JP2002083445A - 光記録媒体 - Google Patents

光記録媒体

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JP2002083445A
JP2002083445A JP2001189902A JP2001189902A JP2002083445A JP 2002083445 A JP2002083445 A JP 2002083445A JP 2001189902 A JP2001189902 A JP 2001189902A JP 2001189902 A JP2001189902 A JP 2001189902A JP 2002083445 A JP2002083445 A JP 2002083445A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザービームの照射時間及び照射パワーの
少なくとも一方を変化させることによって記録層に5段
階以上のマルチレベル記録を行う。 【解決手段】 光記録媒体10の色素記録層12には、
グルーブ16内において仮想記録セル40が想定され、
この仮想記録セル40毎に、記録すべき情報に対応し
て、レーザービームの照射時間及び照射パワーの少なく
とも一方を5段階以上に変調することにより、5段階以
上の異なる大きさの記録マーク48A〜48Gを形成
し、仮想記録セル40での光反射率を多段階に変調し
て、再生時の読出しレーザービームの反射レベルを5段
階以上に変化させる。記録層12に使用する色素の不活
性ガス中での熱分解(TG)による重量減少開始温度と
終了温度の差が100℃以上の範囲にわたるようにし、色
素の熱分解による重量減少が300℃以下で開始し、350℃
以上まで継続するようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録に供するデー
タに応じて、レーザービームの照射時間及び照射パワー
の少なくとも一方を多段階に切り替えて光記録媒体に照
射し、前記データをマルチレベル記録する光記録媒体に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来の光記録媒体のような、再生信号の
長さ(反射信号変調部の長さ)を多段階に変えることに
よってデータを記録する方法に対して、再生信号の深さ
(反射信号の変調度)を多段階に切り替えることによ
り、同じ長さの各信号に複数のデータを記録する方法に
関する研究が数多くなされている。
【0003】この光記録方法によれば、単にピットの有
無による2値のデータを記録した場合と比較して、深さ
方向に複数のデータを記録できるため、一定の長さに割
り当てられる信号の量を増やすことができる。従って、
線記録密度を向上することができるため、ホログラフを
利用したものや、記録層を多層とした光記録方法が提案
されている。
【0004】ここでは反射率の深さ変動を用いる等によ
りデータを多段階に記録する場合を、マルチレベル記録
と呼ぶ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなマルチレベ
ル記録において、記録密度を向上するには記録マークを
短くする必要がある。
【0006】しかしながら、記録・読み取りに使用する
レーザーが集光した時のビーム直径より記録マークを小
さくしようとする場合、マルチレベル記録は困難にな
る。
【0007】例えば、特開平10−134353号公報
には、マルチレベルの記録を行うためにレーザー光量を
調整する旨の記載がある。ここでは、光記録媒体が色素
膜や相変化膜の場合、記録部分と未記録部分での反射の
違いで再生信号を形成している。従って、特開平10−
134353号公報の方法では、未記録段階と記録段階
は記録有無の関係にあり、多段階の記録に向いていな
い。より具体的に言えば、相変化膜や色素膜では記録と
未記録の中間状態は存在しないのである。
【0008】これまで、色素膜や相変化膜を光記録媒体
としてレーザー光量を調整することで多段階のマルチレ
ベル記録が出来ていたのは、レーザーパワーの変化によ
って、主として記録マークの幅が変化していたからであ
る。
【0009】集光ビームは一般にガウシアン分布を成す
が、記録膜が色素膜や相変化膜の場合、ある閾値を超え
た部分で記録が行われる。レーザーパワーを変化させる
ことで、記録可能な集光ビームのスポットサイズが変化
し、記録マークの幅を変化させていたのである。
【0010】ところが、記録密度を上げるために記録マ
ーク長が集光ビーム径より短くなってくると、レーザー
パワーを変調してマーク幅を変化させる手法では多段
階、特に5段階以上のマルチレベル記録は困難になる。
つまり記録パワーを変化させることでは、再生時の反射
レベルを5段階以上に変化させることが困難になるので
ある。
【0011】一般に集光ビームの直径は Kλ/NA
(K:定数、λ:レーザー波長、NA:レンズの開口
数)であらわされる。CDで利用されるピックアップで
はλ=780nm、NA=0.45で直径は約1.6μ
mとなる。この場合、記録マーク長が1.6μm以下にな
った場合にはこれまでの方法での5段階以上のマルチレ
ベル記録は困難になる。
【0012】又、例えば特開平1−182846号公報
に開示されるように、記録層への入射光量をデジタル量
として与えた時に、記録層での反応物の吸光度がデジタ
ル量として変化する光記録媒体がある。
【0013】しかしながら、この光記録媒体は、レーザ
照射量(回数)に対する吸光度変化の絶対値が非常に小
さいことが推測され、未だ実用化に至っていない。
【0014】更に、特開昭61−211835号公報に
開示されるように、フォトクロミック材料に照射する照
射光の強度もしくは照射回数を変化させて異なる任意の
段階の発色濃度状態に記録するようにした光記録方法が
ある。
【0015】しかしながら、この光記録方法では、レー
ザ光を照射して読み取る際に発色濃度状態を5段階以上
に読み取ることができないという問題点がある。
【0016】本発明者は、記録マーク長が集光ビーム径
よりも短いような条件下でもレーザー照射時間又は照射
パワーを変化させることで5段階以上のマルチレベル記
録が可能になることを発見した。
【0017】記録材料として色素を主材料として用いた
光記録媒体で、これまでの記録方法では色素の熱分解は
急峻におきた方が良いと考えられてきた。このほうが記
録部分と未記録部分の境界がはっきりするために、信号
品質が良好であるというものであった。
【0018】しかしながら,マルチレベル記録において
は色素材料の分解が急峻であると、特定のレーザー照射
時間又は照射パワーを超えたところで色素の分解が一気
に始まり、マルチレベルに必要な多段階の記録制御が困
難になる。
【0019】本発明者は色素材料の熱分解特性を規定す
ることで、良好にマルチレベル記録が出来ることを見出
した。
【0020】本発明は、上記のことを考慮し、一般に広
く実用化されているCD−Rのような光記録媒体を利用
し、多段階のマルチレベル記録を行い、良好な信号品質
を得ることを可能にする光記録媒体を提供することを目
的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者は、光記録媒体
について鋭意研究を重ね、これに多段階記録する記録方
法を見いだし、この記録方法によって、光記録媒体に、
5段階以上の高密度のマルチレベル記録を行うことが可
能であることを確認した。更に、熱分解が100℃以上の
広範囲にわたって起こる色素を用いるとレーザー照射時
間が短いときから長いときにわたって良好な記録が可能
になる。又、熱分解が300℃以下で開始するような色素
を用いた時に、高感度に記録が可能であることを発見し
た。
【0022】即ち、以下の本発明により上記目的が達成
可能となる。
【0023】(1)光透過性基板上に色素を主成分とす
る記録層を有し、レーザービームを照射して前記記録層
に記録マークを形成することにより情報を記録し、且
つ、この記録マークに読み取りレーザービームを照射し
て記録した情報を読み取り可能な光記録媒体であって、
前記記録層に、レーザービームと記録層との相対的移動
方向の任意の単位長さ及びこれと直交する方向の単位幅
に規定され、前記移動方向に連続的に設定された仮想記
録セルを有してなり、この仮想記録セルにおける前記記
録層は、レーザービームの照射時間及び照射パワーの少
なくとも一方の5段階以上の変調に対応して大きさの異
なる記録マークの形成が可能であり、これにより記録マ
ークの仮想記録セルに対する面積比及び光透過率のうち
少なくとも面積比に基づく光反射率を変調して情報の5
段階以上のマルチレベル記録ができるようにされ、前記
記録層に使用する色素の不活性ガス中での熱分解(T
G)による重量減少開始温度と重量が初期の20%にな
る温度との差が100℃以上の範囲にわたるようにしたこ
とを特徴とする光記録媒体。
【0024】(2)前記色素の熱分解による重量減少が
300℃以下で開始し、350℃以上まで継続するようにした
ことを特徴とする(1)の光記録媒体。
【0025】なお、ここで言う記録マークの大きさと
は、記録層を構成する材料が、レーザービームの照射に
よって分解変質し、その屈折率が変化する場合や、その
変化の厚さ方向の大小により光透過率が変化する場合
の、その変化量の大きさをいう。
【0026】なお、本発明の光記録媒体は次のように構
成してもよい。
【0027】(3)前記仮想記録セルの単位長さが、前
記最大照射時間のレーザービーム照射により形成される
記録マークの長さと略等しく設定されたことを特徴とす
る(1)又は(2)の光記録媒体。
【0028】(4)前記記録層に沿って、レーザービー
ムガイド用のグルーブが設けられ、前記仮想記録セルは
前記グルーブ内に設定され、且つ、前記単位幅は前記グ
ルーブの幅に略等しくされたことを特徴とする(1)、
(2)又は(3)の光記録媒体。
【0029】(5)前記仮想記録セルにおける前記単位
長さが、前記読み取りレーザービームのビームウェスト
の直径以下とされたことを特徴とする(1)乃至(4)
のいずれかの光記録媒体。
【0030】(6)前記記録層の一部に、予め情報をマ
ルチレベル記録済みであることを特徴とする(1)乃至
(5)のいずれかの光記録媒体。
【0031】(7)前記仮想記録セルとマルチレベル記
録済み部分の少なくとも一方に、マルチレベル光記録媒
体であることを示す特定情報が記録されていることを特
徴とする(1)乃至(6)のいずれかの光記録媒体。
【0032】(8)前記記録層に沿って、レーザービー
ムガイド用のグルーブが設けられ、このグルーブが、一
部で途切れていることを特徴とする(1)乃至(7)の
いずれかの光記録媒体。
【0033】この発明においては、記録マークが記録ビ
ーム径より小さくなった場合、記録レーザーのレーザー
の照射時間又は照射パワーを多段階に調整し、更に、記
録層を構成する色素を規定することで、反射率を多段階
にコントロールすることが出来るようになった。つま
り、レーザー照射時間及び照射パワーの少なくとも一方
を変調することで、記録マークの大きさを変調し、一定
の領域内での記録マークの面積比による光反射率のレベ
ルを多段階に変化させることによりマルチレベルの記録
が可能になった。
【0034】さらにこの効果は5段階以上のマルチレベ
ル記録のときに顕著であった。
【0035】この記録方法は、有機色素を用いた記録膜
を有する光記録媒体に特に有用であった。
【0036】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態の例を図
面を参照して詳細に説明する。
【0037】本発明の実施の形態の例に係る光記録媒体
10は、記録層12に色素を用いたCD−Rであり、透
明基材からなる光透過性基板14と、この光透過性基板
14の一方の面(図1において上面)に形成されたレー
ザービームガイド用のグルーブ16を覆って塗布された
色素からなる前記記録層12と、この記録層12の上側
にスパッタリング、真空蒸着等によって形成された金、
銀あるいはこれらを主成分とする合金等の光反射膜18
と、この光反射膜18の外側を覆う保護層20とを含ん
で形成されている。
【0038】前記光透過性基板14は、従来の光記録媒
体に用いられている各種の材料から任意に選択すること
ができる。例えばポリカーボネート樹脂、ポリメチルメ
タクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂
およびポリエステル樹脂などが適用可能である。この光
透過性基板14上には、前記グループ16またはアドレ
ス信号等の情報を表わす凹凸(プレグルーブやピット)
が形成されている。
【0039】前記光透過性基板14上の記録層12は有
機色素を主成分としている。この有機色素は、シアニン
系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、
アントラキノン系色素、含金属アゾ色素、フタロシアニ
ン系色素、ナフタロシアニン系色素等が適用可能であ
る。これらの色素の内で、不活性ガス中での熱分解(T
G)による重量減少開始温度と重量が初期の20%にな
る温度との差が100℃以上の範囲にわたるようにしたも
のを用いれば良い。又、色素の熱分解による重量減少が
300℃以下で開始し、350℃以上まで継続するようにす
る。
【0040】なお、色素の分解温度はアルキル基、アル
コキシ基、アリール基、ハロゲン原子、アルキルカルボ
ニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホンアミ
ド基、シアノ基、ニトロ基等の各種極性基を導入した
り、イオン性の色素では対イオン組成物を変更する事で
ことによりコントロール可能である。
【0041】有機色素塗布液用の溶剤としては、酢酸ブ
チル、セロソルブアセテートなどのエステル類;メチル
エチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケ
トンなどのケトン類;ジクロルメタン、1,2−ジクロ
ルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素類;ジメ
チルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの
炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジ
オキサンなどのエーテル類;エタノール、n−プロパノ
ール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトン
アルコールなどのアルコール類;2,2,3,3−テト
ラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレン
グリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモ
ノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエ
ーテルなどのグリコールエーテル類などが使用可能で、
これらの溶剤を、使用する有機色素の溶解性等を考慮し
て単独または混合して使用することができる。塗布液中
には更に一重項酸素クエンチャー、酸化防止剤、UV吸
収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて
添加してもよい。
【0042】光反射膜18の上には、有機色素記録層1
2や光反射膜18等を物理的および化学的に保護する目
的で保護層20を設ける。この保護層20は、光透過性
基板14の、有機色素記録層12が設けられていない側
にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けてもよい。保護
層20の材料としては一般的に紫外線硬化性樹脂が広く
用いられている。この紫外線硬化性樹脂をそのままもし
くは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この
塗布液を光透過性基板14上に塗布し、紫外線を照射し
て硬化させることによって保護層20を形成する。これ
らの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、紫外
線吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよ
い。保護層20の層厚は0.1〜100μm程度であ
る。
【0043】このようにして得られる光記録媒体10へ
のマルチレベル記録は、図2に示される光記録装置30
によって実行される。
【0044】例えば、記録光として770〜790nm
の範囲の波長や630〜660nmの範囲の波長を有す
る半導体レーザー36を用い、有機色素記録層12にそ
れに適したレーザービームを照射することで有機色素が
変質させることによって行われ、再生方法は、有機色素
が変質した部分とそうでない部分とのレーザー光の反射
光量の差を読みとることで行われる。
【0045】前記光記録装置30はCD−Rレコーダで
あり、スピンドルサーボ31を介してスピンドルモータ
32により光記録媒体(ディスク)10を線速度あるい
は角速度一定の条件で回転駆動させ、レーザー36から
のレーザービームによって光記録媒体(ディスク)10
に、前述の如く形成されている記録層12に情報を記録
するものである。
【0046】前記レーザー36は、記録すべき情報に応
じて、レーザードライバ38により、図1、図3に示さ
れる仮想記録セル(詳細後述)40の一つ当りのレーザ
ービーム照射時間、例えばレーザーパルス数が制御され
るようになっている。
【0047】図2の符号42は、対物レンズ42A及び
ハーフミラー42Bを含む記録光学系である。対物レン
ズ42Aはフォーカストラッキングサーボ44によりレ
ーザービームが記録層12に集光するようにフォーカス
トラッキング制御される。又、対物レンズ42Aとハー
フミラー42Bとは、送りサーボ46によって、ディス
ク10の回転に同期してその内周側から外周側に所定速
度で移動制御される。
【0048】前記スピンドルサーボ31、レーザードラ
イバ38、フォーカストラッキングサーボ44、送りサ
ーボ46は制御装置50により制御される。記録層12
に記録すべきデータ(情報)は制御装置50に入力され
る。
【0049】次に、前記仮想記録セル40及びこの仮想
記録セル40に記録される記録マークについて説明す
る。
【0050】この仮想記録セルは光記録媒体の径方向の
単位幅及び回転方向の単位長さに規定されている。単位
幅は、レーザービームのビームウエスト直径以下とし、
ディスク10のトラックピッチやグループ幅など任意に
選択できる幅である。
【0051】この実施の形態の例の仮想記録セル40
は、図1に示されるように、前記グルーブ16内を、デ
ィスク10の回転方向即ち円周方向に、ビーム径(ビー
ムウエストの直径)Dより短い長さ(円周方向の長さ)
に、且つ、幅はクループ16と等しく規定して、円周方
向に連続的に想定したものであり、各仮想記録セル40
毎にレーザービームを照射することによって、図3に模
式的に例示された記録マーク48A〜48Gを、記録す
べき情報に応じて形成するようにされている。
【0052】ここで、前記レーザー36から出射される
レーザービームの、記録層12位置でのビーム径Dは、
前記仮想記録セル40よりも大きくされているが、記録
層12の材料を選択することによって、レーザービーム
の中心部に、レーザー照射時間に応じて、直径の異なる
記録マーク48A〜48Gを形成することができる(レ
ーザービームは円形であるが、光記録媒体10を回転さ
せながらレーザービームを照射するので、記録マークは
照射時間に応じて長円形となる)。
【0053】何故なら、フォーカシングされたレーザー
ビームは、一般にガウシアン分布をなすが、記録層12
においては、レーザービームの照射エネルギーがある閾
値を超えた部分のみで記録が行われるので、レーザービ
ームの照射時間を変化させることによって、記録層12
に記録可能なレーザービームのスポットサイズが変化
し、これにより例えば図3に示されるような7段階の記
録マーク48A〜48Gが形成可能となる。
【0054】ここで、前記記録層12を構成する色素は
前述のように規定され、レーザービームの照射時間に対
して分解・変質が急峻に生じないので、良好なマルチレ
ベル記録が可能である。
【0055】前記記録マーク48A〜48Gの各大きさ
は、仮想記録セル40に読み出しレーザービームを照射
した時の反射光の光反射率が7段階になるように設定す
る。前記光反射率は、記録マークが小さいほど大きくな
り、記録マークが形成されていない仮想記録セルでは最
大反射率、最大の記録マーク48Gが形成されている仮
想記録セルでは最小反射率となる。
【0056】更に詳細には、前記光反射率は、各記録マ
ーク48A〜48Gの仮想記録セル40に対する面積比
及び記録マーク自体の光透過率を考慮して設定する。
【0057】記録マーク48A〜48G自体の光透過率
は、記録層12を構成する材料がレーザービームの照射
によって分解変質し、その屈折率が変化する場合や、記
録層12の厚さ方向の変化量によって異なる。形成され
た記録マーク部分の光透過率がゼロであれば、これを考
慮しなくてもよい。
【0058】上記実施の形態の例では、レーザビームの
照射時間を5段階以上に変化させて記録層12にマルチ
レベル記録をするものであるが、本発明はこれに限定さ
れるものでなく、レーザビームの照射パワーあるいは照
射時間と照射パワーを変化させるようにしてもよい。
【0059】上記実施の形態は光記録媒体10をCD−
Rであるディスクとしたものであるが、本発明はこれに
限定されるものでなく、他の光記録媒体に一般に適用さ
れるものである。
【0060】更に、上記実施の形態の例は、データ等の
情報が記録されていない光記録媒体10についてのもの
であるが、本発明はこれに限定されるものでなく、5段
階以上に情報をマルチレベル記録した光記録媒体にも適
用される。
【0061】更に又、上記光記録装置30によって記録
マークを形成する際に記録層12上に設定される仮想記
録セル40のサイズは、実施の形態の例に限定されるも
のではなく、レーザービームのビームウエスト径以下の
任意の長さとすることができれる。更にグルーブ16を
有しない光記録媒体においては、仮想記録セル40のサ
イズを任意に設定することができるが、レーザービーム
の最長照射時間のときの照射エネルギーが、記録層12
に変化を与える閾値を越えるときに形成される記録マー
クと略等しい長さに仮想記録セル40を設定するとよ
い。
【0062】又、前記レーザービームは、記録層12の
位置で円形とされているが、これは、図4に示されるよ
うに、例えば対物レンズ42Aに加えてビーム整形プリ
ズム42Cを用いて、ビーム形状が、光記録媒体10の
送り方向に短く、これと直交方向に長い長円形状あるい
は線状となるようにしてもよい。この場合は、記録マー
ク49が短くなるので仮想記録セルを更に短くすること
ができる。即ち記録密度を向上させることができる。
【0063】更に、この光記録媒体10では、図1にお
いて符号52で示されるように、あらかじめ、信号変調
の段数に合わせた数の反射率の異なる複数のピットを有
するか、又は当該光記録媒体の一部分にあらかじめ前述
のようにマルチレベル記録を行うことにより、これらの
複数のピット52及び/又はマルチレベル記録済み部分
の記録マーク54に当該光記録媒体を個別に識別する情
報、マルチレベル記録用光記録媒体であることを識別す
る情報、当該光記録媒体を記録再生するためのレーザー
ビームのパワーを決定するための情報等の特定情報を有
し、その特定情報を、当該光記録媒体再生及び/又は記
録時に読み込むことによって、マルチレベル記録用光記
録媒体であることを確実に識別したり、さらにそれらを
個別に識別したり、あらかじめ記録されているピットの
段数に応じてレーザービームのパワーの段数を決定した
りすることができるため、より確実なマルチレベル記録
再生を行うことができる。あるいは図1に符号56で示
されるように、レーザービームガイド用のグルーブを一
部分途切れさせるグルーブ中断部を設けることによって
も同様の効果をもたせることもでき。これらの方法は単
独で,あるいは組み合わせて利用することも可能であ
る。
【0064】
【実施例】以下に、本発明の実施例1〜3及び比較例
1、2と対比して本発明を説明する。
【0065】実施例及び比較例は、光記録媒体10とし
て記録層12に色素を用いたCD−R型の光記録媒体を
使用して、マルチレベル記録の実験を行った。
【0066】
【実施例1】下記の化学式で示されるシアニン色素Aを
フッ素化アルコールに溶解して2%の記録層形成用塗布
液を調製する。この塗布液を表面にスパイラル状のプレ
グルーブ(トラックピッチ:1.6μm、プレグルーブ
幅:0.35μm、プレグルーブの深さ:0.18μ
m)が射出成型により形成されたポリカーボネート(帝
人化成(株)製:パンライトAD5503)からなる直径
120mm、1.2mm厚の光透過性基板のプレグルー
ブ側表面に、回転数200rpm〜5000rpmまで
変化させながらスピンコート法により塗布し、プレグル
ーブ内の底部からの厚さが約200nmの有機色素記録
層を形成した。なお、ここで使用した光透過性基板に
は、この光記録媒体がマルチレベル記録に使用されるこ
とを示す判別信号と、レーザービームパワー及び照射時
間に関する情報信号をあらかじめ記録したものを用い
た。
【0067】
【化学式1】
【0068】次に、有機色素記録層上にAgを約100
nmの膜厚にスパッタリングして光反射層を形成した。
更に光反射層上に紫外線硬化性樹脂(大日本インキ化学
工業(株):SD318)を回転数300rpm〜40
00rpmまで変化させながらスピンコート法により塗
布した。塗布後、塗膜の上方から高圧水銀灯により紫外
線を照射して層厚10μmの保護層を形成した。
【0069】こうして得られた光記録媒体を用いてマル
チレベル記録を行った。マルチレベル記録は、定線速度
で回転させた光記録媒体に、レーザービームを、その照
射時間を6段階に変化させて照射させて記録を行った。
再生は同じく定線速度で回転させながら1mWでレーザ
ービーム光を記録層に照射して、その反射光を検出する
ことによって再生した。用いた記録・評価機はパルステ
ック社製のDDU(記録波長:784nm)で、記録時
のレーザービームパワーを14mWで記録した。なお、
このときの記録線速度は4.8m/s、記録のクロック
周波数は4MHz(250nsec)とした。
【0070】この光記録媒体に記録時のレーザー照射時
間をそれぞれ(1)50nsec、(2)80nsec、(3)
110nsec、(4)140nsec、(5)170nsec、
(6)200nsecとしてマルチレベル記録を行った。そ
れぞれの単一信号をディスク1周にわたって記録した。
【0071】この様にして記録を行い、記録された信号
のジッター値をLeCroy製デジタルオシロLC−5
34ELに取り込み測定したところ、記録時のレーザー
ビーム照射時間の違いによる変動は小さく良好であっ
た。
【0072】今回用いたジッター値の測定機では、従来
の2値記録再生方法によって記録した場合を考慮する
と、ジッター値10%以下であれば良好な記録が行えた
ものと判断できる。
【0073】このシアニン色素Aの熱分解温度測定を、
TA Instrument社製2050型測定装置を用い、窒素
ガス雰囲気中で昇温条件は10℃/minで行ったとこ
ろ、分解開始温度は230℃、重量が初期の20%になる
温度(分解終了温度)は480℃であった。又、熱分解に
よるシアニン色素の重量減少は300℃以下で開始し、350
℃以上まで継続した。
【0074】
【実施例2】実施例1の色素をシアニンAとフタロシア
ニンBの1:1(mol比)の混合物に、塗布溶剤をフッ素ア
ルコールからエチルセロソルブに変更した以外は実施例
1と同様にして光記録媒体を作製し、マルチレベル記録
を行った。
【0075】記録時のレーザービームパワーを13mW
で記録した。なお、このときの記録線速度は4.8m/
s、記録のクロック周波数は4MHz(250nsec)と
し、記録時のレーザー照射時間はそれぞれ(1)50ns
ec、(2)70nsec、(3)90nsec、(4)110ns
ec、(5)130nsec、(6)150nsecとした。
【0076】それぞれの単一信号をディスク1周にわた
って記録した。この様にして記録を行い、記録された信
号のジッター値をLeCroy製デジタルオシロLC−
534ELに取り込み測定したところ、記録時のレーザ
ービーム照射時間の違いによる変動は小さく良好であっ
た。
【0077】この色素混合物の熱分解測定で、分解開始
温度は230℃、分解終了温度は480℃であった。又、熱分
解による色素混合物の重量減少は300℃以下で開始し、3
50℃以上まで継続した。
【0078】
【実施例3】実施例2の色素をシアニンAとフタロシア
ニンCの1:1(mol比)の混合物に変更した以外は実施例
2と同様にして光記録媒体を作製し、マルチレベル記録
を行った。
【0079】記録時のレーザービームパワーを13mW
で記録した。なお、このときの記録線速度は4.8m/
s、記録のクロック周波数は4MHz(250nsec)と
し、記録時のレーザー照射時間はそれぞれ(1)50ns
ec、(2)70nsec、(3)90nsec、(4)110ns
ec、(5)130nsec、(6)150nsecとした。それ
ぞれの単一信号をディスク1周にわたって記録した。
【0080】この様にして記録を行い、記録された信号
のジッター値をLeCroy製デジタルオシロLC−5
34ELに取り込み測定したところ、記録時のレーザー
ビーム照射時間の違いによる変動は小さく良好であっ
た。
【0081】この色素混合物の熱分解測定で、分解開始
温度は230℃、分解終了温度は547℃であった。又、熱分
解による色素混合物の重量減少は300℃以下で開始し、3
50℃以上まで継続した。
【0082】
【比較例1】色素を下記の化学式で示されるフタロシア
ニンBに、塗布溶媒をエチルセロソルブに変更した以外
は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、マルチレ
ベル記録を行った。
【0083】記録時のレーザービームパワーを14mW
で記録した。なお、このときの記録線速度は4.8m/
s、記録のクロック周波数は4MHz(250nsec)と
し、記録時のレーザー照射時間はそれぞれ(1)70ns
ec、(2)80nsec、(3)90nsec、(4)100ns
ec、(5)110nsec、(6)120nsecとした。それ
ぞれの単一信号をディスク1周にわたって記録した。
【0084】
【化学式2】
【0085】この様にして記録を行い、記録された信号
のジッター値をLeCroy製デジタルオシロLC−5
34ELに取り込み測定したところ、記録時のレーザー
ビーム照射時間の違いによらずジッタ−値が悪かった。
【0086】このフタロシアニンB色素の熱分解測定
で、分解開始温度は319℃、分解終了温度は414℃であっ
た。
【0087】
【比較例2】色素を下記の化学式で示されるフタロシア
ニンCに、塗布溶媒をメチルシクロヘキサンに変更した
以外は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、マル
チレベル記録を行った。
【0088】
【化学式3】
【0089】記録時のレーザービームパワーを14mW
で記録した。なお、このときの記録線速度は4.8m/
s、記録のクロック周波数は4MHz(250nsec)と
し、記録時のレーザー照射時間はそれぞれ(1)70ns
ec、(2)80nsec、(3)90nsec、(4)100ns
ec、(5)110nsec、(6)120nsecとした。それ
ぞれの単一信号をディスク1周にわたって記録した。
【0090】この様にして記録を行い、記録された信号
のジッター値をLeCroy製デジタルオシロLC−5
34ELに取り込み測定したところ、記録時のレーザー
ビーム照射時間の違いによらずジッタ−値が悪かった。
【0091】このフタロシアニンC色素の熱分解測定
で、分解開始温度は510℃、分解終了温度は546℃であっ
た。
【0092】
【実施例4】実施例1の条件に対して、色素をCiba社製
フタロシアニン色素「Super Green」に変更し、塗布溶
剤をジメチルシクロヘキサンに変更し、深さ約100n
m、幅約600nmのプレグルーブを有する光透過性基
板に、プレグルーブ部分での厚さが約100nmの有機
色素記録層を形成して光記録媒体を作製した。
【0093】こうして得られた光記録媒体を用いて、実
施例1と同一条件でマルチレベル記録を行い、且つジッ
ター値を測定したところ、記録時のレーザービーム照射
時間の違いによるジッター値の変動は小さく良好であっ
た。
【0094】この色素の熱分解測定で、分解開始温度は
約263℃、分解終了温度は約820℃であった。又、
熱分解による色素の重量減少は300℃以下で開始し、
350℃以上まで継続した。
【0095】
【実施例5】実施例1の条件に対して、色素を山田化学
製フタロシアニン色素「YDN−02」に変更し、塗布
溶剤をメチルシクロヘキサン、2−メトキシエタノー
ル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランの混合溶
媒に変更して1.5wt%の濃度に調整し、深さ約16
0nm、幅約650nmのプレグルーブを有する光透過
性基板に、プレグルーブ部分での厚さが約120nmの
有機色素記録層を形成して光記録媒体を作製した。
【0096】こうして得られた光記録媒体を用いて、実
施例1と同一条件でマルチレベル記録を行い、且つジッ
ター値を測定したところ、記録時のレーザービーム照射
時間の違いによるジッター値の変動は小さく良好であっ
た。
【0097】この色素の熱分解測定で、分解開始温度は
約242℃、分解終了温度は約860℃であった。又、
熱分解による色素の重量減少は300℃以下で開始し、
350℃以上まで継続した。
【0098】以上の結果の色素の熱分解特性、記録時の
レーザー照射時間と記録された信号のジッター値を表1
に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【発明の効果】光透過性基板上に色素を主成分とする記
録層を有する光記録媒体において、記録に供するデータ
に応じて、レーザービームの照射時間を5段階以上に切
り換えて前記レーザービームを照射することでマルチレ
ベル記録する光記録媒体で、使用する色素の空気中での
熱分解(TG)による重量減少開始温度と終了温度が10
0℃以上の範囲にわたる事を特徴とする光記録媒体で良
好なマルチレベル記録を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の例に係る光記録媒体の要
部を示す一部断面とした斜視図
【図2】同光記録媒体にレーザービームを用いて情報を
記録するための光記録装置を示すブロック図
【図3】同光記録装置により記録層に記録マークを形成
する際の、該記録マークと仮想記録セル及びその光反射
率との関係を示す模式図
【図4】仮想記録セルを照射するレーザービームを他の
形状とする場合を示す略示斜視図
【符号の説明】
10…光記録媒体 12…記録層 14…光透過性基板 16…グルーブ 18…光反射膜 20…保護層 30…光記録装置 32…スピンドル 34…ディスク 36…レーザー 38…レーザードライバ 40…仮想記録セル 42…記録光学素 42A…対物レンズ 42B…ハーフミラー 42C…ビーム整形プリズム 44…フォーカスサーボ回路 46…送りサーボ回路 48A〜48G、49、54…記録マーク 52…ピット 56…グルーブ中断部 D…ビーム径
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H111 EA03 FA01 FB42 5D029 JA04 JB11 JC02 JC20 5D090 AA01 BB03 BB12 CC01 DD01 KK03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光透過性基板上に色素を主成分とする記録
    層を有し、レーザービームを照射して前記記録層に記録
    マークを形成することにより情報を記録し、且つ、この
    記録マークに読み取りレーザービームを照射して記録し
    た情報を読み取り可能な光記録媒体であって、前記記録
    層に、レーザービームと記録層との相対的移動方向の任
    意の単位長さ及びこれと直交する方向の単位幅に規定さ
    れ、前記移動方向に連続的に設定された仮想記録セルを
    有してなり、この仮想記録セルにおける前記記録層は、
    レーザービームの照射時間及び照射パワーの少なくとも
    一方の5段階以上の変調に対応して大きさの異なる記録
    マークの形成が可能であり、これにより記録マークの仮
    想記録セルに対する面積比及び光透過率のうち少なくと
    も面積比に基づく光反射率を変調して情報の5段階以上
    のマルチレベル記録ができるようにされ、前記記録層に
    使用する色素の不活性ガス中での熱分解(TG)による
    重量減少開始温度と重量が初期の20%になる温度との
    差が100℃以上の範囲にわたるようにしたことを特徴と
    する光記録媒体。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記色素の熱分解によ
    る重量減少が300℃以下で開始し、350℃以上まで継続す
    るようにしたことを特徴とする光記録媒体。
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