【発明の詳細な説明】
符号同期化装置および方法
発明の分野
本発明は、一般的にディジタル通信システムに関し、そしてディジタル通信信
号を捕捉するための方法および装置に関する。
発明の背景
ディジタル通信システムは、ディジタル情報を有する信号を送信および受信す
る。通常、そのような信号は、送信されるべきデータに(受信機を送信機と同期
させるための)同期信号のように正確な通信を確実に行うため必要な追加部分を
加えたものと、(受信したデータが壊れてないことを保証し、かついずれの汚染
(変造)されたデータの少なくとも一部を訂正するための)エラー訂正コードと
を含む。
多くの種類のディジタル通信システムがある。1つの共通のディジタル通信シ
ステムはスペクトラム拡散システムのそれである。通常の直接シークエンス・ス
ペクトラム拡散信号は、狭帯域の情報搬送信号を無情報の広帯域(かつ一定の包
絡)「拡散」信号と混合した結果と見ることができる。BiとBpが情報搬送信号と
拡散信号のそれぞれを表す場合、受信機に対して利用可能な「処理利得(pro
cessing gain)」はG=Bi/Bpである。受信機は、到来信号を拡
散信号の局部で発生されたバージョンに同期させ、受信した信号を局部で発生さ
れた拡散信号と混合し、それにより拡散信号を受信した信号から除去し、その信
号を「情報帯域」Biに「折りたたむ(collapse)」。
拡散信号は、通常疑似ランダム・コードのようなある種のコード化されたシー
クエンスである。米国の宇宙計画は、最初深淵スペース通信用にタイプ1・リー
ドーミューラー(Type 1 Reed−Muller)を利用した。符号分
割多重アクセス(CDMA)システムでは、コードはリード−ミューラー・コー
ドの変形である。
CDMAシステムに対するIS−95標準においては、各ユーザは個々のウォ
ルシュ・コード(Walsh code)を有し、各基地局はパイロット信号を
有する。基地局のパイロット信号は、単一の疑似ランダム・コード列に基づくが
、各パイロット信号は独特の位相を有する。信号をユーザに送信するとき、関連
の基地局のパイロット信号は、ユーザのウォルシュ・コードと組み合わされ、そ
のユーザのための拡散信号を生成する。
疑似ランダム・コード列は疑似乱数(PN)発生器により発生され、その疑似
乱数(PN)発生器の1つが参照番号10を付されて図1に示されており、ここ
で図1を参照する。PN発生器10は、加算器14を介して共に連結された一連
のm個のフリップ・フロップ12(ここで、mは典型的には15)を有するシフ
ト・レジスタから形成される。フリップ・フロップに記憶されているビットの値
はai,tであり、簡単のためaiと付す。任意の時間でのaiの組は、時間tにお
けるPN発生器10の「ローディング(loading)」である。
各時間tに対するPN発生器10の出力ctは、時間tでのa0の値、すなわち
値1または0の1ビットである。各サイクルの終わりに、出力ctは、対応する
スイッチ16を介して各加算器14に戻るように与えられることにより、aiに
対する新しい値とctに対する新しい値とを生成する。
スイッチ16はまたタップとして知られ、そのスイッチ16は、所定の状態hk
を有し、そして閉成(hk=1)されているか開成(hk=0)されているかの
いずれかである。初期スイッチh0は、常に閉成され、出力ctが直接(m−1)
番目のフリップ・フロップ12に与えられる。疑似ランダム・コード列p[t]
はPN符号から構成され、その各々の持続時間は「チップ(chip)」と呼ばれ
る。疑似ランダム・コード列の各符号は次のように定義される。
式1
P[t]=(−1)Cl
拡散信号の局部バージョンを元のバージョンと同期させるため、送信ユニット
は、そのコード列を含むパイロット信号を追加して送信する。単純化のため、我
々は、送信された信号が2相変位(BPSK)変調されていると仮定する。
したがって、局部ユニットは、その局部コード発生器をパイロット信号に同期
させ、その後その局部ユニットは、受信された情報搬送信号を拡散解除(des
pread)することができるようになる。パイロット信号はまた、送信チャネ
ルにおける変化を追跡するのに利用される。
受信された信号は、ベースバンド信号に周波数下げ変換され、かつ整合フィル
タの出力で1チップ当たり1サンプルの速度でサンプリングされた後では、R[
t](t=…,−2,−1,0,1,2,…)により表される。受信された信号は
、双方とも送信ユニットにより送信されるパイロット信号およびユーザ・データ
信号と、熱雑音により生じた干渉項および隣接送信ユニットにより送信された信
号により生じた干渉項とから成る。
初期同期を獲得する目的のため、パイロット信号pilot[t]のみに関心
がある。BPSK信号に対して、パイロット信号は次式により表し得る。
得(「フィンガ(finger)」と呼ばれる)であり、Fはフィンガの数を表し、
ω0はベースバンドに周波数下げ変換された後の残留周波数ドリフトを表す。こ
こで、最も有意のフィンガ(most significant finger)
(最も大きなαlを有するフィンガ)のみを考え、それをαej φと表す。また、
全ての他のフィンガ、ユーザ・データ信号および他の干渉をn[t]と表す。す
ると、R[t]は次式により表せる。
捕捉の問題は、ある測定記録R[t](t=1,2,…,N)を仮定すると、い
かに効率的にPN列の位相(すなわち、PN発生器10の現在のローディング)
を得るかである。
捕捉問題に対する解法は、A.J.Viteribiによる著書 CDMA: スペクトラム拡散通信の原理(CDMA:Principles of Spr ead Spectrum Communication)
(1995年Add
iison−Wesley発行)、特にセクション3.4.3、58−59頁に
記載されている。その著書は本明細書に援用されている。
直接的アプローチは、全ての有り得る(2M−1)個の位相のPN列を数え上
げ(2M個の有り得る初期ローディングがあるが、ゼロ・ローディングは全てゼロ
の列を生成するので正規ではない。)、そしてある判定基準に対して最適なもの
を選択することである。このアプローチは、非常に多数のPNローディングのた
め計算集約的でかつ時間集約的である。
著書 CDMA:スペクトラム拡散通信の原理に説明されているこのアプロー
チの可能性のある改良は、2段(デュアル−ドエル(dual−dwell))検
索手順を用いることにより位相を得る方法である。ここで、第1段は全ての有り
得るPN位相を数え上げ、そしてある事前に特定されたスレッショルドを超えた
距離値(metric values)を有するそれらの位相のみを第2段に通
す。第2段においては、各位相の仮説が、それが真のPN位相か否かを判断する
ため、より完全に(すなわち、より計算集約的判断基準を用いて)検査される。
デュアル−ドエル手順は、直接的アプローチより速いが、相変わらず著しい時間
量がかかる。
受信されたサンプルR[t]に周波数ドリフトがない(すなわち、ω0=0)
である場合、白色ガウス雑音の仮定の下で最適距離の絶対値が最大にされること
を必要とする当該最適距離は、次のように最尤距離である。
ここで、R[1],R[2],…,R[N]は1チップにつき1サンプルの速度で
サンプリングされたデータのブロックであり、p[t]は1つの有り得るPN列
である。デュアル−ドエル手順においては、サイズNのブロックは、第1の位相
では比較的小さく、第2の位相ではより大きい。
データが周波数ドリフトを有する場合、距離は周波数ドリフトに対して無感応
であるべきである。以下の異なる距離は、論文「差分コヒーレントDS−SS並
列捕捉受信機の解折(Analysis of a Differential
ly Coherent DS−SS Parallel Acqusitio
n Receiver)」(第45回自動車技術会議のIEEE議事録(IEEE
Proceedings of the 45th Vehicular Te
chnology Conference)、2巻271−275頁、1995
年発行)において、M.H.ZarrabizadehおよびE.S.Souz
aにより提案された(本論文は本明細書に援用されている。)。
ここで、
Ncはコヒーレント加算のため用いられるチップ数(例えば、IS−95 C
DMA標準において64である符号当たりのチップ数)であり、Nsは最終距離
を生成するため用いられるz[ ]の数である。例えば、Nsは、第1の位相(
ドエル)に対して小さく(例えば、5)、第2の位相に対してより大きい(例えば
、10)。
以下の論文および特許は、BPSK信号が用いられた場合PNローディングお
よびエラー訂正コードを一般にソフト復号する変換−ドメイン方法を説明してい
る。それら論文等は本明細書に援用されている。
V.V.LosevおよびV.D.Dvormikov著「高速変換を用いた
疑似ランダム列のセグメントからの疑似ランダム列の位相の決定(Determ
ination of the Phase of a Psuedorand
om Sequence From its Segment Using F
ast Tranforms)」、Radio Enginnering and Electonics Physics
,Vol.26,No.8,61−6
6頁、1981年8月
M.CohnおよびA.Lempel著「高速M列変換について(On Fas
t M−Sequence Transforms)」、IEEE Trans action on Information Theory
、135−137
頁、1977年
V.V.LosevおよびV.D.Dvormikov著「高速変換を用いた
アドレス・シークエンスの認識(Recognition of Addres
s Sequence Using Fast Transformation
s)」、Radio Enginnering and Electonics Physics
,Vol.28,No.8,62−69頁、1983年8月
S.Z.Budisin著「FWTを用いることによる高速PN列相関(Fas
t PN Sequence Correlation by Using F
WT)」、IEEE Proceedings of the Mediterr anean Electrotechnical Conference(ME LECON)
、ポルトガル、リスボン、1989年4月、513−515頁
Y.Be’eryおよびJ.Synders著「高速アダマール変換に基づく
最適ソフト判断ブロック復号器(Optimal Soft Decision
Block Decorders Based on Fast Hadam
ard Transform)」、IEEE Transaction on I nformation Theory
、vol.32、1986年、355−3
64頁
Riceへの米国特許No.5,463,657
本発明の概要
本発明の目的は、特にCDMAシステム用でパイロット信号に対して同期する
ための新規で比較的高速の方法および装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、周波数ドリフトを有するパイロット信号に対して同期す
る方法および装置を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、周波数ドリフトが存在するときエラー訂正コード
をソフト復号する方法および装置を提供することにある。
したがって、本発明の好適な実施形態に従って、高速のアダマール変換(FH
T)ユニットおよび事前アダマール処理ユニットを含む符号分割多重アクセス(C
DMA)通信システムのためのパイロット捕捉装置が設けられる。FHTユニッ
トは、距離(metric)に従って、1組の有り得る疑似乱数(PN)ローデ
ィングの各々の質を決定し、そして事前アダマール処理ユニットは、1組のPN
ローディングにつき1個のベクトルuを発生する。ベクトルuは、受信されたパ
イロット信号の質距離を有り得るPNローディングの組により定義し、事前アダ
マール処理ユニットはベクトルuをFHTユニットに与える。
さらに、本発明に好適な実施形態に従って、上記ユニットは、各有り得る部分
PNローディングsEが1組の有り得るPNローディングを定義するその一連の
有り得る部分PNローディングsEを発生するための有り得る部分PNローディ
ング発生器を含む。
さらに、本発明の好適な実施形態に従って、上記ユニットは、局部PNローデ
ィング選択器により選択されたPNローディングの間から所定のスレッショルド
を超えた距離値を有するPNローディングを選択し、各選択されたPNローディ
ングに対して第2の距離を決定し、かつ選択されたPNローディングの間から第
2の距離に対して最良の値を有するPNローディングを選択するデュアル・ドエ
ル・ユニットを含む。
さらに、本発明の好適な実施形態に従って、事前アダマール処理ユニットは、
局部PN発生器と、以下のステップを実行するuベクトル発生器とを備える。以
下のステップとは、
局部PN発生器に初期PNローディングをロードするステップと、
受信されたパイロット信号の各データポイント上をループするステップと、
1ループにつき、
1つの有り得る部分ロードsEを受信されたパイロット信号の各データポイン
ト、および前記局部PN発生器により生成されたPNローディングと組合わせる
ことによりuベクトルを更新するステップと、
局部PN発生器をステップさせて別のPNローディングを生成するステップと
、
その結果のuベクトルを前記FHTユニットに与えるステップとである。
代替として、周波数ドリフトを有する受信された信号に対しては、事前アダマ
ール処理ユニットは、局部PN発生器と、以下のような類似の組のステップを実
行するuベクトル発生器とを備える。以下のような類似の組のステップとは、
複数のドリフト・ループ値に対してループするステップであって、a)局部P
N発生器に1ループ値につき異なる初期PNローディングをロードするステップ
と、b)受信されたパイロット信号からドリフトに無感応な入力信号を発生する
ステップとを含む、前記ループするステップと、
入力信号の各データポイント上をループする第2のステップであって、a)1
つの有り得る部分ローディングsEを入力信号のデータポイント、および局部P
N発生器により生成されたPNローディングと組み合わせることによりuベクト
ルを更新するステップと、b)局部PN発生器をステップさせて別のPNローデ
ィングを生成するステップとを含む、前記ループする第2のステップとである。
残りのステップは、周波数ドリフトの無いケースと同じである。
さらに、本発明の好適な実施形態に従って、上記ユニットは、事前に定義され
たスレッショルドを超えた距離を生成するそれらのPNローディングについて更
に距離計算を実行するデュアル・ドエル・ユニットを含み得る。
本発明は、内部に周波数ドリフトを有する全てのディジタル通信システム(ま
さにCDMAでなく)に対して動作可能であり、そしてまたエラー訂正コードに
より符号化された信号に対して、以下および請求の範囲に記載されるように、実
行することができる。後者については、局部PN発生器は、発生マトリックスと
置換される。
図面および付録の簡単な説明
本発明は、図面および付録と関連した以下の詳細な記載からより十分に理解さ
れかつ認められるであろう。
図1は、従来技術の疑似乱数(PN)発生器の概略図である。
図2は、本発明の好適な実施形態に従って構成されかつ動作するパイロット捕
捉ユニットのブロック図である。
図3は、図2のパイロット捕捉ユニットの一部を形成する事前アダマール・プ
ロセッサの概略図である。
図4は、周波数ドリフトを有しない信号に対する図3の事前アダマール・プロ
セッサの動作方法のフローチャート図である。
図5は、周波数ドリフトを有する信号に対する図3の事前アダマール・プロセ
ッサの動作方法のフローチャート図である。
図6は、本発明の別の好適な実施形態に従って構成されかつ動作する、エラー
訂正コードによるデータ符号化のための復号器のブロック図である。
図7は、図6のユニットの一部を形成する事前アダマール・プロセッサの概略
図である。
図8は、図7の事前アダマール・プロセッサの動作方法のフローチャート図で
ある。
付録Aは、周波数ドリフトを有しない1/4位相シフト・キーイング(QPS
K)信号で動作する図2、図3および図4の事前アダマール・プロセッサについ
ての数学的基礎を与える。
付録Bは、未知の周波数ドリフトを有するQPSK信号で動作する図5の事前
アダマール・プロセッサについての数学的基礎を与える。
付録Cは、周波数ドリフトを有しない2相変位(BPSK)で動作する図2、
図3および図4の事前アダマール・プロセッサについての数学的基礎を与える。
付録Dは、未知の周波数ドリフトを有するBPSKで動作する図5の事前アダ
マール・プロセッサについての数学的基礎を与える。
好適な実施形態の詳細な説明
本発明のパイロット捕捉ユニットは、各有り得る疑似乱数(PN)ローディン
グs(すなわち、フリップ・フロップ値aiの組)を考慮し、それに対する距離
(metric)metrics[s]の値を決定する。次いで、本発明は、そ
のmetrics[s]の組を検討し、「最良」(例えば、絶対値で最大)のme
trics[s]と関連したPNローディングを選択する。選択されたPNロー
ディングは、それによりデータが符号化された送信ユニット上のPN発生器の検
出された現在のPNローディングである。
1/4位相シフト・キーイング(QPSK)信号を有するCDMAシステムに
とっては、送信される信号は複素数であり、したがってPN列も複素数p0[t
]
=p0 I[t]+jp0 Q[t]である。複素PN列は、2つのPN発生器により発
生され、1つのPN列は同相(in−phase)列p0 I[t]に対してであり
、もう1つは1/4位相(quaternary)列p0 Q[t]に対してである
。そのようなCDMAシステムにとっては、p0 I[t]を得るための距離は次式
のとおりである。
ここで、ctは、同相PN発生器の出力であり、pI[t]は、複素QPSK
PN列の同相部分でありかつ同相PNローディングsの関数である。以下で説明
されるように、p0 Q[t]は推定された同相ローディングsから得られる。
上記で与えられた式6のmetrics[s]は、受信されたデータR[t]
の中に周波数ドリフトがない場合のみ有効であることが認められるであろう。
さらに、本発明はCDMA QPSK信号に関して記載されるが、本発明はま
た他のディジタル通信システムに関して動作可能であることが認められるであろ
う。
行ベクトルmetrics[s]の値(sの各有り得る値に対する1つの要素
)は、metrics[s]を次のように書くことができることに注目すること
により高速アダマール変換(FHT)を介して発生される。
式7
metrics[s]=u・Hm
ここで、Hmはアダマール・マトリックスであり、uは高速アダマール変換に
対する入力ベクトルである。metrics[s]のアダマール・マトリックス
との関連、および受信されたサンプルからの入力ベクトルuの構成は、CDMA
のQPSK入力パイロット信号について付録Aにおいて詳細に導かれる。高速ア
ダマール変換は、D.F.ElliotおよびK.R.Raoによる著書 高速 変換、アルゴリズム、解析、応用(Fast Transforms,Algo rithms,Analysis,Applications)
(Academ
ic Press、ニューヨーク、1982年発行)に説明されている。そ
の著書は本明細書に援用されている。
ここで、本発明のパイロット捕捉ユニットをブロック図形式で図示する図2を
、図2のパイロット捕捉ユニットに有用な事前アダマール・プロセッサを詳細に
示す図3を、そして図3の事前アダマール・プロセッサの動作方法をフローチャ
ート形式で図示する図4を参照する。
パイロット捕捉ユニットは、高速アダマール変換(FHT)ユニット20、事
前アダマール・プロセッサ22、有り得る部分PNローディングsE発生器24
、局部PNローディング選択器26および大域PNローディング選択器28を備
える。有り得る部分PNローディングsE発生器24は、典型的には、計数値を
部分PNローディングsEとして与えるカウンタである。
以下でより詳細に説明されるように、事前アダマール・プロセッサ22は、受
信されたデータR[t]、および事前アダマール・プロセッサ22の一部を形成
するPN発生器19(図3)の初期ローディングhを仮定すれば、有り得る現在
の部分ローディングsEを共通に有する全部のローディングsに対してアダマー
ル入力ベクトルuを生成する。(hM-1,..h0)として定義される初期ローディ
ングhは、複数のタップ16の値をそれらの対応するフリップ・フロップ12に
与えることにより生成され、そこにおいてa0はhM-1の値を受け取る等々である
。
FHTユニット20は、アダマール入力信号uに高速アダマール変換を実行し
、そしてそれから、有り得る現在の部分ローディングsEを共通に有する全部の
ローディングsに対するベクトルmetrics[s]を生成する。局部PNロ
ーディング選択器26は、|metrics[s]|の最大成分と関連したPN
ローディングslを選択する。処理は、全部の有り得る部分ローディングsEに対
して反復され、そして大域PNローディング選択器28は、局部ローディング選
択器により生成されたそれらのローディングslの間から|metrics[s
]|の最大値を有する検出されたPNローディングsを選択する。
IS−95 CDMAシステムは、2つのPN発生器、すなわち同相PN発生
器および1/4位相PN発生器(quaternary PN generat
or)を有し、これら2つの発生器は互いに結合され、そして同相PN発生器は
1/4位相PN発生器の列に影響を与える。その反対は真ではない。双方の局部
PN発生器を送信PN発生器に同期させるため、それら局部PN発生器は、それ
らの初期ローディングにより初期化され、同相PN発生器が選択されたローディ
ングsに達するまで共にステップされる。1/4位相PN発生器は、その適切な
ローディングに達してしまう。
図3に示されるように、事前アダマール・プロセッサ22は、図1のPN発生
器10と類似の局部疑似乱数発生器19、アダマール・ベクトルuレジスタ30
、加算器32、スカラー乗算器34およびXOR−AND(排他的論理和−積)
ユニット36を備える。
発明の背景で説明されそして付録Aで詳細に示されるBe’eryおよびSy
ndersによる論文に従って、PN発生器19は、2つのセクションに分割さ
れ、m−Q個のフリップ・フロップ12を組み込む長さm−Qの外部セクション
Eは値a0からam-Q-1までを有し、Q個のフリップ・フロップ12を組み込む長
さQの内部セクションIは値am-Qからam-1までを有する。内部セクションは内
部ベクトルgI tを生成し、外部セクションは外部ベクトルgE tを生成する。ここ
で、そのベクトルgは次式により定義される。
式8
gI t=(am-1…am-Q)
gE t=(am-Q-1…a0)
そして、aiは時間tでのフリップ・フロップ12の中の値である。
ベクトルgt=(gI t,gE t)は、局部PN発生器19の1つの有り得る状態
であり、一方ローディングsは、PNローディングでもって受信したパイロット
信号が発生されたそのPNローディングであることが認められるであろう。さら
に、局部PN発生器19の出力ctは次のようにPNローディングsおよびgtの
関数であることが認められるであろう。
式9
Ct=〈s,gt〉
れる。
内部ベクトルgI tの値は、アダマール・ベクトルuレジスタ30内のアドレス
を定義し、そこにおいてレジスタ30は2Q個のメモリ・セルを含む。矢印40
は、内部ベクトルgI tからそれが定義し42が付されているアドレスを指し示す
。事前アダマール・プロセッサ22は、アドレス42に記憶されている値を取り
去り、その値を加算器32に与える。
外部ベクトルgE tは、有り得る部分PNローディングsEと組み合わされて用
いられて、データポイントR[t]の符号signを決定する。a)部分PNロ
ーディングsEは外部ベクトルgE tと同じ長さm−Qであり、b)外部ベクトル
gE tおよび部分PNローディングsEは1および0の2値ベクトルである。特に
、実行される演算は次のとおりである。
スカラー乗算器34は、データポイントR[t]にsignの値を乗算し、そ
の結果が、加算器32において、アドレス42から取り去られたアダマール入力
の成分に加えられる。次いで、加算器32の出力は、アドレス42に戻すように
挿入される。
図4に示されるように、事前アダマール・プロセッサ22は、R[t]のN個
の値の各々に対して前述の演算を反復する。最初(ステップ50および51)に
、事前アダマール・プロセッサ22は、アダマール・ベクトルuレジスタ30を
ゼロにし、局部PN発生器19にその初期状態ベクトルhをロードする。ステッ
プ52において、事前アダマール・プロセッサ22は、R[t]のN個の値に対
してループし、そこにおいて、R[t]の各値に対して、uの関連の成分に対す
る新しい値が決定され(ステップ54)、その後局部PN発生器19はステップさ
れ(ステップ56)、内部ベクトルgI tと外部ベクトルgE tとに対する新しい値を
生成する。
一度ループ52が完了すると、uベクトルが生成され、したがって、metr
ics[s]の値を決定するためのFHTユニット20にそのuベクトルを送る
ことができる(ステップ58)。処理は、再びステップ50でアダマール・ベクト
ルuおよび局部PN発生器19をそれらの初期状態にリセットすることにより始
まる。
FHTユニット20は1つのPNローディングsEにつき1回演算し、一方事
前アダマール・プロセッサ22はその演算を1つの部分PNローディングsEに
つきN回反復することが認められるであろう。部分PNローディングsEの数は
2m-Qであり、そこにおいてQは、事前アダマール・プロセッサ22により実行
される演算の数とFHTユニット20により実行される演算の数との間を均衡さ
せるよう選択される。
さらに、FHTユニット20により実行される高速アダマール変換は一連の加
算演算のみを実行することが認められるであろう。その結果、本発明のパイロッ
ト捕捉ユニットは、加算演算のみを実行する(XOR−ANDユニット36はX
OR−AND演算のみを実行しかつスカラー乗算器34は符号の変更のみを生成
するので、実数乗算はない)。加算演算の数は比較的低いので、本発明のパイロ
ット捕捉ユニットは、従来技術におけるより速くパイロット同期化演算を実行す
る。まさにどの位速いかはQの選択に依存する。
例えば、受信された信号R[t]においてN=640サンプルであり、PN発
生器の長さmは15であり、分割値Qは12であり得る。
比較的速い捕捉は特に、セルラー電話方式のようなCDMAシステムにとって
特に有効であり、そこにおいて初期同期はできるだけ迅速に獲得されることが必
要である。
上記式6で与えられるmetrics[s]のための式は、受信されたデータ
R[t]に周波数ドリフトが無い場合のみ有効であることが認められるであろう。
しかしながら、これはまれなケースである。付録Bで説明されるように、ベース
バンドに周波数を下げる変換処理が理想的でなく、幾らかの残留周波数ドリフト
が(典型的には送信機と受信機との間のクロック速度の不整合に起因して)常に
存在する。
1つの可能性のある解法は、全ての有り得る周波数ドリフトについて数え上げ
かつ各そのような仮定に対してドリフトを受信されたデータから排除する方法で
ある。次いで、上記提示された方法は、変換されたデータに適用され得る。別の
可能性は、周波数ドリフトに対して無感応である距離を利用する方法である。1
つのそのような距離は、以下でQPSK信号に対して式11により与えられる多
重差分距離(multi−differential metric)である(B
PSK信号に対する距離は付録Dで与えられる。)。
ここで、
そして、差分(differntials)の数Lは所定の小さい数である。
単純化のため、Lはm以下であるが、しかし他の値も有り得る。
付録Bにおいて導かれるように、多重差分距離は、非周波数ドリフト距離の要
領と類似の要領で決定され、したがって、最良の多重差分距離と関連したPNロ
ーディングを決定するため、図2のパイロット捕捉ユニットを利用することがで
きる。しかしながら、この多重差分の実施形態に対しては、図2の事前アダマー
ル・プロセッサ22は図5に従って動作され、その図5をここで参照する。
図4と似て、図5は、1つの部分PNローディングsEについての事前アダマ
ール・プロセッサ22の動作を図示する。最初(ステップ70)に、事前アダマ
ール・プロセッサ22はアダマール・ベクトルuレジスタ30をゼロにする。レ
ジスタ30の準備に続いて、事前アダマール・プロセッサ22は、lの有り得る
値に対してループ72を始める。lの各値に対して、事前アダマール・プロセッ
サ22は、式11によりl番目の入力データ・ローデイングR^l(注:以降^
は前の記号、(ここではR)の上にある記号を表す)を発生する(ステップ74)
。事前アダマール・プロセッサ22はまた、局部PN発生器19のl番目のロー
ディングhlを発生し(ステップ76)、それを局部PN発生器19にロードする(
ステップ78)。l番目のローディングhlは次式により定義される。
を示す。
次いで、事前アダマール・プロセッサ22は、次の例外を伴って、先の実施形
態におけるようにループ80でuレジスタの値を決定する。
i)局部PN発生器19はhではなくl番目のローディングhlをロードされ
、そして
ii)入力データ列Rl^が先の入力データ列Rに取って代わる。
特に、アダマール・ベクトルuレジスタ30は更新され(ステップ82)、その
後局部PN発生器19がステップされる。
双方のループ72および80が終了された後に、アダマール・ベクトルuレジ
スタ30に記憶されているベクトルuはFHTユニット20に与えられる(ステ
ップ86)。パイロット捕捉ユニットの残りの動作は前のとおりである。事前ア
ダマール・プロセッサ22は部分ローディングsEごとにその動作を反復し、局
部PNローディング選択器26は部分ローディングsEごとに最良の解を選択し
、大域PNローディング選択器28は最良の全体ローディングsを選択する。
例えば、受信された信号R[t]においてN=2560サンプルであり、PN
発生器の長さは15であり、分割値Qは12であり、差分Lの数は8であり得る
。
本発明のパイロット捕捉ユニットは、周波数ドリフトを有するまた有しないシ
ステムに対して利用することができ、唯一の相違はPN発生器の初期ローディン
グと差分または非差分入力データであることが認められるであろう。CDMAシ
ステム、他のスペクトラム拡散システム、および送信されるデータの形式(QP
SK,BPSK等)に関係なくエラー訂正コードを送信されるデータに加えるシ
ステムのような、発生されたPNコードを用いた全てのディジタル通信システム
は、通常その中に幾らかの周波数ドリフトを有し、したがって、図5の第2の実
施形態が通常適用可能であることに注目されたい。
本発明のパイロット捕捉ユニットは、以下のようにデュアル・ドエル・スキー
ム内で動作することができる。第1段(ドエル)で、図2のユニットは、ある事
前選択されたスレッショルドを超えた(周波数ドリフトの有するまたは有しない)
距離値を生成する全てのPNローディングを検出する。第2のドエルで、更なる
ユニット(図示せず)が、式4(周波数ドリフトが無い)または式5(周波数ド
リフトが有る)のいずれかにより定義された従来技術の距離を計算し、そこでは
、双方共、信号p[t]はQPSK信号を扱うため信号p*[t]により置換さ
れる。
スレッショルドは次のように決定される。ランダム・ローディングの下での距
離(データ測定値を仮定して)の帰納的分散はσ2(各距離はσ2のそれ自身の値
を有する。)により表されるとする。各ドエルで、t・σを超えている(すなわ
ち、|metrics[s]|>t・σ)という仮説のみが次の段に通される(仮
説は第2のドエルに通されるか、または仮説が首尾良い同期として選択されるか
いずれかである。)。例えば、周波数ドリフト状況において、tは、(式11の
距離を用いて)第1のドエルに対してt=4.0に、そして(式5の距離を用い
て)第2のドエルに対してt=5.5にセットされてよい。
種々の距離の帰納的分散は以下により与えられることに注目されたい。
式4により定義された距離に対して 式5により定義された距離に対して
式6により定義された距離に対して
式11により定義された距離に対して
前述したように、CDMAに対するIS−95仕様は、複素PNローディング
p0[t]=p0 I[t]+jp0 Q[t]を定義し、その複素PNローディングp0
[t]=p0 I[t]+jp0 Q[t]は2つのPN発生器により発生される。第1
のPN発生器はp0 I[t]を発生する。第2のPN発生器はp0 Q[t]を発生す
る。双方のPN発生器は、送信の始めに初期化される。
PN列の周期を215−1から215まで増大するため、かつ0と1との数をこれ
らの列の中で均衡させるため、次の非線形機構を採用する。パターン0,0,0
,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,1が第1の列において検出さ
れるときは常に、追加の0ビットが双方の列の出力に挿入される。しかしながら
、本発明は、この非線形性の存在するところで崩壊し(collapse)ない
で、代わりに僅かに質が低下する。
本発明は、前述したことに限定されず、本発明の範囲内に入る全ての多数の変
更が存在することが認められるであろう。例えば、本発明はCDMAシステムに
関して記載されたが、本発明は他のディジタル通信システムにおいて実行するこ
とができる。特に、本発明は、パイロット信号と関連するか否かに関係なく、周
波数ドリフトが存在する場合における全てのコード同期化の実行を包含する。
ここで、本発明の概念を利用するエラー訂正コードでもって符号化されたメッ
セージのための復号器を図示する図6、図7および図8を参照する。この実施形
態にとって、sはメッセージであり、p[t]は送信されるべき列である、(長
さmの)メッセージsの符号化されたバージョンであるとする。再度、受信され
かつサンプリングされた信号はR[t]である。
メッセージsを符号化するため、列(コラム)gtを有する発生マトリックス
Gを用いる。ここで、
G=[gT 1…gT t…]
値ctはメッセージsと(長さmの)t番目の発生ベクトルgtとの関数であり
、列p[t]は以下のように値ctから生成される。
ct=<s,g>
したがって、送信されるべき列p[t]は異なる要素から形成されるにも拘わ
らず、送信されるべき列p[t]は先の実施形態(式6および式9を参照)にお
けるのと同じ構造を有する。
最大にされるべき距離は、周波数ドリフトに無感応でなければならない。BP
SK変調に対して、距離は次のとおりである。
ここで、付録Dにおけるように、
付録Dにおけるように、l≦mであると仮定し、次式を得る。
ここで、η[t]は雑音項の寄与を表す。ここで、BPSK変調に対しては、
次式のとおりである。
Re{p0[t](p0[t−l])*}=p0[t]p0[t−l]
および したがって、
図6は、エラー訂正コードでもって符号化されたデータのための本発明の復号
器を図示する。その復号器はパイロット捕捉ユニットのそれと類似の構造を有し
、したがって類似の構成要素は類似の参照番号を有する。
復号器は、FHTユニット20、90を付された事前アダマール・プロセッサ
、有り得る部分sE発生器24、局部PNローディング選択器26と類似して動
作
する局部メッセージ選択器100、および大域PNローディング選択器28と類
似して動作する大域メッセージ選択器102を備える。
先の実施形態のパイロット捕捉ユニットの事前アダマール・プロセッサと類似
して、事前アダマール・プロセッサ90は、受信されたデータR[t]を仮定す
ると、現在の有り得る部分メッセージsEを共通に有する全てのメッセージsに
対してアダマール入力ベクトルuを生成する。
FHTユニット20は、アダマール入力信号uについて高速アダマール変換を
実行し、それらから、現在の有り得る部分メッセージsEを共通に有する全ての
メッセージsに対するベクトルmetrics[s]を生成する。局部メッセー
ジ選択器100は、|metrics[s]|の最大成分と関連したメッセージ
slを選択する。処理は、全ての有り得る部分メッセージsEに対して反復され、
大域メッセージ選択器102は、局部メッセージ選択器により生成されたメッセ
ージSlの間から|metrics[s]|の最大値を有する検出されたメッセ
ージsを選択する。
図7は、事前アダマール・プロセッサがアダマール・ベクトルuレジスタ30
、加算器32、スカラー乗算器34およびXOR−ANDユニット36を備える
点で図3の事前アダマール・プロセッサ22に類似する事前アダマール・プロセ
ッサ90を図示する。しかしながら、事前アダマール・プロセッサ90は、事前
アダマール・プロセッサ22の局部PN発生器19の代わりに発生マトリックス
Gの発生ベクトルを記憶する記憶ユニット104およびXORユニット106を
備える。記憶ユニット104およびXORユニット106は一緒でそれぞれgI t ,l
およびgE t,lと付された内部および外部ベクトルを生成し、その内部および外
部ベクトルgI t,lおよびgE t,lをアダマール・ベクトルuレジスタ30およびX
OR−ANDユニット36は要求する。
特に、XORユニット106は、記憶ユニット104に記憶されている2つの
ベクトルgtおよびgt-lから組合わせ発生ベクトルgt-lを発生する。ベクトル
gt-lはベクトルgtからl離れたベクトルであり、lは以下で定義されるとおり
である。
先の実施形態におけるように、組合わせ発生ベクトルgt,lは内部ベクトルgI t,l
と外部ベクトルgE t,lとに分割され、内部ベクトルgt,lは組合わせベクトル
gt,lのQ個の成分を含み、外部ベクトルgE t,lは組合わせベクトルgt,lの(m
−Q)個の成分を含む。XOR−ANDユニット36は、式10において前述し
たように、外部ベクトルgE t,lを有り得る部分メッセージsEと組み合わせ、そ
してスカラー乗算器34は、上記で定義されたように、その結果を、シフトされ
た受信されたデータRl[t]と組み合わせる。
先の実施形態におけるように、内部ベクトルgI t,lはアダマール・ベクトルu
レジスタ30内のアドレスを定義するため利用される。これは、42を付された
アドレスを指す矢印40により示されている。事前アダマール・プロセッサ90
は、アドレス42に記憶されている値を取り去り、その値を加算器32に与える
。
図8は、事前アダマール・プロセッサ90により実行される動作を図示する。
その動作は、PN発生器についての動作が発生マトリックスGについての動作と
置換される点を除いて図5に示される動作と類似している。特に、事前アダマー
ル・プロセッサ90は、アダマール・ベクトルuレジスタ30をゼロにする(ス
テップ70)ことにより始める。アダマール・ベクトルuレジスタ30の準備に
続いて、事前アダマール・プロセッサ90は、lの有り得る値に対してループ7
2を始める。lの各値に対して、事前アダマール・プロセッサ90は、l番目の
入力データ・ローディングRl^を発生し(ステップ74)、lの現在の値を用い
て組み合わされた発生ベクトルgt,lを発生する(ステップ110)。
組み合わされた発生ベクトルgt,lが与えられたとすると、事前アダマール・
プロセッサ90は、前述したようにループ80においてアダマール・ベクトルu
レジスタ30の値を決定し、アダマール・ベクトルuレジスタ30を更新する。
双方のループ72および80が終了された後、アダマール・ベクトルuレジ
スタ30に記憶されているベクトルuは、FHTユニット20に与えられる(ス
テップ86)。
本発明は、特に上記で示されかつ記載されたものに限定されないことが当業者
には認められるであろう。むしろ、本発明の範囲は、付録の後に続く請求の範囲
によってのみ規定されるものである。
付録A
全ての送信される信号はQPSK変調されると仮定し、ベースバンドに周波数
を下げる変換を行い、整合されたフィルタリングを行いかつサンプリングした後
の受信された複素CDMA信号は、R[t](t=…,−2,−1,0,1,2
…)により表されるとする。R[t]は以下の成分から成る。
1.基地局により送信されるパイロット信号
2.基地局により送信されるユーザ・データ信号
3.熱雑音および隣接基地局により送信される信号を含む干渉項
初期同期を獲得する目的のため、我々はパイロット信号pilot[t]のみ
に関心があり、そのパイロット信号pilot[t]は次式により表すことがで
きる。
ここで、p0[t]は同相PN列p0 I[t]と1/4位相(quaterna
ry)PN列p0 Q[t]とから成る複素PN列であり(p0[t]=p0 I[t]ィンガの数であり、ω0はベースバンドに周波数を下げる変換後の残留周波数ド
リフトを表す。ここで、最も有意のフィンガ(最大αlを有するもの)のみを考
え、他の全てのフィンガおよびユーザ・データ信号(上記成分2)および他の干
渉(上記成分3)の寄与をn[t]により表す。したがって、R[t]は次式に
より表される。
n[t]は、分散σ2を有するゼロ平均の白色雑音項であると仮定する。
問題は、ある測定値記録R[t](t=1,2,…,N)を仮定すれば双方のP
N列(すなわち、PN発生器の現在のローディング)の位相をいかに効率的に得
るかである。周波数ドリフトが無い場合、同相PNローディングを得るための距
離は次式のとおりである。
全ての有り得るPNローディングpI[t]に対して式14を効率的に計算す
るため、我々は以下のように、ブロック−コード・ソフト・デコーディング方法
を用いる。ctを、時間tでPN発生器または線形フィードバック・シフト(L
FSR)により生成された出力ビットとする。LFSR(フィボナッチ形式)は
、m個のセルと次式により与えられる遷移マトリックスとを有するとする。
したがって、a(t)=a(t-1)Mであり、そこにおいてa(t)=(a(t) 0a(t) 1
…a(t) m-1)は時間tでのシフト・レジスタの状態である。
ここで、時間t=lでのLFSRの状態がs=(s0,s1,…sm-1)により
表されるとする。データ測定値R[1],R[2],…,R[N]を仮定すれば、我
々はsを得る必要がある。
であることに注目されたい。
ここで、 ct=sMthT=sgT t≡<s,g>,
gt=h(Mt)Tおよび
h=(hm-1,hm-2,…,h0)(h0≡1)
である。gtは、hにより初期化されたとき、tクロック後におけるガロア形式
のLFSRの状態であることに注目されたい。ガロア形式のLFSRは、遷移マ
トリックスMT、すなわちa(t)=a(t-1)MTを有する。
ここで、ベクトルy=(y0,y1,…,ym-1)を仮定すれば、次のとおり定
義される。
したがって、
Aj={t:b(gt)=j}
および
とする。したがって、
そのため、
(metric(b-1(0)),…,metric(b-1(2m−1)))
=u・Hm
ここで、Hmは、次式により定義されるアダマール・マトリックスである。
アルゴリズムにおける決定的な点(ポイント)は、Hmが以下の回帰法を用いて
効率的に計算できることである。
したがって、次元2mの任意のベクトルuに対して、uが各々次元2m-1の2つ
のサブベクトルu1,u2、すなわち、u=(u1,u2)に分割される場合、次式
を得る。
式15
u・Hm=(u1Hm-1+u2Hm-1,u1Hm-1−u2Hm-1)
換言すれば、uのアダマール変換(HT)はu1,u2のHT−sから得ること
ができる。さらに、より小さい次元のHT−sの各々に関して回帰的に式15を
呼び出して、高速アダマール変換(FHT)アルゴリズムを生成することができ
る。
以下のように計算時間およびメモリ要件の双方に関してシステムを改善するこ
とができる。gtおよびsを次のように分割するとする。
gt=(gI t gE t) s=(sI sE)
ここで、gI tおよびsIは次元Qを有し、gE tおよびsEは次元m−Qを有する
(Iは内部空間を意味し、Eは外部空間を意味する。)。
したがって、
次のとおりにするとする。すなわち、
Aj={t:b(gI t)=j} j=0,1,…,2Q-1
i=b(sE)
および
したがって、
metrics[s]を効率的に計算するため、我々は、sEの全ての有り得
る値にわたり数え上げる。sEの各値に対して、我々は、最初に式16を用いて
u(i) j(但し、j=0,1,…,2Q-1)を計算し、次いで高速アダマール変換
を適用する。PNの評価されたローディングは、‖metrics[s]‖2を
最大にするs=(sI sE)のその値である。
付録B
多くの送信システムにおいて、受信されたサンプルは、未知の周波数ドリフト
の影響を受ける(すなわち、ω0はゼロでない。)。このケースに対して、提案さ
れた距離は次式のとおりである。
ここで、
単純化のため、l≦mと仮定する。式3を再度呼ぶと、次式を得る。
ここで、η[t]は雑音項の寄与を意味する。近似は、周波数ドリフトが通常
小さいlに対してω0l≪1のようにある事実に起因している。
ここで、
Re{p0[t](p0[t−l])*}
=p0 I[t]p0 I[t−l]+p0 Q[t]p0 Q[t−l]
さらに、
ここで、
次のとおりとする。
したがって、
距離は
に対して最大にされる。したがって、付録Aにおいて提示されたアルゴリズムは
、PNの初期ローディングがhの代わりにhlである点を除いて、R^l[t]に
適用することができる。我々は、このアルゴリズムを差分アルゴリズムと呼ぶ。
我々は、ここで多重差分アルゴリズムを提案し、その多重差分アルゴリズムは、
差分アルゴリズムの拡張であり、図5に関する前述のテキストに記載されている
。提案された距離は次式のとおりである。
距離は、
に対して最適化される。
gt,l=hl(MT)t
と表す。したがって、
我々はアルゴリズムを用いることにより進み、そのアルゴリズムは、我々が先
のケース(周波数ドリフトが無い)において用いたアルゴリズムに類似している。
gt,lおよびsが次のとおりに分割されるとする。
gt,l=(gI t,l gE t,l) s=(sI sE)
ここで、gI t,lおよびsIは次元Qを有し、gE t,lおよびsEは次元m−Q
を有する(Iは内部空間を意味し、Eは外部空間を意味する。)。したがって、
次のとおりにするとする。すなわち、
Aj={t:b(gI t,l)=j} j=0,1,…,2Q−1
i=b(sE)
および
したがって、
metrics[s]を効率的に計算するため、我々は、sEの全ての有り得
る値にわたり数え上げる。sEの各値に対して、我々は、最初に式20を用いて
u(i) j(但し、j=0,1,…,2Q−1)を計算し、次いで高速アダマール変
換を適用する。PNの評価されたローディングは、‖metrics[s]‖2
を最大にするs=(sI sE)のその値である。基本的には、図3は、{u(i) j
}を生成するためPN発生器10がL回(L<m)再ロードされかつ進められることを
除いて、l=1,2,…,Lに対してL列
gt,l t=1,2,…,N
を生成するためのアルゴリズムを記載する。高速アダマール変換ルーチンは、sE
の各値につき1回のみ適用されることを必要とする。(1つの差分を超えた)
多重差分システムの利点は、必要とされるデータ量がより小さいことである。
付録C
BPSK変調は、異なる距離をもたらす単一の2値列を利用する。しかしなが
ら、微分(derivation)は以下で説明されるように類似している。
周波数ドリフトが無い場合、パイロット信号は、(背景において式2として与
えられた)形式を有する。
前のように、最も有意のフィンガを考え、n[t]により他の全てのフィンガ
、ユーザ・データ信号および他の干渉の寄与を表すとする。したがって、R[t
]は式3により表される(ここに繰り返す)。
BPSK変調に対して、p[t]およびp0[t]は、実数であって複素数で
はなく、したがって、距離は式4で与えられる(ここに繰り返す)。 微分の残部は、(式14の後の)付録Aにおいて与えられたものと同一であり、
そこにおいて、この実施形態に対しては、付録AのPl[t]はp[t]により
置換される。
付録D
周波数ドリフトを有するBPSK変調に対して、距離は、次のとおり式19の
それと類似している。
ここで、付録Bにおけるように、
付録Bにおけるように、l≦mを仮定し、
を得る。
ここで、η[t]は雑音項の寄与を意味する。ここで、BPSK変調に対して
、
Re{p0[t](p0[t−l])*}=p0[t]p0[t−l]
および
ここで、zlは式18により定義される。
距離は、
に対して最大にされる。
微分の残部は、(式18の後の)付録Aにおいて与えられたものと同一であり、
そこにおいて、この実施形態に対して、付録Bのpl[t]はp[t]により置
換される。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M
W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM
,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E
S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID
,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M
G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT
,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,
TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,Y
U,ZW
(72)発明者 バーシュテイン,デイヴィッド
イスラエル国62192 テル・アヴィヴ,レ
メズ・ストリート 23
(72)発明者 シャマイ(シッツ),シュロモ
イスラエル国69481 テル・アヴィヴ,コ
ツォス・ストリート 17