JP2001518518A - 分泌性白血球プロテアーゼインヒビターの乾燥粉末薬学的組成物 - Google Patents

分泌性白血球プロテアーゼインヒビターの乾燥粉末薬学的組成物

Info

Publication number
JP2001518518A
JP2001518518A JP2000514669A JP2000514669A JP2001518518A JP 2001518518 A JP2001518518 A JP 2001518518A JP 2000514669 A JP2000514669 A JP 2000514669A JP 2000514669 A JP2000514669 A JP 2000514669A JP 2001518518 A JP2001518518 A JP 2001518518A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pharmaceutical composition
slpi
composition according
particles
microns
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000514669A
Other languages
English (en)
Inventor
ニーブン,ラルフ・ダブリユ
ライト,クリフオード・デイー
チヤン,ビヨン・エス
Original Assignee
アムジエン・インコーポレーテツド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by アムジエン・インコーポレーテツド filed Critical アムジエン・インコーポレーテツド
Publication of JP2001518518A publication Critical patent/JP2001518518A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/475Growth factors; Growth regulators
    • C07K14/50Fibroblast growth factor [FGF]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/475Growth factors; Growth regulators
    • C07K14/50Fibroblast growth factor [FGF]
    • C07K14/501Fibroblast growth factor [FGF] acidic FGF [aFGF]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/55Protease inhibitors
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P1/00Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
    • A61P1/16Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for liver or gallbladder disorders, e.g. hepatoprotective agents, cholagogues, litholytics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system
    • A61P11/12Mucolytics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は、吸入療法に適した粉末化薬学的組成物という方法によって、肺に治療用タンパク質を投与することに関するものである。特に、本発明は、肺へ送達するための分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)の乾燥粉末製剤に関するものである。典型的な薬学的組成物は、SLPI、および、一般的には、約10重量%の水を含む乾燥粉末状の薬学上許容しうる担体を含む。この粉末は、直径が約1.0ミクロンから8ミクロン、塊りの中央の直径が約3.0ミクロンから約6ミクロンの大きさの粒子または粒子の塊りを、量にして約50%から95%含んでいる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の技術分野 本発明は、吸入療法に適した粉末性薬学的組成物という手段によって、肺に治
療用タンパク質を投与することに関するものである。特に、本発明は、肺に送達
するための分泌性白血球プロテアーゼインヒビターの乾燥粉末製剤に関するもの
である。
【0002】 発明の背景 内生的なタンパク質分解酵素は、侵入生物や抗原−抗体複合体、または、生物
にとって必要がなくなったか、または役に立たなくなったある種の組織タンパク
質を分解するときに役立つ。正常に機能している生物では、タンパク質分解酵素
は限られた量産生され、プロテアーゼインヒビターの合成によって部分的な制御
を受ける。
【0003】 天然のプロテアーゼインヒビターの多くは、内生的なプロテアーゼの反応を局
所的および時間的に制限することによって、プロテアーゼを調節している。また
、プロテアーゼインヒビターは、感染因子によって持ち込まれたプロテアーゼを
阻害することもできる。タンパク質分解による攻撃や感染を特に受けやすい、気
道などの組織にはプロテアーゼインヒビターが多い。
【0004】 プロテアーゼ/プロテアーゼインヒビターのバランスを崩すと、気腫、喘息、
関節炎、糸球体腎炎、歯周炎、筋ジストロフィー、腫瘍侵襲、およびその他さま
ざまな病理状態となる、プロテアーゼによる組織破壊が起きることがある。例え
ば、敗血症や急性白血病などの重篤な病理経過における一定の状況では、分泌性
細胞からタンパク質分解酵素が放出されるために、遊離のタンパク質分解酵素の
存在量が増加する。また、生物のインヒビター調節能力が減少しても、プロテア
ーゼ/プロテアーゼインヒビターのバランスに変化が生じることがある。
【0005】 このような異常な状態になっている生物において、タンパク質分解酵素を調節
するための対策をとることができない場合には、生体に深刻な損害が生じること
がある。したがって、タンパク質分解酵素を調節するために、生物に投与するこ
とのできるプロテアーゼインヒビターが必要となる。
【0006】 肺疾患状態が問題になっているときには、薬剤液を(噴霧器などによって)エ
アロゾル化してから、このエアロゾルの飛沫を吸入することによって、プロテア
ーゼインヒビターを病気に罹った組織に直接送達することができる。しかし、ま
ず薬剤液を肺に向かわせても、肺の治療効果は、実質的には不確実である。例え
ば、肺の中では、血管系に吸収されてしまうため、薬剤の半減期は比較的短い。
さらに、酵素による分解やその他のプロセシングを受けやすい薬剤は、薬効が変
化したり失われたりする。また、薬剤に対するエアロゾル化の効果という問題も
あり、噴霧作用によって薬剤が分解したり、酸化によって失活するかもしれない
。また、肺の中での薬剤分布にまつわる不確実さや、宿主の他の器官に影響を与
えることなしに、長期間、有効量の投与を継続することができるかという問題も
ある。
【0007】 喘息を治療するためのベータ−アンドロゲン拮抗薬の分野でもっとも顕著であ
るが、低分子量薬を含む薬学的組成物の肺への投与は、以前いくらか成功してい
る。コルチコステロイド、およびクロモリンナトリウムなど、低分子量で非タン
パク質性のその他の化合物が、肺からの吸収によって全身に投与されている。し
かし、すべての低分子量薬剤が、効果的に肺から投与できるわけではない。例え
ば、全身に作用させるためのアミノグリコシド抗生物質、抗ウイルス剤、および
抗ガン剤を肺から投与することには成功する場合も失敗する場合もある。ある場
合には、薬剤が刺激性であるために、気管支収縮を引き起こすことが分かった。
このように、低分子量の物質であっても、そのような化合物を肺から送達するこ
とが投薬方法として効果的であると、必ずしも予測することはできない。一般的
には、ペプチドおよびタンパク質の薬剤送達(Peptide and Pro
tein Drug Delivery,ed.V.Lee,Marcel D
ekker,N.Y.,1990,pp.1−11)を参照のこと。
【0008】 タンパク質などの高分子量の薬剤を肺から送達することは、いくつかの実例が
定量的に示されただけであるが、知られていないわけではない。酢酸ロイプロリ
ドは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)拮抗活性をもち、経口投与性
の低いノナペプチドである。動物を用いた実験では、ロイプロリド酢酸のエアロ
ゾル製剤を吸入させると、血中レベルが有意に高くなることが示された(Adj
elら、Pharmaceutical Research,Vol.7,No
.6.pp.565−569(1990);Green,J.D.,1994,
Pharmaco−toxicological expert report
: PulmozymeTM,rhDNase.Genentech,Inc.
Human & Experimental Toxicology vol.
13;suppl.1)。
【0009】 エアロゾル投与法を利用して、全身の循環系に進入する、いくらかの薬剤とと
もにヒト血漿アルファ−1−抗トリプシンを肺器官に送達できることが、Hub
bardら、Annals of Internal Medicine,Vo
l.III,No.3,pp.206−212(1989)によって報告されて
いる。さらに、アルファ−1−抗トリプシンの液体製剤を噴霧器によってエアロ
ゾル投与することが米国特許第5,618,786号に記載されている。しかし
、分子量3,450ダルトン(D)の低分子のポリペプチドで、ヒトなどの動物
に静脈から投与すると気管支拡張の原因となる血管作動性腸管ポリペプチドは、
吸入によって投与すると薬効を失う。Barrowcliffeら、Thora
x,vol.41(2):88−93,1986を参照のこと。
【0010】 これら肺経路によるタンパク質送達の例でも明らかなように、あるタンパク質
をこのような方法で送達したときに治療効果を示すかどうかは予測できない。ま
た、生物学的活性を維持したままで、送達のためにタンパク質を乾燥粉末にして
処方できるかどうかも予測できない。タンパク質自体、薬学的組成物、送達装置
、および特に肺が固有にもつさまざまな要因、またはそれらの要因の組み合わせ
によって、肺への投与がうまくいくかどうかが決まる。
【0011】 肺疾患を治療するために特に興味深いプロテアーゼインヒビターは、分泌性白
血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)である。SLPIは、トリプターゼ
、エラスターゼ、キマーゼ、およびカテプシンGなどのセリンプロテアーゼに選
択的なインヒビターである。SLPIの活性を評価したところ、プロテアーゼが
過剰になるという特徴、または、白血球または肥満細胞によって異常が生じると
いう特徴をもつ肺疾患の治療に、このタンパク質を使用できることが分かった。
SLPIを欠失、付加、および置換した類似体の精製、組換え体作製、合成、お
よび同定については、米国特許第4,760,130号(Thompsonら)
、米国特許第4,845,076号(Heinzelら)、米国特許第5,29
0,762号(Lezdeyら)、および欧州特許第346 500号(Tei
jin)に記載されている。米国特許第5,618,786号(Roosdor
pら)とWO96/08275号(Bayer)は、セリンプロテアーゼインヒ
ビター液剤の肺への送達を開示している。このような処方には、薬剤の液体また
は懸濁液から微細な水滴を霧状に機械的に発生させて、この霧を口および/また
は鼻を通して患者に吸入させるための噴霧器を使用することが含まれる。Vog
elmeierら(Journal of Applied Physiolo
gy,69(5):1843−1848,1990)、およびStolkら(T
horax,50(6):645−650,1995)は、噴霧器によって送達
することのできるSLPIの液体製剤の使用について記載している。しかし、本
発明者らより前に、SLPIを含む薬学的組成物の効果的な乾燥粉末製剤および
吸入送達に関する報告は知られていない。
【0012】 液体噴霧器による送達以外にも、エアロゾルによる計量吸入器(MDI’s)
を用いて肺への薬剤送達を行なうことができる。これらの装置は、一般的には、
薬剤/与圧ガス製剤を放出する加圧キャニスターが含まれる。通常の与圧ガスに
は、フッ化炭化水素などがある。与圧ガスは、放出されると蒸発して、薬剤粒子
が患者に吸入される。
【0013】 噴霧器やアトマイザーを必要とする液体製剤は容易に携帯することができず、
簡単に使用することができない。フッ化炭化水素のエアロゾル製剤は取り扱いが
容易で、広く使用されているが、その使用は、一般的に、有害な環境効果をもつ
といわれるクロロフルオロカーボン(CFC’s)の使用をともなう。エアロゾ
ル製剤の中には、フッ化炭化水素の代わりに炭化水素の与圧ガスを使用している
ものもあるが、可燃性が高いために用途が限定される。このような状況の下では
、乾燥粉末を分散させる装置で、CFCエアロゾル技術に頼らないものが、乾燥
粉末として処方することのできる薬剤を送達する方法として有望である。
【0014】 ある種のタンパク質とポリペプチドは、そのまま、または適当な粉末担体とと
もに凍結乾燥粉末にすれば、安定して貯蔵することができる。しかし、治療用実
体として、乾燥粉末タンパク質およびポリペプチドを送達することができるかは
、ある種の局面では予測不能で問題が多い。タンパク質およびポリペプチド薬剤
の多くにおいては、しばしば投薬量が非常に重要なので、乾燥粉末送達法は、所
期の薬剤量を正確かつ精確に、また確実に送達できるものであることが必要であ
る。さらに、タンパク質およびポリペプチド薬剤の多くは非常に高価で、一般的
に、用量当たりの費用は従来の薬剤の何倍もする。したがって、損失を最小限に
抑えて乾燥粉末を送達できることが非常に重要である。また、粉末が確実に適切
に配分されるように、患者が吸入前に簡単に分散できることも重要である。
【0015】 タンパク質粉末を送達するためのもう一つの条件は効率である。少ない呼吸回
数で、投薬全量の吸入を完了させるためには、気体の塊りの中の薬剤濃度を相対
的に高くすることが重要である。適切な分散を行ない、かつ分散容量を少量にで
きることが、粉末組成物の各単位用量を容易かつ確実に分散するために一部必要
となる重要な技術問題である。
【0016】 効率的な送達のさらにもう一つの態様には、粒子の大きさが含まれる。効率的
な送達のための粒子の大きさは、マイクロメートルの範囲内にあることが必要で
、1から8μmの間、マスメジアン(mass median)直径が3から6
μmの間にあることが必要である(J.Pharm.Sci.,1986,75
:433)。エアロゾルの粒子の大きさを調節するための装置は公知である。例
えば、米国特許第5,522,385号は、処方時ではなく送達時の粒子の大き
さを調節するための機械的装置について記載している。薬剤を十分なエネルギー
とともに多孔性の膜の形状をもつノズルに通して、担体を蒸発させ、それによっ
て粒子の大きさを縮小させて、エアロゾル粒子を生成させる装置が提供されてい
る。米国特許第4,790,305号は、一つの容器に薬剤を、別の容器に空気
を入れておき、薬剤を吸入する前に空気が全部吸入されるように、流量調節口を
用いて流量を調節しながら、計量されたエアロゾル投薬量の粒子の大きさを調節
することが記載されている。米国特許第4,926,852号は、流速を制限し
て粒子の大きさを調節するための開口部を有するチャンバーを介して流量中の投
薬量を計量することに言及している。米国特許第4,677,975号は、選択
した大きさ以上の粒子をエアロゾル小滴から取り除くためのバッフルを用いた噴
霧装置について記載している。米国特許第3,658,059号には、吸入して
いる懸濁液の通路に開いている孔の大きさを変えて、送達すべき懸濁粒子の量と
大きさを選択するバッフルについての記載がある。これらの装置の問題は、エア
ロゾルを生成した後にこれを加工することで、そのために効率が悪くなることで
ある。
【0017】 発明の要約 本発明は、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)を乾燥粉末タ
ンパク質として患者の肺に直接投与する(以下、「肺への投与」という)と、治
療上有効な状態で送達できるという、思いがけない発見に基づいている。さらに
、この方法で肺に送達されるSLPIは、気管気管支内送達(気管、気管支、お
よび細気管支への気道からの送達)を促進するように特別に処方することができ
る。SLPIを投与するためのこの新しい方法によって、特定の治療薬量を、注
射することなしに迅速に患者に送達することができる。さらに、肺への送達は、
患者自身による投与をより容易にすることができる。その上、本発明に係る薬学
的組成物は、吸入に適した簡単に分散する乾燥粉末粒子で、用量のSLPIタン
パク質を正確、精確かつ確実に、治療効果にとってもっとも効果的な部位に送達
する乾燥粉末粒子を提供する。そして、本組成物は、単位用量形態当たりの損失
を最小限に抑えて、SLPIタンパク質を効果的に送達することができる。本発
明に係る方法によって有用となる機械的装置の例には、計量投薬吸入器や粉末吸
入器などがある。
【0018】 肥満細胞トリプターゼおよび好中球エステラーゼの量は、喘息性気道で上昇し
、気管支拡張と気道過反応の原因となる。セリンプロテアーゼも、粘液過分泌(
カテプシンG、エラスターゼ)、上皮細胞の剥離(カテプシンG、エラスターゼ
)、浮腫(トリプターゼ)、および平滑筋過形成(トリプターゼ)など、喘息性
気道への病理的変化を促進する。本発明に係るスプレードライした薬学的組成物
は、これらのプロテアーゼ活性を阻害するセリンプロテアーゼインヒビターSL
PIを提供する。
【0019】 一つの実施形態において、本発明は、SLPI、および薬学上許容しうる担体
を含む薬学的組成物で、約10重量%以下の水を含む乾燥粉末であり、この粉末
の全量の50%から95%が、直径約1.0ミクロンから約8ミクロンの範囲に
あり、マスメジアン直径が約3.0ミクロンから約6ミクロンの大きさの粒子ま
たは粒子の塊りを含んでいる。好ましい態様において、粒子は、気体流の中で、
少なくとも50%が分散可能である。より好ましい態様では、粒子または粒子の
塊りは、マスメジアン直径が約4.5ミクロンから約5.5ミクロンの範囲にあ
る。
【0020】 一般的には、SLPIは、組成物の約50重量%から約95重量%であり、薬
学上許容しうる担体は、組成物の約5重量%から約50重量%である。薬学上許
容しうる担体は、炭水化物、アミノ酸、またはポリペプチドにすることができる
。薬学上許容しうる担体の実例は、マンニトール、スクロース、トレハロースな
どがある。この薬学的組成物は、さらに、分散剤および/または吸収促進剤など
の薬学的な賦形剤を含むことができる。好ましい態様において、薬学的組成物は
、SLPIの混合物、また、場合によっては、溶剤中の薬学上許容しうる担体を
提供し、この混合液をスプレードライして乾燥粉末を形成させて製造される。
【0021】 本発明に係る新規の製剤は、粒子の大きさを均一にすることによって、送達す
ることのできるSLPIタンパク質の量を増加させ(すなわち、粒子当たりの薬
剤含有量が高い)、望ましい標的領域、すなわち、大気道(気管支、細気管支)
への送達量を増加させた薬学的組成物をもたらす。これによって、送達すべき投
薬必要量、および投薬スケジュールが減少する一方で、高い薬効と長い作用期間
をもたらす組成物ができる。さらに、この新規組成物は、貯蔵安定性がさらに高
まり、さらに便利に使用されるようになる。
【0022】 SLPIタンパク質は、自然界から採取することができるが、より好ましくは
、タンパク質合成または組換え技術のどちらかによって製造する。特に好ましい
態様において、組換えによって製造されたSLPIタンパク質を薬学的組成物に
使用する。
【0023】 好ましい実施形態において、本発明は、エラスターゼ、トリプターゼ、および
カテプシンGなどを含む、白血球または肥満細胞のセリンプロテアーゼを阻害す
る組成物および方法を特徴とする。この組成物は、プロテアーゼの量が過剰、な
らびに白血球および肥満細胞によって生じた異常を特徴とする肺疾患を治療する
ときに有利であろう。この組成物は、喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、
気腫、および、これら以外の気管支拡張、急性呼吸不全、または可逆性肺血管収
縮(すなわち、急性肺血管収縮、または慢性肺血管収縮で可逆的構成要素をもつ
もの)などの炎症性気道疾患を治療するときに特に有益であろう。治療法には、
この他、感染性疾患適応症、腫瘍、肺高血圧その他の気道疾患の治療も含まれよ
う。この組成物は、肺粘液産生/分泌の昂進、気道での粘液速度の低下、抗原/
刺激、および/または気道細胞/組織における病理学的な変化に対する気道の過
反応性の昂進という特徴をもつ肺疾患の治療に用いることができる。
【0024】 詳細な説明および好ましい態様 従来からの噴霧器によって肺にエアロゾルを送達する効率は、エアロゾル化合
物を1回吸入する間に相対的に低下して行き、また、患者によってさまざまであ
ることが、実験によって示されている(Pattonら、Respirator
y Drug Delivery IV,65−74(1994);Colem
anら、Annals of Pharmacotherpy,30:644−
55(1996))。さらに、肺に沈積する位置は、(1)吸気量、吸気速度、
呼気の前に息を止めている時間、薬剤の塊りを投与された時の肺容量、および呼
気速度などの呼吸パラメーター、(2)エアロゾル粒子(すなわち、薬剤化合物
、担体、与圧ガス)の大きさ、形、および密度、および(3)患者の生理学的特
徴によって決まる。従来の装置と薬学的製剤は、これらの変異をなくすことがで
きず、そのため、投薬量を調節することができない。
【0025】 しかし、本発明は、吸入療法、および喘息などの肺症状を治療するのに適した
、乾燥粉末タンパク質の薬学的組成物を提供する。この組成物は、独特に処方さ
れており、肺の領域に沈積するときに、その生物学的活性を保持するように製造
されている。
【0026】 本発明は、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)タンパク質は
、乾燥粉末でも活性をもち、薬学上許容しうる担体をこの薬学的組成物の中に加
えることによって、吸入によって投与される粉末の有効性が高まるという発見に
、一部基づいている。吸入送達するための粉末組成物の製剤において、組成物の
分配能を一貫して確実に高いレベルになるようにするのは困難である。例えば、
粉末組成物を形成している粒子の50%しか分散しなければ、50%の組成物(
すなわち、活性因子)が分散せず、利用されないままになる。これは、かなりの
量の活性因子が失われることを意味しており、製造業者は、この損失を考慮して
、十分量の活性因子を確実に含むものが患者に送達されるようにしなければなら
ないことを意味する。活性因子の値段が高い場合には、製造業者にとって、かな
り余計な費用がかかること意味する。本発明は、投薬性を改善することによって
、活性因子の損失という問題に取り組んでいる。本発明に係る製剤は、分配能が
高いため、単位投薬量中のより高い割合の活性因子が対象者の肺に進入し、かつ
、吸入によって失われる薬剤が少なくなる。
【0027】 最も基本的な形においては、乾燥粉末状の薬学的組成物は、SLPIタンパク
質と、薬学上許容しうる賦形剤を1種類以上含んでいる。このような賦形剤には
、増量剤とも呼ばれる担体薬剤または担体材料、分散剤、または希釈剤などがあ
る。”薬学上許容しうる”という語は、肺に対する顕著な有害毒性効果なしに摂
取することができ、SLPIタンパク質と顕著に相互作用しない賦形剤を意味す
る。
【0028】 「粉末」および「粉末化」という用語は、吸入装置などによって細かく分散さ
れ、その後、肺に到達するよう患者に吸入される固形粒子で、比較的自由に流動
し、分散可能な粒子からなる組成物を意味する。このように、この粉末は吸入療
法によって投与されるため、「呼吸できる」といわれ、肺送達に適する。一般的
には、平均粒子サイズは、直径で約10ミクロン(μm)以下、2μm以上であ
る。0.5μmよりも小さな粒子は、吸入後に吐き出されてしまうか、吐気の時
に口腔壁に付着してしまう可能性がある。直径約3ミクロンよりも小さな粒子は
、肺胞を通過してしまう。8ミクロン以上の粒子は、口または喉の中に沈積して
しまう可能性がある。その結果、これより大きな固形粒子は、腸管の中に取り込
まれて、速やかに分解されて不活化される。
【0029】 計量投薬吸入剤の粒子の大きさは、マイクロメートルの範囲にあることが必要
で、1から8μmの間、塊りでは中央の直径が3から6μmの間にあることが必
要である。また、気管支に効率よく粒子を送達するときに粒子の大きさが重要で
あることが、次のように説明されている:気道に対しては4−7ミクロン、肺胞
に対しては1−5ミクロン、また、口と喉に対しては>7ミクロンである(J.
Pharm.Sci.,75:433,1986)。
【0030】 本組成物は、気道下部(例えば、肺胞)や口および喉ではなく、大気道(気管
、気管支、細気管支)に最大限沈積するような粒子サイズで、SLPIタンパク
質を送達するように処方されている。粒子の形は不規則で、不均一または雑多で
ある。好ましくは、粒子または粒子の塊りの平均サイズは、約2から8ミクロン
の範囲である。より好ましくは、本発明に係る乾燥粉末組成物の粒子または粒子
の塊りは、直径3から6ミクロンである。もっとも望ましくは、平均サイズは、
約3.5から5.5ミクロンの範囲にある。さらに、乾燥粉末組成物の粒子また
は粒子の塊りの90%以上がこれらの範囲に入ることが望ましい。
【0031】 「乾燥」という用語は、粉末組成物が、その粒子または粒子の塊りが吸入装置
の中で容易に分散するように、水分を含んでいることを意味する。この水分は、
一般的には、約10重量%(%w)よりも少なく、通常は、5%wよりも少なく
、好ましくは、約3%wよりも少ない。
【0032】 「分散可能な」または「分配能」という語は、粉末組成物を空気などの気体流
の中に懸濁することができ、それによって、分散した粒子を患者の肺の中に吸気
ないし吸入することができるようになる。例えば、10%しか分散できない乾燥
粉末組成物とは、組成物を形成している、細かく分割された粒子の全量の10%
だけが、口から肺の中に吸入するために懸濁されうることを意味し、50%分散
可能性とは、全量の50%を懸濁できることを意味する。分配能の標準的な測定
法は後述する。好ましくは、本発明に係る乾燥粉末状薬学的組成物は、約50%
から95%分散可能である。より好ましくは、組成物は、70%から95%分散
可能であり、もっとも好ましくは、90%から95%分散可能である。
【0033】 担体成分 一般的に、比較的自由に流動する粒子状の固体である、乾燥粉末担体として使
用するのに適した材料は、水と接触しても固まったり重合したりせず、分散粉末
として吸入しても毒物学的に無害であり、また、タンパク質の所期の生理学的作
用に有害な影響を与えるような形で、SLPIタンパク質と有意に相互作用する
ことのない材料である。本組成物の担体成分として使用するのに適した材料には
、炭化水素、アミノ酸、およびポリペプチドなどがあるが、これらに限定はされ
ない。好ましい担体は、以下の特徴をもっている: 1.乾燥するとガラス状になることのできる不定形の分子である。
【0034】 2.ガラス状に変化するときの温度が高い(最終粉末製剤>40℃)。
【0035】 3.脱水の過程で、水を置換することのできる官能基をもつ。
【0036】 4.薬学的に安定で不活性である。また、 5.貯蔵および送達の間、活性のあるタンパク質薬剤を安定化させる。
【0037】 この新規の組成物において有用な乾燥粉末担体材料の量は、活性因子を均一な
用量として患者に送達できるように、組成物全部について、活性因子を均一に分
布させるのに役立つ量である。また、担体材料は、活性因子を、所期の有益な緩
和ないし治療的な結果をもたらすと同時に、濃度が高すぎるために生じる有害な
副作用を最小にするような濃度に希釈するのに役立ちうるものである。好ましい
態様において、1種類の薬学上許容しうる担体を増量剤および希釈剤として用い
る。より好ましい態様において、1種類の薬学上許容しうる担体を、分散剤また
は潤滑剤としても用いる。固形粒子は、集塊形成、固化、または粒子成長するこ
とがある。この問題は、乾燥粒子組成物については、粒子の間を滑りやすくし、
および/または送達装置の部位を潤滑化する薬剤を添加することによって克服す
ることができる。
【0038】 本発明に係る粉末化した薬学的組成物の担体成分は、製剤の重量の約0%から
99%の範囲にある。好ましくは、この担体は、製剤の5重量%から50重量%
であり、より好ましくは、製剤の10重量%から30重量%である。
【0039】 これに関して特に有用な炭水化物製賦形剤には、単糖類、二糖類、多糖類、糖
アルコール、およびその他の多価アルコールなどがある。代表的な単糖類は、デ
キストロース(無水物または一水和物;グルコース、およびグルコース一水和物
とも呼ばれる)、ガラクトース、マンニトール、D−マンノース、ソルビトール
、ソルボースなどである。代表的な二糖類は、ラクトース、マルトース、スクロ
ース、トレハロースなどである。代表的な三糖類は、ラフィノースなどである。
この他の炭水化物製賦形剤は、グリセロール、キシリトール、キシロース、ラフ
ィノース、メレチトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、デンプ
ン、および、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデ
キストリンなどである。これらの材料はそれぞれ、商業的な供給業者から簡単に
入手することができる。
【0040】 適当なアミノ酸賦形剤には、標準的な薬剤加工技術によって粉末を形成する天
然のアミノ酸のすべてが含まれ、非極性(疎水性)アミノ酸、および極性(非荷
電性、正または負の荷電性)のアミノ酸を含むが、これらのアミノ酸は、医薬品
級で、米国食品医薬品局によって安全であると一般的に認められている(GRA
S)ものである。非極性アミノ酸の代表的な例は、アラニン、イソロイシン、ロ
イシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、およびバ
リンである。極性で非荷電性のアミノ酸の代表例は、システイン、グリシン、グ
ルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシンである。極性で正荷電性のアミ
ノ酸の代表例は、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンである。負荷電性のア
ミノ酸の代表例は、アスパラギン酸とグルタミン酸である。これらのアミノ酸は
、一般的に、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisc
onsin)にあるアルドリッチ化学会社(Aldrich Chemical
Company,Inc.)、またはミズーリ州セントルイスにあるシグマ化
学会社(Sigma Chemical Company)など、医薬品級の製
品を供給することのできる供給業者から入手することができる。
【0041】 また、適当な担体材料には、1種類以上の炭水化物と1種類以上のアミノ酸を
混合したものがある。一般的には、この混合は、適当な炭水化物部分と適当なア
ミノ酸部分が、重量にして、約100:1から約1:100の比率を示し、好ま
しくは、この比率は、約5:1から約1:5であり、より好ましくは、1:1で
ある。このタイプの代表的な混合物は、マンニトールをグリシンを混合したもの
である。
【0042】 適当な担体は、また、薬学上許容しうるポリペプチドを含むことができる。こ
の利用目的では、ポリペプチドとは、各アミノ酸単位が、標準的なペプチドアミ
ド結合(一つのアミノ酸のカルボキシル基と、別のアミノ酸のアミノ基との結合
)によって、全部が結合している、天然のタンパク質、および人為的に作製され
たポリペプチドの両方を含む意味である。適当なポリペプチド担体は、それを必
要とする患者の肺の中に取り込むことのできるもので、使用される量では、有害
な毒物学的効果をもたないものである。担体は、一般的には、不活性薬剤である
が、いくらかの固有の活性をもっていても、そのような活性が組成物全体の有用
性に反するものでない限り許容される。したがって、活性成分であるSLPIタ
ンパク質も、本発明に係る薬学的組成物の担体成分として用いることができると
考えられる。これは、SLPIタンパク質を大量に送達しなければならない場合
に適している。
【0043】 ポリペプチド担体は、一般的に、約1,000から約2,000の間の分子量
をもつという特徴がある。低分子量の薬剤の例は、分子量が約1000であるポ
リアラニンである。この分子量の範囲にあって、生理学的に許容されるが不活性
であるという、その他のポリペプチドを調製することもできる。約3000から
6000までの分子量をもつ分子も有用である。本発明において有用なタンパク
質の別の代表例は、牛乳の成分で、分子量が約14,200のα−ラクトアルブ
ミンである。もう一つのポリペプチド担体は、分子量約69,000(この数値
については、メルクインデックス(Merk Index)には約69,000
と記載されており、レーニンジャー、第2版には、68,500と記載されてい
る)のヒト血清アルブミンである。一般的には、ポリペプチド担体の分子量は、
約1000から約100,000であり、より特定すると、約1,000から約
70,000である。
【0044】 異なる材料を分散剤として用いることができる。例えば、ソルビタントリオリ
エート(sorbitan trioleate)、オレイルアルコール、オレ
イン酸、レシチン、およびコーン油などの界面活性剤が、分散剤として粉末組成
物に用いられている。なお、イソプロピルミリスチン酸、および軽量ミネラルオ
イルが、潤滑剤として用いられている。
【0045】 分泌性白血球プロテアーゼインヒビタータンパク質 本発明において使用される「分泌性白血球プロテアーゼインヒビター」および
「SLPI」という用語は、耳腺分泌液から精製されたヒトSLPIタンパク質
、ならびに生物学的に活性な、合成および組換え技術によって生産されたSLP
Iタンパク質およびその類似体のことをいう。これについては、トンプソン(T
hompson)らの米国特許第4,760,130号、ならびにその係属出願
番号08/283,477(1994年7月7日出願)、07/712,354
(1991年6月7日出願)および08/279,056(1994年7月22
日出願)によって最初に記載された通りであり、これらの文献のそれぞれの開示
を本明細書に引用によって含める。SLPIタンパク質は米国特許第4,845
,076号(Heinzelら)、国際公開特許WO96/08275(Bay
er)、米国特許第5,618,786号(Roodsdorpら)および欧州
特許第346500号(Teijin)にも記載されており、これらの開示につ
いても本明細書に引用によって含める。
【0046】 簡単にいうと、SLPIタンパク質は、少なくとも8個のシステイン残基を含
みセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するアミノ酸配列を含み、少なくと
も1つの活性部位は、
【0047】
【化1】 (式中、R、RおよびRは同一または異なり、メチオニン、バリン、アラ
ニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、グリシンおよび
アルギニンからなる群より選択され;RおよびRは同一または異なり、メチ
オニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リ
シン、グリシン、ロイシンおよびアルギニンからなる群より選択される。) からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸配列を含む。
【0048】 成熟ヒトSLPIは、以下のアミノ酸配列を有する。
【0049】
【化2】
【0050】 例示的SLPI類似体には、以下のものが含まれる。
【0051】
【化3】 (式中、RおよびRは同一または異なり、セリン、アラニンまたは置換アミ
ノ酸残基からなる群より選択され;R、R、R、RおよびRは同一ま
たは異なり、メチオニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、ト
リプトファン、リシン、グリシン、およびアルギニンからなる群より選択され;
およびRは同一または異なり、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、
チロシン、トリプトファン、リシン、グリシン、ロイシンおよびアルギニンから
なる群より選択される。) SLPIはセリンプロテアーゼの選択的インヒビターである。SLPIは、ト
リプターゼ、カテプシンG、エラスターゼ、キモトリプシン、キマーゼおよびト
リプシンを阻害するが、カリクレイン(組織または血漿)、トロンビン、因子X
a、またはプラスミンに対しては阻害しないことが示された。
【0052】 「生物学的に活性な」という場合、そのタンパク質またはポリペプチドが、ヒ
トSLPIまたはヒトSLPIタンパク質の一部のプロテアーゼ阻害プロファイ
ルと実質的に同一のプロファイルを有することを意味する。生物学的に活性なタ
ンパク質およびポリペプチドは、ヒトSLPIのアミノ酸配列と実質的に相同な
アミノ酸配列を有するであろうことは、当業者に理解されよう。ここでいう「実
質的に相同な」とは、ヒトSLPIタンパク質アミノ酸配列(ヒト耳腺分泌液か
ら単離された天然型セリンプロテアーゼインヒビター)に対して「類似性」また
は相同性を有し、その相同配列がヒトSLPIタンパク質について記載された生
物学的活性を有すると予想されるようなアミノ酸配列のことである。
【0053】 相同性または同一性の程度は、同一であるか、もしくは70%以上(すなわち
、70%〜100%の範囲の相同性)ことが好ましい。したがって、「実質的に
相同な」SLPIタンパク質は、ヒトSLPIのアミノ酸配列に対して70%以
上の相同性を有すると言えよう。より好ましくは、相同性の程度は80%または
85%以上とすることができる。さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは
95%以上である。上記相同性百分率または同一性百分率は、比較される2つの
配列のうちの小さい方に見られる、2つの配列の大きい方に見られる要素の百分
率として計算されたものであり、成分は4個の連続するアミノ酸の配列である。
【0054】 個々または一群のアミノ酸残基は、分子の立体構造または活性に影響を及ぼさ
ずに、アミノ酸配列中において、変更、位置的置換(たとえば、順序を逆にする
、あるいは並び替えるなど)、あるいは全体的に欠失させることができる。した
がって、本発明の実施に有用な類似体は、精製された天然型ヒトSLPIと比較
して、1個以上のアミノ酸付加、置換基、および/または欠失を有していてもよ
い。付加アミノ酸を含む類似体の1つの特定の実施形態は、最初のメチオニンア
ミノ酸残基がアミノ酸位置1に存在しているものである。置換類似体は、そのよ
うな類似体が、天然由来のSLPIに比べてより大きなおよび/または示差的な
炭化水素修飾を可能にするという点で特に有用でありうる。そのような修飾は、
当業者の技量に十分に含まれるものであり、上で引用したSLPIの特許および
出願の中にも記載されている。
【0055】 他の有用なSLPI類似体としては、異なった炭化水素修飾を有するものがあ
り、これには、シアル化のレベルの異なる1つ以上の多糖鎖の付加または欠失な
どの、異なるパターンのグリコシル化を含むSLPI分子が含まれる。一般には
、「タンパク質グリコシル化―細胞、バイオ技術および分析の展望(Prote
in Glycosylation: Cellular, Biotechn
ical, and Analytical Aspects)(1991)」
H.S.コンラッド(Conradt)編、VCH,N.Y.,N.Y.を参照
のこと。
【0056】 さらに、SLPIタンパク質誘導体を生産することもできる。これには、タン
パク質がポリエチレングリコール(PEG、本明細書に引用によって含める米国
特許第4,179,337号を参照のこと)などの他の化学物質に結合された分
子が含まれる。他の有用な化学的複合化にはメチル化、アミド化などが含まれる
。さらに、SLPI(またはその生物学的に活性なフラグメント)は、他のタン
パク質分子に結合されてもよい。たとえば、そのような結合は化学的リンカーま
たはペプチドリンカーによって達成されてもよい。一般的には、「タンパク質修
飾のための化学物質第2版」(R.L. Lundblad, CRC, Bo
ca Raton, FL, pp. 287−304, 1991)を参照の
こと。SLPIタンパク質は、SLPIの一次アミノ酸配列の全部または一部が
、連続するポリペプチド鎖の中において、1つ以上の他のポリペプチドの一次ア
ミノ酸配列の一部または全部と結合されているような、キメラタンパク質分子で
あってもよい。キメラタンパク質分子に生産の考察に関しては、本明細書に引用
によって含める上記「タンパク質修飾のための化学物質」を参照のこと。
【0057】 SLPIタンパク質はヒト組織から単離された天然型のものであってもよい。
適切なSLPIタンパク質としては、化学合成方法または組換え型生産技術の産
物も含まれる。例示的組換え方法には、SLPIタンパク質をコードする核酸配
列を宿主細胞中で発現させることが含まれ、この場合、宿主細胞は形質転換、形
質導入または相同的組換えの手段によってタンパク質を発現するように修飾され
ている。
【0058】 形質転換、培養、増幅、スクリーニング、および産物の生産と精製のための適
切な宿主細胞(たとえば、細菌、ヒト、昆虫、酵母または植物細胞)および方法
の選択は、技術上周知である。たとえば、ゲーティング(Gething)とサ
ンブロック(Sambrook)によるNature, 293: 620−6
25 (1981)、あるいは、カフマン(Kaufman)らによるMol.
Cell. Biol., 5(7): 1750−1759 (1985)
またはホーリー(Howley)らによる米国特許第4,419,446号を参
照のこと。さらなる例示的材料および方法についてはここで検討する。組換えに
よって修飾された宿主細胞は適切な条件下で培養し、その後、発現されたSLP
Iタンパク質は、当業者によって知られている適切な手段によって、培養培地(
あるいは細胞内で発現される場合には細胞から)から任意に回収、単離、精製さ
れる。
【0059】 種々の宿主細胞は、タンパク質の翻訳および翻訳後プロセッシングおよび修飾
(たとえばグリコシル化、開裂)に対して、特徴的かつ特異的なメカニズムを有
している。発現される外来タンパク質の所望の修飾およびプロセッシングを可能
にするために、適切な細胞系または宿主系を選択することができる。たとえば、
グリコシル化されていないコアタンパク質産物を得るためには、細菌系における
発現を用いることができる。酵母中の発現を利用してグリコシル化産物を生産し
うる。タンパク質の「天然の」グリコシル化を可能にするためには、ヒト細胞に
おける発現を用いることができる。さらに、種々のベクター/宿主発現系も、様
々な程度のプロセッシング反応、たとえばタンパク質分解による開裂などに効果
的であると考えられる。
【0060】 本発明に開示されるベクターをクローン化して発現させるための適切な宿主細
胞は、真核、酵母またはより高等な真核細胞である。SLPIタンパク質の発現
には、糸状菌や酵母などの真核微生物が適していると考えられる。下等真核宿主
微生物の中では、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)または一般的なパン酵母が一般的に用いられるが、他
にも多くの属、種、および株が知られており、一般に入手可能である。
【0061】 グリコシル化されたSLPIタンパク質の発現のために用いられる宿主細胞は
、多細胞生物体からも得られる。そのような宿主細胞は、複雑なプロセッシング
とグリコシル化活性を遂行することができる。原理上は、脊椎動物、あるいは植
物および昆虫を含む無脊椎動物の培養細胞に関わりなく、あらゆる高等真核細胞
培養を使用することができる。培養物(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖
は、周知の方法である。有用な哺乳動物宿主細胞系の例としては、SV40(C
OS7)で形質転換したサル腎臓CV1系、ヒト腎胚系(293細胞または懸濁
培養において増殖するようにサブクローンされた293細胞)、ベビー・ハムス
ター腎臓細胞、およびチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞が含まれるが、これら
に限定されることはない。他の適切な哺乳動物細胞系としては、HeLa、マウ
スL−929細胞、スイス、Balb−cまたはNIHマウスに由来する3T3
系、BHKまたはHaKハムスター細胞系が含まれるが、これらに限定されるこ
とはない。
【0062】 適切な宿主細胞としては、原核細胞も含まれる。原核宿主細胞としては、細菌
細胞、たとえば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・サ
ブチリス(B. subtilis)などのバチルス属、シュードモナス・エル
ギノーサ(P. aeruginosa)などのシュードモナス属、サルモネラ
・ティピムリウム(Salmonella typhimurium)、または
、セラチア・マルセスカンス(Serratia marcescans)など
のグラム陰性またはグラム陽性の生物体といった細菌細胞が含まれるが、これら
に限定されることはない。たとえば、大腸菌の様々な株(たとえば、HB101
、DH5a、DH10、およびMC1061)が、バイオテクノロジーの分野に
おいて宿主細胞として周知である。ストレプトマイセス種などの様々な株も使用
することができる。現時点で好ましいSLPIタンパク質生産のための宿主細胞
は、細菌細胞(たとえば、エシェリキア・コリ)および哺乳動物細胞(チャイニ
ーズ・ハムスター卵巣細胞、COS細胞など)である。
【0063】 他の賦形剤 薬学的組成物は、担体に加えて、送達を容易にしたり治療作用を高めるために
使用することのできる他の薬学上許容しうる賦形剤を含んでいてもよい。その他
の賦形剤としては、増量剤、ガラス形成剤、安定剤、等張調節剤、推進剤、界面
活性剤および緩衝液が含まれるが、これらに限定されることはない。組成物内で
用いられることのできる他の賦形剤としては、保存剤、抗酸化剤、甘味剤および
テースト・マスキング剤が含まれるが、これらに限定されることはない。安定剤
としては、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラクトース、グルコース
、フルクトース、およびガラクトースなどの糖、グリシン、リシン、グルタミン
酸、アスパラギン酸、アルギニン、およびアスパラギンなどのアミノ酸、アルブ
ミンやゼラチンなどのタンパク質、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび硫酸ナ
トリウムなどの塩、ならびに、PVP、PEGおよびPVAなどの高分子が含ま
れるが、これらに限定されることはない。これらの安定剤は、ガラス形成アモル
ファス添加剤または等張調節剤としても使用することができる。
【0064】 送達されるタンパク質に対する製剤のpHを調節するために緩衝液を加えても
よい。緩衝物質としては、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸塩
、コハク酸塩または酢酸塩が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0065】 空気または様々な生理学的に許容しうる不活性ガスを、吸入剤用の乾燥粉剤粒
子を懸濁化するためのエアゾール化または懸濁化剤として用いることができる。
不活性ガスが使用される場合には、該ガスは通常約0.5〜5重量%で存在させ
る。ガスまたは推進剤は、SLPIタンパク質またはヒトの肺組織に対して悪い
相互作用を起こさない、この目的のために従来より使用されてきた物質であれば
どのようなものであってもよい。適切な推進剤としては、クロロフルオロカーボ
ン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、あるいは、トリ
クロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエ
タン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフル
オロエタンを含む炭化水素、あるいはそれらの組合せが含まれる。推進剤は、経
口および/また経鼻投与に対しては、たとえば米国特許第5,474,759号
(Fassbergら)に記載された非クロロフルオロカーボンエアゾール製剤
などに参照されるように、実質的にクロロフルオロカーボンを含まないものであ
ってもよい。好ましい懸濁化剤は空気である。
【0066】 適当な大きさの粒子は、界面活性剤の補助を伴うかまたは伴わずに、推進剤中
に懸濁させることができる。組成物は、スプレードライの剪断応力の作用下でタ
ンパク質を安定化させ、粉剤の物理的特性を高め、気道表面へのタンパク質の送
達を高めるために、界面活性剤を含んでいてもよい。適切な界面活性剤としては
、脂肪酸、リン脂質、トリオレイン酸ソルビタン、大豆レシチン、オレイン酸、
ポリソルベート類、ポリオキソマー、ブリジ(Briji)およびステアリン酸
ポリオキシルが含まれるが、それらい限定されることはない。
【0067】 さらに、生理学的に許容しうる界面活性剤は、グリセリド、より詳細にはジグ
リセリドを含んでいてもよく、該グリセリドにおいては、一方のカルボン酸が2
〜4個の炭素原子から成り、他方が12〜20個の炭素原子、より好ましくは1
6〜18個の炭素原子から成る飽和または不飽和のカルボン酸である。界面活性
剤の量は製剤中で約0.01〜10重量%の間で変えることができる。
【0068】 本発明の組成物は、セリンプロテアーゼインヒビタータンパク質が、下方気道
中の上皮細胞層を介して、隣接する肺の脈管系に吸収されるのを促進する働きを
する賦形剤を含んでいてもよい。促進剤はいくつかの可能性のあるメカニズムの
いずれかによって、これを達成する。 (1)上皮細胞同士の緊密な結合に構造的変化を誘導することにより、有効成分
の近傍細胞透過性(paracellular permeability)を
促進。 (2)膜のタンパク質または脂質構成要素と作用させるか、あるいはこれを抽出
することにより、膜の統合性を乱すことにより、有効成分の経細胞透過性を促進
。 (3)水性溶液中の有効成分の溶解性を高める促進剤と有効成分との間の相互作
用。これは、塊(二量体、三量体、六量体)の形成を防ぎ、有効成分の分子を促
進剤ミセルに可溶化することによって生じる。 (4)肺胞および肺気道上の粘液バリアの粘性を低下させるか、あるいはこれを
可溶化して、有効成分が直接吸収されるように上皮表面を露出させる。
【0069】 促進剤は、1つ以上の上に挙げたメカニズムによって機能する。いくつかのメ
カニズムによて作用する促進剤は、1つまたは2つのメカニズムを適用するもの
に比べて、有効成分の効果的な吸収をより促進しやすい。たとえば、界面活性剤
は促進剤として作用してもよく、上に列挙した4つすべてのメカニズムによって
作用すると信じられている。界面活性剤は、親油性部分と親水性部分との両方を
有する両親媒性分子であり、これらの2つの特性の間のバランスは様々である。
分子が非常に親油性のものであれば、水中における物質の溶解性が低く、その有
用性を低下させることもある。しかしながら、親水性部分が圧倒的に優位を占め
ていれば、分子の表面活性特性は非常に小さくなるであろう。したがって、効果
的にするためには、表面活性剤は十分な溶解性と十分な表面活性との間の適切な
バランスを与えなければならない。そのような促進剤の使用については、本明細
書に引用によって含める米国特許第5,518,998号(Backstrom
ら)に記載されている。
【0070】 賦形剤は、促進剤の存在下において表皮下空間に吸収されるタンパク質の量が
促進剤の非存在下で吸収される量よりも多い場合には、促進剤としても働いてい
ると考えられる。そのような促進剤は、気道管腔以外の組織分室内のプロテアー
ゼを阻害することにより、効力を高めると考えられる。吸収を促進するために用
いることのできる例示的物質としては、ナトリウム;カリウム;リン脂質;アシ
ルカルニチン;ウルソデオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸
塩のナトリウム塩;およびタウロジヒドロフシジン酸塩が含まれるが、これらに
限定されることはない。
【0071】 さらに別の潜在的に有用な促進剤としては、サリチル酸ナトリウム、5−メト
キシサリチル酸ナトリウム、天然に存在する界面活性剤、たとえば、グリシルレ
チン酸の塩、サポニングリコシド、およびアシルカルニチン;炭素鎖長10(す
なわち、カプリン酸ナトリウム)、12(ラウリン酸ナトリウム)および14(
ミリスチン酸ナトリウム)の飽和脂肪酸のナトリウム塩;およびカプリン酸のカ
リウムおよびリシン塩(炭素鎖長が約10より短いと、界面活性剤の表面活性が
低くなりすぎ、鎖長が約14より長くなると、水中での脂肪酸の溶解性が低下し
て有効性が限定される);リゾホスファチジルコリンなどのリン脂質、オクチル
グルコピラノシド、チオグルコピラノシドおよびマルトピラノシドなどのアルキ
ルグリコシド;およびシクロデキストリンおよびその誘導体である。
【0072】 組合せ 新規な乾燥粉末薬学的組成物は、SLPIタンパク質の他に有効成分または物
質を任意に含んでいてもよい。たとえば組成物は、気管支拡張剤化合物または抗
炎症剤を含んでいてもよい。そのような化合物は、気管支収縮または気道過反応
の発生に対抗するのに有効なあらゆる化合物で有り得る。喘息の吸入治療におい
て有用であることが知られている薬物の種類としては、呼吸性NSAID(ナト
リウムクロモリン、ネドクロミルなど);抗コリン作用薬(アトロピンや臭化イ
プラトロピウムなど);β2アゴニスト(アドレナリン、イソプロテレノール、
エフェドリン、サルブタモール、テルブタリン、オルシプレナリン、フェノテロ
ール、およびイソエタリンなど)、メチルキサンチン(テオフィリンなど);カ
ルシウムチャネル遮断剤(ベラパミルなど);およびグルココルチコイド(プレ
ドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート
、およびベクロメタゾン吉草酸塩など)が含まれる。これらは、本明細書に引用
によって含める「医療薬剤学の原理第5版」の第39章(Principle
of Medical Pharmacology, Fifth Editi
on, Kalant and Roschlau, Ed.(B.C.Dec
ker Inc., Philadelphia, 1989))に記載されて
いる。上記および他の吸入治療における有効な気管支拡張用薬物の使用は、喘息
患者の治療に常套的に従事する者にとっては周知である。
【0073】 組合せ組成物を調製するための他の適切な化合物としては、TNFαの阻害剤
、IgE合成または活性の阻害剤、喘息病因に付随するサイトカインまたはケモ
カインの阻害剤、他のプロテアーゼインヒビター、およびヘパリンが含まれる。
SLPIとともに使用することのできる他の物質としては、モノクローナル抗体
、可溶性レセプター、天然のタンパク質またはペプチド阻害剤、および薬化学的
に誘導された合成阻害剤が含まれる。
【0074】 新規な薬学的組成物は、付加する有効成分または物質が、SLPIタンパク質
/担体の粒子または粒子の塊の大きさとは異なる粒子サイズを有するように調製
することもできる。たとえば、付加する有効成分は、物質が吸入後に肺胞に沈積
して、該物質が肺のその領域に対して効果を及ぼすか、あるいは好ましくは該領
域から吸収されるような粒子サイズを有していてもよい。
【0075】 用途 本発明の組成物は好ましくは、肺を冒す病気または病状を治療するために調製
される。乾燥粉末組成物は、肺において生理学的または治療上有効な投与量のタ
ンパク質を提供するように調製される。タンパク質は肺上皮上の流体に保持され
、肺組織に接触して長時間の間、肺内の有効濃度を維持することが判明している
。こうしてタンパク質は、気道内のプロテアーゼ濃度の調節、刺激された効果ま
たは細胞機能に対するプロテアーゼのプライミング効果の阻害、および慢性的な
プロテアーゼの露出に対する細胞および組織反応の予防を行うことができる。
【0076】 特に、本発明の新規な薬学的組成物は、粘液の産生/分泌を低下させ、気道内
の粘液速度を高め、抗原/刺激物質に対する気道の過反応を低下させ(平滑筋収
縮を低下させる)、気道細胞/組織に対する病理学的変化を阻止することが見い
だされている。本組成物は、急性の肺血管収縮を予防(症状が発症する前に与え
られた場合)または逆転させるために有用であると考えられるが、該肺血管収縮
は、肺炎、外傷性障害、吸引または吸入障害、肺内の脂肪塞栓症、アシドーシス
、肺の炎症、成人呼吸促進症候群、肺水腫、急性高山病、心臓外科手術後の急性
肺高血圧症、新生児の存続性肺高血圧、周産性吸引症候群、肺硝子膜症、急性血
栓塞栓症、ヘパリン−プロタミン反応、敗血症、喘息、喘息発作重積状態、ある
いは低酸素症(一方の肺の麻酔中に起こりうるものを含む)などに起因しうる。
さらに、本組成物は、慢性肺高血圧症、気管支肺異形成、慢性肺血栓塞栓症、特
発性または一次性肺高血圧症、あるいは慢性低酸素症などに起因しうる、可逆性
成分を有する慢性の肺血管収縮の場合にも用いることができる。本組成物は呼吸
器ウィルスの感染性を阻害するためにも用いることができる。そのような阻害は
、気道のウィルス誘導性過反応を予防すると考えられる(東京田辺、WO97/
03694)。
【0077】 「治療上有効な量」という用語は、治療すべき対象に対して、所望の量の有効
成分を与えて期待される生理学的反応を得るために必要な、粉末組成物に含まれ
る有効成分の量のことをいう。気管支肺収縮を患っている患者に関して、乾燥粉
末SLPI組成物の治療上有効な量は、肺機能の標準的な方法で測定して、肺患
者の気道抵抗力を20%以上低減するような量である。たとえば、肺血管収縮を
患っている患者に対しては、組成物の「治療上有効な」量は、以下のいずれか一
方もしくは両方を含むことができる量として決定することができる。(1)肺血
管収縮の原因となると予想される損傷(吸引または外傷)後の肺血管収縮の発症
を予防。(2)患者のDELTA PVR(特定の患者に対してではないが、成
人に対する正常なPVRが1mmHg×分/リットルと想定した場合の、患者の
上昇PVRと「正常」PVRとの差)を20%以上低減。
【0078】 したがって、治療上有効な量のSLPIを構成するものは、治療される特定の
病状または条件に依存する。たとえば、喘息の場合、SLPIの治療上有効な量
は、気管支収縮および気道の過反応の発症を阻止し、効果的に喘息の症状を低減
するのに十分な量となるであろう。治療上有効な量は、知識のある実務者が所望
の投与計画に到達する際に考慮に入れるであろう様々な因子に依存するものであ
り、該因子には、治療する症状または疾病の重症度、肺機能不全の程度、患者の
体調などが含まれる。一般に、投与計画は、治療を受けている個人に対して肺力
学が回復するように行われる。
【0079】 薬学的組成物の調製 本発明は、吸入治療に適したエアゾールとして分散させることのできる乾燥粉
末SLPIを送達するためのものである。手短に言うと、薬学的組成物は(a)
溶剤中にSLPIと薬学的に許容しうる賦形剤とを含む均質な組成物を調製する
ことと、(b)混合物から溶剤を除去して固体にすることと、(c)結果として
生じた固体を吸込可能な粉末状の薬学的組成物に変換することとによって調製す
ることができる。
【0080】 本発明の他のより特徴的な態様は、スプレードライされた分散可能粉末SLP
I薬学的組成物の調製方法であって、該方法は、溶剤に含まれたSLPIと1つ
以上の薬学的に許容しうる担体物質とから成る均質混合物をスプレードライする
ことを含む。このスプレードライ工程は、大きな気道への吸入送達に適した約3
μm〜約10μmの範囲の粒子サイズを有する、粒子および/または粒子の塊を
含む分散可能な粉末薬学的組成物を提供するのに適した条件下で行われる。肺胞
への送達が必要とされる場合(たとえば気腫)には、<3μmより小さい粒径が
望ましい。
【0081】 乾燥粉末組成物は、真空濃縮、オープン乾燥、凍結乾燥または他の乾燥手段に
よって製造することができる。たとえば工程には、水分を除去するために標準的
な凍結乾燥条件下において凍結乾燥される、水性組成物を形成することが含まれ
ていてもよい。結果として生じた固体組成物は、固体をボールミルやジェットミ
ルなどの手段によって粉砕することにより、粉末に変形し、吸入可能で吸入治療
に適した粒子サイズを得る。しかしながら、スプレードライ工程は、粉砕、摩砕
、または微小化などのさらなる製造工程を行う必要なく、均一な粒子サイズを有
する粒子を提供する。本発明の乾燥粉末組成物を製造するための上記好ましい方
法では、保存中に凝集することのない粒子ができることが分かっている。保存中
に粒子サイズが一定に維持されるので、送達方法あるいは送達前調製において、
粒子の塊を除去または破断する必要がない。
【0082】 スプレードライ工程において用いられる適切な溶剤としては、水、エタノール
、tert−ブチルアルコール、およびアセトンが含まれるが、それらに限定さ
れることはない。水性混合液を調製する際、有効成分を担体賦形剤を含む、ある
いは含まない水中に溶解または懸濁することにより、溶液または安定な懸濁液を
得る。組成物の成分の添加順序はたいして重要ではないが、均質混合物は溶液ま
たは懸濁液であり、好ましくは溶液である。水性混合液中の成分の割合は、結果
として生じる粉末組成物内において望まれる割合と同じである。
【0083】 使用されるSLPIタンパク質の量は、通常、最終組成物の約10〜100重
量%の間で変化する。より通常的には、組成物は50〜100重量%のSLPI
タンパク質を含有する。
【0084】 上で詳細に記述したように、担体成分は、最終組成物の約0〜90重量%の間
で変化する。より通常的には、担体成分は、最終組成物の約0〜50重量%を占
め、より好ましくは10〜30重量%を占める。
【0085】 特に好ましい担体物質の1つにトレハロースがある。25%(w/w)より高
いトレハロース濃度においては、粒子がスプレードライ工程の最中に凝集しやす
い。しかしながら、最終的な粒子サイズは望ましい3〜6μmから逸脱すること
はないことが発見された。その代わりに、高い糖濃度においては粒子が縮小して
、粒子が凝集し、最終的な粒子サイズが最適範囲に収まることになる。さらに、
スプレードライの後の保存中にはそれ以上の凝集は起こらない。
【0086】 使用されるSLPIタンパク質の量は、粒子のサイズ、要求される投与頻度、
病気の性質、治療が治療あるいは予防のいずれの目的で行われるのかなどを含む
多数の因子に応じて変化することが認められるであろう。治療の期間は、治療的
投与、薬物の濃度、投与の速度などに応じて広範に変化する。たとえば、使用さ
れる送達装置に応じて一回投与または反復投与のいずれが必要とされる。したが
って、エアゾールは約6〜24時間の間隔で1回または複数回投与することがで
きる。
【0087】 上述のように、薬物が吸入後に沈積する部位は粒子サイズによって決まる。約
3μm未満のサイズを有する粒子は肺胞に到達し、約0.5μm未満の粒子は吸
入後、発散し、約7μmを越える粒子は口の周辺に沈積する。薬学的組成物の調
製時に粒子サイズを調節(たとえばスプレードライ条件を最適化するなど)する
ことにより、粒子サイズを、口または肺とは逆に気道(気管支)内に最も沈積の
ための3〜6μmの範囲の平均径である5μmに最適化することができる。本発
明の組成物は、最終組成物の大部分が、約3.5〜6.5μmの平均粒子サイズ
を有する粒子から成るように調製することもできる。好ましくは約75%以上の
粒子がこの範囲の直径を有し、最も好ましくは調製物の質量の約95%以上が、
直径3.9μm〜5.4μmの平均粒子サイズを有する粒子の分布から成る。好
ましくは、最終組成物は約4.5〜5.5μmの平均粒子サイズを有する粒子か
ら成る。スプレードライされた製剤に対する粒径の標準偏差は、0.18〜0.
28であることが発見されており、これは、本発明のタンパク質製剤を用いた製
造方法において、粒子サイズが十分に制御されたことを示唆している。
【0088】 本発明の乾燥粉末製剤は、液体からのエアゾールの場合よりも高いタンパク質
送達能を提供する組成物も提供する。その結果、一回のパフまたは吸入につきよ
り多くのタンパク質を送達することができる。さらに、乾燥粉末製剤は、従来の
液体製剤に比べて高い保存安定性を有している。たとえば、タンパク質を56℃
の溶液中に11日間保存すると、SLPIの純度はHPLC分析により約50%
未満に低下するが、約95%の純度が保たれる。
【0089】 噴霧器SLPI製剤 噴射または超音波の噴霧器での利用に適したSLPI製剤は、水または緩衝剤
に例えば1ml溶液当たり25mgまでのSLPIの濃度で溶解したSLPIを
含む。この製剤は、緩衝剤とおそらくは単純糖(例えば、タンパク質の安定化と
と浸透圧の調節のため)も含む。用いられる緩衝剤の例としては、酢酸ナトリウ
ム、クエン酸、およびグリシンが挙げられる。好ましくは、緩衝剤は溶液のpH
を5〜7の範囲に調整するのに適した組成物とモル濃度を有する。一般的には、
2mM〜50mM の緩衝剤モル濃度がこの目的に適している。利用され得る糖
の例としては、ラクトース、マルトース、マンニトール、ソルビトール、トレハ
ロース、およびキシロースが挙げられ、通常製剤の重量の1%〜10%の範囲の
量である。
【0090】 噴霧器による送達に適した典型的な液体製剤は、水または39g/Lマンニト
ールで等張にしたpH7.2の20mMリン酸ナトリウム緩衝剤でのSLPI
25mg/mL溶液を含む。噴霧器によりエアロゾル化した典型的な液体製剤は
、リン酸緩衝食塩水でのSLPI溶液(1から5ml)を含む。Vogelme
ierら,Journal of Applied Physiology,6
9(5):1843−1848,1990を参照のこと。その中で記述されたよ
うに、作られるエアロゾル液滴の55%は3μm以下の直径を有し、肺胞に沈積
した。
【0091】 SLPI液体製剤は2℃〜8℃で保存しなければならないことが見出された。
試験により、−20℃で17ヶ月間あるいは2℃〜8℃で6ヶ月間、液体製剤中
でSLPIの純度と活性が変化しないことが示される。しかしながら、投与中を
除いてこの物質を温度2℃〜8℃以上にさらすことは推奨されず、これにより活
性が減少しうる。
【0092】 そのような組成物の送達に適した市販の噴霧器には、Mallinckrod
t,Inc.,St.Louis,Mo.が製造するUltravent噴霧器
、Marquest Medical Products,Englewood
,Coが製造するAcorn IIの2例と、Aradigm,Hayward
,CAが製造するAERxTM肺ドラッグデリバリーシステムがある。
【0093】 送達装置 エアロゾル化した乾燥粉末SLPI製剤を患者の気道に入れることが可能な装
置には、測定用量吸入器と粉末吸入器が含まれる。そのような装置はすべて、作
用薬をエアロゾルに供給するのに適した製剤の利用を必要とする。典型的には、
各製剤は利用する装置のタイプに特異的であり、担体や他の物質に加えて適切な
噴霧剤の利用を含む。
【0094】 当業者が認めるように、適切な吸入用量を送達する操作条件は、利用する機械
的装置のタイプによって変わりうる。噴霧器等のいくつかのエアロゾル送達シス
テムでは、投与頻度と操作時間は、主にエアロゾル中の単位容積当たりの治療薬
量によって決まる。測定用量吸入器等のいくつかの装置では、他のものよりも高
いエアロゾル濃度を生成し、よって所望の結果を得るためにより短い時間操作す
る。
【0095】 粉末吸入器等の装置は、装置から一定量の作用物質を排出するまで用いられる
よう設計されている。したがって、装置に入れる量は、一回投与での送達に適し
た吸入用量の作用薬を含むよう計画される。
【0096】 また、薬学的組成物は、患者による吸入に目的の生理的効果を提供するに十分
な量の組成物を含む単位用量容器から送達される。例えば、単位用量容器から生
成されるすべての粉末分布を実質的に捕獲するに十分な内部容量を有するチャン
バーに、投与量を散布する。典型的にはチャンバーの容量は約50mlから約1
000mlであり、好ましくは約100mlから約750mlである。よって、
単位投与量は約2mg粉末から約20mg粉末であり、好ましくは単位投与量当
たり約4mgから約10mg粉末である。典型的には、単位投与量当たり約5m
gが極めて効果的である。好ましい単位用量容器はブリスター包装であり、通常
1組のブリスター包装ストリップとして提供される。そのようなブリスター包装
またはブリスター包装ストリップを調製する通常の工程は、Remington
’s Pharmaceutical Sciences(18th Edit
ion)や他の同様の出版物により一般的に当業者に周知である。この発明の必
要量の粉末を収容するそのような用量容器の容量は約1mlから約30mlであ
り、好ましくは約2mlから約10mlである。
【0097】 本発明の粉末化SLPI組成物を投与するのに適した装置の例としては、Sp
inhalerTM粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedford,
Massによる製造)、RotahalerTM粉末吸入器、Diskhale
TM粉末吸入器、およびTurbohalerTM粉末吸入器装置、あるいは
CRC Pressにより出版されP.R.Byronにより編集された「呼吸
薬送達」,1990,p.169に記述されている同様のものが挙げられる。粉
末組成物を投与するさらなる装置は、WO 96/32096(PCT/US9
6/05265、1996年4月15日に出願、吸入治療システム、Palo
Alto,CA)とU.S.5,626,871(1997年5月6日に発行、
Teijin Limited)に記述されており、その開示はこの中で参考文
献として包含する。さらなる装置の例として、Dura Pharmaceut
icals,Inc.,San Diego,CAおよびGlaxo Inc.
,Research Triangle Park,NCによって利用されてい
るものがある。
【0098】 実施例 以下の実施例は例証の目的で提供したもので、限定のためではない。
【0099】 実施例1 薬学的組成物 調製 例示的なSLPI粉末製剤は、以下の担体(表1)と共に調製した。粉末は、
4℃、29℃、および59℃で10週間保存した。
【0100】
【表1】 解析 サンプルを週に2回除去し、以下の方法により解析した:サイズ排除クロマト
グラフィー、逆相クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、およ
びドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動。Schonba
umら(J.Biol.Chem.236,2930−2035,(1961)
)に記述されたように、アンチキモトリプシンアッセイを利用してin vit
ro生物活性を測定した。
【0101】 SLPI粉末製剤を粒子サイズと含水量により特性化した。これらのデータを
表2にまとめる。
【0102】
【表2】
【0103】 これらの結果により実証されるように、スプレードライ粉末の粒子サイズは3
.5から6ミクロンの所望の範囲に入っており、これは肺胞への沈積に対するよ
り大きな気道、口または咽頭への送達(気管支送達)に最適である。
【0104】 さらに、糖の含有がスプレードライ粉末内でSLPIタンパク質を安定化する
。25%(w/w)またはより高いトレハロース存在下で、SLPIは室温で2
年間安定である。マンニトールまたはスクロースも、室温で2年間のSLPI安
定性を与える。この増強した安定性と形状によって、上記に示したようなブリス
ター包装、測定用量吸入器および乾燥粉末吸入器等の容器や装置に都合よく包装
し保存することが可能となる組成物に提供する。
【0105】 それゆえ、この組成物は、送達に噴霧器を利用する以前の液体製剤を越えて別
の利点を提供する。噴霧器は、そのサイズと外部のパワーサプライまたは圧縮エ
アーサプライの必要性のため、通常は携帯可能でない。さらに、スプレードライ
粉末製剤により、広範な粒子サイズや単回用量の液体製剤を投与する長い時間と
いう非能率的な送達の制限を避けられる。
【0106】 様々なタンパク質性プロテアーゼインヒビターおよびそれらの変種/変異体が
、SLPIについて記述されたのと同様の乾燥粉末組成物として作製される。そ
のような薬学学的組成物は、一つ以上の示した担体との組み合わせで以下のプロ
テアーゼインヒビターを含む。
【0107】
【表3】
【0108】 プロテアーゼインヒビター乾燥粉末薬学的組成物は抗炎症薬として有効であり
、特に、肥満細胞メディエータまたはそれ由来のプロテアーゼに対する特異的活
性を有するプロテアーゼインヒビターを含む組成物は有効である。この組成物は
吸入および局所的利用に最も適しており、好ましくは炎症の部位で投与する。治
療は、適当なステロイドや抗生物質等の他の治療薬の添加と同時に、あるいはそ
の前にすることも可能である。SLPI乾燥粉末薬学的組成物は、喘息等の肺の
病気の治療に有利に利用される。特にSLPI乾燥粉末薬学的組成物は、肺の粘
液生成/分泌を阻害、気道での粘液速度を増加、抗原/刺激に対する気道反応性
亢進を減少、および気道細胞/組織への病理変化を阻害するのに利用される。S
LPI組成物は、この中で参考により包含した特許出願第08/483,503
号で開示されたように、ウイルス感染の治療にも利用される。
【0109】 実施例2 スプレードライ粉末SLPI組成物 水の凝固点以上、作用薬の活性に悪影響を及ぼす温度以下で水溶性混合物を調
製する。通常、温度は約20〜30℃の間で、好ましくは周囲温度である。溶液
のpHは、作用薬の要求する安定性に適した緩衝物質を含むことにより調整でき
る。pHは通常pH6〜8の中性範囲であり、好ましくは約pH7である。適当
な緩衝組成物としては、クエン酸ベースの緩衝剤、リン酸ベースの緩衝剤、また
は酢酸ベースの緩衝剤が含まれる。水溶性組成物には、水溶液状態にある時の混
合物の安定性または懸濁能を増強する他の賦形剤が含まれることもある。典型的
には、単に適当な濃度の物質を水と混合し、物質が水にすべて溶解するまである
いは分散して懸濁されるまで撹拌することにより水溶液を作製する。
【0110】 好ましくは、水の除去と粉末への変換は、2つのステップが同時に起こるスプ
レードライ環境で行う。この方法では、よく分散した上記のような水溶性組成物
である液体と十分量の熱い空気を一緒に生じ、液滴の蒸発と乾燥を行う。供給液
体は、溶液、スラリー、エマルジョン、ゲル、あるいはペーストであり、供給は
微粒化可能である。好ましくは、溶液が利用される。フィード物質をフィルター
を通した暖かい空気に噴霧すると、この空気が水を蒸発して乾燥産物をコレクタ
ーに運ぶ。使用済みの空気は、水分と一緒に排出される。典型的には、生じるス
プレードライ粉末粒子は均質で、形はほぼ球状であり、サイズはほぼ均一である
。スプレードライのさらなる考察は、Remingtonの第8書章の1646
〜1647ページに見られる。
【0111】 通常、スプレードライ装置の入口温度と出口温度は重要ではないが、所望の粒
子サイズを提供し、活性剤の所望の活性を有する産物を生じるレベルである。入
口温度は80℃から約150℃の間であり、出口温度は約50℃から100℃の
間である。好ましくは、これらの温度は、入り口では90℃から120℃、出口
では60℃から90℃である。スプレードライ装置で用いられる流速は、通常、
1分当たり約3mlから5mlである。噴霧器の空気の流速は700LPH(時
間あたりのリットル)から約800LPHの値と変動する。二度めの乾燥は必要
ではないが、行うこともある。
【0112】 粉末製剤の粒子サイズの分布(PSD)は、Horiba CAPA−700
遠心沈降粒子サイズアナライザーを用いて測定する。測定は、約5mlのSed
isperse A−11(Micromeritics,Norcross,
GA)に懸濁し、解析前に短時間超音波処理した約5mgの粉末で行う。直径が
0.4.から10μmの範囲の粒子サイズを測定するように機器を配置し、20
00 rpmで遠心分離を行う。粉末の粒子サイズの分布はmass medi
an直径(MMD)によって特性化する。
【0113】 実施例3 分配能 生じる薬学的組成物の分配能あるいは分散能を液滴エアロゾル等の他の組成物
と比較して測定するため、粉末組成物をエアロゾル化し、そのエアロゾル化した
組成物を収集し、この中で後で述べる装置と手順により送達された物質を測定す
ることにより、送達可能な投与用量を定量する。
【0114】 分配能のレベルが高ければ、組成物の送達用量のパーセンテージが高くなる。
送達用量は、粉末組成物の成功の鍵となるパラメーターである。組成物が乾燥粉
末肺吸入器装置により送達される効率は、(1) エアロゾルチャンバー内で微
粒子粉末をエアロゾル化し、(2) 試験吸入中にそれらの微粒子を装置のマウ
スピースを通して送達することにより測定する。例えば、各製剤で送達される用
量は、以下のように測定する。装置を始動し、エアロゾルチャンバー内で粉末を
懸濁する。次にチャンバーから一定の速度(例えば、約30L/minの空気の
流速で2.5秒間(1.25L吸気容量))で懸濁した粒子を引き、適当なフィ
ルター上にサンプルを収集する(例えば、孔サイズ0.65μmのポリビニリデ
ンフルオライドメンブレンが特に有効である)。サンプリング気流のパターンは
自動タイマーで調節し、患者のゆっくりとした深い吸息をシミュレーションする
よう操作する。フィルター上の粉末およびブリスター包装等の保存チャンバーに
残存した粉末量の重量を測定することにより、全体の効率(送達用量)と始動後
にエアロゾルチャンバーに残存した粉末のパーセントを測定する。
【0115】 分配度の程度を以下のように測定する: 1.単位投与量中の粉末組成物の全質量(例えば5mgブリスター包装) 2.単位投与量中のエアロゾル化し、フィルター上に収集された粉末組成物の全
質量(例えば2.5mg) 3.分配度は、フィルター上に収集された粉末の質量をブリスター包装中の粉末
の質量で割ってパーセントで表したものと定義する(例えば、2.5÷5 =
50%)。
【0116】 分配度を測定するのに用いる装置はWO93/00951(1993年1月2
1日に発行、表題はエアロゾル化した薬物の方法と装置)に記述されており、こ
の中で参考文献として包含する。
【0117】 実施例4 抗原誘導による肺反応および病理変化に対するSLPIの効果 分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)は、喘息の病原に関する
肥満細胞および白血球セリンプロテアーゼに対して広いスペクトルの阻害活性を
示す、天然に存在するヒトの気道のタンパク質である。喘息におけるSLPIの
可能性ある治療的有用性を評価するため、抗原誘導による肺反応と喘息に関連し
た気道の病理変化に対するSLPIの効果を評価した。SLPIは、ヒツジにお
いて初期および後期相の気管支収縮を、モルモットとヒツジにおいて気管支反応
性亢進の発生を阻害した。SLPIの急速な作用の開始と薬力学的活性の延長が
観察された。さらに、SLPIはヒツジにおいて、抗原誘導による気管粘液速度
の減少を阻害した。これらの結果は、肺のSLPI送達は喘息の病態生理とその
根底にある病理に対する治療的処置に適しているという証拠となる。
【0118】 喘息は、2つの鍵となる病態生理的成分によって特性化される慢性の肺疾患で
ある:反復性気管支収縮およびアレルギー性および環境的刺激に対する気道反応
亢進性の発生。これらの生理的反応は、咳、喘鳴、および呼吸の不足として現れ
る(National Asthma Education and Prev
ention Program.Expert panel report I
I:喘息の診断と管理に関するガイドライン、1997)。喘息の対症治療の開
発においては大きな成功があったが、これらの病態生理的反応が顕著に変化した
気道で起こる概念は十分に解明されていない。気道のそのような病理変化には、
炎症細胞の気管支浸潤、粘液線肥大と粘液分泌過多、上皮細胞の剥離、線維症、
浮腫、および平滑筋の肥大が含まれる(Dunnill,M.S.J.Clin
.Pathol.13:27−33,1960)。様々な治療的アプローチが利
用可能であるものの、喘息は著しい医薬の必要性があり続け、特に中程度および
重症の喘息患者についてはそうである。重症の喘息患者の人口は増え続けており
、喘息患者の入院率は高いままである。現行の治療法では、喘息病原の基礎的成
分が解明されないと仮定されている。
【0119】 出てきている証拠から、セリンプロテアーゼが喘息の病原において鍵となる役
割を演じていることが示される(Caughey,G.Am.J.Physio
l.(Lung Cell.Mol.Physiol.),257:L39−L
46,1989; Walls,A.F.1994.Asthma and R
hinitis,801−824,edited by Busse,W.W.
and S.T.Holgate.Boston: Blackwell Sc
ientific Publications)。肥満細胞および白血球セリン
プロテアーゼは、喘息患者の気道で増加する(Wenzelら,Am.Rev.
Respir.Dis.,137:1002−1008,Broideら,J.
Allergy Clin.Immunol.,88:637−648,199
1; Fahyら,J.allergy Clin.Immunol.,95:
843−852,1995)。さらに、α1アンチトリプシン欠損の結果として
抗プロテアーゼ活性が減少した患者は、喘息を発症する傾向が高くなる(Ede
nら,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,156:68
−74,1997)。動物試験において、エラスターゼ(Suzukiら,Am
.J.Respir.Crit.Care Med.,153:1405−14
11,1996)またはトリプターゼ(Molinariら,Am.J.Rep
ir.Crit.Care Med.,154:649−653,1996)の
滴下注入により、気管支収縮と気道の反応亢進性の発生が促されるが、これらの
プロテアーゼの特異的インヒビターによりin vivoで抗原誘導による気道
反応が減少する(Fujimotoら,Respiration Physio
l.,100:91−100,1994; Clarkら,Am.J.Resp
ir.Crit.Care Med.,152:2076−2083,1995
)。カテプシンG(Fahyら,Am.Rev.Respir.Dis.,14
6:1430−1433,1922; Venailleら,J.Allerg
y Clin.Immunol.,95:597−606,1995)、エラス
ターゼ(Mendisら,Immunol.Cell Biol.,68:95
−105,1990)、およびトリプターゼ(Ruossら,J.Clin.I
nvest.,88:493−499,1991; Brownら,Am.J.
Respir.Cell Mol.Biol.,13:227−236,199
5; Imamuraら,Lab Invest.,74:861−870,1
996; Wallsら,Int.Arch.Allegy Immunol.
,107:372−373,1995)を含むセリンプロテアーゼもまた、喘息
に関連した気道の症状を促進する。さらに、トリプターゼは肥満細胞から遊離す
るアレルギー性メディエータを刺激する(Heら,Eur.J.Pharmac
ol.,328:89−97,1997)。これらの知見から、喘息に関連した
病態生理と気道の病理両方へのセリンプロテアーゼの寄与が支持され、肥満細胞
と白血球セリンプロテアーゼの阻害が喘息の治療への重要な新しいアプローチで
あることが示される。
【0120】 SLPIは、ヒトの気道の粘液上皮細胞、漿膜細胞、および細気管支杯状細胞
で生成される天然に存在するプロテアーゼインヒビターである(Thompso
n,R.C.とK.Ohlsson.Proc.Natl.Acad.Sci.
USA.83:6692−6696,1986; Eisenbergら,J.
Biol.Chem.265:7976−7981,1990; Vogelm
eierら,Clin.Invest.87:482−488,1991)。S
LPIは、肥満細胞と白血球セリンプロテアーゼに対して強力で広いスペクトル
の阻害を示す。さらに、この11.7 kDaで非グリコシル化タンパク質の生
理的性質は、炎症性肺疾患の治療の応用に寄与する(Vogelmeierら,
J.Appl.Physiol.69:1843−1848,1990)。SL
PIの酸安定性のため、このインヒビターは酸性炎症状態でも機能的に活性を残
したままである。pI>9であり、SLPIはプロテアーゼに好まれる組織部位
に結合し、よって気管支においてプロテアーゼ活性の阻害を容易に延長できる。
さらに、SLPIのN末端ドメインによりヘパリンとの相互作用が可能となり、
インヒビターのセリンプロテアーゼへの結合が促進される(Fallerら,B
iochemistry 31:8285−8290,1992)。この生化学
的プロフィースに基づき、以下の実験を行い喘息に関連する病態生理と病理に対
するSLPIの有効性を評価した。
【0121】 方法 タンパク質 組換えSLPIは、以前に記述されたように発現させ精製した(Eisenb
ergら,J.Biol.Chem.265:7976−7981,1990)
。組換えタンパク質は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動と
高速液体クロマトグラフィーにより、>99%の純度と評価した。精製タンパク
質は、< 0.72 EUリポ多糖/mgタンパク質を含んでいた。
【0122】 生化学的アッセイ ヒト肺トリプターゼ(Cortex Biochem,Inc.,San L
eandro,CA)活性は、1μg/mlヘパリンと0.02% Trito
n X−100を含む100mM Tris−HCl(pH8.0)中で、基質
としてバソアクティブインテスティナルペプチド(VIP)(Sigma Ch
emical Co.,St.Louis,MO)を用いて測定した。トリプタ
ーゼを様々な濃度のSLPIと共に37℃で1時間インキュベーションした。逆
相高速液体クロマトグラフィーにより、VIPの開裂を測定した(Delari
a,K.とD.Muller.Anal.Biochem.,236:74−8
1,1996)。様々なSLPI濃度でのトリプターゼの画分活性を測定するこ
とにより、K値を決定した。
【0123】 他のセリンプロテアーゼは、96ウェルマイクロタイタープレートで特異的色
素生産性ペプチド−pニトロアニリド(pNA)基質を用いて測定した。各プロ
テアーゼを様々な濃度のSLPIと共に、特異的アッセイ緩衝剤中37℃で1時
間インキュベーションした。それぞれの基質を添加して、残存プロテアーゼ活性
を測定した。タンパク質分解によるpニトロアニリン生成物を、Spectra
MAX 340プレートリーダー(Molecular Devices,Su
nnyvale,CA)を用いて405nmで測定した。ヒト好中球エラスター
ゼ(Calbiochem−Novabiochem Internation
al,San Diego,CA)は、100mM Tris−HCl,pH8
.3,0.96 M NaCl,1% BSA中でピロGlu−Pro−Val
−pNA(Pharmacia Hepar Inc.,Franklin,O
H)を用いてアッセイした(Krampsら,Scand.J.Clin.La
b.Invest.,43:427−432,1983)。ウシ膵臓トリプシン
(TPCK処理)(Sigma)は、50mM Tris−HCl,pH8.2
,20mM CaCl中でN−α−ベンゾイル−L−Arg−pNA(Boe
hringer Mannheim Corp.,Indianapolis,
IN)を用いてアッセイした(Somorinら,J.Biochem.,85
:157−162,1979)。ウシ膵臓キモトリプシン(Boehringe
r Mannheim)は、100mM Tris−HCl,pH7.8,10
mM CaCl中でN−Suc−Ala−Ala−Pro−Phe−pNA(
Sigma)を用いてアッセイした(DelMarら,Anal.Bioche
m.,99:316−320,1979)。ヒト好中球カテプシンG(Calb
iochem−Novabiochem)は、625mM Tris−HCl,
pH7.5,2.5mM MgCl,0.125% Brij 35中でN−
Suc−Ala−Ala−Pro−Phe−pNA(Sigma)を用いてアッ
セイした(Groutasら,Arch.Biochem.Biophys.,
294:144−146,1992)。ヒト血漿プラスミン(Boehring
er Mannheim)は、100mM Tris−HCl,pH7.4,1
00mM NaCl ,0.05% Triton X−100中でトシル−G
ly−Pro−Lys−pNA(Sigma)を用いてアッセイした。ヒト血漿
Xa 因子(Calbiochem−Novabiochem)は、50mM
Tris−HCl,pH7.8,200mM NaCl,0.05% BSA中
でN−ベンゾイル−Ile−Glu−Gly−Arg−pNA(Pharmac
ia Hepar)を用いてアッセイした(Lottenbergら,Meth
.Enzymol.,80:341−361,1981)。ヒト血漿トロンビン
(Boehringer Mannheim)は、50mM Tris−HCl
,pH8.3,100mM NaCl,1% BSA中でH−D−Phe−Pi
p−Arg−pNA(Pharmacia Hepar)を用いてアッセイした
。ヒト血漿(Calbiochem−Novabiochem)および組織カリ
クレイン活性は、50mM Tris−HCl,pH7.8,200mM Na
Cl,0.05% BSA中で、それぞれH−D−プロリル−Phe−Arg−
pNA(Pharmacia Hepar)およびDL−Val−Leu−Ar
g−pNA(Sigma)を用いて測定した(Lotternbergら,Me
th.Enzymol.,80:341−361,1981)。各タンパク質分
解酵素に対するヒトSLPIの阻害定数(Ks)は、以前記述されたように決
定した(Zitnikら,Biochem.Biophys.Res.Comm
un .,232:687−697,1997)。
【0124】 モルモット気道過敏性 リン酸緩衝食塩水中に10μgオボアルブミンと10mg水酸化アルミニウム
を含む溶液0.5mlを腹腔内注射することにより、雄のハートレイモルモット
(Charles River Laboratories Inc.,Wil
mington,MA)を感作した。3週目と5週目に追加免疫し、IgEとI
gG1のタイターが高いことを確認した(Andersson,P.,Int.
Arch.Allergy Appl.Immunol.,64:249−25
8,1981)。最初の注射後7から9週目に、動物を用いて抗原誘導によるモ
ルモット気道反応性を評価した。
【0125】 モルモットでの抗原誘導による気道過敏性を評価するため、まず無拘束の動物
において基準ヒスタミン気管支吸入誘発を行った。モルモット(450〜600
g)を全身プレチスモグラフ(Buxco Electronics,Troy
,NY)に置いた。動物を、Devilbis超音波噴霧器(Somerset
,PA)により生成した5秒間のヒスタミンエアロゾルバーストにさらした。1
0分間隔で投与するリン酸緩衝食塩水(PBS)(GIBCO,Grand I
sland,NY)中のヒスタミン濃度を0,25,50,100,および20
0mg/mlと上げていき、それに対する反応によりPauseenhance (Chandら,Allergy,48:230−235,1993)で表さ
れる気管支収縮ピークを決定した。ヒスタミン基準の決定から3日後、モルモッ
トを再度全身プレチスモグラフに置き、3秒間のリン酸緩衝食塩水中0.1mg
/mlオボアルブミンのエアロゾルバーストにさらした。抗原攻撃から6時間後
、ヒスタミン気管支吸入誘発を繰り返すことにより反応亢進性の進行を評価した
【0126】 PBS(pH7.2)を用いて気管内滴下注入によりSLPIを投与した。モ
ルモットにメトキシフルランを吸入させて麻酔をかけた後、気管内チューブ(1
8ゲージ、Teflon(TM)製を光ファイバー光原の補助により目で見て気
管に通した。SLPI(または、対照動物にはPBS)をチューブを通して投与
し、次に空気を大量瞬時投与して分散を促進した。
【0127】 ヒツジでの抗原誘導による気道反応性、気道機構 以前記述されたように(Abrahamら,Eur.J.Pharmacol
.217:119−126,1992)、成体雌ヒツジ(平均体重Å 30kg
)に機器を取り付けた。平均肺流動抵抗(R)は、トランス肺圧の変化を平均
呼吸量における流動の変化で割ることにより、5〜10回の呼吸から算出した。
を決定した直後に、一定容量全身プレチスモグラフで胸腔気体容量(V )を測定し、式SR = R x Vtgから特異的肺抵抗(SR)を
算出した。
【0128】 6L/minの流速でRaindrop噴射噴霧器(Puritan−Ben
ett,Lenexa,KS)を用いて、mass median aerod
ynamic直径3.6±1.9μmの液滴を生成した。エアロゾルの送達は線
量測定システムを用いて調節し、これはピストン人工呼吸器(Harvard
Apparatus Co.,South Natick,MA)の吸気サイク
ルの開始時に1秒間活性化したものである。エアロゾルは、500mlの呼吸量
、1分当たり20回の呼吸速度で送達した。
【0129】 初期および後期相の気管支収縮ともに示す回虫(Ascaris)感受性ヒツ
ジを、20呼吸/分の速度で20分間エアロゾルとして送達したAscaris
suum抽出液(リン酸緩衝食塩水中に82,000タンパク質窒素単位/m
l)(Greer Diagnostics,Lenoir,NC)にさらした
。抗原攻撃の後、SRの変化を8時間モニターした。
【0130】 気道反応亢進性 基準気道反応性は、生理食塩水の吸入とカルバコールの濃度を上昇(0.25
,0.5,1.0,2.0,および4.0% w/v)させながらの10呼吸継
続的投与直後に、SRを測定することにより判定した。気道過敏性は、SR を後生理食塩水値(CP400)越えて400%増加させるのに必要な累積性呼
吸単位を測定することにより評価した。1呼吸単位は、1% w/vカルバコー
ルを含むエアロゾルの1呼吸と定義した。抗原攻撃から24時間後にカルバコー
ル容量反応を繰り返し、抗原誘導による反応亢進性を判定した。
【0131】 気管粘液速度 拘束した成体雌ヒツジに、6cmに短縮した気管内チューブ(内径7.5cm
)(Mallinckrodt Medical Inc.,St.Louis
,MO)を鼻から挿管した。チューブのカフを蛍光透視で確認しながら声帯のす
ぐ下にもっていき、気管表面への曝露が最大限になるようにした。吸気する空気
を暖め、Benett加湿器(Puritan−Benett,Lenexa,
KS)を用いて加湿した。気管粘液速度への物理的障害を最小限にするため、抗
原と薬剤の曝露時のみ気管内チューブカフを拡張した。
【0132】 気管粘液速度は、以前に記述されたように蛍光透視により測定した(O’Ri
ordanら,Am.Rev.Respir.Crit.Care Med.,
155:1522−1528,1997)。圧縮空気源に連結した修飾吸引カテ
ーテルにより、3〜5L/minの流速で5から10個の放射線不透Teflo
n(登録商標)粒子を気管に注入した。1分当たりの粒子の移動を蛍光透視によ
り検出し、ビデオテープに記録した。実際の粒子移動距離は、首の外に置いた一
定間隔の放射線不透粒子マーカーとの比較で測定した。
【0133】 結果 SLPIの特異的プロフィール SLPIのプロテアーゼ阻害活性特性を表4にまとめる。SLPIは、カテプ
シンG、エラスターゼ、およびトリプターゼを含む喘息病理に関連したセリンプ
ロテアーゼに対して強力で広いスペクトルの阻害活性を示す。それに対して、X
a因子、カリクレイン、トロンビン、およびプラスミンは、83μM未満の濃度
ではSLPIに影響を受けなかった。
【0134】
【表4】
【0135】 モルモットでの抗原刺激による気道過敏性 モルモットにおいて、抗原誘導による気道過敏性の発生に対するSLPIの影
響について評価した(図1)。抗原攻撃から6時間後、ヒスタミン気管支吸入誘
発に対する肺の反応性の上昇が観察された(n = 4〜10)(#p < 0
.05 vs.基準ヒスタミン反応)。抗原攻撃の1時間前にSLPIを気管内
投与することにより、反応亢進性の発生に対する用量依存的な阻害効果が得られ
た(図1a)。SLPIは50μg/ml用量のヒスタミンに対する反応亢進を
0.15mg/kgのED50で阻害したが、約0.1mg/ml投与量では効
果が見られなかった。対照的に、2日間毎日前投与し、抗原攻撃から1時間前に
さらなる用量を投与することにより、ED50が< 0.05mg/kgに減少
した(図1b)。
【0136】 モルモットを使って、SLPIの作用の持続時間についても調べた。この実験
では、過敏性を、抗原攻撃から24時間に気道抵抗の100%変化(PC100
)を誘導するのに必要なヒスタミン用量の変化として測定した(図2)。抗原攻
撃から2,24,あるいは48時間前にSLPIの1回5mg気管内投与量で処
理すると、気道過敏性の発生が阻害された(N = 4〜10)(*P < 0
.05)。しかしながら、抗原攻撃の72時間前にSLPIを投与した場合には
、阻害効果は見られなかった。これらの結果から、抗原誘導による気道過敏性に
対するSLPIの薬理学的効果が延長されたことが証明される。
【0137】 ヒツジでの抗原誘導による気管支反応 ヒツジの気管支吸入誘発モデルにおいて、抗原誘導による初期および後期相の
気管支収縮と気道過敏性の発生に対するSLPIの効果を評価した。3日間毎日
および抗原攻撃の0.5時間前にSLPI(3mg)を前投与しておくことによ
り(n = 4)、初期相および後期相の気管支収縮のピークをそれぞれ48%
および100%阻害した(図3a)(*p < 0.05 vs.抗原刺激によ
る気管支収縮)。さらに、抗原攻撃から24時間後、反応亢進性の発生について
84%の阻害が見られた(図3b)(*p < 0.05 vs.抗原刺激によ
る反応亢進)。比較において、抗原攻撃から0.5時間前のSLPI単回投与で
は、初期および後期相の反応をそれぞれED50が76および48mgで阻害し
、10mgの投与量では効果が見られなかった(データは示さず)。予防療法に
より、抗原攻撃の0.5時間前に100mgエアロゾル用量でSLPIを単回投
与して得られる結果と同等の阻害活性が得られた。さらにヒツジモデルにおける
SLPI活性の薬力学を特性化するため、SLPI(3mg)を抗原攻撃以前に
3日間毎日投与し、抗原攻撃から24時間前を最終投与とした(n = 3)。
SLPIは後期相の気管支収縮のピークを60%まで阻害したが(*p < 0
.05 vs.抗原刺激による気管支収縮)、即時の反応に対しては阻害が見ら
れなかった。
【0138】 SLPIは、抗原攻撃後に投与しても効果的であることが示された。図4に示
したように、抗原攻撃から1時間後のエアロゾルによるSLPI(30mg)の
投与と結果として生じる初期相気管支収縮のピークは、続いて起こる後期相の気
管支収縮(n = 5)(*p < 0.05 vs.抗原刺激による気管支収
縮)(図4a)と気道過敏性の発生(n = 5)(*p < 0.05 vs
.抗原刺激による反応亢進)(図4b)の阻害に有効である。
【0139】 ヒツジでの気管粘液速度に対する抗原誘導の影響 ヒツジでの粘膜毛様体機能に対する抗原誘導の影響は、気管粘液速度の機能と
して評価した(図5)。回虫への曝露後から始めの2時間、気管粘液速度の顕著
な減少が見られた(n = 3)(#p < 0.05)。6時間後、気管粘液
速度は基準反応の42%に減少した。単独のSLPI(30mg)では、基準速
度に対する影響を及ぼさなかった(データは示さず)。3日間毎日および抗原攻
撃の0.5時間前にSLPI(3mg)をエアロゾルによって前投与しておくこ
とにより(n = 3)、抗原誘導による気管粘液速度の減少が著しく阻害され
た(*P < 0.05)(図5a)。この予防療法により、抗原攻撃の0.5
時間前に30mgエアロゾル用量でSLPIを単回投与して得られる結果と同等
の阻害活性が得られた。単回投与で効果のない用量は10mgであった(データ
は示さず)。さらに、抗原攻撃から1時間後に30mgのSLPIを投与すると
、気管粘液速度の減少が取り消される(n = 6)(*p < 0.05)(
図5b)。
【0140】 考察 SLPIは、喘息治療への新規な治療アプローチを意味する。SLPIは、ヒ
ト気道で自然に生成される広いスペクトルのセリンプロテアーゼインヒビターで
ある。これらの実験から、SLPIによって、初期および後期相の気管支収縮、
気道の反応亢進の発生、および粘膜毛様体の機能障害を含む抗原誘導による病態
生理学的気道反応を妨げる効果的な治療法が提供されることが実証された。
【0141】 喘息はSLPIの欠損とは関連付けられていないが、蓄積した証拠により、喘
息患者の気道におけるプロテアーゼ−アンチプロテアーゼの不均衡の発生と考え
られる。抗原攻撃後、即時の肥満細胞反応と後の白血球の活性化によって、ヒト
気道でのプロテアーゼ量が増加し、一方、炎症環境によりSLPIの不活化が促
進される。結果として生じるタンパク質分解活性の上昇が、気道の病態生理と喘
息に関連した気道のリモデリングに寄与する。
【0142】 広いスペクトルのセリンプロテアーゼ阻害活性は、SLPIの治療的有用性の
上で重要である。SLPIは、カテプシンG、エラスターゼ、およびトリプター
ゼを含む肥満細胞および白血球セリンプロテアーゼに対して、強力で広いスペク
トルの阻害活性を提供する。対照的に、Xa因子、トロンビン、あるいはプラス
ミンというその慢性的阻害が凝集と線維素溶解に悪影響を及ぼすセリンプロテア
ーゼに対しては、SLPIは効果を示さない。
【0143】 以前の報告により、単一のセリンプロテアーゼの阻害は、喘息に関連した病態
生理と病理に影響を与えるには十分でないことが示唆される。ヒツジでは、α プロテアーゼインヒビターは、エラスターゼの阻害を通して抗原誘導される粘膜
毛様体の機能障害を妨げ(O’Riordanら,Am.Rev.Respir
.Crit.Care Med.,155:1522−1528,1977)、
組織カリクレインの阻害を通して気道反応亢進の発生を妨げるが、初期および後
期相の気管支収縮には効果を及ぼさない(Fortezaら,Am.J.Res
pir.Crit.Care Med.154:36−42,1996)ことが
示された。対照的に、トリプターゼの阻害は抗原誘導による肺機構の変化を妨げ
るが、気管粘液速度への影響はほとんどない(未発表データ)。これと比較して
、SLPIは、抗原攻撃後の初期および後期相の気管支収縮、反応亢進性の発生
、および粘膜毛様体の間隔の変化を阻害する。SLPIは組織カリクレインを阻
害しないが、トリプターゼの阻害によりプレカリクレインの活性化およびキニノ
ーゲンからのブラジキニンの直接遊離を妨げることができる。
【0144】 SLPIの薬理学的活性の幅は、副腎皮質ステロイドについて報告されたもの
と類似している。SLPIでも示されるように、気管吸入誘発モデルにおいて、
ステロイド治療は肺機構(Abrahamら,Bull.Eur.Physio
pathol.Respir.: Clin.Respir.Physiol.
,22:387−392,1986)と粘膜毛様体機能(O’Riordanら
,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,155:A878
,1997)の両方の変化を阻害する。ステロイドによりin vitroで気
道上皮細胞のSLPI転写産物レベルが、in vivoで気道のSLPIレベ
ルが増加すると示されたことは興味深い(Abbinanteら,Am.J.P
hysiol.(Lung Cell.Mol.Physiol.),12:L
601−L606,1995; Stockleyら,Thorax,41:4
42−447,1986)。SLPI上昇が全体的なステロイドの治療活性にも
たらす関連寄与は知られていないが、これらの知見から、SLPIによって全身
性の有害作用なしでステロイドに類似した治療活性が提供されることが示される
【0145】 特に興味深いのは、SLPIの薬力学的活性である。前投与療法により、治療
活性をもたらすのに必要なSLPI量を著しく減らすことができる。モルモット
の気道過敏性モデルでは、抗原攻撃の1時間前に投与した場合、SLPIのED 50 は0.15mg/kgであった。これと比較して、抗原攻撃前の2日間毎日
および抗原攻撃から1時間前にさらなる用量を前投与することにより、ED50 は< 0.05mg/kgに減少した。同様の前治療効果はヒツジでも見られ、
抗原攻撃前の3日間毎日および抗原攻撃の0.5時間前に3mg用量のSLPI
を前投与しておくわけだが(前投与量は12mg)、これは気管支収縮および気
管粘液速度モデルにおける抗原攻撃から0.5時間前のそれぞれ100mgおよ
び30mg用量のSLPI単回投与に相当する阻害効果であった。さらに、モル
モットとヒツジの両モデルにおいてSLPI活性の延長が見られた。
【0146】 前投与した場合にSLPIの有効性が改善されるのは、気道での長い半減期に
よってある程度説明される。エアロゾル投与後のヒツジおよびヒトでの上皮内液
(epithelial lining fluid)中の免疫反応性SLPI
の排出半減期は、それぞれ12および6.5時間である(McElvaneyら
,Am,Rev.Respir.Dis.,148:1056−1060,19
93)。しかしながら、モルモットやヒツジに与えられる全投与量は効果のない
単回投与量に近いので、蓄積だけでは前投与の有効性を説明できない。説明は、
前投与により数日間にわたりプロテアーゼ活性が減少し、特にプロテアーゼが肥
満細胞と白血球の反応の初回刺激に携わっているとすれば、抗原攻撃後の反応が
改善されるというものである。さらに、前投与の期間が組織への分布に十分な時
間を提供し、その阻害効果を最大限にする(Dietzeら,Biol.Che
m.Hoppe−Seyler.,371 suppl.:75−79,199
0)。SLPIの細胞内区画化あるいは気道の上皮表面への分散の結果として、
気管支体液から測定される半減期値は気道のSLPIを十分に定量できない(S
tolkら,Thorax,50:645−650,1995)。
【0147】 SLPIのさらなる重要な薬理学的特徴は、気道反応後に投与した場合に反応
を阻害する能力である。ヒツジのモデルで表されるように、抗原攻撃から1時間
後の30mgのSLPI投与および結果として生じる肥満細胞の脱顆粒は、続い
て起こる後期相の気管支収縮や気道反応亢進の発生を妨げ、気管粘液速度の減少
を取り消すことができる。これらの結果により、救出療法としての可能性あるS
LPIの有用性が示される。
【0148】 喘息の治療での対症緩和を補足するため、気道のリモデリングを妨げる薬剤の
必要性の認識が増加している。SLPIが粘膜毛様体機能障害を妨げる能力は、
喘息気道の重大な病理変化に対しての処置を意味する。この知見は、SLPIが
エラスターゼの誘導する気管支分泌細胞の異形性(Luceyら,J.Lab.
Clin.Med.,115:224−232,1990)と粘液分泌過多(K
ingら,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,151:
A529,1995)を阻害する能力により補足される。
【0149】 実施例5 モルモットでの抗原刺激による気管支反応に対するSLPI乾燥粉末製剤の効
果 リン酸緩衝食塩水中に10μgオボアルブミンと10mg水酸化アルミニウム
を含む溶液0.5mlを腹腔内注射することにより、雄のハートレイモルモット
(Charles River Laboratories Inc.,Wil
migton,MA)を感作した。3週目と5週目に追加免疫し、IgEとIg
G1の力価が高いことを確認した(Andersson,P.,Int.Arc
h.Allergy Appl.Immunol.,64:249−258,1
981)。最初の注射後7から9週目に、動物を用いて抗原誘導によるモルモッ
ト気道過敏性を評価した。
【0150】 モルモットでの抗原誘導による気道過敏性を評価するため、まず無拘束の動物
において基準ヒスタミン気管支吸入誘発を行った。モルモット(450〜600
g)を全身プレチスモグラフ(Buxco Electronics,Troy
,NY)に置いた。動物を、Devilbis超音波噴霧器(Somerset
,PA)により生成した5秒間のヒスタミンエアロゾルバーストにさらした。1
0分間隔で投与するリン酸緩衝食塩水(PBS)(GIBCO,Grand I
sland,NY)中のヒスタミン濃度を0,25,50,100,および20
0mg/mlと上げていき、それに対する反応によりPauseenhance (Chandら,Allergy,48:230−235,1993)で表さ
れる気管支収縮ピークを決定し、曲線下面積(AUC)を算出した(n = 1
6)。ヒスタミン基準の決定から3日後、モルモットを再度全身プレチスモグラ
フに置き、3秒間のリン酸緩衝食塩水中0.1mg/mlオボアルブミンのエア
ロゾルバーストにさらした(n = 16)。抗原攻撃から6時間後、ヒスタミ
ン気管支吸入誘発を繰り返し、AUCを算出して反応亢進性の進行を評価した(
#P < 0.05 vs 基準反応)。
【0151】 気管内滴下注入により液体として(n = 4)、あるいは気管内ガス注入に
よりSLPI:トレハロース(75:25)粉末として(n = 8)、SLP
I(5mg)を投与した(図6)。モルモットにメトキシフルランを吸入させて
麻酔をかけた後、気管内チューブ(18ゲージ、TeflonTM製)を光ファ
イバー光源の補助により目で見て気管に通した。SLPIまたはトレハロース(
5mg)(n = 9)をチューブを通して投与し、次に空気を大量瞬時投与し
て分散を促進した。SLPIの乾燥粉末製剤は抗原誘導による気道の反応亢進の
発生を阻害し、これは同程度量のSLPIを液体として気管内に送達した効果に
相当した(*p < 0.05 vs 抗原刺激による反応)。これと比較して
、トレハロース粉末単独では、抗原刺激による反応に対して阻害効果を示さなか
った。
【0152】 実施例6 ヒツジでの抗原刺激による気管支反応に対するSLPI乾燥粉末製剤の効果 ヒツジでの抗原誘導による初期および後期気管支収縮と気道の反応亢進の進行
に対するSLPI乾燥粉末製剤の効果を評価した(Abrahamら,J.Cl
in.Invest.,93:776−787,1994に記述されたような標
準技術に従って、測定を行った)。Rotohaler装置を用いて、SLPI
粉末(10mg、上記のように調製)を挿管したヒツジに送達した。抗原攻撃前
3日間毎日と0.5時間前にSLPIを投与した(n = 4)。抗原攻撃から
0〜4時間後に見られる特異的肺抵抗の上昇についての曲線下面積で測定される
ように、SLPIは初期相の気管支収縮を50%以上阻害した(図7a)。SL
PIはまた、抗原攻撃から7時間後に測定された反応ピークを100%阻害して
、後期相の気管支収縮を阻害した(図7b)(*p < 0.05 vs.抗原
刺激による気管支収縮)。さらに、SLPI粉末製剤は、抗原攻撃から24時間
後に測定される気道の反応亢進を88%阻害した(*p < 0.05 vs.
抗原刺激による反応亢進)。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1Aは、モルモットにおける、抗原によって誘導された気道過敏性に対する
分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)の効果を示したものである
。過敏性は、ヒスタミンに対する用量依存的気管支収縮の変化(休止期間の伸長
として測定される)を、抗原を投与してから6時間後に評価して測定する(平均
値±標準誤差、n=10)(#p<0.05、抗原刺激反応対基準値)。抗原投
与する1時間前に、1回分の用量を気管内に点滴すると過敏性の進行を阻害する
(平均値±標準誤差、n=4−6)(+p<0.1、SLPIの効果対抗原刺激
反応)(#p<0.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図1B】 図1Bは、モルモットにおける、抗原によって誘導された気道過敏性に対する
分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)の効果を示したものである
。過敏性は、ヒスタミンに対する用量依存的気管支収縮の変化(休止期間の伸長
として測定される)を、抗原を投与してから6時間後に評価して測定する(平均
値±標準誤差、n=10)(#p<0.05、抗原刺激反応対基準値)。SLP
Iを2日間続けて、さらに抗原投与する1時間前に点滴する(投薬前処理する)
と、過敏性の進行を阻害する能力が高まる(平均値±標準誤差、n=6)(#p
<0.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図2】 図2は、モルモットにおいて、抗原によって誘導された気道過敏性の進行に対
するSLPIの活性期間が長いことを示している。抗原投与する前のさまざまな
時点で、5mgのSLPIを1回投与した。過反応性は、抗原投与の24時間後
に、気道抵抗の変化が100%(PC100)になるのに必要とされるヒスタミ
ン用量の変化として測定される(平均値±標準誤差、n=4−10)(#p<0
.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図3A】 図3Aは、ヒツジにおける、抗原刺激された気管支の反応に対するSLPIの
効果を示している。SLPIは、3mgをエアロゾルにして連続3日間、また抗
原投与30分前に予め投与した。早期および晩期の気管支収縮を、抗原投与後8
時間にわたる特異的な肺抵抗の増加割合として測定する(平均値±標準誤差、n
=4)(#p<0.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図3B】 図3Bは、ヒツジにおける、抗原刺激された気管支の反応に対するSLPIの
効果を示している。SLPIは、3mgをエアロゾルにして連続3日間、また抗
原投与30分前に予め投与した。気道過反応性は、抗原投与の24時間後に、気
道抵抗の変化が400%(PC400)になるのに必要とされるカルバコール用
量の変化として測定される(平均値±標準誤差、n=4)(#p<0.05、S
LPIの効果対抗原刺激反応)。
【図4A】 図4Aは、ヒツジにおける、抗原投与1時間後にSLPIを投与したときの、
抗原により誘導された気道抵抗に対するSLPIの効果を示している。SLPI
は、抗原投与30分前に、30mgのエアロゾルにして1回だけ投与した。早期
および晩期の気管支収縮を、抗原投与後8時間にわたる特異的な肺抵抗の増加割
合として測定する(平均値±標準誤差、n=5)(#p<0.05、SLPIの
効果対抗原刺激反応)。
【図4B】 図4Bは、ヒツジにおける、抗原投与1時間後にSLPIを投与したときの、
抗原により誘導された気道抵抗に対するSLPIの効果を示している。SLPI
は、抗原投与30分前に、30mgのエアロゾルにして1回だけ投与した。気道
過反応性は、抗原投与の24時間後に、気道抵抗の変化が400%(PC400
)になるのに必要とされるカルバコール用量の変化として測定される(平均値±
標準誤差、n=5)(#p<0.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図5A】 図5Aは、ヒツジにおける、回虫刺激による気管粘液速度の低下に対するSL
PIの効果を示している。気管粘液速度は、基準となる反応に対する、抗原投与
後の変化の割合として測定する(#p<0.05、抗原刺激による反応対基準値
)。SLPIは、3mgをエアロゾルにして連続3日間、また抗原投与30分前
に予め投与した(平均値±標準誤差、n=3)(#p<0.05、SLPIの効
果対抗原刺激反応)。
【図5B】 図5Bは、ヒツジにおける、回虫刺激による気管粘液速度の低下に対するSL
PIの効果を示している。気管粘液速度は、基準となる反応に対する、抗原投与
後の変化の割合として測定する(#p<0.05、抗原刺激による反応対基準値
)。SLPIは、抗原投与1時間後に、30mgのエアロゾル投薬として1回だ
け投与した。(平均値±標準誤差、n=6)(#p<0.05、SLPIの効果
対抗原刺激反応)。
【図6】 図6は、モルモットにおける、抗原刺激された気管支の反応に対するSLPI
乾燥粉末製剤の効果を示している。過敏性は、ヒスタミンに対する用量依存的気
管支収縮の変化(休止期間の伸長として測定される)を、抗原投与6時間後に評
価して測定される(平均値±標準誤差、n=10)(#p<0.05、抗原刺激
反応対基準値)。抗原投与する1時間前に、気管支内に、1回用量分のSLPI
を粉末にして吸入させるか、液剤にして点滴すると、過反応性の進行を阻害する
(平均値±標準誤差、n=4−6)(+p<0.1、SLPIの効果対抗原刺激
反応)(#p<0.05、SLPIの効果対抗原刺激反応)。
【図7A】 図7Aは、ヒツジにおける、抗原に誘導された初期および晩期の気管支収縮に
対するSLPIの乾燥粉末製剤の効果を示している。SLPIは、3mgのエア
ロゾルにして連続3日間、また、抗原投与30分前に予め投与した。早期および
晩期の気管支収縮を、抗原投与後8時間にわたる特異的な肺抵抗の増加割合とし
て測定する(平均値±標準誤差、n=4)(#p<0.05、SLPIの効果対
抗原刺激反応)。気道過反応性は、抗原投与の24時間後に、気道抵抗の変化が
400%(PC400)になるのに必要とされるカルバコール用量の変化として
測定される(平均値±標準誤差、n=4)(#p<0.05、SLPIの効果対
抗原刺激反応)。
【図7B】 図7Bは、ヒツジにおける、気道過敏性の進行の評価を示している。SLPI
は、3mgのエアロゾルにして連続3日間、また、抗原投与30分前に予め投与
した。早期および晩期の気管支収縮を、抗原投与後8時間にわたる特異的な肺抵
抗の増加割合として測定する(平均値±標準誤差、n=4)(#p<0.05、
SLPIの効果対抗原刺激反応)。気道過反応性は、抗原投与の24時間後に、
気道抵抗の変化が400%(PC400)になるのに必要とされるカルバコール
用量の変化として測定される(平均値±標準誤差、n=4)(#p<0.05、
SLPIの効果対抗原刺激反応)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U Z,VN,YU,ZW (72)発明者 チヤン,ビヨン・エス アメリカ合衆国、カリフオルニア・91320、 サウザンド・オークス、フオツクス・スプ リングス・サークル・1619 Fターム(参考) 4C076 AA29 AA93 BB03 BB22 BB25 BB27 CC15 CC26 CC29 DD51 DD67 EE41 FF33 FF34 FF68 GG09 4C084 AA02 AA03 BA44 DC32 DC34 DC41 MA01 MA05 MA13 MA43 MA57 MA59 NA10 NA11 ZA591 ZB111 ZB211 ZC202

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分泌性白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)タンパ
    ク質、および薬学上許容しうる担体を含む薬学的組成物であって、約10重量%
    よりも少ない水分を含む乾燥粉末であり、該粉末の全量の50%から95%が、
    直径が約1.0ミクロンから約8ミクロンの範囲にあり、マスメジアン直径が約
    3.0ミクロンから約6ミクロンである粒子または粒子塊である薬学的組成物。
  2. 【請求項2】 粒子が、気体流中で少なくとも50%が分散可能な、請求項
    1に記載の薬学的組成物。
  3. 【請求項3】 粒子または粒子塊のマスメジアン直径が約4.5ミクロンか
    ら約5.5ミクロンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
  4. 【請求項4】 約50重量%から約95重量%のSLPIタンパク質を含む
    、請求項1に記載の薬学的組成物。
  5. 【請求項5】 約5重量%から約50重量%の薬学上許容しうる担体を含む
    、請求項1に記載の薬学的組成物。
  6. 【請求項6】 薬学上許容しうる担体が、炭水化物、アミノ酸、およびポリ
    ペプチドからなる群から選ばれる、請求項1に記載の薬学的組成物。
  7. 【請求項7】 薬学上許容しうる担体が、マンニトール、スクロース、およ
    びトレハロースからなる群から選ばれる、請求項1に記載の薬学的組成物。
  8. 【請求項8】 さらに分散剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  9. 【請求項9】 さらに吸収促進剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  10. 【請求項10】 a)分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、および、所
    望による、溶剤中の薬学上許容しうる担体との混合物を提供する工程、および、 b)該混合液をスプレードライして、乾燥粉末を形成させる工程であって該分
    泌性白血球プロテアーゼインヒビターが、約50重量%から約95重量%の乾燥
    粉末を含み、組成物の全量の少なくとも50%から95%が、直径約1.0ミク
    ロンから約8ミクロンで、マスメジアン直径が約3.0ミクロンから約6ミクロ
    ンである粒子または粒子塊からなり、得られた組成物が、気管支内沈積に適して
    いることを特徴とする工程を含む方法によって製造される薬学的組成物。
  11. 【請求項11】 粒子が、気体流中で少なくとも50%が分散可能な、請求
    項10に記載の薬学的組成物。
  12. 【請求項12】 粒子または粒子塊のマスメジアン直径が約4.5ミクロン
    から約5.5ミクロンである、請求項10に記載の薬学的組成物。
  13. 【請求項13】 約50重量%から約95重量%のSLPIタンパク質を含
    む、請求項10に記載の薬学的組成物。
  14. 【請求項14】 約5重量%から約50重量%の薬学上許容しうる担体を含
    む、請求項10に記載の薬学的組成物。
  15. 【請求項15】 薬学上許容しうる担体が、炭水化物、アミノ酸、およびポ
    リペプチドからなる群から選ばれる、請求項10に記載の薬学的組成物。
  16. 【請求項16】 薬学上許容しうる担体が、マンニトール、スクロース、お
    よびトレハロースからなる群から選ばれる、請求項10に記載の薬学的組成物。
  17. 【請求項17】 さらに分散剤を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
  18. 【請求項18】 さらに吸収促進剤を含む、請求項10に記載の薬学的組成
    物。
  19. 【請求項19】 請求項1または10に記載の薬学的組成物を肺に投与する
    ことを含む、プロテアーゼ酵素を阻害する方法。
  20. 【請求項20】 組成物を毎日投与する、請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 吸入時に患者の口腔内に薬学的組成物を指向させることを
    含む、請求項19に記載の方法。
  22. 【請求項22】 請求項1または10に記載の薬学的組成物を肺に投与する
    ことを含む、肺粘液の産生/分泌を阻害する方法。
  23. 【請求項23】 請求項1または10に記載の薬学的組成物を肺に投与する
    ことを含む、気道中での粘液速度を高める方法。
  24. 【請求項24】 請求項1または10に記載の薬学的組成物を肺に投与する
    ことを含む、抗原/刺激に対する気道過敏性を低下させる方法。
  25. 【請求項25】 請求項1または10に記載の薬学的組成物を肺に投与する
    ことを含む、気道細胞/組織の病理学的変化を阻害する方法。
JP2000514669A 1997-10-03 1998-08-19 分泌性白血球プロテアーゼインヒビターの乾燥粉末薬学的組成物 Withdrawn JP2001518518A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US08/943,759 US20010006939A1 (en) 1997-10-03 1997-10-03 Secretory leukocyte protease inhibitor dry powder pharmaceutical compositions
US08/943,759 1997-10-03
PCT/US1998/017173 WO1999017800A1 (en) 1997-10-03 1998-08-19 Secretory leukocyte protease inhibitor dry powder pharmaceutical compositions

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001518518A true JP2001518518A (ja) 2001-10-16

Family

ID=25480210

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000514669A Withdrawn JP2001518518A (ja) 1997-10-03 1998-08-19 分泌性白血球プロテアーゼインヒビターの乾燥粉末薬学的組成物
JP2000514935A Withdrawn JP2001519142A (ja) 1997-10-03 1998-08-28 肝細胞増殖活性を有する線維芽細胞増殖因子

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000514935A Withdrawn JP2001519142A (ja) 1997-10-03 1998-08-28 肝細胞増殖活性を有する線維芽細胞増殖因子

Country Status (9)

Country Link
US (2) US20010006939A1 (ja)
EP (2) EP1030683A1 (ja)
JP (2) JP2001518518A (ja)
KR (1) KR20010024395A (ja)
CN (1) CN1327452A (ja)
AU (2) AU738298B2 (ja)
CA (1) CA2308123A1 (ja)
WO (2) WO1999017800A1 (ja)
ZA (1) ZA988664B (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004523536A (ja) * 2001-02-06 2004-08-05 イノバータ・バイオミッド・リミテッド 薬剤
JP2007511539A (ja) * 2003-11-14 2007-05-10 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド α1−抗トリプシン組成物およびこのような組成物を用いた処置方法
JP2007527204A (ja) * 2003-04-22 2007-09-27 ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター 生理活性な異種ドメインを担持するコラーゲン線維およびその、例えば、創傷の治癒における使用

Families Citing this family (42)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999043308A2 (en) * 1998-02-27 1999-09-02 Marlene Rabinovitch Treating pulmonary hypertension through tenascin suppression and elastase inhibition
AU6634400A (en) * 1999-08-13 2001-03-13 Chiron Corporation Dose of an angiogenic factor and method of administering to improve myocardial blood flow
JP4610832B2 (ja) 1999-10-26 2011-01-12 株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 創収縮抑制薬剤
WO2001038357A2 (en) * 1999-11-22 2001-05-31 Millennium Pharmaceuticals, Inc. Jaffa, a novel fibroblast growth factor family member and uses therefor
WO2001051030A1 (en) * 2000-01-10 2001-07-19 Dura Pharmaceuticals, Inc. Pharmaceutical formulation and method for pulmonary and oral delivery
AU2001231030A1 (en) * 2000-01-20 2001-07-31 Amgen Inc Inhibitors of protease-activated receptor-2 (par-2) as novel asthma therapeutics
AU2001241913A1 (en) * 2000-03-01 2001-09-12 The Government Of The United States Of America, As Represented By The Secretary, Department Of Health And Human Services Methods for wound treatment
WO2001092522A2 (en) * 2000-06-01 2001-12-06 Eli Lilly And Company Human fgf-20 nucleic acids and polypeptides
DE10101792B4 (de) * 2001-01-17 2004-03-18 Vivotec Biomedical Technologies Gmbh Verfahren zum Nachweis von Pankreaskarzinom oder chronischer Pankreatitis und Verwendung von Antikörpern
WO2003018620A2 (en) * 2001-08-27 2003-03-06 Les Laboratoires Aeterna Inc. Serine protease inhibitor and processes for the preparation thereof
WO2003070023A1 (fr) * 2002-02-22 2003-08-28 Ajinomoto Co., Inc. Poudre d'acides amines et procede de production de cette poudre
GB0226274D0 (en) * 2002-11-11 2002-12-18 Medpharm Ltd Metered dose inhalation preparations
CA2534352A1 (en) * 2003-08-08 2005-02-17 Arriva Pharmaceuticals, Inc. Methods of protein production in yeast
JP2007501622A (ja) * 2003-08-13 2007-02-01 サンド・アクチエンゲゼルシヤフト 組換えポリペプチドを精製するための方法
GB0328629D0 (en) * 2003-12-10 2004-01-14 Medpharm Ltd Metered dose inhalation preparations
AU2005221151A1 (en) 2004-03-09 2005-09-22 Arriva Pharmaceuticals, Inc. Treatment of chronic obstructive pulmonary disease by low dose inhalation of protease inhibitor
JO3102B1 (ar) 2004-03-17 2017-09-20 Chiesi Framaceutici S P A صيغ صيدلانية لوسائل استنشاق بها مسحوق جاف تشتمل على مكون فعال بقوة منخفضة الجرعة
MX2007001638A (es) * 2004-08-11 2009-02-12 Trubion Pharmaceuticals Inc Proteinas de fusion del dominio de unión.
US20070105768A1 (en) * 2004-11-10 2007-05-10 Rajiv Nayar Dry recombinant human alpha 1-antitrypsin formulation
JP2008514648A (ja) * 2004-12-16 2008-05-08 アドバンスト インハレーション リサーチ,インコーポレイテッド 肺疾患のための組成物および方法
MX2008009105A (es) * 2006-01-12 2008-09-26 Janssen Pharmaceutica Nv Procesamiento del inhibidor de proteasa de leucocitos de secrecion (slpi) por quimasa.
US8725529B2 (en) * 2008-12-30 2014-05-13 The Invention Science Fund I, Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100169259A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163036A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163034A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100168602A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100168525A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US9750903B2 (en) * 2008-12-30 2017-09-05 Gearbox, Llc Method for administering an inhalable compound
US8694330B2 (en) * 2008-12-30 2014-04-08 The Invention Science Fund I, Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163038A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163024A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163025A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163027A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100169260A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US8712794B2 (en) * 2008-12-30 2014-04-29 The Invention Science Fund I, Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US8706518B2 (en) * 2008-12-30 2014-04-22 The Invention Science Fund I, Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US8738395B2 (en) * 2008-12-30 2014-05-27 The Invention Science Fund I, Llc Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100163033A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
US20100168529A1 (en) * 2008-12-30 2010-07-01 Searete Llc, A Limited Liability Corporation Of The State Of Delaware Methods and systems for presenting an inhalation experience
RU2657523C2 (ru) * 2011-11-03 2018-06-14 Олег Петрович Жирнов Фармацевтический аэрозольный состав ингибиторов протеаз с озон-сберегающим пропеллентом и его получение
EP3619324A4 (en) * 2017-05-05 2020-12-30 Trefoil Therapeutics, Inc. RECOMBINATED MODIFIED FIBROBLASTIC GROWTH FACTORS AND THEIR THERAPEUTIC USES
WO2019046664A1 (en) * 2017-08-30 2019-03-07 Applied Biological Laboratories, Inc. COMPOSITIONS AND METHODS FOR PROTECTING AGENTS FROM PATHOGENS AND IRRITANTS

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BE556587A (ja) * 1957-01-31 1957-04-11
US4678812A (en) * 1986-05-30 1987-07-07 E. I. Du Pont De Nemours And Company Trehalose as stabilizer and tableting excipient
US5011678A (en) * 1989-02-01 1991-04-30 California Biotechnology Inc. Composition and method for administration of pharmaceutically active substances
JPH05963A (ja) * 1990-04-13 1993-01-08 Toray Ind Inc ポリペプチド類組成物
JP3385040B2 (ja) * 1991-02-14 2003-03-10 武田薬品工業株式会社 グリア活性化因子およびその製造法
US6005100A (en) * 1992-12-02 1999-12-21 Kabushiki Kaisha Hayashibara Seitbutsu Kagaku Kenkyujo Trehalose composition for prolonging product shelf life
JP3168550B2 (ja) * 1992-12-02 2001-05-21 株式会社林原生物化学研究所 脱水剤およびそれを用いる含水物の脱水方法並びにその方法で得られる脱水物品
CN1064710C (zh) * 1993-03-26 2001-04-18 安姆根有限公司 角质细胞生长因子的治疗应用
US5633227A (en) * 1994-09-12 1997-05-27 Miles, Inc. Secretory leukocyte protease inhibitor as an inhibitor of tryptase
US5780014A (en) * 1995-04-14 1998-07-14 Inhale Therapeutic Systems Method and apparatus for pulmonary administration of dry powder alpha 1-antitrypsin
US5876992A (en) * 1996-07-03 1999-03-02 Molecular Biology Resources, Inc. Method and formulation for stabilization of enzymes

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004523536A (ja) * 2001-02-06 2004-08-05 イノバータ・バイオミッド・リミテッド 薬剤
JP2007527204A (ja) * 2003-04-22 2007-09-27 ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター 生理活性な異種ドメインを担持するコラーゲン線維およびその、例えば、創傷の治癒における使用
JP2007511539A (ja) * 2003-11-14 2007-05-10 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド α1−抗トリプシン組成物およびこのような組成物を用いた処置方法

Also Published As

Publication number Publication date
ZA988664B (en) 1999-04-06
US20010006939A1 (en) 2001-07-05
KR20010024395A (ko) 2001-03-26
WO1999018128A1 (en) 1999-04-15
AU8914998A (en) 1999-04-27
AU738298B2 (en) 2001-09-13
CN1327452A (zh) 2001-12-19
CA2308123A1 (en) 1999-04-15
US20020010318A1 (en) 2002-01-24
EP1025122A1 (en) 2000-08-09
AU8923998A (en) 1999-04-27
JP2001519142A (ja) 2001-10-23
WO1999017800A1 (en) 1999-04-15
EP1030683A1 (en) 2000-08-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU738298B2 (en) Secretory leukocyte protease inhibitor dry powder pharmaceutical compositions
US10927166B2 (en) Compositions comprising an anti-C5 antibody
JP2774379B2 (ja) 医薬エアロゾール組成物ならびにそれらのウイルス疾患の治療および予防用途
JP2012522798A (ja) 血清アミロイドpの肺および鼻への送達
JP2022078013A (ja) エラスターゼ阻害活性を有するベータヘアピンペプチド模倣体及びそのエアロゾル剤形
CA3159515A1 (en) Treatment of lower airways disorders
JP2007524607A6 (ja) 凝固因子の吸入による血友病処置
JP2007524607A (ja) 凝固因子の吸入による血友病処置
RU2737799C1 (ru) Ингаляционный гексапептид для лечения респираторных заболеваний, связанных с интерлейкином-6
US20210085764A1 (en) Dry powder formulations of alpha-1 antitrypsin
US20220339099A1 (en) Compositions of interleukin-1 receptor antagonist
MXPA00003231A (en) Secretory leukocyte protease inhibitor dry powder pharmaceutical compositions
BRPI0608844A2 (pt) partìcula e preparação que contém a partìcula
AU605580B2 (en) Aerosolization of protein therapeutic agent
WO2009028917A1 (en) Formulation for inhalation comprising fibroblast growth factor-2 as an effective ingredient for treatment or prevention of asthma and/or chronic obstructive pulmonary disease
MX2007010862A (es) Particula y preparacion que la contiene.

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20051101