JP2002058388A - 痩身のトランスジェニック動物 - Google Patents

痩身のトランスジェニック動物

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JP2002058388A
JP2002058388A JP2000246570A JP2000246570A JP2002058388A JP 2002058388 A JP2002058388 A JP 2002058388A JP 2000246570 A JP2000246570 A JP 2000246570A JP 2000246570 A JP2000246570 A JP 2000246570A JP 2002058388 A JP2002058388 A JP 2002058388A
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animal
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white adipose
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 肥満を導く機構をより理解し、そして特定の
型の肥満を制御するストラテジーを開発するために、脂
肪細胞の分化および脂肪の貯蔵を調節する分子の事象の
より優れた知識を、生物レベルで得るための動物モデル
を提供すること。 【解決手段】 ゲノムDNAが、C/EBPβポリペプ
チドをコードするDNA配列に作動可能に連結されたC
/EBPαプロモーターを含む遺伝子を含む、トランス
ジェニック動物であって、ここで、該トランスジェニッ
ク動物は、ゲノムDNAが該遺伝子を含まない対照動物
と比較して、該トランスジェニック動物の白色脂肪組織
において低減した脂肪蓄積を示す、トランスジェニック
動物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、概して、遺伝子工
学の分野に関する。より詳細には、トランスジェニック
動物およびそれを作製するための方法および組成物に関
する。
【0002】
【従来の技術】(発明の背景)肥満は、多数の重篤な疾
病(例えば、心疾患、関節炎、および糖尿病)の有意な
危険因子である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】肥満を導く機構をより
理解し、そして特定の型の肥満を制御するストラテジー
を開発するために、脂肪細胞の分化および脂肪の貯蔵を
調節する分子の事象のより優れた知識が、生物レベルで
必要とされる。変化した脂肪代謝を有するトランスジェ
ニック動物は、遺伝子発現と脂肪代謝との間の関係を精
査するための独特の機会を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、1つの局面に
おいて、そのゲノムDNAがC/EBPβポリペプチド
をコードするDNA配列に作動可能に連結されたC/E
BPαプロモーターを含む遺伝子を含む、トランスジェ
ニック動物を提供する。ここで、該トランスジェニック
動物は、ゲノムDNAが該遺伝子を含まない対照動物と
比較して、該トランスジェニック動物の白色脂肪組織に
おいて低減した脂肪蓄積を示す。1つの実施態様におい
て、前記トランスジェニック動物は、マウスである。別
の実施態様において、上記トランスジェニック動物は、
そのゲノムDNAが、2コピーの前記遺伝子を含む。他
の実施態様において、前記トランスジェニック動物の白
色脂肪組織における脂肪細胞の大きさは、前記対照動物
の白色脂肪組織における脂肪細胞の大きさよりも小さ
い。他の実施態様において、前記トランスジェニック動
物における血清グルコースおよびトリアシルグリセリド
のレベルは、前記対照動物における血清グルコースおよ
びトリアシルグリセリドのレベルと実質的に同じであ
る。他の実施態様において、利用可能な食物の量が制限
されず、そして同じ種類の食物が前記トランスジェニッ
ク動物および前記対照動物に提示されるならば、該トラ
ンスジェニック動物が、該対照動物よりも多量の食物を
消費する。他の実施態様において、前記低減した脂肪蓄
積は、前記トランスジェニック動物および前記対照動物
に約30重量%の脂肪を含む餌が与えられた場合に観察
される。他の実施態様において、前記トランスジェニッ
ク動物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発現レベル
が、前記対照動物の白色脂肪組織におけるアジプシンの
発現レベルと比較して低減している。他の実施態様にお
いて、前記トランスジェニック動物の白色脂肪組織にお
けるレプチン(leptin)の発現レベルは、前記対
照動物の白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと
比較して低減している。他の実施態様において、前記ト
ランスジェニック動物における褐色脂肪組織の総質量
が、前記対照動物における褐色脂肪組織の総質量よりも
多い。
【0005】他の実施態様において、前記トランスジェ
ニック動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の大きさ
は、前記対照動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の大
きさよりも小さく;該トランスジェニック動物における
血清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベル
が、該対照動物における血清グルコースおよびトリアシ
ルグリセリドのレベルと実質的に同じであり;利用可能
な食物の量が制限されず、そして同じ種類の食物が該ト
ランスジェニック動物および該対照動物に提示されるな
らば、該トランスジェニック動物が、該対照動物よりも
多量の食物を消費し;前記低減した脂肪蓄積が、該トラ
ンスジェニック動物および該対照動物に約30重量%の
脂肪を含む餌が与えられた場合に観察され;該トランス
ジェニック動物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発
現レベルが、該対照動物の白色脂肪組織におけるアジプ
シンの発現レベルと比較して低減しており;該トランス
ジェニック動物の白色脂肪組織におけるレプチンの発現
レベルが、該対照動物の白色脂肪組織におけるレプチン
の発現レベルと比較して低減しており;該トランスジェ
ニック動物における褐色脂肪組織の総質量が、該対照動
物における褐色脂肪組織の総質量よりも多く;そして該
トランスジェニック動物の白色脂肪組織におけるミトコ
ンドリア含量が、該対照動物の白色脂肪組織におけるミ
トコンドリア含量よりも高い。
【0006】他の実施態様において、本発明のトランス
ジェニック動物は、そのゲノムDNAが、2コピーの前
記遺伝子を含む。他の実施態様において、前記トランス
ジェニック動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の大き
さは、前記対照動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の
大きさよりも小さい。他の実施態様において、前記トラ
ンスジェニック動物における血清グルコースおよびトリ
アシルグリセリドのレベルは、前記対照動物における血
清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベルと実
質的に同じである。他の実施態様において、利用可能な
食物の量が制限されず、そして同じ種類の食物が前記ト
ランスジェニック動物および前記対照動物に提示される
ならば、該トランスジェニック動物は、該対照動物より
も多量の食物を消費する。他の実施態様において、前記
低減した脂肪蓄積が、前記トランスジェニック動物およ
び前記対照動物に約30重量%の脂肪を含む餌が与えら
れた場合に観察される。他の実施態様において、前記ト
ランスジェニック動物の白色脂肪組織におけるアジプシ
ンの発現レベルは、前記対照動物の白色脂肪組織におけ
るアジプシンの発現レベルと比較して低減している。他
の実施態様において、前記トランスジェニック動物の白
色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルは、前記対照
動物の白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと比
較して低減している。他の実施態様において、前記トラ
ンスジェニック動物における褐色脂肪組織の総質量は、
前記対照動物における褐色脂肪組織の総質量よりも多
い。
【0007】他の実施態様において、前記トランスジェ
ニック動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の大きさ
が、前記対照動物の白色脂肪組織における脂肪細胞の大
きさよりも小さく;該トランスジェニック動物における
血清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベル
が、該対照動物における血清グルコースおよびトリアシ
ルグリセリドのレベルと実質的に同じであり;利用可能
な食物の量が制限されず、そして同じ種類の食物が該ト
ランスジェニック動物および該対照動物に提示されるな
らば、該トランスジェニック動物が、該対照動物よりも
多量の食物を消費し;前記低減した脂肪蓄積が、該トラ
ンスジェニック動物および該対照動物に約30重量%の
脂肪を含む餌が与えられた場合に観察され;該トランス
ジェニック動物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発
現レベルが、該対照動物の白色脂肪組織におけるアジプ
シンの発現レベルと比較して低減しており;該トランス
ジェニック動物の白色脂肪組織におけるレプチンの発現
レベルが、該対照動物の白色脂肪組織におけるレプチン
の発現レベルと比較して低減しており;該トランスジェ
ニック動物における褐色脂肪組織の総質量が、該対照動
物における褐色脂肪組織の総質量よりも多く;そして該
トランスジェニック動物の白色脂肪組織におけるミトコ
ンドリア含量が、該対照動物の白色脂肪組織におけるミ
トコンドリア含量よりも高い。
【0008】本発明は、別の局面において、トランスジ
ェニック動物の作製方法を提供する。この作製方法は、
該トランスジェニック動物のゲノムDNAにおけるC/
EBPα遺伝子の少なくとも一部を、C/EBPβポリ
ペプチドをコードする第1の配列および選択マーカーを
コードする第2の配列を含むDNA挿入物で置換する工
程;ならびに該第2の配列を該ゲノムDNAから除去
し、それにより、該トランスジェニック動物を作製する
工程を包含する。本発明は、他の局面において、C/E
BPβポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結
されたC/EBPαプロモーターを含む、核酸を提供す
る。
【0009】本発明のトランスジェニック動物はまた、
他の局面において、前記トランスジェニック動物の白色
脂肪組織におけるミトコンドリア含量が、前記対照動物
の白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量よりも高
い。
【0010】
【発明の実施の形態】(発明の要旨)本発明は、CCA
AT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)α遺
伝子を含む新しいトランスジェニック動物に基づき、こ
こで、C/EBPαポリペプチドをコードするオープン
リーディングフレームは、C/EBPβのオープンリー
ディングフレームと置換されている。この動物は、白色
脂肪組織(WAT)中の脂肪の蓄積の減少を示す。従っ
て、本発明のトランスジェニック動物は、独特の動物モ
デルを提供し、ここで、WAT質量の減少の原因である
遺伝的機構および生化学的機構を解読し得る。
【0011】従って、本発明は、ゲノムDNAがC/E
BPβポリペプチドをコードするDNA配列に作動可能
に連結されたC/EBPαプロモーターを有する遺伝子
を含む、トランスジェニック動物(例えば、非ヒト哺乳
動物、げっ歯類、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ウ
シ、ニワトリ、または魚)を特色とする。本発明におい
て、トランスジェニック動物は、非ヒト動物であり得
る。「作動可能に連結された」とは、ヌクレオチド配列
(例えば、オープンリーディングフレーム)が、インビ
トロまたはインビボでヌクレオチド配列の発現を可能に
する様式において、調節配列(例えば、プロモーター)
に連結されることを意味する。このトランスジェニック
動物は、ゲノムDNAがこの遺伝子を含まない対照動物
(例えば、トランスジェニック動物が作製された動物が
由来する野生型動物)と比較した場合、そのWAT中の
脂肪の蓄積の減少(例えば、統計学的に有意な減少)を
示す。
【0012】「C/EBPα」プロモーターとは、野生
型C/EBPα遺伝子の発現と同一ではなくとも、少な
くとも実質的に類似する時間的かつ細胞型特異的な様式
において、RNAの転写を指向するプロモーターをい
う。従って、「C/EBPα」プロモーターは、野生型
C/EBPαプロモーター、ならびにC/EBPαプロ
モーターの時間的かつ組織特異的な発現に影響しない、
挿入、欠失、または置換を含むようなプロモーターを包
含する。同様に、「C/EBPβポリペプチド」は、野
生型C/EBPβポリペプチドと関連する少なくとも1
つの生化学的活性または細胞活性を有するポリペプチド
である。従って、C/EBPβポリペプチドは、野生型
C/EBPβポリペプチド、ならびにC/EBPβポリ
ペプチドの生化学的活性または細胞活性に影響しない、
アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含むようなポリペ
プチドを包含する。
【0013】トランスジェニック動物のゲノムDNAは
また、トランスジェニック動物がその白色脂肪組織中の
脂肪の蓄積の減少を示す限り、複数のコピー(すなわ
ち、2つ以上のコピー)の遺伝子を含み得る。さらに、
この遺伝子が、野生型の内因性C/EBPα遺伝子の部
分をC/EBPβオープンリーディングフレームで置換
することによって作製される場合、このトランスジェニ
ック動物は、変異されたC/EBPα遺伝子に対してホ
モ接合性またはヘテロ接合性であり得る。
【0014】本発明のトランスジェニック動物はまた、
1以上の以下の表現型を含み得る:トランスジェニック
動物のWAT中の脂肪細胞の大きさが、対照動物のWA
T中の脂肪細胞の大きさよりも小さい;トランスジェニ
ック動物の血清グルコースレベルおよびトリアシルグリ
セリドレベルが、対照動物のこれらのレベルと実質的に
同じ(すなわち、統計学的に有意な差がない);利用可
能な食物の量が制限されておらず、そして同じ種類の食
物をトランスジェニック動物および対照動物に対して提
示されるならば、トランスジェニック動物は、対照動物
よりも多量の食物を消費する;トランスジェニク動物お
よび対照動物が、少なくとも約30重量%の脂肪である
食餌を与えられた場合、脂肪の蓄積の減少が観察され
る;対照動物の白色脂肪組織中のアジプシン(adip
sin)の発現レベルと比較した場合、トランスジェニ
ック動物の白色脂肪組織中のアジプシンの発現レベル
は、減少される;トランスジェニック動物の白色脂肪組
織中のレプチンの発現レベルは、対照動物の白色脂肪組
織中のレプチンの発現レベルと比較した場合、減少され
る;トランスジェニック動物における褐色脂肪組織中の
総質量は、対照動物における褐色脂肪組織の総質量より
も大きい;ならびに、トランスジェニック動物の白色脂
肪組織におけるミトコンドリア含量は、対照動物の白色
脂肪組織におけるミトコンドリア含量よりも多い。用語
「より小さい(な)」「減少した」「〜よりも」「〜よ
り多い」または「〜より大きい(な)」は、統計学的に
有意である差について言及し得る。
【0015】本発明はまた、トランスジェニック動物の
ゲノムDNAにおけるC/EBPα遺伝子の少なくとも
一部を、C/EBPβポリペプチドをコードする第1の
配列および選択マーカーをコードする第2の配列を含む
DNAインサートで置換する工程;およびゲノムDNA
から第2の配列を除去し、これによりトランスジェニッ
ク動物を作製する工程により本発明のトランスジェニッ
ク動物を作製する方法を特徴付ける。
【0016】さらに、本発明は、本発明のトランスジェ
ニック動物作製のために有用であるC/EBPβポリペ
プチドをコードする配列に作動可能に連結されるC/E
BPαプロモーターを含む核酸を含む。
【0017】本発明のトランスジェニック動物は、痩せ
た(すなわち痩身)の(低脂肪の)身体をもたらす生化
学的決定因子および遺伝的決定因子を解明するために用
いられ得る。例えば、トランスジェニック動物および対
照動物の白色脂肪組織由来のcDNAは、発現プロフィ
ールにおけるいかなる差異をも明らかにするためにDN
Aチップを用いてインターロゲート(interrog
ate)され得る。個々のヒット、または発現において
有意な変化を示す遺伝子は、体脂肪減少について可能性
のある薬物または薬物標的であり得るかまたはそれをコ
ードし得る。
【0018】本発明の他の特徴または利点は、以下の発
明の詳細な説明から、そしてまた特許請求の範囲から明
確になる。
【0019】(発明の詳細な説明)本発明は、白色脂肪
組織の減少を示すトランスジェニック動物に関する。こ
れらの動物は、脂肪代謝に関与する分子パラメーターを
解明するための重要な動物モデルとして役立つ。
【0020】動物(例えば、哺乳動物)の受精卵へのト
ランスジーンの導入は、トランスジェニック技術におけ
るかなり多くの標準的な技術により達成される。例え
ば、Hoganら、Manipulating the
Mouse Embryo;A Laborator
y Manual,Cold Spring Harb
or Laboratory Press,Cold
Spring Harbor,NY,1986;および
米国特許第5,811,634号を参照のこと。最も通
常には、トランスジーンは、マイクロインジェクション
により胚に導入される。
【0021】一旦、トランスジーンが卵に導入される
と、この卵は、短期間インキュベートされ、次いで、卵
が得られたのと同じ種の偽妊娠状態の動物に移入される
(Hoganら、前出)。哺乳動物の場合、代表的に
は、1実験あたり125の卵が注入され、そのおよそ3
分の2が手順を生き残る。20の生存卵が、偽妊娠状態
の哺乳動物に移入され、その4〜10が生きた子孫に成
長する。代表的には、子孫の10〜30%(マウスの場
合)がトランスジーンを保有する。
【0022】本発明のトランスジェニック動物を同定す
るため、子孫は、サザンブロットハイブリダイゼーショ
ンまたはPCRのような標準的手順を用いてトランスジ
ーンの存在について試験される。トランスジーンの発現
はまた、ノーザンブロット、ウエスタンブロットおよび
免疫学的アッセイを用いて評価され得る。
【0023】さらなる労力なしに、当業者は、上記開示
および以下の記載に基づいて、その最も完全な範囲まで
本発明を利用し得ると考えられる。以下の実施例は、当
業者がどのように本発明を実施し得るかの単なる例示と
して解釈されるべきであり、そしていかなる方法でも開
示の残り部分を制限しない。本開示において引用される
すべての刊行物は、参考として本明細書に援用される。
【0024】
【実施例】(材料および方法)標的化構築物の作製。遺
伝子標的化構築物を調製するために用いられるC/eb
pαゲノムフラグメントは、Leeら、Mol.Cel
l Biol.17:6014〜6022、1997に
記載されている。手短には、c/ebpαゲノムクロー
ンを、マウス129SVJ λ DASHゲノムライブ
ラリー (Stratagene)から入手した。そし
て、C/EBPαコード領域を含む9.5−kb Sa
lI−BamHIフラグメントを単離し、そして標的構
築物を調製するために使用した。第1のloxP部位
を、C/EBPαの発現を妨害しないように、c/eb
pα遺伝子の転写開始部位の40bp下流に位置するD
raIII部位の59非翻訳領域に挿入した。Hind
III部位もまた、第1のloxP部位とともに組み込
んだ。PGK−neo遺伝子に隣接する第2および第3
のloxP部位を、ポリアデニル化シグナルの2kb下
流のEcoRI部位に、かつ、第1のloxP部位と同
じ方向に組み込んだ。この標的化構築物は、第1のlo
xP部位の下流の4kbの相同なDNAおよびloxP
−PGK−neoカセットの下流の1.3kbの相同な
DNAを含んだ。
【0025】この標的化構築物において、C/EBPα
の全タンパク質コード領域(1188bp、開始コドン
〜停止コドン)を欠失させ、そしてマウスC/EBPβ
タンパク質コード領域を含む831bpのDNAフラグ
メントで置換した。次いで、loxP−PGK.neo
−loxP発現カセットを、停止コドンTAGの159
bp下流のSpeI部位に挿入した。標的化ベクター
は、C/EBPα開始コドンの上流に4.1kbの相同
DNAおよびloxP−PGK−neo−loxPカセ
ットの下流に3.8kbの相同DNAを含んでいた。
【0026】(ホモ接合性マウスの作製)ES細胞(R
W4,Genome System)を、直鎖標的化ベ
クターDNAを用いてエレクトロポレーションした。G
418耐性クローンを選択し、増大し、そして5’プロ
ーブ、および特定の相同組換え体を同定するためのコー
ド領域プローブを用いてサザンブロッティングにより分
析した。正確に標的化されたES細胞を、以前にHog
anら(Manipulating the mous
e embryo:a laborarory man
ual,第2版、Cold Spring Harbo
r Laboratory Press,Cold S
pring Harbor,NY,1994)に記載さ
れたようにしてC57BL/6J胚盤胞に注射して、キ
メラ始原マウスを作製した。ほぼ90〜100%のアグ
ーチの毛色を有するキメラ雄性始原マウスを、C57B
L/6J雌性マウスと交配した。変異対立遺伝子の生殖
系列伝達を有する子孫マウスを、ホモ接合性EIIa−
creマウス(Laskoら、Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 93:5860−5865,
1996)と交配して、Leeら(前出)に記載される
ようにして標的マーカーPGKneo遺伝子をマウスゲ
ノムから除いた。1つの変異体、C/ebpα対立遺伝
子(C/ebpαβと称する)を保有するF1マウスを
品種間交配して、ホモ接合性C/ebpαβ+/+マウス
を作製した。このマウスは、C/EBPβに関するオー
プンリーディングフレームで置換された内因性のC/E
BPα遺伝子のオープンリーディングフレームを有し
た。
【0027】(サザンブロッティング分析)単離したE
S細胞DNAまたはマウス尾部DNAを、適切な制限酵
素で消化し、0.5%アガロースゲルにて電気泳動し、
ナイロンメンブレン(GeneScreen Plu
s,Dupont)へ転写し、そしてC/ebpα遺伝
子またはC/ebpβ遺伝子に由来するプローブを用い
てハイブリダイゼーションした。
【0028】(高脂肪(HF)食餌実験)この研究に使
用した全てのマウスは、C/ebpαβ+/-のF2マウ
スの品種間交配に由来する、F3同腹仔であった。マウ
スを滅菌マイクロ隔離装置にて飼育し、そして実験の間
中、綿密に観察した。HF食餌の効果を測定するため
に、各性別の3匹のマウスおよびいずれかの表現形の3
匹のマウスを、出生後、マイクロ隔離装置にて2.5週
間別々に配置した。標準(10%脂肪)または高脂肪食
餌(30%脂肪、LabDiet,Richmond,
IN)の新鮮な食物を毎日与え、そして消費した食物の
量を毎日記録した。これらのマウスの成長速度を測定す
るために、マウスの体重を毎週2回モニタした。
【0029】(肝臓組織および脂肪組織の組織学的な分
析)精巣上体の脂肪パッドおよび肝臓を、パラフィン中
に包埋するために4%PBS緩衝化パラホルムアルデヒ
ド溶液中で固定するか、または組織凍結培地(OCT,
Tissue−Trek,Miles Inc.)中に
直ちに包埋し、そして液体窒素で凍結した。5μmの切
片(パラフィン包埋組織について)または10μm(凍
結組織について)を、カットし、そしてシラン処理スラ
イド上にマウントした。Van Goorら(Hist
ochemistry 85:251−253,198
6)に記載されるようにして、この凍結組織切片をOi
l Red Oで染色し、そして対比染色の対比物をヘ
マトキシリンで染色した。パラフィン組織切片をヘマト
キシリンおよびエオシン溶液で染色した(H&E染
色)。
【0030】(レプチンおよびインスリンの血清の化学
およびレベルの分析)種々の発生段階から得たマウス血
清を、血清のグルコース、トリアシルグリセリドおよび
他の血液化学のレベルをモニタするために、自動乾燥化
学分析機器(auto−dry chemical a
nalyzer)(SP4410;Spotchem)
にて分析した。血清のレプチンおよびインスリンを、適
切なELISAキット(Crystal Chem I
nc.,Chicago,IL)を用いてアッセイし
た。
【0031】(溶血性アッセイ)血清因子D活性を、B
iochem.J.279:775−779、1991
に記載されるように、ウサギ赤血球および血清因子D欠
乏ヒト血清を使用する溶血性アッセイよりモニタした。
150μlのアッセイ総容積において、25μlのマウ
ス血清および25μlの血清因子D欠乏ヒト血清を、ウ
サギ赤血球(5mMのベロナール緩衝生理食塩水、12
mM MgCl2、pH 7.4の100μl中に107
細胞)に添加した。37℃での1時間のインキュベーシ
ョン後、溶血性活性を決定し、そしてこの活性を、溶解
したコントロールにおける活性の割合として表した。
【0032】(RNA抽出およびノーザンブロット分
析)凍結したマウス組織を、TRIzol RNA r
eagent(GIBCO−BRL)中でホモジナイズ
し、そして全RNAを製造者のプロトコルに従って単離
した。全RNA(10μg)を、標準的なプロトコルを
使用することにより、変性し、電気泳動し、ナイロンメ
ンブランに転写し、そしてcDNAプローブを用いてプ
ローブした。
【0033】ミトコンドリアDNAの単離。精巣上体脂
肪パッドの核およびミトコンドリアを単離し、そしてそ
れらのDNAをPlavaら、FEBS 192:26
7−270、1985に記載されるように抽出した。こ
の抽出した核DNAおよびミトコンドリアDNAを、さ
らにプロテイナーゼKおよびDNaseを含まないRN
aseを用いて、それぞれ100μg/mlの最終濃度
で処理した。次いで、DNAを、イソプロパノールを用
いて2回沈殿させ、その後10mM Tris−HC
l、pH8.0、1mM EDTA中に再懸濁した。D
NAを、UVスペクトロメータで260nmおよび28
0nmで吸光度を測定することにより定量した。
【0034】(結果)C/EBPβノックイン標的化ベ
クターを構築し、C/EBPαの完全なタンパク質コー
ド領域と、C/ebpα遺伝子座のC/EBPβのタン
パク質コード領域とを置換した。loxP−PGK.n
eo−loxPカセットを、終止コドンの下流に挿入
し、標的化選択マーカーとして供した。Cre媒介組換
えは、C/ebpα遺伝子座のからのマーカー遺伝子の
除去を生じた。ES細胞中への線状標的化ベクターDN
Aのトランスフェクション後、1%のG418耐性ES
クローンが、変異型C/ebpα対立遺伝子を有するこ
とを見出した。これは、C/EBPαのタンパク質コー
ド領域を欠失し、そしてC/EBPβのタンパク質コー
ド領域と置きかえられている。C/ebpαβと呼ばれ
る変異型対立遺伝子の生殖細胞系伝達を有するマウス
が、産生された。C/ebpαβ+/-マウスを、品種間
交配させ、ホモ接合性のC/ebpαβ+/+マウスを産
生した。操作されたC/ebpα遺伝子座におけるC/
EBPαタンパク質コード領域の欠失を、完全なタンパ
ク質コード領域を含む1.2kbのDNAプローブ(プ
ローブI)および全長C/EBPα転写物にわたる2k
bのプローブ(プローブII)を用いるサザン分析によ
り確認した。さらに、C/ebpα遺伝子座におけるC
/EBPβタンパク質コード領域の存在を、C/ebp
αβ+/+マウスゲノムをC/EBPβ cDNAプロー
ブ(プローブIII)でプローブすることにより確認し
た。さらに、標的化工程の間にC/ebpα遺伝子座中
に導入されるPGK.neoマーカー遺伝子によるC/
EBPαβ発現に対する影響の可能性を排除するため
に、次いで、C/ebpαβ+/+マウスをcreトラン
スジェニックマウス系統を用いて交配させ、Leeら、
前出およびLaskoら、前出に従って、C/ebpα
β遺伝子座からPGK.neoマーカー遺伝子を取り除
いた。得られたC/ebpαβ対立遺伝子に対するヘテ
ロ接合性のF1マウスおよびマーカー遺伝子を欠くF1
マウスを、F2 C/ebpαβ+/+マウスを産生する
ために品種間交配のために選択した。C/ebpαβ
+/+マウスにおける、C/EBPα mRNA発現の欠
如およびC/EBPαβ mRNA(1.8kb)の存
在を、さらにそれぞれのcDNAプローブを用いて種々
の組織(例えば、肝臓組織および脂肪組織)から抽出し
た総RNAのプロービングにより確認した。
【0035】(C/ebpαβ+/+マウスの白色脂肪組
織における脂肪貯蔵の減少)C/EBPαヌルマウス
は、おそらく誕生時のグリコーゲン貯蔵の欠乏および重
度の低血糖に起因して生後まもなく死亡した。一方、C
/ebpαβ+/+マウスの新生児は、生存可能であり、
そして野生型の同腹仔の血糖レベルと同様の血糖レベル
を有した。このマウスは、誕生時およびこの研究期間中
にそれらの外見上に検出可能な異常を示さなかった。さ
らに、C/ebpαβ+/+マウスは、体重増加により測
定した場合、それらの成長速度において野生型同腹仔と
異ならなかった。C/ebpαβ+/+マウスの両方の性
は、生殖可能であった。しかし、第1同腹仔の仔を出産
するために雌性のC/ebpαβ+/+マウスに必要とさ
れる平均時間は、野生型および同腹仔の雌性のC/eb
pαβ+/-マウスに必要な時間より2週間長かった。妊
娠における遅延にもかかわらず、雌性のC/ebpαβ
+/+マウスは、以後、この研究の期間中に野生型同腹仔
において見られたように正常な妊娠頻度を有した。
【0036】C/ebpαβ+/+マウスと野生型マウス
との間の類似した体重にもかかわらず、C/ebpαβ
+/+マウスは、WATのサイズおよび外見において野生
型マウスと著しく異なっていた。C/ebpαβ+/+
ウスにおけるWATは、野生型マウスにおける分布プロ
フィールに基づいてそれぞれの領域に位置付けし得る。
しかし、C/ebpαβ+/+マウスにおけるWAT質量
は、野生型同腹仔におけるWAT質量が有意に拡大さ
れ、そして白色がかっているにもかかわらず、小さく、
そして黄色がかっていた。組織学的切片およびOil−
Red O染色は、脂肪細胞のサイズおよび脂質蓄積の
程度が、C/ebpαβ+/+マウスのWATにおいて著
しく減少したことを示した。一方で、血清グルコースお
よびトリアシルグリセリドのレベルは、C/ebpαβ
+/+マウスにおいて減少しなかった。これらの結果は、
C/ebpαβ+/+マウスのWATにおける脂質の蓄積
が阻害され、そしてこの阻害が、循環における脂質前駆
体の欠失に起因しないことを示唆した。10週齢以上の
C/ebpαβ+/+マウスのWATは、より大きく、そ
してより脂肪を貯蔵していたが、それらは、同週齢の野
生型マウスのWATよりも有意に小さかった。
【0037】(C/ebpαβ+/+マウスにおける高脂
肪(HF)食餌誘導脂肪細胞肥大の耐性)C/ebpα
β+/+マウスは、痩せていたが、正常な成長速度を有し
た。驚くべきことに、食餌摂取量の測定は、C/ebp
αβ+/+マウスが、同腹仔の野生型マウスよりも多くの
食餌を消費していることを示した。食事量が、C/eb
pαβ+/+マウスのWATにおける脂肪貯蔵の状態に影
響するか否かを決定するために、C/ebpαβ+/+
ウスを6週間の間、HF食餌(30%の脂肪)条件下で
維持した。雄性C/ebpαβ+/+マウスの食餌消費、
体重増加およびWAT質量を、食餌制限中モニターし
た。HF食餌下のC/ebpαβ+/+マウスは、6週間
の期間を通して野生型のマウスが消費した食餌よりも多
量の食餌を消費した。
【0038】しかし、HF摂食下のC/ebpαβ+/+
雄性マウスについての体重増加は、標準的な摂食下のC
/ebpαβ+/+雄性マウスについての体重増加と異な
らなかった。対照的に、HF摂食下の野生型雄性マウス
の体重は、標準的な摂食下のマウスよりも25%重かっ
た。さらに、HF摂食下の野生型雄性マウスにおけるW
AT質量は、標準的な摂食下のマウスにおけるWAT質
量よりも3倍高かった。これに対して、体脂肪量は、い
ずれの摂食下のC/ebpαβ+/+雄性マウス間で有意
な差はなかった。これらの結果は、C/ebpαβ+/+
雄性マウスがHF摂食下でWAT質量増加に抵抗するこ
とを示した。
【0039】(C/ebpαβ+/+マウスの脂肪組織に
おけるレプチンおよびアジプシンの発現の減少)C/e
bpαβ+/+マウスのWATにおける脂肪蓄積の耐性の
基礎をなす分子機構を理解するために、機能が脂肪細胞
の分化および成熟に関連する多くの遺伝子の発現を、初
めに試験した。この内因性遺伝子座から発現されたC/
EBPβのmRNAレベル(1.5kbの転写物の場
合)は、C/ebpαβ+/+マウスのWATにおいてア
ップレギュレートされるようであった。C/ebpα遺
伝子座から発現されたC/EBPβのレベル(1.8k
bの転写物の場合)は、C/EBPβ遺伝子座からのも
のと同様であった。脂肪細胞の発達に関与する他の転写
調節因子(例えば、ペルオキシソーム増殖因子活性化レ
セプター(PPARγ)ならびに脂肪細胞決定および分
化依存性因子(ADD1/SREBP−1))のmRN
Aレベルは、C/ebpαβ+/+マウスと野生型マウス
との間のWATにおいて差はなかった。同様に、aP2
およびグルコース輸送体IV(GLUT4)(これは、
成熟脂肪細胞において発現される)は、C/ebpαβ
+/+マウスのWATに影響を及ぼさなかった。脂肪酸合
成に関与する酵素(例えば、脂肪酸シンテターゼ(FA
S)およびステアリル−CoA−デサチュラーゼ(SC
D))の発現は、野生型マウスとC/ebpαβ+/+
ウスとの間で有意な差はなかった。これらの結果は、脂
肪生成において役割を果たす全ての上記の因子の発現が
C/ebpαβ+/+マウスのWATにおいて阻害されな
いことを示した。しかし、成熟脂肪細胞、アジプシン
(因子D)、およびレプチン(ob遺伝子の産物)にお
いて特異的に発現される2つの因子をコードするmRN
Aレベルは、C/ebpαβ+/+マウスのWATにおい
て、有意に減少した。
【0040】アジプシンおよびレプチンは、WATにお
いて産生され、循環中に放出され、そしてエネルギー恒
常性の維持に、特にWATの脂質貯蔵の調節に関与す
る。C/ebpαβ+/+の血液中のこのアジプシンレベ
ルが、WATにおけるこれらのmRNAレベルを反映し
て減少するか否かを決定するために、溶血アッセイを、
C/ebpαβ+/+マウスの血清におけるアジプシン活
性を決定するために実行した。実際、C/ebpαβ
+/+マウスの血清における溶血活性は、野生型マウスの
血清における活性の50%に減少した。同様に、C/e
bpαβ+/+マウスの血清レプチンレベルは、有意に減
少した。
【0041】(C/ebpαβ+/+マウスのWATにお
けるミトコンドリア含量およびエネルギーの酸化の増
加)アジプシンは、活性補体C3aの生成に関与するセ
リンプロテアーゼである(アシル化刺激タンパク質(A
SP)12としてもまた、知られている)。ASPは、
脂肪細胞においてトリグリセリド合成を刺激する。C/
ebpαβ+/+マウスの循環におけるアジプシンレベル
の減少は、脂肪細胞において脂肪貯蔵のためのシグナル
伝達が不完全であることを示唆し、これは、C/ebp
αβ+/+マウスのWATにおいて脂肪貯蔵の減少を部分
的に説明し得る。しかし、より多い食物を消費するにも
関わらず、HF摂食下においてC/ebpαβ+/+マウ
スはまた、野生型マウスに見られるようなHF摂食誘導
する脂肪細胞の肥大に抵抗した。さらに、C/ebpα
β+/+マウスのWATにおいて脂肪貯蔵を顕著に減少す
るにも関わらず、C/ebpαβ+/+マウスは、高脂質
血症を発症しなかった。同様に、肝臓の組織学的分析に
よって、C/ebpαβ+/+マウスにおいて脂肪肝は検
出されなかった。従って、C/ebpαβ+/+マウスの
WATおよび肝臓における脂肪蓄積の予防は、エネルギ
ー消費における増加のような他の機構を含み得ることが
誘起される。
【0042】C/ebpαβ+/+マウスにおけるエネル
ギー消耗の状態を決定するために、本発明者らは、まず
C/ebpαβ+/+マウスの体温および褐色脂肪組織
(BAT)の質量を測定した。C/ebpαβ+/+マウ
スの体温(29.1±0.3℃)は、それらの野生型の
同腹仔の体温(28.5±0.2℃)よりも0.5〜
0.7℃高かった。このことは、C/ebpαβ+/+
ウスがより高いエネルギー消耗を有することを示す。B
ATは、熱発生についての主要組織であり;BATは、
エネルギーを保存するのではなく、脂肪酸の脱共役酸化
に対する非常に高い活性を通して、熱としてエネルギー
を放出するように設計されている。それらのWATと異
なり、C/ebpαβ+/+マウスは、野生型マウスより
65%高いBAT質量を有した。さらに、C/ebpα
β+/+マウスのBATにおける脂肪細胞は、高度に空胞
を有した。しかし、脱共役タンパク質(UCP1)およ
びシトクロムb(これらは、熱発生および酸化に対する
ミトコンドリアの電子伝達系に関与する)のmRNAレ
ベルはそれぞれ、野生型とC/ebpαβ+/+マウスと
の間のBATにおいて差はなかった。このことは、BA
Tの代謝活性が、C/ebpαβ+/+マウスにおいて影
響されていないことを示唆する。これらの結果は、C/
ebpαβ+/+マウスにおけるより高いエネルギー消耗
が、BATにおける脱共役酸化のみに依存し得ないとい
うことを示した。従って、他の組織の酸化活性がC/e
bpαβ+/+マウスにおいて改変されたか否かを、電子
伝達系の酵素をコードするミトコンドリア遺伝子に対す
るプローブを用いて、種々の組織から単離された全RN
Aを探索することによって試験した。
【0043】ミトコンドリアのシトクロムbおよびNA
DHデヒドロゲナーゼの両方のmRNAレベルは、野生
型マウスにおけるレベルと比較してC/ebpαβ+/+
マウスのWATにおいて著しく増加し、そしてこの増加
はWATに特異的であった。電子伝達系についてのミト
コンドリアmRNAの増加が細胞のミトコンドリア数の
増加に起因するのか否かを決定するために、本発明者ら
は、それらのDNA含有量を測定することによって、C
/ebpαβ+/+マウスの精巣上体WATからミトコン
ドリアを単離および定量化した。実際、C/ebpαβ
+/+マウスは、その精巣上体WATの脂肪細胞におい
て、野生型マウスより52%多いミトコンドリアを保有
した。このことは、C/ebpαβ+/+マウスのWAT
は、野生型マウスよりも高い酸化能力を有することを示
す。
【0044】しかし、興味深いことに、USP1の発現
に関して、BAT酸化活性は、C/EBPαを欠損する
がC/EBPβの随伴性増大を有するC/ebpαβ
+/+マウスにおいて増大しなかった。対照的に、UCP
1のmRNAレベルは、野生型マウスにおけるレベルと
比較して、C/ebpαβ+/+マウスのWATにおいて
有意により高かった。ミトコンドリア含有量の増加およ
びUCP1発現の上昇は、C/ebpαβ+/+マウスの
WATが、BATにおけるエネルギー代謝の状態の暗示
である、より高い代謝活性および脱共役酸化を獲得した
ことを示唆する。従って、C/ebpαβ+/+マウスの
WATにおける脂肪蓄積の予防は、脂質貯蔵についての
刺激物質の産生の減少およびWAT自体における酸化活
性の上昇の両方に関与し得る。
【0045】(他の実施態様)本発明は、その詳細な説
明と共に記載されているが、前述の説明は例示すること
を意図し、そして本発明の範囲を限定することは意図さ
れず、本発明は添付の特許請求の範囲によって規定され
ることが理解される。他の局面、進歩、および改変は、
本発明の範囲内である。
【0046】例えば、C/EBPβオープンリーディン
グフレームおよびその発現を駆動するC/EBPαプロ
モーターは、WATにおける減少が所望される動物での
遺伝子治療法において、ウイルス(例えば、レトロウイ
ルスベクター)によって、送達され得る。さらに、内因
性C/EBPαにおけるオープンリーディングフレーム
の置換が上記されるが、C/EBPβオープンリーディ
ングフレームも、その発現を駆動するC/EBPαプロ
モーターも、動物のいかなる内因性配列とも対応する必
要はない。
【0047】(発明の簡単な要旨)本発明は、ゲノムD
NAが、C/EBPβポリペプチドをコードするDNA
配列に作動可能に連結されたC/EBPαプロモーター
を含む遺伝子を含む、トランスジェニック動物に関し、
ここで、このトランスジェニック動物は、ゲノムDNA
がこの遺伝子を含まない対照動物と比較して、その白色
脂肪組織において低減した脂肪蓄積を示す。
【0048】
【発明の効果】本発明によって、白色脂肪組織の減少を
示すトランスジェニック動物が提供され、これらの動物
は、脂肪代謝に関与する分子パラメーターを解明するた
めの重要な動物モデルとして役立つという予想外の効果
が達成された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA01 AA20 BA63 BA80 CA04 DA02 EA04 FA02 GA14 HA01 HA20 4B065 AA91X AA91Y AB01 AC20 BA02 BA03 CA60

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゲノムDNAが、C/EBPβポリペプ
    チドをコードするDNA配列に作動可能に連結されたC
    /EBPαプロモーターを含む遺伝子を含む、トランス
    ジェニック動物であって、ここで、該トランスジェニッ
    ク動物は、ゲノムDNAが該遺伝子を含まない対照動物
    と比較して、該トランスジェニック動物の白色脂肪組織
    において低減した脂肪蓄積を示す、トランスジェニック
    動物。
  2. 【請求項2】 前記トランスジェニック動物が、マウス
    である、請求項1に記載のトランスジェニック動物。
  3. 【請求項3】 そのゲノムDNAが、2コピーの前記遺
    伝子を含む、請求項2に記載のトランスジェニック動
    物。
  4. 【請求項4】 前記トランスジェニック動物の白色脂肪
    組織における脂肪細胞の大きさが、前記対照動物の白色
    脂肪組織における脂肪細胞の大きさよりも小さい、請求
    項2に記載のトランスジェニック動物。
  5. 【請求項5】 前記トランスジェニック動物における血
    清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベルが、
    前記対照動物における血清グルコースおよびトリアシル
    グリセリドのレベルと実質的に同じである、請求項2に
    記載のトランスジェニック動物。
  6. 【請求項6】 利用可能な食物の量が制限されず、そし
    て同じ種類の食物が前記トランスジェニック動物および
    前記対照動物に提示されるならば、該トランスジェニッ
    ク動物が、該対照動物よりも多量の食物を消費する、請
    求項2に記載のトランスジェニック動物。
  7. 【請求項7】 前記低減した脂肪蓄積が、前記トランス
    ジェニック動物および前記対照動物に約30重量%の脂
    肪を含む餌が与えられた場合に観察される、請求項2に
    記載のトランスジェニック動物。
  8. 【請求項8】 前記トランスジェニック動物の白色脂肪
    組織におけるアジプシンの発現レベルが、前記対照動物
    の白色脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルと比較
    して低減している、請求項2に記載のトランスジェニッ
    ク動物。
  9. 【請求項9】 前記トランスジェニック動物の白色脂肪
    組織におけるレプチンの発現レベルが、前記対照動物の
    白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと比較して
    低減している、請求項2に記載のトランスジェニック動
    物。
  10. 【請求項10】 前記トランスジェニック動物における
    褐色脂肪組織の総質量が、前記対照動物における褐色脂
    肪組織の総質量よりも多い、請求項2に記載のトランス
    ジェニック動物。
  11. 【請求項11】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織における脂肪細胞の大きさが、前記対照動物の白
    色脂肪組織における脂肪細胞の大きさよりも小さく;該
    トランスジェニック動物における血清グルコースおよび
    トリアシルグリセリドのレベルが、該対照動物における
    血清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベルと
    実質的に同じであり;利用可能な食物の量が制限され
    ず、そして同じ種類の食物が該トランスジェニック動物
    および該対照動物に提示されるならば、該トランスジェ
    ニック動物が、該対照動物よりも多量の食物を消費し;
    前記低減した脂肪蓄積が、該トランスジェニック動物お
    よび該対照動物に約30重量%の脂肪を含む餌が与えら
    れた場合に観察され;該トランスジェニック動物の白色
    脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルが、該対照動
    物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルと比
    較して低減しており;該トランスジェニック動物の白色
    脂肪組織におけるレプチンの発現レベルが、該対照動物
    の白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと比較し
    て低減しており;該トランスジェニック動物における褐
    色脂肪組織の総質量が、該対照動物における褐色脂肪組
    織の総質量よりも多く;そして該トランスジェニック動
    物の白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量が、該対
    照動物の白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量より
    も高い、請求項2に記載のトランスジェニック動物。
  12. 【請求項12】 そのゲノムDNAが、2コピーの前記
    遺伝子を含む、請求項1に記載のトランスジェニック動
    物。
  13. 【請求項13】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織における脂肪細胞の大きさが、前記対照動物の白
    色脂肪組織における脂肪細胞の大きさよりも小さい、請
    求項1に記載のトランスジェニック動物。
  14. 【請求項14】 前記トランスジェニック動物における
    血清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベル
    が、前記対照動物における血清グルコースおよびトリア
    シルグリセリドのレベルと実質的に同じである、請求項
    1に記載のトランスジェニック動物。
  15. 【請求項15】 利用可能な食物の量が制限されず、そ
    して同じ種類の食物が前記トランスジェニック動物およ
    び前記対照動物に提示されるならば、該トランスジェニ
    ック動物が、該対照動物よりも多量の食物を消費する、
    請求項1に記載のトランスジェニック動物。
  16. 【請求項16】 前記低減した脂肪蓄積が、前記トラン
    スジェニック動物および前記対照動物に約30重量%の
    脂肪を含む餌が与えられた場合に観察される、請求項1
    に記載のトランスジェニック動物。
  17. 【請求項17】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織におけるアジプシンの発現レベルが、前記対照動
    物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルと比
    較して低減している、請求項1に記載のトランスジェニ
    ック動物。
  18. 【請求項18】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織におけるレプチンの発現レベルが、前記対照動物
    の白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと比較し
    て低減している、請求項1に記載のトランスジェニック
    動物。
  19. 【請求項19】 前記トランスジェニック動物における
    褐色脂肪組織の総質量が、前記対照動物における褐色脂
    肪組織の総質量よりも多い、請求項1に記載のトランス
    ジェニック動物。
  20. 【請求項20】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織における脂肪細胞の大きさが、前記対照動物の白
    色脂肪組織における脂肪細胞の大きさよりも小さく;該
    トランスジェニック動物における血清グルコースおよび
    トリアシルグリセリドのレベルが、該対照動物における
    血清グルコースおよびトリアシルグリセリドのレベルと
    実質的に同じであり;利用可能な食物の量が制限され
    ず、そして同じ種類の食物が該トランスジェニック動物
    および該対照動物に提示されるならば、該トランスジェ
    ニック動物が、該対照動物よりも多量の食物を消費し;
    前記低減した脂肪蓄積が、該トランスジェニック動物お
    よび該対照動物に約30重量%の脂肪を含む餌が与えら
    れた場合に観察され;該トランスジェニック動物の白色
    脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルが、該対照動
    物の白色脂肪組織におけるアジプシンの発現レベルと比
    較して低減しており;該トランスジェニック動物の白色
    脂肪組織におけるレプチンの発現レベルが、該対照動物
    の白色脂肪組織におけるレプチンの発現レベルと比較し
    て低減しており;該トランスジェニック動物における褐
    色脂肪組織の総質量が、該対照動物における褐色脂肪組
    織の総質量よりも多く;そして該トランスジェニック動
    物の白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量が、該対
    照動物の白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量より
    も高い、請求項1に記載のトランスジェニック動物。
  21. 【請求項21】 トランスジェニック動物の作製方法で
    あって、該方法は、該トランスジェニック動物のゲノム
    DNAにおけるC/EBPα遺伝子の少なくとも一部
    を、C/EBPβポリペプチドをコードする第1の配列
    および選択マーカーをコードする第2の配列を含むDN
    A挿入物で置換する工程;ならびに該第2の配列を該ゲ
    ノムDNAから除去し、それにより、該トランスジェニ
    ック動物を作製する工程、を包含する、方法。
  22. 【請求項22】 C/EBPβポリペプチドをコードす
    る配列に作動可能に連結されたC/EBPαプロモータ
    ーを含む、核酸。
  23. 【請求項23】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織におけるミトコンドリア含量が、前記対照動物の
    白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量よりも高い、
    請求項1に記載のトランスジェニック動物。
  24. 【請求項24】 前記トランスジェニック動物の白色脂
    肪組織におけるミトコンドリア含量が、前記対照動物の
    白色脂肪組織におけるミトコンドリア含量よりも高い、
    請求項2に記載のトランスジェニック動物。
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