JP2001525161A - 低電位で活性化されるカルシウムチャネル組成物と方法 - Google Patents

低電位で活性化されるカルシウムチャネル組成物と方法

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Abstract

(57)【要約】 低電位で活性化されるカルシウムチャネルのサブユニットで、主要転写産物のスプライス変異体によってコードされるサブユニットを含むサブユニットをコードする、単離された核酸が提供されている。該核酸を含む細胞とベクター、および、これらのサブユニットを含むカルシウムチャネルの活性を調節する化合物を同定するための方法も提供されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出願 1997年12月3日に提出された、Williamsらによる「カルシウム
チャネル組成物および方法」と称する米国特許出願第08/984,709号、
および、1998年11月10日に提出された、Williamらによる「カル
シウムチャネル組成物および方法」と称する米国特許出願第09/188,93
2号に対する優先権の利益を本明細書において主張するものである。
【0002】 本出願は、1995年5月25日提出の米国特許出願第08/450,272
号、1995年5月25日提出の米国特許出願第08/450,273号、19
95年5月25日提出の米国特許出願第08/450,562号に関連するもの
である。これらの各出願は、米国特許出願第08/290,012号の一部継続
出願である。本出願は、米国特許出願第08/105,536号および第08/
149,097号に対する優先権を主張する、1994年8月11日提出の国際
PCT出願第PCT/US94/09230号にも関連する。本出願は、199
2年7月13日提出の米国特許出願第07/914,231号、現米国特許第5
,407,820号の継続出願である、1995年2月15日提出の米国特許出
願第08/404,354号、現米国特許第5,618,720号にも関連し、
また、いずれも、米国特許出願第07/914,231号の分割出願である、1
994年9月28日提出の米国特許出願第08/314,083号、現米国特許
第5,686,241号、1995年5月5日提出の米国特許出願第08/43
5,675号、現米国特許第5,710,250号にも関連する。米国特許出願
第07/914,231号は、1989年4月4日に提出されたが、今は放棄さ
れている米国特許出願第07/176,899号の一部継続出願である、198
9年4月4日提出の国際PCT/US89/01408号の国内段階である、1
990年11月8日に提出され、今は放棄されている米国特許出願第07/60
3,751号の継続出願である。
【0003】 また、本出願は、米国特許出願第08/314,083号の継続出願である、
1997年6月27日提出の米国特許出願第08/884,599号にも関連し
ている。
【0004】 また、本出願は、1993年11月5日に提出され、許可を受けた米国特許出
願第08/149,097号の一部継続出願であり、1993年8月11日提出
の米国特許出願第08/105,536号の一部継続出願でもある国際公開公報
第95/04822号に相当する、1994年8月11日に提出され、今は放棄
されている米国特許出願第08/290,012号にも関連している。米国特許
出願第08/149,097号は、1990年11月8日提出の上記米国特許出
願第07/603,751号の一部継続出願である。
【0005】 また、本出願は、1990年11月8日提出の上記米国特許出願第07/60
3,751号の一部継続出願であり、かつ1990年11月30日に提出された
が、今は放棄されている米国特許出願第07/620,250号の一部継続出願
でもある、1991年8月15日提出の米国特許出願第07/745,206号
の一部継続出願である、今は放棄されている米国特許出願第07/868,35
4号の一部継続出願である、1994年4月4日に提出され、現米国特許5,7
92,846号である、許可された米国特許出願第08/223,305号、現
米国特許第5,851,824号にも関連する。また、本出願は、1992年4
月10日提出の米国特許出願第07/868,354号の一部継続出願である、
1995年5月31日に提出され、許可された米国特許出願第08/455,5
43号にも関連する。
【0006】 また、本出願は、1991年8月15日提出の許可された米国特許出願第07
/745,206号の一部継続出願である、1994年9月23日提出の米国特
許出願第08/311,363号にも関連する。
【0007】 また、本出願は、1992年8月14日に提出され、PCT国際公開公報第9
3/04083号として公開された国際PCT出願第PCT/US92/069
03号の国内段階であり、かつ1990年11月30日に提出されたが、今は放
棄されている米国特許出願第07/868,354号、第07/745,206
号、第07/603,751号、第07/176,899号、第07/620,
250号、および、1990年2月2日提出の米国特許出願第07/482,3
84号、現米国特許第5,386,025号の一部継続出願でもある、1994
年2月7日に提出され、許可された米国特許出願第08/193,078号、現
米国特許第5,846,756号にも関連する。
【0008】 また、本出願は、1990年2月2日提出の米国特許出願第07/482,3
84号、現米国特許第5,386,025号の継続出願である、1994年11
月7日に提出され、許可された米国特許出願第08/336,257号、現米国
特許第5,726,035号にも関連する。
【0009】 許される場合には、上記米国出願、特許、および国際PCT出願の各内容は、
全体として、参照してここに組み込まれる。
【0010】 技術分野 本発明は、分子生物学および薬理学に関するものである。より詳細には、本発
明は、カルシウムチャネル組成物、およびそれを作製、使用する方法に関する。
【0011】 発明の背景 カルシウムチャネルは、細胞外液から細胞内へのCa2+イオンの取り込みを
調節する、多重サブユニットの膜貫通タンパク質である。動物界の生物すべての
細胞、および、少なくとも何種類かの細菌、菌類、および植物の細胞が、1種ま
たはそれ以上のカルシウムチャネルをもっている。もっとも普通の型のカルシウ
ムチャネルは電位依存型である。中枢神経系(CNS)のニューロン、末梢神経
細胞、ならびに骨格筋、心筋、および動静平滑筋細胞などの筋細胞のような、動
物の「興奮性」細胞はすべて、電位依存型カルシウムチャネル(VGCC)をも
っている。電位依存型チャネルが、Ca2+イオンを流入させるために「開口」
するには、チャネルをもつ細胞の内部と、その細胞を取り囲んでいる外部環境と
の間の電位差を一定のレベルまで脱分極する必要がある。細胞中へのCa2+
オンの流入速度は、この電位差に依存する。
【0012】 カルシウムチャネルは、多重サブユニットタンパク質で、分子量約130から
約200キロダルトン(「」KD」)の間の、αおよびαと命名されている
2つの大サブユニット、および、分子量約60kDよりも小さな、1個から3個
のそれぞれ異なるサブユニットを含んでいる。大サブユニットの少なくとも一方
と、おそらく、いくつかの小サブユニットがグルコシル化されている。サブユニ
ットのいくつかは、リン酸化されうる。αサブユニットは、哺乳動物の筋肉組
織から単離して、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル
電気泳動(PAGE)によって分析すると、分子量約150から170kDであ
り、さまざまな1,4−ジヒドロピリジン(DHP)とフェニルアルキルアミン
に対する特異的結合部位をもっている。非還元的条件(N−エチルマレイミドの
存在下)で、αサブユニットは、SDS−PAGEで、約160から190k
Dに相当するバンドとして移動する。還元すると、大きな断片一つと小断片とが
解離する。ウサギ骨格筋のカルシウムチャネルβサブユニットは、SDS−PA
GE分析によって52−65kDの分子量をもつと決定されているリン酸化され
たタンパク質である。このサブユニットは、還元条件に対して非感受性である。
カルシウムチャネルのγサブユニットは、SDS−PAGE分析では、見かけ分
子量30−33kDの糖タンパク質と考えられている。
【0013】 カルシウムチャネルの構造と機能を調べるためには、大量の純粋なチャネルタ
ンパク質が必要である。これらの多サブユニットタンパク質は複合的な性質をも
つこと、タンパク質の供給源となる組織内でのカルシウムチャネル濃度が多様で
あること、組織内では、カルシウムチャネルは混合集団で存在すること、調べた
いと思う組織を入手するのが困難なこと、および、単離処理の過程で、自然のタ
ンパク質が修飾される可能性があることから、高度に精製された、完全に自然の
ままのカルシウムチャネルタンパク質を大量に得ることは至難の技である。
【0014】 カルシウムチャネルは、さまざまな組織に存在し、細胞内のカルシウムイオン
濃度を調節する上で中心的な役割を果たしているため、神経伝達物質の放出、筋
肉の収縮、ペースメーカー活性、ならびに、ホルモンおよびその他の物質の分泌
など、多くの生命過程に関与している。これらの過程は、中枢神経系疾患、およ
び心臓血管疾患など、人間の数多くの疾患に関係していると考えられている。す
なわち、カルシウムチャネルは、多くの疾患にも関係している。人間を含む動物
における、さまざまな心臓血管疾患を治療するのに役立つ化合物の多くは、心筋
および/または血管平滑筋に存在する電位依存型カルシウムチャネルの機能を調
節することによって、有益な効果を及ぼすものと考えられている。これらの化合
物の多くは、カルシウムチャネルに結合して、細胞膜の脱分極に対する反応とし
てCa2+イオンが細胞内に流入するのを阻止するか、流入速度を低下させる。
【0015】 ウサギカルシウムチャネルαサブユニットをコードするcDNAクローンの
組換え発現、およびこのcDNAクローンの転写産物についての実験結果は、α サブユニットが、カルシウムが細胞の中に入るときに通過するポアを形成する
ことを示している。これらの組換え細胞の中で発生するバリウムイオン流と、構
成成分の一つとして、それぞれのαサブユニットを含むカルシウムチャネルに
よって生じる実際のイオン流とのインビボでの関連性については明らかでない。
しかし、異なったカルシウムチャネル型を完全かつ正確に特徴づけて評価するた
めには、インビボで見られるサブユニットのすべてを含む組換えチャネルの機能
的性質を調べることが不可欠である。
【0016】 この試験を行なって、カルシウムチャネルの構造と機能を十分に理解するため
には、できるだけたくさんのカルシウムチャネルのサブユニットを同定し、特徴
づけることが重要である。また、カルシウムチャネルと相互作用する化合物を同
定するときに用いる組換え細胞を調製するためには、明確になったサブユニット
を含む、均一なカルシウムチャネル集団を発現する細胞を作出できることが必要
である。
【0017】 CNSなど、他の器官系のカルシウムチャネルと相互作用する化合物の薬理学
が解れば、神経変性疾患や心血管疾患の治療など、所望の治療効果を生じるよう
に、ヒトカルシウムチャネルのサブタイプと特異的に相互作用する化合物を合理
的に設計するのに役立つかもしれない。しかし、ヒトカルシウムチャネルの型、
特に、CNS中における各サブタイプの分子的性質を独立に評価するために決定
することが出来ず、また、カルシウムチャネル効果を持つ化合物の特異性を評価
するために使用できる特異的カルシウムチャネルサブタイプの純粋な調製物が得
られないため、このような理解と、治療上有効な化合物を合理的に設計する可能
性が妨げられている。このように、ヒトカルシウムチャネルのサブユニットをコ
ードするDNAを同定し、このDNAを、カルシウムチャネルサブユニットや機
能的なカルシウムチャネルを発現させるために使用することは、治療上有効な化
合物をスクリーニングしたり設計したりするのに役立つ。
【0018】 骨格筋、心筋、平滑筋、および脳など、哺乳動物のさまざまな組織から、多く
の型のカルシウムチャネルが同定されている(例えば、Bean, B.P.
(1989) Ann. Rev. Physiol. 51:367−384
、およびHess, P. (1990) Ann. Rev. Neuros
ci. 56:337を参照のこと)。さまざまな型のカルシウムチャネルは、
イオン流の速動性、保持電圧感受性、およびカルシウムチャネルアゴニストとア
ンタゴニスト感受性によって、L型、T型、N型、P型、Q型およびR型と、大
きく4つのグループに分類されている。カルシウムチャネルにおける多様性の主
要な決定因子は、ポアを形成するαサブユニットの性質である。多くのα
ブユニットをコードする核酸がクローニングされており、それらにコードされて
いるサブユニットも発現させられている。αサブユニットと、操作上定義され
たCa2+イオン流との間に相関関係があることが確認されている。6種類の遺
伝子産物であるα1A1−Eとα1Sが、L、N、P、Q、R型チャネルを含
む高電位活性型チャネルの形成に関与している。
【0019】 α1Aサブユニット、α1Bサブユニット、α1Cサブユニット、α1Dサブ
ユニット、およびα1Eサブユニットを含むヒトαサブユニットと、そのスプ
ライス変異体とをコードするDNAについては既に記載がある(例えば、米国特
許第5,429,921号、第5,846,756号、第5,851,824号
、PCT国際公開公報第US92/06903号、およびPCT国際公開公報第
US94/09230号参照)。これらのサブユニットは、高電圧カルシウム(
HVA)チャネルの形成に関与していると思われるが、これらのαサブユニッ
ト一つの他に、βサブユニットと、ジスルフィド架橋によってαに結合してお
り、同じ前駆体から生じるδを含むαサブユニットを含んでいる。各チャネル
の異なる生物物理学的および薬理学的性質は、主として、αサブユニットから
派生するが、補助サブユニット、主には、チャネルに結合しているβサブユニッ
トによる調節を受ける。βサブユニットは、ピークイオン流の振幅を増加させて
、活性化/非活性化曲線をより過分極化された電位の方向に移動させ、また、活
性化と非活性化の動力学特性を変えることが分かっている(例えば、Lambe
rtら、(1997) J. Neurosci. 17:6621−6625
参照)。αサブユニットは組織特異的であるが、いずれかのαサブユニット
によって生じたイオン流を増加させ、βサブユニットの刺激性応答を増強する。
【0020】 T型ないしLVAチャネル TチャネルまたはLVA(低電位活性化)チャネルと命名されているチャネル
については、ほとんど知られていない。低電位で活性化される(LVA)、すな
わちT型のカルシウムチャネルは、多様な細胞型で見られるとのことである。ま
た、低電位で活性化(LVA)ないしT型カルシウムチャネルは、中枢神経系お
よび末梢神経系に広く分布していて、異なる神経突起を拡張的に配列してゆくの
に関与すると考えられている。
【0021】 一般的には、T型のイオン流は、基本的には、他のCa2+イオン流と変わら
ないと考えられている。HVAチャネル同様、T型チャネルは、外部の培地に最
低限濃度の2価陽イオンが存在する限り、2価陽イオンを選択的に透過させるこ
とができる。LVA(またはT型)のイオン流について、この最低限度のCa 濃度は、約25μmであり、HVAのイオン流は、約1μmである。T型イオ
ン流は、約10mMのCa2+というK値で飽和することが報告されているが
、これは、HVAイオン流について報告されている値と同じである。しかし、こ
れらのチャネルには、一定の差違があると思われる。それらは、2価陽イオンの
透過性に関して違いがある。一般的には、HVAチャネルは、Ca2+よりもB
2+に対して透過性があるが、T型は、Ca2+よりもBa2+に対して同程
度または僅かに低い透過性をもつ。T型チャネルは、より遅い活性化/不活性化
、および非活性化の動力学特性を示すとも考えられていて、Ni2+に対して相
対的に高い感受性を示すことが報告されている。この型のチャネルは、膜の休止
電圧に近いところで活性化され、反復的な着火活性または固有のニューロン振動
の発生、およびスパイク活性を伴うCa2+流入に関与すると考えられている(
例えば、Huguenard (1996) Annual Rev. Phy
siol. 58:329−348を参照)。最近のデータによれば、今までに
同定されたβサブユニットは、T型チャネルの構成的なサブユニットではないと
示唆されている(Lambertら(1997) J. Neurosci.
17:6621−6625)。さまざまなLVAイオン流を発生させるカルシウ
ムチャネル構造は未知である。これまでにクローニングされたαサブユニット
はいずれも、低電位活性化T型(ないしLVA)チャネルがもつとされるすべて
の性質をもっていないようである。
【0022】 したがって、本明細書においては、HVA型チャネルとは異なる構造的および
機能的性質をもつ特異的カルシウムチャネルサブユニットをコードする核酸を提
供することを目的とする。また、T型チャネルによるとされる活性をもつチャネ
ルをコードする核酸を提供し、組織特異的またはサブタイプ特異的な組換えカル
シウムチャネルをもつ真核細胞を提供することも本明細書の目的である。また、
カルシウムチャネル活性の調節因子、特に、ヒトT型チャネル、およびその他の
型のチャネルの性質を示すチャネルに特異的な因子として働き、治療薬となる可
能性をもつ化合物を同定するアッセイを提供することも目的としている。
【0023】 発明の概要 カルシウムチャネルのサブユニットをコードする、単離精製された核酸断片が
提供されている。これらのサブユニットは、低電位活性化(LVA)チャネル、
特に、T型チャネルに伴う性質をもつチャネルを形成する。本明細書で提供され
るサブユニットと結果によって、LVAないしT型チャネルに相当するαサブ
ユニットファミリーが提供されている。これらのサブユニットを含むチャネルは
、低い電位差で開口することができるが、あまり長くない時間開口したままにな
るだけである。これらのチャネルは、視床、視床下部、および脳幹のニューロン
など、生理学的に重要な位置に存在しており、その結果、自律神経機能、たぶん
、心拍数、動静脈平滑筋の神経支配および緊張、肺拍数、その他重要な生理活性
などの心筋活性の調節に関係している可能性がある。
【0024】 動物のチャネルのこれらαサブユニットをコードするDNA、および、この
ようなDNAを転写して作られる、それらのサブユニットをコードするRNAが
提供されている。特に、カルシウムチャネル、特に、動物のカルシウムチャネル
、より詳しくは、哺乳動物のカルシウムチャネルのT型カルシウムチャネルで、
α1Hサブユニットと命名されているサブユニット(優先権書類である米国特許
出願第08/984,709号では、αFサブユニットと命名)をコードする
核酸が提供されている。
【0025】 本明細書で特に関心をもっているのは、カルシウムチャネル、特に、哺乳動物
カルシウムチャネルのα1Hサブユニットをコードする核酸である。例示的なα 1H サブユニットをコードする核酸が提供されている。ヒトカルシウムチャネル
の、α1H−1サブユニット、α1H−2サブユニットという名の2種類のスプ
ライス変異体をコードする核酸が提供されている。例示したサブユニットの核酸
配列と、そのコードするアミノ酸配列を、配列番号12(α1H−1)、15(
α1H−1)および16(α1H−2)に示した。配列番号12と15は、22
30番目のアミノ酸(6983−6985番目の塩基)が、配列番号15ではA
sp(GAC)であるのに、配列番号12ではGlu(GAA)であるところが
異なるだけである。
【0026】 この核酸を用いて、α1H−1サブユニットをコードする核酸の別のスプライ
ス変異体、対立遺伝子変異体、および、別の動物、特に、哺乳動物由来のα1H −1 サブユニットなどの変異体を単離することができる。このような核酸には、
配列番号12および15に示されているDNAによってコードされているアミノ
酸配列と実質的に同一の配列をもつα1H−1サブユニットをコードするDNA
などがある。この核酸を用いて、別の生物種、特に別の動物に由来するα1H− サブユニットをコードするDNAを単離することができる。
【0027】 α1H−2と名付けられた別のスプライス変異体をコードする核酸も提供され
ている。この変異体の核酸配列は、957ヌクレオチドの欠失を有し、そのため
に319アミノ酸(α1H−1の470−788番目のアミノ酸に対応)の欠損
を有する点で、α1H−1と異なっている。
【0028】 配列番号12または15の1506番目から2627番目のヌクレオチドを含
む核酸によってコードされるサブユニット、または、この領域から作製したプロ
ーブに、好ましくは、高いストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する核
酸によってコードされるサブユニットで、本明細書の方法を用いて同定すること
のできるT−チャネルをコードするサブユニットも含まれる。
【0029】 α1H−1サブユニットは、多くの側面で、α1A−α1Eカルシウムチャネ
ルとは異なる。まず、膜通過ドメインIとIIの間に位置する細胞内ループは、
HVAカルシウムチャネルよりもかなり長い。例えば、配列番号12および15
に例示され、後述されているように、ドメインIとIIの間の細胞内ループは、
1,100ヌクレオチドよりも長い(1,122ヌクレオチド)が、HVAカル
シウムチャネルにおける相当領域は、351から381ヌクレオチド長の範囲に
ある。すなわち、α1Hの細胞内ループは、HVAカルシウムチャネルのα
ブユニットには見られない、約370個の余分なアミノ酸残基(配列番号12の
420番目から794番目のアミノ酸)をもっている。なお、このループ領域を
コードするアミノ酸配列は、非常にプロリンに富み、ヒスチジン残基が9個連続
したポリHIS領域を含んでいる。
【0030】 α1Hサブユニットのその他の顕著な特徴には、膜通過ドメインIとIIの間
にある細胞内ループ中に、αサブユニットとβサブユニットの間の相互作用に
とって重要なアミノ酸残基(例えば、De Waardら、(1996) FE
BS Letters 380:272−276; Pragnellら、(1
994) Nature 368:67−70参照)がないことが含まれる。ま
た、α1H−1サブユニットは、ドメインIのIS5とIS6の間に、顕著に大
きな細胞外ループを含んでいる。本明細書において提供されているHVAα
ルシウムチャネルサブユニットは、このループの中に249−270ヌクレオチ
ド残基を含んでいる。これに対して、ヒトα1Hサブユニットは、このループの
中に426ヌクレオチド残基を含んでいる。膜通過ドメインIIIとIVの間の
細胞内ループも、HVAαサブユニットよりも僅かに大きい(159−165
ヌクレオチドに対して186ヌクレオチド)。
【0031】 少なくとも約14個、好ましくは16個、あるいは所望する場合には20又は
30個又はそれ以上の、α1Hをコードする核酸の隣接したヌクレオチドを含む
、検出用に標識することができる核酸プローブを提供する。また、組織内のスプ
ライシング変異体及び組織間変異体を含めて、カルシウムチャネルサブユニット
をコードするDNAの単離とクローニングのためにプローブを使用する方法も提
供する。ヒトα1HサブユニットをコードするDNAの単離用プローブを構築す
るための特に好ましい領域は、膜内外ドメインIとIIの間に位置する、著しく
長い細胞内ループをコードする核酸配列(例えば、配列番号12及び15のnt
1506からnt 2627)を含む。ヒトα1Hサブユニットをコードする
DNAを単離するためのプローブは、好ましくは14又は16個の長さの隣接ヌ
クレオチドである。時には30又は50ヌクレオチドのプローブを使用し、また
50から100ヌクレオチドのプローブを使用する場合もある。
【0032】 1又はそれ以上のカルシウムチャネルサブユニット、特にヒトカルシウムチャ
ネルサブユニットをコードする異種DNAを含む真核細胞、あるいは1又はそれ
以上の当該サブユニットをコードするDNAクローンのRNA転写産物を含む真
核細胞を提供する。1個のα1Hサブユニットが1つのチャネルを形成しうる。
しかし、選択した細胞において活性なチャネルを形成するために必要なサブユニ
ットの組合せは、本文中の方法を用いて経験的に決定することができる。例えば
、選択したαサブタイプ又は変異体が選択した細胞系で活性チャネルを形成し
ない場合には、活性チャネルが形成されるまで単数又は複数の追加サブユニット
を付加することができる。そのような付加の影響を評価するために他のサブユニ
ットを加えることもできる。
【0033】 好ましい実施態様では、細胞は、動物、好ましくは哺乳類のカルシウムチャネ
ルのαサブユニット、好ましくはα1HサブユニットをコードするDNAある
いはRNAを含む。細胞がα1Hをコードする核酸を含む実施態様がここでは特
に興味深い。他の実施態様では、細胞は、αδを含めた追加異種サブユニット
をコードするDNAあるいはRNAを含む。細胞はまた、βサブユニット及び/
あるいはγサブユニットをコードする核酸も含みうる。そのような実施態様にお
いては、α、α+β、α+β+αのいずれかをコードするDNAのよう
な、サブユニットをコードするDNAクローンの1、2、3、又は4個の組合せ
を安定にあるいは一過性に移入した真核細胞を提供する。本文中で提供する真核
細胞は、αサブユニット及び任意に異種αサブユニット及び/あるいはβサ
ブユニット及び/あるいはγサブユニットをコードする異種核酸を含む。
【0034】 好ましい実施態様では、細胞はそのような異種カルシウムチャネルサブユニッ
トを発現し、膜を貫通して存在する異種カルシウムチャネル中に1又はそれ以上
のサブユニットを含む。より好ましい実施態様では、真核細胞は、生理的濃度で
異種カルシウムチャネルの活性を変化させるカルシウムチャネル選択性イオン及
び/あるいは結合化合物の通過を制御することができる、機能性の異種カルシウ
ムチャネルを発現する。一部の実施態様では、異種カルシウムチャネルは少なく
とも1個の異種カルシウムチャネルサブユニットを含む。最も好ましい実施態様
では、真核細胞の表面で発現されるカルシウムチャネルは、実質的にあるいは全
面的に、異種DNAあるいはRNAによってコードされるサブユニットで構成さ
れる。好ましい実施態様では、そのような細胞の異種カルシウムチャネルは、宿
主細胞の内因性カルシウムチャネルとは識別されうる。そのような細胞は、相同
なカルシウムチャネル群を得るための手段を提供する。典型的には、細胞は、選
択したカルシウムチャネルをその細胞によって発現される唯一の異種イオンチャ
ネルとして含む。
【0035】 一部の実施態様では、カルシウムチャネルサブユニットをコードする異種DN
Aを含む組換え真核細胞は、1又はそれ以上のサブユニットをコードするDNA
でトランスフェクションすることによって作製するか、あるいは1又はそれ以上
のカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAのRNA転写産物を注入
する。DNAは、線形DNA断片として導入するか、あるいはサブユニットをコ
ードするDNAの安定又は一過性発現のための発現ベクターに含めることができ
る。ヒトカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを含むベクターも
提供する。
【0036】 異種カルシウムチャネルを発現する真核細胞は、カルシウムチャネルの機能に
関するアッセイにおいて使用でき、あるいは機能性組換えヒトカルシウムチャネ
ルを構築するために必要とされるよりも少ないサブユニットコード核酸で形質転
換した細胞の場合には、そのような細胞を使用してカルシウムチャネル活性への
追加サブユニットの影響を評価することができる。その後、ヒトカルシウムチャ
ネルサブユニットをコードする1又はそれ以上のDNAクローンあるいはRNA
転写産物でそのような細胞をトランスフェクトすることによって追加サブユニッ
トが提供できる。
【0037】 膜を貫通する異種カルシウムチャネルを発現する組換え真核細胞は、カルシウ
ムチャネル活性を調節する化合物を同定するための方法において使用しうる。特
に、当該細胞は、ヒトにおけるカルシウムチャネル活性の作用物質と拮抗物質を
同定するアッセイにおいて、及び/あるいはカルシウムイオンの輸送及び輸送調
節への種々のカルシウムチャネルサブユニットの関与を評価するアッセイにおい
て使用される。細胞は均質なカルシウムチャネル群を構成するので、そのような
各々の群に特異的な、カルシウムチャネル活性の作用物質又は拮抗物質を同定す
るための手段を提供する。
【0038】 本文中で提供する細胞は、T型チャネルの機能と組織分布を評価し、T型チャ
ネルの活性を調節する化合物を同定するために使用しうる。T型チャネルは視床
、視床下部及び脳幹のニューロンで作動し、心拍数、動脈及び静脈平滑筋の神経
支配と緊張、肺動脈拍及び他の基本的プロセスのような心筋活性の調節において
自律神経機能に関与すると考えられるので、そのような活性を評価するためにデ
ザインされたアッセイ及びこれらの活性の調節因子を同定するためのアッセイは
、基本的な生理的プロセスを理解するための手段、そしてまた障害を矯正するた
めの新規薬剤候補物質を同定するための手段も提供する。
【0039】 カルシウムチャネル活性を調節する化合物を同定するために真核細胞を使用す
るアッセイも提供する。これらのアッセイを実施する際には、本文中で提供する
DNAによってコードされる少なくとも1個のサブユニットを含む、異種カルシ
ウムチャネルを発現する真核細胞を、試験化合物とカルシウムチャネル選択性イ
オンを含む溶液に入れ、細胞膜を脱分極し、細胞に流れ込むイオン流を検出する
。試験化合物がカルシウムチャネル活性を調節するものであれば、検出されるイ
オン流は、同じカルシウムチャネル選択性イオンは存在するが化合物の不在下で
、同じ又は実質的に同じ細胞を脱分極することによって生じるものとは異なる。
好ましい実施態様では、脱分極段階の前に、細胞の内因性カルシウムチャネルを
実質的に不活性化する保持電位に細胞を維持する。また好ましい実施態様では、
細胞は哺乳類細胞、最も好ましくはHEK細胞あるいは両生類卵母細胞である。
【0040】 TチャネルあるいはLVAチャネルを発現する細胞は、これらのチャネルの活
性の調節因子、特に拮抗物質としての活性を持つ化合物をスクリーニングするア
ッセイにおいて使用しうる。
【0041】 カルシウムチャネル、特にα1Hサブユニットを含むカルシウムチャネルの活
性を調節する化合物(米国特許第5,436,128号及び同第5,401,6
29号参照)を同定するための転写ベースのアッセイを提供する。これらのアッ
セイは、カルシウムチャネル、特にα1Hサブユニットを含むカルシウムチャネ
ル、より好ましくは異種DNAによってコードされるα1Hサブユニットを含む
カルシウムチャネルを発現し、同時にカルシウムチャネルによって調節される1
又はそれ以上の転写制御要素と機能的に結合したリポーター遺伝子を含むリポー
ター遺伝子構築物をコードする核酸を含む細胞を使用する。アッセイは、化合物
が存在するときの本文中で提供する細胞におけるリポーター遺伝子の転写量と化
合物の不在下での転写量の差を比較することによって実施し、それにより、細胞
において異種カルシウムチャネルの活性を調節する化合物を同定する。リポータ
ー遺伝子は、細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコード
する遺伝子、ホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子、細菌ルシフェラーゼを
コードする遺伝子、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子あるいはアルカリ
ホスファターゼをコードする遺伝子を含むがこれらに限定されない当業者に既知
の遺伝子であり、転写制御要素は、血清応答要素、環状アデノシン一リン酸応答
要素、c−fos遺伝子プロモーター、血管作用性小腸ペプチド遺伝子プロモー
ター、ソマトスタチン遺伝子プロモーター、プロエンケファリンプロモーター、
ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ遺伝子プロモーターあるいは神経
成長因子−1 A遺伝子プロモーター、ならびに細胞内カルシウムイオンレベル
に応答する要素を含むがこれらに限定されない当業者に既知の要素である。
【0042】 試験化合物に対する受容体活性を測定するその他のアッセイも、本文中で提供
する細胞に関して実施しうる(例えば、米国特許第5,670,113号参照)
【0043】 T型チャネルは様々な鍵となる機能に関連すると思われるので、Tチャネルを
発現する細胞及びそのような細胞を用いるアッセイ、様々な障害、疾患及び状態
の治療のための化合物を同定する上で有用であろう。同定された化合物は、Tチ
ャネル活性に関連した疾患及び状態の治療において使用するための候補物質とな
る。そのような活性は、収縮期高血圧において動脈のコンプライアンスを改善す
るため、あるいは末梢循環障害その他において血管のウエリング(wellin
g)を低下させることなどによって血管緊張を改善するための、筋の興奮性、分
泌及びペースメーカー作用、Ca2+依存性バースト発射、ニューロンの振動、
及びシナプスシグナルの増強作用における役割に関与するもの含むがこれらに限
定されない。その他の疾患は、高血圧、次のものを含むがそれらに限定されない
心臓血管障害:心筋梗塞、不整脈、心不全及び狭心症、精神分裂病、てんかん及
びうつ病などの神経障害、末梢筋障害、呼吸障害、ならびに内分泌障害を含むが
これらに限定されない。
【0044】 特に、α1HサブユニットのようなLVAチャネルを発現する細胞は、心房ペ
ースメーカー細胞、プルキンエ線維、そして冠状動脈平滑筋のような伝導組織に
関連する疾患の治療のための候補物質となる化合物を同定する上で有用である。
そのような化合物は、狭心症のような心臓血管治療、高血圧のような血管治療、
ならびに外傷や心臓発作、その他の心臓損傷後に正常な心拍数と心拍出量を再建
するための泌尿器、肝、生殖器の補助療法、心筋梗塞(MI)後及び急性期にお
けるMIの治療のために有用な化合物を含むがこれらに限定されない。LVA、
特にT型カルシウムチャネルと相互作用する他の化合物は、血圧あるいは心拍数
を変化させずに、左心室拡張終期血圧によって測定されるような心収縮力を高め
るのに有効であると考えられる。急性期には他の化合物は、心臓抑制作用を伴わ
ずに、コラーゲンの沈着あるいは中隔の肥厚によって測定されるような瘢痕組織
の形成を低下させるために有効であると考えられる。アッセイは、(a)例えば
外傷、手術又は心肺バイパス後に血圧制御を再建するための治療及び麻酔薬の心
臓血管作用を最小限に抑えるためにデザインされた予防的治療;(b)自律神経
系による血管反射と血圧制御を改善するための治療において、血管平滑筋の緊張
を調節する上で、すなわち血管拡張あるいは血管収縮において有用な化合物を同
定し、また(a)手術、外傷、尿毒症及び薬剤副作用に続く腎不全の治療と回復
;(b)膀胱機能不全の治療;及び(c)尿毒症性神経毒性及び血液透析下の患
者における低血圧の治療のような泌尿器障害の治療のために有用な化合物を同定
し、さらに(a)不能症を含めた性機能障害;(b)アルコール性不能症(Tチ
ャネル制御に従うと考えられる自律神経制御下の)のような生殖器障害を治療す
る上で有用な化合物を同定し、アルコールの急激な過剰消費から生じる神経毒性
と自律神経系損傷のような肝障害を治療し、軽減する上で有用な化合物を同定し
、(a)てんかん及び間脳性てんかん;(b)パーキンソン病;(c)振せんや
発汗分泌及び末梢血供給の異常のような温度制御異常;(d)ノルアデナリン、
ドーパミンその他のホルモンの分泌異常を含めた下垂体及び視床下部機能の異常
のような神経障害を治療する上で有用な化合物を同定し、また例えば麻酔の術後
合併症のような呼吸器異常の治療のような呼吸器障害を治療する上で有用な化合
物を同定し、さらに例えばインスリン、サイロキシン、アドレナリンの過剰産生
や他のホルモン平衡失調のための可能な治療を含めて、ホルモンの分泌異常のよ
うな内分泌障害を治療する上で有用な化合物を同定する。
【0045】 精製ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニット及びかかるサブユニットを含
む精製ヒトカルシウムチャネルを提供する。サブユニットとチャネルは、当該サ
ブユニットをコードする核酸でトランスフェクトした真核細胞から単離すること
ができる。
【0046】 もうひとつの実施態様では、ヒトカルシウムチャネル、ヒトカルシウムチャネ
ルサブユニットあるいはヒトカルシウムサブユニットのエピトープを含む断片の
実質的に純粋な製剤で免疫した動物の血清から得られる免疫グロブリンあるいは
抗体を提供する。ヒトカルシウムチャネル、ヒトカルシウムチャネルサブユニッ
トあるいはそのエピトープを含む断片を免疫原として用いて生成されるモノクロ
ーナル抗体を提供する。ヒトカルシウムチャネルサブユニットの断片を含む大腸
菌融合タンパク質も免疫原として使用しうる。そのような融合タンパク質は、カ
ルシウムチャネルサブユニットペプチドに融合した、大腸菌TrpEタンパク質
のような細菌タンパク質又はその一部を含みうる。カルシウムチャネルサブユニ
ットあるいは精製カルシウムチャネルを免疫原として用いて生成される免疫グロ
ブリンは、種々の特性の中でも特に、生物サンプルあるいはかかる生物サンプル
から誘導される溶液中に存在しうるヒトカルシウムチャネルあるいはそのサブユ
ニットに特異的且つ選択的に結合し、及び/あるいは免疫沈降を生じさせる能力
を持つ。そのような抗体はまた、当該抗体がそれに対して特異的であるサブユニ
ットを含むカルシウムチャネルを発現する細胞を選択的に単離するためにも使用
しうる。
【0047】 カルシウムチャネルを上述した抗体の有効量に接触させることによってイオン
チャネルの活性を変調させる方法も提供する。
【0048】 そして、LVAカルシウムチャネル、特にT型チャネルの活性を変化させる化
合物を同定するためのアッセイ、ならびに当該方法によって同定される化合物を
提供する。
【0049】 LVAカルシウムチャネルが媒介する、特にT型チャネルが媒介する疾患を診
断するための方法も提供する。診断方法は、正常なあるいは野生型チャネルと比
較して、アミノ酸配列の変化、薬理学的プロフィールの変化及び電気生理学的プ
ロフィールの変化のようなチャネル発現の異常あるいは機能の異常を検出するこ
とを含む。そのような方法は、典型的には変化したチャネルあるいは核酸プロー
ブに特異的な抗体を使用して、変化した遺伝子又は転写産物を検出することがで
きる。
【0050】 発明の詳細な説明 定義: 特に異なる定義が為されていない限り、本文中で使用するすべての技術・学術
用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと
同じ意味を持つ。本文中で引用するすべての特許及び公表文献は参照してここに
組み込まれる。
【0051】 各々のカルシウムチャネルサブユニットについての言及は、本文中で特定して
開示されるサブユニット、ならびにプローブとして開示される核酸を使用して、
少なくとも低ストリンジェンシー下で、好ましくは高ストリンジェンシー下で適
当なヒトcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって単
離しうる核酸によってコードされるヒトカルシウムチャネルサブユニットを含む
。そのようなDNAはまた、ギャップを考慮に入れて本文中で述べるサブユニッ
トタンパク質のいずれかと約40%の相同性、典型的には少なくとも約90%の
配列同一性を持つタンパク質をコードするDNA、あるいは少なくとも低ストリ
ンジェンシー条件下で本文中で提供するDNAにハイブリッド形成するDNA又
はRNAを含み、かかるDNAによってコードされるタンパク質は、機能あるい
は分子量のような付加的な同定特性を示す。特に、α1Hサブユニットについて
の言及は、本文中でプローブとして開示する核酸を使用して、所望するソースか
らの核酸ライブラリーから単離することができるサブユニットをさす。コードさ
れるサブユニットは、膜内外ドメインIとIIの間の著しく長い細胞内ループの
存在、及び/あるいはT型又はLVA型チャネルに帰せられる特性を特徴とする
【0052】 開示されているサブユニットあるいは他のそのようなサブユニットのスプライ
シング変異体である転写産物によってコードされるサブユニットは、いずれかひ
とつのサブユニットと40%未満の全体的相同性を示すが、1又はそれ以上のか
かるサブユニットとそのような相同性を持つ領域を含むことは明白である。また
、40%の相同性とは、アミノ酸の約40%を共有するか、若しくはそれよりい
くぶん低いが、それによってタンパク質の活性が実質的に変化しない保存的アミ
ノ酸置換を含むタンパク質をさすことは明白である。
【0053】 当該サブユニット及びそのようなサブユニットをコードするDNA断片は、本
文中で提供されるか若しくは当業者に既知であり(公開国際PCT特許願第WO
89/09834号、同第95/04822号、米国特許第5,792,846
号、同第5,726,035号、同第5,407,820号、同第5,686,
241号、同第5,618,720号、同第5,710,250号、同第5,4
29,9215号、同第,429,921号及び同第5,386,025号参照
)、ヒトカルシウムチャネルのα、α、βあるいはγサブユニットを含む。
【0054】 LVAサブユニット、特にヒト及び他の動物のカルシウムチャネルのα1H
ブユニットをコードする核酸を本文中で提供する。特に、そのようなDNA断片
は、(1)当該サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含み、(2)次の
中から選択される、ヒトカルシウムチャネルのサブユニットをコードする単離D
NA断片を含む: (a)ヒトカルシウムα1Hチャネルサブユニットをコードし、かかるサブユ
ニットをコードする本文中の配列表のいずれか(すなわち配列番号12、15及
び16)に示されているヌクレオチドの配列を含む、ヌクレオチドの配列; (b)当該サブユニットをコードし、LVAサブユニット、特にα1Hサブユ
ニットをコードする、ヒト細胞中に存在するmRNA転写産物に相補的なDNA
に高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する、ヌクレオチドの配列; (c)配列番号12から16のいずれかによってコードされるアミノ酸の配列
を含むサブユニットをコードする、ヌクレオチドの配列;ならびに (d)当該サブユニットをコードするヌクレオチドの配列によってコードされ
るアミノ酸の配列を含み、配列番号12−16のいずれかに示されているヌクレ
オチドの配列を含むサブユニットをコードする、ヒト細胞中に存在するmRNA
転写産物に相補的なDNAに高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成す
る、ヌクレオチドの配列。
【0055】 本文中で使用するとき、種々の遺伝子によってコードされるαサブユニット
型は、α1A、α1B、α1C、α1D、α1E及びα1H型とも称される。こ
れらの型はまた、α1BについてはVDCC IV、α1CについてはVDCC
II及びα1DについてはVDCC IIIとも称されてきた。スプライシン
グ変異体であるサブユニットサブタイプは、例えばα1H−1、α1H−2、α 1B−1 、α1B−2、α1C−1等々と称される。
【0056】 従って、本文中で使用するとき、αサブユニットをコードする核酸(DNA
又はRNA)は、少なくとも低ストリンジェンシー条件下、典型的には高ストリ
ンジェンシー条件下で本文中で提供するDNAにハイブリッド形成する核酸、あ
るいはヒトカルシウムチャネルの特定αサブユニットをコードする、本文中で
開示するDNAによってコードされるタンパク質と少なくとも40%の相同性を
持つサブユニットをコードする核酸をさす。LVAチャネルの場合には、核酸は
、少なくとも低ストリンジェンシー条件下、典型的には高ストリンジェンシー条
件下でα1Hサブユニットをコードする核酸にハイブリッド形成するサブユニッ
トをコードし、また本文中で述べるもののような、当該活性に関するアッセイに
おいて必要なLVA特性を持つサブユニットをコードする。スプライシング変異
体は様々なパーセンテージの全体的相同性(又は同一性)を有するが、同じ遺伝
子から誘導され、100%同一性の領域を含む。
【0057】 特に、αサブユニットのいずれか(あるいは本文中で特に開示するサブユニ
ットのいずれか)のスプライシング変異体は、相違する領域(少なくとも1個の
エクソン)と、本文中で提供するαサブユニットサブタイプの1又はそれ以上
と100%の相同性を持つ1又はそれ以上の領域(少なくとも1個のエクソン、
典型的には約16以上のヌクレオチド、また一般には実質的にそれ以上)を含み
、さらにまた、異なるエクソンから誘導されるので、実質的により低い相同性を
持つ領域も含む。エクソン及びスプライシング変異体を同定することは十分に当
該技術の範囲内である。それ故、例えばα1Hサブユニットは、本文中で開示す
るα1Hサブユニットの1個と少なくとも約40%のタンパク質相同性を共有す
るので、容易に同定可能であり、100%相同な少なくとも1つの領域(1個の
エクソン)を含む。それはまた、以下で論じるように、LVAαサブユニット
であることを示す活性も有している。
【0058】 本文中では、同一性及び相同性は、タンパク質を比較するときには共有される
アミノ酸のパーセンテージをさし、核酸を比較するときには共有されるヌクレオ
チドのパーセンテージをさすことに留意しなければならない。同一性を決定する
ための数多くのコンピュータプログラムが入手可能である。いずれの場合も、意
図するギャップペナルティーやその他のパラメータは、製造者によって定められ
たデフォルトである。配列間に高度の(90%以上)同一性があるときには実際
上必要ないが、そのようなプログラムは、配列同一性のパーセンテージを決定す
るためのDNAStar“MegAlign”プログラム(Madison,W
I)及びUniversity of Wisconsin Genetics
Computer Group(UWG)“Gap”プログラム(Madis
on,WI)などの市販の配列アラインメントプログラムを含むがこれらに限定
されない(von Heijne、「分子生物学における配列分析:平凡な研究
の貴重な発見物」Academic Press(1987)付録2(7つの市
販のソフトウエアプログラムの中でUWGとDNAStarを引用している))
【0059】 αサブユニットは、カルシウムチャネルを形成する能力によって同定しうる
。典型的には、αサブユニットは少なくとも約120kD以上の分子量を持つ
。また、推定αサブユニットアミノ酸配列のヒドロパシー(hydropat
hy)プロットは、αサブユニットが4個の内部リピートを含み、各々が6個
の膜内外ドメインを含むことを示唆している。α1Hサブユニットは、そのポア
形成能力と生じるチャネルの低電圧活性化によって同定される。
【0060】 カルシウムチャネルの活性は、電気生理学的方法や本文中で述べる他の方法を
含めて、当業者に既知の方法によってインビトロで評価することができる。典型
的には、αサブユニットは、1,4−DHPあるいはω−CgTxのようなカ
ルシウムチャネル活性の1又はそれ以上の調節因子と直接又は間接的に相互作用
する領域を含む。αサブユニットの型は、結合特異性に基づくものを含めて、
当業者に既知の方法によって識別しうる。例えば、α1Bサブユニットはこれま
でN型チャネルと称されてきたチャネルの形成に関与し、α1Dサブユニットは
これまでL型チャネルと称されてきたチャネルの形成に関与すること、α1A
ブユニットは、これまでP型チャネル称されてきたチャネルの典型的な特徴を示
すチャネルの形成に関与すると思われ、α1HサブユニットはT型チャネルに関
連した活性を示すチャネルに関与すると思われることが認められた。従って、例
えばα1Bサブユニットを含むチャネルの活性は1,4−DHPに対して感受性
がないが、α1Dサブユニットを含むチャネルの活性は1,4−DHPによって
調節される又は変化する。現在のところ、薬理学的特徴とイオン流動態に基づい
てカルシウムチャネルに言及し、歴史的な名称は避けることが好ましい。α
ブユニットのタイプ及びサブタイプは、そのような調節因子の当該サブユニット
又は当該サブユニットを含むチャネルへの作用、ならびに当該サブユニットを含
むカルシウムチャネルによって生じるイオン流の差及びイオン流動態によって特
徴づけられる。α1Hサブユニットはさらに、膜内外ドメインIとIIの間(例
えば配列番号12のnt 1506からnt 2627)のような著しく長い細
胞内ループ領域の存在によって同定されうる。
【0061】 特に、本文中で使用するとき、α1Hサブユニットをコードする核酸は、配列
番号12、15及び16として本文中で開示する核酸に高ストリンジェンシー条
件下でハイブリッド形成し、LVAあるいはTチャネルの電気生理学的及び/あ
るいは薬理学的特性を示す、HEK細胞のような哺乳類細胞においてチャネルを
形成する。電気生理学的特性は、次の電気生理学的特性の1又はそれ以上を含む
:約5pS(ピコ秒)から約9pSのBa2+の相対コンダクタンス、約2から
約8ミリ秒の活性化時間、約−60ミリボルトから約26ミリボルトの活性化V 1/2 値の動力学値、約10から約30ミリ秒の不活性化時間、約−100ミリ
ボルトから約−500ミリボルトの不活性化V1/2値の動力学値、及び約2か
ら約12ミリ秒のテール非活性化時間。
【0062】 さらに、生じるチャネルは、HVAカルシウムチャネルと比較して、mibe
fradil、(1S,2S)−2−[2−[[3−(1H−ベンズイミダゾー
ル−2−イル)プロピル]メチル−アミノ]エチル]−6−フルオロ−1−イソ
プロピル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イルメトキシアセテ
ート(Hoffman−LaRoche,Inc.)に対する比較的高い度合の
感受性、及び/あるいはConusマキガイ毒素GVIA及びMVIICならび
にクモ毒素AgaIIIA及びAgalVAに対する比較的高い度合の抵抗性の
ような薬理学的特性を持つと考えられる。
【0063】 本文中で使用するとき、αサブユニットは、哺乳類カルシウムチャネルのα サブユニットをコードする、あるいは低ストリンジェンシー条件下、好ましく
は高ストリンジェンシー条件下でDNAにハイブリッド形成する、あるいはギャ
ップを考慮に入れて、開示されているものと少なくとも約40%の相同性、典型
的には少なくとも約90%の同一性を持つタンパク質をコードする、例えば米国
特許第5,407,820号、同第5,792,846号及び国際PCT特許願
第WO95/04822号に開示されている核酸(DNA又はRNA)によって
コードされる。そのようなDNAは、典型的には約120kDより大きい分子量
を持つが、αサブユニットが存在しなければカルシウムチャネルを形成せず、
αサブユニットを含むカルシウムチャネルの活性を変化させうるタンパク質を
コードする。スプライシング変異体として生じるαサブユニットのサブタイプ
は、α2a、…α2eのように小文字で表される。さらに、αサブユニット及
びタンパク質を還元条件に供するときに生じる大きな断片は、少なくともN結合
糖類でグリコシル化されると思われ、αサブユニットに特異的に結合する1,
4−DHPやフェニルアルキルアミンとは特異結合しない。より小さな断片であ
るC末端断片はδサブユニットと称され、約946から(国際PCT特許願第W
O95/04822号においてナンバリングされているような、例えばその中の
配列番号11)ほぼC末端までのアミノ酸を含む。この断片は、αサブユニッ
トを還元条件に接触させたときαの残りの部分から解離しうる。本文中での目
的のために、αはαδとも称する。従ってαδについての言及は、C末端
δ部分を含む、αサブユニットを意味する。
【0064】 本文中で使用するとき、βサブユニットは、例えば米国特許第5,407,8
20号、同第5,792,846号及び国際PCT特許願第WO95/0482
2号に開示されている、あるいはその中で提供されるDNAに低ストリンジェン
シー条件下、好ましくは高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する、
あるいはその中で開示されているものと少なくとも約40%の相同性、典型的に
は少なくとも約90%の相同性を有しており、典型的にはαサブユニットよりも
小さい、約50−80kDの分子量を持ち、αサブユニットが存在しなければ
検出可能なカルシウムチャネルを形成しないが、αサブユニットを含むカルシ
ウムチャネルあるいはαとαサブユニットを含むカルシウムチャネルの活性
を変化させうるタンパク質をコードするDNAによってコードされる。
【0065】 種々の遺伝子によってコードされるβサブユニットの型は、β、β、β 及びβのように下付き文字で表される。特定の型のスプライシング変異体とし
て生じるβサブユニットのサブタイプは、型と変異体を表す下付き数字で表され
る。そのようなサブタイプは、β1−1−β1−5を含むβスプライシング変
異体及びβ2C−β2Eを含むβ変異体を含むがこれらに限定されない。
【0066】 本文中で使用するとき、γサブユニットは、例えば米国特許第5,726,0
35号及び同第5,386,025号に開示されており(Jayら(1990)
Science 248:490−492及びLettら(1988)Nat
ure Genetics 19:340−347も参照のこと)、その中で開
示されている核酸をプローブとして用いてハイブリダイゼーションあるいは当業
者に既知の他の方法によって単離・同定でき、それによってγサブユニットをコ
ードする完全長のクローンが単離又は構築できるDNAによってコードされるカ
ルシウムチャネルのサブユニットである。γサブユニットは上記の中で提供され
るDNAに低ストリンジェンシー条件下、好ましくは高ストリンジェンシー条件
下でハイブリッド形成し、本文中で述べるγサブユニットと少なくとも約40%
の相同性を持つタンパク質をコードするのに十分な配列相同性を示す核酸によっ
てコードされる。
【0067】 それ故、本文中の開示に照らして当業者は、種々の遺伝子によってコードされ
るタイプ及びスプライシング変異体を表すサブタイプを含めて、α、α、β
、δ及びγカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを同定すること
ができる。例えば、本文中で開示するDNAに基づくDNA又はRNAプローブ
を使用して、当該プローブへのハイブリダイゼーションに関してゲノム又はcD
NAライブラリーを含めた適切なライブラリーをスクリーニングし、タンパク質
全体をコードするオープンリーディングフレームを含む1又はそれ以上のクロー
ン中のDNAを得ることができる。本文中で開示するDNAで適切なライブラリ
ーをスクリーニングしたあと、コードされているタンパク質の配列が推定できる
オープンリーディングフレームが存在するかどうかについて、単離したDNAを
検討することができる。分子量の決定及び本文中の配列との比較により、当該サ
ブユニットの同一性がα、α等のサブユニットとして明らかにされるはずで
ある。必要に応じて、機能性アッセイを使用して、当該サブユニットがα、α サブユニットあるいはβサブユニットであるかどうかを調べることができる。
【0068】 例えば、αAサブユニットをコードするDNAは、ヒトαAサブユニット
の全部又は一部をコードするDNAで適切なライブラリーをスクリーニングする
ことによって単離しうる。そのようなDNAは、αサブユニットの一部をコー
ドする、ATCCアクセス番号75293として登録されているファージ中のD
NAを含む。αAサブユニットをコードするDNAは、α1Aサブユニットの
配列の全部又は一部を有するオリゴヌクレオチドでスクリーニングすることによ
り、適切なライブラリーから入手しうる(例えば公開国際PCT特許願第WO9
5/04822号、特に配列番号21、22及び/あるいは23、あるいはその
中の登録ファージ中のDNA参照)。その代わりに、そのようなDNAは、α サブユニットをコードするコード配列を持つこともできる。本文中で例示する
方法を含めて、DNAの単離と同定及び完全長のゲノム又はcDNAクローンの
作製のための当業者に既知のいずれの方法も使用しうる。
【0069】 α1HをコードするDNAは、ヒト髄質甲状腺癌細胞系(TT細胞)あるいは
他の適当なヒトcDNAライブラリーを、本文中で提供する核酸から作製したD
NAプローブでスクリーニングすることによって単離できる。本文中で説明し、
例示するように完全長のクローンを構築し、発現して、生じたチャネルを試験し
てコード核酸がLVAチャネルをコードしていることを確認する。
【0070】 単離DNAによってコードされるサブユニットは、本文中で提供するDNA及
びサブユニットのアミノ酸配列と比較することによって同定しうる。スプライシ
ング変異体は広汎な相同領域を共有するが、非相同領域を含み、種々の遺伝子に
よってコードされるサブユニットは、非相同配列の均一な分布を共有する。
【0071】 本文中で使用するとき、スプライシング変異体は、1以上の型のmRNAをも
たらすゲノムDNAの転写一次産物のディファレンシャルプロセッシングによっ
て生じる変異体をさす。スプライシング変異体は、単一組織型内であるいは組織
の中で(組織特異的変異体)起こりうる。それ故、同一アミノ酸の領域と異なる
アミノ酸配列の領域を有するカルシウムチャネルサブユニットサブタイプをコー
ドするcDNAクローンを、本文中で「スプライシング変異体」と称する。
【0072】 本文中で使用するとき、「カルシウムチャネル選択性イオン」は、Ca2+
流れを実質的に同じように許容する又は遮断する条件下で、細胞膜を貫通して存
在するカルシウムチャネルを通過して流れることができる又は流れることを遮断
されうるイオンである。Ba2+はカルシウムチャネル選択性イオンの一例であ
る。
【0073】 本文中で使用するとき、カルシウムチャネル活性を調節する化合物は、カルシ
ウムチャネルがカルシウムチャネル選択性イオンを通過させる能力に影響を及ぼ
す、あるいはイオン流動力学のように他の検出可能なカルシウムチャネル特性に
影響を及ぼすものである。そのような化合物は、カルシウムチャネル拮抗物質及
び作用物質、ならびに直接又は間接にカルシウムチャネルの活性に影響を及ぼす
化合物を含む。
【0074】 本文中で使用するとき、「実質的に純粋な」サブユニット又はタンパク質は、
SDS−PAGEによって同質と思われる、あるいは明白に配列決定されている
他のポリペプチド夾雑物を十分に免れているサブユニット又はタンパク質である
【0075】 ここで使用するとき、選択的ハイブリド形成は、DNA断片が複数の断片中か
ら第二の断片を特定しまたは単離できるために充分な特異性を以って第二の断片
にハイブリド形成することを意味する。
【0076】 本文中で使用するとき、異種あるいは外来DNAとRNAは相互交換的に使用
され、それが存在するゲノムの一部として天然に生じることはない、あるいは天
然に生じるのとは異なるゲノム内の位置(単数又は複数の)で認められるDNA
又はRNAをさす。細胞に内因性ではなく、人為的に細胞に導入されたDNA又
はRNAである。異種DNAの例は、カルシウムチャネルサブユニットをコード
するDNA、ならびに転写、翻訳あるいは他の調節可能な生化学的プロセスに影
響を及ぼすことによって内因性DNAの発現を媒介する又は変化させるRNA又
はタンパク質をコードするDNAを含むがこれらに限定されない。カルシウムチ
ャネルサブユニットをコードするDNAのような異種DNAを発現する細胞は、
同じか又は異なるカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを含みう
る。異種DNAは発現される必要はなく、宿主細胞ゲノムに組み込まれるか又は
エピソームに保持されるように導入できる。
【0077】 本文中で使用するとき、プロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳停止部位
、並びに他のシグナル配列のようなヌクレオクチドの調節及びエフェクター配列
への異種DNAの機能的結合は、かかるDNAとかかるヌクレオチド配列の機能
的関係をさす。例えば、プロモーターへの異種DNAの機能的結合は、リーディ
ングフレーム内のDNAを特異的に認識し、結合し、転写するRNAポリメラー
ゼによって当該プロモーターから当該DNAの転写が開始されるような、DNA
とプロモーター間の物理的及び機能的関係をさす。
【0078】 本文中で使用するとき、単離された実質的に純粋なDNAは、当業者によって
用いられる標準手法に従って(例えばManiatisら(1982)Mole
cular Cloning:A Laboratory Manual,Co
ld Spring Harbor Laboratory Press,Co
ld Spring Harbor,NY参照)精製されたDNA断片をさす。
【0079】 本文中で使用するとき、発現とは、核酸をmRNAに転写し、ペプチド、ポリ
ペプチドあるいはタンパク質に翻訳するプロセスをさす。核酸をゲノムDNAか
ら誘導する場合には、発現は、適切な真核宿主細胞あるいは生物を選択すれば、
mRNAのスプライシングを含みうる。
【0080】 本文中で使用するとき、ベクターあるいはプラスミドは、異種DNAの発現の
ためあるいはクローニングした異種DNAの複製のために、細胞に異種DNAを
導入するのに使用する単離した要素をさす。そのようなベクター及びプラスミド
の選択と使用は、十分に当該技術のレベルの範囲内である。
【0081】 本文中で使用するとき、発現ベクターは、当該DNA断片の発現をもたらすこ
とができる、プロモーター領域のような調節配列と機能的結合しているDNA断
片を発現することができるベクターを含む。従って、発現ベクターは、適切な宿
主細胞に導入したときクローニングしたDNAの発現をもたらす、プラスミド、
ファージ、組換えウイルスあるいは他のベクターのような組換えDNA又はRN
A構築物をさす。適切な発現ベクターは当業者に周知であり、真核細胞及び/あ
るいは原核細胞において複製可能なもの、ならびにエピソームにとどまるか又は
宿主細胞ゲノムに組み込まれうるものを含む。
【0082】 本文中で使用するとき、プロモーター領域は、機能的に結合されているDNA
の転写を制御する、遺伝子のDNAの部分をさす。プロモーター領域は、RNA
ポリメラーゼの認識、結合及び転写開始に十分なDNAの特異的配列を含む。プ
ロモーター領域のこの部分をプロモーターと称する。さらに、プロモーター領域
は、RNAポリメラーゼのこの認識、結合及び転写開始活性を調節する配列を含
む。これらの配列は、シス作用性あるいはトランス作用性因子に応答性であって
もよい。調節の性質に依存して、プロモーターは構成的であってもよく、あるい
は調節されてもよい。
【0083】 本文中で使用するとき、組換えあるいは異種カルシウムチャネルは、組換えカ
ルシウムチャネルを発現する真核細胞に導入されて発現された異種DNAによっ
てコードされる1又はそれ以上のサブユニットを含むカルシウムチャネルをさす
。組換えカルシウムチャネルはまた、細胞に内因性のDNAによって産生される
サブユニットも含みうる。一部の実施態様では、組換えあるいは異種カルシウム
チャネルは、異種DNAによってコードされるサブユニットだけを含みうる。
【0084】 本文中で使用するとき、組換えあるいは異種カルシウムチャネルに関して「機
能性」であるとは、当該チャネルが、刺激及び/あるいは当該チャネルに親和性
のある結合リガンドに応答して、Ca2+又はBa2+を含むがこれらに限定さ
れないカルシウムチャネル選択性イオンの流入を提供し、調節することができる
ことを意味する。好ましくは、そのようなカルシウムチャネル活性は、電気生理
学的、薬理学的及び当業者に既知の他の手段などによって、宿主細胞中に存在す
る内因性カルシウムチャネル活性と識別することができる。
【0085】 本文中で使用するとき、T型チャネルあるいはLVA型チャネルは、典型的に
は、高電圧活性化(HVA)チャネルと称されるカルシウムチャネル(α1D
ブユニットを含むもののような)と比較して、低電圧で活性化及び不活性化され
る低閾値カルシウムイオン流を示すカルシウムチャネルをさす。さらにあるいは
その代わりに、T型チャネルは、緩徐な失活速度、非常に低いコンダクタンス(
5−9pS)及び電圧依存性不活性化のような明白な生物物理的特性によって特
徴づけることもできる。Tチャネルは、HVAカルシウムチャネルと比較して、
mibefradil(Hoffman−LaRoche,Inc.)に対して
比較的高い度合の感受性、及び/あるいはConusマキガイ毒素GVIA及び
MVIICならびにクモ毒素AgaIIIA及びAgalVAに対して比較的高
い度合の抵抗性を示す。これらのチャネルはまた、典型的にはカドミウムに対し
て低い親和性を示す。T型チャネルあるいはLVA型チャネルはまた、膜内外ド
メインIとIIの間のように膜内外ドメインの間の1又はそれ以上の長い細胞内
ループ(例えば配列番号12、15及び16参照)の存在により、核酸レベルで
特徴づけることもできる。
【0086】 本文中で使用するとき、実際に個々の配列番号で示すようなアミノ酸配列を有
するポリペプチドは、同じ機能を持つが、保存的アミノ酸変化あるいはタンパク
質の活性を変化させない小さな欠失又は挿入のような配列の小さな変異を含みう
るタンパク質を包含する。カルシウムチャネル受容体サブユニットタンパク質、
特にLVAあるいはT型チャネルの活性は、単独であるいは他のサブユニットと
共に機能性カルシウムチャネルを形成する能力をさす。T型チャネルは本文中で
定義する識別可能な特性を有する。
【0087】 本文中で使用するとき、化合物の生理的濃度は、生物学的プロセスが起こるた
めに必要且つ十分な濃度である。例えば、カルシウムチャネル選択性イオンの生
理的濃度は、チャネルが開いたときに内向きイオン流を生じさせるために必要且
つ十分なカルシウムチャネル選択性イオンの濃度である。
【0088】 本文中で使用するとき、カルシウムチャネルの活性とは、カルシウムチャネル
を通過するカルシウムチャネル選択性イオンの移動をさす。そのような活性は、
刺激に応答して組換えチャネルを通って流れるイオン流の量の測定を含むがこれ
に限定されない、当業者に既知のいずれかの方法によって測定しうる。
【0089】 本文中で使用するとき、「機能性アッセイ」は、機能性カルシウムチャネルを
同定するアッセイをさす。従って機能性アッセイとは機能を評価するためのアッ
セイである。
【0090】 当業者には理解されるように、拮抗物質や作用物質のようなカルシウムチャネ
ル活性を調節する化合物を同定するための検定方法は、一般に対照との比較を必
要とする。「対照」細胞あるいは「対照」培養物のひとつの種類は、対照培養物
が試験化合物に接触しないことを除いて、試験化合物に接触する細胞あるいは培
養物と実質的に同じように処理される細胞あるいは培養物である。もうひとつの
種類の「対照」細胞あるいは「対照」培養物は、対照培養に用いる細胞が機能性
カルシウムチャネルを発現しないことを除いて、トランスフェクションされた細
胞と同じ細胞あるいは細胞培養物であると考えられる。この状況では、細胞ある
いは各々の種類の細胞培養物を検定する化合物の存在下で実質的に同じ反応条件
に接触させたとき、試験化合物に対する被験細胞の応答を試験化合物に対するカ
ルシウムチャネル陰性細胞の応答(あるいは応答の欠如)と比較する。例えば、
電気生理学的なパッチクランプを用いる方法では、当該技術で知られているよう
に、細胞を浸す外部溶液を変えることによって同じ細胞を試験化合物の存在下と
不在下で試験することができる。
【0091】 また本文中で開示される各々のサブユニットは、保存的アミノ酸置換を行うこ
とによって改変できることは明白であり、生じる改変サブユニットは本文中で想
定されている。適当なアミノ酸の保存的置換は当業者には既知であり、一般に生
じる分子の生物活性を変化させずに実施しうる。当業者は、一般に、ポリペプチ
ドの可欠領域における1個のアミノ酸置換は実質的に生物活性を変化させないこ
とを認識している(例えばWatsonら、Molecular Biolog
y of the Gene、第4版、1987、The Benjamin/
Cummings Pub.C.,p.224参照)。そのような置換は好まし
くは、排他的ではないが、次のような表1に示すものに従って行われる:
【0092】
【表1】 他の置換も許容され、経験的にあるいは既知の保存的置換に従って決定されう
る。そのようなポリペプチドの改変は、当業者に既知のいずれかの手段によって
実施されうる。突然変異は、当該タンパク質をコードするDNAの部位特異的あ
るいは位置指定突然変異誘発、ならびにプライマーを用いてDNA鋳型に変化を
導入し、増幅するDNA増幅法の使用を含めて、当業者に既知のいずれかの方法
によって実施しうる。
【0093】 本文中で使用するとき、治療とは、状態、障害あるいは疾患の症状を改善する
、あるいはさもなければ有益に変化させる方法を意味する。治療はまた、避妊薬
の使用のような本文中の組成物の製薬学的使用も包含する。
【0094】 本文中で使用するとき、LVA活性化カルシウムチャネル媒介の疾患とは、L
VAチャネルの活性に関連する疾患をさす。T型カルシウムチャネル媒介の疾患
とは、T型チャネルに関連する、LVA活性化チャネル媒介の疾患をさす。その
ような疾患は次のものを含むがこれらに限定されない:LVAチャネル、特にT
型チャネルが、疾患に寄与する何らかの形で疾患の媒介に役割を果たす、心臓血
管、肝、内分泌、泌尿器、生殖器、筋、神経及びその他の疾患。
【0095】 本文中で使用するとき、特定製薬組成物の投与による特定疾患の症状の改善は
、組成物の投与に帰する又は投与に結びつけることができる、永続的又は一時的
な、持続性又は一過性の何らかの軽減をさす。
【0096】 本文中で使用するとき、実質的に純粋とは、当業者が純度を評価するために使
用する、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動及び高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)のような標準的分析方法によって測定される、容易に
検出可能な不純物を含まないと思われるほど十分に均質であること、あるいはさ
らに精製を行っても物質の酵素及び生物活性のような物理・化学特性が検出可能
に変化しないであろうほど十分に純粋であることを意味する。実質的に化学的に
純粋な化合物を生成するための化合物の精製方法は当業者に既知である。しかし
、実質的に化学的に純粋な化合物は立体異性体の混合物である場合もある。その
ような場合には、さらなる精製は化合物の比活性を高めると考えられる。 本文
中で使用するとき、生物活性とは、化合物、組成物あるいは他の混合物をインビ
ボで投与したときに生じる、化合物のインビボでの活性あるいは生理的応答をさ
す。従って生物活性は、そのような化合物、組成物及び混合物の治療効果及び製
薬学的活性を包含する。
【0097】 ヒトカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAの同定と単離 α、α、β及びγをコードする核酸(DNA及びRNA)、特にヒトカル
シウムチャネルのLVAαサブユニットをコードする核酸を同定し、単離する
ための方法を提供する。
【0098】 そのような核酸の同定と単離は、少なくとも低ストリンジェンシー、好ましく
は高ストリンジェンシーの適切な条件下で、少なくとも14、好ましくは16又
はそれ以上のヌクレオチド(25、30又はそれより長い)を持ち、配列番号に
よって本文中に示すヌクレオチドの配列を有するDNAの隣接部分から誘導した
標識プローブを持つ、制限酵素で消化したヒトDNAにハイブリッド形成するこ
とによって実現しうる。ひとたびハイブリダイゼーション反応においてハイブリ
ッド形成した断片が同定されれば、当業者に既知の標準クローニング手法を用い
てクローン化することができる。完全なオープンリーディングフレームが存在し
、本文中で提供するサブユニットとの配列比較によってコードタンパク質の同一
性が確認されれば、カルシウムチャネル形成能力あるいは他の機能を評価する機
能性アッセイによって完全長のクローンが同定できる。この方法を使用して、ゲ
ノムサブユニットDNAの転写一次産物の代替的スプライシングによって生じる
ヒトカルシウムチャネルサブユニットのスプライシング変異体をコードするサブ
ユニットあるいはcDNAをコードするゲノムDNAを同定することができる。
例えば、カルシウムチャネルサブユニットをコードするDNA、cDNAあるい
はゲノムDNAは、DNAプローブとのハイブリダイゼーションによって同定し
、制限酵素地図やDNA塩基配列決定のような当業者に既知の方法によって特徴
づけて、DNAの配列の異質性あるいは相違を同定するために本文中で提供する
DNAと比較することができる。そのような配列の相違は、非相同領域と相同領
域が集塊していれば、cDNAを作製した転写産物が転写一次産物の代替的スプ
ライシングから生じたものであること、あるいは非相同領域がクローン化したD
NA全体に分布していれば異なる遺伝子から生じたものであることを示唆すると
考えられる。スプライシング変異体は100%相同な領域を共有する。本文中で
述べたように、生じた核酸を細胞において発現し、生じた細胞を試験して、発現
されたカルシウムチャネルがLVAあるいはTチャネルの薬理学的及び/あるい
は電気生理学的特性を示すことを証明あるいは確認することができる。
【0099】 本文中で提供するDNAを用いて遺伝子を単離するいかなる適当な方法も使用
しうる。例えば、配列相違領域に対応するオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイ
ゼーションによって完全長のスプライシング変異体をコードするDNAを単離す
るのに使用されており、これはゲノムクローンを単離するためにも使用できる。
組織特異的エクソンのようなヒトカルシウムチャネルサブユニットの少なくとも
一部をコードする、本文中で開示するヌクレオチド配列に基づくプローブは、関
連DNAをクローン化するため、あるいはヒトカルシウムチャネルサブユニット
をコードする完全長のcDNAクローンあるいはゲノムクローンを得るためのプ
ローブとして使用できる。
【0100】 ヒトカルシウムチャネルサブユニットの少なくとも一部をコードする核酸の少
なくとも14の実質的に隣接する塩基、好ましくは16又はそれ以上、一般には
少なくとも30の隣接塩基から成り、核酸の配列が配列番号で参照して本文中で
開示する核酸配列のセグメントに対応する、放射性同位元素標識あるいは酵素標
識を含むがこれらに限定されない標識RNAあるいは一本鎖DNAを提供する。
そのような核酸セグメントは、カルシウムチャネルサブユニットをコードするD
NAをクローニングするための本文中で提供する方法においてプローブとして使
用できる。一般に、Sambrookら(1989)Molecular Cl
oning:A Laboratory Manual、第2版、Cold S
pring Harbor Laboratory Press参照。
【0101】 さらに、当業者には周知である核酸増幅手法が、相違配列の周囲のDNA配列
に基づくオリゴヌクレオチドをヒトRNAあるいはゲノムDNAを増幅するため
のプライマーとして用いることにより、カルシウムチャネルサブユニットのスプ
ライシング変異体を検出するために使用できる。増幅産物の大きさと配列決定に
よってスプライシング変異体を明らかにすることができる。さらに、ハイブリダ
イゼーションによるヒトゲノムDNA配列の単離は、ヒトカルシウムチャネルサ
ブユニットをコードする転写産物の様々なスプライシング変異体に対応する、イ
ントロンによって分離された多数のエクソンを含むDNAを生成することができ
る。
【0102】 電圧依存性ヒトカルシウムチャネルのα、α、β及びγサブユニットの各
々のタイプ及びサブタイプをコードするDNAは、選択組織からのcDNAの核
酸増幅によって、あるいはそのようなカルシウムチャネルを有するヒト由来の細
胞系あるいは組織から単離したポリA+mRNAから作製したヒトcDNAライ
ブラリーをスクリーニングすることによってクローン化された。mRNAを得る
ためのそのような細胞あるいは組織のソースは、特にヒト脳組織あるいは神経芽
細胞腫細胞系のような神経由来のヒト細胞系、ヒト骨格筋あるいは平滑筋細胞等
である。cDNAライブラリーを作製する方法は当該技術において周知である(
一般にAusubelら(1987)Current Protocols i
n Molecular Biology,Wiley−Interscien
ce,New York;及びDavisら(1986)Basic Meth
ods in Molecular Biology,Elsevier Sc
ience Publishing Co.,New York参照)。
【0103】 プローブを構築するための好ましい領域は、5’及び/あるいは3’コード配
列、膜内外ドメインをコードすると予想される配列、細胞質ループをコードする
と予想される配列、シグナル配列、リガンド結合部位、及び他の機能的に重要な
配列(例えば、下記の表参照)を含む。完全長のサブユニットをコードするDN
Aあるいはその断片は、好ましくは検出を容易にするために適当な標識手段で標
識されたプローブとして使用できる。断片をプローブとして使用するとき、好ま
しくはDNA配列は、典型的には当該DNAのカルボキシル末端をコードする部
分からのものであり、最も好ましくは推定アミノ酸配列のヒドロパシー分析に基
づいて予想される膜内外ドメインコード部分を含む(例えばKyteとDool
ittle(1982)J.Mol.Biol.167:105参照)。
【0104】 ヒトカルシウムチャネルサブユニットのタイプあるいはサブタイプに特異的な
リボプローブを作製した。これらのプローブは選択組織及び細胞における特定サ
ブユニットの発現を同定するのに有用である。プローブを作製した領域は、既知
のすべてのα又はβサブユニットサブタイプのDNAとアミノ酸配列を比較して
同定した。最も相同性の低い領域、好ましくはヒト由来の配列と一般に約250
から約600個のヌクレオチドを選択した。α及びβサブユニットについての数
多くのリボプローブが作製されており(例えば国際PCT特許願第WO95/0
4822号の表2参照)、その一部を下記の表に示す。
【0105】
【表2】 α1H特異的プローブ(そして同様に抗体)に関しては、これらのチャネルに
存在する長い細胞内ループのようなα1Hサブユニットにユニークな領域が使用
できる。α1H−1特異的抗体に関しては、α1H−1には存在してα1H−2 には存在しない領域がサブユニット特異的プローブの作製に有用と考えられる。
【0106】 従って本文中で提供するDNAクローン及びその断片は、各サブユニットをコ
ードするゲノムクローンを単離するため、ならびに種々のヒト組織から作製した
ライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングによってスプライシング
変異体を単離するために使用できる。当業者に周知の核酸増幅手法も、ヒトカル
シウムチャネルサブユニットのスプライシング変異体をコードするDNAを検出
するために使用できる。これは、相違配列の周囲のDNA配列に基づくオリゴヌ
クレオチドをヒトRNAあるいはゲノムDNAを増幅するためのプライマーとし
て用いることによって実現される。増幅産物の大きさと配列決定によってスプラ
イシング変異体の存在を明らかにすることができる。さらに、ハイブリダイゼー
ションによるヒトゲノムDNA配列の単離は、ヒトカルシウムチャネルサブユニ
ットをコードする転写産物の様々なスプライシング変異体に対応する、イントロ
ンによって単離された多数のエクソンを含むDNAを生成することができる。
【0107】 カルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAが単離された後は、リボ
ヌクレアーゼ(RNase)保護アッセイを使用して、特定のカルシウムチャネ
ルサブユニット又は変異体をコードするmRNAを発現する組織を決定すること
が可能である。これらのアッセイは、全細胞RNAの複雑な混合物の中のRNA
種を検出し定量するための高感度の手段を提供する。サブユニットDNAを標識
し、細胞RNAとハイブリッド形成させる。相補的mRNAが細胞RNAの中に
存在する場合には、DNA−RNAハイブリッドが生じる。次に、RNA試料を
、一本鎖RNAを分解するRNaseで処理する。すべてのRNA−DNAハイ
ブリッドがRNase分解から保護され、ゲル電気泳動及びオートラジオグラフ
ィーにより可視化されうる。インサイチューハイブリダイゼーション技術を用い
て、特定のカルシウムチャネルサブユニットをコードするmRNAを発現する組
織を決定することも可能である。標識されたサブユニットコーディングDNAク
ローンを異なる組織切片にハイブリッド形成させ、サブユニットmRNA発現を
可視化する。
【0108】 ヒトカルシウムチャネルの各サブユニット(α、α、β、又はγ)のそれ
ぞれに関して、チャネルサブユニットをコードするDNAを、核酸スクリーニン
グ法により同定した後、オーバーラップクローンを同定するためのさらなるスク
リーニングに、単離されたクローンを用いた。クローニングされたDNA断片の
いくつかを、pIBI24/25(IBI、NewHaven、CT)、M13
mp18/19、pGEM4、pGEM3、pGEM7Z、pSP72、及びそ
の他の当業者に既知のそのようなベクターのような適当なベクターにサブクロー
ニングし、DNA配列決定及び制限酵素マッピングにより特徴付けすることが可
能であり、そしてそれが行われた。このように、翻訳開始(スタート)コドン及
び翻訳終止(ストップ)コドンの同定を含む当業者に既知の方法により、全長ク
ローンが調製されるまで、連続する一連のオーバーラップクローンを各サブユニ
ットについて作製することができる。クローニングされたDNAの発現のため、
そのようなクローンの5’非コーディング領域及びその他の転写翻訳調節領域を
、効率のよいリボソーム結合部位及び当技術分野において既知のその他の制御領
域と交換することができる。翻訳及び/又は転写の効率を最適化するために必要
となりうる、当業者に既知のその他の5’末端の修飾も、必要に応じて行うこと
ができる。
【0109】 下記の実施例1〜3は、α1Hスプライス変異体をコードするクローニングD
NA、並びにその電気生理学的及び薬理学的特性を詳細に記載している。注記さ
れた場合を除き、発現の方法及びその他のデータは、α1H−1コーディング核
酸に関して記載されている。例示された方法が、ヒト及びその他の哺乳動物から
さらなるスプライス変異体及び関連したサブユニットを単離するために用いられ
うること、そしてLVA活性化チャネル、特にT型チャネルの活性を調節する化
合物を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて用いるための細胞を作製
するため、そのような核酸を発現させるためにも用いられうることが理解される
。核酸は、変異を同定するための診断アッセイにおいても用いられることができ
、タンパク質を作製するため、そして次にT型カルシウムチャネル活性に関連し
た障害の診断アッセイにおける試薬として用いるための抗体を作製するためにも
用いられうる。
【0110】 LVAチャネルのαサブユニット LVAチャネルを形成するαサブユニットをコードする核酸が、本明細書に
おいて提供される。本明細書において提供される核酸は、その他の組織並びにそ
の他の哺乳動物及び動物から、関連するチャネルを単離するためにも用いられう
る。
【0111】 α1HヒトカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAの同定及び単
離 α1Hを含むカルシウムチャネルは、α1A〜α1Eカルシウムチャネルサブ
ユニットから形成される既知のHVAチャネルとは異なる特性を示すはずである
。そのような差異には、低電位活性化、電位依存性不活性化、ミベフラジル(m
ibefradil)に対する比較的高い感受性、並びにほとんどのHVAチャ
ネルを阻害するヘビ及び蜘形類の毒素(spider venom toxin
s)(例えば、ヘビ毒ω−AgalIIA及びω−AgalVA及びコーヌスヘ
ビ毒(Conus snail toxin)GVIA)に対する比較的高い抵
抗性が含まれうる。さらに、α1H−サブユニットは、その他のα−サブユニ
ットとの相同性により、そしてさらに、膜貫通ドメインIとIIとの間に位置す
るコードされたサブユニット内に拡張された細胞内ループ(例えば、配列番号4
9、ヌクレオチド1506〜2627を参照)が存在することにより、同定され
うる。α1H内のこの領域は、α1A〜α1Eのようなその他のカルシウムチャ
ネルαサブユニットと比較して拡張されている。
【0112】 α1H−サブユニットをコードするDNAは、本明細書において提供されるD
NAを用いて単離されうる。特に、少なくとも約16ヌクレオチド又は30ヌク
レオチド又はその他の適当な長さ、例えば14塩基、30塩基、100塩基など
のプローブを用いて、哺乳動物DNAライブラリーを含む選択されたライブラリ
ーをスクリーニングすることができる。選択されたライブラリーは、好ましくは
、T型チャネルを発現することが既知の哺乳動物組織又は細胞起源から調製され
る。プローブの配列は、好ましくは、膜貫通ドメインIとIIとの間に位置する
細胞内ループの配列に基づく(例えば、配列番号12及び15を参照)。
【0113】 α1HサブユニットをコードするDNAは、縮重オリゴヌクレオチドプライマ
ーを用いて、ヒト甲状腺癌細胞系(TT細胞)において発現されたαサブユニ
ットをコードする遺伝子の領域を増幅することにより単離された。TT細胞系は
、ヒト髄様甲状腺癌に由来し、カルシトニン分泌及び遺伝子発現を研究するため
に用いられている(deBustrosら(1986)J.Biol.Chem
.261:8036−8041;deBustrosら1990 Mol.Ce
ll.Biol.10:1773−1778)。これらの細胞からの全細胞記録
(whole cell recordings)により、これらの細胞により
発現される電位ゲーティッドカルシウムチャネルのみが、T型チャネルと一致す
る生物物理学的特性である、低電位活性化、急速な不活性化、遅い脱活性化を受
けることが明らかとなった。
【0114】 陽性クローンのうちの一つの一部を用いて、ヒトα1Hサブユニットをコード
するヌクレオチド配列の全長にわたるオーバーラップクローンを同定するため、
ヒト甲状腺癌cDNAライブラリーをさらにスクリーニングした。全長α1H
NAクローンは、実施例1に記載の部分的cDNAクローンの一部の連結により
構築されうる。配列番号15は、α1H−1サブユニットをコードするクローン
のヌクレオチド配列、及び推定アミノ酸配列を示している。
【0115】 2つのスプライス変異体α1H−1及びα1H−2は、複数の組織由来のRN
Aを用いたRT−PCR(逆転写酵素増幅)により検出された。α1H−2アイ
ソフォーム(配列番号16)は、I−II細胞内ループ(例えば、配列番号12
のnt1506からnt2627まで)内に、α1H−1(配列番号12及び1
5)と比較して957ヌクレオチドの欠失を含む。
【0116】 α1H−1サブユニットは、以前にクローニングされたαサブユニットとあ
る構造的類似性を示すのみならず、顕著な配列の差異を示す。特に、α1H−1 の推定アミノ酸配列の、高電位活性化カルシウムチャネルをコードするヒトα 〜α1Eコーディング核酸との全体配列同一性は、30%未満である。ノーザ
ンブロット解析は、α1HのmRNA転写物が、脳、主に扁桃、尾状核、及び被
殻において、そして末梢組織、主に肝臓、腎臓、及び心臓において発現している
ことを示している。
【0117】 特に、このα1Hカルシウムチャネルサブユニットの核酸配列及び推定アミノ
酸配列の、その他のヒトαサブユニットとの比較により、いくつかの異なる特
徴が明らかとなる。α1H配列とHVAα配列との間には著しい差異が存在す
る。第一に、膜貫通ドメインIとIIとの間の細胞内ループが著しく長い。配列
番号49に例示されているように、ヒトα1Hサブユニットの細胞内ループは、
1,122nt長であるが、本明細書に記載されたその他のヒトαサブユニッ
トの対応する細胞内ループは、351nt長から381nt長の範囲である。こ
のように、ヒトα1Hの細胞内ループは、HVAカルシウムチャネルに見出され
るヒトαサブユニットよりも250アミノ酸近く長い。この領域の推定アミノ
酸配列(配列番号12のaa420からaa794まで)は、多数のプロリン残
基を含み、かつ9個の連続ヒスチジン残基からなるポリHIS領域(配列番号1
2のaa52からaa528まで)、及び10残基のうちの8残基がアラニンで
ある領域を含む。膜貫通ドメインIとIIとの間に位置する大きな細胞内ループ
は、ナトリウムチャネルαサブユニット内の対応する位置に見出される大きな細
胞内ループと類似している。ナトリウムチャネルαサブユニットのいくつかは、
ホモマー(homomer)として機能する可能性がある。T型チャネルは、H
VAカルシウムチャネルとナトリウムチャネルとのハイブリッドである活性を有
することが提唱されている。本明細書に提供されたα1Hサブユニットは、ナト
リウムチャネルとしても機能する可能性がある。
【0118】 第二に、単離されたヒトα1Hサブユニットは、αサブユニットとβサブユ
ニットとの相互作用にとって重要であることが一般的に知られている(例えば、
De Waardら(1996)FEBS Letters 380:272−
276;Pragnellら(1994)Nature 368:67−70を
参照)アミノ酸残基を欠如している。本明細書に記載されたα1A〜α1Eのよ
うなα間で高度に保存されているモチーフを形成する少なくとも13個の残基
が、膜貫通ドメインIとIIとの間のこの細胞内ループ内に位置する(Prag
nellら(1994)Nature 368:67−70も参照)。特に、こ
のループは、βサブユニットとの結合に関与しているα相互作用ドメイン(A
ID)を欠如している。また、この領域には、アデニリルシクラーゼ2において
最初に同定され、非L型HVAαサブユニットに見出されるGβγ結合モチー
フ、GlnXXGluArgも存在しない。しかし、同一の配列が、α1H配列
のII−III細胞内ループ内に出現しており、このことは、この領域でGβγ
の相互作用が可能であることを示唆している。α1Hサブユニットは、HVAチ
ャネルのS5−S6リンカーに見出されるイオン選択性の決定基にも差異を含む
。ドメインIII及びIVのS5−S6ポアループ(pore loop)にお
いて、Ca2+選択性及びイオン透過性において重要な役割を果たすグルタミン
酸残基が、アスパラギン酸残基に置換されている。
【0119】 第三に、ヒトα1Hサブユニットは、IS5とIS6との間に位置するドメイ
ンI内に、もう一つの著しく長い細胞外ループを有する。この細胞外ループは、
他のヒトαサブユニットにおいては249から270ヌクレオチド残基の範囲
であるが、ヒトα1Hサブユニットは426ヌクレオチド残基を有する。その他
の際立って特徴的な特徴は、本明細書に記載された細胞においてサブユニットを
発現させることにより確認することができ、そして確認されている。
【0120】 α1Hサブユニットをコードする核酸は、適当なライブラリー、特に哺乳動物
ライブラリー、特にT型チャネル活性を示す組織又は細胞由来の哺乳動物ライブ
ラリーをスクリーニングするために用いられうる。コードされたサブユニットは
、前記の際立って特徴的な特性により同定されうる。α1H−1コーディングク
ローン由来の核酸プローブが、α1H−1と比較して957bp欠失を有する、
α1H−2と命名された第二の変異体をコードするクローンを同定し単離するた
めに用いられた。
【0121】 α1Hサブユニットは、外因性αδサブユニット及びβサブユニットを添加
しない2つの異なる発現系において、機能的なチャネルを形成する。α1H配列
のI−IIループ内にβサブユニット相互作用部位が存在しないことは、下神経
節(nodosus ganglia)におけるアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドによるβサブユニット枯渇が、この領域におけるT型イオン流に影響を与えな
かったという報告と一致している。さらに、HEK293細胞には、βサブユニ
ット特異的抗血清を用いたウェスタン解析により、既知のβサブユニットが全く
検出されず、このことは、以前にクローニングされたβサブユニットが、α
を含むLVA Ca2+チャネルの形成において役割を果たしていない可能性を
示している。卵母細胞及びHEK293細胞は、内因性αδサブユニットを発
現しており、本明細書に記載されたα1Hサブユニットの起源であるTT細胞は
比較的多量のαδサブユニットを発現している。従って、発現したα1H含有
チャネルはαδサブユニットを含み、αδサブユニットは天然α1H含有チ
ャネルの成分である可能性がある。
【0122】 α1H転写物の分布 いくつかのニューロン組織及び非ニューロン組織に由来するヒトmRNAを含
むノーザンブロットを、全長α1HcDNAから作製された標識された断片をプ
ローブとして検索した。約8.5kbの単一の転写物が、心臓、脳、胎盤、肺、
肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓を含む、調査された全ての組織に存在する。ニューロ
ン組織には、小脳、大脳皮質、髄質、脊髄、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、扁
桃、尾状核、脳梁、海馬、黒質、視床下核、及び視床が含まれた。非ニューロン
組織においては、腎臓、肝臓、及び心臓において最も高い発現レベルが見出され
る。脳においては、扁桃、尾状核、及び被殻に最も豊富である。
【0123】 その他のαヒトカルシウムチャネルサブユニットのタイプ及びサブタイプを
コードするDNAの同定及び単離 さらなるαサブユニットをコードするDNAは、α1A、α1B、α1C
α1D、α1E、及びα1Hサブユニットに関する記載と同様にして本明細書に
提供されたDNAを用いて、又は当業者に既知のその他の方法を用いて、単離及
び同定されうる。特に、本明細書に提供されたDNAを用いて、適当なライブラ
リーをスクリーニングし、関連するDNAを単離することが可能である。全長ク
ローンを、本明細書に記載された方法のような方法を用いて構築することができ
、得られたサブユニットは、その配列並びに電気生理学的及び薬理学的特性を本
明細書に例示されたサブユニットと比較することにより特徴付けされうる。
【0124】 CNS及びその他の組織において発現している多数の電位依存性カルシウムチ
ャネルαサブユニット遺伝子が同定され、α1A、α1B(又はVDCC I
V)、α1C(又はVDCC II)、α1D(又はVDCC III)、α 、及びα1Hと命名されている。各サブユニットタイプをコードするヒトDN
Aライブラリーから単離されたDNAが単離されている。スプライス変異体とし
て生じる、各タイプのサブタイプをコードするDNAも提供される。サブタイプ
は、本明細書において、例えばα1B−1、α1B−2と命名されている。本明
細書においては、α1Hサブユニットに特に注目する。
【0125】 電位依存性カルシウムチャネルのαサブユニットタイプA、B、C、D、E
、及びF、並びにそれらのサブタイプは、DHP、フェニルアルキルアミン、オ
メガコノトキシン(ω−CgTx)、ジョウゴクモ毒素(funnel web
spider toxin)ω−Aga−IV、ピラゾノイルグアニジンのよ
うなカルシウムチャネルのアゴニスト及びアンタゴニストの既知のクラスと、感
受性に関して、及び又はその他の物理学的及び構造的特性に関して異なっている
。これらのサブユニットタイプは、ホールディング電位(holding po
tential)、及び異なるαサブユニットタイプを含むカルシウムチャネ
ルを含む細胞膜の脱分極時に生じるイオン流の動力学に関しても異なっているよ
うである。
【0126】 ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、ω−CgTx、ジョウゴクモ毒
素の成分、及びピラゾノイルグアニジンから選択される少なくとも一つの化合物
に結合するαサブユニットをコードするDNAが提供される。例えば、本明細
書において提供されるα1Bサブユニットは、N型チャネルにおいてω−CgT
xと特異的に相互作用するようであり、本明細書において提供されるα1Dサブ
ユニットは、L型チャネルにおいてDHPと特異的に相互作用するようである。
【0127】 抗体 カルシウムチャネルサブユニットサブタイプ又はカルシウムチャネルタイプに
対して特異的なモノクローナル又はポリクローナルの抗体は、サブユニットタン
パク質又はそれらの一部を抗原として用いる、当業者に既知の標準的な技術を使
用して調製されうる。抗ペプチド抗体及び抗融合タンパク質抗体が用いられうる
(例えば、Bahouthら(1991) Trends Pharmacol
.Sci.12:338−343;Current Protocols in
Molecular Biology(Ausubelら,eds)John Wiley and Sons,New York(1984)を参照)。免
疫原として(合成ペプチド又は組み換え作製された細菌融合タンパク質のいずれ
かとして)用いるためのカルシウムチャネルサブユニットの部分を選択する際に
考慮すべき要因には、抗原性接近可能性(即ち、細胞外ドメイン及び細胞質ドメ
イン)、特定のサブユニットに対する独自性、及び当業者に既知のその他の要因
が含まれる。抗体は、治療的用途を有し、そして診断アッセイにおける用途も有
する。
【0128】 サブユニット特異的抗体の利用可能性は、(例えば、正常脳組織と疾患のある
脳組織とを比較して)様々なサブユニットの分布及び発現密度をモニターするた
めの免疫組織化学技術の適用を可能にする。そのような抗体は、LES診断のよ
うな診断的適用において、そして例えばカルシウムチャネルの活性を調節する抗
体を用いる治療的適用においても使用されうる。
【0129】 抗体は、例えば腹腔内注射、筋肉内注射、静脈注射、もしくは皮下注射、埋め
込み、又は経皮投与様式による、標準的な方法を使用して対象に投与されうる。
当業者であれば、使用される投与様式に応じて、用量形態、治療計画、及びその
他のパラメータを経験的に決定することができる。
【0130】 サブユニット特異的なモノクローナル抗体及びポリクローナル抗血清が調製さ
れている。抗原が由来する領域は、全ての既知のα又はβサブユニットサブタイ
プのDNA配列及びアミノ酸配列を比較することにより同定された。最も相同性
が低い領域、好ましくはヒト由来の配列が選択された。選択された領域又は選択
された領域を含む融合タンパク質が免疫原として用いられる。選択されたタンパ
ク質領域及び融合タンパク質における残基の疎水性解析も行われ、疎水性の高い
領域は回避される。また、より重要なこととして、細菌宿主において融合タンパ
ク質を調製する場合には、低頻度のコドンは回避される。特に、選択された宿主
において3個又はそれ以上の連続する低頻度コドンを含めることは回避される。
α又はβサブユニットのタイプ又はサブタイプに特異的な多数のポリクローナル
及びモノクローナルの抗体が調製されている。これらのうちのいくつかを以下の
表に列挙する。例示的な抗体、及び抗体を調製するために用いられたペプチド抗
原を表3に示す。
【0131】
【表3】 GST融合タンパク質は、それぞれ、類似の融合体及び抗血清を調製すること
ができる、α1C及びα1Dを含む全てのサブタイプについてサブタイプ相同性
の低い領域である、細胞質ループ領域IIS6−IIS1に対して特異的である
【0132】 類似の方法を用いて、例えば拡張された細胞内ループを用いて、LVAサブユ
ニット、特に本明細書において提供されるα1Hサブユニットに特異的な抗体が
調製されうる。そのような抗体は、LVAカルシウムチャネルが関与する障害の
診断アッセイにおける用途を有する。
【0133】 異種カルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを含む組換え真核細
胞の調製 一つ又は複数のカルシウムチャネルサブユニット又はカルシウムチャネルサブ
ユニットの一部をコードするDNAは、DNAの発現又は複製のため宿主細胞に
導入されうる。そのようなDNAは、下記の実施例に記載された方法を用いて、
又は当業者に周知のその他の過程を用いて導入されうる。クローニングされたD
NAの適当な発現ベクターへの取り込み、それぞれが一つもしくは複数の異なる
遺伝子をコードするプラスミドベクターもしくはプラスミドベクターの組み合わ
せによる、又は直鎖状DNAによる真核細胞の形質転換、並びに形質転換された
細胞の選択も、当技術分野において周知である(例えば、Sambrookら,
(1989)Molecular Cloning:A Laboratory
Manual,Second Edition,Cold Spring H
arbor Laboratory Pressを参照)。
【0134】 カルシウムチャネルのサブユニットのいずれかをコードするクローニングされ
た全長核酸は、真核細胞における発現のため、プラスミドベクターに導入されう
る。そのような核酸は、ゲノミックDNA、又はcDNA、又はRNAでありう
る。現在のところ好ましい細胞は、α1Hサブユニットをコードする異種DNA
を含む細胞である。宿主細胞は、それぞれが少なくとも一つのカルシウムチャネ
ルサブユニットをコードするプラスミド又はプラスミドの組み合わせにより形質
転換されうる。又は、宿主細胞は、当業者に周知の方法を用いて、直鎖状DNA
により形質転換されてもよい。
【0135】 本明細書に提供されたDNAは、P.パストリス(P.pastoris)(
例えば、Creggら,(1987)Bio/Technology 5:47
9)のような酵母細胞を含む、任意の真核細胞において発現されうるが、本明細
書に提供されたヒトカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAの発現
のためには哺乳動物発現系が好ましい。
【0136】 異種DNAは、異種DNAをコードするベクターによる形質転換のような、当
業者に既知の任意の方法により導入されうる。哺乳動物細胞の形質転換にとって
特に好ましいベクターは、SV40初期プロモーター、マウスdhfr遺伝子、
SV40ポリアデニル化部位及びスプライス部位、並びに細菌においてベクター
を維持するために必要な配列を含む、pSV2dhfr発現ベクター、pCDN
A1のようなサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに基づくベクター、
又はpcDNA−amp及びMMTVプロモーターに基づくベクターである。ベ
クターpcDNA1は、哺乳動物宿主細胞RNAポリメラーゼIIにより認識さ
れる構成性のプロモーターであるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター
を含む真核発現ベクターである。ヒトカルシウムチャネルサブユニットをコード
するDNAは、ベクターpCDNA1のCMVプロモーターの直後の位置に挿入
されている。ベクターpCDNA1が、現在のところ好ましく、哺乳動物細胞に
おいてα1Hサブユニットを発現させるために用いられている。
【0137】 安定的又は一過性に形質転換された哺乳動物細胞は、チミジンキナーゼ、ジヒ
ドロ葉酸リダクターゼ、ネオマイシン耐性などの遺伝子のような選択可能なマー
カー遺伝子を有する発現ベクターにより細胞を形質転換すること、そして一過性
形質転換の場合には、マーカー遺伝子を発現する細胞にとって選択的な条件下で
形質転換された細胞を増殖させることにより、当技術分野で既知の方法により調
製されうる。機能的な電位依存性カルシウムチャネルは、ヒトカルシウムチャネ
ルサブユニットをコードするDNAを含むベクターpCDNA1の誘導体により
形質転換されたHEK293細胞において作製されている。
【0138】 異種DNAは、細胞内でエピソーム因子として維持されるか、又は細胞の染色
体DNAへと組み込まれうる。得られた組換え細胞は、次に、そのような培養物
又はそれらの継代培養物から培養又は継代培養(subcultured)され
うる(又は、哺乳動物細胞の場合には継代(passaged)されうる)。組
換え細胞の形質転換、注入、及び培養のための方法は熟練した当業者に既知であ
る。DNA又はRNAが導入されうる真核細胞には、そのようなDNA又はRN
Aにより形質転換可能であるか、又はそのようなDNAが注入されうる任意の細
胞が含まれる。事実上任意の真核細胞が、異種DNAのための媒体として機能し
うる。好ましい細胞は、DNA及びRNAを発現することもできる細胞であり、
最も好ましい細胞は、異種DNAによりコードされる一つ又は複数のサブユニッ
トを含む組換え又は異種カルシウムチャネルを形成することができる細胞である
。そのような細胞は、経験的に同定されうるか、又は容易に形質転換又は注入さ
れることが既知の細胞の中から選択されうる。DNAを導入するための好ましい
細胞には、一過性又は安定的に形質転換されうる細胞が含まれ、COS細胞、マ
ウスL細胞、CHO細胞、ヒト胎児腎細胞、アフリカングリーンモンキー(Af
rican green monkey)細胞、及びその他の当業者に既知の細
胞のような哺乳動物由来の細胞、アフリカツメガエル卵母細胞のような両生類細
胞、又はサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerev
isiae)又はピチアパストリス(Pichia pastoris)のよう
な酵母細胞が含まれるが、これらに限定されない。注入されたRNA転写物又は
cDNAの発現にとって好ましい細胞には、アフリカツメガエル卵母細胞が含ま
れる。DNAの形質転換にとって好ましい細胞は、容易に効率よく形質転換され
うる細胞である。そのような細胞は、当業者に既知であるか、又は経験的に同定
されうる。好ましい細胞には、DG44細胞及びHEK293細胞が含まれ、特
に、液体窒素中で凍結させ、次に解凍し、再増殖させることが可能なHEK29
3細胞が含まれる。そのようなHEK293細胞は、例えばゴーマン(Gorm
an)の米国特許第5,024,939号に記載されている(Stillman
ら(1985)Mol.Cell.Biol.5:2051−2060も参照)
【0139】 細胞は、細胞内に導入された異種DNAを複製するため、又は細胞内に導入さ
れた異種DNAを発現させるための媒体として用いられうる。いくつかの実施態
様において、細胞は、実質的に純粋なヒトカルシウムチャネルサブユニット又は
異種カルシウムチャネルを作製するための手段として、異種DNAを発現させる
ための媒体として用いられる。異種DNAを含む宿主細胞は、カルシウムチャネ
ルが発現する条件下で培養されうる。カルシウムチャネルサブユニットは、当業
者に既知のタンパク質精製法を用いて精製されうる。例えば、サブユニットのう
ちの一つ又は複数に特異的に結合する、本明細書において提供される抗体のよう
な抗体は、サブユニット又はサブユニットを含むカルシウムチャネルのアフィニ
ティ精製に使用されうる。
【0140】 実質的に純粋なヒトカルシウムチャネルのサブユニット、ヒトカルシウムチャ
ネルのαサブユニット、ヒトカルシウムチャネルのαサブユニット、ヒトカ
ルシウムチャネルのβサブユニット、及びヒトカルシウムチャネルのγサブユニ
ットが提供される。ヒトカルシウムチャネルサブユニットのうちの少なくとも一
つを含む実質的に純粋な単離されたカルシウムチャネルも、提供される。宿主細
胞によりコードされる一つ又は複数のサブユニットの混合物、及び細胞内に導入
された異種DNAもしくはRNAによりコードされる一つ又は複数のサブユニッ
トを含む実質的に純粋なカルシウムチャネルも提供される。実質的に純粋なサブ
タイプ又は組織型に特異的なカルシウムチャネルも提供される。
【0141】 一つの実施態様において、α1Hサブユニットを発現し、機能的なホモマーヒ
トα1H含有カルシウムチャネルを形成する、カルシウムチャネルのαサブユ
ニットのうちの少なくとも一つ、好ましくはα1Hサブユニットをコードする異
種DNAを含む真核細胞が提供される。これらの細胞は、T型チャネル及びLV
A型カルシウムチャネルの活性を調節する化合物をスクリーニングするために用
いられうる。
【0142】 その他の実施態様において、ヒトカルシウムチャネルのαサブユニット、ヒ
トカルシウムチャネルのαサブユニット、ヒトカルシウムチャネルのβサブユ
ニット、及びヒトカルシウムチャネルのγサブユニットのうちの少なくとも一つ
をコードする異種DNAを含む真核細胞が提供される。一つの好ましい実施態様
によれば、異種DNAは真核細胞において発現し、好ましくはヒトカルシウムチ
ャネルαサブユニットをコードする。
【0143】 異種カルシウムチャネルの発現:電気生理学及び薬理学 α1HサブユニットコーディングDNAを、HEK203細胞において一過性
発現させ、SDS−PAGE/ウェスタンブロット解析により同定された、約2
60kDaのα1H−1のα1H−1タンパク質の発現と関連づけた。
【0144】 Ba2+又はCa2イオン流を、α1H−1チャネルを一過性発現するHE
K293細胞から記録し、低電位活性化を特徴とする生物物理学的及び薬理学的
特性、即ちT型カルシウムチャネルイオン流を示すことが見出された。α1H− を発現するアフリカツメガエル卵母細胞においても類似の結果が得られた。
【0145】 カルシウムチャネル活性を測定するための電気生理学的方法は、当業者に既知
であり、本明細書に例示されている。任意のそのような方法が、機能的カルシウ
ムチャネルの形成を検出するため、並びに得られたイオン流の動力学及びその他
の特徴を特徴付けするために用いられうる。カルシウムチャネルをさらに特徴付
けするためには、薬理学的研究を電気生理学的測定と組み合わせることができる
【0146】 機能的異種カルシウムチャネルの活性の測定に関しては、好ましくは宿主細胞
の内因性イオンチャネル活性、そして所望により所望のサブユニットを含まない
チャネルの異種チャネル活性を、差別的なホールディング電位の使用を含む、化
学的手段、薬理学的手段、及び電気生理学的手段により大きく阻害し、測定され
た異種カルシウムチャネル活性のS/N比を増加させることができる。
【0147】 従って、本明細書において提供されるDNAによりコードされるサブユニット
の様々な組み合わせが、真核細胞に導入される。得られた細胞は、機能的チャネ
ルが発現しているか否かを確認するため、そしてチャネルの特性を決定するため
、調査されうる。特に好ましい局面において、異種DNAを含む真核細胞はそれ
を発現し、組換え機能的カルシウムチャネル活性を形成する。より好ましい局面
において、組換えカルシウムチャネル活性は、形質転換されていない宿主細胞に
は存在しない型であるため、又は大きさ及び/もしくは薬理学的特性を有するた
め、又は形質転換されていない細胞においては示されない生物物理学的特性を示
すため、容易に検出可能である。
【0148】 真核細胞は、本明細書に提供されたサブユニットサブタイプの様々な組み合わ
せにより形質転換されうる。得られた細胞は、カルシウムチャネル活性の研究の
ため、及び本明細書に提供された薬物スクリーニングアッセイにおける使用のた
めの、カルシウムチャネルの均一な集団を提供するであろう。実施された実験は
、従来の分類スキームの不適切さを証明した。
【0149】 形質転換された細胞の中で好ましいのは、機能的異種カルシウムチャネルを有
する組換え真核細胞である。組換え細胞は、ヒトカルシウムチャネルのαサブ
ユニットをホモマーとしてコードし、より好ましくは発現もする異種DNA又は
RNA転写物、ヒトカルシウムチャネルのβサブユニットをコードする異種DN
A、及び/又はヒトカルシウムチャネルのαサブユニットをコードする異種D
NAの導入及び発現により作製されうる。特に好ましいのは、そのような異種D
NA又はRNA転写物によりコードされるα、β、及びαサブユニットの各
々のそのような組換え細胞における発現、そして場合によりヒトカルシウムチャ
ネルのγサブユニットをコードする異種DNA又はRNA転写物の発現である。
機能的カルシウムチャネルは、好ましくはヒトカルシウムチャネルのαサブユ
ニット及びβサブユニットを少なくとも含みうる。これらの2つのサブユニット
を発現する真核細胞が、そしてさらなるサブユニットを発現する細胞も、DNA
の形質転換及びRNA転写物の注入により調製されている。そのような細胞は、
ヒトカルシウムチャネルサブユニットのうちの一つ又は複数を含むカルシウムチ
ャネルに帰属させることができる電位依存性カルシウムチャネル活性を示した。
例えば、αサブユニット及びβサブユニットに加えαサブユニットを含む異
種カルシウムチャネルを発現する真核細胞は、脱分極に反応して細胞膜を介した
増加したカルシウム選択イオン流を示すことが示されており、このことは、α サブユニットがカルシウムチャネル機能を強化するかもしれないことを示してい
る。α対αの比率を増加させながら細胞を共形質転換し、得られたカルシウ
ムチャネルの活性を測定した。その結果は、他の形質転換されたサブユニットと
比較したαコーディングDNAの量を増加させると、カルシウムチャネル活性
が増加することを示している。
【0150】 ヒトαサブユニット、特にα1Hサブユニットをホモマーとして含むか、又
はヒトαサブユニットを少なくとも含み、場合によりαδサブユニット及び
/又はヒトβサブユニットを含む異種カルシウムチャネルを発現する真核細胞が
好ましい。αサブユニットを単独で、又はβ及び/もしくはαサブユニット
と組み合わせてコードするDNA又はRNA転写物を含む組成物でトランスフォ
ームされた真核細胞は、機能的カルシウムチャネルを発現する細胞を作製するた
めに用いられうる。異種DNA又はRNAによりコードされるヒトサブユニット
の全部を含むヒトカルシウムチャネルを発現する組換え細胞が特に好ましいため
、異種DNA又はRNAによりコードされるヒトサブユニットを含むカルシウム
チャネルを形成するために十分な濃度のサブユニットコーディング核酸を、その
ような宿主細胞に注入するか、又はそれらで形質転換することが望ましい。サブ
ユニットをコードするDNA又はRNAの正確な量及び比率は、特定のサブユニ
ットの組み合わせ、細胞、及びアッセイ条件のため経験的に決定され最適化され
うる。
【0151】 特に、哺乳動物細胞が、一つ又は複数のヒトカルシウムチャネルサブユニット
をコードするDNAで一過性及び安定的に形質転換されている。そのような細胞
は、ヒトカルシウムチャネルに帰因しうる薬理学的特徴及び電気生理学的特徴を
示す異種カルシウムチャネルを発現する。しかし、そのような細胞は、均質な集
団を表し、薬理学的データ及び電気生理学的データは、これまで達成不可能であ
ったヒトカルシウムチャネル活性に対する洞察を提供する。例えば、α1E−1 、α2b、及びβ1−3サブユニットをコードするDNAで一過性形質転換され
たHEK細胞。得られた細胞は、L型、N型、T型、及びP型のチャネルのクラ
スとは区別される、薬理学的に区別されるクラスの電位活性化カルシウムチャネ
ルであると考えられる特性を有するカルシウムチャネルを形成する、これらのサ
ブユニットを一過性発現する。観察されたα1Eイオン流は、他のクラスの電位
活性化カルシウムチャネルを定義するために以前に用いられていた薬物及び毒素
に対して感受性でなかった。
【0152】 α1B−1、α2b、及びβ1−2をコードするDNAで一過性形質転換され
たHEK細胞は、ω−コノトキシンに対する感受性及びN型チャネルに典型的な
イオン流を示す異種カルシウムチャネルを発現する。同等のmRNAレベルを達
成するため細胞内に導入されたα1B−1、α2b、及びβ1−2のモル比を変
化させると、1細胞当たりの受容体の数、イオン流の密度が有意に増加し、ω−
コノトキシンに対するKが影響を受けることが見出されている。
【0153】 α1B−1、α2b、及びβ1−2から作製されたこれらのチャネルの電気生
理学的特性を、α1B−1、α2b、及びβ1−3をコードするDNAでHEK
細胞を一過性形質転換することにより作製されたチャネルの特性と比較した。チ
ャネルは、類似の活性化の電位依存性、実質的に同一の電位依存性、類似の活性
化の動力学、及び単一の指数関数に適合しうるテールイオン流(tail cu
rrents)を示した。活性化の動力学の電位依存性は、調査された全ての電
位において有意に異なっていた。
【0154】 いくつかの実施態様において、異種カルシウムチャネルを有する真核細胞は、
細胞内でヒトカルシウムチャネルのサブユニットに翻訳される少なくとも一つの
RNA転写物を含む第一の組成物を、細胞に導入することにより作製される。好
ましい実施態様において、翻訳されるサブユニットは、ヒトカルシウムチャネル
のαサブユニットを含む。より好ましくは、導入される組成物は、ヒトカルシ
ウムチャネルのαサブユニットをコードするRNA転写物を含み、(1)ヒト
カルシウムチャネルのβサブユニットをコードするRNA転写物及び/又は(2
)ヒトカルシウムチャネルのαサブユニットをコードするRNA転写物も含む
。特に好ましいのは、α、αβ、及びαヒトカルシウムチャネルサブユニッ
トをコードし、場合によりヒトカルシウムチャネルのγサブユニットをコードす
るRNAの導入である。クローニングされたDNAのインビトロ転写及び得られ
たRNAの真核細胞への注入の方法は、当技術分野において周知である。ヒトカ
ルシウムチャネルのサブユニットのいずれかをコードする全長DNAのいずれか
の転写物は、単独で、又はその他の転写物と組み合わされて、細胞内での発現の
ため真核細胞へ注入されうる。両生類卵母細胞は、本明細書に提供されたヒトカ
ルシウムチャネルサブユニットcDNAクローンのインビトロ転写物の発現にと
って特に好ましい。機能的異種カルシウムチャネルを発現する両生類卵母細胞が
、この方法により作製されている。
【0155】 薬理学的及び電気生理学的特性 実施例に記載されているように、α1H−1をコードする核酸及びα1H−2 をコードする核酸が、哺乳動物細胞及び両生類卵母細胞において発現されている
。電気生理学的及び薬理学的特性が研究されている。
【0156】 HEK293細胞及びアフリカツメガエル卵母細胞において発現した組換えヒ
トα1H 2+チャネルの生物理学的特性は、良好に合致しており、このことは、
組換えヒトα1Hチャネルの生物理学的特性が発現系と無関係であることを示し
ている。いくつかの生物理学的特徴は、ヒトα1HサブユニットがT型チャネル
のポアー形成αサブユニットであるという結論を支持している。α1H含有チ
ャネルの活性化、不活性化、及び脱活性化の速度、並びに単一チャネルコンダク
タンスは、T型チャネルに関して記載された範囲に含まれている。この研究にお
いて測定された9pSというコンダクタンス値は、ラットα1G含有チャネルに
関して決定された値に近く、組換えHVAチャネルに関して決定された値より有
意に低かった。さらに、α1H含有チャネルはBa2+及びCa2+を同程度に
伝導し、このことは、Ba2+及びCa2+のためのT型チャネルのコンダクタ
ンスが大部分の細胞系でほぼ等価であるという知見と一致している。
【0157】 α1H含有Ca2+チャネルは、HVAチャネルとは異なる薬理学的プロフィ
ールを示す。α1Hにより媒介されるイオン流は、多数の細胞型においてLVA
イオン流を減少させることが示されている薬剤、Ni2+、アミロライド、及び
ミベフラジル(Ro40−5967)により阻害される。対照的に、いくつかの
細胞型においてLVAイオン流を阻害する抗痙攣剤、エトスクシミドは、α1H により媒介されるイオン流に影響を与えない。L型Ca2+チャネルのモデュレ
ーター、ニモジピン及び(−)−BayK8644は1μMの濃度ではα1H
有チャネルにほとんど影響を与えないが、両化合物は10μMの濃度では顕著な
阻害を生じ、このことは、ラット視床下部ニューロンにおけるT型チャネルに対
するそれらの影響(Araikeら,1989)と一致している。要約すると、
本明細書に記載されたα1H含有チャネルの薬理学的プロフィールは、様々な細
胞系において研究された天然T型チャネルと多くの類似性を有している。T型チ
ャネルの薬理学的特性は、細胞系の間でかなりばらつきがあり、T型チャネルを
特徴付ける薬理学的特徴は同定されていない。これらの結果は、複数のαサブ
ユニットが、LVA又はT型チャネルのファミリーの薬理学的プロフィールを担
っているという、本明細書における知見と一致している。
【0158】 細胞のアッセイ及び臨床的使用並びにカルシウムチャネルアッセイ カルシウムチャネル活性を調節する化合物を同定するためのアッセイ 一つ又は複数のサブユニットを組み換え発現する真核細胞の用途には、試験化
合物がカルシウムチャネルのアゴニスト又はアンタゴニスト活性を有するか否か
を決定するためのアッセイが含まれる。これらの真核細胞は、既知のカルシウム
チャネルのアゴニスト及びアンタゴニストの中から、特定のカルシウムチャネル
サブタイプ特異性を示すものを選択し、それにより疾患又は組織に特異的な治療
剤としての可能性を有する化合物を選択するためにも用いられうる。
【0159】 異種ヒトカルシウムチャネルを発現する真核細胞を用いて、カルシウムチャネ
ル活性を調節するカルシウムチャネルのアゴニスト及びアンタゴニストのような
化合物を同定するためのインビトロ法が提供される。
【0160】 特に、アッセイは、ヒトカルシウムチャネルに特異的なカルシウムチャネルの
アゴニスト及びアンタゴニストの候補をスクリーニングするため、そして特に特
定のヒトカルシウムチャネルサブタイプに特異的な化合物をスクリーニングする
ため、本明細書に記載された異種DNAによりコードされるホモマー又はヘテロ
マーのヒトカルシウムチャネルサブユニットを発現する真核細胞を用いる。その
ようなアッセイは、構造がわずかに異なるアゴニスト及びアンタゴニストの中か
ら、ヒトカルシウムチャネルの活性を調節するために特に有用なものを選択する
ため、そしてサブタイプ又は組織に特異的なカルシウムチャネルのアゴニスト及
びアンタゴニスト活性を示す化合物を設計又は選択するための合理的薬物設計の
方法と共に用いられうる。これらのアッセイは、ヒトにおけるある種の障害の治
療のための、化合物の相対的な治療効力を正確に予測するべきである。さらに、
サブタイプ及び組織に特異的なカルシウムチャネルサブユニットが提供されてい
るため、組織特異的又はサブタイプ特異的な組換えカルシウムチャネルを有する
細胞を調製し、ヒトカルシウムチャネルの組織又はサブタイプに特異的な薬物の
同定のためのアッセイにおいて用いることができる。
【0161】 望ましくは、カルシウムチャネルサブユニットの発現のための宿主細胞は、そ
のタイプの内因性カルシウムチャネルサブユニットを産生しないか、又はリガン
ド結合アッセイにおける異種カルシウムチャネルサブユニットの検出、もしくは
機能アッセイにおけるカルシウムイオン流の生成のような異種カルシウムチャネ
ル機能の検出を実質的に妨害する量で産生しない。また、宿主細胞は、好ましく
は、生理学的濃度(一般的に、ナノモル又はピコモル単位の濃度)で、本明細書
において提供されるヒトカルシウムチャネルサブユニットのうちの一つ又は全部
を含むカルシウムチャネルと親和性を有する化合物と検出可能に相互作用する内
因性カルシウムチャネルを産生すべきでない。
【0162】 カルシウムチャネルに対する親和性を有する化合物を同定するためのリガンド
結合アッセイに関しては、好ましくは異種αサブユニットを少なくとも発現す
る細胞が使用される。異種αサブユニットを少なくとも発現する形質転換され
た真核細胞は、例えば、カルシウムチャネルと特異的に相互作用することが既知
である標識された化合物の相互作用を阻害する、試験化合物の能力を評価するこ
とにより、異種カルシウムチャネルに特異的に結合する試験化合物の能力を決定
するために用いられうる。そのようなリガンド結合アッセイは、完全な形質転換
された細胞又はそれらから調製された膜に対して実施されうる。
【0163】 異種カルシウムチャネル又はそれらのサブユニット、好ましくはα1Hサブユ
ニット含有カルシウムチャネルを含む膜と結合する、又はさもなければ相互作用
する、試験化合物の能力は、カルシウムチャネルに対する既知の親和性を有する
一つ又は複数の濃度の化合物の存在下及び非存在下で、そのような膜の結合能を
決定する、スカッチャードプロットのような、競合的結合解析のような、任意の
適当な方法を用いることにより決定されうる。必要に応じて、当業者に既知の方
法に従い設計された対照実験と、結果が比較されうる。例えば、陰性対照として
、一つ又は複数のサブユニットコーディング核酸で形質転換されていない宿主細
胞由来の、同一の処理を受けた膜調製物のアッセイと、結果が比較されうる。
【0164】 アッセイは、少なくとも一つのヒトカルシウムチャネルのサブユニット、好ま
しくはヒトカルシウムチャネルのαサブユニットを少なくとも発現する組換え
真核細胞の細胞膜を、試験化合物と接触させること、膜に特異的に結合し、膜上
の異種カルシウムチャネルの活性を変化させるか又は調節する、試験化合物の能
力を測定することを含む。
【0165】 好ましい実施態様において、アッセイは、ヒトカルシウムチャネルのαサブ
ユニットを含むカルシウムチャネルを有する組換え細胞を用いる。その他の好ま
しい実施態様において、アッセイは、ヒトカルシウムチャネルのβサブユニット
及び/又はヒトカルシウムチャネルのαサブユニットと組み合わされたヒトカ
ルシウムチャネルのαサブユニットを含むカルシウムチャネルを有する組換え
細胞を用いる。α、そして場合によりβ及び/又はαヒトサブユニットを含
み、場合によりヒトカルシウムチャネルのγサブユニットを含む異種カルシウム
チャネルを発現する組換え細胞は、そのようなアッセイにおける使用にとって特
に好ましい。
【0166】 いくつかの態様において、カルシウムチャネル活性を調節する化合物を同定す
るためのアッセイは、細胞を試験化合物及びカルシウムチャネル選択イオンを含
む溶液に曝した際の、異種機能的カルシウムチャネルを有する真核細胞のカルシ
ウムチャネル活性を測定すること、並びに測定されたカルシウムチャネル活性を
、試験化合物を含まない溶液中の同細胞又は実質的に同一の対照細胞のカルシウ
ムチャネル活性と比較することにより実施される。細胞は、チャネルが開口した
とき内向きイオン流を供給するために十分な濃度のカルシウムチャネル選択イオ
ンを有する溶液中に維持される。α、β、及びαヒトサブユニットのそれぞ
れを含み、場合によりヒトカルシウムチャネルのγサブユニットを含むカルシウ
ムチャネルを発現する組換え細胞は、そのようなアッセイにおける使用にとって
特に好ましい。そのようなアッセイを実施するための方法は、当業者に既知であ
る。例えば、アフリカツメガエル卵母細胞及びアセチルコリン受容体を用いて適
用される類似の方法については、Mishinaら((1985)Nature
313:364)を参照のこと。そのような卵母細胞及びナトリウムチャネル
を用いて適用される類似の方法については、Nodaら(1986)Natur
e 322:826−828を参照。アセチルコリン受容体を用いて実施された
類似の研究については、例えば、Claudioら((1987)Scienc
e 238:1688−1694)を参照のこと。転写に基づくアッセイも本明
細書において考慮される。
【0167】 機能的な組換え又は異種カルシウムチャネルは、当業者に既知の任意の方法に
より同定されうる。例えば、周知である、細胞のイオン選択膜を介したイオン流
を測定するための電気生理学的過程が用いられうる。本明細書において提供され
るサブユニットのうちの一つ又は複数をコードするDNAを含む組換え細胞の、
異種カルシウムチャネルを介したカルシウム選択イオンの流れの量及び持続時間
が、2つの電極及び全細胞パッチクランプ技術を用いた電気生理学的記録を用い
て測定されている。アッセイの感度を改善するため、組換えチャネルを介したカ
ルシウムイオン流を測定する際、非カルシウムイオン流及び内因性カルシウムチ
ャネルから生じるカルシウムイオン流を除去するか、又は減少させるため、既知
の方法が用いられうる。例えば、DHPBayK8644は、チャネルの開口状
態の持続時間を増加させることにより、L型カルシウムチャネル機能を特異的に
増強する(例えば、Hess,J.B.,et al(1984)Nature
311:538−544を参照)。チャネルの開口の延長は、カルシウムイオ
ン流の大きさ及び持続時間の増加をもたらす。脱分極電位コマンドによるイオン
チャネルの活性化の後、細胞膜の再分極時にテールイオン流が観察されうる。開
口したチャネルは、再分極時に閉口又は「脱活性化」するための明確な時間を必
要とし、この持続時間中にチャネルを通る流れがテールイオン流と呼ばれる。B
ayK8644は、カルシウムチャネルの開口イベントを延長させるため、これ
らのテールイオン流を延長させ、より明白にする傾向がある。
【0168】 これらのアッセイの実施においては、ヒトカルシウムチャネルのサブユニット
のうちの一つ又は複数を含む電位依存性ヒトカルシウムチャネルを発現する、安
定的もしくは一過性に形質転換された細胞又は注入された細胞が、望ましくは、
カルシウムチャネル活性を調節するカルシウムチャネルのアゴニスト及びアンタ
ゴニストのような薬剤を同定するためのアッセイにおいて用いられうる。試験化
合物がヒトカルシウムチャネルを介したカルシウムイオン又はその他のイオンの
流れを強化する、阻害する、又は変化させるか否かを決定するための、未知の活
性を有する化合物を含む、試験化合物のカルシウムチャネルアゴニスト又はアン
タゴニスト活性の機能的試験は、(a)細胞内へのカルシウムチャネル選択イオ
ンの流れを制御することができる異種機能的カルシウムチャネルを発現するよう
形質転換又は注入された真核細胞を、試験化合物の(i)存在下及び(ii)非
存在下で、カルシウムチャネル選択イオンを含む培地中で維持すること、(b)
異種カルシウムチャネルが実質的に閉口しており、細胞の内因性カルシウムチャ
ネルが実質的に阻害されている条件下で細胞を維持すること、(c)異種カルシ
ウムチャネル(好ましくは、実質的に異種カルシウムチャネルのみ)をカルシウ
ムチャネル選択イオンに対して透過性にさせる程度に、そしてそれに十分な時間
量で、工程(b)において維持された細胞の膜を脱分極させること、並びに(d
)試験化合物の存在下での細胞内へのイオン流の量及び持続時間を、試験化合物
の非存在下での細胞、又は実質的に類似の細胞内へのイオン流と比較することに
より、達成されうる。
【0169】 従って、アッセイは、異種機能的カルシウムチャネルを発現する本明細書にお
いて提供される細胞を用い、試験化合物が異種機能的チャネルを介したCa2+ 又はBa2+のようなカルシウムチャネル選択イオンの流れの大きさ及び持続時
間を強化する、拮抗する、又は調節する能力を、機能的、例えば電気生理学的に
測定する。細胞の組換えカルシウムチャネルを介して流れるイオン流の量は、電
気生理学的に直接決定することもできるし、又は細胞内で起こる、カルシウム(
又はその他の)イオンに依存して直接影響を受ける無関係の反応をモニターする
ことにより決定することもできる。カルシウムチャネルの活性を調べるための任
意の方法が、本明細書において提供される細胞及びアッセイと共に用いられうる
。例えば、カルシウムチャネル活性を調節する能力に関して化合物を試験するた
めの方法の一つの実施態様においては、カルシウムチャネル選択イオンに対して
感受性があり、かつ異種カルシウムチャネルを発現し、発現のため指示タンパク
質をコードする構造遺伝子と機能的に連結した転写調節因子をも含む真核細胞を
用いる反応の調節により、イオン流の量が測定される。指示遺伝子の転写のため
に用いられる転写調節因子は、細胞内において、Ca2+又はBa2+のような
カルシウムチャネル選択イオンに応答する。そのような転写に基づくアッセイの
詳細は、1990年8月7日に出願された同時係属中の同じ所有者の米国特許出
願第07/563,751号に基づく優先権を主張している1991年8月7日
に出願された同じ所有者のされているPCT国際特許出願第PCT/US91/
5625号に記載されている。同時係属中の米国特許出願第08/229,15
0号及び第08/244,985号に対応する同じ所有者の公開されたPCT国
際特許出願第PCTUS92/11090号も参照のこと。これらの出願の内容
は参照として本明細書に組み込まれる。
【0170】 α1Hサブユニットの生物物理学的及び電気生理学的特性 HEK細胞をDNAでトランスフェクトし、本明細書に提供された核酸を卵母
細胞に注入した。細胞はカルシウムチャネルを発現し、次にそれを電気生理学的
及び薬理学的に特徴付けした。これらの結果は実施例に記載されている。いずれ
のスプライス変異体も、T型チャネルに関連した特性を示すカルシウムチャネル
を形成した。変異体特異的な特性が観察された。
【0171】 特に、観察された多様性配列の領域がドメインIとIIとの間のサイトゾルリ
ンカー領域内に存在し、また高電位活性化カルシウムチャネルの類似配列領域は
、サイトゾル制御タンパク質の結合に関与していることから、α1Hー1及びα 1Hー2 に観察されたこれらのアミノ酸配列の差異は、これらの受容体の細胞制
御に対する感受性に顕著な差異をもたらすであろう。α1Hー1及びα1Hー2 に観察された生物物理学的特性の差異も、これらの2つの異なるチャネルサブユ
ニットの薬理学的化合物に対する感受性の差異の指標となる可能性が高い。従っ
て、α1Hー1又はα1Hー2サブユニットのいずれかを含む低電位活性化カル
シウムチャネルは、異なる制御調節を受け、薬学的化合物に対する異なる感受性
プロフィールを有する可能性が高い。例えば、アミロライドは神経芽細胞におけ
るT型イオン流を約50μMのIC50で遮断するが、海馬ニューロンにおいて
は300μMのアミロライドはT型イオン流を40%しか減少させない。
【0172】 これに関し、それぞれの異なるα1Hチャネルは、薬学的薬物化合物の開発の
ための別々のスクリーニング標的である。異なる神経細胞に対する、異なる神経
組織における薬物の差別的な効果は、インビボにおけるα1Hー1及び/又はα 1Hー2 の異なる発現パターンに基づき理解することができ、それは各サブタイ
プ及び関連する障害又は状態に特異的な薬物を同定するための手段を提供するで
あろう。観察されたα1Hサブユニットの配列の変化により、観察された異なる
天然組織におけるT型カルシウムチャネルの薬理学的多様性が説明され、標的と
なる治療薬候補を同定するためのスクリーニングアッセイを用いて、それぞれの
α1Hー1及びα1Hー2サブユニットが発現している場所を同定するための有
用な手段が提供される。
【0173】 異なる組織におけるα1Hー1及びα1Hー2の機能及び発現の差異は、α Hー1 又はα1Hー2サブユニットのいずれかを有するカルシウムチャネルを発
現する組換え細胞を用いるための基礎を提供する。これらの2つの異なるサブユ
ニットを含むカルシウムチャネルに差別的な影響を与えることができるアゴニス
ト及びアンタゴニストは、選択された神経部位、例えばα1Hー2を発現する心
血管系ニューロン及び心臓ペースメーカーニューロンに治療的介入を指向させる
ために有用であるはずである。α1Hサブユニットから形成されるカルシウムチ
ャネルは、膜電位の小さな変化で開口するが、閉口前に中程度のCa2+流のみ
を可能にする。二価イオンの中程度の流入を可能にすることにより、α1H含有
チャネルは、 (i)ニューロン細胞型及び非ニューロン細胞型における、膜電位差の微妙な変
化に応答して(例えば、T細胞のような免疫細胞の活性化において、代謝変化に
応答した腎細胞及び肝細胞の活性化において)、遺伝子発現の変化を誘発する経
路に関与し、 (ii)末梢ニューロン及び神経節などにおいて、いずれのニューロンが、そし
てどの程度、刺激に対して応答するかの決定などにおいて、シナプス伝達に対す
るニューロンの全体的な興奮可能性又は接近可能性の微妙な調節を行い、 (iii)慢性的疼痛のような刺激に対する神経応答の程度を決定し、 (iv)神経中枢におけるニューロン細胞が、(例えば、心臓ペースメーカーに
おける)過剰な発火突発に関連した有害な効果から保護されるよう、重要な神経
中枢におけるニューロンの感受性を制御し、 (v)(例えば、睡眠、性交、感情、抑うつ、疲労、及びその他の刺激又は状態
に応答する)脳の異なる領域におけるニューロンの不活性化の定常状態パターン
を設定するよう機能する、可能性が高い。
【0174】 α1H−1サブユニットを含むチャネルを発現する細胞の電気生理学 組換えα1H−1チャネルの発現 α1HサブユニットをコードするDNAによるHEK293細胞の一過性形質
転換の後、急速に活性化され不活性化されるBa2+イオン流が観察された。−
90mVというホールディング電位から様々な試験電位への段階的脱分極(st
ep depolarizations)により誘導されるBa2+イオン流(
15mM)を測定した。イオン流は、−50mVという試験電位で活性化され、
−20と−10mVの間でピークに達し、より正の+60mVの膜電位に戻った
。電荷担体としてCa2+(15mM)を用いても類似の結果が得られた。
【0175】 LVAチャネルを特徴付ける一つの特徴は、テールイオン流の遅い減少に反映
される、遅い脱活性化速度である。この減少の時間定数は、<300μsである
HVAチャネルよりもLVAチャネル(2〜12ms)では約10倍遅い。約1
5msにわたる、α1H−1により媒介されるテールイオン流の遅い減少が観察
された。多くの天然T型Ca2+チャネルに関して報告されているテールイオン
流の一成分指数関数的(monoexponential)減少と対照的に、α 1H−1 チャネルからのテールイオン流は、二成分指数関数的(biexpon
ential)減少を示した。−20mVの試験電位で、全イオン流の88.1
±33.8%を構成する遅い成分の減少速度は、天然T型Ca2+チャネルにお
いて観察されたのと類似の、2.1±1.06msであった(n=6)。速い成
分の減少速度は0.64±0.21msであった(n=6)。
【0176】 ヒトα1H−1サブユニットを一過性発現するHEK293細胞に対して、全
細胞パッチクランプ記録を実施した。段階的脱分極は、ゆっくりと活性化し急速
に不活性化する内側Ba2+イオン流を誘導した(−20mVにおいて2.8±
0.6及び16.9±5.3ms)。α1H−1の活性化曲線は、HVAca チャネルと比較して、左方向へシフトしている(V1/2:−29.5mV)
。α1H−1含有チャネルのテールイオン流は、ゆっくりと減少する(τ1、τ
2±1.0、0.6、±0.2ms)。Ba2+及びCa2+に対する透過性は
、事実上同一であった。電荷担体として110mMのba2+を用いて決定され
た単一チャネルコンダクタンスは9pSである。
【0177】 α1H−1含有Ca2+チャネルの活性化の電位依存性を、テールイオン流解
析から決定した。標準化されたテールイオン流の大きさを試験電位の関数として
プロットし、2つのボルツマン関数の計に良好に適合する二相性活性化曲線が明
らかとなった(図1)。個々のボルツマン項の最大の半分の活性化の電位は、以
下の通りであった。V1/2,A:−25.1±33.0mV;及びV1/2, :+25.5±39.9mV(n=11)。V1/2,Aに類似の値が、ヒト
TT細胞系におけるT型CA2+チャネルの活性化の電位依存性に関して以前に
報告されている(−27mV)。第二のボルツマン項V1/2,Bの値は、HV
A Ca2+チャネルに関して報告されたものと幾分類似している。類似のプロ
トコルを用い、HVA Ca2+チャネルのテールイオン流は、<300μsの
時間定数で減少したが、α1Hでは、V1/2,Bに近い試験電位において最も
突出していた。α1H含有Ca2+チャネルの開口のための利用可能性は、図1
に示されたように電位に関して膜に依存していた。最大の半分の定常状態不活性
化の電位(V1/2)は、−63.2±2.0mV(n=9)であった。
【0178】 α1HCa2+チャネルの急速な不活性化は、強く電位依存性であった。イオ
ン流の減少は、−50と+30mVの間の膜電位で、42.2±7.8から8.
8±3.8msまでの範囲の時間定数を含む指数関数で最も良好に記載された(
n=6;データは示されていない)。α1HCa2+チャネルの活性化動力学も
、電位依存性であり、時間定数は、−50と+30mVの間の膜電位で、9.9
±4.7から0.9±0.3msまでの範囲であった(n=8;データは示され
ていない)。α1HCa2+チャネルは、150msの脱分極の間に完全に不活
性化した。不活性化からの回復は、速い成分(τ=37±9ms;全チャネルの
16.5±4.6%)及び遅い成分(τ=37±61ms;全チャネルの78±
8.5%;n=3;データは示されていない)で約3s以内に起こった。HEK
293細胞からの全細胞記録において観察された組換えα1Hチャネルの生物物
理学的特性を確認するため、アフリカツメガエル卵母細胞におけるα1Hの機能
的発現を試験した。α1H転写物単独の注入後に実質的なイオン流(<1μA)
が観察された。活性化及び不活性化の動力学、並びに定常状態不活性化特性は、
HEK293細胞において得られたものと類似していた(実施例参照)。
【0179】 HEK293細胞におけるα1HCa2+チャネルの単一チャネル特性を、電
荷担体として110mMのBa2+を用いた細胞接着観察(cell−atta
ched recordings)において決定した。少なくとも3つのα1H を含むパッチからの−30mVの試験電位における単一チャネル記録は、チャネ
ルの開口が突然起こり、特に比較的強い脱分極では、100msの脱分極パルス
の最初の3分の1に主に集中していることを示した。時として、チャネル活性は
全範囲に拡散した。110mMのBa2+で−30mVで記録された全体平均イ
オン流の時間経過は、15mMのBa2+で−40mVで記録されたα1Hの全
細胞Ba2+イオン流と類似していた。二価濃度の増加による活性化曲線のより
正の電位へのシフトを補正するため、異なる電位におけるイオン流を比較した。
単一のイオン流電位関係により、9.06±0.22pSという単一の勾配コン
ダクタンス(slope conductance)が得られた(n=4)。
【0180】 電気生理学的特徴の要約 ヒトα1Hサブユニットを含有するカルシウムチャネルの生物物理学的特性を
評価した。一過性形質転換されたHEK293細胞からの全細胞観察は、α1H サブユニットを含有するカルシウムチャネルのイオン流電位関係、Ca2+及び
Ba2+に対する透過性、活性化の動力学、及び単一チャネルコンダクタンスが
、組織における天然T型カルシウムチャネルのそれらと類似していたことを示し
ている。A1Hチャネルからのテールイオン流は、二成分指数関数的減少を示し
、速い成分及び遅い成分を示した。極めて負の膜電位(−150から−100m
V)においては速い成分(τ:200〜450μs)が不活性化プロセスを支配
し、>50mVの脱分極電位においては遅い成分(2〜3ms)が支配した。静
止膜電位、即ち≦−80mVにおいては、両成分が同等に寄与している。
【0181】 薬理学的性質 α1H含有カルシウムチャネルの薬理学的性質はまた、天然T型カルシウムチ
ャネルについて観察されたものと一致した。興味深いことに、Cd2+あるいは
アミロライドに対するα1H−1含有カルシウムチャネルの感受性はHEK29
3細胞において発現した場合、アフリカツメガエル卵母細胞において発現した場
合に比べて約10倍低かった。
【0182】 データはヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットが天然T型カルシウムチ
ャネルと一致する性質を有することを示し、α1Hは、このように急速にぞうか
している低電圧活性化カルシウムチャネルのファミリーのメンバーを代表してい
る。
【0183】 LVA−カルシウムチャネル媒介障害の診断および臨床応用のための評価 臨床応用 様々な疾病状態の治療処置に関して、ヒトカルシウムチャネルサブユニットを
コードするDNAを利用できることにより、ある疾病状態の発生に関連する可能
性があるいくつかの遺伝子の変化(たとえば変異)の同定を可能にする。加えて
、実験室動物内に導入できうる合成DNA断片内へこれらの変異の特異的導入に
よって、あるいはそれらの効果を決定するためのインビトロアッセイ系によって
、このような疾病状態の動物モデルの創生が可能となる。
【0184】 また、遺伝的スクリーニングが、プローブとしてヌクレオチド配列を用いて実
施できる。したがって、適当なプローブによってスクリーニングして、1つある
いはそれ以上のカルシウムチャネルサブユニットの変性/修飾が含まれることが
疑われる病理状態である対象者からの核酸標本を内因性カルシウムチャネルのい
くつかに関して異常が存在するかどうかを決定できる。同様に、カルシウムチャ
ネル機能不全に関する疾病状態の家族病歴を持つ対象者を、その者もそのような
疾病状態にかかりやすくなるかどうかを決定するためにスクリーニングできる。
【0185】 スクリーニングアッセイが発揮でき、および疾病の処置の候補化合物が適用で
きる疾病は、心筋梗塞、心臓不整脈、心不全および狭心症等の心臓病処置が含ま
れるが、これらに限定されない。特定された化合物は、(a)外傷、心発作およ
び他の心傷害後の正常心速度および心出力を回復させるための補助治療、(b)
心筋梗塞(MI)、MI後および急性凝固の処置、において有用であろう。この
化合物は、左心室拡張期圧によって測定したような心収縮力を、血圧あるいは心
速度を変化させることなく増加させるのに有用であろう。急性凝固において、こ
の化合物は、コラーゲン沈着あるいは隔膜厚によって測定したような傷跡組織の
形成を、心臓抑制効果なしに減少させるのに効果があろう。特定された化合物は
診断及び診断のためのアッセイについて有用であり、化合物スクリーニングは、
血管処置および高血圧に関連して、血管拡張あるいは血管収縮を含む血管平滑筋
弾力を調節するために有用である化合物特定のために有用であろう。このような
化合物は、(a)たとえば外傷、手術あるいは心肺バイパス後の処置および麻酔
薬の心血管効果を低減するように設計した予防処置、(b)自律神経系による血
管反射および血圧調節を改善するための処置、において使用できる。化合物を特
定することが有用な状態は、泌尿系状態[a)手術、外傷、尿毒症および薬物副
作用による腎機能の治療、回復、(b)膀胱機能不全の治療、および(c)血液
透析患者の尿毒症ニューロン毒性および低血圧]、生殖系状態[(a)インポテ
ンツを含む生殖機能障害および(b)(Tチャネル調節の対象であろう自律調節
下の)アルコールインポテンツの治療]、肝臓系状態[急性アルコール過消費に
起因するニューロン毒性および自律神経系傷害の治療減少]、神経系状態[(a
)てんかんおよび間脳てんかんの治療、(b)パーキンソンの治療、(c)震え
および感染分泌および末梢血管血液供給の異常のような異常体温調節、(d)ノ
ルアドレナリン、ドパミンおよび他のホルモンの異常分泌を含む下垂体体視床下
部機能の異常の治療]、呼吸系状態[麻酔の施術後合併症のような異常呼吸の処
置]、内分泌系失調[インスリン、チロキシンおよびアドレナリンを含むホルモ
ンの過産生の処置等のホルモン異常分泌の処置]を含む。
【0186】 実施例 以下の実施例は、説明のために含まれているのであって、本発明の範囲を限定
することを意図するものではない。
【0187】 実施例1 : ヒトカルシウムチャネルα1H−1サブユニットをコードする
DNAの単離 msRNAおよびTT細胞を用い、変法PCRアプローチをαサブユニットを
コードする核酸を単離するために用いた。α1H−1サブユニットをコードする
核酸およびα1H−2と命名されたサブユニットをコードする核酸を単離した。
核酸をHEK293細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞に導入し、電圧ゲー
トカルシウムチャネルを発現させた。これらのチャネルは天然LVA、T型チャ
ネルと一致する薬理学的、電気生理学的性質を示す。
【0188】 A.材料と方法 核酸増幅: ヒトα1EサブユニットをコードするDNAの1945−1964ヌクレオチ
ドに相当する以下のセンス鎖20マーPCRプライマーを合成した。
【0189】 AC(A/C/G/T)GTGTT(C/T)CAGATCCTGAC(プラ
イマー1) 配列番号4 ヒトα1Eの3919から3940のヌクレオチドに相当するアンチセンス2
2−ヌクレオチドPCRプライマーも合成した。
【0190】 T(C/T)CCCTTGAAGAGCTG(A/C/G/T)ACCCC(
プライマー2) 配列番号1 このセンスおよびアンチセンスプライマーをTT細胞より調製したcDNAお
よびPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene Inc., San
Diego,CA)を用いる増幅反応で使用した。
【0191】 反応条件:95℃5分間に続きそれぞれ95℃20秒間、42℃20秒間、7
2℃2.5分間の5サイクルおよびそれぞれ95℃20秒間、続いて50℃20
秒間、最後に72℃2.5時間の30サイクル。この反応の産物は本明細書中(
以下)で「原PCR産物」と称する。
【0192】 第2の5’縮重オリゴヌクレオチドプライマーを、ヒトα1EサブユニットD
NA配列のヌクレオチド3598と3614間の部分と整列されたセンス鎖配列
一部分としてのC.elegansについて報告されている配列の一部[コスミ
ドC54D2(Genebank受託番号U37548)]に対応して設計した
。このプライマーは以下の配列を持つ。 GA(A/G)ATGATGATGAA(A/G)GT(プライマー3) 配列
番号10 プライマー3を原PCR産物およびプライマー2を用いるネスト増幅反応にて使
用した。
【0193】 クローンの単離および特性付け: 組換えcDNAライブラリーをTT細胞株よりpoly(A)選択したRN
Aを用いてファージベクターλgt10中に構築した。約1.5×10を、高
ストリンジェンシー条件(ハイブリット形成:50%ホルムアミド、5×SSP
E、5% Dednhardts、0.2%SDS、200μg/mlニシン精
子DNA中16−18時間、42℃、洗浄:65℃にてそれぞれ0.1×SSP
E、0.1%SDS中30分間6回洗浄)下で、これらPCR断片を用いるスク
リーニングした。
【0194】 ノーザンブロット分析: 多数の組織を、1レーンあたり2μgのpoly(A)RNA(Clont
ech、Palo Alto、CA)を用いたノーザンブロットにてスクリーニ
ングした。ブロットは上述したような高ストリンジェンシー条件で、全長α1H cDNAより産生した(すなわちヌクレオチド−6から7390)標識化断片に
よって調査した。
【0195】 ウエスタンブロット分析 (全)細胞膜を異なるα1Hサブユニットを発現しているHEK293細胞よ
り単離し、膜タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースに
写し、ポリクローナル抗α1H抗血清およびTBS−T緩衝液を用いてブロット
した。ブロットされたタンパク質を製造者の指示書に従って、Lumiglo試
薬キット(KPL、Gaithersburg、MD)を用いて可視化した。 B.RNA単離 ヒト髄質甲状腺癌細胞(TT細胞ATCC受託番号CRL1803)を10%
胎児ウシ血清を補足したDMEM培養液中、37℃、5%CO気中にて育て、
全細胞質RNAを製造者の指示書により「ミディプレップ(midiprep)
」RNA単離キット(Qiagen)を用い40枚の10cmプレートより単離
した。この手順は核膜がそのままの状態で残っており、それによって不完全にス
プライスされたRNA転写物を調製物より取り除くような穏やかな状態下、細胞
膜を溶解させる洗浄剤NP40の使用を含む。
【0196】 オリゴ(dT)−セルロースカラムを2回通すことで全細胞質RNAよりpo
ly(A)+RNAを単離した。簡単に記すと、全細胞質RNA2−3mgをN
ETS緩衝液(500mM NaCl、10mM EDTA、10mM Tri
s,pH7.4、0.2%SDS)に再懸濁させ、NETS緩衝液にて平衡化し
たオリゴ(dT)−セルロース(Collaboratire Researc
h)0.5 gを含むカラムにゆっくり通した。カラムを30mlのNETS緩
衝液にて洗浄し、polyA+RNAをETS緩衝液(10mM EDTA、1
0mM Tris,pH7.4、0.2%SDS)約3mlを用いて溶出した。
polyA+RNA含有緩衝液のイオン強度を500mM NaClに調整し、
本質的に上述したように第2のオリゴ(dT)−セルロースカラムに通した。第
2カラムからの溶出後polyA+RNAをエタノール中2回沈殿させ、H
にて再懸濁させた。
【0197】 C.ライブラリー構築 2本鎖cDNA(dscDNA)を標準の手法によって合成した(例えばGu
blerら(1985)Gene 25:263−269;Lapeyreら(
1985)Gene 37:215−220を参照のこと)。簡単に記すると、
第1cDNA鎖合成をTT細胞polyA+RNAを鋳型とし、ランダムプライ
マーおよびモロニーネズミ白血病ウイルス(Murine Leukemia
Virus)逆転写酵素(MMLV−RT)を用いて開始した。第2鎖を大腸菌
DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAリガーゼおよびRNaseHの組み合わせを
用いて合成した。
【0198】 平滑末端二本鎖断片を造り出すT4DNAポリメラーゼを用い、一本鎖DNA
の領域を二本鎖DNAに変化させた。EcoRI制限エンドヌクレアーゼ部位ア
ダプターである 5’CGTGCACGTCACGCTAG 3’(配列番号2) 3’GCACGTGCAGTGCGATCTTAA5’(配列番号3) を一般的な手順(例えばSambrookら(1989) IN:Molecu
lar Cloning、A Laboratory Manual、Cold
Spring Harbor Laboratory Press、8章)を
用いて二本鎖cDNAに連結した。EcoRIアダプターを連結した二本鎖DN
AをセファロースCL−4Bレジンを用いたカラムクロマトグラフィー、その後
1.2%アガロースゲル上でのcDNAサイズ選択によりフリーのあるいは連結
されていないアダプターを取り除き精製した。臭化エチレンを用いて溶解DNA
を視覚化した後、cDNAの2つの画分、>3.5kbおよび1.0−3.5k
bをゲルより単離し、ベクターλgt10に挿入した。
【0199】 cDNA挿入物を含む連結したλgt10をGigapackIII Gol
dパッケージング(Stratagene、La Jolla、CA)キットを
用いてインビトロでλファージビリオン中にパッケージングした。本方法を用い
>3.5kbcDNA画分に対する〜1.5×10の組換え体および1.0と
3.5 kB間のDNA画分に対する〜10×10組換え体のファージライブ
ラリーを入手した。
【0200】 D.ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットの一部分をコードするDNA
の単離 TT細胞内にコードされたヒトαサブユニットの小領域をコードするDNA
を縮重PCR−増幅(Williamsら(1994) J.Biol.Che
m 269:22347−22357)を用いて単離した。これらの増幅した断
片を、ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットの全長をコードするDNAの
単離のためのDNAプローブを生成するために使用した。
【0201】 上記のように、生成したオリゴヌクレオチドの2つの組を、既知のヒトα1カ
ルシウムチャネルサブユニット間で高頻度の配列同一性を有することが知られて
いるII−IIIループのフランキング領域を基に合成した。1)IIS5−I
IS6ループの領域に相補的な2つの産生ヌクレオチドを5’上流プライマー(
配列番号4および5)として合成した;2)IIIS5膜貫通部分の一部分に相
補的な2つの縮重オリゴヌクレオチドを3’下流プライマー(配列番号6および
7)として合成した。
【0202】 これらの縮重オリゴヌクレオチドをPfu DNAポリメラーゼ(Strat
agene、La Jolla、CA)を用いたネストPCR増幅反応でプライ
マー対として使用し、反応を製造者の指示に従って行った。サンプルを商業的に
入手可能なサーモサイクラー(Perkin−Elmer)内に設置し、増幅反
応を、95℃5分間1サイクル、95℃20秒間/42℃20秒間/72℃2.
5分間の5サイクル、95℃20秒間/50℃20秒間/72℃2.5分間の3
0サイクル、および72℃7分間1サイクルで行った。増幅DNA産物をアガロ
ースゲル上の電気泳動にかけ、ゲルを一般的な手法を用いて精製した。
【0203】 E.ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットの一部分をコードするDNA
の増幅 ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットの一部をコードするDNAを増幅
するために、ドメインIIIのある領域に部分的に相補的である3つの縮重ヌク
レオチド(配列番号8−10)を5’プライマーとして合成した。この領域は上
記セクションCのすべての増幅αコード断片中に包含されている。この増幅産
物を鋳型として用いてヒトα1Hサブユニットの一部をコードするDNAを増幅
するために、IIIS2(配列番号8および10)内の配列を基にした2つのヌ
クレオチドを第1PCR反応(配列番号6および7)で用いた3’IIIS5膜
貫通プライマーとともに5’プライマーとして用いた。
【0204】 増幅DNA産物をpCR−Bluntベクター(Invirogen)内にサ
ブクローン化し、プラスミドDNAを単離した形質転換体より精製し、それぞれ
の挿入物のDNA配列を決定した。既知のヒトαカルシウムチャネルサブユニ
ットとおよそ55−60%の配列同一性を有する340bp断片(配列番号48
;配列番号49のヌクレオチド4271から4610)を同定した。PCR1と
呼ばれるこのDNA断片をヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットをコード
するDNAを単離するためのDNAプローブとして使用した。
【0205】 F.個々のクローンの単離および特性化 ハイブリッド形成および洗浄条件 cDNAライブラリーのスクリーニングのための固定化DNAへの放射標識核
酸のハイブリッド形成、DNAサザン転移、あるいはノーザン転移を、標準ハイ
ブリッド形成条件(ハイブリッド形成:50%脱イオンホルムアミド、200μ
g/ml超音波処理ニシン精子DNA(Cat#223646、Boehrin
ger Mannheim Biochemicals、 Indianapo
lis、IN)、5×SSPE、5×Denhardt’s、42℃;洗浄0.
2×SSPE、0.1%SDS、65℃)で常法により行った。SSPEおよび
Denhardt’sの作製法および脱イオンホルムアミドの準備は、例えば、
Sambrookら(1989) Molecular Cloning、 A
Laboratory Manual、 Cold Spring Harb
or Laboratory Press、8章に記載されている。あるハイブ
リッド形成においては、標準ハイブリッド形成条件として記載された、50%脱
イオンホルムアミドを10%脱イオンホルムアミドに置き換える低ストリンジェ
ンシー条件を使用した。
【0206】 フィルターからの非特異的プローブを取り除くための洗浄条件は以下に記載の
高、中、低ストリンジェンシー条件であった。
【0207】 1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃ 2)中ストリンジェンシー:0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃ 3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE、0.1%SDS、50℃ 同等のストリンジェンシーが、他の緩衝液、塩および温度を用いて得られること
が理解される。
【0208】 >3.5kb挿入物を含むTT細胞ファージライブラリーのおよそ1.5×1
組換え体を平板培養し、二重リフトをそれぞれのプレートから調製した。こ
れらのリフトを標準ハイブリッド形成条件を用いて放射標識PCR1を用いてプ
ローブ探査し、フィルターを洗浄し、およそ100の陽性プラークを特定した。
まず5つの陽性物λ1.201−λ1.205をプラーク精製および特性化のた
めに選択した。
【0209】 λ1.201−λ1.205より単離した精製DNAのEcoRIを用いた制
限エンドヌクレアーゼ消化により、クローン1.201は〜350bpのPCR
1断片の原挿入物を含み、一方、クローン1.202、1.203、1.204
および1.205は、それぞれ〜1100、〜4000、〜2600および〜2
200ヌクレオチドの挿入物を含むことが示された。
【0210】 F.ヒトα1HカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAの単離と
全長α1HサブユニットをコードするDNAの構築 1.部分ヒトα1Hクローンの照合リスト 全長α1HcDNA配列を配列番号49に示す。α1Hの特性化に使用した部
分cDNAクローンのリストおよび各クローンの全長α1HcDNA配列におけ
るヌクレオチド位置を以下に示す。これらのクローンの単離および特性化を以下
に記載する。
【0211】 1.305 配列番号49のヌクレオチド1から3530 1.205 配列番号49のヌクレオチド2432から4658 1.204 配列番号49のヌクレオチド3154から5699 PCR1 配列番号49のヌクレオチド4271から4610 1.202 配列番号49のヌクレオチド4372から5476 1.203 配列番号49のヌクレオチド3891から7898 2.クローンの特性化 それぞれの挿入物のDNA配列決定により、クローン1.202は配列番号4
9のヌクレオチド4372から5476に相当する1,105bp挿入物を含み
、クローン1.203は配列番号49のヌクレオチド3891から7898に相
当する4,008bp挿入物を含み、クローン1.204は配列番号49のヌク
レオチド3154から5699に相当する2,546bp挿入物を含み、クロー
ン1.205は配列番号49のヌクレオド2432から4658相当する2,2
27bp挿入物を含むことがわかった。これらの4つのDNAクローンは、完全
なカルボキシ末端および枠内転写終止コドンを含む、α1Hサブユニットの大部
分をコードする約6.6kbの読みとり枠をコードする重複配列を含んでいる。
【0212】 クローン1.205(配列番号49のヌクレオチド2432からヌクレオチド
2979)の5’末端からの548bpEcoRI−NcoI制限エンドヌクレ
アーゼ断片を用いて、ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットの5’末端を
コードするDNAを単離して、高ストリンジェンシー条件下にてTT細胞cDN
Aライブラリーを再スクリーニングした。簡単に記すると、>3.5kbの挿入
物を含むヒトα1Hカルシウムのアミノ末端をコードするDNAを、精製した制
限断片とインキュベートし、42℃でハイブリッド形成し、上述のように高スト
リンジェンシー条件下で洗浄した。
【0213】 1つの組換え体(クローン1.305)が、その3’末端がクローン1.20
5(配列番号49のヌクレオチド2432からヌクレオチド3530)の5’末
端とおよそ1.1kbの配列同一性を持つ3,530ヌクレオチド挿入物を含み
、またクローン1.205(配列番号49のヌクレオチド2433から2438
)の5’末端に位置するEcoRI部位の上流の2.4kb配列をも含むことが
わかった。この配列は、コンセンサスリボゾーム結合部位(配列番号49のヌク
レオチド244からヌクレオチド248)を含む248bpの5’非転写配列と
共にATG開始コドン(配列番号12のヌクレオチド249からヌクレオチド2
51)およびアミノ末端の1,094アミノ酸をコードしている。
【0214】 2つの他の組換え体が(配列番号13および14)、クローン1.305の3
’末端と配列同一の約1.1kbを持つが、膜貫通ドメインIおよびII間に位
置する伸長細胞内ループに相当するDNA配列の長さが異なることがわかった。
【0215】 3.全長α1H−1コードDNAクローンの構築 これらの部分cDNAクローンの一部をα1Hコード断片中に存在する共通制
限エンドヌクレアーゼ部位を用いて連結して全長α1HcDNAを調製すること
ができる。全長α1Hコードクローンを、1)クローン1.305内に存在する
α1Hの5’末端をコードするDNAとクローン1.205とを共通EcoRI
部位(配列番号49のヌクレオチド2433から2438)を用いて結合させる
こと、2)α1Hのアミノ末端をコードする得られたクローンを、クローン1.
205および1.203(SEQ ID NO12のヌクレオチド4517−4
522)間に存在する共通EcoRV制限エンドヌクレアーゼ部位を用いてクロ
ーン1.203内にコードされたα1Hのカルボキシ末端配列と結合すること、
によって構築した。得られた全長ヒトα1Hカルシウムチャネルサブユニットは
、長さが2,353アミノ酸残基である(配列番号12)。発現構築物は、pC
DNA1(Invitrogen、San Diego、CA)内に組立てられ
、コンセンサスリボソーム結合部位(RBS)に続いて全長α1Hコード配列を
含んでいた(RBSを含むpcDNA1−ベースのベクターの記述として、たと
えば国際PCT出願第PCT/US94/09230号、許可米国出願番号第0
8/149,097号、米国特許第5,851,824号および米国特許第5,
846,756号を参照のこと)。得られた構築物はpcDNA1α1HRBS
と命名された。
【0216】 実施例2 ヒトカルシウムチャネルα1H−2サブユニットのクローニング T型チャネルイオン流は、異なる生物理学的および薬理学的特性を持っていて、
異なる細胞型間で異質であり、ここにそして以下の実施例で示すように、異なる
細胞での異なるαサブユニットサブタイプの発現により得られる。
【0217】 A.α1H−2のクローニング 上記したように、中央細胞質ループII/III領域中のヒトα1A−α1E 配列の整列に基づいて選んだPCRプライマー1および2およびプライマー3(
GA(A/G)ATGATGATGAA(A/G)GT 配列番号10)を、ヒ
トαコード核酸配列と整列させたコスミドC54D2中のα関連シーエレガ
ンスC.elegans配列を考慮して選んだ。
【0218】 α関連コード核酸を、プライマー1および2をまず縮重増幅反応で用い、引
き続きプライマー3およびプライマー2をネストPCR増幅で用いて、TT細胞
ポリ(A)+RNAよりふたつの工程で増幅した。この結果、α1Hサブユニッ
トの一部をコードする340ヌクレオチド断片が増幅された。この増幅産物を、
ライブラリーをスクリーニングし、全長α1Hサブユニットをコードする核酸ク
ローンを単離するためのプローブとして使用した。
【0219】 α1H−1配列に基づいたプライマーおよび種々の組織についてRT−PCR
を用いて、α1H−1についてインフレーム欠失を持つ転写物をTT細胞ライブ
ラリーより特定し、単離した。この欠失にまたがる断片単離した。これらは、整
列させると957塩基対欠失をのぞくα1H−1配列に一致した。全長クローン
(α1H−2と命名(配列番号16を参照))を、これらの断片より構築し、R
BSとともにpcDNA1中に挿入して得られたα1H−1,α1H−2転写物
は試験したすべての組織中で特定された。
【0220】 α1H−2をコードする核酸はRNAの選択的スプライシングの結果であり、
TT細胞cDNA、扁桃cDNA、尾状核cDNA、被殻cDNA、心臓cDN
A、腎臓cDNA、肝臓cDNAを含む多数の組織と細胞からのPCR産物で検
出されたような、α1H−1の957ヌクレオチド枠内欠失を持つ。PCRプラ
イマーは、(1)ヌクレオチド1373から1393でのα1H−1のセンス鎖
に相当する5’プライマー、(2)ヌクレオチド2657から2680でのα H−1 のアンチセンス鎖に相当する3’プライマーであった。
【0221】 配列番号12および15はα1H−1のヌクレオチド配列を示す。α1H−1 のためのコード配列は、ヌクレオチド249より始まり、7310で終わる。(
配列番号12および15は小さな部分では異なり、たとえばアミノ酸2230(
塩基6983−6985)は配列番号15ではアスパラギン酸(Asp GAC
)であり、SEQ ID NO12ではグルタミン酸(Glu GAA)である
【0222】 配列番号16はα1H−2スプライシング変異体のヌクレオチド配列を示す。
α1H−2に対するコード配列は249で始まり6353で終わる。
【0223】 B.要約 全長α1HT型チャネルサブタイプをコードする核酸クローンをTT細胞より
単離した。他のすでにクローン化されたHVAαサブユニットと全体的にヌク
レオチド配列形態が似ているが、α1Hサブユニットは、大きなII/IIIド
メインループ、共通α相互作用部位の欠損、変化したイオン選択性特性を含む
、いくつかの通常でない特徴を含んでいた。α1H−1およびα1H−2と命名
された2つのα1Hのアイソフォームを特定した。第一のα1H−1は、大きい
方であり、第2のα1H−2は小さい方であり、α1H−1のII−IIIルー
プ内に957ヌクレオチド欠失を含んでいるα1H−1のヌクレオチド配列を配
列番号12および15に示し、α1H−2のそれを配列番号16に示す。α1H −2 は、α1H−1の957ヌクレオチド欠失を含み、その結果ドメインIIお
よびIII間の細胞内ループ中から319アミノ酸(α1Hのアミノ酸47
0−788)を欠失している。スプライシング変異体欠失を、試験したすべての
細胞および組織内でのPCRによって同定した。これらはTT細胞、扁桃、尾状
核、被殻、心臓、腎臓および肝臓細胞を含む。脳内では、扁桃、尾状核、被殻で
主として発現している。腎臓、肝臓および心臓では高いレベルである。α1H− に対するコード配列はヌクレオチド249で始まりヌクレオチド7310で終
わる一方、α1H−2の配列はヌクレオチド249で始まりヌクレオチド635
3で終わる。
【0224】 ポリクローナル抗血清をα1Hサブユニットの推定II−III細胞内ループ
領域に対して調製した。HEK293細胞における一過性発現の後、適切な大き
さのタンパク質をSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングによって検
出した。ヒトα1Hチャネルの機能特性を実施例3に示す。
【0225】 実施例3 α1H−1およびα1H−2サブユニットを含むチャネルの生物理
学的、薬理学的特性 A.材料と方法 カルシウムチャネルサブユニットの生物理学的および薬理学的研究の材料と方
法を、すでにクローン化されているサブユニットを参照しながら本実施例と実施
例4で記述する。これらの方法あるいは当業者に知られている他の同様の方法を
、本実施例で記載されているように、ヒトα1H−1サブユニットのこれらの特
性を研究するために使用した。
【0226】 電気物理学:HEK293細胞を、標準Ca2+リン酸手法(たとえば以下の
実施例、またトランスフェクション手法としてWilliamsら(1992)
Neuron、8:71−84を参照のこと)により、6μg pcDNA1α 1H RBSを用いて一過性トランスフェクタントした。ヒトCD発現プラスミド
であるpCMVCD4を、トランスフェクトされた細胞を特定するためのマーカ
ーとしてトランスフェクション中に含めた。データ記録の前に、細胞を哺乳類リ
ンガー液にて洗浄し、M−450 CD4 Dynabeads(Dynal
Inc.,Lake Success,NY)の1/1000希釈を含む溶液中
およそ10分間インキュベートし、過剰ビーズを取り除くために哺乳類リンガー
液にて再洗浄した。全細胞パッチクランプ技術を用いてトランスフェクションに
引き続きトランスフェクトした細胞内のα1Hチャネルの機能的発現を24−4
8時間評価した。すべてのデータ記録を室温(19−24℃)にて単一細胞で行
った。全細胞イオン流をAxopatch−200A(Axon Instru
ments, Foster City,CA)あるいはanEPC−9(HE
KA elektronik, Lambrecht, Germany)パッ
チクランプ増幅器を用いて記録し、1kHz(−3 dB、8−極Bessel
フィルター)で低通過濾波し、特記しない限り、10kHzの速度でデジタル化
した。ピペットをボロシリカガラス(TW150、WPI、Sarasota、
FI)より作製し、Sylgard(Dow Corning Midland
, MI)でコートし、内部溶液で満たしたとき1.1−2.0Ωの抵抗を持た
せた。直列抵抗は2−5MΩであって、70−90%直列抵抗補正を一般的に使
用した。ピペット溶液は135mM CsCl、10mM EGTA、1mM
MgCl、10mM HEPES(pH7.3、Cs−OHにて調製)を含ん
だ。外部溶液は、15mM BaClあるいはCaCl、150mM コリ
ンCl、1mM MgCl、5mM TEA−OHおよび10mM HEPE
S(pH7.3、HClで調整)を含んだ。単一チャネルデータ記録をパッチク
ランプ技術の細胞結合構造を用いて入手した。ピペット溶液は110mM Ba
Cl、10mM HEPES(pH7.3、TEA−OHにて調整)を含んだ
。個々のHEK293細胞の膜電位を140mMアスパラギン酸カリウム、5m
M EGTAおよび10mM HEPES(pH 7.3)を含む溶液でゼロに
設定した。単一チャネルデータ記録における膜電位は液体接合電圧オフセット(
+12mV)について補正しなかった。線形リークおよび残余容量イオン流をP
/4手順を用いてオンラインで削除し(全細胞記録)、なんの活性も持たない状
態で単一チャネル掃引をはかった(単一チャネル記録)。
【0227】 薬剤:ミベフラジル(Ro40−5967)を、F.Hoffman−LaR
oche氏よりいただいた。ニモジピンおよび(−)Bay K−8644をR
esearch Biochemicals(Natick, MA)より入手
した。ペプチド毒素ω−CgTx GVIA(コノトキシン)およびω−CmT
x MVIIC(コノトキシン)をBachem(Torrance, A)よ
り入手した。すべての残りの化合物をSigmaより入手した。保存溶液をジメ
チルスルフォキシド(アミロライド、ニモジピン)、エタノール((−)Bay
K−8644)、あるいは水(ベラパミル、ミベフラジル、エトスクシミド、
ω−CmTx GVIAおよびω−CmTx MVIIC)中で調製し、4℃で
保存した。薬剤を保存溶液よりそれぞれの実験日に新たに調製し、<0.5ml
/分の流速にて蠕動ポンプによって適用した。最終試験溶液中の最大溶媒濃度は
<0.1%である。これらの濃度において、これらの溶媒はα1H媒介イオン流
になんの影響も及ぼさない。
【0228】 アフリカツメガエル卵母細胞研究: アフリカツメガエル(Xenopus
laevis)をNasco(Fort Atkinson、 Wiscons
in)より購入した。卵母細胞を88mM NaCl、1mM KCl、0.8
2mM MgSO、2.4mM NaHCO、10mM Hepesおよび
1.5mg/ml コラゲナーゼA(Worthington, Freeho
ld NJ:タイプ4、1.5時間およびその後Sigma St. Loui
s MO、タイプ1A、0.5時間)を含む無Ca2+溶液中でインキュベート
した。コラゲナーゼ処理に引き続き卵母細胞を88mM NaCl、1mM K
Cl、0.91mM CaCl、0.82mM MgSO、0.33mM
Ca(NO、2.4mM NaHCOおよび10mM Hepesを含
んだカエルリンガー液に移した。これらの条件下、濾胞細胞層を手で除去する必
要はなかった。卵母細胞にα1Hサブユニットをコードするインビトロ転写物の
50ng(1μg/ml)を注入し、記録の前に19℃で3−5日間インキュベ
ートした。インキュベート培養液はペニシリン/ストレプトマイシン(Sigm
a;10ml/L)、ゲンタマイシン(Sigma;1ml/L)および5%心
不活性ウマ血清(Gibco, Gaithersburg, MD)を含むカ
エルリンガー液であった。マイクロエレクトロビーズを水平引き抜き器具(Mo
del P80, Sutter Instruments, Novato,
CA)上に引き抜き、3 M KClでみたした。そして0.5−2.0MΩ
の範囲での抵抗についてスクリーニングした。データをGeneClamp 5
00を用いて記録し、1−5kHzにてデジタル化し、pClampあるいはA
xographソフトウェア(Axon Instruments)を用いたオ
フライン分析のため磁気ディスク上に保存した。Ba2+あるいはCa2+イオ
ン流をそれぞれpH7.3で、36mM TEA−OH、2.5mM KOH、
75mMマンニトール、10mM HEPESおよび15mM Ba(OH) あるいはCa(OH)を含む溶液中で記録した。イオン流をP/6手順を用い
てリーク控除した。Ca2+活性化クロライドイオン流を遮断するため、ニフル
ム酸(300μM)をBa2+あるいはCa2+へのα1Hチャネルの相同的透
過性を測定する実験に含めた。すべての値は特記しない限り平均±S.D.で報
告した。(上記)薬剤を重力−供給−灌流系によりアプライした。本明細書で使
用した濃度では、溶媒はα1H−媒介イオン流になんの影響も与えない。
【0229】 B.電気物理学 1.イオン流−電圧特性 α1H−1Ca2+のはやい不活性化は強く電圧に依存している。イオン流減
少は、−50と+30mVの間の膜電位での42.2±7.8から8.8±3.
8mssの範囲の時間定数での指数関数によって最もよく示された(n=6、デ
ータは示していない)。α1H−1Ca2+チャネルの活性化動力学はまた、−
50と+30mVの間での膜電位に対する9.9±4.7から0.9±0.3m
ssの範囲の時間定数で電圧に依存していた(n=8、データは示していない)
。α1H−1Ca2+チャネルは150−ms脱分極の間完全に不活性化する。
不活性化からの回復は、速い成分(τ=37±9mss、すべてのチャネルの1
6.5±4.6%)および低成分(τ=37±61mss、すべてのチャネルの
78±8.5%、n=3、データは示していない)である〜3sの期間起こった
。HEK293細胞の全細胞記録で観察された組換え体α1Hチャネルの生物理
学的特性を確認するために、アフリカツメガエル卵母細胞中のα1H機能発現を
試験した。α1H転写物のみを注入した後の実質イオン流(<1μA)を観察し
た。
【0230】 追跡からのBa2+あるいはCa2+に関するイオン流−電圧相互関係を決定
した。HEK293細胞のα1H−1サブユニットをコードするDNAでの一過
性トランスフェクションに引き続き、急激に活性化し不活性化するBa2+イオ
ン流が観察された。−90mVの保持電位からの様々な試験電位への脱分極工程
から導き出したBa2+イオン流を測定した。イオン流は−50mVの試験電位
で活性化し、−20と−10mVの間でピークに達し、+60mVよりもより陽
性な膜電位に戻る。同様の結果を電荷担体としてCa2+(15mM)で入手し
た。
【0231】 2.活性化および不活性化の電圧依存性 図1はHEK293細胞で一過性に発現しているヒトα1Hカルシウムチャネ
ルの活性化(m∞)および安定状態不活性化(h)の電圧依存性を示す。活性化
(m∞)の電圧依存性をテールイオン流分析により決定した。テールイオン流を
+60mVでえられた最大ピークテールイオン流に関して標準化し、試験電位に
対してプロットした(オープンシンボル、平均±SEM;n=11)。データは
2次ボルツマン関数ms∞=FA[1+exp(−(Vtest−V1/2, )/k)]−1+F [1+exp(−(Vtest−V1/2,B)/
)]−1、F=0.67、V1/2,A=−21.5mV、k=7.5
、F=0.33、V1/2,B=25.5mV、K=14.7の合計に適合
した。安定状態不活性化(h∞)を−20mV(p1)、つづいて−20mV(
p2)までの2次試験パルスに先んじる5mV減少(pHold)における20
秒間の−100mVから−10mVまでのプレパルスによる−100mVの保持
電位より決定した。標準化したイオン流の大きさを保持電位に対してプロットし
た(クローズシンボル、平均±SEM、n=9)。データはボルツマン関数 h
∞=[1+exp((Vhold−V1/2)/k)]−1、V1/2=−63
.9mV、K=3.9mVに適合した。
【0232】 3.テールイオン流非活性化 テールイオン流非活性化プロフィルを、一過性にトランスフェクトしたHEK
細胞中のα1H−1カルシウムチャネルについて研究した。LVAチャネルの1
つの顕著な特徴は、その非活性化の低速度であり、これはテールイオン流の減少
を示すことに反映している。この減少の時間定数はLVAチャネル(2−12m
ss)に対して、HVAチャネル<300 μsに対してよりも10倍遅い。〜
15mssの期間を超えるα1H−1媒介テールイオン流の遅い減少が観察され
た。多くの天然T型Ca2+チャネルで報告されたテールイオン流の単指数的な
減少に比べて、α1H−1チャネルからのテールイオン流は二次指数的減少を示
した。−20mVの試験電位において、全イオン流の88.1±33.8%を含
む示された成分の減少速度は2.1±1.06mss(n=6)であり、これは
天然T型Ca2+チャネルで観察されたものと同じである。より速い成分の減少
速度は、0.64±0.21mss(n=6)であった。α1H−1媒介テール
イオン流のゆっくりとした減少は15mssの期間を超えて観察された。
【0233】 Ca2+チャネルを含むα1H−1の活性化の電圧依存性をテールイオン流分
析より決定した。標準化したテールイオン流振幅を試験電位の関数としてプロッ
トしたところ、それは2つのボルツマン関数の合計によく適合した2相活性化曲
線を示した(図1)。個々のボルツマン項の半最大活性化の電位は、V1/2, =−25.1±33.0mVおよびV1/2,B=+25.5±39.9mV
(n=11)であった。V1/2,Aと同様の値がすでにヒトTT細胞株中での
T型Ca2+チャネルの活性化の電位依存性において報告されてきた(−27m
V)。第2ボルツマン項V1/2,Bは、HVACa2+チャネルについて報告
されてきたものと幾分同じである。同様の手順を用い、HVACa2+チャネル
のテールイオン流は<300 μsの時間定数によって減少する一方、α1H
は試験電位でのもっとも顕著なものはV1/2,Bに近い。開口のためのCa チャネルを含むα1Hの利用性は、図1で示したように電位に対する膜に依存
している。半最大定常状態不活性化電位(V1/2)は−63.2±2.0mV
(n=9)であった。
【0234】 4.α1Hチャネルの活性化および不活性化の動力学 図2はヒトα1Hカルシウムチャネルの活性化(図2A)および不活性化(図
2B)の動力学を示す。活性化および不活性化の動力学を、指数関数をイオン流
の増加(図2A)および減少(図2B)相に適合させることで、イオン流追跡よ
り決定した。活性化および不活性化の電圧依存性はほぼ指数関数に従う。
【0235】 5.不活性化からの回復 HEK293細胞で一過性に発現したα1Hチャネルの−20mVまでの脱分
極パルスを用いた二重パルス手順を用いることで誘導される不活性化からの回復
を評価した。回復したチャネルの数をインターパルス間隔に対してプロットした
。データ点は式l=Ao+A1exp(−t/τ1)+A2exp(−t/τr
2)、r1:35mss、A1:0.165、r2:337mss、A2:0.
788の2次指数関数に適合した。
【0236】 6.ヒトα1Hカルシウムチャネルからの単一チャネル記録 HEK293内のα1HCa2+チャネルの単一チャネル特性を電荷担体とし
ての110mM Ba2+を用いて細胞接着記録で決定した。少なくとも3つの
α1Hを含むパッチからの−30mVの試験電位での単一チャネル記録は、チャ
ネル開口が破裂で起こり、また主に100−ms脱分極パルスの最初の3番目に
おいて、特に強い脱分極を伴って集中発生することを示した。時折チャネル活性
化は全範囲を通して広がっていた。110mMBa2+で−30mVにおいて記
録した集団平均イオン流の時間経過は、15mM Ba2+で−40mVにて記
録したα1H全細胞Ba2+イオン流と同様であった。2価濃度の上昇による活
性化曲線のより陽極電位への移動を補うために、イオン流を異なる電位にて比較
した。単一イオン流電圧の関係が9.06±0.22pS(n=4)の単一傾斜
コンダクタンスを産出した。
【0237】 C.アフリカツメガエル卵母細胞内のヒトα1Hカルシウムチャネルの生物理
学的特性付け 1.概要 クローン化したヒトα1Hカルシウムチャネルをアフリカツメガエル卵母細胞
内のα1H−1mRNAの一過性の発現によってさらに特性化した。α1H−1 mRNAだけの注入は結果、15mM Ba2+内でのデータ記録のとき、大き
なイオン流すなわち典型的には>1μAの発現をもたらした。α1Hチャネルは
、−30mVと−40mVの間でのピーク反応を伴って、およそ−50mVにて
活性化された。これは低電圧活性化チャネルと一致する。α1HチャネルのCa 2+ に対する透過性はBa2+に対してよりもわずかに高い。高電圧チャネルに
比べて、α1Hチャネルはゆっくりと活性化され、(I−V曲線のピークでτ=
5.7±1.0mssであり−20mVで3.5±0.5mssである)、素早
く不活性化された(I−V曲線のピークでτ=13.4±1.9mssであり−
20mVで12.2±1.5mssであった)。卵母細胞に発現したα1Hチャ
ネルは相対的に陰性膜電位での定常状態不活性化に感受性であり(V1/2=−
64.5±1.0mV)、不活性化から素早く回復した(回復のr〜330ms
s)。これらの値はHEK293細胞で発現したα1Hチャネルから入手したも
のにとても類似している。卵母細胞でのα1Hチャネルを通したBa2+イオン
流は、それぞれIC50値 6.3μMおよび8.3μMでのNi2+およびC
2+による遮断に感受性であった。アンタゴニストの試験で、卵母細胞で発現
しているα1Hチャネルを通したα1H媒介Ba2+イオン流をアミロライド(
IC50〜16μM)およびミベプラジル(IC50〜2μM)のみ明らかに阻
害した。結果をまとめて考えると、α1Hは低電圧活性化カルシウムチャネルサ
ブユニットを表していることが示される。
【0238】 2.α1HチャネルBa2+イオン流の活性化および不活性化特性 Ba2+(15mM)イオン流に対するイオン流−電圧関係をヒトα1Hサブ
ユニットをコードするmRNAを注入した単一卵母細胞より記録した。Ba2+ イオン流は、約−50mVの膜電位にて活性化され、−30mVにてピークに達
する。ヒトα1Hチャネルの関連する不活性加速度を、異なる卵母細胞調製物に
おいて調査し、α1A−2α2bδβ4aチャネル、α1B−1α2bδβ3a
チャネルおよびα1E−3α2bδβ1bチャネルの不活性化速度と比較した。
Ba2+イオン流を、α1Hチャネルに対して−120mVから−30mVの範
囲での、あるいは他のそれぞれα1A、α1Bおよびα1E含有チャネルに対し
て−90mVから0mVあるいは+10mVまでの範囲での電圧制御を用いて導
き出した。示された結果は、高電圧活性化α1A−2α2bδβ4a、α1B−
1α2bδβ3aおよびα1E−3α2bδβ1bカルシウムチャネルと比較し
たときのα1Hチャネルの関連する電気陰性活性化範囲を表す。
【0239】 3.アフリカツメガエル卵母細胞に発現したヒトα1Hの浸透性、不活性化お
よび生物理学特性 ヒトα1Hチャネルの浸透性および不活性化特性をBa2+およびCa2+
オン流を研究することで卵母細胞で調査した。この結果は、α1Hサブユニット
を発現している卵母細胞においてBa2+イオン流がCa2+イオン流よりも有
意義に多くはないことを示す。示された結果は、α1H媒介Ba2+イオン流に
ついて標準化定常状態不活性化曲線を示し、ここでV1/2は−64.5±1.
0mVの値と同じと計算された。二重パルス手順を、すなわちパルス間の時間間
隔を増加させて、不活性化からのα1Hチャネルの回復を試験するのに用いた。
チャネルの相対的回復の結果をパルス間間隔(ms)に対してプロットし、その
結果は、330mss(n=5)の平均時間定数で、α1Hチャネルイオン流を
すぐに不活性化から回復することを示した。
【0240】 4.カドミウム、ニッケル、アミロライドおよびミベフリジルはヒトα1H
ャネルBa2+イオン流に拮抗する。 Cd2+は濃度依存様式で卵母細胞における低閾値ヒトα1Hイオン流に拮抗
することがわかった。異なるCd2+濃度で得たコントロールBa2+イオン流
の割合としてCd+の抑制をプロットすることによって、10.3μMのIC 50 を計算した。Ni2+もまた、濃度依存様式で卵母細胞における低閾値ヒト
α1Hチャネルを拮抗することがわかった。Ni2+の異なる濃度(n=4、実
験:n=0.84)によって産生されるBa2+イオン流の抑制を試験した。
計算したNi2+に対するIC50は6.3μMであった。Ni2+およびBa 2+ による拮抗作用は十分に可逆的である。
【0241】 加えて、アミロライドおよびミベフリジルそれぞれが、アミロライドについて
161μMの計算されたIC50(7試験の平均、n=0.62)およびビベ
フリジルについて平均2.1μM(4試験の平均、n=0.71)を与える、
濃度依存様式での卵母細胞における低閾値Ba2+イオン流を遮断した。
【0242】 これらの結果は、α1Hサブユニットの細胞膜における機能的カルシウムチャ
ネルへの取込が、これらのチャネル上の低電圧活性化、特にT型カルシウムチャ
ネルの電気物理学的および生物物理学的特性をもたらすことを示している。α −含有チャネルは相対的負膜電位(すなわちV1/2=64.5mV)ですば
やく活性化され、またすばやく(すなわち−20mVにおいてτ=12.2ms
s)不活性化される。最大チャネル開口活性が−30mVの膜電位にて観察され
た。これらのチャネルはまたCa2+およびBa2+に対してほぼ同等の浸透性
を示した。
【0243】 α1H含有チャネルの薬理学的特性も他の低閾値カルシウムチャネルのそれと
一致した。これらはNi2+(IC50=6.3μM)、Cd2+(IC50
10.3μM)、アミロライド(IC50=16.1μM)およびミベドフラジ
ル(IC50=2.1μM)にて遮断された。
【0244】 D.HEK293細胞において発現されたヒトα1Hサブユニット含有カルシ
ウムチャネルとアフリカツメガエル卵母細胞において発現されたそれとの比較 表4は、(1)HEK293細胞において発現したヒトα1H−1含有カルシ
ウムチャネル(2)アフリカツメガエル卵母細胞において発現したヒトα1H− 含有チャネル、(3)様々な組織に発現している天然T型カルシウムチャネル
の生物理学的特性を要約している。
【0245】
【表4】 要約ディスカッション α1H−2の生物理学的特性は、α1H−1に対する−62.5mVのV1/ と比較して−73mVへの等時活性化(20秒間)のV1/2のシフトを示し
た。α1H−2のV1/2はしたがって、ある天然T型カルシウムチャネルに対
して報告された(Huguenard (1996) Annual Rev.
Physiol.58:329−348)V1/2値に近い範囲を示す。例え
ば同様の記録条件下、速度ドーサルホーンニューロン(DHN)でのT−チャネ
ルにたういての等時不活性化のV1/2は−82mVと報告され、一方速度脊髄
側部膝状関節ニューロン(LGN)のV1/2は−64mVである。加えて、α 1H−2 のV1/2は、かわりにLGNのT型カルシウムチャネルに対して記録
された値に近くなってくるα1H−1に対する値と比較して、天然ラットDHN
でのV1/2により近くに近づく。したがって、観察されたα1H−1およびα 1H−2 サブユニットのアミノ酸配列の相違は、これらのα1Hチャネルの2つ
の異なる形の組織分布での相違と結びついているように見える。これらの結果は
また、観察された異なる組織におけるT型カルシウムチャネルのV1/2不活性
化(−100から−50mV)について報告されてきた(Huguenard
(1996) Annual Rev. Physiol. 58:329−3
48を参照のこと)値の異なる広い範囲を理解するベースを提供する。
【0246】 F.ヒトα1H含有カルシウムチャネルの生物理学的特性の要約 表5はヒトα1Hサブユニットを含んでいるカルシウムチャネルの生物理学的
特性を要約する。
【0247】
【表5】 G.ヒトα1Hカルシウムチャネルの薬理学的特性 HEK293細胞において発現したα1HCa2+チャネルの、VGCC(以
下の表)に作用することが知られている多くの薬剤への感受性を試験した。α −媒介イオン流はCd2+(IC50=104μM)に対するのに比べてNi 2+ (IC50=6.6μM)について16倍感受性であった。イオン流はまた
、T型チャネルアンタゴニストアミロライド(IC50=167μM)およびミ
ベフラジル(1μMで51.0±10.0%;n=5)によって遮断される。反
対に、T型チャネルアンタゴニストのエトスクシミドはα1H媒介イオン流(3
00μMで7.2±1.8%の抑制:n=5)を少ししか抑制しなかった。カル
シウムチャネルインヒビターベラパミル、L−型アンタゴニストニモジピンおよ
びL−型アンタゴニスト(−)−Bay K 8644は1μMの濃度でα1H チャネルに小さな効果しか有していなかった。ニモジピンあるいは(−)−Ba
y K 8644のより高い濃度(10μM)は明らかな抑制(それぞれ43.
7±4.1%、n=4および18.1%±9.1%、n=5)をおこした。1μ
Mの濃度でのペプチド毒素ω−CgTx GVIAおよびω−CmTx MVI
ICは、α1H媒介イオン流を少なく抑制するかあるいは抑制しなかった。
【0248】 薬理学的研究によりα1H−1含有チャネルの抑制の潜在力の以下の順位序列
がわかった。Ni2+(IC50:6.6μM)〜ミベフラジル(1μMにて5
1%)>Cd2+(IC50:104M)>アミロライド(IC50:167μ
M)>>エトスクシミド(300Mにて7%)。ニモジピン、ベラパミル、ω−
CgTx GVIAおよびω−CmTx MVIICは1μMの濃度で小さな効
果(0−17%)しかなかった。これらの知見は、α1H含有カルシウムチャネ
ルは天然LVAあるいはT−型カルシウムチャネルに相当する特性を持つことを
示している。
【0249】 表6はHEK293細胞で発現したヒトα1H含有カルシウムチャネルの薬理
学的特性を要約する。ω−CmTx MVIICを除いてすべての場合で電荷担
体は15mMBa2+であった。ω−CmTx MVIICはより低い2価濃度
により感受性であるので、ω−CmTx MVIICの場合電荷担体は2mMB
2+であった。%阻害の値は平均±SD(n)である。IC50値は3から6
測定値からのデータポイントについてシグモイド曲線適合データ(Prism,
Graphpad Inc)より計算した。
【0250】
【表6】 実施例4 哺乳類細胞でのヒト正常カルシウムチャネルサブユニットコードc
DNAおよびRNA転写物の組換え体発現 本実施例で記載した方法およびアッセイは、以下に例示したαサブユニット
の代わりにα1Hサブユニットをコードする核酸を用いて使用してよい。特定の
興味は、ホモマー、モノマー、マルチマーとしてのα1Hサブユニットのみ、あ
るいは選択したαサブユニットの混合を発現した細胞である。
【0251】 A.DG44細胞でのヒトニューロンカルシウムチャネルαサブユニットc
DNAの組換え体発現 1.DG44細胞の安定トランスフェクション DG44細胞(dhfr チャイニーズハムスター卵巣細胞、たとえばUrl
aub,G.et al.(1986) Som. Cell Molec.
Genset. 12:555−566を参照のこと)をコロンビア大学のLa
wrence Chasin氏より入手し、トランスフェクトした細胞内の多シ
ストロン性の発現/分泌つのためにヒトニューロンカルシウムチャネルαサブ
ユニットcDNAを含むpSV2dhfrベクターをCaPO沈殿法(Wig
lerら(1979) Proc. Natl. Acad. Sci. US
A 76:1373−1376)を用いて安定的にトランスフェクトした。トラ
ンスフェクタントを発現ベクターを組み込んだ細胞をスクリーニングするために
ヒポキサンチンあるいはチミジンなしの10% DMEM培養液上で増殖させた
。12トランスフェクタント細胞株をこの培養液上でその生存能を示すために確
立した。 2.トランスフェクトしたDG44細胞でのαサブユニットcDNA発現の
分析 ヒトニューロンカルシウムチャネルαサブユニットcDNAを含んでいるp
SV2dhfrを安定的にトランスフェクトしたDG44細胞株の4つよりBi
rnboim((1988) Nuc. Acids Res. 16:148
7−1497)の手法により全RNAを抽出した。RNA(1レーンあたり〜1
5μg)を1%アガロースホルムアルデヒドゲル上で分離し、ニトロセルロース
に写し、ランダムプライマー化ヒトニューロンカルシウムチャネルαDNAと
ハイブリッド形成させた(ハイブリッド形成:50%ホルムアミド、5×SSP
E、5×Denhardt’s、42℃、洗浄:0.2×SSPE、0.1%S
DS、65℃)。ヒトニューロンカルシウムチャネルαサブユニットcDNA
を含んでいるpSV2dhfrを安定的にトランスフェクトしたDG44細胞株
の4つからの総RNAノーザンブロット分析は、4つの細胞株の1つが2日間1
0mM酪酸ナトリウムの存在下で培養したとき、αサブユニットcDNAの転
写物(cDNAの大きさを基本としたヌクレオチド5000)と予想できた大き
さであるハイブリッド形成したmRNAを含むことを示した。酪酸塩は非特異的
に転写物を誘導し、しばしばSV40アーリープロモーター(Gorman,
CおよびHoward, B(1983) Nucleic Acids Re
s. 11:1631)を誘導するために用いられている。この細胞株44α −9はまた、αcDNA基礎プローブにハイブリッド形成したαcDNAの
転写物(5000ヌクレオチド)として予想される大きさよりより小さい(いく
つかの種)および大きい(6800ヌクレオチド)mRNA種をも産生した。こ
のトランスフェクタントより産生した5000−および6800−ヌクレオチド
転写物はαサブユニットコード配列全体を含み、したがって全長αサブユニ
ットタンパク質を産するはずである。弱くハイブリッド形成している8000ヌ
クレオチド転写物がトランスフェクトしていない、またトランスフェクトしたD
G44細胞に存在した。見かけ上、DG44細胞はカルシウムチャネルαサブ
ユニットあるいは類似遺伝子を低レベルで転写する。この内因性αサブユニッ
ト転写物の発現レベルは、ノーザン分析のためのRNAの単離前に、細胞を酪酸
塩へさらすことにより影響を受けるようにはみられなかった。
【0252】 全タンパク質をヒトニューロンカルシウムチャネルαサブユニットcDNA
を含むpSV2dhfrを安定的にトランスフェクトしたDG44細胞株の3つ
より抽出した。およそ10細胞を50mM HEPES、1mM EDTA、
1mM PMSFを含んでいる300μlの溶液中で超音波処理した。同用量の
2×ローディングダイ(Laemmli, U.K. (1970) Natu
re 227:680)を標本に加え、タンパク質を8%ポリアクリルアミドゲ
ル上での電気泳動にかけ、そしてニトロセルロースに電気転写した。ニトロセル
ロースを、ウサギ骨格筋カルシウムチャネルαサブユニットに対して結合する
ポリクローナルギニーブタ抗血清(lowa大学のK.Campbell氏より
入手した)(1:200希釈)でインキュベートし、つづいて[125I]−プ
ロテインAでインキュベートした。ブロットを−70℃でX線フィルムに感光さ
せた。トランスフェクトした細胞からのタンパク質の還元サンプルは、非トラン
スフェクトDG44細胞からのものと同様、ヒトニューロンカルシウムチャネル
のαサブユニット(130−150kDa)として予想される大きさの免疫活
性タンパク質を含んでいた。この免疫活性タンパク質のレベルは10mM酪酸ナ
トリウムの存在下で増殖した44α−9細胞において酪酸ナトリウムのない状
態で増殖した44α−9細胞においてよりもより高かった。これらのデータは
、44α−9および非トランスフェクトDG44細胞からの全RNAのノーザ
ン分析で入手したものとよく一致している。細胞株44α−9は、全長α
ブユニットのタンパク質分解の産物あるいは、αサブユニットcDNAプロー
ブへハイブリッド形成したこの細胞株を産出するより小さな(<5000ヌクレ
オチド)mRNAの1つの転写産物のどちらかである可能性のある110 kD
免疫活性タンパク質も産生する。
【0253】 B.HEK細胞内のヒトニューロンカルシウムチャネルα,αおよびβ サブユニットをコードするRNAの発現 ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)にカルシウムチャネルサブユニットをコ
ードするヒトニューロンDNAを一過性におよび安定にトランスフェクトした。
個々のトランスフェクタントを電圧活性化バリウムイオン流の存在に対して電気
生理学的に分析し、機能的組換え体電圧依存カルシウムチャネルを分析した。
【0254】 1.HEK293細胞のトランスフェクション ヒトニューロンカルシウムチャネルα1D、αおよびβサブユニットをコ
ードするDNAを含む分離した発現ベクター、プラスミドpVDCCIII(A
)、pHBCaCHαA、およびpHBCaCHβ1aRBS(A)をそれぞ
れ国際PCT願書第PCT/US94/09230号および許可米国願書番号第
08/149,097g号で記載のように構築した。これらの3つのベクターは
HEK293細胞を一過性に共トランスフェクトするのに使用した。HEK29
3細胞の安定なトランスフェクションのためにβサブユニットをコードするD
NAをpVDCCIII(A)およびpHBCaCHαAのみの細胞へ導入す
るために、ベクターpHBCaCHβ1bRBS(A)をpHBCaCHβ1a RBS(A)の代わりに使用した。
【0255】 a.一過性トランスフェクション 発現ベクターpVDCCIII(A)、pHBCaCHαAおよびpHBC
aCHβ1aRBS(A)をHEK293細胞(ATCC受託番号CRL157
3)の一過性トランスフェクションの2つの組で使用した。1つのトランスフェ
クション手法においてHEK293細胞をαサブユニットcDNA発現プラス
ミド、αサブユニットcDNA発現プラスミド、βサブユニットcDNA発
現プラスミドおよびプラスミドpCMVβgal(Clontech Labo
ratories, Palo Alto, CA)によって一過性に共トラン
スフェクトした。プラスミドpCMVβgalはサイトメガロウイルス(CMV
)プロモーターに融合した(大腸菌β−ガラクトシダーゼをコードする)lac
Z遺伝子を含み、トランスフェクションの効率をモニターするためのマーカー遺
伝子として本トランスフェクションに含まれた。他のトランスフェクション手順
において、HEK293細胞にαサブユニットcDNA発現プラスミドpVD
CCIII(A)およびpCMVβgalを共トランスフェクションした。両方
のトランスフェクションにおいて、10cm組織培養プレート中の2−4×10 HEK293細胞に一般的なCaPO沈殿トランスフェクション手法(Wi
glerら(1979) Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA 76:1373−1376)に従った実験において含まれたそれぞれのプ
ラスミド5μgを一過性に共トランスフェクトした。トランスフェクタントをβ
−ガラクトシダーゼおよびX−gal基質を含む反応産物の直接着色(Jone
s, J.R. (1986) EMBO 5:3133−3142)によって
、およびβガラクトシダーゼ活性測定(Miller, J.H. (1972
) Experiments in Molecular Genetics,
pp.352−355 Cold Spring Harbor press
)によってβガラクトシダーゼ発現について分析をした。これらのトランスフェ
クタントのサブユニットcDNA発現を評価するために、細胞をサブユニット転
写産生(ノーザン分析)、サブユニットタンパク質産生(細胞溶解物のイムノブ
ロット分析)および機能的カルシウムチャネル発現(電気生理学的分析)につい
て分析した。
【0256】 b.安定トランスフェクタント HEK293細胞をリン酸カルシウムトランスフェクション手法(Curre
nt Protocols in Molecular Biology, V
ol.1, Wiley Inter−Science, Supplemen
t 14,Unit 9.1.1−9.1.9 (1990))を用いてトラン
スフェクトした。それぞれ100万から200万のHEK293細胞を含む10
cmプレートを5μg pVDCCIII(A)、5μg pHBCaCHα A、5μg pHBCaCHβ1bRBS(A)、5μg pCMVβgal
および1μgpSV2neo(選択可能マーカーとして)を含むDNA/リン酸
カルシウム沈殿 1mlでトランスフェクトした。500μgのG418を含む
培養液中で10−20日間培養した後、コロニーを形成し、クローニングシリン
ダーを用いて単離した。 2.ヒトニューロンカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを一過
性にトランスフェクトしたHEK293細胞の分析 a.βガラクトシダーゼ発現の分析 一過性トランスフェクタントを(国際PCT願書第PCT/US94/092
30号および許可米国願書番号第08/149,097号で記載のように調製し
た)細胞溶解液のβ−ガラクトシダーゼ活性アッセイ(Miller, J.H
. (1972) Experiments in Molecular Ge
netics, pp.352−355 Cold Spring Harbo
r press)および固定細胞の染色(Jones, J.R. (1986
) EMBO 5:3133−3142)によってβ−ガラクトシダーゼ発現に
ついてアッセイした。このアッセイの結果はおよそ30%のHEK293細胞が
トランスフェクトされたことを示した。
【0257】 b.ノーザン分析 α、αおよびβサブユニットのそれぞれとlacZ遺伝子あるいはα サブユニットとlacZ遺伝子をコードするDNAを一過性にトランスフェクト
したHEK293より、Invitrogen Fast Trakキット(I
nVitrogen、San Diego、CA)によりpolyA+ RNA
を単離した。このRNAをアガロースゲル上の電気泳動にかけ、ニトロセルロー
スに写した。そしてこのニトロセルロースを以下の、lacZ遺伝子、ヒトニュ
ーロンカルシウムチャネルα1DサブユニットコードcDNA、ヒトニューロン
カルシウムチャネルαサブユニットcDNAあるいはヒトニューロンカルシウ
ムチャネルβサブユニットcDNAの放射標識化プローブの1つ以上でハイブ
リッド形成した。αサブユニットコードcDNAとハイブリッド形成した2つ
の転写物がαサブユニットコードcDNAおよびlacZ遺伝子をトランスフ
ェクトしたHEK293細胞内と同様にα,αおよびβサブユニットとl
acZ遺伝子をコードするDNAをトランスフェクトしたHEK293細胞で検
出された。1つのmRNA種はαサブユニットcDNAの転写物と予測された
大きさであった(8000ヌクレオチド)。第2のRNA種はこの転写物と予測
された大きさより小さかった(4000ヌクレオチド)。lacZ遺伝子の転写
物と予測された大きさのRNAを、lacZ遺伝子配列にハイブリッド形成する
ことで、α、αおよびβサブユニットコードcDNAとlacZ遺伝子を
トランスフェクトした細胞、およびαサブユニットcDNAとlacZ遺伝子
をトランスフェクトした細胞で検出した。
【0258】 α,αおよびβサブユニットコードcDNAとlacZ遺伝子をトラン
スフェクトした細胞からのRNAもαおよびβサブユニットcDNAプロー
ブとハイブリット形成した。2つのmRNA種がαサブユニットcDNAプロ
ーブへハイブリット形成した。1つの種はαサブユニットcDNAの転写物と
予測される大きさであった(4000ヌクレオチド)。他の種はこの転写物の予
測される大きさより大きかった(6000ヌクレオチド)。α,αおよびβ サブユニットコードcDNAとlacZ遺伝子を共トランスフェクトした細胞
の複数のRNA種がβ1サブユニットcDNAプローブにハイブリット形成した
。βサブユニットcDNA発現ベクターが2つの潜在的なpolyA+付加部位
を含むことから様々な大きさの複数のβサブユニット転写物が産生された。
【0259】 c.電気物理学的分析 個々の一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞をパッチクランプ技術
の全細胞変性(Hamillら(1981) Pflugers Arch.
391:85−100)を用いて電圧依存バリウムイオン流の存在についてアッ
セイした。pCMVβgalのみで一過性にトランスフェクトしたHEK293
細胞をこれらの実験の陰性対照としてバリウムイオン流についてアッセイした。
細胞をバリウムイオンを含んだバス溶液内においてイオン流担体を提供した。N
aClあるいはKClのかわりに塩化コリンをナトリウムチャネルおよびカリウ
ムチャネルを通したイオン流を除去するためにバス溶液の主要塩成分として使用
した。このバス溶液は1mM MgClを含み、10mM HEPES(水酸
化ナトリウムあるいは水酸化テトラエチルアンモニウムにてpHを調整)でpH
7.3に緩衝した。パッチピペットを135mM CsCl、1mM MgCl 、10mMグルコース、10mM EGTA、4mM ATPおよび10mM
HEPES(pHを水酸化テトラエチルアンモニウムにて調整)を含む溶液に
浸した。セシウムおよびテトラエチルアンモニウムイオンはほとんどの型のカリ
ウムチャネルを遮断する。ピペットをSylgard(Dow−Corning
、 Midland、 MI)にてコートし、1−4メガオームに抵抗であった
。イオン流を、IBM−互換PC上のLabmaster(Scientifi
c Solution、 Solons、 OH)データ収集基盤に接続したA
xopatch IC(Axon Instruments、 Foster
City、 CA)増幅器をともなう500メガオームのヘッドステージ抵抗器
を通して測定した。PClamp(Axon Instruments)を電圧
統御を行い、データを収集するために使用した。データをpClampあるいは
Quattro Professional(Borland Interna
tional、 Scotts Vally、 CA)プログラムにて分析した
【0260】 薬剤を加えるために、研究下細胞の数マイクロメーター内に位置させた「プッ
ファー」ピペットを圧力添加による溶液の添加に用いた。薬理学的特性化のため
に使用した薬剤をベイジング溶液と同様の溶液に溶解させた。DMSO内に準備
したBay K 8644(RBI、 Nartck、 MA)の10mM保存
溶液の試料を、添加する前に15mM Ba2+含有バス溶液にて最終濃度1μ
Mに希釈した。
【0261】 21の(lacZ遺伝子発現ベクターpCMVβgalのみを一過性にトラン
スフェクトした)陰性対照HEK293細胞をイオン流を記録するためのパッチ
クランプ方法の全細胞変法によって分析した。たった1つの細胞が認識可能内部
バリウムイオン流を表示した。このイオン流は1μM Bay K 8644の
存在によって左右されなかった。加えて、Ba2+イオン流を示していなかった
4細胞へのBay K 8644の添加は結果としてなんのイオン流の発現も見
られなかった。
【0262】 α,αおよびβサブユニットコードcDNAとlacZ遺伝子によるH
EK293細胞の一過性トランスフェクション後の2日間、個々のトランスフェ
クタントを電圧依存性バリウムイオン流についてアッセイした。9つのトランス
フェクタントにおけるイオン流を記録した。1つの細胞のトランスフェクション
効率は他の細胞のトランスフェクション効率とは異なるので、個々のトランスフ
ェクタントの異種タンパク質の発現の度合いは異なり、いくつかの細胞は外来D
NAを組み込んだりあるいは発現したりしない。内部バリウムイオン流をこれら
の9つのトランスフェクタントの内の2つで検出した。これらのアッセイにおい
て、膜の保持電位は−90mVであった。1μM Bay K 8644の存在
下あるいは非存在下で記録した異なる試験電位およびイオン流への電圧連続段階
で膜は脱分極した。内部バリウムイオン流はBay K 8644の添加によっ
てその大きさが明らかに増幅された。もっとも大きい内部バリウムイオン流(〜
160pA)が膜を1μM Bay K 8644の存在下0mVまで脱分極さ
せたときに記録された。Bay K 8644の存在下および比存在下で構築さ
れた記録と比較して、脱分極電圧に対してそれぞれの脱分極後記録したもっとも
大きいイオン流をプロットすることでえられたI−V曲線の比較は、Bay K
864の存在下、電圧活性化イオン流の増幅を例示した。
【0263】 はっきりとしたテールイオン流をα,α,およびβサブユニットコード
cDNAとlacZ遺伝子をトランスフェクトしたHEK293細胞においてB
ay K 8644の存在下発生したイオン流の追跡で検出し、これは本トラン
スフェクトで記録された電圧活性化バリウムイオン流に対する組換え体カルシウ
ムチャネル応答性がDHP−感受性であると思われることを示している。
【0264】 内部バリウムイオン流を示した2つのトランスフェクトした細胞の2つめは膜
を−90mVから脱分極させたときに〜50pAイオン流を示した。このイオン
流はカルシウムチャネルブロッカーとして確立されている200μMカドミウム
によってほとんど完全にブロックされた。
【0265】 αサブユニットとlacZ遺伝子をコードするDNAを一過性にトランスフ
ェクトした10の細胞をトランスフェクションの2日後に全細胞パッチクランプ
法によって分析した。これらの細胞の内1つは30pA内部バリウムイオン流を
示した。このイオン流は1μMのBay K 8644の存在下で2倍に増幅し
た。さらに小さなテールイオン流がBay K 8644の存在下で検出された
。これらのデータはHEK293でのヒトニューロンカルシウムチャネルα1D サブユニットコードcDNAの発現が機能的DHP−感受性カルシウムチャネル
を産出することを指し示す。
【0266】 3.ヒトニューロンカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAを安
定にトランスフェクトされたHEK293細胞の分析 個々の安定にトランスフェクトされたHEK293細胞を一過性にトランスフ
ェクトされたHEK293細胞の電気生理学的分析として記述されたように(国
際PCT出願第PCT/US94/09230号、また許可米国明細番号第08
/149,097号を参照のこと)、電圧依存バリウムイオン流の存在について
電気生理学的にアッセイした。環状AMP−依存キナーゼ媒介リン酸化によるカ
ルシウムチャネル活性(Pelzer,et al. (1990) Rev.
Physiol. Biochem. Pharmacol. 114:10
7−207)を最大化するために、記録のいくつかにおいてcAMP(ナトリウ
ム塩、250μM)をピペット溶液に加え、フォルスコリン(10μM)をバス
溶液に加えた。これらの化合物が存在しようともせずとも質的に類似の結果が得
られた。
【0267】 バリウムイオン流をBay K 8644(1μM)の非存在下および存在下
で安定にトランスフェクトされた細胞より記録した。細胞がBay K 864
4の非存在下の−90mVの保持電位から−10mVまで脱分極したとき、はや
い非活性化テールイオン流を伴う約35pAのイオン流を記録した。Bay K
8644の適用中、同一の脱分極化プロトコールはおよそ75pAのイオン流
を導き、これは増加され引き延ばされたテールイオン流を伴った。脱分極電圧の
連続の機能として、この同じ細胞から記録されたイオン流のピーク量を評価した
。Bay K 8644の存在下の応答は増加しただけでなく、全イオン流−電
圧関係が約−10mV移動した。したがって、Bay 8644作用の3つの典
型的な特徴、すなわちイオン流量の増加、テールイオン流の延長、陰性に移動し
た活性電圧が観察され、これはこれらの安定にトランスフェクトされた細胞での
DHP−感受性カルシウムチャネルの発現を明らかに指し示している。このよう
なBay K 8644の効果はcAMPあるいはフォルスコリンを用いても用
いなくてもトランスフェクトされていないHEK293では観察されなかった。
【0268】 C.ヒトニューロンカルシウムチャネルサブユニットをコードするDNAの発
現のためのpCMV−基礎ベクターおよびpcDNA 1−基礎ベクターの使用 1.構築物の準備 さらなる発現ベクターをpCMVを用いて構築した。pVDCCIII(A)
(国際PCT明細書第PCT/US94/09230号、また許可米国明細書番
号第08/149,097号を参照のこと)らの全長α1D cDNA、HBC
aCHα(国際PCT明細書第PCT/US94/09230号、また許可米
国明細書番号第08/149,097号を参照のこと)からの3600bpEc
oRI断片上に含まれている全長αcDNA、およびpHBCaCHβ1b
BS(A)(国際PCT明細書第PCT/US94/09230号、また許可米
国明細書番号第08/149,097号を参照のこと)からの全長β1サブユニ
ットcDNAを別々にプラスミドpCMVβgal内にサブクローン化した。プ
ラスミドpCMVβgalをlacZ遺伝子をのぞくためにNotIにて消化し
た。pCMVと呼ばれるプラスミドの残ったベクター部分はNotI部位での平
滑末端であった。分離したEcoRI断片上に含まれた全長αコードDNAお
よびβコードDNAを単離し、平滑末端化し、pCMVのCMVプロモーター
とSV40ポリアデニル化部位の間のDNAに局在しているpCMVの平滑末端
化ベクター断片に別々に連結した。α1DコードcDNAをpCMVと連結する
ために、CMVプロモーターの5’のすぐとSV40ポリアデニル化部位の3’
すぐのポリリンカーの制限部位をpCMVから取り除いた。ポリリンカーをNo
tI部位に添加した。ポリリンカーを制限酵素認識部位の以下の配列を持った。
次いでpVDCCIII(A)からのBamHI/XhoI断片として単離され
たα1DコードDNAをCMVプロモーターとSV40ポリアデニル化部位の間
に位置させるためにXbaII/SalI消化pCMVに連結した。
【0269】 プラスミドpCMVはpcDNA1がそうであるようにCMVプロモーターを
含むが、挿入したサブユニットコードDNAと関連するスプライスドナー/スプ
ライスアクセプター部位の位置がpcDNA1と異なる。pCMVへサブユニッ
トコードDNAを挿入した後、スプライスドナー/スプライスアクセプター部位
はCMVプロモーターの3’およびサブユニットコードDNA開始コドンの5’
に局在する。pcDNA1にサブユニットコードDNAを挿入した後、スプライ
スドナー/スプライスアクセプター部位はサブユニットcDNA終止コドン3’
に局在する。
【0270】 2.HEK293細胞のトランスフェクション HEK293細胞にpCMVのα1D、αおよびβサブユニットコードD
NA、あるいはpcDNA1(ベクターpVDCCIII(A)、pHBCaC
HαAおよびpHBCaCHβ1bRBS(A)、それぞれ国際PCT明細書
第PCT/US94/09230号、また許可米国明細書番号第08/149,
097号を参照のこと)のα1D、αおよびβサブユニットコードDNAを
トランスフェクションした。プラスミドpCMVβgalをトランスフェクショ
ン効率の測定としてそれぞれのトランスフェクションに含めた。トランスフェク
タントのβ−ガラクトシダーゼアッセイの結果(国際PCT明細書第PCT/U
S94/09230号、また許可米国明細書番号第08/149,097号を参
照のこと)はHEK293細胞がpCMV−およびpcDNA1−基礎プラスミ
ドと等しい効率でトランスフェクタントされたことを指し示した。しかしながら
pcDNA1−基礎プラスミドは現在むしろカルシウムチャネルレセプターの発
現に使用される。
【0271】 D.ヒトニューロンカルシウムチャネルサブユニットをコードするRNAのア
フリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞での発現 インビトロで準備されたヒトニューロンα1D、αおよびβサブユニット
をコードするDNAの転写物の様々な組み合わせをアフリカツメガエル(Xen
opus laevis)卵母細胞内に注入した。α1Dを含んだ組み合わせに
よるこれらの注入は電圧活性化バリウムイオン流を示した。
【0272】 1.転写物の準備 ヒトニューロンカルシウムチャネルα1D、αおよびβサブユニットをコ
ードする転写物をmCAPmsRNA CAPPING KIT(Strata
gene、La Jolla、 CA カタログ#200350)の使用説明書
にしたがって合成した。国際PCT明細書第PCT/US94/09230号、
また許可米国明細書番号第08/149,097号に記載のように、pcDNA
1と、リボゾーム結合部位およびコード配列の8番目ATGコドンによって始ま
るα1DcDNAを含んでいるプラスミドpVDCCIII.RBS(A)、p
cDNA1とαサブユニットcDNAを含んでいるプラスミドpHBCaCH
αA、pcDNA1とイントロン配列を欠きリボゾーム結合部位を含んでいる
βDNAを含んでいるプラスミドpHBCaCHβ1bRBS(A)を制限消
化することで直線化した。α1DcDNA−およびαサブユニット−コードプ
ラスミドをXhoI、βサブユニット−コードプラスミドをEcoRVにて消
化した。DNA挿入物をT7 RNAポリメラーゼを用いて転写した。
【0273】 2.卵母細胞の注入 アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞を単離しコラ
ゲナーゼ処理にて脱小胞化し、注入後および記録前の2から5日間、19−25
℃で100mM NaCl、2mM KCl、1.8mM CaCl、1mM
MgCl、5mM HEPES,pH 7.6、20μg/ml アンピシ
リンおよび25μg/mlストレプトマイシン中に保持した。卵母細胞内に注入
したそれぞれの転写物の対して、全容量50 nlの細胞あたり6ngの特異的
mRNAを注入した。
【0274】 3.細胞内電圧記録 注入した卵母細胞を2−電気オード電圧クランプ法(Dascal,N. (
1987) CRC Crit. Rev. Biochem. 22:317
)を用いて電位−依存バリウムイオン流について試験した。電圧統御を引き起こ
すために、そしてデータを入手し分析するためにpClamp(Axon In
struments)ソフトウェアパッケージをLabmaster 125k
Hzデータ収集インターフェイスと併せて用いた。Quattro Profe
ssionalも本分析で使用した。イオン流信号を1−5kHzでデジタル化
し、適切にフィルタに通した。バス溶液は以下の40mM BaCl、36m
M テトラエチルアンモニウムクロライド(TEA−Cl)、2mM KCl、
5mM 4−アミノピリジン、0.15mM ニフルム酸、5mM HEPES
,pH 7.6を含んだ。 a.ヒトニューロンカルシウムチャネルα,αおよびβサブユニットを
コードする転写物を注入した卵母細胞の電気生理学的分析 注入していない卵母細胞を2−電気オード電圧クランプ法を用いて試験し、と
ても小さい(25 nA)内因性内部Ba2+イオン流を分析した7つの細胞の
内ただ一つから検出した。
【0275】 α1D、αおよびβサブユニット転写物を共注入した卵母細胞は−90m
Vあるいは−50mVの保持電位からの膜の過分極において持続内部バリウムイ
オン流を示した(154±129 nA;n=21)。これらのイオン流は14
0から700mssecまでにわたる試験パルスを与えたときの小さな不活性化
を一般的に示した。電圧の連続に対する脱分極はおよそ−30mVで最初に現れ
、およそ0mVでピークに達するイオン流を示す。
【0276】 DHP Bay K 8644の適用はイオン流量を増加させ、細胞の再分極
において存在するテールイオン流を引き延ばし、イオン流活性化における過分極
化移動を引き起こす。Bay K 8644はDMSO内の保存溶液から鮮度良
く準備し、還流ポンプがとまった間、10×濃度として直接60μlのバスに導
入した。細胞と接触した最終希釈薬剤溶液のDMSO濃度は0.1%を超えるこ
とはなかった。コントロール実験では0.1% DMSOは膜イオン流になんの
影響も与えないことを示した。
【0277】 DHPアンタゴニストであるニフェジピン(保存溶液をDMAO中で準備し、
Bay K 8644の添加について記載したように細胞に添加した)はα1D 、αおよびβサブユニットの転写物を共注入した卵母細胞内の内部バリウム
イオン流の相当な割合(91±6%、n=7)遮断した。内部バリウムイオン流
の残余不活性化成分が一般的にニフェジピン添加後残る。内部バリウムイオン流
は50μM Cd2+にて完全に遮断されるが100μM Ni2+ではおよそ
15%のみが遮断された。
【0278】 ω−CgTX−GVIAのα1D、α,およびβサブユニットの転写物を
共注入した卵母細胞内の内部バリウムイオン流における効果を調査した。ω−C
gTX−GVIA(Bachem, Inc., Torrance CA)を
担体タンパク質を提供するために0.1% シトクロームC(Sigma)を含
む15mMBaClバス溶液に準備した。コントロール実験においてシトクロ
ームCはイオン流になんの影響も与えないことが示された。−90mV保持電位
から0mVまでの電圧パルス連続を20mssec間隔にて記録した。2価カチ
オンによるωCgTX結合の阻害を減少させるために、記録を15mM BaC
、73.5mM テトラエチルアンモニウムクロライド中で作製し、残った
成分は40mM Ba2+記録溶液に等しい。延長されたテールイオン流によっ
て区別されたDHP−感受性イオン流へのωCgTXの効果を決定するために、
Bay K 8644をωCgTXの添加前に細胞に加えた。内部バリウムイオ
ン流は比較的高い濃度(10−15μM)のωCgTXにより弱く(54±29
%、n=7)可逆的に遮断された。試験イオン流および付随するテールイオン流
はωCgTXの添加後2から3分以内に次第に遮断されたが、ωCgTXをバス
よりフランジュしたとき双方とも部分的に回復した。
【0279】 b.ヒトニューロンカルシウムチャネルα1Dをコードする転写物あるいはα 1D と他のサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞の分析 α1D、αおよびβサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞
内の内部バリウムイオン流へのαおよびβサブユニットの貢献をα1Dサブ
ユニットのみあるいはβサブユニットあるいはα2サブユニットどちらかとの
組み合わせの発現によって評価した。α1D cDNAの転写物のみを注入した
卵母細胞において、なんのBa2+イオン流も検出されなかった(n=3)。α およびβコードDNAの転写物を注入した卵母細胞において、イオン流の量
は少ないが、α1D、αとβコードDNAの転写物を注入した細胞で観察さ
れたイオン流と似ている−90mVの保持電位からの膜の脱分極において小さな
(108±39 nA)Ba2+イオン流が検出された。α1Dコードおよびβ コードDNAの転写物を注入した4つの卵母細胞のうち2つにおいてBa2+ イオン流が、α1D、α,αおよびβサブユニットをコードする転写物を
注入した卵母細胞で発現したBa2+イオン流のBay K 8644感受性と
にているBay K 8644への感受性を示した。
【0280】 α1Dおよびαサブユニットをコードする転写物を注入した5つの卵母細胞
のうちの3つが−90mVの保持電位からの膜の脱分極においてとても小さなB
2+イオン流(15−30 nA)を示した。これらのバリウムイオン流はB
ay K 8644に対してほとんどあるいは全く応答を示さなかった。 c.ヒトニューロンカルシウムチャネルαおよび/あるいはβサブユニット
をコードする転写物を注入した卵母細胞の分析 α1H、αおよびβサブユニットをコードする転写物を共注入した卵母細
胞において検出された内部バリウムイオン流へのα1D、α−サブユニットの
寄与を評価するために、ヒトニューロンカルシウムチャネルαおよび/あるい
はβサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞をバリウムイオン流
に対してアッセイした。αサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細
胞はなんの検出可能な内部バリウムイオン流も示さなかった(n=5)。β
ブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞は脱分極の時に測定可能な(
54±23 nA:n=5)内部バリウムイオン流を示し、αおよびβサブ
ユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞は、βコードDNAのみの転
写物を注入した卵母細胞で検出されたものよりも約50%大きい(80±61
nA:n=18)内部バリウムイオン流を示した。
【0281】 βサブユニットあるいはαとβサブユニットをコードする転写物を注入
した卵母細胞での内部バリウムイオン流は典型的に膜が−90mVの保持電位か
ら−30mVまで脱分極したときにまず観察され、膜が10から20mVまで脱
分極したときにピークに達する。巨視的にはαとβサブユニットをコードす
る転写物を、あるいはβサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞
でのイオン流は見分けがつかなかった。α1D、αおよびβサブユニットの
転写物を共注入した卵母細胞でのイオン流と比べて、これらのイオン流は試験パ
ルス間の有意な不活性化と保持電位への強い感受性を示した。αおよびβ
ブユニットをコードする転写物を共注入した卵母細胞での内部バリウムイオン流
は通常140−msecパルス間でピーク量の10−60%の不活性化され、α 1D 、αおよびβサブユニットをコードする転写物を共注入した卵母細胞の
それと比べて有意により保持電位に感受性であった。αとβサブユニットを
コードする転写物を共注入した卵母細胞の膜の保持電位を−90から−50mV
に変えることで、結果としてこれらの細胞の内部バリウムイオン流量が約81%
(n=11)減少した。それに比べてα1D、αおよびβサブユニットをコ
ードする転写物を共注入した卵母細胞で測定した内部バリウムイオン流は、保持
電位が−90から−50mVに変化させた時におよそ24%(n=11)減少し
た。
【0282】 αとβをコードする転写物を注入した卵母細胞で検出された内部バリウム
イオン流は、α1D、αおよびβサブユニットをコードする転写物を共注入
した卵母細胞で観察されたものと薬理学的に異なった。αとβサブユニット
をコードする転写物を注入した卵母細胞はBay K 8644に対して非感受
性である内部バリウムイオン流を示した(n=11)。ニフェジピンとαとβ サブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞で観察されたイオン流の
保持電位感受性のために、ニフェジピン感受性は測定するのが難しかった。しか
しながらαとβサブユニットをコードする転写物を共注入した2つの卵母細
胞は、−50mVの保持電位より脱分極した時にニフェジピン(5から10μM
)に非感受性である測定可能な(25から45 nA)内部バリウムイオン流を
示した。αとβサブユニットをコードする転写物を注入した卵母細胞での内
部バリウムイオン流は、α1D、αおよびβサブユニットをコードする転写
物を注入した卵母細胞で検出されたイオン流のように重金属に同様の感受性を示
した。
【0283】 ヒトニューロンαおよびβサブユニットをコードする転写物を注入した卵
母細胞で検出された内部バリウムイオン流は、非注入アフリカツメガエル卵細胞
でのカルシウムイオン流と似た薬理学的、生物理学的特性を持つ。このヒトニュ
ーロンカルシウムチャネルβサブユニットのアミノ酸は膜貫通部位を形成する
ことができる疎水性部位を欠いているからである。組換え体βサブユニット単
独がイオンチャネルを形成するということはありそうもなくむしろ内因性α
ブユニットが卵母細胞に存在し、そのようなαサブユニットによって媒介され
る活性がヒトニューロンβサブユニットの発現によって増加される。
【0284】 本発明の目的内容をいくつかの特異性を持って記述してきたが、当業者に対し
て明らかな修正を本発明の範囲から逸脱することなしに行ってよい。このような
修正が当業者に明らかであるので、本発明が付属の特許請求の範囲によってのみ
限定することが意図される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、HEK細胞によって一過性に発現されるヒトα1Hカルシウムチャネ
ルの活性化の電圧依存性(m∞)と定常状態の不活性化(h)を示す。活性化の
電圧依存性(m∞)はテールイオン流分析から決定した。+60mVで得た最大
ピークテールイオン流に関してテールイオン流を基準化し、試験電位に対してプ
ロットした(白丸、平均±SEM;n=11)。データを2つのボルツマン関数
の合計に当てはめた。m∞=FA「1+exp(−Vtest−V1/2,A
)/KA)]1+F [1+exp(−(Vtest−V1/2,B)/k )]−1、F=0.67V1/2,A=−21.5mV、k=7.5、F =0.33、V1/2=25.5mV、k=14.7。定常状態不活性化
(h∞)は、−20mVまでの試験パルス(p1)、次いで−20mVまでの2
回目の試験パルス(p2)の前に、5mVずつ漸増する−100mVから−10
mVまでの20秒間のプレパルス(pHold)により、−100mVの保持電
位から決定した。基準化したイオン流の振幅を保持電位に対してプロットした(
黒丸、平均±SEM;n=9)。データをボルツマン関数に当てはめた。h∞=
[1+exp((Vhold−V1/2)k)]−1、V1/2=−63.9m
V、k=3.9mV。
【図2】 図2は、ヒトα1Hカルシウムチャネルの活性化(図2A)と不活性化(図2
B)の動力学を示す;活性化と不活性化の動力学は、イオン流の上昇期(図2A
)あるいは下降期(2B)に指数関数をあてはめて(活性化と不活性化について
の電圧依存性はほぼ指数関数に従う)イオン流追跡から決定した。
【図3】 図3は、α1H−1サブユニットの特徴を図式的に表したものであり、4つの
ポア領域の各々にα1DとαEを持つヒトα1Hのアミノ酸配列アラインメン
トを示す;は4つのポア領域の各々でイオン選択性に関わる残基を表す;膜内
外ドメインIとIIの間のLVA関連α1Hサブユニットに著しく大きなループ
がある。
【図4】 図4Aは、−80と−10mVの間で10msの段階的脱分極後−90mVに
再分極して誘発したテールイオン流を示す。テールイオン流の測定に関して、計
動化/フィルター比は50/16kHzであった。テールイオン流の減衰を次の
式の二指数関数にあてはめた。I=A+Aexp(−t/T)+Aex
p(−t/T)。テールイオン流の二指数減衰プロフィールは検討したすべて
の細胞(n=12)で認められた。図4Bと4Cは、イオン流非活性化について
の時間定数T1とT2(図4B)及びイオン流フラクションA1とA2(図4C
)の電圧依存性を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 11/00 A61P 13/00 4H045 13/00 25/00 25/00 C07K 14/705 C07K 14/705 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 C12Q 1/00 Z 5/10 1/68 A C12Q 1/00 G01N 33/483 F 1/68 33/566 G01N 33/483 C12N 15/00 ZNAA 33/566 5/00 A B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,L U,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO ,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG, SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,U G,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ストーダーマン,ケネス アメリカ合衆国、カリフオルニア・92106、 サン・デイエゴ、ロータス・ドライブ・ 3615 (72)発明者 ハーポルド,ミシエル アメリカ合衆国、ニユー・メキシコ・ 87505−4726、サンタ・フエ、エンシナ・ ロード・1462 Fターム(参考) 2G045 AA29 AA34 AA35 AA40 CB01 CB17 DA12 DA13 DA14 DA36 DA77 FA34 FB02 FB07 4B024 AA01 AA11 BA63 BA80 CA04 CA09 CA11 CA12 DA02 EA04 GA11 HA12 4B063 QA01 QA05 QA18 QQ08 QQ13 QQ42 QQ53 QQ79 QR32 QR35 QR36 QR48 QR50 QR51 QR56 QR62 QR77 QR80 QS25 QS34 QX04 4B065 AA90X AA91X AA93Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA44 CA46 4C084 AA16 BA35 NA14 ZA011 ZA012 ZA361 ZA362 ZA591 ZA592 ZA751 ZA752 ZA811 ZA812 ZC021 ZC022 4H045 AA10 BA10 CA40 DA50 FA72 FA74 HA05

Claims (57)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物カルシウムチャネルの低電位で活性化されるサブユニッ
    トをコードする、単離された核酸断片。
  2. 【請求項2】 サブユニットがα1H−1サブユニットである、請求項1の
    核酸。
  3. 【請求項3】 カルシウムチャネルが、哺乳動物のカルシウムチャネルであ
    る、請求項2の核酸。
  4. 【請求項4】 上記サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含み、上
    記ヌクレオチド配列は、 (a) カルシウムチャネルのサブユニットをコードし、配列番号12から1
    6のいずれかに記載された塩基配列のコーディング部分を含むヌクレオチド配列
    、 (b) α1H−1サブユニットをコードし、高ストリンジェンシー条件下で
    、哺乳動物細胞の中に存在するmRNA転写産物に相補的で、α1H−1サブユ
    ニットをコードするDNAとハイブリッド形成するヌクレオチド配列、 (c) 配列番号12から16のいずれかによってコードされているアミノ酸
    配列を含むサブユニットをコードするヌクレオチド配列、および、 (d) (a)、(b)または(c)のいずれかと縮退しているヌクレオチド
    配列から選択される、請求項2の単離された核酸断片。
  5. 【請求項5】 サブユニットが、α1H−1サブユニットまたはα1H−2 サブユニットである、請求項2の分子。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかの核酸によってコードされるα サブユニットをコードする異種核酸を含む真核細胞。
  7. 【請求項7】 さらに、カルシウムチャネルのαδサブユニットをコード
    する異種核酸を含む、請求項6の細胞。
  8. 【請求項8】 異種核酸によってコードされるサブユニットを少なくとも1
    つを含む機能的異種カルシウムチャネルを有する、請求項6または7の真核細胞
  9. 【請求項9】 HEK 293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ア
    フリカミドリザル細胞、およびマウスL細胞からなる細胞より選択される、請求
    項6から8いずれかの真核細胞。
  10. 【請求項10】 カルシウムチャネルの少なくとも一つのサブユニットをコ
    ードする異種核酸を真核細胞に導入することを含み、上記サブユニットが請求項
    1から5のいずれかの核酸によってコードされている方法によって産生される、
    機能する異種カルシウムチャネルを有する真核細胞。
  11. 【請求項11】 両生類の卵母細胞である、請求項10の真核細胞。
  12. 【請求項12】 異種カルシウムチャネルが、複数のα1H−1サブユニッ
    トを含む、請求項8または請求項10の真核細胞。
  13. 【請求項13】 α1H−1サブユニットがホモマーを含む、請求項12の
    真核細胞。
  14. 【請求項14】 さらに、カルシウムチャネルのαδサブユニットを含む
    、請求項10から13のいずれか一項の真核細胞。
  15. 【請求項15】 異種核酸がT型カルシウムチャネルをコードする、請求項
    10の真核細胞。
  16. 【請求項16】 カルシウムチャネルのα1H−1サブユニットをコードす
    るRNAを細胞の中に導入すること、および、場合によっては、カルシウムチャ
    ネルのβサブユニット、αδサブユニット、および/またはγサブユニットを
    コードする核酸を細胞の中に導入することを含む方法によって産生され、異種カ
    ルシウムチャネルが異種核酸によってコードされる少なくとも一つのサブユニッ
    トを含み、異種イオンチャネルだけがカルシウムチャネルである、機能する異種
    カルシウムチャネルを有する請求項8の真核細胞。
  17. 【請求項17】 カルシウムチャネルのα1H−1サブユニットをコードす
    るRNAを細胞の中に導入すること、および、場合によっては、カルシウムチャ
    ネルのβサブユニット、αδサブユニット、および/またはγサブユニットを
    コードする核酸を細胞の中に導入することを含む方法によって産生され、異種カ
    ルシウムチャネルが異種核酸によってコードされる少なくとも一つのサブユニッ
    トを含む、機能する異種カルシウムチャネルを有する請求項8の真核細胞。
  18. 【請求項18】 HEK 293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、
    アフリカミドリザル細胞、マウスL細胞及び両生類の卵母細胞からなる細胞より
    選択される、請求項17の真核細胞。
  19. 【請求項19】 両生類の卵母細胞からなる群から選択される、請求項16
    の真核細胞。
  20. 【請求項20】 α1Hサブユニットが、α1H−1サブユニットまたはα 1H−2 サブユニットである、請求項6から19いずれかの真核細胞。
  21. 【請求項21】 α1Hサブユニットが、ヒトカルシウムチャネルのサブユ
    ニットである、請求項20の真核細胞。
  22. 【請求項22】 α1Hサブユニットを含むカルシウムチャネルの活性を調
    節する化合物を同定するための方法であって、 該化合物とカルシウムチャネル選択的イオンとを含む溶液に、請求項8から2
    1のいずれかの真核細胞を懸濁すること、 該細胞の細胞膜を脱分極すること、および、 細胞の中に流入するイオン流またはイオン流を検出すること、を含み、 異種カルシウムチャネルが、該細胞にとって異種であるDNAまたはRNAに
    よってコードされるカルシウムチャネルサブユニットを少なくとも一つ含み、 検出されるイオン流が、同じカルシウムチャネル選択的イオンは存在するが、
    該化合物は存在しないところで、同一の細胞、または実質的に同一の細胞を脱分
    極することによって生じるイオン流とは異なっている、上記方法。
  23. 【請求項23】 脱分極工程の前に、細胞に内在するカルシウムチャネルを
    実質的に不活性化させる保持電圧で細胞を維持する、請求項22の方法。
  24. 【請求項24】 細胞が、両生類の卵母細胞であり、 異種サブユニットが、卵母細胞の中に注入された核酸によってコードされてお
    り、 また、該異種サブユニットが、α1Hサブユニットを含む、請求項23の方法
  25. 【請求項25】 核酸によってコードされているサブユニットが、さらに、
    αδサブユニットを含む、請求項24の方法。
  26. 【請求項26】 細胞がHEK細胞であり、異種サブユニットが異種核酸に
    よってコードされている、請求項22から25いずれかの方法。
  27. 【請求項27】 α1Hサブユニットが、α1H−1サブユニットまたはα 1H−2 サブユニットである、請求項22から26いずれかの方法。
  28. 【請求項28】 異種カルシウムチャネルが、細胞にとって異種であるDN
    AまたはRNAによってコードされるカルシウムチャネルサブユニットを少なく
    とも一つ含み、 少なくとも一つのサブユニットがα1Hサブユニットであり、 検出されるイオン流が、同じカルシウムチャネル選択的イオンは存在するが、
    該化合物は存在しないところで、同一の細胞、または実質的に同一の細胞を脱分
    極することによって生じるイオン流とは異なっている、請求項22の方法。
  29. 【請求項29】 請求項1から5のいずれかの核酸分子によってコードされ
    る、実質的に純粋なαサブユニット。
  30. 【請求項30】 カルシウムチャネルのα1Hサブユニットをコードする請
    求項1のヌクレオチド配列からの、少なくとも16個の実質的に連続した核酸塩
    基を含む、少なくとも16塩基長のRNAプローブまたはDNAプローブ。
  31. 【請求項31】 カルシウムチャネルのサブユニットをコードする、少なく
    とも30個の核酸塩基を含む、請求項28のプローブ。
  32. 【請求項32】 カルシウムチャネルサブユニットのα1Hサブユニットを
    コードする核酸を同定するための方法であって、少なくとも低ストリンジェンシ
    ー条件下で、請求項28のプローブを、核酸断片のライブラリーとハイブリッド
    形成させること、およびハイブリッド形成した断片を選ぶことを含む、上記方法
  33. 【請求項33】 ハイブリッド形成が高ストリンジェンシー条件下で行なわ
    れる、請求項30の方法。
  34. 【請求項34】 カルシウムチャネルサブユニットをコードする核酸を発現
    する細胞または組織を特定するための方法であって、少なくとも低ストリンジェ
    ンシー条件下で、請求項30または請求項31のプローブを、該細胞または組織
    の中で発現するmRNA、または該mRNAから作製されたcDNAとハイブリ
    ッド形成させること、および、それによって、該サブユニットをコードするmR
    NAを発現する細胞または組織を特定することを含む方法。
  35. 【請求項35】 ハイブリッド形成が高ストリンジェンシー条件下で行なわ
    れる、請求項32の方法。
  36. 【請求項36】 コードされたサブユニットを発現させる条件下で、請求項
    1から5のいずれかの核酸分子を宿主細胞の中に導入することを含む、カルシウ
    ムチャネルサブユニットを産生させるための方法。
  37. 【請求項37】 細胞が真核細胞である、請求項35の方法。
  38. 【請求項38】 カルシウムチャネルのα−サブユニットをコードする核酸
    によってコードされている、低電位で活性化されるチャネルまたはT型チャネル
    である、異種カルシウムチャネルを含む真核細胞。
  39. 【請求項39】 α−サブユニットが、配列番号12から16のいずれかに
    示されているアミノ酸配列を含む、請求項6から21および38のいずれかの真
    核細胞。
  40. 【請求項40】 配列番号12の1506番目から2627番目のヌクレオ
    チドによってコードされるアミノ酸配列を含む、単離された核酸分子。
  41. 【請求項41】 配列番号12の1506番目から2627番目の塩基配列
    を含む、請求項40の単離された核酸分子。
  42. 【請求項42】 RNAである、請求項1から5、40および41のいずれ
    かの核酸。
  43. 【請求項43】 DNAである、請求項1から5、40および41のいずれ
    かの核酸。
  44. 【請求項44】 カルシウムチャネルによって調節される一つ以上の転写調
    節因子に機能的に結合したレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物をコ
    ードする核酸をさらに含む、請求項8の細胞。
  45. 【請求項45】 低電位で活性化されるカルシウムチャネルの活性を調節す
    る化合物を特定するための方法であって、該化合物が存在するときの、請求項4
    4の細胞におけるレポーター遺伝子の転写量を、該化合物が存在しないときの転
    写量、または、異種カルシウムチャネルが存在しないときの転写量と比較し、そ
    れによって、細胞の中で異種カルシウムチャネルの活性を調節する化合物を特定
    することを含む、上記方法。
  46. 【請求項46】 カルシウムチャネルが、ヒトのカルシウムチャネルである
    、請求項1から5、40および41のいずれかの核酸分子。
  47. 【請求項47】 低電位で活性化される(LVA)カルシウムチャネルの活
    性を調節する化合物を特定するためのスクリーニングアッセイ法であって、 該試験化合物をLVAカルシウムチャネルを発現する細胞と接触させる工程、 被験化合物を加える前後の細胞における、または、LVAチャネルを発現しな
    い比較用細胞におけるLVAチャネルの活性を測定する工程、および、 化合物を加えた後の測定値が、化合物を加える前の測定値と異なるとき、また
    は、レセプターが存在するときの測定値が、レセプターが存在しないときの測定
    値と異なるときに、該被験化合物は低電位カルシウムチャネルの活性を調節する
    ものと判定する工程を含むスクリーニングアッセイ法。
  48. 【請求項48】 LVAをコードする核酸を細胞の中に導入することにより
    、コードされているLVAを発現する条件下でLVAチャネルを産生する、請求
    項47の方法。
  49. 【請求項49】 LVAがT型チャネルである、請求項47または請求項4
    8の方法。
  50. 【請求項50】 LVAが、カルシウムチャネルのα1Hサブユニットを含
    む、請求項47から49のいずれかの方法。
  51. 【請求項51】 細胞が、相対的コンダクタンスが約5pSから約9pSの
    Ba2+の相対的コンダクタンス、約2ミリ秒から約8ミリ秒の活性化時間、約
    60ミリボルトから約26ミリボルトの活性化V1/2値の動力学値、約10か
    ら約30ミリ秒の不活性化時間、約−100ミリボルトから約−500ミリボル
    トの不活性化V1/2値の動力学値、および、約2ミリ秒から約12ミリ秒のテ
    ール脱活性化時間を有する低電位カルシウムチャネルを発現する、請求項47か
    ら50のいずれかの方法。
  52. 【請求項52】 単離された核酸分子が、カルシウムチャネルのα1Hサブ
    ユニットをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項47から51のいずれか
    のスクリーニング方法。
  53. 【請求項53】 請求項45および47から52のいずれかの方法によって
    特定される化合物。
  54. 【請求項54】 請求項1から5、40および41のいずれかの核酸によっ
    てコードされるサブユニットを含むチャネルを発現させる細胞において、LVA
    型チャネルの活性を調節する化合物を特定することを含む、LVA型カルシウム
    チャネルによって起こる疾患を治療するための化合物を特定するための方法。
  55. 【請求項55】 請求項54の方法によって特定される化合物。
  56. 【請求項56】 請求項1から5、40および41のいずれかの核酸を導入
    することによって、コードされているサブユニットを含むチャネルが発現される
    ような条件下でチャネルを産生する、請求項54の方法。
  57. 【請求項57】 疾患が、神経疾患、内分泌疾患、心血管疾患、泌尿器疾患
    、肝臓疾患、呼吸器疾患、および血管疾患から選択される、請求項54または請
    求項56の方法。
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