JP2001352721A - 誘導電動機の固定子とその組立方法 - Google Patents

誘導電動機の固定子とその組立方法

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JP2001352721A
JP2001352721A JP2000165713A JP2000165713A JP2001352721A JP 2001352721 A JP2001352721 A JP 2001352721A JP 2000165713 A JP2000165713 A JP 2000165713A JP 2000165713 A JP2000165713 A JP 2000165713A JP 2001352721 A JP2001352721 A JP 2001352721A
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stator
rotor
induction motor
winding
outer ring
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JP2000165713A
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English (en)
Inventor
Kazumi Hasegawa
和三 長谷川
Shinichi Ozaki
伸一 尾崎
Toshio Takahashi
俊雄 高橋
Itsuki Kuwata
厳 桑田
Muneyasu Sugitani
宗寧 杉谷
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IHI Corp
Original Assignee
IHI Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 (1)ロータ構造を一体化し局所的な応力集
中をなくして高速回転を可能にでき、(2)ロータ表面
に発生する渦電流を低減して効率を高めることができ、
(3)ステータ内面から磁性体からなるロータコアまで
の距離を短縮して、その間の無効磁束を低減し力率を向
上することができ、(4)スロット開口部の内径側を接
合する幅を極力薄く、できればゼロにでき、(5)かつ
ステータの製造、固定子巻線の巻線作業および全体の組
立が容易にできる誘導電動機の固定子とその組立方法を
提供する。 【解決手段】 固定子20が、軸方向に積層された中空
円筒形の外側リング部材21と、外側リング部材に嵌合
し半径方向に延びるティース部22cを有する内側部材
22と、ティース部に巻かれた固定子巻線24とからな
る。内側部材22は、ティース部22cの内端に一体に
成形された内側リング部22aを有し、この内側リング
部の少なくとも一部が閉じた円形である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速回転用誘導電
動機の固定子とその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】回転できる銅の円板を馬蹄刑の永久磁石
ではさみ、磁石を矢印の方向へ動かすと、円板は磁石の
運動方向に回転する。これをアラゴの円板といい、誘導
電動機の動作原理を与えるものである。磁石の運動によ
り、円板に電流が流れ(フレミングの右手法則)、その
電流と磁石の磁束により回転力(フレミングの左手法
則)が生じ、磁石の運動と同一方向に円板は回転する。
【0003】多相誘導電動機は、アラゴの円板における
永久磁石の運動を多相交流を用いた回転磁界で置き換え
たものであり、回転磁界を作る固定子と回転する回転子
とからなる。アラゴの円板とは違って、磁束の方向を回
転子に垂直にし、回転子の誘導電流の方向を回転軸と平
行となるように配置される。従って、固定子と回転子は
同心円筒となる。
【0004】固定子は、多相電源より交流電力を受けて
回転磁界を作り、空隙を介して誘導作用によって回転子
の二次巻線に誘導電流を発生させ、その電流と回転磁界
の磁束により回転力(フレミングの左手法則)が生じ、
回転磁界と同一方向に回転子が回転する。
【0005】固定子は、通常、固定子枠内に収められた
固定子鉄心と固定子巻線からなる。固定子鉄心は、鉄損
を軽減するために薄板を軸方向に積層したものを用い
る。また、固定子巻線は、鉄心内の溝に納められ、多相
電源と接続して回転磁界を作る。
【0006】回転子は、通常、積層鉄心(ロータコア)
と回転子巻線からなる。回転子巻線は鉄心の溝内に納め
られる。回転子は、かご形回転子と巻線形回転子に分類
される。かご形回転子は、回転子溝(slot)におの
おの1本づつの銅棒を納め、その両端を短絡環(end
ring)で接続したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かご形誘導電動機を高
速回転(例えば10万min-1以上)させて、例えばタ
ーボコンプレッサ等を直接回転駆動させる場合に、装置
の信頼性を高め、装置を小型化し、かつ消費電力を少な
くするために、(1)高い周速に耐える強固な構造、
(2)高い効率、(3)高い力率が必要となる。
【0008】従来のかご形誘導電動機では、図8(A)
に示すように、一般に、ロータコア1に積層鋼板を用
い、導体2はかご形に形成し、ステータ3の歯部4a
は、半開口とし、空隙を短く(回転子の直径の0.5〜
1%)していた。しかし、この構造のかご形誘導電動機
は、周速の制限が大きく、かつ局所的な応力集中が生じ
る問題点があった。すなわち、高速回転による遠心力で
積層鋼板のロータコア1の中心部に応力集中が生じるた
め、その破壊を防ぐために、周速を例えば200〜23
0m/s程度に抑える必要があり、それ以上の高速回転
には適さない。また、ロータ表面に導体2の一部が出て
いるため、ロータコアのかご形の薄肉部に応力が集中す
る問題があった。
【0009】この問題を解決するために、「高速誘導電
動機の籠形回転子」(特開平06−253511号)や
「籠型誘導電動機用ソリッドロータ及びその製造方法」
(特開平10−127022号)、等では、図8(B)
に示すように、積層鋼板をソリッド化(一体化)して強
度を増し、更にかご形バーを保護するために埋め込んだ
構造のロータを提案している。しかし、かかるソリッド
・埋設かご形ロータは、(1)ロータ表面の電気伝導率
が上がり、ロータ表面に渦電流が発生する、(2)表面
の渦電流はトルクに寄与しないため損失となり、効率を
低下させる、(3)渦電流の影響は、ステータ歯端部の
磁束分布の不均一部分に集中する、等の問題点があっ
た。
【0010】更に、これらの問題点を解決するために、
「非同期電動機とこれに用いるロータとステータ」(米
国特許第5,473,211号)では、図8(C)に示
すように、導体をロータ表面に連続的に配置し、かつス
テータとの空隙を長くした構造が提案されている。すな
わち、この特許発明では、回転子表面全体を高電気伝導
性材料のコーティングで覆った一体構造として最大10
0万rpmの高速回転を可能にすると共に、ロータとス
テータの空隙(ギャップ)δを従来(回転子の直径の
0.5〜1%)よりも大きく設定して、ギャップの広が
りにより、磁束密度分布の高調波成分を減少させて、渦
電流損を減少させている。
【0011】しかし、かかる表面連続コーティング形ロ
ータ構造では、(1)空隙(ギャップ)δが大きくな
り、かつロータ表面が高電気伝導性材料のコーティング
で覆われるため、ステータ内面から磁性体からなるロー
タコアまでの距離(表面コーティング+空隙分)が大き
く、その部分での無効磁束が増加して力率が低下する、
(2)表面導体の電気伝導率が均一であるため、コーテ
ィング表面で渦電流が発生する、等の問題点があった。
【0012】更にこれらの問題点を解決するために、本
発明の発明者等は、スロットの内径側を接合する「高速
回転用かご形誘導電動機」を創案し出願した(特願20
00-013604、未公開)。しかしこの発明におい
て、接合する半径方向の幅が厚いと、漏れ磁束が多くな
る問題点があった。従って、特性向上のためには、漏れ
磁束を低減することが必要である。一方、漏れ磁束を低
減する一手段として、スロット開口部の内径側を接合す
る幅を極力薄く、できればゼロにできればよいが、この
場合、接合部がゼロのままではティース部分が構成でき
ず、現実的にはステータを製造することはできなくなっ
てしまう。
【0013】本発明はかかる問題点を解決するために創
案されたものである。すなわち、本発明の目的は、
(1)ロータ構造を一体化し局所的な応力集中をなくし
て高速回転を可能にでき、(2)ロータ表面に発生する
渦電流を低減して効率を高めることができ、(3)ステ
ータ内面から磁性体からなるロータコアまでの距離を短
縮して、その間の無効磁束を低減し力率を向上すること
ができ、(4)スロット開口部の内径側を接合する幅を
極力薄く、できればゼロにでき、(5)かつステータの
製造、固定子巻線の巻線作業および全体の組立が容易に
できる誘導電動機の固定子とその組立方法を提供するこ
とにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ロータ
コア(12)とロータ導体(14)とからなり互いに一
体に成形され全体で滑らかな円筒面を形成する回転子
(10)を有する誘導電動機用の固定子であって、該固
定子(20)は、軸方向に積層された中空円筒形の外側
リング部材(21)と、該外側リング部材に嵌合し半径
方向に延びるティース部(22c)を有する内側部材
(22)と、前記ティース部に巻かれた固定子巻線(2
4)とからなる、ことを特徴とする誘導電動機の固定子
が提供される。
【0015】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
内側部材(22)は、ティース部(22c)の内端に一
体に成形された内側リング部(22a)を有し、該内側
リング部の少なくとも一部が閉じた円形である。
【0016】上記本発明の構成によれば、ロータコア
(12)とロータ導体(14)が互いに一体に成形さ
れ、かつ全体が滑らかな円筒面を形成しているので、局
所的な応力集中がなく、遠心力による応力を引張強度の
高いロータコアにスムースに伝達することができ、高い
周速に耐えることができる。
【0017】また、固定子(20)が、軸方向に積層さ
れた中空円筒形の外側リング部材(21)と、半径方向
に延びるティース部(22c)を有する内側部材(2
2)と、ティース部に巻かれた固定子巻線(24)とか
らなるので、軸方向に積層された内側部材(22)の内
端部の少なくとも一部を閉じた円形にでき、かつ内側部
材のティース部(22c)には、外側から固定子巻線を
施すことができるので、スロットの開口部を非常に小さ
くでき、内側リング部(22a)により円周方向の空隙
部に発生する磁束密度分布が均一となり、ロータ表面に
発生する渦電流を低減することができる。
【0018】さらに、前記内側リング部(22a)の積
層方向の両端部または中間部が、半径方向の幅を厚くつ
なげた部材であるのがよい。この構成により、ティース
部をヨーク部に組み付ける時に支障のない程度の強度を
もたせることができる。
【0019】また、前記部材は、電磁鋼板または非磁性
材であるのがよい。内径接合部の半径方向の幅を厚くつ
なげた部材として、電磁鋼板を使用した場合でも、積層
方向の幅は数枚にすぎずこの部分を薄くできるので、飽
和磁束密度以上に磁束が流れないために漏れ磁束を低減
することができる。さらに、この部材に非磁性材を使え
ば、その部分は空気とほぼ同様の透磁率になるので、漏
れ磁束を低減することになる。
【0020】本発明によれば、ロータコア(12)とロ
ータ導体(14)とからなり互いに一体に成形され全体
で滑らかな円筒面を形成する回転子(10)を有する誘
導電動機の固定子の組立方法であって、(A)軸方向に
積層して中空円筒形の外側リング部材(21)を形成す
る外側リング組立ステップと、(B)並行して、軸方向
に積層して半径方向に延びるティース部(22c)と該
ティース部の内端に一体に成形された内側リング部(2
2a)とを有する内側部材(22)を形成する内側部材
組立ステップと、(C)内側部材(22)のティース部
(22c)に固定子巻線(24)を施す巻線ステップ
と、(D)固定子巻線と共に内側部材(22)を外側リ
ング部材(21)に同心に嵌合させる嵌合ステップとを
有する、ことを特徴とする誘導電動機の固定子の組立方
法が提供される。
【0021】この方法により、外側リング部材(21)
と内側部材(22)とを分離した状態で、巻線ステップ
において内側部材(22)のティース部(22c)に固
定子巻線(24)を施すことができ、かつ嵌合ステップ
において、固定子巻線と共に内側部材(22)を外側リ
ング部材(21)に同心に嵌合させることにより固定子
巻線を含む固定子(20)を容易に組み立てることがで
き、スロットの開口部がないステータを容易に製造する
ことができる。
【0022】本発明の好ましい実施形態によれば、更に
固定子巻線(24)のまわりを樹脂又はモールドにより
含浸させる。この方法により、固定子巻線の電気的絶縁
と内側部材(22)との機械的な一体化をより強固にす
ることができる。この含浸は、巻線ステップまたは嵌合
ステップのいずれでもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】誘導電動機の出力Pは、P=mE
Iηcosαで与えられる。ここで、mは相数、Eは相
電圧、Iは相電流、ηは効率、cosαは力率である。
誘導電動機を高速回転(例えば10万min-1以上)さ
せて、例えばターボコンプレッサ等を直接回転駆動させ
る場合に、効率が低いと、大きな入力(電流)が必要と
なり、駆動装置(例えばインバータ等)が大型となるば
かりか機械的出力に変換されない分は電動機内で熱とな
るため、様々な問題となる。また、力率が低いと、電圧
との位相差があるため、有効な入力にならない分、電流
を大きくする必要があり、より大きな出力となる駆動装
置が必要となる。従って、誘導電動機を高速回転(例え
ば10万min-1以上)させて、例えばターボコンプレ
ッサ等を直接回転駆動させる場合には、装置を小型化
し、かつ消費電力を少なくするために、高い効率と高い
力率が必要となる。
【0024】また、誘導電動機の相電圧Eは、磁束数φ
と周波数fに比例する。また、磁束数φは、ステータ内
径Diとステータ有効長さLsに比例する。従って、大
型のターボコンプレッサ等を直接回転駆動するための大
出力Pを得るためには、相電圧E、すなわち磁束数φを
大きくする必要があり、そのためにはステータ内径Di
とステータ有効長さLsの積を大きくする必要がある。
しかし、ステータ有効長さLsは、長すぎると危険速度
が低くなり、高速回転が困難となる。すなわち、ロータ
の安定性から、ステータ有効長さLsを短くして剛性を
高め、危険速度を使用する高速回転より高めておく必要
が生じる。その結果、その分ステータ内径Diが大きく
なり、周速が高くなるので、これに耐える強固な構造が
必要となる。
【0025】以下、本発明の好ましい実施形態を図面を
参照して説明する。図1は、本発明の固定子を有する高
速回転用誘導電動機の全体断面図であり、図2は、図1
のA−A断面図(A)、B−B断面図(B)及びC−C
断面図(C)である。
【0026】図1及び図2に示すように、この高速回転
用誘導電動機は、回転磁界を作る固定子20と、回転す
る回転子10(ロータ)とからなる。固定子20と回転
子10は、同軸に構成され、その軸心を中心に回転子1
0は図示しない軸受で両端支持されている。固定子20
は、多相電源より交流電力を受けて軸心を中心とする回
転磁界を作り、空隙を介して誘導作用によって回転子1
0の二次巻線(後述するに棒状導体14b)に誘導電流
を発生させ、その電流と回転磁界の磁束により回転力
(フレミングの左手法則)が生じ、回転磁界と同一方向
に回転子10が回転する。
【0027】図3は、本発明の固定子の全体斜視図であ
る。図2(A)及び図3に示すように、固定子20は、
固定子枠(図示せず)内に収められ外側リング部材2
1、内側部材22及び固定子巻線24とからなる。外側
リング部材21及び内側部材22は、鉄損を軽減するた
めに電磁鋼板を軸方向に積層したものを用いる。内側部
材22は、外側リング部材21に嵌合し半径方向に延び
るティース部22cを有する。また、内側部材22は、
ティース部22cの内端に一体に成形された内側リング
部22aを有する。この内側リング部22aの少なくと
も一部(図3では両端部)が閉じた円形に形成されてい
る。
【0028】図4は、本発明の固定子を構成する部品図
である。この図において、(A)は図3の固定子20の
両端部分を構成する部品であり、(B)は中間部分を構
成する部品である。固定子20の外側リング部材21を
構成するリング状の平板は、両端部分(A)と中間部分
(B)とで同一であり、これを積層し、タボ、接着、溶
接等で一体化して中空円筒形に形成される。また、固定
子20の内側部材22を構成する平板は、両端部分と中
間部分とで異なる。すなわち両端部分(A)では、ティ
ース部22cの内端に一体に成形された内側リング部2
2aを有するが、中間部分(B)では、内側リング部2
2aがなく、各ティース部22cが互いに僅かに隙間を
隔てている。なお、これらのティース部22cを積層
し、同様にタボ、接着、溶接等で一体化して上述した内
側部材22が形成される。
【0029】なお、図4(C)に示すように、内側リン
グ部22aを有するが、その半径方向の幅が極めて小さ
いもの、すなわちスロット開口部の内径側を接合する幅
が薄くほとんどゼロに近いものを、(B)の中間部分の
代わりに用いてもよい。
【0030】図5は、本発明の固定子の組立方法を示す
模式図である。この図に示すように、上述した固定子2
0は、外側リング組立ステップ(A)、内側部材組立ス
テップ(B)、巻線ステップ(C)、及び嵌合ステップ
(D)からなる。外側リング組立ステップ(A)では、
軸方向に積層して中空円筒形の外側リング部材(21)
を形成する。内側部材組立ステップ(B)では、並行し
て、軸方向に積層して内側部材22を形成する。この内
側部材22は、半径方向に延びるティース部22cとテ
ィース部22cの内端に一体に成形された内側リング部
22aとからなる。巻線ステップ(C)では、内側部材
22のティース部22cに図で外側から図示しない固定
子巻線24を施す。更にこの巻線ステップにおいて、固
定子巻線24のまわりを樹脂又はモールドにより含浸さ
せるのがよい。またこの含浸は、嵌合ステップの後でも
よい。最後に嵌合ステップ(D)で、固定子巻線24と
共に内側部材22を外側リング部材21に同心に嵌合さ
せる。この嵌合は、内側部材22を外側リング部材21
が強固に一体化するように「止まり嵌め」又は「締まり
嵌め」であるのがよい。
【0031】図6は、本発明の固定子の組立方法を示す
別の模式図である。この図に示す組立方法では、内側部
材組立ステップ(B)において、中間部の半径方向に延
びるティース部22cと両端部の内側リング部22aを
積層して、一体化している。その他の構成は、図5と同
様である。
【0032】図5又は図6の巻線ステップ(C)でティ
ース部22cに巻かれた固定子巻線24は、図2(A)
に示すようにスロット23を通して納められている。こ
の固定子巻線25は、銅線(マグネットワイヤ)又はリ
ッツ線により構成され、従来の誘導電動機と同様に、外
部の多相電源と接続して回転磁界を作るようになってい
る。
【0033】また、固定子20と回転子10の空隙6
(δ)は、ロータ表面の冷却を行う空気が流れる程度の
必要最小限度とし、少なくとも、従来(回転子の直径の
0.5〜1%)と同等以下に設定されている。この構成
により、空隙を短くすることで、空隙部の磁気抵抗が減
少し、それに伴い起磁力が小さくなるため、無効電流が
減少し、力率の向上が望める。
【0034】更に図1及び図2(B)(C)に示すよう
に、高速回転用誘導電動機の回転子10は、ロータコア
12とロータ導体14とからなる。ロータコア12は、
高透磁率を有し相対的に電気伝導率が低い軟磁性材料、
例えば、引張強度の高いクロムモリブデン鋼からなる。
また、ロータ導体14は、低透磁率を有し相対的に電気
伝導率が高い導電材料、例えば、銅、アルミニウム又は
これらの合金からなる。
【0035】またロータコア12とロータ導体14は、
例えばHIP装置(hot isostatic pr
essing)により強固に接合され、かつ互いに一体
に成形され全体が滑らかな円筒面を形成している。
【0036】また、図2(B)(C)の例では、ロータ
導体14は、固定子より外側でロータコアをリング状に
囲む円筒状の1対のエンドリング部14aと、エンドリ
ング部14aの間を周方向に間隔を隔てて連結する複数
の棒状導体14bとからなる。エンドリング部14a
は、複数の棒状導体14bの両端部に接して設けられ
る。また、エンドリング部14aの軸方向長さ(深さ)
は、棒状導体14bよりも大きく設定されている。この
エンドリング部14aは、従来のかご形回転子の短絡環
と同様に機能する。なお、本発明はこの構成に限定され
ず、図8(B)又は図8(C)のような構成であっても
よい。
【0037】上述した本発明の構成によれば、ロータコ
ア12とロータ導体14が互いに一体に成形され、全体
が滑らかな円筒面を形成しているので、局所的な応力集
中がなく、遠心力による応力を引張強度の高いロータコ
アにスムースに伝達することができ、高い周速に耐える
ことができる。すなわち、ロータコア12とロータ導体
14がHIP装置等により強固に接合されているため、
遠心力による応力がロータコアの中心部に集中して、高
い周速に耐えることができる。また、突極部を設けたロ
ータは、効率、力率を改善する効果が望める。
【0038】図7は、ステータと磁束密度の関係図であ
る。この図において、(A)は本発明によるステータ
(外側リング部材21と内側部材22)、(B)と
(C)は従来のステータ4である。なお、各ステータ
は、ロータ10を囲んで切れ目なく構成されており、図
ではその上部のみを示している。
【0039】上述したように本発明のステータ(外側リ
ング部材21と内側部材22)では、ステータ内径の開
口部を実質的になくして、スロット部分の肉厚が中心に
向かって薄くなっている。以下、この構造を無開口スロ
ットと呼ぶ。これに対して、(B)は半開口スロット、
(C)は全開口スロットであり、スロットの内端部が開
いている。
【0040】図7において、各図の下図は、ロータ表面
の磁束密度を模式的に示している。開口部のあるステー
タ(B)(C)では、(1)ステータの歯部4aから出
る磁束7が空隙部分で粗と密の状態となる、(2)空隙
を短くすると、ロータ表面の磁束分布の不均一性が増加
し、渦電流が増加する、(3)空隙を長くすると、ロー
タ表面の磁束分布の不均一性が減少して渦電流は減少す
るが、力率が低くなる。従って、開口部のあるステータ
(B)(C)では、疎密の磁束密度により、渦電流の増
加、或いは力率の低下が避けられないことがわかる。
【0041】一方、開口部のない本発明のステータ
(A)では、ティース部22cからでる磁束7が、内側
リング部22aの存在により空隙部分で均一の状態にな
る。従って、空隙を短くしても、ロータ表面の磁束密度
が均一になるため、渦電流損失が減り、かつ力率も高く
なる。すなわち、本発明では空隙6は、ロータ表面の冷
却を行う空気が流れる程度の必要最小限度とし、少なく
とも、従来(回転子の直径の0.5〜1%)と同等以下
に設定されているが、空隙を短くしてもステータ内径に
開口部を無くすことで、磁束分布が均一となり、ロータ
表面に発生する渦電流が低減されて、効率の向上が望め
る。
【0042】上述したように、ステータのスロット開口
部を接合する場合、接合部の厚さを極力薄くなることで
漏れ磁束を低減することができるが、実際にステータを
製造する場合、ティース部分とヨーク部分を分割すると
組立時にティース部分が壊れないように接合部を厚くす
る必要があり、結果的に漏れ磁束を小さくすることが困
難であった。これに対して本発明ではステータ内径側を
つなげるティース部の接合部品を、電磁鋼板で構成され
るステータの積層方向の両端部に設けた。また必要によ
り中間部にも設ける。更に接合部品以外のステータ電磁
鋼板のステータ内径側は極力薄くした。これにより、組
立時の強度を保つことができると共に、ティース接合部
の漏れ磁束を大幅に低減することができる。なお、接合
部品は、電磁鋼板の他に非磁性の材料を用いてもよい。
またステータ内径側は完全に接合していなくても、組み
立てることができる。
【0043】なお、本発明は上述した実施の形態に限定
されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更でき
ることは勿論である。
【0044】
【発明の効果】上述したように、本発明の誘導電動機の
固定子とその組立方法は、(1)ロータ構造を一体化し
局所的な応力集中をなくして高速回転を可能にでき、
(2)ロータ表面に発生する渦電流を低減して効率を高
めることができ、(3)ステータ内面から磁性体からな
るロータコアまでの距離を短縮して、その間の無効磁束
を低減し力率を向上することができ、(4)スロット開
口部の内径側を接合する幅を極力薄く、できればゼロに
でき、(5)かつステータの製造、固定子巻線の巻線作
業および全体の組立が容易にできる等の優れた効果を有
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固定子を有する高速回転用誘導電動機
の全体断面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明の固定子の全体斜視図である。
【図4】本発明の固定子を構成する部品図である。
【図5】本発明の固定子の組立方法を示す模式図であ
る。
【図6】本発明の固定子の組立方法を示す別の模式図で
ある。
【図7】図1のステータと磁束密度の関係図である。
【図8】従来の誘導電動機の固定子と回転子の模式図で
ある。
【符号の説明】
1 ロータコア、2 導体、3 固定子(ステータ)、
4 固定子鉄心、4a 歯部、5 固定子巻線、6 空
隙(δ)、7 磁束、10 回転子(ロータ)、12
ロータコア、14 ロータ導体、14a エンドリング
部、14b 棒状導体、20 固定子、21 外側リン
グ部材、22 内側部材、22a 内側リング部、22
c ティース部、23 スロット、24 固定子巻線
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H02K 17/08 H02K 17/08 G (72)発明者 高橋 俊雄 東京都江東区豊洲3丁目2番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 (72)発明者 桑田 厳 東京都江東区豊洲3丁目2番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 (72)発明者 杉谷 宗寧 東京都江東区豊洲3丁目2番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 Fターム(参考) 5H002 AA02 AA07 AA09 AB01 AB06 AC02 AC04 AC05 AC10 5H013 FF01 LL00 MM00 NN05 NN06 NN10 PP01 PP03 5H604 AA08 BB01 BB09 BB14 CC01 CC05 CC13 DB01 PB03 PE06 5H615 AA01 BB01 BB06 BB14 PP01 PP03 PP06 QQ02 QQ12 SS05 SS15 SS16 SS18 SS19 SS24 SS44 TT01 TT04 TT14 TT15 TT16 TT26

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロータコア(12)とロータ導体(1
    4)とからなり互いに一体に成形され全体で滑らかな円
    筒面を形成する回転子(10)を有する誘導電動機用の
    固定子であって、 該固定子(20)は、軸方向に積層された中空円筒形の
    外側リング部材(21)と、該外側リング部材に嵌合し
    半径方向に延びるティース部(22c)を有する内側部
    材(22)と、前記ティース部に巻かれた固定子巻線
    (24)とからなる、ことを特徴とする誘導電動機の固
    定子。
  2. 【請求項2】 前記内側部材(22)は、ティース部
    (22c)の内端に一体に成形された内側リング部(2
    2a)を有し、該内側リング部の少なくとも一部が閉じ
    た円形である、ことを特徴とする請求項1に記載の誘導
    電動機の固定子。
  3. 【請求項3】 前記内側リング部(22a)の積層方向
    の両端部または中間部が、半径方向の幅を厚くつなげた
    部材である、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導電
    動機の固定子。
  4. 【請求項4】 前記部材は、電磁鋼板または非磁性材で
    ある、ことを特徴とする請求項3に記載の誘導電動機の
    固定子。
  5. 【請求項5】 ロータコア(12)とロータ導体(1
    4)とからなり互いに一体に成形され全体で滑らかな円
    筒面を形成する回転子(10)を有する誘導電動機の固
    定子の組立方法であって、 (A)軸方向に積層して中空円筒形の外側リング部材
    (21)を形成する外側リング組立ステップと、 (B)並行して、軸方向に積層して半径方向に延びるテ
    ィース部(22c)と該ティース部の内端に一体に成形
    された内側リング部(22a)とを有する内側部材(2
    2)を形成する内側部材組立ステップと、 (C)内側部材(22)のティース部(22c)に固定
    子巻線(24)を施す巻線ステップと、 (D)固定子巻線と共に内側部材(22)を外側リング
    部材(21)に同心に嵌合させる嵌合ステップとを有す
    る、ことを特徴とする誘導電動機の固定子の組立方法。
  6. 【請求項6】 更に固定子巻線(24)のまわりを樹脂
    又はモールドにより含浸させる、ことを特徴とする請求
    項5に記載の誘導電動機の固定子の組立方法。
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