【発明の詳細な説明】
煙道ガス中のポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素の濃度を減少
させる方法
都市廃棄物若しくは有害廃棄物焼却プラント又は化学残留物、副生成物及び/
又はベントガス用の焼却プラントのような焼却プラントにおいて発生する煙道ガ
スが、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ビフ
ェニレン、ポリ塩化フェノール、ポリ塩化スチレン、ポリ塩化ベンゼン若しくは
ポリ塩化ナフタレンのようなポリハロゲン化芳香族化合物又はアセナフテン、ア
ントラセン、ベンゾピレン若しくはフェナントレンのような多核芳香族炭化水素
を少量含みうることが良く知られている。これらの化合物の毒性のために、煙道
ガス中のそれらの濃度を減少させるための多大な労力が費やされてきた。活性炭
への吸着、活性炭/石灰混合物への吸着、又は種々の触媒還元のような幾つかの
方法が周知である。残念ながら、これらの技術は全て費用がかかり、活性炭によ
る吸着は発火又は火がくすぶる危険を伴う。さらに、保守作業の際の汚染された
吸着剤及び開放形装置の取り扱い及び廃棄は特別な作業場事前措置を必要とする
。煙道ガスからダイオキシン及ぶフランを除去する別の方法がドイツ国特許出願
公開明細書第41 19 006号明細書に記載されている。この方法によると、煙道ガ
スをスクラビングして煙道ガスの酸性成分を除去する。パラフィン油がスクラビ
ング液に加えられる。第1段階でHF及びHClを除去し第2段階でSOXを除
去する2段法において、第2段階におけるスクラビング液が水酸化ナトリウム水
溶液のような塩基とパラフィンを含む。スクラビング液の水性相からパラフィン
油を分離して第2スクラビ
ング段階に再循環させることができる。ダイオキシン及びフランの十分な除去を
達成するためには多量のパラフィン油が必要である。パラフィン油がスクラビン
グ液の全量の1/8〜1/12を構成することが推奨されている。しかしながら
、達成される削減が常に十分であるとは限らない。ドイツ国特許出願公開明細書
第41 19 006号には、その実施例において、ダイオキシン及びフランの0.57ng TE
/Nm3であった初期濃度が0.16ng TE/Nm3に減少したことが記載されている。これ
は70%の削減に相当するが、達成された濃度は、幾つかの国の排出規制により要
求される限界を上回る。パラフィン油についてのもう1つの欠点は、より多量の
炭化水素の排出をもたらすであろうその比較的高い蒸気圧である。
ドイツ国特許発明明細書第41 09 991号は、アルミニウム廃棄物の溶融の際に
発生する煙道ガス中のフラン及びダイオキシンの削減に関する。この方法による
と、微粉砕された金属及び/又はそれらの酸化物、水酸化物及び/又はオキシ水
酸化物が、ハロゲン及び/又はハロカーボンをハロゲン化物に転化させるのに必
要な理論量を1〜10%上回る量で燃焼室に加えられる。この量は、ダイオキシン
及びフランの形成を完全に妨げるのに十分なものではない。煙道ガス中に残留す
る有害化合物は、煙道ガスに噴霧される不燃性油−水エマルジョンにより吸収さ
れる。純粋な油による吸収が可能であると述べられているが、熱いガスは油の発
火を引き起し得る。水に対する油の比は0.01:90である。煙道ガスの浄化後、エ
マルジョンを水リッチ相と有害化合物を含む油リッチ相に分離させる。水リッチ
相を再循環させ、油リッチ相を燃焼させる。ドイツ国特許発明明細書第41 09 99
1号には、この方法においてどのような種類の油が有用であるかは教示されてい
ない。残念ながら、ドイツ国特許発明明細書第41 09 991号に記載されている方
法は非常に複雑である。こ
の方法は焼却系の別々の段階で2種の異なる種類の化合物が加えられることを必
要とする。さらに、微粉砕された金属及び/又はそれらの酸化物の燃焼室内への
添加はダストの形成をもたらすため、洗浄系により煙道ガスからそのダストを除
去する必要がある。これは、気体及び液体を焼却するための実質的に無塵の方法
において望ましくない。
周知の方法の上記欠点を鑑みて、煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン
若しくはポリ塩化ジベンゾフランのようなポリハロゲン化芳香族化合物又は多核
芳香族炭化水素の濃度を効率的に減少させる新規な方法を求める強い要求が依然
として存在する。本発明の好ましい目的は、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン(P
CDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の濃度を0.1ng ITE/Nm3以下
に減少させることができる方法を提供することである。本発明のもう1つの好ま
しい目的は、比較的安価で、かつ単純な装置を利用する方法を提供することであ
る。本発明のさらに好ましい目的は、PCDD及びPCDFと同様な揮発性を有
する他のポリハロゲン化芳香族化合物及び多核芳香族炭化水素をPCDD及びP
CDFの除去効率に匹敵する除去効率域で削減することである。
本発明は、煙道ガス中のポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族化合物の
濃度を減少させる方法であって、煙道ガスを、油及び場合に応じて水を含むスク
ラビング液に接触させる方法を提供する。前記油と水を合わせた量は前記スクラ
ビング液の全重量の少なくとも60%を構成し、前記スクラビング液中に含まれる
油の少なくとも50重量%は植物性油である。
本明細書で用いる「植物性油」なる用語は、天然のままの形態又は化学変性さ
れた形態、例えば水素化、部分水素化若しくはエポキシ化された形態にある植物
性油を包含する。化学変性された植物性
油の例には、水素化又は部分水素化されたカノラ油若しくはナタネ油又はエポキ
シ化ダイズ油がある。
本明細書で用いる「煙道ガスをスクラビング液に接触させる」なる表現は、1
つ以上のスクラビング段階において煙道ガスを上記スクラビング液の1種以上に
順次接触させることを包含する。
上記方法は煙道ガスからポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素
を除去することに有効であることが分かった。驚くベきことに、上記方法は、煙
道ガスからポリ塩化ジベンゾダイオキシン又はポリ塩化ジベンゾフランを除去す
ることに特に有効であることが分かった。驚くべきことに、これらの化合物の濃
度を、非常に低レベル、通常は0.1ng ITE/Nm3以下、多くの場合に0.06ng ITE/Nm3
以下にまで、ある場合には0.02ng ITE/Nm3以下にまで減少させることができる
。
スクラビング液を交換することなく測定可能な効率の低下を生じずに大規模に
数カ月の期間にわたって上記方法を連続的に実施できることも分かった。さらに
、本発明の方法は、ほとんど保守作業を必要としない閉鎖系で実施することがで
きる。従って、汚染物質との接触の危険性が著しく減少する。
ナタネ油のような植物性油の使用は種々の他の目的に対して提案されてきたが
、煙道ガスからポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素を除去する
ことに関してはいまだ提案はない。
米国特許第4,844,721号明細書には、臭気があり及び/又は刺激性がある汚染
物質、特にスチレン、アクロレイン又は下水臭気を含む汚染された空気の浄化が
提案されている。汚染された空気は、平均ヨウ素価が少なくとも90である乾性又
は半乾性の植物性又は動物性油を含むスクラビング液に接触される。使用の状況
に応じて、スクラビング液の0.001〜100重量%が油でなくてはならない。化学
操作にとって好ましい割合は1〜10%であると述べられており、有機溶剤に対し
ては10〜50%、有機廃棄物に対しては0.01〜6%、焼却プロセス排出物に対して
は0.001〜2%であると述べられている。吸収されたスチレン物質は紫外線によ
るスチレンの重合によって油からストリップされる。水分は層状化により油から
分離され、その際に重合したスチレン及び未重合スチレンの大部分を重力により
水中に沈降し沈殿させる。
米国特許第5,198,000号明細書には、沸点が170℃以下の揮発性有機化合物をガ
ス流から除去する方法が開示されている。ガス流中の揮発性有機化合物の濃度は
概して10〜10,000体積百万分率である。ガス流を石油誘導体、植物性油又は合成
油、好ましくはモーター油、鉱油又はトウモロコシ油に接触させる。油が揮発性
有機化合物で飽和したならば、揮発性有機化合物は油から分離され、その揮発性
有機化合物は集めされ、分離された油は回収される。
ドイツ国特許出願公開明細書第42 03 385号には、種々の植物性油を未変性の
形態、乳化された形態又は変性された形態で洗浄用の洗浄液として使用すること
が開示されている。煙道ガスからダイオキシン及びフランを除去する別の方法が
ドイツ国特許出願公開明細書第41 19 006号に記載されている。この方法による
と、煙道ガスをスクラビングして煙道ガスの酸性成分を除去する。パラフィン油
がスクラビング液に添加される。第1段階でHF及びHClを除去し第2段階で
SOxを除去する2段法において、第2段階におけるスクラビング液は水酸化ナ
トリウムのような塩基とパラフィン油を含む。スクラビング液の水性相からパラ
フィン油を分離して第2スクラビング段階に再循環させることができる。ダイオ
キシン及びフランの十分な除去を達成するためには多量のパラフィン油が必要で
ある。パラフィン油がスクラビング液の全量の1/8〜1/12を
構成することが推奨されている。しかしながら、達成される削減が常に十分であ
るとは限らない。ドイツ国特許出願公開明細書第41 19 006号には、その実施例
において、ダイオキシン及びフランの0.57ng TE/Nm3であった初期濃度が0.16ng
TE/Nm3に減少したことが記載されている。これは70%の削減に相当するが、達成
された濃度は、幾つかの国の排出規制により要求される限界を上回る。パラフィ
ン油についてのもう1つの欠点は、より多量の炭化水素の排出をもたらすであろ
うその比較的高い蒸気圧である。
ドイツ国特許発明明細書第41 09 991号は、アルミニウム廃棄物の溶融の際に
発生する煙道ガス中のフラン及びダイオキシンの削減に関する。この方法による
と、微粉砕された金属及び/又はそれらの酸化物、水酸化物及び/又はオキシ水
酸化物が、ハロゲン及び/又はハロカーボンをハロゲン化物に転化させるのに必
要な理論量を1〜10%上回る量で燃焼室に加えられる。この量は、ダイオキシン
及びフランの形成を完全に妨げるのに十分なものではない。煙道ガス中に残留す
る有害化合物は、煙道ガスに噴霧される不燃性油−水エマルジョンにより吸収さ
れる。純粋な油による吸収が可能であると述べられているが、熱いガスは油の発
火を引き起し得る。水に対する油の比は0.01:90である。煙道ガスの浄化後、エ
マルジョンを水リッチ相と有害化合物を含む油リッチ相に分離させる。水リッチ
相を再循環させ、油リッチ相を燃焼させる。ドイツ国特許発明明細書第41 09 99
1号には、この方法においてどのような種類の油が有用であるかは教示されてい
ない。残念ながら、ドイツ国特許発明明細書第41 09 991号に記載されている方
法は非常に複雑である。この方法は焼却系の別々の段階で2種の異なる種類の化
合物が加えられることを必要とする。さらに、微粉砕された金属及び/又はそれ
らの酸化物の燃焼室内への添加はダストの形成をもたらすため、洗
浄系により煙道ガスからそのダストを除去する必要がある。これは、気体及び液
体を焼却するための実質的に無塵の方法において望ましくない。
周知の方法の上記欠点を鑑みて、煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン
若しくはポリ塩化ジベンゾフランのようなポリハロゲン化芳香族化合物又は多核
芳香族炭化水素の濃度を効率的に減少させる新規な方法を求める強い要求が依然
として存在する。本発明の好ましい目的は、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン(P
CDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の濃度を0.1ng ITE/Nm3以下
に減少させることができる方法を提供することである。本発明のもう1つの好ま
しい目的は、比較的安価で、かつ単純な装置を利用する方法を提供することであ
る。本発明のさらに好ましい目的は、PCDD及びPCDFと同様な揮発性を有
する他のポリハロゲン化芳香族化合物及び多核芳香族炭化水素をPCDD及びP
CDFの除去効率に匹敵する除去効率域で削減することである。
本発明は、煙道ガス中のポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族化合物の
濃度を減少させる方法であって、煙道ガスを、油及び場合に応じて水を含むスク
ラビング液に接触させる方法を提供する。前記油及び水を合わせた量は前記スク
ラビング液の全重量の少なくとも60%を構成し、前記スクラビング液中に含まれ
る油の少なくとも50重量%は植物性油である。
本明細書で用いる「植物性油」なる用語は、天然のままの形態又は化学変性さ
れた形態、例えば水素化、部分水素化若しくはエポキシ化された形態にある植物
性油を包含する。化学変性された植物性油の例には、水素化又は部分水素化され
たカノラ油若しくはナタネ油又はエポキシ化ダイズ油がある。
本明細書で用いる「煙道ガスをスクラビング液に接触させる」な
る表現は、1つ以上のスクラビング段階において煙道ガスを上記スクラビング液
の1種以上に順次接触させることを包含する。
上記方法は煙道ガスからポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素
を除去することに有効であることが分かった。驚くべきことに、上記方法は、煙
道ガスからポリ塩化ジベンゾダイオキシン又はポリ塩化ジベンゾフランを除去す
ることに特に有効であることが分かった。驚くべきことに、これらの化合物の濃
度を、非常に低レベル、通常は0.1ng ITE/Nm3以下、多くの場合に0.06ng ITE/Nm3
以下にまで、ある場合には0.02ng ITE/Nm3以下にまで減少させることができる
。
スクラビング液を交換することなく測定可能な効率の低下を生じずに大規模に
数カ月の期間にわたって上記方法を連続的に実施できることも分かった。さらに
、本発明の方法は、ほとんど保守作業を必要としない閉鎖系で実施することがで
きる。従って、汚染物質との接触の危険性が著しく減少する。
ナタネ油のような植物性油の使用は種々の他の目的に対して提案されてきたが
、煙道ガスからポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素を除去する
ことに関してはいまだ提案はない。
米国特許第4,844,721号明細書には、臭気があり及び/又は刺激性がある汚染
物質、特にスチレン、アクロレイン又は下水臭気を含む汚染された空気の浄化が
提案されている。汚染された空気は、平均ヨウ素価が少なくとも90である乾性又
は半乾性の植物性又は動物性油を含むスクラビング液に接触される。使用の状況
に応じて、スクラビング液の0.001〜100重量%が油でなくてはならない。化学操
作にとって好ましい割合は1〜10%であると述べられており、有機溶剤に対して
は10〜50%、有機廃棄物に対しては0.01〜6%、焼却プロセス排出物に対しては
0.001〜2%であると述べられている
。吸収されたスチレン物質は紫外線によるスチレンの重合によって油からストリ
ップされる。水分は層状化により油から分離され、その際に重合したスチレン及
び未重合スチレンの大部分を重力により水中に沈降し沈殿させる。
米国特許第5,198,000号明細書には、沸点が170℃以下の揮発性有機化合物をガ
ス流から除去する方法が開示されている。ガス流中の揮発性有機化合物の濃度は
概して10〜10,000体積百万分率である。ガス流を石油誘導体、植物性油又は合成
油、好ましくはモーター油、鉱油又はトウモロコシ油に接触させる。油が揮発性
有機化合物で飽和したならば、揮発性有機化合物は油から分離され、その揮発性
有機化合物は集めされ、分離された油は回収される。
ドイツ国特許出願公開明細書第42 03 385号には、未変性の形態、乳化された
形態又は変性された形態にある種々の植物性油を、溶剤蒸気、臭気のある物質又
は他の有害ガスを含むガス混合物を浄化するための洗浄液として使用することが
開示されている。油は、少なくとも50体積%の油を含む水中油形エマルジョンの
形態で使用される。洗浄液の吸収能を高めるために、このドイツ国特許出願公開
明細書には洗浄液中に、植物性油の全重量を基準にして、3〜6個の炭素原子を
含む脂肪族ジカルボン酸と1〜5個の炭素原子を含むアルコールとのエステルを
1〜8重量%及び/又はプロピレングリコールを1〜5重量%及び/又はグリセ
ロールエステルを2〜10重量%含めることが推奨されている。その吸収プロセス
は、(i)ガス混合物を洗浄液中に導くステップ、(ii)上昇ガス流に乱流を生じ
させてそれに洗浄液を噴霧し、ガス流を液滴分離器に通すステップ、(iii)ガ
ス流を過マンガン酸塩顆粒上に導いて残留汚染物を除去するステップ、及び(iv)
汚染物を含む洗浄液を(不)連続的に容器から取り出し、続いて蒸留により汚染
物を回収するステップを含む。
浄化プロセスは好ましくは15℃〜30℃で行われる。このドイツ国特許出願公開明
細書では、提案されている方法によってどのような化合物がどの程度除去できる
かについては言及されていない。
ヨーロッパ特許出願公開明細書第0 652 038号には、排気ガスから有機化合物
を除去する方法、特に排気ガスの臭気を減少させる方法が開示されている。この
方法は、第1段階で排気ガスをシリコーンオイル油のような高沸点油に接触させ
る2段階で実施される。有機化合物により汚染された高沸点油は再生される。再
生段階中に有機化合物は濃縮され、溶剤容器内に集められる。第1段階のベント
流は、第2の油、例えば植物性油、植物性油誘導体、炭化水素、高級アルコール
又はエステルに接触される。しかしながら、このヨーロッパ特許出願公開明細書
には、提案されている方法によりガスからどの化合物が除去されるかまたは化合
物がどの程度除去されるかについての開示がない。さらに、この方法は、煙道ガ
ス中のポリハロゲン化芳香族化合物の濃度を減少させることに対してあまり適切
でない。
上掲の参考文献の教示に基づいては、煙道ガス中のポリハロゲン化芳香族化合
物又は多核芳香族炭化水素の濃度を著しく減少できること、特に、油及び場合に
応じて水を含むスクラビング液であって当該油及び水を合わせた量がスクラビン
グ液の全重量の少なくとも60%を構成し、スクラビング液中に含まれる油の少な
くとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%が植物性油であるスクラビング
液に煙道ガスを接触させた場合にポリ塩化ジベンゾダイオキシン及びポリ塩化ジ
ベンゾフランの濃度を非常に低いレベルまで減少できることは予測できない。前
記油及び水を合わせた量はスクラビング液の全重量の好ましくは少なくとも80%
、より好ましくは少なくとも90%を構成する。
煙道ガス中のポリハロゲン化芳香族化合物は少なくとも2個のハロゲン、典型
的には4〜8個のハロゲンを含み、ある場合においては8個を超えるハロゲンを
含む。ハロゲンは例えば臭素又は塩素である。本発明は、ポリ塩化芳香族化合物
の濃度を減少させることに特に適する。ポリ塩化芳香族化合物の例には、ポリ塩
化ビフェニレン(PCB)、ポリ塩化ベンゼン、ポリ塩化フェノール、ポリ塩化
ナフタレン、ポリ塩化スチレン、例えばオクタクロロスチレン、特にポリ塩化ジ
ベンゾフラン(PCDF)及びポリ塩化ジベンゾダイオキシン(PCDD)、又
はこれらの混合物がある。
多核芳香族炭化水素の例には、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン
、ベンゾペリレン、ベンゾピレン、ベンゾフルオランテン、ベンゾアントラセン
、ナフタレン、クリセン、ピレン、ペリレン、フェナントレン、フルオレン、ジ
ベンゾアントラセン、ジベンゾピレン、ジベンゾアクリジン、ジベンゾカルバゾ
ール及びインデノピレンがある。
煙道ガスは、固形廃棄物の焼却から生じたもの、例えば都市廃棄物焼却プラン
ト、有害廃棄物焼却プラント又は化学残留物、副生成物及び/又はベントガス用
の焼却プラントから生じたものであってよい。好ましくは、煙道ガスは液体及び
/又は気体の焼却から生じたもの、例えば化学生産過程の液体及び/又は気体状
の副生成物又は残留物の焼却から生じたものである。
焼却炉から排出される煙道ガスを本発明の方法に従って処理する前に1つ以上
の予備洗浄工程にかけることが好ましい。
本発明の方法に先立って、煙道ガスは好ましくは40℃〜95℃、より好ましくは
45℃〜85℃、最も好ましくは50℃〜75℃の温度に急冷される。好ましい急冷剤は
水であるか又は急冷水中への気体状酸性化合物の吸収により生じる粗酸(raw ac
id)である。急冷方法は当
該技術分野で周知である。周知の方法で熱を回収することができ、そして例えば
ストリーム発生に使用することができる。
煙道ガスが多量の気体状の酸、例えば気体状の塩酸を含む場合には、煙道ガス
を酸吸収体に通過させ、その吸収体内で煙道ガスを水に接触させて酸濃度を減少
させることが好ましい。酸吸収体は当該技術分野で周知である。
本発明の方法において最適な結果を達成するために、本発明の方法に従って処
理される煙道ガス中のダストの量は好ましくは50mg/Nm3以下、より好ましくは10
mg/Nm3以下、最も好ましくは3mg/Nm3以下である。ダストのレベルがこれらの量
よりも多いと、煙道ガス中のダストの濃度を本発明の方法に先立って減少させる
ことが好ましい。ダストの減少方法は当該技術分野で周知であり、例えば静電フ
ィルター、バグハウスフィルター(bag-house filter)又はサイクロンなどを用
いる。
本発明の方法に先立って、場合に応じて予備洗浄された煙道ガスは概して0.1
〜50ng ITE/Nm3、典型的には0.1〜10ng ITE/Nm3、多くの場合に0.2〜3ng ITE/N
m3のポリ塩化ジベンゾダイオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(
PCDF)含有率を有する。「ITE/Nm3」なる用語は、NATO/CCMS[北
大西洋条約機構の現代社会の難題に関する委員会(North Atlantic Treaty Orga
nization,Committee on the Challenges of Modern Society)](1988)のダ
イオキシン及び関連化合物の複雑な混合物の危険評価に関する国際毒性当量係数
(I-TEF)法(International toxicity equivalency factor(I-TEF)method of
risk assessment for complex mixtures of dioxins and related compounds)
;Report No.176,Brussels;North Atlantic Treaty Organizationに規定され
ているような国際毒性当量毎標準立方メートル(Internationa
l Tox equivalent per norm cubic meter)(273K,1013mbar)を意味する。
本発明の方法に先立って、煙道ガス中に他のポリハロゲン化芳香族化合物及び
/又は多核芳香族炭化水素が存在する場合には、PCDD及びPCDF以外のポ
リハロゲン化芳香族化合物の量は概して0.01μg/m3〜100μg/m3、典型的には0.1
μg/m3〜10μg/m3、殆どの場合に0.5μg/m3〜5μg/m3であり、及び/又は多核
芳香族炭化水素の量は0.01μg/m3〜50μg/m3、典型的には0.1μg/m3〜5μg/m3
、殆どの場合に0.1μg/m3〜1μg/m3である。
水、油及び以下で示すような及び任意の添加剤に加えて、本発明の方法におい
て使用されるスクラビング液は、そのスクラビング液の有効性をさらに高めるた
めにそのスクラビング液の全量重を基準にして30%以下の活性炭を含んでもよい
。活性炭が存在する場合に、活性炭の好ましい量は、スクラビング液(活性炭を
含む)の全重量を基準にして0.01〜30%、より好ましくは0.1〜10%、最も好ま
しくは0.5〜5%である。
本発明の第1の好ましい態様によると、場合に応じて予備洗浄された煙道ガス
を、60〜99.99重量%、好ましくは90〜99.98重量%の水と40〜0.1重量%、好ま
しくは10〜0.02重量%の油を含むスクラビング液Iに接触させる。水及び油に加
えて、水及び油の全重量を基準にしてスクラビング液は、1種以上の塩基性化合
物、無機塩、次亜塩素酸塩破壊性化合物及び/又は乳化剤を含む前述の通りの活
性炭のような任意の添加剤を含んでよい。好ましい無機塩は塩化ナトリウムであ
る。好ましい次亜塩素酸塩破壊性化合物は過酸化水素、亜硫酸水素又は亜硫酸塩
である。煙道ガスが、酸吸収体により完全に除去されなかった化合物であって、
塩基により吸収又は中和することができる化合物、例えば塩素又は酸性成分(例
えばHCl
)を残留量含む場合には、塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウ
ムのような無機塩基の存在が特に適する。塩基が存在する場合には、その量は、
スクラビング液IのpHが7.5〜9.5、より好ましくは8〜9であるのに十分な量
であることが好ましい。しかしながら、水と油の合計量はスクラビング液Iの全
重量を基準にして少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは
少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%である。スクラビング液Iの油
部分中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン及びポリ塩化ジベンゾフランの全濃度が
少なくとも0.1μg ITE/リットル、より好ましくは少なくとも1μg ITE/リット
ル、最も好ましくは少なくとも10μg ITE/リットルに達するまで、煙道ガス中の
ポリ塩化ジベンゾダイオキシン若しくはポリ塩化ジベンゾフランの濃度又はこれ
らの両方の濃度を減少させるためにスクラビング液Iをスクラビング系内で循環
させることが好ましい。
本発明の第2の好ましい態様によると、場合に応じて予備洗浄された煙道ガス
を、スクラビング液IIの全重量を基準にして少なくとも60%、好ましくは少なく
とも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の油
を含むスクラビング液IIに接触させる。このスクラビング液IIは水を含んでもよ
い。スクラビング液IIの含水率は、スクラビング液IIの全重量を基準にして好ま
しくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。ス
クラビング液IIは上記量の活性炭を含んでもよい。スクラビング液II中に含まれ
てもよい他の任意の添加剤は、例えばアルキル化ジフェニルアミン又はフェノー
ル系酸化防止剤のような酸化防止剤、又は金属を失活させる添加剤、例えばトリ
アゾール誘導体である。他の添加剤には、C1〜C10アルキル鎖を有するフタル
酸ジアルキルエステル及び/又はC1〜C4アルキル鎖を有するポ
リエチレングリコールジアルキルエーテルがある。しかしながら、水、活性炭及
び他の任意の添加剤の合計量は、スクラビング液IIの全重量を基準にして40%以
下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下で
あるべきである。最も好ましくは、スクラビング液IIは油又は異なる油同士の混
合物である。スクラビング液II中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン及びポリ塩化
ジベンゾフランの全濃度が少なくとも1μg ITE/リットル、より好ましくは少な
くとも10μg ITE/リットルに達するまで、煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオ
キシン若しくはポリ塩化ジベンゾフランの濃度又はこれらの両方の濃度を減少さ
せるためにスクラビング液IIをスクラビング系内で循環させることが好ましい。
スクラビング液中に含まれている油の少なくとも50重量%、好ましくは少なく
とも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは実質的に全
ての量が、その天然形又は化学的に変性された形態にある植物性油、例えば水素
化若しくは部分水素化されたカノラ油若しくはナタネ油又はエポキシ化大豆油で
ある。
本明細書で用いる「油」及び「植物性油」なる用語は、異なる天然及び/又は
化学的に変性された(植物性)油同士の混合物も包含する。
有用な植物性油は、例えばナタネ油、オリーブ油、オリーブ核油ヒマシ油、ア
ーモンド油、ピーナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ビート油、ゴマ油、ブナ油、ト
ウモロコシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、綿実油、穀物油、ケシ油、アサ油、クル
ミ油若しくは木材から採る油又はこれらの混合物である。最も好ましい油はナタ
ネ油又はカノラ油である。1種以上の植物性油と混合してよい他の油は、例えば
純粋な若しくは使用済みの鉱油、例えばパラフィン油、又は動物性油、例えばイ
ワシ油、サメ油若しくはニシン油がある。最も好まし
い油はナタネ油、カノラ油、ヒマワリ油又はエポキシ化ダイズ油である。本発明
の方法の実施化において、充填式ガス洗浄塔、噴霧塔又は気泡分離器内でスクラ
ビング液に煙道ガスを接触させることが好ましい。スクラビング液の全量が最大
可能煙道ガス流の標準立方メートル(Nm3)当たり好ましくは0.1〜5リットル
、より好ましくは0.3〜2リットルで充填式洗浄塔が使用されることがより好ま
しい。煙道ガス及びスクラビング液が向流的に流れ、スクラビング液の全量が最
大可能煙道ガス流のNm3当たり0.3〜2リットルで充填式洗浄塔が使用されるこ
とが最も好ましい。
本発明の方法は、1つ以上のスクラビング段階を続けて実施できるものである
。ポリハロゲン化芳香族化合物又は多核芳香族炭化水素を1段階で所望のレベル
まで減少させることができない場合に、2つ以上、好ましくは2つのスクラビン
グ段階を続けて実施することが特に都合良い。異なる種類のスクラビング液、例
えばタイプI又はIIのスクラビング液を別々の段階で使用することができる、ス
クラビング液IIを最終段階で使用することが好ましい。
煙道ガス温度は好ましくは40℃〜95℃、より好ましくは45℃〜85℃、最も好ま
しくは50℃〜75℃である。スクラビング液の温度は概して煙道ガスの温度程度の
高さであり、好ましくは煙道ガスの温度よりもわずかに高い。スクラビング液I
の好ましい温度は、煙道ガスの温度よりも30℃以下、より好ましくは15℃以下、
最も好ましくは5℃以下高い。スクラビング液IIの好ましい温度は煙道ガスの温
度よりも30℃以下、より好ましくは5℃〜20℃、最も好ましくは10℃〜20℃高い
。煙道ガスとスクラビング液との接触時間は概して1秒間以上、好ましくは3〜
20秒間、より好ましくは5〜10秒間である。充填式洗浄塔内で煙道ガスをスクラ
ビング液に接触させる本発明の好ましい態様において、スクラビング液を洗浄塔
の排水溜めと
充填セクションの間を再循環させることが好ましい。
スクラビング液は、粘度又は粒子/ダスト含有率又はポリハロゲン化芳香族化
合物又は多核芳香族炭化水素の含有量のようなその物理的状態が十分な除去能に
とって望ましくないレベルに達した後に概して処分される。スクラビング液は焼
却により処分されることが好ましく、本発明の方法に従って処理された煙道ガス
を排出する焼却炉と同一の焼却炉内で処分されることがより好ましい。処分は、
充填されたスクラビング液の小さなサイドストリームの回分式又は連続式除去に
より達成することができる。このサイドストリームの処分は、1時間当たり当該
プロセスにおいて存在するスクラビング液Iの全量の0.05〜1%の割合で所定量
のスクラビング液Iを連続除去するか又は1時間当たり当該プロセスにおいて存
在するスクラビング液IIの全量の0.01〜0.1%の割合で所定量のスクラビング液I
Iを連続除去することにより好ましくは実施される。スクラビング液が回分式で
交換される場合には、スクラビング液の全量の好ましくは30〜90%、より好まし
くは50〜70%が新しいものと交換される。
煙道ガス中のPCDD及びPDCF以外の多核芳香族炭化水素又はポリハロゲ
ン化芳香族化合物の濃度は概して本発明の方法において少なくとも20%、多くの
場合に少なくとも40%削減される。
驚くべきことに、煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン及び/又はポリ
塩化ジベンゾフランの濃度は、本発明の方法に係る煙道ガスとスクラビング液と
の接触に帰因して、概して90%以上、往々にして95%以上、多くの場合に98%以
上削減されることが分かった。ポリ塩化ジベンゾダイオキシン及び/又はポリ塩
化ジベンゾフランと同様な揮発性を有する他の多核芳香族炭化水素又はポリハロ
ゲン化芳香族化合物に対して同様な削減率が予測される。さらに驚
くべきことに、示された削減率を1段階で達成できることも分かった。
本発明の方法を2以上の段階で実施することによって及び/又はスクラビング
液が汚染物質を多量に含有しないように使用したスクラビング液の少なくとも一
部を頻繁に交換することによって、煙道ガス中の多核芳香族炭化水素及びポリハ
ロゲン化芳香族化合物の濃度をさらに減少させることができる。
本発明の方法を実施した後、煙道ガスは概して0.1ng ITE/Nm3以下、典型的に
は0.06ng ITE/Nm3以下、最適条件下では0.02ng ITE/Nm3以下のポリ塩化ジベンゾ
ダイオキシン(PCDD)及びジベンゾフラン(PCDF)含有率を有する。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例は本発明の
範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。特に断らない限り、全て
の部及び百分率は重量で表されている。
実施例1
有害廃棄物回転式キルン焼却炉の予備洗浄された煙道ガスを上記のようなスク
ラビング液IIにより処理した。この焼却炉は、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン及
びジベンゾフランの排出を除き、ドイツ国廃棄物焼却管理局(17.排出防止に関
する連邦管理局(federal directive for emission protection);1990年12月
)の規則を遵守する30,000〜40,000Nm3/時の煙道ガスを排出する。予備洗浄さ
れた煙道ガスは典型的には、5mg/Nm3未満のダスト及び5mg/Nm3未満のHClを
含んでいたが、PCDD及びPCDFは0.1〜0.5ng ITE/Nm3であった。煙道ガス
を水蒸気で飽和すると、その温度は55〜60℃であった。100〜150Nm3/時のサイ
ドストリームを、ステンレススチールリングが詰められた高さ2m及び直径250m
mの充填式洗浄塔に供給した。パッキンの高さは約1.3mであった。洗浄塔下
方の油溜めは750〜800リットルの純粋な未変性ナタネ油を含んでいた。それをメ
ンブレンポンプにより100〜150リットル/時の割合でパッキンの上部にポンプ輸
送し、油溜めに再循環させた。油及びガス流を向流にした。油溜めに取り付けら
れた電気加熱装置により油を70〜75℃の温度に保った。ガス管を断熱し、凝縮を
防ぐために電気的に加熱した。油管を断熱し、油が洗浄塔に入る前に油の温度が
下降するのを防いだ。焼却炉の煙突のガス中の典型的なダスト量と同じ量のダス
ト量を油洗浄塔に与えるために、ガス管から洗浄塔へのガス流速度が焼却炉の煙
突内でのガス流速度と等しくなるようにガス管から洗浄塔へのガス流速度を調節
した。PCDD及びPCDF試料捕集のための最も一般的に用いられているドイ
ツ国法(Verein Deutscher Ingenieure,VDI 3499/2;1993年3月草案)に従って
2つの同じ装置を使用することによりPCDD及びPCDFのサンプリングを常
に行った。洗浄塔の前後で煙道ガス試料を同時に採取した。
スクラビング液IIを全体的に閉じた回路で循環させながら上記のような運転パ
ラメーターを用いて洗浄塔を3か月間連続的に運転した。4日間の運転後、最初
のPCDD及びPCDF試料採取を2時間行った。この採取に続く70日間以内に
4回のさらなる試料採取を行った。洗浄塔前後でのPCDD及びPCDFのIT
E値及び総体減少率を次の表に示す。
実験番号4は油の循環の遮断中に採取した試料である。油で濡らしたパッキン
を用いたが、油の流れを3時間なくして煙道ガスを洗浄塔に通した。実験番号5
は、煙道ガスのダスト量を通常よりも5〜10倍高くした時間の間に採取した試料
である。ダスト濃度は20〜30mg/Nm3の範囲内にあった。
93日間の運転後に洗浄塔を停止した。この全期間の間にナタネ油の(40℃での
)粘度は35mPasから52mPasに変化し、ヨウ素価は98から88に減少した。
実施例2
実施例1に記載した通りの洗浄塔に合わせた溜めにナタネ油の水中エマルジョ
ンを充填した。水中の油濃度は約1000百万分率であった。試料採取の手順を含む
他の全ての運転条件及びパラメーターは実施例1に記載の通りのままとした。次
の表により達成された結果を示す。
実験番号3は、煙道ガスのダスト量を通常よりも5〜10倍高くした時間の間に
採取した試料である。ダスト濃度は20〜30mg/Nm3の範囲内にあった。
実施例3
実施例1に記載した通りの洗浄塔に合わせた溜めに、ヨウ素価が82〜90及びリ
ノレン酸含有率が1%未満である部分水素化されたナタネ油の水中エマルジョン
を充填した。水中の油濃度は約3500百万
分率であった。試料採取の手順を含む他の全ての運転条件及びパラメーターは実
施例1に記載の通りのままとした。次の表により達成された結果を示す。
実施例4
実施例1に記載した通りの洗浄塔に合わせた溜めに、エポキシ化ダイズ油の水
中エマルジョンを充填した。水中の油濃度は約3000百万分率であった。試料採取
の手順を含む他の全ての運転条件及びパラメーターは実施例1に記載の通りのま
まとした。次の表により達成された結果を示す。実施例5
塩素化された液体副生成物に対して焼却炉から排出された煙道ガスとプロセス
ベントガスをまず酸吸収塔に送り、次にスクラビング塔と内で処理した。煙道ガ
ス流は5,000〜10,000Nm3/時の範囲内で変化した。スクラビング塔は12.3メート
ルの高さ、2.5メートルの直径、4.5メートルのパッキン高さを有していた。パッ
キンの容
積は約22立方メートルであり、直径2インチのパッキンリングを使用した。洗浄
液は2.3%のNaOH、2.3%のNaCl、94〜95%の水及び炭酸ナトリウム又は
炭酸水素ナトリウムのような数種の他の有機成分を含んでいた。洗浄液を40〜70
m3/時で循環させた。6〜8m3/時の洗浄液を連続的に排出すると共に、洗浄液
の全容量を一定に保つために新しいものを連続的に入れ変えた。本発明に係る実
験として、400〜600百万分率のナタネ油を定常的に洗浄液に添加した。ナタネ油
の添加前のPCDD及びPCDF排出量は3.93ng ITE/Nm3であった。洗浄液の油
の添加を開始した。その後、2つの試料(片方は20時間、もう一方は24時間)を
2時間にわたって採取した。PCDD及びPCDF排出量は0.070及び0.052ng I
TE/Nm3であった。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年6月12日(1998.6.12)
【補正内容】
請求の範囲
1.煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン又はポリ塩化ジベンゾフラン
の濃度を減少させる方法であって、油又は油/水混合物を含むスクラビング液に
煙道ガスを接触させ、前記油と水とを合わせた量が前記スクラビング液の全重量
の少なくとも60%を構成し、前記スクラビング液中に含まれる油の少なくとも50
重量%が植物性油である方法。
2.水と油の全重量を基準にして90〜99.99重量%の水と10〜0.01重量%の油
との混合物を含むスクラビング液に煙道ガスを接触させる請求項1記載の方法。
3.スクラビング液の全重量を基準にして少なくとも60%の油を含むスクラビ
ング液に煙道ガスを接触させる請求項1記載の方法。
4.スクラビング液が、活性炭を含めたスクラビング液の全重量を基準にして
30%以下の活性炭を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
5.スクラビング液が90〜99.98重量%の水と10〜0.02重量%の油との混合物
を含み、前記水と油とを合わせた量がスクラビング液の全重量の少なくとも80%
を構成する請求項2記載の方法。
6.スクラビング液中に含まれる油の少なくとも75重量%が植物性油である請
求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
7.植物性油がナタネ油、カノラ油、ヒマワリ油又はエポキシ化ダイズ油であ
る請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
8.煙道ガスを前記スクラビング液に接触させる際の煙道ガス中のダスト濃度
が50mg/Nm3以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
9.煙道ガスの温度が40℃〜95℃であり、前記スクラビング液の
温度が前記煙道ガスの温度よりも30℃以下高い請求項1〜8のいずれか1項に記
載の方法。
10.煙道ガス中のポリ塩化ジベンゾダイオキシン又はポリ塩化ジベンゾフラン
の濃度が少なくとも90%削減される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
11.煙道ガスをスクラビング液に接触させた後にそのスクラビング液の少なく
とも一部が焼却される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
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フロントページの続き
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