JP2002114565A - 衛生陶器 - Google Patents

衛生陶器

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JP2002114565A
JP2002114565A JP2000304897A JP2000304897A JP2002114565A JP 2002114565 A JP2002114565 A JP 2002114565A JP 2000304897 A JP2000304897 A JP 2000304897A JP 2000304897 A JP2000304897 A JP 2000304897A JP 2002114565 A JP2002114565 A JP 2002114565A
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wall plate
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JP2000304897A
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Ryosuke Kato
良輔 加藤
Atsushi Yoshida
篤史 吉田
Hidemi Ishikawa
秀美 石川
Naoki Koga
直樹 古賀
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Toto Ltd
Original Assignee
Toto Ltd
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  • Sink And Installation For Waste Water (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形段階及び焼成段階での製品の変形を抑え
つつ、衛生陶器として必要な機械的強度を維持しつつ、
焼成後の製品形状や寸法を正確に設計可能であり、壁面
への水滴の飛散を防ぐための壁板部を有した、衛生性、
耐久性、意匠性に優れた陶磁器製の衛生陶器を提供する
こと。 【解決手段】 陶磁器素地と、前記素地上の必要な部分
に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であって、素地中に
CaO成分が偏析しているCaO成分偏析部が散在し、
排水機能を有する流し部と主に水はねを防止することを
目的とした壁板部を有し、排水機能を有する流し部と壁
板部が一体となったことを特徴とする衛生陶器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、洗面器、手洗器、
洗髪器、手洗付タンク蓋、流し、キッチンシンク、シャ
ワーパンなどの衛生陶器に関する。
【0002】
【従来の技術】衛生陶器は生活用品であり、そのため、
安心して使用可能な機械的強度が要求される。また、意
匠性も要求される。さらに、衛生陶器は、水回りで使用
されるために、化学的安定性も要求される。そのため、
古くから、衛生陶器には、施釉された陶磁器、とりわ
け、1度の焼成で釉薬層による色彩や模様に基づく意匠
性の自由度までもを確保しやすい1100〜1300℃
の温度で焼成可能であり充分な機械的強度も発揮しうる
施釉された硬質陶器質素地、熔化質素地が一般的に用い
られてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】洗面器、手洗器はその
使用時に水が飛散するため周囲を汚し衛生性が問題とな
る。そこで、壁面への水滴の飛散を防ぐための壁板部を
設け、壁板部を一体で成形された衛生陶器といった新た
な陶磁器製品の開発が要求されている。このように、壁
板部が排水機能を有する流し部と継ぎ目が無く、陶磁器
材料により一体で成形されたことによって、継ぎ目に汚
れが溜まらない、掃除がし易いなど衛生性が向上するこ
と、また壁面への水滴の飛散を防ぐための壁板部が陶磁
器材料で構成されることで耐久性が向上すること、また
陶磁器材料の持つ優れた質感から意匠性が向上すること
などが期待される。
【0004】しかしながら、このような陶磁器製品を作
製すると、壁板部が一体で成形されるため製品自体が比
較的複雑になってしまう。また、洗面器の場合には、大
きな排水機能を有する流し部が要求されることから、製
品自体が比較的大型になってしまう。また、トイレ空間
に併設される手洗器の場合には、製品自体をコンパクト
にすることが要求されることから、極力素地の肉厚を薄
くする必要がある。陶磁器製品の製品自体が、比較的複
雑になる、比較的大型になる、素地の肉厚が薄くなる
と、変形は大きくなってしまう。特に壁面への水滴の飛
散を防ぐための壁板部については、その目的からまた意
匠性の面からその平面性及び薄さ及びキャビネット、カ
ウンター、棚などと併設されるため寸法精度が要求され
るが、変形が大きく、その要求を満足させることができ
ない。
【0005】変形の原因は次の2点である。ひとつは、
成形段階の変形である。このような陶磁器製品は鋳込み
成形のような可塑成形によって成形されるのが一般的で
あり、成形段階での素地の強度は低く、製品の自重によ
って素地がへたり変形する。特に製品が複雑であるほ
ど、製品が大型であるほど、素地の肉厚が薄いほど変形
しやすい。この変形は、乾燥された素地の強度がある一
定以上になるまで生じる。もう一つは、焼成段階での変
形である。硬質陶器質素地や熔化質素地では、充分な機
械的強度を発揮するまで焼き締めるため、焼成時の収縮
量が大きく、へたりによる変形も大きい。そのために、
焼成後製品は変形する。特に製品が複雑であるほど、製
品が大型であるほど、素地の肉厚が薄いほど変形しやす
い。このように、成形段階及び焼成段階での変形を抑え
ることができず、壁面への水滴の飛散を防ぐための壁板
部を一体で成形された衛生陶器といった新たな陶磁器製
品を作製することができなかった。
【0006】一方、焼成段階の変形を抑えるためには、
素地中の1価金属酸化物、2価金属酸化物などのいわゆ
るフラックス成分を極力減少させるか、もしくは、焼成
温度を低く設定し、いわゆる焼きを甘くすることにより
可能であるが、その場合、素地全体が多孔質で熔化が不
十分な陶器質素地となるため、強度が低下する問題が生
じる。
【0007】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたもので、その目的は、成形段階及び焼成段階での製
品の変形を抑えつつ、衛生陶器として必要な機械的強度
を維持しつつ、焼成後の製品形状や寸法を正確に設計可
能であり、壁面への水滴の飛散を防ぐ壁板部を有した、
衛生性、耐久性、意匠性に優れた陶磁器製の衛生陶器を
提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記課題を
解決すべく、排水機能を有する流し部と主に水はねを防
止することを目的とした壁板部を有し、前記排水機能を
有する流し部と前記壁板部が一体で成形された陶磁器素
地と、前記素地上の必要な部分に釉薬層が形成されてな
る衛生陶器であって、前記素地原料を成形する工程、必
要に応じて必要な部位に施釉する工程、1100〜13
00℃の温度で焼成する工程を含む方法により作製可能
であり、前記焼成する工程における前記素地の長手方向
の焼成収縮率が6%以下であり、前記焼成する工程にお
ける前記素地の軟化変形量が10mm以下であることを
特徴とする衛生陶器を提供する。壁板部が有ることによ
り、壁面への水滴の飛散を防ぐことができ、壁板部と排
水機能を有する流し部が一体で成形されたことで、汚れ
にくく、清掃しやすい構造となる。素地の焼成収縮率、
軟化変形量が上記の値を満たせば、素地部の焼成収縮、
変形を極力抑え、焼成後の製品形状や寸法を正確に設計
可能である。そうすることで、衛生陶器として実用的な
レベルで、成形段階及び焼成段階での製品の変形を抑
え、焼成後の製品形状や寸法を正確に設計可能であり、
壁面への水滴の飛散を防ぐ壁板部を有した、衛生性、耐
久性、意匠性に優れた陶磁器製の衛生陶器を提供するこ
とが可能となる。
【0009】本発明の好ましい態様においては、前記素
地の嵩密度(Db)は、1.6〜2.1g/cm3であ
り、素地の嵩密度と曲げ強度(Sb)との関係がSb>
60×Db−60(MPa)であるようにする。そうす
ることで、衛生陶器として実用的なレベルで、軽量化と
機械的強度とのバランスが保たれる。
【0010】本発明においては、陶磁器素地と、前記素
地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器で
あって、前記素地は、ムライト及び石英を主成分とする
結晶相と、SiO2、Al23を主成分とするガラス相
と、必要に応じてクリストバライト、アンダルサイト、
シリマナイト、カイヤナイト、コランダムから選ばれた
鉱物からなる結晶相とを含む素地であり、素地の主要な
成分がSiO250〜65wt%、Al2330〜45
wt%、1価酸化物0.1〜2wt%、2価金属酸化物
0.1〜10wt%であり、前記2価金属酸化物成分と
して、少なくともCaO成分を含有し、前記素地中に前
記CaO成分が偏析しているCaO成分偏析部が散在し
ている特徴とする衛生陶器を提供する。素地中にCaO
成分が偏析しているCaO成分偏析部が散在しているこ
とにより、必要な機械的強度を維持しつつ、焼成収縮が
充分に小さくなり、焼成後の製品形状や寸法を正確に設
計可能である。CaO成分の働きは以下のように考えら
れる。すなわち、CaO成分が偏析しているCaO成分
偏析部が散在していることにより、その部分で液相焼結
に伴う収縮が抑制され、焼成収縮が抑制される。さら
に、液相部分とはヤング率等の機械的物性の異なるCa
O成分偏析部が存在することにより、クラックディフレ
クション効果が生じるために、機械的強度も充分な値を
取り得る。そうすることで、衛生陶器として実用的なレ
ベルで、成形段階及び焼成段階での製品の変形を抑えつ
つ、衛生陶器として必要な機械的強度を維持しつつ、焼
成後の製品形状や寸法を正確に設計可能である、衛生
性、耐久性、意匠性に優れた陶磁器製の衛生陶器を提供
することが可能となる。
【0011】本発明の好ましい態様においては、前記結
晶相は前記ガラス相中に分散されており、かつ前記ガラ
ス相の前記素地に対する構成比が60wt%未満である
ようにする。ガラス相の比率を60wt%未満に抑える
ことにより、液相焼結に伴う大きな収縮が抑えられ、焼
成収縮率を6%以下に抑えることが可能となる。
【0012】本発明の好ましい態様においては、前記C
aO成分偏析部におけるCaとNa、K、Mgの存在比
(重量比)の関係が、Ca>Na、Ca>K、Ca>M
gの全てを満足する関係にあるようにする。そうするこ
とにより、CaO成分偏析部の成分が、ガラス相成分と
大きく異なってくるため、CaO成分偏析部が散在する
効果が強調される。
【0013】本発明の好ましい態様においては、素地中
における前記CaO成分の量が1wt%以上であるよう
にする。CaO成分の量が1wt%以上であるようにす
ることで優れた嵩比重対強度の関係が得られる。CaO
成分が多いとガラス相における液相焼結に伴う収縮も小
さく抑えられるためと考えられる。
【0014】本発明の好ましい態様においては、前記素
地中のCaO成分とその他の2価金属酸化物成分との関
係が、CaO100重量部に対してその他の2価金属酸
化物が50重量部以下であるようにする。そうすること
で、優れた嵩比重対強度の関係が得られる。CaO成分
が多いとガラス相における液相焼結に伴う収縮も小さく
抑えられるためと考えられる。
【0015】本発明の好ましい態様においては、前記素
地中には、1価金属酸化物成分100重量部に対して、
2価金属酸化物成分が100重量部以上存在することを
ようにする。そうすることで、焼成時の収縮を小さく抑
え、CaO成分偏析部を散在させる効果が最大限発揮で
きる。
【0016】本発明の好ましい態様においては、前記素
地中の石英量は20wt%以下であるようにする。そう
することで、素地の熱膨張係数の過度の増加を抑制する
ことが可能となり、複雑な構造を持つ衛生陶器の作製に
おいて、焼成時の降温過程にてクラックが発生し難くな
る。
【0017】本発明の好ましい態様においては、前記素
地中にコランダムを含む場合、コランダム量が20wt
%以下であるようにする。そうすることで、コランダム
は高いヤング率を有することから素地中に均一に分散さ
せることで、大きな強度向上の効果を得ることができ
る。素地中にコランダムを含む場合、コランダム量を2
0wt%以下とするのがよい。コランダムは他の鉱物や
ガラス相より比重が大きく20wt%より多く含むと、
素地の比重が大きくなり、施工時等に負担がかかるから
である。
【0018】本発明においては、陶磁器素地と、前記素
地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器で
あって、前記素地原料を成形する工程、必要に応じて必
要な部位に施釉する工程、1100〜1300℃の温度
で焼成する工程を含む方法により作製可能な衛生陶器で
あって、前記素地原料は、粘土質鉱物、石英、1価金属
含有原料、2価金属含有原料を含有し、前記粘土質鉱物
はカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、セリサ
イト、パイロフィライトから選ばれた少なくとも1種類
を含む鉱物であり、前記2価金属含有原料として、少な
くともワラストナイト又は石灰石又は灰長石が含有され
ており、前記石英の量は前記素地原料に対し30wt%
以下であり、前記粘土質鉱物の量は前記素地原料に対し
30〜90wt%であり、前記素地原料は、レーザー回
折粒度測定器に基づく平均粒子径が3〜10μmとなる
ように粒度調整されていることを特徴とする衛生陶器を
提供する。CaOを導入するために使用する素地原料と
して石灰石又はワラストナイト又は灰長石を使用するこ
とで、これらの原料は、CaO成分がMgO、Na
2O、K2O等の成分と固溶したり化合物を形成したりし
ていないために、焼成体においてCaO成分が偏析され
た部分が形成されやすく、かつ散在しやすい。そうする
ことで、衛生陶器として実用的なレベルで、成形段階及
び焼成段階での製品の変形を抑えつつ、衛生陶器として
必要な機械的強度を維持しつつ、焼成後の製品形状や寸
法を正確に設計可能である、衛生性、耐久性、意匠性に
優れた陶磁器製の衛生陶器を提供することが可能とな
る。
【0019】本発明においては、陶磁器素地と、前記素
地上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器で
あって、前記素地原料を成形する工程、必要に応じて必
要な部位に施釉する工程、1100〜1300℃の温度
で焼成する工程を含む方法により作製可能な衛生陶器で
あって、前記素地原料は、粘土質鉱物、石英、1価金属
酸化物含有原料、2価金属酸化物含有原料、強熱減量の
小さな原料を含有し、前記粘土質鉱物はカオリナイト、
ディッカイト、ハロイサイト、セリサイト、パイロフィ
ライトから選ばれた少なくとも1種類を含む鉱物であ
り、前記石英の量が前記素地原料に対し30wt%以下
であり、前記粘土質鉱物は素地原料に対し30〜90w
t%であり、前記強熱減量の小さな原料は素地原料に対
し5〜50wt%であり、前記素地原料は、レーザー回
折粒度測定器に基づく平均粒子径が3〜10μmとなる
ように粒度調整されていることを特徴とする衛生陶器を
提供する。強熱減量の小さな原料を含有することで、強
熱減量に基づく焼成収縮が低減化される。そうすること
で、衛生陶器として実用的なレベルで、成形段階及び焼
成段階での製品の変形を抑えつつ、焼成後の製品形状や
寸法を正確に設計可能である、衛生性、耐久性、意匠性
に優れた陶磁器製の衛生陶器を提供することが可能とな
る。
【0020】本発明の好ましい態様においては、前記2
価金属含有原料として、少なくともワラストナイト又は
石灰石又は灰長石が含有されるようにする。強熱減量の
小さな原料を使用する効果とCaOを導入するために使
用する素地原料として石灰石又はワラストナイト又は灰
長石を使用することによる効果との相乗効果によって、
さらに焼成収縮が小さく優れた強度が得られるようにな
る。
【0021】本発明の好ましい態様においては、前記強
熱減量の小さな原料はシャモットであり、該シャモット
の主要鉱物が、ムライト、クリストバライト、石英、コ
ランダムから選ばれた少なくとも1種類の鉱物であり、
シャモット中のCaOの量が1wt%以上であるように
する。上記CaOの量が1wt%以上の結晶質のシャモ
ットを用いることで、クラックデフレクション作用によ
り機械的強度が向上し、かつガラス相の比率低減により
焼成収縮率を低減可能となる。
【0022】本発明の好ましい態様においては、前記強
熱減量の小さな原料が、SiO2 、Al2O3を主成分とする中
空ガラスであるようにする。そうすることで、中空ガラ
スの気孔が素地中に閉気孔として残留するため強度の割
には嵩比重の小さな素地が得られる。
【0023】本発明の好ましい態様においては、前記強
熱減量の小さな原料が、シラスバルーン、発泡パーライ
ト、発泡頁岩から選ばれた少なくとも一種類であるよう
にする。そうすることで、気孔が素地中に閉気孔として
残留するため強度の割には嵩比重の小さな素地が得られ
る。
【0024】本発明の好ましい態様においては、前記素
地原料を成形する工程における、成形された素地を乾燥
する乾燥工程において、前記成形された素地の前記壁板
部を前記壁板部と同形状を有する乾燥受けと接触させて
乾燥するようにする。そうすることで、壁板部が乾燥受
けと接触して乾燥するため、乾燥段階での壁板部のへた
り、変形が生じにくくなり、壁面への水滴の飛散を防ぐ
壁板部を有した、衛生性、耐久性、意匠性に優れた陶磁
器製の衛生陶器が得られる。
【0025】本発明の好ましい態様においては、前記釉
薬層は前記素地よりも、熱膨張係数が0〜30×10-7
/℃小さい釉薬であるようにする。素地表面に熱膨張係
数が素地よりも0〜30×10-7/℃小さい釉薬層を形
成することによって、釉薬表面の経年変化に伴う微細な
ひび割れが生じにくくなる。
【0026】本発明の好ましい態様においては、前記素
地の熱膨張係数が50〜90×10 -7(/℃)(50〜
600℃)であるようにする。90×10-7以下にする
ことで、大型で複雑な構造を持つ衛生陶器において、焼
成時の降温過程にてクラックが発生し難くなる。また、
50×10-7以上にすることで、クラック等の欠陥の生
じ難い条件で釉薬層の意匠性の自由度を確保することが
できる。
【0027】本発明の好ましい態様においては、前記素
地の衝撃強度が2×10-1J/cm 2以上であるように
する。そうすることで、機械的強度が実用的なレベルで
保たれ、万が一、実用的なレベルの日用生活品などを落
下させても、ひび割れ、キズなどが生じにくくなる。
【0028】本発明の好ましい態様においては、成形方
法が泥漿鋳込み成形法であるようにする。そうすること
で、大型複雑形状の衛生陶器を低コストで容易に製造で
きる。
【0029】本発明の好ましい態様においては、前記壁
板部は、中実構造からなる壁板部、もしくは、中実構造
及び中空構造からなる壁板部であるようにする。そうす
ることで、中実構造からなる壁板部が、成形段階でのへ
たり、変形を生じにくくし、さらに壁板部の機械的強度
が実用的なレベルで保たれる。
【0030】本発明の好ましい態様においては、前記中
実構造及び中空構造からなる壁板部の前記中空構造から
なる壁板部の一部及び/又は全周囲に、前記中実構造か
らなる壁板部に対して、垂直及び/又はほぼ垂直の中空
構造からなる立て板部が少なくとも1個以上あるように
する。そうすることで、中空構造からなる立て板部が、
焼成段階での壁板部のへたり、変形を生じにくくするた
めの補強構造となる。
【0031】本発明の好ましい態様においては、前記中
実構造からなる壁板部、もしくは、前記中実構造及び中
空構造からなる壁板部の一部及び/又は全周囲に、前記
壁板部に対して、垂直及び/又はほぼ垂直の中実構造及
び/又は中空構造からなる立て板部が少なくとも1個以
上あるようにする。そうすることで、中実構造及び/又
は中空構造からなる立て板部が、成形段階及び焼成段階
での壁板部のへたり、変形を生じにくくするための補強
構造となる。
【0032】本発明の好ましい態様においては、前記排
水機能を有する流し部及び前記壁板部を含む前記衛生陶
器の総面積の10%以上が、前記壁板部の面積であるよ
うにする。そうすることで、壁面への水滴の飛散を充分
に防ぐ壁板部を有した、衛生陶器が得られる。
【0033】本発明の好ましい態様においては、前記壁
板部の総面積の10%以上が、前記中実構造からなる壁
板部の面積であるようにする。そうすることで、中実構
造からなる壁板部が、近傍の中空構造からなる壁板部の
成形段階でのへたり、変形を生じにくくし、さらに壁板
部の機械的強度が実用的なレベルで保たれるため、壁面
への水滴の飛散を防ぐ壁板部を有した、衛生陶器が得ら
れる。
【0034】
【発明の実施の形態】まず、以下に、本発明における主
要な用語について、説明する。結晶相 本発明において、結晶相とは特定の鉱物であり、X線回
折において規則的な回折パターンを有する部分をいう。
結晶相の量は内部標準法で、各結晶相の標準物質による
検量線から定量し重量比で示した。
【0035】ガラス相 本発明において、ガラス相とは、X線回折において規則
的な回折パターンを示さない上記結晶部分以外の部分を
いう。
【0036】素地中のガラス相の比率 本発明において、素地中のガラス相の比率とは、素地全
体に対するガラス相の重量比で定義する。具体的には、
X線回折で定量した上記結晶相量を除いた量とする。
【0037】素地の成分 陶磁器成分には、ムライトに代表される複合酸化物結晶
やガラス相のように、複数の金属種の酸化物や固溶体が
存在するが、これらについても蛍光X線分析法によって
定量された単成分の金属酸化物で換算して重量比により
規程している。
【0038】CaO成分偏析部 EPMAによる元素分析の結果、周辺部と対比してCa
濃度の高い領域を、CaO成分偏析部と定義する。Ca
O成分偏析部では、EPMAによる元素分析に基づき、
周辺とMg濃度、Na濃度、K濃度が余り変化がないか
むしろ低くなっているのが、焼成収縮を低める上で、よ
り好ましい状態である。
【0039】CaO成分偏析部の散在 また、「散在」とは、1箇所のみではなく、多数の箇所
に領域が存在している状態をいう。こういう状態である
ことにより、クラックデフレクション効果が効果的に発
揮される。
【0040】素地の嵩密度 素地の嵩密度は、アルキメデス法により測定する。幅2
5mm、厚み5mm、長さ20mmのテストピース(焼
成素地)を105℃で24時間乾燥した後、テストピー
スが吸湿しない環境下で室温まで冷却し、質量W1を測
定する。次にテストピースを真空中に1時間保って、気
泡を放出させる。さらに同環境下において、テストピー
スを水中に1時間保った後、常温に戻す。次に、このテ
ストピースを水中に細い糸で自由に吊るしたまま秤量
し、質量W2を測定する。その後、これを水中から取出
し、絞った湿布で手早く表面の水滴を拭い去り、直ちに
質量W3を測定する。嵩密度は水密度、W1、W2、W
3から次式で求める。 嵩密度=水密度×W1/(W3−W2)
【0041】素地の曲げ強度 素地の曲げ強度は、焼成したφ13×130mmのテス
トピースにより、スパン100mm、クロスヘッドスピ
ード2.5mm/minの条件で3点曲げ方法で測定す
る。
【0042】素地の焼成収縮率 幅30mm、厚み15mm、長さ260mmの未焼成の
テストピースに150mm長さで印を入れ、焼成後のそ
の長さの変化分を150mmで除した百分率を素地の焼
成収縮率とした。
【0043】素地の軟化変形量 未焼成の幅30mm、厚み15mm、長さ260mmの
テストピースをスパン200mmで支持した状態で焼成
し、焼成後のテストピース中央部のたわみ量とテストピ
ースの厚みを測定する。このときのたわみ量はテストピ
ースの厚みの二乗に反比例するので、次の式で、厚みが
10mmの時に換算したたわみ量を素地の軟化変形量と
した。素地の軟化変形量=たわみ量測定値×(焼成後の
テストピースの厚み)2/102
【0044】素地の熱膨張係数 素地の熱膨張係数は、その測定には焼成した直径5m
m、長さ20mmのテストピースを用い、示差膨張計に
よって、圧縮荷重法また測定温度範囲50〜600℃に
て測定した線熱膨張係数で示した。
【0045】素地の衝撃強度 素地の衝撃強度は、焼成したφ13×130mmのテスト
ピースにより、シャルピー試験機で測定した。
【0046】素地の耐熱衝撃性 耐熱衝撃性は、幅25mm×厚み10mm×長さ110
mmのテストピースを、所定温度で1時間以上保持した
後、水中に投入して急冷し、クラック発生の有無をチェ
ックし評価した。クラックが生じない最大温度差を示し
た。
【0047】次に、本発明の衛生陶器を作製する方法の
一例について、説明する。素地原料 出発原料としては、粘土質鉱物、Ca含有原料を必須成
分とし、その他に石英、1価金属含有原料、強熱減量の
小さな原料が添加されていてもよい。上記原料を混合
し、必要に応じてボールミル等により粉砕して素地原料
を得る。素地原料のレーザー回折粒度測定器に基づく平
均粒径は、3〜10μmに調整するのが好ましい。後の
成形工程で鋳込み成形法を用いる場合、素地原料は水に
分散してサスペンジョンとして用いる。サスペンジョン
中には、分散剤、防腐剤、糊剤、抗菌剤等を添加しても
よい。粘土質鉱物としては、カオリナイト、ディッカイ
ト、ハロイサイト、セリサイト、パイロフィライトが好
適に利用できる。1価金属含有原料としては、セリサイ
ト、長石、ネフェリンが好適に利用できる。Ca含有原
料としては、石灰石、ワラストナイトが好適に利用でき
る。各原料の配合としては、粘土質鉱物は30〜90重
量部とするのが好ましく、Ca含有原料は1〜15重量
部の範囲で使用するのが好ましい。1価金属含有原料は
素地全体に対し1価金属酸化物の総量が2wt%を超え
ない範囲で使用することができる。また、石英原料を使
用する場合は30重量部以下とすること、強熱減量の小
さな原料を使用する場合は5〜50重量部の範囲内で使
用することが好ましい。
【0048】作製方法 素地原料を鋳込み成形法等により成形し、脱型、乾燥
後、必要部分に施釉し焼成する。鋳込み成形型には、石
膏型、樹脂型等が利用でき、圧力印加法は加圧、真空吸
引、型吸引、ヘッド圧のいずれも利用できる。乾燥は例
えば室温〜110℃程度で行うことができる。乾燥工程
において、成形された素地の壁板部を壁板部と同形状を
有する乾燥受けと接触させて乾燥する場合には、排水機
能を有する流し部と壁板部が一体となった製品と乾燥受
けは、製品の壁板部の表面及び/又は裏面を乾燥受けと
接触させる。乾燥受けと壁板部が接触した製品の角度
は、いずれの角度でも可能である。ただし乾燥受けは、
乾燥段階での製品において壁板部のへたり、変形を生じ
やすい壁板部側で接触させるのが好ましい。図1に手洗
器1の壁板部表面が斜め上方にある場合の乾燥受け2と
壁板部の接触方法の模式図を例示した。施釉は、湿式ス
プレー、乾式スプレー等の方法が利用できる。釉薬に
は、長石、石英、石灰石等の天然原料、フリット釉等の
非晶質原料等に顔料や乳濁剤を添加したものが利用でき
る。釉薬としては、熱膨張係数が素地よりも0〜30×
10-7/℃小さい原料を用いるのが好ましい。焼成は、
1100〜1300℃の温度で行うことができる。焼成
には、連続焼成炉、バッチ炉のいずれも利用可能であ
る。
【0049】壁板部の構造 壁板部の構造としては、中実構造からなる壁板部と中空
構造からなる壁板部の2種類がある。中実構造からなる
壁板部は中空構造からなる壁板部に比べて、機械的強度
が高く、成形段階でのへたり、変形が生じにくいという
長所がある。一方、中空構造からなる壁板部は中実構造
からなる壁板部に比べて、中空構造からなる立て板部が
あることにより、焼成段階での変形が生じにくいという
長所がある。そのため、壁板部の構造としては、中実構
造からなる壁板部と中空構造からなる壁板部を組み合わ
せた構造にするのが好ましい。成形段階での壁板部のへ
たり、変形を生じにくくするための補強構造としては、
壁板部の一部及び/又は全周囲に、壁板部に対して垂直
及び/又はほぼ垂直の中実構造及び/又は中空構造から
なる立て板部が、少なくとも1個以上あるのが好まし
い。ほぼ垂直とは、中実構造及び/又は中空構造からな
る立て板部が成形段階での壁板部のへたり、変形を生じ
にくくする効果があれば、いずれの角度でも構わない。
中実構造及び/又は中空構造からなる立て板部の位置、
数、組み合わせはいずれの場合でも可能であるが、中実
構造及び/又は中空構造からなる立て板部は壁板部の裏
面にあるのが好ましい。図2〜4に手洗器の壁板部に、
中実構造及び/又は中空構造からなる立て板部がある好
ましい壁板部の構造の模式図を例示した。図2は手洗器
の壁板部に中空構造からなる立て板部が4個ある壁板部
の構造の模式図である。図3は手洗器の壁板部に中実構
造からなる立て板部が2個ある壁板部の構造の模式図で
ある。図4は手洗器の壁板部に中空構造からなる立て板
部が4個と中実構造からなる立て板部が1個ある壁板部
の構造の模式図である。
【0050】
【実施例】以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づ
いて説明する。図8は実施例で使用した素地の原料とそ
の化学組成、そして含有鉱物量を示す。図9は本発明に
かかる素地の組成及び物性値を示す。
【0051】素地組成中の、1価金属酸化物総量とは素
地の化学組成中のNa2O、K2O等の1価金属酸化物の
総量を、2価金属酸化物総量とは素地の化学組成中のM
gO、CaO等の2価金属酸化物の総量を示す。
【0052】図9は、陶石、カオリン、粘土を主原料と
する、焼成時の収縮と軟化変形量が小さくなるように1
価金属酸化物などの焼結フラックス成分を少なく調整
し、ワラストナイトを使用し、素地中にCaO偏在部を
形成させた本発明の素地であり、素地中にCaOを約
3.8wt%含む。
【0053】本発明の素地の焼成収縮率、焼成時の軟化
変形量、曲げ強度は、2.8%、5.5mm、64.7
MPaであり、焼成収縮、変形を極力抑えつつ、衛生陶
器として必要な機械的強度を充分維持している。
【0054】図10は本発明で使用した釉薬の化学組成
を示す。本釉薬はブリストル釉と呼ばれ、衛生陶器用に
一般的に使用されている釉薬である。
【0055】以下に、本発明の実施の形態を添付図面に
基づいて説明する。図5は本発明に係る手洗器の実施例
を示す外観斜視図で、図6は図5の手洗器の概略断面図
である。
【0056】図5に示すように、手洗器は、排水機能を
有する流し部7と、この排水機能を有する流し部7と一
体で成形された壁板部8から構成されている。
【0057】手洗器は、石膏型を使用し泥漿鋳込み成形
法によって成形した後、仕上げ加工、乾燥、施釉工程を
経た後、焼成することによって試作した。釉薬は図10
に示した物を使用した。釉薬の熱膨張係数は51×10
-7/℃である。これらの試作した手洗器は、水あるいは
排水に接する箇所についてはすべて、施釉することで素
地の吸水性を防止した。
【0058】試作した手洗器を焼成したところ、窯サメ
が発生しなかった。窯サメとは、焼成の降温過程におい
て製品が冷却されるヒートショックによって生じる切れ
である。また、試作した手洗器を急熱試験したところ、
切れが発生しなかった。急熱試験とは、手洗器に80℃
の温度差を与えたとき、その熱衝撃による切れが発生し
ないかを確認する試験である。80℃の温度差は、排水
機能を有する流し部7に10℃の冷水を入れて手洗器を
13℃に維持した状態から、冷水を抜き取った後即座に
93℃の熱水を排水機能を有する流し部7に注ぐ方法で
行った。
【0059】一般的に、構造の複雑な製品ほど焼成時に
窯サメと呼ばれる切れが発生し易く、素地の熱膨張係数
が小さいほど窯サメが発生しにくくなる。このため、生
産する物の形状に応じて熱膨張係数の設定を考える必要
がある。試作した形状の手洗器では、熱膨張係数を70
×10-7/℃以下にすれば、窯サメを発生することな
く、手洗器を作製できる。熱膨張係数を低めるには、素
地中の石英含有量を低める方法と、焼成収縮を大きくす
る方法があるが、特に本発明では素地中の石英含有量を
低める方法が好ましい。試作した形状の手洗器では石英
含有量は20wt%以下が好ましい。
【0060】素地原料の粒度は、原料粒度をより微粒に
調整することで嵩密度対強度の関係が向上する。また、
焼成時の軟化変形量を低減させる効果も同時に得られ
る。良好な手洗器を得るためには、素地原料の平均粒径
は10μm以下に調整するのが好ましい。
【0061】Ca成分を多く含む強熱減量の小さな原料
を利用すれば、充分に焼成収縮、焼成変形が小さく、か
つ嵩密度対強度に優れる手洗器が作製可能であるため、
良好な手洗器を得るためには、Ca成分を多く含む強熱
減量の小さな原料を利用するのが好ましい。
【0062】壁板部8は、中実構造からなる壁板部3及
び中空構造からなる壁板部4及び中空構造からなる立て
板部5及び中実構造からなる立て板部6で構成されてい
る。中実構造からなる壁板部3は中空構造からなる壁板
部4に比べて、機械的強度が高く、成形段階でのへた
り、変形が生じにくいという長所がある。一方、中空構
造からなる壁板部4は中実構造からなる壁板部3に比べ
て、中空構造からなる立て板部5があることにより、焼
成段階での変形が生じにくいという長所がある。そのた
め、壁板部8の構造としては、中実構造からなる壁板部
3と中空構造からなる壁板部4を組み合わせた構造にす
るのが好ましい。また、中実構造からなる壁板部3が、
その近傍の中空構造からなる壁板部4の成形段階でのへ
たり、変形を生じにくくするため、壁板部8の中央部に
中実構造からなる壁板部3をできる限り広くとることが
好ましい。さらに、壁板部8の中空構造からなる壁板部
4の全周囲に、中実構造からなる壁板部3に対して、ほ
ぼ垂直の中空構造からなる立て板部5があり、壁板部8
の中実構造からなる壁板部3の一部に、中実構造からな
る立て板部6が3個あることで、成形段階及び焼成段階
での壁板部8のへたり、変形を生じにくくするための補
強構造となる。特に製品が複雑であるほど、製品が大型
であるほど、素地の肉厚が薄いほど成形段階及び焼成段
階での変形がしやすいため、さらなる補強構造が必要と
なる場合がある。この場合には、壁板部8の一部及び/
又は全周囲に、壁板部8に対して、垂直及び/又はほぼ
垂直の中空構造からなる立て板部5及び/又は中実構造
からなる立て板部6が少なくとも1個以上あることで、
補強が可能となる。試作した手洗器では、壁板部8の全
周囲に、壁板部8に対して、ほぼ垂直の中空構造からな
る立て板部5及び中実構造からなる立て板部6があるこ
とで、壁板部8にへたり、変形が生じない補強が可能と
なった。
【0063】排水機能を有する流し部7と壁板部8が一
体で成形されたことで、排水機能を有する流し部7と壁
板部8の境界部が無くなるため、継ぎ目に汚れが溜まら
ない、掃除がし易いなど衛生性が向上した陶磁器製の手
洗器が得られる。良好な手洗器を得るためには、排水機
能を有する流し部7と壁板部8の境界部に適当なR寸法
をとることが好ましい。
【0064】手洗器が成形された素地の乾燥工程におい
て、脱型直後に、壁板部8の表面を上方にして乾燥させ
ると、壁板部8において、素地の自重によるへたり、変
形が生じやすくなる。試作した手洗器では、脱型直後
に、壁板部8を壁板部8と同形状を有する試作した乾燥
受け9と接触させ、壁板部8と試作した乾燥受け9を接
触させたまま壁板部8の表面が斜め上方となる角度で固
定して乾燥させ、素地の強度がある一定以上になった
後、壁板部8の表面を垂直にした角度に手洗器を立てて
固定した後、試作した乾燥受け9を取り外して、手洗器
を完全に乾燥させた。図7は試作した乾燥受け9の外観
図を示す。試作した乾燥受け9は試作した手洗器の排水
機能を有する流し部7と接触させて乾燥するものであ
る。こうすることで、乾燥段階での壁板部8のへたり、
変形が生じず、壁面への水滴の飛散を防ぐための壁板部
が一体で成形された手洗器が得られた。
【0065】試作した手洗器は、排水機能を有する流し
部7及び壁板部8を含む手洗器の総面積の約30%を壁
板部8の面積とした。壁板部8が壁面への水滴の飛散を
充分に防ぐことができる面積は、排水機能を有する流し
部7の面積にもよるが、排水機能を有する流し部7の大
きさが一般的である場合には、排水機能を有する流し部
7及び壁板部8を含む手洗器の総面積の10%以上が、
壁板部8の面積であることが好ましい。
【0066】試作した手洗器は、中実構造からなる壁板
部3及び中空構造からなる壁板部4から構成されている
壁板部8において、中実構造からなる壁板部3の面積が
壁板部8の総面積の約25%とした。中実構造からなる
壁板部3が中空構造からなる壁板部4の成形段階でのへ
たり、変形を生じにくくし、さらに壁板部8の機械的強
度が実用的なレベルで保たれるためには、中実構造から
なる壁板部3の面積が壁板部8の総面積の10%以上で
あることが好ましい。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、その目的は、成形段階
及び焼成段階での製品の変形を抑えつつ、衛生陶器とし
て必要な機械的強度を維持しつつ、焼成後の製品形状や
寸法を正確に設計可能であり、壁面への水滴の飛散を防
ぐための壁板部を有した、衛生性、耐久性、意匠性に優
れた陶磁器製の衛生陶器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】手洗器の壁板部表面が斜め上方にある場合の乾
燥受けと壁板部の接触方法の模式図。
【図2】手洗器の壁板部に中空構造からなる立て板部が
4個ある壁板部の構造の模式図。
【図3】手洗器の壁板部に中実構造からなる立て板部が
2個ある壁板部の構造の模式図。
【図4】手洗器の壁板部に中空構造からなる立て板部が
4個と中実構造からなる立て板部が1個ある壁板部の構
造の模式図。
【図5】実施例の中で試作した手洗器の外観斜視図。
【図6】実施例の中で試作した手洗器の概略断面図。
【図7】実施例の中で試作した乾燥受けの外観図。
【図8】実施例で使用した素地の原料の化学組成と含有
鉱物量。
【図9】本発明にかかる素地組成及び素地物性。
【図10】本発明で使用した釉薬の化学組成。
【符号の説明】
1…手洗器 2…乾燥受け 3…中実構造からなる壁板部 4…中空構造からなる壁板部 5…中空構造からなる立て板部 6…中実構造からなる立て板部 7…排水機能を有する流し部 8…壁板部 9…試作した乾燥受け
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C04B 33/34 C04B 33/34 E03C 1/18 E03C 1/18 1/20 1/20 A (72)発明者 古賀 直樹 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 Fターム(参考) 2D061 BA01 BA04 BA08 BB01 BC09 CA04 CC11

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排水機能を有する流し部と主に水はねを
    防止することを目的とした壁板部を有し、前記流し部と
    前記壁板部が一体で成形された陶磁器素地と、前記素地
    上の必要な部分に釉薬層が形成されてなる衛生陶器であ
    って、 前記素地原料を成形する工程、必要に応じて必要な部位
    に施釉する工程、1100〜1300℃の温度で焼成す
    る工程を含む方法により作製可能であり、前記焼成する
    工程における前記素地の長手方向の焼成収縮率が6%以
    下であり、前記焼成する工程における前記素地の軟化変
    形量が10mm以下であることを特徴とする衛生陶器。
  2. 【請求項2】 前記衛生陶器は洗面器であることを特徴
    とする請求項1に記載の衛生陶器。
  3. 【請求項3】 前記衛生陶器は手洗器であることを特徴
    とする請求項1に記載の衛生陶器。
  4. 【請求項4】 前記衛生陶器は洗髪器、手洗付タンク
    蓋、流し、キッチンシンク、シャワーパンのいずれかで
    あることを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
  5. 【請求項5】 前記素地の嵩密度(Db)は、1.6〜
    2.1g/cm3であり、素地の嵩密度と曲げ強度(S
    b)との関係がSb>60×Db−60(MPa)であ
    ることを特徴とする請求項1〜4に記載の衛生陶器。
  6. 【請求項6】 前記素地は、ムライト及び石英を主成分
    とする結晶相と、SiO2、Al23を主成分とするガ
    ラス相と、必要に応じてクリストバライト、アンダルサ
    イト、シリマナイト、カイヤナイト、コランダムから選
    ばれた鉱物からなる結晶相とを含む素地であり、 素地の主要な成分がSiO250〜65wt%、Al2
    330〜45wt%、1価金属酸化物0.1〜2wt
    %、2価金属酸化物0.1〜10wt%であり、 前記2価金属酸化物成分として、少なくともCaO成分
    を含有し、 前記素地中に前記CaO成分が偏析しているCaO成分
    偏析部が散在していることを特徴とする請求項1〜5に
    記載の衛生陶器。
  7. 【請求項7】 前記結晶相は前記ガラス相中に分散され
    ており、かつ前記ガラス相の前記素地に対する構成比が
    60wt%未満であることを特徴とする請求項6に記載
    の衛生陶器。
  8. 【請求項8】 前記CaO成分偏析部におけるCaとN
    a、K、Mgの存在比(重量比)の関係が、Ca>N
    a、Ca>K、Ca>Mgの全てを満足する関係にある
    ことを特徴とする請求項6又は7に記載の衛生陶器。
  9. 【請求項9】 前記素地中における前記CaO成分の量
    が1wt%以上であることを特徴とする請求項6〜8に
    記載の衛生陶器。
  10. 【請求項10】 前記素地中のCaO成分とその他の2
    価金属酸化物成分との関係が、CaO100重量部に対
    してその他の2価金属酸化物が50重量部以下であるこ
    とを特徴とする請求項6〜9に記載の衛生陶器。
  11. 【請求項11】 前記素地中には、1価金属酸化物成分
    100重量部に対して、2価金属酸化物成分が100重
    量部以上存在することを特徴とする請求項6〜10に記
    載の衛生陶器。
  12. 【請求項12】 前記素地中の石英量は20wt%以下
    であることを特徴とする請求項6〜11に記載の衛生陶
    器。
  13. 【請求項13】 前記素地中にコランダムを含む場合、
    コランダム量が20wt%以下であることを特徴とする
    請求項6〜12に記載の衛生陶器。
  14. 【請求項14】 前記衛生陶器が前記素地原料を成形す
    る工程、必要に応じて必要な部位に施釉する工程、11
    00〜1300℃の温度で焼成する工程を含む方法によ
    り作製可能な衛生陶器であって、 前記素地原料は、粘土質鉱物、石英、1価金属含有原
    料、2価金属含有原料を含有し、 前記粘土質鉱物はカオリナイト、ディッカイト、ハロイ
    サイト、セリサイト、パイロフィライトから選ばれた少
    なくとも1種類を含む鉱物であり、 前記2価金属含有原料として、少なくともワラストナイ
    ト又は石灰石又は灰長石が含有されており、 前記石英の量は前記素地原料に対し30wt%以下であ
    り、 前記粘土質鉱物の量は前記素地原料に対し30〜90w
    t%であり、 前記素地原料は、レーザー回折粒度測定器に基づく平均
    粒子径が3〜10μmとなるように粒度調整されている
    ことを特徴とする請求項1〜13に記載の衛生陶器。
  15. 【請求項15】前記衛生陶器が前記素地原料を成形する
    工程、必要に応じて必要な部位に施釉する工程、110
    0〜1300℃の温度で焼成する工程を含む方法により
    作製可能な衛生陶器であって、 前記素地原料は、粘土質鉱物、石英、1価金属酸化物含
    有原料、2価金属酸化物含有原料、強熱減量の小さな原
    料を含有し、 前記粘土質鉱物はカオリナイト、ディッカイト、ハロイ
    サイト、セリサイト、パイロフィライトから選ばれた少
    なくとも1種類を含む鉱物であり、 前記石英の量が前記素地原料に対し30wt%以下であ
    り、 前記粘土質鉱物は素地原料に対し30〜90wt%であ
    り、 前記強熱減量の小さな原料は素地原料に対し5〜50w
    t%であり、 前記素地原料は、レーザー回折粒度測定器に基づく平均
    粒子径が3〜10μmとなるように粒度調整されている
    ことを特徴とする請求項1〜13に記載の衛生陶器。
  16. 【請求項16】 前記2価金属含有原料として、少なく
    ともワラストナイト又は石灰石又は灰長石が含有されて
    いることを特徴とする請求項15に記載の衛生陶器。
  17. 【請求項17】 前記強熱減量の小さな原料はシャモッ
    トであり、該シャモットの主要鉱物が、ムライト、クリ
    ストバライト、石英、コランダムから選ばれた少なくと
    も1種類の鉱物であり、 シャモット中のCaOの量が1wt%以上であることを
    特徴とする請求項15に記載の衛生陶器。
  18. 【請求項18】 前記強熱減量の小さな原料が、SiO
    2 、Al2O3を主成分とする中空ガラスであることを特徴
    とする請求項15に記載の衛生陶器。
  19. 【請求項19】 前記強熱減量の小さな原料が、シラス
    バルーン、発泡パーライト、発泡頁岩から選ばれた少な
    くとも一種類であることを特徴とする請求項15に記載
    の衛生陶器。
  20. 【請求項20】 前記素地原料を成形する工程におけ
    る、成形された素地を乾燥する乾燥工程において、前記
    成形された素地の前記壁板部を前記壁板部と同形状を有
    する乾燥受けと接触させて乾燥することを特徴とする請
    求項14〜19に記載の衛生陶器。
  21. 【請求項21】 前記釉薬層は前記素地よりも、熱膨張
    係数が0〜30×10-7/℃小さい釉薬であることを特
    徴とする請求項1〜20に記載の衛生陶器。
  22. 【請求項22】 前記素地の熱膨張係数が50〜90×
    10-7(/℃)(50〜600℃)であることを特徴と
    する請求項1〜21に記載の衛生陶器。
  23. 【請求項23】 前記素地の衝撃強度が2×10-1J/
    cm2以上であることを特徴とする請求項1〜22に記
    載の衛生陶器。
  24. 【請求項24】 前記成形する工程における成形方法が
    泥漿鋳込み成形法であることを特徴とする請求項14〜
    23に記載の衛生陶器。
  25. 【請求項25】 前記壁板部は、中実構造からなる壁板
    部、若しくは中実構造及び中空構造からなる壁板部であ
    ることを特徴とする請求項1〜24に記載の衛生陶器。
  26. 【請求項26】 前記中実構造及び中空構造からなる壁
    板部の前記中空構造からなる壁板部の一部及び/又は全
    周囲に、前記中実構造からなる壁板部に対して、垂直及
    び/又はほぼ垂直の中空構造からなる立て板部が少なく
    とも1個以上あることを特徴とする請求項25に記載の
    衛生陶器。
  27. 【請求項27】 前記中実構造からなる壁板部、もしく
    は、前記中実構造及び中空構造からなる壁板部の一部及
    び/又は全周囲に、前記壁板部に対して、垂直及び/又
    はほぼ垂直の中実構造及び/又は中空構造からなる壁板
    部が少なくとも1個以上あることを特徴とする請求項2
    5又は26に記載の衛生陶器。
  28. 【請求項28】 前記流し部及び前記壁板部を含む前記
    衛生陶器の総面積の10%以上が、前記壁板部の面積で
    あることを特徴とする請求項1〜27に記載の衛生陶
    器。
  29. 【請求項29】 前記壁板部の総面積の10%以上が、
    前記中実構造からなる壁板部の面積であることを特徴と
    する請求項1〜28に記載の衛生陶器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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