JP2002069593A - 強磁性材料およびそれを用いた回転機 - Google Patents

強磁性材料およびそれを用いた回転機

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JP2002069593A
JP2002069593A JP2000261773A JP2000261773A JP2002069593A JP 2002069593 A JP2002069593 A JP 2002069593A JP 2000261773 A JP2000261773 A JP 2000261773A JP 2000261773 A JP2000261773 A JP 2000261773A JP 2002069593 A JP2002069593 A JP 2002069593A
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nitriding
flux density
saturation magnetic
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JP2000261773A
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Matahiro Komuro
又洋 小室
Masaji Kitamura
正司 北村
Junya Kaneda
潤也 金田
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 局部的に、他の部分より飽和磁束密度が低い
部分を有する、Feを含む強磁性材料を提供する。 【解決手段】 Feを含む強磁性材料であって、複数の
箇所に存在する第1の部分3と、前記隣接する第1の部
分3を連結する第2の部分5とを有する。第2の部分5
は、その一部に、前記第1の部分より高い濃度で窒素を
含み、かつ、飽和磁束密度が第1の部分より低い領域を
有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強磁性材料に係
り、特に、飽和磁束密度が部分的に異なる強磁性材料、
および、それを用いた回転機に関する。
【0002】
【従来の技術】ブラシレスモータ、各種センサーなどの
電磁部品の用途に対し、強磁性材料の圧延材料の中で、
飽和磁束密度が面内で異なる材料が開発されている。
【0003】この種の材料を得る方法として、特開昭5
7−20374号公報に記載される技術がある。この技
術では、HADFIELD’S AUSTENITIC
STEEL (Fe−Mn−C)を改良して、レーザ
装置または電子ビーム装置を用いて、同一部材面内で異
なる磁気特性を出現させている。HADFIELD’S
AUSTENITIC STEELは室温で非磁性の
オーステナイト相を持ち、この鋼のオーステナイト相を
磁性を持つフェライト相に変態させることは、長い熱処
理を行わない限り困難であるという欠点を持つ。
【0004】この欠点を解決するものとして、特開昭5
7−203747号公報に記載される技術がある。この
技術では、Siを添加することで、レーザあるいは電子
ビームを使って局部加熱することにより、容易にα相に
変態させられるようにした。これにより、非磁性の磁気
特性を持つ部材中に磁性相部分を作ることが出来る。ま
た、特開平9−69422号公報に示す技術がある。こ
の技術では、Feを含有するオーステナイト相の非磁性
材料にフェライト相形成元素であるSnを付着あるいは
溶着させ、800−1200℃に加熱してSnを表層に
拡散させ、徐冷させることにより、Snを導入した部分
の表層のオーステナイト相をフェライト相に変態させ、
材料表層に磁性層を選択的に形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述した特開昭57−
20374号公報に記載される技術では、部材を800
乃至1000℃以上の高温まで加熱する必要がある。そ
のため、材料の変形が避けられないという欠点がある。
また、特開昭57−203747号公報に示す技術およ
び特開平9−69422号公報に示す技術では、部材表
面に他の金属材料を付着あるいは溶着させる工程が必要
となる欠点がある。さらに、前述した各技術は、いずれ
も、いわゆる電磁鋼板と呼ばれる安価なFe−Si系鋼
板とは異なり、それぞれ高価な材料を用いるため、高コ
ストとなる欠点がある。例えば、リラクタンスモータ等
に用いる場合には、部分的に飽和磁束密度を低くした磁
性材料板を多数枚必要とするため、材料のコストが低い
ことが望まれる。
【0006】さらに、母材の一部分を、完全に非磁性で
なく、飽和磁束密度を小さくすることについては、従来
技術を使用して実現することは困難である。例えば、飽
和磁束密度が2.0TのFe−Si材料の一部分のみ飽
和磁束密度を1.0Tにすることは、従来方法では困難
である。その理由は、従来技術を利用して磁性材料の飽
和磁束密度を下げるには、1000℃以上といった高温
で熱処理を行うことにより相変態を起こして、部材をγ
相にして非磁性化する。このとき、部材の温度は厚さ方
向に全て変態点以上となってしまうため、熱処理した部
分は厚さ方向に全て非磁性化してしまう。厚さ方向の芯
部に磁性相が残っていれば、それが磁化を担って処理し
た部分の飽和磁束密度が低下するがゼロにならないよう
に見える。しかし、厚さ方向に全て非磁性化されてしま
うと、磁化を担う部分が無くなってしまうため、処理し
た部分の飽和磁束密度はほとんどゼロになってしまう。
【0007】一方、異なる磁気特性をもつ部材同士を接
合することも考えられる。しかし、所望の寸法精度を維
持し、高コストを避けるとなると、接合により製造する
方法は現実的ではない。従って、この方法は採用しがた
い。
【0008】本発明の目的は、局部的に、他の部分より
飽和磁束密度が低い部分を有する、Feを含む強磁性材
料を提供すること、および、それを用いた回転機を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明によれば、Feを含む強磁性材料であって、
複数の箇所に存在する第1の部分と、前記隣接する第1
の部分を連結する第2の部分とを有し、前記第2の部分
は、その一部に、前記第1の部分より高い濃度で窒素を
含み、かつ、飽和磁束密度が第1の部分より低い領域を
有することを特徴とする強磁性材料が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明では、Fe系強磁性材料、
例えば、ケイ素鋼などの磁性材料の部材の一部について
窒化処理し、その部分に飽和磁束密度の低い窒化相を生
成することで、部材の一部の飽和磁束密度を低下させ
る。窒化処理の対象となる材料としては、例えば、圧延
した強磁性材料板が用いられる。窒化処理は、イオン窒
化、イオン注入、ガス窒化等の窒化処理が用いられる。
通常、800℃以下の温度で処理する。また、非磁性金
属等をあらかじめ付着させる必要は無い。さらに窒化可
能な強磁性材料であればよく、その材質は限定されな
い。従って、Fe系材料であれば、量産されていて、比
較的コストの安いFe−Si系の電磁鋼板等、または、
フェライト系ステンレス鋼等であっても良い。
【0011】電磁鋼板の飽和磁束密度を小さくしたい部
分のみ窒化させるため、窒化させない部分にについて
は、金属板等でマスキングする。マスキングした電磁鋼
板をチャンバーに収容し、基板温度を500−800℃
に加熱し、チャンバー内に窒素を含むガス、例えば、窒
素と水素の混合ガスを導入後、ガスによりプラズマを生
成して窒化処理し、電磁鋼板の表面から窒化相を形成す
る。
【0012】窒素はオーステナイト形成元素であるの
で、窒化後の冷却速度に依存してオーステナイト(γF
e−N)が形成されるか、あるいは、Fe4N、Fe2-3
Nが形成される。これらの相の中で飽和磁束密度はFe
4Nがもっとも大きく、Fe2-3N、γFe−Nの順に飽
和磁束密度は小さくなる。特に、γFe−Nは非磁性相
となっている。これらの相の飽和磁束密度はαFeの値
よりも小さい。
【0013】窒化を加速させるために、母合金中に他の
添加元素を含ませるか、または、窒化処理中に別の元素
を添加しても良い。ケイ素鋼の場合、Si自体が窒化を
促進させる元素である。
【0014】窒化処理を高温で長時間進めれば、窒化層
の厚さも厚くなり、飽和磁束密度は減少する。そのた
め、窒化処理時間等の窒化処理条件を変えることによ
り、鋼板の飽和磁束密度を目的の値にすることが可能と
なる。
【0015】このような温度、時間以外に、ガス種、ガ
ス組成比、ガス圧力、ガス流量、結晶方位、結晶粒径、
表面状態、冷却速度、加速電圧等が、窒化相の形成に影
響する。すなわち、窒素化合物を表面から母材内部まで
形成するためには、処理温度を高くすること、窒化処理
中のガス種を選択すること、母材の組成を選択すること
が挙げられる。プラズマ窒化の場合には、浸硫窒化ある
いは浸炭窒化方法も適用することができる。ガス種およ
び流量比を選択することにより、Fe4NよりもFe2-3
Nを優先的に成長させることが可能である。
【0016】また、プラズマ窒化以外にも、イオン注入
法あるいはガス窒化法によって窒化が可能である。例え
ば、イオン注入法を用いる場合に、窒素イオンを注入し
た部分で上記化合物が形成され、飽和磁束密度が減少す
る。これらによっても、条件を適正化することにより飽
和磁束密度Bsを低下させることが可能である。
【0017】窒化処理で飽和磁束密度が低下するのは窒
化物が形成されるためであるから、ケイ素鋼板のみでな
く、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼等のFeを含む
強磁性合金鋼であれば、窒化処理による飽和磁束密度の
低下を実現することが可能である。特に、窒素との化合
物を形成しやすい合金元素やC(炭素)の存在によって
窒化相の厚さが変化するので、設定した飽和磁束密度を
得るためにはこれらの母材の合金元素濃度を考慮する必
要がある。
【0018】窒化処理後は、歪みを除去するため、また
は、歪みを拡散させるために、追加熱処理しても良い。
【0019】ところで、本発明の方法により形成される
窒化層の厚さは、せいぜい100ミクロンである。その
ため、それより厚い強磁性材料板であれば、それに形成
された窒化層の下(表裏両面に設けられる場合には、そ
れらの間)には、未窒化のα相が存在する。このため、
窒化層部分での板材の強度の低下を防ぐことができ、部
材全体の脆化を避けることができる。例えば、窒化処理
は、鋼板の厚みが0.5mm以下であれば可能である。
0.5mm以上も不可能ではない。そのためには、窒化
相を形成するための窒化時間の長時間化と高温にするこ
とが必要となる。
【0020】イオン注入の場合には加速電圧100kV
以上で注入することにより、γ’Fe−NやFe4N、
Fe2-3NあるいはFe162が形成される。飽和磁束密
度の低下に寄与する窒化相はFe4N、Fe2-3Nであ
り、他の相は飽和磁束密度を増加させる。そのため、3
00℃以上の熱処理により準安定相であるγ’相やFe
162相が分解してFe4NあるいはFe2-3N相にす
る。この分解により鋼板の飽和磁束密度を減少させるこ
とが可能である。
【0021】ガス窒化の場合にはプラズマ窒化と同様な
ガスによって長時間処理すれば窒化相が形成される。
【0022】(対象となる磁性材料板)本発明の強磁性
材料は、種々の用途に適用可能である。ここでは、並行
して磁路を構成すべき第1の部分を、互いに磁路が漏洩
しないように磁気的に分離して配置することが必要な機
器、例えば、リラクタンスモータの回転子の鉄芯に用い
られる磁性材料板を例に挙げて説明する。ただし、本発
明はこれに限定されるものではない。
【0023】リラクタンスモータの回転子の鉄芯は、円
盤を複数枚積層して形成される。円盤1の形状は、図3
に示すように、中心部に軸孔4を有する構造となってい
る。また、円盤1には、軸孔4に向かって内側に凸とな
る弧状のスリット2が複数組設けられている。各スリッ
ト2は、それぞれの両側に形成される磁路部分(第1の
部分)3を区切って、磁束が漏れないようにするための
ものである。図7に示すように回転子(ロータ)である
円盤1は固定子(ステータ)11の内側に位置する構成
となる。リラクタンスモータでは、磁気回路上は、各磁
路部分3は、スリット2によって完全に区切られること
がモータの高効率を得る上で理想である。しかし、そう
すると、磁路3が物理的に分離されてしまうため、現実
的ではない。そこで、円盤1の円周近傍部分に、各磁路
3を連結する連結部(第2の部分)として機能するブリ
ッジ5を設けている。このようにすると、各ブリッジ5
から磁束が漏洩することとなる。そこで、このブリッジ
5の飽和磁束密度を低下させて、磁束の漏洩を抑えてい
る。これにより、モータのトルクが増加する。即ち、ケ
イ素鋼板等でできた鉄心の一部を上記窒化処理を施すこ
とによって飽和磁束密度を低下させれば、トルクが増加
する。
【0024】このように、電磁鋼板等のFeを含む強磁
性材料の飽和磁束密度を窒化処理によって低下させるこ
とにより、回転子の一部分の飽和磁束密度を下げること
ができる。これにより、モータのトルクを増加させるこ
とができ、高効率化が可能となる。窒化処理は、量産に
適し、800℃以下で処理可能であるので、電磁鋼板等
の一部を窒化させることは容易である。
【0025】通常、窒化処理は、表面の機械的性質を向
上させるために行う処理である。しかし、本発明では、
機械的性質を変えるためではなく、磁気特性を変えるた
めの処理である。したがってγFe−Nが形成されてい
ても回転子に応用する上では問題は無い。
【0026】図4に、ブリッジ部分の部分拡大図を示
す。図4では、円盤の円周近傍にブリッジ5が設けられ
ている。このブリッジ5は、窒化処理された窒化相部分
5aおよび5bと、これらの窒化相部分5aおよび5b
に挟まれる未窒化部分5cとで構成される。窒化相部分
5aおよび5bがそれぞれ高々100μm程度の厚さで
あり、未窒化部分は円盤1の厚さ0.35mmから前述
した表裏の窒化相部分の厚さを引いた長さとなる。形成
される高窒素濃度部と低窒素濃度部の窒素濃度分布は、
ブリッジの物理的な大きさを考慮すると、材料の厚さ方
向よりも材料の圧延面(板の表面)内の方が大きくな
る。
【0027】なお、窒化相部分は、表裏の両面に限ら
ず、一方の面のみであってもよい。また、図5に示すよ
うに、外周部であってもよい。すなわち、外周部にある
窒化相部分5dと、その内周側にある未窒化部分5eと
で構成することもできる。
【0028】(窒化処理を行うための装置)図6に、窒
化処理に用いるマスクのパターンの一例を示す。図6
(a)はマスク部材を上から見たところで、図6(b)
は該マスク部材を横から見たところである。破線で示さ
れるのは図3で説明したリラクタンスモータの回転子円
盤である。図6に示すマスク6は、円盤1の各ブリッジ
5部分のみを外部に曝すよう孔7が設けられている。図
6では、一枚のみ示しているが、マスクは、表裏一組の
ものが用いられる。表裏で位置合わせして、円盤1に取
り付けられる。図6bのマスク部材側面にはリング状の
ガイド8があり、円盤1の側面が窒化してしまうのを防
ぐことが出来る。円盤1がマスク部材によって覆われる
と内部の真空引きにおける真空コンダクタンスが悪くな
るが、加熱されたときにガスは放出され易くなるので問
題にはならない。
【0029】窒化処理は、プラズマ窒化、イオン注入、
ガス窒化等が可能である。図8に窒化処理装置の概要を
示す。被窒化材料とマスキング材料とを重ね、回転子
(ロータ)の場合、ロータマスク21と被窒化材料を重
ねて窒化処理室内につるす。被窒化材料の近くにはヒー
タ22があり、被窒化材料を加熱できるようになってい
る。また、窒化処理室内にはアンモニアを分解する高電
圧印加部のプラズマ源23がある。アンモニアガス等の
反応ガスはガス制御系24で流量が制御され排気系25
で排気される。窒化処理室内にはプラズマ分析検出器を
設置し、プラズマ診断をすることも可能である。
【0030】
【実施例】以下に、前述した実施形態に関する実施例に
ついて説明する。なお、実施例では、磁気特性等を測定
するための第1の試料と、リラクタンスモータを構成し
てトルク特性を測定するための第2の試料とを作製する
場合を例として説明する。
【0031】(処理の手順) (1)第1の試料 板厚0.35mmである Fe−0.1%Si合金の板
を第1の試料として、窒化処理装置のチャンバ内に置
き、窒化処理装置のチャンバーを排気して、真空引きを
行った。真空度が1×10-3Paに達した時点で、基板
を675℃の窒化温度まで加熱した。温度が窒化温度に
達してから部材の均熱化のため30minその温度で保
持した後、窒化ガスを導入した。窒化ガスは窒素および
水素の混合ガスとした。ガス流量はN2は1000sc
cm、H2は300sccmとした。真空度が5×10
-1Paまで低下したらそれを維持するように、ガス流量
を調節した。チャンバー内でプラズマ放電を行い、窒化
を開始した。まず、窒化を5h行った後に、放電を停止
し窒化ガスを止めた。そのまま、排気しながら基板の温
度を室温まで下げて冷却し、試料を取り出した。
【0032】また、同様の処理で、窒化を10h行った
後に、放電を停止し窒化ガスを止めた。そのまま、排気
しながら基板の温度を室温まで下げて冷却し、試料を取
り出した。
【0033】取り出した窒化磁化の異なる2種類の第1
の試料に対し、それぞれ磁気特性測定およびXRD測定
を行った。
【0034】(2)第2の試料 また、板厚0.35mmである Fe−0.1%Si合
金の母材からリラクタンスモータの回転子に用いる円盤
を製作すると共に、前述した図3におけるスリット2
を、ブリッジ5を残して設けた。ブリッジ5の部分を窒
化するため、マスクを取り付けたものを、第2の試料と
して、窒化処理装置に収容し、上記と同じ手順で窒化を
行った。窒化時間は10hで行った。
【0035】(製造された磁性材料板の評価) (1)第1の試料に関する評価 図1に、上記プラズマ窒化した場合の電磁鋼板のB−H
曲線を示す。(1)、(2)および(3)において、横
軸は磁界H(Oe)、縦軸は磁束密度B(T)である。
(1)は窒化処理前、(2)は5h窒化後、(3)は1
0h窒化後のB−H曲線である。(2)では飽和磁束密
度が1.17T、(3)では0.86Tといずれも
(1)の2.1Tよりも低い。窒化後に飽和磁束密度が
小さくなった理由は、表面から窒化処理をして、表面を
中心に飽和磁束密度の小さい窒化相が生成したためであ
る。特に、表面にはγFe−Nが形成されると考えられ
る。本発明者等は、このγ相は窒化処理温度で窒化され
たfcc相が室温まで残ったためと考えている。
【0036】また、窒化時間は(2)よりも(3)の方
が長い。そのため飽和磁束密度も小さくなると考えられ
る。つまり、窒化時間等の窒化処理条件を変えることに
より、鋼板の飽和磁束密度を設計値とすることが可能と
なる。
【0037】また、10時間窒化した試料では、窒化相
の厚さが試料の表裏でそれぞれ100μmあった。従っ
て、芯部に残留αFeがあるために、全体としての磁気
特性が維持され、B−H曲線が(2)あるいは(3)の
ようになると考えられる。図1の板に対してXRDパタ
ーンの測定をした結果、(1)はαFe単相であるのに
対して、(2)および(3)の窒化処理後の板では、γ
Fe−N、Fe4NおよびFe2-3Nが生成していること
がわかった。また、(3)の方がこれらの窒化相のピー
ク強度は(2)に比較して高かった。したがって、飽和
磁束密度が、図1に示すように窒化処理後に低下したの
は、窒化により生成したγFe−N、Fe4NおよびF
2-3Nのためと考えられる。
【0038】(2)の鋼板の窒素分析をした結果、窒化
層の窒素濃度は5at%であった。また(3)では約1
0at%であった。圧延されている鋼板の場合には、窒
化処理をした部分の窒化層の窒素濃度は5at%以上で
あり、未窒化層の部分は0.1at%以下であった。X
RD測定を行った結果、これらの鋼板の結晶方位(圧延
面)は、(110)あるいは(100)が優先成長して
いることが分かった。窒化相は優先成長方位が特定して
いない場合でも成長するが、窒素の拡散速度は方位や粒
界面積に依存するので、窒化相の窒素濃度や厚さは方位
や粒界面積により異なる。
【0039】(2)第2の試料に関する評価 リラクタンスモータの回転子の一部を窒化した第2の試
料についての評価結果を以下に説明する。
【0040】窒化後の窒化前に対する比飽和磁束密度の
変化に伴うトルクの相対値の変化を図2に示す。図2に
示すように、窒化後の飽和磁束密度が減少するとトルク
が増加することがわかる。窒化後の飽和磁束密度が母
材、つまり窒化前の1/2になるとトルクが35%増加
している。飽和磁束密度の相対値を0.2より小さくす
ると、トルクが回転角により変動する割合が大きくな
り、問題であった。したがって、飽和磁束密度の相対値
は0.2以上にすることが望ましい。
【0041】トルクは窒化時間が短いと小さくなる傾向
があった。
【0042】窒化後に保磁力が増加する傾向があった
が、回転子への適用上の問題は無かった。
【0043】このようなトルクの増加はケイ素鋼板の窒
化以外に母材が炭素鋼あるいはステンレス鋼であっても
認められた。
【0044】また、磁石が回転子の中に埋め込まれた構
造を有する場合にも、図3のように飽和磁束密度の小さ
い部分を、本発明の方法を用いて形成することにより、
トルクが増加した。
【0045】回転子は、Fe合金よりも飽和磁束密度の
大きいFeCo合金を使用することも出来た。この場
合、窒化物としてはγFe−Co−N、(Fe,Co)
4N、(Fe,Co)2-3Nが生成され、飽和磁束密度が
小さい部分を作成可能であった。また、窒化相には窒素
以外に炭素や酸素が混入しても目的は達成できた。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、局部的
に、他の部分より飽和磁束密度が低い部分を有する、F
eを含む強磁性材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、窒化処理によるB−H曲線の変化を
示すグラフであって、(1)は窒化処理前、(2)は5
h窒化処理後、および、(3)は10h窒化処理後をそ
れぞれ表す。
【図2】 図2は、回転子の飽和磁束密度(図3の1の
部分)とトルクの関係(相対値)を表すグラフ。
【図3】 図3は、本発明が適用される、リラクタンス
モータの回転子板の一例の構造を示す平面図。
【図4】 図4は、前記回転子板の表裏面を窒化した場
合の一部を拡大して示す断面図。
【図5】 図5は、外周部面を窒化した場合の一部を拡
大して示す断面図。
【図6】 図6(a)は、リラクタンスモータの回転子
円盤を収容したマスク部材の上面図、図6(b)は、リ
ラクタンスモータの回転子円盤を収容したマスク部材の
側面図。
【図7】 図7は、リラクタンスモータの回転子と固定
子の平面図。
【図8】 図8は、窒化処理装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
1 リラクタンスモータ回転子円盤 2 スリット 3 磁路 4 軸孔 5 ブリッジ 5a 窒化部 5b 窒化部 5c 未窒化部(α相) 5d 窒化部 5e 未窒化部(α相) 6 マスク部材 7 マスク孔 8 リング状ガイド 11 固定子 21 ロータマスク 22 ヒータ 23 プラズマ源 24 ガス制御系 25 排気系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金田 潤也 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 Fターム(参考) 5E041 AA02 AA11 AA19 CA04

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feを含む強磁性材料であって、 複数の箇所に存在する第1の部分と、前記隣接する第1
    の部分を連結する第2の部分とを有し、 前記第2の部分は、その一部に、前記第1の部分より高
    い濃度で窒素を含み、かつ、飽和磁束密度が第1の部分
    より低い領域を有することを特徴とする強磁性材料。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の強磁性材料であって、 前記第2の部分における飽和磁束密度が低い領域は、窒
    素化合物を含むものであることを特徴とする強磁性材
    料。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の強磁性材料であって、 前記第2の部分における飽和磁束密度が低い領域は、γ
    相を含むものであることを特徴とする強磁性材料。
  4. 【請求項4】 請求項1、2および3のいずれか一項に
    記載の強磁性材料であって、 前記第2の部分における飽和磁束密度が低い領域は、前
    記第2の部分の表面部分に所在することを特徴とする強
    磁性材料。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の強磁性材料であって、 前記第2の部分は、前記飽和磁束密度が低い領域の他
    に、未窒化の領域を含み、該領域には、α相が存在する
    ことを特徴とする強磁性材料。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4および5のいずれ
    か一項に記載の強磁性材料であって、 前記飽和磁束密度が低い領域は、窒素濃度が5原子%以
    上あることを特徴とする強磁性材料。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3、4、5および6のい
    ずれか一項に記載の強磁性材料であって、 板状の形態を有し、前記第2の部分における前記飽和磁
    束密度が低い領域は、板の厚さ方向より板の表面に平行
    な方向に長く分布することを特徴とする強磁性材料。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3、4、5、6および7
    のいずれか一項に記載の強磁性材料であって、 前記第2の部分における前記飽和磁束密度が低い領域
    は、プラズマ窒化、イオン窒化、イオン注入およびガス
    窒化のいずれかにより窒化処理されたものであることを
    特徴とする強磁性材料。
  9. 【請求項9】 円盤を積層して形成される回転子鉄芯を
    有する回転機であって、 各円盤が前記請求項1〜8のいずれか一項に記載の強磁
    性材料で形成され、前記第1の部分は、磁路を構成する
    ものであることを特徴とする回転機。
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