JP2001514743A - 細胞表面タンパク質に対するワクチンの製造方法 - Google Patents

細胞表面タンパク質に対するワクチンの製造方法

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JP2001514743A JP53675398A JP53675398A JP2001514743A JP 2001514743 A JP2001514743 A JP 2001514743A JP 53675398 A JP53675398 A JP 53675398A JP 53675398 A JP53675398 A JP 53675398A JP 2001514743 A JP2001514743 A JP 2001514743A
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Abstract

(57)【要約】 ウイルス、バクテリア、又は細胞の表面に露出したタンパク質のレパートリーを同定する方法、及びそのタンパク質に対するワクチンの調製。本発明方法は、膜表面のタンパク質を方向性のある(vectorially)標識をし;標識した膜表面タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって単離し;単離した膜表面タンパク質の配列を決定することを含む。更に本発明は、ウイルス、バクテリア、又は細胞に対するワクチンの製造方法、不妊の検出方法、避妊薬の製造方法を提供すると共に、本発明方法によって製造されるワクチン及び避妊薬をも提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 細胞表面タンパク質に対するワクチンの製造方法 政府による支援 本発明の一部は国立衛生研究所の認可第NIH HD29099号及びP30 −28934号の支援を受けたものである。本発明において政府は一定の権利を 有する。 発明の背景 発明の属する分野 本発明は、一般に、細胞表面に露出したタンパク質のレパートリーを同定する 方法、及びそのタンパク質に対するワクチンの調製に関する。より詳細には、本 発明は、ヒト精虫(精子)の表面に存在するタンパク質のレパートリーを同定す る方法、その方法によって同定した該タンパク質、及び該タンパク質から得た避 妊ワクチンの製造に関する。 発明の背景の説明 生体はその表面を通じて外界と相互作用する。免疫系において、抗体が仲介す る免疫応答やT細胞が仲介する免疫応答は、細胞及びウィルス表面に存在するエ ピトープに対して起こる。生体の表面分子を同定し、単離し、遺伝子的に操作す る方法は、ワクチン開発の手段を提供する。なぜなら、免疫応答は細胞/ウィル ス表面を指向するからである。 哺乳類の精子は高度に分化した細胞である。精子は、空間的及び時間的に組織 化されて一つの細胞連合体に到る複雑な変化系の生成物であって、この変化系は 精上皮サイクルとして知られている(1)。精子形成の過程で、丸型の未分化精 原細胞が精母細胞及び精細胞を経てかなり非対称な運動型精子へと転換するが、 ヒトの場合、精細胞の分化だけで12ステップあることが確認されている(2) 。この様な多数回に亘る分化の結果、精子は多くの点で普通の細胞とは異なった ものとなる。精子の核クロマチンは、RNA合成において高度に濃縮され不活性 と なり、精子頭部の先体、外層を構成する高密度繊維及び尾部のリブ状束繊維等の 特有な細胞質成分が現れる。顕微鏡下で直ちに判明するものではないが、精子形 質膜も精子形成の過程で広汎な分化過程を経る。凍結割断試験片(4)及び、精 子膜成分分布の違いについての免疫細胞化学的研究(5)が示すように、異なる 膜ドメインが精子表面上に形成される(3)。更に精子表面は、精上皮を離れた 後でも静的ではない。すなわち、精巣上体で更に成熟し、これに続く受精能獲得 と雌性生殖管での先体反応の結果、精子成分は変性及び再分布する(6、7)。 精子が精巣から輸卵管へ進む場合、雄性及び雌性の生殖管において、精子はそ の表面を通して外界と相互作用する。最も重要なことは、精子の形質膜が卵子外 皮と接触することであるが、先体の赤道セグメント上の膜が卵子細胞膜との融合 の開始部分であると考えられている(8)。 最近、チョン・スー(Chong Xu)ら(26)によって、窒素キャビテーション 、分画遠心分離及びIEF/PAGE電気泳動によって単離したヒト精子膜小胞 (ベシクル)から64種の形質膜銀染色タンパク質が洗浄剤(detergent)によっ て抽出し得ることが報告された。しかしながら、精子表面タンパク質の分析にお ける窒素キャビテーション方法の欠点は、充分な開始原料を得るために採取した サンプルを数週間に亘ってプールする必要があることである。更に、キャビテー ション法によって得られる「膜」タンパク質が、形質膜のみに由来するものであ るかどうか不確実である(20)。 従来、ヒト精子タンパク質の研究において二次元電気泳動が実施されてきたが (18〜26)、これまで報告されたタンパク質パターン同士の整合性をとるこ とは、手続きが標準化されていないために難しい。ヒト精子表面タンパク質の全 体をカタログ化することは、入手可能なデータが(1)分解能、(2)再現性、 (3)pH範囲、(4)表面標識方法の特異性又は(5)形質膜精製工程のうち 一以上の項目において制限をうけていたため妨げられていた。 細胞表面タンパク質を分析するための従来法には上述のような欠点があるため 、一般に細胞表面タンパク質、特に精子表面タンパク質に関し、分析、同定、特 徴づけ、単離及びカタログ化のそれぞれに対して標準化された方法が必要である ことは明らかである。 発明の要旨 すなわち、本発明の一目的は、次の各ステップ: a.膜表面のタンパク質を方向性のある(vectorially)標識をし、 b.標識した膜表面タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって単離し、 c.単離した膜表面タンパク質の配列を決定する、 を含む膜表面タンパク質の新規な分析方法を提供することである。 本発明の更なる目的は、次の各ステップ: a.膜表面のタンパク質を方向性のある(vectorially)標識をし、 b.標識した膜表面タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって単離し、 c.単離した膜表面タンパク質の配列を決定し、 d.膜表面タンパク質をコードするDNAをクローニングし、 e.ステップ(d)で単離したDNAを用いて膜表面タンパク質を組換によっ て生成する、 を含む膜表面タンパク質に対するワクチンの製造方法を提供することである。 本発明の更なる目的は、次の各ステップ: a.上記方法で得た膜表面タンパク質を標識し、 b.標識した膜表面タンパク質と不妊の有無の診断対象の患者から得た血清と を反応させ、 c.血清に存在する抗体と標識した膜表面タンパク質との複合体の生成を検出 する、 を含む不妊診断方法を提供することである。 本発明の更なる目的は、上記方法により製造したワクチンを提供することであ る。 本発明の更なる目的は、上記方法により製造した細胞表面タンパク質を含む診 断テストキットを提供することである。 本発明の更なる目的は、上記方法により製造した精子細胞表面タンパク質を、 患者の卵子の受精を防ぐのに充分な量において当該患者に対し投与することを含 む、当該患者に避妊を誘発させる方法を提供することである。 本発明の更なる目的は、上記方法により製造した組換タンパク質を哺乳動物に 投与し、哺乳動物内で産生した当該組換タンパク質に対する抗体を単離すること を含む、避妊薬の製造方法を提供することである。 本発明の更なる目的は、上記方法により製造した避妊薬を提供することである 。 上述の及びその他の目的、長所及び特長は以下の記載から明らかであって、本 発明の本質は、以下に記載する本発明の好ましい態様の詳細な説明及び添付クレ ームを参照することにより、一層明確に理解されるであろう。 図面の簡単な説明 下に記載する発明の詳細な説明と添付の図面とを合せて考慮することにより本 発明の理解が進むにつれ、本発明のより完全な評価及び本発明に付随する多くの 長所は容易に理解されるであろう。 図1は、銀染色したヒト精子[A&B]及び溶解(lysis)バッファーAに可 溶化した無精子症の患者から得た精漿タンパク質[C&D]の二次元ゲル電気泳 動分析結果を示す(方法を参照)。タンパク質はIEF/PAGE(A&C)及 びNEPHGE/PAGE(B&D)によって分離し、その結果、約1300の 精子タンパク質スポットの分解能を得た。一次元ゲルのpH勾配を図上部に示す 。二つの一次元技法間でpH領域が重なっている点に注意。SDS−PAGEは ゲルの底部をアノードに設定して実施した。分子量(×10-3)を、左マージン に示す。液化精漿においては高分子量タンパク質は比較的少ないが(C&D)、 明らかに20kDa未満に多数のタンパク質スポットがある。Dにおいて、精漿 タンパク質の分解パターンは、塩基性タンパク質間に走る斜めの跡によってたど ることができる(水平方向矢印)。精漿及び精子タンパク質パターンをコンピュ ータで比較し、9種類の類似型共移動(co-migrating)タンパク質を同定した( 黒白の矢印)。A及びCにおける白の矢印はアルブミンの位置を示すが、これは 明らかに精子表面に付着している。 図2は、3人の健康な若い男性から得た精子中の39.5kDaタンパク質の 量変化を示す。この3種類のサンプルに対して、同じバッファータンク内での同 時電気泳動分離を含む同一の処理を行った。図2は3種類のIEF/PAGEゲ ルの拡大図である。銀染色した39.5kDaタンパク質密度の推定比は、矢印 で示した様に、0.412(Aの場合)から3.703(Cの場合)まで変化し た。このような濃度変化は表面タンパク質においても見られる(図7参照)。 図3はヒト精子タンパク質中への放射性ヨウ素取込みについての経時的研究で ある。同じドナーから採取してパーコールで処理した30×106個の精子の4 種類の分割量を放射性標識した(一分割量につき、ダルベッコPBS4mL中で 10 IODO−BEADSと150μCiのNa125Iを使用)。このヨウ素 取込みは、ピペッティングによって触媒ビーズから細胞を除去することにより、 5、10、15及び20分後に停止した。精子は遠心分離によってペレット化し 、ヨウ素の取込まれた量は、ガンマカウンターでのカウントによって反応バッフ ァー中のヨウ素量と比較した。 図4は、溶解バッファーA中で抽出した標識精子タンパク質について、前処理 を行わなかったもの(A)と方向性のある(vectorially)標識をした後にパー コール密度遠心分離を実施したもの(B)との比較を示す。標識されたタンパク 質の数は、第二パーコール分離を実施した精子サンプルで減少する(B)。パネ ルAにおいて、標識されたタンパク質は多形先体内タンパク質SP−10(水平 方向の矢じり部分)及びアクチン(白い矢印)を含んでおり、細胞質成分の標識 が起こったことを示している。(SP−10の免疫ブロットについては図6を参 照。)これに対し、対照の細胞質マーカーは標識されなかった(パネルB)。こ の様に、表面標識に続いてパーコール遠心分離を行うことは、表面タンパク質の みの分析を確実にするために重要であると考えられる。 図5は、方向性のある(vectorially)ヨウ素化をしたヒト精子タンパク質の 二次元IEF−PAGEを示し、モノクローナル抗体と反応したウェスタンブロ ットと細胞質成分との対を示している。単一ドナーから得た精子は放射性ヨウ素 化し、パーコール遠心分離に付し、非還元条件下(A&B)又は還元剤の存在下 (100mM DTT)(C&D)でバッファーAで可溶化した。28%pH3 −3.5、20%pH5−7、7%pH7−9、及び45%pH3.5−10の アンフォリン組成物を使用し、酸性タンパク質の分解能を高めた。A:NC膜上 に固定化した未還元タンパク質のオートラジオグラム。放射性ヨウ素化パターン におけるアクチンの位置を矢印で示す。B:オートラジオグラフィーを行う前に 、アクチンに対するmAbでインキュベートしたA中のタンパク質のウェスタン ブロット。アクチンの4種類のアイソフォームは、予想分子量43kDa、pI 値5.1−5.2で分解した。BI中、オートラジオグラムは対応する免疫ブロ ットの上部に置いた。広かった領域は、単量体アクチンがヨウ素化されなかった ことを明らかに示している。B1及びB2において、水平方向の矢印は51及び 52kDaの2種類のタンパク質の位置を示しており、免疫学的にアクチンと交 差反応している。これらのタンパク質は1:3000に希釈された抗体の使用に おいて非常にわずかに染色された(図5B参照)が、抗体を1:1500希釈で 使用した場合、染色はより明確であった(挿入B2参照)。C:NC膜上に固定 化した還元タンパク質のオートラジオグラム。水平方向の矢印は、S−S結合に よって安定化した高分子量複合体に関与する数種の豊富なタンパク質の位置を示 す。D:オートラジオグラフィーを行う前に、β−チューブリンに対してmAb でインキュベートしたCのウェスタンブロット。DTT存在下で精子タンパク質 を抽出した後、少なくとも7種類のβ−チューブリンのアイソフォームが予想分 子量57kDa、pI値4.6−5.4で免疫染色された。オートラジオグラム 中のβ−チューブリンの位置は図5Cの垂直方向の矢印によって示す。オートラ ジオグラム上で、β−チューブリンのアイソフォームの位置が周辺のヨウ素化さ れたタンパク質からの発光によって覆われたものもあるが、β−チューブリン自 体は上記手続きにおいて放射性ヨウ素化されなかった。 図6は反射吸光度(reflected absorbance)によるタンパク質イメージングを 示し、これによって多形先体内タンパク質SP−10が方向性のある(vectoria lly)ヨウ素化をされていないことがわかる。放射性標識したタンパク質をNP −40及び尿素で可溶化し、IEF/PAGEで分離し、NCペーパーに転写( transfer)し、mAb MHS10でインキュベートした。DAB基質で呈色発 生(colorometric development)させた後、SP−10免疫反応生成物を、イメ ージ増強スクリーンからの反射率によってオートラジオグラム上でイメージ化し [B]、SP−10フォームの正確な位置を影として可視化した。SP−10の 特性パターン(高分子量体が低分子量体に比べてより酸性である) は公表されたデータ(32、33)に合致する。SP−10はヨウ素化される可 能性のある3個のチロシン残基及び12個のヒスチジン残基を有する(32)が 、先体反応精子が標識後のパーコール勾配遠心分離によって除去される限り、先 体内タンパク質SP−10は放射性ヨウ素化タンパク質としては検出されなかっ た。 図7は、2人のドナーから得たヒト精子タンパク質について、二次元電気泳動 及びNC膜への転写(transfer)を行った後、方向性のある(vectorially)標 識をしたヒト精子タンパク質のオートラジオグラムを比較しており、この図によ り、ドナー間でヨウ素化されたタンパク質のパターンについて総体的に高い再現 性が得られることがわかった。各ドナーから得た同数の放射性ヨウ素化細胞を可 溶化し、同量の可溶化物についてIEF/PAGE(A&C)及びNEPHGE /PAGE(B&D)を行った。89−>95kDaグループ等のヨウ素化され た表面タンパク質(垂直方向の矢印で示す)は相対濃度において変化を示したが 、これはオートラジオグラム上の全タンパク質の全密度に対し積分した光密度に より判断した。 図8は、NHS−LC−ビオチン標識ヒト精子タンパク質の二次元ゲル電気泳 動分析結果を示す。これは、該タンパク質をNP−40及び尿素で可溶化し、I EF/PAGE(A、C及びE)又はNEPHGE/PAGE(B、D及びF) によって分離し、NC膜へ転写(transfer)したものである。A及びB:APコ ンジュゲートアビジンでインキュベート後、ビオチン化した精子タンパク質をE CLによって可視化した。C及びD:AP−アビジンだけでインキュベートした 非ビオチン化精子タンパク質は、5種類の内因性アビジン結合タンパク質(MW :77kDa、pI:6−6.5)を示した(C中の垂直方向の矢印参照)。表 面ビオチン化パターンにおける、これら内因性アビジン結合タンパク質の位置は 、A中の同様の矢印によって示される。E及びF:NCペーパーに転写(transf er)後、コロイド金で染色したビオチン化精子タンパク質。E中の当タンパク質 はポリクローナル抗血清R−10でインキュベートし、精子表面ヒアルロニダー ゼである組換マカク(macaque)PH−20に対し樹立した。見かけ分子量か53 kDaである3つのPH−20タンパク質スポットが免疫標識された(E中の上 方向を示す矢印参照)。65kDaの抗原(ゲルの酸性末端)もウサ ギ免疫前血清で染色された。上記3つの53kDaのスポットはビオチンで標識 され(A中の同様の矢印参照)、PH20の3つのフォームは表面ビオチン化が 容易に行えることを示した。F中では、PH20の免疫前血清を使用した。白抜 き矢印は、NEPHGEゲル上の塩基性53kDaフォームの位置を示す。PH 20の53kDaフォームは免疫染色されなかった。 図9は、溶解バッファーB(SDS、CHAPS、UREA)中で可溶化した ビオチン化ヒト精子タンパク質の二次元ゲル電気泳動分析結果を示す。A及びB :銀染色によって可視化したタンパク質。C及びD:NCペーパーにエレクロト ランスファー後、AP−アビジン及びECLを用いて可視化したビオチン化タン パク質。E:mAb TU27を用いたインキュベーションにより検出したβ− チューブリンの位置を示す免疫ブロット。銀染色及びビオチン化した2−Dパタ ーンにおけるβ−チューブリンの位置(A&C)を同一の下向矢印によって示す 。図9Aにおいて白抜き矢印によって示す高分子量複合体は、mAbを用いた免 疫ブロット法によってα−チューブリンを含むことが判明した。α及びβ−チュ ーブリンはどちらもビオチン化されなかった。F:mAb S69によって検出 された繊維状シース(fibrous sheath)抗原を示す免疫ブロット。銀染色及びビ オチン化した2−Dパターンにおける繊維状シース(fibrous sheath)成分の位 置を、B及びD中の同様の斜方向矢印によって示す。この繊維状シース(fibrou s sheath)タンパク質はビオチン標識されなかった。G及びH:精子表面ヒアル ロニダーゼ PH20の免疫ブロット。PH20の2種類のアイソタイプは免疫 染色された(64kDa及び53kDa)。大きく拡大すると、53kDaフォ ームは5つのアイソフォームに分解できた。PH20の53kDa成分の内、最 も酸性度の高いアイソフォームで最も強いビオチン化が起こった。65kDaの 弱い免疫反応性スポット(図9G中の上方向を指した斜矢印の先端、及び図8A &Eの矢印によって示されている)はウサギ免疫前対照にも存在した(データは 示さず)。 図10は、チロシン残基においてリン酸化された精子タンパク質を示す、mA b RC−20を用いた免疫ブロットである。新鮮なヒト精子は溶解バッファー A中で可溶化され、IEFFPAGEによって分離された後、PVDF膜に 転写(transfer)された。優性なホスホタンパク質はMWが89〜95kDaで あり、pIは5.5〜5.8であった。染色の弱いタンパク質も幾つか見られた 。矢印は、方向性のある(vectorially)標識をしたホスホタンパク質の5つの グループを示す(表1参照)。 図11は、NP−40/尿素可溶化後、銀染色によって検出した1397のヒ ト精子タンパク質のコンピュータ合成イメージを示す。表面ヨウ素化及び表面ビ オチン化の両者によって標識した98のタンパク質の内、94のタンパク質は銀 染色タンパク質と合致し、これらを丸で囲んで示す。これらのタンパク質の特性 については、表1に示す。この表1を精子表面インデックスとする。 図12は、相補的及び逆相補的なオリゴヌクレオチドの設計用に選択した精子 タンパク質(63kDa、pI:4.3)について、エドマン分解及びタンデム 型質量分析計によって得たアミノ酸マイクロ配列データを示す(配列番号:16 −18、12、19−20)。このマイクロ配列情報から変性オリゴヌクレオチ ドプライマーのプールを合成し、PCRを開始した(図13参照)。 図13は、マイクロ配列データが63kDa、pI:4.3であるタンパク質 に由来する変性オリゴヌクレオチドを用いてヒト精巣RNAを増幅した結果得ら れたPCR産物が、約400bpの単一で突出したPCR産物であることを示す。 図14は、最適化した変性プライマーを用いたRT−PCRによってもたらさ れたクローンから得たDNA配列を示す。各数字は、配列化したクローン及びカ ルレティキュリン(Calreticulin)遺伝子における塩基対の位置を示す。(c) はRT−PCRクローン(配列番号:25)を示し、(H)はゲンバンク(GenB ank)から得たヒトカルレティキュリンcDNA(配列番号:26)を示す。 図15は、ヒト精子表面タンパク質I−23、及び相補的並びに逆相補的オリ ゴヌクレオチドからタンデム型質量分析計によって得られたマイクロ配列を示す (配列番号:27−40)。 図16は、精子表面タンパク質I−23の一部をコードするDNA配列を示す (配列番号:41)。このDNA配列は、図15に示したマイクロ配列に基づい て合成した変性プライマーのプールを用いて、ヒト精巣DNAを増幅したPCR産 物の配列決定を行うことによって得たものである。 図17は、等電点範囲3.5−>6.5における、967の銀染色ヒト精子タ ンパク質のエンサイクロペディアであり、これは、レーザースキャニング及び、 一次元が等電点電気泳動である2−Dエレクトロフォログラムのコンピュータデ ジタル化によって得た。 図18は、等電点範囲6.5−>10.5における、435の銀染色ヒト精子 タンパク質のエンサイクロペディアであり、これは、レーザースキャニング及び 、一次元が非平衡pH勾配電気泳動である2−Dエレクトロフォログラムのデジ タル化によって得た。 発明を実施するための最良の形態 本発明においては、当業者の技術の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学 、タンパク質化学及び組換DNA法が利用されるであろう。このような方法は以 下の文献にて充分に説明されている。サムブルック(Sambrook)ら、「分子クロ ーニング:ラボラトリーマニュアル」(1989);「分子生物学における現行 プロトコル」I〜III巻[アウスベル(Ausubel),R.M.編(1994) ];「細胞生物学:ラボラトリーハンドブック」I〜III巻[J.E.セリス (Celis)編(1994)];「免疫学における現行プロトコル」I〜III巻 [コリガン(Coligan),J.E.編(1994)];「オリゴヌクレオチド合 成」(M.J.ゲイト(Gait)編(1984));「核酸ハイブリダイゼーショ ン」[B.D.ヘイムズ(Hames)&S.J.ヒギンズ(Higgins)編(1985 )];「転写及び翻訳」[B.D.ヘイムズ(Hames)&S.J.ヒギンズ(Hig gins)編(1984)];「動物細胞培養」[R.I.フレッシュニー(Freshn ey)編(1986)];「固定化細胞及び酵素」[IRL Press,(19 86)];B.パーバル(Perbal)、「分子クローニングへの実用ガイド」(1 984)。 従って、本明細書に現れるタームについては以下のように定義する。 「レプリコン」は、インビボでDNA複製の自律的ユニットとして機能する( すなわち、それ自身のコントロールによって複製が可能である)遺伝的成分で ある(例、プラスミド、染色体、ウィルス)。 「ベクター」はプラスミド、ファージ又はコスミド等のレプリコンの一種であ る。このベクターに他のDNAセグメントが付着し、その結果、付着したセグメ ントの複製が起こる。 「DNA分子」はデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、 シトシン)のポリマー体を指し、一本鎖又は二重らせんの形をとる。このターム は分子の一次構造及び二次構造のみについて用い、特定の三次構造に限定される ものではない。従ってこのタームは、就く直鎖DNA分子(例、制限フラグメン ト)、ウィルス、プラスミド及び染色体に存在する二本鎖のDNA分子を包含す る。本明細書においては、ある特定の二本鎖DNA分子の構造について説明する 際、塩基配列の記載は、DNAの非転写鎖に沿って5’から3’の方向に向かう 従来の方法に従っている(すなわち、鎖はmRNAと相同の配列を有する)。 「複製の起点」は、DNA合成に関与するDNA配列を指す。 DNAの「コード化配列」は、適切な調節配列のコントロール下に置かれた時 、インビボでポリペプチドに転写及び翻訳される二本鎖DNA配列を指す。コー ド化配列の両境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ) 末端の翻訳停止コドンとする。コード化配列は、原核性配列、真核性mRNAか ら得たcDNA、真核性(例、哺乳類)DNAから得たゲノムDNA配列、及び 合成DNA配列をも含むが、これらに限定されない。ポリアデニル化シグナル及 び転写終止配列は、通常コード化配列に対し3’に位置する。 転写及び翻訳コントロール配列は、宿主細胞においてコード化配列の発現を提 供するDNA調節配列であり、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニ ル化シグナル、ターミネーター等が挙げられる。 「プロモーター配列」は、細胞内のRNAポリメラーゼを結合させ、また下流 (3’方向)側のコード化配列の転写を開始させることができるDNA調節領域 である。本発明においては、プロモーター配列はその3’末端において転写開始 サイトによって区切られ、バックグラウンドを超える検出可能レベルで転写を開 始するのに必要な塩基又は成分の最小数を含むように上流(5’方向)方向に伸 びる。プロモーター配列内には、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク 質結合ドメイン(コンセンサス配列)のほかに転写開始サイト(ヌクレアーゼS 1を用いたマッピングで簡便に画定される)が見出される。真核性プロモーター は常にとは限らないが、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含んで いることが多い。原核性プロモーターは、−10及び−35コンセンサス配列に 加えて、シャイン・ダルガーノ配列を含んでいる。 「発現コントロール配列」は、他のDNA配列の転写及び翻訳をコントロール し調節するDNA配列である。RNAポリメラーゼがコード化配列をmRNAに 転写し、引き続きコード化配列によってコードされたタンパク質に翻訳されると き、コード化配列は細胞内の転写及び翻訳コントロール配列の「コントロール下 」にある。 「シグナル配列」はコード化配列の前に含まれる。この配列は、宿主細胞と連 絡してポリペプチドを宿主細胞表面に向けさせたりポリペプチドを培地中に分泌 させるようにするシグナルペプチド(ポリペプチドのN−末端)をコードする。 このシグナルペプチドはタンパク質が宿主細胞を離れる前に、宿主細胞によって 切り離される。シグナル配列は、原核生物及び真核生物に生来備わっている種々 のタンパク質に関連して見出すことができる。 本明細書で使用するターム、本発明のプローブについて「オリゴヌクレオチド 」とは、二以上の、好ましくは三を超えるリボヌクレオチド又はデオキシリボヌ クレオチドを含む分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは 多くの因子によって異なり、またこれら多くの因子はオリゴヌクレオチドの最終 的機能及び用途によって決まる。 本明細書における「プライマー」とはオリゴヌクレオチドを指し、これは精製 された制限分解物中におけるもののように自然に生ずるものであっても、合成に よって生成されるものであってもよく、プライマー伸長産物(これは核酸鎖に対 して相補的である)か誘導される条件下(即ちDNAポリメラーゼ等の誘発剤と ヌクレオチドの存在下、適切な温度及びpH条件下)で合成開始点として作用す ることができる。プライマーは一本鎖又は二本鎖であってよいが、誘発剤の存在 下で所望の伸長産物の合成を開始させるためには充分に長くなければならない。 プライマーの正確な長さは多くの要因、例えば温度、プライマーの原料及び使用 する方法によって決まる。例えば診断用途に応用する場合、標的配列の複雑さに もよるが、オリゴヌクレオチドプライマーは通常15〜25若しくはそれ以上の ヌクレオチド(もちろんそれより少ないこともある)を含む。 本発明において、プライマーは、特定の標的DNA配列の種々異なる鎖と「実 質的に」相補的である様に選択される。このことは、各プライマーが各鎖とハイ ブリダイズするよう、充分に相補的でなければならないことを意味する。従って 、プライマー配列はテンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、 非相補的ヌクレオチドフラグメントがプライマーの5’末端に付着していても、 プライマー配列の残りの部分が鎖に対して相補的であれば問題ない。あるいは、 ブライマー配列が、ハイブリダイズする相手の鎖の配列に対して充分に相補的で 且つこれによって伸長産物合成のためのテンプレートが形成されるのであれば、 非相補的な塩基又はより長い配列が該プライマー中に散在していてもよい。 本明細書において、「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」はいずれも 細菌性酵素であり、各酵素はそれぞれ特定のヌクレオチド配列若しくはその付近 において二本鎖DNAを切断する。 外因性のDNA又は異種のDNAが細胞内に導入された場合、この様なDNA によって細胞は「形質転換」される。形質転換DNAは、該細胞のゲノムを構成 する染色体DNA内に組み込まれる(共有結合する)場合も組み込まれない場合 もある。例えば、原核生物、イースト菌及び哺乳類細胞の場合、形質転換DNA は、プラスミド等のエピソームエレメント上に保持される。真核細胞に関しては 、安定に形質転換された細胞とは、形質転換DNAが染色体に組み込まれ、染色 体の複製によって娘細胞に受け継がれていく細胞である。この安定性は、形質転 換DNAを有する娘細胞の個体群を含む細胞系又はクローンを形成する真核細胞 の能力によって示される。「クローン」とは、単一細胞又は共通祖先から有糸分 裂によって派生した細胞の個体群をいい、「細胞系」とは、何世代にも亘ってイ ンビトロで安定に成長することができる一次細胞(primary cell)のクローンを いう。 2つのDNA配列が「実質的に相同」であるのは、ヌクレオチドの少なくとも 約75%(好ましくは約80%、より好ましくは約90又は95%)がDNA 配列の決まった長さを超えて合致している場合である。実質的に相同な配列は、 配列データバンクとして利用可能な標準ソフトウェアを用いて配列を比較する方 法、又はサザンハイブリダイゼーションを、用いる特定のシステムに対して定め られた厳しい条件下で実施すること等、によって同定することができる。適切な ハイブリダイゼーション条件の決定は、当業者の技能の範囲内の事項である。マ ニアティス(Maniatis)ら、前掲書;DNAクローニング、Vol.I&II、 前掲;核酸ハイブリダイゼーション、前掲、を参照されたい。 2つのアミノ酸配列が「実質的に相同」であるとは、アミノ酸残基の少なくと も約70%(好ましくは約80%、より好ましくは約90又は95%)が同一で あるか、又は保存的置換(conservative substitution)を示している場合をい う。 DNA構築物の「異種」領域とは、より大きいDNA分子内において同定可能 なDNAセグメントであって且つ天然界では当該「より大きいDNA分子」には 見出せないものである。従って、異種領域が哺乳類遺伝子をコードする場合、こ の遺伝子は通常、ソース生物のゲノムにおいて哺乳類のゲノムDNAに隣接(fl ank)しないDNAによって隣接(flank)される。異種コード配列の他の例は、 天然ではコード配列自身が見出せないような構築物である(例、ゲノムのコード 配列がイントロンを含むcDNA、又は野生型遺伝子とは異なるコドンを有する 合成配列)。対立(アレル)バリエーション又は天然に起こる突然変異は、本明 細書で定義したようなDNAの異種領域の原因とはならない。 「抗体」はいずれの免疫グロブリンでもよく、特異的なエピトープと結合する 各種抗体及びそのフラグメントを含む。このタームはポリクローナル抗体、モノ クローナル抗体及びキメラ抗体を含むが、キメラ抗体の詳細については、米国特 許第4,816,397号及び第4,816,567号に記載されている。 「抗体結合部位」とは、重鎖可変、軽鎖可変、及び超可変部からなり抗原と特 異的に結合する抗体分子の構造部分である。 本明細書において様々な文法表現で用いられている「抗体分子」という語句は 、完全な免疫グロブリン分子、及びある免疫グロブリン分子中の免疫学的活性部 分の両方を指す。 抗体分子の例としては、完全な免疫グロブリン分子、実質的に完全な免疫グロ ブリン分子、及びパラトープを含む免疫グロブリン分子の一部分でFab、Fa b’、F(ab’)2、及びF(v)として知られる部分が挙げられるが、これ らの部分は本明細書に記載の診断及び治療方法への使用において好適である。 抗体分子のFab及びF(ab’)2部分は、公知の方法によって、それぞれ パパイン及びペプシンのタンパク分解反応によって実質的に完全な抗体分子上に 調製される。例えば、テオフィロポーロス(Theofilopolous)らによる米国特許 第4,342,566号参照。Fab’抗体分子部分も良く知られており、これ はF(ab’)2部分から生成されるが、2本の重鎖部分を結ぶジスルフィド結 合をメルカプトエタノールで還元し、得られたタンパク質メルカプタンをイオド アセトアミド等の試薬でアルキル化することによって得られる。本発明において は、完全な抗体分子を含む抗体が好ましい。 様々な文法表現で用いられている「モノクローナル抗体」という語句は、ある 特定の抗原と免疫反応可能な抗体結合部位を一種類のみ有する抗体を指す。すな わち、モノクローナル抗体は、通常、免疫反応する相手の抗原に対し単一の結合 性を示す。従って、モノクローナル抗体は、複数の抗体結合部位を有する抗体分 子を含んでもよいが、各部位は異なる抗原に対し免疫特異性である(例:二特異 性(キメラ)モノクローナル抗体)。 「医薬として許容される」という語句は、生理学的に許容でき、通常、ヒトに 投与した際に胃痛(gastric upset)、めまい等のアレルギー又は同様の不適な 反応を起こさない分子及び組成物を指す。 本明細書における「治療的有効量」という語句は、標的細胞マスのSフェーズ 活性の臨床的に重大な変化や、血圧、熱、白血球数の上昇等の病理学的様相を防 ぐのに充分な量、あるいは好ましくは30%、より好ましくは50%、さらに好 ましくは90%減少させるのに充分な量を意味する。 発現コントロール配列がDNA配列の転写及び翻訳をコントロールし調節する 場合、DNA配列は「オペラティブにリンクされている」。「オペラティブにリ ンクされている」とは、発現されるDNA配列の前に適当な開始シグナル(例、 ATG)を有することを含み、また、発現コントロール配列のコントロール下で のDNA配列の発現、及びDNA配列によってコードされた所望の産物の生成を 許容するために正しいリーディングフレームを維持することをも含む。組換DN A分子へ挿入される遺伝子が適当な開始シグナルを含んでいない場合には、開始 シグナルをその遺伝子の前に挿入することができる。 「標準ハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション及び洗浄 において、5×SSC及び65℃という条件に実質上等しい塩と温度の条件を指 す。しかし、当業者であれば、「標準ハイブリダイゼーション条件」かバッファ ー中のナトリウム及びマグネシウム濃度、ヌクレオチド配列の長さ及び濃度、ミ スマッチ率、ホルムアミドの割合等の特定の条件に左右されることは認識してい るであろう。また、「標準ハイブリダイゼーション条件」を決めるうえで重要な ことは、ハイブリダイゼーションを行う2つの配列がRNA−RNA、DNA− DNA、又はRNA−DNAの内どの組み合わせであるかということである。こ の標準ハイブリダイゼーション条件は、公知の処方(通常ハイブリダイゼーショ ンは、予想若しくは測定したTmよりも10〜20℃低い温度で、またもし必要 であれば、より厳しい条件洗浄を繰り返して行われる)に従って、当業者により 容易に決定される。 精子表面分子についての詳しい知識は、分化及び成熟の複雑なプロセスの理解 を助けるうえで役に立つばかりでなく、細胞膜が精子の機能に関し非常に重要で あることから有用である。 本発明の方法における、方向性を有する(vectorial)標識化と洗浄剤による 可溶化を組み合わせることにより、細胞、バクテリア又はウィルスの分析が比較 的少量で実施でき、また、単一の個体またはサンプルにおける(生理学的又は実 験的に誘導された)特定のタンパク質パターンの日々の変化の研究が可能である 。更に、方向性を有する(vectorial)標識化によって、形質膜タンパク質のエ クソフェイシャル定位(exofacial orientation)に関する情報が提供されるが 、この情報は窒素キャビテーション法のみでは得ることができない。 最初に、酸性、中性及び塩基性のヒト精子タンパク質を単一の方法で分析し、 表面露出タンパク質の標識化については2つの方法を比較する。膜表面タンパク 質、特にヒト精子タンパク質については多くの2−Dデータベースが構築できる 。 精子細胞膜の組成に対する幅広い理解を早速利用する道として、避妊ワクチン の設計が挙げられる。生物学的標的の表面上の抗体及びT細胞メディエーターに アクセス可能な分子に関する知識によって、ワクチンの開発に対する合理的な基 礎が築かれる。精子抗原に基づく避妊ワクチンの場合、精子を凝集し、固定化し 、溶解するため、又受精過程で起こる事象をブロックする表面接触可能なタンパ ク質と相互作用させるために、免疫応答が要請される。もし雌性が子宮頚部、子 宮、輸卵管からの分泌物中で、精子表面タンパク質に対する抗体を産生すれば、 雌性生殖管を通る精子の進行は、幾つかの解剖学的レベルで阻止される。 精子に基づく理想的な避妊ワクチンには、内部先体膜(この膜は先体反応の後 、精子頭部を覆う制限膜を形成するものである)をはじめとして、頭部、中片、 尾部等、精子原形質細胞の全ての主要ドメインから派生した精子抗原の混合物が 含まれていると想像される(9)。精子機能をブロックするモノクローナル抗体 及びポリクローナル抗体を利用して、形質膜及び内部先体膜上の精子ワクチン免 疫原の候補が幾つか同定されている(10)とはいえ、未だにヒト精子表面免疫 原としての可能性を有する物質のフルレンジでの幅広い分析は、これまで実施さ れていない。 オファレル(O'Farrell)の開発した二次元ゲル電気泳動(11、12)(こ の文献全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)をコンピュ ータ化ゲル解析と組み合わせて使用して、複雑なポリペプチド混合物を分析する ことができる。専門コンピュータソフトによって二次元ゲルの定量分析が容易に なり、各種コンピュータイメージの比較が可能となり、また、実験操作及び環境 刺激の変更によって生じるタンパク質パターン変化の詳細な記述も可能となる( 13−17)。 本発明においては、まず方向性を有する(vectorlal)標識化によって主要な 表面タンパク質を同定し、その後、洗浄剤による抽出、2次元電気泳動及びコン ピュータイメージ解析を行う。この方法を用いて得た情報から、細胞表面タンパ ク質エンサイクロペディアインデックス、膜表面タンパク質エンサイクロペディ ア、又は精子タンパク質エンサイクロペディアが得られ、これによって、各種タ ンパク質(全部で1397の精子タンパク質)に対して番号を割り当て、その座 標(Mr及びpI)を定義し、他の全てのたんぱく質に対する相対染色強度値で ある「積分強度(integrated intensity)」をリスト化する。 細胞及び微生物膜は、洗浄剤による処理、乳鉢及び乳棒を用いた破壊、及び超 音波処理等、当技術分野で公知の方法のいずれかを用いて破壊することができる 。洗浄剤は、NonidetP−40(NP−40)、TWEEN、SDS等を 含んでもよい。また、尿素、及びその他の変性剤も使用できる。 標識化には表面タンパク質の標識に適した標識物質を用いる。例えば、標識と してヨウ素(I125)やビオチンを用いることができる。配列決定等の更なる分 析に付される「主要な標的(prime targets)」は、好ましくは、一以上の方法を 用いて標識したタンパク質である。 二次元(2−D)ゲル電気泳動によるタンパク質の分離は、当業界において公 知である。分離用2−Dゲルに付し、ゲル分析で同定されたスポットから相当量 (配列決定可能な量)のタンパク質を得る。 必要であれば、一次元のアンフォリン濃度を変えることによってタンパク質の 電気泳動分離を実施できるが、これにより2−Dマップの制限領域を拡大し、2 −Dゲルフォーマット全体を満たすことができる。この方法によって、所定のp I及びMrスペクトル領域内でタンパク質の分離度が大きくなり、多数のタンパ ク質が集まった領域での分解能が高くなり、また、より多くのタンパク質をロー ドできるため収率を最適化できる。タンパク質の染色には、各タンパク質の特性 及びその後の用途に応じて、ポンソー、クーマシー、銀又は金を用いることがで きる。タンパク質は、2−Dゲルで電気泳動を実施した後、膜サポート上で電気 ブロットを行うか、あるいはトリプシン又はリシルペプチダーゼを用いてアクリ ルアミドゲル内で消化してペプチドとし、その後エドマン分解又はタンデム型質 量分析を実施する。 表面タンパク質のデータベースは、将来細胞膜タンパク質解析を実施する際の レファレンス、及びマイクロシークェンシングや抗体の産生を行う際の標的選択 用ガイドとして使用できる。マイクロシークェンシングの候補である抗原は、不 妊血清又は精管切除血清と反応する抗原を含む。別の主なマイクロシークェンシ ングの候補は、精子凝集抗原1[SAGA−1]である。MES−8 mAbは ヒト精液中の精子を100%凝集し、子宮頚部粘液への精子浸透を妨害し、ヒト 精子によるハムスター卵子への浸透を阻害し、インビトロで同種精子を用いたマ ウス卵子の受精を阻害し、ヒト精子とヒト透明帯との結合を70%阻害する。S AGA−1抗原は精子表面全体に存在する。 アフィニティー精製法も、比較的量の少ない所望のタンパク質を富化するため に使用できる。洗浄・採取した細胞、バクテリア又はウィルスは、還元性ジスル フィドを有するビオチン化プローブ(NHS−SS−ビオチンあるいはNHSO イミノビオチン)で方向性のある(vectorially)標識が可能である。タンパク 質は非還元条件下で可溶化させ、ビオチン化表面複合体は固定化ストレプトアビ ジンでコーティングしたビーズを用いて沈殿させる。沈殿したタンパク質は洗浄 後、還元によって溶出し、二次元電気泳動によって分析することができる。この アフィニティービーズ法で富化したビオチン化表面タンパク質のマイクロシーク ェンシングは、逆相HPLC分離後、高密度に充填した分離用2次元ゲルで実施 できる。 タンパク質スポットの配列決定は公知の方法で行う。好ましくは、この配列決 定はエドマン分解及び質量分析、好ましくはタンデム型質量分析(TMS)によ って行う。 PVDF膜のクーマシー染色タンパク質のスポットはブロットカートリッジに ロードし、配列解析を行う。内部配列を得るために、タンパク質をゲル内でリシ ルエンドペプチダーゼ又はその他のプロテアーゼで消化した後、得られたペプチ ドをカラム、特に直径1mmのC18カラムで抽出・分離する。分離したペプチ ドの質量及び純度は、FinniganレーザーMATを用いたイオン化飛行時 間型質量分析及びマトリックス支援レーザーデソープションによって決定する。 分離された所望のペプチドを含む溶液は、ポリブレンコーティング後に条件サイ クル(condition cycle)を行ったグラスファイバーフィルターに塗布する。こ のペプチドのNH−末端アミノ酸配列はタンパク質シークェンサーによって決定 する。タンパク質全体(intact proteins)を、20〜30サイクルのエドマン分 解に付し、一方、内部ペプチドの配列決定を質量分析で得た質量を基に適当な限 り進める。シークェンシングには標準的なエドマン化学手法を用いる。まず、N H−末端アミノ酸をフェニルイソチオシアネートを用いて誘導体化し、次にトリ フルオロ酢酸で切断してアニリノチオゾリノンアミノ酸を得た後、酸を用いてフ ェニルチオヒダントイン(PTH)アミノ酸に転換する。このPTHアミノ酸は 、Applied Biosystems 140HPLCを用いて、特にPT Hアミノ酸分析用に最適化した直径2mmのC18カラムを用いて、同定及び定 量することができる。 高感度の内部配列決定はタンデム型質量分析によって実施できる。タンパク質 スポットはポリアクリルアミドゲル内で還元及びアルキル化し、重炭酸アンモニ ウム中でプロテアーゼ(特にトリプシン)による処理を行う。この方法で生成し たペプチドは、50%アセトニトリル/5%ギ酸溶液を用いてアクリルアミドゲ ルから抽出し、得られた抽出物はほぼ乾固するまで濃縮して再形成(好ましくは 1%酢酸中で)する。このペプチドはLC−エレクトロスプレー質量分析システ ムで分析できるが、特に、Finnigan MAT TSQ7000エレクト ロスプレーイオン化タンデム型四重極質量分析計に接続した75gm i.d. キャピラリーHPLCカラムを用いることができる。結果をペプチドの分子量を 決定するために解析し、得られたデータは、特定ペプチドの衝突活性解離(coll isionally activated dissociaion)(CAD)解析用タンデム型質量分析計の 再プログラムに用いる。CAD実験では、第一の質量分析計で所定ヘイズ比(m /z)のイオンを質量によって選択する。このプロセスでは、分子量に基づいて シークェンシング用ペプチドを選択し、他の全てのペプチドは効率よく排除する 。選択されたペプチドは、アルゴン原子との衝突によってフラグメント化し、こ のフラグメント化反応で得た生成物について、タンデム型質量分析システムにお ける第二の質量分析計によって質量分析を行う。この方法によって、ペプチドの アミノ酸配列からCADマススペクトルを得る。このプロセスはコンピュータコ ントロール下で繰り返され、消化分解物中の各ペプチドについて配列データを得 る。 質量分析による配列決定は高感度であり、1〜10ピコモルの開始材料を含ん だサンプルから内部配列を得ることができる。タンデム型質量分析計の第一マス フィルターを使用することにより、タンパク質の分解によってもたらされる各種 ペプチドを分離することができ、これによってエドマンシークェンシング法では 純粋なペプチドを得るのに必要であったクロマトグラフィー工程が不要となる。 しかし、エドマンシークェンシングでは完全タンパク質のN末端(NTH末端が ブロックされていない場合)からデータを得ることが可能で、30種類、またあ る場合にはそれ以上のアミノ酸残基を得ることができる。質量分析シークェンシ ングに比較すると感度は低いが、エドマン分解では質量分析計に比べて長いペプ チドの配列決定が可能であり、質量分析計では区別できなかったロイシンとイソ ロイシンとが容易に区別できる。エドマン法では分析機器に導入する前にペプチ ドの精製を行わないため、2次元電気泳動調製によってタンパク質の分離及び濃 縮を注意深く行う必要がある。エドマン法では、オリゴヌクレオチドの設計に必 要とされる充分な長さの内部配列を得るために、10〜15ピコモルの開始材料 が必要である。しかし、充分に長いタンパク質の長いアミノ末端配列解析には2 ピコモルの材料で充分である。 得られたアミノ酸配列情報から、オリゴヌクレオチドを設計することができる 。好ましくは、アミノ酸配列の全ての可能なコドンの組み合わせを示すオリゴヌ クレオチドを変性(あるいは、コドンの第三位置にイノシンを使用)し、このよ うなオリゴヌクレオチドは、cDNAコード化膜表面タンパク質を含むライブラ リーとのハイブリダイゼーション、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)好まし くはRT−PCRによる増幅によって、クローニングに使用できる。 2種類の固定プライマーを用いたRT−PCRアプローチは、PCRプロトコ ルの容易さ及び速さという利点を有する。しかし、遺伝コードが変性するため、 公知のアミノ酸に基づいてオリゴヌクレオチドを選択する場合、所定のアミノ酸 配列に相当するプローブを数多く合成する必要がある。 各タンパク質からは、長さにおいて7以上の残基を持ったアミノ酸配列が少な くとも2種類必要である。[しかし、2種類の配列が得られなかった場合、1種 類の配列は5’及び3’RACEと共に使用できる。]PCR用プライマーの最 適な長さは20〜30のヌクレオチドである。当然の事ながら、長さが少なくと も20塩基であるプライマーを2種類設計するためには、少なくとも7つの隣接 したアミノ酸からなる明確な配列を、所定タンパク質の一次構造の内少なくとも 2箇所から得なければならない。 ファクターの組み合わせは、各オリゴヌクレオチドの正確な組成を検出する際 、及び所定のアミノ酸配列の中の標的となる部位を選択する際に考慮しなければ ならない。ファクターの例として、オリゴヌクレオチドのG−C含有量、配列決 定された信頼しうるアミノ酸残基の数、及びオリゴヌクレオチド・プールに固有 の融解点等がある。最適な長さである20〜30塩基内でオリゴヌクレオチドを 生成するためには、最小でも少なくとも7アミノ酸からなるストレッチをマイク ロシークェンシングによって得る必要がある。長いアミノ酸配列が得られれば、 最適なオリゴヌクレオチドが設計できる機会は増える。適切な長さのcDNAフ ラグメントのRT−PCRを容易にするため、N末端及び内部タンパク質配列又 は2つの内部アミノ酸配列によって、オリゴヌクレオチドプールがRNAの分離 された領域から生成し増幅される。プローブは次のように各種方法に使用できる 。1)二組の固定化したオリゴヌクレオチドをRT−PCR反応に付してcDN Aフラグメントを増幅し、引き続き、このcDNAライブラリーをスクリーニン グして充分な長さのcDNAを得る。2)一組以上のオリゴヌクレオチド・セッ トを用いてPCR−RACE反応物を固定化して3’又は5’cDNAフラグメ ントを増幅し、これをcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用する 。3)PCRとPCR−RACEの組み合わせを用い、別々のPCR反応で得た 配列を接合することにより完全長のcDNAを得る。4)オリゴヌクレオチドを 用いてcDNAライブラリーを直接スクリーニングする。 1つのアミノ酸配列が未知のタンパク質から得られた場合、単一の「固定(an choring)」最適化オリゴヌクレオチドプールを改変RACEプロトコルで用い て、既知の配列から上流側又は下流側の3’又は5’配列のいずれかを派生させ ることができる。この方法では、単一の内部アミノ酸配列は、提案されたセンス 鎖(5’−RACE)又はアンチセンス鎖(3’−RACE)のいずれかに対し て、逆相補的オリゴヌクレオチドを設計するのに使用できる。増幅反応のアンカ リングのための第二のオリゴヌクレオチドは、市販されているcDNAライブラ リーの5’又は3’末端に置かれたリンカーの既知の配列から得られる。この 方法は現在キットの形で入手できる(マラソン−レディー(Marathon-Ready)c DNASTM;クローンテック(Clonetech))。 好適なcDNAライブラリーの例として、1)5’−Stretch(クロー ンテック(Clonetech))、2)λ−zap、及び3)λ−gt 11CDNA ライブラリーが挙げられる。これら3つのライブラリーは、各種精巣タンパク質 の完全長ORFを回収するために使用されてきた。増幅したcDNAプローブを 用いてライブラリーをプローブする方法はよく知られている。すなわち、取扱説 明書に従って、オリゴヌクレオチドの末端を(λ−32P)−rATP及びポリヌ クレオチドキナーゼを用いて標識し、精製してハイブリダイゼーションに使用す る。ポジティブ対照として、ノーザンブロットを最初にプローブし、PCR産物が 全RNA内での特定のmRNAメッセージを認識するかどうか確認できる。5’ −Stretch cDNAライブラリー(クローンテック(Clonetech))は 、取扱説明書に従って150mmの寒天上に置き、MSIフィルター(フィッシ ャー(Fisher))を用いてデュープリケート(in duplicate)にリフトする。この フィルターをUV架橋させ、標準液中で一晩プリハイブリダイズ及びハイブリダ イズさせる。フィルターをX−rayフィルムに露出し、得られたポジティブク ローンをデュープリケート・フィルター(duplicate filters)から同定し、偽陽 性(false positive)を除去する。このフィルムを、もとの培養プレートに再配 置し、コアを抜きとる。一次プラークは、プレート上の全てのプラークがポジテ ィブとなるまで、再プレーティング及び再スクリーニングする。精製時の各ステ ップにおいてファージのサンプルは−20℃に保たなければならない。クローン は一旦単離された後、PCRにより増幅するが、その際、ライブラリー作製時に 利用したクローニング部位に隣接したファージ配列に対して製作したプライマー を用いる。PCR増幅cDNAインサートは酵素で制限されることができ、得ら れたフラグメントを分離し、アガロースゲル上にサイズに従って並べる。別々の クローンについて制限分析を行うと似たサイズのフラグメントが得られるが、こ のことから変性オリゴヌクレオチドが同一のクローンを認識したことが確認され る。 変性オリゴヌクレオチドを用いたcDNAライブラリーの直接スクリーニング は実施できるが、通常は、PCRを基にしたアプローチが行われていない場合に のみ実施される。末端を32Pで標識したオリゴヌクレオチドの混合物は、アミノ 酸マイクロシークェンスをコード化した系統学的にバイアスされたコドンに基づ いて選択できる。オリゴヌクレオチドは上記パラメータに従って設計されるが、 その際、縮重度がなるべく低い(<300)プールとすることに重点を置く。ポ ジティブな結果は、17オリゴマーのオリゴヌクレオチド・プールから得られて いる。オリゴヌクレオチド・プールがこのカットオフに比べて大きい場合には、 全ての組み合わせの可能性を有する多数のプールを使用できる。主コントロール 試験は、まず最初にポリ−(A)-mRNAを含むノーザンブロットに対して末 端標識プールをハイブリダイズし、洗浄及びX−rayフィルムへの露出の際に ポジティブバンドを得るようなハイブリダイズ条件を決定する。一旦ハイブリダ イズ条件及び洗浄の条件(塩及び温度)が決まったら、上記のcDNAライブラ リーを二重に(in duplicate)プレートアウトし、アウスベル(Ausubel)が提案 した様な条件で、標識オリゴヌクレオチドプールを用いてリフトし、プローブす る。二つ(duplicate)のリフト間で比較を行い、偽陽性のものを排除し、二次及 び三次のスクリーニングを行い、提案されたクローンの純度及び正確さを確かめ る。可能であれば、同様のライブラリーリフトを、未知のタンパク質の別領域に 由来する第二のオリゴヌクレオチド混合物を用いた再スクリーニングに付す。 あるいは、膜表面タンパク質に対する抗体を発現ライブラリーのスクリーニン グに使用できる。 単特異性抗血清を、2次元ゲルから単離したタンパク質スポットに対して生成 することができる。その際、二つのアプローチがとられる。1)動物を、標準筋 内免疫法に従って完全フロイントアジュバント中で乳化したアクリルアミドゲル のコアを含むタンパク質で免疫する。2)トランスファーされた特定の精子タン パク質を含むニトロセルロースの細片を完全フロイントアジュバントに浸した後 、皮下または腹腔内に移植する。これらの方法によって生成した単特異性血清の 分割量をウェスタンブロッティングに付し、終点タイターを決定し、所望のタン パク質プロットに対する特異性を確認する。もし抗血清のタイターが低い場合に は、特定のタンパク質バンド又はタンパク質スポットから得たニトロセルロース 結合タンパク質を使用したオルムステッド(Olmstead)法を用いて、抗体をアフ ィニ ティー精製して抗体富化溶液を作製することができる。発現ライブラリーは、両 方向(6Xヌクレオチドプロービングに用いた密度)で3つ全てのリーディング フレームを占める程の充分な数にプレーティングし、10mM IPTG含侵フ ィルターで誘発する前に3〜4時間37℃で成長させ、42℃でインキュベート する。E.coliタンパク質との反応性を除去するため、同一動物から得た単 特異性血清及び免疫前血清に一晩に二回、4℃で臭化シアン活性セファロースに 結合したE.coliを吸収させる。 制限分析による最大インサートを含むcDNA保有ファージクローンがプラス ミドに転換される。長いストレッチを正確に配列決定するために必要な高度に精 製されたプラスミドDNAは、大規模培養(≧100mL)によるプラスミド保 有バクテリアの増幅、及びこれに続く標準方法によるCsCl平衡遠心分離によ って調製される。クローニング部位をブラケットするプラスミド配列に対する標 準プライマーを作製し、配列決定に用いる。配列決定は、好ましくはシークェナ ーゼ(Sequenase)(キットを用いたチェーンターミネーター法によって行う。 配列化は両方向に進み、新しいcDNA特異プライマーが内部配列に対して作製 され、配列化は配列が重複するまで続く。あるいは、四色シークェンシングを、 Applied Biosystems Prism 377自動化DNAシー クェンサーを用いて行うことができる。オープンリーディングフレームは、推定 開始サイト同様コンピュータ解析によって求め、クローンが充分な長さであるか どうか決定する。更に、マイクロシークェンシングによって得たもとのアミノ酸 配列も同定されなければならない。 仮に、この配列がcDNAクローンの「二重固定(doubleanchored)」RT−P CR派生を許容する程度にもたらされない場合は、オリゴ−d(T)を第二の「 固定(anchoring)」オリゴヌクレオチドとして使用できる。 時として、圧縮(compression)によってクローン領域があいまいな結果となる 場合もある。この場合には、37℃ではなく72℃でシークェンシング反応が実 施可能なTaq Track(Sequencing Kit(Promega )を用いて解読可能な配列を得ることができる。反応段階時に温度が高いと、通 常、どの潜在的一本鎖領域にも信頼度の高い融解が起き、信頼できる明確な配列 が得 られる。 配列は遺伝子データバンクとの比較により、公知のタンパク質に対する同一性 又は相同性を調査することができる。 ヒト及び霊長類モデルにおける推定上の抗原の組織特異性を評価するため、主 要なサル及びヒトの器官から得たRNAのノーザンブロット解析を行うことがで きる。−70℃で貯蔵した各種組織から全RNAを単離することができる。オリ ゴ−d(T)クロマトグラフィーによって、全RNAからポリ(A+)RNAを 精製する。RNAをエタノール沈降で濃縮した後、無菌蒸留水(105mL)中 で再懸濁を行う。各サンプル中のポリA+RNA量は260nmにおける光学密 度[OD 1.0=40mg/mL]の読み取りによって定量化できる。各組織 から得た試験用の等量のポリA+RNAサンプル(例、2mg)は、変性アガロ ース/ホルムアルデヒドゲル上で分離し、分離されたRNAはナイロンに転写( transferred)した。ナイロンを2X SSC中で5分間すすいだ後、UV光を 用いてRNAをナイロンに架橋させた。このナイロンをプレハイブリダイズさせ 、次いで10mg/mLの32P−dCTP標識プローブを含む新鮮なハイブリダ イゼーションバッファー中で、一晩65℃にてハイブリダイズする。プローブは 、検討下の抗原用cDNA又はβ−アクチン若しくはシクロフィリンのコントロ ールプローブで構成されているであろう。このプローブは、プロトコル及びプロ メガ社から購入したキットを用いたランダムプライミングによって標識すること ができる。必要となれば、低ストリンジェンシー及び高ストリンジェンシー条件 の両方とも試験しなければならない。オートラジオグラフは、増感スクリーンを 用いて露出する。テストプローブを用いたハイブリダイゼーションに引き続き、 ナイロンブロットを剥し、コントロールの内の一種(β−アクチン又はシクロフ ィリン)を用いて再プローブし、RNAが等しくロードされていることを確認す る。 抗原の組織特異性は、逆転写された各組織から得たRNA、及びポリメラーゼ 連鎖反応(PCR)によって増幅して得られるcDNAを用いても評価すること ができる。目的のRNAに特異的な各プライマー(それぞれ翻訳の開始箇所及び 終止箇所に亘ってマッピング)を用いることができる。ポジティブコントロー ルには、β−アクチン特異プライマーを使用できるが、これはβ−アクチンcD NAの保存領域に基づいて選択され、介在配列の198のヌクレオチドによって 分離される。臭化エチジウムを用いて染色した後、PCR産物を可視化し、そのサ イズを推定する。RCR生成物が実際に目的の物質に相当するかどうかは、検討 下にある抗原に特異的なcDNAを用いたサザンブロットによるハイブリダイゼ ーションによって確認する。 抗原の組織特異性は、免疫組織化学的な研究、好ましくはアフィニティー精製 抗体を用いた別の方法によっても評価することができる。各種パラフィン包埋組 織を収集しバンクとして保持することができる。タンパク質は、パラフィン包埋 セクションの免疫ペルオキシダーゼ標識によってこの組織バンク中に局在させる ことができる。組織は、10%中性バッファーホルマリン(Sigma)を用い て数時間固定する。この組織はエタノール系列溶媒に通して脱水し、パラフィン に包埋し、切断し、スライド上に載置する。使用する前に、各セクションは脱脂 し、再び水分補給し、0.25%過酸化水素水で処理し、内因性ペルオキシダー ゼ活性をブロックする。非特異性タンパク質結合部位は、5%正常ヤギ血清(N GS)含有PBS中でスライドをインキュベートすることによってブロックでき る。スライドは、組換タンパク質に対して樹立したアフィニティー精製ウサギポ リクローナル抗体、又は、PBS−NGSで希釈し、洗浄し、その後PBS−N GS中でペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG/IgMを用いてインキュベ ートしたコントロール免疫前血清のいずれかを用いてインキュベートした。スラ イドはPBSで洗浄し、免疫反応性タンパク質はTrueBlueペルオキシダ ーゼ基質(KPL)、又は金増強染色を用いて染色し、可視化した。青又は黒の 沈殿物の存在は、免疫反応性タンパク質の存在を示す。 現在までに行われた精子表面タンパク質のマイクロシークェンス解析において 、熱ショックタンパク質90アルファに対する相同性(82%)、ガストリン結 合タンパク質に対する相同性(94.7%)、ヒトカルレティキュリンに対する 相同性(15のアミノ酸で100%)、マウス繊維状シースタンパク質に対する 相同性(64%)、及び血清アミロイド成分前駆体に対する相同性が見出された 。 マイクロシークェンシングを行ったタンパク質の約40%が新規であることが 判明した。 表Iは新規精子表面タンパク質のコーディネートを示す。 本発明の方法によって同定した膜表面タンパク質は、診断用途及び治療用途の 両者に用いられる。 細胞又は他の標的と膜表面タンパク質の結合を減少させたい場合又は阻害させ たい場合に、膜表面タンパク質に対する抗体を含む適当な阻害剤を導入し、膜表 面タンパク質とリガンド又は当タンパク質レセプターとの相互作用をブロックす ることができる。 本発明の膜表面タンパク質に対して擬態(mimicry)若しくは拮抗(antagonis m)を示す剤、あるいは該タンパク質の生成を制御する剤は、好適な担体を用い 、標的細胞、バクテリア又はウィルスの存在に関連する医学的に好ましくない状 態(adverse medical condition)を経験した患者に対しその治療用に各種手段 によって投与するのに効果的な強度で医薬組成物に調製することができる。各種 投与方法を用いることができるが、その中でも皮下注射、静脈内注射、腹腔内注 射、及びカテーテル法等の非経口投与方法が適している。膜表面タンパク質又は そのサブユニットの平均量は異なり、特に有資格の医師又は獣医師の推薦及び処 方箋に拠るべきである。 好適な実施態様においては、本発明は、精子細胞と卵子との相互作用を阻害す るか、精子の女性生殖道内の通過を阻害するか、あるいは、精子を固定化するた めに膜表面タンパク質又はその抗体を投与することに関し、言い換えれば避妊薬 に関する。 本発明の膜表面タンパク質及びポリクローナル抗体並びにモノクローナル抗体 を含む抗体は、一定の診断用途を有し、例えば、バクテリア又はウィルス感染、 精子細胞に対する免疫等の状態を検出し測定する目的に利用される。例えば、膜 表面タンパク質又はそのサブユニットは、それら自身のポリクローナル抗体及び モノクローナル抗体を各種細胞媒体中で作製する場合に使用されるが、これは例 えば、融合マウス脾臓リンパ球及び骨髄腫細胞を用いたハイブリドーマ法等の各 種公知の方法によって行われる。同様に、本発明の膜表面タンパク質の活性を模 倣し拮抗する小さな分子が、発見され若しくは合成されてもよく、また診断用及 び/又は治療用プロトコルに使用されてもよい。 全タンパク質に対するポリクローナル抗体の生成に代わるものとして、充分な アミノ酸配列をマイクロシークェンシングから得ることができ、合成ペプチド免 疫原の開発が可能である。これらペプチド免疫原は免疫避妊薬として使用できる 。あるいは、仮に目的のタンパク質のクローニングがRT−PCR、又はオリゴ ヌクレオチドや上記で調製したポリクローナル抗体を用いた直接ライブラリープ ロービングを用いて達成されなかった場合には、抗ペプチド抗血清をキメラペプ チドに対し生成することができる。この戦略において、アミノ酸配列は、介在リ ンカー(GPSL)(配列番号:2)を用いて破傷風トキソイドから得た乱雑T 細胞エピトープ(VDDALRNSTKIYSYFPSV)(配列番号:1)と 接合(conjugate)することができる。抗ペプチド抗血清は、続いてcDNA発 現ライブラリーのスクリーニングに使用できる。 組換抗原に対するポリクローナル抗体の産生は、雌性ニュージーランド白ウサ ギに、完全フロイントアジュバント(一回)及び不完全フロイントアジュバント (5回)を用いて組換抗原を投与する(約500μg)(3週間間隔で計6回注 射を実施)。血清は、第二回目の注射後、一週間毎に得ることができる。 アフィニティー精製抗体の産生において、臭化シアン活性セファロース(Si gma Chemical Co、St Louis MO)を精製組換抗原の 固定化相として使用できる。ポリクローナル抗体を、抗原アフィニティーカラム に注入し(pumped over)、抗体と結合する。結合した抗体は溶出し、各フラク ションをUV吸光度によってモニターする。各フラクションをプールし、抗ウサ ギIg試薬を用いてブロッティングすれば、どのバンド位置が精製Igであるか がわかる。精製IgGのELISA終点滴定を、一定量の組換抗原に対する同一 タンパク質濃度にて数バッチ行うことができ、これによって抗原結合の保持が示 される。 精子抗原の研究において、組換精子抗原に対するアフィニティー精製抗体を、 精子膜抽出物をロードした2次元ゲルのウェスタンブロットと免疫反応させるこ とができる。 精子機能アッセイを実施し、組換抗原に対するアフィニティー精製抗体が精子 表面上の生(native)の抗原に対し反応するか、また、精子の機能に影響を与える かを評価することができる。これらアッセイには免疫蛍光による精子上抗原の局 在化、FACSによる表面位置の確認、精子/卵子の試験[精子浸透アッセイ] 、精子/帯相互作用試験[ヘミ−ゾナ(Hemi-zona)アッセイ]、精子凝集試験 、及び精子固定化試験を含まれる。 ハイブリドーマによるモノクローナル抗体を生成する一般的な方法はよく知ら れている。不死の抗体生成細胞系は、腫瘍DNAを用いたBリンパ球の直接形質 転換、又はエプスタイン・バーウィルスを用いた形質移入等の融合以外の方法に よっても生成することができる。例えば以下の参考文献が挙げられる。M.シュ ライアー(Schreier)ら、「ハイブリドーマテクニック」(1980);ハンマ ーリング(Hammerling)ら、「モノクローナル抗体及びT細胞ハイブリドーマ」 (1981);ケネット(Kennett)ら、「モノクローナル抗体」(1980) 。更に以下の米国特許も挙げられる。米国特許第4,341,761号、第4, 399,121号、第4,427,783号、第4,444,887号、第4, 451,570号、第4,466,917号、第4,472,500号、第4, 491,632号、第4,493,890号。 膜表面ペプチドに対して生成したモノクローナル抗体のパネルは、各種特性、 すなわち、アイソタイプ、エピトープ、アフィニティー等によってスクリーニン グすることができる。特に所望されるモノクローナル抗体は、膜表面タンパク質 又はそのサブユニットの活性を中和する抗体である。高アフィニティー抗体も、 生の(native)又は組換による膜表面タンパク質の免疫アフィニティー精製が可能 な場合には有用である。 好ましくは、本発明の診断方法に用いる抗体はアフィニティー精製ポリクロー ナル抗体である。更に好ましくは、本発明の診断方法に用いる抗体はモノクロー ナル抗体(mAb)である。更に、本発明において用いられる抗体分子として好 ましいのは、全抗体分子の内のFab、Fab’、F(ab’)2、又はF(v )部分の形態である。 前の部分で提案したように、本発明の診断方法は、膜表面タンパク質に対する 結合パートナー(抗体、好ましくはアフィニティー精製ポリクローナル抗体、更 に好ましくはmAb等)の効果量を含んだアッセイ手段によって細胞サンプル、 血清サンプル又は媒体を検査することを含む。更に、本発明において用い られる抗体分子として好ましいのは、全抗体分子の内のFab、Fab’、F( ab’)2、又はF(v)部分の形状(form)である。前述したように、この方 法によって恩恵を受けることのできる患者には、バクテリア又はウィルス感染に 苦しんでいる患者、又は避妊を望んでいる患者が含まれる。 膜表面タンパク質を単離する方法、抗体を誘発する方法、及び抗体能力を決定 し、最適化して標的細胞の検査を補助する方法は公知である。ポリクローナル抗 ポリペプチド抗体の生成方法は公知である。例えば、ネスター(Nestor)らの米 国特許第4,493,795号が挙げられる。モノクローナル抗体、特に有用な 抗体分子のFab及び/又はF(ab’)2部分を含む抗体は、ハイブリドーマ 技術を用いて調製することができる。この技術は「抗体−ラボラトリーマニュア ル」、ハーロー(Harlow)及びレーン(Lane)編、コールド・スプリング・ハー バー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク(19 88)に記載されているが、これを本明細書の一部を構成するものとしてここに 援用する。すなわち、モノクローナル抗体組成物が産生したものからハイブリド ーマを形成するために、骨髄腫(ミエローマ)又は他の自己永久化(self-perpe tuating)細胞系を、膜表面タンパク質若しくはその結合部分を用いて高度免疫 した哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合する。 スプレノサイト(splenocytes)は通常、ポリエチレングリコール(PEG) 6000を用いて骨髄腫細胞と融合する。融合ハイブリッドはHATに対する感 度によって選択する。本発明を実施する上で有用なモノクローナル抗体生成ハイ ブリドーマは、膜表面タンパク質との免疫反応能力及び特異的な感染活性又は標 的細胞の受精を阻害する能力によって同定される。 本発明を実施するうえで有用なモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性を有 する抗体分子を分泌するハイブリドーマを含む栄養培地を用いた、モノクローナ ルハイブリドーマ培養の開始によって産生できる。この培養は、各条件下でハイ ブリドーマが抗体分子を培地中に分泌するのに充分な時間保持される。引き続き 抗体含有培地を採取し、抗体分子を更に公知の方法で単離できる。 これら組成物の調製に有用な培地は、公知であって市販されており、合成培養 培地、近交マウス等を含む。典型的な合成培地は、4.5mg/Lのグルコース 、 20mmのグルタミン及び20%のウシ胎児血清で補足したダルベッコ最小必須 培地(DMEM;ダルベッコ(Dulbecco)ら、Virol.8:396(195 9))である。典型的な近交系マウスはBalb/cである。 モノクローナル抗体の作製方法もまた公知である。(ニーマン(Niman)ら、 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:4949−4953( 1983)を参照。)一般に、膜表面タンパク質又はペプチドアナログは、単独 で若しくはモノクローナル抗体を生成する前記過程における免疫原として免疫原 生担体と接合して用いる。ハイブリドーマは、膜表面タンパク質と免疫反応する 抗体を生成する能力についてスクリーニングする。 本発明は、更に本発明の治療的方法を実施するうえで有用な治療用組成物を目 的とする。本発明の治療用組成物は、医薬として許容される賦形剤(担体)及び 一以上の膜表面タンパク質(すなわち、細胞、バクテリア又はウィルスの膜表面 タンパク質)、特に当タンパク質の精子抗原ポリペプチド又は当タンパク質のフ ラグメント(これは本明細書において有効成分と言及されているもの)を含む混 合物である。好ましい実施態様において、当組成物は精子抗原又は受胎阻害可能 なこの抗原の混合物を含む。 有効成分としてポリペプチド、アナログ又は活性フラグメントを含む治療用組 成物の調製は公知である。一般的に、このような組成物は、注射可能な様に溶液 又は懸濁液として調製するが、注射前の溶液又は懸濁液に適した固状物も調製で きる。調製の際には乳化も行われる。治療用有効成分は、医薬として許容され有 効成分と適合する賦形剤と混合することが多い。好適な賦形剤には、例えば、水 、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール及びこれらの混合物 等がある。更に必要であれば、当組成物は保湿剤又は乳化剤、及び/又は有効成 分の効果を高めるpH緩衝液等の補助剤を少量含んでもよい。 ポリペプチド、アナログ又は活性フラグメントは、医薬として許容される中和 塩の形状で治療用組成物に製剤することができる。医薬として許容される塩は、 酸添加塩(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基を用いて形成される)を含 み、これは塩酸又はリン酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマンデ ル酸等の有機酸を用いて形成する。遊離カルボキシル基から形成される塩は、水 酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又 は水酸化鉄等の無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エ チルアミノエタノール、ヒスチジン及びプロカイン等の有機塩基から派生する。 治療用ポリペプチド、アナログ、又は活性フラグメント含有組成物は、従来、 静脈内投与、例えば単位投与量の注射によって投与されてきた。本発明の治療用 組成物に関して用いられるターム「単位用量(unit dose)」とは、ヒトに対して 単回で用いる量として適した物理的に離散した単位(physically discrete unit s)を指し、各単位は、必要希釈剤(すなわち、担体又は賦形剤)に関連して、 所望の治療効果が得られる様計算された所定量の活性物質を含む。 本発明組成物は、投与剤形に適した方法で治療的有効量を投与される。投与量 は治療対象、有効成分を用いる対象の免疫システム能力、及び所望の結合能力の 程度によって異なる。投与に必要な有効成分の正確な量は、医師の判断によって 異なり、各個人に特有なものである。しかしながら、適切な投与量は、一日あた り各個人の体重1kgにつき有効成分にして約0.1〜20mg、好ましくは約 0.5〜10mg、更に好ましくは1〜数mgであり、投与経路によって異なる 。初回投与及びブースターショット(booster shot)についての適切な投薬計画 も異なるが、典型的には、初回投与の後、1時間以上の間隔をおいて注射又はそ の他の方法によって投与を繰り返す。あるいは、血液中10ナノモル〜10マイ クロモルの濃度を維持するのに充分な連続的静脈内注入を行っても良い。 本発明の治療用組成物は更に、膜表面タンパク質に対する拮抗薬又は抗体の有 効量、及び有効成分(抗生物質及びステロイド)の一以上の成分の有効量を含ん でもよい。 本発明の他の特徴は、標識、解析及び配列決定後に得たDNA配列によってコ ードしたタンパク質の発現である。当技術分野で良く知られているように、DN A配列の発現は、DNA配列を適切な発現ベクター中の発現コントロール配列に 対しオペラティブにリンクさせ、その発現ベクターを用いて適当な単細胞宿主を 転換することで達成される。 本発明DNA配列の発現コントロール配列に対するこの様なオペラティブな結 合には、当然の事ながら、もしすでにDNA配列の一部となっていない場合には 、 DNA配列の上流側の正確なリーディングフレーム内に開始コドンであるATG を提供することが含まれる。 各種宿主/発現ベクターの組み合わせを、本発明のDNA配列の発現に使用で きる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体、非染色体及びDNA配列のセグ メントによって構成される。好適なベクターとして、SV40の誘導体、及び公 知の細菌性プラスミド(例、E.coliプラスミドコルE1、pCR1、pB R322、pMBq及びそれらの誘導体、RP4等プラスミド)、ファージDN AS(例、ファージλの多数誘導体(例、NM989))、他のファージDNA (例、M13)及び糸状一本鎖ファージDNA、2μプラスミド又はその誘導体 等のイーストプラスミド、昆虫又は哺乳動物細胞に有用なベクター等の真核細胞 に有用なベクター、ファージDNA又は他の発現コントロール配列を使用できる ように変性されたプラスミド等のプラスミドおよびファージDNAの組み合わせ に由来するベクター等が挙げられる。 各種発現コントロール配列(その配列にオペラティブにリンクされたDNA配 列の発現をコントロールする配列)は上記ベクター内で使用され、本発明のDN A配列を発現する。この様な有用な発現コントロール配列には、例えば、SV4 0、CMV、ワクシニア、ポリオーマ又はアデノウィルスの初期又は後期プロモ ーター、lacシステム、trpシステム、TACシステム、TRCシステム、 LTRシステム、ファージλの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコ ートタンパク質のコントロール領域、3−ホスホグリセレートキナーゼ又は他の 解糖酵素のプロモーター、酸ホスファターゼ(例、Pho5)のプロモーター、 イーストα交配因子のプロモーター、及び原核細胞又は真核細胞又はそれらのウ ィルスの遺伝子の発現をコントロールするものとして知られている他の配列、及 びこれらの各種組み合わせが含まれる。 各種単細胞宿主細胞もまた、本発明のDNA配列の発現に有用である。これら 宿主には、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Str eptomycesの株等の公知の真核及び原核宿主、及びイースト等の菌類、 及びCHO、R1.1、B−W、及びL−M細胞等の動物細胞、アフリカミドリ ザルの腎臓細胞(例、COS1、COS7、BSC1、BSC40、及び BMT10)、昆虫細胞(例、Sf9)及び組織培養におけるヒト細胞及び植物 細胞が含まれる。 必ずしも、全てのベクター、発現コントロール配列及び宿主が本発明のDNA の発現に対して同等に機能しないことは理解されるであろう。また、同様の発現 システムに対しても全ての宿主が同等には機能しないであろう。しかし、当業者 であれば、過度の実験を行わなくても、適切なベクター、発現コントロール配列 及び宿主を選択することができ、本発明の趣旨を逸脱せずに所望の発現を得るこ とができるであろう。例えば、ベクターを選択する際、ベクターは宿主内で機能 できなければならないため宿主の選択を考慮しなければならない。また、ベクタ ーのコピー数、コピー数をコントロールする能力、及び抗生物質マーカー等のベ クターによってコード化された他のタンパク質の発現も考慮しなければならない 。 発現コントロール配列を選択する際、通常各種因子が考慮される。この因子に は、例えば、システムの相対強度、コントロール性、及び発現される特定のDN A又は遺伝子(特に潜在二次構造に関して)に対する適合性が含まれる。好適な 単細胞宿主は、選択したベクターとの適合性、分泌特性、タンパク質を正しく折 りたたむ(fold)能力、発酵の必要事項、また、発現されるDNA配列によってコ ードされた生成物の宿主に対する毒性、及び発現生成物の精製が容易であること を考慮に入れて選択される。 以上の因子及び他の因子を考慮に入れて、当業者であれば、発酵又は大規模動 物培養において、本発明のDNA配列によってコードしたタンパク質を発現する 、ベクター/発現コントロール配列/宿主の各種組み合わせを構築することがで きるであろう。 cDNAは、好ましくはE.coli発現ベクターpET22b(+)(No vagen,Madison,WI)中でバクテリオファージT7RNAポリメ ラーゼ/プロモーターシステムのコントロール下でクローン化される。もしあれ ば、内因性シグナルペプチドの代わりに、細菌性シグナルpelB配列を用いる ことができる。pETベクターにおける発現において、a)異種遺伝子がイン・ フレームでpelB配列と5’末端で融合する(生成タンパク質の細胞周辺腔へ の輸送を容易にするため)こと、及びb)異種遺伝子がイン・フレームで 6つのヒスチジンのストレッチ(his−tag)と3’末端で融合する(固定 化イオンアフィニティークロマトグラフィーによる精製用アンカーを提供するた め)ことは重要である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング戦略は、 充分な長さのタンパク質が必要な時にいつでも発現されるような遺伝子発現用構 築物の形成に使用できる。インサートは配列決定によって確認できる。抗原コー ド化領域を有するクローンは、37℃でアンピシリン(100μg/mL)添加 3Xテリフィックブロス(terrific broth)中で生育できる。細胞のA600が0 .6に到達した場合、0.4mMのIPTGの添加によって培養を誘発できる。 ネガティブコントロールとして、宿主細胞培養を同様の方法で処理することがで きる。 発現されたタンパク質の収穫時期を最適化するために、構築物についてE.c oli内誘発の経時的解析を行うことができる。組換構築物の大規模作製にあた っては、14リットルの培養をニューブルンスウィック(New Brunswick)ML 410ファーメンター内で育成することができる。カルボキシル末端の6つのヒ スチジン残基は、His−BindTM金属キレート化樹脂を用いたプロセス精製 方法を容易にする。単離した組換抗原の最終純度を確認するため、精製した生成 物の濃度を変えて負荷したSDS−PAGEゲルにクーマシーブルー[アミノブ ラック]及び銀染色を施すことができる。 組換タンパク質に対して生成されたアフィニティー精製抗体は、2次元免疫ブ ロット上で試験し、当初選択された同一のタンパク質スポットが免疫反応的であ るかどうか決定し、これによって所望のcDNAを得たという付加的[免疫学的 同一性の]証明を与える。これらの抗体が免疫蛍光及びFACSにおいて精子表 面と結合するかどうか調べ、各種インビトロアッセイにおいてこれら抗体のタン パク質機能への影響を評価することによって、細胞又はウィルス表面を介した所 定のタンパク質に対する機能上の役割を確認することができる。 本発明の範囲内で得られたタンパク質のヌクレチド配列から更に膜表面タンパ ク質アナログを調製することも企図される。フラグメント等のアナログは例えば 、ゲル分析で分離した物質のペプシン消化によって作製し、又は組換手法で作製 する。突然変異タンパク質等の他のアナログは、コード化配列の標準的な部位特 異 的突然変異誘発によって生成される。 上述したように、膜表面タンパク質をコードするDNA配列はクローン化でな く合成によって調製できる。DNA配列は、アミノ酸配列に対する適切なコドン を用いて設計することができる。一般に、DNA配列が発現に用いられる場合、 所期の宿主に対して最適なコドンを選択する。完全配列は、標準方法により調製 したオリゴヌクレオチドをオーバーラップさせることによって構築され、完全な コード化配列へと組立てられる。エッジ(Edge)、Nature、292:75 6(1981);ナンベアー(Nambair)ら、Science、223:129 9(1984);ジェイ(Jay)ら、J.Biol.Chem、259:631 1(1984)等を参照。 合成DNA配列によって、膜表面タンパク質アナログ又は「突然変異タンパク 質」を発現する遺伝子の構築が容易になった。また、DNAコード化突然変異タ ンパク質は、生来の遺伝子又はcDNAの部位特異的突然変異誘発によって生成 可能であり、突然変異タンパク質は、従来のポリペプチド合成によって直接生成 できる。 本発明は、翻訳段階で膜表面タンパク質発現の阻害に用いられるアンチセンス オリゴヌクレオチド及びリボザイムの調製にまで適用できる。このアプローチは アンチセンス核酸及びリボザイムを用いて、特異的mRNAの翻訳を阻害するも のであり、この阻害はアンチセンス核酸によるmRNAのマスキングか、又はリ ボザイムによるmRNAの切断によって行われる。 アンチセンス核酸は、特異mRNA分子の少なくとも一部に相補的なDNA又 はRNA分子である。(ワイントローブ(Weintraub)、1990;マーカス− セクラ(Marcus-Sekura)、1988を参照。)細胞内で、アンチセンス核酸は mRNAとハイブリッド化し、二本鎖分子を形成する。細胞はこの二本鎖体にお いてmRNAを翻訳しない。従って、アンチセンス核酸はmRNAのタンパク質 への発現を阻害する。AUG開始コドンに対してハイブリッド化する約15のヌ クレオチド及び分子からなるオリゴマーは特に効果的であるが、これは合成が容 易であり、細胞内に導入する場合、大型分子に比べて問題が少ないためである。 アンチセンス法は、インビトロで多数の遺伝子発現の阻害に使用されてき た(マーカス−セクラ(Marcus-Sekura)、1988;ハンバー(Hambor)ら、 1988)。 リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと幾分類似した方法で一本鎖R NA分子を特異的に切断する能力を有するRNA分子である。リボザイムは、あ るmRNAがそれ自身のイントロンの切除能力を有するという観察から見出され た。このRNAのヌクレオチド配列を改変することによって、研究者らは、RN A分子内の特異ヌクレオチド配列を認識しそれを切断する分子の設計をすること ができるようになった(セック(Cech)、1998)。リボザイムは配列特異的 であるため、特定の配列を有するmRNAだけが不活性化する。 研究者らは、二種類のリボザイム、即ちテトラヒメナ(Tetrahymena)型及び「 ハンマーヘッド」型を同定した(ハッセルホッフ(Hasselhof)及びガーラック (Gerlach)、1988)。テトラヒメナ型リボザイムは4つの塩基配列を認識 し、一方、「ハンマーヘッド」型は11〜18の塩基配列を認識する。認識配列 が長くなるほど、標的mRNA種においてより排他的になる。従って、特異mR NA種の不活性化に関しては、ハンマーヘッド型リボザイムの方がテトラヒメナ 型リボザイムより好ましく、18の塩基認識配列がより短い認識配列よりも好ま しい。 本明細書に記述したDNA配列は、この様に膜表面タンパク質とそのリガンド に対するアンチセンス分子、及び膜表面タンパク質とそのリガンドについてのm RNAを切断するリボザイムの調製に使用される。 本発明は更に、各種診療用途に関するものであり、膜表面タンパク質に結合す る能力又はそのタンパク質の結合に匹敵する能力に基づいて、特定細胞又は病原 菌又はそれに対する(すなわち、患者の血清内)抗体の存在を検出する方法を含 む。前述した様に、本発明の膜表面タンパク質は、各種公知技術によってそれ自 身に対する抗体を産生するために使用でき、この抗体は単離可能で、特定標的細 胞又は病原菌の存在確認試験に使用できる。この抗体は、細胞表面タンパク質、 特に精子タンパク質の分析に使用され、特性化精子凝集、精子固定化、表面免疫 蛍光、FACS分析、精子浸透アッセイ、ヘミゾナ(hemi-zona)アッセイ及び 2−D表面マップの局在化に使用される。 前で詳細に述べた様に、抗体は周知のハイブリドーマ技法を含む標準法で作製 し、単離できる。簡便のため、本明細書では、膜表面タンパク質に対する抗体を Ab1とし、他の種で産生した抗体をAb2とする。 膜表面タンパク質のレパートリーを含む細胞又は病原菌の確認は、この確認に 適用される通常の免疫学的手順によって実施可能であり、数々の有用な手順が知 られている。特に有用な3つの手順では、検出可能な標識で標識した表面タンパ ク質、検出可能な標識で標識した抗体Ab1、又は検出可能な標識で標識した抗 体Ab2のいずれかを用いる。この手順は下に示す式によってまとめることがで きる。尚、式中、アスタリスク(*)は粒子が標識されていることを示し、「M SP」は膜表面タンパク質をさす。 A.MSP*+Ab1=MSP*Ab1 B.MSP+Ab*=MSPAb1 * C.MSP+Ab1+Ab2 *=MSPAb1Ab2 * 以上の手順及びその応用は、当業者にとってすべて良く知られているものであ り、よって本発明の範囲内で使用できる。手順Aの「競合的」手続き手順は、米 国特許第3,654,090号及び第3,850,752号に記載されている。 手順Cの「サンドイッチ」手順は米国特許第RE31,006号及び第4,01 6,043号に記載されている。もう一つの手順は、「二重抗体」又は「DAS P」手順として知られている。 各例において、膜表面タンパク質は一以上の抗体又は結合パートナーと複合体 を形成し、複合体のーメンバーは検出可能な標識で標識する。複合体が形成され たという事実及び必要であれば複合体の量は標識検出に適用可能な公知の方法で 決定できる。 上記のことからわかるように、Ab2の特性はAb1と反応するということであ る。これは、一つの哺乳類動物種で産生したAb1が、他の種において抗体Ab1 を産生する抗原として使用されたという理由による。例えば、Ab2はウサギ抗 体を抗原として用い、ヤギの体内で産生する。従って、Ab2はヤギの体内で産 生した抗ウサギ抗体である。本明細書の記述及び請求項の目的において、Ab1 は一次抗体又は抗膜表面タンパク質抗体を意味し、Ab2は二次抗体又は 抗Ab1抗体を意味する。 これらの研究に最も日常的に使用される標識は、放射性物質、酵素、及び紫外 線その他に暴露した時に蛍光を発する化学物質である。 多くの蛍光物質が知られており、標識として使用できる。例えば、フルオレセ イン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー及びルシファ ーイェローが挙げられる。特に言及される検出材料はヤギの体内で産生し、イソ チオシアネートを介してフルオレセインと結合させた抗ウサギ抗体である。 膜表面タンパク質及びその結合パートナーは、放射性物質又は酵素を用いて標 識できる。放射性標識は現在利用可能なカウント方法によって検出できる。好適 な同位元素は、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59 Fe、90Y、125I、131I及び186Reから選択される。 酵素標識も同様に有用であり、現在使用されている比色法、分光光度法、蛍光 分光光度法、電流滴定法又はガス分析法によって検出できる。酵素は、カルボジ イミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド等の架橋分子との反応によって 選択された粒子と結合される。この手続きに使用できる酵素の多くは公知であり 、使用できる。好適な酵素としては、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ 、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコー スオキシダーゼプラスペルオキシダーゼ及びアルカリ性ホスファターゼが挙げら れる。米国特許第3,654,090号、第3,850,752号及び第4,0 16,043号はオールタネート(alternate)標識物質及び方法を開示するもの ものの例として言及される。 本発明の更なる実施態様において、医療専門家による使用に適した市販用試験 キットを提供し、疑わしい標的細胞上膜表面タンパク質レパートリーの存在の有 無を決定する。上記の試験技法に従って、このようなキット中の一範疇のものは 、少なくとも標識済膜表面タンパク質又はその結合パートナー(例、それらに特 異的な抗体)及び、「競合性」、「サンドイッチ」、「DASP」等の指示書( 当然の事なから、選択する方法によって異なる)を含む。このキットには更に、 バッファー、安定剤等の補助試薬も含まれる。 すなわち、細胞又は病原菌の存在に対する細胞の存在又は能力を示すために提 供される試験キットは以下のものを含む。 (a)本発明の膜表面タンパク質又はそれと特異的に結合するパートナーを検 出可能な標識に対し直接的に又は非直接的に結合して得た、少なくとも一つの標 識済免疫化学的反応性を有する成分の所定量、 (b)他の試薬類、及び (c)前記キットの使用説明書。 更に詳細には、本発明の診断用キットは以下のものを含む。 (a)一般にはイムノソルベントを形成するように固相と結合された、あるい は、適切なタグ又は複数の最終製品等(又はその結合パートナー)と結合された 、上述の膜表面タンパク質(又は結合パートナー)の所定量、 (b)必要であれば、他の試薬類、及び (c)前記試験キットの使用説明書。 更には、本発明の試験キットは、上記の目的のために提供及び使用され、所定 のプロトコル(例、「競合性」、「サンドイッチ」、「二重抗体」等)に従って 操作を行い、以下のものを含む。 (a)本発明膜表面タンパク質と検出可能標識とのカップリングによって得た 標識済成分、 (b)少なくとも一つはリガンド又は固定化リガンドであり、そのリガンドが 以下の群から選択される様な、一以上の追加免疫化学的試薬類、 (i)標識済成分(a)と結合可能なリガンド、 (ii)標識済成分(a)の結合パートナーと結合可能なリガンド、 (iii)決定される少なくとも一つの成分と結合可能なリガンド、 (iv)決定される少なくとも一つの成分の結合パートナーの内の少なくと も一つと結合可能なリガンド、及び (c)本発明の膜表面タンパク質とその特異的結合パートナー間での免疫化学 的反応によって得た一以上の成分を検出、及び/又は決定するためのプロトコル を実施するための指示書。 上記に従って、本発明膜表面タンパク質の結合や活性を変化させる効果を有す る、医薬となりうる物質をスクリーニングするためのアッセイシステムが提供さ れる。膜表面タンパク質を試験システムに導入し、また、該医薬候補の物質も得 られた細胞培養中に導入し、その後培養物を試験して、細胞の活性又は結合の変 化を観察し、その変化がその医薬だけの添加によるものか又は公知の膜表面タン パク質の添加量の効果によるものかを観察する。好適なアッセイは、精子運動性 アッセイ又はインビトロ受精を含む。更に、好適な動物モデルは、特に受精能試 験にはマウス及びマカクを含む。 本発明の膜表面タンパク質は、ワクチンとして、又は精子抗原の場合には避妊 薬としても使用される。 一旦、数種の独立した(unique)精巣特異的精子表面免疫原が同定された場合、 この免疫原は、選別(triage)システムを用い、避妊進展パスウェイをスムーズ に効率よく移行する。候補分子は、少なくとも一つの機能試験において、表面局 在、精巣特異性及び活性の厳密な規準(strict criteria)に適合しなければな らない。cDNAがクローン化され配列決定されたタンパク質は、組織特異性に ついて試験を行う。精巣特異的である場合には、組換タンパク質として発現し、 その組換タンパク質に対する抗体が産生する。この抗体は、機能アッセイにおい て免疫原性エピトープの表面局在及び生物学的効果の確認に使用される。 方向性を有する(vectorial)標識方法によってヒト精子表面タンパク質上に 露出していることが重ねて示されたタンパク質には、不妊血清によって定義され た同種抗原、精管切除した男性から得た血清によって定義された自己抗原、及び 精子凝集を誘発する抗原がある。これらのタンパク質は免疫避妊用候補である。 自己免疫の合併症を避けるために特に重要なことは、免疫避妊生起用に選択さ れた分子が組織特異性を示すこと、すなわち、所期の標的組織、精巣及び精子内 のみで発現することがである。後に行う毒性的及び奇形学的安全性研究時よりも 、痘苗原発見フェーズで組織特異性を扱うのが賢明である。この戦略は、組織内 に広く分布した免疫原に関して時間及び資源の不必要な消費を最小限に抑え、こ れによって、免疫病理学の誘発が可能である。避妊ワクチンを用いた免疫につい て起こり得る合併症には、1)急速な過敏症及びアナフィラキシー応答、2)遅 延過敏症応答、及び3)自己免疫応答及び免疫体の内因性抗原との免疫反応によ る自己免疫疾患が含まれる。これら懸念の多くは、精巣及び精子に特異的な非交 叉 免疫原の選択によって取り除くことができる。本発明避妊用免疫原の組織特異性 を免疫組織化学的なノーザン技法及びRT−PCRによって研究することによっ て、重要且つ支持的な証拠が提供される。ノーザンブロット及びRT−PCRは 、mRNAレベルでの組織特異性を立証するものであるが、別の無関係な分子に 存在するかもしれない(構造的折りたたみ(folding)又は別タイプの分子類似性 (mimicry)のため)選択された痘苗原に存在するエピトープを検出することは できないかもしれない。従って、免疫組織化学的試験は、分子学的方法を補完し 、一次アミノ酸配列の比較のみに基づいては予想できなかった交叉反応性エピト ープを明らかにするものである。 ノーザンブロット、RT−PCR及び免疫組織化学的方法を組み合わせること によって、自己免疫疾患をもたらす危険性の少ない配偶子特異性抗原を同定する ことができる。この組み合わせは、所定のタンパク質が最初に発現する精子形成 段階に関する情報を提供し、得られた精巣特異的遺伝子が減数分裂前後で活性で あるという洞察を与える。この様な知識は、転写調節の研究における減数分裂後 の遺伝子の同定、精子形成を調節する手段をみいだすために採り得るルート、及 び男性用避妊薬の開発と密接に関係している。 候補精子免疫原の免疫原性及び授精能試験を進めるため、この免疫原の相同体 をマウス及びサルにおいてクローン化し、組換タンパク質を発現させ精製する。 サル及びマウスの相同体は、以前に文献で報告された精巣ライブラリーを用い てクローン化できる。[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84 :5311−5315(1984);Mol.Repd.Dev.34:140 −148(1993)] 雌性B6AF1マウス(6〜8週令)は、約20μgの同種組換免疫原を用い て免疫感作することができる。免疫原は同量の完全フロイントアジュバント(C FA)を用いて乳化可能であり、最終的に100μLの容量にする。対照群の動 物にはPBS/CFAを投与する。各動物の尾の根元2箇所に注射する。不完全 フロイントアジュバントにおける2〜3回のブースター免疫感作は、2週間間隔 で実施できる。血液は尾からの瀉血によって、免疫感作前、免疫感作後2週間目 、及び各ブースト後7〜10日目に採取する。血清は、標的としての精子抽 出物及び組換免疫原を用いたELISAによって抗体に対しアッセイする。血清 は更に、マウス精子の免疫蛍光分析及び精子抽出物の免疫ブロット分析によって 、生(native)のタンパク質に対する反応性に関し試験する。組換免疫原を用いた 最終ブーストの一週間後に、各雌性マウスを、生殖能を有することを確認済みの 雄性マウスと共に継続的にハウスに入れる。各雌性マウスについては、交尾が行 われたことを示す膣栓の存在を毎朝確認する。雄性マウスの導入後15日目に雌 性マウスを殺し胎児の数をカウントする。 マカクに対しても、スクアレン−アラセルAに溶解した500μgの同種組換 免疫原を筋注することができ、引き続き200μgの同種組換免疫原又は対照ス クアレンを用いたブースター免疫感作を3週間間隔で行う。血清、子宮頚部粘液 、及び輸卵管液(oviductal fluid)(外科的に移植した輸卵管カニューレを介 して)は、免疫感作前、及び一週間間隔で採取する。抗体は、組換免疫原及び生 (native)の精子抽出物標的の両方についてELISAによって評価できる。上記 血清は更に、サル及びヒトの精子及び精子抽出物を用いた免疫ブロット及び免疫 蛍光分析によって、生タンパク質に対する反応性についての試験が可能である。 上記血清は更に、精子機能試験を示す能力についての試験が可能である。精子表 面と交差反応し、少なくとも一つの機能試験を阻害する組換免疫原に対して高い 抗体価を引き出す免疫原については、稔性試験を行う。 稔性試験では、マカクを用い、上記のように組換免疫原(動物個体数15)又 は対照スクアレン(動物個体数15)で免疫感作する。血清は、免疫感作前、及 び一週間間隔で採取する。抗体は、ELISA、ウェスタン及び免疫蛍光分析に よって評価する。最後の免疫感作に続いて、各雌性サンプルは、予定排卵3日前 から始まるサイクルの妊性期間に、妊性のある雄性マカクと5日間共棲させる。 最初の免疫感作後の第3サイクルで交配が始まり、その後9サイクル間、又は妊 娠が確認されるまで続く。妊娠は、抗プロゲステロン剤であるサルプロストン( sulprostone)の投与によって中断させる。毎日観察して、妊娠第6週以前の中 絶を検出する。 妊性試験において、ワクチン投与サンプル及び対照サンプル間での妊性率の有 意性試験は、主にノンパラメトリック無作為法によるものである。フィッシャー の検定(Fisher's exact test)及び二項比率に基づく試験が実施できる。更に 、ワクチン投与グループ及び対照グループにおける妊性及び不妊性サンプル数の 有意差は、従来のχ二乗分析によって決定できる。妊娠までの時間は、生存曲線 のノンパラメトリック比較、マンテル−ヘンツェル(Mantel−Haens zel)試験、各種確率モデル及び比例危険回帰(proportional hazards regre ssion)モデルを含む各種生命表方法を用いて分析できる。同様の方法は、抗体 価と妊性に対する時間の結果との関係を調べるのに使用できる。研究結果次第で 、例えば、ワクチン投与妊性サンプルの抗精子抗体レベルとワクチン投与不妊性 サンプルのそれとの比較が有用であることが証明される。あるいは、異なる期間 で妊性になったサンプルの抗精子抗体レベルが比較される。継続的に結果を与え るグループ応答には、ノンパラメトリックのウィルコックス・ランク・サム(W ilcox rank sum)検定及び通常の2サンプル間t−検定を用い、 2種類のサンプル間の比較を行うことができる。場合によっては、データに重み 付けを行ったりデータ変換を行った上で回帰モデル(分散及び共分散解析を含む )を解析し、モデル適合性を改善して統計的評価及び推測を最適化する。 マウス又はサルを免疫感作さることによって高度な不妊性がもたらされれば、 この結果は免疫原の継続調査を正当化する。霊長類における有効性が高いという ことは、ヒト免疫原がヒト免疫原性試験の処方において有用であることを示す( フェーズI)。妊性に対する効果が中程度である場合、当免疫原をマルチデター ミナントな避妊ワクチン調製物の一成分として含有させることが正当化される。 またもし免疫原が効果を示さない場合、この結果によって、1)当免疫原を更な る研究の対象からはずすか、又は2)雌性生殖道においてより高くより持続的な 抗体価を誘発する別のデリバリーシステムについて当免疫原を再試験すること、 を考えるべきである。 実験グループにおいて、所定の免疫原に対して75%以上の不妊性が得られた 場合、二つのオプションが考えられる。すなわち、1)不妊動物との交配を続け 、可逆性/不妊継続性研究を始める、または2)組織病理学的検討を実施する。 後者が選択された場合、妊性試験の終結時にワクチン投与雌性サンプルから組織 を 得て、固定液に浸漬する。標準的なホルムアルデヒド固定、パラフィン包埋及び H&E染色は、小脳、大脳(前頭及び側頭領域)、脳幹、心筋、背部大動脈、骨 格筋、膵臓、脾臓、レター、副腎、胃、胆嚢、十二指腸、空腸、結腸、腎臓、膀 胱、卵巣、子宮、乳腺、臍帯及び耳下腺について実施できる。 精子抗原に対する効果的な避妊ワクチンには、雌性生殖道における最大抗体価 を引き出す免疫応答が要求される。精子抗原SP−10を用いた全身免疫感作は 輸卵管液においてIgG抗体応答を誘起し、子宮頚部内免疫感作は別の効果的な 免疫経路をもたらす。全身免疫感作だけでは免疫原生試験時に生殖道液において 充分量の抗精子抗体が得られない場合、雌性マカク生殖道液内でIgA及びIg G抗体量を選択的に増加させる子宮頚部内免疫感作を含む免疫感作レジメンを試 験できる。 ここまで本発明を一般的に述べてきたが、具体的実施例を参照することによっ て更なる理解を得ることができよう。ただし、これらの実施例は本明細書におい ては説明の目的のみで提供するものであり、特に断らない限り本発明を限定する ものではない。 実施例 実験手順 材料 過硫酸アンモニウム塩、BSA、クエン酸、PMSF(フェニルメチルスルホ ニルフルオリド)ジエタノールアミン、グリセロール、尿素(シグマ・ウルトラ :Sigma Ultra)、トリズマ・ベース(Trizma Base)、ノニデットP40(Noni det P40)、CHAPS、PDA(N,N'-ジアクリロイルピペラジン)、DT T、ヨードアセトアミド、ロイペプチンおよびペプスタチンAをシグマ(Sigma )社から入手した。EDTAは、J.T.ベーカー(Baker)社から購入した。 硝酸銀はマリンクロット・ケミカル(Mallinckrodt Chemicals)社から購入した 。重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよび水酸化ナトリウム(すべてACSグ レード)はフィッシャー(Fisher)社から購入した。SDS(ドデシル硫酸ナト リウム、超高純度)、グリシン(電気泳動グレード)、およびリン酸ナ トリウムはICN社から入手した。2D電気泳動用のパーコール(Percoll)、 pH3.5−5、pH5−7、pH7−9およびpH3.5−10の両性電解質 (Ampholines)、pH6.5−9、pH5−8、およびpH8−10.5のファ ーマライト(Pharmalyte)ならびにカルバミル化検定キットはファルマシア・バ イオテック(Pharmacia Biotech)社から購入した。ウエスタン・ブロット分析 用の増幅化学発光(ECL)キットは、(ペルオキシダーゼ接合物の検出用は) アマーシャム(Amersham)社から、また(アルカリ性ホスファターゼ接合物の検 出用は)トロピックス(Tropix)社から入手した。ブロットしたタンパク質を染 色するためのプロトゴールド(Protogold)はゴールドマーク(Goldmark)社か ら購入した。TLCK(N−p−トシル−L−リシンクロロメチルケトン)およ びTEMEDはベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)社から購入 した。レクチン接合物はベクター(Vector)社から購入した。キャリアを含まな いNa125Iはアマーシャム(Amersham)社から購入した。増幅用スクリーンNE F−490とNEF−491はデュポン(Du Pont)社から購入した。HRP接 合アビジンと2−D SDS−PAGEの標準はバイオラッド(BIO-RAD)社か ら入手した。NHS−LC−ビオチン、ヨード・ビーズ(Iodo-Beads)とAP接 合アビジンはピアース(Pierce)社から購入した。ウエスタン・ブロットで使用 したすべての2次抗体はジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch Lab.)研究所から入手した。 実施例1 精子の調製 精液試料を健常青年からマスターベーションにより入手した。正常な精子パラ メータ(28)を有する射精液だけを本研究に使用した。個々の精液サンプルを 室温で液化(通常、1/2から3時間)し、パーコール密度勾配遠心分離によっ て成熟精子を、精漿、未成熟胚細胞、および非精子細胞(大部分は白血球細胞と 上皮細胞)から分離した。液化した精液を、ハムのF−10培地中で調製した8 0%(1mの下層)と55%(2mLの上層)の等張性パーコール(Percoll)溶 液からなる2層のパーコール密度勾配に注意深くかけた。室温で18分間、 300×gの遠心分離を行なった後、80%層の下部の精子ペレットを集め、4 50×gの遠心分離によりハムのF−10培地中で3回洗浄した。最後の遠心分 離の前に細胞数を計測し、ペレットはベクトル標識付けに使用した。光学顕微鏡 を使用して運動能力のある成熟精子が濃縮されていることを確認し、すべてのサ ンプルが>90%の運動性を示したことを確認した。 実施例2 精漿(Seminal plasma)の分析 精管切除した二人の検体からの精漿サンプルを2Dゲル電気泳動により分析し た。集めたサンプルを室温で液化し、顕微鏡により精子あるいは未成熟胚細胞が 存在しないことを確認し、10,000×gで5分間遠心分離して非胚細胞およ び前立腺結晶を除去し、アリコート(等分標本)を−70℃で次に使用するまで 保存した。 実施例3 放射ヨウ素化 パーコールで精製した精子をハムのF−10培地中に懸濁させ、最終濃度を2 0×106/mLとした。洗浄したヨード・ビーズ(精子8×106ごとに1ビー ズ)と、担体を含まないNa125I(106精子当たり10uCi)をサンプルに 加えた。放射標識はサンプルを振動テーブル上で20℃で10分間インキュベー トして行なった。ピペット操作により細胞をヨード・ビーズから離し、直ちに2 回目のパーコール密度勾配遠心分離に付した後、ハムのF−10培地中で3回洗 浄した。最終洗浄前に細胞数を計測し、得られたペレットを精子タンパク質の抽 出(下記参照)に供した。オートラジオグラフィ(放射写真撮影)は、構成物を 順番に並べたサンドイッチ、すなわち、増幅用スクリーン、ブロット、2層フィ ルムおよび増幅用スクリーンのサンドイッチ、を使用して行なった。X線フィル ムは常法通り3週間曝露した。 実施例4 ビオチン化 パーコールで精製した精子を、3mg/mLのNHS−LC−ビオチン(〜5 mM)を含むダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁させ、最終濃度を50 ×106精子/mLとした。サンプルを振動テーブル上で37℃で10分間イン キュベートして精子表面をビオチン化した。次にこの精子を2回目のパーコール 密度勾配遠心分離にかけた後、ハムのF−10培地中で3回洗浄した。最終洗浄 前に細胞数を計測し、得られたペレットは溶解用または−70℃の保存用とした 。 ビオチン化タンパク質の検出を最適化するための予備検討を行なった結果、N C膜への電気的転写後のビオチン化精子タンパク質の検出手順を以下の通りとす ることとした:2Dウエスタン・ブロットをpH7.4のPBSで2回洗浄し、 ニトロセルロース膜上の余剰の結合部位を、5%のゼラチンと0.1%のツイー ン20(Tween 20)を含むPBS中で1時間、20℃でインキュベートすること により遮断した(29)。次いでこれをPBS中で5分間洗浄し、アルカリ性ホ スファターゼ接合アビジン(0.5%のゼラチンと0.01%のツイーン20を 含む250mLのPBS中に50μL)で1時間、20℃でインキュベートした 。CSPDを基質とするアルカリ性ホスファターゼの化学発光検出を製造会社( トロピックス:TROPIX)の指示に基づいて行なった。APの比色検出を、前述( 17)の通りBCIPとNBTを基質に用いて実施した。5人のドナーのサンプ ル(放射ヨウ素化で調べた4人のドナーのうちの2サンプルを含む)を、この方 向性を有する標識技法により調べた。 実施例5 溶解手順 精子を常法通り、2%(v/v)NP−40;9.8M尿素;100mMDTT ;2%(v/v)両性電解質、pH3.5−10;ならびにプロテアーゼ・インヒ ビターとして2mM PMSF、5mMヨードアセトアミド、5mM EDTA 、3mg/mLTLCK、1.46μMペプスタチンAおよび2.1μM ロイ ペプチンを包含する細胞溶解緩衝液(A)中に溶解させた。1mL当たり5×1 08個の細胞を、4℃で60分間、一定の振動を与えて溶解させた。不溶性物 質を10,000×gで2分間遠心分離して除去し、上清を1次電気泳動測定に かけた。精管切除検体からの凍結精漿サンプルに、上述のプロテアーゼ・インヒ ビターを含む4倍量の細胞溶解緩衝液Aを加えて解凍した。 その他の実験では、2%(w/v)SDS、3%(w/v)CHAPS、7.2M尿 素、100mMDTT、pH3.5−10の4%両性電解質ならぴにプロテアー ゼ・インヒビターを含むアニオン性/両性溶解緩衝液(B)[ホックストラッサ ー(Hochstrasser)(30)による]を使用した。溶解は22℃で45分間行な い、精子濃度は1mL当たり3.5×108であった。サンプルはDNAの変性 を少なくするために、5分ごとにマイクロ遠心分離管を逆さまにすることにより 撹拌した。なぜならば、SDSや還元剤の存在下での振とうや加熱は、核エンベ ロープの溶解と超らせんDNAの展開を引き起こすからである(ナービー−ハン セン[Naaby-Hansen]およびベジェラム[Bjerrum]による未発表の試験結果) 。タンパク質濃度は,製造会社の指示に基づいてウシ血清アルブミン(BSA) を標準に用いて、ピアースのバイオシンコニン酸法(Pierce biocinchoninic ac id method)を利用して測定した。 実施例6 電気泳動 等電点電気泳動(IEF)を、15×0.15cmのアクリルアミド・ロッド 中で、ホックストラッサー(Hochstrasser)ら(30)またはセルズ(Cells) ら(16)によるゲル組成物のいずれかを用いて実施した。担体の両性組成物は 1ロッド当たり、20%がpH5−7、20%がpH7−9、60%がpH3. 5−10;または28%がpH3.5−5、20%がpH5−7、7%がpH7 −9、45%がpH3.5−10のものとした。1ロッド当たり65μLの精子 抽出物(タンパク質約0.15mg)または35μLの精漿サンプル(タンパク 質約0.15mg)を使用した。チューブにはサンプルを、5%NP−40、1 %両性電解質pH3.5−10、8M尿素および100mMDTTを含む緩衝液 と共に静かに流し込んで充填した。フォーカシング(濃縮分離)は、200Vで 2時間、500Vで5時間、800Vで4時間、1200Vで6時間 および2000Vで3時間の電圧ステップで、合計19,300ボルト-時間行 なった。 非平衡pH勾配電気泳動(NEPHGE)を、セリス(Celis)らに記載のゲ ル組成物(16)を使用して、14×0.15cmのアクリルアミド・ロッドで 実施した。担体の両性電解質組成は、37%pH5−8、13%pH6.5−9 、37%pH8−10.5および13%pH3.5−10とした。1ロッド当た り55μL(タンパク質約0.13mg)の精子抽出物、または30μLの精漿 サンプル(タンパク質約0.13mg)を適用した。これらのタンパク質濃度は 、ホックストラッサーのプロトコルを使用したIEFゲル上でわずかに高い濃度 で達成されるものと同様のスポット・サイズをNEPHGEゲル上で示した。電 気泳動は400ボルトで11時間、および600ボルトで9時間の合計9800 ボルト-時間実施した。 二次元SDS-PAGEは、プロティーンII xiマルチセル装置(バイオラッ ド)中で直線勾配ゲル(T=7.5−15%または9−15%)を使用した厚さ 0.15cm、16×16cmまたは16×20cmのスラブ・ゲル中で実施し た。銀染色はホックストラッサーら(30)の方法に基づいて実施した。ニトロ セルロース膜への電気的転写は前述(23)のように行った。PVDF膜(穴サ イズ0.2μm、ピアース)への電気的転写はマツダイラ(Matsudaira:32) (10mM3-[シクロヘキシルアミノ]−1−プロパンスルホン酸、10%メ タノール、pH11)のトランスファー・バッファー組成物を使用してヘリツェ ル(Herizel:31)らに記載の方法で実施した。通常は、同じ電力源に接続し た3つのトランスブロット・セル(バイオラッド)を使用して、一定電流0.5 Aを2時間かけて、6個の2−Dゲルを同時に転写させた。 実施例7 イムノブロッティング分析 2−D分離ポリペプチド電気泳動転写の後、固定化膜をPBSpH7.4中で 5分間2回洗浄し、過剰結合部位を、5%ドライミルクと0.05%ツイーン2 0を含むPBSpH7.4中で、室温で30分間インキュベートしてブロッ クした。2−Dブロットを100mLの一次抗体とともに一定の緩やかな振動下 で、22℃で2時間、または4℃で一晩インキュベートした。以下の抗体を使用 した:抗アクチン(マウスmAbクローンC4、ベーリンガー・マンハイム、0 .3μg/mL)、抗−β−チュービュリン(マウスmAbTu27BC、ハイ ブリドーマ上清、バージニア大学ロバート・ブラッドグッド博士(Dr.Robert B loodgood)から寄贈、稀釈1:5)、抗−α−チュービュリン(マウスmAb、 クローンDM−1A、シグマ、稀釈1:10,000)、抗−SP−10(マウ スAbMHS−10、稀釈1:5,000)、抗繊維質鞘タンパク質(マウスm AbS69、ブリティッシュ・コロンビア州、バンクーバー大学C.G.リー博 士(Dr.C.G.Lee)から寄贈、稀釈1:1,000)ならびに抗−PH−20 (ウサギポリクローナルAbR−10、UCデービスのポール・プリマコフ博士 (Dr.Paul Primakoff)より寄贈、稀釈1:3,000)。二次酵素接合抗体( ヤギ抗マウスIgおよびヤギ抗ウサギIg)をPBS+0.05%ツイーン20 に1:5000稀釈し、ブロットを20℃で1.5時間インキュベートした。こ れら二次抗体はいずれもブロットしたヒト精子タンパク質には結合しなかった。 ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合物は、基質としてDABを使用した 比色法により視覚化、または製造会社(アマーシャム社)のプロトコルを使用し たECLにより視覚化した。 リン酸化チロシン残基を検出するために、mAbRC−20(トランスダクシ ョン・ラボラトリーズ:Transduction Laboratories)を使用した。ブロットは 10mMトリス、pH7.5、0.1MNaCl、0.1%ツイン20の中に入 れた1%BSA中で、7℃で20分間インキュベートしてブロックした。ホース ラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合mAbRC−20は上記緩衝液中で1:2 500に稀釈し、ブロットを37℃で20分間インキュベートし、ECLにより 結合を検出した。 複合2−Dタンパク質パターン中の免疫反応性抗原の正確な場所を同定するた めに、いくつかの実験では抗体インキュベーションの前に、プロトゴールド(ゴ ールドマーク・バイオロジカルス)を用いた金染色を行った。製造会社のプロト コルに、0.05%ツイン20中で30分間、膜のブロッキングを行う修正を加 えて行なった。推奨の0.3%ツイーン20の代わりに用いたこの濃度のツイー ン20は、ポリペプチドの密度の高い領域において融合染色パターンの少ない明 確なスポット分解能が得られた。 実施例8 ゲル・スキャンニングとコンピュータ解析 染色したゲルを湿った状態で高解像度のコダック(Kodak)・カメラを使用し て走査し、情報をSUNコンピュータでデジタル化した。オートラジオグラフィ と化学発光実験のX線フィルムをコダック・カメラまたはホーテック(Howtek) ・スキャンマスター3+レーザー・スキャナーのいずれかを用いて走査した。得 られた2−D映像をバイオイメージ・プログラム(Bioimage program)“2−D アナライザ”を用いて解析した。この方法を最適化するために、40名のドナー からの精液サンプルを500以上の2−Dゲル中で解析した。信頼性の高いプロ トコルを確立した後、8名のドナーからの精液サンプルを2−Dゲルで繰り返し 解析し、人為的なスポットが目録データに含まれる可能性を減らすためにタンパ ク質パターンを比較した。2回以上の解析で表れた各ドナーのスポットを有効と みなした。可能な限り多くの参照スポット(銀染色ゲルの場合はソフトウェアに より最大100)をオペレーターの手によりマッチさせた後、異なるゲル映像の スポット・マッチングをコンピューター・プログラムにより行った。未知のスポ ットの等電点と分子量は同時移動の内部標準の場所をベースとしてコンピュータ ・プログラムによって内挿し、さらに分子量の結果を片対数プロットから計算し て手作業で確認した。内部標準(バイオラッド)は、鶏卵白コナルブミンタイプ I、MW76,000、pI6.0、6.3および6.6;ウシ血清アルブミン 、MW66,200、pI5.4、5.5および5.6;ウシ筋肉アクチン、M W43,000、pI5.0および5.1;ウサギ筋肉グリセルアルデヒド−3 −ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)、MW36,000、pI8. 3および8.5;ウシ炭酸脱水酵素、MW31,000、p15.9および6. 0;大豆トリプシンインヒビター、MW21,500、pI4.5;ならびにウ ママイオグロビン、MW17,500、pI7.0とした。カルバミル化クレア チ ンホスホキナーゼ(MW40,000および見掛けpI範囲4.9−7.1)お よびカルバミル化GAPDH(MW36,000および見掛けpI範囲4.7− 8.3(ファルマシア))をpIマーカーとして使用した。 結果 ノニオン系洗浄剤/尿素溶解ヒト精子タンパク質の銀染色2−Dゲル(20× 16cm)は1397の異なるタンパク質スポットを分離した(IEF/PAG Eによる963とNEPHGE/PAGEによる434(図IAおよびB))。 1397のタンパク質の内の1345は少なくとも二人のドナーからのサンプル 中に同定された。アニオン系/両性溶解緩衝液を精子の溶解に使用した場合には 1191のタンパク質(IEF/PAGEによる838とNEPHGE/PAG Eによる353)か分離された(図9AおよびB)。タンパク質パターンは極め て再現性が高かったが、ドナー間には僅かな変動が認められた。たとえば、図2 は3人のドナー間に見られる39.5kDaの出現量(abundance)の違いを示し ている。 ヒト精子タンパク質の2−Dパターンは、ヒト精漿(HSP)タンパク質の2 −Dパターンと著しく異なる(図1)。300より多い精漿タンパク質が2−D 電気泳動分離の後銀染色をすることにより視覚化された(図1、CおよびD)。 精子タンパク質と同時移動した精漿ポリペプチドは、精子タンパク質、精漿タン パク質、または両者の混合物を含む銀染色ゲルをコンピュータでマッチングする ことにより同定されたが、これによって精密な比較が可能となった。この方法に よって、MWが20kDa以上の9種のタンパク質が精漿由来の精子被覆タンパ ク質として同定された(図1の矢印で示されている)。これら9種類のタンパク 質はすべて放射化ヨウ素またはビオチンあるいはその両方により方向性のある標 識をされた(図7、8および11)。一般的に、分子量が20kDa未満の精漿 からの精子被覆タンパク質の同定は、精漿の劣化物が多いために困難であった。 特にアルカリ性pH範囲では難しい(図1D)が、これはエドワーズ(Edwards )らの観察と符合する(33)。一つの実験において、1時間後に採集した精子 を含む銀染色ゲルを、3時間液化させた同一サンプルからのタンパク質を含むゲ ル と比較した。タンパク質パターンの顕著な差異は検出されず、液化後の精漿酵素 によって精子表面タンパク質の顕著な変化は誘発されないことが示された(デー タは示されない。)。 実施例9 ヒト精子表面タンパク質の放射ヨウ素化 ヒト精子タンパク質中への125I取り込みの動態を、ヨウ素化ビーズ触媒を使 用または使用せずに調べた。最適反応時間は10分間であったが、それ以降は精 子ペレット中への放射化ヨウ素の取り込み率は低下し、表面に到達可能なフェノ ール類が飽和したことを示している(図3)。触媒作用のあるN−クロロベンゼ ンスルフォアミド被覆ビーズなしの場合、1%未満の125Iが細胞中に取り込ま れた。ビーズの濃度が高くなるほど放射化ヨウ素は高い割合で取り込まれたが、 ビーズを多く使用すると膜破壊、内部タンパク質標準の放射標識が漸増し、また 精子の運動性を減退させた。したがって酸化ビーズの数を8×106精子当たり 1ビーズに減らした。これによって放射化ヨウ素の取り込みはそれ以前のビーズ /細胞比の場合と比較して50%減ったが、標識後の精子運動性は保存された。 放射ヨウ素化が精子表面だけに起こっているかどうかを調べるために、細胞骨 格とアクロソーム内部タンパク質に対する抗体で免疫染色したニトロセルロース またはPVDFブロットでオートラジオグラフィを実施した(図4、5および6 )。損傷またはアクロソーム反応細胞をこの分析から除外するために、精子母集 団を放射ヨウ素化した後直ちにパーコール密度勾配遠心分離によって分離した。 パーコール密度勾配遠心分離をしたヨウ素化精子(図4B)と、しなかったヨウ 素化精子(図4A)の比較では、2回目の密度勾配遠心分離を行った精子抽出物 は標識タンパク質が少なかったものの、個々のタンパク質は高い解像度を示し、 また細胞内対照マーカータンパク質(アクロソームタンパク質、SP−10、図 4および6;アクチン、図4および5;繊維質鞘成分、図9;ならびにチューブ リン、図5)は標識されなかった。このことは修正放射ヨウ素化法が表面特異性 を有していることを強く裏付けるものである。還元剤の存在下および非存在下に おける放射ヨウ素化精子抽出物を比較した場合、いくつかの表面タンパク質が高 分子量複合体に含まれ、鎖内ジスルフィド架橋によって安定化されていることが 確認された(図5)。 4人のドナーからの精子サンプルを、放射ヨウ素化、標識後のパーコール密度 勾配分離、ならびにNP−40と尿素による抽出をした後に分析した。放射ヨウ 素化タンパク質のパターンは、2人のドナーの比較(図7A+Bと7C+D)か らも明らかな通り、ドナー間での再現性は極めて高かった。4人のドナーからの ゲルのコンピュータ映像解析では、181の精子表面タンパク質(IEF/PA GEによる103と、NEPHGE/PAGEによる78)で、5から150K dの間のMrとpH4から11の範囲のpIを有するものは一律に放射ヨウ素化 されたことを示している。ドナー間の僅かな変動は、電荷ならびにいくつかの標 識タンパク質の相対濃度において認められたが、これは、たとえば、図7の矢印 で示されている90−95Kdタンパク質複合体のように、光学密度から推測さ れる通りであった。実験ごとの再現性が高いレベルにあることは、さらに図4と 7のヨウ素化タンパク質を比較することによっても明らかである。 実施例10 ヒト精子表面タンパク質のビオチン化 スルホン化したNHS−LC−ビオチンを用いて10、20、30および45 分間インキュベートした精子サンブルからのビオチン化タンパク質の2−Dパタ ーンをECL検出法を用いて比較した(データは示さない)。10分または20 分間ビオチンに曝露した後に標識されたタンパク質の数には差違は認められなか った。しかしなから、インキュベーション時間か長く(30−45分)なると、 細胞骨格およびアクロソーム内タンパク質の標識が漸増した。したかってそれ以 後の研究では、ビオチン化時間を10分間とした。残留ビオチンと反応させるた めに(多くのビオチン化プロトコルで推奨されているように)最初の洗浄緩衝液 に1%ウシ血清アルブミンを添加すると、大量のビオチン化BSAが精子表面に 付着するため、精子サンプルは標識付けの後パーコール密度勾配遠心分離にかけ た。 図8AおよびBはノニオン系溶解緩衝液Aによって可溶化されたビオチン化精 子タンパク質を含む二次元ゲルの化学発光フィルムを示す。5人のドナーのビオ チン化精子サンプルをIEFおよひNEPHGEで分離し、映像をコンピュータ 解析により比較した。228のビオチン化タンパク質スポットで、Mrが5から 120Kd、pHが4から10の範囲のものが分離され、目録化された。 興味深いことに、ビオチン化されていない精子タンパク質をAP−アビジンだ けを対照としてインキュベートした場合(図8Cおよび8D)、Mrが76kD aでpIが6から6.5の5つの精子タンパク質の一群が標識アビジンに結合し た。これらの内因性アビジン結合性タンパク質の性質は現在研究が進められてい る。AP−アビジンへの事前曝露無しに対照ブロットを現像した場合、これらの タンパク質やその他のタンパク質中には内因性アルカリホスファターゼ活性は全 く検出されなかった(データは示さない)。 アニオン系/両性溶解緩衝液Bを使用して精子タンパク質を抽出した場合(図 9AおよびB)、208のビオチン化タンパク質を分離することができた(図9 CおよびD)。非イオン系洗浄剤を用いた抽出によって得られたパターンからは 、ビオチンパターン中にいくつかのタンパク質コンステレーションが認められた 。(図9Cおよび9Dを図8Aおよび8Bと比較されたい)。 精子表面のビオチン化および抽出法の特異性を証明するために、対照細胞骨格 タンパク質を免疫局在化させ、それらのビオチン化状態をECLフィルムと比較 することにより調べた。内部対照のアクチン、チューブリン、繊維質鞘成分また はSP−10のいずれもビオチン化されなかった(図9)。 既知の細胞骨格タンパク質の結果とは対照的に、図9GおよびHのイムノブロ ットはSDS/CHAPS抽出およびポリクローナルウサギ抗血清R−10によ るイムノブロッティング後の精子表面ヒアルロニダーゼPH−20の位置を示し ている。PH−20の64および53kDaの2つの分子量型がSDS/CHA PSにより抽出されている(図9GおよびHの矢印)。この53kDa抗原はN P−40/尿素による溶解後に3つのアイソフォームに分離され(図8E)、ま たSDS/CHAPS/尿素による溶解後に5つのアイソフォームに分解するこ とができた(図9G)。銀染色しビオチン化した2−Dパターン中のPH−20 抗原の正確な位置が図9Aおよび9Cに示されている。既知の表面タ ンパク質であるPH−20のビオチン化(34)は、標識手法の表面特異性に関 する正の対照として役立つ。 実施例11 チロシン残基上でリン酸化された表面タンパク質の実証 抗リン酸チロシンMabであるRC−20は、新鮮な射精精子からのリン酸タ ンパク質に結合した(図10)。チロシン残基中で最も激しくリン酸化されたタ ンパク質は89−95Kdaの分子量を有していた(図10Aの矢印)。コンピ ュータ解析によって表面タンパク質の5つのグループがチロシン残基中でリン酸 化されたことが解明された。これらグループの22のタンパク質アイソフォーム が表IIIに星印で示されている。 実施例12 2−D結果のコンピュータ解析 図11はNP−40と尿素で溶解した後銀染色して視覚化したヒト精子タンパ ク質のコンピュータ映像を示す。表面ヨウ素化と表面ビオチン化の両方で標識し た98のタンパク質のうち、銀染色タンパク質とマッチした94種を、図11に 丸印で囲んで示した。二重標識表面タンパク質のMr、Piおよび(ガウスの定 量による)相対出現量の記録を表IIIに示した。弱い信号と強い信号の両方を最 適の状態で確実に検出できるようにするために、さまざまな時間で標識タンパク 質のブロットを曝露した。標識タンパク質と未標識タンパク質の間の移動の違い が分析に影響を及ぼさないようにするために、オートラジオグラムとビオチンE CLフィルムを対応する銀染色ゲルまたは金染色ブロットとマッチさせた。次い でこれらの複合映像を未標識タンパク質の銀染色ゲルの複合映像とマッチさせた 。 本発明は、NP−40/尿素で溶解した1397のタンパク質と、SDS/C HAPS/尿素処理により分離した1191のタンパク質を含む総合的な2−D ゲル・データベースを確立することにより、膜タンパク質、特にヒト精子の組成 の理解を前進させた。このデータベースを作りあげるために、一次元電気泳動分 離にIEFとNEPHGEの両方を使用して、高い分離能を達成し、また酸性、 中性およびアルカリ性の一連の精子タンパク質を検出できるように技法を発展さ せた。最近、1つの2−Dゲル中で680種のヒト精子タンパク質を分離したこ とが報告されており(26)、一方本発明では1つのゲル中で1000種以上の タンパク質スポットを分離する条件を使用した。この分離能の改善は、精子の精 製および溶解方法の改良、両性組成物の調整、ならびにIEFとNEPHGEの 走査時間と電圧ステッピング(段階的昇圧)の最適化によって達成された(方法 の項参照)。特に、NEPHGEにおける昇圧はSDS/CHAPS溶解タンパ ク質の分離能に対して顕著な効果があり、短い分離時間(focusing time)と低い 電圧を使用した場合よりも水平縞が少なくなった。 本発明の方法で採用した2種類の溶解緩衝液により溶解した一連の精子タンパ ク質群の比較では重要な差違が認められた。たとえば、いくつかの細胞骨格成分 の溶解を達成するためにはアニオン系/両性/尿素溶解緩衝液が必要とされた。 さらに、この抽出方法では精子表面のヒアルロニダーゼPH−20の5つの53 kDaアイソフォームを分離できたが、一方ノニオン系/尿素溶解緩衝液を使用 した場合は3種類の53kDaPH−20アイソフォームだけしか分離できなか った。それでも、非イオン系/尿素溶解法は、精漿膜を細胞骨格構造の汚染を少 なくして溶解することができ、また最も信頼性の高いpI測定ができることから (たとえは、図5および9のβ−チューブリンの移動を比較されたい)、本研究 の方法として選択した。 8人のドナーの異なる精子サンプルを代表する44の銀染色ゲルを“2−Dア ナライザ”ソフトウェアにより解析した。いくつかのタンパク質の出現量(abun dance)および/または電気泳動の移動には個体間で僅かな変動が認められた。 遺伝子発現、遺伝子の不均度および翻訳後変性の違いはこれらの差異が原因と考 えられる。後者の例としては、MWが89−95kDaの表面タンパク質の異種 グループ中のチロシン残基中のリン酸化である。同程度のサイズのチロシン−リ ン酸化タンパク質がヒトZP−3により刺激されるタンパク質キナーゼ活性を有 すること(35)が最近示されており、このタンパク質が透明帯の結合およびア クロソーム反応の開始に関与することが示唆されている。リン酸化とグリコシル 化の差異が電気泳動的移動で見られるある種の個体間の差異の原因と考え られるが、差異の特質と機能的重要性に関する完全な結論を出すには、受精能獲 得期間中の表面変化に関する分析、炭水化物側鎮分析、タンパク質マイクロシー クェンシングおよびcDNAクローニングなど、さらなる研究が必要である。 精巣上体、前立腺、精嚢の分泌物由来の“精子被覆”タンパク質が射精精子の 表面に接着することは公知である(36、37)。いくつかの精漿タンパク質の 移動は2−Dゲル中の精子タンパク質のそれと似ており、また9種の精子表面タ ンパク質は精漿起源のものであることが確認された。本発明では、これら表面タ ンパク質の起源を確認するために、液化しない精漿タンパク質の分析(33、3 8)、異なる洗浄および採集方法、精巣上体液と精子の分析、電気泳動分離タン パク質のマイクロシークェンシングなどの追加分析も実施した。 2−Dパターン中のいくつかのタンパク質スポットが、免疫ブロッティングま たは同時移動分析(たとえば、アルブミンと炭酸脱水酵素)により同定された。 精子タンパク質に対する免疫試薬を調製することにより、精子表面タンパク質エ ンサイクロペディア中の多くのタンパク質を免疫ブロッティングにより同定する ことができる。精子データベースとその他の2−Dゲルタンパク質データベース を比較することにより、いくつかの精子タンパク質も暫定的に同定されている( 16、39)。さらに、選択されたある種の表面タンパク質は2−Dゲル電気泳 動、エドマン分解およびタンデム質量分析による精製の後、マイクロシークェン スすることができる。この方法により従来知られていなかったタンパク質配列が 解明されている(ナービー−ハンセンら、準備中)。このように、精子タンパク 質エンサイクロペディアの継続的な更新を、精子タンパク質の分子同定の理解度 の進展をモニタしたり、特性付けをしなければならないタンパク質のガイドとし て利用することができる。膜タンパク質のデータベースはまた、染色体および/ または配偶子形成に影響を及ぼす臨床的、遺伝的および毒性的疾患の研究にも有 用である。 181種の放射ヨウ素化精子タンパク質スポットが、NP−40/尿素溶解後 に分離され、また228種のタンパク質が表面ビオチン化により標識された。9 8種のタンパク質がこの両方の技法により標識された。放射ヨウ素化とビオチン 化での異なる結果に対する1つの説明は、異なるアミノ酸残基が標識試薬の標 的になった、ということである。放射ヨウ素化においては、標識はチロシン残基 に対してカチオン性の125−ヨードが電気親和的に添加されることで起き、そ の他のフェノール類、ヒスチジンおよびトリプトファンに対しては少ない(40 )のに対し、NHS−LC−ビオチンは一次アミングループ(groups)と反応す る(たとえば、リシン残基または遊離アミノ基が炭水化物または脂質と反応)( 41)。さらに、炭水化物側鎖によるステアリン妨害は、ビオチン化またはアビ ジン結合によるその後の検出に干渉する。もし精子中のタンパク質の60%だけ が前述の体細胞の場合(42)のように銀染色で検出されると仮定すれば、約2 300種の精子タンパク質が導き出されると推定される。この推定数は同様の分 離手段により体細胞中に認められる[35S]メチオニン標識タンパク質の数(> 3000)とほほ同じである(16、39)。したがって、1つまたはもう1つ の方法により標識された311種の表面タンパク質は、全精子タンパク質の約1 2%に当たることになる。ヨウ素化およびビオチン化で標識された98種のタン パク質は、マイクロシークェンスを行なうための主要候補となり得るタンパク質 サブセットを構成することになる。 放射ヨウ素またはビオチンによる細胞表面タンパク質の標識法の基本的な問題 点としては:(1)表面特異性を確立すること(たとえば、細胞質成分に対して は僅かまたは全く標識しない);および(2)表面到達可能残基に対する十分な 特異的標識を達成すること(43、44)がある。表面特異性標識は、ポリスチ レン・ビーズ(IODO−BEADS)上で酸化剤としてN−クロロベンゼンス ルフォンアミドを用いるヨウ素による方法、およびスルフォン化N−ヒドロキシ コハク酸アミドエステル系のビオチンを使用する方法(41、46、47)が報 告されている。本発明の方法においては、既知の細胞内タンパク質であるアクチ ン、チューブリン、繊維質鞘、ならびに細胞内タンパク質SP−10は、すべて 2つの方法によって標識できなかったが、表面特異性を確実に解析するために標 識手法の後にパーコール密度勾配遠心分離をすることにより損傷した細胞とアク ロソーム反応細胞を除去することが重要である。実施例13 溶解バッファーA[NP−40/尿素]及び23×23cmゲルを用いたプレ パラティブ二次元ゲル電気泳動によって、見かけの質量63kDa及び等電点4 .3を有する精子タンパク質を他のタンパク質より分離した。得られたタンパク 質をPVDF膜に移し、その膜をクーマシーブルーで染色した。目的のタンパク 質スポットをエドマンマイクロシークェンシングのために切り出した。60kD aのタンパク質のスポットを、微小スケイプル(scaple)を用いてプレパラティ ブアクリルアミドゲルから直接くり貫き、タンパク質を次のように分解して質量 スペクトルに付した。マイクロシークェンシングを二方法、即ちエドマン分解と タンデム型質量スペクトロメトリーで行った。エドマン分解 アプライドバイオシステム470Aタンパク質シークェンサーを製造者のスペ ックに従って操作し、PVDF膜用のカートリッジとサイクルを用いPVDF膜 上のタンパク質スポットを配列決定した。 質量スペクトル分析 余分なポリアクリルアミドを最小限にするために可能なかぎり注意深く上記ゲ ルからスポットを切り出し、多数の小片に分割した。小片は500μLの50% メタノールで一夜かけ、洗浄し脱色した。これらゲル片をアセトニトリル中で脱 水し、10mMジチオールスレイトールを0.1M炭酸水素アンモニウムに溶解 した溶液50μL中で再水和し、55℃において一時間還元した。DTT溶液を 除去した試料は、50mMヨードアセタミド/0.1M炭酸水素アンモニウム溶 液50μL中、暗所、室温下一時間アルキル化した。試薬を除去し、ゲル片を1 00μLの0.1M炭酸水素アンモニウムで洗浄し、100μLのアセトニトリ ル中で5分間脱水した。アセトニトリルを除去し、ゲル片を100μLの0.1 M炭酸水素アンモニウムで再水和した。ゲル片を100μLのアセトニトリル中 で脱水し、アセトニトリルを除去し、真空遠心分離により完全に乾燥させた。得 られたゲル片を、12.5ng/μLトリプシン[自己消化妨害]を50mM炭 酸水素アンモニウムに溶解した溶液中で再水和し、氷上で45分間培養した。過 剰のトリプシン溶液を除去し、20μLの50mM炭酸水素アンモニウム を添加した。試料を37℃で一夜消化し、生成したペプチドを、200μLの5 0%アセトニトリル/5%ギ酸でポリアクリルアミドから二回抽出した。これら 抽出物を合一し、20μLより少なくなるまで蒸発させ、LC−MS分析に供し た。 LC−MSシステムはフィニンガン(Finningan)−MATTSQ7000シ ステムで構成され、エレクトロスプレーイオン源が10cm×75μm idポ ロス(POROS)IORC逆相キャピラリーカラムに連結している。体積1μLの 抽出物を注入し、流量0.6μL/minのアセトニトリル/0.1M酢酸のグ ラジエントでペプチドをカラムより溶出さた。エレクトロスプレーイオン源は、 4.5kVで作動し、最適感度に必要なように1.2μL/minの70%メタ ノール/30%水/0.125%酢酸の同軸の保護(sheath)液流量及び同軸窒 素流量が調節される。キャピラリーLCエレクトロスプレー質量スペクトロメト リーで消化を分析し、消化物中に含まれるペプチドの分子量を測定した。検出さ れたペプチドのペプチド配列は、アルゴンを衝突ガスとするLCエレクトロスプ レータンデム型質量スペクトロメトリーを用い、衝突活性解離により決定した。結果 エドマン分解 エドマン分解で、15N末端アミノ酸を決定した。得られた配列、EPAVY FKEQFLDGDG(配列番号:3)は100%ヒトカルレティキュリン(G enPep.登録番号M84739)と同一であることが判明した。 質量スペクトロメトリー LC−MS分析により決定した分子量及び消化物中ペプチドのLC−タンデム 型MSにより決定したアミノ酸配列を表1に示す。9種のペプチドが認められ、 うち6種について配列情報を得た。CADスペクトル情報(MSTag)及び部 分ペプチド配列(BLAST)をデーターベース検索して、これらペプチドのう ちの5種がヒトカルレティキュリンの配列であることが確認された(表2)。縮重オリゴヌクレオチドの設計 縮重オリゴヌクレオチドの設計のテンプレートとして二種のペプチド配列を選 択した。即ち、ペプチド配列#1−EPAVYFKEQFLD(配列番号:5) 。及びペプチド配列#2−KVHVIFNYK(配列番号11)。図12参照。 図12は、相補及び逆相補オリゴヌクレオチドの設計のために選択された63 kDa、pI4.3の精子タンパク質のエドマン分解及びタンデム型質量スペク トロメトリーにより得られたアミノ酸マイクロ配列データを表す。このマイクロ 配列情報から、縮重オリゴヌクレオチドプライマーのプールを合成しPRCを開 始した[図13参照]。 タンパク質配列#1及びそのセンス−オリゴヌクレオチドを以下に示す(配列番 号:16〜18)。 タンパク質配列#2及びそのセンス−オリゴヌクレオチドを以下に示す(配列番 号:12、19、20)。 遺伝暗号の縮重のため、最適コドン用法(Lathe、1985)を用いて「 最適化オリゴヌクレオチド」を設計した。計画されるオリゴヌクレオチド中のG −C含有率、配列決定される信頼できるアミノ酸残基の数及び特異的オリゴヌク レオチドプールの溶融温度に固有な溶融温度に依存して、設計検討のための付加 的パラメータは、以下の三つであった。即ち、A)最小の縮重を有するタンパク 質配列区域を用いてオリゴヌクレオチド設計の複雑性を減少させた;B)全ての 妥当な配列の順列をカバーするために縮重オリゴヌクレオチドを作成した,C) 長さ20〜30ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを作成した(アウスベルら、 1996)。タンパク質配列#1−(EPAVYFKEQFLDGD)(配列番 号:21)は、可能なオリゴヌクレオチド配列5’−GA(A/G)−CC(T /C/A/G)−GC(T/C/A/G)−GT(T/C/A/G)−TA(T /C)−TT(T/C)−AA(A/G)−GA(A/G)−CA(A/G)− TT(T/C)−CT(T/C/A/G)あるいは(配列番号:17)TT(A /G)−GA(T/C)−GG(T/C/A/G)−GA(T/C)−3’(配 列番号:22)を生じた。最適化コドン、用法及びほかに上記のパラメータを適 用して最終的なオリゴヌクレオチド配列として、5’−GC(T/C)−GC( C/G)−TAC−TTC−AAG−GAG−CAG−TTC−CT−3’(配 列番号:23)を誘導した。同様に、タンパク質配列#2(KVHV(I/L) FNYK)(配列番号:7)を最適化し、逆相補を起こすと、オリゴヌクレオチ ド配列、5’−CTT−GTA−GTT−GAA−GAT−CAC−(A/G) TG−CAC−CT−3’(配列番号:24)を生じた。オリゴヌクレオチドプ ローブは、ヴァージニア大学コアグループ施設により作製された。 縮重オリゴヌクレオチドのプールを用いるRT−PCR−クローニング。 0.5μgオリゴ−d(T)12-18RNAとジエチルピロカーボネート(DE PC)で処理したH2Oとの反応液(20μL)中で0.05μgのポリ−(A )+RNAを逆転写し、65℃で10分間加熱してPCRクローニングを行った 。続いて、2μLの10XRTバッファー、0.5μLの胎盤リボヌクレアーゼ インヒビター(36U/μL;プロメガ社)、1μLの10mM4dNTPs及 び1μLのAMV逆トランスクリプターゼ(23U/μL;スト ラタジーン社、Stratagene)を添加し、攪拌し、さらに混合物を42℃で60分 間インキュベートした。80μLのDEPC処理H2Oを添加した後、1μLア リコートのcDNA溶液を、Taqポリメラーゼ製造者(プロメガ又はパーキン エルマー)に指定されるように40サイクル(94℃45秒、38/44/50 /56℃45秒、72℃2分)増幅した。PCR生成物は、反応アリコートを1 XのTAE(40mMトリスーアセテート、1mM EDTA))バッファー溶 液の2.4%アガロースゲル中で電気泳動させ、特定フラグメントを回収するこ とにより、分離及び単離した。沈殿を計測した後、PCRフラグメントを、製造 者(ストラタジーン、Stratagene)のインストラクションに従いpCRスクリプ トベクターにライゲートし、さらに配列決定した。 縮重最適化オリゴヌクレオチドは、ヒト精巣ポリー(A)+RNAを逆転写し て製造した精巣cDNAとのPCR反応に用いた。PCR反応をアガロースゲル [図13]上で分析したところ、アニール温度38、44及び50℃における反 応(図13、レーン5、8、11)により、同温度で行ったネガティブ対照(図 13、レーン3、4、6、7、9、10、12、13)に対し約400bps泳 動した単一の優勢なPCR生成物が示された。400bpバンドを電気的に溶出 し、pCRスクリプトベクターにクローニングし、配列決定し、且つコンピュー タで分析した結果、このバンドの配列は体性カルレティキュリンcDNA(Ge nBank登録番号#m84739)と同一であり、従ってオリゴヌクレオチド プライマーを誘導した2−Dゲルスポットはカルレティキュリンの精巣形態(図 14)であることが判明した。 図14は、最適化縮重プライマーを用いたRT−PCRにより誘導されたクロ ーンより得られたDNA配列(配列番号:25)を示す。図中、数字は配列化ク ローン及びカルレティキュリン遺伝子中の塩基対の位置を示し、(c)はRT− PCRクローン(配列番号.25)を示し、(H)はGenBankより得られ たヒトカルレティキュリンcDNA(配列番号:26)を示す。 本実施例は、2−Dゲルタンパク質スポットのマイクロシークェンシングにより 得られるアミノ酸配列データを用いるヒト精巣cDNAの単離の成功を示してい る。実施例14 溶解バッファーA[NP−40/尿素]及び23×23cmゲルを用いたプレ パラティブ二次元ゲル電気泳動によって、精子表面エンサイクロペディア{イン デックス}[表3]にあり、見かけの質量54kDa及び等電点5.3を有する 精子タンパク質I−23、を他のタンパク質より分離した。このタンパク質を二 重ベクトル的にラベルした細胞表面分子の一例として選択した。I−23タンパ ク質のスポットを、微小スケイプル(scaple)を用いてプレパラティブアクリル アミドゲルから直接くり貫き、タンパク質をアクリルアミドゲル中で消化し、実 施例13記載のようなタンデム型質量スペクトロメトリーに付した。 図15は、精子表面タンパク質I−23のタンデム型質量スペクトロメトリー により誘導されたタンパク質マイクロ配列を示す。 図15は、精子表面インデックス中のタンパク質I−23より得られたマイク ロ配列を示す。A)において、配列はCAD分析とN‐末端誘導体のCAD分析 とのコンパイレーションである。Xは低エネルギーCADで区別できないI又は Lを、(−)は更なる分析が必要な未知アミノ酸を、(Y/Z)は、更なる分析 が必要で、その位置において交代可能な二種のアミノ酸を表す。小文字は配列の 一次帰属をあらわす。B)は、相補的及び逆相補的オリゴヌクレオチドの設計で ある。 A)ペプチド配列(配列番号:27〜35)。 ペプチド#1−SPXXSXK ペプチド#7−VTNSTGGSpxk ペプチド#2−XQANNA--K ペプチド#8−解釈不能 ペプチド#3−VATEFAFR ペプチド#9−--PEVD--tR ペプチド#4−--XSXNXR ペプチド#10−解釈不能 ペプチド#5−--SMXXDTK ペプチド#11−--QAENA---K ペプチド#6−MET(x/n)(e/q)XDR B)タンパク質配列#3:センスーオリゴヌクレオチドを示す(配列番号:29 、36、37)。 タンパク質配列#7:センス−オリゴヌクレオチドを示す(配列番号:38 〜40)。 RT−PCRを実施例13記載のように行い、生成物を実施例13に示すよう なアガロースゲル上で分析した。主なPCR生成物は約1000bpであった。 これをpCRスクリプトベクターにクローニングし、配列決定した。この新規精 子表面タンパク質の配列を図16に示す。 図16は、精子表面タンパク質I−23の最適化縮重プライマーを用いたRT −PCRにより誘導されたクローンから得られた1011bpDNA配列(配列 番号:41)を示す。 本実施例は、2−Dゲル上の二重ラベル細胞表面タンパク質から始まり、マイ クロシークェンシング、最適化オリゴヌクレオチド設計及びRT−PCRへ続く 、新規細胞表面痘苗原(vaccinogen)のcDNAの同定・単離プロセスを示す。 従って、この組合せプロセスは、任意の生物学的ターゲットに関する表面抗原及 び精子に対するワクチン設計の合理的手順を創造し、抗体の固定化及び凝集を惹 起し得る関連する表面抗原に対する避妊ワクチンへの道を開くものである。 以上の開示、及び特に実験手順と検討に関する文献のリストを以下に示す。こ れらの文献の全体を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。 以上本発明を詳細に説明したか、当業者であれば本発明に対しその趣旨を逸脱 することなく多くの変更や修正を加えることができることが明白であろう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 111 C07K 14/28 C07K 14/28 14/705 14/705 G01N 33/68 C12N 15/09 ZNA 27/26 315H G01N 33/68 C12N 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,Y U,ZW (72)発明者 ナービー−ハンセン,ソーレン アメリカ合衆国 22908 バージニア州, シャーロッツビル,メディカルセンター ボックス 439,ユニバーシティ オブ バージニア (72)発明者 フリッキンガー,チャールズ,ジェー. アメリカ合衆国 22908 バージニア州, シャーロッツビル,メディカルセンター ボックス 439,ユニバーシティ オブ バージニア

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.膜表面タンパク質の分析方法であって、次の各ステップ: a.膜表面のタンパク質を方向性のある(vectorially)標識をし、 b.標識した膜表面タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって単離し、 c.単離した膜表面タンパク質の配列を決定する、 を含む方法。 2.請求項1に記載の方法であって、前記膜がウィルス、バクテリア、又は細 胞表面に存在する方法。 3.請求項2に記載の方法であって、前記膜が精子細胞表面に存在する方法。 4.請求項1に記載の方法であって、膜タンパク質がヨウ素、ビオチン又はそ れらの混合物で標識される方法。 5.膜表面タンパク質に対するワクチンの製造方法であって、次の各ステップ : a.膜表面のタンパク質を方向性のある(vectorially)標識をし、 b.標識した膜表面タンパク質を二次元ゲル電気泳動によって単離し、 c.単離した膜表面タンパク質の配列を決定し、 d.膜表面タンパク質をコードするDNAをクローニングし、 e.ステップ(d)で単離したDNAをペプチド免疫原として用いて膜表面 タンパク質を組換によって生成する、 を含む方法。 6.請求項5に記載の方法であって、前記膜がウィルス、マイクロバクテリア 、又は細胞表面に存在する方法。 7.請求項5に記載の方法であって、前記膜が精子細胞表面に存在する方法。 8.請求項5に記載の方法であって、膜タンパク質はヨウ素、ビオチン又はそ れらの混合物で標識される方法。 9.不妊診断方法であって、次の各ステップ: a.請求項5に記載の方法で得た膜表面タンパク質を標識し、 b.標識した膜表面タンパク質と不妊の有無の診断対象の患者から得た血清 とを反応させ、 c.血清に存在する抗体と標識した膜表面タンパク質との複合体の生成を検 出する、 を含む方法。 10.請求項5に記載の方法で生成された細胞表面タンパク質を含む診断テス トキット。 11.請求項5に記載の方法により製造した細胞表面タンパク質を、患者の卵 子の受精を防ぐのに充分な量において当該患者に対し投与することを含む、当該 患者に避妊を誘発させる方法。 12.請求項5に記載の方法により製造した組換タンパク質を哺乳動物に投与 し、哺乳動物内で産生した当該組換タンパク質に対する抗体を単離することを含 む、避妊薬の製造方法。 13.請求項12に記載の方法により製造した避妊薬。 14.請求項2に記載の方法により製造したワクチン。
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