーターが11〜14であり、コア部分とシ
ェル部分の溶解性パラメーターの差が0.5〜3である
ことが好ましい。溶解性パラメーターの差が0.5未満
では、塗料の不揮発分を低下させることができず、溶解
膨潤したり、また、コア部分が有する粘性制御効果が低
くなるので、電着塗膜の下地隠蔽性が小さく、更に、中
塗り塗料やクリヤー塗料との間でなじみが生じて、優れ
た仕上がり外観の塗膜を得ることができない。溶解性パ
ラメーターの差が3を超えるものは、分散が不安定とな
り、分離が起こったり、中塗り塗料とベース塗料とが混
じり合って反転やワレが生じる場合がある。好ましく
は、溶解性パラメーターの差が1〜3である。上記水酸
基含有樹脂(c)の溶解性パラメーターと上記非水ディ
スパージョン樹脂(e)の溶解性パラメーターとの関係
は、中塗り塗料やクリヤー塗料とのなじみを抑制するこ
とができる点から、非水ディスパージョン樹脂(e)の
溶解性パラメーターが高い方が好ましい。
【0082】上記非水ディスパージョン樹脂(e)とし
ては、水酸基価が100〜400、好ましくは130〜
300のものである。100未満であると、塗料の硬化
性が低下し、400を超えると、耐水性が低下する場合
がある。酸価としては、0〜200mgKOH/g、好
ましくは0〜50mgKOH/gである。200mgK
OH/gを超えると、塗膜にしたときの耐水性が低下す
る。平均粒径(D50)は、0.05〜5μm、好ましく
は0.05〜1μmである。0.05μm未満である
と、塗料の不揮発分が低下し、5μmを超えると、粘性
制御効果に劣り、外観不良となる。
【0083】上記非水ディスパージョン樹脂(e)は、
分散安定樹脂と有機溶剤との混合液中で、重合性単量体
を共重合させることにより、この混合液に不溶な非架橋
樹脂粒子として調製することができる。分散安定樹脂が
シェル部分を構成し、重合性単量体が共重合されたもの
がコア部分を構成する。
【0084】上記重合性単量体としては、官能基を有す
る単量体が好ましい。官能基を有する単量体は、得られ
る非水ディスパージョン樹脂(e)が上記水酸基と反応
しうる硬化剤(d)と反応して3次元に架橋した塗膜を
形成することができる。
【0085】上記官能基を有する重合性単量体としてそ
の代表的なものは以下のとおりである。水酸基を有する
ものとして、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエ
チル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メ
タ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸
ヒドロキシメチル、アリルアルコール、(メタ)アクリ
ル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物
等が挙げられる。
【0086】一方、酸基を有するものとしては、カルボ
キシル基、スルホン酸基等を有するものが挙げられ、カ
ルボキシル基を有するものの例としては、(メタ)アク
リル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリ
ル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレ
イン酸、フマル酸等が挙げられる。スルホン酸基を有す
るものの例としては、t−ブチルアクリルアミドスルホ
ン酸等が挙げられる。酸基を有する重合性単量体を用い
る場合には、酸基の一部はカルボキシル基であることが
好ましい。更に、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグ
リシジル基含有不飽和単量体、m−イソプロペニル−
α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、アクリル酸
イソシアナトエチル等のイソシアネート基含有不飽和単
量体等も挙げられる。
【0087】上記単量体成分をなすその他の重合性単量
体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピ
ル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリ
ル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メ
タ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エ
チルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メ
タ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリ
ル、メタクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステル;油脂肪酸とオキシラン構造を有するア
クリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーとの付加反
応物(例えば、ステアリン酸とグリシジルメタクリレー
トの付加反応物);C3 以上のアルキル基を含むオキシ
ラン化合物とアクリル酸又はメタクリル酸との付加反応
物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレ
ン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t
−ブチルスチレン;(メタ)アクリル酸ベンジル;イタ
コン酸エステル(イタコン酸ジメチル等);マレイン酸
エステル(マレイン酸ジメチル等);フマル酸エステル
(フマル酸ジメチル等);その他に、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル;メチルイソプロペニルケト
ン;酢酸ビニル;ベオバモノマー(商品名、シェル化学
社製)、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、プ
ロピオン酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブタジエ
ン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,
N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルア
ミド、ビニルピリジン等が挙げられる。上記重合性単量
体は、官能基を有するもの及びその他の単量体のなかか
ら、単独で、又は、2種以上を併用して使用することが
できる。
【0088】上記重合性単量体は、ラジカル重合開始剤
の存在下で共重合させることが好ましい。上記ラジカル
重合開始剤の種類や使用量は、樹脂(a)について上述
したものと同様である。分散安定樹脂を含有する有機溶
媒中での重合反応は、一般に60〜160℃程度の温度
範囲で約1〜15時間行うことが好ましい。
【0089】上記重合性単量体を共重合させる際に存在
させる分散安定樹脂は、非水ディスパージョン樹脂
(e)を有機溶剤中で安定に合成できるものであれば特
に限定されるものではない。具体的には、水酸基価が1
0〜250、好ましくは20〜180である。10未満
であると、硬化性、密着性、安定性等が低下し、250
を超えると、分散が不安定となる。酸価は、0〜100
mgKOH/g、好ましくは0〜50mgKOH/gで
ある。100mgKOH/gを超えると、塗膜にした場
合の耐水性が低下する。数平均分子量としては、200
0〜10000が好ましい。2000未満であると、分
散が不安定化し、10000を超えると塗料の不揮発分
が低下する。上記分散安定樹脂のTgは、30℃以下が
好ましい。30℃を超えると、塗膜外観に劣り、耐チッ
ピング性が低下したりする。
【0090】上記分散安定樹脂の製造方法としては特に
限定されず、例えば、ラジカル重合性開始剤の存在下で
ラジカル重合により得る方法、縮合反応や付加反応によ
り得る方法等が好ましいものとして挙げられる。上記分
散安定樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウ
レタン樹脂等を用いることができる。上記分散安定樹脂
を得るために用いられる単量体としては、樹脂の特性に
応じて適宜選択することができるが、上記の重合性単量
体に用いられる水酸基、酸基等の官能基を有する単量体
を用いることが好ましく、更に必要に応じてグリシジル
基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いて
もよい。官能基を有する単量体は、得られる非水ディス
パージョン樹脂(e)が硬化剤(d)と反応して3次元
に架橋した塗膜を形成することができる。
【0091】上記分散安定樹脂を得るために用いられる
単量体は、炭素数10以上の側鎖を有するものが、単量
体の全量に対して10〜50重量%含まれることが好ま
しい。10重量%未満であると、中塗り塗料やクリヤー
塗料との間でなじみが生じる。50重量%を超えると、
ベース塗料のなかで分離が起こったり、中塗り塗料とベ
ース塗料とが混じり合って反転やワレが生じる場合があ
る。
【0092】更に、上記単量体は、親水基を有するもの
が、重合性単量体の全量に対して20〜50重量%含ま
れることが好ましい。20重量%未満であると、硬化
性、密着性及び安定性に劣る場合がある。50重量%を
超えると、分散性が不安定となる場合がある。上記親水
基としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基及びエ
ーテル基が挙げられる。
【0093】上記分散安定剤と上記重合性単量体との比
率は、目的に応じて任意に選択することができるが、例
えば、両成分の合計質量に基づいて、分散安定樹脂は3
〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、重合性単量
体は97〜20重量%、好ましくは95〜40重量%で
ある。更に、有機溶媒中における分散安定剤と重合性単
量体との合計濃度は、合計質量を基準に、30〜80重
量%、好ましくは40〜60重量%である。
【0094】このようにして得られる非水ディスパージ
ョン樹脂(e)は、上記ベース塗料の樹脂固形分総量に
対して、固形分で5〜50重量%含まれるものである。
5重量%未満であるか、又は、50重量%を超えると、
得られる塗膜の外観が低下する。好ましくは、18〜4
5重量%である。
【0095】上記ベース塗料は、上記の水酸基含有樹脂
(c)、水酸基と反応しうる硬化剤(d)及び非水ディ
スパージョン樹脂(e)からなり、更に、顔料を含有す
るものである。上記ベース塗料は、上記顔料として光輝
性顔料を配合してメタリックベース塗料として用いるこ
ともできるし、光輝性顔料を配合せずにレッド、ブルー
あるいはブラック等の着色顔料及び/又は体質顔料を配
合してソリッド型ベース塗料として用いることもでき
る。
【0096】上記光輝性顔料としては特に限定されず、
例えば、金属又は合金等の無着色若しくは着色された金
属性光輝材及びその混合物、干渉マイカ粉、着色マイカ
粉、ホワイトマイカ粉、グラファイト又は無色有色偏平
顔料等を挙げることができる。分散性に優れ、透明感の
高い塗膜を形成することができるため、金属又は合金等
の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混合
物が好ましい。その金属の具体例としては、アルミニウ
ム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ
等を挙げることができる。
【0097】上記光輝性顔料の形状は特に限定されず、
更に、着色されていてもよいが、例えば平均粒径
(D50)が2〜50μmであり、厚さが0.1〜5μm
である鱗片状のものが好ましい。平均粒径10〜35μ
mの範囲のものが光輝感に優れ、より好ましい。上記光
輝性顔料のベース塗料中の顔料濃度(PWC)は、一般
に23重量%以下である。23重量%を超えると、塗膜
外観が低下する。好ましくは、0.01〜20重量%で
あり、より好ましくは、0.01〜18重量%である。
【0098】上記光輝性顔料以外の顔料としては特に限
定されず、従来のベース塗料に用いられるものが挙げら
れ、例えば、上記電着塗料に含み得るものとして上述し
た有機系着色顔料、無機着色顔料、体質顔料等を使用す
ることができる。上記顔料としては、光輝性顔料、着色
顔料及び体質顔料のなかから、1種又は2種以上を組み
合わせて用いることができる。
【0099】上記ベース塗料において、上記光輝性顔料
及びその他の全ての顔料を含めた顔料濃度(PWC)
は、顔料と樹脂固形分との合計量に対して1〜60重量
%で含まれることが好ましい。上記ベース塗料におい
て、樹脂固形分とは、水酸基含有樹脂(c)、水酸基と
反応しうる硬化剤(d)及び非水ディスパージョン樹脂
(e)の固形分の合計量を意味するものである。60重
量%を超えると、顔料が多すぎるので、塗膜の外観が低
下する。
【0100】上記ベース塗料は、従来公知の添加剤、例
えば、粘性制御剤、ワキ防止剤、希釈用溶剤等を添加す
ることができる。上記粘性制御剤としては、脂肪酸アマ
イドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノ
アマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの;酸化ポ
リエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系
のもの;有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等
の有機ベントナイト系のもの;ケイ酸アルミ、硫酸バリ
ウム等の無機顔料;顔料の形状により粘性が発現する偏
平顔料等が挙げられる。
【0101】上記ベース塗料は、水酸基含有樹脂
(c)、水酸基と反応しうる硬化剤(d)及び非水ディ
スパージョン樹脂(e)、並びに、顔料やその他の成分
から、上記中塗り塗料の調製方法と同様の方法によって
得ることができる。このようにして得られたベース塗料
の不揮発分は、塗装時で30〜60重量%であることが
好ましい。30重量%未満であると、溶剤が多すぎるの
で、ハイソリッド系のベース塗料とすることができず、
体積収縮率が大きくなるので、塗膜の仕上がり外観に劣
る場合がある。60重量%を超えると、粘性が高すぎる
ので塗膜外観に劣ったり、作業性が低くなる場合があ
る。より好ましくは、40〜50重量%である。
【0102】上記ベース塗料は、塗装後、140℃、3
0分間硬化させた場合の体積収縮率が45%以下である
ことが好ましい。45%を超えると、電着塗膜の下地隠
蔽性に劣る結果、良好な仕上がり外観の塗膜を得ること
ができない。より好ましくは、40%以下である。上記
ベース塗料について、140℃、30分間硬化させた場
合の体積収縮率は、下記式で求めることができる。 体積収縮率(%)={(100−塗着NV)/溶剤比
重}/[{(100−塗着NV)/溶剤比重}+(塗着
NV/乾燥塗膜比重)}×100 (式中、塗着NVは、塗装前の被塗装物の質量をW1、
塗料が塗装された被塗装物の質量をW2、140℃で3
0分間乾燥後の質量をW3とした場合に、 塗着NV(%)=(W3−W1)/(W2−W1)×1
00 により求められる不揮発分の値を表す。溶剤比重は、ベ
ース塗料に含まれる溶剤の比重を表す。乾燥塗膜比重
は、塗料中の不揮発分の比重であって、個々の成分の比
重とその割合から計算により求められる値である。)
【0103】ベース塗膜形成方法 上記ベース塗料の塗装方法としては特に限定されず、例
えば、中塗り塗料の塗装方法として上述した方法を使用
することができる。上記ベース塗料を自動車車体等に対
して塗装する場合には、意匠性を高めるために、エアー
静電スプレーによる多ステージ塗装、好ましくは2ステ
ージで塗装するか、又は、エアー静電スプレーと上記の
回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法によ
り行うことが好ましい。上記ベース塗料の塗膜の乾燥膜
厚は、用途により変化するが、5〜35μmであること
が好ましい。35μmを超えると、鮮映性が低下した
り、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こることがあ
り、5μm未満であると、下地が隠蔽できず、膜切れが
発生したりする。
【0104】工程(IV) 本発明において、上記工程(IV)は、上記ベース塗膜
の上に、クリヤー塗料を塗布して、未硬化のクリヤー塗
膜を形成するものである。クリヤー塗料 上記クリヤー塗膜は、ベース塗膜を保護するために、ま
た、ベース塗料として光輝性顔料を含むメタリックベー
ス塗料を用いた場合に光輝性顔料に起因するベース塗膜
の凹凸、チカチカ等を平滑にするために、形成されるも
のである。
【0105】本発明において、上記クリヤー塗料として
は特に限定されず、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤及
びその他の添加剤からなるものを挙げることができる。
上記塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、
上述した中塗り塗料における塗膜形成性樹脂と同様、ア
クリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタ
ン樹脂等が挙げられ、これらはアミノ樹脂及び/又はブ
ロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用
いられる。透明性又は耐酸エッチング性等の点から、ア
クリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂とアミノ樹
脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・エポキシ硬化系
を有するアクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂
等を用いることが好ましい。
【0106】上記クリヤー塗料としては、上述したベー
ス塗料を塗装後、未硬化の状態で塗装するため、層間の
なじみや反転、又は、タレ等の防止のため、粘性制御剤
を添加剤として含有することが好ましい。上記粘性制御
剤の添加量は、クリヤー塗料の樹脂固形分100重量部
に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.
02〜8重量部、より好ましくは0.03〜6重量部で
ある。10重量部を超えると、外観が低下し、0.1重
量部未満であると、粘性制御効果が得られず、タレ等の
不具合を起こす原因となる。上記クリヤー塗料の塗料形
態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、
エマルジョン)、非水分散型、粉体型のいずれでもよ
く、また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を用いる
ことができる。
【0107】上記クリヤー塗料の調製方法としては、中
塗り塗料において例示した方法を挙げることができる。
溶液型の場合、クリヤー塗料の不揮発分は、塗装時で4
0〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは
45〜60重量%である。40重量%未満であると、溶
剤が多すぎるので、ハイソリッド系塗料とすることがで
きず、体積収縮率が大きくなるので、塗膜の仕上がり外
観に劣る場合がある。70重量%を超えると、粘性が高
すぎるので塗膜外観に劣ったり、作業性が低くなる場合
がある。
【0108】クリヤー塗膜形成方法 上記クリヤー塗料の塗装方法としては特に限定されず、
例えば、中塗り塗料の塗装方法として上述した方法を使
用することができる。上記クリヤー塗料の塗膜の乾燥膜
厚は、用途により変化するが、10〜70μmであるこ
とが好ましい。70μmを超えると、鮮映性が低下した
り、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こることがあ
り、10μm未満であると、下地が隠蔽できず、膜切れ
が発生したりする。
【0109】工程(V) 本発明において、上記工程(V)は、上記未硬化の中塗
り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に加熱硬化
させて、積層塗膜を得るものである。上記加熱硬化させ
る温度としては、110〜180℃、好ましくは120
〜160℃にて行うことによって、高い架橋度の硬化塗
膜を得ることができる。180℃を超えると、塗膜が固
く脆くなり、110℃未満では硬化が充分ではない。硬
化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃
で10〜60分間が適当である。本発明の塗膜形成方法
によって得られる複層塗膜の膜厚は、通常30〜300
μm、好ましくは50〜250μmである。300μm
を超えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、30μ
m未満であると、膜自体の強度が低下する。
【0110】上述の工程(I)で塗装する電着塗料は、
複層塗膜を成すことで機能分担が施されているので、塗
膜性能として耐衝撃性(耐チッピング性)と防食性とが
高度に両立した電着塗膜を得ることができる。更に、上
記工程(III)で塗装するベース塗料は、非水ディス
パージョン樹脂(e)を含むものであるため、中塗り塗
料、ベース塗料及びクリア塗料を3コート1べーク法で
塗装した場合に層間でなじみ、色戻り等を防いで高外観
の積層塗膜を得ることができる。従って、上記工程
(I)で得られる電着塗膜上に、上述の工程(II)〜
(IV)により中塗り塗料、ベース塗料及びクリア塗料
をウェットオンウェットにて塗装し、上述の工程(V)
によりこれらの中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリア塗膜
を同時焼付けするいわゆる3ウェット塗装において、従
来の電着塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料をそれぞれ焼
き付け硬化する3コート3ベーク法により得られる積層
塗膜に匹敵する優れた仕上がり外観、耐食性及び耐衝撃
性(耐チッピング性)を有する積層塗膜を得ることがで
きる。更に、この3ウエット塗装により、従来一般的で
あった上記3コート3ベーク法から中塗り塗料の焼き付
け工程を省くことができるので、工程短縮、コスト削
減、エネルギー消費量削減及び環境負荷低減を目指す新
規塗装システムを構築することができる。
【0111】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細
に説明するが、本発明は以下の実施例により限定される
ものではない。なお、部及び%は、重量部及び重量%を
意味する。
【0112】調製例1(電着塗料の調製) 1−1(ブロックドポリイソシアネート硬化剤の調製) 攪拌機、窒素導入管、冷却管及び温度計を備え付けた反
応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、
メチルイソブチルケトン50部で希釈した後ブチル錫ラ
ウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチル
エチルケトオキシム17部を内容物温度が70℃を超え
ないように加えた。そして、赤外吸収スペクトルにより
イソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃
で1時間保温し、その後n−ブタノール10部で希釈す
ることによって固形分80%の目的のブロックドポリイ
ソシアネート(溶解性パラメーターδi=11.8)を
得た。
【0113】1−2(ブロックドポリイソシアネート硬
化剤の調製) 攪拌機、窒素導入管、冷却管及び温度計を備え付けた反
応容器にヘキサメチレンジイソシアネートの3量体19
9部を入れ、メチルイソブチルケトン39部で希釈した
後ブチル錫ラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温
の後、メチルエチルケトオキシム44部、エチレングリ
コールモノ2−エチルへキシルエーテル87部を内容物
温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収
スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消
滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノー
ル43部で希釈することによって固形分80%の目的の
ブロックドポリイソシアネート(溶解性パラメーターδ
i=10.7)を得た。
【0114】1−3(カチオン変性エポキシ樹脂エマル
ション[粒子B]の調製) 攪拌機、デカンター、窒素導入管、温度計及び滴下ロー
トを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビス
フェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331
J、ダウケミカル社製)2,400部とメタノール14
1部、メチルイソブチルケトン168部、ジラウリン酸
ジブチル錫0.5部を仕込み、40℃で攪拌し均一に溶
解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネ
ート(80/20重量比混合物)320部を30分間か
けて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これ
にN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の
温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながら
エポキシ当量が500になるまで120℃で3時間反応
を続けた。更に、メチルイソブチルケトン644部、ビ
スフェノールA341部、2−エチルヘキサン酸413
部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当
量が1070になるまで反応させた後、系内の温度が1
10℃になるまで冷却した。次いでジエチレントリアミ
ンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン
溶液)241部とN−メチルエタノールアミン192部
の混合物を添加し110℃で1時間反応させることによ
りカチオン変性エポキシ樹脂を得た。この樹脂の数平均
分子量は2100、水酸基価は160であった。赤外吸
収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環
(吸収波数;1750cm-1)を有していることが確認
された。また溶解性パラメーターδb=11.4であっ
た。
【0115】こうして得られたカチオン変性エポキシ樹
脂中へ、上記調製例1−1で調製したブロックドポリイ
ソシアネート硬化剤1834部(カチオン変性エポキシ
樹脂100重量部に対するブロックドポリイソシアネー
トの配合比38重量%)、酢酸90部、更に防錆剤とし
て酢酸亜鉛2部及び酢酸セリウム2部を加えた後、イオ
ン交換水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不
揮発分36%まで濃縮し、カチオン変性エポキシ樹脂を
主体とする水性エマルション(以下、E1と記す)を得
た。
【0116】1−4(樹脂(a)に対するカチオン性分
散剤の調製) 攪拌機、冷却器、デカンター、窒素導入管及び温度計を
備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン114
部を入れて50℃まで加熱後、4,4′−ジフェニルメ
タンジイソシアネート75部及び反応触媒としてジブラ
ウリン酸ジブチル錫0.1部を仕込み、窒素雰囲気下5
0℃に加熱保持した。更にR−15HT(出光石油化学
社製1,4−ポリブタジエン−α,ω―ジオール、数平
均分子量=1,200、水酸基価=103)110部を
滴下ロートから30分間かけて滴下し、更に30分間攪
拌を続行した。次に、N−メチルジエタノールアミン2
4部、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエー
テル20部及びジエチレントリアミンジケチミンのメチ
ルイソブチルケトン溶液(固形分73%)36部を仕込
み、80度で30分間反応させたところ、内容物のIR
チャートではイソシアネート基(波数;2220c
-1)の吸収が実質的に消失したことで反応終了を確認
した。得られた樹脂溶液は、固形分70%、数平均分子
量3,000、アミン価=85であった。
【0117】1−5(樹脂エマルション[粒子A]の調
製) 樹脂(a)としてR−45HT(出光石油化学社製1,
4−ポリブタジエン−α,ω―ジオール、数平均分子量
=2,800、水酸基価=47、ブタジエン含有量=9
9%、溶解性パラメーターδa=9.5)70部、上記
調製例1−2で調製したブロックドポリイソシアネート
硬化剤溶液38部、調製例1−4で調製したカチオン性
分散剤40部及び酢酸2.5部を加えた後、イオン交換
水で不揮発分32%まで希釈した後、減圧下で不揮発分
36%まで濃縮し、カチオン変性エポキシ樹脂を主体と
する水性エマルション(以下、E2と記す)を得た。
【0118】1−6(顔料分散樹脂の調製) 攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器
にエポキシ当量198のビスフェノールA型エポキシ樹
脂(商品名エポン829、シェル化学社製)710部、
ビスフェノールA289.6部を仕込んで、窒素雰囲気
下150〜160℃で1時間反応させ、次いで120℃
まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック
化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン
溶液(固形分95%)406.4部を加えた。反応混合
物を110〜120℃で1時間保持した後、エチレング
リコールモノn−ブチルエーテル1584.1部を加え
た。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。
【0119】上記反応物の調製と並行して、別の反応容
器に2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレ
ンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固
形分95%)384部にジメチルエタノールアミン10
4.6部を加えたものを80℃で1時間攪拌し、次いで
75%乳酸水141.1部を仕込み、更にエチレングリ
コールモノn−ブチルエーテル47.0部を混合、30
分攪拌し、4級化剤(固形分85%)を調製しておい
た。そしてこの4級化剤620.46部を先の反応物に
加え酸価1になるまで混合物を85から95℃に保持
し、顔料分散樹脂ワニス(樹脂固形分56%、平均分子
量2,200)を得た。
【0120】1−7(顔料分散ペーストの調製) サンドミルを用いて、調製例1−6で得られた顔料分散
樹脂を含む下記配合の顔料ペーストを調製した。 調製例1−6の顔料分散樹脂ワニス 53.6部 二酸化チタン 88.0部 カーボンブラック 2.0部 リンモリブデン酸アルミ 10.0部
【0121】1−8(電着塗料の調製) 調製例1−3で得られたカチオン変性エポキシ樹脂エマ
ルション[粒子B](E1)、調製例1−5で得られた
樹脂エマルション[粒子A](E2)、調製例1−7で
得られた顔料分散ペースト及び脱イオン水を使用して、
樹脂(a)/樹脂(b)の配合比(樹脂固形分比、ただ
し硬化剤重量は含めずに計算した)が50/50、顔料
/樹脂ビヒクル(全ビヒクル重量。硬化剤重量も含む)
の比率P/Vが1/4となるように電着塗料(固形分濃
度は全て20%)を調製した。上記電着塗料中には硬化
促進剤としてジブチル錫オキシドの乳化エマルションペ
ーストを錫量にして塗料固形分量の1.5%になるよう
に配合した。
【0122】調製例2(ベース塗料の調製) 2−1(アクリル樹脂の調製) 攪拌機、温度制御装置、還流冷却器を備えた容器に、キ
シレン82部を仕込み、次いで下記の組成の溶液: メタクリル酸 4.5部 アクリル酸エチル 26.0部 プラクセルFM−1 64.5部 (ダイセル化学工業社製水酸基含有モノマー) MSD−100 5.0部 (三井東圧化学社製メチルスチレンダイマー) アゾイソブチロニトリル 13.0部 のうち20部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を上昇
させた。還流させながら、上記混合溶液の残り93.0
部を3時間で滴下し、次いでアゾイソブチロニトリル
1.0部、キシレン12部からなる溶液を30分間で滴
下した。反応溶液をさらに1時間攪拌還流させたのち
に、減圧下で63部の溶剤を留去して反応を終了した。
固形分75%、数平均分子量2000のアクリル樹脂ワ
ニスを得た。
【0123】2−2(非水ディスパージョン樹脂の調
製) (a)分散安定樹脂の調製 攪拌機、温度制御装置、還流冷却器を備えた容器に、酢
酸ブチル90部を仕込み、次いで下記の組成の溶液: メタクリル酸メチル 38.9部 ステアリルメタクリレート 38.8部 2−ヒドキシエチルアクリレート 22.3部 アゾイソブチロニトリル 5.0部 のうち20部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を上昇
させた。110℃で上記混合溶液の残り85部を3時間
で滴下し、次いでアゾイソブチロニトリル0.5部と酢
酸ブチル10部からなる溶液を30分間で滴下した。反
応溶液をさらに2時間攪拌還流させて樹脂への変化率を
上昇させた後、反応を終了させ、固形分50%、数平均
分子量5600、溶解性パラメーター9.5のアクリル
樹脂を得た。
【0124】(b)非水ディスパージョン樹脂の調製 攪拌機、温度制御装置、冷却器を備えた容器に、酢酸ブ
チル35部を仕込み、上記の(a)分散安定樹脂の調製
で得たアクリル樹脂60部を仕込んだ。次に下記組成の
溶液: スチレン 7.0部 メタクリル酸 1.8部 メタクリル酸メチル 12.0部 エチルアクリレート 8.5部 2−ヒドキシエチルアクリレート 40.7部 アゾイソブチロニトリル 1.4部 を100℃で3時間で滴下し、次いで、アゾイソブチロ
ニトリル0.1部と酢酸ブチル1部からなる溶液を30
分間で滴下した。反応溶液をさらに1時間攪拌を続けた
ところ、固形分60%、粒子径0.18μmのエマルジ
ョンを得た。このエマルジョンを酢酸ブチルで希釈し、
粘度300cps(25℃)、粒子径0.18μmの非
水ディスパージョン樹脂含量40重量%の酢酸ブチル分
散体を得た。この非水ディスパージョン樹脂のTgは、
23℃、水酸基価は162であった。溶解性パラメータ
ーは、11.8であり、分散安定樹脂であるシェル部分
とコア部分との溶解性パラメーターの差は、2.3であ
った。
【0125】2−3(ベース塗料の調製) 2Lのベッセルに、調製例2−1で得られたアクリル樹
脂ワニスを500部、DISPERBYK161(ビッ
グケミー社製;分散助剤)を320部投入し、続いてモ
ナーク1400(キャボット社製カーボンブラック)1
0部、更に酢酸ブチル31部及びキシレン31部を順に
入れた。その後、仕込み全重量と同量のガラスビーズ
(品名GB503M、粒径1.6mm)を投入し、卓上
SGミルで3時間分散した。グラインドゲージによる分
散終了時の粒度は5μm以下であった。分散終了後、ガ
ラスビーズを濾過して、顔料ペーストとした。作製した
ペーストに固形分比が表3の通りになるように、樹脂、
非水ディスパージョン樹脂及び硬化剤を配合して、ベー
ス塗料を調製した。
【0126】調製例3(中塗り塗料及びクリヤー塗料の
調製) 中塗り塗料としては、オルガOP−5(日本ペイント社
製中塗りグレー)、クリヤー塗料としては、MAC O
−1330(日本ペイント社製)を使用した。
【0127】実施例1 調製例1で得られた電着塗料を用いて、リン酸亜鉛処理
したダル鋼板に対して焼き付け後の電着塗膜厚が30μ
mになるような電圧で電着塗装し、まず100℃で5分
間プレヒートを行った後、更に160℃で15分間焼付
けを行った。得られた電着塗膜を、表1に示す塗装条件
下、移動板に付着して移動させながら、調製例3の中塗
り塗料を塗装、10分後に調製例2で得られたベース塗
料を塗装、2.5分後に更にもう一度ベース塗料を塗装
(2ステージ塗装)、その後20分後に調製例3のクリ
ヤー塗料を塗装した。塗装した中塗り塗膜、ベース塗膜
及びクリヤー塗膜を、140℃で30分間焼き付け硬化
させ、積層塗膜を得た。
【0128】
【表1】
【0129】(評価方法) (1)電着塗料の評価 得られた電着塗料又は電着塗膜に対する各々の性状及び
性能評価結果を表2に示す。表2においては便宜上、空
気に直接接する層を「上層」、導電性基材に直接接する
層を「下層」という。 (1−1)塗料安定性 電着塗料を30℃に保持した状態で1ヶ月間攪拌した
後、その1リットルを400メッシュの金網で濾過し、
金網上の残固形物量が5mg以下であれば、良好と判断
した。
【0130】(1−2)電着塗膜の層分離状態 ビデオマイクロスコープで断面の目視観察を行った。ま
た複層電着膜の場合、各層を構成する主樹脂はFTIR
−ATR分析により同定した。 (1−3)電着塗膜をなす各層の層厚 上記ビデオマイクロスコープによる断面観察結果から測
定した。 (1−4)上層形成樹脂の伸び率 調製例1−5で得られた樹脂(a)を含むエマルション
を用いて、JIS K6301に従って別途引張試験サ
ンプルを作成して測定した。硬化条件については、上記
塗膜硬化と同条件において実施した。
【0131】(1−5)上下層のTg(ガラス転移温
度) ブリキ板上に施した複層電着膜を水銀を用いて剥離、裁
断して測定用サンプルを調製し、レオメトリックスダイ
ナミックアナライザーRDA−II試験機(米国レオメ
トリックス社製)を用いて、液体窒素により試料をいっ
たん凍結した後、1分間に2℃の昇温速度かつ周波数1
0Hzにおいてサンプルに振動を与えてその粘弾性を測
定し、貯蔵弾性率(E′)に対する損失弾性率
(E′′)の比(tanδ)を算出して、その変曲点を
求めることによって、それぞれの動的Tgを求めた。 (1−6)電着膜表面粗度 得られた塗板について、ハンディサーフE−30A(東
京精密社製)を用いて、JIS B 0601に従っ
て、表面粗度Raを測定した(カットオフ0.8m
m)。
【0132】(1−7)SDT 塗板にナイフで素地に達するクロスカットを入れ、塩水
浸漬試験(5%食塩水、55℃)を240時間行い、粘
着テープによってカット部両側から剥離した剥離部の最
大幅で示した。 (1−8)SST 塗板にナイフで素地に達するクロスカットを入れ、塩水
噴霧試験(5%食塩水)を240時間行い、クロスカッ
ト部からの発生錆の最大幅で示した。 (1−9)耐衝撃試験性 デュポン式耐衝撃試験機を用いて、常温において電着塗
膜の上50cmの高さから錘1kgを落下させて、塗膜
の割れ、剥がれの有無を調べた。
【0133】
【表2】
【0134】(2)中塗り塗料、ベース塗料及びクリヤ
ー塗料の評価 (2−1)塗着NV(不揮発分)測定方法 中塗り塗装、ベース塗装及びクリヤー塗装について別々
に操作を行って、下記方法に従って計算した。 器具:質量(w1)を測定したアルミ箔を、5cm×1
0cmの四角い穴をあけた紙で覆ったものをマスキング
テープで鉄板にはりつける。 操作:この鉄板を上記塗装時に塗板に隣接するように移
動板に付着させ、塗料塗布後、アルミ箔を鉄板から剥が
す。 NV測定:塗料の付着したアルミ箔の質量(w2)を測
定後、140℃で30分間乾燥後の質量(w3)を測定
する。 計算:下記の式より塗着NV(%)を計算する。 塗着NV(%)=(w3−w1)/(w2−w1)×1
00 結果は表3に示す。
【0135】(3)ベース塗膜の評価 ベース塗膜について、以下の評価を行った。結果を表3
に示した。 (3−1)体積収縮率計算方法 ベース塗膜の体積収縮率(%)を下記式に従って計算す
る。 体積収縮率(%)={(100−塗着NV)/溶剤比
重}/[{(100−塗着NV)/溶剤比重}+(塗着
NV/乾燥塗膜比重)}×100 溶剤比重:塗料中の溶剤組成から0.86とした。 乾燥塗膜比重:塗料組成から1.23とした。
【0136】(3−2)耐溶剤性試験方法 調製例2で得たベース塗料をブリキ板上に塗装後(20
μm)、80℃×10分乾燥してNVを上げたものを作
成し、これに、代表的な塗料溶剤であるS−150(エ
クソン社製芳香族系有機溶剤)、キシレン、エチル−2
−エトキシプロピオネート(EEP)を1滴スポット
し、30秒静置後約45度傾斜して状態を観察した。 ○:変化なし △:膨潤 ×:溶解
【0137】(4)電着塗料、中塗り塗料、ベース塗料
及びクリヤー塗料の硬化膜の評価 上述の方法により得られたこれら4つの塗料からなる積
層塗膜について下記の評価を行った。結果を表3に示
す。 (4−1)外観評価 得られた塗膜の外観を、ビッグケミー社製ウエーブスキ
ャンのSWの値で評価した。数値の小さいもの程良好な
結果が得られたことを表す。 (4−2)耐チッピング性 飛石試験機(スガ試験機社製)の試料ホルダーに、−3
0℃に冷却した塗板を石の進入角が90°になるように
取り付け、100gの7号砕石を3kg/cm2の空気
圧で噴射し、砕石を塗板に衝突させる。そのときのハガ
レ傷の程度(数、大きさ、破壊場所)を5段階で評価し
た。 1:全面にハガレ傷、素地からの剥離あり。 2:全面にハガレ傷、素地からの剥離なし。 3:一部にハガレ傷、素地からの剥離あり。 4:一部にハガレ傷、素地からの剥離なし。 5:ほとんど破壊なし。
【0138】実施例2、比較例1 表3に示す電着塗料を使用し、表3の固形分比で配合し
たベース塗料を調製し使用することのほかは、実施例1
と同様にして塗膜を形成し、測定及び評価を行った。表
3におけるU−50は、カチオン電着塗料(パワートッ
プU−50、日本ペイント社製)である。結果を表3に
示す。
【0139】
【表3】
【0140】表3中、サイメル254はメチル・ブチル
混合型メラミン樹脂(三井サイテック社製)である。
【0141】表2から、従来の電着塗料は単層塗膜を形
成するのに対し、本発明に使用する電着塗料は下層が高
Tgで上層が低Tgであり、樹脂の伸び率が高い複層電
着塗膜を形成することがわかった。表3から、本発明に
使用するベース塗料は、体積収縮率が小さいことがわか
った。表3からはまた、上記電着塗料の硬化膜の上にウ
エット・オン・ウエット方式で中塗り塗料、ベース塗料
及びクリヤー塗料を塗布し、焼き付け硬化させた場合に
は、比較例よりも耐衝撃性(耐チッピング性)に優れた
塗膜が得られた。
【0142】
【発明の効果】本発明に用いる電着塗料からは、塗膜形
成時に、耐食性を主な機能とする電着塗膜層上に、衝撃
吸収性を有する層を形成させた複層電着膜を得ることが
できる。更に、本発明に用いるベース塗料は、非水ディ
スパージョン樹脂(e)を含むものであるため、中塗り
塗料、ベース塗料及びクリア塗料を3コート1べーク法
で塗装した場合に層間でなじみ、色戻り等を防いで高外
観の積層塗膜を得ることができる。従って、上記電着膜
の上に、中塗り、ベース及び上塗りの各塗料をウェット
オンウェットにて塗装し、これらの3塗料の各層を同時
に焼き付けるいわゆる3ウェット塗装からなる本発明の
塗装方法は、従来の3コート膜に匹敵する優れた外観、
耐食性及び耐衝撃性(耐チッピング性)を有する塗膜を
提供し、かつ、塗料産業上とりわけ自動車塗装分野にお
いて、焼付け工程短縮、コスト削減及び環境負荷(VO
C及びHAPs)低減を目指す新規3ウェット塗装シス
テムを構築する上で、重要な役割を果たすものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B05D 7/24 302 B05D 7/24 302Q C09D 5/00 C09D 5/00 D 5/44 5/44 Z 109/00 109/00 201/00 201/00 C25D 13/00 308 C25D 13/00 308C 13/06 13/06 B // C09D 163/00 C09D 163/00 175/04 175/04 Fターム(参考) 4D075 AE06 BB89X CA04 DA06 DB02 DC12 EA02 EA05 EA43 EB12 EB45 EB53 EB54 EB56 4J038 CA021 CA081 CQ011 DB061 DB071 DB151 DB161 DD071 DG001 DG161 DG191 DG301 DH011 DH021 GA03 GA06 GA09 GA10 GA11 GA12 HA156 KA03 MA08 MA10 MA13 NA01 NA03 NA04 NA11 PA04 PA19 PB07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被塗装物上に、電着塗料を塗装した後、
    加熱硬化して電着塗膜を形成する工程(I)、前記電着
    塗膜の上に、中塗り塗料を塗布して、未硬化の中塗り塗
    膜を形成する工程(II)、前記中塗り塗膜の上に、ベ
    ース塗料を塗布して、未硬化のベース塗膜を形成する工
    程(III)、前記ベース塗膜の上に、クリヤー塗料を
    塗布して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程(I
    V)、並びに、前記未硬化の中塗り塗膜、ベース塗膜及
    びクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、積層塗膜を得
    る工程(V)を含む塗膜形成方法であって、前記電着塗
    料は、溶解性パラメーターがδaである樹脂(a)を含
    む粒子Aと、溶解性パラメーターがδbである樹脂
    (b)及び硬化剤を含む粒子Bとを含有するものであ
    り、(1)(δb−δa)の値が1.0以上であり、
    (2)前記電着塗料から形成される電着塗膜のうち、前
    記粒子Aから形成される樹脂膜の動的ガラス転移温度
    は、−110〜10℃であり、前記粒子Aのみで造膜し
    て得られる塗膜の伸び率は、200%以上であり、
    (3)前記電着塗料から形成される電着塗膜のうち、前
    記粒子Bから形成される樹脂膜の動的ガラス転移温度
    は、60〜150℃であり、かつ、前記ベース塗料は、
    樹脂固形分総量に基づく固形分比で、水酸基含有樹脂
    (c)10〜70重量%、水酸基と反応しうる硬化剤
    (d)10〜70重量%及び非水ディスパージョン樹脂
    (e)5〜50重量%からなり、更に、顔料を含有する
    ものであることを特徴とする塗膜形成方法。
  2. 【請求項2】 粒子Aは、更に硬化剤を含むものであっ
    て、前記硬化剤の少なくとも1つは、溶解性パラメータ
    ーδiがδb>δi>δaである請求項1記載の塗膜形
    成方法。
  3. 【請求項3】 樹脂(a)と樹脂(b)との固形分に基
    づく重量比は、5/95〜70/30である請求項1又
    は2記載の塗膜形成方法。
  4. 【請求項4】 樹脂(a)は、50重量%以上の共役ジ
    エン系単量体からなる単量体成分を重合してなる樹脂で
    ある請求項1、2又は3記載の塗膜形成方法。
  5. 【請求項5】 ベース塗料は、140℃にて30分間加
    熱した場合の体積収縮率が45%以下である請求項1、
    2、3又は4記載の塗膜形成方法。
  6. 【請求項6】 ベース塗料に含まれる顔料は、前記ベー
    ス塗料の固形分に対して1〜60重量%で含まれるもの
    である請求項1、2、3、4又は5記載の塗膜形成方
    法。
  7. 【請求項7】 ベース塗料の塗布時の不揮発分は、30
    〜60重量%である請求項1、2、3、4、5又は6記
    載の塗膜形成方法。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3、4、5、6又は7記
    載の塗膜形成方法により形成されてなる積層塗膜。
JP2000326501A 2000-10-26 2000-10-26 塗膜形成方法及び積層塗膜 Pending JP2002126617A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000326501A JP2002126617A (ja) 2000-10-26 2000-10-26 塗膜形成方法及び積層塗膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000326501A JP2002126617A (ja) 2000-10-26 2000-10-26 塗膜形成方法及び積層塗膜

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002126617A true JP2002126617A (ja) 2002-05-08

Family

ID=18803674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000326501A Pending JP2002126617A (ja) 2000-10-26 2000-10-26 塗膜形成方法及び積層塗膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002126617A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005206622A (ja) * 2004-01-20 2005-08-04 Kansai Paint Co Ltd 塗料組成物
JP2018168298A (ja) * 2017-03-30 2018-11-01 オリジン電気株式会社 樹脂組成物及び塗装構造体
US11426762B2 (en) 2015-12-31 2022-08-30 Henkel Ag & Co. Kgaa Low bake autodeposition coatings

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005206622A (ja) * 2004-01-20 2005-08-04 Kansai Paint Co Ltd 塗料組成物
US11426762B2 (en) 2015-12-31 2022-08-30 Henkel Ag & Co. Kgaa Low bake autodeposition coatings
JP2018168298A (ja) * 2017-03-30 2018-11-01 オリジン電気株式会社 樹脂組成物及び塗装構造体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4282861B2 (ja) 塗膜形成方法
US5747558A (en) Heat-curable, water-dispersible resin composition, production thereof, water-based paint composition, method of coating and coated article
US20050161330A1 (en) Process for forming multi layered coated film and multi layered coated film
US6551482B2 (en) Method of forming multilayer coating films and multilayer coating films
US6554989B2 (en) Method of forming multilayer coating films and multilayer coating films
JP2003251262A (ja) 多層塗膜形成方法および多層塗膜
JP5555569B2 (ja) 硬化電着塗膜および多層塗膜の形成方法
US20050025978A1 (en) Method of finish-coating automotive bodies and finished automotive bodies
US7005051B2 (en) Process for forming layered coated film, and layered coated film
US20090186228A1 (en) Method for forming multi-layered coating film and an mutli-layered coating film obtained thereof
JP4201923B2 (ja) 複層電着塗膜およびこの塗膜を含む多層塗膜の形成方法
JP2002126618A (ja) 多層塗膜形成方法及び多層塗膜
US6673853B2 (en) Electrodeposition coating composition
JP2002126617A (ja) 塗膜形成方法及び積層塗膜
KR20040041073A (ko) 경화된 구배형 피막 및 이를 함유하는 다층 피막을제조하는 방법
JP2002126616A (ja) 塗膜形成方法及び積層塗膜
EP1462487A1 (en) Oil-in-water emulsions
JP2012031440A (ja) 電着塗膜形成方法およびそれを利用した複層塗膜の形成方法
JP2001226628A (ja) カチオン電着塗料組成物
JP2002038104A (ja) 中塗り塗料組成物並びに塗膜形成方法及び被塗物
JP2002126621A (ja) 多層塗膜形成方法及び多層塗膜
JP4582875B2 (ja) 塗膜形成方法及び被塗物
JP2002126622A (ja) 多層塗膜形成方法及び多層塗膜
JP4564160B2 (ja) 電着塗膜形成方法及び電着塗膜
JP4523784B2 (ja) 微小樹脂粒子含有o/w型エマルションを製造する方法、内部架橋した微小樹脂粒子含有o/w型エマルション、カチオン電着塗料組成物及び塗装物

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20040317