【発明の詳細な説明】
フォンビルブラント因子誘導体及びタンパク質の単離法
本発明は、フォンビルブラント因子(vWF)誘導体及びvWFに結合するタ
ンパク質の単離法に関する。
フォンビルブラント因子は、約500〜20,000キロダルトンの大きさの一連のマ
ルチマーとして血漿中を循環している糖タンパクである。vWFのマルチマー型
は、ジスルフィド結合によって互いに結合した250kDのポリペチドサブユニット
から成る。vWFは、損傷した血管壁の内皮下層への最初の血小板接着に関与し
、ここで、大きいマルチマーのみが止血活性も示す。内皮細胞は大きい多量体形
のvWFを分泌し、低分子量形のvWF(低分子量vWF、LMW)はタンパク質
加水分解による開裂によって生成したものであると考えられている。
この血漿タンパクの主要な供給源である血管内皮細胞内で、vWFは構成的又
は刺激下の遊離によって形成されるが、より小さいタンパク質は巨核球によって
も合成される。vWFの生合成は非常に複雑であり、かくして非常に異なった構
造、役割及び性質の非常に多様な多くのvWF分子が存在することになる。
結果として、vWFは種々の組織の様々なレセプターと結合することができ、
中でも、糖タンパク質Ib、糖タンパク質複合体II/IIIa、因子VIII:C等のタン
パク質との結合、栓球との結合、内皮下層細胞(subendothelium)との結合はv
WFの最も重要な生理学的活性である。
vWFが血液凝固因子VIIIに結合すると、因子VIII複合体又は安定化されたタ
ンパク質として因子VIII:Cを含有する因子VIII:C/vWF複合体が形成され
る。必要なvWFの欠乏は、vWFの安定化効果が喪失するので因子VIII:C血
中濃度の低下をも招く。
を含有するカラムを用いる組換え因子VIIIの精製は知られている(Woodetal.,Na
ture 312(1984),330-337)。しかしながら、固定化した血漿vWFの親和力が
低いために、例えば、記載されたvWF−セファロースを用いて因子VIII/vW
F−複合体を含有する溶液から因子VIIIを顕著な収率で回収することができ
ないことが示された。
そのうえ、血漿性出発物質が因子VIII:C/vWF複合体を含有するので、この
vWF−セフアロースは因子VIIIをも含有していた。しかしながら、医薬組成物
の回収においては血漿性因子VIII:Cによる汚染は大きい問題である。
組換えvWFを用いる、マイクロタイタープレートのウエルに固定化した血漿
vWFへの因子VIIIの結合に対する阻害を調べる結合研究において、溶液中の組
換えvWFを用いてその結合パートナーである因子VIII:Cに関してより親和性が
低いことが示された(Leyte et al.,Biochem.J.,274(1991),257-261)。この
理由から、この材料(material)は因子VIIIの製造のための調製法に不適である
。
このように、本発明の目的は、タンパクを単離しようとする溶液中にvWFが
存在していても、vWFに結合するタンパク質を単離することができるクロマト
グラフィー用材料を提供することにある。換言すると、本発明の目的はその結合
パートナーとの結合に際して、vWFの親和性、とりわけ因子VIII/vWF複合
体中のvWFの親和性よりも高い親和性を有する材料を提供することにある。
本発明によれば、この目的は、粒子状担体又は担体ゲル(担体)、特にクロマト
グラフィー用材料上に固定化されたvWFから成るvWF誘導体により達成され
る。ここに、vWFは組換えvWF(r−vWF)であることを特徴とする。好
ましくは、vWF誘導体は血液凝固因子VIIIを伴わず、抗vWF‐抗体が回避さ
れるので、抗体のような異種物質を含まない。
驚くべきことに、クロマトグラフィー用材料に結合していたにもかかわらず、
r−vWFは血漿性vWFと対照的にvWF結合タンパクに驚くほど高い親和性
を有することが示された。
しかも、血漿性vWFと対照的に、r−vWFは血液凝固因子VIIIを含まず、
特にvWF結合タンパクの単離工程で面倒になりうる血漿タンパクを伴っていな
い。
本発明のvWF誘導体の特定の態様では、r−vWFをクロマトグラフィー用
材料に化学結合によって固定化する。この方法で本発明のvWF誘導体の高親和
性を高い安定性で維持することが保証され、そのことで本発明の材料の適応性が
大いに増大する。化学的固定化により、クロマトグラフィー用材料の安定化が達
成される一方で、驚くべきことに、vWFの本来の構造は否定的な影響を受けな
かった。同時に、vWFと固相との結合に与る対応する抗体の使用を省略できる
。抗体を介する結合には不安定化及び"漏れ(leakage)"(即ちvWFの結合パート
ナーの回収と同時に固定化vWFが溶出する)の増加という不都合が起こりうる
。
注意深くr−vWFフラクション(画分)を選択することによりvWF誘導体
の親和性をさらに増大できる。驚いたことに、低い一次止血活性を示すr−vW
Fフラクション、とりわけ分子量が約150万Da、好ましくは100万Daより小
さいr−vWFフラクションから、因子VIIIに対する高い親和力を有する材料(
物質)が調製できる。
組換えフォンビルブラント因子を高純度にかつ無制限量、入手可能であること
が、アフィニティークロマトグラフィー又は関連のアフィニティー法(これらで
は、結合させるべき分子がリガンドとの特異的な相互作用により結合する)にお
けるリガンドとして本発明のvWF誘導体の広範な適用が可能になる。
r−vWFは、例えばCHOのような哺乳動物細胞で発現されたものが好ましい
。そのようなrvWFは特許出願WO96/10584に記載されている。r−vWFを例
えばヘパリンアフィニティークロマトグラフィーによって精製する場合、フラク
ションはvWFに関して比較的分子量が小さい(約百万Daまで)分子を含有して
いる。これらのフラクションはそれ自身比較的低い一次止血活性を有するが、v
WFと特異的な相互作用を行い得る結合タンパク、例えば因子VIII、と結合する
ことは依然としてできる。これらのr−vWF製造の2次フラクションはそれ自
身高多量体物の大部分を含有する治療的に適用されるvWF濃縮物としては用い
られないので、これらを、本発明に従って固定化し、その固定化したものをアフ
ィニティーマトリックスの調製に使用することにより二次生産物を構成する。
本発明に従い、クロマトグラフィー用材料として、アフィニティークロマトグ
ラフィーのための優れた性質、即ち、高い流速に対応する僅かな逆圧、固定化す
べきリガンドに対する高い結合能力、低い漏出挙動、及び殺菌の可能性(例えば
ソーダアルカリ液による)など、を有するゲルを用いることが好ましい。
r−vWFの固体マトリックスへのカップリングはアフィニティークロマトグ
ラフィーで結合させるべきタンパクへの結合性が失われないように行う。驚いた
ことに、この目的のためには標準的な固定化法、例えばWoodward,"Immobilized
Cells and Enzymes",IRL.,Press,Oxford,Washington(1985),pp.3-17に記
載された方法を用いることができる。さらに、そのようなクロマトグラフィー用
のゲルは良好な再使用(reutilization)特性と安定性を有するので、繰り返し使
用したときにも単離すべき分子との結合能力が一定に維持される。
このように、好ましいvWF誘導体はクロマトグラフィー材料として、有機ポ
リマー、とりわけ炭水化物を基礎とする有機ポリマーを含む。適当なゲルマトリ
汚染、特にヒト病原性ウイルスによる汚染を回避するために、本発明のvWF
誘導体を好ましくはウイルス不活化処理に供し、vWFと結合するタンパク質を
単離する際に、クロマトグラフィー材料がウイルス汚染因子を含まないことを確
実にする。ウイルス不活化処理は好ましくは誘導体化の前に、例えば界面活性剤
、ポリエチレングリコール、カオトロピック物質による処理、熱処理、又は放射
性処理によって、化学的及び/又は物理的手段で行うことが好ましい。しかしな
がら、同様に、完成した誘導体を好ましくは凍結乾燥形で、熱処理又は放射性処
理などに供することが好ましい。
好ましい実施態様では、本発明のvWF誘導体を保存安定な形、特に凍結乾燥
品として、提供することにより、それらの貿易、販売及び保存を極めて容易にす
る。
さらなる側面では本発明は容器とその中に本発明のvWF誘導体とを含有する
装置に関し、該容器は液体が通過するのに適した注入のための入口と、出口とを
有する。実際には、本発明の装置はカラム、特にアフィニティーカラム又はクロ
マトグラフィー用カラムとして設計し、所望により保存安定な形で、タンパクの
単離の前に個々の使用者が単に材料を膨潤させることのみが必要となるよう、re
ady-to-use製品とすることができる。
本発明はまた、以下のステップにより特徴付けられるvWFと結合するタンパ
ク質を単離する方法に関する:
・vWFと結合するタンパク質を含有するフラクションを得、
・そのフラクションを本発明のvWF誘導体と接触させて該タンパク質をvW
Fと結合させ、
・結合しない成分を分離し、
・タンパク質をvWF誘導体から溶離する。
この方法は、バッチ法で行うか、カラムクロマトグラフィー的な方法で行って
も良い。
本発明の方法によって単離し得るタンパク質としては、第一に、生理学的なv
WF結合タンパク質、即ち、糖タンパク質Ib、糖タンパク質IIb/IIIa複合体、
コラーゲン、及び、とりわけ因子VIIIが考慮されるが、もちろん、これらタンパ
ク質の組換え誘導体及び類似体、vWF抗原、vWF抗体、vWFマルチメラー
ゼ又はvWFデポリメラーゼもそれぞれ考慮され、さらにはvWFを基質として
認識する酵素、さらにその他のvWFに親和性の天然又は合成ペプチド類及びタ
ンパク類も考慮される。その他、vWF−結合性糖類、例えば、ヘパリンもこの
方法で単離できる。
本発明のvWF誘導体は親和性が高いので、単離すべきタンパク質を本発明の
クロマトグラフィー材料に特異的に結合させ、それらを60%以上の収率、好ま
しくは80%以上、最も好ましくは定量的に回収し、それらをvWF誘導体から
粗製(inpurified)の形で溶離することが可能であり、かくして、溶離後の濃縮手
段なしに単に溶離するだけで単離されたタンパク質の濃縮物を調製することが可
能になる。
本発明の方法は、特に因子VIII活性を有する生物学的に活性なタンパク質、と
りわけ血漿性又は組換え的な因子VIII及びその突然変異体又は類似体の回収に適
する。たとえ因子VIII/vWF複合体を含有する出発溶液を用いても本発明方法
によって単離することができるだろう。
タンパク質の溶離、特に因子VIIIタンパク質の回収のための溶離は、カルシウ
ムイオン含有バッファーを用いて行うことが好ましい。
その作業において特に重要なのは、因子VIII含有血漿フラクション、又は因子
VIIIを発現する細胞の細胞培養上清からの因子VIIIの単離である。血漿画分から
因子VIIIを単離する場合にはvWFが因子VIIIのキャリアタンパクとして機能す
るよう、即ち、因子VIIIがvWFに結合して存在するよう、注意しなければなら
ない。その外の方法としては、因子VIIIとvWFとの分離は複合体法によっての
み行うことができる。この場合、例えば固定化した、因子VIII/vWF複合体が
結合する因子VIIIに対するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体に因子VI
IIを結合させ、次いで、抗体と因子VIIIとの結合を妨げずに意図的にvWFを溶
離する。その後、因子VIIIをクロマトグラフィー用ゲルから溶離する。そのよう
な方法は非常に複雑であるが、純度の高い因子VIII製品を得ることができる。因
子VIIIに対する高い特異的な結合能力及び高い親和力を有する固定化r−vWF
の独創的な使用により、因子VIIIは固定化vWFに高い親和性で結合し血漿画分
中に存在する因子VIIIとvWFとの複合体を解離することができる。このような
方法でvWFを伴わない高純度の因子VIIIを血漿フラクションから単離すること
もできる。
因子VIIIに加えて、vWFと親和性の他のタンパク質も固定化r−vWFと結
合させ複合体混合物から単離することができる。即ち、複合体混合物としては、
例えば、因子VIIIハイブリッドタンパク、特に米国特許出願08/558,107に記載の
因子VIII-ヘパリン−補酵素IIハイブリッドタンパク又はWO90/05530に記載の因
子VIII−因子V-ハイブリッドタンパク、又はWO94/11503に記載のキメラヒト/ブ
タ因子VIII、FVIII突然変異体、例えば、AT 403 438に記載のArg2307→Gln
置換を有する因子VIII突然変異体(因子VIIIdB695-R2307Q)、これは一定の因子VI
II:C-プロコアギュレート(procoagulatory)活性及びvWF結合活性を持ち減少
されたインヒビター結合を示す、フォンビルブラント因子分解酵素、例えば、そ
れぞれvWF特異的デポリメラーゼ又はvWFマルチメラーゼ、又は栓球レセプ
ター、例えばGPIIb/IIIa複合体又はGPIb/IX複合体、それらの純粋な製品は生物
学的分析、診断又は治療において興味深い、などがある。
現在、治療用タンパクの特異的な単離はイムノアフィニティークロマトグラフ
ィー法で行われている。そのような方法では単離すべき分子を固定化したモノク
ローナル抗体(一般にネズミ細胞から単離)に結合させ、洗浄して不純物を除き
、次いで溶離して高純度のものとする。モノクローナル抗体の使用には、それが
ネズミのタンパク質を製品に持ち込みうるという欠点があり、そのことは、結合
させるべき分子を治療に適用する限りにおいて、例えばネズミタンパクに対する
抗体の惹起のような副作用を起こしうる。固定化したヒト起源の特異的なリガン
ド又はヒトタンパクと同等の分子を用いることにより、そして異種の抗体を用い
ることを回避することにより、製品に存在し得る汚染がヒト起源であり上記の副
作用、即ち異種抗体の生成が排除されるという限りにおいて、内在するアフィテ
ニィーカラムの漏れによる汚染の問題が低下する。さらなる利点は、抗体でない
高特異性のリガンドを用いることにより、抗体の場合には起こり得る非特異性の
問題が排除される。
さらに、本発明方法によるvWFに対する生理学的な結合タンパクの回収には
、vWFがその結合パートナーに対する安定化剤又はキャリアー機能を発揮する
という利点がある。このように、単離及び精製の間にも、溶離(溶出)の間に起
こり得る分解条件から回収されたタンパク質は保護される。このようにして得ら
れた生成物は上記のように、その抗原性のみならず、それらの活性又は本質性(n
ativity)に関しても高収率で回収される。
本発明のvWF誘導体を用いて精製される、その他の特に好ましいタンパク質
又はタンパク質複合体は、高分子形のvWFを低分子変異体に分解するvWFマ
ルチメラーゼである(AT 404 359及びAT 404 554参照)。この場合、マルチメラ
ーゼは固定化vWFに結合し、誘導体化のおかげで本発明の材料の分解は防止さ
れる。
特に、vWFマルチメラーゼを単離する場合、金属イオンのためのキレート剤
を含有するバッファー、特にEDTAを用いる溶離が特に効率的である。
本発明のvWF誘導体はvWFに対する抗体の、可能な体外イムノアドソープ
ションにも適する。vWFに対する抗体の形成は病理学的条件を構成し、出血傾
向が高い血液凝固欠損に至る自己免疫疾患、あるいはvWF含有製剤で治療され
た患者における副作用として現れる。機能的で阻害性の抗体が形成すると、置換
療法が不可能になるか、凝固因子濃縮物の止血作用の持続のために劇的な用量の
増加を招く。過去においてはそのような場合、循環中の凝固因子に対する機能的
な抗体を血漿瀉血(プラスマフェレーゼ)又はIgGに対するタンパク質、例え
ばプロテインA又はプロテインG、による体外免疫吸着によって除去していた。
同様の方法がNilsson et al.(Thromb.Haemostas.70(1993),56-59)にも因子VI
IIに対する抗体の除去に関して記載されている。この場合、患者の血漿を固定化
された組換えFVIIIを含有するカラムにポンプで送り出し、FVIII阻害性抗体を循
環中から除去する。しかしながら、この方法で固定化されたリガンドはフォンビ
ルブラント因子を含有していなかった。従って、vWFに対する抗体の体外イム
ノアドソープションは行うことができなかった。
本発明の抗体回収方法のさらなる応用は診断目的のためのvWFに対するポリ
クローナル抗体又はモノクローナル抗体の分取製造にある。
本発明のvWF誘導体からの抗体の溶離に用いるのに好ましい溶離バッファー
には酸性pH、特にpH2〜5の範囲のものが含まれる。
本発明の本質的な利点の1つは、任意の出発物質からタンパク質を精製できる
ということである。特に好ましい出発フラクションは哺乳動物の体液又は細胞培
養から導かれるフラクションである。クロマトグラフィー材料の独創的な親和性
の故にvWF及び/又は因子VIII/vWF−複合体を含有するフラクションも好ま
しい。
本発明方法の好ましい実施態様における変種は、vWFを含有している装置を
用いて行うことからなる。
以下に実施例及び図面に従って本発明をさらに詳しく説明するが、それらは本
発明を制限するものではない。
第1図及び第2図は本発明のvWF誘導体を用いる組換え因子VIIIの精製を示
す。
実施例1:
CHO細胞由来の組換えフォンビルブラント因子の調製
FEBS.Lett.351(1994),345-348に記載のように、組換えフォンビルブラント因
子を産生するCHO細胞クローンを調製する。ヒトフリンのcDNAをコードす
るベクターでのトランスフェクション(van den Ouweland et al.,Nucleic Aci
ds Res.18(1990),664)によって、ヒトフリンを同時発現するセルラインを作成
した。この安定な細胞クローンを潅流反応物中の微担体(ミクロキャリアー)
Animalcelltechnology.Oxford,London:Butterworth-Heinemann,(1994),267-2
69)。
Thromb.Haemost.73(1995),1160に記載の2段階クロマトグラフ法によって
精製を行った。塩溶液で溶離させたフラクションを回収し、Sephadex G25(Phar
macia)でゲルろ過して、20mMトリス塩酸、150mM NaClを含むpH
7.5のバッファーに再緩衝化した。次いで、この調製物をAmicon YM30メンブ
レン(カットオフ:30,000D)で超濃縮し、タンパク質濃度を3mg/m
Lとした。この調製物中のvWF濃度はvWF抗原60U/タンパク質mgにな
った。細胞培養の調製時および精製時に血清または血漿成分を回避したため、こ
の調製物は因子VIIIを全く含んでいなかった。
実施例2:
組換えフォンビルブラント因子の固定化
実施例1に記載の組換えvWFの調製物を20mMトリス塩酸、150mMN
aClを含むpH7.5のバッファーで希釈し、1.5mg/mLとした。アフ
ィニティークロマトグラフィーに適当なあらかじめ活性化したゲル(Actigel,
ALD-Superflow,Sterogene)を、20mMトリス塩酸、150mM NaClを含
むpH7.5のバッファーで何度も洗浄しておいた。あらかじめ洗浄したゲル1
容量を、固定化するタンパク質溶液1.1容量と混合し、次いで0.1Mリン酸
バッファー、pH7.0中の0.1Mシアノホウ水素化物(NaCnBH3)溶
液0.15容量を混合した。ゲルを振とうしてこのバッファーに懸濁し、さらに
振とう下、室温で16時間インキュベートした。次いでこのゲルを焼結吸引フィ
ルター上、20mMトリス塩酸、150mM NaClを含むpH7.5のバッ
ファー10倍容量で洗浄し、20mMトリス塩酸、2M NaClを含むpH7
.5のバッファー5倍容量で洗浄した。次いでこれを、20mMトリス塩酸、1
50mM NaCl、pH7.5のバッファー5容量で再び平衡化し、このゲル
を、直径:ゲル床の高さの寸法が1:4であるクロマトグラフィーカラムに移し
た。vWF溶液のインキュベート上清およびアフィニティーゲルの溶液ならびに
焼結吸引フィルターで分離された洗浄溶液中のタンパク質濃度を決定することに
よって、カップリング率は用いたタンパク質の90%以上と決定された。
実施例3
組換え因子VIIIの精製
組換え因子VIII調製物(RecombinanteR,Baxter)をAqua.dest.10mL
に再構成した。この溶液は、生理的pHのヒスチジン塩バッファー中、FVII
I 50IU/mL、ヒトアルブミン12mg/mL、ポリエチレングリコール
3350 1.5mg/mLおよび微量のvWFを含むものであった。Sephadex
G25(Pharmacia)でのゲルろ過によって、この溶液から低分子成分を分離し、
20mMトリス塩酸を含むpH7.5のバッファーに因子VIII/vWF/ア
ルブミン混合物を移した。次いでこの溶液7mLを流速0.5mL/分で実施例
2のカラムにアプライした。次いで、同流速下、これを20mMトリス塩酸、p
H7.5のバッファー10mLで洗浄し、さらに250mM塩化カルシウムを含
む同バッファーでvWF結合FVIIIフラクションを溶出させた。室温で行っ
た全クロマトグラフィー工程間に、500μLのフラクションを収集し、カラム
に通した後、280nMで光学密度を決定した。次いで、色で見分けられる因
子VIII試験、Immunochrom FVIII:C(Immuno)によってフラクション
中のFVIII含量を決定した。この結果を図1に示す。
フラクションの分析により、タンパク質の90%以上がカラム流出液および洗
浄溶液に含まれていたが、ほんの一部のFVIII活性(5%より少ない)がこ
のタンパク質フラクションとともに溶出しただけであることが示される。塩化カ
ルシウムを含む溶出液により、大部分のFVIIIを高い純度でカラムから溶離
することができた。因子VIIIの回収率は90%以上であった。
実施例4:
アフィニティーゲルの再使用性
組換え因子VIIIの最初のアフィニティークロマトグラフ精製が完了した後
、カラム中のアフィニティーゲルを、20mMトリス塩酸、pH7.5のバッフ
ァーで過剰に洗浄した。ELISA(Boehringer,Mannheim)により、洗浄溶液
中のvWF抗原を測定した。vWF:Agを全く測定できず、これによりこのア
フィニティーカラムの低い漏出性が示された。実施例3に記載のように、同一条
件下、固定化組換えvWFによる組換え因子VIIIのアフィニティークロマト
グラフ精製を繰り返した。この溶出図を図2に示す。タンパク質および活性溶出
プロファイルはアッセイ関連偏差内で、最初のアフィニティークロマトグラフィ
ーの実行に匹敵していた。これゆえ、アフィニティーゲルの再使用性は良好であ
るとすることができる。
実施例5:
抗フォンビルブラント因子抗体の固定化組換えフォンビルブラント因子に対す
る結合
Sephadex G25(Pharmacia)でのゲルろ過により、IgG濃度が7mg/mL
であるvWFに対するマウスモノクローナル抗体(MAb 03768/3,Ch
emicon International,Inc.)を、20mMトリス塩酸、150mM NaCl、
pH7.5のバッファー中に再緩衝化した。同バッファーで希釈して、タンパク
質濃度を0.5mg/mLに調節した。実施例3の固定化組換えvWFを含むカ
ラムに、この溶液4mLを流速0.5mL/分でポンプで注入し、280nmで
流出液の光学密度を測定した。次いで、これをトリス塩酸バッファー20mLで
洗浄し、さらに500mM NaClを含むトリス塩酸バッファー10mLで洗
浄した。記載の洗浄工程では、いかなる言及可能な量のタンパク質もアフィニテ
ィーカラムから溶出しなかった。次いでこれを、100mMグリシン塩酸、pH
2.2のバッファーで溶出させた。pHを変化させることによって、タンパク質
をカラムから定量的に溶離させることができた。IgG含量の決定により、用い
たIgG 2mgのうち、グリシン溶出液中にIgG1.75mgが再び見られ
た。これは収率88%に相当する。酸性バッファーを用いた溶出工程の後、さら
なる再使用のため、20mMトリス塩酸バッファー、pH7.5でアフィニティ
ーカラムを洗い流した。
実施例6:
フォンビルブラント因子分解酵素の精製
Furlanet.al.(Blood87(1996),4223-4234)に記載のヒト血漿由来のvWF開裂
プロテアーゼを同上に記載の方法にしたがい、銅キレートアフィニティークロマ
トグラフィー、次いでブチルセファロース(Pharmacia)での疎水性相互作用ク
ロマトグラフィーによってあらかじめ精製した。ブチルセファロースの溶出液を
凍結乾燥し、濃縮後に蒸留水にとった。次いで、これをSephadexG25(Pharmacia
)によって20mMトリス塩酸、50mM NaCl、10mM BaCl2、5
mM PEFAブロック(Pentapharm)、pH7.5のバッファーに再緩衝化した
。流速0.5mL/分の実施例2の固定化組換えvWFを含むカラムにこの溶液
3mLをアプライした。次いで、プロテアーゼフラクションを再緩衝化した同バ
ッファー10mLでこれを洗浄し、このカラムを20mMトリス塩酸、50mM
NaCl、20mM EDTA、5mM PEFAブロック(Pentapharm)を含
むpH7.5のバッファーさらに10mLで洗い流した。不安定であることが知
られているvWF分解酵素を安定化するために、各フラクションのフラクション
コレクターの試験管にウシ血清アルブミンの1%水溶液50μLを入れておいて
、全クロマトグラフィー工程間に、各450μLのフラクションを収集した。ク
ロマトグラフ時に、280nmのUV吸収を測定し、以下
のようにvWF分解酵素活性を測定した。実施例1の組換えvWF調製物を0.
2%(W/V)ウシ血清アルブミンを含む5mMトリス塩酸、1.5M尿素のバ
ッファーに再緩衝化し、0.4 vWF U/mLとした。100μL量の試験
フラクションをそれぞれ50mM PPACK水溶液5μLおよび200mM B
aCl2溶液12.5μLと混合し、37℃で5分間インキュベートした。次い
で、このように調製したサンプルを基質(vWF)と1+1混合し、Maruskyお
よびSergeant(Anal.Biochem.105(1980),403)の方法にしたがい、5mMトリス
塩酸、1.5M尿素を含むpH8.0のバッファーに対し、37℃で15時間、
浮動透析膜(Millipore VSWP)で透析した。次いで、vWFのコラーゲン結合活
性およびその抗原性を決定するELISAにおいてvWF残留活性に関し、透析
物を分析した。これが終了した後、2μg/mLの濃度のヒト胎盤のペプシン消
化III型コラーゲン(Southern Biotechnology)の懸濁液100μLを、ポリ
スチレンのミクロタイタープレート(96ウェル、Pierce ReactibindTM/リン
ゴ酸無水物−活性化)の各ウェルに入れ、室温で1時間インキュベートした。次
いで、これをブロックバッファー(SuperBlockTM,Pierce)各150μLで30
分間処理した。次いで、vWF含有サンプルの種々の希釈物各100μLをアプ
ライし(25−250ng vWF/mL)、ペルオキシダーゼ結合抗vWF抗
体(Dakopatts P226,1:1000希釈)の溶液100μLとインキュベートし
た。次いで、基質100μLを加え(Single Component TMB Peroxidase EIA Sub
strate,Bio-Rad)、1分後に0.18MH2SO4で1+1希釈して、色反応を停
止させた。この後、ELISA読み取り装置で450nmでの吸光度を読み取り
、標準の希釈シリーズと比較してサンプル濃度を決定した。各インキュベート工
程の後、バッファー(それぞれの次の工程に対応するバッファー)各150μL
で3回洗浄した。
用いたバッファー系:バッファー1
(コラーゲンコーティングおよび抗体希釈用):
8mMリン酸ナトリウム、135mM NaCl、2.6mM KCl、pH7
.3バッファー2
(サンプル希釈用):
バッファー1+0.05% トウィーン20および1%ウシ血清アルブミン、
pH7.3に対応
コラーゲン結合活性の逆数がvWF分解酵素の酵素活性についての直接の測定
値であると考える。
フォンビルブラント因子カラムにアプライされた酵素量のうち、約50%が流
出液および洗浄溶液中に見られ、一方、EDTAでの溶出によって約50%の活
性がカラムから溶離した。しかし、クロマトグラフ精製の流出液および洗浄フラ
クションには95%以上のタンパク質が含まれていたため、出発物質と比べて、
単離される酵素活性を5−10倍豊富にし、精製することができた。
実施例7:
血漿性因子VIIIの精製
血漿性因子VIII/フォンビルブラント因子濃縮物(IMMUNATE;Immuno)を
蒸留水5mLに再組成した。この溶液は、pH7.4のクエン酸−グリシン−リ
シンバッファ−中に因子VIII 25IU/mLおよびvWF 10U/mL
(リストセチンコファクター法によって測定)を含んでいた。Sephadex G25でのゲ
ルろ過によって、因子VIII/フォンビルブラント因子複合体を、2ーmM
トリス/塩酸を含むpH7.5のバッファーに再緩衝化した。次いでこの溶液3
mLを実施例2のカラムに直接アプライした。流速は0.1mL/分であった。
次いでこれをpH7.5の20mM トリス/塩酸バッファー30mLで洗浄し
、次いで20mM トリス/塩酸および250mM CaCl2を含むバッファー
でこれを溶出させた。溶出時にフラクションを集め、光学密度を決定した。溶出
バッファーのアプライ後すぐのフラクションでは、280nmのUV吸収の10
%増加が測定され、フォンビルブラント因子ELISA(Boehringer,Mannheim
)ではフォンビルブラント因子を含まない溶離タンパク質が測定され、最初の1
0溶出フラクションでは、色で見分けられる因子VIIIアッセイ、Immunochro
m FVIII:C(Immuno)での測定により、約0.2U/mLの因子VIII
含量が見られた。