JP2002057606A - 音響およびネットワークエコーキャンセレーションにおいて用いるための耐誤差性の適応フィルタ - Google Patents

音響およびネットワークエコーキャンセレーションにおいて用いるための耐誤差性の適応フィルタ

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JP2002057606A
JP2002057606A JP2001192523A JP2001192523A JP2002057606A JP 2002057606 A JP2002057606 A JP 2002057606A JP 2001192523 A JP2001192523 A JP 2001192523A JP 2001192523 A JP2001192523 A JP 2001192523A JP 2002057606 A JP2002057606 A JP 2002057606A
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Jacob Benesty
ベネスティ ジャコブ
Tomas Fritz Gaensler
フリッツ ギャエンスラー トーマス
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    • HELECTRICITY
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  • Filters That Use Time-Delay Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダブルトーク等に起因する誤差に耐え得る、
エコーキャンセレーションのための適応的なフィルタリ
ングを実行する。 【解決手段】 音響エコーキャンセラ10は、(適応)
フィルタ11と、適応係数更新モジュール17と、ダブ
ルトーク検出器18と、減算器19とを備える。フィル
タ11には、適応有限インパルス応答(FIR)フィル
タを用いることができる。適応係数更新モジュール17
は、所定の確立密度関数に基づく高速逐次最小二乗適応
アルゴリズムを実施することが有利である。 【外6】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は全般に音響およびネ
ットワークエコーキャンセレーションの分野に関し、よ
り詳細には、エコーキャンセレーションのための適応的
なフィルタリングを実行するための改善された誤差に耐
え得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、スピーカーフォンおよび遠隔地間
会議が日常的に使用される機会が増えており、音響エコ
ーキャンセレーションが、非常に重要な問題になってい
る。詳細には、音響エコーキャンセラ(AEC)によっ
て、全二重のハンズフリー電気通信システムにおいて用
いられるような、ラウドスピーカとマイクロフォンとの
間の結合によって生じる不要なエコーを除去することが
理想的である。図1は、例示的な音響エコーキャンセラ
のブロック図を示す(多くの場合には、ステレオエコー
キャンセラが用いられるが、ここに記載される問題およ
び本発明に関しては、1チャネル遠隔地間会議システム
を用いて例示すれば十分であろう)。図1の構成要素お
よび動作が、以下に詳細に記載される。
【0003】さらに、エコーキャンセレーション技術
は、ネットワーク内の4線−2線接続点における、到来
する信号の不完全な結合のために、電気通信ネットワー
ク(たとえば、電話網)内でも用いられる。典型的に
は、不要なエコーは、2線の設備のインピーダンスが4
線−2線接続点において完全に平衡ではなく、到来する
信号が、出力経路上で、到来する信号の信号源に部分的
に反射されるようになることから生じる。したがって、
ネットワークエコーキャンセラを用いて、この不要なエ
コーを除去する。図2は、例示的なネットワークエコー
キャンセラのブロック図を示す。図2の構成要素および
動作も以下に詳細に記載されるであろう。
【0004】これらの両方の応用形態では、エコーキャ
ンセレーションは典型的には、当業者にはよく知られて
いる、適応フィルタを用いて実行される。詳細には、エ
コーキャンセラは、不要な戻り信号の推定値を生成する
ために、適応フィルタの伝達関数(すなわちインパルス
応答特性)を調整することにより、エコー効果を軽減す
る。すなわち、フィルタは、音響エコーキャンセレーシ
ョンの応用形態ではラウドスピーカからマイクロフォン
への音響経路の実効的な伝達関数を、あるいはネットワ
ークエコーキャンセレーションの応用形態では反射の実
効的な伝達関数を再現(模倣)するように構成される。
そのようにして、到来する信号(すなわち、遠端から到
来する信号)をフィルタリングすることにより、フィル
タの出力において、不要な戻り信号が推定されることに
なる。その後、この推定値は、出力される信号(すなわ
ち、戻り信号)から差し引かれ、誤差信号が生成され
る。誤差信号をが0に近づくように、フィルタのインパ
ルス応答特性を適応的に処理することにより、エコーは
有利に低減あるいは排除される。すなわち、フィルタ係
数、それゆえ不要なエコーの推定値は、可能なかぎり完
全なエコーキャンセレーションを、より厳密に達成する
ために、連続して受信した誤差信号のサンプルに応答し
て更新される。
【0005】さらに、エコーキャンセラにおいてダブル
トーク検出器(DTD)が一般に用いられ、ダブルトー
ク(同時通話)状態の間、フィルタの適応動作をオフす
る。すなわち、電気通信回線上で行われる会話に対し
て、近端および遠端の話者が同時に話しをするとき、こ
の時点では、信号が「同時通話」(すなわち、近端話者
の音声)も含むため、全「誤差信号」を最小にしようと
試みることは望ましくないであろう。具体的には、ダブ
ルトーク検出器の役割は、ダブルトークが発生している
ことを認識し、ダブルトークの状態が終わるまで、フィ
ルタの適応動作を停止することである。しかしながら、
ダブルトーク検出器は、ダブルトークがまさに開始され
た瞬間には、適応動作をオフすることができないので、
ダブルトークの開始時と、ダブルトーク検出器が実際に
フィルタの適応動作を終了する時点との間の遅延時間内
に多数のサンプルが発生する可能性がある。不要なエコ
ー、および、特にエコー特性において生じる変化を迅速
に除去するように、高速収束フィルタ適応アルゴリズム
を用いることは一般には有利であるが、そのような高速
適応処理は、上記の遅延時間中(すなわち、ダブルトー
クの開示時と、ダブルトーク検出器がフィルタの適応動
作の中止に成功する時間との間)に取り込まれるサンプ
ルが、エコー経路推定値を著しく混乱させる。
【0006】したがって、エコーキャンセラに用いるた
めの適応フィルタの従来技術の構成は、大部分の状況に
おいて満足の行くように動作するが、十分に高速化した
適応動作と、ダブルトーク検出器による適応動作の中止
前に行われるサンプリングによって引き起こされる混乱
に耐える能力(そのような混乱に耐えるためのこの能力
を、「耐誤差性」と呼ぶ)との両方を同時に達成するこ
とは困難である場合が多い。そのため、依然として高速
の収束性を確保しつつ、ダブルトークの状況に対する耐
誤差性も提供する、より耐誤差性の高いフィルタ適応ア
ルゴリズムを提供することが望まれるであろう。J. Ben
esty等による同時係属の特許出願第09/228、77
2号、タイトル「Adaptive Filter For Network Echo C
ancellation」では、ネットワークエコーキャンセレー
ションアルゴリズムに関して一定のスケーリングされた
非線形性が適応フィルタの係数に有効に適用されるこ
と、また、そのような変更が、ある場合にそのような改
善された耐誤差性を提供することを示唆している(同時
係属の特許出願第09/228、772号は、本発明と
同じ譲受人に譲渡されており、その全体を参照して本明
細書に援用している)。特許出願第09/228、77
2号は実際に、従来技術より、やや優れた耐誤差性を提
供するが、それにもかかわらず、当該問題をより完全
に、かつ良好に処理する、汎用性の高い技術を考案する
ことが望ましい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、ダブルトーク等に起因する誤差に耐え得る、エ
コーキャンセレーションのための適応的なフィルタリン
グを実行するための改善された方法を提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、適応動作処
理を実施するための誤差信号に対する所定の確率密度関
数に基づいて、エコーキャンセレーションの応用形態に
使用される適応フィルタに共通に用いられるような、高
速収束係数適応アルゴリズムが有利に変更されることに
気が付いた。すなわち、誤差信号に対するある特定の確
率密度関数のうちの1つが仮定され、かつその後、フィ
ルタ適応動作アルゴリズムの設計において明確に考慮さ
れるときに、改善された耐誤差性を達成することができ
る。特に、有利に選択された、ある非ガウス確率密度関
数を使用することにより、特に耐誤差性のある適応アル
ゴリズムが提供されることがわかった。
【0009】より具体的には、本発明は、適応係数のベ
クトルを有する有限インパルス応答フィルタと、誤差信
号に応じて、かつその誤差信号のための所定の確率密度
関数に基づいて、適応係数のベクトルを変更する適応係
数ベクトル更新モジュールとを備える適応フィルタ(お
よび対応する適応フィルタリング方法)を提供する。本
発明のある例示的な実施形態によれば、確率密度関数は
非ガウス関数であることが有利であり、特に以下の関数
のうちのいずれかを含む場合がある。
【数9】
【0010】
【発明の実施の形態】以下に概要を記載する。図1は、
本発明の例示的な実施形態による、音響エコーキャンセ
ラのブロック図を示す。例示的な音響エコーキャンセラ
が動作する環境は、従来のラウドスピーカ13と従来の
マイクロフォン14とを備える(近端)受話空間12を
含む。ラウドスピーカ13は、遠端信号x(n)から音
響信号を生成し、その信号は遠端話者から受話した会話
を含む。受話空間12を通る音響経路によってもたらさ
れる潜在的な伝達関数h(n)の結果として、エコーy
N(n)が生成される。潜在的な伝達関数h(n)は、
図面内にフィルタ15として例示的に示される。伝達関
数h(n)は、たとえば、その空間12内のラウドスピ
ーカ、マイクロフォン、人間等の動きの結果として、経
時的に変化する可能性があることに留意されたい。エコ
ーyN(n)は、その空間の周囲雑音w(n)と結合さ
れ、ダブルトークの(すなわち、空間12内の人間も話
しをしている)場合には、ダブルトークv(n)とも結
合される。空間12において生じる、信号のこの潜在的
な結合は、図面内の加算器16として例示的に示され
る。最終的に結合された信号は、その後、マイクロフォ
ン14によって拾われて、マイクロフォン14は、特に
エコーを含む可能性がある戻り信号y(n)を生成す
る。
【0011】図1の音響エコーキャンセラ10は、(適
応)フィルタ11と、適応係数更新モジュール17と、
ダブルトーク検出器18と、従来の減算器19とを備え
る。フィルタ11には、従来の適応有限インパルス応答
(FIR)フィルタを用いることができ、フィルタ11
は、たとえば、512あるいは1024のいずれかのフ
ィルタ長を有することができる。また、ダブルトーク検
出器(DTD)18には、従来通りに、たとえば、当業
者にはよく知られているGeigel DTD技術を用
いることができる。しかしながら、本発明の例示的な実
施形態によれば、適応係数更新モジュール17は、さら
に以下に説明するように、所定の確率密度関数に基づく
高速逐次最小二乗(Fast Recursive Least Squares:F
RLS)適応アルゴリズムを実施することが有利であ
る。
【0012】
【外1】
【0013】図2は、本発明の例示的な実施形態によ
る、例示的なネットワークエコーキャンセラのブロック
図を示す。例示的なネットワークエコーキャンセラが動
作する環境は、従来のハイブリッド24に接続される従
来の電話セット22を備えており、ハイブリッド24は
従来のデジタル/アナログ(D/A)コンバータ23に
によって信号を供給され、さらに従来のアナログ/デジ
タル(A/D)コンバータ25に信号を供給する。D/
A23は、遠端話者から受話される会話を含む、遠端信
号x(n)を供給される。4線−2線接続点(すなわ
ち、ハイブリッド24)の結合が不完全である結果とし
て、エコーが生成され、そのエコーには、電話22によ
って拾われたあらゆる周囲雑音を結合される場合があ
り、さらに、電話22の話者が生成する場合があるダブ
ルトークが結合される場合もある。そのようにして、A
/D25によって生成されるような戻り信号y(n)
は、特にエコーを含む可能性がある。
【0014】図2のネットワークエコーキャンセラ20
は、図1の音響エコーキャンセラ10と同様に、(適
応)フィルタ21と、適応係数更新モジュール27と、
ダブルトーク検出器28と、従来の減算器29とを備え
る。フィルタ21には、従来の適応有限インパルス応答
(FIR)フィルタを用いることができ、フィルタ21
は、たとえば、512あるいは1024のいずれかのフ
ィルタ長を有することができる。また、ダブルトーク検
出器(DTD)28には、従来通りに、たとえば、当業
者にはよく知られているGeigel DTD技術を用
いることができる。しかしながら、本発明の例示的な実
施形態によれば、適応係数更新モジュール27は、さら
に以下に説明するように、所定の確率密度関数に基づく
高速逐次最小二乗(FRLS)適応アルゴリズムを実施
することが有利である。
【0015】
【外2】
【0016】誤差信号の確率密度関数について以下に記
載する。従来の適応フィルタアルゴリズムでは、システ
ムの識別に関して、誤差信号e(n)(システムとモデ
ルフィルタ出力との間の差によって定義される)は、ゼ
ロ平均で、白色で、ガウス性であることが明らかに想定
される。すなわち、典型的に用いられる逐次最小二乗ア
ルゴリズムは、誤差分布がガウス分布であるものと仮定
されている最尤推定器と見なすことができ、そのため漸
近的に有効である。この仮定は非常に便利であり、実用
上極めて有用であるが、そのように最適化された適応ア
ルゴリズムは、その仮定からのわずかな偏差にも非常に
影響を受けやすい場合がある。
【0017】上記の仮定をともなうシステム識別の1つ
の良い例は、ダブルトーク検出器(DTD)を組み合わ
せたネットワークエコーキャンセレーション(EC)で
ある。別の例は、同じようにダブルトーク検出器を組み
合わせた音響エコーキャンセレーション(AEC)であ
る。これらのいずれの場合においても、DTDは、ダブ
ルトークモードの開始あるいは終了を検出し損なう場合
があり、結果として、エコー経路の出力における会話の
バーストが、推定プロセスを妨害するであろう。これら
のバーストの発生率は、DTDの効率およびダブルトー
クモードの強度に依存する。
【0018】適応アルゴリズムの望ましい特性は高速ト
ラッキングである。DTDの誤り警告速度を高くするこ
とにより、そのアルゴリズムを入力する情報の量が低減
され、それによりトラッキング速度が低下する。それゆ
え、誤り警告は、有効なデータが破棄されないように最
小にされることが有利である。しかしながら、誤り警告
が少ないと、検出の失敗が多くなり、伝達関数推定値が
劣化する。トラッキング能力および高品質の推定値を保
持するために、本発明の原理によれば、検出誤差に耐え
得る能力を、推定アルゴリズム自体に組み込むことが有
利である。統計学の分野の当業者にはよく知られている
ように、用語「誤差に耐え得る能力(耐誤差性)」は、
想定されるモデル分布に対する、実際の分布の小さな偏
差に応答しないことを意味するために用いられる。
【0019】したがって、ガウス雑音の場合に明らかに
最適化されるアルゴリズムの性能は、ガウス則によって
モデル化されない大きな雑音値の数が予想できないた
め、制限されることになる。詳細には、本発明の原理に
よれば、上記のエコーキャンセレーションの応用形態に
おいて、DTDの失敗に起因するバーストを考慮して、
ダブルトークを検出するために、モデルに組み込まれる
雑音の確率密度関数(PDF)は、「ロングテイル」の
PDFであることが有利であろう。実際に根底をなす分
布の形が、以前に想定されたモデル(すなわち、ガウス
則)からわずかに逸脱するため、ここで関心があるの
は、分布の誤差に耐え得る能力であることに留意された
い。
【0020】統計学の分野においてよく知られているよ
うに、誤差に耐え得る手順は、以下の利益を達成するこ
とが有利である。その手順は、想定されたモデルにおい
て適当に良好な効率を有する。想定されるモデルからの
小さな偏差によっては、ほとんど性能が劣化しないとい
う意味で誤差に耐え得る。そのモデルからの偏差が大き
くなっても、大きな失敗を引き起こすことがない。した
がって、本発明の1つの例示的な実施形態によれば、以
下のPDFを用いることが有利である。
【数10】 ただし平均および分散はそれぞれ0および1に等しい。
このPDFをガウス密度、すなわち、
【数11】 と比較すると、p(z)はp(z)より「重い」テ
イルを有する点で有利であることがわかる。これは、p
(z)>p(z)、∀|Z|≧|z|を意味す
る。これら2つのPDFの間の差は比較的小さいように
見えるが、それぞれIn[p(z)]およびIn[p
(z)]の導関数をとると、前者の導関数は制限され
るが、後者の導関数は制限されないことを容易に確認す
ることができる。これは、結局、誤差に耐え得るアプロ
ーチと誤差に耐えないアプローチとの間の差として現れ
る。さらに、p(z)は高い尖度を有することが有利
であり、当業者にはよく知られているように、大きな尖
度を有するPDFは、音声信号のための良好なモデルで
あり、結局は、ここで記載している、ダブルトーク条件
下でのエコーキャンセレーションに関して望ましいこと
がわかる。
【0021】本発明の別の例示的な実施形態によれば、
以下のPDFが用いられることが有利である。
【数12】 このPDFは、最小情報分布(least informative dist
ribution)のPDFとして統計学の分野において知られ
ている。p(z)と同様に、その分布も、それぞれ0
および1に等しい平均および分散を有する。
【0022】以下の表は、各PDFp(z)、p
(z)およびp(z)に対する、導関数値Ψ(z)
およびΨ′(z)を提供し、その導関数値はそれぞれ対
応するPDFの対数の一次および二次導関数を表す。θ
(z)は、当業者にはよく知られているヘビサイド関数
であり、以下のように定義される。
【数13】
【表1】
【0023】最後に、図3は、これら3つのPDFを例
示するグラフを示す。具体的には、図3(A)は対数目
盛のPDFを示し、図3(B)はその対応する一次導関
数Ψ(z)を示す。グラフでは、破線はp(z)を表
し、点線はp(z)を表し、実線はp(z)を表
す。
【0024】例示的な適応フィルタアルゴリズムの導出
について以下に記載する。以下の説明は、本発明の原理
による、すなわち所定の確率密度関数(PDF)に基づ
く、誤差に耐え得る高速逐次最小二乗適応アルゴリズム
の導出と、エコーキャンセレーションの問題へのその適
用を記載する。具体的には、図1および図2を参照する
と、エコーキャンセレーションに関して、時間nにおけ
る、システムとモデルフィルタ出力との間の誤差信号は
以下の式によって与えられる。
【数14】 ただし、
【数15】 は出力信号y(n)の推定値であり、
【数16】 はモデルフィルタであり、
【数17】 は入力信号x(n)の最後のL個のサンプルを含むベク
トルである。上付き文字 は、ベクトルあるいは行列の
転置を示すことに留意されたい。
【0025】本発明による誤差に耐え得るアルゴリズム
を導出する際の第1のステップは、最適化判定基準を選
択することである。たとえば、関数
【数18】 について考えてみる。ただし、
【数19】 は凸関数(すなわち、ρ″(z)>0)であり、s
(n)は、以下にさらに完全に記載される正のスケーリ
ングファクタである。
【0026】当業者には十分に知られているニュートン
タイプアルゴリズムを用いて、以下の再帰によって最適
化判定基準を最小化することができる。
【数20】
【外3】
【0027】
【外4】
【数21】 ただし、
【数22】
【外5】
【数23】 ただし、
【数24】 本発明のある例示的な実施形態によれば、Ψ(・)の有
利な選択は、特に、誤差信号に対する例示的な確率密度
関数の説明において上で記載されたものを含む。
【0028】例示的には、特にRΨ′の以下の近似が選
択される。
【数25】 ただし、R=E{x(n)x(n)}である。実際に
は、Rは知られていないので、以下のように、帰納的に
それを推定することが有利である。
【数26】 ただしλ(0<λ≦1)は指数的な「忘却(forgettin
g)」ファクタである。R Ψ′の上記の選択によって、
誤差に耐え得るアルゴリズムを高速化したアルゴリズム
を導出できることが有利である。
【0029】最後に、上記の説明に基づいて、本発明に
よる例示的な誤差に耐え得る逐次最小二乗(RLS)適
応アルゴリズムを以下のように導出することができる。
【数27】 ただし、k(n)=R−1(n)x(n)はカルマン利
得であり、当業者にはよく知られている。
【0030】本発明の1つの例示的な実施形態によれ
ば、たとえば、p(z)、すなわち上記の誤差信号の
第1の例示的なPDFを用いることが有利な場合があ
る。
【数28】 ここで、上記の内容から、以下の式が成り立つ。
【数29】 この場合には、0<Ψ′(z)≦1、∀zおよびΨ′
(z)が非常に小さくなることがわかる。耐誤差性のR
LSの発散を避けるために、Ψ′(z)が0.5より小
さくならないようにすることが有利である。こうして、
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、Ψ′(z)
は上記のように計算されるが、0.5より小さくなる場
合には、0.5に再度初期化される。大きな誤差は、関
数Ψ(・)によって制限されることが有利であろう。し
かしながら、ρ(z)=zが選択される場合には、Ψ
(z)=2(z)、Ψ′(z)=2であり、そのアルゴ
リズムは従来の誤差に誤差に耐性のないPLSになるこ
とに留意されたい。
【0031】こうして、上記のような本発明の1つの例
示的な実施形態によれば、誤差に耐え得る(耐誤差性
の)高速RLS(FRLS)は、5L乗算で再帰的に有
利に計算できる、事前カルマン利得k′(n)=R−1
(n−1)x(n)を用いることにより導出できること
が有利である。誤差および適応部分は、2L乗算で計算
できることが有利である。FRLSの「安定化された」
形態(Lの付加的な乗算をともなう)が文献に記載され
ているが、音声のような非定常的な信号で用いるとき、
これは、その安定化されていないのものより、安定して
いないであろう。本発明の1つの例示的な実施形態で
は、FRLSの固有の変数である最尤変数を用いて不安
定性が検出されるとき、予測値に基づく変数を単に再度
初期化することにより、この「問題」を有利に、かつ容
易に固定させることができる。
【0032】本発明による例示的なアルゴリズムの1つ
の他の重要な態様は、スケールファクタs(n)の推定
値を含む。従来通りに、スケールファクタを用いて、雑
音レベルに対して変化しない耐誤差性のアルゴリズムを
行うことができる。それは、最小二乗平均誤差を反映
し、短いバースト変動(すなわち、この応用形態ではダ
ブルトーク)に耐えることができ、より長い残留誤差の
変化(すなわち、エコー経路の変化)をトラッキングす
ることが有利である。それゆえ、本発明の1つの例示的
な態様によれば、スケールファクタ推定値は、以下のよ
うに選択されることが有利な場合がある。
【数30】 この推定は非常に簡単に実施することができ、現在の推
定値s(n)は、1/(1−λ)に概ね等しい時間イ
ンターバルにわたって、直前の誤差信号のレベルに支配
されることが有利であることに留意されたい。そのアル
ゴリズムがまだ収束していないとき、s(n)は大き
い。それゆえ、原点を中心とする曲線の部分においてリ
ミッタが動作しており、それゆえ、その耐誤差性のアル
ゴリズムは、概ね従来のRLSアルゴリズムのような動
きをする。ダブルトークが発生するとき、リミッタ、お
よびダブルトークが発生する前の誤差信号の直前のスケ
ールにより誤差が判定される。こうして、発散速度は、
およそ1/(1−λ)の持続時間の間に低減される。
これは、DTDが動作するだけの十分な時間を与える。
システムが変化する場合には、そのアルゴリズムは直ち
にトラッキングすることはないが、スケール推定器がよ
り大きな誤差信号にトラッキングするのに応じて、その
非線形性が拡大し、その収束速度が加速する。こうし
て、耐誤差性と適応アルゴリズムのトラッキング速度と
の間のトレードオフは、1つのパラメータλ によって
制御されるスケール推定器のトラッキング速度によって
支配される。本発明の1つの例示的な実施形態によれ
ば、λ=0.992、λ=1−1/(3L)であり、
ただし、Lはフィルタ長(たとえば、512あるいは1
024)であり、s(n)は上記のように計算される
が、絶対に0.01より小さくならないように制限され
ることが有利である。
【0033】例示的な耐誤差性高速逐次最小二乗アルゴ
リズムについて記載する。以下の式は、本発明による適
応アルゴリズムの1つの例示的な実施形態を実施するた
めの、1組の特定の詳細な式を与える。このアルゴリズ
ムの複雑さはO(7L)であることに特に留意された
い。予測
【数31】 フィルタリング
【数32】
【0034】詳細な説明に対する補足説明を記載する。
上記の内容は本発明の原理の単なる例示にすぎない。し
たがって、本明細書で明白に記載および図示されない
が、本発明の原理を具現し、本発明の精神および範囲内
にある種々の構成を、当業者が考案できることは理解さ
れよう。さらに、本明細書に引用される全ての例および
暫定的な用語は主に、本発明の原理、および本発明者が
当分野を発展させることに貢献する概念を、読者が理解
しやすくするために教示することだけを明らかに意図し
ており、そのような具体的に引用された例および条件に
限定するものではないと見なされるべきである。さら
に、本発明の原理、態様および実施形態、ならびにその
特定の例を引用する本明細書の全ての文言は、その構造
的および機能的な等価物の両方を含むことを意図してい
る。さらに、そのような等価物は、現在知られている等
価物、および将来開発されることになる等価物、すなわ
ち構造にかかわらず、同じ機能を実行するために今後開
発されるあらゆる要素の両方を含むことを意図してい
る。
【0035】したがって、たとえば、本明細書のブロッ
ク図は、本発明の原理を具現する例示的な回路の概念を
図示していることは当業者には理解されよう。同様に、
あらゆる流れ図、状態遷移図、擬似符号等は、コンピュ
ータ読取り可能媒体において概ね表すことができ、その
ようなコンピュータあるいはプロセッサが明示的に示さ
れているか否かにかかわらず、コンピュータあるいはプ
ロセッサによってそのように実行される種々のプロセス
を表していることも当業者には理解されよう。
【0036】「プロセッサ」あるいは「モジュール」を
付された機能ブロックを含む、図面に示される種々の要
素の機能は、専用のハードウエア、および適当なソフト
ウエアとともにソフトウエアを実行できるハードウエア
を使用して与えることができる。プロセッサによって与
えられるとき、その機能は、1つの専用のプロセッサに
よって、1つの共有されるプロセッサによって、あるい
はそのうちのいくつかが共有される場合がある、複数の
個別のプロセッサによって与えられる場合がある。さら
に、用語「プロセッサ」あるいは「コントローラ」を明
示的に使用する場合でも、ソフトウエアを実行できるハ
ードウエアに限定するものと解釈されるべきではなく、
暗黙的に、限定はしないが、デジタルシグナルプロセッ
サ(DSP)ハードウエア、ソフトウエアを格納するた
めのリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセ
スメモリ(RAM)、および不揮発性記憶装置を含む場
合がある。他の、従来のおよび/または専用に設計した
ハードウエアが含まれる場合もある。同様に、図面に示
される任意のスイッチは単に概念的なものである。その
機能は、プログラムロジックの動作を通して、専用ロジ
ックを通して、プログラム制御および専用ロジックの相
互動作を通して、あるいは手動で実行される場合もあ
り、その内容から、より具体的に理解されるように、実
施する人が特定の技術を選択することができる。
【0037】本明細書の請求の範囲では、所定の機能を
実行するための手段として表される任意の要素は、たと
えば、(a)その機能を実行する回路要素の組み合わ
せ、あるいは(b)ソフトウエアを実行し、その機能を
実行するために適当な回路と組み合わせられる、ファー
ムウエア、マイクロコード等を含む任意の形態のソフト
ウエアを含む、その機能を実行するあらゆる方法を含む
ことを意図している。そのような請求の範囲によって画
定されるような本発明は、種々の引用された手段によっ
て提供される機能が組み合わせられ、請求の範囲が要求
するように結び付けられるという事実に帰する。したが
って、出願人は、その機能を提供することができるあら
ゆる手段を、本明細書に明示的に記載および図示される
内容に対する等価物(35U.S.C112、パラグラ
フ6において用いられるようなその用語の意味の範囲内
で)とみなす。
【0038】
【発明の効果】上記のように、本発明によれば、ダブル
トーク等に起因する誤差に耐え得る、エコーキャンセレ
ーションのための適応的なフィルタリングを実行するた
めの改善された方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態による、音響
エコーキャンセラのブロック図である。
【図2】本発明の別の例示的な実施形態による、ネット
ワークエコーキャンセラのブロック図である。
【図3】AないしBよりなり、それぞれ本発明のある例
示的な実施形態において有効に用いられる場合があるガ
ウス確率密度関数(PDF)と2つの例示的な非ガウス
PDFとを含む3つのPDFを示しており、Aは対数目
盛で3つのPDFを示すグラフであり、Bは対応する一
次導関数を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 トーマス フリッツ ギャエンスラー アメリカ合衆国 07928 ニュージャーシ ィ,チャットハム,ヒコリー プレイス 25,アパートメント エル−2 Fターム(参考) 5J023 DA05 DB03 DC07 DD01 5K027 BB03 DD10 MM00 5K038 CC08 FF08 FF13 5K046 HH11 HH24 HH45 HH53 HH77 HH78 HH79

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 適応フィルタであって、 適応係数のベクトルを含む有限インパルス応答フィルタ
    と、 誤差信号に応答して、かつ該誤差信号にための所定の確
    率密度関数に基づいて、前記適応係数のベクトルを変更
    する適応係数ベクトル更新モジュールとを備える適応フ
    ィルタ。
  2. 【請求項2】 前記所定の確率密度関数は非ガウス関数
    である請求項1に記載の適応フィルタ。
  3. 【請求項3】 前記所定の確率密度関数は、以下の関数
    を含む請求項2に記載の適応フィルタ。 【数1】
  4. 【請求項4】 前記所定の確率密度関数は、以下の関数
    を含む請求項2に記載の適応フィルタ。 【数2】
  5. 【請求項5】 前記適応係数ベクトル更新モジュール
    は、高速収束適応アルゴリズムを用いて、前記適応係数
    のベクトルを変更する請求項1に記載の適応フィルタ。
  6. 【請求項6】 前記高速収束適応アルゴリズムは、高速
    逐次最小二乗(FRLS)アルゴリズムを含む請求項5
    に記載の適応フィルタ。
  7. 【請求項7】 所与の信号において適応フィルタリング
    を実行するための方法であって、該方法は、 適応係数のベクトルを含む有限インパルス応答フィルタ
    を用いて、前記所与の信号をフィルタリングするステッ
    プと、 誤差信号に応答して、かつ該誤差信号のための所定の確
    率密度関数に基づいて、前記適応係数のベクトルを変更
    するステップとを有する方法。
  8. 【請求項8】 前記所定の確率密度関数は非ガウス関数
    である請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記所定の確率密度関数は、以下の関数
    を含む請求項8に記載の方法。 【数3】
  10. 【請求項10】 前記所定の確率密度関数は、以下の関
    数を含む請求項8に記載の方法。 【数4】
  11. 【請求項11】 前記変更するステップは、高速収束適
    応アルゴリズムを使用することを含む請求項7に記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 前記高速収束適応アルゴリズムは、高
    速逐次最小二乗(FRLS)アルゴリズムを含む請求項
    11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 電気通信環境において、近端戻り信号
    に含まれる不要なエコーを低減するためのエコーキャン
    セラであって、該エコーキャンセラは、 適応係数のベクトルを含む有限インパルス応答フィルタ
    であって、該有限インパルス応答フィルタは遠端発信源
    信号に適用される、該有限インパルス応答フィルタと、 フィルタリングされた前記遠端発信源信号と前記近端戻
    り信号との間の差に基づく誤差信号を計算する減算器
    と、 前記誤差信号に応答して、かつ前記誤差信号のための所
    定の確率密度関数に基づいて、前記適応係数のベクトル
    を変更する適応係数ベクトル更新モジュールとを備える
    エコーキャンセラ。
  14. 【請求項14】 前記所定の確率密度関数は非ガウス関
    数である請求項13に記載のエコーキャンセラ。
  15. 【請求項15】 前記所定の確率密度関数は、以下の関
    数を含む請求項14に記載のエコーキャンセラ。 【数5】
  16. 【請求項16】 前記所定の確率密度関数は、以下の関
    数を含む請求項14に記載のエコーキャンセラ。 【数6】
  17. 【請求項17】 前記適応係数ベクトル更新モジュール
    は、高速収束適応アルゴリズムを用いて、前記適応係数
    のベクトルを変更する請求項13に記載のエコーキャン
    セラ。
  18. 【請求項18】 前記高速収束適応アルゴリズムは、高
    速逐次最小二乗(FRLS)アルゴリズムを含む請求項
    17に記載のエコーキャンセラ。
  19. 【請求項19】 前記電気通信環境におけるダブルトー
    クの検出に応答して、前記適応係数ベクトル更新モジュ
    ールの動作を停止するためのダブルトーク検出器をさら
    に備える請求項13に記載のエコーキャンセラ。
  20. 【請求項20】 前記エコーキャンセラは、物理的な音
    響環境から生じるエコーを低減するための音響エコーキ
    ャンセラを含む請求項13に記載のエコーキャンセラ。
  21. 【請求項21】 前記エコーキャンセラは、電気通信環
    境内で発生するエコーを低減するためのネットワークエ
    コーキャンセラを含む請求項13に記載のエコーキャン
    セラ。
  22. 【請求項22】 電気通信環境において近端戻り信号に
    含まれる不要なエコーを低減するために、エコーキャン
    セレーションを実行するための方法であって、該方法
    は、 適応係数のベクトルを含む有限インパルス応答フィルタ
    を用いて、遠端発信源信号をフィルタリングするステッ
    プと、 フィルタリングされた前記遠端発信源信号と前記近端戻
    り信号との間の差に基づいて、誤差信号を判定するステ
    ップと、 前記誤差信号に応答して、かつ前記誤差信号のための所
    定の確率密度関数に基づいて、前記適応係数のベクトル
    を変更するステップとを有する方法。
  23. 【請求項23】 前記所定の確率密度関数は非ガウス関
    数である請求項22に記載の方法。
  24. 【請求項24】 前記所定の確率密度関数は、以下の関
    数を含む請求項23に記載の方法。 【数7】
  25. 【請求項25】 前記所定の確率密度関数は、以下の関
    数を含む請求項23に記載の方法。 【数8】
  26. 【請求項26】 前記変更するステップは、高速収束適
    応アルゴリズムを使用することを含む請求項22に記載
    の方法。
  27. 【請求項27】 前記高速収束適応アルゴリズムは、高
    速逐次最小二乗(FRLS)アルゴリズムを含む請求項
    26に記載の方法。
  28. 【請求項28】 前記電気通信環境におけるダブルトー
    クの検出に応答して、前記適応係数ベクトル更新モジュ
    ールの動作を停止するステップをさらに含む請求項22
    に記載の方法。
  29. 【請求項29】 物理的な音響環境から生じるエコーを
    低減するための音響エコーキャンセレーションを実行す
    る請求項22に記載の方法。
  30. 【請求項30】 電気通信環境内で発生するエコーを低
    減するためのネットワークエコーキャンセレーションを
    実行する請求項22に記載の方法。
JP2001192523A 2000-06-26 2001-06-26 音響およびネットワークエコーキャンセレーションにおいて用いるための耐誤差性の適応フィルタ Pending JP2002057606A (ja)

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