JP2001505766A - アポトーシスと生長を調節するアデノウイルスベクターを有する、有糸分裂後のニューロン - Google Patents

アポトーシスと生長を調節するアデノウイルスベクターを有する、有糸分裂後のニューロン

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、アデノウイルスベクターを有する有糸分裂後のニューロンにおいて、約10から約50までの感染多重度でアデノウイルスベクターに感染しており、該ベクターに含まれるDNA分子にコードされる遺伝子産物を発現するニューロンについて開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 アポトーシスと生長を調節するアデノウイルスベクターを有する、 有糸分裂後のニューロン 発明の分野 本発明の技術分野は神経生物学である。 発明の背景 プログラムされた細胞死(アポトーシス)は、発生中の神経系でも、成熟した 神経系でも進行するプロセスである。発生中の神経系において、ニューロンは、 それらが神経支配する標的(例えば、筋肉)から神経栄養物質を適切に供給され ないかぎり、アポトーシスを起こす。成熟した神経系において、アポトーシスは 、アルツハイマー病ならびにパーキンソン病のように、長い時間をかけてゆっく りと進行する神経変性病の過程、および、卒中などの急性の神経発作で起きる。 したがって、アポトーシスがどのように調節されているかを理解することは、神 経変性病および卒中の有効な治療法を開発するための重要なステップである。 アポトーシスは、p53と呼ばれる腫瘍抑制遺伝子の過剰発現によって、いくつ もの異なった細胞型において誘導されうる(Elledge et al.,Bioessays 17:923 〜930;White,Genes Dev.10:1〜15に概説されている)。DNA損傷は、細胞の制 御不能な増殖をもたらすことがあるが、その後にp53が発現されると、サイクリ ンキナーゼインヒビターp21(WAF-1としても知られている)など、細胞周期の停 止をもたらして、損傷を受けたDNAが増殖するのを防ぐ別の遺伝子の発現を活性 化することによって、腫瘍形成阻止を助長する(Harper et al.,Cell 75:805〜 816,1993;Xiong et al.,Nature 366:701〜704,1993)。p53の過剰発現に対 する細胞応答は細胞型によって多様であるが、p53の過剰発現は、細胞増殖の停 止ではなく、アポトーシスをもたらすことがある(Katayose et al.,Int.J.O ncol.3:781〜788,1995;Picksley et al.Current Opin.Cell Biol.6:853〜 858,1994;White,前記)。p53が腫瘍細胞においてアポトーシスをもたらす正確 な機構は十分に理解されておらず、また、有糸分裂後(すなわち、非増殖)のニ ューロンのアポトーシスにp53が直接関与しているか否かも分かっていない。 最近、いくつかの研究で、アデノウイルスベクターを用いて、培養されている CNSニューロンを形質導入できることが示された(Slack et al.Current Opin. Neurobiol.,6:576〜583,1996)が、これらのベクターが、受容細胞の機能に負 の影響を与えるかどうかは分かっていない。アデノウイルス由来のベクターが、 ニューロンにおけるアポトーシスを調節するのに有用なものであれば、ニューロ ンに対するそれらの生化学的および生理学的影響を理解する必要がある。 発明の概要 本発明は、好ましくは1から1000MOI(感染多重度:multiplicity of infectio n)、より好ましくは1から500MOI、また、最も好ましくは約10から約50MOIの感 染多重度で、ニューロンに感染させるという(本明細書で説明されているような )条件の下で、ニューロンに取り込ませたアデノウイルスベクターを含む、有糸 分裂後のニューロンを特徴とする。このニューロンは、ベクター内に含まれるDN A分子によってコードされている遺伝子の産物を発現することができる。 一つの態様において、組織培養の間に、有糸分裂後のニューロンを感染させる 。別の態様において、有糸分裂後のニューロンをインビボで感染させる。本発明 は、また、インビトロおよびインビボで、この細胞を製造するための方法を特徴 とする。アデノウイルスベクターは、大脳内、脳室内、クモ膜下腔内もしくは硬 膜下腔内、経粘膜、筋内、または皮下など、当業者に既知の方法によって投与す ることができる。好ましくは、アデノウイルスベクターは、脈管内から投与され る。 アデノウイルスベクター内に含まれるDNAによってコードされている遺伝子産 物は、構造タンパク質、酵素、転写因子、または、低親和性神経成長因子(NGF )レセプターp75、高親和性NGFレセプターのTrk、もしくはTrkB、TrkC、NT-3、 およびNT-4/5など、Trkファミリーのその他のレセプターを含むレセプターなど である。好ましくは、遺伝子産物は腫瘍抑制因子である。もっとも好ましくは、 遺伝子産物はp53である。または、もしくはそれに加えて、アデノウイルスベク ターは、レポーターまたはマーカー遺伝子産物をコードするDNAを含んでいても よい。好ましくは、レポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、クロラムフ ェニコールアセチルトランスフェラーゼ、lacZ、または緑色蛍光タンパク質であ る。 また、本発明は、p53など、アポトーシスを誘導するタンパク質をコードするD NAを含むアデノウイルスベクターにニューロンを感染させることによって、有糸 分裂後のニューロンにおいて、アポトーシスを誘導する方法を特徴とする。さら に、本発明は、Bcl-2、Bcl-XL、E1B55K、またはGab1など、アポトーシスを阻害 するタンパク質をコードするDNAを含むアデノウイルスベクターにニューロンを 感染させることによって、有糸分裂後のニューロンにおいて、アポトーシスを誘 導する方法を特徴とする。 また、本発明は、アポトーシス、成長、または増殖を阻害または誘導する試験 化合物を同定する方法において、(a)有糸分裂後のニューロン集団を培養する 段階、(b)該集団のニューロンを、アポトーシス(成長もしくは増殖)を誘導 (または阻害)するタンパク質をコードするDNAをもつアデノウイルスベクター に感染させる段階であって、該ベクターが、約10から約50の感染多重度で選択的 に該ニューロンに取り込まれるように感染させる段階、(c)段階(b)で感染した ニューロンの部分集団を、アポトーシス、成長、または増殖のインヒビター(ま たはインデューサー)候補物質である試験化合物に暴露する段階、および(d) 感染してから、該試験化合物に曝された部分集団において、適宜、アポトーシス 、成長、または増殖を起こしているニューロンの概数を、感染した細胞集団にお いてアポトーシス、成長、または増殖を起こしているニューロンの概数と比較す る段階を含む方法も特徴とする。 本発明は、生物学的に活性のある全長タンパク質またはその断片をコードする DNA分子を用いて実施することができる。同様に、本発明は、一つ以上の保存的 アミノ酸置換によって、本明細書で説明されているDNA分子と異なるDNA分子を用 いて実施することができる。好ましくは、タンパク質は、50%よりも少ない置換 アミノ酸残基をもち、より好ましくは、30%よりも少ない置換アミノ酸残基をも ち、また、もっとも好ましくは、10%よりも少ない置換アミノ酸残基をもつ。 「生物学的に活性のある」とは、インビボまたはインビトロで、全長タンパク 質の特性である活性を持つことを意味する。生物学的に活性のある断片は、一般 的に、全長タンパク質の活性の少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも70% 、また、もっとも好ましくは、少なくとも90%をもつ。好ましくは、断片は、全 長タンパク質の少なくとも一つの活性を模倣する。 「保存的アミノ酸置換」とは、以下の各群の中での置換を意味する:グリシン 、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸 ;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およ びフェニルアラニン、チロシン。 「アポトーシス」とは、死にかけた細胞が、原形質膜の膨潤、細胞質の委縮、 染色体の凝集、およびDNAがラダーになるなどの特徴が十分に明らかになってい る一連の生化学的に顕著な特徴を示す細胞死を意味する。 「アポトーシスを誘導することができる刺激」または「アポトーシス刺激」と は、上記で定義されたアポトーシスを開始させる、化学的または物理的な任意の 処理を意味する。例えば、神経成長因子の供給停止(withdrawal)、低酸素症、 スタウロスポリンへの暴露、および大脳虚血などが、ニューロンにおけるアポト ーシスを誘導できる刺激である。 「ニューロン」とは、動物の神経系のいずれかの部分に由来する、外胚葉起源 の細胞を意味する。ニューロンは、クラスIIIβ-チューブリン、MAP2、およびニ ューロフィラメントタンパク質など、特徴が十分に明らかになっているニューロ ン特異的なマーカーを発現する。ニューロンには、海馬ニューロン、皮質ニュー ロン、中脳ドーパミン作用性ニューロン、運動ニューロン、感覚ニューロン、お よび交感神経ニューロンが含まれるが、これらに限定はされない。 「ニューロン成長」とは、突起ネットワーク密度が約2倍以上に増加すること 、神経突起の全長が約1.5倍以上に増加すること、細胞の大きさ(面積)が約10% 以上、好ましくは25%以上に増加すること、Tα1 α−チューブリンのmRNAが約5 倍以上に増加すること、および/またはチロシンヒドロキシラーゼのmRNAが約2倍 以上に増加することを意味する。 「暴露する」とは、動物、細胞、細胞から得られた溶解物もしくは抽出物、ま たは細胞から得られた分子と、試験化合物またはアポトーシス刺激とを接触させ ることを意味する。 「処理する」とは、動物、細胞、細胞から得られた溶解物もしくは抽出物、ま たは細胞から得られた分子に、試験化合物またはアポトーシス刺激を受けさせる 、または施すことを意味する。 「試験化合物」とは、天然のものであろうと、人工的に作られたものであろう と、本明細書で説明されているアッセイ法の一つを用いて、細胞死を調節できる ことが調査されている化学物質を意味する。試験化合物には、例えば、ペプチド 、ポリペプチド、合成有機分子、天然の有機分子、核酸分子、およびそれらの成 分が含まれよう。 「アッセイする」とは、動物の全身、またはそれから採った細胞に投与された 、化学的処理剤、または物理的処理剤の効果を解析することを意味する。解析さ れる材料は、動物、細胞、細胞から得られた溶解物もしくは抽出物、または細胞 から得られた分子でありうる。解析は、例えば、遺伝子発現の変化、RNAの安定 性の変化、タンパク質の安定性の変化、タンパク質レベルの変化、またはタンパ ク質の生物学的活性の変化を検出する目的で行われる。解析手段には、例えば、 抗体標識、免疫沈降、リン酸化アッセイ、および当業者に既知の核酸検出法など が含まれる。 「調節」とは、減少させるか増加させることによって変化させることを意味す る。 「減少」とは、a)ELISAで測定される、タンパク質、またはタンパク質リン酸 化のレベルの低下、b)例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク 質、ルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子アッセイによって測定される、レポ ーター遺伝子活性レベルの、少なくとも30%の低下、c)PCRによって測定される 、内部対照、例えば、β-アクチンまたはグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロ ゲナーゼ(GAPDH)などの「ハウスキーピング」遺伝子産物に比較して、少なく とも30%のmRNAレベル低下を意味する。すべての場合において、低下は、好まし くは30%、より好ましくは40%、さらに好ましくは70%である。 「増力旧とは、a)ELISAで測定される、タンパク質、またはタンパク質リン酸 化のレベルの上昇、b)例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク 質、ルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子アッセイによって測定される、レポ ーター遺伝子活性レベルの上昇、c)PCRによって測定される、内部対照、例えば 、β-アクチンまたはグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)な どの「ハウスキーピング」遺伝子産物に比較したmRNAレベルの上昇を意味する。 「遺伝子発現のレベルにおける変化」とは、遺伝子の産物、すなわちmRNAまた はポリペプチドの量を増加もしくは減少させるように、またはmRNAまたはポリペ プチドの安定性を増加もしくは減少させるように、遺伝子活性を変化させること を意味する。 「レポーター遺伝子」とは、免疫学的、化学的、生化学的または生物学的なア ッセイ法によって、その発現が検出できるか、および/または定量できる産物を コードする任意の遺伝子を意味する。レポーター遺伝子産物は、例えば、以下の 属性の一つを持っているが、それらに制限はない:蛍光(例えば、緑色蛍光タン パク質)、酵素活性(例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ク ロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)、毒性(例えば、リシンA) 、または別の分子(例えば、ビオチン、または検出用標識抗体)を特異的に結合 させる能力。レポーター遺伝子を改造したいかなる変異体も、当業者には容易に 利用することができるので、非制限的に、上記の定義に含まれるものと理解すべ きである。 「操作できるように結合された」とは、遺伝子と調節配列とが、調節配列の制 御下で遺伝子産物の発現が可能となるように接続されていることを意味する。 「導入遺伝子」とは、人為的に細胞の中に挿入されて、その細胞とその後代細 胞とのゲノムの一部となる核酸配列を意味する。このような導入遺伝子は、部分 的にまたは完全に、その細胞にとって異種である。 「トランスジェニック動物」とは、上記の導入遺伝子を含む動物である。 「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、翻 訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)の有無に関係なく、天然のポ リペプチドもしくはペプチドの全部もしくは一部を構成するか、または、天然の ものではないポリペプチドもしくはペプチドを構成する、2個以上の任意のアミ ノ酸鎖を意味する。 本明細書に記載されている刊行物はすべて、参照として本明細書に組み入れら れる。好ましい方法および材料の実例を、これから説明する。これらの実施例は 、例示的なものにすぎず、制限を設けるものではない。当業者は、本明細書で説 明されている方法および材料に類似または同等の方法および材料を、本発明を実 施または試験する際に用いることができるということを理解しているはずである 。 図面の簡単な説明 図1は、培養した交感神経ニューロンのウイルス感染後の形態を示す一連の写 真である(1Aから1F)。図1A、1C、および1Eは、それぞれ1、10、および100MOI でアデノウイルスを感染させたニューロンの写真である。図1B、1D、および1Fは 、それぞれ1、10、および100MOIでヘルペスウイルスを感染させたニューロンの 写真である。図1Dの横棒は、200μmを示し、図1Fの横棒は80μmを示す。 図2(A〜B)は、組換えアデノウイルスとHSV-1の感染性を比較した棒グラフで ある。組換えアデノウイルスに1〜1000MOIで感染させたニューロンの割合を図2A に示し、組換えHSV-1に0.1〜400MOIで感染させたニューロンの割合を図2Bに示す 。これらのデータは、2回の別々の実験の平均値で表されており、誤差バーは、 その範囲を示している。フィールド当りの細胞数は、実験1では125±50、実験2 では200±59であった。これら2つの実験で得られたデータを平均して、図2に示 す結果として表した。 図3は、ニューロンの生存率を、組換えアデノウイルス感染後とHSV-1感染後に ついて比較した棒グラフである。組換えアデノウイルスに感染した後生き残った 交感神経ニューロンの割合を黒棒で示し、組換えHSV-1感染を生き抜いた割合を 白棒で示す。各棒は、3回の別々のサンプルの平均±SEM(標準誤差)を表してい る。 図4(A〜D)は、組換えアデノウイルス感染後の交感神経ニューロンの細胞構 築における変化を示した写真である。図4Aは、未感染の交感神経ニューロンを示 しており、正常な細胞構築を有している(目盛り=0.3μm)。図4Bは、10MOIの アデノウイルスに感染した後の同型のニューロンを示している。これらの細胞は 、核の中に電子密度の高い小さな封入体を含んでいる(矢印;目盛り=0.5μm )が、これらがなければ、未感染のニューロンと区別がつかない。図4Cは、50MO Iでアデノウイルスベクターに感染した後の同型のニューロンを示している。電 子密度の高い小さな核封入体(目盛り=0.4μm)があることを除けば、細胞構 築は正常である。図4Dは、100MOIでアデノウイルスに感染した同型のニューロン を示し ている。細胞構築は有意に悪化しており、クロマチンの崩壊(星印)、電子密度 の高い非常に大きな封入体(矢印)、および核におけるフィラメントの凝集(矢 頭)(目盛り=0.7μm)が明らかに見られる。 図5(A〜B)は、アデノウイルスに感染していてβ-ガラクトシダーゼを発現す る交感神経ニューロンと未感染のニューロン上の電位依存性カリウム電流を示す グラフ(図5A)と、これらの細胞の電流密度をしめす1組の棒グラフである。-10 mVのVhからの復極電圧ステップ(Depolarizing voltage steps from a Vh of -1 0mV)は、緩やかに活性化する電流である非不活性化電流(non-inactivating cu rrent)(IK;図5Aの一番上のグラフで示される)を活性化する。IA(下側のグ ラフで示されている)は、-40mVのVhからの電流(IK+IAs)を、-90mVのVhから生 じる、対応する電流(IK+IAs+IA)から減算して導き出した。図5Bでは、平均電 流密度(pA/pF)は、単離されたカリウム電流のピーク(pA)を膜のキャパシタ ンス(pF)で割って測定されたものが、β-ガラクトシダーゼ陽性ニューロン(n =6)と未感染の対照用ニューロンについて示されている。 図6(A〜B)は、ヒトp53の過剰発現が、交感神経ニューロンの核に局在するこ とを示す写真である。β-ガラクトシダーゼをコードする組換えアデノウイルスA dCA17lacZに感染した交感神経ニューロンが図6Aに示されており、これと比較で きる、野生型のヒトp53を発現している細胞AdWtP53が図6Bに示されている。矢印 は、ヒトp53を過剰発現している核濃縮された核を示している(目盛り=20μm )。 図7(A〜C)は、交感神経ニューロンの形質導入を行なった後のp53のウエスタ ンブロット解析(図7Aと7B)と、断片化したDNAのアガロースゲル解析(図7C) を示す写真である。図7Aにおいて、レーン1は、未感染のニューロンから回収し たタンパク質を含み、レーン2は、Adwtp53に感染してp53を発現するニューロン から回収したタンパク質を含んでいる。図7Bにおいて、レーン1は、未感染のニ ューロンから回収したタンパク質を含み、レーン2は、50MOIのpAdCA17lacZに感 染したニューロンから回収したタンパク質を含み、レーン3は、60MOIのAdwtp53 に感染したニューロンから回収したタンパク質を含んでいる。図7Cは、、50MOI の組換えアデノウイルスAdCA17lacZ(レーン1)、またはAdwtp53(レーン2)に感 染したニューロンから回収した末端標識DNAを電気泳動した2%アガロースゲルの 写真であ る。 図8(A〜B)は、野生型アデノウイルス(○)、組換えアデノウイルス(Ad5CAI7 lacZ;□)、および野生型p53をもつ組換えアデノウイルス(Adw4p53;■)を、 さまざまなMOIで(図8A)感染させたときの生存ニューロンと、感染後さまざま な時間(図8B)の生存ニューロンの割合を示す折れ線グラフである。 図9(A〜F)は、TUNEL染色後の感染ニューロンの写真である。図9Aと図9Bに示 されている細胞は、lacZ(9A)とp53(9B)を発現する細胞集団の典型的な外観 を示すために、低倍率で撮影したものである(目盛り=400nm)。高い倍率で 、位相差顕微鏡によって観察すると、Ad5CAI7lacZに感染した細胞(9C)と比較 して、Adwtp53に感染した細胞(9E)では神経突起の退化が見られる。これに対 応するTUNEL染色によって、AdWtP53に感染した細胞において、アポトーシスを示 す核濃縮された核が見られる(9F)。 図10は、p53インヒビターのE1B55Kを発現する組換えアデノウイルスが、NGFの 供給停止(withdrawal)によって誘導される死から、有糸分裂後の交感神経ニュ ーロンをレスキューすることを示すグラフである。 図11は、p53とMEKK1を発現する組換えアデノウイルスが、NGF存在下では有糸 分裂後の交感神経ニューロンを殺すが、抗アポトーシスタンパク質のBcl-2とBcl -xLを発現する組換えアデノウイルスが、NGFの供給停止(withdrawal)によって 誘導される死からニューロンをレスキューすることを示すグラフである。 図12は、Gab1を発現する組換えアデノウイルスによって、有糸分裂後の交感神 経ニューロンの生存がもたらされることを示すグラフである。 図13は、TrkBを発現する組換えアデノウイルスを有糸分裂後に注入すると、交 感神経ニューロンの生存がもたらされることを示すグラフである。 図14は、アデノウイルスにコードされたTrkBによってニューロのン生存を誘導 するには、Shc/Ras/PI-3キナーゼ活性化部位、およびTrkBのホスホリパーゼC(P LC)-γ1活性化部位の両方が必要であることを示すグラフである。 図15(A〜B)は、上頸神経節における、インビボ感染した細胞を示す写真であ る。図15Aでは、2個の上頸神経節が示されており、左側の神経節は、同じ側(す なわち同側)にアデノウイルスを注射した後に回収されたものであり、右側の神 経節は、同じ動物の注射されていない側である反対側から回収されたものである 。図15Bでは、図15Aの左側の神経節をより高い倍率で示している。図15Aの目盛 =300μm;図15Bの目盛=240μm。 図16は、野生型p75(最上段の図)、欠失変異体、および置換変異体を示す略 図である。fasおよびTNFR1との相同領域を、細胞内ドメインの点をふった四角で 示した。Gタンパク質活性化ドメインの可能性があるところが黒い四角で示され ている。置換変異が下線で示されている。 図17(A〜C)は、皮質前駆細胞と有糸分裂後の皮質ニューロンが、組換えアデ ノウイルスによってコードされるタンパク質を効率的に発現することを示してい る。AdlacZに感染した皮質前駆細胞(A)と有糸分裂後ニューロン(B)、および それをX-galで染色したもの(C)。E1Aをコードする組換えアデノウイルスに感 染した皮質前駆細胞のウエスタンブロット。 図18(A〜B)は、lacZをコードする組換えアデノウイルス(AdlacZ)、および E1Aをコードする組換えアデノウイルス(Adl 101)に感染した皮質前駆細胞(A )と有糸分裂後ニューロン(B)の生存率を示すグラフである。生存率配列は、M TTアッセイ法によって測定した。 図19(A〜L)は、組換えAdlacZとAdl 101に感染した皮質前駆細胞と有糸分裂 後ニューロンとの細胞生存力の比較を示す光学顕微鏡写真である。 図20(A〜D)は、有糸分裂後のE18皮質ニューロンの培養6日目を示す光学顕微 鏡写真である。(A)(B)の位相差顕微鏡写真、および(B)BrdUで12時間イン キュベーションした後の抗BrdU免疫染色。(C)(D)の位相差顕微鏡写真、およ び(D)抗-MAP2免疫染色。 図21(A〜F)は、有糸分裂後の皮質ニューロンが、pRbファミリーのメンバー を機能的に除去しても影響を受けないことを示す顕微鏡写真である。 図22(A〜E)は、NGF依存型交感神経ニューロンが、NT-3には成長応答するが 、BDNFには成長応答しないことを示す顕微鏡写真である。生後1日目のSCGラット に由来する純粋な交感神経ニューロンを、10ng/mlのNGFの中で5日間維持した培 養細胞(A)、および、その後30ng/mlのNT-3(B)、もしくは30ng/mlのBDNF(C )を添加したものの位相差顕微鏡写真。添加後2日目に調べたところ、NT-3は、B DN Fに較べて神経突起の数を増加させた。NGFの代わりにng/mlのBDNFを用いた同様 の培養細胞(D)においては、細胞本体と突起の明らかな退化がはっきり見えた 。 図23(A〜D)は、X軸に示したように、NGFのみ、またはNGFとNT-3の中で培養 された交感神経ニューロンの突起ネットワーク密度、神経突起全長、および細胞 の大きさを示すグラフである。 詳細な説明 本明細書で説明されている組成物および方法は、ニューロンなどの有糸分裂後 細胞を、アデノウイルスベクターで効率的にトランスフェクションする方法を提 供する。このベクターを用いて、腫瘍抑制遺伝子p53、および成長因子レセプタ ー遺伝子Trkとp75などの有用な遺伝子を発現させることができる。 本明細書で説明されているアッセイ法を用いて、細胞死を減少させ、および/ または、細胞の成長を刺激し、それによって、神経変性病および神経学的外傷を 治療する上で治療的価値をもつ化合物を試験することができる。また、このアッ セイ法を用いて、神経細胞の成長阻害、および/または神経毒性に関して、例え ば、農薬、または癌治療薬として有用な化合物をスクリーニングすることができ る。ニューロン死を調節すると考えられる試験化合物の二次スクリーニング ニューロン死、および/または成長を調節する活性をもつと考えられる試験化 合物を同定した後、これらの化合物をさらに試験することが必要であるか、また は望ましいと考えられる。本発明は、そのような二次的確認のためのアッセイ法 を提供する。例えば、初期の試験でニューロン死を阻害すると考えらる化合物を さらにアッセイして、その化合物がニューロンの成長を刺激できるかどうかを判 定する。後期の段階では、培養ニューロンにおいて細胞死に作用すると初期段階 で同定された化合物が、予想された効果を、インビボのニューロンでもつことを 確認するためにインビボで試験を行なう。第1回目のインビボ試験では、軸索切 断、または大脳虚血など、周知の方法によって、ニューロン細胞死を動物で起こ してから、このすぐ後の治療の項で説明されている方法の一つによって、この化 合物を投与する。発作後数時間から数日の間に、ニューロンまたは神経組織を分 離して、下記の実施例で説明されているアッセイ法を行なう。試験化合物 一般的に、ニューロン細胞の死または成長を予防または治療するための新規の 薬剤は、当技術分野において公知の方法によって、天然産物もしくは合成(もし くは半合成)抽出物の両方からなる大きなライブラリー、または化学物質のライ ブラリーから同定される。薬物発見の開発分野における当業者は、本発明のスク リーニング手順にとって、試験抽出物または試験化合物の正確な由来は重要では ないことを理解しているはずである。したがって、実質的に、いかなる数の化学 的な抽出物または化合物でも、本明細書で説明されている具体的な方法を用いて スクリーニングすることができる。このような抽出物または化合物の例には、植 物、菌類、原核生物、もしくは動物からの抽出物、発酵培地、および合成化合物 、また、現存する化合物を改変したものが含まれるが、これらに限定はされない 。また、糖、脂質、ペプチド、および核酸をもとにした化合物を含むが、これら に限定はされない、いかなる数の化学化合物の無作為の、または目的をもった合 成物(例えば、半合成物または完全合成物)を製造するために多くの方法を利用 することができる。合成化合物のライブラリーは、ブランドンアソシエイツ社( Brandon Associates)(ニューハンプシャー州メリマック(Merrimack,NH)) 、およびアルドリッチケミカルズ社(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州 ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から市販されている。または、バクテリア 、真菌、植物、および動物の抽出物という形態にある天然化合物のライブラリー は、バイオティックス社(Biotics)(英国、サセックス(Sussex,UK))、ゼ ノバ社(Xenova)(英国、スラウ(Slough,UK))、ハーバーブランチオシアノ グルフィックインスティテュート(フロリダ州、Ft.ピアス(Ft.Pierce,FL) )、およびファルママー(PharmaMar)(マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cam bridge,MA))など、多数の供給者から購入することができる。さらに、望まし ければ、当技術分野において既知の方法、例えば、標準的な抽出分画法によって 、天然、または合成によって作製されるライブラリーが作られる。さらに、望ま しければ、標準的な化学的、物理的、または生化学的な方法を用いて、ライブラ リーまたは化合物を容易に改変する。 さらに、神経変性障害もしくは神経増殖障害に対する治療作用があることが既 に知られている材料のデレプリケーション(dereplication)(例えば、生物分 類 的デレプリケーション、生物学的デレプリケーション、および化学的デレプリケ ーション、またはそれらの任意の組み合わせ)、またはレプリケーションもしく は反復を止めるための方法が可能なときには、いつでもそれを用いるべきだとい うことは、薬物発見および開発分野の当業者にはすぐに分かる。 粗抽出物が、ニューロンの死または増殖を防止または減衰させることが分かっ ているときは、観察された効果をもたらす化学成分を単離するためには、陽性導 出抽出物(positive lead extract)をさらに分画することが必要である。この ように、抽出、分画、および精製処理の目標は、ニューロンのアポトーシス(ま たは、逆に増殖)を防止または軽減する活性をもつ粗抽出物の中の化学的実体を 注意深く特徴分析し、同定することである。化合物の混合物の中で活性を検出す るために本明細書で説明されているのと同じアッセイ法を用いて活性成分を精製 し、その誘導体を試験することができる。このような不均質な抽出物を分画精製 する方法が、当技術分野において知られている。必要に応じて、当技術分野にお いて公知の方法にしたがって、治療のために有用であると分かった化合物を化学 的に修飾する。治療薬としての価値があると確認された化合物は、ニューロンの アポトーシスまたは増殖の哺乳動物モデルで適当なものを用いて、さらに解析す ることもできる。 下記は、ニューロンのアポトーシスに関連した、または増殖に関連した症状の 治療、予防または改善における、分子または化合物の有効性を評価するのに有用 な高速処理システムの例である。治療 本明細書で開示されている、いずれかの方法を用いて同定された化合物を、薬 学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とともに、単位投与量の形状で、 患者または実験動物に投与することができる。従来からの薬学的経験を用いて、 患者または実験動物に投与するのに適当な処方剤または組成物を提供してもよい 。静脈内投与が好ましいが、例えば、非経口投与、皮下投与、筋内投与、頭蓋内 投与、眼窩内投与、眼内投与、脳室内投与、包内投与、脊椎内投与、槽内投与、 腹腔内投与、鼻腔内投与、エアロゾル投与、または経口投与などの適当な投与経 路を用いることができる。治療用処方剤は、溶液または懸濁液の形状でもよいが 、経口投与のためには、処方剤は錠剤またはカプセルの形状、また、鼻腔内投与 のためには、粉剤、点鼻薬、またはエアロゾルの形状であってもよい。 処方薬を製造するための、当技術分野において周知の方法は、例えば、「レミ ントンの製薬科学(Remingtonュs Pharmaceutical Science)」に記載されている 。非経口投与のための処方薬は、例えば、賦形剤、滅菌水、もしくは食塩水、ポ リエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油脂、または水 素化されたナフタレンが含まれうる。生物親和性ポリマー、生物分解性ラクチド ポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン-ポリオ キシプロピレンコポリマーを用いて、化合物の放出を調節することができる。本 発明の拮抗薬または作用薬を非経口輸送するのに有用な可能性のある別のシステ ムには、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能 な灌流システム、およびリポソームが含まれる。吸入のための処方薬は、例えば 、ラクトースのような賦形剤を含むことができ、または、例えば、ポリオキシエ チレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸、およびデオキシコール酸を含む 水性溶液でもよく、または、点鼻薬の形状で、またはゲル剤として投与するため の油性溶液でもよい。ニューロン細胞死または増殖に対する化合物の効果をテストするための、組換え アデノウイルスベクターに感染した一次ニューロンの使用 例えば、上頸神経節の交感神経ニューロン、または皮質ニューロン、またはニ ューロン前駆細胞などの一次ニューロンを、標準的な方法によって、96穴の組織 培養用プレートで培養する。ニューロン成長因子を停止もしくは添加して、また は組換えアデノウイルスを感染させて、細胞死または細胞増殖を誘導または阻害 する。例えば、細胞死を誘導するために、先の実施例で説明したように、p53を コードするアデノウイルスベクターに、ニューロンを感染させることができる。 同時に、試験すべき化合物(例えば、p53による細胞死阻害)を、さまざまな濃 度で加える。例えば、0時間〜36時間の間の適当な時点で、標準的な技術によっ て、処理したサンプルを溶解して、この細胞溶解液を用いて、下記に述べるよう な適当なアッセイを行なう。ニューロン細胞の死と増殖を調節する化合物を検出するためのELISA 酵素結合免疫アッセイ法(ELISA)は、大量の化合物が所与のタンパク質のレ ベルを調節できるかを試験するために設計された高速処理スクリーニングの中に 、容易に取り込むことができる。本発明の方法において用いられるとき、対照に 対する、サンプルの所定のタンパク質レベルの変化は、サンプル中の細胞のアポ トーシス状態または増殖状態の変化を反映している。ELISA用のプロトコールは 、例えば、アウスベル(Ausubel)ら、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョンワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons)、ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY)、1997)に記載 されている。細胞死または細胞増殖の調節因子の可能性のあるもので処理したニ ューロン細胞からの溶解液を調製して(例えば、Ausubelら、前記参照)、最初 の方で検討したニューロン正常/成長マーカーの一つ、例えば、Tα1 α-チュー ブリン、またはチロシンヒドロキシラーゼに対する「捕捉」抗体で被覆した微量 滴定用プレートの上に載せる。非結合抗原を洗い流して、検出を可能にする薬剤 に結合した、正常/成長マーカー特異的な抗体を加える。検出を可能にする薬剤 には、アルカリホスファターゼ(p-ニトロフェノールリン酸などの比色定量用基 質を添加した後検出することができる)、ホースラディッシュパーオキシダーゼ (アマーシャム社(Amersham)から購入することができるECLなどの化学発光基 質によって検出することができる)、または、FITC(蛍光偏光、または時間がた つと分解する蛍光によって検出することができる)などの蛍光性化合物が含まれ る。溶解サンプル中の抗体結合の量、したがって、正常/成長マーカーのレベル は、微量滴定用プレート読み取り器で、容易に定量される。 死にかけていない細胞における正常/成長マーカーレベルの基準対照としては 、継続的にNGFに暴露されているサンプルが含まれる。死にかけている細胞にお ける正常/成長マーカーレベルの基準対照としては、NGFの供給を停止し、代わり のものに置き換えられていないサンプルが含まれる。成長している細胞における 正常/成長マーカーレベルの基準対照としては、継続的にNGFに暴露されてから、 NT-3(実施例X、ニューロン成長のアッセイ法を参照)などのニューロトロピン を含むものに暴露されたサンプルが含まれる。MAPキナーゼ、およびPI3キナーゼ のp85サブユニットは、選択した時間経過(NGF停止してから0から36時間)にわ たって変 化しないため、絶対タンパク質レベルの内部標準として用いる。例えば、p53が 介在するニューロンアポトーシスを減少させる化合物を同定するなどの、陽性の アッセイ結果は、レスキューされることなく細胞死を誘導された細胞で見られる 正常/成長マーカーレベルと較べて、正常/成長マーカーレベル(Tα1 α-チュー ブリン)が減少することで示される。ニューロン細胞の死と増殖を調節する化合物に対するレポーター遺伝子アッセイ レポーター遺伝子産物の検出を用いるアッセイ法は、極めて感度が高く、簡単 に自動化できるため、この方法は、高速処理スクリーニングを設計するのに理想 的である。レポーター遺伝子のアッセイには、例えば、比色、化学発光、または 蛍光測定による、レポーター遺伝子産物の検出法を用いることができる。レポー ター遺伝子カセットをもつ、非常に多様なプラスミドおよびウイルスベクターは 、容易に得られる。このようなベクターには、とりわけ、lacZ/β-ガラクトシダ ーゼ、緑色蛍光タンパク質、およびルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子をコ ードするカセットが含まれている。目的とする転写調節領域をコードする、クロ ーニングされたDNA断片は、DNAサブクローニングによって、レポーターベクター の中に簡単に挿入され、それによって、ベクターにコードされるレポーター遺伝 子を、目的の遺伝子プロモーターの転写調節下に置くことになる。そして、レポ ーター遺伝子に、操作できるように結合されたプロモーターの転写活性を、レポ ーター遺伝子アッセイにおけるレポーター遺伝子の活性に相関するものとして、 直接観察および定量することができる。トランスジェニックマウスからの一次ニューロンのレポーター遺伝子アッセイ法 一つ以上のレポーター導入遺伝子構築物をもつマウスから採った一次ニューロ ンを培養し、細胞死または細胞増殖を誘導または阻害してから、死/増殖-調節活 性を調べようとする化合物をニューロンに添加する。適当な時点で細胞を溶解し て、例えば、lacZ/β-ガラクトシダーゼ活性に関する、比色、または化学発光に よる酵素アッセイ法、またはGFPの蛍光検出など、適当なレポーターアッセイを 行なう。前項で提示されているような、適当な対照用サンプルのレポーター遺伝 子活性に対する、試験化合物処理されたサンプルのレポーター遺伝子活性の変化 によって、ニューロン細胞死を調節する化合物の存在が示される。 一つの態様において、導入遺伝子は、ニューロン特異的なTα1 α-チューブリ ン遺伝子(例えば、USN 08/215,083)などの正常/成長マーカー遺伝子のプロモ ーターに操作できるように連結された、lacZまたは緑色蛍光タンパク質(GFP) などのレポーター遺伝子を含んでいるかもしれない。Tα1 α-チューブリン遺伝 子は、形態的に成長している、発生中のニューロンの中で豊富に発現され、また 、標的の神経再支配の過程で、成熟したニューロンの中でも豊富に発現される。 したがって、Tα1 α−チューブリンのプロモーターに、操作できるように連結 されたレポーター遺伝子から生じる活性量は、適当な対照に対する、サンプル中 の生きている(または成長している)ニューロンの比率を示している。導入遺伝 子は、調べようとしているニューロンのゲノムDNAの中に存在していてもよいし 、または、一過的にニューロンの中に導入されてもよい。別のプロモーターに操 作できるように連結された別のレポーター遺伝子を含む別の導入遺伝子を内部対 照として含む。これは、例えば、ニューロンの中で構成的に発現されている、ニ ューロン特異的なT26 α-チューブリンプロモーター、または、例えば、GAPDHな ど、当業者に既知のハウスキーピング遺伝子のプロモーターに、操作できるよう に連結されたレポーター遺伝子でもよい。アデノウイルスによって形質導入された一次ニューロンにおける、レポーター遺 伝子アッセイ トランスジェニック動物、または非トランスジェニック動物から採った一次ニ ューロンを単離して、すぐ上で説明されているような、目的のレポーター遺伝子 構築物を含むアデノウイルスを感染させた。ニューロンを試験化合物で処理し、 アポトーシスまたは増殖を開始または阻害し、レポーターの活性を本明細書で提 供されているようにして、測定および解釈する。 または、その発現がニューロン細胞の死または増殖を調節する遺伝子を、上述 したようにして、アデノウイルスによる遺伝子導入を行なって導入することがで きる。例えば、ニューロンを刺激して、制御不能な増殖を行なわせる癌遺伝子を 、アデノウイルス媒介遺伝子導入により、Tα1 α-チューブリン:nlacZを発現 するニューロンの中に導入することができる。このアデノウイルスベクターがコ ードする癌遺伝子の発現は細胞増殖を誘導するので、この方法で、ニューロン増 殖 を特異的に阻害する試験化合物を単離することができる。例えば、ニューロン増 殖を特異的に阻害するが、有糸分裂後のニューロンの死を誘導しない化合物のス クリーニングにおける望ましい結果は、癌遺伝子を発現する、増殖しているニュ ーロンにおいて、正常/成長レポーター遺伝子(例えば、Tα1 α-チューブリン :lacZ)の発現を減少させるが、有糸分裂後の正常なニューロンでのレポーター 遺伝子の発現は変化させない化合物であると考えられる。逆に、ニューロンの成 長を促進するか、またはニューロンの死を阻止する化合物のスクリーニングは、 類似体を用いる方法で行なうことができる。ニューロンの細胞死と細胞成長を調節する化合物のアッセイ法としての、正常/ 成長マーカーのmRNAの定量的PCR ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、その前に行われる逆転写工程(rtPCR)と組 み合わせると、ほとんどないくらい少量の標的mRNAを検出するために広く用いら れている方法になる。適当な内部対照となる標的を用いて(例えば、アクチンの ようなハウスキーピング遺伝子を用いて)、直線的な範囲の中で行う場合、この ような定量的PCRにより、mRNAレベルでの僅かな変更も検出する、極めて正確で 、感度の高い方法が提供される。その上、このアッセイ法は、96ウエル方式で簡 単に行なわれるため、高速処理スクリーニングアッセイ法に、容易に取り込まれ る。ニューロンを培養し、試験化合物によって処理し、上述の実例で説明されて いるようにして、成長または死を誘導または阻害する。そして、このニューロン を溶解して、mRNAを逆転写し、目的の核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴ ヌクレオチドプライマーを用いて、広く用いられている方法(アウスベル(Ausu bel)ら、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Bi ology)、ジョンワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons)、ニューヨー ク州ニューヨーク(New York,NY)、1997)で説明されている方法)によってPC Rを行なう。一つの態様において、標的mRNAは、Tα1 α-チューブリン、または チロシンヒドロキシラーゼのような、正常/成長マーカーの一つ以上のmRNAでも よい。概要 下記の実施例で提示されているデータにより、いくつかの結論が裏付けられる 。まず、アデノウイルス由来のベクターは、有糸分裂後のニューロンに対する遺 伝子導入因子として、有効に使用することができるという点である。組換えアデ ノウイルスは、10から50MOIの間で用いると、細胞の生存率、細胞構築、または 生理学的機能を、少なくとも7日間は僅かに撹乱することになるが、交感神経ニ ューロンの75%よりも多くのニューロンに感染することができる。第二の結論は 、Ad5CA17LacZ組換えアデノウイルスについて定めたパラメータの範囲内で、p53 の過剰発現は、有糸分裂後のニューロンにおいてアポトーシスを誘導するのに十 分であるという結論である。さらに、Bcl-2、およびE1B55Kなど、p53のインヒビ ターを発現する組換えアデノウイルスによって、p53が介在する細胞死を阻害す ることができる。さらに、Gab-1などのタンパク質、およびTrkBなどの成長因子 レセプターをコードするアデノウイルスによって、ニューロン生存をもたらすこ とができる。 最初の結論は、有糸分裂後のニューロンの機械論的研究が、特に、本明細書で 検討されているパラメータを用いて行われるとき、これらの研究における、組換 えアデノウイルスベクターの有用性を示している。ミトコンドリア機能のアッセ イによって、100MOIを超える濃度で細胞生存率が減少することが示されている。 過剰な感染率を生き残った細胞は、電子密度の高い封入体、フィラメントの凝集 、および深刻な場合、クロマチンの崩壊など、核の超構造を変化させる。組換え ウイルスによる形質導入の結果として生じる病理学的変化により、特にウイルス 媒介遺伝子治療に関する、さらなる調査が保証される。 第二の結論は、進行性の病気または突発性の発作の過程で、神経系で生じる細 胞死の機構に主に関連する。これらのデータは、内因性p53が、SCGのニューロン で安定して発現されることを示しているため、このタンパク質は、アポトーシス 系が開始する前に、一定の閾値レベルで発現されていなければならないと考えら れる。一旦、この閾値に到達したら、ニューロン細胞のアポトーシス死を誘導す るには、p53だけで十分である。このように、ニューロン傷害の後にp53の促進制 御が起こることが、傷害を受けたニューロンの死滅をもたらす決定的なシグナル であるかもしれない。p53の欠失変異体を導入するために、アデノウイルス由来 のベクターを用いる将来の研究は、有糸分裂後のニューロンにおけるp53の作用 機構を明確にするのに役立つはずである。さらに、p53の活性を阻害するタンパ ク質を コードする組換えアデノウイルスは、有糸分裂後のニューロンにおけるアポトー シスの治療用インヒビターとして有用であると考えられる。さらに、アデノウイ ルスベクターがコードするタンパク質を発現するニューロンは、ニューロンの死 および増殖を調節する治療用化合物をスクリーニングするための有用なツールと なると考えられる。実施例I:一般的な方法 ウイルスベクター Ad5CA17LacZ 前記(Bett et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8802-8806,1994)した ようにpCA14(lacZ)およびpJM17のコトランスフェクションによって、CMVプロモ ーター(Ad5CA17LacZ)をもつ大腸菌β-ガラクトシダーゼ発現カセットを有する アデノウイルス組換え体を作った。このE1-およびE3-欠失ウイルスはE1領域にリ ポーター遺伝子を含んでいる。 p53-発現および突然変異体E1A(Ad1101)-発現組換えアデノウイルス グラハムの方法(Bett et al.,前出、さらにKatayosc et al.,Cell Growth Diff.6:1207-1212,1995参照)に従って、野生型ヒトp53をもつ組換えアデノウ イルスを構築した。このベクターによって得られた結果を、p53発現も与えるア デノウイルスベクターAdWTp53(Bacchetti et al.,Int.J.Oncol.3:781-788 ,1993)の二次調製物で確認した。E1Aのp300結合突然変異体(Ad1101)をもつ このアデノウイルスベクターは12SのないE1B上にあった(Jelsma et al.,Virol ogy 163:494-502,1988)。 組換えアデノウイルスをヒト胚腎細胞株の細胞293個で増幅してアデノウイル ス型5E1AおよびE1Bタンパク質を発現させた(Graham et al.,In Methods in Mo lecular Biol.E.J.Murray,Ed.,The Humana Press,109-128頁)。細胞溶解 物からこれらのベクターを採取し、そのまま直接使用するか、グラハムらの方法 (前出)によりCsCl濃度勾配でさらに精製した。感染力価は293細胞のプラーク アッセイにより測定した(前出グラハムらの方法にも記載されている)。 アデノウイルス媒介p53あるいはE1A(Ad1101)過剰発現の効果とβ-ガラクトシ ダーゼ過剰発現のそれを比較する際、観察がウイルス調製物の差によるものでは ないことを確実にするため、以下の工程が採用された:(1)全ウイルス調製物は 同一の方法で精製した;(2)それぞれのウイルスについて複数の調製物を調べた ;(3)細胞毒性源の疑いがあるウイルス調製物それぞれの粒子量は同様の範囲内 であった;そして(4)4個の異なるアデノウイルス組換え体、すなわち、2個の 発現lacZと2個の発現p53で結果を再現した。粒子量は、標準法(前出Bett et a l.)に従い、260nmの光学濃度における力価に対する感染力価の比を得ることに よって測定した。粒子量対感染力価の比は通常約1:100である。lacZおよびp53の アデノウイルス組換え体について得られた比はそれぞれ1:110および1:120でこの 範囲内にあることがわかった。 最近、連続継代に続いて、複製欠損アデノウイルス株におけるE1含有複製受容 性ウイルス汚染の発生が注目されている(Lochmuller et al.,Hum.Gene Thera py 5:1485-1491,1994)。ウイルス株の純度を確認するため、PCR法およびサザ ンブロット解析の両方を行った。これらの方法によればE1含有ウイルス汚染はす べて検出することができる。PCR解析用に、組換えウイルスDNAを抽出し、E1領域 に特異的なプライマーで増幅した(Lochmuller et al.,前出)。陽性対照として 野生型ウイルスから精製したDNAを使用した。PCR解析により野生型の汚染が検出 された場合、野生型および組換えウイルスDNAのサザンブロットを調製してウイ ルスゲノムのE1およびE2領域とハイブリダイズする放射線標識DNAフラグメント でプローブした(Lochmuller et al.,前出)。精製した調製物の場合、E1領域の プローブとのハイブリッド形成により野生型ウイルスだけに陽性シグナルがあら われる筈であり、一方、組換えウイルスおよび野生型ウイルスとの両方に存在す る領域であるE2に対するプローブは、両方のDNA調製物に純粋なウイルス集団が あることを示す一つのバンドを作る筈である。野生型汚染が検出された場合、組 換えウイルスはグラハムらの方法(前出)に従ってさらに精製された。 RH105 HSVベクターRH105は即時型初期プロモーターICP4の上流のチミジンキナーゼ( TK)遺伝子に挿入された大腸菌lacZ遺伝子をもっている(Ho et al.,Virol.17 4:279-283,1988)。開裂されたTK遺伝子はニューロンのような分裂終了(非分 裂性)細胞におけるウイルス複製を不受容(incompetent)にする(Boviatsis e t al.,Human Gene Therapy 5:183-191,1994;Don et al.,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 88:1157-1161,1991;Lipson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86 :6848-6852;Sherley et al.,J.Biol.Chem.263:8350-8358,1988)。100%の 細胞変性効果が観察されるまで、このウイルスをVero細胞上で増殖させた。その 後、細胞の凍結-解凍を行い氷上で超音波処理してウイルス粒子を除いた。大き い細胞片は1800Xgで10分間遠心分離を行うことによって取り除いた。得られた上 清を次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中25%ショ糖層に重層し、70,000Xgで18 時間遠心分離した。組換えヘルペスウイルスを含むペレットをPBSに再懸濁してV ero細胞上で力価を検定した。野生型ウイルスが存在しないことは、Vero細胞に 生じたプラークのX-gal染色により確認した。 アデノウイルスに基づくベクターに対する293個の細胞およびHSV RH105ベクタ ーに対するVero細胞上での力価測定に基づいて、感染多重度(MOI)を計算した 。この値は細胞1個につぎ添加されたプラーク形成単位数を表す。 p53誘導が分裂終了ニューロンのアポトーシス開始の引き金となるかどうかを 直接に測定するため、組換えアデノウイルスベクターを用いてp53を培養交感神 経ニューロンに与えた。交感神経ニューロンに対する遺伝子伝達剤としてのアデ ノウイルスベクターの効果を評価し、これらのベクターを効果的に使用できるパ ラメーターの範囲を決めた。以下に記載するように、欠失E1領域に挿入されたla cZリポーター遺伝子をもつ組換えアデノウイルス(Bett et al.,Proc.Natl.A cad.Sci.USA 91:8802-8806,1994)を使用してインビトロで上頸神経節から交 感神経ニューロンを形質導入した。感染率、細胞毒性、細胞生理および細胞構築 を検討した結果、そのようなアデノウイルス組換え体は交感神経ニューロンに対 する非常に効果的な遺伝子伝達剤として作用する可能性をもっていることが示さ れた。上記規定のパラメーター内で作用させて、野生型ヒトp53発現カセットを 同一のベクター骨格に導入し、これを使用して培養した交感神経ニューロンに形 質を導入した。p53の過剰発現はこれらニューロンにおけるアポトーシスを媒介 した。p53が分裂終了ニューロンのアポトーシス誘導に十分であるという結果は 、外傷を起こした成熟神経系における細胞死のメカニズムに大きな関係をもって いる。細胞生存解析 生/死判別染色法(Live/Dead staining)、タネル(TUNEL)標識法およびMTT 定量法を含む、三つの異なる測定法を用いて細胞生存を測定した。生/死染色法 については、使用説明書に従い、生/死判別染色および生存率/細胞毒性キット( Molecular Probes)を使用した。この方法を簡単に説明すれば、二試薬、すなわ ち、カルセイン-ATおよびエチジウムブロマイドとを通常培地の培養物に加えた 。カルセイン-ATは細胞内のエステラーゼ活性により代謝的に転換され細胞生存 率の指標となる緑色蛍光物質カルセインを生成する。エチジウムブロマイドは生 存細胞から排除されるが直ちに死細胞へ取り込まれてDNAを染色する。これらの 試薬中、37℃で10〜15分間細胞をインキュベーションし、その後これらの試薬の 毒性による検査を行い直ちに写真撮影を行った。 アポトーシス検出については、末端トランスフェラーゼを用いて断片化DNAを 可視化した(タネル標識)。MOI 25において、並行培養をAd1101またはAdlacZで 感染した。72時間後、細胞を-20℃で10分間アセトン/メタノール(1:1)中で固 定した。ビオチンdUTP 1.0μl、末端トランスフェラーゼ1.5μl、5X TdT緩衝液2 0μlおよび蒸留水78μlからなる混合物の50μlを各カバーガラスに添加した。37 ℃で1時間インキュベーション後、試料をpH7.4のPBSで3回、次いでpH8.0のTBSで 1回洗浄して反応を停止させた。試料は1:2,000に希釈したストレプトアビジンCY 3で30分間インキュベートした。PBSで5分間の洗浄を3回行った後、試料を倒立蛍 光顕微鏡により調べた。 細胞生存率定量法として、前記したMTT生存率アッセイ法(細胞力価キット、P romega,Madison,WI)を用いた(Slack et al.,J.Cell Biol.135:1085,199 6)。このアッセイ法はミトコンドリアによりテトラゾリウム塩を青色のフォル ミザン塩に転換し、その蓄積を比色分析するものである。ニューロン成長の形態学的アッセイ法:生成過程の伸展、神経突起長および細胞 体面積の解析および定性 ニューロン成長をスクリーニングする形態学的アッセイ法、例えば、全神経突 起長、細胞サイズおよびニューロンの生成過程ネットワーク密度を測定するアッ セイ法は当業者に周知である。そのようなアッセイ法の手順は例えば、Bellivea u et al.,J.Cell Biol.136:375-388,1997に記載がある。 ニューロトロフィン類の効果の解析および、組換えアデノウイルス感染のよう なニューロン成長に対するその他の治療効果の解析は、三つのパラメータ、すな わち、生成過程ネットワークの密度、全神経突起長、そして細胞体面積を測定す ることによって行われる。高密度および低密度培養液における細胞生成過程密度 の定量分析は、特に単位面積当たりの交点数におけるランダムな線のセットとし て適用される通常の統計学を使って行われた。顕微鏡では、神経生成過程のネッ トワークは一平面にランダムな線の複数セットとして出現するようである。従っ て、単位面積あたりの目に見える架橋数および細胞生成過程の分岐は細胞生成過 程密度の定量的測定であると考えることができる。しかしながら、神経突起の数 がニューロン数の直接関数である以上、同様の細胞密度をもつ培養液のそれら領 域だけが比較に値する。従って、各実験においては、10〜15個の試料ウインドウ (10mm2)を解析した。各ウィンドウは7個のニューロン細胞体を含んでいる。こ れらウィンドウ内にある神経突起の交点および分岐をすべて計数して、神経突起 の生成過程密度についての評価値が得られた。ANOVA(Fテスト)を用いて、密度 平均値の統計学的比較を行った。 全神経突起長と細胞体面積は、細胞体数を調節した規定面積内の低密度培養液 で測定した。結果は異なる処理をした姉妹培養液の複数グループ内および、複数 の異なる姉妹培養液グループと同様の処理をした結果をプールすることによる両 者で分析した。同様な結果が得られた。従ってプールした結果を提供する。tテ ストおよびANOVAを用いて統計学的有意差を判断した。ニューロン成長の遺伝子発現アッセイ法 組換えアデノウイルスを発現する一次ニューロンの成長は、当業者に周知の様 々な遺伝子発現アッセイ法によってモニターすることができる。 交感神経ニューロンは、その生存を維持できる、例えば、NGF 10ng/mlの条件 下で成長させて、組換えアデノウイルスで感染させ、成長マーカー遺伝子中の転 写増加をアッセイすることができる。ニューロン成長のマーカーとなる遺伝子、 例えば、チロシンヒドロキシラーゼやTα1 α-チューブリンは、健全なニューロ ン対不健全(または末期)ニューロンにおいて増加する転写活性を示す。さらに 、これらの成長マーカー遺伝子はなお活発に成長を続けるニューロン対静止期ニ ューロンにおいてさらに強い転写活性を示す。従って成長マーカー遺伝子はニュ ーロン成長をモニターする簡単で信頼できる方法を提供する。 リポーター遺伝子もまたニューロン成長のモニターに使用することができる。 例えば、本発明者らは、Tα1 α-チューブリンプロモーター領域の転写制御下、 核に在るlacZコード領域からなるキメラ導入遺伝子を含む遺伝子導入マウスを作 った。Tα1 α-チューブリン:nlacZ遺伝子導入マウスから培養された交感神経ニ ューロンおよび皮質ニューロンのTα1 α-チューブリン:nlacZ導入遺伝子の発現 はニューロンの成長と比例している。従って、lacZアッセイ法は、組換えアデノ ウイルスで感染したTα1 α-チューブリン:lacZ遺伝子導入ニューロンについて その活力および成長をモニターするのに使うことができる。あるいは、その活力 と成長をモニターするために、Tα1 α-チューブリン:nlacZリポーター遺伝子ま たは類似のリポーター遺伝子をもつ組換えアデノウイルスベクター用いて、ニュ ーロンを感染させてもよい。ニューロン表現型の遺伝子発現アッセイ法 組換えアデノウイルスをコードする遺伝子の発現を使用してニューロンの表現 型を変えることができる。遺伝子発現アッセイ法を行って得られた遺伝子導入ニ ューロンの表現型を決定あるいは確認し、次いで種々の神経退化性疾病の細胞治 療剤として、あるいは、新規な神経治療化合物を単離するアッセイ法に使用する 。 例えば、ドーパミン作動性ニューロンの信頼できる豊富な源泉をもつことが望 ましい。そのようなニューロンはスクリーニングアッセイ法に、またパーキンソ ン病に罹患している患者脳への移植用として有用である。組換えアデノウイルス がコードするタンパク質を発現する培養ニューロンのドーパミン作動性神経伝達 物質の表現型は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりmRNAレベルを モニターすることによって、または、逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応などの 当業者に公知の方法によってチロシンヒドロキシラーゼ発現をアッセイすること により確認される。実施例II:組換えアデノウイルス対単純ヘルペスウイルス(HSV-1)のニューロ ン遺伝子伝達効率 分裂終了交感神経ニューロンに対する最も効果的かつ非毒性の遺伝子伝達ベク ターを決めるために、まずアデノウイルスベクターAd5CA17LacZおよび単純ヘル ペスウイルス-1ベクターRH105につき並行して検討した。上記の通り、これらベ クターは両方とも大腸菌lacZリポーター遺伝子を発現する。新生交感神経ニュー ロンの精製培養液を作り、以下のように両型の複製欠損ウイルスで感染した。細胞培養 マら(J.Cell Biol.,117:135-141,1992)の方法に従い、精製交感神経ニュ ーロンの大量培養液を作った。新生Sprague-Dawleyラット仔(Charles River La boratories,Charles River Canada,St.Constant,Quebec)から上頸神経節を 取り、重炭酸ナトリウムを含まないL15培地に採取した。神経節をPBS(pH7.4)で 洗浄し、37℃で20分間0.1%トリプシン(Calbiochem Novabiochem,San Diego,C A)処理した後、2分間DNase(10μg/ml;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO) で処理した。神経節を破砕し、40μmメッシュ(Becton-Dickinson Canada Inc. Mississauga,Ontario)を通過させて単一細胞懸濁液を得た。臨床遠心機で遠心 分離した後、ペレットを重炭酸ナトリウム(30mM)、ビタミンC(1mg/ml)、シ トシンアラビノシド(10μM)、3%ラット血清および50ng/mlのNGF(Cedarlane La boratories,Hornby,Ontario)含有L15培地に再懸濁させた。細胞は、ラット尾 コラーゲンで被覆した組織培養皿上培地1mlにつき100,000個の細胞濃度で播種し た。これらの細胞は実質的に非ニューロン細胞を含んでいない(前出マらも参照 )。ウイルス感染前にニューロンを3〜5日間培養した。その間に細胞は培養皿に 付着して生成過程を伸展させた。 ウイルス感染については、培地を除去して適当なウイルスカ価を含む通常容量 の25%で交換した。細胞を37℃で1時間インキュベーションし、皿は15分ごとに振 動させた。次いで培地の残り75%容量を各皿に加えた。持続培養の場合、培地は3 日ごとに交換した。 感染48時間後に、感染細胞をX-gal染色してβ-ガラクトシダーゼ発現を可視化 した。この発現は導入遺伝子によりコードされている。β-ガラクトシダーゼ陽性細胞の検出 lacZリポーター遺伝子の生成物であるβ-ガラクトシダーゼ発現の染色は、実 施 例を通じて記載するように、感染後さまざまの時点で行われた。細胞は、4℃で1 5分間PBS(pH7.4)中0.2%のグルタールアルデヒドで固定した。PBSで洗浄後、細 胞はX-gal染料(PBS(pH7.4)中、2mM MgCl2,1mg/ml X-gal,5mM K3Fe(CN)6,5m M K4Fe(CN)6)中で18時間インキュベーションした。感染した細胞の割合を評価す るため、細胞の全細胞数とlacZ陽性細胞数を5つのランダムフィールドで計数し た。データは範囲を表すエラーバーと共に、二回別々に行われた実験の平均値と して示す。フィールド当たりの細胞数は実験1については125±50、実験2では200 ±59であった。 これらの実験は、HSVおよびアデノウイルス由来のベクターは、インビトロで 交感神経ニューロンに形質を導入することができることを示した。しかしながら 、lacZ染色および細胞形態学をさらに詳細に検討すると、これら二つのベクター 間には明確な違いがあった。1MOIの力価において、アデノウイルス感染はlacZ陽 性ニューロンの比率をさらに高めた。図1Aと図1Bを比較のこと。図1Aは1MOIにお いてアデノウイルスで感染した培養交感神経ニューロンの写真を示し、図1Bは1M 0Iにおいて単純ヘルペスウイルス(HSV-1)で感染した培養交感神経ニューロンの 写真を示す。10MOIでは、アデノウイルス感染ニューロンは実際上すべて導入遺 伝子を発現したのに対し(図1C)、HSV-1感染培養中ではほとんどのニューロン は陰性であった(図1D)。最も高力価の100MOIでは、アデノウイルス組換え感染 ニューロンは形態学上は正常に見え、細胞毒性の徴候はなく、細胞体および伸展 生成過程の両方とも染色に十分なレベルの導入遺伝子を発現した(図1E)。これ に対し、100MOIでHSVベクターで感染したニューロンは、特に神経突起の生成過 程について、48時間以内に重篤な退化徴候を示した(図1F)。 これら二つのウイルスベクターで感染した交感神経ニューロンの姉妹培養にお けるlacZ陽性細胞数の定量によって、図1に示すような培養観察から導かれた定 性的な結論が確認された。各タイプのウイルスで感染した細胞の割合を評価する ため、全細胞数とlacZ陽性細胞数を、前記の通り、5つのランダムフィールドで 計数した。交感神経ニューロンのおよそ30%は、1pfu/cell(図2A)力価の組換え アデノウイルス感染によるlacZ陽性であったが、HSVベクターによって形質導入 された細胞では10%だけが同じような力価で陽性を示した((図2A))。10pfu/cel lにお いて、形質導入効率は、HSV-1ベクターや姉妹培養中の75%および50%lacZ陽性細 胞よりもアデノウイルスのほうが再び高くなった(図2Aおよび図2B)。力価が100p fu/cell以上の場合は、いずれのベクターであっても、細胞の95%以上の形質導入 が得られたが、これらのMOIにおいては細胞毒性が示された。従って、細胞生存 率はこれら二つの異なるベクター感染後に評価された。実施例III:組換えアデノウイルスベクター感染後のニューロン生存率 ウイルス感染に対する潜在的な細胞毒性を調べるため、交感神経ニューロンを アデノウイルスベクターAd5CA17LacZあるいはHSV-1ベクターRH105で感染し、細 胞生存率を、これがミトコンドリア機能によって反映されるように、2〜10日後 に測定した。細胞生存アッセイ法 細胞生存を測定するため、48ウェル組織培養皿にウェル当たり細胞5,000個の 密度でニューロンを播種し、本明細書に記載の通り、アデノウイルスまたはHSV- 1ベクターの力価を変えて感染させた。CellTiter 96 Assay KitTM(Promega,Ma dison,WI)に従って、テトラゾリウム塩を代謝的にフォルマザン塩へ転換する ことにより、細胞生存率を測定した。図3に示すように、1MOIにおいては、組 換えアデノウイルス感染対組換えHSV-1感染後に生存していた細胞の割合に有意 な差はなかった。しかしながら、力価を増やすに従って、細胞生存に大きな差が あることが明らかになった。すなわち、10MOIでは、アデノウイルス感染培養中 のニューロンはその90%が生存していたのに対し、HSV-1感染培養中のニューロン はわずか45%が生存していたに過ぎない。これらの値を感染率で補正した場合、H SVベクターで形質導入した細胞のほとんど全部が培養10日後には消滅した(例え ば、10MOIHSVにおいて細胞のうち55%が感染し、細胞の55%が消滅した)。これに 対し、アデノウイルス感染ニューロンを感染率に対して補正したところ(すなわ ち、75%感染/10%消滅)、10MOIの感染後10日で、感染細胞の13%が消滅したに過 ぎない。さらに著しい差は50MOIで表れた。この感染レベルにおいて、HSV感染培 養中のニューロンはその大部分が消滅したのに対し(90%)、アデノウイルス培 養中では15%のニューロンが消滅しただけであった。従って、HSV-1は比較的狭い 範囲の効果をもっており、細胞集団の75%以上を形質導入するに要する力価は重 篤な細胞毒性効 果を示す。この結果は、アデノウイルスが、10〜50MOIの力価において、少なく とも10日間最小の細胞毒性で細胞の70%以上を形質導入することができることを 示した。従って、以下の実施例に記載の実験はすべてアデノウイルスに基づくベ クターで行われた。実施例IV:形質導入されたニューロンの細胞構築 細胞は正常な形態をもっているようであり、アデノウイルス組換え感染後も生 存し続けたが、lacZリポーター遺伝子をもつ非溶菌性ウイルスの存在が生存ニュ ーロンにおいて超構造的(ultrastructural)変化を生じるかどうかを調べるた め、感染7日後に電子顕微鏡による観察を行った。電子顕微鏡法 交感神経ニューロンを、0,10,50,100および500MOIの力価において組換えア デノウイルスAd5CA17LacZで感染させた。培養7日後、細胞を2時間0.1Mカコジル 酸塩緩衝液(pH7.2)中1.5%グルタールアルデヒドで固定した。いくつかの実験に おいては、ニューロンは50MOIにてAdwtp53、2日間で感染し同様にして固定した 。最初の固定後、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液で3回試料を洗浄した。洗浄 はそれぞれ15分間行った。試料は1%の四酸化オスミウム中90分間氷上において後 固定し、エタノールおよびアセトンの濃度を上昇させながら脱水して、エポン- アラルダイトに包埋した。薄いセクションを切断し、酢酸ウラニルとクエン酸鉛 で染色した後、日立H-7100透過型電子顕微鏡で調べた。各試料料について、40〜 60個の細胞を含む三つ別々のグリッドを調べた。 まず10MOIの低い範囲で感染後、細胞を調べた。その結果約70%の細胞について 形質導入がみられた。これら細胞の超構造は一般に非感染細胞とは区別できなか った(図4A);細胞質は正常のようであり、健康で無傷の細胞小器官をもってお り、その核は正常なクロマチン(染色質)を含んでいた(図4B)。いくつかの細 胞では、非常に小さい電子の密な封入が、それ以外は健康な細胞の核に見出され た(図4B)。50MOIにおいて、細胞の小器官は無傷のままであり、やや多い核封 入が見えるものの、核の構造は正常のようであった(図4C)。ミトコンドリア機 能のアッセイによって有意な細胞毒性があることが判明している高濃度のアデノ ウイルスでは、核の異常が容易に識別できた(図4D)。これらの異常には大きい 電子の密な封入および、退化進行中のニューロンに共通して見られる繊維状凝集 の蓄積が含まれていた。高力価において、いくつかのニューロンはクロマチン崩 壊を示した(図4D)。超構造の検査により、非感染対照について調べた最高濃度 (500MOI)であっても、アポトーシスを特徴づける特徴はないことが明らかとな った。これらの結果は、アデノウイルスが細胞学的に悪影響を生じることなく大 多数の細胞を感染する力価で使用できることを示している。しかしながら、過剰 な感染率は核構造の悪化をもたらすので、ウイルスの濃度は注意深く制御しなけ ればならない。実施例V:組換えアデノウイルス感染ニューロンの電気生理学的機能 10〜50MOIの組換えアデノウイルス感染細胞は、ミトコンドリア機能と細胞構 築に関しては正常であるが、ニューロン機能は細胞の電子生理学的性質を調べる ことによって特徴決定された。電気生理学 ホールセルパッチ記録技法を用いて、組換えアデノウイルス感染および対照の 上頸神経節(SCG)ニューロンをボルテージクランプして外部カリウム(K+)電 流を測定した(McFarlane et al.,J.Neurosci.13:2591-2600,1993)。簡単 に説明すると、SCGニューロンを誕生1日後に採取して3日間培養した後、50MOIに て24時間Ad5CA17LacZを感染させ、次いで電気生理学記録を行うまでにさらに7日 間培養した。細胞は記録後直ちに2%パラホルムアルデヒド-0.2%グルタールアル デヒドで固定し、X-galで染色後β-ガラクトシダーゼ活性を検出した。β-ガラ クトシダーゼ活性を示す細胞だけが感染したものと考えられる。 SCGニューロンの総外部電流は、速度および電圧依存性が異なる三つの電圧ゲ ート電流からなる。すなわち、非不活性化電流(IK);10〜30msのタイムコース で不活性化する、速い一過性A型電流(IA);そして二成分、すなわち、一成分は1 00〜300msの時定数で、第二成分は1〜3msの時定数で不活性化する、小さく遅い 一過性A型電流(IAs)である(McFarlane,J.Neurophys.67:1291-1300,1992) 。異なる電位に膜を保持することにより、一または二の電流を選択的に活性化す ることができる。こうして各電流をサブトラクション法により特徴決定する。簡 単に説明すれば、膜は、脱分極段階でわずかにIKだけを生じる-10あるいは-20mV の電 位に保持された。この電流IKを、さらにマイナスの電位-90mVからの同じ脱分極 電位になる段階で生じる総電流(IA+IK+IAs)から差し引いて、A電流だけにする 。電流密度(pA/pF)を測定するには、各電流を他の二電流から取り出した後、IA およびIKの電流振幅を、+30mVまでの電位段階によって生じる電流から測定し、 細胞キャパシタンス(pF)によって除した。細胞キャパシタンスは、10mVの過分 極電圧段階によって生じる容量電流を積分し、次いでこの電流を当該電位によっ て除することによって得られた。 電圧段階はコンピュータ制御スティミュレーターによって行われた。スティミ ュレーションソフト、データ捕捉および分析についてはA.Sherman氏の著作があ る(およびAlembic Inc.,Montreal,Quebecより入手可)。膜電流をList EPC-7 増幅器のフィルターを通し、5kHzでサンプルを取って表示しオンライン保存した 。全実験を通して電圧段階は125msの長さであった。 すべての実験は室温(21〜24℃)で行った。ピペットに細胞内媒体(5mM NaCl ,50mM酢酸カリウム、65mM KF,1mM MgCl2,10mM HEPES(pH7.4,KOHで調整),10 mM EGTA,0.5mM CaCl2)を入れた。ピペット電流は、上記浴液に含浸したピペッ トでゼロにした。記録を行っている間、0.5ml/minの速度で細胞外液(140mMコリ ンC1,2mM NaCl,5.4mM KCl,0.4mM CaCl2,0.18mM MgCl2,10mM HEPES(pH7.4, NaOHで調整))、5.6mMのグルコース、0.5mMのテトラドトキシン(TTX)および1.5m M CaCl2(pH7.3〜7.4))でニューロンを連続過融解した(super fused)。細胞外 液は、内部ナトリウムおよびカルシウム電流をブロックする薬剤および前記(Mc Farlane,J.Neurophys.67:1291-1300,1992)のカルシウム依存性電流を含ん でいた。 感染後7日間β-ガラクトシダーゼを発現する交感神経ニューロンでは、IKおよ びIAの電流密度(pA/pF)培養SCGニューロンについて先に報告された電流密度と 同様であり(McFarlane et al.,J.Neurosci.13:2591-2600,1993)、対照、 すなわち末感染SCGニューロンのそれと有意な差がないことが分かった(図5Aお よび図5B)。従って、組換えアデノウイルスの50MOIまでで感染されたニューロ ンは少なくとも7日間は正常に機能するようである。実施例VI:p53の過剰発現は分裂終了ニューロンにアポトーシス的細胞死を誘発 以上に述べた発見は、アデノウイルスベクターが制御されたパラメータの範囲 内で遺伝学的に一次ニューロンを変更するのに使用できることを示している。従 って、このアプローチを用いて、p53の過剰発現が分裂終了ニューロンのプログ ラム細胞死誘発に十分であるかどうかを調べた。lacZリポーター遺伝子と同じpJ M17ベクター骨格に野生型p53発現カセットをもっている組換えアデノウイルスAd wtp53がこの検討に使用された。まず、ヒト野生型p53のアデノウイルス媒介伝達 が培養交感神経ニューロンにおいてp53の安定な過剰発現をもたらし得るかどう かを調べるため、50MOIにおいて、ヒトp53(Adwtp53)かまたはlacZ(AdCA17LacZ) のどちらかをもつ組換えアデノウイルスで細胞を感染させ、ヒトp53に特異的な 抗休で免疫染色した。免疫蛍光 アデノウイルスベクターにより伝達されたヒトp53を免疫蛍光検出するため、 試料をメタノール:アセトン(1:1)で5分間固定し、5分間風乾した。再水和(r ehydration)後、3%ヤギ血清含有PBSで細胞をブロックした。ヒトp53(DO-1)のア ミノ末端エピトープと特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用した。一次抗体をこの同じブロック液(1:50)で希釈し て4℃で一晩カバーガラス上でインキュベーションを行った。PBSで3回洗浄後、C Y3と結合したヤギ抗マウス二次抗体(Jackson Laboratories,1:2000に希釈)を 入れ、25℃で1時間インキュベーションを行った。PBSで3回洗浄後、グリセロー ル中にカバーガラスを置き、これをツァイス製Axioskop顕微鏡で調べた。 AdCA17LacZ感染ニューロンはヒトp53に対して免疫反応性ではなかったが(図6 A)、AdWtP53感染ニューロンは80%以上の細胞で強い核染色を示した(図6B)。 内因性レベルに関してp53過剰発現の程度をさらに正確に測定するため、50MOI のAd5CA17LacZまたはAdwtp53で感染後30時間目および48時間目に形質導入交感神 経ニューロンを採取して、p53タンパク質のレベルを、齧歯目およびヒトp53の両 方を認識する抗体を用いたウェスタンブロット分析法によって調べた。ウェスタン分析 p53タンパク質を検出するため、50MOIの力価で感染させた48時間後、溶菌緩衝 液(Slack et al.,J.Cell Biol.129:779-788,1995)から細胞を採集した。1 0%アクリルアミドゲルでタンパク質を分離してニトロセルロース膜に移した。5% スキムミルクで2時間ブロックした後、マウスおよびヒトp53(1:10)(Oncogene Science,Cambridge MA)に対するマウスモノクローナル抗体であるAb1含有溶 液中、4℃で一晩、上記の膜のインキュベーションを行った。TBSTで5回洗浄後( それぞれ5分間)、フィルターを、西洋ワサビパーオキシダーゼ結合ヤギ抗マウ ス二次抗体中25℃で1時間インキュベーションした。フィルターはTBSTでさらに5 回それぞれ5分間ずつ洗浄した。ウェスタンブロットは、製造元の指示に従い、E CL化学発光システム(登録商標)(アマーシャム)により展開した。 これらの実験は、内因性p53が交感神経ニューロンで安定に発現されること、 そしてAd5CA17LacZ感染は内因性p53発現に影響しないことを示した(図7B)。こ れに対し、Adwtp53感染の30時間後では、交感神経ニューロンにおいてp53タンパ ク質の過剰発現が検出でき(図7A)、48時間後では内因性レベルよりもはるかに 高い発現を示した(図7B)。感染48時間後に増加したp53の発現と一致して、Adw tp53感染細胞では、細胞収縮により特徴づけられる形態学的変化が明らかになっ た。一方Ad5CA17LacZをもっているものは正常であった。さらに、対照と比べて 、著量の死ニューロンおよび凝縮性(pyknotic)p53陽性ニューロンが観察され た図6B)。このことは、p53の過剰発現がニューロンの死滅をもたらすことを示 唆している。 p53の過剰発現に続くニューロン死の程度を定量するため、上記代謝アッセイ 法により細胞生存率を測定した。そこではテトラゾリウム塩からフォルマザン塩 への転換は細胞力価96アッセイキット(Assay Kit)(登録商標)を用いて測定 する。コロニー形成3日後、交感神経ニューロンは、5〜500MOIの範囲の力価にお いて、Ad5CA17LacZおよびAdwtp53により平行して感染させた。lacZ感染ニューロ ンの細胞生存率アッセイ法により、500MOIという最高濃度であっても、感染72時 間後の細胞生存率に変化のないことが明らかになった(図8A)。これに対し、同 一条件下Adwtp53感染細胞は5MOIで細胞生存率の40%減少、10MOIでは65%減少した (図8A)。さらに高レベルのウイルスでは、72時間までに細胞生存率は75%〜85% という劇的な損失となった。さらに対照実験として、同様のMOIで姉妹培養物を 野 生型アデノウイルスで感染させた。驚いたことに、72時間までに、野生型アデノ ウイルスでさえ交感神経ニューロンの生存には影響を与えなかった(図8A)。 これらのデータはヒトp53の過剰発現が交感神経ニューロンの死につながるこ とを示している。p53過剰発現に続いて起こるニューロン細胞死の経時的変化を 確認するため、50MOIにおいてAd5CA17LacZおよびAdwtp53に感染させたニューロ ンを用い、平行実験を行った。生存率は感染させてから2日、2.5日、3日、5日、 7日および10日後に測定した。ニューロンの細胞死は、細胞生存率において10%の 減少が明らかになった時、まず48時間で検出可能であった(図8B)。一方、72時 間では60〜70%という細胞生存率の劇的な損失が検出された。次いで、そのアッ セイのリマインダーについては非常に低レベルで細胞死が継続した。従って、Ad wtp53感染48時間後に細胞死が始まり、ニューロンの大部分は2〜3日の間に死滅 する。 p53誘発細胞死がアポトーシスによるものかどうかを調べるため、三つの異な るアッセイ法、すなわち、(1)DNAラダーを可視化するヌクレオソームDNAの単離 、(2)免疫組織化学的にアポトーシスを可視化するタネル染色法、および(3)電子 顕微鏡を行った。断片化DNAの単離 DNA断片化を調べるため、標準的な培養条件下60mmの組織培養皿に106個のニュ ーロンを播種した。コロニー形成の3日後、組換えアデノウイルスで細胞を感染 させ、そして感染から48時間後に採集した。細胞を採集しPBSで1回洗浄後、前記 の通り(Slack et al.,J.Cell Biol.129:779-788,1995)DNAの単離に使用し た。TE(10mM Tris-HCL,pH8.0および1mM EDTA)に懸濁させた細胞100μlに溶菌緩 衝液1.2mlを添加した。室温で15分間溶菌を進行させた後、細胞溶解物を12,000r pmで15分間遠心分離した。ゼラチン性ペレットをピペットで取り出し、37℃で30 分間、上清を100μg/ml RNase Aで消化した。次いで等量の100%エタノールおよ び、最終濃度が0.5MになるようNaClを添加することによりDNAを沈澱させた。遠 心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、TE緩衝液50μlに再懸濁した。断 片化DNAはクレノウ(Promega)を用いて室温で15分間[32P]-dCTPで末端標識した 。標準として100bpのラダーを用い、末端標識DNAを2%アガロースゲルにかけるこ とによってDNAラダーを解析した。タネル染色法 免疫組織化学的にアポトーシスを解析するため、末端トランスフェラーゼを用 いて断片化DNAを可視化した(タネル標識)。MOI 50において、平行培養物をAdw tp53またはpCA17LacZで感染させた。72時間後、アセトン:メタノール(1:1)で 細胞を-20℃にて10分間固定した。1.0μlのビオチンdUPT(Boehringer Mannheim ,Indianapolis,IN,Cat.#109307)、末端トランスフェラーゼ1.5μl)5X TdT 緩衝液(Promega)20μlおよび蒸留水78μlからなる混合物50μlを各カバーガラス に添加した。37℃で1時間インキュベーションした後、カバーガラスをPBS(pH7 .4)で3回、次いでトリス緩衝生理食塩水(pH8.0)で1回洗浄して反応を停止さ せた。カバーガラスは1:2,000に希釈したストレプトアビジンー標識二次抗体CY3 (Jackson Laboratories,West Grove,PA)で30分間インキュベーションした。 PBSで5分間の洗浄を3回行った後、試料をグリセロール中に入れ、ツァイス(Zei ss)製Axioplan顕微鏡により調べた。 50MOIにおいてAd5CA17LacZまたはAdwtp53を感染させた培養物で平行して行わ れたこれら三種のアッセイ法から、p53の過剰発現がニューロンのアポトーシス をもたらすことが示された。第一に、Adwtp53により感染させた48時間後のニュ ーロンは、DNAゲル電気泳動に示される通り、Ad5CA17LacZ感染ニューロンよりも さらに有意なDNA断片化を示した(図7C)。第二に、タネル染色により、感染の7 2時間後の対照と比較してp53を過剰発現するニューロンではアポトーシスのレベ ルが有意に高いことが明らかになった(図9A、図9B)。Adwtp53感染培養物では 、多数の凝縮性タネル陽性核があった(図9F)が、一方AdCA17LacZ感染培養物で は、時折タネル陽性核が観察されただけであった(図9A、図9D)。タネル標識に おけるこの増加と一致して、p53を過剰発現しているニューロンは劇的な神経突 起の退化を示した(図9E)のに対し、β-ガラクトシダーゼを発現するニューロ ンは正常な形態を示した(図9C)。最後に、電子顕微鏡によるこれら培養物の解 析によれば、核クロマチンの崩壊および凝縮によって示されるように、50MOIのA dwtP53感染交感神経ニューロンのアポトーシスが上昇したことが分かる。これに 対し、AdCA17LacZ感染交感神経ニューロンは、少なくとも超構造的に測定された ものとして、未感染対照と比べた場合500MOIにおいてさえ、アポトーシスの上昇 は見られなか った。従って、p53のアデノウイルス媒介過剰発現は分裂終了後交感神経ニュー ロンのアポトーシス死を起こすのに十分である。実施例VII:分裂終了ニューロンの組換えアデノウイルス感染によるアポトーシ ス細胞死の調節 E1B55K を発現する組換えアデノウイルスによるp53媒介細胞死の阻害 上記実験は、p53をコードするレトロウイルス感染の際に分裂終了ニューロン がアポトーシス性細胞死を誘導することを示している。逆に、分裂終了ニューロ ンの生存率は、細胞死を阻害するタンパク質をコードする組換えレトロウイルス を感染させることによって上昇する。図10に示すグラフは、p53阻害剤E1B55Kを 発現する組換えアデノウイルスが、NGF除去により誘発される死からニューロン を救出することを示している。P1ラット上頸神経節(SCG)の交感神経ニューロ ンを、50ng/ml NGF中で5日間培養した後、E1B55Kまたはp53を結合できない突然 変異株E1B55Kを発現する組換えアデノウイルスを50または100 MOIで感染させた 。感染は50ng/ml NGFの存在下で行った。感染2日後、NGFがなくなるまで細胞を 洗浄し、2日後にMTTアッセイ法を用いて生存率を決定した。p53 およびMEKK1誘発細胞死はBcl-2およびBcl-xLを発現する組換えアデノウイル スを有する分裂終了ニューロンを注入することによって阻害される 図11の実験は、p53またはMEKK1(分裂促進因子活性化キナーゼカスケードの一 つ)を発現する組換えアデノウイルスがNGFの存在下ニューロンを死滅させるの に対し、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2およびBcl-xLはニューロンをNGF除去誘 発死させないことを示している。P1ラット上頸神経節(SCG)の交感神経ニュー ロンを、50ng/ml NGF中で5日間培養した後、p53、MEKK1、Bcl-2およびBcl-xLを 発現する組換えアデノウイルスの10〜100MOIで感染させた。感染は50ng/ml NGF の存在下で行った。感染2日後、NGFがなくなるまで細胞を洗浄し、2日後にMTTア ッセイ法を用いて生存率を決定した。神経成長因子(NGF)誘発細胞死はドッキングタンパク質Gab1を発現する組換え レトロウイルスを有する分裂終了ニューロンを注入することによって阻害される 図12の実験は、Gab1アデノウイルスが交感神経ニューロンの生存を媒介するこ とを示す。交感神経ニューロン(アッセイ点あたり10,000個のニューロン)を誕 生時(PO)に分離し、10ng/ml NGF中で4日間成長させた。ニューロンは4日目にN GFがなくなるまで洗浄し、30〜100MOIにおいてGab1をコードする組換えアデノウ イルスを感染させた。図12の実験は、感染5日後の生存率を、10ng/ml NGF中の生 存率と比較して示す。成長因子受容体をコードする組換えアデノウイルスによるニューロン細胞死の阻 図13の実験は、TrkBアデノウイルスが交感神経ニューロンの生存を媒介するこ とを示す。TrkAを発現するがTrkBは発現しない交感神経ニューロン(アッセイ点 あたり10,000個のニューロン)を誕生時(PO)に分離し、10ng/ml NGF中で4日間 成長させた。ニューロンは4日目にNGFがなくなるまで洗浄し、BDNFの存在下、野 生型TrkBをコードする組換えアデノウイルスを感染させた。グラフは、NGF中の 生存に比べた、BDNF中(斜線棒グラフ)またはBDNFの非存在下(黒い棒グラフ) 5日後の生存率を示す。 図14の実験は、TrkB媒介交感神経ニューロンの生存がTrkB上のShc/Ras/PI-3キ ナーゼ活性化部位およびホスホリパーゼC(PLC)-ガンマl活性化部位の両方を必要 とすることを示す。誕生時(PO)に分離した交感神経ニューロン(アッセイ点あ たり10,000個のニューロン)を、10ng/ml NGF中で4日間成長させた。ニューロン は4日目にNGFがなくなるまで洗浄し、BDNFまたはNGFの存在下、野生型TrkB、ま たは本発明者らがTrkAと細胞内シグナルタンパク質との相互作用に必要であるこ とを発見した部位に突然変異を含むTrkBをコードする組換えアデノウイルスを感 染させた。解析したTrkBタンパク質は野生型(WT)TrkBまたは以下のTrkB変異体 であった。すなわち、キナーゼ不活性;SHC,RasおよびPI-3キナーゼの活性化に おけるY513F欠失変異体;ホスホリパーゼC(PLC)-ガンマl活性化におけるY814F欠 失変異体;Y513F/Y814F二重変異体;またはSHC,Ras、PI-3キナーゼ、ホスホリ パーゼC(PLC)-ガンマlおよびSNT活性化におけるDef欠失体である。交感神経ニュ ーロンの生存は9日目にMTTアッセイ法により測定した。グラフは、NGF中(黒い 棒グラフ)の生存と比較した、BDNF中(斜線棒グラフ)またはBDNFの非存在下( 点線棒グラフ)における5日後の生存率を示す。実施例VIII:インビボにおける交感神経ニューロンへの遺伝 アデノウイルスはインビトロにおいて有効な遺伝子伝達体と考えられるため、 本発明者らは組換えウイルスがインビボにおいてSCGニューロンへ有効に送達さ れるかどうかを測定することにした。インビボ投与するため、成人マウスの耳介 に5x109pfu/mlを注射した。耳介はSCGニューロンから伸びる軸索末端標的の一つ である。組換えアデノウイルスの注射30分前に、マウスには鎮痛剤として0.05mg /kgのブプレノルフイン(Buprenorphine)(TemgesicTM,Pickitt and Colman L td.)を注射した後、メトキシフルラン(Methoxyflurane)(MetofaneTM,Jansen Pharmaceuticals)の吸入麻酔を行った。アデノウイルスの投与14日後、100mg/k gのペントバルビタールナトリウム(SomnitolTM,MTC Pharmaceuticals,Cambrid ge,Ontario)からなる深麻酔下で屠殺した。上頸神経節(SCG)を取り出して、0.1 M NaH2PO2(pH7.3),2mM MgCl2,0.01%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.02% NP-40を含有する溶液で洗浄した。1mg/ml X-gal,5mM K3Fe(CN)6および5mM K4Fe (CN)6を含有する同じ洗浄液中37℃で3時間、該神経節をインキュベーションする ことによって、β-ガラクトシダーゼ遺伝子産物を可視化した。次いで神経節を3 回洗浄し、1時間固定剤(4%パラホルムアルデヒド)に浸したた後顕微鏡により 観察した。組織学的調査のため、該神経節を、ショ糖濃度(12%,16%,18%)を 上昇させて含む溶液に少なくともそれぞれ4時間ずつ通過させ、凍結し、15μmの 切片にして凍結保存した。切片をエオシン染色し、エタノール、次いでキシレン の濃度を上昇させて脱水した後カバーグラスで覆った。 注射した動物の同側SCGに多数のLacZ陽性細胞が観察され、これはアデノウイ ルスが逆行性輸送によってSCGニューロンへ送達されることを示している。1匹の 動物には小数の陽性細胞があったが、2,3匹の動物の反対側神経節には染色が見 出されなかった。動物の全体的な検査によれば、耳の発赤や眼瞼下垂として表れ る炎症またはSCG機能障害のような潜在的副作用は出現しなかった。外科的除去 の間、形質導入されたニューロンを含む神経節に膨潤は観察されなかった。 他の動物およびヒト患者にたいしても同じ方法で、すなわち、形質導入しよう とするニューロンの標的に適用することによって、同様のアデノウイルスベクタ ーを投与できることは当業者には明らかであると思われる。本投与を行うことは 当業者の技術能力の十分範囲内である。アデノウイルスベクターは本明細書の記 載に従って調製し、静脈内、動脈内、皮下、きょう膜内、腹腔内、筋肉内、小脳 内または室内投与してもよい。投与経路およびその有効量は、年齢、患者の総体 的健康、および現在投与されている他の薬剤を含む、臨床医によって日常的に評 価される他のパラメータに応じて変化する。実施例IX:組換えアデノウイルスによる皮質前駆細胞と分裂終了皮質ニューロン の感染 以下の実験は、組換えアデノウイルスを用いて、皮質前駆細胞および分裂終了 ニューロンを感染させアポトーシスを調節できることを示す。細胞培養 マウス胚からの皮質前駆体の調製法は、ラット培養物に対するGhoshら(1995 )の記載の方法に基づき、Brewer et al.,Nature 363:265-266,1993に対応し て改変した。E12-13マウス胚から皮質を集めて破砕した後、4ウェル組織培養プ レートのウェルあたり105個の細胞密度でコロニー形成させた。培地はNeurobasa l培地(Gibco/BRL)、0.5mMグルタミン、ペニシリン-ストレプトマイシン、1%N2 サプリメント(Gibco/BRL)およびbFGF(40ng/ml;Collaborative Research Inc.) からなる。48時間後、1%N2サプリメントを2%B27(Gibco/BRL)に変えた以外は同 じ培地で交換した。これらの前駆細胞から生じる皮質ニューロンはこの条件下で 少なくとも3週間維持することができた。神経突起伸長アッセイを行うため、5日 後に、ニューロンを10ng/ml神経成長因子(NGF)含有培地に移した。細胞がトラ ンスジェニックマウスから培養する場合、各胚の組織を取り出して破砕した後、 遺伝子型決定に先だって別々にコロニー形成させた。成熟分裂終了ニューロンは E17-18胚から調製した。それから皮質を集め、培地(0.5mMグルタミン、ペニシ リン-ストレプトマイシン、0.5%N2、1%B27サプリメント含有Neurobasal)中で破 砕した後、0.5x106細胞/mlの濃度でコロニー形成を行った。組換えアデノウイルスによる皮質ニューロンの感染 皮質前駆細胞をコロニー形成の時点で感染させ、皮質ニューロンはコロニー形 成8日後に感染させて、培養物中大多数のニューロンが非分裂性であることを確 認した。ウイルス感染のため、400μlの培地に、適当な力価のベクターを含むさ らに400μlの培地を添加し、4ウェル組織培養皿で細胞をコロニー形成させた。 感染 18時間後、完全培地に交換した。感染多重度(5〜100MOI)は細胞あたりに加え たプラーク形成単位数を示す。感染72時間後、皮質前駆細胞で細胞生存アッセイ を行い、皮質ニューロンについては感染4日後に行った。 図17A、17Bの実験は、lacZ(AdlacZ)または変異E1A(Ad1101)をコードする組 換えアデノウイルスによる皮質前駆細胞および非分裂性皮質ニューロンの感染が アデノウイルスがコードするタンパク質の効率的な発現をもたらすことを示して いる。インビトロにおいてそれぞれ0日目、8日目に、25MOIで皮質前駆細胞(図1 7A)およびニューロン(図17B)を組換えAdlacZに感染させた。48時間後細胞をX -galで染色してβ-ガラクトシダーゼ遺伝子発現を可視化した。図17Cにおいては 、コロニー形成を行う際に、皮質前駆体を100MOIでAdl 101で感染させ、タンパ ク質は48時間後に抽出した。M73抗体を用いるウエスタンブロット法によってE1A l 101を検出した。目盛り=50μm。 図18〜21の実験は、非分裂性皮質ニューロンではなく、皮質前駆細胞の死滅が 、組換えアデノウイルスがコードするE1Aによって誘導されることを示している 。 図18は、MTTアッセイ法を用いて測定した、皮質前駆細胞と非分裂性ニューロ ンの生存に及ぼすAdlacZとAdl 101感染の定量的な効果を示す。図18Aでは、コロ ニー形成時に0、10、25、50または100MOIにて、AdlacZ(黒い棒グラフ)またはA dl 101(グレイの棒グラフ)に感染させた。細胞生存率は3日後MTTアッセイ法を 用いて測定した。AdlacZ感染対照細胞に対して、Adl101感染細胞においては、細 胞生存率における濃度依存的な減少が検出された。図18Bでは、8日目のインビト ロ非分裂性皮質ニューロンが図18Aの記載と同じ力価で感染しており、4日後にMT Tアッセイを行った。細胞生存率の変化はニューロン培養物について試験したど のウイルス力価においても検出されなかった。結果は相異なる3回の実験の平均 値±標準誤差を表す。 図19A〜Lは、生死判別染色法を用いて、組換えAdlacZとAdl 1101感染皮質前駆 体およびニューロンの細胞生存率についての比較を示す。皮質前駆体(左の二つ の欄)および皮質ニューロン(右の二つの欄)は、コロニー形成の際インビトロ で8日目に、それぞれ25MOIのAdlacZ(図19E〜H)とAdl101(図19I〜L)で感染さ せるか、または未感染のままであった(図19A〜D)。生存細胞は、浸透性カルセ イン-AMから蛍光物質カルセイン(緑色)への酵素的転換により測定した。死細 胞は細胞DNA(赤色)へのエチジウムブロマイドの取り込みによって検出した。 未感染前駆細胞(図19A、19B)またはAdlacZ感染細胞(図19E、F)に比べた場合 、Ad1101(図19I、J)感染前駆細胞では、細胞生存率の低下に伴う死細胞の劇的 な増加が検出された。これに対し、皮質ニューロンの生存性は、未感染細胞(図 19C、19D)に比べ、AdlacZ(図19G,H)またはAdl101(図19K,L)の感染いずれに よっても影響されなかった。 図20A〜Dは、E18非分裂性皮質ニューロン培養物の特性を示す。培養6日後、同 じフィールドの位相差顕微鏡写真に示すごとく、BrdU(図20B)による12時間イ ンキュベーション後の、細胞総数に対する抗BrdU免疫染色が示す低レベル値から 分かるように、培養細胞の大部分は非分裂性ニューロンであった。ニューロンマ ーカーMAP2は、抗MAP-2染色によって示されているように、この段階で高度に発 現されていた。図20Cは、同じフィールドの位相差顕微鏡写真を示す。目盛り: (図20A,B)50μm;(図20C,D)50μm。 図21(A〜F)は、非分裂性皮質ニューロンの生存がpRbファミリーメンバーの 機能切除によって影響されないことを示す。インビトロ8日後、皮質ニューロン は影響を受けていないままか(図21A,B)、25MOIのAdlacZ(図21C,D)またはAdl 101(図21E,F)に感染させた。4日後タネル標識法によってアポトーシスをモニ ターした。AdlacZ(図21D)または未感染細胞(図21B)に比べて、Adl101(図21 F)感染ニューロンではタネル陽性細胞の増加は検出されなかった。図21A,C,E はそれぞれ、図21B,D,Fのフィールドの位相差顕微鏡写真である。図面は同様 な結果を示す6回別々の実験を表す。図21A〜Fの目盛り=50μm。実施例X:ニューロン成長のアッセイ法 以下の実験は、ニューロン成長因子BDNFに対する成長に比べて、ニューロン成 長因子NT-3に対する交感神経ニューロンの優先的な成長応答を測定する方法を示 す。類似のアッセイ法を用いて、組換えアデノウイルス、例えばTrkレセプター などのニューロトロフィンレセプターをコードするアデノウイルスなどに感染し た様々な種類のニューロンの成長応答を解析できることが理解されると思われる 。NGF 依存的性交感神経ニューロンにおいてNT-3は選択的に神経突起伸長を選択的 促進する NT-3またはBDNFが標的誘導NGF依存性となった後、交感神経ニューロンがどち らに応答するかを決定するため、本発明者らは10ng/ml NGF中で5日間(図22)培 養することによって新生交感神経ニューロンのNGF依存性集団を選択し、ニュー ロトロフィン媒介生存および神経突起伸長を調べた。生存応答を測定するため、 NGFでの選択後、ニューロンを30ng/ml NT-3またはBDNFへ移した。BDNFはNGF依存 性ニューロンの生存維持には不十分であった。位相-明部の細胞体を計数するこ とによってモニターしていたところ、切り替え2日後に培養中の全ニューロンが 死滅した。これに対し、25〜30ng/mlのNT-3はNGF依存性ニューロンの小集団の生 存を維持するのに十分であった。 NT-3またはBDNFの添加が生存に依存しない神経突起伸長を媒介できるかどうか を決定するため、10ng/ml NGF中コラーゲン上で5日間交感神経ニューロンのコロ ニー形成を行って選択し、次いでさらに2日間10ng/ml NGFの存在下、30ng/mlのN T-3またはBDNFを添加した。NT-3の添加は、3回の各独立実験において2倍から2.5 倍の神経突起密度増加を伴って、神経突起生成過程密度の活発な増加をもたらし た(図23A)。これに対し、30ng/mlのBDNF添加は検知できるほどの効果を与えな かった(図22C,23A)。 神経突起新生に及ぼすNT-3の効果をより正確に定めるため、ポリ-D-リジシン /ラミニンの低濃度で交感神経ニューロンのコロニー形成を行って、10ng/ml NGF 中で5日間選択し、次いで10ng/ml NGFプラス30ng/ml NT-3または30ng/ml NGFに 切り替えた。2日後、生成過程ネットワーク密度、神経突起の全長、および細胞 体のサイズをすべて測定した。高密度培養物で観察されたように(図23A)、生 成過程ネットワーク密度は10ng/ml NGFプラス30ng/ml NT-3の存在下2倍から2.5 倍に増加した(図23B)。統計学的に同様な増加は30ng/ml NGFでも見られた。同 様の結果が神経突起の全長の測定値からも得られ、NT-3もNGFも1.5倍の増加をも たらした(図23C)。これに対し、NGFとNT-3は細胞体サイズを異なる方法で制御 した(図23D)。10ng/ml NGFプラス30ng/ml NT-3で培養されたニューロンは10% 以下の小さいしかし有意な(P=0.002)増加を示したのに対し、30ng/ml NGFで培 養されたニューロンは25〜30%に肥大し、NGFプラスNT-3(P<0.001)で得られ た増加より有意に大きい増加を示した。従って、NT-3は神経突起伸長を促進する 能力においてNGFとほぼ等価であったが、細胞体肥大を促進する効果は有意に少 なく、ニューロン生存を促進するには20〜40倍少ない効率であった。NT-3 は成長に関連する遺伝子発現を選択的に促進する 新生交感神経ニューロンにおいて、NGFはチロシンヒドロキシラーゼ、p75ニュ ーロトロフィン受容体および、Tα1 α-チューブリンを段階的に(graded)濃度 依存的にコードするmRNAの発現を制御する。NT-3が神経突起伸長を制御するのと 同様に遺伝子発現を制御するかどうかを決定するため、交感神経ニューロンを10 ng/ml NGF中で5日間選択し、その後、10ng/ml NGFにさらに10または30ng/mlのNT -3を加えた。添加後6〜48時間内の時点でRNAを分離した。ノーザンブロット分析 によって、30ng/mlのNT-3を6時間添加したことにより、その発現がニューロンの 成長の関数として制御されるα-チューブリンの多重遺伝子族の一つであるTα1 α-チューブリンmRNAが5倍〜10倍増加される。この増加は24時間から48時間維持 され、NT-3添加により誘起された神経突起生成過程密度の活発な増加と一致して おり、濃度依存性であった。すなわち、10ng/mlのNT-3はTα1 α-チューブリンm RNAに何ら有意な増加を起こさなかった。30ng/mlのNT-3で観察された増加の程度 は、200ng/ml NGF添加の際に観察された増加と同様であった。Tα1 α-チューブ リンmRNAのレベルは、NGFレベルが増加するにつれて濃度依存的に増加し、100〜 200ng/mlで平衡に達する。従って、30ng/mlのNT-3は、Tα1 α-チューブリンmRN Aにおいて、NGFの飽和量と同じ程度の増加を誘起することができた。NT-3とは対 照的に、30ng/mlのBDNF添加はTα1 α-チューブリンmRNAの発現について何の効 果も与えなかった。 30ng/mlのNT-3添加はまた、チロシンヒドロキシラーゼmRNAの発現にも、より 小さいものではあるが約2倍から3倍の増加をもたらした。この増加は10ng/mlのN T-3では起こらなかったが、6時間目に初めて観察され、その後48時間継続した。 BDNFの添加はチロシンヒドロキシラーゼmRNAの発現には何ら影響しなかった。 他の態様 本明細書で説明されているところにしたがって、本発明の方法によって、アデ ノウイルス構築物の以下の群を用いることができる:(1)野生型p75、p75欠失1 (DDなし)、p75欠失2(ICDからPvul1部位までなし)、p75欠失2(ICDからNar1 部位までなし)、p75 ICD、p75 mICD;(2)pMAGEまたはその他のMages;(3)T raf1、Traf2、Traf3、Tradd、Fadd/MORT-1、FP、FAP、またはFAN;(4)IkB-α 、IkB-β、Bcl-31、IkB-イプシロン、またはRelA/p65;(5)rhoA、rac1、cdc42 、PAK1、PAK2、PAK3、G-PAK、または胚中心(GC)キナーゼ;(6)MEKK1、MEKK2 、MEKK3、SEK1/MKK4、またはTpl-2;(7)SEK1、MKK3、MKK6、またはMLK(混合 系譜キナーゼ-SPRK、DLK、ZPK、MUK);(8)p54 JNK、p38、またはMAPK;(9) jun、atf-2、Elk-1、またはMax;(10)TrkA野生型、TrkA Y490F(ShcとPLC相互 作用欠損型)、TrkA Y785F(PLC相互作用欠損型)、TrkA Y490F/785F、TrkA KFG (dl441〜443、SNT相互作用欠損型)、TrkA K538A(キナーゼ不活性)、または 欠損TrkA(TMおよびICDで構成的に活性がある);(11)TrkA Y490F/785F/KFG( TrkAdef);(12)TrkA Y490F/KFG(PLC相互作用特異的)、またはTrkA 785F/KF G(Shc相互作用特異的);(13)TrkAdef+Pl-3K、TrkAdef+src、TrkAdef+Grb2、 TrkAdef+Syp、TrkAdef+rasGAP、またはTrkAdef+STAT1、;(14)野生型SNT(天 然型KFG)、PLC(Y785)、またはShc(Y490)部位と連結した付加復帰変異体の 全て;(15)TrkB遺伝子およびTrkC遺伝子における、同一シリーズの非公開変異 体および公開された変異体;(16)Akt-1、Akt-2、P1-3キナーゼ、またはSHP; (17)c-yes、c-src、またはc-fyn;(18)SOS、Gab1、Ras、rasGAP、B-raf、Ra f-1、KSR、MEK-1、MEK2、Rsk1、Rsk2、Rsk3、MAPK1、またはMAPK2;(19)SH-PT P1、またはSH-PTP2;(20)STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5、STAT6、また はPLC-γ1、PKCδ、PKCε、またはPKCζ;(21)MPK1またはMPK2;(22)p53ま たはCsk;(23)JAK1、JAK2、JAK3、またはGSK3;(24)bcl-2、bcl-x、bcl-xl 、bax、またはbak;および(25)野生型p75、または図11に示されている欠失変 異体もしくは置換変異体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/15 G01N 33/50 Z 33/50 A61K 48/00 // A61K 48/00 C12N 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZW

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.精製されたアデノウイルスベクターを含む有糸分裂後ニューロンにおいて 、 (a) 約10から約50の感染多重度で、該アデノウイルスベクターに感染しており 、かつ (b) 該ベクターに含まれるDNA分子にコードされる遺伝子産物を発現させてい るニューロン。 2.組織培養の間に感染する、請求項1記載のニューロン。 3.インビボで感染する、請求項1記載のニューロン。 4.アデノウイルスベクターが、レポーター遺伝子をさらに含む、請求項1記載 のニューロン。 5.レポーター遺伝子が、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールア セチルトランスフェラーゼ、lacZ、および緑色蛍光タンパク質からなる群より選 択される、請求項4記載のニューロン。 6.DNA分子が、腫瘍抑制遺伝子をコードしている、請求項1記載のニューロン 。 7.腫瘍抑制遺伝子がp53である、請求項1記載のニューロン。 8.DNA分子が、成長因子レセプターをコードする、請求項1記載のニューロン 。 9.成長因子レセプターがTrkである、請求項8記載のニューロン。 10.成長因子レセプターがp75である、請求項8記載のニューロン。 11.交感神経ニューロンである、請求項1記載のニューロン。 12.ドーパミン作用性ニューロンである、請求項11記載のニューロン。 13.皮質ニューロンである、請求項1記載のニューロン。 14.DNA分子が、アポトーシスを阻害するタンパク質をコードしている、請求 項1記載のニューロン。 15.タンパク質がBcl-2である、請求項14記載のニューロン。 16.タンパク質がBcl-xLである、請求項14記載のニューロン。 17.タンパク質がE1B55Kである、請求項14記載のニューロン。 18.タンパク質がGablである、請求項14記載のニューロン。 19.タンパク質が、アポトーシスを誘導するタンパク質をコードする、請求項 1記載のニューロン。 20.有糸分裂後のニューロンにおいてアポトーシスを阻害または誘導する方法 であって、アポトーシスを阻害または誘導するタンパク質をコードするDNAを含 む精製アデノウイルスベクターによって、該ニューロンを感染させることを含む 方法。 21.タンパク質がアポトーシスを誘導する、請求項20記載の方法。 22.p53またはその生物学的に活性のある断片である、請求項21記載のタンパ ク質。 23.アポトーシスが阻害され、かつタンパク質がアポトーシスを阻害する、請 求項20記載の方法。 24.下記の段階を含む、アポトーシスを阻害する物質を同定する方法: (a) 有糸分裂後のニューロンの集団を培養する段階、 (b) 該集団のニューロンを、アポトーシスを誘導するタンパク質をコードする DNAを含むアデノウイルスベクターによって感染させる段階、 (c) 段階(b)において感染したニューロンの部分集団を、アポトーシスを阻害 すると推測される物質に暴露する段階、および (d) 感染させ、該物質に暴露させた部分集団においてアポトーシスを起こして いるニューロンの概数を、感染させた細胞集団においてアポトーシスを起こして いるニューロンの概数と比較する段階であって、部分集団におけるアポトーシス 細胞の数が相対的に減少していれば、アポトーシスの有効なインヒビターである ことを示す段階。 25.p53をコードする、請求項24記載のDNA。 26.下記の段階を含む、アポトーシスを誘導する物質を同定する方法: (a) 有糸分裂後のニューロンの集団を培養する段階、 (b) 該集団のニューロンを、アポトーシスを阻害するタンパク質をコードする DNAを含むアデノウイルスベクターによって感染させる段階、 (c) 段階(b)において感染したニューロンの部分集団を、アポトーシスを誘導 すると推測される物質に暴露する段階、および (d) 感染させ、該物質に露出させた部分集団においてアポトーシスを起こして いるニューロンの概数を、感染させた細胞集団においてアポトーシスを起こして いるニューロンの概数と比較する段階であって、部分集団におけるアポトーシス 細胞の数が相対的に増加していれば、アポトーシスの有効なインデュサーである ことを示す段階。 27.Bcl-2をコードする、請求項26記載のDNA。 28.Bcl-2の発現後に再び細胞周期に戻るよう誘導される、請求項27記載のニ ューロン。 29.下記の段階を含む、成長または増殖を阻害する物質を同定する方法: (a) 有糸分裂後のニューロンの集団を培養する段階、 (b) 該集団のニューロンを、成長を誘導するタンパク質をコードするDNAを含 むアデノウイルスベクターによって感染させる段階、 (c) 段階(b)において感染したニューロンの部分集団を、成長または増殖を阻 害すると推測される物質に暴露する段階、および (d) 感染させ、該物質に暴露させた部分集団において成長または増殖を起こし ているニューロンの概数を、感染させた細胞集団において成長を起こしているニ ューロンの概数と比較する段階であって、部分集団におけるTα1 α-チューブリ ンまたはTα1 α-チューブリン導入遺伝子の発現が減少していれば、成長または 増殖の有効なインヒビターであることを示す段階。 30.TrkBレセプターである、請求項28記載のタンパク質。 31.TrkBレセプターの発現後に再び細胞周期に戻るよう誘導される、請求項29 記載のニューロン。 32.ベクターが、感染多重度約10から約50でニューロンに適用される、請求項 20、24、26、または29記載の方法。
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