【発明の詳細な説明】
BZ83株の結合価を有する髄膜炎菌ワクチン
本発明の主題は、ET−5複合体のナイセリア・メニンジティディス(Neisse
ria meningitidis)株グループBZ83のヒトトランスフェリン受容体(HTR
)のTbpB(Tbp2)サブユニットを含有してなる、髄膜炎菌感染症治療用
または予防用の新規医薬組成物である。
一般に、髄膜炎は、ウイルス起源または細菌起源のいずれかである。主な原因
細菌は、ナイセリア・メニンジティディスおよびヘモフィルス・インフルエンゼ
(Haemophilus influenzae)であり、これらは、各々、細菌性髄膜炎のケースの
約40%および約50%に関係している。
フランスでは、年間約600〜800件のナイセリア・メニンジティディス髄
膜炎が記録されている。アメリカ合衆国では、この件数は、年間約2500〜3
000件にのぼる。
ナイセリア・メニンジティディス種は、莢膜多糖の性質に従って血清グループ
に細別される。12種類の血清グループが存在するが、髄膜炎のケースの90%
は、3種類の血清グループ:A、BおよびCが原因である。
ナイセリア・メニンジティディス血清グループAおよびCが原因である髄膜炎
を予防するために、莢膜多糖をベースとした有効なワクチンがある。これらの多
糖は、それ自体では、2歳の子供では免疫原性を全く示さず、免疫記憶を誘発し
ない。しかしながら、これらの欠点は、これらの多糖を担体タンパク質にコンジ
ュゲートさせることにより回避できる。
対照的に、ナイセリア・メニンジティディス、グループBの多糖は、コンジュ
ゲートした形であるか否かに関係なく、ヒトにおいて免疫原性を全く示さない。
かくして、多糖類をベースとしたワクチン以外の、特にナイセリア・メニンジテ
ィディス血清グループBにより誘発される髄膜炎に対するワクチンの探究が非常
に望まれている。
この目的で、既に、ナイセリア・メニンジティディスの外膜の種々のタンパク
質が提案されている。この点で、ヒトトランスフェリンに関する膜受容体に特別
な注意が向けられた。
一般に、大多数の細菌は、それらの増殖のために鉄を必要とし、該細菌は、こ
の金属を獲得するための特異的な系を発生させた。遊離形の鉄の量は、ヒトにお
いてごくわずか(10-18M程度)であり、いずれにしても細菌を増殖させるの
に不充分であるので、特に、ヒトの病原体であるナイセリア・メニンジティディ
スに関して、鉄は、トランスフェリンおよびラクトフェリンなどのヒト鉄輸送タ
ンパク質からのみ摂取される。
かくして、ナイセリア・メニンジティディスは、ヒトトランスフェリンに対す
る受容体およびヒトラクトフェリンに対する受容体を有しており、これにより、
これらの鉄キレート形成性タンパク質と結合し、次いで、その増殖に必要とされ
る鉄を摂取することを可能にしている。
Schryvers et al.(PCT出願WO90/12591)により、ナイセリア・メニンジティ
ディス株B16B6のヒトトランスフェリン受容体が膜抽出物から精製された。
この精製されたタンパク質は、実質的には、100kDの高い見掛分子量を有す
るポリペプチドおよび約70kDの低い見掛分子量を有するポリペプチドの2つ
のタイプのポリペプチドからなる(SDSの存在下、ポリアクリルアミドゲル電
気泳動の後に視覚化された)。
特にSchryversにより行われた精製生成物は、任意の定義により、かつ、本発
明の目的のために、ヒトトランスフェリン受容体(HTR)と称し、それを構成
するポリペプチドをサブユニットと称する。本明細書では、以下、高分子量のサ
ブユニットおよび低分子量のサブユニットを、各々、TbpA(Tbp1)およ
びTbpB(Tbp2)と称する。
Schryvers et al.の先駆的研究以来、ナイセリア・メニンジティディス種は、
実質的に、各々のHTRの構成が異なる2つのタイプの株に分割されることが見
出された(PCT出願WO 93/6861およびWO 93/7172)。M982型(またはIM2
169型)と称される第一の株の型は、M982株のHTRを指向する抗血清と
は反応するが、B16B6(またはIM2394)株のHTRを指向する抗血清
とは反応しないTbpBを有し;一方、B16B6型と称される他のタイプは、
B16B6株のHTRを指向する抗血清とは反応するが、M982株のHTRを
指向する抗血清とは反応しないTbpBを有する。したがって、抗原多様性が低
分子量のサブユニットのレベルで存在する。しかしながら、Griffiths et al.,
FEMS Microbiol.Lett.(1990)69:31により示唆されているところとは反対に2
つの主要なタイプに減少しているので、この多様性は、限定される。
M982型の株は、例えば、tbpB遺伝子の配列がヨーロッパ特許出願586
266に記載されており、EMBLデータバンクにおいてリファレンス番号Z15
130の下に見出せるM982株;tbpB遺伝子の5'配列がPCT出願WO 95/33
049に記載されている6940株、M978株およびS3032株;各々、tb
pB遺伝子の配列がPCT出願WO 95/33049およびWO 97/13860に記載されているB
Z83株および8680株(これらの配列は、EMBLデータバンクにおいて、
各々、リファレンス番号Z50732およびY09977の下に見出すこともで
きる);または配列が、EMBLデータバンクにおいて、各々、アクセス番号Y
09617およびY09618の下に見出せる32/94株および8710株で
ある。これらの株は、他の株と同様に、ノルウェー、オスロの世界保健機構、国
家公衆衛生研究所(Natinal Institute of Public Health)と共同研究している
Centre de Reference des MeningocoquesのCaugant博士から入手可能である(19
95年10月10日にBachra RokbiによりClaude Bernard University−Lyon Iに提出
された「ナイセリア・メニンジティデイスのヒトトランスフェリン受容体の
と題する博士論文を参照)。引用された株の特徴を下記表4に示す。B16B6
株のTbpBをコードしているDNA配列は、ヨーロッパ特許出願586 266に開
示されている。
種々のTbpBをコードしているDNAフラグメントの研究は、誘導されるタ
イプによるこれらのフラグメントの大きさの差異を明らかにした。これにより、
最初にPCT出願WO 93/6861において与えられたM982型およびB16B6型の
定義を変えることが可能となった。現在は、TbpB遺伝子の大きさに従って株
の型を定義するのが適当である:M982型のTbpBについて約2.1〜2.
3kbおよびB16B6型のTbpBについて1.8kb。
タンパク質Tbp1よりもタンパク質TbpBの方が有効なワクチン候補にす
る多くの特徴を有する:遍在的に発現すること、微生物の表面での入手容易性、
殺菌性抗体を誘発する能力および前記したとおり2つの主要グループがある程度
まで同定されていたので限定された変異性。
この知見により、
(i)少なくとも1つのB16B6型の株のHTRおよび少なくとも1つのM
982型の株のHTR(PCT出願WO 93/6861);または
(ii)少なくとも1つのB16B6型の株のTbpBまたは少なくとも1つの
M982型の株のTbpB(PCT出願WO 93/7172)
を含有する医薬組成物が既に提案されている。
世界中に及ぶ髄膜炎のケース(単発ケースまたは流行ケース)の原因である株
が回収され、研究され、種々の基準に基づいて分類された。一般に用いられる第
一の方法は、髄膜炎菌を、各々、クラス2/3外膜タンパク質およびクラス1外
膜タンパク質の莢膜多糖のレベルでの抗原差異に基づいて血清グループ、血清型
またはサブ血清型に分類することからなる。この分類は、モノクローナル抗体を
用いて行われる。かくして、例えば、M982株は、血清グループB、血清型9
、サブ血清型P1.9(B:9:P1.9)と分類される。
国際的に用いられる別の分類方法は、ある種の代謝酵素の電気泳動移動度に基
づいている。それは、MLEE(マルチ−ローカス電気泳動酵素(Multi-Locus
Electrophoresis Enzyme))であり、その使用は、特に、Olyhoek et al.,“Th
e Pathogenic Neisseriae”,(1985),Schoolnick G.K.編(American Society f
or Microbiology):530;Caugant et al.,J.Gen.Microbiol.(1986)132:641;
Selander et al.,Appl.Env.Microbiol.(1986)51:873;Caugant et al.,Gene
tics(1981)98:464;Caugant et al.,PNAS(1986)83:4931に記載され
ている。概略、以下の15種類の酵素を分析する:リンゴ酸酵素(MAE)、グ
ルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6P)、ペプチダーゼ(PEP)、
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオ
チド(NAD)、リン酸依存性グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GD1およびG
D2)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、フマラーゼ(FUM)、アル
カリホスファターゼ(ALK)、ヨードフェノールオキシダーゼ(IP1および
IP2)、アデニル酸キナーゼ(ADK)およびデヒドロゲナーゼ(UDH)。
各酵素のエレクトロモルフ(electromorph)(またはアロザイム)は、同一遺伝
子座の対立遺伝子に相当する。これらの15種類の酵素の対立遺伝子の特別な組
み合わせにより電気泳動タイプ(ET)が構成される。これらのタイプは、ファ
ミリーまたは複合体(クラスター)にグループ分けすることができる。例えば、
ET−5複合体は、非常に密接に関係している(最大遺伝距離は、0.16であ
る)22種類の電気泳動タイプからなる。下記表に、ET−5電気泳動タイプの
株の対立遺伝子プロフィル(15種類の酵素の各々についての遺伝子座当たりの
対立遺伝子数)を示す。対立遺伝子がET−5複合体内で変化すると思われる酵
素(G6PおよびUDH)を太字で示す。表1 種々の関連する電気泳動複合体または電気泳動タイプが系列内に存在する。現
在までに、例えばCaugant et al.,J.Infect.Dis.(1990)162:867に記載され
ているように、各々が、お互いに関係し合う少なくとも5つの電気泳動タイプか
らなる組を表す10の系列(IからXまで)が定義されている。例えば、系列II
Iは、ETタイプ24、24.1−4および25をひとまとめにしている。
過去25年間、世界中(例えば、アメリカ合衆国(オレゴン州、ワシントン州
)、ノルウェー、キューバ、チリ、ブラジル、オランダ、ニュージーランド)に
及ぶ多くの髄膜炎のケースの原因となる株は、ET−5複合体または系列IIIに
属することが判明した。したがって、抗原、例えば、この複合体の株から得ら
れたTbpBを含むワクチンの提供が非常に急速に望まれるようになった。実際
、すでに知られている種々のワクチン組成物は8680株から得られたTbpB
を使用しており、これはすでに行われているものである(PCT出願WO 97/13860を
参照)。この株は、実際、ET−5複合体に属している。
しかしながら、今、ET−5複合体に属する臨床的な単離体が、tbpB遺伝
子のレベルで、ある変異性を示すことを見出した。この研究は、最近の世界中の
流行性髄膜炎の原因である31種類の単離体について行った。tbpB遺伝子を
、
(a)一方では、プライマーP1(配列番号9;P1は、EMBLライブラリー
において受託番号Z15130の下に見出されるM982 tbpB遺伝子の配
列の115位〜113位に相当する)およびP2(アンチセンス;配列番号10
;P2は、EMBLライブラリーにおいて受託番号Z15130の下に見出され
るM982 tbpB遺伝子の配列の2264位〜2244位に相当する)を用
いてゲノムDNAから該遺伝子を増幅させた後の酵素AvaII、HincII
、VspIおよびXhoIによるtbpB遺伝子の制限プロフィルについて、
(b)他方では、プライマーP3(配列番号11)およびP4(アンチセンス;
配列番号12)を用いてゲノムDNAから増幅されるtbpB遺伝子由来のPC
R(ポリメラーゼ連鎖反応)フラグメントの大きさについて、分析した。
M982株、BZ83株および8680株のtbpB遺伝子の制限プロフィル
を下記表2に示す。M982株がET−5複合体に属さないことに注意すべきで
ある。しかしながら、M982株を研究したのは、2.1〜2.3kbのtbpB
遺伝子を有する株の全てについて参照となるからである。
表2 NC:切断されない。
これらのプロフィルは、下記表3の文字で表される:表3 全ての株についての結果を下記表4に示す:表4 星印は、ET−5複合体の一部ではないM982株を表す。
(a)示したフラグメントの大きさは、プライマーP3およびP4を用いてゲ
ノムDNAから増幅されたフラグメントの大きさであり、遺伝子の完全な配列が
入手可能である場合(M892株、BZ82株および8680株)には1塩基の
範囲まで計算し、または、M892株、BZ83株および8680株について生
じたPCRフラグメントとの比較により3%アガロースゲル上での移動後に測定
した。この研究を成功裏に行うために、まずミュラー−ヒントン寒天プレート(
MHA、ディフコ(Difco))上で培養した株からゲノムDNAを抽出した。d
CTP、dGTP、dATPおよびdTTP(ファルマシア−エルケイビー(Ph
armacia-LKB))各200μM;該プライマー各0.2μMおよびTaqポリメラ
ーゼ(アプリジェン(Appligene))2.5Uを含有する100μmの容量でPC
R反応を行った。増幅は、以下のようにプログラムされたDNAサーモサイクラ
ー(Biometra、Trio-thermobloc)中で行われた:95℃で5分間の最初の変性
、次いで、各サイクルが次の変性(30秒、95℃)、アニーリング(30秒、
58℃)およびDNA鎖の伸長(1分、72℃)からなるサイクル25回。増幅
フラグメントの大きさは、3%アガロースゲル上での増幅産生物の電気泳動後に
決定される。
(b)プライマーP1およびP2を用いてPCRによりゲノムDNAから増幅
された遺伝子の制限プロフィル;文字A〜GおよびNは、表3に示される制限プ
ロフィルを表す(Hは、制限プロフィル:1230、320、270、210お
よび80nt(ヌクレオチド)に相当し;Jは、制限プロフィル:1350、5
70および330ntに相当する)。この研究を成功裏に行うために、上記(a
)の記載に従って株のDNAを調製し、次いで、以下の条件下で増幅させた:各
サイクルがDNAの変性(1分、94℃)、アニーリング(2分、58℃)およ
び伸長(3分、72℃)からなるサイクル25回。各増幅フラグメントをQiaqui
ckカラム(キアゲン(Qiagen))上で精製し、製造者の取扱説明書(ニュー・イ
ングランド・バイオラブズ(New England Biolabs))に従って4つの別反応で
4つの酵素により消化した。2%アガロースゲル上での電気泳動法
により制限産生物を分離した。
かくして、上記変異性は、3つの主要グループに減少したことが示された(表
4を参照)。最も重要なグループは、BZ83株を含む17種類の株を含んでい
た(表示の54.8%)。次に、M982株を用いて得られたPCRフラグメン
トと同一の大きさ(844nt)のPCRフラグメントにより特徴付けられた1
0種類の株のグループが続いた。M982株自体は、このグループの一員ではな
いが、本明細書では、このサイズ同一性のためにM982グループの名称の下に
続いて示される(M982グループとM982型とは、同一のものを示さないこ
とに注意する)。これらの10種類の株のうち、tbpB遺伝子の制限プロフィ
ルは、いくつかの相違点を示す:AvaIIまたはXhoIで切断される遺伝子
は全くない;VspIに関しては、制限部位を有していないか、または、Gタイ
プの制限プロフィルを提供する;HincIIで得られた制限プロフィルは、さ
らに異なっている。表示に関しては、次に、3種類の株のグループがあり、その
中に8680株があった。8710株は、M982グループの株を特徴付けるも
のよりも小さいPCRフラグメントにより特徴付けられるが、そのtbpB遺伝
子の制限プロフィルは、実際、この株がM982グループに関係していることを
示す。
PCRフラグメントタイプに基づく分類の予想的価値を確認するために、32
/94株、8726株および8710株(上記表4に記載した)のtbpB遺伝
子をクローン化し、配列決定し、インフォバイオジェン・マルチプル・クラスタ
ル整列プログラム(Infobiogen multiple Clustal alignment programme)(Des
sen et al.,Bisance:“a French programme for accessing the biomolecular
sequences databases”(1990)Cabios 6:355)を用いてプロトタイプのBZ83
株、M982株および8680株のtbpB遺伝子の配列と並ベた。比較結果を
ホモロジー(同一性)の%により下記表5に示し、PCR分析による分類の適切
さを確認する。表5 上記tbpB遺伝子の分析に関する研究は、刊行物(Rokbi et al.,Clin.Di
ag.Lab.Immunol.(Sept.1997)4(5):522)の主題であった。
次に、ET−5複合体に属さない株が、制限酵素プロフィルがBZ83株のt
bpB遺伝子のものと同一であるtbpB遺伝子を有することが見出された。こ
れらの株のいくつかは、III系列に属している;1つは、例えば、90/94株
(Caugant博士所蔵)である。
試験された単離体の選択が様々な土地を起点とする流行病を代表することが知
られており、BZ83株により説明されるグループがそれらの大半を占めている
とすれば、このグループの株が最近の流行病において支配的であることは疑わし
くない。BZ83株により説明されるグループ(以下、BZ83グループと称す
る)の株から得られたTbpBをワクチンに含ませるのが望ましいと思われる。
したがって、本発明の主題は、(i)(a)2つのAvaII制限部位および
3つのHincII制限部位を含有しており、VspI制限部位ならびにVsp
IおよびXhoI制限部位を含有しておらず、かつ、好ましくは、(b)式5'-A
AGACCAAGGCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプライマーP3および式5'-GAAGACGAGT
CGGAAACAAAGGGATG-3'で示されるプライマーP4を用いてPCR(ポリメラーゼ
連鎖反応)により765〜775ヌクレオチド、好ましくは772ヌクレオチド
のポリヌクレオチドを生じることができる、TbpBをコードしているDNA配
列を有するナイセリア・メニンギティデイス株(BZ83グループの株)のヒト
トランスフェリン受容体(HTR)の低分子量サブユニット(TbpB);また
は(ii)該TbpBのフラグメントを含有してなる医薬組成物である。
「株のTbpBサブユニット、または、ナイセリア・メニンジティディス株か
ら誘導、発生、または、得られるTbpBサブユニット」とは、明らかに、その
最も一般的な意味において取られる誘導体を意味すると解すべきである;すなわ
ち、物理的プロセスに限定されず、知的プロセスの結果である。かくして、この
表現は、とりわけ、例えばイー・コリ(E.coli)における組換え経路により産生
されるTbpBを包含する。
本発明の目的のために有用なTbpBが得られるナイセリア・メニンジティデ
ィス株は、ET−5複合体またはIII系列に属する株であるのが好ましい。例え
ば、ET−5複合体の一員であるBZ83グループの株は、32/94株である
。III系列の一員であるBZ83グループの株は、90/94株である。これら
の株のtbpB遺伝子の配列は、以下の配列識別名で示す。
有利な具体例によると、本発明の組成物に含まれるTbpBは、1184nt
、477ntおよび415ntの3つのフラグメントからなるAvaII制限プ
ロフィルおよび1155nt、385nt、276ntおよび257ntの4つ
のフラグメントからなるHincII制限プロフィルを示すTbpBをコードし
ているDNA配列を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られる。好
ましくは、このTbpBは、配列番号2に示されるアミノ酸を有する(BZ83
)。
別法としては、adhoc株のTbpBから得られたフラグメントを用いるこ
とができる。ワクチンのために有用なフラグメントは、PCT出願WO 95/33049に提
案された方法により定義することができる。
PCT出願WO 95/33049は、起源の株に関係なく、TbpBサブユニットの研究に
より、少なくとも1つが特性に関係している3つの主要な構造ドメインを示すこ
とができることを教示している。定義によると、M982 TbpBおよびB1
6B6 TbpBのドメインは、アミノ酸の位置、含まれる種々のドメインの制
限を示すことにより、かつ、配列番号4および8に示す番号付けを引用して、下
記表6に示されるように確定された。表6 この定義は、同様に、M982型またはB16B6型配列を参照配列とホモロ
ジーを最大にするように並べた後、全てのM982型またはB16B6型Tbp
Bに適用する。かくして、例えば、8680株のTbpBサブユニットのドメイ
ンの位置は、以下のとおり示される:第一ドメイン(1−334)、第二ドメイ
ン(335−530)および第三ドメイン(531−677)。
N−末端ドメインまたは第一ドメインがその全体においてトランスフェリン結
合部位を含有しており、したがって、おそらく外部に暴露されているということ
が知られており、その結果、N−末端ドメインだけが、とりわけ、ワクチンのた
めの選択の要素を構成する。
さらにまた、ホモロジーを最大になるように並べたM982およびB16B6
TbpB配列の比較研究は、4つの超可変部がM982 TbpBのヒンジ部(
上記表に示したように、ヒンジドメインとも称される)内に局在し、B16B6
TbpBにはこの超可変部がないことを示した。これらの超可変部は、全ての
M982型TbpBに存在する。B16B6型株は、それらを欠いている。本明
細書では、「M982型ヒンジ部」とは、これらの4つの超可変部を有するヒン
ジ部を意味すると解される。
種々のM982型TbpBの配列の比較により、ヒンジ部の変異性が他の2つ
のドメインのものよりも大きいことも知られている。ヒンジ部は、ヒトトランス
フェリン結合機能に必須であるとは思われていなかったので、この領域の役割は
、少なくとも一部は、後に別の株と接触した個体の免疫系による株の認識を回避
するために「スクリーン」タイプの変異性を誘発することであると仮定された。
この仮説について、M982型株のヒンジ部は、ワクチンの調製において重要
な課題を構成する。実際、この領域が免疫優位性を有する場合、免疫化の間、誘
発された抗体は、この領域に対して優先的に指向され、その結果、免疫応答は、
同種株のTbpBタンパク質に対して特異的となる。
上記観察結果および仮説を考慮して、全M982型TbpBではなく、少なく
ともそれらの4つの超可変部を欠いているかまたは第二および第三ドメインを欠
いているTbpBを、とりわけ、ワクチンのために用いることが既に提案されて
いる。
本発明の組成物は、また、M982グループの株または8680により示され
るグループ(8680グループ)の株から得られたTbpBも含有する。
かくして、本発明組成物は、さらに、(i)ET−5複合体の一員であり、(
a)AvaIIおよびXhoI制限部位を含有せず、または、好ましくはおよび
、(b)式5'-AAGACCAAGGCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプライマーP3および
式5'-GAAGACGAGTCGGAAACAAAGGGATG-3'で示されるプライマーP4を用いてPCR
により840〜850ヌクレオチド、好ましくは844ヌクレオチドのポリヌク
レオチドを生じることができるTbpBをコードしているDNA配列を有するナ
イセリア・メニンギティデイス株(M982グループの株)から得られた第1付
加TbpB;または(ii)該第1付加TbpBのフラグメントを含有してなる。
有利な具体例によると、第1付加TbpBは、1つのVspI制限部位および
3つのHincII制限部位を含有するTbpBをコードしているDNA配列を
有するナイセリア・メニンジティディス株から得られる。好ましくは、このTb
pBは、1311ntおよび769ntの2つのフラグメントからなるVspI
制限プロフィルおよび1229、319、281および259ntの4つのフラ
グメントからなるHincII制限プロフィルを示すTbpBをコードしている
DNA配列を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られる。
本発明の医薬組成物は、さらに、(i)ET−5複合体の一員であり、(a)
1つのAvaII制限部位、2つのVspI制限部位、1つのXhoI制限部位
および2つのHincII制限部位を含有し、または、好ましくはおよび、(b
)式5'-AAGACCAAGGCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプライマーP3および式
5'-GAAGACGAGTCGGAAACAAAGGGATG-3'で示されるプライマーP4を用いてPCRに
より800〜810ヌクレオチド、好ましくは805ヌクレオチドのポリヌクレ
オチドを生じることができるTbpBをコードしているDNA配列を有するナイ
ヤリア・メニンジティディス株(8680グループの株)から得られる第2付加
TbpB;または(ii)該第2付加TbpBのフラグメントをも含有してなる。
有利な具体例によると、第2付加TbpBは、1507ntおよび445nt
の2つのフラグメントからなるAvaII制限プロフィル、1298nt、47
0ntおよび266ntの3つのフラグメントからなるVspI制限プロフィル
、1551ntおよび483ntの2つのフラグメントからなるXhoI制限プ
ロフィルならびに1191nt、527ntおよび316ntの3つのフラグメ
ントからなるHincII制限プロフィルを示すTbpBをコードしているDN
A配列を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られる。好ましくは、
この第2付加TbpBは、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有する(868
0株)。
ET−5複合体の株から得られるTbpBに加えて、本発明の組成物は、また
、他の電気泳動複合体の株から得られる1つ以上のTbpBを含有してもよい。
特に、(i)M982型の株のTbpB、すなわち、約2.1〜2.3kbのt
bpB遺伝子を有しており、M982 TbpBとのホモロジー(同一性)(ア
ミノ酸配列のレベルでのホモロジー)の程度がET−5複合体の株のTbpBお
よびM982 TbpBを比較することにより観察されるものよりも高い株のT
bpBまたは(ii)B16B6型の株のTbpB、すなわち、約1.8kbのt
bpB遺伝子を有する株のTbpBを加えることが予測される。
かくして、本発明の医薬組成物は、さらに、(i)1位のアミノ酸から691
位のアミノ酸までの配列番号4に示される配列とのホモロジーの程度が少なくと
も85%、有利には少なくとも90%であるアミノ酸配列を有するTbpBまた
は(ii)該TbpBのフラグメントを含有してなる。好ましくは、配列番号4に
示されるアミノ酸配列を有するM982株のTbpBである。
本発明の医薬組成物は、さらに、(i)1位のアミノ酸から579位のアミノ
酸までの配列番号8で示される配列とのホモロジーの程度が少なくとも95%、
好ましくは100%であるアミノ酸配列を有するTbpB(B16B6型の株)
;または該TbpBのフラグメントを含有してなる。
種々の可能な付加TbpBについての別法として、そのフラグメントを用いる
ことも可能である。有用なフラグメントは、PCT出願WO 95/33049に説明されてい
るように決定される。
本発明の目的ために有用なTbpBは、TbpBが誘導されるナイセリア・メ
ニンジティディス株の高分子量のサブユニット(Tbp1)から解離した形態で
あるか、または、このTbp1と会合してヒトトランスフェリン受容体と考えら
れるTbp1−TbpB複合体を形成している;すなわち、それらは、高分子量
の対応するサブユニット(Tbp1)を欠いている形態であるか、または、それ
と会合してHTRを形成している。解離した形態またはTbp1−TbpB複合
体の形態のいずれであっても、本発明のTbpBサブユニットは、実質的に精製
されるべきである;すなわち、自然に存在する媒質から分離される。とりわけ、
特にナイセリア・メニンジティディスの細胞質タンパク質およびペリプラズムタ
ンパク質を含まない調製物である。
本発明の目的ために有用なTbpBサブユニットは、TbpBが誘導されるナ
イセリア・メニンジティディス株の高分子量のサブユニット(Tbp1)から解
離した形態であるか、またはこのTbp1と会合してヒトトランスフェリン受容
体と考えられるTbp1−TbpB複合体を形成している。解離した形態または
Tbp1−TbpB複合体の形態のいずれであっても、本発明のTbpBサブユ
ニットは、実質的に精製されるべきである;すなわち、自然に存在する媒質から
分離される。とりわけ、特にナイセリア・メニンジティディスの細胞質タンパク
質およびペリプラズムタンパク質を含まない調製物である。
本発明の目的ために、すでに知られている方法(とりわけ、PCT出願WO 97/138
60を参照)に従って髄膜炎菌株から精製されたか、または、同種または異種の発
現系における組換え経路により得られる1つ以上のTbpBを用いることができ
る。
適切な発現系は、それらがtbpB遺伝子の配列を有するので、当業者の能力
の範囲内である。それらは、特に、成熟TbpBまたはそのフラグメントをコー
ドしているDNAフラグメントが適切なプロモーターの制御下に置かれる発現カ
セットを構築することが必要である。このDNAフラグメントは、ポリペプチド
の分泌が要求されるか否かによって、同種シグナルペプチドまたは異種シグナル
ペプチドをコードしているDNAブロックと縮合されていたりいなかったりであ
る。好ましくは、この分泌は、要求されるであろうし、リポタンパク質をコード
している遺伝子から誘導されたシグナル配列が用いられるであろう。
異種シグナルペプチドをコードしているDNAブロック(シグナル領域)また
はプロモーターなどの成分は、すでに、かなり多数存在しており、当業者に知ら
れている。当業者の一般的な能力により、シグナル領域または発現が予測される
宿主細胞に適している特定のプロモーターが選択されるであろう。
本発明の方法のために、宿主細胞は、哺乳動物細胞、細菌または酵母であって
よい;後者の2つが好ましい。ここで、再度、特定の系の選択は、当業者の能力
の範囲内である。
********
本発明の主題は、(i)(a)2つのAvaII制限部位、3つのHincI
I制限部位を含有しており、VspI制限部位ならびにVspIおよびXhoI
制限部位を含有しておらず、または、好ましくはおよび、(b)式5'-AAGACCAAG
GCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプライマーP3および式5'-GAAGACGAGTCGGAAACA
AAGGGATG-3'で示されるプライマーP4を用いてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応
)により765〜775ヌクレオチド、好ましくは772ヌクレオチドのポリヌ
クレオチドを生じることができるTbpBをコードしているDNA配列を有する
ナイセリア・メニンジティディス株(BZ83グループの株)のヒトトランスフ
ェリン受容体(HTR)のTbpB;または(ii)該TbpBのフラグメントを
コードしているDNA分子を含有してなる医薬組成物でもある。
好ましくは、該DNA分子は、ET−5複合体またはIII系列に属するナイセ
リア・メニンジティディス株から得られるTbpBをコードする。
好都合な具体例によると、このDNA分子は、1184nt、477ntおよ
び415ntの3つのフラグメントからなるAvaII制限プロフィルならびに
1155nt、385nt、276ntおよび257ntの4つのフラグメント
からなるHincII制限プロフィルを示すTbpBをコードしているDNA配
列を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られるTbpBをコードす
る。好ましくは、このDNA分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有す
るTbpBをコードする(BZ83株)。
本発明のDNAをベースとする組成物は、さらに、(i)ET−5複合体の一
員であり、(a)AvaIIおよびXhoI制限部位を含有しておらず、または
、好ましくはおよび、(b)式5'-AAGACCAAGGCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプ
ライマーP3および式5'-GAAGACGAGTCGGAAACAAAGGGATG-3'で示されるプライマー
P4を用いてPCRにより840〜850ヌクレオチド、好ましくは844ヌク
レオチドのポリヌクレオチドを生じることができるTbpBをコードしているD
NA配列を有するナイセリア・メニンジティディス株(M982グループの株)
から得られるTbpB;または(ii)該TbpBのフラグメントをコードしてい
る第1DNA分子を含有してなる。
有利な具体例によると、第1付加DNA分子は、1つのVspI制限部位およ
び3つのHincII制限部位を含有するTbpBをコードしているDNA配列
を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られるTbpBをコードして
いる。好ましくは、このDNA分子は、1311ntおよび769ntの2つの
フラグメントからなるVspI制限プロフィルおよび1229nt、319nt
、281ntおよび259ntの4つのフラグメントからなるHincII制限
プロフィルを示すTbpBをコードしているDNA配列を有するナイセリア・メ
ニンジティディス株から得られるTbpBをコードしている。
本発明のDNAをベースとする組成物は、また、さらに、(i)ET−5複合
体の一員であり、(a)1つのAvaII制限部位、2つのVspI制限部位、
1つのXhoI制限部位および2つのHincII制限部位を含有し、または、
好ましくはおよび、(b)式5'-AAGACCAAGGCGGATACGGTTTTGC-3'で示されるプラ
イマーP3および式5'-GAAGACGAGTCGGAAACAAAGGGATG-3'で示されるプライマーP
4を用いてPCRにより800〜810ヌクレオチド、好ましくは805ヌクレ
オチドのポリヌクレオチドを生じることができるTbpBをコードしているDN
A配列を有するナイセリアメニンジティディス株(8680グループの株)から
得られるTbpB;または(ii)該TbpBのフラグメントをコードしている第
2付加DNA分子を含有してなる。
有利な具体例によると、第2付加DNA分子は、1507ntおよび445n
tの2つのフラグメントからなるAvaII制限プロフィル、1298nt、4
70ntおよび266ntの3つのフラグメントからなるVspI制限プロフィ
ル、1551ntおよび483ntの2つのフラグメントからなるXhoI制限
プロフィルならびに1191nt、527ntおよび316ntの3つのフラグ
メントからなるHincII制限プロフィルを示すTbpBをコードしているD
NA配列を有するナイセリア・メニンジティディス株から得られるTbpBをコ
ードしている。好ましくは、このDNA分子は、配列番号6に示されるアミノ酸
配列を有するTbpB(8680株)をコードしている。
本発明のDNAをベースとする組成物は、さらに、(i)配列番号4に示され
る配列とのホモロジーの程度が少なくとも85%、有利には少なくとも90%で
あるアミノ酸配列を有するTbpB;または(ii)該TbpBのフラグメントを
コードしているDNA分子を含有してなる。好ましくは、これは、配列番号4に
示されるアミノ酸配列を有するM982株のTbpBをコードしているDNA分
子である。
本発明のDNAをベースとする組成物は、さらに、(i)配列番号8に示され
る配列とのホモロジーの程度が少なくとも95%、好ましくは100%であるア
ミノ酸配列を有するTbpB(B16B6型の株);または(ii)該TbpBの
フラグメントをコードしているDNA分子を含有してなる。
DNA分子は、有利には、複製されることおよび実質的に哺乳動物のゲノムに
組み込まれることが不可能なプラスミドである。上記コード配列は、哺乳動物細
胞中で発現可能なプロモーターの制御下に置かれる。このプロモーターは、遍在
しているかまたは組織に対して特異的である。遍在するプロモーターとしては、
サイトメガロウイルス初期プロモーター(米国特許4,168,062に記載されている
)およびラウス肉腫ウイルスプロモーター(Norton & Coffin,Molec.Cell.Bio
l.(1985)5:281に記載されている)が挙げられる。デスミンプロモーター(Li e
t al.,Gene(1989)78:244443;Li & Paulin,J.Biol.Chem.(1993)268:1040
3)は、選択プロモーターであり、筋肉細胞中で発現可能であり、皮膚の細胞中
でも発現可能である。筋肉細胞に対して特異的なプロモーターは、例えば、ミオ
シンまたはジストロフィン遺伝子のプロモーターである。本発明のために用いる
ことができるプラスミドベクターは、PCT出願WO 94/21797およびHartikka et al
.,Human Gene Therapy(1996)7:1205に記載されている。
本発明のDNAをベースとする組成物において、DNA分子は、製剤化される
かまたは製剤化されない。製剤の選択は、広く変えられる。該DNAは、担体を
有するかまたは有さずに生理学上許容される溶液に簡単に希釈される。担体が存
在する場合、それは、等張性であるか、または、弱い高張性であり、低いイオン
強度を有する。例えば、これらの条件は、例えば20%のショ糖溶液により満た
される。
別法としては、DNA分子は、細胞への進入を促進する薬剤と組合される。こ
れは、(ii)ブピバカイン(例えば、PCT出願WO 94/16737を参照)のような細胞
浸透性を改良する化学薬剤または(ii)ポリヌクレオチドと組み合わせてポリヌ
クレオチドの輸送を促進するビヒクルとして作用する薬剤である。後者は、特に
、陽イオン重合体、例えば、ポリリシン、または、ポリアミン、例えば、スペル
ミン誘導体(例えば、PCT出願WO 93/18759を参照)である。これは、また、紡錘
菌産生ペプチド(fusogenic peptide)、例えば、GALΛまたはグラミシジン
(Gramicidin)S(PCT出願WO 93/19768を参照)またはウイルス融合タンパク質
から誘導されたペプチドである。
それらは、また、陰イオンまたは陽イオン脂質である。陰イオンまたは中性脂
質は、長い間、ポリヌクレオチドを含む多くの化合物のために、例えばリポソー
ムの形態で、輸送剤(transporting agent)として作用することができることが
知られてきた。これらのリポソーム、それらの成分およびそれらの製造方法は、
例えば、Liposomes:A Practical Approach,RPC New Ed,IRL press(1990)によ
り詳細に説明されている。
陽イオン脂質も知られており、一般に、ポリヌクレオチドについての輸送剤と
して用いられる。例えば、名称DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキ
シ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)によっても知ら
れているLipofectinTM、DOTAP(1,2−ビス(オレイルオキシ)−3−(トリ
メチルアンモニオ)プロパン)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウム
ブロミド)、DOGS(ジオクタデシルアミノグリシルスペルミン)およびDC
−chol(3−ベーター(N−(N',N'−ジメチルアミノエタン)−カルバモ
イル)コレステロール)などのコレステロール誘導体が挙げられる。これらの脂
質は、ヨーロッパ特許出願187,702、PCT出願WO 90/11092、米国特許5,283,185、
PCT出願WO 91/15501およびWO 95/26356ならびに米国特許5,527,928により説明さ
れている。陽イオン脂質は、好ましくは、例えばPCT出願WO 90/11092に記載され
ているようにDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)などの天
然脂質と共に用いられる。
PCT出願WO 91/359およびWO 93/17706ならびにTang et al.,Nature(1992)35
6:152に記載されているように、金またはタングステンの微粒子もまた輸送剤と
して用いられる。この特定の場合、ポリヌクレオチドは、塩化カルシウムおよび
スペルミジンの存在下、微粒子上に沈殿され、次いで、米国特許4,945,050およ
び5,015,580ならびにPCT出願WO 94/24243に記載されている装置のような無針(n
eedle-free)装置を用いて全体が真皮または表皮に高速ジェットにより投与され
る。
個体にワクチン接種するために用いることができるDNAの量は、抗原を発現
するために用いられるプロモーターの強度、投与される哺乳動物の状態(例えば
、体重、年齢および一般的な健康状態)、投与の形態および製剤のタイプなどの
多くの因子に依存する。特に、筋肉内投与経路が、無針装置を用いる皮内投与経
路
よりも多量のDNAを必要とすることが示される。一般に、ヒトの成人における
予防用または治療用の適切な用量は、約1μg〜約5mg、好ましくは、約10μ
g〜約1mgであり、特に好ましくは、約25μg〜約500μgである。
本発明のDNAをベースとする組成物は、いくつかのDNA分子(1つは、B
Z83グループの株のTbpBをコードしているものであり、他には、別のグル
ープまたは型の株のTbpBをコードしているものである)を含有し、これらの
分子は、お互いに分離された形態(例えば、プラスミド/コード配列)で存在す
るか、または、1つ以上のユニット(例えば、1つの同プラスミド/2つ以上の
コード配列)を構成する。
本発明のDNAをベースとする組成物は、さらに、免疫原性物質自体以外の化
合物を含有し、これらの化合物の性質は、ある程度は、とりわけ投与経路に依存
する。かくして、上記のとおり、医薬組成物は、種々の形成剤を含む。情報とし
て、一般に、DNA分子が補助剤の添加を必要としないようにすることができる
ことが示される。
********
本発明の医薬組成物は、予防または治療において、ナイセリア・メニンジティ
ディスに対するヒトにおける免疫応答、とりわけ、ナイセリア・メニンジティデ
ィス感染症に対してヒトを保護するようなワクチン効果を誘発するのに特に有用
である。
本発明の組成物は、慣用手段で調製される。特に、それらは、医薬上許容され
る希釈剤、担体またはビヒクル、例えば、水または生理食塩水を用いて製剤化さ
れる。一般に、希釈剤またはビヒクルは、投与の形態および経路に依存して、標
準的な製薬プラクティスに従って、選択される。適切なビヒクルまたは希釈剤お
よび医薬組成物の調製に必須であるものは、この分野の標準的な参考書であるRe
mington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。TbpBをベースとす
る組成物は、また、補助剤を含有してもよい。
本発明の組成物は、ワクチンの分野での使用において慣用的な投与経路により
投与される。便宜的には、全身経路が用いられ、とりわけ、静脈内経路、筋肉内
経路、皮内経路、表皮内経路および皮下経路から選択される非経口経路が用いら
れる;しかしながら、筋肉内経路、皮内経路、表皮内経路および皮下経路は、静
脈内経路よりも好ましい。
予防効果または治療効果を得るために、本発明の医薬組成物を投与することか
らなる操作は、各投与の間にある程度の時間をおいて(1週間または1ヶ月のオ
ーダーの間隔で)、1回または数回繰り返される。その正確な決定は、当業者の
能力の範囲内であり、免疫原性物質の性質、個体の年齢などの種々の因子に従っ
て変わってよい。
本明細書に記載した全ての文献は、引用により本明細書の記載とする。
実施例1:4つの株(BZ83、8680、M982およびB16B6)を含
有してなる髄膜炎菌ワクチン
1A.天然HTRの精製
PCT出願WO 97/13860の実施例1において8680株のHTRについて記載され
ている方法に従って、各株のHTRを精製する。
1B.天然TbpBの精製
PCT出願WO 97/13860の実施例2において8680株のTbpBについて記載さ
れている方法に従って、各株のTbpBを精製する。
1C.組換えTbpBの調製
各TbpBについて、成熟TbpBをコードしている配列がイー・コリrlp
Bシグナル配列(Takase et al.,J.Bact.(1983)169:50692)と融合される発
現プラスミドを構築し、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimuri
um)のaraBプロモーター(Horwitz et al.,Gene(1981)14:309、Cagnonet
al.,Protein Engineering(1991)4(7):843およびLegrain et al.,Prot.Expr
ess.Purif.(1995)6:570)の制御下に置く。
これらのプラスミドは、また、イー・コリにおいて機能的な複製起点、カナマ
イシンに対する耐性のための遺伝子およびcer座を含有する(Summers & Sher
ratt,Cell(1984)36:1097)
これらのプラスミドの各々は、イー・コリBL21株を形質転換するように作
用する。
TbpBを生成するために、選択された形質転換細胞の各々を、アンピシリン
の不在下、TGM16培地(Slos et al.,Prot.Express.Purif.(1994)6:518
)中、20リットルの発酵槽中で培養する。指数増殖期(600nmでの光学密度
が40よりも大きい)の間、0.2%アラビノース(発現誘発物質)を添加する
。誘発から1時間後、細胞を得、−20℃で貯蔵する。
細菌ペレットをトリス緩衝液に再懸濁させ、高圧溶解(ラニー(Rannie))に
付す。これに次いで、一連の洗浄および遠心分離に付す。最終ペレットを、ツウ
ィッタージェント(zwittergent)Z3−14を含有するトリス緩衝液に溶解さ
せ、次いで、超遠心分離に付す。上清をQ−セファロース(Sepharose)カラム
に入れる。TbpBを含有する直接溶離液を第2のQ−セファロースカラムに入
れ、該TbpBをNaCl勾配液で溶離する。分解生成物およびエンドトキシンを除
去するために、TbpBを含有するフラクションをS−300クロマトグフィー
カラム上でのゲル濾過により精製する。最終調製物を濾過滅菌し、冷凍する。
1D.ワクチン組成物
実施例1Aに記載したと同様に調製した4つのHTR、または、実施例1Bに
記載したと同様に調製した4つのTbpB、または、実施例1Cに記載したと同
様に調製した4つのTbpBのいずれかを一緒に用いる。
0.2mg/mlのオーダーの最終TbpB濃度を得るようにBZ83、8680
、M982およびM16B6BのTbpB調製物の各々を等モル量で混合するこ
とによりワクチン組成物を得る。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 15/09 ZNA C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 C12N 15/00 ZNAA
//(C12N 1/21
C12R 1:36)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML,
MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K
E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM
,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM)
,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,
BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D
K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,U
Z,VN,YU,ZW