JP2002093728A - 結晶薄板の製造装置 - Google Patents

結晶薄板の製造装置

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JP2002093728A JP2000283035A JP2000283035A JP2002093728A JP 2002093728 A JP2002093728 A JP 2002093728A JP 2000283035 A JP2000283035 A JP 2000283035A JP 2000283035 A JP2000283035 A JP 2000283035A JP 2002093728 A JP2002093728 A JP 2002093728A
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silicon
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Shuji Koma
修二 胡間
Yoshihiro Tsukuda
至弘 佃
Kozaburo Yano
光三郎 矢野
Hiroshi Taniguchi
浩 谷口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶薄板を成長させるために成長面の温度制
御を行うには、冷却能力を変化させる必要があるが、水
冷の場合は冷却水流量を変化させることは困難であり、
空冷の場合も冷却ガスを大幅に変更する場合は装置が大
規模、高コストとなる。本発明は、このような状況を根
本的になくして、結晶薄板を成長させる面の温度制御を
容易に行い、低コストな結晶薄板を得ることを目的とし
ている。 【解決手段】 金属材料もしくは半導体材料のうち少な
くともいずれか一方を含有する結晶性物質の融液に、基
体温度を制御して接触させることにより、基体表面に前
記結晶性物質の結晶薄板を得る装置において、熱伝導率
が異なる材質からなる多層構造にして、該基体の温度を
制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料もしくは
半導体材料を含む融液から結晶薄板を製造する結晶薄板
製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、太陽電池に用いられている多結晶
シリコンウエハの作製方法は、例えば特開平6―649
13号公報に開示されたシリコン等多結晶物体の鋳造方
法がある。すなわち、不活性雰囲気中でリンあるいはボ
ロン等のドーパントを添加した高純度シリコン材料を坩
堝中で加熱溶融させる。そして、このシリコン融液を鋳
型に流し込んで徐冷し、多結晶インゴットを得ようとし
ている。したがって、このようにして得られた多結晶イ
ンゴットから太陽電池用に使用可能な多結晶シリコンウ
エハを作製する場合には、上記インゴットをワイヤーソ
ーや内周刃法などを用いてスライシングすることにな
る。
【0003】他の方法としては、スライス工程のないシ
リコン結晶薄板を作製する特開昭61―275119号
公報に開示されたシリコンリボンの製造方法がある。内
部に水冷もしくは空冷等の冷却手段を持つ円筒型の回転
冷却体の一部をシリコン融液に浸透し、その円筒面に生
成するシリコン凝固核を引き出すことにより、シリコン
リボンを得る方法である。回転冷却体の構造としては、
熱伝導性の良い銅などからなる水冷金属体の外側をセラ
ミックスからなる耐火物で覆った構造である。この方法
によると、平衡分配係数が1より小さい不純物元素が溶
融シリコン側に排出されることによる精製効果によって
純度が向上したシリコンリボンを引き出すことが可能で
ある。
【0004】また、特開平10―29895号公報に開
示されたシリコンリボンの製造装置がある。このシリコ
ンリボンの製造装置においては、シリコンの加熱溶解部
と耐熱材で構成された回転冷却体とで概略構成されてい
る。そして、カーボンネットの一端部が予め巻き付けた
回転冷却体をシリコン融液に直接接触させることによっ
て、上記回転冷却体の表面にシリコンリボンを形成する
ものである。そして、上記形成されたシリコンリボンを
取り出す場合は、回転冷却体を回転させると同時に巻き
付けられたカーボンネットを引き出すことによって、上
記カーボンネットに固着されたシリコンに続くシリコン
リボンを連続的に取り出す構成となっている。これらの
方法によると、インゴットをワイヤーソー等によりスラ
イスしてウエハを得る従来のシリコンウエハの製造法よ
りも、プロセスコスト及び原料費の双方を低減すること
ができるとされている。また、回転冷却体がシリコンを
強制冷却かつ引き出し、支持を行うため、引き出し速度
を大幅に向上することが可能である。回転冷却体の大き
さ、回転数によって、引き出し速度は制御可能である
が、一般的に10cm/分以上で引き出すことが可能で
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のシリコン板あるいはシリコン薄板を製造する方法や
装置には、以下のような問題がある。
【0006】特開平6−64913号公報に開示された
シリコン等多結晶物体の鋳造法においては、多結晶シリ
コンインゴットに対するスライス工程が必要となるた
め、ワイヤーや内周刃の厚み分だけスライスロスが生ず
ることになる。そのため、全体としての歩留まりが悪く
なり、結果として低価格なウエハを提供することが困難
となる。
【0007】特開昭61―275119号公報に開示さ
れたシリコンリボンの製造方法においては、回転冷却体
が水冷もしくは空冷による冷却機構を内蔵するため、回
転冷却体の構造としては、熱伝導性の良い銅などからな
る水冷金属体の外側をセラミックスからなる耐火物で覆
った2層構造となる。該金属体は、冷却方式や、シリコ
ンを凝固させるために必要な冷却効率を満足させる熱伝
導率などにより、使用できる材質が制限される。特に水
冷方式を使用した場合、冷却水を内部に導通させるた
め、耐水性や機密性を必要とするため、前記のように使
用できる材質が酸化しにくく高強度な金属に制限され
る。シリコンを成長させる耐火物に関しても、溶融シリ
コンに直接浸漬し、表面にはシリコンリボンを成長させ
るため、高温高強度であり、かつ溶融シリコンおよびシ
リコンリボンに不純物が拡散することを防ぐためには、
使用できる材質が制限される。このように、回転冷却体
の材質が制限されるため、薄板を成長させるために必要
な、成長面の温度制御を行うためには、冷却能力を変化
させる必要がある。
【0008】しかし、例えば水冷による冷却方式を使用
する場合、冷却水の沸騰や高圧による部材破損を防ぐた
めに冷却水流量を大幅に変更することは困難であり、ま
た冷却水による冷却効率が高いために、回転冷却体の温
度が必要以上に低温となり、成長面の温度制御が困難と
なる。空冷を用いた場合、冷却ガス流量を大幅に変化さ
せることは可能であり、温度制御は比較的容易である
が、融点が1400℃以上である溶融シリコンを凝固さ
せるために必要な冷却能力を満足させるためには、大流
量の冷却ガスを必要とするため、冷却ガスや、それに伴
う配管、供給手段等のユーティリティが高コスト、大規
模となる。
【0009】冷却能力を変更せずに、回転冷却体の温度
を制御するためには、回転冷却体の厚みによって制御す
ることが可能である。しかし、例えば温度をより低くす
る場合、厚みを大幅に薄くする必要があり、回転冷却体
の強度が損なわれる。逆に、温度を高くする場合は、厚
みを大幅に厚くする必要があり、装置が大規模となる。
【0010】特開平10−29895号公報に開示され
たシリコン薄板の製造方法においては、回転冷却体の構
造としては、黒鉛からなる回転冷却体の表面を、高温高
強度であり、かつ溶融シリコンおよびシリコンリボンに
不純物が拡散することを防ぎ、かつシリコンとの濡れ性
が悪い窒化ケイ素等で薄く覆った2層構造となる。表面
の1層は回転冷却体に完全に接着されているため、その
厚みは非常に薄くても構わないため、回転冷却体の温度
はほとんど黒鉛の熱伝導に起因する。この回転冷却体の
材質を変更することによって、回転冷却体の熱伝導率を
変化することは可能であるが、前記と同様に、強度、不
純物拡散防止、耐高温の観点から使用できる材質が制限
される。そのため、薄板を成長させるために必要な、成
長面の温度制御を行うためには、冷却能力を変化させる
必要があるが、前記と同様に、水冷の場合は冷却水を変
化させることは困難であり、空冷の場合も冷却ガスを大
幅に変更する場合は装置が大規模、高コストとなる。本
発明は、このような状況を根本的になくして、結晶薄板
を成長させる面の温度制御を容易に行い、低コストな結
晶薄板を得ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の結晶薄板の製造
装置は、基体を金属材料もしくは半導体材料のうち少な
くともいずれか一方を含有する結晶性物質の融液に接触
させるとともに、該基体温度を制御しつつ、基体表面に
前記結晶性物質の結晶を成長させることで、前記結晶性
物質で形成された薄板を得る装置において、該基体を、
熱伝導率が異なる材質からなる多層構造とすることで、
該基体の温度を制御することを特徴とする。
【0012】また本発明の結晶薄板の製造装置は、前記
結晶薄板製造装置において、該基体を表面層、裏面層と
これらに挟まれた少なくとも1層以上含む中間層からな
る多層構造とし、中間層の熱伝導率が該基体の表面層お
よび裏面層の材質と異なる材質からなる層を少なくとも
1層以上含むことを特徴とする。
【0013】また本発明の結晶薄板の製造装置は、前記
結晶薄板製造装置において、中間層が、表面層または裏
面層の一方に比べて熱伝導率が低い材質からなる層を少
なくとも1層以上含むことを特徴とする。
【0014】また本発明の結晶薄板の製造装置は、前記
結晶薄板製造装置において、中間層が、表面層または裏
面層の一方に比べて熱伝導率が高い材質からなる層を少
なくとも1層以上含むことを特徴とする。
【0015】また本発明の結晶薄板の製造装置は、前記
結晶薄板製造装置において、中間層全体の熱伝導率が、
表面層または裏面層の一方に比べて熱伝導率が低いこと
を特徴とする。
【0016】また本発明の結晶薄板の製造装置は、前記
結晶薄板製造装置において、中間層全体の熱伝導率が、
表面層または裏面層の一方に比べて熱伝導率が高いこと
を特徴とする。
【0017】本発明では、金属材料もしくは半導体材料
のうち少なくともいずれか一方を含有する結晶性物質
(以下、結晶性物質)の融液に基体を接触させ、基体表
面に融液を固化成長することで薄板を得ることが可能で
ある。このとき、結晶性物質融液に接する直前の基体表
面の温度を制御することによって、基体表面に生成する
結晶核の密度と生成速度、結晶核からの成長する結晶の
成長速度を制御することが可能であり、しいては結晶性
(結晶粒径)や板厚を制御することが可能である。基体
を融液と接触させる方法としては、基体表面(成長面)
を直接結晶性物質融液に浸漬させる方法や基体表面に結
晶性物質融液を供給する方法などが考えられるが、例と
して、もっとも単純な方法である、基体表面を重力に対
して下方に向け、基体表面が向いている方向(下方向)
に移動させることで基体表面直下に位置する結晶性物質
融液に基体表面を浸漬し、続いてこれを上方向に移動さ
せることで基体表面を結晶性物質融液から取り出す装置
について、作用を説明する。
【0018】まず、基体が単層構造の場合について、作
用を示す。基体1の構造は、図2に示すように、内部に
冷却媒体7が通過する経路を設けた直方体とする。冷却
媒体7は基体1の裏面33の熱を奪うことで、基体全体
を冷却する。基体材質は、単一材質であり、基体表面2
2の温度を変更する方法としては、冷却媒体7の熱を奪
う能力を増減させる方法がある。しかし、前記のよう
に、水冷による冷却方式を使用する場合、冷却水流量を
大幅に変更することは困難であり、空冷を用いた場合、
冷却ガス流量を大幅に変化させることは可能であるが、
特に基体表面22を低温に冷却するためには、大流量の
冷却ガスを必要とするため、冷却ガスや、それに伴う配
管、供給手段等のユーティリティが高コスト、大規模と
なる。次に、基体の厚み(基体表面22から裏面33ま
での距離)の変更することによって表面温度を大幅に変
更する方法では、基体表面22の温度は厚みにほぼ比例
するため、基体厚みを大幅に変更する必要がある。とこ
ろが、基体厚みは、装置上の問題や強度の問題から大幅
に変更することが不可能なことが多いため、基体厚み変
更による温度制御は困難である。基体1の材質を変更し
て、熱伝導率を変更することによる基体表面温度の制御
方法では、基体の熱伝導率を細かく変更することは不可
能であり、かつ、結晶性物質の融液5に浸漬する基板表
面22に求められる、耐熱性に優れ、使用圧力に耐えら
れ、かつ結晶薄板を汚染しないものという条件と、冷却
方式による条件、特に水冷方式の場合、使用水圧に耐え
られ、かつ耐水性という条件の両方を満たした材質とい
う制限を受けるため、表面の温度制御は困難である。
【0019】次に、基体が2層構造の場合について、作
用を示す。図3に示すように、基体1の構造は、内部に
冷却媒体7が通過する経路を設けた直方体型の裏面層3
に基体表面22(成長面)を構成する材質からなる表面
層2を配したものである。裏面層3の材質は、前記のよ
うに、冷却方式などによって制限される。表面層2の材
質も、耐熱性や不純物汚染防止の観点から制限を受け
る。しかし、この場合は、前記の単層基体の場合とは異
なり、2種類の熱伝導率を有する基体1を使用する事が
可能である。表面層2と裏面層3の熱伝導率のうち、高
い方の熱伝導率をka、低い方をkbとする。もし、表
面層2と裏面層3の厚みに制限がない場合、表面層2の
厚みは0mm〜基体厚みまで変化することができる。こ
のとき、基体厚みを変更しないとすると、裏面層3の厚
みは基体厚み〜0mmまで変化することになる。多層構
造の基体全体の見た目の熱伝導率Kは、各層iの熱伝導
率(ここでは、熱伝導率の温度による変化は無視する)
をki、厚みをLiとすると、(数1)式にて概算でき
る。
【0020】 1/K=Σ(Li/ki) ただし、ΣLi=基体厚み……(数1) この式が示すように、2層基体の見た目の熱伝導率は、
kb〜kaの範囲となる。実際は、表面層2、裏面層3
ともに、各層の強度や製法によって、厚みに制限を受け
る(最小厚み、最大厚みが決められる)ため、基体の見
た目の熱伝導率は、kb〜kaより狭い範囲となるが、
このように、表面層と裏面層の厚みの比率のみを変更す
ることで、基体の厚みを変更しなくても熱伝導率を細か
く、大幅に制御することが可能である。
【0021】次に、基体が3層以上の多層構造の場合に
ついて、作用を示す。図1に示すように、基体1の構造
は、内部に冷却媒体7が通過する経路を設けた直方体型
の裏面層3と基体表面22(成長面)を構成する材質か
らなる表面層2の間に、中間層4を配したものである。
裏面層3の材質は、前記のように、冷却方式などによっ
て制限される。表面層2の材質も、耐熱性や不純物汚染
防止の観点から制限を受ける。中間層4は、不純物汚染
や耐水性などの制限を受けないため、比較的自由に材質
を変更し、熱伝導率を変えることが可能である。中間層
4を1層以上の多層構造とする場合、熱伝導率の観点か
ら、全体を総括した1層の中間層と仮定することが可能
であるため、多層構造の基体に関しては、表面層2、中
間層4、裏面層3を含む3層構造の作用を説明する。前
記と同様に、表面層2と裏面層3の熱伝導率のうち、高
い方の熱伝導率をka、低い方をkbとする。多層中間
層の全体の熱伝導率は、(数1)の式にて概算できるた
め、中間層4の層数によらず、中間層の熱伝導率をkc
とする。多層中間層4のうち少なくとも1層が、表面層
2および裏面層3の両方の熱伝導率以上の値である場
合、各層の厚みを適切に決定することで、(数1)から
計算できるように、中間層4の全体の熱伝導率kcをk
a以上とすることが可能である。同様に、多層中間層4
のうち少なくとも1層が、表面層2および裏面層3の両
方の熱伝導率以下の値である場合、(数1)から計算で
きるように、kcをkb以下とすることが可能である。
また、表面層2に接している中間層3に熱伝導率が高い
材質を配することは、表面層2の熱伝導率が低い場合に
起こりやすい基体表面22の面内温度分布を低減する効
果もある。
【0022】中間層4の熱伝導率kcが、表面層2の熱
伝導率と裏面層3の熱伝導率の間の値である場合(kb
<kc<ka)、各層の厚みを変化させない場合でも、
中間層の熱伝導率kc(つまり、中間層の材質)を上記
範囲内で変更するだけで、基体全体の熱伝導率をkb〜
kaの範囲内で微調整することが可能である。
【0023】中間層4の熱伝導率kcが、表面層2およ
び裏面層3の両方の熱伝導率以上の値である場合(ka
<kc)、各層の厚みを変化させたときの基体全体の熱
伝導率はkb〜kcの範囲となり、2層構造では実現不
可能な範囲(kb以下およびka以上)の熱伝導率を、
3層構造を用いることによって実現することが可能とな
る。
【0024】中間層4の熱伝導率kcが、表面層2およ
び裏面層3の両方の熱伝導率以下の値である場合(kb
>kc)、各層の厚みを変化させたときの基体全体の熱
伝導率はkc〜kaの範囲となり、2層構造では実現不
可能な範囲(kb以下およびka以上)の熱伝導率を、
3層構造を用いることによって実現することが可能とな
る。
【0025】基体表面22に結晶性物質の融液5を接触
させて薄板を成長させる場合、結晶性物質融液に接する
直前の基体表面22の温度を制御することによって、基
体表面22に生成する結晶核の密度と生成速度、結晶核
からの成長する結晶の成長速度を制御することが可能で
ある。基体表面の温度を結晶性物質の融点に比べて非常
に低く設定した場合、基体表面に生成する結晶核の密度
と結晶の成長速度は増加する。そのため、結晶薄板の板
厚は、基体表面温度を低くするに従い、厚くなる。基体
表面の温度を結晶性物質の融点近傍付近の高温に設定し
た場合、基体表面に生成する結晶核の密度と結晶の成長
速度は減少する。そのため、結晶薄板の板厚は、基体表
面温度を高くするに従い、薄くなる。ただし、全面成長
しにくくなり、基体1と融液5が化学反応を起こしやす
くなる。基体の材質、融液との濡れ性、結晶性物質の種
類によって温度条件は異なるが、結晶核が生成する速度
と、結晶核から結晶が成長する速度のどちらが速いかに
よって、結晶粒の粒径を制御することが可能である。つ
まり、前記のように、基体を多層構造とすること、各層
の厚みを変更すること、各層の材質を変更することで基
体表面温度を制御することによって、結晶性(結晶粒の
粒径)、板厚を制御できるため、目的に応じた薄板を容
易に得ることが可能である。
【0026】特に、前記装置を用いて、シリコン薄板を
取出し、多結晶太陽電池を製造する場合、シリコン薄板
の板厚は薄く、結晶粒径は大きい方が、太陽電池の光電
変換効率が増加するため、望ましい。この場合、基体の
厚みや表面層材質を変更しなくても、裏面層、中間層材
質を変更することで、目的のシリコン薄板を得ることが
でき、太陽電池の変換効率を向上することが可能であ
る。
【0027】
【発明の実施形態】本発明の一実施形態を説明するが、
本発明の範囲は、これにより限定されない。本実施例で
は、結晶性物質の融液を基体表面で固化成長させること
により、結晶性物質の単結晶もしくは多結晶薄板を製造
することが可能である。結晶性物質の融液には、シリコ
ン、ゲルマニウム、ガリウム、ひ素、インジウム、リ
ン、硼素、アンチモン、亜鉛、すずなどの半導体材料を
含む、または、アルミニウム、ニッケル、鉄など金属材
料を含む融液を使用することができる。本実施形態で
は、シリコン融液を固化することでシリコン多結晶薄板
の製造を行った。 (実施例1)実施例1は、図1に示すように、基体表面
22を重力に対して下方に向け、基体表面22が向いて
いる方向(下方向)に基体1を移動させることで基体表
面22直下に位置するシリコン融液5に基体表面22を
浸漬し、続いてこれを上方向に移動させることで基体表
面22をシリコン融液から取り出す装置である。
【0028】本実施例では、基体の温度制御は、冷却水
を循環しつつ基体の裏面の熱を奪うことで冷却する水冷
方式を使用しているが、冷却媒体は気体とすることも可
能である。
【0029】基体1の構造は、3層構造とするが、中間
層4を表面層2もしくは裏面層3と一体化し材質を等し
くすることで2層構造の検討を行うことが可能である。
【0030】本実施例では、(1)表面層および裏面層
の両方より低い熱伝導率を有する中間層を持つ3層基
体、(2)中間層と表面層と裏面層のうち熱伝導率が小
さい方の層と中間層が一体化された2層基体、(3)中
間層と表面層と裏面層のうち熱伝導率が大きい方の層と
中間層が一体化された2層基体、(4)表面層および裏
面層の両方より低い熱伝導率を有する中間層を持つ3層
基体、の4条件の基体1を用意し、シリコン薄板を成長
した。基体1全体の熱伝導率は、(1)が最も低く、
(4)が最も高い。表面層2、中間層4、裏面層3の厚
みはそれぞれ、10mm、5mm、10mmとした。
【0031】(1)〜(4)を通して、表面層2は、耐
熱性、材質としては耐熱性に優れ、使用圧力に耐えら
れ、かつシリコン薄板2を汚染しないものとして、カー
ボンやセラミックス(炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケ
イ素、ホウ化ケイ素、石英、アルミナなどの炭化物、酸
化物、窒化物、ホウ化物)、高融点金属(ニッケル、白
金、モリブデン、などを少なくとも1種類以上含む金
属)が望まれる。また、これらに高融点材料の薄膜を被
覆した表面層も使用可能であるが、薄膜の膜厚は表面層
厚みに対して充分薄いため、熱導電率に関しては無視す
ることが可能である。本実施例ではカーボン部材を用い
た。裏面層3は、冷却水が蒸発することを防ぐために圧
力をかけて冷却水を循環させること、基体をシリコン融
液に浸漬し、取出す動作を行う必要があることなどか
ら、強度、耐水性が強い材質として、ステンレス鋼や銅
などの材質が望まれる。本実施例では、(1)〜(4)
を通して、裏面層3に熱伝導率は低いが強度が高いステ
ンレス鋼を使用した場合と、熱伝導率の高い銅を使用し
た場合の2通りについて検討した。
【0032】中間層4は、材質を変更することで様々な
熱伝導率を選択することが可能である。本実施例では、
(2)の場合は、ステンレス鋼の場合は裏面層(ステン
レス鋼)と、裏面層が銅の場合は表面層(カーボン)と
一体化されている。(3)の場合は、裏面層がステンレ
ス鋼の場合は表面層(カーボン)と、銅の場合は裏面層
(銅)と一体化されている。(1)の場合はカーボンお
よびステンレス鋼、銅より熱伝導率の低い石英を、
(4)の場合は、裏面層が銅の場合はカーボンおよびス
テンレス鋼より熱伝導率の高いアルミニウムを、裏面層
が銅の場合はカーボンおよび銅より熱伝導率の高い銀を
中間層の材質とした。このように各層の材質を設定する
ことで、基体全体の熱伝導率は、(1)から(4)の順
に高くなる。
【0033】
【表1】
【0034】表1は本発明における実施例1、3、4に
よるシリコン薄板製造装置の基体表面層、中間層、裏面
層の材質を示す。これら組合せ以外に上記表面層材質、
裏面層材質、中間層材質の各種組合せが可能である。
【0035】多層構造の基体の各層を接続、一体化する
方法としては、例えばネジなどで固定するなど、機械的
に接続する方法が考えられる。基体全体の熱伝導率を低
下したい場合、各層界面に凹凸加工、溝加工をすること
により、各層同士の接触面積を減少させることが望まし
い。この場合、各層界面に空隙ができることにより、各
層間の熱伝達が減少することによって、基体全体の熱伝
導率を低下することが可能である。基体全体の熱伝導率
を向上したい場合、各層界面はなるべく平坦とし、各層
同士の接触面積を増大させることが望ましい。さらに、
各層間の熱伝達を向上させる方法としては、基体を多層
構造に積み重ねた後、熱を加えるなどの方法で、各層を
化学的に接続する方法が望ましい。本実施例では、基体
の側面に一体化用の接続部を設け、ネジによって各層を
接続した(図示せず)。
【0036】基体表面22の形状は、平面や曲面、点や
線状、平面状の頂点を持つ溝加工された面など、目的に
応じた形状とすることが可能であるが、本実施例では平
面とした。
【0037】基体表面直下に、るつぼ6と、るつぼ6の
まわりにシリコンを溶融する加熱ヒーターを配する。こ
れらは直方体の装置外壁および断熱材の中に収納されて
いる(図示せず)。装置内部は、断熱材に囲まれて、内
部をアルゴンガス雰囲気下に保持可能にシールされてい
る。
【0038】ヒーターによってるつぼ6を加熱し、るつ
ぼ6内のシリコンを溶融した後、基体1をシリコン融液
5直上に保持し安定させた後、基体表面22に設置した
熱電対(図示せず)を用いて基体表面の温度を測定し
た。
【0039】
【表2】
【0040】表2は本発明における実施例1によるシリ
コン薄板製造装置の基体表面温度測定およびシリコン薄
板製造装置により製造されたシリコン薄板の板厚と結晶
粒径を示し、熱電対による基体表面温度の測定結果であ
る。裏面層にステンレス鋼および銅を使用した場合の
(2)と(3)の表面温度の差は、それぞれ約85℃お
よび約65℃であり、2層構造においても熱伝導率を変
化させることが可能となり、また、表面層と裏面層の厚
みの比率を変化することで、表面温度を制御できること
が可能である。本実施例では、2層構造に関しては、表
面層、裏面層の厚みは10mmの幅で変化させたが、さ
らに大きく変化させることで、前記より広い範囲で制御
することが可能である。次に、裏面層にステンレス鋼お
よび銅を使用した場合の(1)と(4)の表面温度の差
は、それぞれ約180℃および約515℃であり、3層
構造にすることで熱伝導率をさらに大きく変化させるこ
とが可能となり、表面温度を広範囲で制御できることが
可能となった。本実施例では、表面層、中間層、裏面層
の厚みは固定であるが、これらを変化させることによっ
て、基体厚みを変化させない場合でも、2層構造に比べ
てさらに広い範囲で制御することが可能である。
【0041】次に、熱電対を設置していない基体1をシ
リコン融液5直上に保持し安定させた後、シリコン融液
に20mm浸漬し、直後に引き上げることで、シリコン
薄板を成長させた。雰囲気の温度が室温まで下がるのを
待ち、シリコン薄板を取り出した後、薄板の板厚を測定
した。続いて、アルカリエッチングによって薄板の結晶
粒界を画像化し、薄板の結晶粒の平均粒径を測定した。
【0042】表2に示すように、薄板の板厚は表面温度
が低くなるに従い、厚くなる。結晶粒径は、結晶核の生
成速度と結晶成長速度との兼ね合いによって決まるた
め、最大結晶粒径をとる表面温度の最適値が存在する
が、裏面層にステンレス鋼を用いた場合は、中間層の熱
伝導率を表面層および裏面層の熱伝導率に比べて大きく
設定することによって、結晶粒径が大きいシリコン薄板
を得ることが可能である。裏面層に銅を用いた場合にお
いては、中間層の熱伝導率を表面層および裏面層の熱伝
導率に比べて小さく設定することによって、結晶粒径が
大きいシリコン薄板を得ることが可能である。本実施例
においては、連続製造のための複雑な基体移動機構や薄
板の大面積化は考慮していないが、量産化を検討する場
合は、基体により強い強度を要求する必要が生じる可能
性が大きく、熱伝導率が小さいステンレス鋼を使用する
必要も考えられる。
【0043】本実施例ではシリコン薄板の製造を行った
が、シリコン以外の結晶性物質の薄板を製造する場合、
物質によって融液の融点、雰囲気の温度、表面温度、表
面温度と薄板の板厚、結晶粒径の関係は異なる。そのた
め、本実施例のように、表面温度の制御範囲が広範囲化
されたことにより、様々な結晶性物質の薄板に対して、
目的に合わせた板厚、結晶粒径を得ることが可能となっ
た。 (実施例2)実施例2も、実施例1と同様に、図1に示
すように、基体表面22を重力に対して下方に向け、基
体表面22が向いている方向(下方向)に基体1を移動
させることで基体表面22直下に位置するシリコン融液
5に基体表面22を浸漬し、続いてこれを上方向に移動
させることで基体表面22をシリコン融液から取り出す
装置において説明する。実施例1においては、中間層4
の熱伝導率が、表面層2および裏面層3の熱伝導率以上
/以下の場合について説明したが、本実施例では、中間
層4の熱伝導率を、表面層2および裏面層3の熱伝導率
のうち大きい方(ka)以下であり、かつ、小さい方
(kb)以上の場合、つまり、kb≦中間層の熱伝導率
≦kaの場合について説明する。基体の温度制御は、冷
却水を循環しつつ基体の裏面の熱を奪うことで冷却する
水冷方式を使用しているが、冷却媒体は気体とすること
も可能である。
【0044】基体1の構造は、3層構造とする。本実施
例では、表面層の材質をカーボンとし、裏面層の材質を
銅もしくはステンレス鋼とした。表面層2、中間層4、
裏面層3の厚みはそれぞれ、10mm、5mm、10m
mとした。
【0045】中間層の材質は、使用条件において融解、
軟化しないこと以外の制限は無いため、使用温度範囲内
で固体であればどのような材質であっても使用可能であ
る。例えば、Ti、Zr、Sb、B、Pt、Fe、N
i、Co、Zn、Mo、Si、Mg、W、Be、Al、
Auなどの固体、もしくは、これらを少なくとも1種類
以上含む化合物、セラミックス、金属、樹脂などが使用
可能である。
【0046】本実施例では、裏面層にステンレス鋼を使
用した場合の中間層に、カーボンとステンレス鋼の間の
熱伝導率を持つTi、Zr、Sb、B、Pt、Fe、N
i、Co、裏面層に銅を用いた場合の中間層に、カーボ
ンと銅の間の熱伝導率を持つZn、Mo、Si、Mg、
W、Be、Al、Auを使用した。本実施例では、基体
の側面に一体化用の接続部を設け、ネジによって各層を
接続した。基体表面22の形状は平面とした。
【0047】基体表面直下に、るつぼ6と、るつぼ6の
まわりにシリコンを溶融する加熱ヒーターを配する。こ
れらは直方体の装置外壁および断熱材の中に収納されて
いる(図示せず)。装置内部は、断熱材に囲まれて、内
部をアルゴンガス雰囲気下に保持可能にシールされてい
る。
【0048】ヒーターによってるつぼ6を加熱し、るつ
ぼ6内のシリコンを溶融した後、基体1をシリコン融液
5直上に保持し安定させた後、基体表面22に設置した
熱電対(図示せず)を用いて基体表面の温度を測定し
た。
【0049】図6は、裏面層にステンレス鋼を用いた場
合の、熱電対による基体表面温度の測定結果である。例
えば、裏面層の厚みを10mmと固定した場合、2層構
造の場合は中間層がカーボン(C)の場合と等しくな
り、表面温度は約850℃である。表面層を10mmと
固定した場合、2層構造の場合は中間層がステンレス鋼
(SUS)の場合と等しくなり、表面温度は約940℃
である。基体全体の厚みを変更せずに、基体表面温度を
850℃〜940℃の範囲で細かく設定しようとする
と、表面層と裏面層の厚みを両方とも変化させる必要が
あるが、結晶薄板を成長させる表面層や、可動部や冷却
媒体通路と一体化されている裏面層の厚みを変更するこ
とは困難な場合が多い。そこで、表面層と裏面層の厚み
を変化させず、中間層の材質だけを変化させた場合、基
体表面の温度は850℃〜940℃の範囲で微調整可能
であることがわかった。
【0050】図7は、裏面層に銅を用いた場合の、熱電
対による基体表面温度の測定結果である。例えば、裏面
層の厚みを10mmと固定した場合、2層構造の場合は
中間層がカーボン(C)の場合と等しくなり、表面温度
は約400℃である。表面層を10mmと固定した場
合、2層構造の場合は中間層が銅(Cu)の場合と等し
くなり、表面温度は約330℃である。前記と同様、表
面層と裏面層の厚みを変化させず、中間層の材質だけを
変化させた場合、基体表面の温度は330℃〜400℃
の範囲で微調整可能であることがわかった。 (実施例3)実施例3は、図4に示すように、内部に冷
却媒体7が通過する中空円筒型の3層基体1を回転さ
せ、基体表面に直接シリコン融液5を流し込むことによ
って、基体表面22にシリコン薄板を成長させる装置で
ある。
【0051】本実施例では、実施例1と同様に、水冷方
式を使用した。
【0052】本実施例では、実施例1と同様に、(1)
表面層および裏面層の両方より低い熱伝導率を有する中
間層を持つ3層基体、(2)中間層と表面層と裏面層の
うち熱伝導率が小さい方の層と中間層が一体化された2
層基体、(3)中間層と表面層と裏面層のうち熱伝導率
が大きい方の層と中間層が一体化された2層基体、
(4)表面層および裏面層の両方より低い熱伝導率を有
する中間層を持つ3層基体、の4条件の基体1を用意
し、シリコン薄板を成長した。表面層2、中間層4、裏
面層3の厚みはそれぞれ、10mm、5mm、10mm
とした。(1)〜(4)を通して、表面層2の材質はカ
ーボンとした。裏面層3は、ステンレス鋼と銅を使用し
た場合の2通りについて検討した。中間層4は、(2)
の場合は、裏面層がステンレス鋼の場合は裏面層と、銅
の場合は表面層と一体化されている。(3)の場合は、
裏面層がステンレス鋼の場合は表面層と、銅の場合は裏
面層と一体化されている。(1)の場合は石英を、
(4)の場合は、裏面層がステンレス鋼の場合はアルミ
ニウムを、銅の場合は銀を、中間層の材質とした。基体
表面の形状は、平坦な円筒側面22とした。
【0053】基体表面22直上に、るつぼ6と、るつぼ
6のまわりにシリコンを溶融する加熱ヒーターを配す
る。これらは直方体の装置外壁および断熱材の中に収納
されている(図示せず)。装置内部は、断熱材に囲まれ
て、内部をアルゴンガス雰囲気下に保持可能にシールさ
れている。
【0054】ヒーターによってるつぼ6を加熱し、るつ
ぼ6内のシリコンを溶融した後、基体1を回転させなが
ら安定させた後、基体表面22に設置した熱電対(図示
せず)を用いて基体表面22の温度を測定した。
【0055】
【表3】
【0056】本発明における実施例3によるシリコン薄
板製造装置の基体表面温度測定およびシリコン薄板製造
装置により製造されたシリコン薄板の板厚と結晶粒径を
示し、熱電対による基体表面温度の測定結果である。裏
面層にステンレス鋼および銅を使用した場合の(2)と
(3)の表面温度の差は、それぞれ約95℃および約6
5℃であった。これに対して、裏面層にステンレス鋼お
よび銅を使用した場合の(1)と(4)の表面温度の差
は、それぞれ約175℃および約505℃であった。そ
のため、実施例1と同様に、3層構造にすることで、熱
伝導率をさらに大きく変化させることが可能となり、表
面温度を広範囲で制御できることが可能となった。
【0057】次に、熱電対を設置していない基体1を回
転しながらシリコン融液5、るつぼ6直下に保持し安定
させた後、るつぼ6を傾動させることでシリコン融液5
を基体表面22に流し込み、1回転した後にシリコン融
液5の注湯を終了することで、シリコン薄板を基体表面
全体に成長させた。雰囲気の温度が室温まで下がるのを
待ち、シリコン薄板を取り出した後、薄板の板厚、平均
粒径を測定した。
【0058】表3に示すように、薄板の板厚は表面温度
が低くなるに従い、厚くなる。実施例1と同様に、裏面
層にステンレス鋼を用いた場合は、中間層の熱伝導率を
表面層および裏面層の熱伝導率に比べて大きく設定する
ことによって、結晶粒径が大きいシリコン薄板を得るこ
とが可能である。裏面層に銅を用いた場合においては、
中間層の熱伝導率を表面層および裏面層の熱伝導率に比
べて小さく設定することによって、結晶粒径が大きいシ
リコン薄板を得ることが可能である。 (実施例4)実施例4は、図5に示すように、内部に冷
却媒体7が通過する中空円筒型の3層基体1を回転さ
せ、基体表面に向かってシリコン融液が充填されている
るつぼを押し上げることによって回転する基体をシリコ
ン融液に浸漬し、基体表面にシリコン薄板を成長させる
装置である。
【0059】本実施例では、実施例1と同様に、(1)
表面層および裏面層の両方より低い熱伝導率を有する中
間層を持つ3層基体、(2)中間層と表面層と裏面層の
うち熱伝導率が小さい方の層と中間層が一体化された2
層基体、(3)中間層と表面層と裏面層のうち熱伝導率
が大きい方の層と中間層が一体化された2層基体、
(4)表面層および裏面層の両方より低い熱伝導率を有
する中間層を持つ3層基体、の4条件の基体1を用意
し、シリコン薄板を成長した。表面層、中間層、裏面層
の厚みはそれぞれ、10mm、10mm、5mmとし
た。(1)〜(4)を通して、表面層の材質はカーボン
とした。裏面層は、ステンレス鋼と銅を使用した場合の
2通りについて検討した。中間層は、(2)の場合は、
裏面層がステンレス鋼の場合は裏面層と、銅の場合は表
面層と一体化されている。(3)の場合は、ステンレス
鋼の場合は表面層と、裏面層が銅の場合は裏面層と一体
化されている。(1)の場合は石英を、(4)の場合
は、裏面層がステンレス鋼の場合はアルミニウムを、銅
の場合は銀を、中間層の材質とした。基体表面の形状
は、平坦な円筒側面22とした。
【0060】基体表面22直下に、るつぼ6と、るつぼ
6のまわりにシリコンを溶融する加熱ヒーターを配す
る。これらは直方体の装置外壁および断熱材の中に収納
されている(図示せず)。装置内部は、断熱材に囲まれ
て、内部をアルゴンガス雰囲気下に保持可能にシールさ
れている。
【0061】ヒーターによってるつぼ6を加熱し、るつ
ぼ6内のシリコンを溶融した後、基体1を回転させなが
ら安定させた後、基体表面22に設置した熱電対(図示
せず)を用いて基体表面22の温度を測定した。
【0062】
【表4】
【0063】表4は本発明における実施例4によるシリ
コン薄板製造装置の基体表面温度測定およびシリコン薄
板製造装置により製造されたシリコン薄板の板厚と結晶
粒径を示し、熱電対による基体表面温度の測定結果であ
る。裏面層にステンレス鋼および銅を使用した場合の
(2)と(3)の表面温度の差は約85℃および約65
℃であった。また、裏面層にステンレス鋼および銅を使
用した場合の(1)と(4)の表面温度の差は約180
℃および約515℃であった。そのため、実施例1と同
様に、3層構造にすることで、熱伝導率をさらに大きく
変化させることが可能となり、表面温度を広範囲で制御
できることが可能となった。
【0064】次に、熱電対を設置していない基体1を回
転しながらシリコン融液5直上に保持し安定させた後、
るつぼ6を上昇させ、基体1をシリコン融液5に20m
m浸漬し、1回転した後にるつぼ6を引き下げること
で、シリコン薄板を成長させた。雰囲気の温度が室温ま
で下がるのを待ち、シリコン薄板を取り出した後、薄板
の板厚、平均粒径を測定した。
【0065】表4に示すように、薄板の板厚は表面温度
が低くなるに従い、厚くなる。実施例1と同様に、裏面
層にステンレス鋼を用いた場合は、中間層の熱伝導率を
表面層および裏面層の熱伝導率に比べて大きく設定する
ことによって、結晶粒径が大きいシリコン薄板を得るこ
とが可能である。裏面層に銅を用いた場合においては、
中間層の熱伝導率を表面層および裏面層の熱伝導率に比
べて小さく設定することによって、結晶粒径が大きいシ
リコン薄板を得ることが可能である。 (実施例5)実施例1、3、4によって製造されたシリ
コン薄板を用いて、太陽電池を作製した。作製の手順の
一例は、洗浄、テクスチャエッチング、拡散層形成、酸
化膜除去、反射防止膜形成、バックエッチ、裏面電極形
成、受光面電極形成の順序であり、一般的な手法であ
る。
【0066】
【表5】
【0067】表5はシリコン薄板製造装置により製造さ
れたシリコン薄板を使用した太陽電池の特性を、ソーラ
ーシミュレータによって測定した結果を示す。実施例
1、3、4の(2)、(3)のように、2層構造の基体
を用いた場合の太陽電池の変換効率は、平均で9.5
%、最高14.1%であったが、(1)のように、裏面
層にステンレス鋼を用いた場合においては、中間層の材
質を、表面層および裏面層の材質に比べて熱伝導率の高
い材質とすることで、平均14.5%、最大14.7%
に向上した。また、裏面層に銅を用いた場合、中間層の
材質を、表面層および裏面層の材質に比べて熱伝導率の
低い材質とすることで、平均14.5%、最大14.6
%に向上した。このように、裏面層や表面層の材質など
に応じて、中間層の熱伝導率を表面層および裏面層の材
質に比べて高く、もしくは低く設定することによって、
表面温度を変化させることで、結晶粒径を制御すること
が可能になったため、基体表面温度を容易に太陽電池特
性にとってもっともよい温度条件に設定することが可能
となり、太陽電池特性を大幅に改善できた。
【0068】
【発明の効果】以上より明らかなように、実施例1〜4
による発明は、結晶性物質の薄板を成長させる基体を、
3層以上の多層構造とし、各層の材質を選定すること
で、裏面層および表面層の材質が結晶性物質と装置によ
って制限される場合でも、基体の大きさおよび装置構成
を変更することなく、基体全体の熱伝導率を変更するこ
とが可能であり、基板表面の温度を目的に応じた温度に
設定することが可能である。これにより、目的に応じた
結晶粒径、板厚を備えた結晶性物質の結晶薄板を容易に
得ることが可能である。実施例5による発明は、実施例
1〜4によって太陽電池などの電子部品に適した結晶粒
径の大きい結晶性物質薄板を製造することによって、電
子部品の特性を向上すること可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1、2の実施例によるシリコ
ン薄板製造装置を示す。
【図2】本発明における作用例によるシリコン薄板製造
装置を示す。
【図3】本発明における作用例によるシリコン薄板製造
装置を示す。
【図4】本発明における第3の実施例によるシリコン薄
板製造装置を示す。
【図5】本発明における第4の実施例によるシリコン薄
板製造装置を示す。
【図6】表面層にカーボン、裏面層にステンレス鋼を用
いた場合の、中間層材質を変更したときの基体表面の温
度を示す。
【図7】表面層にカーボン、裏面層に銅を用いた場合
の、中間層材質を変更したときの基体表面の温度を示
す。
【符号の説明】
1 基体 2 表面層 22 基体表面 23 表面層−裏面層界面 24 表面層−中間層界面 3 裏面層 33 基体裏面 34 中間層−裏面層界面 4 中間層 5 結晶性物質の融液 6 るつぼ 7 冷却媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 光三郎 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 谷口 浩 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 4G072 AA01 BB02 BB12 FF04 HH01 NN01 NN05 UU02 5F051 CB04 CB30 5F053 AA03 AA15 AA23 AA49 BB04 BB32 BB58 BB60 DD01 DD03 DD11 DD16 FF02 GG02 HH04

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体を金属材料もしくは半導体材料のう
    ち少なくともいずれか一方を含有する結晶性物質の融液
    に接触させるとともに、該基体温度を制御しつつ、基体
    表面に前記結晶性物質の結晶を成長させることで、前記
    結晶性物質で形成された薄板を得る装置において、該基
    体を、熱伝導率が異なる材質からなる多層構造とするこ
    とで、該基体の温度を制御することを特徴とする結晶薄
    板の製造装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の結晶薄板製造装置にお
    いて、該基体を表面層、裏面層とこれらに挟まれた少な
    くとも1層以上含む中間層からなる多層構造とし、中間
    層の熱伝導率が該基体の表面層および裏面層の材質と異
    なる材質からなる層を少なくとも1層以上含むことを特
    徴とする結晶薄板の製造装置。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の結晶薄板製造装置にお
    いて、中間層が、表面層または裏面層の一方に比べて熱
    伝導率が低い材質からなる層を少なくとも1層以上含む
    ことを特徴とする結晶薄板の製造装置。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の結晶薄板製造装置にお
    いて、中間層が、表面層または裏面層の一方に比べて熱
    伝導率が高い材質からなる層を少なくとも1層以上含む
    ことを特徴とする結晶薄板の製造装置。
  5. 【請求項5】 請求項2に記載の結晶薄板製造装置にお
    いて、中間層全体の熱伝導率が、表面層または裏面層の
    一方に比べて熱伝導率が低いことを特徴とする結晶薄板
    の製造装置。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載の結晶薄板製造装置にお
    いて、中間層全体の熱伝導率が、表面層または裏面層の
    一方に比べて熱伝導率が高いことを特徴とする結晶薄板
    の製造装置。
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