JP2002069693A - 金属板電解処理装置 - Google Patents

金属板電解処理装置

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JP2002069693A
JP2002069693A JP2000261586A JP2000261586A JP2002069693A JP 2002069693 A JP2002069693 A JP 2002069693A JP 2000261586 A JP2000261586 A JP 2000261586A JP 2000261586 A JP2000261586 A JP 2000261586A JP 2002069693 A JP2002069693 A JP 2002069693A
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Japan
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insulating sheet
electrolytic
aluminum strip
electric insulating
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Application number
JP2000261586A
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English (en)
Inventor
Takahiro Matsushita
高広 松下
Yuzo Rachi
有三 良知
Toru Yamazaki
徹 山崎
Hirokazu Sakaki
博和 榊
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絶縁部材に気泡が滞留することのない金属板
電解処理装置を得る。 【解決手段】 アルミ帯板18と裏面側電極部32との
間には、絶縁性及び可撓性のある材料で構成された電気
絶縁シート34が、アルミ帯板18の搬送方向(矢印F
方向)に沿って、水平面Hに対し所定の傾斜角θで傾斜
して配設されている。電解液26内に気泡が発生して
も、電気絶縁シート34の下面に付着して滞留すること
はなく、浮力によって電気絶縁シート34下面に沿って
上昇する。電気絶縁シート34が浮き上がってアルミ帯
板18や酸化処理用電極28に接触し損傷を受けること
がない。また、電気絶縁シート34の絶縁能力に局所的
な変化が生じることもないので、電解ヤケや処理ムラも
発生しない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属板を陽極酸化
処理等、電解処理するための金属板電解処理装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】図8(A)及び(B)には、従来の金属
板電解処理装置の一例として、帯状アルミニウム板の陽
極酸化装置110が部分的に示されている(特公昭63
−58233号参照)。
【0003】この陽極酸化装置110では、一定方向に
連続して搬送されるアルミウエブ112の両面に対応し
て、陰極板114、116が配置されている。下側の陰
極板116とアルミウエブ112の間には、絶縁性の材
料で構成された電気絶縁シート118が配置されてい
る。電気絶縁シート118の両端にはワイヤー120の
両端がそれぞれ接続されて、全体として無端状のクロー
ズドループが構成されており、アルミウエブ112の片
面のみを処理するときには、図8(A)に示すように、
電気絶縁シート118をアルミウエブ112と陰極板1
16との間に配置し、アルミウエブ112の裏面への電
流裏周りを防止する。これに対し、アルミウエブ112
の両面を処理するときには、図8(B)に示すように、
クローズドループを循環させて電気絶縁シート118を
下側(少なくとも陰極板116とアルミウエブ112と
の間に存在しない位置)へと移動させる。これにより、
1つの陽極酸化処置装置110で、アルミウエブ112
の両面処理と片面処理の双方が行えるようになってい
る。
【0004】ところで、このような金属板電解処理装置
110では、ポンプ等を使用して電解液を循環させてい
るが、循環による空気の巻き込み等により電解液内に気
泡が発生することがある。また、電解処理に伴う電気化
学的な反応によっても、電解液内に気泡が発生すること
がある。そして、この気泡が電気絶縁シート118の下
面に付着して滞留すると、気泡の浮力によって電気絶縁
シート118も浮上し、アルミウエブ112に接触して
損傷を受けてしまうことがある。このため、電気絶縁シ
ート118を交換しなければならず、多くのコスト及び
作業負荷を要する場合がある。
【0005】また、電気絶縁シート118に破れが生じ
た場合には、この破れの部分において絶縁能力が低下す
るため、電解液内での電流の流れが所望の流れとなら
ず、アルミウエブ112の処理面にいわゆる電解ヤケ
(陽極酸化被膜の局所的な過大成長)が発生して、品質
が低下することがある。
【0006】さらに、電気絶縁シート118が損傷を受
けていない場合であっても、浮上によって電気絶縁シー
ト118と陰極板116との距離が部分的に大きく変化
するため、アルミウエブ112の表面の陽極酸化被膜量
も変動し、品質上の問題が生じるおそれがある。
【0007】かかる不都合を防止するためには、クロー
ズドループを循環させて、図8(B)に示すように電気
絶縁シート118を下側に移動させれば、電気絶縁シー
ト118は反転されるので、滞留した気泡を逃すことが
できる。しかし、気泡を逃すためにクローズドループを
循環させている間は処理を停止させなければならず、処
理効率が低下する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実を
考慮し、絶縁部材に気泡が滞留することのない金属板電
解処理装置を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明で
は、電解液が収容された電解槽と、前記電解液中に配置
され、電解液に浸漬された金属板の両面と対向する電極
部によってこの金属板を電解処理する電極部材と、前記
金属板の一方の面と前記電極部との間で、少なくとも下
面が水平面に対して傾斜するように配置された絶縁部材
と、を有することを特徴とする。
【0010】電解液中に電極部材の電極部から電流を流
すことで、電解液に浸漬された金属板を電解処理でき
る。また、金属板の一方の面と電極部との間には絶縁部
材が配置されているので、金属板を片面処理することが
できる。金属板を両面処理する場合には、絶縁部材を除
去すれば、電極部材の電極部は金属板の両面と対向する
ように配置されているので、両面処理が可能である。
【0011】絶縁部材は、金属板の一方の面と電極部と
の間で、少なくとも下面が水平面に対して傾斜するよう
に配置されている。このため、電解液中に気泡が発生し
ても、気泡は絶縁部材の下面に沿ってそれ自身の浮力で
上昇し、絶縁部材に滞留することはない。絶縁部材は気
泡から浮力を受けず、浮上しないので、金属板に接触し
て損傷を受けることがなく、絶縁部材の交換に伴うコス
トや作業負荷が発生しない。また、絶縁部材の破れによ
って金属板に処理ムラや電解ヤケが発生することもな
い。
【0012】しかも、絶縁部材は、その下面を僅かに傾
斜させれば気泡を逃すためには十分であり、電極部との
距離が大きく変化しているような部分は存在しない。従
って、この点においても金属板の処理ムラや電解ヤケを
確実に防止することができる。
【0013】加えて、絶縁部材への気泡の滞留を防止す
るために、金属板電解処理装置での電解処理を停止させ
る必要がないので、処理効率が低下することもない。
【0014】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記絶縁部材を、前記金属板の一方
の面と前記電極部との間の絶縁位置と、この絶縁位置か
ら退避した非絶縁位置との間で移動させる移動部材、を
有することを特徴とする。
【0015】すなわち、金属板の両面を処理する場合に
は、絶縁部材を電解槽内から除去し、再度片面処理する
場合には、絶縁部材を絶縁位置に配置するようにしても
よいが、請求項2に記載のように、移動部材によって、
絶縁部材を絶縁位置と非絶縁位置との間で移動させるこ
とで、両面処理と片面処理とを短時間で容易に切りかえ
ることができる。
【0016】請求項3に記載の発明では、請求項1又は
請求項2に記載の発明において、前記金属板及び前記電
極部が、前記絶縁部材と平行に配置されていることを特
徴とする。
【0017】これにより、絶縁部材と金属板と電極部と
が全て平行に配置されていることになるので、金属板の
処理ムラをさらに少なくすることができる。
【0018】請求項4に記載の発明では、請求項1〜請
求項3のいずれかに記載の発明において、前記金属板が
前記電解槽内で一定方向に搬送され、前記絶縁部材が、
前記金属板の搬送方向にのみ傾斜するように配置されて
いることを特徴とする。
【0019】金属板を一定方向に搬送しながら電解処理
できるので、処理効率が高くなる。
【0020】また、絶縁部材を、金属板の搬送方向にの
み傾斜するように配置することで、絶縁部材と電極部と
の距離が部分的に異なっていても、金属板が搬送される
ことでその影響を受けなくなる。このため、金属板の処
理ムラをさらに少なくすることができる。
【0021】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれかに記載の発明において、前記絶縁部材
の水平面に対する傾斜角度が0.1度以上5.0度以下
とされていることを特徴とする。
【0022】このように、傾斜角度を0.1度以上とす
ることで、気泡の滞留を確実に防止することが可能にな
る。また、傾斜角度を5.0度以下とすることで、絶縁
部材と電極部との距離が一定範囲内とされるので、処理
ムラを効果的に防止できる。また、電解槽を大型にする
必要がなくなるので、低コストで金属板電解処理装置を
構成できる。
【0023】
【発明の実施の形態】図1には、本発明の第1実施形態
の金属板電解処理装置10の概略構成が示されている。
また、図2には、金属板電解処理装置10の電解槽14
が部分的に拡大して示されている。
【0024】図1に示すように、この金属板電解処理装
置10は、仕切り壁13によって仕切られた給電槽12
及び電解槽14を有している。これらの給電槽12及び
電解槽14内を、必要な前処理が施された金属板(本実
施形態では一例としてアルミ帯板18)が複数の搬送用
ローラ16に懸架されて搬送される。アルミ帯板18の
搬送方向を矢印Fで、幅方向を矢印Wでそれぞれ示す。
【0025】給電槽12には給電槽用電解液20が収容
されており、アルミ帯板18はこの給電槽用電解液20
に浸漬された状態で搬送される。また、給電槽用電解液
20内には、搬送されるアルミ帯板18の両面と平行に
対面するように、電源24の陽極とブスバー42で接続
された給電用電極22が、アルミ帯板18の搬送方向に
沿って1つ又は複数(本実施形態では3つ)設けられて
いる。アルミ帯板18は給電用電極22と対面した状態
で給電槽用電解液20内を搬送されることで、陰極とし
て作用する。
【0026】一方、電解槽14には電解槽用電解液26
が収容されており、給電槽12から送られてきたアルミ
帯板18は、電解槽用電解液26に浸漬された状態で搬
送される。図2にも詳細に示すように、この電解槽14
内には、酸化処理用電極28が、アルミ帯板18の搬送
方向に沿って1つ又は複数(本実施形態では3つ)設け
られている。
【0027】図2に詳細に示すように、酸化処理用電極
28はそれぞれ、搬送されるアルミ帯板18の表面(上
面)と平行に対面する平板状の表面側電極部30、アル
ミ帯板18の裏面(下面)と平行に対面する平板状の裏
面側電極部32、及びこれらを接続する図示しない接続
部よって一体的に構成されている。
【0028】アルミ帯板18と裏面側電極部32との間
には、絶縁性及び可撓性のある材料で構成された電気絶
縁シート34が配設されている。電気絶縁シート34
は、酸化処理用電極28が通電された状態でも、アルミ
帯板18の裏面と裏面側電極部32との間の電流の流れ
を抑えるために十分な大きさとされており、アルミ帯板
18の裏面が電解処理されないように作用する。
【0029】電気絶縁シート34の両端には、ワイヤー
36の両端がそれぞれ接続されており、電気絶縁シート
34とワイヤー36とで無端状のクローズドループ38
が構成されている。また、電解槽14内には、複数の循
環用ローラ40が配置されており、クローズドループ3
8は、これらの循環用ローラ40に巻き掛けられて循環
するようになっている。そして、循環により、電気絶縁
シート34は、図2に示すようにアルミ帯板18の裏面
と裏面側電極部32との間の位置(絶縁位置)と、図3
に示すように下側へと退避した位置(非絶縁位置)との
間を移動するようになっている。なお、クローズドルー
プ38の循環は、例えば電解槽14の外部に設けたモー
タ等の駆動手段で循環用ローラ40を回転駆動すること
により行っても良いし、操作用ハンドルを設けて手動に
より循環用ローラ40を回転させてもよい。
【0030】図2に示すように、複数の循環用ローラ4
0のうち、相対的に上側に位置する2つの循環用ローラ
40Aは、鉛直方向の位置(水平面Hからの距離)が異
なる位置に配置されている。これにより、電気絶縁シー
ト34は、絶縁位置にあるときに、アルミ帯板18の搬
送方向(矢印F方向)に沿って、水平面Hに対し所定の
傾斜角θで傾斜している。
【0031】電解槽14には図示しない循環装置が設け
られており、電解槽用電解液26が電解槽14内で循環
されるようになっている。
【0032】次に、第1実施形態の金属板電解処理装置
10の作用を説明する。
【0033】図1に示すように、必要な前処理が施され
たアルミ帯板18は、搬送用ローラ16に懸架されて、
給電槽12内の給電槽用電解液20に浸漬された状態で
搬送される。このとき、アルミ帯板18は、電源24の
陽極と接続された給電用電極22と対面して搬送され、
陰極として作用する。
【0034】アルミ帯板18はさらに搬送用ローラ16
によって搬送され、電解槽14内の電解槽用電解液26
に浸漬された状態で搬送される。このとき、アルミ帯板
18は、電源24の陰極と接続された表面側電極部30
及び裏面側電極部32に表面及び裏面がそれぞれ対面し
て搬送されるので、アルミ帯板18は陽極として作用
し、アルミ帯板18が酸化されて酸化被膜が形成され
る。ここで、アルミ帯板18の両面に電解処理を施して
陽極酸化被膜を形成するときは、図3に示すように電気
絶縁シート34を非絶縁位置とする。これに対し、アル
ミ帯板18の片面にのみ陽極酸化被膜を形成するとき
は、図2に示すように電気絶縁シート34を絶縁位置へ
と移動させる。このように、クローズドループ38を循
環させるだけで、アルミ帯板18の両面処理と片面処理
とを短時間で容易に切り替えることができる。
【0035】電解槽用電解液26は、図示しない循環装
置によって電解槽14内で循環されるため、循環による
空気の巻き込み等により電解槽用電解液26内に気泡が
発生することがある。また、電解処理に伴う電気化学的
な反応によっても、電解槽用電解液26内に気泡が発生
することがある。そして、この気泡が電気絶縁シート3
4の下面に達することがある。
【0036】ここで、本実施形態の金属板電解処理装置
10では、図2に示すように電気絶縁シート34が絶縁
位置にあるとき、水平面Hに対して所定の傾斜角θで傾
斜している。このため、気泡は電気絶縁シート34の下
面に付着して滞留することはなく、浮力によって電気絶
縁シート34下面に沿って上昇し、電解槽用電解液26
の液面から空気中に逃される。従って、電気絶縁シート
34が浮き上がってアルミ帯板18や酸化処理用電極2
8に接触し損傷(破れや傷等)を受けることがない。電
気絶縁シート34を交換する必要がない(若しくは、交
換頻度が低下する)ので、交換に伴うコストや作業負荷
が発生しない。また、電気絶縁シート34に破れや傷が
発生しないので、その絶縁能力に局所的な変化が生じる
こともなく、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸化皮膜
が局所的に過大成長した部分)も生じない。加えて、電
気絶縁シート34が浮上しないので、浮上によって電気
絶縁シート34と酸化処理用電極28との距離が部分的
に大きく変化することもなく、アルミ帯板18の表面の
陽極酸化被膜量も変動しない。
【0037】なお、図1では給電槽12と電解槽14と
が仕切り壁13によって仕切られた構成のものを示して
いるが、給電槽12と電解槽14とばそれぞれ別体の槽
として構成されて構成されていてもよい。この場合に
は、給電槽用電解液20及び電解槽用電解液26の量や
組成を微調整したり補充したりすることが可能となる。
【0038】図4には、本発明の第2実施形態に係る電
解槽54が部分的に拡大して示されている。第2実施形
態では、この電解槽54の内部の構成のみが第1実施形
態と異なっており、他は全て同一とされているので、異
なっている部分のみ説明し、他は説明を省略する。
【0039】第2実施形態の電解槽54では、第1実施
形態と同様、電気絶縁シート34が絶縁位置にあると
き、水平面Hに対して所定の傾斜角θで傾斜している
が、さらに、酸化処理用電極58を構成する表面側電極
部60及び裏面側電極部62のそれぞれも、電気絶縁シ
ート34の傾斜角θと同じ傾斜角θで傾斜して配置され
ている。また、アルミ帯板18も、傾斜角θで傾斜した
状態で搬送されるようになっている。
【0040】従って、第2実施形態でも第1実施形態と
同様、気泡は電気絶縁シート34の下面に付着して滞留
しないので、電気絶縁シート34が浮き上がってアルミ
帯板18や酸化処理用電極28に接触して損傷(破れや
傷等)を受けることがなく、電気絶縁シート34の交換
に伴うコストや作業不可が発生しない。また、電気絶縁
シート34が浮上しないので、浮上によって電気絶縁シ
ート34と酸化処理用電極28との距離が部分的に大き
く変化することもなく、アルミ帯板18の表面の陽極酸
化被膜量も変動しない。加えて、電気絶縁シート34に
破れや傷が発生しないので、絶縁能力に局所的な変化が
生じることもなく、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸
化皮膜が局所的に過大成長した部分)も生じない。
【0041】また、表面側電極部60、裏面側電極部6
2及びアルミ帯板18も、傾斜角θで傾斜しており、絶
縁位置にある電気絶縁シート34、アルミ帯板18、表
面側電極部60及び裏面側電極部62が全て平行な状態
で、陽極酸化処理される。このため、アルミ帯板18の
処理ムラを、第1実施形態よりもさらに少なくする(実
質的にほとんど発生させない)ことが可能になる。
【0042】図5には、本発明の第3実施形態に係る電
解槽74が部分的に拡大して示されている。第3実施形
態では、この電解槽74の内部の構成のみが第1実施形
態と異なっており、他は全て同一とされているので、異
なっている部分のみ説明し、他は説明を省略する。
【0043】第3実施形態の電解槽74では、上側の2
つの循環用ローラ40Aの鉛直方向の位置(水平面Hか
らの距離)は等しくされているが、これら2つの循環用
ローラ40Aの略中央に、電気絶縁シート34を上方か
ら押えつけて屈曲させる屈曲ローラ76が配置されてい
る。この屈曲ローラ76により、絶縁位置にある電気絶
縁シート34は、扁平なV字状に屈曲され、所定の傾斜
角θで、屈曲ローラ76の両側において傾斜している。
【0044】従って、第3実施形態においても、第1実
施形態と同様、気泡は電気絶縁シート34の下面に付着
して滞留しないので、電気絶縁シート34が浮き上がっ
てアルミ帯板18や酸化処理用電極28に接触して損傷
(破れや傷等)を受けることがなく、電気絶縁シート3
4の交換に伴うコストや作業不可が発生しない。また、
電気絶縁シート34が浮上しないので、浮上によって電
気絶縁シート34と酸化処理用電極28(特に、裏面側
電極部32)との距離が部分的に大きく変化することも
なく、アルミ帯板18の表面の陽極酸化被膜量も変動し
ない。加えて、電気絶縁シート34に破れや傷が発生し
ないので、絶縁能力に局所的な変化が生じることもな
く、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸化皮膜が局所的
に過大成長した部分)も生じない。
【0045】加えて、電気絶縁シート34を略中央で屈
曲させて扁平なV字状としたので、絶縁位置において気
泡の滞留を防止するために必要な傾斜角θを十分確保
し、しかも電気絶縁シート34自体の高低差(最も高い
位置にある部分と最も低い位置にある部分との差)を、
第1実施形態よりも小さくすることができる。このた
め、アルミ帯板18の処理ムラを、第1実施形態よりも
さらに少なくすると朋に、電解槽14(図1参照)の高
さを小さくして小型化し、容量を小さくできるので、低
コストとなる。
【0046】なお、上記説明では、電気絶縁シート34
が絶縁位置にあるとき、アルミ帯板18の搬送方向(矢
印F方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜しているもの
のみを例として挙げたが、傾斜方向は特に限定されな
い。例えば、図6に示すように、アルミ帯板18の幅方
向(矢印W方向)に対して、電気絶縁シート34が所定
の傾斜角θで傾斜していてもよい。また、図7に示すよ
うに、電気絶縁シート34だけでなく、表面側電極部6
0、裏面側電極部62及びアルミ帯板18も、アルミ帯
板18の幅方向(矢印W方向)に対して傾斜角θで傾斜
させて、絶縁位置にある電気絶縁シート34、アルミ帯
板18、表面側電極部60及び裏面側電極部62が全て
平行な状態で、陽極酸化処理されるように構成してもよ
い。これにより、第2実施形態と同様、アルミ帯板18
の処理ムラをさらに少なくすることが可能になる。さら
に、電気絶縁シート34を、アルミ帯板18の幅方向
(矢印W方向)略中央において屈曲させ、第3実施形態
と略同様に扁平なV字状としてもよい。但し、上記各実
施形態のように、電気絶縁シート34をアルミ帯板18
の搬送方向(矢印F方向)に対して傾斜させると、電気
絶縁シート34と裏面側電極部やアルミ帯板18との距
離が搬送方向に見て部分的に異なっていても、アルミ帯
板18の搬送によってその影響を受けなくなるので、ア
ルミ帯板18の処理ムラを少なくでき、好ましい。
【0047】以上説明したように、本発明の金属板電解
処理装置では、電気絶縁シート34が絶縁位置にあると
き、所定の傾斜角θで水平面Hに対して傾斜するように
したので、電解槽用電解液26中に気泡が発生しても、
気泡は電気絶縁シート34に滞留することなく、絶縁部
材が気泡からの浮力で浮上することはない。このため、
電気絶縁シート34が損傷を受けることがなく、電気絶
縁シート34の交換に伴うコストや作業負荷が発生しな
い。また、電気絶縁シート34の破れによって金属板に
処理ムラが発生することもない。
【0048】しかも、電気絶縁シート34への気泡の滞
留を防止するために、金属板電解処理装置10での電解
処理を停止させる必要がないので、処理効率が低下する
こともない。
【0049】なお、気泡の滞留を防止することが可能で
あれば、絶縁位置での電気絶縁シート34の傾斜角θは
特に限定されないが、少なくとも0.1度以上とするこ
とが、気泡の滞留を防止して、電気絶縁シート34の上
昇に伴う損傷(破れ等)を防止することができるので好
ましく、特に0.5度以上とすると、さらに電気絶縁シ
ート34の損傷を確実に防止でき、好ましい。
【0050】また、この傾斜角θをあまりに大きくする
と、例えば上記した第1実施形態の構成では、電気絶縁
シート34と酸化処理用電極28との距離が部分的に大
きく変化するので、処理ムラが発生しやすくなる。ま
た、電解槽14の高さもより高くする必要が生じ、その
容量を増大させる必要も生じてコスト高を招くことにな
る。従って、これらの不都合を防止する観点からは、傾
斜角θは5.0度以下とすることが好ましく、3.0度
以下とすることがより好ましい。
【0051】搬送用ローラ16や循環用ローラ40の数
も特に限定されないが、例えば傾斜角θを大きくする
と、それに合わせてアルミ帯板18やクローズドループ
38を確実に保持する必要が生じることがあるが、この
場合には、搬送用ローラ16や循環用ローラ40の数を
増やせばよい。
【0052】本発明において、電解処理の対象物である
金属板は、上記したアルミ帯板18に限定されず、あら
ゆる金属板に対して電解処理できる。また、電解処理の
種類としても、金属板に酸化被膜を形成する処理に限ら
れない。例えば、電解メッキを施すような処理に本発明
を適用してもよく、この場合には、例えば電源24の接
続方法を変更する等すればよい。
【0053】また、本発明の金属板電解処理装置にで
は、電解処理する金属板を、必ずしも給電槽12及び電
解槽14内で搬送する必要はないが、連続して搬送する
ことで、電解処理も連続して行うことができるので、処
理効率が高くなる。
【0054】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに詳細に
説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないこ
とはもちろんである。
【0055】本実施例では、平版印刷版(PS版)の製
造工程の一部である電解粗面化工程に、本発明の金属板
電解処理装置を適用した。
【0056】まず、厚さ0.24mm、幅1030mm
のJIS A1100のアルミニウム帯板を送り出し機
より送り出し、ブラシによって砂目立てをした後、50
l/分の水道水で15秒にわたり水洗し、更に10wt
%の水酸化ナトリウム水溶液によって55℃で20秒間
にわたりエッチングし、再び上述の方法により水洗し
た。その後に30wt%の硝酸水溶液によって20℃で
20秒間にわたりデスマットし、上述の方法により水洗
して、陽極酸化処理を施した。
【0057】陽極酸化処理は、図1に示す第1実施形態
の金属板電解処理装置10と、電気絶縁シート34が水
平に配置されているものを使用した。また、アルミ帯板
18の搬送方向に沿って電気絶縁シート34を傾斜させ
たもの(図2参照)と、幅方向に沿って傾斜させたもの
(図6参照)及びこれら双方向に傾斜させたものを用い
た。
【0058】電解液は15wt%の硫酸を用い、液温3
5℃で連続処理を行った。陰極は厚さ100mmのアル
ミ板を用い、電源の負極(−極)に接続した。
【0059】電気絶縁シート34は塩化ビニールシート
(2.0mm厚)を使用し、循環用ローラ16は、アル
ミ帯板18の搬送方向に500mm間隔で設置した。ア
ルミ帯板18は1000mm、電気絶縁シート34の幅
は1100mm、アルミ帯板18と電気絶縁シート34
の距離は、最も離間した位置で約5mmとして、電流密
度12A/dm2で連続処理を、少なくとも5日、必要
に応じて90日行った。処理後の電気絶縁シート34の
状態、アルミ帯板18の表面の面質及び酸化被膜量の状
態、アルミ帯板18の裏面の面質状態及び電解槽14の
製作コストを表1及び表2に示す。なお、表1及び表2
には、各項目での評価を表中に記載しているが、「◎」
は「○」よりもさらに結果が良好であることを示す。ま
た「△」は、不都合が生じることもあるが、アルミ帯板
18の種類等によっては、実用上問題がない場合もある
ことを、「×」は問題又は不都合が生じることを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】表1及び表2から分かるように、電気絶縁
シート34を傾ける方向に関わらず、傾斜角θを0.1
度以上5.0度以下とすれば、電気絶縁シート34には
破れ等が発生することはなく、しかもアルミ帯板18の
状態が良好であることが分かる。特に、傾斜角θを0.
5度以上3.0度以下とすれば、アルミ帯板18の状態
が特に良好である。また、傾斜角θが0.05度の場合
(実施例1及び実施例7)では、電気絶縁シート34に
筋状の亀裂が発生したり、この亀裂に対応するアルミ帯
板18の面に干渉膜が発生したりすることがあるが、実
用上は問題がない場合もある。
【0063】これに対し、電気絶縁シート34の傾斜角
θを0度にした場合(比較例1)には、特に連続処理9
0日後において、電気絶縁シート34に大きな亀裂が発
生している。また、アルミ帯板18にも電解ヤケや干渉
膜が生じている。傾斜角を10度にした場合(比較例2
及び比較例3)には、アルミ帯板18の表面の酸化被膜
量の分布が不均一になっている。
【0064】また、電解槽14の製作コストに関して
は、電気絶縁シート34の傾斜角θが5.0度以下の場
合には、コストが上昇することはなく、特に3.0度以
下の場合には、実質的に全く製作コストの上昇はない。
これに対し、傾斜角θを10度にした場合(比較例2及
び比較例3)には、電解槽14の容量を大きくする必要
が生じ、製作コストが上昇している。また、電解槽14
の構造が複雑になる。
【0065】以上の条件を全て勘案すると、電気絶縁シ
ート34の傾斜角θは0.05度以上5.0度以下とす
ることが好ましく、さらに0.1度以上5.0度以下と
することがより好ましく、0.5度以上3.0度以下と
することが特に好ましい。
【0066】次に、電気絶縁シート34の傾斜角θが0
度、0.1度、0.5度、1.0度、3.0度及び5.
0度の各場合において、上記と同様の連続処理を行うこ
とで、電気絶縁シート34の寿命を詳細に調べた。その
結果、傾斜角θが0度の場合には寿命が10日であった
が、それ以外の場合では、180日を経過しても、電気
絶縁シート34には何ら問題は生じなかった。
【0067】
【発明の効果】請求項1に記載の発明では、電解液が収
容された電解槽と、前記電解液中に配置され、電解液に
浸漬された金属板の両面と対向する電極部によってこの
金属板を電解処理する電極部材と、前記金属板の一方の
面と前記電極部との間で、少なくとも下面が水平面に対
して傾斜するように配置された絶縁部材と、を有するの
で、電解液中に気泡が発生しても絶縁部材に滞留せず、
絶縁部材の損傷が防止されると共には気泡から浮力を受
けず、浮上しないので、金属板に接触して損傷を受ける
ことがなく、金属板に処理ムラや電解ヤケが発生するこ
ともない。
【0068】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記絶縁部材を、前記金属板の一方
の面と前記電極部との間の絶縁位置と、この絶縁位置か
ら退避した非絶縁位置との間で移動させる移動部材、を
有するので、両面処理と片面処理とを短時間で容易に切
りかえることができる。
【0069】請求項3に記載の発明では、請求項1又は
請求項2に記載の発明において、前記金属板及び前記電
極部が、前記絶縁部材と平行に配置されているので、金
属板の処理ムラをさらに少なくすることができる。
【0070】請求項4に記載の発明では、請求項1〜請
求項3のいずれかに記載の発明において、前記金属板が
前記電解槽内で一定方向に搬送され、前記絶縁部材が、
前記金属板の搬送方向にのみ傾斜するように配置されて
いるので、処理効率が高くなると共に、金属板の処理ム
ラをさらに少なくすることができる。
【0071】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれかに記載の発明において、前記絶縁部材
の水平面に対する傾斜角度が0.1度以上5.0度以下
とされているので、処理ムラを効果的に防止できると共
に、低コストで金属板電解処理装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置を
示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが非絶縁位置にある状態で部
分的に拡大して示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図5】本発明の第3実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図6】本発明の金属板電解処理装置の電解槽の別の例
を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分的に拡
大して示す説明図である。
【図7】本発明の金属板電解処理装置の電解槽のさらに
別の例を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図8】従来の金属板電解処理装置の電解槽を示す断面
図である。
【符号の説明】
10 金属板電解処理装置 14 電解槽 18 アルミ帯板(金属板) 26 電解液 28 電極部材 30 表面側電極部(電極部) 32 裏面側電極部(電極部) 34 電気絶縁シート(絶縁部材) 36 ワイヤー(移動部材) 38 クローズドループ(移動部材) 40 循環用ローラ(移動部材) 58 電極部材 60 表面側電極部(電極部) 62 裏面側電極部(電極部)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年10月23日(2000.10.
23)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 金属板電解処理装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属板を陽極酸化
処理等、電解処理するための金属板電解処理装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】図8(A)及び(B)には、従来の金属
板電解処理装置の一例として、帯状アルミニウム板の陽
極酸化処理装置110が部分的に示されている(特公昭
63−58233号参照)。
【0003】この陽極酸化処理装置110では、一定方
向に連続して搬送されるアルミウエブ112の両面に対
応して、陰極板114、116が配置されている。下側
の陰極板116とアルミウエブ112の間には、絶縁性
の材料で構成された電気絶縁シート118が配置されて
いる。電気絶縁シート118の両端にはワイヤー120
の両端がそれぞれ接続されて、全体として無端状のクロ
ーズドループが構成されており、アルミウエブ112の
片面のみを処理するときには、図8(A)に示すよう
に、電気絶縁シート118をアルミウエブ112と陰極
板116との間に配置し、アルミウエブ112の裏面へ
の電流裏周りを防止する。これに対し、アルミウエブ1
12の両面を処理するときには、図8(B)に示すよう
に、クローズドループを循環させて電気絶縁シート11
8を下側(少なくとも陰極板116とアルミウエブ11
2との間に存在しない位置)へと移動させる。これによ
り、1つの陽極酸化処置装置110で、アルミウエブ1
12の両面処理と片面処理の双方が行えるようになって
いる。
【0004】ところで、このような金属板電解処理装置
(陽極酸化処理装置110)では、ポンプ等を使用して
電解液を循環させているが、循環による空気の巻き込み
等により電解液内に気泡が発生することがある。また、
電解処理に伴う電気化学的な反応によっても、電解液内
に気泡が発生することがある。そして、この気泡が電気
絶縁シート118の下面に付着して滞留すると、気泡の
浮力によって電気絶縁シート118も浮上し、アルミウ
エブ112に接触して損傷を受けてしまうことがある。
このため、電気絶縁シート118を交換しなければなら
ず、多くのコスト及び作業負荷を要する場合がある。
【0005】また、電気絶縁シート118に破れが生じ
た場合には、この破れの部分において絶縁能力が低下す
るため、電解液内での電流の流れが所望の流れとなら
ず、アルミウエブ112の処理面にいわゆる電解ヤケ
(陽極酸化被膜の局所的な過大成長)が発生して、品質
が低下することがある。
【0006】さらに、電気絶縁シート118が損傷を受
けていない場合であっても、浮上によって電気絶縁シー
ト118と陰極板116との距離が部分的に大きく変化
するため、アルミウエブ112の表面の陽極酸化被膜量
も変動し、品質上の問題が生じるおそれがある。
【0007】かかる不都合を防止するためには、クロー
ズドループを循環させて、図8(B)に示すように電気
絶縁シート118を下側に移動させれば、電気絶縁シー
ト118は反転されるので、滞留した気泡を逃すことが
できる。しかし、気泡を逃すためにクローズドループを
循環させている間は処理を停止させなければならず、処
理効率が低下する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実を
考慮し、絶縁部材に気泡が滞留することのない金属板電
解処理装置を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明で
は、電解液が収容された電解槽と、前記電解液中に配置
され、電解液に浸漬された金属板の両面と対向する電極
部によってこの金属板を電解処理する電極部材と、前記
金属板の一方の面と前記電極部との間で、少なくとも下
面が水平面に対して傾斜するように配置された絶縁部材
と、を有することを特徴とする。
【0010】電解液中に電極部材の電極部から電流を流
すことで、電解液に浸漬された金属板を電解処理でき
る。また、金属板の一方の面と電極部との間には絶縁部
材が配置されているので、金属板を片面処理することが
できる。金属板を両面処理する場合には、絶縁部材を除
去すれば、電極部材の電極部は金属板の両面と対向する
ように配置されているので、両面処理が可能である。
【0011】絶縁部材は、金属板の一方の面と電極部と
の間で、少なくとも下面が水平面に対して傾斜するよう
に配置されている。このため、電解液中に気泡が発生し
ても、気泡は絶縁部材の下面に沿ってそれ自身の浮力で
上昇し、絶縁部材に滞留することはない。絶縁部材は気
泡から浮力を受けず、浮上しないので、金属板に接触し
て損傷を受けることがなく、絶縁部材の交換に伴うコス
トや作業負荷が発生しない。また、絶縁部材の破れによ
って金属板に処理ムラや電解ヤケが発生することもな
い。
【0012】しかも、絶縁部材は、その下面を僅かに傾
斜させれば気泡を逃すためには十分であり、電極部との
距離が大きく変化しているような部分は存在しない。従
って、この点においても金属板の処理ムラや電解ヤケを
確実に防止することができる。
【0013】加えて、絶縁部材への気泡の滞留を防止す
るために、金属板電解処理装置での電解処理を停止させ
る必要がないので、処理効率が低下することもない。
【0014】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記絶縁部材を、前記金属板の一方
の面と前記電極部との間の絶縁位置と、この絶縁位置か
ら退避した非絶縁位置との間で移動させる移動部材、を
有することを特徴とする。
【0015】すなわち、金属板の両面を処理する場合に
は、絶縁部材を電解槽内から除去し、再度片面処理する
場合には、絶縁部材を絶縁位置に配置するようにしても
よいが、請求項2に記載のように、移動部材によって、
絶縁部材を絶縁位置と非絶縁位置との間で移動させるこ
とで、両面処理と片面処理とを短時間で容易に切りかえ
ることができる。
【0016】請求項3に記載の発明では、請求項1又は
請求項2に記載の発明において、前記金属板及び前記電
極部が、前記絶縁部材と平行に配置されていることを特
徴とする。
【0017】これにより、絶縁部材と金属板と電極部と
が全て平行に配置されていることになるので、金属板の
処理ムラをさらに少なくすることができる。
【0018】請求項4に記載の発明では、請求項1〜請
求項3のいずれかに記載の発明において、前記金属板が
前記電解槽内で一定方向に搬送され、前記絶縁部材が、
前記金属板の搬送方向にのみ傾斜するように配置されて
いることを特徴とする。
【0019】金属板を一定方向に搬送しながら電解処理
できるので、処理効率が高くなる。
【0020】また、絶縁部材を、金属板の搬送方向にの
み傾斜するように配置することで、絶縁部材と電極部と
の距離が部分的に異なっていても、金属板が搬送される
ことでその影響を受けなくなる。このため、金属板の処
理ムラをさらに少なくすることができる。
【0021】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれかに記載の発明において、前記絶縁部材
の水平面に対する傾斜角度が0.1度以上5.0度以下
とされていることを特徴とする。
【0022】このように、傾斜角度を0.1度以上とす
ることで、気泡の滞留を確実に防止することが可能にな
る。また、傾斜角度を5.0度以下とすることで、絶縁
部材と電極部との距離が一定範囲内とされるので、処理
ムラを効果的に防止できる。また、電解槽を大型にする
必要がなくなるので、低コストで金属板電解処理装置を
構成できる。
【0023】
【発明の実施の形態】図1には、本発明の第1実施形態
の金属板電解処理装置10の概略構成が示されている。
また、図2には、金属板電解処理装置10の電解槽14
が部分的に拡大して示されている。
【0024】図1に示すように、この金属板電解処理装
置10は、仕切り壁13によって仕切られた給電槽12
及び電解槽14を有している。これらの給電槽12及び
電解槽14内を、必要な前処理が施された金属板(本実
施形態では一例としてアルミ帯板18)が複数の搬送用
ローラ16に懸架されて搬送される。アルミ帯板18の
搬送方向を矢印Fで、幅方向を矢印Wでそれぞれ示す。
【0025】給電槽12には給電槽用電解液20が収容
されており、アルミ帯板18はこの給電槽用電解液20
に浸漬された状態で搬送される。また、給電槽用電解液
20内には、搬送されるアルミ帯板18の両面と平行に
対面するように、電源24の陽極とブスバー42で接続
された給電用電極22が、アルミ帯板18の搬送方向に
沿って1つ又は複数(本実施形態では3つ)設けられて
いる。アルミ帯板18は給電用電極22と対面した状態
で給電槽用電解液20内を搬送されることで、陰極とし
て作用する。
【0026】一方、電解槽14には電解槽用電解液26
が収容されており、給電槽12から送られてきたアルミ
帯板18は、電解槽用電解液26に浸漬された状態で搬
送される。図2にも詳細に示すように、この電解槽14
内には、酸化処理用電極28が、アルミ帯板18の搬送
方向に沿って1つ又は複数(本実施形態では3つ)設け
られている。
【0027】図2に詳細に示すように、酸化処理用電極
28はそれぞれ、搬送されるアルミ帯板18の表面(上
面)と平行に対面する平板状の表面側電極部30、アル
ミ帯板18の裏面(下面)と平行に対面する平板状の裏
面側電極部32、及びこれらを接続する図示しない接続
部よって一体的に構成されている。
【0028】アルミ帯板18と裏面側電極部32との間
には、絶縁性及び可撓性のある材料で構成された電気絶
縁シート34が配設されている。電気絶縁シート34
は、酸化処理用電極28が通電された状態でも、アルミ
帯板18の裏面と裏面側電極部32との間の電流の流れ
を抑えるために十分な大きさとされており、アルミ帯板
18の裏面が電解処理されないように作用する。
【0029】電気絶縁シート34の両端には、ワイヤー
36の両端がそれぞれ接続されており、電気絶縁シート
34とワイヤー36とで無端状のクローズドループ38
が構成されている。また、電解槽14内には、複数の循
環用ローラ40が配置されており、クローズドループ3
8は、これらの循環用ローラ40に巻き掛けられて循環
するようになっている。そして、循環により、電気絶縁
シート34は、図2に示すようにアルミ帯板18の裏面
と裏面側電極部32との間の位置(絶縁位置)と、図3
に示すように下側へと退避した位置(非絶縁位置)との
間を移動するようになっている。なお、クローズドルー
プ38の循環は、例えば電解槽14の外部に設けたモー
タ等の駆動手段で循環用ローラ40を回転駆動すること
により行っても良いし、操作用ハンドルを設けて手動に
より循環用ローラ40を回転させてもよい。
【0030】図2に示すように、複数の循環用ローラ4
0のうち、相対的に上側に位置する2つの循環用ローラ
40Aは、鉛直方向の位置(水平面Hからの距離)が異
なる位置に配置されている。これにより、電気絶縁シー
ト34は、絶縁位置にあるときに、アルミ帯板18の搬
送方向(矢印F方向)に沿って、水平面Hに対し所定の
傾斜角θで傾斜している。
【0031】電解槽14には図示しない循環装置が設け
られており、電解槽用電解液26が電解槽14内で循環
されるようになっている。
【0032】次に、第1実施形態の金属板電解処理装置
10の作用を説明する。
【0033】図1に示すように、必要な前処理が施され
たアルミ帯板18は、搬送用ローラ16に懸架されて、
給電槽12内の給電槽用電解液20に浸漬された状態で
搬送される。このとき、アルミ帯板18は、電源24の
陽極と接続された給電用電極22と対面して搬送され、
陰極として作用する。
【0034】アルミ帯板18はさらに搬送用ローラ16
によって搬送され、電解槽14内の電解槽用電解液26
に浸漬された状態で搬送される。このとき、アルミ帯板
18は、電源24の陰極と接続された表面側電極部30
及び裏面側電極部32に表面及び裏面がそれぞれ対面し
て搬送されるので、アルミ帯板18は陽極として作用
し、アルミ帯板18が酸化されて酸化被膜が形成され
る。ここで、アルミ帯板18の両面に電解処理を施して
陽極酸化被膜を形成するときは、図3に示すように電気
絶縁シート34を非絶縁位置とする。これに対し、アル
ミ帯板18の片面にのみ陽極酸化被膜を形成するとき
は、図2に示すように電気絶縁シート34を絶縁位置へ
と移動させる。このように、クローズドループ38を循
環させるだけで、アルミ帯板18の両面処理と片面処理
とを短時間で容易に切り替えることができる。
【0035】電解槽用電解液26は、図示しない循環装
置によって電解槽14内で循環されるため、循環による
空気の巻き込み等により電解槽用電解液26内に気泡が
発生することがある。また、電解処理に伴う電気化学的
な反応によっても、電解槽用電解液26内に気泡が発生
することがある。そして、この気泡が電気絶縁シート3
4の下面に達することがある。
【0036】ここで、本実施形態の金属板電解処理装置
10では、図2に示すように電気絶縁シート34が絶縁
位置にあるとき、水平面Hに対して所定の傾斜角θで傾
斜している。このため、気泡は電気絶縁シート34の下
面に付着して滞留することはなく、浮力によって電気絶
縁シート34下面に沿って上昇し、電解槽用電解液26
の液面から空気中に逃される。従って、電気絶縁シート
34が浮き上がってアルミ帯板18や酸化処理用電極2
8に接触し損傷(破れや傷等)を受けることがない。電
気絶縁シート34を交換する必要がない(若しくは、交
換頻度が低下する)ので、交換に伴うコストや作業負荷
が発生しない。また、電気絶縁シート34に破れや傷が
発生しないので、その絶縁能力に局所的な変化が生じる
こともなく、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸化皮膜
が局所的に過大成長した部分)も生じない。加えて、電
気絶縁シート34が浮上しないので、浮上によって電気
絶縁シート34と酸化処理用電極28との距離が部分的
に大きく変化することもなく、アルミ帯板18の表面の
陽極酸化被膜量も変動しない。
【0037】なお、図1では給電槽12と電解槽14と
が仕切り壁13によって仕切られた構成のものを示して
いるが、給電槽12と電解槽14とそれぞれ別体の槽
として構成されていてもよい。この場合には、給電槽用
電解液20及び電解槽用電解液26の量や組成を微調整
したり補充したりすることが可能となる。
【0038】図4には、本発明の第2実施形態に係る電
解槽54が部分的に拡大して示されている。第2実施形
態では、この電解槽54の内部の構成のみが第1実施形
態と異なっており、他は全て同一とされているので、異
なっている部分のみ説明し、他は説明を省略する。
【0039】第2実施形態の電解槽54では、第1実施
形態と同様、電気絶縁シート34が絶縁位置にあると
き、水平面Hに対して所定の傾斜角θで傾斜している
が、さらに、酸化処理用電極58を構成する表面側電極
部60及び裏面側電極部62のそれぞれも、電気絶縁シ
ート34の傾斜角θと同じ傾斜角θで傾斜して配置され
ている。また、アルミ帯板18も、傾斜角θで傾斜した
状態で搬送されるようになっている。
【0040】従って、第2実施形態でも第1実施形態と
同様、気泡は電気絶縁シート34の下面に付着して滞留
しないので、電気絶縁シート34が浮き上がってアルミ
帯板18や酸化処理用電極28に接触して損傷(破れや
傷等)を受けることがなく、電気絶縁シート34の交換
に伴うコストや作業不可が発生しない。また、電気絶縁
シート34が浮上しないので、浮上によって電気絶縁シ
ート34と酸化処理用電極28との距離が部分的に大き
く変化することもなく、アルミ帯板18の表面の陽極酸
化被膜量も変動しない。加えて、電気絶縁シート34に
破れや傷が発生しないので、絶縁能力に局所的な変化が
生じることもなく、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸
化皮膜が局所的に過大成長した部分)も生じない。
【0041】また、表面側電極部60、裏面側電極部6
2及びアルミ帯板18も、傾斜角θで傾斜しており、絶
縁位置にある電気絶縁シート34、アルミ帯板18、表
面側電極部60及び裏面側電極部62が全て平行な状態
で、陽極酸化処理される。このため、アルミ帯板18の
処理ムラを、第1実施形態よりもさらに少なくする(実
質的にほとんど発生させない)ことが可能になる。
【0042】図5には、本発明の第3実施形態に係る電
解槽74が部分的に拡大して示されている。第3実施形
態では、この電解槽74の内部の構成のみが第1実施形
態と異なっており、他は全て同一とされているので、異
なっている部分のみ説明し、他は説明を省略する。
【0043】第3実施形態の電解槽74では、上側の2
つの循環用ローラ40Aの鉛直方向の位置(水平面Hか
らの距離)は等しくされているが、これら2つの循環用
ローラ40Aの略中央に、電気絶縁シート34を上方か
ら押えつけて屈曲させる屈曲ローラ76が配置されてい
る。この屈曲ローラ76により、絶縁位置にある電気絶
縁シート34は、扁平なV字状に屈曲され、所定の傾斜
角θで、屈曲ローラ76の両側において傾斜している。
【0044】従って、第3実施形態においても、第1実
施形態と同様、気泡は電気絶縁シート34の下面に付着
して滞留しないので、電気絶縁シート34が浮き上がっ
てアルミ帯板18や酸化処理用電極28に接触して損傷
(破れや傷等)を受けることがなく、電気絶縁シート3
4の交換に伴うコストや作業不可が発生しない。また、
電気絶縁シート34が浮上しないので、浮上によって電
気絶縁シート34と酸化処理用電極28(特に、裏面側
電極部32)との距離が部分的に大きく変化することも
なく、アルミ帯板18の表面の陽極酸化被膜量も変動し
ない。加えて、電気絶縁シート34に破れや傷が発生し
ないので、絶縁能力に局所的な変化が生じることもな
く、アルミ帯板18の電解ヤケ(陽極酸化皮膜が局所的
に過大成長した部分)も生じない。
【0045】加えて、電気絶縁シート34を略中央で屈
曲させて扁平なV字状としたので、絶縁位置において気
泡の滞留を防止するために必要な傾斜角θを十分確保
し、しかも電気絶縁シート34自体の高低差(最も高い
位置にある部分と最も低い位置にある部分との差)を、
第1実施形態よりも小さくすることができる。このた
め、アルミ帯板18の処理ムラを、第1実施形態よりも
さらに少なくすると朋に、電解槽14(図1参照)の高
さを小さくして小型化し、容量を小さくできるので、低
コストとなる。
【0046】なお、上記説明では、電気絶縁シート34
が絶縁位置にあるとき、アルミ帯板18の搬送方向(矢
印F方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜しているもの
のみを例として挙げたが、傾斜方向は特に限定されな
い。例えば、図6に示すように、アルミ帯板18の幅方
向(矢印W方向)に対して、電気絶縁シート34が所定
の傾斜角θで傾斜していてもよい。また、図7に示すよ
うに、電気絶縁シート34だけでなく、表面側電極部6
0、裏面側電極部62及びアルミ帯板18も、アルミ帯
板18の幅方向(矢印W方向)に対して傾斜角θで傾斜
させて、絶縁位置にある電気絶縁シート34、アルミ帯
板18、表面側電極部60及び裏面側電極部62が全て
平行な状態で、陽極酸化処理されるように構成してもよ
い。これにより、第2実施形態と同様、アルミ帯板18
の処理ムラをさらに少なくすることが可能になる。さら
に、電気絶縁シート34を、アルミ帯板18の幅方向
(矢印W方向)略中央において屈曲させ、第3実施形態
と略同様に扁平なV字状としてもよい。但し、上記各実
施形態のように、電気絶縁シート34をアルミ帯板18
の搬送方向(矢印F方向)に対して傾斜させると、電気
絶縁シート34と裏面側電極部62やアルミ帯板18と
の距離が搬送方向に見て部分的に異なっていても、アル
ミ帯板18の搬送によってその影響を受けなくなるの
で、アルミ帯板18の処理ムラを少なくでき、好まし
い。
【0047】以上説明したように、本発明の金属板電解
処理装置では、電気絶縁シート34が絶縁位置にあると
き、所定の傾斜角θで水平面Hに対して傾斜するように
したので、電解槽用電解液26中に気泡が発生しても、
気泡は電気絶縁シート34に滞留することなく、絶縁部
材が気泡からの浮力で浮上することはない。このため、
電気絶縁シート34が損傷を受けることがなく、電気絶
縁シート34の交換に伴うコストや作業負荷が発生しな
い。また、電気絶縁シート34の破れによって金属板に
処理ムラが発生することもない。
【0048】しかも、電気絶縁シート34への気泡の滞
留を防止するために、金属板電解処理装置10での電解
処理を停止させる必要がないので、処理効率が低下する
こともない。
【0049】なお、気泡の滞留を防止することが可能で
あれば、絶縁位置での電気絶縁シート34の傾斜角θは
特に限定されないが、少なくとも0.1度以上とするこ
とが、気泡の滞留を防止して、電気絶縁シート34の上
昇に伴う損傷(破れ等)を防止することができるので好
ましく、特に0.5度以上とすると、さらに電気絶縁シ
ート34の損傷を確実に防止でき、好ましい。
【0050】また、この傾斜角θをあまりに大きくする
と、例えば上記した第1実施形態の構成では、電気絶縁
シート34と酸化処理用電極28との距離が部分的に大
きく変化するので、処理ムラが発生しやすくなる。ま
た、電解槽14の高さもより高くする必要が生じ、その
容量を増大させる必要も生じてコスト高を招くことにな
る。従って、これらの不都合を防止する観点からは、傾
斜角θは5.0度以下とすることが好ましく、3.0度
以下とすることがより好ましい。
【0051】搬送用ローラ16や循環用ローラ40の数
も特に限定されない。例えば傾斜角θを大きくすると、
それに合わせてアルミ帯板18やクローズドループ38
を確実に保持する必要が生じることがあるが、この場合
には、搬送用ローラ16や循環用ローラ40の数を増や
せばよい。
【0052】本発明において、電解処理の対象物である
金属板は、上記したアルミ帯板18に限定されず、あら
ゆる金属板に対して電解処理できる。また、電解処理の
種類としても、金属板に酸化被膜を形成する処理に限ら
れない。例えば、電解メッキを施すような処理に本発明
を適用してもよく、この場合には、例えば電源24の接
続方法を変更する等すればよい。
【0053】また、本発明の金属板電解処理装置では
電解処理する金属板を、必ずしも給電槽12及び電解槽
14内で搬送する必要はないが、連続して搬送すること
で、電解処理も連続して行うことができるので、処理効
率が高くなる。
【0054】
【実施例】次に、本発明を実施例によってさらに詳細に
説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないこ
とはもちろんである。
【0055】本実施例では、平版印刷版(PS版)の製
造工程の一部である陽極酸化処理工程に、本発明の金属
板電解処理装置を適用した。
【0056】まず、厚さ0.24mm、幅1030mm
のJIS A1100のアルミニウム帯板を送り出し機
より送り出し、ブラシによって砂目立てをした後、50
l/分の水道水で15秒にわたり水洗し、更に10wt
%の水酸化ナトリウム水溶液によって55℃で20秒間
にわたりエッチングし、再び上述の方法により水洗し
た。その後に30wt%の硝酸水溶液によって20℃で
20秒間にわたりデスマットし、上述の方法により水洗
して、陽極酸化処理を施した。
【0057】陽極酸化処理は、図1に示す第1実施形態
の金属板電解処理装置10と、電気絶縁シート34が水
平に配置されているものを使用した。また、アルミ帯板
18の搬送方向に沿って電気絶縁シート34を傾斜させ
たもの(図2参照)と、幅方向に沿って傾斜させたもの
(図6参照)及びこれら双方向に傾斜させたものを用い
た。
【0058】電解液は15wt%の硫酸を用い、液温3
5℃で連続処理を行った。陰極は厚さ100mmのアル
ミ板を用い、電源の負極(−極)に接続した。
【0059】電気絶縁シート34は塩化ビニールシート
(2.0mm厚)を使用し、循環用ローラ16は、アル
ミ帯板18の搬送方向に500mm間隔で設置した。ア
ルミ帯板18は1000mm、電気絶縁シート34の幅
は1100mm、アルミ帯板18と電気絶縁シート34
の距離は、最も離間した位置で約5mmとして、電流密
度12A/dm2で連続処理を、少なくとも5日、必要
に応じて90日行った。処理後の電気絶縁シート34の
状態、アルミ帯板18の表面の面質及び酸化被膜量の状
態、アルミ帯板18の裏面の面質状態及び電解槽14の
製作コストを表1及び表2に示す。なお、表1及び表2
には、各項目での評価を表中に記載しているが、「◎」
は「○」よりもさらに結果が良好であることを示す。ま
た「△」は、不都合が生じることもあるが、アルミ帯板
18の種類等によっては、実用上問題がない場合もある
ことを、「×」は問題又は不都合が生じることを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】表1及び表2から分かるように、電気絶縁
シート34を傾ける方向に関わらず、傾斜角θを0.1
度以上5.0度以下とすれば、電気絶縁シート34には
破れ等が発生することはなく、しかもアルミ帯板18の
状態が良好であることが分かる。特に、傾斜角θを0.
5度以上3.0度以下とすれば、アルミ帯板18の状態
が特に良好である。また、傾斜角θが0.05度の場合
(実施例1及び実施例7)では、電気絶縁シート34に
筋状の亀裂が発生したり、この亀裂に対応するアルミ帯
板18の面に干渉膜が発生したりすることがあるが、実
用上は問題がない場合もある。
【0063】これに対し、電気絶縁シート34の傾斜角
θを0度にした場合(比較例1)には、特に連続処理9
0日後において、電気絶縁シート34に大きな亀裂が発
生している。また、アルミ帯板18にも電解ヤケや干渉
膜が生じている。傾斜角を10度にした場合(比較例2
及び比較例3)には、アルミ帯板18の表面の酸化被膜
量の分布が不均一になっている。
【0064】また、電解槽14の製作コストに関して
は、電気絶縁シート34の傾斜角θが5.0度以下の場
合には、コストが上昇することはなく、特に3.0度以
下の場合には、実質的に全く製作コストの上昇はない。
これに対し、傾斜角θを10度にした場合(比較例2及
び比較例3)には、電解槽14の容量を大きくする必要
が生じ、製作コストが上昇している。また、電解槽14
の構造が複雑になる。
【0065】以上の条件を全て勘案すると、電気絶縁シ
ート34の傾斜角θは0.05度以上5.0度以下とす
ることが好ましく、さらに0.1度以上5.0度以下と
することがより好ましく、0.5度以上3.0度以下と
することが特に好ましい。
【0066】次に、電気絶縁シート34の傾斜角θが0
度、0.1度、0.5度、1.0度、3.0度及び5.
0度の各場合において、上記と同様の連続処理を行うこ
とで、電気絶縁シート34の寿命を詳細に調べた。その
結果、傾斜角θが0度の場合には寿命が10日であった
が、それ以外の場合では、180日を経過しても、電気
絶縁シート34には何ら問題は生じなかった。
【0067】
【発明の効果】請求項1に記載の発明では、電解液が収
容された電解槽と、前記電解液中に配置され、電解液に
浸漬された金属板の両面と対向する電極部によってこの
金属板を電解処理する電極部材と、前記金属板の一方の
面と前記電極部との間で、少なくとも下面が水平面に対
して傾斜するように配置された絶縁部材と、を有するの
で、電解液中に気泡が発生しても絶縁部材に滞留せず、
絶縁部材の損傷が防止されると共には気泡から浮力を受
けず、浮上しないので、金属板に接触して損傷を受ける
ことがなく、金属板に処理ムラや電解ヤケが発生するこ
ともない。
【0068】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記絶縁部材を、前記金属板の一方
の面と前記電極部との間の絶縁位置と、この絶縁位置か
ら退避した非絶縁位置との間で移動させる移動部材、を
有するので、両面処理と片面処理とを短時間で容易に切
りかえることができる。
【0069】請求項3に記載の発明では、請求項1又は
請求項2に記載の発明において、前記金属板及び前記電
極部が、前記絶縁部材と平行に配置されているので、金
属板の処理ムラをさらに少なくすることができる。
【0070】請求項4に記載の発明では、請求項1〜請
求項3のいずれかに記載の発明において、前記金属板が
前記電解槽内で一定方向に搬送され、前記絶縁部材が、
前記金属板の搬送方向にのみ傾斜するように配置されて
いるので、処理効率が高くなると共に、金属板の処理ム
ラをさらに少なくすることができる。
【0071】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれかに記載の発明において、前記絶縁部材
の水平面に対する傾斜角度が0.1度以上5.0度以下
とされているので、処理ムラを効果的に防止できると共
に、低コストで金属板電解処理装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置を
示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが非絶縁位置にある状態で部
分的に拡大して示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図5】本発明の第3実施形態の金属板電解処理装置の
電解槽を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図6】本発明の金属板電解処理装置の電解槽の別の例
を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分的に拡
大して示す説明図である。
【図7】本発明の金属板電解処理装置の電解槽のさらに
別の例を、電気絶縁シートが絶縁位置にある状態で部分
的に拡大して示す説明図である。
【図8】従来の金属板電解処理装置の電解槽を示す断面
図である。
【符号の説明】 10 金属板電解処理装置 14 電解槽 18 アルミ帯板(金属板) 26 電解液 28 電極部材 30 表面側電極部(電極部) 32 裏面側電極部(電極部) 34 電気絶縁シート(絶縁部材) 36 ワイヤー(移動部材) 38 クローズドループ(移動部材) 40 循環用ローラ(移動部材) 58 電極部材 60 表面側電極部(電極部) 62 裏面側電極部(電極部)
フロントページの続き (72)発明者 山崎 徹 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フイルム株式会社内 (72)発明者 榊 博和 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フイルム株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解液が収容された電解槽と、 前記電解液中に配置され、電解液に浸漬された金属板の
    両面と対向する電極部によってこの金属板を電解処理す
    る電極部材と、 前記金属板の一方の面と前記電極部との間で、少なくと
    も下面が水平面に対して傾斜するように配置された絶縁
    部材と、 を有することを特徴とする金属板電解処理装置。
  2. 【請求項2】 前記絶縁部材を、前記金属板の一方の面
    と前記電極部との間の絶縁位置と、この絶縁位置から退
    避した非絶縁位置との間で移動させる移動部材、 を有することを特徴とする請求項1に記載の金属板電解
    処理装置。
  3. 【請求項3】 前記金属板及び前記電極部が、前記絶縁
    部材と平行に配置されていることを特徴とする請求項1
    又は請求項2に記載の金属板電解処理装置。
  4. 【請求項4】 前記金属板が前記電解槽内で一定方向に
    搬送され、 前記絶縁部材が、前記金属板の搬送方向にのみ傾斜する
    ように配置されていることを特徴とする請求項1〜請求
    項3のいずれかに記載の金属板電解処理装置。
  5. 【請求項5】 前記絶縁部材の水平面に対する傾斜角度
    が0.1度以上5.0度以下とされていることを特徴と
    する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金属板電解
    処理装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009119186A1 (ja) * 2008-03-28 2009-10-01 富士フイルム株式会社 電解処理装置および電解処理方法
KR101620414B1 (ko) 2014-09-25 2016-05-12 주식회사 포스코 수평셀 전기 도금 장치 및 그 제어방법

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WO2009119186A1 (ja) * 2008-03-28 2009-10-01 富士フイルム株式会社 電解処理装置および電解処理方法
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