JP2002003982A - 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄 - Google Patents

被削性および機械的性質に優れた鋳鉄

Info

Publication number
JP2002003982A
JP2002003982A JP2000181224A JP2000181224A JP2002003982A JP 2002003982 A JP2002003982 A JP 2002003982A JP 2000181224 A JP2000181224 A JP 2000181224A JP 2000181224 A JP2000181224 A JP 2000181224A JP 2002003982 A JP2002003982 A JP 2002003982A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
cast iron
machinability
content
rare earth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000181224A
Other languages
English (en)
Inventor
Kiyohito Ishida
清仁 石田
Masanari Oikawa
勝成 及川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2000181224A priority Critical patent/JP2002003982A/ja
Publication of JP2002003982A publication Critical patent/JP2002003982A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課 題】 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄を提
供する。 【解決手段】 Cを 2.8〜4.0 質量%,Siを 1.5〜2.5
質量%,Mnを 0.1〜0.7質量%,Pを 0.1質量%以下,C
uを0.01〜2.0 質量%,Snを0.01〜0.1 質量%,Sを0.0
1〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜1.0 質量%およ
び/またはZrを0.01〜1.0 質量%含有し、残部Feおよび
不可避的不純物からなる組成とし、Fe基地中に金属硫化
物および/または金属複合炭硫化物が分散された組織と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被削性および機械
的性質に優れた鋳鉄に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に鋳鉄は、Fe基地中の黒鉛が工具と
被削材との間で固体潤滑材となり、さらに黒鉛が基地組
織を不連続にして切屑を容易に破断させるため、被削性
が良いことが知られている。この鋳鉄にMnSを主体とす
る硫化物やPbを添加すると、被削性および機械的性質が
さらに改善されることも知られている。
【0003】しかしPbは、近年、環境保護の観点から規
制の対象となり、その使用が制限されるようになってい
る。またMnSを生成させるためにはMnを多量に添加する
必要があるが、MnはFe基地中のCの黒鉛化を阻害するの
で、多量に添加した場合は機械的性質を劣化するという
問題があった。特開平10-96040号公報には、被削性に優
れた高強度ねずみ鋳鉄が開示されている。この技術は、
黒鉛サイズを 300μm以下,かつビッカース硬さを 160
〜240Hvとすることによって、ねずみ鋳鉄(すなわち
片状黒鉛鋳鉄)の被削性を改善しようとするものであ
る。しかしこの技術では、Mnの含有量が比較的高いた
め、被削性および機械的性質の大幅な向上は期待できな
いという問題があった。
【0004】特開平6-93369 号公報には、快削球状黒鉛
鋳鉄の製造方法が開示されている。この方法は、Ca化合
物を分散させることによって、球状黒鉛鋳鉄の被削性を
改善しようとするものである。しかしこの方法では、Ca
の溶解度が低いため、鋳鉄にCaを添加するときの歩留り
が低く経済的に不利であるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
問題を解消し、被削性および機械的性質に優れた鋳鉄を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、新しい快
削物質について種々の研究を行なった結果、金属硫化物
あるいは金属複合炭硫化物が快削物質として有用である
ことを見出した。特にTiおよびZrは、Fe基地中のCの黒
鉛化を阻害する元素として知られていたが、TiやZrの硫
化物あるいは複合炭硫化物は、Fe基地中のCを黒鉛化す
る効果を有し、かつ優れた快削物質であることを見出し
た。
【0007】本発明は、Cを 2.8〜4.0 質量%,Siを
1.5〜2.5 質量%,Mnを 0.1〜0.7 質量%,Pを 0.1質
量%以下,Cuを0.01〜2.0 質量%,Snを0.01〜0.1 質量
%,Sを0.01〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜1.0
質量%および/またはZrを0.01〜1.0 質量%含有し、残
部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、Fe基地中に
片状黒鉛または共晶状黒鉛が分散され、かつ金属硫化物
および/または金属複合炭硫化物が分散された組織とを
有する鋳鉄である。
【0008】前記した鋳鉄の発明においては、第1の好
適態様として、前記組成に加えてBiを 0.001〜0.01質量
%含有することが好ましい。また第2の好適態様とし
て、前記組成に加えて希土類元素の内の1種または2種
以上を合計 0.005〜0.05質量%含有することが好まし
い。また第3の好適態様として、金属複合炭硫化物が、
Ti42 2 および Zr4 2 2 の内の1種または2種
であることが好ましい。
【0009】また第4の好適態様として、金属硫化物
が、 Ti3S、 Ti2S、TiS、 Zr32、ZrSおよび希土
類硫化物の内の1種または2種以上であることが好まし
い。さらに本発明は、Cを 2.8〜4.0 質量%,Siを 1.5
〜2.5 質量%,Mnを 0.1〜0.7 質量%,Pを 0.1質量%
以下,Mgを0.0015〜0.008 質量%,Caを 0.002〜0.02質
量%,Cuを0.01〜2.0 質量%,Snを0.01〜0.1 質量%,
Sを0.01〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜0.5 質量
%および/またはZrを0.01〜0.5 質量%含有し、残部Fe
および不可避的不純物からなる組成と、Fe基地中に金属
硫化物および/または金属複合炭硫化物が分散された組
織とを有する球状黒鉛鋳鉄である。
【0010】前記した球状黒鉛鋳鉄の発明においては、
第1の好適態様として、前記組成に加えてBiを 0.001〜
0.01質量%含有することが好ましい。また第2の好適態
様として、前記組成に加えて希土類元素の内の1種また
は2種以上を合計 0.005〜0.05質量%含有することが好
ましい。また第3の好適態様として、金属複合炭硫化物
が、 Ti42 2 および Zr4 2 2 の内の1種または
2種であることが好ましい。
【0011】また第4の好適態様として、金属硫化物
が、 Ti3S、 Ti2S、TiS、 Zr32、ZrS、CaS、Mg
Sおよび希土類硫化物の内の1種または2種以上である
ことが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】まず本発明のFe基地中に片状黒鉛
が分散した鋳鉄(以下、片状黒鉛鋳鉄という)およびFe
基地中に共晶状黒鉛が分散した鋳鉄(以下、共晶黒鉛鋳
鉄という)について説明する。本発明の片状黒鉛鋳鉄,
共晶黒鉛鋳鉄の組成は、Cを 2.8〜4.0 質量%,Siを1.
5〜2.5 質量%,Mnを 0.1〜0.7 質量%,Pを 0.1質量
%以下,Cuを0.01〜2.0 質量%,Snを0.01〜0.1 質量
%,Sを0.01〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜1.0
質量%および/またはZrを0.01〜1.0 質量%含有し、残
部Feおよび不可避的不純物からなる。
【0013】Cは、Fe基地中に黒鉛を生成する元素であ
る。しかし、C含有量が 2.8質量%未満では引け巣や湯
流れ不良等の鋳造欠陥が発生する。また、 4.0質量%を
超えると粗大なキッシュ黒鉛が増加し強度が低下する。
したがって、Cは 2.8〜4.0質量%の範囲を満足する必
要がある。Siは、Fe基地中のCの黒鉛化を促進する元素
である。しかし、Si含有量が 1.5質量%未満ではCの黒
鉛化が不十分で炭化物が析出しやすくなり、衝撃値およ
び伸びが低下する。また、 2.5質量%を超えるとFe基地
中の遊離フェライトが増加して強度が低下する。したが
って、Siは 1.5〜2.5 質量%の範囲を満足する必要があ
る。
【0014】Mnは、Sと結合してMnSを形成し、被削性
を向上させる元素である。しかし、Mn含有量が 0.1質量
%未満ではパーライトが減少し、フェライトが増加する
ため、十分な疲労強度や耐磨耗性が得られない。また、
0.7質量%を超えるとパーライトが増加して衝撃値およ
び伸びが低下する。したがって、Mnは 0.1〜0.7 質量%
の範囲を満足する必要がある。
【0015】Pは、不可避的不純物として存在する元素
であるから、含有量は少ないほど良い。すなわち0質量
%がもっとも好ましいが、不可避的不純物として混入す
るのは避けられない。P含有量が 0.1質量%を超える
と、ステダイトと呼ばれるFe−Fe3C− Fe3Pの3元共
晶で非常に硬い相が晶出するため、衝撃値,伸びおよび
被削性が低下する。したがって、Pは 0.1質量%以下の
範囲を満足する必要がある。
【0016】Cuは、Fe基地中のCの黒鉛化を促進する元
素である。しかし、Cu含有量が0.01%未満であると黒鉛
化が不十分でFe基地中の遊離フェライトが増加して強度
が低下する。また、 2.0質量%を超えるとパーライトが
緻密になり、硬さが著しく増加するため、被削性が低下
する。したがって、Cuは0.01〜2.0 質量%の範囲を満足
する必要がある。
【0017】Snは、Fe基地中のパーライトを増加させ疲
労強度や耐磨耗性を向上させる元素である。しかし、Sn
含有量が0.01質量%未満ではパーライトが成長せず、十
分な疲労強度や耐磨耗性が得られない。また、 0.1質量
%を超えるとチルと呼ばれる非常に硬い遊離セメンタイ
ト Fe3Cが析出するため被削性が低下する。したがっ
て、Snは0.01〜0.1 質量%の範囲を満足する必要があ
る。
【0018】Sは、硫化物および複合炭硫化物を形成
し、被削性を向上させる元素である。しかし、S含有量
が0.01質量%未満では硫化物および複合炭硫化物が形成
されず、十分な被削性が得られない。また、 0.3質量%
を超えるとチルが析出するため被削性が低下する。した
がって、Sは0.01〜0.3 質量%の範囲を満足する必要が
ある。
【0019】Tiは、SやCと結合して硫化物あるいは複
合炭硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。
しかし、Ti含有量が0.01質量%未満では硫化物や複合炭
硫化物が形成されず、十分な被削性が得られない。ま
た、 1.0質量%を超えるとチルが析出するため被削性が
低下する。したがって、Tiは0.01〜1.0 質量%の範囲を
満足する必要がある。
【0020】Zrは、SやCと結合して硫化物あるいは複
合炭硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。
しかし、Zr含有量が0.01質量%未満では硫化物や複合炭
硫化物が形成されず、十分な被削性が得られない。ま
た、 1.0質量%を超えるとチルが析出するため被削性が
低下する。したがって、Zrは0.01〜1.0 質量%の範囲を
満足する必要がある。
【0021】また、本発明の片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄の組織は、Fe基地中に片状黒鉛または共晶状黒鉛が分
散され、かつ金属硫化物および/または金属複合炭硫化
物が分散されているため、被削性が向上する。また、こ
れらの金属硫化物や金属複合炭硫化物が黒鉛の核生成サ
イトとなるので、黒鉛化が促進されて微細な黒鉛が多数
生成し、被削性がさらに向上する。しかも、金属硫化物
や金属複合炭硫化物が黒鉛の核生成サイトとなるので、
Mn添加量を抑えることができ、機械的性質を向上させる
効果もある。
【0022】また、本発明の片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄では、被削性を一層向上させるためにBiを添加しても
良い。Biは、Fe基地中のCの黒鉛化を促進する元素であ
る。しかし、Bi含有量が 0.001質量%未満ではCの黒鉛
化が不十分で炭化物が析出しやすくなり、衝撃値および
強度が低下する。また、0.01質量%を超えるとチルが析
出するため被削性が低下する。したがって、Biは 0.001
〜0.01質量%の範囲を満足するのが好ましい。
【0023】また、本発明の片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄では、被削性を一層向上させるために希土類元素を1
種または2種以上添加しても良い。希土類元素は、Fe基
地中のCの黒鉛化を促進する元素である。しかし、希土
類元素の含有量が合計 0.005質量%未満ではCの黒鉛化
が不十分で炭化物が析出しやすくなり、衝撃値および強
度が低下する。また、合計0.05質量%を超えるとチルが
析出するため被削性が低下する。したがって、希土類元
素の内の1種または2種以上の含有量は、合計0.005〜
0.05質量%の範囲を満足するのが好ましい。
【0024】さらに本発明の片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄のFe基地中に分散させる金属複合炭硫化物は、 Ti4
2 2 および Zr42 2 の内の1種または2種である
ことが好ましい。TiおよびZrは容易に複合炭硫化物を形
成する金属である。そのため、短時間で複合炭硫化物の
生成が可能となり生産性が向上するので、経済的に有利
である。
【0025】さらに本発明の片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄のFe基地中に分散させる金属硫化物は、 Ti3S, Ti2
S,TiS, Zr32 ,ZrSおよび希土類硫化物の内の1
種または2種以上であることが好ましい。Ti,Zrおよび
希土類元素は容易に硫化物を形成する金属元素である。
そのため、短時間で硫化物の生成が可能となり生産性が
向上するので、経済的に有利である。
【0026】次に本発明の球状黒鉛鋳鉄について説明す
る。本発明の球状黒鉛鋳鉄の組成は、Cを 2.8〜4.0 質
量%,Siを 1.5〜2.5 質量%,Mnを 0.1〜0.7 質量%,
Pを 0.1質量%以下,Mgを0.0015〜0.008 質量%,Caを
0.002〜0.02質量%,Cuを0.01〜2.0 質量%,Snを0.01
〜0.1 質量%,Sを0.01〜0.3 質量%含有し、かつTiを
0.01〜0.5 質量%および/またはZrを0.01〜0.5 質量%
含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる。
【0027】Cは、Fe基地中に黒鉛を生成する元素であ
る。しかし、C含有量が 2.8質量%未満では引け巣や湯
流れ不良等の鋳造欠陥が発生する。また、 4.0質量%を
超えると粗大なキッシュ黒鉛が増加し強度が低下する。
したがって、Cは 2.8〜4.0質量%の範囲を満足する必
要がある。Siは、Fe基地中のCの黒鉛化を促進する元素
である。しかし、Si含有量が 1.5質量%未満ではCの黒
鉛化が不十分で炭化物が析出しやすくなり、衝撃値およ
び伸びが低下する。また、 2.5質量%を超えるとFe基地
中の遊離フェライトが増加して強度が低下する。したが
って、Siは 1.5〜2.5 質量%の範囲を満足する必要があ
る。
【0028】Mnは、Sと結合してMnSを形成し、被削性
を向上させる元素である。しかし、Mn含有量が 0.1質量
%未満ではパーライトが減少し、フェライトが増加する
ため、十分な疲労強度や耐磨耗性が得られない。また、
0.7質量%を超えるとパーライトが増加して衝撃値およ
び伸びが低下する。したがって、Mnは 0.1〜0.7 質量%
の範囲を満足する必要がある。
【0029】Pは、不可避的不純物として存在する元素
であるから、含有量は少ないほど良い。すなわち0質量
%がもっとも好ましいが、不可避的不純物として混入す
るのは避けられない。P含有量が 0.1質量%を超える
と、ステダイトと呼ばれるFe−Fe3C− Fe3Pの3元共
晶で非常に硬い相が晶出するため、衝撃値,伸びおよび
被削性が低下する。したがって、Pは 0.1質量%以下の
範囲を満足する必要がある。
【0030】Mgは、Fe基地中の黒鉛の球状化を促進する
元素である。しかし、Mg含有量が0.0015質量%未満では
黒鉛の球状化が不十分となる。また、 0.008質量%を超
えると引け巣等の鋳造欠陥が発生しやすくなる。したが
って、Mgは0.0015〜0.008 質量%の範囲を満足する必要
がある。Caは、Fe基地中の黒鉛の球状化を促進する元素
である。しかし、Ca含有量が 0.002質量%未満では黒鉛
の球状化が不十分となる。また、0.02質量%を超えると
黒鉛が粗大化する。したがって、Caは 0.002〜0.02質量
%の範囲を満足する必要がある。
【0031】Cuは、Fe基地中のCの黒鉛化を促進する元
素である。しかし、Cu含有量が0.01%未満であると黒鉛
化が不十分でFe基地中の遊離フェライトが増加して強度
が低下する。また、 2.0質量%を超えるとパーライトが
緻密になり、硬さが著しく増加するため、被削性が低下
する。したがって、Cuは0.01〜2.0 質量%の範囲を満足
する必要がある。
【0032】Snは、Fe基地中のパーライトを増加させ疲
労強度や耐磨耗性を向上させる元素である。しかし、Sn
含有量が0.01質量%未満ではパーライトが成長せず、十
分な疲労強度や耐磨耗性が得られない。また、 0.1質量
%を超えるとチルと呼ばれる非常に硬い遊離セメンタイ
ト Fe3Cが析出するため被削性が低下する。したがっ
て、Snは0.01〜0.1 質量%の範囲を満足する必要があ
る。
【0033】Sは、硫化物および複合炭硫化物を形成
し、被削性を向上させる元素である。しかし、S含有量
が0.01質量%未満では硫化物および複合炭硫化物が形成
されず、十分な被削性が得られない。また、 0.3質量%
を超えるとチルが析出するため被削性が低下する。した
がって、Sは0.01〜0.3 質量%の範囲を満足する必要が
ある。
【0034】Tiは、SやCと結合して硫化物あるいは複
合炭硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。
しかし、Ti含有量が0.01質量%未満では硫化物や複合炭
硫化物が形成されず、十分な被削性が得られない。ま
た、 0.5質量%を超えるとチルが析出するため被削性が
低下する。したがって、Tiは0.01〜0.5 質量%の範囲を
満足する必要がある。
【0035】Zrは、SやCと結合して硫化物あるいは複
合炭硫化物を形成し、被削性を向上させる元素である。
しかし、Zr含有量が0.01質量%未満では硫化物や複合炭
硫化物が形成されず、十分な被削性が得られない。ま
た、 0.5質量%を超えるとチルが析出するため被削性が
低下する。したがって、Zrは0.01〜0.5 質量%の範囲を
満足する必要がある。
【0036】また、本発明の球状黒鉛鋳鉄では、被削性
を一層向上させるためにBiを添加しても良い。Biは、Fe
基地中のCの黒鉛化を促進する元素である。しかし、Bi
含有量が 0.001質量%未満ではCの黒鉛化が不十分で炭
化物が析出しやすくなり、衝撃値および強度が低下す
る。また、0.01質量%を超えるとチルが析出するため被
削性が低下する。したがって、Biは 0.001〜0.01質量%
の範囲を満足するのが好ましい。
【0037】また、本発明の球状黒鉛鋳鉄では、被削性
を一層向上させるために希土類元素を1種または2種以
上添加しても良い。希土類元素は、Fe基地中のCの黒鉛
化を促進する元素である。しかし、希土類元素の含有量
が合計 0.005質量%未満ではCの黒鉛化が不十分で炭化
物が析出しやすくなり、衝撃値および強度が低下する。
また、合計0.05質量%を超えるとチルが析出するため被
削性が低下する。したがって、希土類元素の内の1種ま
たは2種以上の含有量は、合計 0.005〜0.05質量%の範
囲を満足するのが好ましい。
【0038】さらに本発明の球状黒鉛鋳鉄のFe基地中に
分散させる金属複合炭硫化物は、Ti 42 2 および Z
r42 2 の内の1種または2種であることが好まし
い。TiおよびZrは容易に複合炭硫化物を形成する金属で
ある。そのため、短時間で複合炭硫化物の生成が可能と
なり生産性が向上するので、経済的に有利である。さら
に本発明の球状黒鉛鋳鉄のFe基地中に分散させる金属硫
化物は、 Ti3S,Ti2S,TiS, Zr32 ,ZrS,Ca
S,MgSおよび希土類硫化物の内の1種または2種以上
であることが好ましい。Ti,Zrおよび希土類元素は容易
に硫化物を形成する金属元素である。そのため、短時間
で硫化物の生成が可能となり生産性が向上するので、経
済的に有利である。
【0039】
【実施例】表1に示す成分の片状黒鉛鋳鉄を溶製した
後、鋳造して、直径200mm ,厚さ30mmの円板状の鋳塊を
製造した。
【0040】
【表1】
【0041】発明例1〜4は、C,Si,Mn,P,Cu,S
n,S,TiおよびZrの含有量が本発明の範囲を満足する
例であり、発明例1はBiおよび希土類元素を含有しない
例、発明例2はBiの含有量が本発明の好適範囲を満足す
る例、発明例3はCe(すなわち希土類元素)の含有量が
本発明の好適範囲を満足する例、発明例4はBiおよび希
土類元素の含有量が本発明の好適範囲を超える例であ
る。
【0042】一方、比較例1〜4は、TiあるいはZrの含
有量が本発明の範囲を外れる例である。これらの片状黒
鉛鋳鉄の鋳塊の被削性および機械的性質を調査した。そ
の結果は、表2に示す通りである。
【0043】
【表2】
【0044】鋳塊の被削性は、鋳塊をドリルで切削し、
その切屑の1個あたりの重量(mg/個)を測定して評価
した。比較例1〜4では25mg/個以上の切屑が発生し、
切屑が長いため被削性は悪かった。一方、発明例1〜4
では、切屑は25mg/個未満であり、切屑が短いため良好
な被削性が得られた。特に発明例2および発明例3で
は、BiあるいはCeの含有量が好適範囲を満足するので、
20mg/個未満の極めて短い切屑が発生し、被削性は一層
改善された。
【0045】鋳塊の機械的性質として引張り強さとブリ
ネル硬さを測定した。発明例1〜4と比較例1〜4を比
べると、発明例1〜4の方が引張り強さが強く、ブリネ
ル硬さが軟らかかった。次に表3に示す成分の球状黒鉛
鋳鉄を溶製した後、鋳造して、直径200mm ,厚さ30mmの
円板状の鋳塊を製造した。
【0046】
【表3】
【0047】発明例5〜8は、C,Si,Mn,P,Mg,C
a,Cu,Sn,S,TiおよびZrの含有量が本発明の範囲を
満足する例であり、発明例5はBiおよび希土類元素を含
有しない例、発明例6はBiの含有量が本発明の好適範囲
を満足する例、発明例7はCe(すなわち希土類元素)の
含有量が本発明の好適範囲を満足する例、発明例8はBi
および希土類元素の含有量が本発明の好適範囲を超える
例である。
【0048】一方、比較例5〜8は、TiあるいはZrの含
有量が本発明の範囲を外れる例である。これらの片状黒
鉛鋳鉄の鋳塊の被削性および機械的性質を調査した。そ
の結果は、表4に示す通りである。
【0049】
【表4】
【0050】鋳塊の被削性は、鋳塊をドリルで切削し、
その切屑の1個あたりの重量(mg/個)を測定して評価
した。比較例5〜8では25mg/個以上の切屑が発生し、
切屑が長いため被削性は悪かった。一方、発明例5〜8
では、切屑は25mg/個未満であり、切屑が短いため良好
な被削性が得られた。特に発明例6および発明例7で
は、BiあるいはCeの含有量が好適範囲を満足するので、
20mg/個未満の極めて短い切屑が発生し、被削性は一層
改善された。
【0051】鋳塊の機械的性質として引張り強さとブリ
ネル硬さを測定した。発明例5〜8と比較例5〜8を比
べると、発明例5〜8の方が引張り強さが強く、ブリネ
ル硬さが軟らかかった。
【0052】
【発明の効果】本発明では、片状黒鉛鋳鉄,共晶黒鉛鋳
鉄あるいは球状黒鉛鋳鉄等の鋳鉄の被削性および機械的
性質を向上できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 清仁 宮城県仙台市青葉区上杉3−5−20 (72)発明者 及川 勝成 宮城県柴田郡柴田町西船迫4−1−34

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cを 2.8〜4.0 質量%、Siを 1.5〜2.5
    質量%、Mnを 0.1〜0.7 質量%、Pを 0.1質量%以下、
    Cuを0.01〜2.0 質量%、Snを0.01〜0.1 質量%、Sを0.
    01〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜1.0 質量%およ
    び/またはZrを0.01〜1.0 質量%含有し、残部Feおよび
    不可避的不純物からなる組成と、Fe基地中に片状黒鉛ま
    たは共晶状黒鉛が分散され、かつ金属硫化物および/ま
    たは金属複合炭硫化物が分散された組織とを有すること
    を特徴とする鋳鉄。
  2. 【請求項2】 前記組成に加えて、Biを 0.001〜0.01質
    量%含有することを特徴とする請求項1に記載の鋳鉄。
  3. 【請求項3】 前記組成に加えて、希土類元素の内の1
    種または2種以上を合計 0.005〜0.05質量%含有するこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の鋳鉄。
  4. 【請求項4】 前記金属複合炭硫化物が、 Ti42 2
    および Zr42 2の内の1種または2種であることを
    特徴とする請求項1、2または3に記載の鋳鉄。
  5. 【請求項5】 前記金属硫化物が、 Ti3S、 Ti2S、Ti
    S、 Zr32 、ZrSおよび希土類硫化物の内の1種また
    は2種以上であることを特徴とする請求項1、2、3ま
    たは4に記載の鋳鉄。
  6. 【請求項6】 Cを 2.8〜4.0 質量%、Siを 1.5〜2.5
    質量%、Mnを 0.1〜0.7 質量%、Pを 0.1質量%以下、
    Mgを0.0015〜0.008 質量%、Caを 0.002〜0.02質量%、
    Cuを0.01〜2.0 質量%、Snを0.01〜0.1 質量%、Sを0.
    01〜0.3 質量%含有し、かつTiを0.01〜0.5 質量%およ
    び/またはZrを0.01〜0.5 質量%含有し、残部Feおよび
    不可避的不純物からなる組成と、Fe基地中に金属硫化物
    および/または金属複合炭硫化物が分散された組織とを
    有することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄。
  7. 【請求項7】 前記組成に加えて、Biを 0.001〜0.01質
    量%含有することを特徴とする請求項6に記載の球状黒
    鉛鋳鉄。
  8. 【請求項8】 前記組成に加えて、希土類元素の内の1
    種または2種以上を合計 0.005〜0.05質量%含有するこ
    とを特徴とする請求項6または7に記載の球状黒鉛鋳
    鉄。
  9. 【請求項9】 前記金属複合炭硫化物が、 Ti42 2
    および Zr42 2の内の1種または2種であることを
    特徴とする請求項6、7または8に記載の球状黒鉛鋳
    鉄。
  10. 【請求項10】 前記金属硫化物が、 Ti3S、 Ti2S、Ti
    S、 Zr32 、ZrS、CaS、MgSおよび希土類硫化物の
    内の1種または2種以上であることを特徴とする請求項
    6、7、8または9に記載の球状黒鉛鋳鉄。
JP2000181224A 2000-06-16 2000-06-16 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄 Pending JP2002003982A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000181224A JP2002003982A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000181224A JP2002003982A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002003982A true JP2002003982A (ja) 2002-01-09

Family

ID=18682190

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000181224A Pending JP2002003982A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002003982A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009001841A1 (ja) 2007-06-26 2008-12-31 Incorporated National University Iwate University 片状黒鉛鋳鉄およびその製造方法
CN102676908A (zh) * 2011-03-10 2012-09-19 常熟市精工模具制造有限公司 稀土孕育剂促进d型石墨的合金玻璃模具
CN105401067A (zh) * 2015-12-01 2016-03-16 铜陵奥盛冶金机械有限公司 一种低密度高耐磨的铸铁材料
WO2016104961A1 (ko) * 2014-12-24 2016-06-30 두산인프라코어 주식회사 구상 흑연 주철 및 이의 제조방법, 이로부터 제조된 유압기기용 부품
WO2022176237A1 (ja) * 2021-02-16 2022-08-25 芝浦機械株式会社 片状黒鉛鋳鉄製品及びその製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009001841A1 (ja) 2007-06-26 2008-12-31 Incorporated National University Iwate University 片状黒鉛鋳鉄およびその製造方法
EP2166119A1 (en) * 2007-06-26 2010-03-24 Incorporated National University Iwate University Flaky graphite cast iron, and method for production thereof
EP2166119A4 (en) * 2007-06-26 2011-10-05 Nat University Iwate Univ Inc SCHUPPENGRAPHIT CAST IRON AND MANUFACTURING METHOD THEREFOR
CN102676908A (zh) * 2011-03-10 2012-09-19 常熟市精工模具制造有限公司 稀土孕育剂促进d型石墨的合金玻璃模具
WO2016104961A1 (ko) * 2014-12-24 2016-06-30 두산인프라코어 주식회사 구상 흑연 주철 및 이의 제조방법, 이로부터 제조된 유압기기용 부품
CN105401067A (zh) * 2015-12-01 2016-03-16 铜陵奥盛冶金机械有限公司 一种低密度高耐磨的铸铁材料
WO2022176237A1 (ja) * 2021-02-16 2022-08-25 芝浦機械株式会社 片状黒鉛鋳鉄製品及びその製造方法
JP2022124625A (ja) * 2021-02-16 2022-08-26 芝浦機械株式会社 片状黒鉛鋳鉄製品及びその製造方法
CN115516123A (zh) * 2021-02-16 2022-12-23 芝浦机械株式会社 片状石墨铸铁制品及其制造方法
JP7278316B2 (ja) 2021-02-16 2023-05-19 芝浦機械株式会社 片状黒鉛鋳鉄製品及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101214709B1 (ko) 편상 흑연 주철 및 이의 제조방법
JP4835424B2 (ja) 高強度球状黒鉛鋳鉄
JP4137054B2 (ja) ねずみ鋳鉄合金及び内燃機関鋳造部品
EP3732306B1 (en) Cast iron inoculant and method for production of cast iron inoculant
JP5712560B2 (ja) 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品
JP2002003982A (ja) 被削性および機械的性質に優れた鋳鉄
TW390910B (en) High strength spheroidal graphite cast iron
JP5712525B2 (ja) 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品
JP2005272869A5 (ja)
JP5589646B2 (ja) 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品
RU2318903C1 (ru) Чугун с вермикулярным графитом
JP5282546B2 (ja) 耐摩耗性に優れた高強度厚肉球状黒鉛鋳鉄品
JPH1096040A (ja) 被削性に優れた高強度ねずみ鋳鉄
JP2010132979A (ja) 耐摩耗性に優れた高強度厚肉球状黒鉛鋳鉄品
RU2230817C1 (ru) Чугун
JP2007527951A (ja) 鋳鉄材料
JPH04341537A (ja) 冷間鍛造性にすぐれた高強度耐摩耗性アルミニウム合金
US5370752A (en) Cast steel suitable for machining
JPH05239590A (ja) 耐摩耗性に優れた鋼
JP2000026932A (ja) 球状黒鉛鋳鉄品
RU2138574C1 (ru) Литейный сплав на основе алюминия
JP5712531B2 (ja) 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品
JPH08120396A (ja) 鋳放しパーライト球状黒鉛鋳鉄及びその製造方法
JP2613612B2 (ja) 黒鉛鋳鋼
WO1996038596A1 (fr) Fonte graphitique spherique a haute resistance mecanique