JPH10504097A - 臓器拒絶反応のマーカー - Google Patents

臓器拒絶反応のマーカー

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JPH10504097A JP7517209A JP51720995A JPH10504097A JP H10504097 A JPH10504097 A JP H10504097A JP 7517209 A JP7517209 A JP 7517209A JP 51720995 A JP51720995 A JP 51720995A JP H10504097 A JPH10504097 A JP H10504097A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、患者における器官拒絶反応を診断し、予測することに関する。より具体的には、本発明は、異系移植片拒絶反応、例えば、心臓移植拒絶に関する。本発明は、免疫学的、生化学的、または分子生物学的アッセイ法、および、拒絶反応の徴候を検出するために医療従事者が使用するキットに関する。本発明は特に、ヒトのタンパク質、またはその異種生物における相同タンパク質で、急性異系移植片拒絶反応を予測するためのマーカー、該タンパク質、該タンパク質をコードするDNAおよびRNAを得るための方法、該タンパク質の存在、または場合によってはその量を、ヒトから採取した生物学的試料から測定する方法、この方法で用いるための測定用キット、各タンパク質に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、器官移植を受けた患者、自己免疫疾患を患う患者、炎症疾患をもつ患者、または虚血生傷害をもつ患者における急性拒絶反応を予測する方法、およびヒトのさまざまな器官系における炎症ないし疾患を診断するための方法、に関する。具体的な実施例において、ヒト患者から採取した生検試料の2次元ゲル電気泳動によって、心臓移植拒絶反応のマーカーとして18個のタンパク質を同定した。

Description

【発明の詳細な説明】 臓器拒絶反応のマーカー 発明の分野 本発明は患者の臓器拒絶反応の診断および予後に関する。さらに詳細には、本 発明は同種移植片拒絶反応、例えば心臓移植の拒絶反応に関する。本発明は免疫 学的、生化学的および分子生物学的検出方法、並びに拒絶反応現象を検出するた めに医者が使用するためのキットに関する。 本発明は特に急性の同種移植片拒絶反応の前兆となるマーカーであるヒトタン パク質、該タンパク質を得る方法、該タンパク質をコードするDNAおよびRN A、該タンパク質の存在の有無および場合によりその量について、ヒトからの生 物学的試料をアッセイする方法、該方法に使用するためのキット、該タンパク質 のそれぞれに対するポリクロナールおよびモノクロナール抗体、臓器移植中、ま たは自己免疫疾患、炎症、もしくは虚血性外傷を患っているヒト患者での急性拒 絶反応を予測する方法、並びに人体の種々の臓器系での炎症または疾患の診断に 関連した方法に関する。 発明の背景 1968年における開始以来、心臓移植は末期の心臓不全の患者の治療の可能 性に発展して来た。全世界で230を超える移植センターが設立され、2500 0人を超える患者が心臓移植を受けている(Kaye,1993,J.Heart Lung Transplan t,12:541-548)。当初、移植後の主要な障害は、患者自身の免疫系による拒絶反 応の危険であった。免疫抑制剤、明白にはサイクロスポリンの導入はこの状況を 改善したが、拒絶反応は依然として移植患者の治療に対する重要な問題として残 っている(Oyer et al.,1991,Transplant.Proc.15(Supple.1):2546-2552;Burdik and Kittur,1991,Transplant.Proc.23:2047-2051)。 急性拒絶反応は、依然としてヒト心臓移植後の病的状態および死亡率の主要な 原因であり、同様に他の臓器移植の方法での重大な合併症または死亡原因でもあ る。二つの主要な分析方法が移植された心臓の状態を評価するために用いられて いる(Carrier,1991)。第一の方法は同種移植片に対する免疫の誘導および発現 の評価、例えばリンパ球の細胞免疫学的モニター、並びに細胞性マーカーの分析 (例えば、可溶性CD−4、CD−8、IL−2レセプターおよびT細胞抗原レ セプター)、サイトカイニン、およびリンパ球活性に関連するリンホカインのモ ニターを含む。第二の方法はその移植片の機能および状況の評価、例えばドップ ラーエコー、放射線画像および磁気共鳴画像による評価を含む。急性細胞拒絶反 応のこの第一の等級づけのシステムは1973年に導入された(Caves et al.,1 973,Thorac.Cardiovasc.Surg.66:461-466)。現在、一般的に用いられている等 級づけのシステムは心内膜心筋の生検試料での筋細胞の浸潤および壊死の程度に 基づき、等級、0、1A、1B、2、3A、3Bおよび4を用いる(Billingham et al.,1990,J.Heart Transplant.9:588-593)。移植後の心臓の状態について 、どの方法が最も正確な予後であるかについてはかなりの不一致があるが、この 技術で用いられる方法はすべて、初期の急性拒絶反応の場合に必ず、またはかな り高い確率で不適当な予測をすることでは大体同意されている(Billingham,199 0,Prog.Cardiovasc.Dis.33:11-18;Carrier,1991,Can.J.Surg.34:569-572; and B urdick and Kittur,Transplant,Proc.23:2047-2051)。特に、病理学的に検出 されるリンパ球浸潤の量は拒絶反応の病状を診断および治療に必要なものを決め るには助けとならない(Auchincloss and Sachs,1993,"Transplantation Graft Rejection,"in Fundamental Immunology,Third Edition,William E.Paul edi tor,Raven Press:New York,pp.1099-1141,1129)。同様に、可溶性IL−2レ セプターのレベルは免疫活性の指標であるが、ウイルス感染および臓器拒絶反応 に密接に関連している。ウイルス感染は移植臓器不全の場合に通常の特徴のある 診断の一つであるので、免疫的機能のためのそのような非特定的アッセイは免疫 活性の目標を決めるには役立たない(Auchincloss and Sachs,前出,p.1129)。 最近、Ferranら(1993,Tranplantation 55:605-609)は定型のモニターまた は拒絶反応の疑いの調査のために16人の心臓同種移植片被手術者からの心筋の 生検標本での細胞接着分子類、ELAM−1、VCAM−1、およびICAM− 1の発現を分析した。1週間間隔で採取された3〜6個の連続生検試料が従来の 組織学および免疫組織化学の手段で分析された(Ferran et al.,前出)。彼ら は、研究の期間中に拒絶反応を起こさなかった7人の患者の生検試料は淡いIC AM−1の汚染が毛細管に存在していたが、構成的発現を反映しているVCAM −1およびELAM−1で陰性であることを見出した。急性拒絶反応の明確な診 断的かつ組織学的シグナルを有する3人の患者において、強いVCAM−1およ びICAM−1の発現が検出されたが、ELAM−1はこの3人全てにおいて検 出されなかった。研究の期間中に急性拒絶反応が生じた6人中の4人において、 ELAM−1およびVCAM−1が拒絶反応の組織学的診断前の1ないし2週間 に発現し、VCAM−1のみが他の二人に観察された。また、4人の患者におい て、ELAM−1発現が短時間生じ、CD3細胞浸潤が検出された時には消滅し 、かくしてELAM−1の発現は通常試験管内で一過性であることの発見は生体 内に拡張された。これらの結果に基づいて、この著者は、ELAM−1およびV CAM−1の両者はELAM−1発現が一過性であるので、試料採取間隔を短く した注意深いモニターが必要であることを加えて、急性心臓同種移植片拒絶反応 で予測的価値を有することを示唆した。 ICAM−1は免疫活性および内皮損傷のマーカーであるが、心内膜心筋の生 検試料により評価されているように、細胞拒絶反応に関連することは見いだされ ていない(Ballantyne et al.,1994,J.Heart Lung Transplant,13:597-603) 。クレアチンキナーゼMBおよびミオグロビンのような心筋損傷のマーカーは心 臓移植患者での拒絶反応を同定するために有用ではない(Ladowski et al.,199 2,Chest 102:1520-1; Jennison et al.,1992,Circulation Suppl 86:I-844; Gash et al.,1994,J.Heart Lung Tranplant.13:451-454)。 患者は、しばしば拒絶反応の程度が変わる、予測できない状態になる。 拒絶反応が近付くことについての早期診断は、患者を安定な非−拒絶反応状態 に維持することおよび組織破壊の進行状態を避けることのために必要であり、同 時に免疫抑制治療のレベルを、日和見感染の始まりを避けるために、できるだけ 低く維持することが必要であ。 拒絶反応現象は心臓同種移植片に限定されない。すべての臓器移植は拒絶反応 を受ける(宿主対移植疾患)。さらに、拒絶反応様の結果は移植片対宿主の疾患 (ここで、移植された白血球およびリンパ球は、宿主組織を攻撃する)および自 己免疫疾患(例えば、リウマチ熱、ここでは、心臓は自己抗体および自己反応性 リンパ球の目標である)も伴う。すべての場合に、攻撃的な免疫抑制は免疫反応 を逆にしたり、または抑制すると指摘されているので、日和見感染の助長に関連 した危険が免疫抑制剤の使用を制限する。 したがって、この技術分野において臓器拒絶反応の発症の可能性についての非 常に正確な予後指標の必要性が存在している。さらに、この技術分野において、 細胞拒絶反応の程度の診断的指標のさらなる必要性が存在している(Billingham et al.,前出)。 さらに、この技術分野において、免疫抑制剤の直接投与に対し、このようにし て患者での一定の免疫抑制を維持する必要性を避け、かつ拒絶反応症状を避ける ために攻撃的な免疫抑制治療ができるように、臓器拒絶反応の特異的かつ敏感な マーカーの同定と検索のさらなる必要性が存在している。 本明細書におけるすべての参照の引例が、そのような参照が本発明に対する先 行技術であると認めるものであると解釈されるべきではない。 発明の概要 その第一の特徴として、本発明は臓器拒絶反応の危険があると思われる患者か らの生物学的試料での臓器拒絶反応の指標マーカーの量の存在を確認することを 含む臓器拒絶反応の可能性を評価する方法であって、このマーカーは拒絶反応が あると思われる臓器の細胞により発現されたタンパク質であり、そしてマーカー の量の存在の検出は臓器拒絶反応の増大した可能性または始まりの指標である方 法に関する。好ましくは、この方法は臓器拒絶反応の危険があると思われる患者 からの生物学的試料での臓器拒絶反応の一つ以上の指標マーカーの量の存在を検 出することを含む。臓器拒絶反応の指標マーカーまたはマーカー類の量は正常臓 器、または拒絶反応の始まる前の移植された臓器に存在する量(またはレベル) に比較して統計的に意味のある増大した量である。 本発明のマーカーのレベルは拒絶反応症状に付随してまたは先だって劇的に増 大する。好ましい態様において、本発明のマーカーはVCAM−1よりも相対発 現においてさらに劇的な増大を有する。特定の特徴として、本発明のマーカーの 発現のレベルは正常組織に対して、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10 倍、さらに好ましくは少なくとも20倍、最も好ましくは少なくとも50倍であ る。ここに例示した特定の態様において、発現レベルで100倍以上の増大が観 察されている。さらに、マーカーのいくつかはその発症の少なくとも4週間前に 差し迫った拒絶反応症状の検出を提供するのに十分敏感である。本発明のマーカ ーは、それらは非常に低濃度ではあるが一定の量で移植直前の心筋組織に見い出 されており、かつそのようにして心臓の細胞性タンパク質であると思われるので 、感染の活性化から生じると考えられていない。特に、本発明のマーカーは活性 化されていないリンパ球または白血球からのタンパク質でなくてもよく、そのタ ンパク質は限定されないが、サイトカイニン腫瘍壊死因子−α、リンホトキシン (TNF−β)、インターロイキン、インターフェロンまたはリンパ球関連積層 膜タンパク質の可溶形態(例えば、可溶性CD−4、可溶性CD−8、可溶性I L−2レセプター、可溶性T細胞抗原レセプターなど)を含む。 さらに、臓器拒絶反応の危険がある思われる患者は免疫抑制治療を受けるので 、それらのリンパ球および白血球のレベルは増大されているよりもむしろ抑制さ れていることがあると思われる。 本発明は、有利には、発症よりも4週間前に、すなわち従来の診断よりも少な くとも4週間早く、差し迫った拒絶反応症状の診断を提供する。したがって、本 発明のマーカーは臓器生存性および拒絶反応の経過および範囲の非常に敏感な予 後指標である。 特定の態様において、本発明は心臓の拒絶反応の検出を提供する。さらにもう 一つの特定の態様において、その心臓は同種移植片の移植である。 したがって、本発明は急性拒絶反応の予測的マーカーであり、かつIEFおよ びNEPHGEゲル、本明細書で開示されているように、それぞれ12.5%ポ リアクリルアミドロゲルでの心内膜心筋の生検試料の2次元電気泳動により以下 の特徴を示す、ヒトタンパク質からなる群から選択されるタンパク質に関する。 ここで、それぞれの数は単一のそれぞれのタンパク質を表し、記号A、B、Cま たはDはそれらの改質および減成のような同じ生タンパク質の種々の改質形態を 表す。pIは酸性または中性タンパク質の等電点焦点および塩基性または中性タ ンパク質の非平衡pH傾斜ゲルの電気泳動により決定されたマーカーの等電点で あり、分子量はポリアリクルアミドゲル電気泳動により決定された見かけ分子量 である。特定の実施態様において、前述のタンパク質は試験管で20時間培養さ れた心臓生検試料と同一である。本発明の好適な態様において、このマーカー類 、IEF 1A、IEF 1B、IEF 6、IEF 7、IEF 8、NEP HGE 1A、NEPHGE 1B、NEPHGE 1C、NEPHGE 1D 、 NEPHGE 6、NEPHGE 9およびNEPHGE 10が本発明の方法 で用いられる。 生タンパク質の改質形態は、例えばグリコシル化、リン酸化、アセチル化、メ チル化または脂質化の形態である。 この記載および請求の範囲において、IEFは「等電点焦点化」を意味し、「 NEPHGE」は「非平衡pH傾斜電気泳動」を意味する。 特定の態様において、本発明は臓器拒絶反応の指標マーカーの存在の検出、例 えば生化学的分析に限定されないが、免疫学的分析、またはマーカーをコードす るメッセンジャーRNAのレベルを検出するかなりの数の方法を提供する。生化 学的分析の例は2次元ゲル電気泳動である。免疫学的分析の例はイムノブロッテ ング、酵素結合イムノソルベントアッセイ(enzyme-linked immunosorbent assa y)(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(radio-immunoassay)(RIA)、 免疫蛍光、凝集および免疫沈降を含む。 特定の態様(後出)において、生検試料は放射性同位元素(好ましくは[35S ]−メチオニン)を組み込み、その生検組織を約20時間[35S]−メチオニン を補充した培地で培養して標識される。組織に存在するタンパク質は2次元電気 泳動に付され、その後マーカータンパク質はゲル上で、例えば対照試料(正常組 織生検試料または等級0の拒絶反応材料)からのゲルと比較し、および前に観察 しなかったかまたは拒絶反応を受け若しくは受けた組織からの試料上で大きな強 度を有するタンパク質スポットを同定することにより、同定される。ゲル上での マーカータンパク質の同定はX線フィルムに対する従来の露出、または例えば発 光合成物による画像の使用により行うことができ、それはより早い同定を可能に する。そのような分析は目視により達成することができ、好ましくはコンピュー ター画像化を用いて達成することができる。 本発明により、本発明のマーカーを含むどのような生物学的試料も分析するこ とができる。そのような生物学的試料は、血液、血清、血漿、生検組織、臓器生 検試料、滑液流体、尿、胆汁流体、脳脊髄流体、唾液、粘膜分泌物、滲出液、お よび汗を含むが、これらに限定されない。マーカーの一つ以上がそのような試料 中に可溶若しくは可溶化された形態で存在することができるか、またはそのよう な試料から分離された細胞中に存在することができることが認められるべきであ る。後者の例として、このマーカーは試料分離の後に生合成されることができ、 したがって、生合成的標識の機会を提供する。 さらなる態様として、本発明は臓器拒絶反応の可能性を評価するための試験キ ットを提供する。この試験キットは患者からの生物学的試料での臓器拒絶反応の 指標マーカーの存在を検出する手段であって、このマーカーは拒絶反応であると 思われる臓器の細胞により発現されたタンパク質である手段であり;このマーカ ーが正常な組織または臓器拒絶反応現象の前の観察での組織からの対応する生物 学的試料に存在するレベルに比較して増大したレベルであるかどうかを決定する 手段を提供する。一つの特別の特徴として、マーカーの存在の検出および増大し たレベルで存在するマーカーがマーカーの特定の結合パートナーを含むかどうか を決定するための手段、並びにこのマーカーに対する特定の結合パートナーの結 合レベルを検出するための手段である。さらなる例として、本発明のキットは検 出されるべきマーカーの既知量を提供し、キット中に提供されたこのマーカーは 標識されている。 他の態様において、本発明のキット中に、このマーカーの標識のレベル、かつ 対応して、マーカーのレベルを検出するための手段として、生物学的試料に存在 する細胞により発現されたタンパク質のための標識が提供される。 さらに、他の態様として、この試験キットは生物学的試料に存在する細胞によ り発現されたマーカーをコードするmRNAのためのオリゴヌクレオチドプロー ブ、およびmRNAに対するプローブに結合するレベルを検出するための手段を 含み、マーカーをコードするmRNAの発現および増大したレベルの検出はマー カーの増大したレベルの指標である。 好ましい態様として、本発明の試験キットは患者からの生物学的試料中の臓器 拒絶反応の指標マーカーの一つ以上の存在を検出するための手段、および正常な 患者、または臓器拒絶反応現象の発症の前の患者からの対応する生物学的試料中 に存在するレベルと比較して、それぞれのマーカーが増大したレベルで存在する かどうかを検出する手段を含む。 それ相応に、本発明は純粋な形態での臓器拒絶反応のマーカーを提供する。好 適な態様において、本発明は上述したマーカーに関し、心臓の同種移植片拒絶反 応に関する。特定の態様において、本発明は以下の群から選択される部分アミノ 酸配列を有するマーカーを提供する: 本発明は、有利には、定型の手段、例えば2次元ゲルからの切り出し、クロマ トグラフィー、免疫沈降などを用いてのマーカータンパク質の分離を提供する。 したがって、本発明は臓器拒絶反応の危険があると思われる患者からの生物学 的試料での臓器拒絶反応の指標マーカーに特異的に結合する抗体に拡張され、こ のマーカーは拒絶反応であると思われる臓器の細胞により発現されたタンパク質 である。そのような抗体はポリクロナール抗体若しくはモノクロナール抗体、ま たはそれらの抗原結合断片であってよい。 さらなる態様として、本発明は臓器拒絶反応の危険があると思われる患者から の生物学的試料での臓器拒絶反応の指標マーカーをコードする核酸に関し、この マーカーは拒絶反応であると思われる臓器の細胞により発現されたタンパク質で ある。特に、本発明は本発明のマーカーの一つ以上を発現する患者からの生物学 的試料中の細胞または細胞類のそのような核酸の存在およびそのレベルを検出す るための、オリゴヌクレオチドプローブまたは特定のPCRプライマーを提供す る。さらに、本発明はそのようなタンパク質の組み換え発現に有用な核酸と関係 し、そのタンパク質は診断試験キットおよび競争免疫アッセイの構成、並びに自 己抗体の存在の試験に有用である(例えば、ELISA構成において)。本発明によ るマーカータンパク質をコードするDNA配列を含むDNAは本発明の一部を構 成する。そのようなDNAは一般に分離され、組み換えられることができる。本 発明の組み換えDNAは、プラスミド、コスミド、またはファージであってよい 。ベクターは形質転換されたかまたはそれらでトランスフェクションされた宿主 細胞の選択を可能にし、異種DNAを組み込むベクターを与える細胞の選択を可 能にする、一つ以上の選択しうるマーカーをしばしば含む。適当な開始および停 止シグナルは一般的に存在しているであろう。さらに、ベクターが発現されるな らば、発現を推進するに十分な規定の配列が含まれているであろう;規定の配列 が含まれていないベクターはクローニングベクターとして有用である。クローニ ングベクターは、大腸菌(E.coli)、酵母または他の適切な宿主のすべてに導入 することができ、それらの操作を促進する。発現ベクターはタンパク質の発現に 適切である宿主細胞中に導入されることができる。原核細胞を用いることができ るが、真核、特にCHO細胞のような哺乳動物細胞がこの目的のためには好まし い。本発明のDNAはインビトロの方法を含む。連続のヌクレオチドのカップリ ング、および/またはオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドの連 結を含むいかなる便利な方法によっても調製することができるが、組み換えDN Aの技術は選択された方法を用いる。本発明のマーカータンパク質をコードする RNAは、また本発明の一部を構成する。 特定の態様において、本発明は本発明のマーカータンパク質の存在および場合 によりその量についてヒトからの生物学的試料をアッセイする方法であり、該試 料からのタンパク質は支持マトリックスに分配し、その後 該マーカータンパク 質を該マトリックス上で同定し、場合により該マーカータンパク質の量を、該タ ンパク質の調製でのアッセイを計算して決定する方法を提供する。 この生物学的試料は、例えば生検試料または体液試料の組織溶液であってよい 。この試料のタンパク質は種々の支持マトリックス上にそれぞれのマトリックス に対して特定の方法により分配されてよい。適切なマトリックスは、限定されな いで、紙、酢酸セルロース、シリカ、ガラス、炭素、糖、プラスチックおよびそ れらの誘導体を含み、そして当業者はタンパク質の分離のためにそのような支持 マトリックスを用いる技術については公知であろう。 既に述べたように、臓器移植された患者からの生検試料または体液での臓器拒 絶反応の前兆またはそれに伴うものとしての発現で増大しているタンパク質の一 つ以上の上昇したレベルの測定が、拒絶反応過程の強力な、予測の評価を提供す る。本発明のさらなる特徴として、臓器移植されたヒト患者での急性拒絶反応の 予測の方法であり、移植された臓器からの生検試料中、または患者からの体液の 試料中のマーカータンパク質の一つ以上の相対量を、上述の方法のいずれかによ り、該タンパク質またはタンパク質類が過剰発現であるかどうかを決定するため に、アッセイすることを含む方法を提供する。存在するマーカータンパク質の量 は完全に決定される必要はない;それぞれの対照(正常、健康)で検出されたも のと、それぞれで検出されマーカータンパク質の量を比較することで十分である 。 マーカータンパク質の一つ以上が、例えば肺臓、肝臓、皮膚または腎臓のよう な他の臓器のヒトへの移植に続いて拒絶反応症状に関連して過剰発現されること はありそうである。 また、マーカータンパク質の一つ以上が、例えば、限定されないが、肺臓、 肝臓および腎臓のような他の移植された臓器の拒絶反応に関連して過剰発現され ることはありそうである。一つ以上のマーカータンパク質の過剰発現は、また、 ヒトの種々の臓器系での炎症または疾患、例えば急性心筋梗塞、高血圧、心筋症 、および臓器特異性自己免疫疾患に付随するかもしれない。この炎症または疾患 は、 自己免疫性(ハシモト)甲状腺炎、甲状腺機能昂進(例えば、グレイブ疾患)、 I型糖尿病、頬炎、インスリン抵抗性糖尿病、自己免疫型腎不全(アジソン病) 、自己免疫型卵巣炎、自己免疫型精巣炎、自己免疫型溶血性貧血(「温」自己抗 体型および冷凝集疾患)、発作性血色素尿症、自己免疫型血小板減少症、自己免 疫型好中球減少症、悪性貧血、赤芽球ろう、自己免疫型凝固障害、重症筋無力症 、自己免疫型多発性神経炎、多発性硬化症、天疱瘡および皮膚の他の水疱性疾患 、リウマチ性心臓炎、グッドパスチャー症候群、心術後症候群、(ドレッスラー 症候群)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、およびリウマチ熱、並び に全身性自己免疫疾患、例えばリウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、多発性 筋炎、皮膚筋炎、硬皮症および全身性紅斑性狼瘡を含むが、これらに限定されな い。したがって、本発明は、さらに、上述の疾患の診断のための方法であり、疑 わしい臓器からの生検試料または患者からの体液の試料中の一つ以上のマーカー タンパク質の相対量を、上述の方法のいずれかにより、該タンパク質またはタン パク質類が過剰発現であるかどうかをアッセイすることを含む方法を提供する。 本発明により含まれるマーカータンパク質のアミノ酸配列が知られている場合 に、以下の用途に用いられてよいDNAまたはRNAプローブを調製することが できる: i)例えば、色原体、化学発光または免疫蛍光法を用いて、固定または凍結組織 切片上で該マーカータンパク質を発現させるDNAおよびRNAの直接検出;お よび ii)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) 本発明により含まれるマーカータンパク質に対するポリクロナールおよびモノ クロナール抗体は、また、医薬がそこで働くべき部位へ医薬を導く(いわゆる目 標化医薬)に用いることができる。したがって、さらなる特徴として、本発明は 該マーカータンパク質のいずれかを認識する抗体に結合することにより所望の作 用部位に特異的に導かれる医薬の投与によりヒトを治療する方法を提供する。抗 体への医薬の結合は直接の共有結合または間接の、例えばリポソーム中への医薬 のカプセル化およびリポソームへの抗体の付着であることができる。これに関連 して、この用語「医薬」は細胞の生化学を調節することができるすべての化合物 として理解されるべきである。適切な医薬の一覧表は、したがって、製薬学的に 活性物質に限定されることなく、DNAまたはRNA、センス/アンチセンス医 薬および目標化医薬の結合部位の近辺での他の細胞の挙動を改変できる物質も含 む。 したがって、臓器拒絶反応の診断および予後を提供することが本発明の第一の 目的である。 同種移植片の拒絶反応の診断および予後を提供することが本発明の特定の目的 である。 移植された心臓の差し迫った拒絶反応の特異的かつ高感度な診断および予後を 提供することが、本発明のさらに特定の目的である。 本発明の別の目的は拒絶反応現象に関連するマーカーを同定および提供するこ とである。 さらに別の本発明の目的はマーカーに対する抗体を提供することである。 本発明のさらなる目的はそのようなマーカーをコードする核酸、または10若 しくはそれ以上のヌクレオチドによりコードされたそのようなマーカーの一部を 提供することである。 本発明のこれらの目的およびその他の目的は本発明の後述の図面および詳細な 説明を参照することによってさらに理解されるであろう。 図面の簡単な説明 図1.心膜内心筋生検試料の二次元ゲル電気泳動。(A)拒絶グレード0の生 検試料からのフルオログラム。(B)拒絶グレード3Aの生検試料からのフルオ ログラム。下記実施例1に記載のようにゲルを調製した。簡単に述べると、[35 S]−メチオニンを補足したメチオニンを含まないDMEMで、5%CO2、加 湿雰囲気下で37℃で20時間インキュベーションすることにより生検試料を標 識し、ホモジナイズして、一次元の解析のため、等電点電気泳動(IEF)およ び非平衡pHゲル電気泳動(NEPHGE)ゲルの両方に載せた。ゲルを押し出 し、12.5%ポリアクリルアミドゲルで二次元に泳動した。この2−Dゲルを 45分間固定して、アンプリファイ(AMPLIFY)(登録商標)で処理し、乾燥し 、−70℃で5日間X線フィルムに焼き付けた。クレアチンホスホキナーゼ(C P K)pIマーカー(ブリティッシュ・ドラッグ・ハウス(British Drug House) )および分子量既知のHeLaタンパク質との比較から、pIおよびMW値を求 めた。特に、図1で、IEFゲルのパネル(A)の目印タンパク質は、熱ショッ クタンパク質90および72(HSP90およびHSP72)、α−およびβ− チューブリン(αTおよびβT)、ビメンチン(V)、中間径フィラメント関連 タンパク質24および35;α−およびβ−デスミン(αDおよびβD)、アク チン(A)、β−トロポミオシン(βTM)、およびミオシン軽鎖1および2( mlc1およびmlc2)である。NEPHGEゲルのパネル(A)では、延長 因子1α(EF1α)、およびヘテロ核リボ核タンパク質(heterogenous nucle ar ribonuclear proteins)A1およびA2(hnRNP A1およびhnRNP A2)である。パネル(B)の番号付けした矢印は、マーカータンパク質を示 す。 図2.3名の患者の心臓移植後の臨床経過。HTX番号は、患者の識別番号で ある。 図3.拒絶の異なる段階でのマーカータンパク質の発現。(A)〜(F)およ び(G)〜(L)は、IEFゲルの異なる2つのゲル領域からの2系列のフルオ ログラムである。正常ドナーの心臓(AおよびG)から;および、心臓移植した 中程度拒絶の6週間前(BおよびH;段階0)、中程度拒絶の3週間前(Cおよ びI;段階0)、中程度拒絶時(DおよびJ;段階3A)、中程度拒絶の1週間 後(EおよびK;段階1A)、および最後に中程度拒絶の3週間後(FおよびL ;段階0)の患者から生検試料を集めた。図1と同様に試料を処理してゲルを泳 動した。 発明の詳細な説明 前述のように、本発明は、臓器拒絶(例えば、同種移植拒絶、異種移植拒絶、 移植片対宿主疾患、または自己免疫疾患)の危険性が疑われる患者の臓器拒絶の 診断および予後に関する。 従って、本明細書中に種々の用語が使用されるため、ここで定義する。 「臓器拒絶」という用語は、本明細書において免疫を介するかまたは炎症性の 臓器の破壊を意味する。臓器拒絶は、同種移植または異種移植後に最も頻度高く 起こる。しかし、本明細書において使用されるように「臓器拒絶」という用語は 、 心膜炎などの自己免疫性臓器拒絶、および移植片対宿主を介する拒絶も包含する 。 「臓器」という用語は、特定の機能を発揮する任意の身体部分(例えば、心臓 、肺、肝臓、腎臓、皮膚、膵臓、甲状腺、脳、胃、腸、精巣、および卵巣がある が、これらに限定されない)を意味し、また、副腎、膵島などのような腺も含む 。最も普通に移植される臓器は、心臓、肝臓、腎臓、肺および皮膚であるが、他 の臓器または腺の移植も本発明の範囲に含まれる。 「同種」または「同種移植」という用語は、同じ種の動物からの臓器の移植を 意味する。現在のところ、「同種」移植が好ましく、可能な限り近接した組織型 (非常に多くの組織適合性抗原がドナーとレシピエント間で共通である)がさら に好ましい。しかし、「異種」移植、即ち、他の動物種からヒトへの臓器(例え ば、トランスジェニックブタからの心臓)の移植も、本発明に含まれる。 「マーカー」という用語は、本明細書において臓器拒絶前または拒絶時の発現 レベルの上昇を表示するタンパク質を意味する。好ましくはこのようなタンパク 質は、可溶性細胞表面マーカー(例えば、可溶性IL−2受容体、可溶性CD− 4、可溶性CD−8、および可溶性T細胞抗原受容体)、または免疫若しくは炎 症応答に関連するリンホカイン若しくはサイトカインを含む、リンパ球または白 血球関連タンパク質ではない。さらに好ましくは本発明のマーカーは、拒絶の発 現の前に、拒絶される臓器の組織に見い出されるタンパク質である。本発明のマ ーカーの発現は、同種移植と共に行われる免疫抑制治療に影響されない。具体的 な実施態様において、本発明のマーカーは、腫瘍壊死因子−αまたはリンホトキ シン(腫瘍壊死因子−β)ではない。 本発明のマーカーは、タンパク質性分子であり、それ自体これを発現する細胞 により修飾される。下記実施例に記載されるように、種々のわずかに修飾された 形のマーカーが観察された。幾つかの場合に、分子量、等電点、またはその両者 におけるスポットのわずかな変化が、同じタンパク質の種々に修飾された形を表 すことは、部分配列データにより確認される。以下に詳細に述べられるように、 このような修飾は、グリコシル化の違い、リン酸化、N末端アセチル化、C末端 アミド化、mRNAスプライシングによる変化などを含むが、これらに限定され ない。 本明細書に使用される「急性拒絶」という用語は、病理評価により決定される 、拒絶グレード3A以上の存在として定義される。これは、Cavesら(1973,J. Thorac.Cardiovasc.Surg.66:461-66)により最初に発表され、続いてグレー ド0(拒絶なし)、1A、1B、2、3A、および4を含むようビリンガムら( Billingham et al)(1990,J.Heart Transplant.9:587-593)により修正された スケールに基づく。 「臓器拒絶の見込み(likelihood)」という用語は、拒絶の発現の確率(prob ability)を意味し、これは、本発明の一つまたは複数のマーカーの発現レベル に基づき予測することができる。 本明細書に使用される「生物学的試料」という用語は、被験者から得られた組 織または体液を意味する。生物学的試料の例は、血液、血清、血漿、生検組織、 生検臓器、関節液、尿、胆汁、脳脊髄液、唾液、粘膜分泌物(mucosal secretio n)、滲出液、および汗を含むが、これらに限定されない。 「被験者」という用語は、好ましくはヒト被験者を意味するが、家畜化哺乳動 物(イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタなど)、捕獲された野生動物 、および野生の野生動物のような(これらに限定されない)動物も含む。 本明細書に使用される「生化学的分析」という用語は、推定マーカーの物理化 学的特性の測定に基づく分析(ポリアクリルアミドゲル電気泳動(変性および非 変性条件下)および質量分析による見掛けの分子量;等電点電気泳動、非平衡p H勾配ゲル電気泳動、またはクロマトグラフィーによる等電点;分配係数または 逆相クロマトグラフィーにより測定した相対疎水性;アミノ酸組成;炭水化物組 成;および部分または完全アミノ酸配列)を含むがこれらに限定されない。典型 的には、そして下記具体的な実施態様において、生化学的分析は、一次元ゲルの バンド、またはさらに好ましくは、二次元ゲルのスポットの性状解析を伴う。 「免疫学的分析」という用語は、免疫特異的結合、即ち、マーカーの特異的結 合パートナーとの反応性に基づく本発明のマーカーの性状解析を意味する。特異 的結合パートナーの典型は抗体であるが、本発明は、抗体の結合に類似した特異 的な高親和性結合を示す場合に、マーカーの特異的受容体または他の結合パート ナーの使用を包含する。従って、マーカーへの抗体結合に適用可能な任意の方法 は、マーカーの任意の特異的結合パートナーのマーカーへの結合に拡大される。 免疫学的分析法の例は、免疫ブロッティング、固相酵素免疫測定法(enzyme-lin ked immunosorbent assay)(ELISA)、放射線免疫測定法(RIA)、凝 集法、免疫蛍光法、免疫化学発光法、免疫クロマトグラフィー、バイオセンサー 法、光学センサー法、および免疫沈降法を含むが、これらに限定されない。 本明細書に使用されるように「抗原性」という用語は、特異的免疫学的認識が 可能であることを意味する。免疫認識の例は、抗体結合およびT細胞抗原受容体 による認識(抗原が、主要組織適合性分子に関連して存在する時)を含む。抗原 性ポリペプチドは、抗原決定基中に通常少なくとも5個、好ましくは少なくとも 10個のアミノ酸を含有する(他の分子(例えば、核酸およびオリゴヌクレオチ ド)は、同等の大きさの抗原決定基を有しているかもしれないが、これらのサブ ユニットは各々ヌクレオチドと糖残基である)。 本明細書に使用される「メッセンジャーRNAのレベルの検出」とは、ノーザ ン解析、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、インビトロ発現、および本発明の マーカーをコードするRNAの存在を検出するための同等な手段を意味する。 組成物中のタンパク質、DNA、ベクター(AおよびBが属する種のカテゴリ ーに依存する)の少なくとも約75重量%が「A」である時、「A」(ここで「 A」は、単一のタンパク質、DNA分子、ベクター、組換え宿主細胞などである )を含む組成物は、実質的に「B」(ここで「B」は、1つ以上の混入タンパク 質、DNA分子、ベクターなどを含む)を含まない。好ましくは、「A」は、組 成物中に少なくとも約90重量%のA+B種を含み、最も好ましくは少なくとも 約99重量%を含む。また、実質的に混入物を含まない組成物が、目的の種の活 性または特徴を有する単一分子量種だけを含有することも好適である。 「薬剤学的に許容しうる」という用語は、ヒトに投与した時、生理学的に耐性 で、典型的にはアレルギーまたは同様の不都合な反応(例えば、胃の不調(gast ric upset)、めまいなど)を起こさない分子および組成物を意味する。好まし くは、本明細書に使用されるように「薬剤学的に許容しうる」という用語は、連 邦の規制当局もしくは州政府に承認された、または米国薬局方、もしくはその他 の動物(さらに詳しくはヒト)での使用のための一般に認められる薬局方に挙げ られたものを意味する。「担体」という用語は、化合物を投与する時の希釈剤、 補助剤、賦形剤、または媒体を意味する。このような薬剤担体は、水、または石 油、動物、植物または合成に由来する油(例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、 ゴマ油など)のような滅菌された液体であってよい。水または水溶液、生理食塩 水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液が、好ましくは担体とし て、特に注射用溶液のために使用される。適切な薬剤担体は、E.W.Martinによ る「レミントンの製剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載 されている。 「治療に有効な量」という用語は、本明細書において宿主の活性、機能および 応答における臨床的に重要な欠損を、少なくとも約15%、好ましくは少なくと も50%、より好ましくは少なくとも90%抑制し、最も好ましくは防止するの に充分な量を意味する。また、治療に有効な量は、宿主における臨床的に重要な 症状の改善を引き起こすのに充分な量である。 マーカータンパク質 本発明のマーカータンパク質は、拒絶を起こしている臓器中の細胞で発現する タンパク質である。このマーカータンパク質は、正常(ドナー)の臓器または拒 絶の発症の前の臓器からの試料中で非常に低レベルで発現し、これは、このマー カーが、拒絶中の臓器に浸潤する細胞では発現しないことを示している。さらに 休止リンパ球およびPMA活性化リンパ球の生合成標識を用いる二次元ゲル解析 は、これらのマーカーの発現レベルが、インビトロのリンパ球の刺激により上昇 しないことを証明している。しかしマーカーは、臓器の細胞(例えば、心臓中の 筋細胞)、臓器中に存在する遊走性細胞(例えば、血液由来の繊維芽細胞)、ま たは予め存在していたリンパ球または白血球により産生される。前述のように、 本発明のマーカータンパク質の発現レベルは、臓器拒絶(特に急性の拒絶)の切 迫または開始に関連して上昇する。 本発明のマーカータンパク質は種々の方法で得られる。第1にこれは、IEF およびNEPHGEゲルで心内膜心筋生検試料を二次元電気泳動し、ゲル上の正 しいスポットを切り出し、そしてそこからタンパク質を抽出することにより単離 することができる。第2にこれはヒト血清および血漿中にも見い出され、ここか ら例えば親和性クロマトグラフィーにより精製される。第3に、該タンパク質を 天然に産生する細胞、または該タンパク質を産生するように修飾された細胞(例 えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはマーカータンパク質 を発現するように形質転換またはトランスフェクションされた他の適当な宿主細 胞)を培養して、培養物から発現されたタンパク質を回収することにより調製さ れる。例えばタンパク質は、界面活性剤または塩緩衝液を用いて細胞から抽出さ れる。使用される界面活性剤は、例えば陰イオン性または非イオン性またはこれ らの混合物でもよい。微量配列解析されるタンパク質は、ハンクの(Hank's)緩 衝液単独の3×10分の洗浄により溶解しない。すべてのマーカータンパク質は 、例えば溶解緩衝液(9.5M尿素、2%NONIDETP−40(登録商標) (NP−40)、2%アンフォライト、および5%2−メルカプトエタノール) または試料緩衝液(2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、5%2−メルカプ トエタノール、10%グリセロール、および60mMトリス−塩酸、pH6.8) で可溶化される。また、タンパク質が細胞から排出されて培地から単離されるよ うに、培養条件を修飾することもできる。例えば、宿主細胞の形質転換またはト ランスフェクションに使用されるDNAベクターは、細胞からのタンパク質の排 出を指令するシグナル配列を含有してもよい。 本発明のマーカータンパク質は得られた方法にかかわらず、任意の適当な方法 で精製される。下記具体的な実施態様において、マーカータンパク質は二次元ゲ ル電気泳動により精製される。これらの精製されたタンパク質は、さらに微量配 列決定に使用されるか、或はゲルから切り出され免疫処置に使用することができ る。好適な方法は親和性クロマトグラフィーであり、これは以下の工程により行 われる: (a)タンパク質の粗供給源(例えば、該タンパク質を発現する細胞の上澄液) を提供し; (b)供給源を、該タンパク質に対する固相化した特異的結合分子を含有する親 和性マトリックスに導入し、該タンパク質をマトリックスに結合させ; (c)マトリックスを洗浄して結合しなかった混入物質を除去して; (d)マトリックスから溶出して実質的に純粋な形で該タンパク質を回収する。 親和性カラムは、当業者に公知の多くの方法により調製することができる。具 体的には、本発明のマーカータンパク質に対して親和性を有する結合分子には、 該タンパク質に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体がある。例 えば臭化シアン−活性化セファロース(SEPHAROSE)(登録商標)を用いて、抗 体または他の特異的結合分子を容易に結合することができる。 具体的な面において、本発明のマーカーと交差反応する公知のタンパク質に対 する抗体(特にモノクローナル抗体)を用いて、マーカーを免疫親和性精製また は免疫沈降させることができる。例えば、ミオシン軽鎖に対するモノクローナル 抗体またはポリクローナル抗体を用いてIEF5を単離することができる。 具体的な実施態様において、マーカータンパク質は、本明細書の実施例におい て分子量および等電点(表1、後述)、部分的アミノ酸配列情報(表3、後述) 、またはその両方により特徴付けられるタンパク質である。 マーカーをコードする核酸 本発明においては、当該分野の技術の範囲内で通常の分子生物学、微生物学、 および組換えDNA技術を使用することができる。これらの方法は文献に詳細に 記載されている。例えば、「Sambrook,Fritsch & Maniatis、モレキュラークロ ーニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(第 2版)(1989)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(本明細書では「Sambrookら、1989」と呼ぶ) 」;「DNAクローニング:実際的方法(DNA Cloning: A Practical Approach )、第1巻および第2巻(D.N.Glover編、1985)」、「オリゴヌクレオチド合 成(Oligonucleotide Synthesis)(M.J.Gait編、1984)」、「核酸ハイブリダ イゼーション(Nucleic Acid Hybridization)[B.D.Hames & S.J.Higgins編( 1985)]」、「転写と翻訳(Transcription and Translation)[B.D.Hames & S .J.Higgins編(1984)]」、「動物細胞培養(Animal Cell Culture)[R.I.F reshney編(1986)]」、「固定化細胞と酵素(Immobilized Clls And Enzymes )[IRL Press(1986)]」、「B.Perbal、分子クローニングへの実際的ガイド (A Practical Guide To Molecular Cloning)(1984)」、「F.M.Ausubalら編 、 分子生物学の現在の方法(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン ・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)(1994)」を参照 。 従って本明細書で使用される場合以下の用語は、以下の定義を有する。 「レプリコン」とは、インビボにおいてDNA複製の自律性単位として機能す る(即ち、それ自体の制御下で複製することができる)遺伝学的成分(例えば、 プラスミド、染色体、ウィルス)である。 「ベクター」とは、別のDNA断片が結合して、その結果結合したその断片が 複製するような、レプリコン(例えば、プラスミド、ファージまたはコスミド) である。 「カセット」とは、特異的な制限部位でベクターに挿入されるDNAの断片を 意味する。このDNAの断片は目的のポリペプチドをコードし、カセットと制限 部位は、転写や翻訳のために正しい読み枠へのカセットの挿入を確実にするよう に設計される。 外因性または異種DNAが細胞内に導入されている時、細胞はそのような細胞 に「トランスフェクション」されている。トランスフェクションされたDNAが 表現型の変化を引き起こす時、細胞は外来性または異種DNAに「形質転換」さ れている。好ましくは、形質転換DNAは染色体DNAに組み込まれ(共有結合 で結合され)て細胞のゲノムを形成する。 「異種」DNAとは、細胞内に天然には存在しないか、または細胞の染色体部 位には天然には存在しないDNAを意味する。好ましくは、異種DNAは、細胞 に対して外来の遺伝子を含む。 「クローン」とは、単一の細胞または共通の祖先から有糸分裂により得られる 細胞の集団である。 「核酸分子」とは、1本鎖型または二重らせんの、リン酸エステル重合体型の リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RN A分子」)、またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシ グアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)を 意味する。2本鎖DNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNAらせ んが可能である。核酸分子という用語(特に、DNA分子またはRNA分子)は 、 分子の1次および2次構造のみを意味し、特定の3次構造に限定しない。即ちこ の用語は、2本鎖DNAで、特に、線状または環状DNA分子(例えば、制限断 片)、プラスミド、および染色体中のものを含む。特に特定の2本鎖DNA分子 の構造について言及する時、本明細書ではDNAの転写されない鎖(即ち、mR NAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向の配列のみを与える 通常の方法に従って配列が記載される。「組換えDNA分子」は分子生物学的操 作を受けたDNA分子である。 核酸分子の1本鎖型が、温度や溶液のイオン強度の適当な条件下で、他の核酸 分子にアニーリングすることができる時(Sambrookら、前述)、核酸分子は他の 核酸分子(例えば、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA)に「ハイブリダイズ 」することができる。 温度やイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー( stringency)」を決定する。相同核酸の予備スクリーニングのために、Tm=5 5°に相当する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件が使用される (例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、ホルムアミド無し ;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS)。中程度のストリ ンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いTmに対応する(例えば 、40%ホルムアミド、5×または6×SCC)。高ストリンジェンシーハイブ リダイゼーション条件は、最も高いTmに対応する(例えば、50%ホルムアミ ド、5×または6×SCC)。ハイブリダイゼーションには2つの核酸が相補的 配列を有することが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシ ーに依存して塩基間の不適正(mismatches)が起きる可能性がある。ハイブリダ イズする核酸の適当なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度、 当該分野で公知の変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相 同性が高いほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTm値は大きくな る。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(高いTmに対応する)は、 以下の順序で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。1 00ヌクレオチドを越える長さのハイブリッドについて、Tmを計算するための 式が作成されている(Sambrookら、前述、9.50−0.51)。より短い核酸 (即ち、オリゴヌクレオチド)については、不適正の位置がより重要になり、オ リゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、前述、11.7 −11.8)。ハイブリダイズできる核酸の最小の長さは約10ヌクレオチドが 好適であり、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチドであり、最も好ましく は少なくとも約20ヌクレオチドである。 本明細書に使用されるように「配列相同性」という用語はいかなる文法上の形 であろうと、「進化的に共通の起源」を有するタンパク質(例えば、免疫グロブ リンスーパーファミリーのようなスーパーファミリーからのタンパク質を含む) の間、および異なる種からの相同タンパク質(例えば、ミオシン軽鎖など)の間 の関係を意味する(Reeckら、1987,Cell 50:667)。 従って「配列類似性」という用語はいかなる文法上の形であろうと、進化的に 共通の起源を有さない核酸またはタンパク質のアミノ酸配列の間の同一性または 一致の程度を意味する(Reeckら、前述)。 「相同的組換え」とは、染色体へのベクターの外来性DNAの挿入を意味する 。好ましくはベクターは、相同的組換えのために特異的な染色体部位を標的にす る。特異的な相同的組換えのために、ベクターは染色体の配列に相同性のある充 分長い領域を含有して、染色体へのベクターの相補的結合と取り込みを可能にす る。相同性のある領域が長いほど、かつ配列の類似性の程度が大きいほど、相同 的組換えの効率は上昇する。 DNA「コード配列」とは、適当な制御配列の調節下に置かれた時、インビト ロまたはインビボで細胞中に転写されポリペプチドに翻訳される2本鎖DNAで ある。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カル ボキシル)末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列には、原核生物 配列、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA からのゲノムDNA配列、および合成DNA配列も含まれるが、これらに限定さ れない。コード配列が真核細胞中での発現のためであるなら、ポリアデニル化シ グナルと転写終止配列は通常コード配列の3’に位置する。 転写および翻訳制御配列は、DNA制御配列(例えばプロモーター、エンハン サー、ターミネーターなど)であり、宿主細胞中でのコード配列の発現を提供す る。真核細胞中でポリアデニル化シグナルは制御配列である。 「プロモーター配列」とは、細胞のRNAポリメラーゼに結合することができ 、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA制御領域 である。本発明を定義する目的で、プロモーター配列は、3’末端を転写開始コ ドンで区切られ上流(5’方向)に伸びて、バックグラウンドレベル以上のレベ ルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基または成分を含有する。プロモータ ー配列の中には、転写開始部位(例えば便宜上、ヌクレアーゼS1によるマッピ ングにより規定される)、およびRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク 質結合ドメイン(共通配列)がある。 RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、これが次に転移RNA にスプライシングされ、コード配列によりコードされるタンパク質に翻訳される 時、コード配列は細胞中の転写および翻訳制御配列の「調節下に」ある。 「シグナル配列」は、細胞表面で発現するタンパク質のコード配列の開始部分 に含まれる。この配列は、シグナルペプチド(成熟ポリペプチドのN−末端にあ り、宿主細胞にポリペプチドの転移を開始させる)をコードする。「転移シグナ ル配列」という用語は、本明細書においてはこの種のシグナル配列を意味する。 転移シグナル配列は、真核生物や原核生物に固有の種々のタンパク質に会合して 見いだされ、両方の型の生物で機能を有することが多い。 本発明は、本発明のマーカーの抗原性部分(マーカーの全長型、即ち天然に存 在する型、および任意の動物(特に哺乳動物または鳥類、さらには特にヒト)起 源のその抗原性断片を含む)をコードする遺伝子の単離を包含する。本明細書に おいて使用されるように「遺伝子」という用語は、ポリペプチドをコードするヌ クレオチドの集合を意味し、cDNAおよびゲノムDNA核酸を含む。 分子が免疫系の抗原認識分子(例えば、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞 抗原受容体)と特異的に相互作用することができる時、その分子は「抗原性」を 持つ。抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5個、そして好ましくは少なくとも 約10個のアミノ酸を含有する。分子の抗原性部分は、抗体またはT細胞受容体 認識に対して免疫優性(immunodominant)な部分であるか、またはその抗原性部 分を担体分子に結合させて免疫することによりその分子に対する抗体を産生する のに使用される部分である。抗原性である分子は、それ自体免疫原性(即ち、担 体なしに免疫応答を誘発することができる)である必要はない。 マーカーをコードする遺伝子(ゲノムDNAまたはcDNA)は、任意の供給 源(特にヒトcDNAまたはゲノムライブラリー)から単離することができる。 マーカー遺伝子を得るための方法は、前述のとおり当該分野で公知である(例え ば、Sambrookら、1989、前述を参照)。本発明の具体的な面において、マーカー をコードする遺伝子は、発現ライブラリー(例えば、λgt11発現ライブラリ ー)を用いて、後述のように調製したマーカーに対する抗体により単離される。 従って任意の動物細胞が、マーカー遺伝子の分子クローニングの核酸供給源と なる可能性がある。DNAは当該分野で公知の方法によりクローン化DNA(例 えば、DNA「ライブラリー」)から得られ、好ましくは対象の臓器(例えば、 心臓拒絶マーカーの場合心臓cDNAライブラリー)から、化学合成、cDNA クローニング、または目的の細胞から精製されたゲノムDNAまたはその断片の クローニング(例えば、「Sambrookら、1989、前述」、「Glover,D.M.(編)、 1985、DNAクローニング:実際的アプローチ(A Practical Approach)、エム アールエル出版社(MRL Press,Ltd.)、オックスフォード、英国、第1巻、第 2巻」を参照)により調製されるcDNAライブラリーから得られる。ゲノムD NAから得られるクローンは、コード領域以外に制御領域およびイントロンDN A領域を含有することもある。cDNAから得られるクローンは、イントロン配 列を含有しない。供給源の種類ににかかわらず、遺伝子はその複製に適したベク ター中に分子クローニングされる。 ゲノムDNAからの遺伝子の分子クローニングでは、DNA断片が作成され、 その一部は目的の遺伝子をコードする。DNAは種々の制限酵素を用いて特異的 部位で切断される。また、マンガンの存在下でDNAseを用いて、DNAを断 片化するか、またはDNAを物理的に剪断(例えば、超音波により)することも できる。次に線状DNA断片は、標準的方法(アガロースおよびポリアクリルア ミドゲル電気泳動およびカラムクロマトグラフィーを含むが、これらに限定され ない)によりサイズにより分離することができる。 いったんDNA断片が作成されれば、種々の方法を用いて目的のマーカー遺伝 子を含有する特異的なDNA断片が同定される。例えば、ある量のマーカー遺伝 子もしくはその特異的RNA、またはその断片の一部の量が入手でき、精製され 標識されるなら、作成されたDNA断片は標識プローブへの核酸ハイブリダイゼ ーションによりスクリーニングされうる(BentonとDavis,1977,Science 196:1 80; GrunsteinとHogness,1975,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:3961)。 例えばマーカーについて得られた部分的アミノ酸配列情報に対応する1セットの オリゴヌクレオチドが、マーカーをコードするDNAのプローブとして、または cDNAまたはmRNAのプライマーとして(例えば、RT−PCRのポリTプ ライマーとの組合せで)調製し使用することができる。好ましくは本発明のマー カーにきわめて独特な断片が選択される。プローブに実質的な相同性を有するD NA断片がハイブリダイズする。前述のように、相同性の程度が高いほど、より ストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件を使用することができる 。具体的な実施態様において、相同なマーカーを同定するために低ストリンジェ ンシーハイブリダイゼーション条件が使用される。 遺伝子の性質によりさらなる選択をすることができる(例えば、遺伝子は、本 明細書に開示のマーカータンパク質の等電点、電気泳動性、アミノ酸組成、また は部分的アミノ酸配列を有するタンパク質産物をコードするか否か)。従って遺 伝子の存在は、その発現された産物の物理的、化学的、または免疫学的性質に基 づく測定法により検出される。例えば、マーカーとして公知の類似または同一の 電気泳動度、等電点または非平衡pHゲル電気泳動挙動、タンパク質消化地図、 または抗原性を有するタンパク質を産生する正しいmRNAにハイブリッド選択 (hybrid-select)するcDNAクローン、またはDNAクローンが選択される (以下で詳述する、マーカータンパク質に対する抗体を使用してマーカーの発現 を確認することができる)。 本発明のマーカー遺伝子は、mRNA選択、即ち核酸ハイブリダイゼーション の後にインビトロで翻訳をして同定することもできる。この方法では、ヌクレオ チド断片を用いてハイブリダイゼーションすることにより相補的なmRNAが単 離される。このようなDNA断片は、利用可能な精製されたマーカーDNAであ るか、または部分的アミノ酸配列情報から設計された合成オリゴヌクレオチドで あってよい。単離されたmRNAの産物のインビトロの翻訳産物の免疫沈降分析 または機能測定法(例えば、チロシンホスファターゼ活性)により、mRNAが 同定され、従って目的の配列を含有する相補的DNA断片が同定される。さらに 、マーカーに対して特異的な固定化抗体に細胞から単離されたポリソームを吸着 させることにより、特異的mRNAを選択することができる。 放射標識したマーカーcDNAは、(吸着されたポリソームから)選択された mRNAを鋳型として用いて合成することができる。次に放射標識したmRNA またはcDNAをプローブとして用いて、他のゲノムDNA断片から相同なマー カーDNA断片を同定することができる。 本発明はまた、本発明のマーカーの類似体および誘導体(マーカーと同じまた は相同な機能活性を有する)および他の種からのその同族体をコードする遺伝子 を含有するクローニングベクターに関する。マーカーに関連する誘導体や類似体 の産生と使用は、本発明の範囲内である。具体的な実施態様において、誘導体ま たは類似体は機能的に活性がある。即ち、本発明の全長の野生型マーカーに関連 した1つまたは複数の機能的活性(これはマーカーの実際の生化学的役割である かも知れないし、そうでないかも知れない)を示すことができる。例えば、誘導 体または類似体は、使用される条件下では抗原性が低下し安定性が上昇している かも知れない。 機能的に同等な分子を与える置換、付加または欠失により、コード核酸配列を 改変することにより、マーカー誘導体を作成することができる。好ましくは本来 のマーカーに比較して機能的活性(例えば、抗原性または安定性)が増強または 上昇した誘導体が作成される。 ヌクレオチドコード配列の縮重により、本発明の実施においてはマーカー遺伝 子と実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を使用することもで きる。これらは対立遺伝子、他の種からの相同遺伝子、および(配列内でアミノ 酸残基をコードする異なるコドンの置換により改変されるマーカー遺伝子のすべ てまたは一部よりなる、従ってサイレント変化を起こす)ヌクレオチド配列を含 有するがこれらに限定されない。同様に、本発明のマーカー誘導体は、保存性ア ミノ酸置換を形成する配列内の残基が機能的に同等なアミノ酸残基に置換された 改変配列を含む、マーカータンパク質のアミノ酸配列の全部または一部を1次ア ミノ酸配列として含有するものを含むが、これらに限定されない。例えば配列内 の1つまたは複数のアミノ酸残基は、機能的に同等物として作用しサイレント改 変を引き起こす、同様の極性を有する別のアミノ酸で置換することができる。配 列内のアミノ酸の置換物は、アミノ酸が属するクラスの別のメンバーから選択す ることもできる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン 、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およ びメチオニンがある。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、 システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンがある。陽性に荷電し た(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンがある。陰 性に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある 。このような改変が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定される見かけの分 子量に影響することは考えられない。1つの荷電したアミノ酸が別の(同じまた は異なる電荷を持つ、または荷電していない)アミノ酸と交換される場合は、関 係する基のpKa内にそのpIが入る小さなタンパク質のpIの変化が容易に検 出されるであろう。このような変化は、大きなタンパク質では検出できないであ ろう。 本発明のマーカー誘導体および類似体をコードする遺伝子は、当該分野で公知 の種々の方法で産生することができる。このような産生をもたらす操作は遺伝子 レベルまたはタンパク質レベルで起きてもよい。例えば、クローン化マーカー遺 伝子配列は、当該分野で公知の多くの方法の任意の方法により修飾される(Samb rookら、1989、前述)。配列は適当な部位で制限酵素で切断され、必要であれば 次に酵素的に修飾され、単離され、そしてインビトロで結合される。マーカーの 誘導体または類似体をコードする遺伝子の産生において、修飾された遺伝子が翻 訳終止シグナルにより中断されずに、目的の活性がコードされる遺伝子領域内で 、マーカー遺伝子と同じ翻訳読み枠内にあるように注意すべきである。 さらにマーカーをコードする核酸配列をインビトロまたはインビボで突然変異 させて、翻訳、開始、および/または終止配列を作成または破壊するか、または コード領域を変化させ、かつ/または新しい制限エンドヌクレアーゼ部位を作成 するか、またはすでに存在する部位を破壊して、インビトロの修飾を促進するこ とができる。好ましくはこのような突然変異は、突然変異したマーカー遺伝子産 物の機能的活性を増強させる。当該分野で公知の任意の突然変異誘発方法が使用 でき、これらにはインビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinson,C.ら、1978 ,J.Biol.Chem.253:6551; ZollerとSmith,1984,DNA 3:479-488; Oliphant ら、1986,Gene 44:177; Hutchinsonら、1986,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A .83:710)、タブ(TAB)(登録商標)リンカー(ファルマシア(Pharmacia ))の使用などがあるが、これらに限定されない。部位特異的突然変異誘発には PCR法が好適である(Higuchi,1989,PCR技術:DNA増幅の原理と応用 (PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification)中の 「PCRを用いてDNAを操作する」("Using PCR to Engineer DNA")、H.Er lich編、ストックトン・プレス(Stockton Press)、第6章、61〜70頁参照 )。 次に同定され単離された遺伝子は適当なクローニングベクターに挿入される。 当該分野で既知の多数のベクター−宿主系を使用することができる。可能なベク ターには、プラスミドまたは修飾されたウイルスがあるが、これらに限定されな い(但し、ベクター系は、使用される宿主細胞と適合性がなければならない)。 ベクターの例には、大腸菌(E.coli)のバクテリオファージ(例えば、ラムダ 誘導体)、pBR322誘導体のようなプラスミド、またはpUCプラスミド誘 導体(例えば、pGEXベクター、pmal−c、pFLAGなど)があるが、 これらに限定されない。クローニングベクターへの挿入は、例えばDNA断片を 相補的な粘着末端を有するクローニングベクターに連結することにより行われる 。しかしDNAを断片化するのに使用される相補的な制限部位がクローニングベ クターには存在しない時は、DNA分子の末端が酵素的に修飾される。或はヌク レオチド配列(リンカー)をDNA末端に連結することにより、任意の目的の部 位が産生される。これらの連結されたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識 配列をコードする、化学的に合成された特異的なオリゴヌクレオチドを含んでい てもよい。組換え分子は、形質転換、トランスフェクション、感染、電気穿孔法 などにより宿主細胞に導入され、その結果遺伝子配列の多くのコピーが作成され る。好ましくは、クローン化された遺伝子はシャトルベクタープラスミド中に含 有さ れ、これはクローニング細胞(例えば、大腸菌)中での拡張そして適当な発現細 胞株への以後の挿入(これが必要な場合)のための容易な精製を提供する。例え ば、2つ以上のタイプの生物で複製できるベクターであるシャトルベクターは、 大腸菌プラスミドからの配列を酵母2μプラスミドからの配列と連結させて、大 腸菌およびサッカロヌイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)中での 複製のために調製することができる。 別の方法では、目的の遺伝子は、「ショットガン」法で適当なクローニングベ クターに挿入した後、同定し単離してもよい。例えばサイズ分画化による目的の 遺伝子の濃縮は、クローニングベクターに挿入する前に行われる。 マーカーポリペプチドの発現 マーカー、またはその抗原性断片、誘導体、もしくは類似体をコードするヌク レオチド配列を適当な発現ベクター、即ち挿入タンパク質コード配列の転写およ び翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入しうる。このような要素を本明細 書において「プロモーター」と呼ぶ。したがって、本発明のマーカーをコードす る核酸は、本発明の発現ベクター中でプロモーターと操作的に会合される。cD NAおよびゲノム配列をともに、このような調節配列の制御下でクローン化し、 発現しうる。発現ベクターはさらに、好ましくは複製源を含む。 必要な転写および翻訳シグナルは組換発現ベクター上に提供されるか、または マーカーおよび/またはその近傍に位置する領域をコードするネイティブ遺伝子 により供給され得る。 別の実施例では、キメラマーカーポリペプチド断片、例えば細菌中での発現の ためのグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、マル トース結合タンパク質(MBP)融合タンパク質、またはポリヒスチジン標識融 合タンパク質を調製しうる。融合タンパク質としてのマーカーまたはその抗原性 断片の発現は、安定な発現を促進するか、または融合相手の特性に基づいた精製 に備え得る。例えば、GSTは抱合されたグルタチオンを固体支持マトリックス と結合し、MBPはマルトースマトリックスと結合し、ポリヒスチジンはNi− キレート化支持マトリックスと結合してキレートを作る。融合タンパク質は適切 な緩衝液を用いて、またはマーカーポリペプチドと融合相手(例えばGST、M BPまたはポリヒスチジン)との間で通常遺伝子工学的に用いられる切断部位に 特異的なプロテアーゼで処理することにより、特異的マトリックスから溶離しう る。 考えられる宿主−ベクター系としては、ウイルス(例えばワクシニアウイルス 、アデノウイルス等)に感染した哺乳類細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイ ルス)に感染した昆虫細胞系;酵母菌ベクターを含有する酵母菌のような微生物 ;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドD NAで形質転換された細菌が挙げられるが、これらに限定されない。インビボで のネイティブ分子により近いかまたはそれと同じ方法でタンパク質産物を修飾し うるためには、真核生物発現系、特に高等真核生物系が好ましい。ベクターの発 現要素は、その強度および特異性が変化する。用いられる宿主−ベクター系に依 って、多数の適切な転写および翻訳要素のいずれか一つを用い得る。 組換えによりマーカーコード配列の組込み後に、本発明の組換え体マーカー、 またはその機能性断片、誘導体、もしくは類似体は、染色体において発現され得 る。これに関しては、多数の増幅系のどれを用いても高レベルの安定遺伝子発現 を達成しうる(Sambrook et al.,1989(上記)参照)。 マーカーをコードする核酸を含有する組換え体ベクターが含まれる細胞を、細 胞によるマーカーの発現を提供する適切な条件下で適切な細胞培地中で培養する 。 クローニングベクター中へのDNA断片の挿入に関する前述の方法のいずれを 用いても、適切な転写/翻訳制御シグナルから成る遺伝子およびタンパク質コー ド配列を含有する発現ベクターを構築しうる。これらの方法としては、インビト ロ組換えDNAおよび合成技術並びにインビボ組換え(遺伝子組換え)が挙げら れる。 マーカータンパク質の発現は当業界で公知のいかなるプロモーター/エンハン サー要素によっても制御しうるが、しかしこれらの調節要素は発現のために選択 された宿主中で機能的でなければならない。マーカー遺伝子発現を制御するため に用いられるプロモーターとしてはSV40初期プロモーター領域(Benoist an d Chambon,1981,Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反 復中に含有されるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980,Cell 22:787-797) 、 ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.A cad.Sci.U.S.A.78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brins ter et al.,1982,Nature 296:39-42);βラクタマーゼプロモーターのような 原核生物発現ベクター(Villa-Kamaroff,et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sc i.U.S.A.75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoer,et al.,1983 ,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)("Useful proteins from recomb inant bacteria" in Scientific American,1980,242:74-94も参照);酵母菌 または他の真菌類からのプロモーター要素、例えばGal4プロモーター、AD C(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロール キナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター;並びに組織特 異性を示しトランスジェニック動物に用いられている動物転写制御領域が挙げら れるが、これらに限定されない。 4つの一般的な手法:即ち(a)所望のプラスミドDNAまたは特異的mRN AのPCR増幅、(b)核酸ハイブリダイゼーション、(c)選択マーカー遺伝 子機能の存在または非存在、および(d)挿入配列の発現により、本発明のマー カーをコードする核酸を含有する発現ベクターを同定しうる。第一の手法では、 PCRにより核酸を増幅して、増幅産物の検出を提供しうる。第二の手法では、 挿入マーカー遺伝子と相同な配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼー ションにより、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存在を検出しうる。第三 の手法では、ベクター中で外来遺伝子の挿入により引き起こされるある種の「選 択マーカー」遺伝子機能(例えばβガラクトシダーゼ活性、チミジンキナーゼ活 性、抗体に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成 等)の存在または非存在に基づいて、組換え体ベクター/宿主系を同定し、選択 しうる。別の実施例では、マーカーをコードする核酸がベクターの「選択マーカ ー」遺伝子配列内に挿入された場合にはマーカー挿入体を含有する組換え体を、 マーカー遺伝子機能の非存在により同定しうる。第四の手法では、発現タンパク 質が機能的に活性な配座であると仮定して、組換え体により発現される遺伝子産 物の活性、生化学的または免疫学的特徴をアッセイすることにより、組換え体発 現ベクターを同定しうる。 一旦、特定の組換え体DNA分子が同定され、単離されれば、当業界で公知の いくつかの方法を用いてそれを増殖させ得る。一旦、適切な宿主系および増殖条 件が確立されれば、組換え体発現ベクターを増殖させ、大量に調製しうる。前述 のように、使用しうる発現ベクターとしては下記のベクターまたはその誘導体が 挙げられるが、これらに限定されない:ワクシニアウイルスまたはアデノウイル スのようなヒトまたは動物ウイルス;ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス ;昆虫ウイルス、例えばバキュロウイルス;酵母菌ベクター;バクテリオファー ジベクター(例えばラムダ)、並びにプラスミドおよびコスミドDNAベクター 等。他にも2〜3挙げられる。 さらに、挿入配列の発現を調節するか、または所望の特定の方法で修飾しプロ セシングする宿主細胞株を選択しうる。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳的 および後翻訳的プロセシング、並びに修飾(例えばグリコシル化、切断(例えば シグナル配列の))のための特徴的および特異的メカニズムを有する。適切な細 胞株または宿主系を選択して、発現される外来タンパク質の所望の修飾およびプ ロセッシングを確実にしうる。例えば、細菌系における発現を用いて、非グリコ シル化コアタンパク質産物を産生しうる。しかし、細菌中で発現される経膜マー カータンパク質は適正に折り畳まれるとは限らない。酵母菌中での発現は、グリ コシル化産物を産生しうる。真核細胞中での発現は、異種タンパク質の「ネイテ ィブな」グリコシル化および折り畳みの可能性を増大しうる。さらに、異なるベ クター/宿主発現系は、プロセシング反応、例えばタンパク質分解的切断に種々 の程度で影響を及ぼす。 当業界で公知の方法、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション 、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リ ン酸カルシウム沈降、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、 またはDNAベクター輸送体により、所望の宿主細胞中にベクターを導入する( 例えば、Wu et al.,1992,J.Biol.Chem.267:963-967; Wu and Wu,1988,J .Biol.Chem.263:14621-14624; Hartmut et al.,カナダ国特許出願第2,012,3 11号(1990年3月15日提出)参照)。 標準的な方法により、完全膜タンパク質として発現される組換え体マーカータ ンパク質を単離し、精製しうる。一般に、膜を界面活性剤、例えばドデシル硫酸 ナトリウム(SDS)、トリトンX−100、ノニデットP−40(NP−40 )、ジゴキシン、ナトリウムデオキシコレートおよび類似物、並びにその混合物 (これらに限定されない)で溶解することにより、完全膜タンパク質が得られる 。 懸濁液の超音波処理により、可溶化を増強しうる。培養液を収集することによ り、または例えば洗剤で処理して、所望により超音波処理または上記のような他 の機械的方法によって封入体を可溶化することにより、可溶性形態のタンパク質 が得られる。種々の技法、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE) 、等電点電気泳動、二次元ゲル電気泳動、クロマトグラフィー(例えばイオン交 換、アフィニティー、免疫アフィニティー、およびサイズ排除カラムクロマトグ ラフィー)、遠心分離、分画溶解度、免疫沈降を用いて、またはタンパク質の精 製のための他のいかなる標準的技法によっても、可溶化タンパク質または可溶性 タンパク質を単離しうる。 本発明はさらに、本発明のマーカーの特徴決定を提供する。一つの態様によっ て、天然供給源からマーカーを精製しうる。下記の特定の実施例で、二次元ゲル 電気泳動から精製されたマーカーは、部分的アミノ酸配列情報を生じる。また、 一旦、マーカー遺伝子配列を発現する組換え体が同定されれば、相対的に大量に 産生される組換え体マーカー産物を分析しうる。これは、生成物の放射能標識と その後のゲル電気泳動、イムノアッセイ等を含む、生成物の物理的または機能的 特性に基づいた分析により成し遂げられる。 本発明のマーカーの構造は、当業界で公知の種々の方法により解析しうる。構 造分析は、他の公知のタンパク質との配列類似性を同定することにより実行しう る。類似性(または相同性)の程度は、マーカーもしくはそのドメインの構造ま たは機能を予測する基礎を提供しうる。特定の実施例では、例えばFASTAお よびFASTPプログラム(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sc i.USA 85:2444-48)を用いて、GenBankに見出される配列により配列を 比較しうる。 下記の特定の実施例では、十分公知の微量配列決定法により、種々のマーカー タンパク質からの部分的アミノ酸配列情報が得られる。部分的配列情報をデータ ベース中の公知の配列と比較する。いくつかの例では、マーカータンパク質の公 知のタンパク質配列との有意の配列類似性または相同性は認められず(75%未 満の一致)、このことはマーカータンパク質が独自のタンパク質であることを示 す。他の例では、マーカータンパク質は公知のタンパク質との少なくとも75% の一致を示し、いくつかの例では少なくとも90%の一致を示す。しかし、部分 アミノ酸配列情報の類似性の程度は、マーカータンパク質と公知のタンパク質と の間の関係のおよその指標に過ぎないと理解されるべきである。例えば、種々の タンパク質上に見出されるタンパク質またはタンパク質ドメインのファミリーは 100%近い配列類似性(または相同性)をもつ範囲を有しうることはよく知ら れている。 好ましくは、1つまたは複数の部分タンパク質配列を基礎にして、本発明のマ ーカーを特性決定する。下記の一例に報告されているように、マーカーのいくつ かは1つまたは複数の種々のタンパク質との類似性または相同性を示す部分アミ ノ酸配列を有する。下記の特定の実施例では、マーカータンパク質(IEF3) の3つの部分アミノ酸配列の比較は、ラットおよびヒトインシュリン反応性グル コース運送体タイプ4との類似性を示し、第二の部分アミノ酸配列はヒト転写因 子7およびアンギオテンシン変換酵素前駆体との類似性を示し、第三の部分配列 は公知のタンパク質との有意の類似性を有さなかった。したがって、このタンパ ク質は独特であると思われ、即ちその配列はこれまで確定されていない。 さらに、部分アミノ酸配列情報は、マーカータンパク質の分析の唯一の要素で ある。下記の特定の実施例では、マーカータンパク質(IEF5)は心室ミオシ ン軽鎖との92.3%適合を示す。しかし、マーカーの分子量(約39,200ダルト ン)はミオシン軽鎖の分子量(約22,000ダルトン)よりはるかに多い。したがっ て、マーカーは、公知のタンパク質と高度の類似性を有する新規のタンパク質で あると思われる。 N−またはC−末端アミノ酸シーケンシングに関しては、部分アミノ酸配列情 報は複数のタンパク質の配列に対応しうるが、しかしこれは、複数のタンパク質 が実際に存在する場合には各位置で多数のアミノ酸残基を生じると考えられる。 N末端遮断を避けるためのそれに代わる方法は、ポリペプチド断片化(例えばト リプシン切断を用いて)とその後のペプチドの分離(例えばHPLCによる)を 用いることである。断片の数は、1つまたは2つのタンパク質が試料中に存在し たか否かの指標を提供する。本明細書中の実施例において、二次元ゲル電気泳動 はその後微量配列決定に用いられるポリペプチドの非常に高度の精製を提供する 。さらに、部分アミノ酸配列は非割当残基を含み得るか、または人工物(欠失ま たは挿入)を有する可能性があり、したがって配列類似性の定量的評価の精度に 影響を及ぼす。にもかかわらず、部分アミノ酸配列情報はマーカータンパク質を 特性表示するのに非常に有益である。 タンパク質配列はさらに、親水性分析により特性決定しうる(例えば、Hopp a nd Woods,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:3824)。親水性プロフィ ールを用いて、マーカータンパク質の疎水性および親水性領域を同定しうる。 また、二次構造分析(例えば、Chou and Fasman,1974,Biochemistry 13:222 )を用いて、特異的二次構造をとるマーカーの領域を同定しうる。 操作、翻訳、および二次構造予測、並びに読取り枠予測およびプロッティング も、当業界で利用可能なコンピューターソフトウエアプログラムを用いて行うこ とができる。 組換え体マーカーの豊富な供給源を提供することにより、本発明はマーカーま たはそのドメインを定量的構造決定することができる。特に、核磁気共鳴(NM R)、赤外線(IR)、ラマン、および紫外線(UV)、特に円二色性(CD) 、分光分析のために十分な材料が提供される。特にNMRは、それらのネイティ ブの環境により近い溶液中の分子の非常に強力な構造分析を提供する(Marion e t al.,1983,Biochem.Biophys.Res.Comm.113:967-974; Bar et al.,1985, J.Magu.Reson.65:355-360; Kimura et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.77:1681-1685)。その他の構造分析方法も用いられうる。これらの例と してはX線結晶解析(Engstom,A.,1974,Biochem.Exp.Biol.11:7-13)が挙 げられるが、これに限定されない。コンピューターモデリングも、特にNMRま たはX線法とともに用い得る(Fletterick,R.and Zoller,M.(eds.),1986,C omputer Graphics and Molecular Modeling,in Current Communications in Mo lecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New Yo rk)。 さらに別の態様において、本発明の推定上のマーカーを試験して、それが関連 マーカーまたは別のタンパク質に特異的な抗体と交差反応するか否かを確定しう る。例えば、マーカーIEF5をミオシン軽鎖に特異的な抗体と反応させて、交 差反応性が認められるか否かを確定しうる。また、マーカーを用いて、マーカー との交差反応性に関して試験される抗体を生成しうる。例えばIEF5に対して 生成される抗体を生成し、用いて、ミオシン軽鎖との交差反応性を試験しうる。 交差反応性の程度は、タンパク質の構造的相同性または類似性についての情報を 提供する。 マーカーに対する抗体 本発明によれば、組換え的にまたは化学合成により産生されるマーカーおよび その断片あるいは融合タンパク質を含めた他の誘導体または類似体を免疫原とし て用いて、マーカーを認識する抗体を生成しうる。このような抗体としてはポリ クローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片およびFab発現ラ イブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。 組換え体マーカーあるはその誘導体または類似体に対するポリクローナル抗体 の生成には、当業界で公知の種々の手法を用い得る。抗体の生成のために、マー カーまたはその誘導体(例えば断片または融合タンパク質)を用いた注射により 種々の宿主動物(その例としてはウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワ トリ等が挙げられるが、これらに限定されない)を免疫化しうる。ニワトリの免 疫化は、この種の動物は概してヒトまたは哺乳類とは非常に遠縁で、したがって 相同ニワトリマーカータンパク質が低相同性であると思われるのでより強固な免 疫反応を有すると予期されるので、好ましい。 一実施例では、マーカーまたはその断片を免疫原性担体、例えばウシ血清アル ブミン(BSA)または鍵穴笠形貝類ヘモシアニン(KLH)と抱合させ得る。 種々のアジュバントを用いて、宿主種によって免疫反応を増大しうる。 「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫反応を増強する化合物また は混合物を示す。アジュバントは、抗原を徐々に放出する組織デポー製剤として 、さらに免疫反応を非特異的に増強するリンパ系活性剤として役立つ(Hood et al., Immunology,Second Ed.,1984,Benjamin/Cummings; Menlo Park,California ,p.384)。しばしば、アジュバントの非存在下での抗原単独による一次試験は 、体液または細胞免疫反応を引き出すことができない。アジュバントとしては、 完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、水酸 化アルミニウムのような無機ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオール、ポ リアニオンのような界面活性剤、ペプチド、油または炭化水素乳剤、鍵穴笠形貝 類ヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにBCG(カルメット−ゲラン杆菌 bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム属 Corynebacterium par vumが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アジュバントは製薬 上許容可能である。ある種のアジュバントは実験動物(ラット、マウス、ウサギ 等)での実験用に有用であり、その例としてはフロイントアジュバント(完全お よび不完全)、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リソレシチン、プルロニ ックポリオール、ポリアニオンのような界面活性剤、ペプチド、油乳剤、鍵穴笠 形貝類ヘモシアニンおよびジニトロフェノールが挙げられるが、これらに限定さ れない。他のアジュバントは、無機ゲルを含めて、獣医学的使用にかなっている 。ヒト用のアジュバントは、例えばフロイントアジュバントでは精神錯乱作用の 可能性があるために制限されいるが、有用なヒトアジュバントと考えられる例と してはミョウバン、BCG(カルメット−ゲラン杆菌 bacille Calmette-Gueri n)およびコリネバクテリウム属 Corynebacterium parvumが挙げられる。 マーカー、またはその断片、類似体、もしくは誘導体に対するモノクローナル 抗体の調製のためには、培養中の継続細胞株による抗体分子の産生を提供するあ らゆる技術を用い得る。これらの例としては、コーラー(Kohler)とミルスタイ ン(Milstein)(1975,Nature 256:495-497)によって最初に開発されたハイブ リドーマ法、並びにトリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al .,1983,Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生する ためのEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,1985,in Monoclonal Antibodi es and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96)が挙げられるが、そ れらに限定されない。本発明の別の実施例では、最新技術(PCT/US90/ 02545)を用いて無菌動物でモノクローナル抗体を産生しうる。本発明によ れ ば、ヒトハイブリドーマを用いる(Cote et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci .U.S.A.80:2026-2030)ことにより、またはインビトロでEBVウイルスでヒ トB細胞を形質転換する(Cole et al.,1985,in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96)ことにより、ヒト抗体を用い 得るし、獲得しうる。実際、本発明によれば、マーカーに特異的なマウス抗体分 子からの遺伝子を適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と共に スプライシングすることにより、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術 (Morrison et al.,1984,J.Bacteriol.159-870; Neuberger et al.,1984, Nature 312:604-608; Takeda et al.,1985,Nature 314:452-454)を用い得る 。このような抗体は本発明の範囲内である。このようなヒト抗体またはヒト化キ メラ抗体は異種移植抗体よりも免疫反応、特にアレルギー反応それ自体をはるか に引き起こし難いと思われるため、ヒト疾患または障害(下記)の治療に用いる には、このようなヒト抗体またはヒト化キメラ抗体が好ましい。 本発明によれば、単鎖抗体の産生に関して記載された技術(米国特許第4,946, 778号)を応用して、マーカー特異的単鎖抗体を産生しうる。本発明のもう一つ の態様においては、Fab発現ライブラリーの構築に関して記載された技術(Hu se et al.,1989,Science 246:1275-1281)を用いて、マーカー、またはその誘 導体もしくは類似体に対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の 同定を迅速且つ容易にする。 本発明はさらに、マーカーに対する自己抗体の単離および使用を目的とする。 幾人かの移植を受けた患者は自然に1つまたは複数の本発明に包含されるマーカ ータンパク質に対する抗体を発現する、という可能性が存在する。さらに、自己 免疫疾患を患うある種の患者は1つまたは複数のこれらのタンパク質に対する抗 体を発現し得た。いずれの場合も、マーカータンパク質のいずれか一つに対する これらのヒト抗体を血液試料から容易に単離し、当業者に公知の技術により、例 えば組換え体または天然マーカーを親和剤として用いる免疫アフィニティー精製 により精製し得た。これらのヒト抗体は、あらゆる他の動物種に由来する抗体と して同様の方法で本発明のアッセイ法を用いることができ、したがって、本開示 にとって等価であると考えられる。 公知の技法により、抗体分子のイディオタイプを含有する抗体断片を生成しう る。例えば、このような断片としては:抗体分子のペプシン消化により産生され るF(ab’)2断片;F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することに より生成されるFab’断片;およびパパインおよび還元剤で抗体分子を処理す ることにより生成されるFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。 抗体の産生においては、当業界で公知の技法、例えばラジオイムノアッセイ、 ELISA(enzyme-linked immunosorbant assay)、「サンドイッチ」イムノ アッセイ、免疫放射能測定アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、インサイ チューイムノアッセイ(例えばコロイド金、酵素、または放射性同位元素標識を 使用)、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えばゲル凝集アッセ イ、血球凝集アッセイ)、補体結合アッセイ、蛍光抗体アッセイ、プロテインA アッセイ、および免疫電気泳動法等によって、所望の抗体のスクリーニングする ことができる。一つの態様において一次抗体の標識を検出することにより、抗体 の結合を検出する。もう一つの態様において、二次抗体または試薬と一次抗体と の結合を検出することにより、一次抗体を検出する。さらに別の実施例では、二 次抗体を標識する。イムノアッセイにおける結合の検出に関しては当業界では多 数の手段が公知であって、これも本発明の範囲内である。例えば、マーカーの特 異的エピトープを認識する抗体を選択するためは、このようなエピトープを含有 するマーカー断片と結合する生成物質に対して作られたハイブリドーマをアッセ イする。特定の種の動物由来のマーカーに特異的な抗体の選択のためには、その 種の動物の細胞により発現されるかまたはその細胞から単離されるマーカーとの 結合が陽性であることに基づいて選択しうる。 マーカーの局在部位決定および活性に関する当業界で公知の方法、例えばウエ スタンブロッティング、インサイチューでのマーカーの画像形成、適当な生理学 的試料中のそのレベルの測定のために、前述した抗体を用い得る。 好ましい面において、用いられるイムノアッセイはイムノクロマトグラフィー アッセイである。このような装置は、液体を処理するための固相手段が包含する 。本明細書中で用いられるように、「液体を処理するための固相手段」とは、例 えば毛管作用によりそこを通る液体の移動を可能にする固体支持体をさす。多数 の イムノクロマトグラフィーアッセイ手段およびフォーマットが当業界では公知で あって、本発明の実施に用い得る。計深器または流動装置中の固体支持体として 膜を用いるイムノクロマトグラフィーアッセイは、臨床実験室およびその他の、 即ち非実験室部位試験での使用のために十分確立されている。イムノクロマトグ ラフィーアッセイ装置に通常認められるのは、プラスチックホルダーに封入され た膜(セルロースまたは非セルロース製)である。プラスチックホルダーは、全 装置を確実に正しく機能させるために、膜を適切な配置に保持する。アッセイ装 置の基本構造には多数の変異型がある。例えば、リットマン(Litman)ら(米国 特許第5,156,952号および第5,030,558号)は、試料中の最小量の分析物の存在を 測定するためのアッセイ方法および装置を記載する。ウルマン(Ullman)ら(米 国特許第5,137,808号および第4,857,453号)は、試料流動を促進ための自己充足 液体試薬を含むアッセイ膜を収容するための装置を開示している。ダフオーン( Dafforn)ら(米国特許第4,981,768号)は、試料および余分の液体を通すための 出入り口を有する装置を開示している。アッセイ装置も、コーティ(Corti)ら (欧州特許出願第89118378.2号)、グリーンクイスト(Greenquist)ら(米国特 許第4,806,312号)、バーガー(Berger)ら(米国特許第5,114,673号)、クロマ ー(Kromer)ら(欧州特許出願第0 229 359号)、ヤコブスキー(Jackowski)( 米国特許第5,290,678号)、トム(Tom)ら(米国特許第4,366,241号)、ズック (Zuk)(欧州特許出願第0 143 574号)、バーンスタイン(Bernstein)(米国 特許第4,770,853号)、メイ(May)ら(WO88/08534)、チン(Ching)ら(欧州 特許出願第0 299 428号)およびバルキルス(Valkirs)ら(米国特許第4,632,90 1号)により記載されている(これらの記載内容は、参照として本明細書中に含 まれる)。 好ましくは、イムノクロマトグラフィーアッセイ手段は、アッセイが正しく進 行したことを示す対照を包含する。対照は、固相支持体上の試料適用点から、分 析物の存在下または非存在下で標識化試薬と結合する検出ゾーンよりさらに遠位 の特異的結合スポットであって、したがって流動可能な受容体が液体試料ととも に十分な距離を移動して有意義の結果を生じることを示す。イムノクロマトグラ フィーアッセイ用の適切な標識としては、酵素、蛍光団、発色団、放射性同位元 素、染料、コロイド金、ラテックス粒子、および化学発光剤が挙げられる。対照 マーカーを用いる場合、受容体および対照マーカー用に同一のまたは異なる標識 を使用しうる。 試薬またはその成分で飽和させたマトリックスを包含する試薬輸送系を水溶性 ポリマー中に分散させて、マトリックスの下に位置する反応マトリックスへの輸 送のために試薬の溶解速度を制御する。 本発明に用いられ得る標識の一例は、直接標識である。直接標識は、自然状態 で、裸眼または光学フィルターを用いて、および/または刺激を加えて、例えば 蛍光を発するよう紫外線を当てて、容易に目に見える存在であると定義されてい る。本発明に使用しうる発色標識の例としては、金属ゾル粒子、例えばルーバリ ング(Leuvering)(米国特許第4,313,734号)が記載したような金ゾル粒子、グ リブナー(Gribnau)ら(米国特許第4,373,932号)およびメイ(May)ら(WO88/ 08534)が記載したような染料ゾル粒子、メイ(May)(上記)、スナイダー(Sn yder)(欧州特許出願第0 280 559号および第0 281 327号)が記載したような染 色ラテックス、またはキャンベル(Campbell)ら(米国特許第4,703,017号)が 記載したようなリポソーム中に封入された染料が挙げられる。他の直接標識とし ては、放射性ヌクレオチド、蛍光部分、または発光部分が挙げられる。これらの 直接標識手段の他に、酵素を含む間接標識も本発明により用い得る。種々の種類 の酵素結合イムノアッセイが当業界では十分公知であって、その例としてはアル カリ性ホスファターゼペルオキシターゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ、リ ゾチーム、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、 ウレアーゼが挙げられる。これらおよびその他のものは、エバ・エングボール( Eva Engvall)が「Enzyme Immunoassay ELISA and EMIT in Methods in Enzymol ogy,70,419-439,1980」および米国特許第4,857,453号で詳細に考察している 。 マーカーが閾値レベル以上のレベルで存在するか否かを決定するためには、あ る程度の定量化が必要である。しかしイムノクロマトグラフィーアッセイを、フ ォーマットして半定量的にしうる。「半定量的」とは、閾値を上回るレベルと閾 値を上回らないレベルとを識別する能力をさす。したがって本発明は、マーカー のレベルが統計的に正常または段階0臓器のレベルより大きい場合に、陽性結果 を生じるイムノクロマトグラフィーアッセイを意図する。 臓器拒絶反応の診断および予後 「診断」という用語は、疾患の性質の決定を意味する。本発明は、臓器の細胞 に関連し、それにより発現されるマーカーの検出に頼っているため、臓器拒絶反 応の高感応の且つ正確な診断指標である。臓器拒絶反応ばかりでなく、ウイルス 、細菌、または寄生虫の感染をも示しうる一般的な免疫活性化のマーカーに対比 して、本発明のマーカーは特に臓器拒絶反応反応に関する。したがって、本発明 のマーカーは臓器拒絶反応の危険性が高いと考えられるが、免疫活性化は感染に 関連があるものと思われる被験者の鑑別診断を有益に提供する。 ウイルス感染による免疫マーカーの上昇を伴う臓器移植受容者における免疫抑 制療法の開始は反増殖性で、おそらくは非常に有害であることは、容易に明らか である。したがって、特定の態様において、1つまたは好ましくは複数の本発明 のマーカーのレベルの上昇の検出により、有用な免疫活性化から臓器拒絶反応を 区別する鑑別的診断をすることができる。 「予後」という用語は、疾患、障害、または医学的過程の考え得る経過および 結果の予測を意味する。本発明は、宿主対移植片疾患、自己免疫疾患のいずれに よるものかにかかわらず、臓器拒絶反応の経過および重症度ばかりでなく移植生 存の見込みについて正確な予後的指標を提供する。 上記のように、拒絶反応の初期診断は、安定非拒絶反応の状態に患者を保持す るために不可欠であり、破壊的拒絶反応の状態の進行を回避する。タンパク質発 現の変化は組織学的、免疫学的、および機能的反応に必ず先行するため、本発明 は被験者からの生物学的試料のタンパク質分析を基礎にした急性拒絶反応を予測 するための新しい手段を取る。下記の特定の例では、心内膜心筋生検試料を2D ゲル電気泳動により分析する。しかし、臓器拒絶反応を示す本発明のマーカーの 存在およびレベルは、生化学的技法、免疫学的技法、および分子生物学的技法( マーカーをコードするmRNAの存在の検出)を含むいかなる技法によっても決 定することができる。 本明細書中で例示したように、マーカータンパク質のレベルはタンパク質の代 謝的標識により評価しうる。代謝的標識は〔35S〕メチオニンを補充した培地の 存在下での組織生検試料のインビトロインキュベーション中に生じるため、検出 される各マーカーのレベルはインビトロ条件により影響される。しかし、本明細 書に示されたデータは明らかに、これらのマーカーが診断的および予後的意味を 有することを立証する。したがって、特定の面において、本発明は、例えば約2 0分間のインキュベーションによる試料のインビトロ培養後の一つまたは複数の マーカー(代謝的標識によるかまたは本明細書に開示された他の技法のいずれか により)の検出を提供する。〔35S〕メチオニンによる代謝的(または生合成的 )標識の他に、本発明はさらに〔14C〕アミノ酸および〔3H〕アミノ酸(不安 定でない位置で置換されたトリチウムを有する)による標識を意図する。 さらに、インビトロの本発明のマーカーの発現のレベル増大がインビボのマー カーの発現レベル増大と相関することは、十分予期される。したがって、生合成 的標識の20時間後に検出されるマーカーのレベルはインビボのマーカーの実際 のレベルを必ずしも反映しているわけではない一方で、本発明は、このようなマ ーカーのレベルが正常臓器または拒絶反応の段階0の臓器に見出されるレベル以 上に上昇するよう意図する。したがって、本発明は、それ以上インビトロ培養を しない被験者から得られた試料中のマーカー検出を提供する。従って、例えば銀 、金、クーマシーブルー、アミドシュワルツを用いた比色染色により、その中の タンパク質を標識した後、直接、生物学的試料を分析しうる。さらに、2、3の 技法を挙げるならば、[32P]オルトホスフェート、[125I]、[121I]による同位体 標識、蛍光、または化学発光タグ、標識化抗体またはマーカーの特異的結合相手 を用いた免疫学的検出がある。 本発明は臓器拒絶反応を示す一つまたは複数のマーカーの発現レベル増大の検 出を提供するため、対応する方法は、一つまたは複数のマーカーをコードする一 つまたは複数のmRNAの発現レベル増大を検出することである。mRNAの検 出は多数の技法により行いうる。その例としてはノーザン分析、逆転写酵素PC R(RT−PCR)、インビトロ発現、および本発明のマーカーをコードするR NAの存在を検出するための匹敵する手段が挙げられる(Sambrook et al.,上記 ; Current Protocols in Molecular Biology,上記を参照)。 移植患者が一つまたは複数の本発明のマーカータンパク質に対する抗体を発現 する場合、それはおそらくは最初の拒絶反応発症中のマーカータンパク質の発現 後、しばらく生じる(例えば、Auchincloss and Sachs,1993,”Transplantati on Graft Rejection,”in Fundamental Immunology,Third Edition,William E .Paul editor,Raven Press: New York,pp.1099-1141,1129参照)。しかし その後は、マーカータンパク質が発現されると直ちに自己免疫反応が生じ、した がってその後の拒絶反応発症の予測に診断的に利用しうる。マーカーに特異的な 自己抗体のレベル増大の存在は、感染剤に対する抗体の存在およびレベルが作因 の存在を間接的に示すのと全く同様に、マーカーの発現レベルの増大を間接的に 示す。したがって、一つまたは複数の本発明のマーカーに対する自己抗体の検出 および測定が、マーカーの発現レベル増大を示すとして意図される。 特定の実施例では、本発明のマーカータンパク質の少なくともいくつかを、ヒ ト細胞株で同定しうる。このような細胞株を培養して、大量の細胞タンパク質を 産生しうる。次にこれを本明細書に記載したように2Dゲル分析により分析する 。ゲル上のスポットをウエスタンブロット法によりポリビニルジフルオリド(P VDF)またはニトロセルロース膜に移して「マーカー地図」を形成させ、次い でこれを患者からの血清で試験する。患者がそれぞれのマーカータンパク質に対 する自己抗体を合成している場合、これらの抗体はそのそれぞれの抗原と結合し 、次いで、例えば色素産生または化学発光法、あるいはヒト抗体に対する放射能 標識化抗体を用いて検出される。 上記のように、本発明のマーカーは、臓器拒絶反応を予測するまたは鑑別的に 診断するための診断具を提供する。さらに別の実施例では、一つまたは複数のマ ーカーのレベルの定量化、そして好ましくは2つまたはそれ以上のマーカーの互 いに対する相対的レベルの比較は、拒絶反応の段階を診断するための高感度で且 つ正確な手段を提供する。例えば、下記の実験例1に示すように、インビトロで 20時間インキュベーション後の生検中に存在するIEF1のレベルは段階1A 拒絶反応の2倍、段階2A拒絶反応の7倍だけ増大する。したがって、IEF1 の相対レベルは拒絶反応の段階の診断指標となる。 同様に、段階1A拒絶反応では、IEF1およびIEF2の相対レベルは等し い;しかし、「存在すべき」段階3Aに関して言えば、IEF1の相対レベルは IEF2の相対レベルの約2倍である。したがって、IEF1とIEF2の相対 レベルの比較は、拒絶反応の段階の指標を提供する。 個別にまたは他のマーカーとの比較により得られた本発明のマーカーの相対レ ベルの種々のこのような関係は、本発明の診断的および予後的方法の精度および 感受性を大いに増大する。これらの関係は、下記の表2の試験により確定しうる 。これは、生合成標識アッセイにより確定した場合のマーカーのレベルに関連す る。他の関係は、マーカーを検出するための他の技法(その例としては、分子生 物学的および免疫学的技法が挙げられるが、それに限定されない)を用いて、並 びにマーカーの観察レベルと拒絶反応段階とを相関させて、当業者が容易に測定 できる。拒絶反応の段階は、Billingham等(1990,J.Heart Transplant,9:587 -593)が記載したような組織生検により、または心臓以外の臓器の拒絶反応に対 する対応する技法により、あるいは上記のように生合成標識法と相関させること により確定しうる。 本発明は、臓器拒絶反応の開始の見込みまたは段階を便利に診断するために当 業者が使用するための便利なキットを提供する。したがって、臓器拒絶反応のマ ーカーの存在およびレベルの立証のための試験キットを調製しうる。一般に、こ のようなキットは、被験者からの生物学的試料における臓器拒絶反応を示すマー カーの存在を検出するための手段、正常被験者からのまたは臓器拒絶反応現象の 開始前の観察下での被験者からの対応する生物学的試料中に存在するレベルに対 してマーカーが増大レベルで存在するか否かを測定するための手段を包含し、適 切な容器中にキットの使用法と共にパッケージされている。ある特定の態様にお いて、マーカーの存在を検出するための、並びにマーカーが増大レベルで存在す るか否かを測定するための手段は、抗体のような、マーカーの特異的結合相手、 並びにマーカーと結合するマーカーの特異的結合相手の結合レベルを検出するた めの手段を包含する。別の実施例では、本発明のキットにおいては、マーカーの 標識レベルを、そして相対的にマーカーのレベルを検出するための手段が存在す るので、生物学的試料中に存在する細胞により発現されるタンパク質に対する標 識が提供される。さらに別の実施例では、試験キットは、生物学的試料中に存在 する細胞により発現されるマーカーをコードするmRNAのためのオリゴヌクレ オチドプローブと、並びにプローブのmRNAとの結合レベルを検出するための 手段を包含し、この場合、マーカーをコードするmRNAの発現のレベル増大の 検出は、マーカーのレベル増大を示す。好ましい態様において、本発明の試験キ ットは被験者からの生物学的試料中の臓器拒絶反応を示す1つ以上のマーカーの 存在を検出するための手段、並びに各マーカーが正常被験者からのまたは臓器拒 絶反応現象の開始前の被験者からの対応する生物学的試料中に存在するレベルに 対して増大レベルで存在するか否かを測定するための手段を包含する。 さらに別の実験例では、本発明のキットは公知量の検出すべきマーカーを提供 する。この場合、キット中に提供されるマーカーは標識される。 例えば、本発明のキットは、適切な一つまたは複数の容器中に、以下のものを 提供しうる: (a)マーカーまたはそれに対する特異的結合相手の検出可能な標識との直接 的または間接的結合により得られる予定量の少なくとも1つの標識免疫化学的反 応性成分; (b)必要な場合には、他の試薬;および (c)上記のキットの使用のための使用説明書。 さらに、診断用試験キットは以下のものを包含しうる: (a)一般に固相と結合してイムノソルベントを形成するか、または適切なタ グ、もしくは複数の該最終産物等(またはその結合相手)と結合した、上記の様 な既知量のマーカー; (b)必要な場合には、他の試薬;および (c)上記の試験キットの使用のための使用説明書。 マーカーの治療上の意義 本発明は、拒絶マーカーの合成が臓器拒絶現象を調節する役割を担うことを目 的とするものである。いくつかの、または全ての拒絶マーカーは、ストレスや免 疫活性から臓器を保護する防御タンパク質となりうる。また、例えば他のマーカ ーの合成が組織の免疫破壊を誘発するならば、それらの発現は有害な結果となり うる。 従って、本発明は、拒絶症状を調節するためのマーカーの発現の制御を提供す る。一つの態様において、臓器の拒絶を和らげるため、または防御するため構成 的プロモーターの制御下で、単一または複数のマーカーを拒絶にさらされた臓器 (例えば、移植用のドナー臓器や自己免疫性障害にかかった臓器)の細胞に導入 する。一つの特別な態様において、異種移植片の供給に用いられるトランスジェ ニック動物を、臓器拒絶を防ぐレベルで単一または複数のマーカーを発現するよ うに調製する。 一つの態様において、マーカーをコードする遺伝子をウイルスベクターを媒介 として生体内に導入する。これらのベクターには、単純ヘルペスウイルス(HSV) 、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、アデノ ウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)等の、弱毒化した、または欠陥DNA ウイルスが含まれるが、これらに限定されない。欠陥ウイルスは完全に、または ほとんど完全にウイルス遺伝子を欠いているものが望ましい。細胞に導入後、欠 陥ウイルスは感染しない。欠陥ウイルスベクターを用いることにより、ベクター が他の細胞に感染する心配もなく、特異的な局部の細胞に投与できる。そのため 拒絶症状に関係する臓器などの特定の部位を、ベクターの特異的な標的とするこ とができる。特殊なベクターの例には、欠陥ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター( Kaplitt et al.(1991)Molec.Cell.Neurosci.2:320-330)、ストラトフォード・ペ リコーデット(Stratford Perricaudet)らによって記述されている((1992)J.Clin .Invest.90:626-630)ベクターのような弱毒化アデノウイルスベクター、欠陥ア デノ随伴ウイルスベクター(Samulski et al.(1987)J.Virol.61:3096-3101;Samul ski et al.(1989)J.Virol.63:3822-3828)が含まれるが、これらに限定されない 。 また、ベクターはリポフェクションによって生体内に導入できる。過去10年間 で、インビトロで包膜化や核酸の形質転換におけるリポソームの使用が増加して いる。リポソームによる形質転換に伴う問題点や危険性を制限するように設計さ れた合成の陽イオン性脂質は、インビボでマーカーをコードする遺伝子の形質転 換用にリポソームを調製するために使われる(Felgner,et al.(1987)Proc.Natl. Acad.Sci.U.S.A.84:7413-7417;Mackey,et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:8027-8031)参照)。陽イオン性脂質の使用により、負に荷電した核酸の包膜化 が促され、また負に荷電した細胞膜との融合が促進される(Felgner and Ringold (1989)Science 337:387-388)。インビボにおいて外来遺伝子を特定の臓器に導入 するためのリポフェクションの利用には、いくらかの実用的な利点がある。特定 の細胞へのリポソームの指向化は、ある範囲の利点を示す。特定の細胞型への直 接的な形質転換は、心臓、膵臓、肝臓、腎臓、そして脳といった異種の細胞から なる組織において特に都合が良いことは明らかである。指向化のために、脂質を 他の分子に化学的に結合させることができる(Mackey,et al.(1988)前出参照)。 ホルモンや神経伝達物質のような標的ペプチドや、抗体のようなタンパク質また は非ペプチド分子を、化学的にリポソームに結合させることができる。 インビボにおいて裸のDNAプラスミドとしてベクターに導入することも可能で ある。裸のDNAベクターは、例えば形質転換、エレクトロポレーション、マイク ロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウ ム沈殿、リポフェクション(リポソーム融合)、遺伝子銃、またはDNAベクター 輸送体の使用(例えばWu et al.(1992)J.Biol.Chem.267:963-967;Wu and Wu(1988 )J.Biol.Chem.263:14621-14624;Hartmut et al.(1990)Canadian Patent Applica tion No.2,012,311,Filed March 15参照)などの当該分野で知られている方法に より、目的の宿主細胞へ導入される。 本発明は、翻訳レベルでマーカータンパク質の発現を妨げるために利用される アンチセンスヌクレオチドやリボザイムの調製にも拡張できる。この方法は、ア ンチセンス核酸でmRNAをマスクしたり、リボザイムでmRNAを切断することにより 特定のmRNAの翻訳を阻止するために、アンチセンス核酸やリボザイムを利用する 。 アンチセンス核酸は特定のmRNAやDNA分子の少なくとも一部に相補的なDNAまた はRNA分子である(Weintraub(1990);Marcus-Sekura(1988)Anal.Biochem.172:298- 95)。相補的なRNAまたはDNA分子は、例えば分解に対して安定性を増大させたり 、DNAやRNAへの結合強度を強めたり、細胞への透過性を高めることにより分子の 効力を向上させるために、塩基類似体を用いて合成することもよくある。それら は細胞で相補的なmRNAにハイブリダイズし、2重鎖分子を形成するか、または相 補的なDNAにハイブリダイズし、3重鎖分子を形成する。細胞はこの2重鎖の形態 ではmRNAを翻訳せず、ブロックされたDNA配列も効果的に転写できない。そのた め、 アンチセンス核酸はmRNAからタンパク質への発現を妨害する。AUG開始コドンに ハイブリダイズするおよそ15のヌクレオチド分子であるオリゴマーは特に効果が ある。なぜならそれらは合成が容易で、大きな分子と比較して臓器細胞に導入す る際の問題が少ない可能性が高い。さらにmRNAの3次構造には重要な役割があり 、mRNAの非自己ハイブリダイズ領域(例えば、スナップバック(snap-back)やク ローバー葉構造のオープン「葉」領域、または3次構造におけるこれらの領域間 の領域)にハイブリダイズする分子も翻訳阻害に特に有効である。アンチセンス 法はインビトロで多くの遺伝子の発現を阻害するために用いられてきた(Marcus- Sekura,前出;Hambor et al.(1988)J.Exp.Med.168:1237-45)。 リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼにやや類似した方法で他の1本鎖RN A分子を特異的に切断できるRNA分子である。リボザイムは、あるmRNAがそれ自身 のイントロンを切除できるという観察から発見された。これらのRNAのヌクレオ チド配列を変えることにより、研究者達はRNA分子における特定のヌクレオチド 配列を認識し、切断する分子を設計できた(Cech(1988)J.Am.Med.Assoc.260:3030 -4)。それらは配列に特異的であるため、特定の配列をもったmRNAしか不活性化 されない。 研究者らはテトラヒメナ(Tetrahymena)型と「ハンマーヘッド(hammerhead)」 型という2種類のリボザイムを同定した(Hasselhoff and Gerlach(1988))。テト ラヒメナ型リボザイムは4塩基配列を認識し、一方「ハンマーヘッド」型は11か ら18の塩基配列を認識する。認識配列が長くなるほど、標的のmRNA種のみに起こ る可能性が高くなる。そのため特定のmRNA種の不活性化には、ハンマーヘッド型 リボザイムはテトラヒメナ型リボザイムより好ましく、18の塩基認識配列の方が より短い認識配列より望ましい。 本明細書に記載され実施されうるマーカータンパク質をコードするDNA配列は 、マーカータンパク質のmRNAに相補的なアンチセンス分子や、mRNAを切断するリ ボザイムを調製するために用いられうる。該アンチセンス分子やリボザイムはマ ーカーをコードする遺伝子の発現を阻害し、臓器拒絶に関わる免疫刺激の程度を 低下させる。 さらに本発明は、一つまたは複数のマーカータンパク質の発現を調節する一つ または複数の薬剤の投与を目的とする。本発明の抗体は、臓器細胞に局在するマ ーカーに特異的に結合することにより、そのような薬剤を所望の部位すなわち拒 絶症状に関わる臓器に指向化させるために利用されうる。抗体と薬剤の結合は直 接的な共有結合か間接的相互作用による。また、一つまたは複数のマーカータン パク質の発現を調節する薬剤は、リポソーム、好ましくは、例えば抗体との相互 作用により目的とする臓器に指向化させたリポソームにより投与できる。 本発明は、以下の実施例を参照することで、よりよく理解されるが、これらは 例示を目的とするものであり、本発明を制限するものではない。 実施例1:臓器拒絶マーカーの同定 本実施例では、ヒト心臓移植後の心膜内心筋生検試料における拒絶を示す特異 的なタンパク質性のマーカーを同定する。同定されたタンパク質は、実際の拒絶 が起きる前の数週間(その期間は特定のタンパク質に依存する)、正常の、また は非拒絶組織における発現と比較して、極めて大量に合成される。このようない くつかの同定されたタンパク質の過剰発現が、急性の拒絶が始まる少なくとも3 〜4週間前に検出できる。軽症から重症の急性拒絶が停止してからわずか1週間 後には、これらのタンパク質はもはや過剰発現しない。拒絶を評価するために一 般的に利用されている組織病理学的方法(生検切片のHE染色)と比べて、本発明 によって同定されたタンパク質マーカーは、対応する拒絶経過をより早く予期で きる可能性がある。これらの発見は、拒絶プロセスの理解のための新しい基準を 提供し、少なくとも心臓移植レシピエントでの拒絶をより早く検出できるだろう 。従って拒絶や関連する臓器損傷を回避するための免疫抑制療法を、初期の段階 で増強できる。 約0.25mm3のヒト心臓生検試料を正確な心臓カテーテル法により採取し、ハン クの緩衝液で洗浄し、100μlの標識培地(メチオニン無添加で、透析した10%ヒ トAB血清と1mCi/mlの[35S]-メチオニンを含むDMEM(アマシャム社 SJ204))に 移し、37℃で5%CO2/95%空気の加湿大気中で20時間培養した。生検試料は、25 μg/ml RNAse A(コーパー社カタログ番号LSO5650)、25μg/ml DNAse I(コー パー社 カタログ番号LSO6330)、30mM NaCl、5mM CaCl2、5mM MgCl2、20mM Tris -HCl(pH8.5)を含む100μlのRNAse/DNAse緩衝液を用いて氷中でマイクロホモジナ イザーでホモジナイズし、4℃で30分間消化させた。その後、液体窒素ですばや く凍結し、ローディング緩衝液(9.5M 尿素、2% w/v NONIDET-P40(登録商標) (NP-40)、2% w/v AMPHOLOINES(登録商標)(pH範囲7-9)(ファルマシア社)、5 % w/v 2-メルカプトエタノール)で可溶化する前に凍結乾燥させた。ポリアク リルアミドゲル(3.5%,185x1.55mm,8M 尿素、2% NP-40)を、以下を含むよう に調製した。6% AMPHOLINES(登録商標)(pH範囲3.5-10)、2% AMPHOLINES(登 録商標)5-7、および2% SERVALYTES(登録商標)5-7(セルバ社)のIEFゲル; ならびに3.3% AMPHOLINES(登録商標)7-9、3.3% AMPHOLINES(登録商標)8-9 .5、および0.5% AMPHOLINES(登録商標)3.5-10のNEPHGEゲル。それぞれの場合 で、実際の両性電解質の混合物を各バッチに換算した。リン酸(H3PO4;10mM)を陽 極緩衝液として、脱気したNaOH(20mM)を陰極緩衝液として用いた。IEFゲルは、 有効電圧が到達するまで1チューブにつき1200V,133μA(有効値)に予め合わせ ておいた。50万のTCA沈降カウントをIEFおよびNEPHGEゲルに注入し、試料を8M 尿素、0.8% AMPHOLINES(登録商標)(pH5-7)、0.2% AMPHOLINES(登録商標)( pH3.5-10)で上乗せした。電気泳動は1ゲルにつき1200V、133μA(有効値)で行 った。IEFゲルは18時間、NEPHGEゲルは有効電圧が到達した後4時間、泳動した。 ゲルは、-70℃で凍結する前に圧搾空気を用いて押し出し、6分間平衡化した。 さらなる分析を行う際に、ゲルは水浴(80℃)ですばやく解凍し、2分間室温で インキュベートし、20℃で12.5%のポリアクリルアミドゲル(200x200mm,1mm)に ロードし、泳動した。2次元ゲルは45%メタノールと7.5%酢酸で45分間固定し、 フルオログラフィーの検出を増強するためAMPLIFY(登録商標)(アマシャム社 )で45分間処理し、乾燥させ、-70℃で5日間X線フィルム(AGFA Curix RP2)に露 光した。現像した画像は視覚的に、またはイメージプロセシングコンピューター (バイオイメージプログラム 4.5M版 ミリポア社)で比較した。 上述の実験で用いた全ての両性電解質混合物はファルマシア社から購入した。 ただしSERVALYTES(登録商標)両性電解質混合物はセルバ社から購入した。 生検試料は、通常の追跡調査の一部としてヘルシンキ宣言IIに従って移植後1 年以内に、または拒絶の疑いが生じたときに採取された。全患者は、標準的な生 化学的および組織学的な基準によって得られた結果に基づいて、サイクロスポリ ン、アザチオプリン、プレドニゾロンを含む、同じ免疫抑制の計画書に従って治 療を受けた。患者は、生検試料を採取した時点では能動感染の治療を受けていな かった。計36人の患者からの(年齢が22歳から56歳に及ぶ9人の女性と27人の男 性)、計92の生検試料を生合成的にインビトロで20時間、[35S]-メチオニンで標 識した。その後、生検を2次元ゲル電気泳動(IEFまたはNEPHGE)によって分析した 。 拒絶グレード0および3Aから得られた2つのフルオログラムの例をそれぞれ図1A と1Bに示す。これらのパターンの比較は、タンパク質のスポット強度の差異や多 数の非常に大きなタンパク質発現の変化により、明らかな例証となる。すなわち グレード0の生検試料において検出できない、もしくは低い検出レベルで発現し ているタンパク質がグレード3Aの生検試料では(図1Bで矢印と数で示す)顕著に 過剰発現している。このように、これらは急性の拒絶に対するマーカーとして利 用されうる。 これらのマーカーの発現において推定される変異を評価するために、移植手術 の間に心臓を除去した後、拒絶した心臓(グレード4)の様々な部分から生検試 料を取った。これらの生検試料は、マーカータンパク質が左および右心室壁で大 量に発現しており、両心房では低いレベルで発現していることを示していた。2 次元ゲル分析によって決定されたマーカータンパク質の等電点と分子量は表1に まとめた。 心臓移植後の標準的な病像では、患者は図2で説明したように様々な程度の拒 絶期を経験する。グラフにより、標準的な組織学的基準によって評価される拒絶 症状の悪化過程の3つの例を図示する。HTX番号は患者の識別番号である。矢印は 、2次元ゲル分析用に生検試料を取った時点を示している(時間を0に合わせる) 。他の患者から一致した過程で、連続的に生検試料を採取した。 患者HTX 51は悪化し、拒絶グレードが0から3Aへ急速に変化した。この患者は 治療に好反応を示し、グレードは0に戻った。この一連の経過は2週間内に起きた 。患者HTX 46はより安定した状態だったが、穏やかな(グレード3A)拒絶期間を 経た。患者HTX 40だけが、観察期間中を通して穏やかな拒絶期を体験した。 マーカータンパク質はゲルの2領域における染色の差異によって示されるよう に、拒絶症状の過程で発現の調節をうける(図1BでIEF 1およびIEF 6-8付近)。 これらの領域は図3A-Fおよび3G-Lに拡大して示す。 マーカータンパク質の中には非移植生検試料では低レベルで、または検出され ないレベルで発現するものもある(図3,AとG)。被移植患者では、これらのタン パク質は穏やかな拒絶状態前の6週間は変化しない(図3,BとH)。その後、拒絶 症状に先立った数週間で階層的なタンパク質の変化が起きる。例えば、タンパク 質IEF1,6,および8は拒絶前の3-4週間までに著しく増加し(図3,CとI)、一方IEF 7は拒絶の間だけ高レベルで発現する(図3,J)。5人の患者全員から得たグレー ド3Aの生検試料では、マーカータンパク質は常に過剰発現していた(図3,DとJ) 。しかし、マーカータンパク質の発現は高まる一方、生検試料のグレードが1Aで ある時は拒絶症状後1週間で顕著に減少し(図3,EとK)、生検試料が組織学的に グレード0である時は穏やかな拒絶後2週間で正常のレベルに戻った(図3,FとL) 。グレード1Aの拒絶前ではマーカータンパク質の増加は検出されなかった(デー タは示していない)。 穏やかな拒絶に対する18のマーカーが視覚的に検出可能であった。拒絶症状の 期間におけるマーカーの発現レベルは、定量分析が行えるコンピューターイメー ジ分析によって調べられる。画像の定量によって、マーカータンパク質はおよそ 3倍から120倍以上の範囲に及ぶレベルで過剰発現したことを証明した(表2)。 大半のマーカーは、グレード0の正常レベルを10倍以上上回る率で発現した。マ ーカーの2つは(IEF6とNEPHGE10)、グレード0の生検試料の発現レベルと比較し て100倍以上過剰発現した。 これらのマーカータンパク質の機能は未知であるが、例えば、筋細胞、血管細 胞、間隙中の線維芽細胞などの心臓組織細胞における遺伝子の活性化、または浸 潤細胞いずれかに由来するのかもしれない。これらのマーカーは、移植される前 の提供者の組織に非常に僅かではあるが、はっきりと分かる量が認められること から、感染の活性化に由来するとは考えられない。また、このため、このマーカ ータンパク質は正常な心臓細胞のタンパク質であると考えられる(図3AとG)。移 植前と移植後に採取した生検試料を比較すると(図3AとB、3GとH)、マーカーは同 じように発現している。従って、その発現が免疫抑制治療によって誘導されると は考えられない。 マーカータンパク質のいずれも、既知のタンパク質には一致しなかったが、そ れらは、おそらく炎症性伝達物質に対し二次的に合成されるタンパク質(Mose La rsen et al.,1994,Proc.Int.Soc.Heart Res.)か、心筋の収縮を制御するタ ンパク質であろう。例えば、免疫グロブリンファミリーの細胞表面タンパク質で あるVCAM-1は、前炎症性サイトカインによって、炎症を起こした内皮で誘導され るが、これは、組織学的に拒絶反応を確認できる一週間前に間接免疫蛍光法を用 いて、心内膜心筋生検試料の静脈性毛細血管および後毛細管小静脈に蓄積される ことが明らかになっていた(Ferran et al.,1993,Transplantation 55:605-609 ; Bevilacqua,1993,Annu.Rev.Immunol.11:767-804; Adams and Shaw,1994 ,Lancet 343:831-836)。ICAM-1は、免疫活性化と内皮損傷のマーカーであるが 、生検試料を検査しても、細胞性拒絶反応との相関は見出されていない(Ballant yne et al.,1994,J.Heart Lung Transplant.13:597-603)。クレアチンキナ ーゼMBやミオグロブリンのような心筋損傷マーカーは、心臓移植を受けた患者の 拒絶反応を同定するのには有用ではなかった(Ladowski et al.,1992,Chest 10 2:1520-1; Jennison et al.,1992,Circulation Suppl 86:1-844; Gash et al. ,1994,J.Heart Lung Transplant.13:451-454)。 以下の実施例で示すように、6個のタンパク質から部分的アミノ酸配列情報を 得た。拒絶反応の発症を経験している心臓移植患者における、18個のマーカータ ンパク質の過剰発現が同定されてきた。いくつかのマーカータンパク質は、拒絶 反応の発症に先立つ少なくとも4週間前に高度に過剰発現するため、それらのタ ンパク質によって、拒絶反応を早期に予測するための迅速な予後ツールを開発で きる可能性が出てきた。さらに、この観察によって、特にヒトの心臓において移 植後に起こる拒絶反応の過程の分子的な基礎に対する新しい洞察を得る望みがも たれている。 実施例2:部分的アミノ酸配列の決定 IEFゲル上で同定された多数のマーカータンパク質を、さらに微量シークエン シングによって解析した。タンパク質は、0.1%SDS、27.5mM Tris-HCl、95.9mM グリシンを含むpH8.3の緩衝液を用いて電気溶出し、PVDF膜上に回収した。この 膜を洗浄してポリビニルピロリドンで飽和させた。次に、この膜に結合したタン パク質を、37℃で24時間、100μlの100mM Tris-HCl、pH8.5、10%アセトニトリ ル中、0.5μgトリプシンでトリプシン消化した。このペプチドを、トリフルオロ 酢酸-アセトニトリル勾配をもつC-18カラムを用いて逆相HPLCで分離した。214n mのところでピークを検出して、手動で採集し、POLY-BRENE(登録商標)(Applie d Biosystems)で処理した。ペプチドの配列決定は、フェニルチオヒダントイン アミノ酸誘導体解析器(Applied Biosystems、モデル120A)にオンライン接続した パルス液相シークエンサー(Applied Biosystems、モデル477A)で行なった。得ら れた情報を表3に示す。 部分配列情報を得た後、この配列について既知のタンパク質との相同性または 類似性を検索した。GCGプログラム(Genetics Computer Group,Wisconsin)を用 いて、SWISS-PROTタンパク質配列データベース(40,292配列、14,147,368記号)を 、FASTAサブルーチンによって検索し、また、EMBL遺伝子バンク(257,716配列、2 63,275,079記号)を、tFASTAサブルーチンを用いてアミノ酸配列を塩基配列に翻 訳してから、ワードサイズ2を用いて、すべてのエントリーされている配列に対 して検索を行なった。 タンパク質IEF1(配列番号:1)に関する最初の部分配列は、ヒトの心房性ナト リウム利尿ペプチドレセプターA前駆体(ID ANPA)と低い類似性(約60%一致)が あった。このスポットから得た2番目の部分配列(配列番号:2)は、ヒトのサイ トケラチンと中程度の相同性または類似性があること(75%一致、ID KICI)が明 らかになった。3番目の部分配列(配列番号:3)は、ヒトのフォン・ヴィレブラ ント因子前駆体(ID VWF HUMAN)と62.5%だけ一致し、また、さまざまな種(ウサ ギ、ウシ、ヒト、ラット、およびマウス)のカルボキシペプチダーゼH前駆体と類 似性(約60%一致)があった。したがって、IEF1は、新規のタンパク質、すなわ ち今までに配列決定されていないタンパク質であると考えられる。 IEF3(配列番号:5)の部分アミノ酸配列は、胞子発芽タンパク質とかなり高い 相同性を示した(GRC1 BACSU、9アミノ酸にわたって77.8%一致)。また、ラット およびヒトのインシュリン応答グルコース輸送体4型(ID GTR4 RATおよびGTR4 H UMAN)といくらかの相同性または類似性(57.1%一致)があった。しかし、このタ ンパク質からの2番目の部分配列(配列番号:6)は、これらのタンパク質との類 似性が明らかではなかったが、ヒトの転写因子7およびアンギオテンシン変換酵 素前駆体にいくらか類似していた(両方とも80.0%一致)。さらに、3番目の部分 配列(配列ID番号:7)は、データベース上のタンパク質と60%以下でしか一致し なかった。したがって、IEF3は、新規のタンパク質であると考えられる。 IEF5に関する部分的アミノ酸配列(配列番号:8)データは、ヒトおよびラット のミオシン軽鎖(MLC)1(それぞれ、ID MLEV HUMANおよびMLEV RAT)の遅攣縮筋( 心室の同一体)がオーバーラップする13アミノ酸で92.3%相同である。また、マ ウス、ラット、ヒト、およびニワトリを含むいくつかの種からの、心室と胎児の ものを含むミオシンの軽鎖の他の形態と高い類似性を示す。しかし、IEF5の観察 された分子量(39,100から39,300ダルトン)は、ミオシン軽鎖のそれ(約22キロダ ルトン)よりもかなり大きい。ミオシンの軽鎖に前駆体があることは知られてい ない。したがって、IEF5は、ミオシンの軽鎖と相同性または類似性がある領域を もつ新規の蛋白質であると考えられる。 マーカーIEF6では、データベース上のいずれのタンパク質とも相同性または類 似性が見つからない部分的アミノ酸配列(配列番号:9)を得た。2番目の部分的 配列(配列番号:10)4%は、26キロダルトンの細胞表面タンパク質TAPA-1であるCD 81抗原とオーバーラップする11アミノ酸の部分で非常に低い類似性があった(45 %一致)。IEF6の内部配列である3番目の部分配列(配列番号:11)は、ヒトの補体 C3前駆体(ID CO3 HUMAN、83.3%一致)や、上流刺激因子1(ID USF1 HUMAN)など 、いくつかの異なったタンパク質とよく似ていた。しかし、部分的配列の類似性 をもつタンパク質のいずれも、IEF6と同じ大きさではなかった。したがって、IE F6は新規のタンパク質と考えられる。 マーカーIEF7からは、4つの内部配列がとれ、そのうち3つをデータベースで 検索した。配列番号:12は、細胞内非筋ミオシンA型重鎖(ID MYSN HUMAN)および 平滑筋の異性体(ID MYST HUMAN)の、ヒトミオシン重鎖と類似性があった(90%以 上一致)。また、ヒトの内皮酸化窒素合成酵素(ID NOS3 HUMAN)と弱い相同性また は類似性(71.4%一致)があった。しかし、2番目の内部配列(配列番号:13)は、 ミオシン重鎖と類似性が見られなかった。この部分配列は、多くの種で一致し、 コリンキナーゼ(ID KICH HUMAN)およびミオ-イノシトール-1(または-4)-一リン 酸(ID MYOP HUMAN)など、ヒトのタンパク質でも同定されている、普遍的に見ら れる5アミノ酸モチーフと非常によく似ていた(100%一致)。このALSO配列は、 ヒトのトロポニンT(遅骨格および心臓型;ID TRT HUMAN)と94.2%一致し、他の いく地くつかの種から採ったトロポニンTとも90%以上一致していた。3番目の 内部配列(配列番号:15)は、既知のタンパク質との類似性が低く、もっとも類似 性が高かったのは、大腸菌の推定タンパク質であった。しかし、この部分的配列 は、いくつかの種のトロポニンTの異性体と65%以上一致し、ヒトの遅骨格トロ ポニンTとは66.7%一致した。したがって、IEF7もトロポニンTといくらかの配列 類似性をもつことを考えると、このタンパク質もまた、新規のタンパク質である と考えられる。 IEF8からとった一個の内部配列(配列番号:16)は、ウサギ心臓のカルセケスト リン前駆体(ID CAQC RABBIT)と62.5%一致した。 GCGの検索ルーチンであるtFASTAを用いて、これらの部分的アミノ酸配列をよ り詳細に解析すると、さらにいくつかのタンパク質または未知のオープンリーデ ィングフレームに対する類似性が明らかになった。しかし、一つのタンパク質か ら一個以上のペプチド断片がシークエンスされたものについては、これによる、 より広範な検索を行なっても、この実施例で説明されているマーカーに特徴的な タンパク質を同定することはできなかった。このため、本発明者らは、これらの タンパク質は、これまでに配列決定を行なうのに十分な量、分離されたことのな い蛋白質であると考える。 本発明は、その意図と本質的な特徴から離れることなく、他の態様を取り、あ るいは他の方法で実施されることもあろう。したがって、今回の開示は、あらゆ る観点からして、例示とみなされるべきで、添付した請求の範囲によって示され る本発明の範囲を制約するものではない。また、本発明と同じ意味または範囲に 含まれる変さらはすべて、ここに包含されているものとする。 本明細書を通じて引用されたさまざまな参照文献は、それぞれ本明細書に参照 としてその全体が包含される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 27/447 G01N 27/26 301A 33/53 C12N 15/00 A (71)出願人 カールセン ショーン デンマーク王国 ディーケー−2920 シャ ーロッテンラウンド スコウガーズヴェジ ュ 35 (71)出願人 ケルセン ケルド デンマーク王国 ディーケー−2100 コベ ンハヴン オー、フラット 57 フレデリ ック ヴィーズ ヴェジュ (71)出願人 ヨハンセン サイス タニング アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 バ ブソン パーク ボックス 399 バブソ ン カレッジ (71)出願人 ラーセン ペーター モーゼ デンマーク王国 ディーケー−8000 アー ハス シー フラット 1043 ヴェスター ヴァング 10 (71)出願人 ジェンセン ウラ アンドラップ デンマーク王国 ディーケー−8464 ガル テン スコヴビー バイ、ウェデルスラン ドヴェジュ 10 (71)出願人 フェイ ステフェン ジョン デンマーク王国 ディーケー−8000 アー ハス シー フラット 772 ヴェスター ヴァング 7 (72)発明者 ハウンソー スティグ デンマーク王国 ディーケー−2960 ラン グステッド エスベン スナレス ヴェジ ュ 5 (72)発明者 カールセン ショーン デンマーク王国 ディーケー−2920 シャ ーロッテンラウンド スコウガーズヴェジ ュ 35 (72)発明者 ケルセン ケルド デンマーク王国 ディーケー−2100 コベ ンハヴン オー、フラット 57 フレデリ ック ヴィーズ ヴェジュ (72)発明者 ヨハンセン サイス タニング デンマーク王国 ディーケー−2942 スコ スボーグ ローリヘズヴェジュ 4 (72)発明者 ラーセン ペーター モーゼ デンマーク王国 ディーケー−8000 アー ハス シー フラット 1043 ヴェスター ヴァング 10 (72)発明者 ジェンセン ウラ アンドラップ デンマーク王国 ディーケー−8464 ガル テン スコヴビー バイ、ウェデルスラン ドヴェジュ 10 (72)発明者 フェイ ステフェン ジョン デンマーク王国 ディーケー−8000 アー ハス シー フラット 772 ヴェスター ヴァング 7 (72)発明者 ブートリー マルク ベルギー王国 ビー−1150 ブリュッセル アベニュー デオプヘム 19 (72)発明者 デガンド ハーブ ベルギー王国 ビー−7021 ハブレ−モン ス シャウッセ デュ ロウックス 1003

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.器官が拒絶反応を起こす危険にあると思われる患者から採取した生物学的試 料中で、器官拒絶反応が起きていることを示す相当量のマーカーの存在を検出す ることを含む、器官拒絶反応の可能性を予測する方法において、該マーカーが、 拒絶反応を起こしていると思われる器官中の細胞で発現するタンパク質であり、 かつ相当量のマーカーの検出が、器官拒絶反応の可能性の増加、または拒絶反応 の開始を示すものである方法。 2.器官が心臓である請求の範囲1記載の方法。 3.マーカーが以下のものからなる群より選ばれたものであって、pIが酸性タン パク質または中性タンパク質については等電点電気泳動により、また塩基性また は中性のタンパク質については非平衡pH勾配ゲル電気泳動により決定されたマー カーの等電点を示し、かつ分子量がポリアクリルアミドゲル上で決定される、請 求の範囲2記載の方法。 4.マーカーであるIEF1、IEF3、IEF5、IEF6、IEF7、およびIEF8が、 の部分的アミノ酸配列を有する請求の範囲3記載の方法。 5.心臓が患者に移植されている心臓である、請求の範囲2記載の方法。 6.マーカーが、IEF1A、IEF1B、IEF6、IEF7、IEF8、NEPHGE1A、NEPHGE1B、NEPH GE1C、NEPHGE1D、NEPHGE6、NEPHGE9、およびNEPHGE10からなる群より選ばれたも のである請求の範囲4記載の方法。 7.器官拒絶反応を示す相当量のマーカーの存在が、生化学的解析によって検出 されるものである、請求の範囲1記載の方法。 8.生化学的解析が2次元ゲル電気泳動法である、請求の範囲6記載の方法。 9.器官拒絶反応を示す相当量のマーカーの存在が、免疫学的解析により検出さ れる、請求の範囲1記載の方法。 10.免疫学的解析が、イムノブロッティング、固相酵素免疫測定法(ELISA)、ラ ジオイムノアッセイ(RIA)、凝集反応、免疫蛍光法、免疫化学発光法、免疫クロ マトグラフィー、バイオセンサー、光学センサー、および免疫沈降法からなる群 より選択されたものである、請求の範囲8記載の方法。 11.器官拒絶反応を示す相当量のマーカーの存在が、マーカーをコードするメッ センジャーRNAのレベルを検出することにより検出される請求の範囲1記載の方 法。 12.生物学的試料が、血液、血清、血漿、組織生検、器官生検、滑液、尿、胆汁 、脳脊髄液、唾液、粘液分泌物、滲出液、および汗からなる群より選択された試 料である、請求の範囲1記載の方法。 13.器官拒絶反応を起こす危険があると思われる患者から採取した生物学的試料 中で、器官拒絶反応を起こしていることを示す相当量のマーカーの存在を検出す ることを含む、請求の範囲1から12のいずれかによる方法において、各マーカー が、拒絶反応を起こしていると思われる器官の細胞により発現されるタンパク質 であり、かつこれらの一つ以上のマーカーの相当量の存在の検出が、器官拒絶反 応の可能性の増大またはその開始を示す方法。 14. a)患者からの生物学的試料中における器官拒絶反応を示すマーカーの存 在を検出する手段において、該マーカーが、拒絶反応を起こしていると思われる 器官中の細胞によって発現されるタンパク質である手段、および b)マーカーが、正常な患者、または器官拒絶反応の徴候を示す前の患者から の、対応する生物学的試料中に存在するマーカーのレベルに較べて、高いレベル で存在するか否かを決定するための手段を含む器官拒絶反応の可能性を評価する ための検査用キット。 15.マーカーの存在を検出し、該マーカーが増加したレベルで存在するか否かを 検出するための方法が、 a)該マーカーに特異的に結合するパートナー、および b)マーカーに特異的に結合するマーカーのパートナーの結合レベルを検出す るための手段を含む、請求の範囲14記載の検出用キット。 16.マーカーに特異的に結合するパートナーが抗体である、請求の範囲15記載 の検出用キット。 17.該マーカーの存在を検出し、該マーカーが増加したレベルで存在するか否か を検出するための手段が、 a)生物学的試料中に存在する細胞により発現されるタンパク質に対する標識 、および b)マーカーの標識のレベルを検出する手段を含む、請求の範囲14記載のキ ット。 18.標識が、銀染色、クマシーブルー染色、アミドシュワルツ、同位体標識、お よび生合成物標識からなる群より選ばれたものである、請求の範囲17記載のキ ット。 19.マーカーが、正常な患者、または器官拒絶反応の徴候を示す前の患者からの 、対応する生物学的試料中に存在するマーカーのレベルに較べて、高いレベルで 存在するか否かを決定するための手段がマイクロプロセッサー装置を含む、請求 の範囲20の検査用キット。 20. a)患者から採取した生物学的試料中で器官拒絶反応が起きていることを 示す、一つ以上のマーカーの存在を検出する手段において、各マーカーが、拒絶 反応が疑われる器官中の細胞によって発現されるタンパク質である手段、および b)各マーカーが、正常な患者、または器官拒絶反応の徴候を示す前の患者か らの、対応する生物学的試料中に存在するマーカーのレベルに較べて、高いレベ ルで存在するか否かを決定するための手段を含む、請求の範囲14記載の検査用 キット。 21.器官拒絶反応を起こしている患者からの生物学的試料中で器官拒絶反応を示 すマーカーに特異的に結合する抗体において、該マーカーが、拒絶反応を起こし ていると思われる器官中の細胞により発現されるタンパク質である抗体。 22.器官拒絶反応を起こしている患者からの生物学的試料中で器官拒絶反応が起 きていることを示すマーカーをコードする核酸において、該マーカーが、拒絶反 応が疑われる器官中の細胞によって発現されるタンパク質である核酸。 23.器官拒絶反応を起こしている患者からの生物学的試料中で器官拒絶反応を示 すマーカーにおいて、該マーカーが、拒絶反応を起こしていると思われる器官中 の細胞により発現されるタンパク質であるマーカー。 24. からなる群より選ばれた、請求の範囲24のマーカーにおいて、pIが酸性タンパク 質または中性タンパク質については等電点電気泳動により、また塩基性または中 性のタンパク質については非平衡pH勾配ゲル電気泳動により決定されたマーカー の等電点であり、かつ分子量がポリアクリルアミドゲル電気泳動上で決定される マーカー。 25.マーカーであるIEF1、IEF3、IEF5、IEF6、IEF7、およびIEF8が、以下の部分 的アミノ酸配列をもつ、請求の範囲24記載のマーカー。
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