JP2002013090A - 藺草繊維、藺草紙、紡績糸、不織布、カットファイバ、藺草繊維の製造方法及び藺草製品の製造方法 - Google Patents

藺草繊維、藺草紙、紡績糸、不織布、カットファイバ、藺草繊維の製造方法及び藺草製品の製造方法

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JP2002013090A
JP2002013090A JP2000197112A JP2000197112A JP2002013090A JP 2002013090 A JP2002013090 A JP 2002013090A JP 2000197112 A JP2000197112 A JP 2000197112A JP 2000197112 A JP2000197112 A JP 2000197112A JP 2002013090 A JP2002013090 A JP 2002013090A
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JP
Japan
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rush
fiber
aqueous solution
fibers
producing
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JP2000197112A
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Yoshinori Inoguchi
芳範 猪口
Tadashi Yanase
忠 簗瀬
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HANNAN KOGYO KK
IKEHIKO Corp KK
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HANNAN KOGYO KK
IKEHIKO Corp KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】藺草が持つ吸放湿作用、酸化防止作用、抗菌作
用及びホルムアルデヒド及び二酸化硫黄の吸着作用等を
より効果的に発揮できる藺草繊維を得る。 【解決手段】浸漬工程(ST1)において藺草原料を水に浸
漬する。浸漬した藺草を煮熟工程(ST2)において煮沸さ
れたアルカリ溶液内において煮熟する。灰汁取り工程(S
T3)において水洗されて不純物等の灰汁が取り除かれ
る。藺草は叩解工程(ST4)において叩解され、藺草の繊
維組織から髄や不純物が水分と共に取り除かれる。繊維
組織が塊となっている藺草はビーター工程(ST5)におい
て解され不純物が更に取り除かれる。水洗工程(ST6)を
経て脱水工程(ST7)において脱水され、乾燥工程(ST8)で
乾燥される。開毛工程(ST9)において藺草繊維を開毛す
ることにより藺草繊維を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、藺草繊維、藺草
紙、紡績糸、不織布、カットファイバ、藺草繊維の製造
方法及び藺草製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】藺草は、筒状の外皮と、その中にある紐
状の柔らかい髄とを有する。藺草の香りは、森林浴効果
と同様に副交感神経を活性化させ、リラクゼーション効
果が有るといわれている。また、近年においては、藺草
の吸放湿作用や、藺草に含まれている成分による酸化防
止作用及び抗菌作用等も注目されてきている。このよう
な藺草は、主として畳表、花茣蓙、座布団の表地等の藺
草製品に使用されているが、製造にあたっては大量の端
材が出る。すなわち、藺草の刈り取り時に約5%、長さ
選別機による選別時に10〜20%、織成時に5〜10
%が端材(廃品や規格外品等)となる。これらは、上記
製品には使用できないので、廃棄や焼却等により大量に
処分されている。
【0003】ところで、紙は木材、古紙等より得られた
パルプ、または、楮、三椏、雁皮等より得られた靱皮繊
維等を原料として抄成もしくは漉成することにより製造
されている。大量に消費される紙をつくるために、従来
からカバ、ブナ、マングローブ等の広葉樹、赤松、ツ
ガ、モミ等の針葉樹または靱皮を有する樹木等が大量に
伐採されてきた。現在では、そのことに起因する自然環
境の破壊が懸念されている。従って、紙の原料となり、
自然環境を破壊することなく大量に使用できる材料が求
められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】藺草を上記した畳表や
茣蓙等として使用した場合の藺草の吸放湿作用や、藺草
に含まれている成分による酸化防止作用及び抗菌作用は
十分とはいえなかった。すなわち、畳表や茣蓙等として
使用されている藺草は、上記したように筒状の外皮と、
その中にある紐状の柔らかい髄とを有する。外皮は、繊
維細胞であるセルローズと、繊維間膠着物質であるペク
チン及びリグニンとを主な構成成分としており、全体と
して強靱である。
【0005】また、藺草は畳表や茣蓙として織成された
ときに、互いに緊密に密着する。このため、外皮のうち
外気と触れる部分の表面積はあまり広くならない。吸放
湿作用や酸化防止作用及び抗菌作用等は、外気と触れる
部分の表面積が広いほど効果的であると思われるが、上
記理由から、上記効果が十分に発揮できているとはいえ
ない。
【0006】なお、本発明者は、藺草の特性、機能を研
究する過程において、藺草が吸放湿性ばかりでなく、ホ
ルムアルデヒド及び二酸化硫黄の吸着効果にも優れるこ
とを見い出した。特に、ホルムアルデヒドは、近年、問
題になっている居住者の健康を害する住宅、いわゆるシ
ックハウスの元凶といわれている物質である。そして、
本発明者は、吸着効果を高めるために、藺草を綿状化し
た繊維として利用することを知見し、更には、藺草を繊
維としても藺草の上記機能が維持されていることを知見
し、本発明を完成するに至った。
【0007】(本発明の目的)本発明の第1の目的は、
藺草が持つ吸放湿作用、酸化防止作用、抗菌作用及びホ
ルムアルデヒド及び二酸化硫黄の吸着作用等をより効果
的に発揮できるようにすることである。本発明の第2の
目的は、上記の事情に鑑みて、藺草の畳表や茣蓙等以外
の利用用途を見出すと共に、端材となった藺草を有効に
活用することができるようにすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の手段は次のとおりである。第1の発明にあっ
ては、藺草を綿状化してなることを特徴とする、藺草繊
維である。
【0009】第2の発明にあっては、第1の発明に係る
藺草繊維を水に分散し漉いてなることを特徴とする、藺
草紙である。
【0010】第3の発明にあっては、第1の発明に係る
藺草繊維を紡績してなることを特徴とする、紡績糸であ
る。
【0011】第4の発明にあっては、第1の発明に係る
藺草繊維を互いに結合させて布状化してなることを特徴
とする、不織布である。
【0012】第5の発明にあっては、第1の発明に係る
藺草繊維を粉体化してなることを特徴とする、カットフ
ァイバである。
【0013】第6の発明にあっては、藺草繊維の製造方
法であって、原料となる藺草をアルカリ溶液内において
煮熟するステップ、上記煮熟された藺草を叩解するステ
ップ、上記叩解された藺草を解すステップ、上記解され
た藺草を脱水乾燥処理するステップ、上記脱水乾燥処理
された藺草を開毛処理し綿状化するステップ、を含むこ
とを特徴とする、藺草繊維の製造方法である。
【0014】第7の発明にあっては、藺草製品の製造方
法であって、藺草を所定長さに切断するステップ、切断
した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸解
するステップ、アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性
水溶液に浸積し中和するステップ、中和した藺草を叩解
し繊維にするステップ、繊維以外の成分を水洗し除去す
るステップ、繊維を水に分散し漉いて紙にするステッ
プ、を含むことを特徴とする、藺草製品の製造方法であ
る。
【0015】第8の発明にあっては、藺草製品の製造方
法であって、藺草を所定長さに切断するステップ、切断
した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸解
するステップ、アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性
水溶液に浸漬し中和するステップ、中和した藺草を叩解
し繊維にするステップ、繊維以外の成分を水洗し除去す
るステップ、脱水するステップ、脱水後乾燥し固まった
繊維を解すステップ、解した繊維を撚って糸状体にする
ステップ、を含むことを特徴とする、藺草製品の製造方
法である。
【0016】第9の発明にあっては、糸状体にするステ
ップにおいて、乾燥し解した藺草繊維に、天然繊維また
は合成繊維を混合しておくことを特徴とする、第8の発
明に係る藺草製品の製造方法である。
【0017】第10の発明にあっては、藺草製品の製造
方法であって、藺草を所定長さに切断するステップ、切
断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸
解するステップ、アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸
性水溶液に浸漬し中和するステップ、中和した藺草を叩
解し繊維にするステップ、繊維以外の成分を水洗し除去
するステップ、脱水するステップ、脱水後乾燥し固まっ
た繊維を解し綿状体とするステップ、綿状体を縮絨しフ
ェルトまたは不織布にするステップ、を含むことを特徴
とする、藺草製品の製造方法である。
【0018】第11の発明にあっては、藺草製品の製造
方法であって、藺草を所定長さに切断するステップ、切
断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸
解するステップ、アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸
性水溶液に浸漬し中和するステップ、中和した藺草を叩
解し繊維にするステップ、繊維以外の成分を水洗し除去
するステップ、脱水するステップ、脱水後乾燥し固まっ
た繊維を解し綿状体とするステップ、綿状体を粉体化し
カットファイバにするステップ、を含むことを特徴とす
る、藺草製品の製造方法である。
【0019】第12の発明にあっては、叩解を水洗と共
に行うことを特徴とする、第7、第8、第9、第10ま
たは第11の発明に係る藺草製品の製造方法である。
【0020】第13の発明にあっては、切断する藺草の
長さが100mm未満であることを特徴とする、第7、
第8、第9、第10、第11または第12の発明に係る
藺草による藺草製品の製造方法である。
【0021】第14の発明にあっては、アルカリ性水溶
液が苛性ソーダを0.1〜1.0重量%含む水溶液であ
ることを特徴とする、第7、第8、第9、第10、第1
1、第12または第13の発明に係る藺草による藺草製
品の製造方法である。
【0022】第15の発明にあっては、酸性水溶液が希
硫酸を0.1〜1.0重量%含む水溶液であることを特
徴とする、第7、第8、第9、第10、第11、第1
2、第13または第14の発明に係るの発明に係る藺草
による藺草製品の製造方法である。
【0023】(作 用)本発明は、次のような作用を有
する。本発明に係る藺草を綿状化してなる繊維は、加工
しない藺草と比較して、放湿の機能や、ホルムアルデヒ
ド及び二酸化硫黄等、人体に有害な物質を吸着する機能
に優れている。すなわち、藺草が細かな繊維状となって
いるので、様々な形態に加工された場合において、外気
と触れる部分の表面積が十分に広くなっている。従っ
て、本発明の藺草繊維を、例えばインテリア製品、建材
等に利用することによって、シックハウスの元凶といわ
れるホルムアルデヒド等の人体に有害な物質をより効果
的に吸着することができるので、シックハウス問題の対
策としても十分に有用である。
【0024】また、藺草繊維を、衣類や寝装具等に利用
することによって、室内もしくは人体表面の湿度を好ま
しい状態に維持することが可能であり、快適な生活の一
助となり得る。更には、藺草の酸化防止及び抗菌作用に
よる各種アレルギーの防止効果や、遠赤外線放出及びマ
イナスイオン放出の効果も期待できる。
【0025】藺草を綿状化してなる繊維は、単独で紡績
してもよいし、必要に応じて綿や麻や毛等の天然繊維、
もしくはポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊
維やレーヨン等の化学繊維のように柔らかく紡績しやす
い繊維と共に紡績し、本発明の紡績糸を製造することが
できる。
【0026】藺草繊維を水に分散し漉いてなる藺草紙
は、上記藺草繊維と同様の作用を発揮することができ、
吸放湿の機能や、ホルムアルデヒド及び二酸化硫黄等の
人体に有害な物質を吸着する機能に優れている。つま
り、本発明に係る藺草紙を、襖等の建具や壁材あるいは
照明器具等に利用することによって、それを備えた室内
の湿度を好ましい状態に維持すると共に、上記有害物質
を吸着することができる。
【0027】藺草繊維を紡績してなる紡績糸(空紡糸、
紡毛糸、梳毛糸等)は、上記藺草繊維と同様の作用を発
揮することができ、吸放湿の機能や、ホルムアルデヒド
及び二酸化硫黄等の人体に有害な物質を吸着する機能に
優れている。つまり、本発明に係る紡績糸を編物や織物
とし、あるいはインテリア製品としてのカーテン、ロー
ルスクリーン、カーペット、壁材等として利用すること
によって、それを備えた室内の湿度を好ましい状態に維
持すると共に、上記有害物質を吸着することができる。
また、本発明の紡績糸からなる編物や織物を、アパレル
製品としての被服や肌着等や、寝装としての布団等に利
用することによって、人体表面の湿度を好ましいものと
して快適性を向上し、上記有害物質を吸着して人体への
影響を低減することができる。
【0028】本発明に係る藺草繊維を互いに結合させて
布状化してなる不織布(藺草を綿状化してなる繊維を互
いに結合させて布状化してなる乾式法不織布や湿式法不
織布等)は、上記藺草繊維と同様の作用を発揮すること
ができ、吸放湿の機能や、ホルムアルデヒド及び二酸化
硫黄等、人体に有害な物質を吸着する機能に優れてい
る。従って、不織布を上記紡績糸と同様の用途に利用し
て同等の作用を発揮させることができる。また、空気清
浄器のフィルタ等に利用することによって、有害物質を
効率よく吸着することもできる。
【0029】本発明に係る藺草繊維を粉体化してなるカ
ットファイバは、接着剤を塗布した基布や壁面等に、散
布、吹付け、振動或いは静電気を利用して植毛され、フ
ロッキイ加工布や壁材もしくはパーテーション等に利用
される。これらは、上記藺草繊維と同様に、吸放湿の機
能や、ホルムアルデヒド及び二酸化硫黄等、人体に有害
な物質を吸着する機能を発揮することができる。
【0030】本発明に係る藺草繊維の製造方法は、煮熟
するステップにおいて、原料となる藺草、好ましくは2
4時間程度水に浸潰された藺草を、90〜110℃程度
で煮沸されたアルカリ溶液内において2時間程度煮熟す
る。これにより、藺草の外皮の中にある髄を繊維組織を
含む外皮から取り除くことができる。
【0031】次に、叩解するステップにおいて、上記煮
熟された藺草、好ましくは煮熟された後に水洗されて灰
汁が取り除かれた藺草を叩解することによって、藺草の
外皮の繊維組織から上記髄やその他の不純物を水分と共
に取り出すことができる。叩解された藺草は、繊維組織
の塊となっており、その塊の中には不純物が残っている
ので、解すステップにおいて、繊維組織の塊となった藺
草をある程度解しながら、水洗等を繰り返しその塊の中
に存在する不純物を取り除く。そして、後の脱水乾燥す
るステップにおいて、その藺草を脱水して乾燥する。
【0032】脱水乾燥された藺草は、まだ繊維組織の塊
が残っている状態であるので、後の開毛処理し綿状化す
るステップにおいて、その繊維塊が残っている藺草繊維
を開毛し、綿状化された藺草繊維を得ることができる。
このように、本発明の藺草繊維の製造方法によって綿状
化された藺草繊維は、上記第1の発明に係る藺草繊維で
ある。
【0033】本発明に係る藺草製品の製造方法は、その
中間のステップにおいて、切断した藺草を沸騰している
アルカリ性水溶液に浸漬し蒸解するステップに続いて、
酸性水溶液に浸積し中和するステップが行われる。すな
わち、藺草の繊維間膠着物質の蒸解後、回収された繊維
の表面に残り、また、内部に浸透しているアルカリ性水
溶液は、酸性水溶液によって中和される。従って、中和
後は繊維の表面や内部にはアルカリ性水溶液は存在して
いないので、繊維は変質したり、脆化したりすることは
ない。これにより、当該繊維を使用して製造された藺草
製品、例えば、紙は、表面に凹凸や波状のうねりができ
ることはなく、経時と共に全体が反ることもない。ま
た、強度が低下することもなく、広い範囲で使用でき
る。更に、他の藺草製品、例えば、糸、フェルト、織
物、編物等も、上記紙の場合と同じく、強度が低下する
こともなく、同じように広い範囲で使用できる。
【0034】叩解を水洗と共に行うものは、後のステッ
プでの水洗を簡略にし、または省略できるので、より効
率的な作業ができる。
【0035】切断する藺草の長さが100mm未満のも
のは、藺草を叩解し、水洗し、脱水した後の固まった繊
維の絡み合いが少なく当該固まった繊維を解しやすい。
【0036】アルカリ性水溶液が苛性ソーダを0.1〜
1.0重量%含む水溶液であるものは、ペクチンやリグ
ニン等の繊維間膠着物質の蒸解にそれ程時間がかからな
い。また、アルカリ分もそれ程残らず、その中和に多く
の時間を要しない。
【0037】酸性水溶液が希硫酸を0.1〜1.0重量
%含む水溶液であるものは、繊維間膠着物質の蒸解後の
アルカリ分を十分に中和でき、酸分が余分に残ることは
なく、繊維を傷めるおそれも少ない。
【0038】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、図
面に基づいて説明する。図1は、本発明の藺草繊維の製
造方法を示すフロー図である。本発明の藺草繊維の製造
方法では、先ず、浸漬工程(ST1)において、収穫した藺
草や、畳の製造過程において屑として排出された藺草等
の藺草原料を、水に24時間程度浸漬する。なお、この
浸漬工程(ST1)は省略することもできる。
【0039】次に、浸漬された藺草は、煮熟工程(ST2)
において、90〜110℃程度で煮沸されたアルカリ溶
液内において2時間程度煮熟される。この時のアルカリ
溶液としては、水に苛性ソーダを0.1〜1.0重量%
程度混合したものを利用するが、その苛性ソーダの濃度
は、高くするほど柔らかい藺草繊維を製造することがで
きる。
【0040】このようにして煮熟され、繊維組織を含む
外皮の内部にある髄を取り除きやすい状態となっている
藺草は、灰汁取り工程(ST3)において、水洗されて不純
物等の灰汁を取り除かれる。また、この灰汁取り工程(S
T3)は省略することもできる。
【0041】次に、灰汁を取り除かれた藺草は、叩解工
程(ST4)において、棒もしくは杵等で叩解され、藺草の
繊維組織から髄やその他の不純物が水分と共に取り除か
れる。このように叩解された藺草は、繊維組織の塊とな
っている。繊維組織が塊となっている藺草は、ビーター
工程(ST5)において、長刀ビーター装置やホレインビー
ター装置により、繊維紐織の塊がある程度解され、後の
水洗工程(ST6)とビータ一工程(ST5)とを繰り返すことに
よって、その繊維組織の塊の中に存在する不純物が取り
除かれる。
【0042】このようにして繊維組織の塊が存在し、不
純物等が取り除かれた藺草は、脱水工程(ST7)において
遠心脱水機等により脱水され、乾燥工程(ST8)において
天日干しもしくはヒータ等によって乾燥される。乾燥工
程(ST8)後の藺草は、繊維組織以外の不純物がほとんど
取り除かれている状態であるが、繊維組織の塊が存在す
る状態となっているので、その繊維組織の塊を開毛する
必要がある。そこで、開毛工程(ST9)において、2連も
しくは4連反毛機や、ガーネットマシーン、カードマシ
ーン、スカッチャ等を、開毛状態に合わせて組み合わ
せ、その繊維塊が残っている藺草繊維を開毛することに
より、本発明に係る綿状化された藺草繊維を得ることが
できる。
【0043】このようにして製造された本発明の藺草繊
維を、単独で紡績して藺草100%の紡績糸とすること
もできるが、用途に合わせて綿や麻や毛等の天然繊維、
もしくはポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊
維やレーヨン等の化学繊維のように柔らかく紡績しやす
い繊維と共に紡績して紡績糸とすることができる。本発
明に係る紡績糸は、編物や織物とされて、例えばインテ
リア製品としてのカーテン、ロールスクリーン、カーペ
ット、及び壁材等や、アパレル製品としての被服及び肌
着等や、寝袋としての布団等に利用することができる。
【0044】また、本発明に係る藺草繊維もしくは用途
に合わせてその他の繊維と混合した藺草繊維を、乾式法
や湿式法によって、互いに結合させて布状化して不織布
とすることができる。このような不織布は、上記の紡績
糸からなる編物や織物等と同様に利用したり、空気清浄
器等のフィルタに利用することができる。また、本発明
に係る藺草繊維を、長さ0.1mm〜10mm程度に粉
体化してカットファイバとすることができる。このカッ
トファイバは、接着剤を塗布した基布や壁面等に、散
布、吹付け、振動、或いは静電気を利用して植毛され、
フロッキイ加工布や壁材苦しくはパーテーション等に利
用することかできる。
【0045】これまで説明してきた藺草繊維及びその藺
草繊維から成る藺草紙、紡績糸、不織布、カットファイ
バは、いずれも吸放湿の機能、ホルムアルデヒド及び二
酸化硫黄等の人体に有害な物質を吸着する機能に優れて
おり、その機能についで以下に説明する。
【0046】図2は本発明に係る藺草繊維の吸放湿機能
を表すグラフである。藺草繊維の吸放粒機能を確認する
ために、乾燥状態である本発明の藺草繊維と、比較例と
しての綿繊維を、各々50gづつ準備し、各々の繊維を
内部湿度調整可能な容器内に投入して、容器内の湿度を
変化させながら藺草繊維の重量を測定し、藺草繊維と綿
繊維の含水率(初期重量に対する増加重量)の変化状態
を測定し、その結果を図2に示した。また、容器内湿度
は、まず120分経過までは90%と高く保ち、その後
ほぼ20%まで低下させるように調整した。その結果、
藺草繊維は、周囲湿度の変化に伴って含水率が大きく変
化し、綿繊維と比べて遥かに優れた吸放湿機能を有する
ことが確認できた。
【0047】次に、藺草繊維がホルムアルデヒドや二酸
化硫黄等に対して優れた吸着性を有していることを確認
するために、下記のような試験を行った。試験は検知管
法で行った。
【0048】先ず、ホルムアルデヒドに対する吸着性に
ついて試験を行った。ガス採取器(ガステック mod
e1801型)によりホルムアルデヒドを採取した。フ
レックサンプラーパック(容積10L)を4個用意し
た。そのうちの3個に、それぞれ本実施例に使用されて
いる、切断された藺草(以下、切断藺草という)、藺草
繊維、及び、藺草繊維と木綿繊維との30対70(重量
比)の混紡糸(以下、混紡糸という、後記実施例3参
照)を30g入れた。この3個のパック及び残り1個の
パック内の空気を吸引ポンプで脱氣し、乾式ガスメータ
ーを通して窒素を10L入れ、次いで、採取したホルム
アルデヒドを80ppm入れた。残り1個のパック内に
はホルムアルデヒドを入れず、これをブランクとした。
【0049】上記4個のパック内のホルムアルデヒド濃
度(ppm)の経時変化をホルムアルデヒド検知管N
O.91とNO.91Lで測定した。なお、上記測定の
終了後、当該パックを50℃のオーブン中に10分間入
れ、パック中のホルムアルデヒド濃度を測定し、各試料
が吸着したホルムアルデヒドの量を調べた。この吸着量
は各試料のホルムアルデヒドの放出量と一致する。上記
測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】上表中、数字はppm、経時は分を表して
いる。また、加熱後とは、上記経時による測定終了後、
50℃のオーブン中に10分間入れて、ホルムアルデヒ
ド濃度を測定したことを表している。
【0052】(考察)60分経時までは、切断藺草また
は混紡糸を入れたパック中のホルムアルデヒド濃度に比
べ、藺草繊維を入れたホルムアルデヒド濃度が小さい。
即ち、藺草繊維の方が切断藺草または混紡糸に比べ、ホ
ルムアルデヒドに対する吸着性が大きいことが分かる。
しかし、90分経時以降は三者共それほどの差はない。
120分経時後、上記パックを50℃に加温したとき
は、藺草繊維の方が切断藺草または混紡糸に比べ、吸着
量が少なく、吸着したホルムアルデヒドを放出しにくい
ことが分かる。なお、ブランクはパック中のホルムアル
デヒド濃度が120分経時まで同じであり、パックがホ
ルムアルデヒドを吸着していないことが分かる。
【0053】次いで、藺草繊維の二酸化硫黄に対する吸
着性について試験を行った。試験方法はホルムアルデヒ
ドに対する上記吸着性試験と同じ方法で行った。なお、
パック内の二酸化硫黄濃度(ppm)の経時変化は二酸
化硫黄検知管NO.5LとNO.5Laで測定した。上
記測定結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】(考察)切断藺草、藺草繊維、混紡糸、及
びブランクの間における二酸化硫黄に対する吸着性の関
係は、ホルムアルデヒドに対する吸着性の場合とほぼ同
じ傾向を示している。ただ、藺草繊維はホルムアルデヒ
ドに対してよりも、二酸化硫黄に対してが吸着性が大き
いことが分かる。
【0056】次に、本発明に係る藺草紙の製造方法につ
いて説明する。アルカリ性水溶液としては、苛性ソーダ
や硫化ソーダ等の水溶液が使用される。苛性ソーダの水
溶液としては、通常、苛性ソーダを0.1〜1.0重量
%含む水溶液が使用される。苛性ソーダが0.1重量%
未満であると、ペクチンやリグニン等の繊維間膠着物質
の蒸解に時間を要し、1.0重量%を超えると、アルカ
リ分が余分に残り、その中和に多くの時間を要する。
【0057】酸性水溶液としては希硫酸の水溶液が使用
される。希硫酸の水溶液としては、通常、希硫酸を0.
1〜1.0重量%含む水溶液が使用される。希硫酸が
0.1重量%未満であると、アルカリ分を十分に中和で
きず、1.0重量%を超えると、酸分が余分に残り、繊
維を痛めるおそれがある。
【0058】叩解は蒸解後の藺草を木製の台の上の置
き、木の棒等で叩くか、または、表面にゴムシートが貼
着されているローラー間を通すことにより行われる。こ
のとき、水洗も兼ねて水を注ぎながら行うこともでき
る。
【0059】切断する藺草の長さは100mm未満が好
ましい。100mmを超えると、中和した藺草を叩解
し、水洗し、脱水した後固まった繊維を解すときに、絡
み合い過ぎて、解しにくくなる。反対に、繊維が短かい
と解しやすくはなるが、紙、糸、フェルト等の藺草製品
にした場合、繊維の絡み合いが少なくなり、強度が弱く
なる。つまり、長さが100mm未満の範囲内では、長
い方がより好ましい。
【0060】解した繊維を撚って糸にする場合、木綿や
麻等の天然繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポ
リプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維
等の合成繊維と適宜の割合に混ぜて使用することができ
る。藺草繊維の吸湿性や後記するガス吸着性等を生かす
ためには天然繊維と混ぜる方が好ましい。
【0061】綿状体を縮絨しフェルトまたは不織布にす
るステップとしては、棘のある針で繊維を互いに絡みあ
わせるニードルパンチ法やメリヤス針で綴じ込んでいく
ステッチ法等を挙げることができる。しかし、上記には
限定されない。
【0062】上記製造方法によって得られた藺草製品
は、例えば、紙は、上記性質を生かして、壁紙、包装
紙、電気スタンドの笠紙、提灯の胴貼り紙、和紙代替紙
等に使用できる。フェルトまたは不織布は、ランチョン
マット、精密機器のプレート部材、クッション材等に使
用できる。上記カットファイバ(フロックまたは短繊維
ともいう。通常、長さ0.3〜5mmである。)は、基
布や壁面等に、散布,吹き付け、振動または静電気によ
り植毛され、フロッキー加工布、壁材、パーテーション
等の形成に利用される。上記織物または上記編物は、被
服、肌着、敷物等に使用される。
【0063】(作 用)本発明に係る藺草製品の製造方
法は、その中間のステップにおいて、切断した藺草を沸
騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸解するステップ
に続いて、酸性水溶液に浸積し中和するステップが行わ
れる。即ち、藺草の繊維間膠着物質の蒸解後、回収され
た繊維の表面に残り、また、内部に浸透しているアルカ
リ性水溶液は、酸性水溶液によって中和される。
【0064】従って、中和後は繊維の表面や内部にはア
ルカリ性水溶液は存在していないので、繊維は変質した
り、脆化したりすることはない。そのことにより、当該
繊維を使用して製造された藺草製品、例えば、紙は、表
面に凹凸や波状のうねりができることはなく、経時と共
に全体が反ることもない。また、強度が低下することも
なく、広い範囲で使用できる。更に、他の藺草製品、例
えば、糸、フェルト、織物、編物等も、上記紙の場合と
同じく、強度が低下することもなく、同じように広い範
囲で使用できる。
【0065】なお、叩解を水洗と共に行う場合は、後の
ステップでの水洗を簡略しまたは省略できる。また、切
断する藺草の長さが100mm未満であれば、藺草を叩
解し、水洗し、脱水した後の固まった繊維の絡み合いが
少なく解しやすい。
【0066】アルカリ性水溶液が苛性ソーダを0.1〜
1.0重量%含む水溶液であるので、ペクチンやリグニ
ン等の繊維間膠着物質の蒸解にそれ程時間がかからな
い。また、アルカリ分もそれ程残らず、その中和に多く
の時間を要しない。
【0067】また、酸性水溶液が希硫酸を0.1〜1.
0重量%含む水溶液であるので、繊維間膠着物質の蒸解
後のアルカリ分を十分に中和でき、酸分が余分に残るこ
とはなく、繊維を傷めるおそれも少ない。
【0068】
【実施例1】刈取り時や長さの選別時に発生した藺草の
廃品や規格外品等を50〜100mmに切断する。上記
切断した藺草を、苛性ソーダを0.5重量%含み、沸騰
している水溶液中に浸漬し、1時間煮込み蒸解し、取り
出す。この蒸解により、髄は溶解し上記水溶液中に滲出
する。取り出した藺草を希硫酸を0.5重量%を含む水
溶液中に1〜2分間浸漬し、取り出して木槌で叩解し繊
維にする。なお、叩解する代わりに、表面にゴムシート
が貼られているローラー間を通したり、踏み付けたりし
て繊維にしてもよい。
【0069】上記繊維を、水洗し、水を張った紙漉き船
に入れ、ネベジ(ノリともいわれ、糊空木の皮から抽出
した粘質体、ポリエチレングリコール、アルギン酸ソー
ダ、または、ポリ燐酸塩等が使用され、繊維の沈殿を防
ぎ、分散を良くする)を加えて、棒と馬鍬で十分に攪拌
し紙料とする。竹簀を用いて、紙漉き船の中の紙料を掬
い、竹簀の上に万遍なく広げ、表面層を作る。必要なら
ば、上記表面層の上に、再度、紙料を掬くい、繊維を絡
み合わせて所定の厚みになるようにする。これを竹簀か
ら外し、脱水し、乾燥し、紙を得る。なお、上記紙の製
造方法において、藺草を希硫酸を0.5重量%含む水溶
液中に1〜2分間浸漬するステップを除き、その他のス
テップを上記通りに行い、比較例の紙を得た。
【0070】(作用)藺草の繊維間を膠着しているペク
チンとリグニン等は、苛性ソーダを0.5重量%含み、
沸騰している水溶液中に浸漬し、1時間煮込み、更に、
希硫酸を0.5重量%含む水溶液中に1〜2分間浸漬す
ることにより完全に除去されている。上記工程により、
残った苛性ソーダは中和され、変質や脆化等をしていな
い藺草繊維が得られた。従って、このような藺草繊維で
得られた紙は表面が平滑でうねり等もなく外観が良好で
あった。
【0071】更に、上記紙を電気スタンドの笠紙に使用
し、学習机上で4年間使用したが、破損したり、変色し
たりすることはなかった。これに対し、比較例の紙は表
面に凹凸とうねりがあり、外観が悪かった。また、この
比較例の紙を電気スタンドの笠紙に使用し、上記と同じ
ように、学習机上で4年間使用したところ、破損し、ま
た黄変した。
【0072】
【実施例2】上記実施例1と同じステップにより得られ
た紙の表面に適宜の印刷を施し壁紙を得た。上記壁紙を
新築の住宅の居間の壁に貼った。居間には建材の接着剤
として尿素樹脂系の接着剤が使用されていたが、ホルム
アルデヒドによる刺激臭を殆ど感じなかった。また、冬
季には、石油ストーブ(燃料として灯油を使用のもの)
を使用したが、悪臭(二酸化硫黄等によるものが多いと
思われる)を殆ど感じなかった。これは紙を構成してい
る藺草繊維がホルムアルデヒドや二酸化硫黄等に対する
優れた吸着性を有していることによるものと思われる。
【0073】
【実施例3】上記実施例1と同じステップにより得られ
た藺草繊維を木綿繊維と30対70(重量比)の割合で
混合した。混合した繊維を平行状態に揃え、紐状のスラ
イバーを造り、更に数本引揃えて引き延ばし,細い糸状
にし、撚りを与えて所要の太さの糸を得た。なお、上記
糸の製造方法において、藺草を希硫酸を0.5重量%含
む水溶液中に1〜2分間浸漬するステップを除き、その
他のステップを上記通りに行い、比較例の糸を得た。上
記糸を、藺草敷物の縁部の縫い糸として用い、得られた
敷物を3年間使用したが切断や変色等はなかった。これ
に対し、比較例の糸を上記と同じく藺草敷物の縁部の縫
い糸として用い、3年間敷物として使用したところ、縫
い糸が数箇所で切断しており、また変色していた。
【0074】
【実施例4】上記実施例1と同じステップにより得られ
た藺草繊維を薄い綿状体とし、これを複数積重ねて、棘
のある針で突き刺しつつ上下に動かした。この操作を全
面にわたって行い、繊維を互いに絡みあわせて縮絨を行
いフェルトを得た。なお、上記フェルトの製造方法にお
いて、藺草を希硫酸を0.5重量%含む水溶液中に1〜
2分間浸漬するステップを除き、その他のステップを上
記通りに行い、比較例のフェルトを得た。上記フェルト
を、3年間敷物に使用したが、切断や変色等はなかっ
た。これに対し、比較例の糸も上記と同じく、3年間敷
物に使用したが、一部分において解れや変色等がみられ
た。
【0075】本明細書で使用している用語と表現は、あ
くまでも説明上のものであって、なんら限定的なもので
はなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等
価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の
技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるとい
うことは言うまでもない。なお、本発明は図示の実施の
形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載
内において種々の変形が可能である。
【0076】
【発明の効果】本発明は上記構成を備え、次の効果を有
する。 (a)本発明に係る藺草を綿状化してなる繊維は、加工
しない藺草と比較して、放湿の機能や、ホルムアルデヒ
ド及び二酸化硫黄等、人体に有害な物質を吸着する機能
に優れている。すなわち、藺草が細かな繊維状となって
いるので、様々な形態に加工された場合において、外気
と触れる部分の表面積が十分に広くなっている。従っ
て、本発明の藺草繊維を、例えばインテリア製品、建材
等に利用することによって、シックハウスの元凶といわ
れるホルムアルデヒド等の人体に有害な物質をより効果
的に吸着することができるので、シックハウス問題の対
策としても十分に有用である。また、藺草繊維を、衣類
や寝装具等に利用することによって、室内もしくは人体
表面の湿度を好ましい状態に維持することが可能であ
り、快適な生活の一助となり得る。更には、藺草の酸化
防止及び抗菌作用による各種アレルギーの防止効果や、
遠赤外線放出及びマイナスイオン放出の効果も期待でき
る。
【0077】(b)藺草繊維を水に分散し漉いてなる藺
草紙は、上記藺草繊維と同様の作用を発揮することがで
き、吸放湿の機能や、ホルムアルデヒド及び二酸化硫黄
等の人体に有害な物質を吸着する機能に優れている。つ
まり、本発明に係る藺草紙を、襖等の建具や壁材あるい
は照明器具等に利用することによって、それを備えた室
内の湿度を好ましい状態に維持すると共に、上記有害物
質を吸着することができる。
【0078】(c)藺草繊維を紡績してなる紡績糸(空
紡糸、紡毛糸、梳毛糸等)は、上記藺草繊維と同様の作
用を発揮することができ、吸放湿の機能や、ホルムアル
デヒド及び二酸化硫黄等の人体に有害な物質を吸着する
機能に優れている。つまり、本発明に係る紡績糸を編物
や織物とし、あるいはインテリア製品としてのカーテ
ン、ロールスクリーン、カーペット、壁材等として利用
することによって、それを備えた室内の湿度を好ましい
状態に維持すると共に、上記有害物質を吸着することが
できる。また、本発明の紡績糸からなる編物や織物を、
アパレル製品としての被服や肌着等や、寝装としての布
団等に利用することによって、人体表面の湿度を好まし
いものとして快適性を向上し、上記有害物質を吸着して
人体への影響を低減することができる。
【0079】(d)本発明に係る藺草繊維を互いに結合
させて布状化してなる不織布(藺草を綿状化してなる繊
維を互いに結合させて布状化してなる乾式法不織布や湿
式法不織布等)は、上記藺草繊維と同様の作用を発揮す
ることができ、吸放湿の機能や、ホルムアルデヒド及び
二酸化硫黄等、人体に有害な物質を吸着する機能に優れ
ている。従って、不織布を上記紡績糸と同様の用途に利
用して同等の作用を発揮させることができる。また、空
気清浄器のフィルタ等に利用することによって、有害物
質を効率よく吸着することもできる。
【0080】(e)本発明に係る藺草繊維を粉体化して
なるカットファイバは、接着剤を塗布した基布や壁面等
に、散布、吹付け、振動或いは静電気を利用して植毛さ
れ、フロッキイ加工布や壁材もしくはパーテーション等
に利用される。これらは、上記藺草繊維と同様に、吸放
湿の機能や、ホルムアルデヒド及び二酸化硫黄等、人体
に有害な物質を吸着する機能を発揮することができる。
【0081】(f)本発明に係る藺草繊維の製造方法
は、煮熟するステップにより、藺草の外皮の中にある髄
を繊維組織を含む外皮から取り除くことができる。ま
た、叩解するステップにより、藺草の外皮の繊維組織か
ら髄やその他の不純物を水分と共に取り出すことができ
る。また、解すステップにおいて、繊維組織の塊となっ
た藺草をある程度解しながら、水洗等を繰り返しその塊
の中に存在する不純物を取り除くことができる。脱水乾
燥するステップにより、不純物を取り除いた藺草を脱水
して乾燥することができる。脱水乾燥された藺草は、ま
だ繊維組織の塊が残っている状態であるので、開毛処理
し綿状化するステップにおいて、その繊維塊が残ってい
る藺草繊維を開毛し、綿状化された藺草繊維を得ること
ができる。
【0082】(g)本発明に係る藺草製品の製造方法
は、その中間のステップにおいて、切断した藺草を沸騰
しているアルカリ性水溶液に浸漬し蒸解するステップに
続いて、酸性水溶液に浸積し中和するステップが行われ
る。すなわち、藺草の繊維間膠着物質の蒸解後、回収さ
れた繊維の表面に残り、また、内部に浸透しているアル
カリ性水溶液は、酸性水溶液によって中和される。従っ
て、中和後は繊維の表面や内部にはアルカリ性水溶液は
存在していないので、繊維は変質したり、脆化したりす
ることはない。これにより、当該繊維を使用して製造さ
れた藺草製品、例えば、紙は、表面に凹凸や波状のうね
りができることはなく、経時と共に全体が反ることもな
い。また、強度が低下することもなく、広い範囲で使用
できる。更に、他の藺草製品、例えば、糸、フェルト、
織物、編物等も、上記紙の場合と同じく、強度が低下す
ることもなく、同じように広い範囲で使用できる。
【0083】(h)叩解を水洗と共に行うものは、後の
ステップでの水洗を簡略にし、または省略できるので、
より効率的な作業ができる。
【0084】(i)切断する藺草の長さが100mm未
満のものは、藺草を叩解し、水洗し、脱水した後の固ま
った繊維の絡み合いが少なく当該固まった繊維を解しや
すい。
【0085】(j)アルカリ性水溶液が苛性ソーダを
0.1〜1.0重量%含む水溶液であるものは、ペクチ
ンやリグニン等の繊維間膠着物質の蒸解にそれ程時間が
かからない。また、アルカリ分もそれ程残らず、その中
和に多くの時間を要しない。
【0086】(k)酸性水溶液が希硫酸を0.1〜1.
0重量%含む水溶液であるものは、繊維間膠着物質の蒸
解後のアルカリ分を十分に中和でき、酸分が余分に残る
ことはなく、繊維を傷めるおそれも少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る藺草繊維の製造方法を示すフロー
チャート。
【図2】本発明に係る藺草繊維の吸放湿機能を表すグラ
フ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D21C 3/04 D21C 3/04 (72)発明者 簗瀬 忠 大阪府阪南市黒田344番地 阪南工業株式 会社内 Fターム(参考) 4L036 MA08 MA35 PA31 4L047 AA11 AB02 BA03 CB10 CC12 4L055 AA20 AH50 BD19 GA23 GA36

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 藺草を綿状化してなることを特徴とす
    る、藺草繊維。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の藺草繊維を水に分散し漉
    いてなることを特徴とする、藺草紙。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の藺草繊維を紡績してなる
    ことを特徴とする、紡績糸。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の藺草繊維を互いに結合さ
    せて布状化してなることを特徴とする、不織布。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の藺草繊維を粉体化してな
    ることを特徴とする、 カットファイバ。
  6. 【請求項6】 藺草繊維の製造方法であって、 原料となる藺草をアルカリ溶液内において煮熟するステ
    ップ、 上記煮熟された藺草を叩解するステップ、 上記叩解された藺草を解すステップ、 上記解された藺草を脱水乾燥処理するステップ、 上記脱水乾燥処理された藺草を開毛処理し綿状化するス
    テップ、を含むことを特徴とする、 藺草繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】 藺草製品の製造方法であって、 藺草を所定長さに切断するステップ、 切断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し
    蒸解するステップ、 アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性水溶液に浸積し
    中和するステップ、中和した藺草を叩解し繊維にするス
    テップ、 繊維以外の成分を水洗し除去するステップ、 繊維を水に分散し漉いて紙にするステップ、 を含むことを特徴とする、 藺草製品の製造方法。
  8. 【請求項8】 藺草製品の製造方法であって、 藺草を所定長さに切断するステップ、 切断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し
    蒸解するステップ、 アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性水溶液に浸漬し
    中和するステップ、 中和した藺草を叩解し繊維にするステップ、 繊維以外の成分を水洗し除去するステップ、 脱水するステップ、 脱水後乾燥し固まった繊維を解すステップ、 解した繊維を撚って糸状体にするステップ、を含むこと
    を特徴とする、 藺草製品の製造方法。
  9. 【請求項9】 糸状体にするステップにおいて、乾燥し
    解した藺草繊維に、天然繊維または合成繊維を混合して
    おくことを特徴とする、 請求項8記載の藺草製品の製造方法。
  10. 【請求項10】 藺草製品の製造方法であって、 藺草を所定長さに切断するステップ、 切断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し
    蒸解するステップ、 アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性水溶液に浸漬し
    中和するステップ、 中和した藺草を叩解し繊維にするステップ、 繊維以外の成分を水洗し除去するステップ、 脱水するステップ、 脱水後乾燥し固まった繊維を解し綿状体とするステッ
    プ、 綿状体を縮絨しフェルトまたは不織布にするステップ、
    を含むことを特徴とする、 藺草製品の製造方法。
  11. 【請求項11】 藺草製品の製造方法であって、 藺草を所定長さに切断するステップ、 切断した藺草を沸騰しているアルカリ性水溶液に浸漬し
    蒸解するステップ、 アルカリ性水溶液に浸漬した藺草を酸性水溶液に浸漬し
    中和するステップ、 中和した藺草を叩解し繊維にするステップ、 繊維以外の成分を水洗し除去するステップ、 脱水するステップ、 脱水後乾燥し固まった繊維を解し綿状体とするステッ
    プ、 綿状体を粉体化しカットファイバにするステップ、 を含むことを特徴とする、 藺草製品の製造方法。
  12. 【請求項12】 叩解を水洗と共に行うことを特徴とす
    る、 請求項7、8、9、10または11記載の藺草製品の製
    造方法。
  13. 【請求項13】 切断する藺草の長さが100mm未満
    であることを特徴とする、 請求項7、8、9、10、11または12記載の藺草に
    よる藺草製品の製造方法。
  14. 【請求項14】 アルカリ性水溶液が苛性ソーダを0.
    1〜1.0重量%含む水溶液であることを特徴とする、 請求項7、8、9、10、11、12または13記載の
    藺草製品の製造方法。
  15. 【請求項15】 酸性水溶液が希硫酸を0.1〜1.0
    重量%含む水溶液であることを特徴とする、 請求項7、8、9、10、11、12、13または14
    記載の藺草製品の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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CN106087093A (zh) * 2016-06-07 2016-11-09 联润翔(青岛)纺织科技有限公司 蔺草粘胶纤维及其制备方法

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