JP2002124702A - 窒化ガリウム系半導体発光素子 - Google Patents

窒化ガリウム系半導体発光素子

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JP2002124702A
JP2002124702A JP2000317515A JP2000317515A JP2002124702A JP 2002124702 A JP2002124702 A JP 2002124702A JP 2000317515 A JP2000317515 A JP 2000317515A JP 2000317515 A JP2000317515 A JP 2000317515A JP 2002124702 A JP2002124702 A JP 2002124702A
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Yuichi Mori
裕一 毛利
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 窒化ガリウム系半導体発光素子において、歪
みに起因する素子劣化を抑制し、信頼性が良好な発光素
子を提供する。 【解決手段】 素子構造を構成するGaN層のa軸格子
歪み量εを、−0.16≦ε≦−0.01%の範囲とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】紫外光から可視光領域で発光
可能な窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ガリウム系半導体は青色や緑色のL
EDや近紫外光レーザ素子材料として用いられている。
これらの発光素子はコンタクト層としてのGaN層、発
光層としてのInGaN層、キャリアや光の閉じ込め層
としてのAlGaN層などにより構成されており、素子
構造を積層する基板としては、他の基板に比べ比較的良
好な結晶成長が可能なサファイアが用いられている。実
用化されているLEDとしては、例えば、サファイア基
板上にGaNバッファ層、n型GaN層、InGaN量
子井戸活性層、p型AlGaN層、p型GaN層を順次
積層して作成されたものがある。
【0003】基板上に半導体層を結晶成長させる工程に
おいて、サファイア基板はGaNとは格子定数や熱膨張
係数が異なるため、サファイア基板上に積層されるGa
N層は格子歪みを内包しやすい。また、AlGaN層を
素子構造中に積層する際にAlGaN層とGaN層との
格子定数差に起因してAlGaN層に引っ張り歪みが生
じるが、Al組成が比較的高い場合や膜厚を厚く形成す
る場合あるいは成長条件によってはこの引っ張り歪みが
原因と考えられるクラックが発生する場合が有る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらに加え、発光素
子の製造プロセスには素子に歪みを与える工程が数多く
存在し、素子に過度の歪み掛かる場合、素子特性や素子
寿命に悪影響を与えるものと考えられる。これは、結晶
成長時や素子の製造工程において成長面内に引っ張りの
応力が掛かる時にはAlGaN層においてGaNとAl
GaNの格子定数差により生じている引っ張り歪みがい
っそう大きくなるため、AlGaN層での結晶欠陥やク
ラックの発生、素子駆動時の欠陥の増殖や欠陥を通した
構成元素の拡散を引き起こすためである。また、結晶成
長時や素子の製造工程において成長面内に圧縮の応力が
かかる時には、GaNとAlGaNとの格子定数差によ
りAlGaN層にかかる引っ張り歪みは緩和されるため
AlGaN層の劣化に起因した特性悪化は抑制されるも
のの、圧縮応力が大きくなるとGaN層の圧縮歪みが大
きくなるため、GaN層の結晶欠陥、素子駆動時の欠陥
の増殖や欠陥を通した構成元素の拡散を引き起こすため
である。
【0005】本発明の目的は素子構造中の歪みに起因す
る素子劣化を抑制し、長時間の使用によっても光出力低
下が少なく信頼性の高い窒化ガリウム系半導体発光素子
を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の窒化ガリウム系
半導体発光素子は、サファイア基板上にn型層、発光
層、p型層を有する積層構造を含み、該積層構造には1
つ以上のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子
において、該GaN層の平均的なa軸格子歪み量εが、
−0.16≦ε≦−0.01%であることを特徴とす
る。
【0007】本発明の窒化ガリウム系半導体発光素子
は、サファイア基板上にn型層、発光層、p型層を有す
る積層構造を含み、該積層構造には1つ以上のGaN層
を含む窒化ガリウム系半導体発光素子において、波長3
65nm以上の励起光で観測される該GaN層の平均的
なE2フォノンモードのラマンシフト量Ωが、568.
1≦Ω≦570.0cm-1であることを特徴とする。
【0008】ここで、a軸格子歪み量εとは、a軸格子
定数の無歪み状態からのずれを表わしており、無歪み状
態の格子定数をa0、実際の格子定数をaとしたとき
に、ε=(a−a0)/a0と表わされる。εの符号が負
であることは、実際の格子定数aが無歪み状態の格子定
数a0よりも小さく、GaN層が圧縮歪みを受けている
ことを意味する。
【0009】GaNは365nm以上の光に対して透過
率が高いため、この励起波長で観測されるラマンスペク
トルは素子構造全層にわたる平均的な信号である。
【0010】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]LED素子構造
の断面図を図1に示す。サファイア基板101上に、A
lNバッファ層102、n型GaN層103、GaN層
105とIn0.2Ga0.8N層106とを交互に5周期積
層した多重量子井戸構造104、p型Al0.1Ga0.9
層107、p型GaN層108が順に積層されており、
n型GaN層103上にn電極109、p型GaN層1
08上にp電極110が形成されている。
【0011】この素子の製造プロセスを説明する。
【0012】結晶成長には有機金属気相成長法(MOC
VD法)を用いた。c面サファイア基板101を水素雰
囲気で1100℃で熱クリーニングした後、基板温度を
550℃に下げ、層厚50nmのAlNバッファ層10
2を堆積し、続いて基板温度を1050℃まで上げて層
厚4μmのSiドープn型GaN層103を成長した。
n型GaN103の上に発光層としてInGaN/Ga
N多重量子井戸構造発光層104を積層する際には、5
nmのGaNバリア層105を900℃で成長させ、3
nmのIn0.2Ga0.8N井戸層106を760℃で成長
し、これを同一条件で5周期積層している。これによ
り、多重量子井戸活性層104の総厚は45nmにな
る。次に基板温度900℃にて50nmのMgドープp
型Al0.1Ga0.9N層107を成長させ、続いて基板温
度を1050℃まで上げて150nmのMgドープp型
GaN層108を成長させた。なお、原料ガスとしては
III族元素の供給ガスとしてTMG(トリメチルガリ
ウム)、TMI(トリメチルインジウム)、TMA(ト
リメチルアルミニウム)を、V族元素の供給ガスとして
NH3(アンモニア)を、n型ドーパントの供給ガスと
してSiH4(シラン)を、p型ドーパントの供給ガス
としてCp2Mg(シクロペンタジエチルマグネシウ
ム)を、それぞれ使用した。
【0013】次に、上記の結晶成長工程で得られた素子
構造ウエハのサファイア基板101の裏面(半導体層が
積層されている面とは反対側の面)を研削する。この研
削工程により基板を薄くする事でチップ分割が容易にな
る。この研削工程において、基板裏面には加工歪みが発
生し、基板が150μm程度より薄くなるとこの加工歪
みの影響のため基板に反りが生じ、半導体層にはこの基
板の反りによる歪みが生じる。これを利用して、基板研
削量を変化させて歪み量の異なる素子構造ウエハを作製
した。歪み量の評価方法に付いては後述する。
【0014】以上の様にして作製された素子構造ウエハ
の半導体層の一部をSiドープn型GaN層103が露
出するまでエッチングを行ない、n型GaN層103の
表面にn型電極109を形成する。また、Mgドープp
型GaN層108の表面にp型電極110を形成する。
【0015】この後、このウエハを350μm角のサイ
ズにチップ分割し各チップをステムにマウントしワイヤ
ーボンディングにより各電極とリード端子とを接続して
LED素子とした。
【0016】ここで、研削後の基板厚さ100μmの素
子と60μmの素子に付いて特性評価した結果を説明す
る。以下の説明では、研削後の基板厚さ100μmの素
子をLED素子A、研削後の基板厚さ60μmの素子を
LED素子Bと呼ぶこととする。
【0017】素子の特性はどちらの基板厚の場合も、順
方向電流20mAにおいて発光波長470nm、出力3
mWで同一であった。また、この素子を順方向電流50
mAにて発光させ、経時による光出力の変化を調べたと
ころ、図2に示す結果が得られた。横軸は通電時間であ
り、縦軸はLED素子の光出力を表わす。LED素子A
では図2に曲線aで示すように3000時間後の光出力
低下は約5%であった。一方、LED素子Bでは300
0時間後の光出力は当初の約25%となり(曲線b)、
基板厚さが60μmと薄くなると、特性劣化が激しくな
ることがわかった。
【0018】次に図3を用いて、GaN層の歪み量の測
定方法に付いて説明する。
【0019】歪み量の評価にはラマン散乱分光法を用
い、GaN結晶のa軸に対する応力に敏感なE2フォノ
ンモードのラマンシフトを測定した。測定系の概略図を
図3に示す。励起光300の光源301として、Arイ
オンレーザーを用い、励起光300として波長488n
mの発振線を用いた。励起光300は回折格子302で
波長488nmの発振線以外の自然放出光を除去された
のち、金属顕微鏡303に導入され対物レンズ304で
試料305上に集光される。試料からの散乱光306は
再び顕微鏡を通ってレンズ307で集光され、ノッチフ
ィルター308で励起波長を除去したのち、分光器30
9へ導かれる。分光器309で分光された光はマルチチ
ャンネル検出器310で検出される。分光器・マルチチ
ャンネル検出器の制御ならびに検出信号の記録処理はパ
ーソナルコンピューター311により行なう。波数校正
は、ピーク波数が既知であるネオンランプのスペクトル
を測定する事により行なった。励起光や散乱光は測定系
を構成する装置に対して光軸を効率よく合わせるため、
反射鏡やレンズ、プリズムなどが適宜用いられる。(例
えば励起光の反射鏡312) 素子構造の全層にわたって平均的な歪み量を測定するた
めに、すべての層に励起光が到達する必要があり、励起
光波長は365nm以上とする必要がある。この波長は
GaN層の吸収端であり、365nmより短い波長の光
を用いると、GaN層での吸収が大きくなるためごく表
面に存在する層の信号しか観測できなくなる恐れが在る
からである。GaN層に比べ、AlGaN層やInGa
N層は薄いため、これらの層で励起光が吸収される影響
は非常に小さくラマン測定においては支障とならない。
また365nm以上の波長域の光に対してはサファイア
基板も透明であるため、基板裏面から励起光照射してラ
マンスペクトルを測定する事も可能である。
【0020】ここで説明した測定系は一例であり、これ
に限定されるものではない。
【0021】試料305は寿命試験の際と同じ状態で設
置される。即ち本実施例においては、350μm角のサ
イズにチップ分割されており、基板裏面がステム上に接
着された状態である。励起光の照射位置は、素子外周1
0μm及びn電極形成のためエッチングされた領域を除
いてGaN層の信号が観測可能な領域であればどこでも
良く、c面に対して概ね垂直に照射される。素子外周部
及びエッチングされた領域についての評価が好ましくな
いのは、チップ分割やエッチングプロセスにより、歪み
方が異なる場合があるからである。半導体層側をステム
に固定したいわゆるフリップチップ方式でマウントされ
ている場合には励起光に対しサファイア基板は透明であ
るため、基板側から励起光照射することができる。
【0022】素子寿命と素子歪み量との関係を調べるた
めには、寿命試験した状態と同状態でラマン測定を行な
う事が肝要である。ただし、p型GaN層108上の全
面に厚く電極や保護膜などがある場合、励起光が半導体
層まで到達し難くなりラマン測定が困難となる。このと
きは、p型GaN層上の電極や保護膜などをエッチング
除去する必要がある。このとき電極が除去されることに
より寿命試験を行なったときとは表面の歪み量が変化し
てしまう恐れがあるが、後述する通り、ラマン測定によ
り評価している歪み量は素子構造の全層にわたる平均的
な値であり、歪み量が層毎に異なっていたり積層方向に
分布がある場合でも最も厚い層(ここではn型GaNコ
ンタクト層103)の信号が最も強いため、表面のごく
一部の歪み量が変化してもラマンスペクトルへの影響は
少ない。
【0023】ラマンスペクトルの例を図4に示す。図4
には3種類のLED素子から得られたスペクトルをプロ
ットしてあり、スペクトルのピーク形状を見やすくする
ためにゼロ点をずらして表示している。○印でプロット
されたスペクトルaはLED素子Aにおいて得られたラ
マンスペクトルであり、△印でプロットされたスペクト
ルbはLED素子Bのラマンスペクトルである。E2フ
ォノンモードのラマンシフト量Ωはこのラマンスペクト
ルにガウス関数をフィッティングさせる事により決定さ
れ、フィッティングの様子はスペクトルに重ねて実線で
記している。また、フィッティングにより決定されたΩ
の値を矢印で示しており、LED素子AではΩ=56
8.5cm-1であり、LED素子BではΩ=571.0
cm-1であった。
【0024】ラマン測定において、励起光源として用い
たArイオンレーザの波長488nmの発振線は窒化ガ
リウム系半導体やサファイア基板に対する透過率が高い
ため、素子構造を構成する全ての層に到達しており、観
測されるラマンスペクトルは全ての層からの信号を含ん
だものとなっている。しかしながら、InGaN層10
6やAlGaN層107はGaN層の総膜厚に比べ非常
に薄いため、このスペクトルはGaN層からの信号とみ
なして差し支えない。また、GaN層の歪み量に積層方
向に分布がある場合や、歪み量が層毎にことなっている
場合には、観測されるスペクトルは例えば図4のスペク
トルeに示すように、ブロードなスペクトルとなるが、
この場合もE2フォノンモードのラマンシフト量Ωの決
定においてはガウス関数フィッティングを行ない、得ら
れた値をこの素子の積層方向の全層にわたる平均的な値
として用いる。
【0025】E2フォノンモードのラマンシフト量Ωか
らa軸格子歪み量εへの換算は、図5の関係を用いた。
図5はJ.Appl.Phys.82(1997)50
97に報告されている結果に基づいている。このよう
に、a軸格子歪み量εはラマンスペクトルからフィッテ
ィングにより求められたE2フォノンラマンシフト量Ω
から決定される。従ってGaN層の歪み量εとは、E2
フォノンモードラマンシフト量Ωと同様に、素子を構成
する全てのGaN層についての平均的な値を表わすもの
である。この関係をもちいてE2フォノンモードのラマ
ンシフト量Ωからa軸格子歪み量εへ換算を行なうと、
LED素子AではΩ=568.5cm-1でありε=−
0.04%、LED素子BではΩ=571.0cm-1
ありε=−0.25%、であることがわかった。
【0026】E2フォノンモードのラマンシフト量Ω、
GaN層のa軸格子歪み量ε、として本発明で議論する
値は、上記の方法で決定されている。なお、図1をもと
に説明した素子構造ではn型GaN層103が最も膜厚
の厚い層であるため、ラマンスペクトルやE2フォノン
モードのラマンシフト量Ωや歪み量εの値は、全てのG
aN層の中でもn型GaN層103の影響が最も強く現
われていると考えられる。
【0027】次に、E2モードのラマンシフト量測定に
よる歪み量の評価方法を用いて、様々な歪み量の素子に
付いて通電後の光出力低下と歪み量の関係を調べた結果
を図6に示す。横軸はGaN層E2フォノンモードのラ
マンシフト量から評価したa軸歪み量εであり、縦軸は
各素子を電流値50mAで3000時間通電した後の光
出力を通電初期値との比率で表わしている。なお、通電
初期の特性はどの素子も同一であった。
【0028】図6から明らかなように、GaN層の歪み
量εがε>−0.01%、ε<−0.16%の範囲では
3000時間通電後の光出力が著しく低下した。
【0029】この原因として、次のように考えている。
【0030】発光素子を構成する各層は、最も膜厚の厚
い層であるGaN層にa軸格子定数が概ね一致した状態
で積層(コヒーレント成長)されていると考えられるた
め、GaN層の歪み量の変化を調べることで各層の歪み
のおおよその状態を把握することができる。
【0031】一般にGaN層とAlGaN層とを含む積
層構造において、AlGaN層の層厚がGaNに比して
薄い場合には、AlGaN層とGaN層との格子定数差
によりAlGaN層に引っ張り歪みが生じる。図1の構
造においても、p型Al0.1Ga0.9N層107にはGa
N層との格子定数差により成長面内に引張り歪みがかか
っているが、GaN層の歪み量がε>−0.01%の範
囲ではεが大きくなるほどp型Al0.1Ga0.9N層10
7にかかる引っ張り歪みがいっそう大きくなるため、p
型Al0.1Ga0.9N層107はクラックが発生したり結
晶欠陥を含みやすくなり、また引っ張り歪みの大きな状
態で使用すると通電中にp型Al0.1Ga0.9N層107
中の結晶欠陥が増殖したり、欠陥を通して構成元素の拡
散が発生するため、素子特性に悪影響を与えていると考
えられる。GaN層の歪み量がε>−0.01%の範囲
で光出力が低下するのはこのためである。
【0032】一方、GaN層の歪み量がε<−0.16
%の範囲(圧縮応力が大きい場合)ではεが小さくなる
ほど(圧縮応力が大きくなるほど)GaNとAlGaN
との格子定数差によりAlGaN層に掛かる引っ張り歪
みは緩和されるため、p型Al0.1Ga0.9N層107の
劣化に起因した素子劣化は抑制されるものの、圧縮応力
が大きくなるとGaN層の圧縮歪みが大きくなるため、
GaN層(特にn型GaN層103やp型GaN層10
8)において、結晶欠陥の発生や素子駆動時の欠陥の増
殖や欠陥を通した構成元素の拡散を引き起こし、これが
素子特性や素子寿命を悪化させている原因と考えられ
る。
【0033】これに対し、GaN層のa軸歪み量が−
0.16%≦ε≦−0.01%の範囲である場合には、
発光素子を構成する各層に過度の歪みがかかることを避
けることが可能となり、光出力の経時劣化が少なく信頼
性の高い発光素子が得られている。
【0034】なお、InGaN層106には格子定数差
による圧縮歪みがかかっているが、結晶欠陥の発生する
臨界膜厚以下の非常に膜厚の小さい層であるため、素子
劣化に対する影響は少ないと考えられる。
【0035】図6には、サファイア基板の研削プロセス
(研削量や研削粗さ)を異ならせる事によって得られ
た、歪み量の異なる素子に付いての結果を示している
が、歪み量を異ならせる方法はこれに限定されるもので
はない。結晶成長時のサファイア基板の厚さ、AlNバ
ッファ層の堆積条件、n型GaN層103の厚さ、結晶
成長後の冷却スピード、不純物のドーピング条件や濃度
分布、素子の固定に用いる接着剤や接着方法、素子が固
定されるステムやサブマウント(台座)の形状などを異
ならせることによっても素子構造中のGaN層の歪み量
は変化する。このように歪み量を決定する要因は多種多
様であり、それぞれが複合して素子の歪み量が決まって
いるため、一つの要因だけで歪み量が一意に決定される
ものではないが、歪み量に対する光出力低下の特性は図
6と同様の結果を示すことが分かっている。
【0036】なお、図1において、AlNバッファ層1
02の材料はその上に窒化ガリウム系半導体層をエピタ
キシャル成長させることができるものであれば、AlN
にこだわらず他の材料、例えばGaNやAlGaN、I
nGaNなどのを用いてもよい。
【0037】また、多重量子井戸構造発光層104は5
周期としたが、量子井戸の数は6以上または4以下でも
よく、単一量子井戸を発光層としてもよい。量子井戸1
06の幅は3nm、障壁層105の幅を5nmとした
が、これらの値が異なっていても構わない。
【0038】障壁層105はGaNとしたが、Inを含
むInGaN層としてもよい。また、量子井戸層106
のIn組成は0.2としたが、この値は所望の発光波長
を得るために適宜変更される。また、障壁層、量子井戸
はInGaN3元混晶に微量に他の元素、例えばAsや
Pなどを含んだ4元以上の混晶半導体でもよい。この場
合にも混晶組成は所望の発光波長となるように適宜変更
される。
【0039】また、素子構造の結晶成長をMOCVD法
により行なった場合をしめしているが、GaNをエピタ
キシャル成長できる成長法であればよく、MBE法(分
子線エピタキシャル成長法)やハライドVPE(化学気
相成長法)等の他の気相成長方法を用いる事ができる。 [実施の形態2]図7に半導体レーザ素子の断面図を示
す。サファイア基板701上にGaNバッファ層70
2、n型GaNコンタクト層703、n型Al0.1Ga
0.9Nクラッド層704、n型GaNガイド層705、
InGaN/GaN多重量子井戸構造活性層708、A
0.2Ga0.8N蒸発防止層709、p型GaNガイド層
710、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711、p型
GaNコンタクト層712、が積層され、p電極713
とn電極714が設けられている。715はSiO2
縁膜である。多重量子井戸構造活性層708は、GaN
障壁層706とIn0.1Ga0.9N層量子井戸層707と
を積層することにより構成されている。
【0040】この素子の製造プロセスを説明する。
【0041】結晶成長には有機金属気相成長法(MOC
VD法)を用いた。c面サファイア基板701を水素雰
囲気で1100℃で熱クリーニングした後、基板温度を
600℃に下げ、層厚35nmのGaNバッファ層70
2を堆積し、続いて基板温度を1050℃まで上昇させ
て層厚4μmのn型GaNコンタクト層703、層厚
0.7μmのn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704、
層厚50nmのn型GaNガイド層705を続けて成長
した。
【0042】多重量子井戸構造活性層708の成長の際
には、基板温度を800℃に下げ、層厚5nmのIn
0.1Ga0.9N量子井戸層707、層厚5nmのGaN障
壁層706、層厚5nmのIn0.1Ga0.9N量子井戸層
707、層厚5nmのGaN障壁層706、層厚5nm
のIn0.1Ga0.9N量子井戸層707、を順次成長し
た。続いて基板温度は800℃に保ったまま、層厚10
nmのAl0.2Ga0.8N蒸発防止層709を成長した。
次に再び成長温度を1050℃に上昇して、層厚50n
mのp型GaNガイド層710、層厚0.7μmのp型
Al0.1Ga0.9Nクラッド層711、層厚0.2μmの
p型GaNコンタクト層712を成長した。
【0043】なお、原料ガスとしてはIII族元素の供
給ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)、TMI
(トリメチルインジウム)、TMA(トリメチルアルミ
ニウム)を、V族元素の供給ガスとしてNH3(アンモ
ニア)を、n型ドーパントの供給ガスとしてSiH
4(シラン)を、p型ドーパントの供給ガスとしてCp2
Mg(シクロペンタジエチルマグネシウム)を、それぞ
れ使用した。
【0044】ここで、結晶成長プロセスは同一である
が、最上層のp型GaNコンタクト層712を1050
℃で成長した後600℃までの冷却スピードの異なるウ
エハを作製した。後述するが、成長後の冷却スピードを
異ならせる事によってGaN層の歪み量の異なる素子が
得られる。
【0045】こうして得られた、結晶成長後の冷却スピ
ードが異なる素子構造ウエハそれぞれについて、フォト
リソグラフィーとドライエッチング技術を用いて、20
0μm幅のストライプ状にp型GaNコンタクト層71
2の最表面からn型GaNコンタクト層703が露出す
るまでエッチングした。次に同様にフォトリソグラフィ
ーとドライエッチング技術を用いて、残ったp型GaN
コンタクト層712の最表面に、5μm幅のストライプ
状にリッジ構造を形成するようにp型GaNコンタクト
層712とp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711をエ
ッチングする。続いてリッジの側面とリッジ以外のp型
層表面に厚さ200μmのSiO2絶縁膜715を形成
する。このSiO2絶縁膜715とp型GaNコンタク
ト層712の表面にニッケルと金からなるp電極713
を形成し、エッチングにより露出したn型GaNコンタ
クト層703の表面にチタンとアルミニウムからなるn
電極714を形成した。
【0046】この後、このウエハをリッジストライプに
垂直な方向にへき開してレーザの共振器端面を形成し、
さらに個々のチップに分割した。各チップをステムにマ
ウントしワイヤーボンディングにより各電極とリード端
子とを接続してレーザ素子を完成した。
【0047】ここで、結晶成長後の冷却スピードを−5
0℃/分として作製された素子と、−300℃/分とし
て作製された素子と、について特性評価した結果を説明
する。以下の説明では、結晶成長後の冷却スピードを−
50℃/分として作製された素子をLD素子C、結晶成
長後の冷却スピードを−300℃/分として作製された
素子をLD素子Dと呼ぶこととする。これら二つのLD
素子の特性は、室温にて発振波長410nm、発振閾値
電流40mAで連続発振し、結晶成長後の冷却スピード
に依らず同一であった。
【0048】図8はレーザ素子の寿命試験の結果を示す
グラフであり、出力3mWにてAPC駆動(autom
atic power control)したときの駆
動電流の変化を表わしている。曲線cはLD素子Cに付
いての結果であり、曲線dはLD素子Dに付いての結果
である。素子寿命として駆動電流が通電初期値の1.2
倍となるまでの時間を評価すると、LD素子cでは15
000時間以上、LD素子Dでは約3000時間であっ
た。
【0049】次に、図8に寿命試験の結果を示した各素
子に付いて、GaN層の歪み量を調べるためにラマン測
定を行なった。測定系は実施の形態1に記述したものと
同一である。ラマン測定の際、素子は寿命試験を行なっ
たときと同じ状態とした。即ち、チップ分割されてお
り、ステム上に接着されている。
【0050】実施の形態1に説明した手順でGaN層の
E2フォノンモードラマンシフト量Ω、a軸格子歪み量
εを求めたところ、LD素子CではΩ=568.5cm
-1,ε=−0.04%であり、LD素子DではΩ=57
0.7cm-1,ε=−0.22%であった。このように
GaN層の歪み量によりAPC駆動時の素子寿命が異な
り、歪み量が−0.04%(E2フォノンモードのラマ
ンシフト量が568.5cm-1)の素子ではAPC駆動
時の駆動電流の増加が抑制でき素子寿命が改善される事
が確認できた。
【0051】電極が厚く形成されている場合は励起光が
透過できなくなりラマン測定が困難になる。その際は電
極部分をエッチング除去する必要がある。このとき電極
が除去される事により寿命試験を行なったときとは表面
の歪み量が変化してしまう恐れがあるが、前述したよう
にラマン測定により評価している歪み量はすべてのGa
N層についての平均的な値である。歪み量が層毎に異な
ったり積層方向に分布がある場合でも最も厚いn型Ga
Nコンタクト層703の信号がもっとも強く、表面のご
く一部の歪み量が変化してもラマンスペクトルへの影響
は少なくE2フォノンモードのラマンシフト量やa軸格
子歪み量の評価には影響はない。
【0052】次に、様々な歪み量の素子に付いて、Ga
N層の歪み量と素子寿命の関係を調べた。歪み量の異な
る素子は、結晶成長後の冷却スピードを異ならせること
によって作製した。図9に結晶成長後の冷却スピードと
素子の歪み量との関係を示す。図7に示した素子の特性
は●印で示されている。○印のプロットについては、
[実施の形態3]で説明する。この結果から冷却スピード
が速いほど素子には大きな歪みが内包されることが分か
る。なお、冷却スピードとは結晶成長プロセスにおいて
最上層のp型GaNコンタクト層712を1050℃で
成長した後600℃までの冷却に関わる速度であるが、
必ずしも厳密な値を表すものではない。たとえば、冷却
スピード−150℃/分とは、1050℃から600℃
までの冷却に3分を要したことを表しているが、必ずし
も常に−150℃/分の一定値に制御されているわけで
はなく、冷却の初期と終期で値が若干異なることもあり
得る。
【0053】このようにして作製された歪みの量の異な
る素子に付いて、GaN層の歪み量εと素子寿命との関
係を調べた結果が図10である。図7に示した素子の特
性は●印で示されている。○印のプロットに付いては、
[実施の形態3]で説明する。横軸はGaN層E2フォノ
ンモードのラマンシフト量から評価したa軸格子歪み量
であり、ラマンシフト量から歪み量への換算には図5の
関係を用いた。縦軸は素子寿命であり、出力3mWでA
PC駆動したときに駆動電流が通電初期値の1.2倍と
なるまでの時間を評価している。なお、通電初期の特性
はどの素子も同一であった。
【0054】図10に示す結果から明らかなように、G
aN層の歪みεが、ε>−0.01%、ε<−0.16
%の範囲では素子寿命が非常に短い。この原因として次
のように考えている。ε>−0.01%の範囲ではεが
大きくなるほどAlGaN層の引っ張り歪みが大きくな
るため、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層711やn型
Al0.1Ga0.9Nクラッド層704中に結晶欠陥が発生
しやすく、また通電中に結晶欠陥の増殖や欠陥を通した
構成元素の拡散が発生しやすい事が特性悪化の原因とな
っているためである。ε<−0.16%の範囲ではp型
Al0.1Ga0.9Nクラッド層711やn型Al0.1Ga
0.9Nクラッド層704にかかる引っ張り歪みは減少さ
れるものの、εが小さくなるほどGaN層の圧縮歪みが
非常に大きくなるため結晶欠陥を多く含む事また結晶性
が悪いため通電中に欠陥が増殖して素子故障の原因とな
っているためである。
【0055】これに対して、−0.16%≦ε≦−0.
01%の範囲では素子を構成する各層に過度の歪みがか
かるのを避ける事ができ、格子歪みによる結晶欠陥の発
生や通電時の欠陥の増殖を抑制する事ができるため、寿
命が長く信頼性の高い素子が得られている。
【0056】図10には、素子構造の結晶性長後の冷却
スピードを異ならせることによって得られた、歪み量の
異なる素子についての結果を示しているが、歪み量を異
ならせる方法はこれに限定されるものではない。結晶成
長時のサファイア基板の厚さ、サファイア基板の研削プ
ロセス(研削量や研削粗さ)、GaNバッファ層702
の堆積条件、n型GaNコンタクト層703の厚さ、不
純物のドーピング条件や濃度分布、素子の固定に用いる
接着剤や接着方法、素子が固定されるステムやサブマウ
ント(台座)の形状などを異ならせることによっても素
子構造中のGaN層の歪み量は変化する。このように歪
み量を決める要因は多種多様であり、それぞれが複合し
て素子の歪み量が決まっているため、一つの要因だけで
歪み量が一意に決定されるものではないが、歪み量に対
する光出力低下の特性は図10と同様の結果を示すこと
がわかった。
【0057】なお、図7において、バッファ層702の
材料はその上に窒化ガリウム系半導体層をエピタキシャ
ル成長させることができるものであれば、GaNにこだ
わらず他の材料、例えばAlNやAlGaN、InGa
N等を用いてもよい。
【0058】n型クラッド層704およびp型クラッド
層711はAl0.1Ga0.9N以外のAl組成を持つAl
GaN混晶であってもよい。この場合、Al組成を大き
くすると活性層とクラッド層との禁制帯幅の差および屈
折率差が大きくなり、キャリアや光が活性層に有効に閉
じ込められて発振閾値電流の低減や温度特性の向上が図
れる。またキャリアや光の閉じ込めが保持される範囲で
Al組成を小さくして行くとクラッド層におけるキャリ
アの移動度が大きくなるため半導体レーザ素子の素子抵
抗を小さくできる。n型クラッド層とp型クラッド層と
で混晶組成が同一でなくても構わない。
【0059】また、多重量子井戸構造発光層708では
3層の量子井戸層を積層したが、量子井戸の数は4層以
上でもよく2層以下でもよい。単一量子井戸構造とする
事もできる。量子井戸707の幅は5nm、障壁層70
6の幅を5nmとしたが、これらの値が異なっていても
よい。
【0060】障壁層706はGaNとしたが、Inを含
むInGaN層としてもよい。また、量子井戸層707
のIn組成は0.1としたが、この値は所望の発光波長
を得るために適宜変更される。また、障壁層、量子井戸
はInGaN3元混晶に微量に他の元素、例えばAsや
Pなどを含んだ4元以上の混晶半導体でもよい。
【0061】また、素子構造の結晶成長をMOCVD法
により行なった場合をしめしているが、GaNをエピタ
キシャル成長できる成長法であればよく、MBE法(分
子線エピタキシャル成長法)やハライドVPE(化学気
相成長法)等の他の気相成長方法を用いる事ができる。 [実施の形態3]図7に断面図を示した半導体レーザ素
子と同様の構造の発光素子を作製した。ただし、図7と
異なる点はサファイア基板701の代わりに擬似GaN
基板を用いていることである。この擬似GaN基板の作
製工程を図11を基に説明する。
【0062】サファイア基板1101上にGaNバッフ
ァ層1102を堆積後、GaN層1103を2μm成長
し(図11(a1))、フォトリソグラフィーとエッチ
ング工程によりGaN層1103にストライプ状の凸部
を形成した(図11(a2))。この凸部は、高さ1μ
m、幅5μmであり、隣接する凸部間の間隔は5μmで
ある。この上にGaN層1104を凸部上の厚さが1μ
mとなるように成長した。このとき凸部と凸部の間の領
域(凹部)では、凸部の側壁から横方向(基板に平行な
方向)への成長が優先的に生じるため、凹部は完全に埋
め込まれ、基板表面は凹凸が無くなり平坦化している
(図11(a3))。
【0063】擬似GaN基板を用いて作製された素子で
は、転位密度が106cm-2程度であり、擬似GaN基
板を用いないで素子を作製した場合に比べ3桁程度低減
でき、発光強度が増大し、発振閾値が低減でき、長寿命
の素子が得られるという効果がある。
【0064】擬似GaN基板の構造や作製方法は上記に
限定されるものではなく、低転位密度のGaN膜が得ら
れる構成ならば凸部の高さや幅、隣接する凸部間の間隔
が上記の値と異なっていても良い。図11(a2)で
は、GaN層1103のGaN層の途中までしかエッチ
ングしていないが、バッファ層1102あるいはサファ
イア基板1101までエッチングしても構わない。また
GaN層1104を基板表面が平坦化するまで成長して
いるが、凹凸が残っている状態でも擬似GaN基板とす
ることができる。
【0065】また、擬似GaN基板は図11(b)に示
す構造でも良い。図11(b)の擬似GaN基板はサフ
ァイア基板1105、バッファ層1106、GaN層1
107、成長抑制膜1108、GaN層1109から構
成されている。成長抑制膜1108とは窒化物半導体膜
が直接成長抑制膜上に結晶成長しない膜のことを指す。
成長抑制膜の上部領域は側面(成長抑制膜を形成してい
ない領域)からの横方向成長により平坦化され低転位密
度のGaN膜が得られる。成長抑制膜1108として
は、SiO2膜、SiNx膜、TiO2膜、Al23膜な
どの誘電体膜、またはタングステン膜等の金属膜、また
は空洞などが用いられる。
【0066】図7において擬似GaN基板を用いる場
合、バッファ層702は形成しなくても良い。しかしな
がら、擬似GaN基板の表面モフォロジーが良好でない
場合には、バッファ層を挿入した方が表面モフォロジー
が改善されるため好ましい。
【0067】こうして作製した擬似GaN基板を用いて
素子構造ウェハを作製し、実施の形態2で説明したのと
同様に、結晶成長後の冷却スピードを異ならせる方法
で、歪み量の異なる素子を作製した。擬似GaN基板上
に作製した場合の冷却スピードと歪み量との関係を図9
に○印でプロットした。また、擬似GaN基板上に作製
した場合の歪み量と素子寿命との関係を図10に○印で
プロットした。擬似GaN基板上を用いない場合に比べ
素子寿命は同程度であるか、若干改善されているが、特
に歪み量εが−0.16%≦ε≦−0.01%の範囲で
良好な特性が得られ、歪み量εが、ε>−0.01%、
ε<−0.16%の範囲では、素子寿命は著しく低下し
ていることが分かった。この理由は実施の形態2で説明
したのと同じであり、ε>−0.01%、ε<−0.1
6%の範囲では素子を構成する各層に過度の歪みが掛か
るためであると考えられる。
【0068】図10には素子構造の結晶成長後の冷却ス
ピードを異ならせることによって得られた、歪み量の異
なる素子についての結果を示しているが、歪み量を変化
させる方法はこれに限定されるものではない。結晶成長
時のサファイア基板の厚さ、サファイア基板の研削プロ
セス(研削量や研削粗さ)、バッファ層702の堆積条
件、n型GaNコンタクト層703の厚さ、不純物のド
ーピング条件や濃度分布、素子の固定に用いる接着剤や
接着方法、素子が固定されるステムやサブマウント(台
座)の形状などを異ならせることによっても素子構造中
のGaN層の歪み量は変化する。また、擬似GaN基板
を用いる場合には、その構造や作製条件(GaN層の凹
凸構造のストライプ幅・間隔、成長抑制膜の有無、擬似
GaN基板中のGaN層の厚さ、など)によっても、素
子の歪み量は変化する。このように歪み量を決定する要
因は多種多様であり、それぞれが複合して素子の歪み量
が決まっているため、一つの要因だけで歪み量が一意に
決定されるものではない。例えば、図9において、擬似
GaN基板を用いる場合と用いない場合について、冷却
スピードと歪み量の関係をプロットしているが、冷却ス
ピードを同じにしても、基板の違いにより歪み量は異な
った値となっている。しかし、図10に示されるよう
に、歪み量εに対する光出力低下の特性において、−
0.16%≦ε≦−0.01%の範囲で良好な特性が得
られるという結果に差異は認められなかった。 [実施の形態4]図7に断面図を示した半導体レーザ素
子と同様の構造の発光素子を作製した。ただし、図7と
異なる点は、多重量子井戸活性層708において、In
GaN量子井戸層707の代わりにGaAsx1-x層を
用いていることである。
【0069】実施の形態1、2で説明したのと同様の方
法で、歪み量の異なる素子を作製し、歪み量と素子寿命
との関係を調べた結果を図12に示す。GaN層のa軸
格子歪み量εがε>−0.01%、ε<−0.16%の
範囲では、素子寿命が非常に短い。この理由は、ε<−
0.16%の範囲ではGaN層に掛かる圧縮歪みが非常
に大きくなることが素子劣化の原因となっており、ε>
−0.01%の範囲ではp型Al0.1Ga0.9Nクラッド
層711やn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層704に掛
かる引っ張り歪みが非常に大きくなる事が素子劣化の原
因となっている、と考えられる。これに対し、GaN層
のa軸格子歪み量εとE2フォノンモードラマンシフト
量Ωが、−0.16%≦ε≦−0.01%、568.1
≦Ω≦570.0cm-1の範囲である素子では、素子を
構成する各層に過度の歪みがかかるのを避ける事ができ
格子歪みによる結晶欠陥の発生や通電時の欠陥の増殖を
抑制する事ができるため、寿命が10000時間以上と
長く、信頼性の高い素子が得られている。
【0070】なお、本実施例の構造においてGaAsx
1-x量子井戸層は、GaNAsにInを含んだIny
1-yAsz1-z4元混晶半導体でもよく、また、Ga
NAsに代えて、GaPu1-u3元混晶やInvGa1-v
w1-w4元混晶半導体を用いてもよい。また、障壁層
706をGaNに代えてIn,As,Pを含む混晶半導
体で構成してもよい。
【0071】
【発明の効果】GaN層の歪み量を特定の範囲とするこ
とで、素子を構成する各層に過度の歪みがかかるのを避
ける事ができ、歪みに起因する特性劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の発光素子の構造を示す
断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1の発光素子の光出力の経
時変化を示すグラフである。
【図3】ラマンスペクトル測定系の概略の構成を示す図
である。
【図4】本発明の実施の形態1の発光素子のラマンスペ
クトルを示すグラフである。
【図5】GaN層のE2フォノンモードのラマンシフト
量とa軸格子歪み量との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1の発光素子のa軸格子歪
み量と通電後の光出力との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2の発光素子の構造を示す
断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2の発光素子の駆動電流の
経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2および実施の形態3の発
光素子の、冷却スピードと歪み量との関係を示すグラフ
である。
【図10】本発明の実施の形態2および実施の形態3の
発光素子の、a軸格子歪み量と素子寿命との関係を示す
グラフである。
【図11】本発明の実施の形態3の発光素子の擬似Ga
N基板の構造を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4の発光素子のa軸格子
歪み量と素子寿命との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
101 サファイア基板 102 AlNバッファ層 103 n型GaN層 104 多重量子井戸構造発光層 105 GaN障壁層 106 In0.2Ga0.8N量子井戸層 107 p型Al0.1Ga0.9N層 108 p型GaN層 109 n電極 110 p電極 300 励起光 301 励起光源 302 回折格子 303 金属顕微鏡 304 対物レンズ 305 試料 306 散乱光 307 レンズ 308 ノッチフィルター 309 分光器 310 マルチチャンネル検出器 311 パーソナルコンピューター 312 反射鏡 701 サファイア基板 702 GaNバッファ層 703 n型GaNコンタクト層 704 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層 705 n型GaNガイド層 706 GaN障壁層 707 In0.1Ga0.9N量子井戸層 708 多重量子井戸構造活性層 709 Al0.2Ga0.8N蒸発防止層 710 p型GaNガイド層 711 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層 712 p型GaNコンタクト層 713 p電極 714 n電極 715 SiO2絶縁膜 1101 サファイア基板 1102 バッファ層 1103 GaN層 1104 GaN層 1105 サファイア基板 1106 バッファ層 1107 GaN層 1108 成長抑制膜 1109 GaN層

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サファイア基板上にn型層、発光層、p
    型層を有する積層構造を含み、該積層構造には1つ以上
    のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子におい
    て、 該GaN層の平均的なa軸格子歪み量εが、−0.16
    ≦ε≦−0.01%であることを特徴とする窒化ガリウ
    ム系半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 サファイア基板上にn型層、発光層、p
    型層を有する積層構造を含み、該積層構造には1つ以上
    のGaN層を含む窒化ガリウム系半導体発光素子におい
    て、 波長365nm以上の励起光で観測される該GaN層の
    平均的なE2フォノンモードのラマンシフト量Ωが、5
    68.1≦Ω≦570.0cm-1であることを特徴とす
    る窒化ガリウム系半導体発光素子。
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