JP2002113369A - 光触媒および光触媒の製造方法 - Google Patents

光触媒および光触媒の製造方法

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JP2002113369A
JP2002113369A JP2000310778A JP2000310778A JP2002113369A JP 2002113369 A JP2002113369 A JP 2002113369A JP 2000310778 A JP2000310778 A JP 2000310778A JP 2000310778 A JP2000310778 A JP 2000310778A JP 2002113369 A JP2002113369 A JP 2002113369A
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photocatalyst
titanium dioxide
titanium oxide
mainly composed
rutile
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JP2000310778A
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Yuji Fujimori
裕司 藤森
Tsutomu Miyamoto
勉 宮本
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】環境汚染物質の分解能力に優れる光触媒および
光触媒の製造方法を提供すること。 【解決手段】本発明の光触媒3は、基板2に支持されて
おり、光触媒体1を構成している。光触媒3は、主とし
て酸化チタンで構成されている。この酸化チタンは、結
晶構造がルチル型の二酸化チタンを含むのが好ましい。
また、光触媒3は、膜状をなしているのが好ましく、バ
ンドギャップが3.1eV以下であるのが好ましい。光
触媒3は、酸化チタンを主とする光触媒材料を塗布法に
より、膜状に成形することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒および光触
媒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、太陽光等の光により、環境汚
染物質を分解する機能を有するものとして、二酸化チタ
ンからなる光触媒が注目されている。この光触媒は、前
記環境汚染物質が臭気を有するものである場合、環境汚
染物質を分解することにより、脱臭することもできる。
【0003】この二酸化チタンとしては、結晶構造がア
ナターゼ型のものが用いられている。ところが、アナタ
ーゼ型の二酸化チタンは、そのバンドギャップが大きい
ので、紫外領域の波長の光しか吸収できない。このた
め、従来の光触媒では、光の利用効率に劣り、環境汚染
物質の分解能力を十分に発揮することが困難である。
【0004】また、従来の光触媒は、ただ単に、二酸化
チタンの粉末を、基板上に2次元的に定着させて用いて
いるため、やはり、光の利用効率に劣り、環境汚染物質
の分解能力を十分に発揮することが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、環境
汚染物質の分解能力に優れる光触媒および光触媒の製造
方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(24)の本発明により達成される。
【0007】(1) 主として酸化チタンで構成される
光触媒であって、前記酸化チタンは、結晶構造がルチル
型の二酸化チタンを含むことを特徴とする光触媒。
【0008】(2) 主として酸化チタンで構成される
光触媒であって、膜状をなしていることを特徴とする光
触媒。
【0009】(3) 塗布法により形成されたものであ
る上記(2)に記載の光触媒。
【0010】(4) 厚さが、0.1〜300μmであ
る上記(2)または(3)に記載の光触媒。
【0011】(5) 主として酸化チタンで構成される
光触媒であって、バンドギャップが3.1eV以下であ
ることを特徴とする光触媒。
【0012】(6) 主として酸化チタンで構成される
光触媒であって、バンドギャップ低減処理を施すことに
より、バンドギャップを3.1eV以下としたことを特
徴とする光触媒。
【0013】(7) 前記バンドギャップ低減処理は、
酸素欠陥を形成する酸素欠陥形成法によるものである上
記(6)に記載の光触媒。
【0014】(8) 前記バンドギャップ低減処理は、
チタン原子の一部をチタン原子と異なる金属原子で置換
する原子置換法によるものである上記(6)に記載の光
触媒。
【0015】(9) 塗布法により膜状に形成されたも
のである上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の光
触媒。
【0016】(10) 厚さが、0.1〜300μmで
ある上記(9)に記載の光触媒。
【0017】(11) 前記酸化チタンは、結晶構造が
ルチル型の二酸化チタンを主とするものである上記
(1)ないし(10)のいずれかに記載の光触媒。
【0018】(12) 前記酸化チタンは、結晶構造が
ルチル型の二酸化チタンとアナターゼ型の二酸化チタン
との混合物を主とするものである上記(1)ないし(1
0)のいずれかに記載の光触媒。
【0019】(13) 前記ルチル型の二酸化チタンと
前記アナターゼ型の二酸化チタンとは、重量比で95:
5〜5:95である上記(12)に記載の光触媒。
【0020】(14) 平均粒径が10nm〜10μm
の酸化チタン粉末を用いて製造されたものである上記
(1)ないし(13)のいずれかに記載の光触媒。
【0021】(15) 多孔質である上記(1)ないし
(14)のいずれかに記載の光触媒。
【0022】(16) 空孔率が1〜75%である上記
(15)に記載の光触媒。
【0023】(17) 表面粗さRaが5nm〜10μ
mである上記(15)または(16)に記載の光触媒。
【0024】(18) 光の入射角が90°での環境汚
染物質の分解率をR90とし、光の入射角が52°での環
境汚染物質の分解率をR52としたとき、R52/R90
0.8以上である上記(1)ないし(17)のいずれか
に記載の光触媒。
【0025】(19) 酸化チタンを主とする光触媒材
料を塗布法により、膜状の光触媒に形成することを特徴
とする光触媒の製造方法。
【0026】(20) 塗膜形成後、該塗膜に熱処理を
施す上記(19)に記載の光触媒の製造方法。
【0027】(21) 酸化チタン粉末を主とする光触
媒材料を成形して光触媒を得る光触媒の製造方法におい
て、前記酸化チタン粉末の少なくとも一部に対して、バ
ンドギャップ低減処理を施すことにより、バンドギャッ
プを3.1eV以下の光触媒とすることを特徴とする光
触媒の製造方法。
【0028】(22) 酸化チタン粉末を主とする光触
媒材料を成形して光触媒を得る光触媒の製造方法におい
て、前記光触媒材料の成形体に対して、バンドギャップ
低減処理を施すことにより、バンドギャップを3.1e
V以下の光触媒とすることを特徴とする光触媒の製造方
法。
【0029】(23) 前記成形体は、膜状をなしてい
る上記(22)に記載の光触媒の製造方法。
【0030】(24) 前記酸化チタンは、結晶構造が
アナターゼ型の二酸化チタンを含み、前記アナターゼ型
の二酸化チタンの少なくとも一部は、製造中における昇
温によって、ルチル型の二酸化チタンに変化する上記
(19)ないし(23)のいずれかに記載の光触媒の製
造方法。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光触媒および光触
媒の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態について
詳細に説明する。
【0032】図1は、本発明の光触媒を用いた光触媒体
の実施形態を示す断面図である。図2は、本発明の光触
媒の受光面付近の断面図である。
【0033】図1に示すように、本発明の光触媒3は、
基板(支持体)2に支持され、光触媒体1を構成してい
る。以下、各構成要素について説明する。
【0034】基板2は、光触媒3の支持部材であり、平
板状の部材で構成されている。基板2は、例えば、ガラ
ス材料、各種セラミックス材料、各種プラスチック材
料、ポリカーボネート(PC)のような樹脂材料、また
は、アルミニウム、ステンレス、チタンのような金属材
料等で構成されている。
【0035】基板2の厚さとしては、特に限定されない
が、例えば、0.1〜1.5mm程度であるのが好まし
く、0.8〜1.2mm程度であるのがより好ましい。
また、基板2は、多孔質体のような通気性を有するもの
であってもよい。
【0036】このような基板2の形状としては、板状の
ものに限定されず、例えば、線状、枠状、格子状、網
状、ハニカム構造体等のものであってもよい。なお、こ
のような基板2は、必要に応じて省略することもでき
る。
【0037】基板2の上面には、光触媒3が設置されて
いる。この光触媒3は、図2に示すように、複数の孔3
1を有する多孔質であるのが好ましい。
【0038】光触媒3は、その価電子帯と伝導帯の間隔
(バンドギャップ)よりも大きいエネルギーを持つ例え
ば太陽光等の光(以下、単に「光」と言う。)を入射さ
せると、光触媒3内で電子が励起され、電子と正孔(ホ
ール)とを発生する。
【0039】これらのうち、電子は、光触媒3の表面
(受光面)あるいは孔31内に存在する酸素分子をスー
パーオキサイドイオンに変換し、一方、正孔は、水分子
を水酸基ラジカルに変換する。
【0040】これらのスーパーオキサイドイオンおよび
水酸基ラジカルは、それぞれ、強い酸化力を有し、光触
媒3の表面あるいは孔31内に付着した環境汚染物質を
酸化することにより分解する。
【0041】光触媒3により分解され得る環境汚染物質
としては、例えば、トリクロロエチレン、テトラクロロ
エチレン、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)、ダイオキ
シン、アルデヒド類、ケトン類、アルコール類、フェノ
ール類、揮発性炭化水素のような有機化合物、各種窒素
酸化物(NOX)、各種硫黄酸化物(SOX)、アンモニ
ア、硫化水素のような無機化合物等が挙げられる。
【0042】この光触媒3は、主として酸化チタンで構
成されている。すなわち、光触媒3は、酸化チタン粉末
を主とする光触媒材料を成形することにより得られる。
【0043】酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタ
ン、一酸化チタン、三酸化二チタン等のうちの、1種ま
たは2種以上を組み合わせて用いることができるが、こ
の中でも、酸化チタンとしては、主として二酸化チタン
で構成されるものが好ましい。二酸化チタンは、光に対
する感受性が高く、より容易かつ確実に電子が励起され
る。このため、酸化チタンとして、主として二酸化チタ
ンを用いた光触媒3は、より確実に電子および正孔を発
生することができる。よって、このような光触媒3は、
環境汚染物質をより高い効率で分解すること、すなわ
ち、触媒機能をより効率良く発揮することができる。
【0044】さらに、二酸化チタンとしては、結晶構造
がアナターゼ型の二酸化チタンのみからなるものであっ
てもよいが、ルチル型の二酸化チタンを含むものである
のが好ましい。すなわち、二酸化チタンとしては、ルチ
ル型の二酸化チタンを主とするもの、ルチル型の二酸化
チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとの混合物を主と
するものであるのが好ましい。
【0045】ルチル型の二酸化チタンは、アナターゼ型
の二酸化チタンと比較して、そのバンドギャップが小さ
く(低く)、紫外領域に近い部分の可視光領域の波長の
光を利用することが可能であることから、ルチル型の二
酸化チタンを主とする光触媒3では、光の利用効率に優
れるという利点を有する。
【0046】また、ルチル型の二酸化チタンは、アナタ
ーゼ型の二酸化チタンと比較して、その結晶構造が安定
していることから、ルチル型の二酸化チタンを主とする
光触媒3では、過酷な環境下に曝された場合でも、経年
変化(劣化)が少なく、安定した性能が長期間継続して
得られるという利点を有する。
【0047】さらに、ルチル型の二酸化チタンにアナタ
ーゼ型の二酸化チタンを混合すると、すなわち、ルチル
型の二酸化チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとの混
合物を主とする光触媒3では、ルチル型の二酸化チタン
が有する前記の利点に加えて、アナターゼ型の二酸化チ
タンが有する利点、すなわち、その結晶構造が比較的不
安定であることに起因する電子および正孔を発生し易い
という利点をも併せ持つことができるようになる。
【0048】この場合、ルチル型の二酸化チタンとアナ
ターゼ型の二酸化チタンとは、特に限定されないが、例
えば、重量比で95:5〜5:95程度であるのが好ま
しく、80:20〜20:80程度であるのがより好ま
しい。
【0049】また、光触媒3は、比較的厚さの大きなも
のであってもよいが、膜状(層状)のものが好ましい。
光触媒3を膜状とすることにより、光触媒3は、光の利
用効率がより向上し、触媒機能がより向上するととも
に、この光触媒3を用いた光触媒体1の薄型化(小型
化)、製造コストの削減を図ることができ有利である。
【0050】この光触媒3の厚さ(膜厚)としては、特
に限定されないが、例えば、0.1〜300μm程度で
あるのが好ましく、0.5〜100μm程度であるのが
よりましく、1〜25μm程度であるのがさらに好まし
い。光触媒3の厚さが前記の下限値未満の場合、その空
孔率等によっては、光触媒3に入射した光の透過が著し
く、光の利用効率が低下することがある。一方、光触媒
3の厚さを前記の上限値を超えて厚くしても、それ以
上、光の利用効率の増大が見込めない。
【0051】また、光触媒3のバンドギャップとして
は、特に限定されないが、例えば、3.1eV以下程度
であるのが好ましく、1.9〜2.7eV程度であるの
がより好ましい。バンドギャップが前記の範囲内の光触
媒3では、可視光領域(通常、400〜750nm程
度)の広い範囲の波長の光を利用することができる。よ
って、このような光触媒3では、光の利用効率がより向
上し、触媒機能をより向上することができる。
【0052】ところで、通常、アナターゼ型の二酸化チ
タンそのもののバンドギャップは、3.2eV程度、ル
チル型の二酸化チタンそのもののバンドギャップは、
3.0eV程度である。したがって、光触媒3のバンド
ギャップを前記の範囲内とするためには、何らかの方法
で各固有のバンドギャップを小さく(狭く)する必要が
ある。すなわち、光触媒3には、バンドギャップを小さ
くするバンドギャップ低減処理が施されているのが好ま
しい。
【0053】このバンドギャップ低減処理の方法として
は、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン結晶構
造中に酸素欠陥を形成する方法(以下、この方法を「酸
素欠陥形成法」と言う。)、二酸化チタン結晶構造中の
チタン原子の一部をチタン原子と異なる金属原子で置換
する方法(以下、この方法を「原子置換法」と言う。)
等が挙げられる。以下、これらの方法について詳述す
る。
【0054】 酸素欠陥形成法 酸素欠陥形成法としては、特に限定されないが、例え
ば、酸化チタン粉末あるいは光触媒材料を膜状に形成し
た膜状成形体(以下、「光触媒材料の膜状体(塗膜)」
と言う。)を、水素雰囲気中で熱処理する方法、真空
(例えば10-5〜10-6Torr)下で熱処理する方
法、低温プラズマ処理する方法等が挙げられる。この中
でも、酸素欠陥形成法としては、酸化チタン粉末あるい
は光触媒材料の膜状体を、水素雰囲気中で熱処理する方
法が好ましい。
【0055】これにより、二酸化チタン結晶構造中から
酸素が離脱する。このとき、1個の酸素原子が離脱する
ごとに2個の電子が結晶構造中に残存するようになる。
【0056】 原子置換法 原子置換法としては、例えば、光触媒材料中に、例えば
前記の金属原子あるいはその酸化物からなる無機増感剤
を添加し、かかる無機増感剤が添加された光触媒材料の
膜状体を焼成(焼結)する方法、光触媒材料の膜状体に
対して前記の金属原子をイオン化したものを注入する
(打ち込む)方法等が挙げられる。この中でも、原子置
換法としては、無機増感剤が添加された光触媒材料の膜
状体を焼成する方法がより好ましい。
【0057】これにより、無機増感剤を構成する金属原
子の一部は、二酸化チタン結晶構造の格子の位置に、チ
タン原子の一部と置換する形で存在するようになる。
【0058】なお、このような原子置換法は、光触媒材
料の膜状体に代わり、酸化チタン粉末に対して施すよう
にしてもよい。
【0059】また、前述したように、本発明の光触媒3
は、多孔質であるのが好ましいが、この多孔質の度合を
表す指標としては、例えば、光触媒3の空孔率(気孔
率)、光触媒3の受光面の表面粗さRa等がある。以
下、これらの空孔率および受光面の表面粗さRaについ
て説明する。
【0060】光触媒3の空孔率としては、特に限定され
ないが、例えば、1〜75%程度であるのが好ましく、
15〜65%程度であるのがより好ましく、35〜55
%程度であるのがさらに好ましい。図2は、光触媒3の
受光面付近に、光が入射している状態を模式的に示して
いる。図2に示すように、光触媒3の空孔率を前記の範
囲内とすると、光(図2中の矢印)は、光触媒3の表面
(受光面)から、さらに内部まで侵入し、孔31内で多
重反射される。このため、光は、より広い範囲で、光触
媒3に接触することになる。
【0061】また、光触媒3の空孔率を前記の範囲内と
すると、環境汚染物質は、光触媒3の表面から、さらに
内部にまで到達する。このため、光触媒3は、環境汚染
物質との接触面積を十分に確保することができる。
【0062】このようなことから、光触媒3は、環境汚
染物質をより高い効率で分解することができる。
【0063】また、この場合、光触媒3の表面積は、緻
密質の光触媒の表面積と比較して、大幅に増大(例え
ば、50〜10000倍)する。このため、光触媒3の
光および環境汚染物質との接触面積が増大する。これに
より、本発明の光触媒3では、緻密質の光触媒と比較し
て、環境汚染物質をより高い効率(例えば、50〜10
000倍)で分解できる。
【0064】また、光触媒3の受光面の表面粗さRaと
しては、特に限定されないが、例えば、5nm〜10μ
m程度であるのが好ましく、20nm〜1μm程度であ
るのがより好ましい。光触媒3の受光面の表面粗さRa
を前記の範囲内とすることにより、光触媒3の受光面
は、光および環境汚染物質との接触面積を十分に確保す
ることができる。このため、このような光触媒3は、環
境汚染物質をより高い効率で分解することができる。
【0065】なお、本発明では、光触媒3は、空孔率あ
るいは受光面の表面粗さRaのいずれか一方が前記条件
を満足するのが好ましく、空孔率および受光面の表面粗
さRaの双方が前記条件を満足するのがより好ましい。
【0066】このような光触媒3は、光の入射角が90
°での環境汚染物質の分解率をR90とし、光の入射角が
52°での環境汚染物質の分解率をR52としたとき、R
52/R90が0.8以上程度となるような特性を有してい
るのが好ましく、0.85以上程度であるのがより好ま
しい。このような条件を満たすということは、光触媒3
が光に対する指向性が低い、すなわち、等方性を有する
ということである。
【0067】このような光触媒3を用いた光触媒体1
は、例えば、次のようにして製造することができる。 <1> まず、例えばアルミナ等からなる多孔質体で構
成された基板2を用意する。
【0068】<2> 次に、光触媒3を基板2の上面に
形成する。光触媒3は、光触媒材料を、例えば、ディッ
ピング、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、
スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法、溶射法
等の方法により膜状(厚膜および薄膜)に形成すること
ができる。この中でも、光触媒3の形成方法としては、
各種塗布法によるものが好ましい。
【0069】このような塗布法によれば、その操作は、
極めて簡単であり、かつ、大掛かりな装置も必要としな
いので、光触媒3の製造コストの削減、製造時間の短縮
に有利である。また、塗布法によれば、例えばマスキン
グ等を用いることにより、所望のパターン形状の光触媒
3を容易に得ることができる。
【0070】以下に、光触媒3の塗布法による成形方法
について説明する。なお、以下の説明では、バンドギャ
ップ低減処理の方法(酸素欠陥形成法および原子置換
法)の相違により区別して説明するが、同様の事項につ
いては、後に説明するものでは省略する。さらに、酸素
欠陥形成法については、酸化チタン粉末に対して施す場
合と、光触媒材料の膜状体に対して施す場合とに分けて
説明する。
【0071】<2A>:酸素欠陥形成法を用いる場合
(酸化チタン粉末に対して施す場合) [酸化チタン粉末の調整] (A0) ルチル型の二酸化チタン粉末とアナターゼ型
の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(ルチル型の二酸
化チタン粉末のみの場合も含む)にて、配合し混合して
おく。なお、後述する酸素欠陥形成法による熱処理で、
二酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型からルチル型へ
転移(変化)することを想定している場合には、アナタ
ーゼ型の二酸化チタン粉末のみを用いてもよい。
【0072】これらのルチル型の二酸化チタン粉末の平
均粒径と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末の平均粒径
とは、それぞれ異なっていてもよいし、同じであっても
よいが、異なっている方が好ましい。
【0073】また、酸化チタン粉末全体としての平均粒
径は、特に限定されないが、例えば、10nm〜10μ
m程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であ
るのがより好ましい。酸化チタン粉末の平均粒径を前記
の範囲内とすることにより、酸化チタン粉末の後述する
塗布液(光触媒材料)中での均一性が向上する。また、
このように酸化チタン粉末の平均粒径を小さくすること
により、得られる光触媒3の受光面は、光および環境汚
染物質との接触面積をより大きくすることができる。
【0074】(A1) 次に、前記配合された酸化チタ
ン粉末に、酸素欠陥形成法による熱処理を施す。このと
きの熱処理条件としては、水素雰囲気中で、好ましくは
温度800〜1200℃程度で、0.2〜3時間程度、
より好ましくは温度900〜1200℃程度で、0.5
〜1時間程度とされる。
【0075】このとき、酸化チタン粉末がアナターゼ型
の二酸化チタン粉末を含有している場合、前記の熱処理
温度、熱処理時間によっては、アナターゼ型の二酸化チ
タンは、その結晶構造の一部または全部がルチル型へ転
移することがある。
【0076】なお、酸素欠陥形成法は、前記工程(A
0)前に、ルチル型の二酸化チタン粉末および/または
アナターゼ型の二酸化チタン粉末に対して施し、かかる
二酸化チタン粉末を配合して、酸化チタン粉末を調整す
るようにしてもよい。この場合、本工程(A1)は、省
略することができる。
【0077】[塗布液(光触媒材料)の調整] (A2) まず、前記工程で調整した酸化チタン粉末を
適当量の水(例えば、蒸留水、超純水、イオン交換水、
RO水等)に懸濁する。
【0078】(A3) 次に、かかる懸濁液に、例えば
硝酸等の安定化剤を添加し、メノウ製(またはアルミナ
製)の乳鉢内で十分に混練する。
【0079】(A4) 次いで、かかる懸濁液に、前記
の水を加えてさらに混練する。このとき、前記安定化剤
と水との配合比は、体積比で好ましくは10:90〜4
0:60程度、より好ましくは15:85〜30:70
程度とし、かかる懸濁液の粘度を、例えば0.2〜30
cps程度とする。
【0080】(A5) その後、かかる懸濁液に、例え
ば、最終濃度が0.01〜5wt%程度となるように界
面活性剤を添加して混練する。これにより、塗布液(光
触媒材料)を調整する。
【0081】なお、界面活性剤としては、カチオン性、
アニオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであって
もよいが、好ましくは非イオン性のものが用いられる。
【0082】また、安定化剤としては、硝酸に代わり、
酢酸やアセチルアセトンのような酸化チタンの表面修飾
試薬を用いることもできる。
【0083】また、塗布液(光触媒材料)中には、必要
に応じて、例えばポリエチレングリコールのようなバイ
ンダー、可塑剤、酸化防止剤等の各種添加物を添加して
もよい。
【0084】[光触媒3の形成] (A6) 基板2の上面に、塗布法(例えば、ディッピ
ング等)により、塗布液を塗布・乾燥して光触媒材料の
膜状体(塗膜)を形成する。また、本発明では、塗布・
乾燥の操作を複数回行って積層してもよい。
【0085】次いで、この光触媒材料の膜状体に対し
て、必要に応じて、例えば、温度250〜500℃程度
で0.5〜3時間程度、熱処理(例えば、焼成等)して
光触媒3を得る。これにより、単に接触するのに止まっ
ていた酸化チタン粉末同士は、その接触部位に拡散が生
じ、酸化チタン粉末同士がある程度固着(固定)するよ
うになる。
【0086】(A7) 前記工程(A6)で得られた光
触媒3には、必要に応じて、後処理を行うことができ
る。
【0087】この後処理としては、例えば、光触媒3の
形状を整えるための、研削、研磨等のような機械加工
(後加工)や、その他、洗浄、化学処理のような後処理
等が挙げられる。
【0088】なお、前記の受光面の表面粗さRaは、本
工程(A7)での後処理によって調節するようにしても
よい。
【0089】<2B>:酸素欠陥形成法を用いる場合
(光触媒材料の膜状体に対して施す場合) [酸化チタン粉末の調整]前記工程(A0)と同様の工
程を行う。なお、前記工程(A1)は、省略される。
【0090】[塗布液(光触媒材料)の調整]前記工程
(A2)〜(A5)と同様の工程を行う。
【0091】[光触媒3の形成] (B6) 前記工程(A6)と同様の工程を行った後、
光触媒材料の膜状体に対して酸素欠陥形成法による熱処
理を施して光触媒3を得る。この熱処理条件としては、
水素雰囲気中で、好ましくは温度800〜1200℃程
度で、0.2〜3時間程度、より好ましくは温度900
〜1200℃程度で、0.5〜1時間程度とされる。
【0092】なお、この場合、前記工程(A6)の熱処
理(例えば、焼成等)は、この酸素欠陥形成法による熱
処理で兼用することもできる。
【0093】また、この場合、基板2は、光触媒材料の
膜状体ごと酸素欠陥形成法による熱処理が施されるた
め、基板2の構成材料は、かかる熱処理に耐え得るもの
であるのが好ましい。この後、必要に応じて、前記工程
(A7)を行う。
【0094】<2C>:原子置換法を用いる場合 [酸化チタン粉末の調整] (C0) ルチル型の二酸化チタン粉末とアナターゼ型
の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(ルチル型の二酸
化チタン粉末のみの場合も含む)にて、配合し混合して
おく。なお、後述する原子置換法による焼成で、二酸化
チタンの結晶構造がアナターゼ型からルチル型へ転移
(変化)することを想定している場合には、アナターゼ
型の二酸化チタン粉末のみを用いてもよい。なお、前記
工程(A1)は、省略される。
【0095】[塗布液(光触媒材料)の調整]前記工程
(A2)〜(A4)と同様の工程を行う。
【0096】(C5) 前記工程(A5)と同様の工程
において、懸濁液中に、無機増感剤を添加して混練す
る。これにより、塗布液(光触媒材料)を調整する。
【0097】この無機増感剤としては、特に限定されな
いが、例えば、クロム、バナジウム、ニッケル、鉄、マ
ンガン、銅、亜鉛、ニオブ、またはこれらの酸化物等が
挙げられ、これらのうちの、1種または2種以上を組合
わせて用いることができる。
【0098】また、無機増感剤の含有量としては、特に
限定されないが、例えば、酸化チタン粉末1gに対し
て、0.1〜2.5μmol程度であるのが好ましく、
0.5〜2.0μmol程度であるのがより好ましい。
【0099】なお、酸化チタン粉末がアナターゼ型の二
酸化チタン粉末を含有し、アナターゼ型の二酸化チタン
の結晶構造がルチル型へ転移するのを防止したい場合に
は、焼結助剤を添加するようにする。
【0100】焼結助剤としては、融点が900℃以下の
金属酸化物であるのが好ましい。この金属酸化物として
は、特に限定されないが、例えば、三酸化モリブデン、
三酸化二ビスマス、酸化鉛、酸化パラジウム、三酸化二
アンチモン、二酸化テルル、三酸化二タリウム等が挙げ
られ、これらのうちの、1種または2種以上を組合わせ
て用いることができる。
【0101】この場合、焼結助剤と酸化チタン粉末との
配合比としては、特に限定されないが、例えば、体積比
で1:99〜40:60程度であるのが好ましく、5:
95〜20:80程度であるのがより好ましい。
【0102】これにより、光触媒材料の膜状体を、90
0℃以下の温度で焼成(焼結)できるので、二酸化チタ
ンの結晶構造がアナターゼ型からルチル型へ転移するの
をより確実に防止(抑制)することができる。
【0103】[光触媒3の形成] (C6) 前記工程(A6)と同様の工程を行った後、
光触媒材料の膜状体を、例えば、大気、窒素ガス、また
は各種不活性ガス、真空、減圧状態(例えば、10-1
10-6Torr)のような非酸化性雰囲気中で焼成(焼
結)する。これにより、二酸化チタン結晶構造中のチタ
ン原子の一部が無機増感剤を構成する金属原子の一部と
置換された光触媒3を得る。このときの焼成条件として
は、例えば、次のようにすることができる。
【0104】 酸化チタン粉末がアナターゼ型の二酸
化チタン粉末を含有しない場合、もしくは、二酸化チタ
ンの結晶構造がアナターゼ型からルチル型へ転移するこ
とを想定している場合、好ましくは温度1000〜12
00℃程度で0.5〜10時間程度とされる。
【0105】 二酸化チタンの結晶構造がアナターゼ
型からルチル型へ転移することを想定していない(防止
したい)場合、好ましくは温度900℃以下程度で1〜
26時間程度とされる。
【0106】なお、この場合、前記工程(A6)の熱処
理(例えば、焼成等)は、この原子置換法による焼成で
兼用することもできる。
【0107】また、このような原子置換法は、酸化チタ
ン粉末の調整前に、ルチル型の二酸化チタン粉末および
/またはアナターゼ型の二酸化チタン粉末に施すように
してもよいし、酸化チタン粉末の調整後に、かかる酸化
チタン粉末に施すようにしてもよい。これらの場合、本
工程(C6)の工程は、省略することができる。
【0108】この後、必要に応じて、前記工程(A7)
を行う。以上のような工程を経て、光触媒3が製造され
る。
【0109】ここで、総括すると、ルチル型の二酸化
チタンそのもののバンドギャップは、アナターゼ型の二
酸化チタンそのもののバンドギャップより小さい。ル
チル型の二酸化チタンおよびアナターゼ型の二酸化チタ
ンは、双方ともにバンドギャップ低減処理を施すことに
より、各固有のバンドギャップが小さくなる。というこ
とが言える。
【0110】したがって、これらのことを考慮して、本
発明の光触媒3では、バンドギャップ低減処理が施され
ていないルチル型の二酸化チタン粉末、バンドギャップ
低減処理が施されているルチル型の二酸化チタン粉末、
バンドギャップ低減処理が施されていないアナターゼ型
の二酸化チタン粉末、および、バンドギャップ低減処理
が施されているアナターゼ型の二酸化チタン粉末の4種
の二酸化チタン粉末の配合比や、バンドギャップ低減処
理の方法を適宜選択することにより、前述したようなバ
ンドギャップを得るようにする。
【0111】また、例えば、前記工程(A1)、(B
6)あるいは(C6)における昇温によって、アナター
ゼ型の二酸化チタンを容易にルチル化することができる
ので、入手容易なアナターゼ型の二酸化チタンを用い
て、バンドギャップの低いルチル型の二酸化チタンとす
ることができる。これにより、光触媒3をより容易かつ
安価に製造することができる。
【0112】なお、本発明では、アナターゼ型の二酸化
チタンをルチル化させる昇温(熱処理)工程を、別途設
けるようにしてもよい。
【0113】以上、本発明の光触媒および光触媒の製造
方法を図示の実施形態について説明したが、本発明はこ
れに限定されるものではない。
【0114】例えば、本発明の光触媒は、単体として用
いることができ、この場合、光触媒の形状は、膜状(層
状)のものに限定されず、例えば、線状、ペレット状、
粒状等のいかなるものであってもよい。
【0115】また、本発明の光触媒は、例えば、各種吸
気系または排気系、空気清浄機、ガス処理装置等の気体
流路中に設置して使用したり、あるいは、壁材、浴室、
トイレ等の住宅設備部材、道路の標識、防音壁等に用い
たりすることができる。
【0116】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0117】(実施例1)次のようにして、図1に示す
光触媒体を製造した。
【0118】−1− まず、寸法:縦100mm×横1
30mm×厚さ1.0mmのアルミナからなる多孔質体
(基板)を用意した。
【0119】−2− 次に、かかる多孔質体の上面に、
寸法:縦100mm×横100mm×厚さ10μmの光
触媒を形成した。これは、次のようにして行った。
【0120】[酸化チタン粉末の調整]水素雰囲気中
で、1000℃で0.5時間、熱処理を行うことにより
酸素欠陥形成法を施したルチル型の二酸化チタン粉末
と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末との混合物からな
る酸化チタン粉末を用意した。なお、酸化チタン粉末の
平均粒径は、40nmであり、ルチル型の二酸化チタン
粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末との配合比は、
重量比で60:40とした。
【0121】[塗布液(光触媒材料)の調整]まず、調
整した酸化チタン粉末50gを、蒸留水100mLに懸
濁した。
【0122】次に、かかる懸濁液に硝酸(安定化剤)5
0mLを添加し、メノウ製の乳鉢内で十分に混練した。
【0123】次いで、かかる懸濁液に蒸留水100mL
を加えてさらに混練した。この蒸留水の添加により、硝
酸と水との配合比が、最終的に20:80(体積比)と
なるようにした。なお、このとき、懸濁液の粘度は、5
cpsであった。
【0124】次いで、かかる懸濁液に、非イオン性の界
面活性剤(ICN Biomedical社製、「Triton-X 100」)を
最終濃度が5wt%になるように添加して混練した。こ
れにより、塗布液(光触媒材料)を調整した。
【0125】[光触媒の形成]多孔質体の上面に、ディ
ッピング(塗布法)により光触媒材料の膜状体(塗膜)
を形成し、次いで、温度400℃で2時間、焼成(熱処
理)を行うことにより光触媒を得た。
【0126】なお、得られた光触媒は、空孔率が54
%、受光面の表面粗さRaが0.65μmであった。
【0127】(実施例2)ルチル型の二酸化チタン粉末
と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末との混合物からな
る酸化チタン粉末を用意した。なお、酸化チタン粉末の
平均粒径は、40nmであり、ルチル型の二酸化チタン
粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末との配合比は、
重量比で60:40とした。
【0128】次いで、酸化チタン粉末に、水素雰囲気中
で、1000℃で0.5時間、熱処理を行うことにより
酸素欠陥形成法を施した。
【0129】かかる酸化チタン粉末を用いたこと、およ
び、塗布液中の非イオン性の界面活性剤の最終濃度を4
wt%となるように調整したこと以外は、前記実施例1
と同様にして光触媒を得て、光触媒体を製造した。
【0130】なお、得られた光触媒は、空孔率が50
%、受光面の表面粗さRaが0.56μmであった。
【0131】(実施例3)ルチル型の二酸化チタン粉末
のみからなる酸化チタン粉末を用いたこと、および、塗
布液中の非イオン性の界面活性剤の最終濃度を3wt%
となるように調整したこと以外は、前記実施例2と同様
にして光触媒を得て、光触媒体を製造した。
【0132】なお、得られた光触媒は、空孔率が46
%、受光面の表面粗さRaが0.48μmであった。
【0133】(実施例4)酸化チタン粉末に代わり、光
触媒材料の膜状体に酸素欠陥形成法を施したこと、およ
び、塗布液中の非イオン性の界面活性剤の最終濃度を2
wt%となるように調整したこと以外は、前記実施例2
と同様にして光触媒を得て、光触媒体を製造した。
【0134】なお、光触媒材料の膜状体に対して酸素欠
陥形成法を施すため、酸化チタン粉末への酸素欠陥形成
法による熱処理は省略した。
【0135】[塗布液(光触媒材料)の調整]前記実施
例2と同様にして塗布液(光触媒材料)を調整した。な
お、塗布液中の非イオン性の界面活性剤の最終濃度を2
wt%とした。
【0136】[光触媒の形成]前記実施例2と同様にし
て光触媒材料の膜状体を形成し、次いで、光触媒材料の
膜状体に、水素雰囲気中で、1000℃で0.5時間、
熱処理(酸素欠陥形成法)を行うことにより光触媒を得
た。
【0137】なお、得られた光触媒は、空孔率が41
%、受光面の表面粗さRaが0.40μmであった。
【0138】(実施例5)酸素欠陥形成法に代わり、原
子置換法を用いたこと、および、塗布液中の非イオン性
の界面活性剤の最終濃度を1wt%となるように調整し
たこと以外は、前記実施例4と同様にして光触媒を得
て、光触媒体を製造した。
【0139】[塗布液(光触媒材料)の調整]前記実施
例4と同様にして塗布液(光触媒材料)を調整した。な
お、塗布液中の非イオン性の界面活性剤の最終濃度を1
wt%とした。
【0140】この塗布液に三酸化二クロム(無機増感
剤)と三酸化モリブデン(焼結助剤)とを混合した。な
お、三酸化二クロムおよび三酸化モリブデンの含有量ま
たは配合比は、以下の通りである。
【0141】<三酸化二クロム> 酸化チタン粉末1
gに対して、0.9μmol <三酸化モリブデン> 酸化チタン粉末:三酸化モリブ
デン=90:10(体積比)
【0142】[光触媒の形成]前記実施例4と同様にし
て光触媒材料の膜状体を形成し、次いで、光触媒材料の
膜状体を、大気中で、800℃で3時間焼成することに
より、光触媒を得た。
【0143】なお、得られた光触媒は、空孔率が37
%、受光面の表面粗さRaが0.32μmであった。
【0144】(比較例)ブロック状の光触媒(寸法:縦
100mm×横100mm×厚さ3mm)を得て、前記
実施例1と同様にして基板を配設し、光触媒体を製造し
た。光触媒は、次に示すような金属粉末射出成形法によ
り製造した。
【0145】[酸化チタン粉末の調整]アナターゼ型の
二酸化チタン粉末からのみなる酸化チタン粉末を用意し
た。なお、酸化チタン粉末の平均粒径は、40nmであ
った。
【0146】[混練物(光触媒材料)の調整]調整した
酸化チタン粉末と、三酸化モリブデン(焼結助剤)と、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(バインダー)とを混合
し、該混合物を混練機により、130℃で60分間、大
気中で混練して混練物(コンパウンド)を得た。なお、
三酸化モリブデンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体
の配合比は、以下の通りである。
【0147】<三酸化モリブデン> 酸化チタン粉末:
三酸化モリブデン=90:10(体積比) <エチレン−酢酸ビニル共重合体> 酸化チタン粉末:
エチレン−酢酸ビニル共重合体=35:65(体積比)
【0148】[光触媒の形成]混練物を射出成形機によ
り射出成形して、ブロック状の光触媒材料の成形体を製
造した。なお、このときの成形条件は、材料(混練物)
粘度が2000ps、材料温度が150℃、射出圧力
が、400kgf/cm2、金型温度が25℃であっ
た。
【0149】次に、得られた光触媒材料の成形体を、大
気中で、460℃で10時間、脱脂処理(脱バインダー
処理)を施した。
【0150】次に、脱脂処理がなされた光触媒材料の成
形体を大気中で、800℃で3時間、焼成(熱処理)し
て光触媒を得た。
【0151】なお、得られた光触媒は、空孔率が45
%、受光面の表面粗さRaが0.45μmであった。
【0152】(実験)実施例1〜5および比較例の光触
媒体における光触媒のバンドギャップを、それぞれ、バ
ンドギャップ測定装置を用いて周知の方法により測定し
た。
【0153】(評価)実施例1〜5および比較例におい
て製造した光触媒体を、それぞれ、アセトアルデヒド
(環境汚染物質)濃度を20ppmに保持した透明容器
内に設置し、各光触媒体に対して、人工太陽灯の光を1
0分間照射した。10分間経過後、各透明容器内のアセ
トアルデヒド濃度を測定して、かかる測定結果に基づい
てアセトアルデヒドの分解率を算出した。なお、光触媒
への光の入射角度は、90°と52°とに設定し、光の
入射角度が90°のときのアセトアルデヒドの分解率を
90とし、52°のときのアセトアルデヒドの分解率を
52とした。これらの実験および評価の結果を表1に示
す。
【0154】
【表1】
【0155】表1に示す結果から、比較例の光触媒に比
べて、本発明の光触媒(実施例1〜5)は、いずれも、
バンドギャップが小さく、アセトアルデヒドの分解能力
に優れるものであった。
【0156】また、本発明の光触媒(実施例1〜5)
は、いずれも、R52/R90が0.85以上であり、この
ことは、本発明の光触媒が、光に対する指向性がより低
いことを示すものであった。
【0157】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、環
境汚染物質の分解能力(触媒機能)に優れる光触媒およ
び光触媒の製造方法を提供することができる。
【0158】また、酸化チタンの種類(特に、結晶構
造)、光触媒の厚さ、バンドギャップ等の特性を適宜選
択することにより、環境汚染物質の分解能力がより向上
する。
【0159】また、光触媒を多孔質とし、その空孔率、
受光面の表面粗さRaを選択することにより、環境汚染
物質の分解能力がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒を用いた光触媒体の実施形態を
示す断面図である。
【図2】本発明の光触媒の受光面付近の断面図である。
【符号の説明】
1 光触媒体 2 基板 3 光触媒 31 孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01J 37/08 B01D 53/36 J Fターム(参考) 4D048 AA19 AA21 AA22 AB03 BA07X BA13X BA25X BA26X BA41X BB03 BB17 EA01 4G069 AA03 AA08 BA01A BA01B BA04A BA04B BA13A BA14A BA17 BA22A BA48A BB04A BB04B BC58A BC58B BC59A BC59B EA07 EA11 EB05 EB15X EB15Y EC22X EC22Y EC27 FB23 FB30 FB44 FC08

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主として酸化チタンで構成される光触媒
    であって、前記酸化チタンは、結晶構造がルチル型の二
    酸化チタンを含むことを特徴とする光触媒。
  2. 【請求項2】 主として酸化チタンで構成される光触媒
    であって、膜状をなしていることを特徴とする光触媒。
  3. 【請求項3】 塗布法により形成されたものである請求
    項2に記載の光触媒。
  4. 【請求項4】 厚さが、0.1〜300μmである請求
    項2または3に記載の光触媒。
  5. 【請求項5】 主として酸化チタンで構成される光触媒
    であって、バンドギャップが3.1eV以下であること
    を特徴とする光触媒。
  6. 【請求項6】 主として酸化チタンで構成される光触媒
    であって、バンドギャップ低減処理を施すことにより、
    バンドギャップを3.1eV以下としたことを特徴とす
    る光触媒。
  7. 【請求項7】 前記バンドギャップ低減処理は、酸素欠
    陥を形成する酸素欠陥形成法によるものである請求項6
    に記載の光触媒。
  8. 【請求項8】 前記バンドギャップ低減処理は、チタン
    原子の一部をチタン原子と異なる金属原子で置換する原
    子置換法によるものである請求項6に記載の光触媒。
  9. 【請求項9】 塗布法により膜状に形成されたものであ
    る請求項5ないし8のいずれかに記載の光触媒。
  10. 【請求項10】 厚さが、0.1〜300μmである請
    求項9に記載の光触媒。
  11. 【請求項11】 前記酸化チタンは、結晶構造がルチル
    型の二酸化チタンを主とするものである請求項1ないし
    10のいずれかに記載の光触媒。
  12. 【請求項12】 前記酸化チタンは、結晶構造がルチル
    型の二酸化チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとの混
    合物を主とするものである請求項1ないし10のいずれ
    かに記載の光触媒。
  13. 【請求項13】 前記ルチル型の二酸化チタンと前記ア
    ナターゼ型の二酸化チタンとは、重量比で95:5〜
    5:95である請求項12に記載の光触媒。
  14. 【請求項14】 平均粒径が10nm〜10μmの酸化
    チタン粉末を用いて製造されたものである請求項1ない
    し13のいずれかに記載の光触媒。
  15. 【請求項15】 多孔質である請求項1ないし14のい
    ずれかに記載の光触媒。
  16. 【請求項16】 空孔率が1〜75%である請求項15
    に記載の光触媒。
  17. 【請求項17】 表面粗さRaが5nm〜10μmであ
    る請求項15または16に記載の光触媒。
  18. 【請求項18】 光の入射角が90°での環境汚染物質
    の分解率をR90とし、光の入射角が52°での環境汚染
    物質の分解率をR52としたとき、R52/R90が0.8以
    上である請求項1ないし17のいずれかに記載の光触
    媒。
  19. 【請求項19】 酸化チタンを主とする光触媒材料を塗
    布法により、膜状の光触媒に形成することを特徴とする
    光触媒の製造方法。
  20. 【請求項20】 塗膜形成後、該塗膜に熱処理を施す請
    求項19に記載の光触媒の製造方法。
  21. 【請求項21】 酸化チタン粉末を主とする光触媒材料
    を成形して光触媒を得る光触媒の製造方法において、 前記酸化チタン粉末の少なくとも一部に対して、バンド
    ギャップ低減処理を施すことにより、バンドギャップを
    3.1eV以下の光触媒とすることを特徴とする光触媒
    の製造方法。
  22. 【請求項22】 酸化チタン粉末を主とする光触媒材料
    を成形して光触媒を得る光触媒の製造方法において、 前記光触媒材料の成形体に対して、バンドギャップ低減
    処理を施すことにより、バンドギャップを3.1eV以
    下の光触媒とすることを特徴とする光触媒の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記成形体は、膜状をなしている請求
    項22に記載の光触媒の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記酸化チタンは、結晶構造がアナタ
    ーゼ型の二酸化チタンを含み、前記アナターゼ型の二酸
    化チタンの少なくとも一部は、製造中における昇温によ
    って、ルチル型の二酸化チタンに変化する請求項19な
    いし23のいずれかに記載の光触媒の製造方法。
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