JP2002034587A - 可溶性分岐α−グルカンの製造方法、可溶性分岐α−グルカンおよびα−グルカンの老化抑制処理剤 - Google Patents

可溶性分岐α−グルカンの製造方法、可溶性分岐α−グルカンおよびα−グルカンの老化抑制処理剤

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JP2002034587A
JP2002034587A JP2000231364A JP2000231364A JP2002034587A JP 2002034587 A JP2002034587 A JP 2002034587A JP 2000231364 A JP2000231364 A JP 2000231364A JP 2000231364 A JP2000231364 A JP 2000231364A JP 2002034587 A JP2002034587 A JP 2002034587A
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Japan
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glucan
starch
branched
enzyme
soluble branched
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Kozo Komae
幸三 小前
Tsuneo Kato
常夫 加藤
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National Agricultural Research Organization
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハイアミロース澱粉およびアミロースなどの
直鎖α−グルカンを反応基質として用いて、澱粉枝付け
酵素による直鎖α−グルカンの切り出しおよび転移を行
うことにより、可溶性でかつ低老化性であり、しかも澱
粉本来の消化性および粘性を保持した可溶性分岐α−グ
ルカンを容易に効率よく製造する。 【解決手段】 澱粉枝付け酵素をα−グルカンに作用さ
せ、グルカン鎖の分子内および/または分子間転移を行
って可溶性分岐α−グルカンの製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、澱粉枝付け酵素
(SBE:starch branching enzyme)の反応様式を利
用した可溶性分岐α−グルカンの製造方法、この製造方
法により得られる可溶性分岐α−グルカン、および澱粉
枝付け酵素を含むα−グルカンの老化抑制処理剤に関す
る。
【0002】
【従来技術】澱粉およびグリコーゲンに代表されるα−
グルカンは自然界に広く存在し、人間をはじめ動植物お
よび微生物のエネルギー源として利用されている。澱粉
にはグルコースが直鎖状にα−1,4−結合したアミロ
ースと、短いα−グルカン鎖がα−1,6−結合で数多
く分岐したアミロペクチンとがあるが、どちらも溶解性
が低い。また、グリコーゲンは蛋白質と結合した分岐α
−グルカンであるが、動物起源によって溶解性が異な
る。
【0003】α−グルカンの溶解性を高める技術として
は、主に下記3つの方法がある。 (1) 乾式分解法:加熱処理による分解と再重合反応
とを促し、低分子分岐α−グルカンを製造する方法 (2) 分解酵素を併用した湿式分解法:加水した澱粉
を加熱糊化し、α−アミラーゼを作用させることによっ
て低分子分岐オリゴ糖を製造する方法 (3) 酸化処理法:次亜塩素酸ナトリウムをアルカリ
性澱粉溶液に添加して分子内にカルボキシル基(−CO
OH)とカルボニル基(−CO)とを有する分岐オリゴ
糖を製造する方法
【0004】しかし、前記従来の方法で得られるα−グ
ルカン調製物は、アルカリ糊化または加熱糊化によって
可溶化しても時間が経過するに従って不溶化しやすい。
この不溶化現象は老化と呼ばれており、澱粉を食品に利
用する場合には食品の保存中に沈殿が生じるため好まし
くない。また前記従来の方法で得られる溶解性α−グル
カン調製物は結合様式の変化、官能基の導入および分子
量の低下などを伴うので、澱粉が本来有する消化性およ
び/または粘性を失うという問題点がある。このよう
に、これまで、老化しにくく、しかも澱粉本来の消化性
および粘性を損なわない可溶性分岐α−グルカンの製造
方法は確立されていない。また、構造が明らかで、溶解
性の異なる分岐α−グルカンの製造は実施されていな
い。
【0005】ところで、α−グルカンのα−1,4−結
合を切り離し、6位に転移して分岐を作る澱粉枝付け酵
素が知られている。この酵素はα−1,4−グルカン分
岐転移酵素(α-1,4-Glucan branching enzyme)とも呼
ばれているが、この酵素を利用することによって低老化
性のα−グルカンが得られることは知られていない。な
お澱粉枝付け酵素は動植物や微生物に広く存在している
ことが知られているが、大麦由来のものについては特性
解析はなされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ハイ
アミロース澱粉およびアミロースなどの直鎖α−グルカ
ンを反応基質として用いて、澱粉枝付け酵素による直鎖
α−グルカンの切り出しおよび転移を行うことにより、
可溶性でかつ低老化性であり、しかも澱粉本来の消化性
および粘性を保持した分岐α−グルカンを容易に効率よ
く製造することができる可溶性分岐α−グルカンの製造
方法を提案することである。本発明の他の課題は、可溶
性でかつ低老化性であり、しかも澱粉本来の消化性およ
び粘性を保持しており、このため新規素材として利用す
ることができる可溶性分岐α−グルカンを提供すること
である。本発明のさらに他の課題は、可溶性でかつ低老
化性であり、しかも澱粉本来の消化性および粘性を保持
した可溶性分岐α−グルカンを容易に効率よく製造する
ことができるα−グルカンの老化抑制処理剤を提供する
ことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため、大麦未熟種子の胚乳抽出液からカラム
クロマトグラフィー法を用いて高純度な澱粉枝付け酵素
を調製するとともに、α−シクロデキストリンを共存さ
せることによって酵素の安定保持を図った。次いで、こ
の酵素をトウモロコシのアミロース(分子量10万以
上)に作用させ、この時反応時間を調整することによ
り、多様な溶解性を有する分岐α−グルカンを合成する
ことに成功した。
【0008】すなわち、本発明は次の可溶性分岐α−グ
ルカンの製造方法、可溶性分岐α−グルカンおよびα−
グルカンの老化抑制処理剤である。 (1) 澱粉枝付け酵素をα−グルカンに作用させ、グ
ルカン鎖の分子内および/または分子間転移を行う可溶
性分岐α−グルカンの製造方法。 (2) 澱粉枝付け酵素が大麦種子に含まれている澱粉
枝付け酵素である上記(1)記載の方法。 (3) α−グルカンが澱粉またはアミロースである上
記(1)または(2)記載の方法。 (4) 上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方
法により得られる可溶性分岐α−グルカン。 (5) 澱粉枝付け酵素を含むα−グルカンの老化抑制
処理剤。
【0009】本発明で使用する澱粉枝付け酵素は、α−
グルカンのα−1,4−結合を切り離し、切り離したα
−グルカン鎖を分子内および/または分子間で糖の6位
に転移して分岐を作る酵素であり、α−1,4−グルカ
ン分岐転移酵素と称されることもある酵素である。
【0010】澱粉枝付け酵素としては植物、動物または
微生物に含まれているものが制限なく使用できる。例え
ば、大麦、トウモロコシ、米、じゃがいも、ほうれん草
などに含まれている澱粉枝付け酵素が使用できる。植物
の品種などは制限されない。これらの中では大麦の種子
に含まれている澱粉枝付け酵素(以下、大麦澱粉枝付け
酵素という)が好ましい。大麦澱粉枝付け酵素にはSB
E−IおよびSBE−IIの2種類が知られているが、ど
ちらを使用することもできる。
【0011】澱粉枝付け酵素は、例えば次のような方法
により精製することができる。すなわち、開花後3週目
の大麦未熟種子の胚乳を調製し、緩衝液(pH7.2)
で酵素蛋白質を抽出する。抽出した粗酵素液に硫酸アン
モニウムを添加することにより、粗酵素蛋白質を沈殿分
画する。この分画物を緩衝液に再溶解したのち透析し、
次にイオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティ
ークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー
法によって精製し、高純度な澱粉枝付け酵素を得ること
ができる。精製操作を行う際には、α−シクロデキスト
リンなどの安定剤を共存させることによって酵素の安定
性を保持するのが好ましい。本発明の方法ではこのよう
にして精製した高純度な酵素を使用するのが好ましい
が、粗酵素を使用することもできる。
【0012】本発明の製造方法では、前記澱粉枝付け酵
素をα−グルカンに作用させて可溶性分岐α−グルカン
を製造する。この場合、ホスホリラーゼなどの他の酵素
を併用する必要はない。原料となるα−グルカンは澱粉
枝付け酵素の基質となり得るものであれば制限されない
が、通常直鎖α−グルカンが使用され、好ましくは澱粉
またはアミロースが使用される。澱粉としてはハイアミ
ロース澱粉が好ましい。澱粉およびアミロースとして
は、種々の穀類またはイモなどから得られるものが使用
できる。
【0013】前記澱粉枝付け酵素を作用させて可溶性分
岐α−グルカンを製造するには、例えば次のような方法
があげられる。澱粉枝付け酵素を、反応基質であるα−
グルカンの緩衝溶液または分散液(以下原料液という場
合がある)に添加し、pH6〜9、温度20〜40℃下
で1〜8時間反応を行う。好ましくは、pH7〜8、温
度25〜35℃下で1〜3時間反応を行う。澱粉枝付け
酵素の添加量は精製された酵素として0.01〜1ユニ
ット、好ましくは0.05〜0.08ユニットとするの
が望ましい。ここで1ユニットは、分岐α−グルカンを
イソアミラーゼ処理して直鎖状α−1,4−グルカンを
遊離させ、その還元末端量を改良パークジョンソン法に
準拠して測定し、1マイクロモルの分岐を生成する酵素
量である。また原料液の濃度は0.1〜2重量%、好ま
しくは0.25〜1重量%であるのが望ましい。
【0014】酵素反応が進行するに従って、グルコース
鎖が転位して基質の主鎖が短くなり、短い分岐鎖が増加
してくる。この結果、完全に溶解性を保持し、老化性が
低下した高分子量の分岐α−グルカンが生成する。この
場合、転位するグルコース鎖は短いものほど溶解性は高
くなる。
【0015】本発明の方法において、澱粉枝付け酵素と
して大麦種子に含まれている大麦澱粉枝付け酵素SBE
−Iを使用した場合は、酵素反応が進行するに従って、
分岐鎖としてグルコース重合度9〜13量体、グルコー
ス重合度16〜20量体およびグルコース重合度29〜
33量体が増加し、これらの中でもグルコース重合度9
〜13量体、特にグルコース重合度11〜12量体を中
心とする短い分岐鎖が増加する。そして、反応を十分進
行させた場合、分岐鎖全体に占めるグルコース重合度9
〜13量体の割合は12.7重量%または25.4モル
%にまで達する。また得られる可溶性分岐α−グルカン
は、反応に使用する基質の分子量を維持しており、しか
もグルコース重合度6量体より短い分岐を有しないとい
う特徴がある。なお、澱粉枝付け酵素としてトウロモコ
シ澱粉枝付け酵素SBE−Iを使用した場合はグルコー
ス重合体13〜14量体を中心とする分岐鎖が増加す
る。このため、澱粉枝付け酵素として大麦澱粉枝付け酵
素を使用する方が、トウロモコシ澱粉枝付け酵素を使用
するよりも溶解性のより高い可溶性分岐α−グルカンを
得ることができる。大麦澱粉枝付け酵素SBE−IIを使
用する場合はグルコース重合度6付近を中心とする短い
分岐鎖が増加し、溶解性は高くなる。トウモロコシ澱粉
枝付け酵素SBE−IIを使用する場合はグルコース重合
度9付近の分岐鎖が増加し、大麦澱粉枝付け酵素SBE
−IIの場合に比べて溶解性は劣る。
【0016】本発明の方法では、反応を十分進行させる
ことにより、完全に溶解性を保持する耐老化性に優れた
可溶性分岐α−グルカンを得ることができる。反応を十
分に進行させるには、反応時間を長くする方法、使用す
る酵素量を多くする方法などがあげられる。また本発明
の方法では反応の終点を選択することにより、得られる
可溶性分岐α−グルカンの溶解性および老化性を任意に
調節することができる。
【0017】本発明の方法では、生成物の分子量は基質
の分子量とほぼ同じであり、大きな低下はない。反応終
了後は、酵素を失活させた後、反応液を真空凍結乾燥法
によって粉末化することにより、目的とする可溶性分岐
α−グルカンを得ることができる。
【0018】本発明の方法を澱粉に適用することによ
り、可溶性分岐澱粉が得られる。また本発明の方法をア
ミロースに適用することにより、可溶性分岐アミロース
が得られる。これらの可溶性分岐澱粉および可溶性分岐
アミロースは、反応を十分に進行させて得られるものは
耐老化性、特に低温耐老化性に優れており、水溶液の状
態で長時間放置しても沈殿は生じない。例えば、4℃で
24時間放置しても沈殿は生じない。
【0019】本発明の可溶性分岐α−グルカンは上記本
発明の方法により得られるグルカンである。本発明の可
溶性分岐α−グルカンは、分岐を有する。また分子量は
原料のα−グルカンとほぼ同じであり、分子量の大きな
低下はない。さらに、消化性および粘性も原料とほぼ同
じであり、大きな変化はない。
【0020】本発明の可溶性分岐α−グルカンの分岐鎖
長に関する構造的特徴については、以下の方法で解析す
ることができる。すなわち、本発明の可溶性分岐α−グ
ルカンの水溶液に対してイソアミラーゼを作用させた
後、遊離した直鎖状α−1,4−グルカン鎖の長さを液
体クロマトグラフィーによって解析する。なお、イソア
ミラーゼは分岐α−グルカンの分岐点となるα−1,6
−グルコシド結合を分解して直鎖状α−1,4−グルカ
ンを生じる酵素であり、例えばPseudomonus
属に由来するものなどが使用できる。さらにヨウ素呈色
反応法により澱粉溶液を有色化し、鎖長に依存して現れ
る色調の判定および分光光度計による最大吸収波長の測
定を行う。これらの分析方法によって、本発明の製造方
法により得られた分岐α−グルカンは澱粉枝付け酵素の
反応時間に依存して分岐鎖長の長い(ヨウ素呈色:青色
系)ものから短い(ヨウ素呈色:茶色系)ものまで、多
様な分岐α−グルカンであることが確認される。反応時
間が短いと分岐鎖長の長いものが得られ、反応時間が長
くなると分岐鎖長の短いものが得られる。
【0021】本発明の製造方法は、多様な分岐構造をも
つ溶解性の異なるα−グルカンを容易に効率よく製造す
ることができる。また本発明の製造方法で製造した可溶
性分岐α−グルカンは耐老化性に優れているので、低温
下における溶解性を保持しており、このため食品の添加
剤および食品素材などとして利用することができる。例
えば、冷菓および飲用食品などの増粘剤、安定化剤また
は保水剤;離乳食用の食品素材;嚥下機能が低下した患
者の医用食材等の広い分野において好適に利用できる。
【0022】本発明の老化抑制処理剤は澱粉枝付け酵素
を含むものであり、この老化抑制処理剤をα−グルカン
に作用させることにより、溶解性および老化性を任意に
調節することができ、しかも澱粉本来の消化性および粘
性を保持した可溶性分岐α−グルカンを容易に効率よく
製造することができる。このため、本発明の老化抑制処
理剤はウルチ性澱粉の老化の抑制または遅延処理などに
利用することができる。
【0023】
【発明の効果】以上の通り、本発明の製造方法は、澱粉
枝付け酵素をα−グルカンに作用させているので、可溶
性でかつ低老化性であり、しかも澱粉本来の消化性およ
び粘性を保持した分岐α−グルカンを容易に効率よく製
造することができる。本発明の可溶性分岐α−グルカン
は、上記の方法により得られるので、可溶性でかつ低老
化性であり、しかも澱粉本来の消化性および粘性を保持
しており、このため新規素材として好適に利用すること
ができる。本発明のα−グルカンの老化抑制処理剤は、
澱粉枝付け酵素を含んでいるので、可溶性でかつ低老化
性であり、しかも澱粉本来の消化性および粘性を保持し
た可溶性分岐α−グルカンを容易に効率よく製造するこ
とができる。
【0024】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施例について説明
する。なお、%は特に断らない限り重量基準である。ま
た略号および酵素の活性測定方法は次の通りである。 EDTA:エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediamine-
N,N,N',N'-tetraacetic acid) DTT:ジチオスレイトール(Dithothreitol) PMSF:フェニルメチルスルホニルフルオリド(Phen
ylmethylsulfonylfluoride) PVPP:ポリビニルポリピロリドン(Polyvinylpolyp
yrrolidone) CHAPS:3−[(3−コルアミドプロピル)−ジメ
チルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(3-[(3-
Cholamidepropyl)-dimethylammonio]-1-propanesulfona
te)
【0025】酵素蛋白質の精製過程における澱粉枝付け
酵素の活性測定は、ホスホリラーゼ附活化法による定法
(Yamauchi, H and Nakamura, Y., Plant Cell Physio
l., 33, 985-991, 1992)に準拠して行い、測定波長5
40nmにおける吸光度を1分間あたり1.0上昇させ
る酵素量を1ユニットとした。また精製した澱粉枝付け
酵素の活性は、分岐α−グルカンをイソアミラーゼ処理
して遊離させ、その還元末端量を改良パークジョンソン
法に準拠して測定し、1マイクロモルの分岐を生成する
酵素量を1ユニットとした。
【0026】(1)澱粉枝付け酵素の抽出および硫安塩
析による分画 二条大麦(四国裸97号)の開花後3週目の大麦未熟種
子から調製した胚乳4kgを8Lの酵素抽出用緩衝液に
懸濁し、ホモジナイサーで粉砕抽出処理を行った。この
時使用した酵素抽出用緩衝液の組成は、25mM−トリ
ス/塩酸緩衝液(pH7.2)、1M−塩化ナトリウ
ム、5mM−EDTA、1mM−PMSF、5mM−D
TT、および1.5%PVPPである。次いで、遠心分
離操作(17,000×g、20分)により上清を採
り、この上清に硫酸アンモニウムを40%濃度になるま
で添加、溶解した。この塩析操作により不溶化した酵素
蛋白質を遠心分離操作(17,000×g、20分)に
よって集め、硫安塩析物(粗酵素)とした。
【0027】(2)澱粉枝付け酵素の精製 上記(1)で得られた硫安塩析物(粗酵素)を100m
1の脱イオン水に溶解し、セルロース系透析膜(排除分
子量:10,000以下)に入れ、25mM−トリス/
塩酸緩衝液を透析外液として用いて24時間透析処理を
行った。次に、透析内液を遠心分離操作(46,000
×g、20分)により上清と沈殿物とに分画し、上清を
粗酵素液として精製に供した。この粗酵素液を、陰イオ
ン交換樹脂(Q−SepharoseFF:ファルマシ
ア社製、商標)を充填したカラムに導入して吸着させた
後、50mM濃度の塩化ナトリウムを含む25mM−ト
リス/塩酸緩衝液を用いて溶出した。溶出されてくる澱
粉枝付け酵素(以下、SBE−Iと略記する場合があ
る)の活性は17,381ユニットであった。
【0028】次に、市販のγ−シクロデキストリンをセ
ファロース系樹脂(Epoxy−活性化Sepharo
se6B:アマシャム・ファルマシアバイテク社製、商
標)に結合させ、それを充填したカラムを用意した。こ
のカラムに上記で得たSBE−I画分を導入し、充填樹
脂にSBE−Iを特異的に結合させた。次いで、0.1
%濃度のCHAPSおよび5mM濃度のγ−シクロデキ
ストリンを含む25mM−トリス/塩酸緩衝液(pH
7.2)を溶出用緩衝液として用い、特異的に結合した
澱粉枝付け酵素を溶出させた(酵素回収量:8498ユ
ニット)。ここで得られた高純度な澱粉枝付け酵素を以
下の可溶性分岐α−グルカンの合成に用いた。
【0029】(3)可溶性分岐α−グルカンの合成 上記(2)で得られた澱粉枝付け酵素を0.25%アミ
ロース溶液100mlに添加して、pH7.5、30℃
で180分間の反応を行った。酵素の使用量は改良パー
クジョンソン法による活性量として0.5ユニットとし
た。反応停止は100℃で5分間加熱することによって
行った。また上記反応時間を0分(コントロール)、1
5分、30分、60分または90分に変更し、合計6種
類の分岐α−グルカンを製造した。反応を停止した反応
液を4℃で24時間放置した後、610nmで吸光度を
測定し、濁度の指標とした。結果を表1に示す。また吸
光度を測定した時のセルの写真を図1に示す。
【0030】
【表1】 注:吸光度が小さいほど分岐α−グルカンの溶解性が高
いことを示す。
【0031】(4)可溶性分岐α−グルカンの分子構造
および溶解性の解析 上記(3)の6種類の反応液(4℃、24時間放置後の
反応液)を真空凍結乾燥法によって粉末化し、可溶性分
岐α−グルカンを得た。この6種類の分岐α−グルカン
各0.5mgを脱イオン水940μl中で加熱溶解し、
枝切り酵素反応を35℃で24時間行い、α−1,6−
結合を切断して側鎖を遊離させた。反応液組成は、25
mM酢酸緩衝液(pH4.7)、イソアミラーゼ(1
unit、Pseudomonus属起源、生化学工業
製)、および0.02%アジ化ナトリウムとした。
【0032】次に、上記イソアミラーゼ処理により遊離
したマルトオリゴ糖(α−グルカンオリゴマー)をアル
カリ条件下で1%水素化ホウ素ナトリウム(50μl)
を添加することにより室温で24時間還元処理した後、
真空凍結乾燥を行った。得られた人工澱粉の調製物を陰
イオン交換カラム(CarbopacPA10、ダイオ
ネクス社製、商標)およびバルストアンベロメトリック
検出器(ダイオネクス社製)を用いた液体クロマトグラ
フィー法により分析した。結果を図2に示す。なお反応
時間が30分および90分のものについては、図示は省
略した。
【0033】また、分岐鎖長に依存したヨウ素呈色反応
による色調判定と最大吸収波長(λmax)の測定を以
下の方法で行った。すなわち、前記(3)の6種類の反
応液(4℃、24時間放置後の反応液)1mlに対して
1M−塩酸(0.1ml)、ジメチルスルホキシド
(0.5ml)および0.05%ヨウ素/0.5%ヨウ
化カリウム(0.7ml)を添加、撹拌後呈色させ、そ
の色調の判定と分光光度計によるスペクトルスキャンを
行い、最大吸収波長を検出した。結果を図2のグラフの
右側に示す。
【0034】上記の分析を行った結果、澱粉枝付け酵素
の反応時間が15〜30分の分岐α−グルカンの溶液
は、グルコース重合度11〜12量体の分岐が若干増加
するものの溶解性は低く、4℃下、24時間放置後では
沈殿が生じた。60〜90分の反応では、溶解性が高ま
り(老化性が低下)、4℃下、24時間放置後で生じる
沈殿が少なくなった。180分の反応では11〜12量
体の分岐がさらに増加し、4℃下、24時間放置後でも
完全に溶解性を保持した(老化性が無い、耐老化性に優
れる)。
【0035】上記の反応時間の条件で合成された分岐α
−グルカンのヨウ素呈色反応と最大吸収波長(λma
x)は以下の通りであった。 15分=青色・557.8nm 30分=青色・551.8nm 60分=紫色・545nm 120分=こげ茶色・541.2nm 180分=茶色・538.4nm
【0036】図2の結果から、澱粉枝付け酵素の反応時
間が長くなるにしたがって短鎖長の分岐が増加し、澱粉
の溶解性が高まるとともに、老化性が低くなることがわ
かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】可溶性分岐α−グルカンを製造した反応液の吸
光度を測定した時のセルのカラー写真である。反応液は
4℃、24時間放置後のものであり、反応時間が0分、
15分、30分、60分、90分または180分のもの
である。
【図2】可溶性分岐α−グルカンの側鎖長分布を液体ク
ロマトグラフィー法により分析した結果を示すグラフで
あり、反応時間が0分、15分、60分または180分
の結果が示されている。またグラフの右側には、ヨウ素
呈色反応による色調判定と最大吸収波長(λmax)が
示されている。グラフにおいて、α−CDのピーク矢印
は澱粉枝付け酵素の安定化のために添加したα−シクロ
デキストリンが検出された結果を示す。また下向き矢印
で示した数字はグルコース重合度の数を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B064 AF12 CA21 CB07 CB28 DA01 DA10 4C090 AA02 AA05 BA06 BA07 BA14 BB03 BD03 BD41 CA35 CA42 DA27

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 澱粉枝付け酵素をα−グルカンに作用さ
    せ、グルカン鎖の分子内および/または分子間転移を行
    う可溶性分岐α−グルカンの製造方法。
  2. 【請求項2】 澱粉枝付け酵素が大麦種子に含まれてい
    る澱粉枝付け酵素である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 α−グルカンが澱粉またはアミロースで
    ある請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の方
    法により得られる可溶性分岐α−グルカン。
  5. 【請求項5】 澱粉枝付け酵素を含むα−グルカンの老
    化抑制処理剤。
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