【発明の詳細な説明】
義歯接着組成物
発明の背景
通常の取り外し可能な義歯、歯板などは適当なプレート又は床に据え付けられ
た歯からなる。義歯接着剤又は安定化材は義歯と歯茎又は組織の間のクッション
又はガスケットを与えるため、及び義歯と歯茎又は組織の間の隙間を埋めるため
に使用される。
義歯安定化又は接着組成物は幾つかの欠陥を示す。美感的欠陥としては、挿入
中及び装着期間を通して歯板の下から接着剤がしみだし、口及び義歯からの残留
接着剤の除去の面倒さ及び困難性がある。また、食べ物が装着者の義歯と口腔の
間に捕らまえられるようになりうる。美感的に満足でき、使用に容易な改良され
た保持能力を有する義歯接着組成物の開発のために、数年に亙りかなりの努力が
なされてきた。義歯接着製品と通常関連する欠陥を減ずるための試みにおいて、
合成及び天然両ポリマー及びガムが単独で、組み合わせて、及び種々の接着剤及
び他の物質と組み合わせて使用されている。
低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマー及びその塩は義歯接着組
成物の使用について当該技術で公知である。このような開示としては、Germanら
の米国特許第3,003,988号(1961年10月10日発行);Kumarらの米国特許第4,980,39
1号(1990年12月25日発行);Holevaらの米国特許第5,073,604号(1991年12月17日発
行)及びClarkeの米国特許第5,525,652号(1996年6月11日発行)がある。重ね義歯
接着組成物についても、例えばHomanらの米国特許第4,880,702号(1989年11月14
日発行)及びAltwirthのヨーロッパ特許出願第0,353,375号(1990年2月7日公開)
に開示されている。
本発明によれば、第二鉄、および低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コ
ポリマーの2価及び/又は1価金属の部分塩、および場合により少なくとも1つ
の非接着性自立層を含有する義歯接着組成物は、慣用の義歯接着剤に対して、十
分に長い期間に亙り優れた義歯安定性及び持続性を与えることが見出された。特
に、該組成物は、慣用の義歯接着剤と同じか又はより良好な義歯保持性を維持し
ながら、唾液洗落し(salivary washout)への高い抵抗性を示す。この付加され
た唾液洗落し抵抗性はより長い義歯保持性及び安定性となる。
発明の要約
本発明は、低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマーの部分塩を含
有し、その際部分塩は約0.1%〜約10%の第二鉄カチオンから本質的になる
カチオン塩官能体;および約0.1%〜約75%の亜鉛、カルシウム、マグネシ
ウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、及びそれらの混合物からなる群か
ら選ばれる2価及び/又は1価金属カチオンを含有する、義歯接着組成物に関す
る。これらの組成物は、場合により少なくとも1種の非接着性自立層を含有する
ことができる。
発明の詳細な記載
本発明の義歯接着組成物は、第二鉄カチオンから本質的になるカチオン塩官能
体を有する低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸コポリマーの部分塩、およ
び1種以上の2価及び/又は1価金属カチオンを含有する。該接着組成物は義歯
上に撒き散らされ、湿らされ、ついで口腔中に挿入される粉末の形態であること
ができる。組成物は種々の慣用のデリバリービヒクルと組み合わせ、義歯に適用
し且つ口腔に挿入される液体又はペーストを形成することができる。
また、組成物は非接着性自立層を含有することができる。これらの接着組成物
は完全に湿らせ、義歯に塗付される。接着剤の非接着性自立層への付着は、その
除去において義歯から剥ぎ取られる組成物を与える。本発明の必須及び任意成分
の詳細な記述は以下に与えられる。低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸部分塩ポリマー
低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸(AVE/MA)コポリマーは下記繰り返し
構造単位から本質的になる:式中、RはC1からC4のアルキルラジカルを表わし、nはコポリマーの分子中
の構造単位の繰り返しの発生数を表わす1より大きな整数である。コポリマーの
特徴として、nは、25℃でメチルエチルケトン中で測定されたコポリマーの比
粘度が1.2より大きくなるように、十分大きい。
低級アルキルビニルエーテルマレイン酸ポリマーは、低級アルキルビニルエー
テルモノマー、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ジビニル
エーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどと無水マレ
イン酸とを共重合体させて、容易に酸コポリマーに加水分解される、対応する低
級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーを生成させることにより
、容易に得られる。一般に、得られるコポリマーは1:1コポリマーである。無
水物及び酸形態の両方が商業的供給者から入手可能である。例えば、ISP Techno
logies Inc.(ISP)は高分子遊離酸形態(I)及び対応する無水物形態を、それぞれ
GANTREZ S系列及びGANTREZ AN系列としてGANTREZの商品名で提供する。前者の酸
系列ではGANTREZ S-97が特に適しており、後者の無水物系列ではGANTREZ AN-149
(比粘度1.5から2.5)、GANTREZ AN-169(比粘度2.6から3.5)及びGANTREZ AN-179
(比粘度3.5から5.0)コポリマーが特に適している。これらのコポリマーは、こ
こにその全体が参考として合体されるProsiseの米国特許第5,395,867号(1995年
3月7日発行)に記載されている。無水物コポリマーを水に溶解させると、無水
物結合が分裂して高い極性の高分子遊離酸(I)が形成される。従って、酸形態よ
りも比較的高価でない無水物形態を、酸のための便利で且つ安価な先駆体として
使用することかできる。無水物と酸の加水分解比率を高める為に、昇温を有利に
採用することができる。
本発明において有用な低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸(“AVE/MA”)
ポリマーは部分的コポリマー塩である。このような塩はカチオン塩官能体を含有
する。カチオン塩官能体は第二鉄、および2価カチオン、1価カチオン及びそれ
らの混合物からなる群から選ばれる1種以上の金属カチオンを含有する。2価金
属カチオンとしては、亜鉛、ストロンチウム(但し亜鉛と組み合わせて使用され
ない)カルシウム、マグネシウム、及びそれらの混合物がある。1価金属カチオ
ンとしては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、及びそれらの混合物がある
。低級ビニルエーテル−マレイン酸ポリマーの部分塩は、ここにその全体が参考
として合体されるHolevaらの米国特許第5,073,604号(1991年12月17日発行)Pelah
らの米国特許第5,204,414号(1993年4月20日発行);及びClarkeの米国特許第5,5
25,652号(1996年6月11日発行)に記載されている。
コポリマー塩は混合又は未混合、又はその両方であることができる。ここで使
用される用語「未混合ポリマー塩」とは、カチオンが同一ポリマー上で、他のエ
ステル官能基又は非特定カチオンと未混合であり、残りのカルボキシル基が未反
応である低級アルキルビニルエーテル−マレイン酸ポリマーの塩をいう。
ここで使用される用語「混合ポリマー塩」とは、種々のカチオンが同一ポリマ
ー上で互いに混合されるか、又は他の官能基と混合される低級アルキルビニルエ
ーテル−マレイン酸ポリマーの塩をいう。
第二鉄カチオンを含有する部分コポリマー塩は、AVE/M無水物/酸コポリマーと
、硫酸第二鉄5水和物のような塩の形態の第二鉄化合物との相互反応により製造
することができる。2価及び/又は1価金属カチオンを含有する部分コポリマー
塩は、水性媒体中でAVE/M無水物/酸コポリマーと、例えば水酸化物、アセテート
、ハライド、ラクテートなどのような塩基又は塩の形態の金属カチオン(例えば
亜鉛、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム又は
アンモニウム)化合物との相互反応により製造することができる。好ましい態様
においては、亜鉛の酸化物及びカルシウムの水酸化物が使用される。水酸化亜鉛
は商業的に入手できないから、反応体としてのその使用は容易であり、特に水に
実質的に不溶であるが粒状表面で水酸化亜鉛に水和される粒状酸化亜鉛の水
性スラリーを使用することにより、より商業的に達成される。
得られるAVE/MAコポリマーの部分塩中の金属カチオンの合計は、反応した初期
のカルボキシル基の約0.1%〜約75%の範囲の2価及び/又は1価金属カチ
オンを中和させるのに十分であるべきである。得られる部分コポリマー塩は約5
%〜約50%の範囲で遊離酸を含有する。
好ましい部分コポリマー塩においては、カチオン塩官能体は、反応した初期カ
ルボキシル基の約0.05%〜約10%、好ましくは約0.05%〜約5%、最
も好ましくは約0.1%〜約3%の第二鉄;及び反応した初期カルボキシル基の
約10%〜約65%、好ましくは約5%〜約45%、最も好ましくは約10%〜
約30%の亜鉛;及び反応した全初期カルボキシル基の約10%〜約75%、好
ましくは約25%〜約60%、最も好ましくは約40%〜約60%のカルシウム
を含有する。また、反応した全初期カルボキシル基の約1%〜約20%、好まし
くは約1%〜約15%、最も好ましくは約1%〜約10%のナトリウム;及び反
応した全初期カルボキシル基の約10%〜約75%、好ましくは約25%〜約6
0%、最も好ましくは約40%〜約60%のストロンチウムが好ましい。
毒性、刺激性又は汚染性副生物を形成するカチオンは避けるべきであるか、ま
たは高分子塩最終生成物からこのような副生物を除去及び無くすことを保証する
ために与えられる特別の用心及び処理をすべきである。使用される特定の化合物
は、実質的に純粋な、実質的に脱白(off-white)のコポリマー塩最終生成物の取
得を本質的に保証するために、実質的に純粋であるべきである。部分塩コポリマ
ーは接着組成物の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%
の量で、本発明組成物に使用される。還元剤
本発明は還元剤の使用を包含することができる。還元剤は、存在する第二鉄/
2価及び/又は1価金属カチオン部分コポリマー塩を義歯に塗布した後、口腔か
ら義歯を除去することを助ける。理論に拘束されないが、還元剤は第二鉄を第一
鉄に還元し、従って部分塩コポリマーの接着性を減少させ、義歯の除去を促進す
るものと思われる。ここでの使用に好ましい還元剤はアスコルビン酸及びその水
溶性塩である。
還元剤はキレート剤と組み合わせて使用することができる。好ましいキレート
剤としては、シトレート、タータレート、ラクテートなどがある。還元剤及び/
又はキレート剤は口腔投与に安全である(即ち、非毒性であり且つヒトの使用に
承認されている)当該技術で知られているキャリヤーにより組成物に配与されう
る。このようなキャリヤーは界面活性剤及び溶剤を包含する。
還元剤及び/又はキレート剤は安全且つ有効量で使用される。ここで使用され
る「安全且つ有効量」とは、使用者に対して毒性、口組織の損傷、及び義歯材料
の変化がなく、口腔中に保持された義歯を開放することを助けるのに十分な量を
意味する。従って、義歯装着者は第二鉄/金属カチオン部分コポリマー塩接着組
成物を義歯に塗布し、口腔内に挿入する。除去を望むときは、装着者は還元剤及
び/又はキレート剤、および保持されている義歯の解放を助ける適当な溶剤を口
の中へシュッと落とす。非接着性自立層
本発明の義歯接着組成物は少なくとも1つの非接着性自立層を含有する。非接
着性自立層は、水及び/又は唾液の存在において、強度を維持し且つ接着組成物
へ結合性を与えるための能力により特徴づけられる。非接着性自立層は、ポリエ
ステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、ポリエチレンオキシド、セルロ
ースアセテート、セルロース誘導体、布、繊維状羊毛、紙、プラスチック、皮、
微結晶性ワックス、合成繊維、天然繊維及びそれらの混合物などのような物質を
包含することができる。セルロース誘導体、ポリエステル、ポリプロピレン、ナ
イロン、レーヨン、布、紙、微結晶性ワックス、及びそれらの混合物が好ましい
。ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、布及び紙が最も好まし
い。
非接着性自立層は、本発明の接着組成物に強度及び/又は結合性を与えるため
に適するいかなる物理的形態であることができる。このような物理的形態として
は、不織の、織られた、連続の、チョップされたもの、及びそれらの組み合わせ
を包含する。また、非接着性自立層は当該技術において通常知られているいかな
る方法によっても形成することかできる。このような方法としては、非ボンド、
スプレーボンド、スパンボンド、ニードルパンチ、カード、熱ボンド水絡ませ(t
hermal bonded hydroentangled)、熔融吹き込み、開口プリントボンド、ニー
ドル、湿式堆積、乾式堆積、それらの組み合わせがある。付加的接着成分
本発明の組成物は他の接着成分を含有することもできる。これらの接着成分は
、もし存在する場合は、安全且つ接着有効量で使用される。ここで使用される用
語「安全且つ接着有効量」とは、使用者への毒性、口腔組織への損傷及び義歯材
料の改変がなく、口腔の板及び隆起への義歯の接着を与えるのに充分な量を意味
する。
適当な接着組成物としはて、粘着性の塊を形成させるために湿気に曝すと膨張
し得る性質を有する水溶性親水性コロイド又はポリマーがある。このような接着
物質としては、天然ゴム、合成高分子ゴム、義歯安定化組成物に通常使用され且
つ本AVE/MAコポリマーと混和しうる接着物質、合成ポリマー、粘液接着性ポリマ
ー、親水性ポリマー、サッカライド誘導体、セルロース誘導体、及びそれらの混
合物がある。このような物質の例としては、カラヤガム、グアガム、ゼラチン、
アルギン、ナトリウムアルギネート、トラガカンス、チトサン、ポリエチレング
リコール、アクリルアミドポリマー、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポ
リアミン、ポリ4級化合物、ポリブテン、シリコーン、エチレンオキシドポリマ
ー、ポリビニルピロリドン、カチオン性ポリアクリルアミドポリマーがある。
メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体が好ましい。カ
ルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、
カラヤガム、ナトリウムアルギネート、チトサン、ポリビニルアルコール、及び
それらの混合物が最も好ましい。一般に、他の接着成分は組成物の約0重量%〜
約70重量%、好ましくは約10重量%〜約50重量%、最も好ましくは約20
重量%〜約40重量%のレベルで存在させることができる。他の成分
1種以上の毒性的に許容しうるい可塑剤を本発明の組成物中に包含させること
もできる。ここで使用される用語「毒性的に許容しうる」とは、人及び/又は下
等動物へ投与するための毒性プロフィールにおいて適する物質を記述するため
に使用される。本発明組成物に使用することのできる可塑剤としては、ジメチル
フタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート、グリセリン、ジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、Igepal、Gafac、ソルビトール、ト
リクレシルホスフェート、ジメチルセバケート、エチルグリコレート、エチルフ
タリルエチルグリコレート、o-及びp-トルエンエチルスルホンアミド、及びそれ
らの混合物がある。可塑剤は組成物の約0重量%〜約70重量%、好ましくは約
0.1重量%〜約30重量%のレベルで存在させることができる。
義歯接着組成物は義歯接着剤及び/又はバイオ接着剤としても使用することが
でき、経口又は局所投与に適する1種以上の治療活性剤を含有することができる
。ここで使用される字句「経口又は局所投与に適する」とは、口腔のような身体
の口内表面を通して吸収されるとき又は皮膚の表面に塗布されるときに、医薬的
に活性である薬剤をいう。治療活性剤は組成物の約0重量%〜約70重量%のレ
ベルで存在させることができる。
これらの組成物において有用な治療活性剤はとしては、抗菌剤、例えば、ヨー
ド、スルホンアミド、ビスビグアニド、又はフェノール性物質;抗生物質、例え
ばテトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、又はク
リンダマイシン;抗炎症剤、例えばアスピリン、アセタミノフェン、ナプロキセ
ン及びその塩、イブプロフェン、ケトロラック、フルビプロフェン、インドメタ
シン、シメチジン、オイゲノール、又はヒドロコルチゾン;歯用脱感剤、例えば
硝酸カリウム、塩化ストロンチウム又は弗化ナトリウム;美感剤、例えばリドカ
イン又はベンゾカイン;抗黴剤;芳香物質、例えば樟脳、ユーカリ油、及びアル
デヒド誘導体、例えばベンツアルデヒド;インスリン;ステロイド;及び抗潰瘍
剤がある。治療のある種の形態において、同じ供与システムにおけるこれらの薬
剤の組み合わせは最大の効果を得るために有用であると認められる。従って、例
えば抗菌剤及び抗炎症剤は組み合わせ効果を与えるために単一デリバリーシステ
ムにおいて組み合わせることができる。
他の適当な成分としては、二酸化珪素、着色剤、防腐剤、例えばメチル及びプ
ロピルパラベン;増粘剤、及びポリエチレングリコール;及びデリバリービヒク
ル、例えば液状ぺトロラタム、ペトロラタム、鉱油、及びグリセリンがある。ポ
リエチレングリコール、二酸化珪素、ペトロラタムが好ましい。着色剤、防腐剤
、増粘剤及びデリバリービヒクルは組成物の約0重量%〜約20重量%のレベル
で存在させることができる。
本発明の組成物は香味、芳香及び/又は感覚利益を与える1種以上の成分を含
有することもできる。適当な成分としては、天然又は人工甘味剤、メントール、
メチルラクテート、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、葉アルコール、
並びにクーラント 3-1-メトキシプロパン-1,2-ジオール、及びパラメタンカルボ
キシアミド剤、例えばここにその全体が参考として合体されるWatosonらの米国
特許第4,136,163号に記載のN-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミドがある。
これらの薬剤は組成物の約0重量%〜約50重量%のレベルで存在させることが
できる。組成物の調製方法
本発明の接着性コポリマーは下記の方法又はそれらの組み合わせにより製造す
ることができる。ここで使用される用語「混合物」とは、溶液、スラリー又は懸
濁液をいう。
低級アルキルビニルエーテル無水マレイン酸コポリマーは上記の商品名で商業
的供給者から得られるか、又は低級アルキルビニルエーテルモノマーと無水マレ
イン酸の共重合により、容易に酸コポリマーへ加水分解されうる、対応する低級
アルキルビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマーを生成させることにより得
ることができる。部分AVE/MAコポリマー塩は(ここに参考として合体される)Ho
levaの米国特許第5,073,604号(1991年12月17日発行)にも開示されている。
AVE/MAコポリマーは1種以上の2価及び/又は1価金属塩基の水性混合物又は
スラリー中で、コポリマー/塩基混合物を約45℃〜約100℃の範囲の温度に
加熱することにより加水分解及び中和することができる。部分AVE/MAコポリマー
塩と第二鉄カチオンとの反応は、第二鉄塩を加水分解及び中和されたAVE/MAコポ
リマーの部分塩に加えることにより行われる。第二鉄カチオンとの反応の完結は
粘度が増加して安定化することにより示される。代わりに、第二鉄塩は加水分解
及び中和反応の前にコポリマー/金属塩基混合物とブレンドすることができ
る。
得られたスラリー又は溶液は、浅いステンレススチール乾燥トレイに移され、
60℃で、反応媒体(水)を蒸発し且つコポリマーから水を除去するのに十分な
時間(約18〜約24時間)、強制通気対流オーブン中に置かれる。代わりに、得
られたスラリー又は溶液はドラム乾燥することができる。
非接着性自立層を含有する組成物において、接着成分(もし存在するならば、
部分塩コポリマー及び他の接着成分)は種々の方法を用いて非接着性自立層上に
被覆することができる。これらは下記の方法を包含する:(a)非接着性自立層を
水で湿らせ、接着成分粉末を湿った層へ均一にシフトさせ、ついで該層を再度湿
らせる;(b)接着成分を水及び/又は他の溶剤に溶解させ、得られた混合物を該
層に被覆する;(c)Gantrez処理中に生成される混合物で層を被覆する;(d)層
が形成されるときに接着成分を層に混和する;及び(e)接着成分を水及び/又
は他の溶剤に溶解させ、得られた混合物を該層で湿らせ/被覆し、粉末形態の1
種以上の接着成分を湿った/被覆された層へ均一にシフトさせ、場合により混合
物及び/又は水で再度湿らせ/被覆する;(f)工程(e)の方法を数回繰り返す;
及び(g)上記(a)から(f)の方法を組み合わせる。
上記したように、接着成分は水及び/又は他の溶剤、及び層を覆っている、得
られた混合物に溶解されることができる。AVE/MAポリマー用の溶剤としては、水
及び/又はアルコール、例えばメタノール、プロパノール、イソプロパノール、
エタノール、ブタノール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサノール、及びジエ
チレングリコール;エーテル又はエーテルアルコール、例えばテトラヒドロフラ
ン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル
エーテル、ジオキサン、及びエチルエーテル;エステル、例えばメチルアセテー
ト、エチルアセテート及びsec-ブチルアセテート;アルデヒド、ケトン又はケト
ン-アルコール、例えばベンツアルデヒド、ホルムアルデヒド溶液、メチルエチ
ルケトン、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メシチルオキ
シド、及びメチルイソブチルケトン;ラクタム又はラクトン、例えばN-メチル-2
-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、及びブチロラクトン;炭
化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ミネラルスピリッ
ト、ミネラルオイル、及びガソリン;塩素化炭化水素、例えば四塩化炭素、クロ
ロベンゼン、クロロホルム、二塩化エチレン、塩化メチレン;ニトロパラフィン
、例えばニトロエタン、及びニトロメタン;メルカプタン、例えばチオフェノー
ル及び2-メルカプト-1-エタノール、及びその他のもの、例えば酢酸、ピリジン
及びジメチルホルムアルデヒドがある。
AVE/MAポリマー用の好ましい溶剤は、水、メタノール、プロパノール、イソプ
ロパノール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、ベンツアルデヒド、ホルムアル
デヒド溶液、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、N-メチル-2-ピロリ
ドン、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物であ
る。可塑剤として通常使用される化合物もAVE/MAポリマー用溶剤として使用する
ことができる。このような可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタ
レート、ジオクチルフタレート、グリセリン、ジエチレングリコール、トリェチ
レングリコール、Igepal CO-630、Gafac RE-610、ソルビトール、トリクレシル
ホスフェート、ジメチルセバケート、エチルグリコレート、エチルフタリルエチ
ルグリコレート、及びp-トルエンエチルスルホンアミドがある。
接着組成物に場合により含有されうるカルボキシメチルセルロース(CMC)
のような他の接着剤用の溶剤としては、水及び水混和性溶剤、例えばエタノール
及びアセトンの混合物がある。低濃度の溶液は40%までのアセトン及び/又は
50%までのアルコールで造ることができる。使用することができる他の溶剤と
してはエタノールアミン;エチレングリコール;グリセロール;1,2,6-ヘキサン
トリオール;モノ-、ジ-及びトリアセチン;1,5-ペンタンジオール;ポリエチレ
ングリコール(分子量600以下);プロピレングリコール;及びトリメチロール
プロパンがある。
水及び/又は他の溶剤中に接着成分を溶解させることにより接着組成物が調製
される場合、プロセスの種々の態様としては、AVE/MA接着剤を1種以上のAVE/MA
ポリマー用溶剤に溶解させる;任意接着剤を適当な溶剤に溶解させ、得られた混
合物を非接着性自立層に被覆し、ついで場合により1種以上の接着剤を被覆され
た層にシフトさせる、ことを包含する。層の被覆は、押し出し、ドクターブレー
ド、スプレー、浸漬などの当該技術において通常知られている技術により達成す
ることができる。
上記手段の1つにより接着成分が層に堆積された後、層は乾燥される。ついで
、義歯接着組成物は、リングローラー又はマイクロクラッカー又は他の適当な手
段を通過させることにより機械的に柔軟化される。ついで、組成物は液圧プレス
又はフラットロール又は他の適当な手段で滑らかにプレスされる。ついで、組成
物は義歯の形にダイカットされる。これらの形は組成物の義歯への適用を容易に
することができる。
下記の実施例は本発明の範囲内の好ましい態様をさらに記載し且つ実証するも
のである。これらの実施例は単に説明の目的にのみ与えられているものであり、
本発明を限定するものと解すべきではなく、本発明の精神及び範囲を逸脱するこ
となく、その多くの改変が可能である。
実施例 I
1484.95gの純水,USP,を含有する、内蔵粘度計を有する高トルクミキ
サーを備えた2リットル樹脂製反応ケテル中に、室温で0.048gの硫酸第二
鉄5水和物(Fe2(SO4)3・5H2O)を加える。パドル攪拌具により300rpmで約5
分間混合する。15.00gのGantrez AN169から造られたメチルビニルエーテ
ル/マレイン酸(MVE/MA)コポリマーの65%中和されたカルシウム(47
.5%)及び亜鉛(17.5%)混合部分塩を、塩が完全に水和される前に塩が分
散されるような適当な速度で、ゆっくり加える。温度調節された水浴により樹脂
製反応ケテルを90℃に加熱し、塊が見えなくなるまで(1〜3時間)、85℃〜
95℃の間の反応温度及び300rpmの一定攪拌速度を維持する。反応バッチは
水不溶性ポリマーの均一な分散液である。
得られた溶液を浅いステンレススチール製乾燥トレイへ移す。反応媒体(水)
を蒸発させ且つポリマーから水を除去させるのに十分な時間(約18〜約24時
間)、60℃で強制通風機械的対流オーブン中で乾燥させる。乾燥後、粘稠なコ
ポリマーは乾燥トレイから容易に剥離される脆いフレークを形成する。平均粒度
及び粒度分布を定めるために適当なスクリーンを用いて、スピードローターミル
のような粉砕装置中で該フレークを微粉末に粉砕する。0.12mm又は0.0
8mmのスクリーンが好ましい。得られた接着性コポリマーは、MVE/MAコポリ
マーの60%中和[カルシウム(47.5%)、亜鉛(17.5%)混合]及び第二鉄(1.4%)部分
塩である。
少なくとも1種の非接着性自立層を有する組成物において、58インチ×20
インチの非接着性自立層を水で湿らせる。150gの接着性成分(90gのCaZn
/Fe部分塩MVE/MAコポリマー及び60gのカルボキシメチルセルロース)を層上
に均一に被覆し、該層を水で再度湿らせる。層を乾燥させる。義歯接着組成物を
リングローラーにより機械的に柔らかくし、ついで液圧プレス上で滑らかにする
。組成物を義歯型ウエハにカットする。該ウエハを湿らせ、義歯に塗付する。こ
のウエハは、義歯から剥ぎ取られ、その場で義歯を保持し、にじみ出ず、そして
食物が義歯と歯茎の間に突き剌さるのを防止することを助ける粘稠なシールを形
成する。
本発明で有用な実施例Iの変形としては下記のものがある:
Fe2(SO4)3 ・5H2O(g) Fe(III) %
A 0.024 0.2
B 0.048 0.4
C 0.072 0.6
D 0.096 0.8
E 0.120 1.0
実施例 II
1429.50gの純水,USP,を含有する、内蔵粘度計を有する高トルクミキ
サーを備えた2リットル樹脂製反応ケテル中に、室温で0.60gの硫酸第二鉄
5水和物(Fe2(SO4)3・5H2O)を加える。パドル攪拌具により300rpmで約5分
間混合する。固形物がよく分散されるまで、12.30gの水酸化カルシウムを
ゆっくり加える。ついで、57.60gのMVE/MAコポリマー又はGantrez
AN169を、固形物が良く分散されるまで、ゆっくりと加える。温度調節された水
浴により樹脂製反応ケテルを90℃に加熱し、85℃〜95℃の間の反応温度及
び300rpmの一定攪拌速度を維持する。反応バッチの透明度及びpHの安定値
(典型的には、1:10(v/v)希釈のアリコットで測定されたpHほぼ4.9)
への増加は加水分解及び中和反応の完結を示す。
実施例Iに記載された乾燥、硬化及び粉砕手法を繰り返す。得られた接着性コ
ポリマーはMVE/MAコポリマーの45%中和[Ca(45%)]及びFe(III)(1.0%)部分塩であ
る。非接着性自立層を製造する手法が、実施例Iに記載のように繰り返される。
実施例III−VII 実施例番号 接着性成分 非接着性自立層
III 47.5Ca/17.5Zn/0.4Fe MVE/MA(b)+CMC(a) 不織ポリエステル
IV 47.5Ca/17.5Zn/0.4Fe MVE/MA(b)+CMC(a) ポリプロピレン
V 45Ca/1.0Fe7.5Zn MVE/MA(c)+CMC(a) 不織レーヨン
VI 27.5Ca/20.0Sr/17.5Zn/0.5Fe MVE/MA/PEG(d)
+CMC(a) 布 VII 45Ca/1.0Fe MVE/MA/PEG(e)+CMC(a) 紙
(a)カルボキシメチルセルロース
(b)47.5%のカルシウム、17.5%の亜鉛及び0.4%の第二鉄で中和されたメチルビ
ニルエーテル−マレイン酸部分塩。
(c)45%のカルシウム及び1.0の第二鉄で中和されたメチルビニルエーテル−マ
レイン酸部分塩。
(d)47.5%のカルシウム、20.0%のストロンチウム、17.5%の亜鉛及び0.5%の第
二鉄で中和されたメチルビニルエーテル−マレイン酸部分塩。
実施例III−VIIの接着性成分は0.1〜15gの二酸化珪素を含有することも
できる。
実施例III−VIIは次のように調製される。58インチ×20インチの非接着性
自立層を水で湿らせる。150gの接着性成分(90gのMVE/MA/PEG部分塩コポ
リマー及び60gのCMC)を層上に均一に被覆し、該層を水で再度湿らせる。
層を乾燥させる。義歯接着組成物をリングローラーにより機械的に柔らかくし、
ついで液圧プレス上で滑らかにする。組成物を義歯型ウエハにカットする。該ウ
エハを湿らせ、義歯に塗付する。このウエハは、義歯から剥ぎ取られ、その場で
義歯を保持し、にじみ出ず、そして食物が義歯と歯茎の間に突き刺さるのを防止
することを助ける粘稠なシールを形成する。
実施例VIII
粉末形態の義歯安定化組成物は下記成分を一緒にブレンドすることにより製造
することができる:
w/w%
A カルボキシメチルセルロースナトリウム 58.9
MVE/MAコポリマーの47.5%Ca,17.5%Zn,0.4%Fe(III)部分塩 40.0
二酸化珪素,コロイド状 1.0
ペパーミント香味油 0.1
B カラヤガム 40.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 28.9
MVE/MAコポリマーの47.5%Ca,17.5%Zn,0.4%Fe(III)
部分塩 30.0
二酸化珪素,コロイド状 1.0
ペパーミント香味油 0.1
C カルボキシメチルセルロースナトリウム 50.0
MVE/MAコポリマーの45%Ca,1.0%Fe(III)
部分塩 48.9
二酸化珪素,コロイド状 1.0
ペパーミント香味油 0.1
実施例IX
クリーム形態の義歯安定化組成物は下記成分を一緒にブレンドすることにより
製造することができる:
A w/w% B w/w% C w/w%
白鉱油 24.82 24.82 24.82
ペトロラタム 19.02 19.02 19.08
カルボキシメチルセルロースナトリウム 22.00 32.00 12.00
二酸化珪素,コロイド状 1.10 1.10 1.10
着色剤(油溶性赤色分散液) 0.06 0.06
MVE/MAコポリマーの47.5%Ca,
17.5%Zn,0.4%Fe(III)部分塩 33 ― ―
MVE/MAコポリマーの27.5%Ca,20.0%Sr
17.5Zn,0.5%Fe(III)部分塩 ― 23 ―
MVE/MAコポリマーの45%Ca,1.0%Fe(III)
部分塩 ― ― 43
香味油を0.1%〜0.5%(w/w)のレベルで組成物中に混入することもできる
。
実施例X
液状形態の義歯安定化組成物は下記成分を一緒にブレンドすることにより製造
することができる:
A w/w% B w/w% C w/w%
白鉱油 48.82 50.82 46.82
ペトロラタム 5.02 3.02 7.02
カルボキシメチルセルロースナトリウム 18.00 26.00 8.00
二酸化珪素,コロイド状 1.10 1.10 1.10
着色剤(油溶性赤色分散液) 0.06 0.06
MVE/MAコポリマーの47.5%Ca,
17.5%Zn,0.4%Fe(III)部分塩 27 ― ―
MVE/MAコポリマーの27.5%Ca,
20.0%Sr,17.5%Zn,0.5%Fe(III)部分塩 ― 19 ―
MVE/MAコポリマーの45%Ca,
1.0%Fe(III)部分塩 ― ― 37
香味油を0.1%〜0.5%(w/w)のレベルで組成物中に混入することもでき
る。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),CA,CN,CZ,H
U,JP,PL,RU,SK
(72)発明者 ギルデイ−ウィバー,キンバリー アン
アメリカ合衆国オハイオ州、シンシナチ、
リバー、ロード 3682