JP2001347665A - サーマルインクジェットプリンタヘッド - Google Patents

サーマルインクジェットプリンタヘッド

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JP2001347665A
JP2001347665A JP2000173467A JP2000173467A JP2001347665A JP 2001347665 A JP2001347665 A JP 2001347665A JP 2000173467 A JP2000173467 A JP 2000173467A JP 2000173467 A JP2000173467 A JP 2000173467A JP 2001347665 A JP2001347665 A JP 2001347665A
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insulating film
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electrode
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JP2000173467A
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Osamu Nakamura
修 中村
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Casio Computer Co Ltd
Original Assignee
Casio Computer Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】密着性と絶縁性に優れた酸化物絶縁膜からなる
保護膜が被着された発熱素子を備え信頼性に富むサーマ
ルインクジェットプリンタヘッドとその製造方法を提供
する。 【解決手段】印字ヘッド20は、基板21上にパターン
化されたTa−Si−O−N系の発熱抵抗体膜22の発
熱部22aの両側に、W−Ti系の下地電極層23とA
uの上部電極膜24からなる二層構造の個別配線電極2
5及び共通電極26が形成され、これらの上に、Ta−
Si−O系の高抵抗層27と絶縁層28の2層構造の酸
化物絶縁膜29が形成されている。下部層の高抵抗層2
7は成膜時の導入混合ガスの酸素濃度を2%と低くした
ことにより上部電極膜24のAuと高い密着性を有す
る。上部層の絶縁層28は成膜時の酸素濃度を3%と高
くしたことによりAuとの密着性はやや劣るが高い絶縁
性を有する。この絶縁層28をAuとではなく親和性の
強い高抵抗層27に重畳する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、密着性と絶縁性に
優れた保護膜が被着された発熱素子を備え信頼性に富む
サーマルインクジェットプリンタヘッドとその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、取り扱いが比較的軽便なイン
クジェット方式のプリンタが主流となって広く用いられ
ている。このインクジェット方式によるプリンタには、
インクを加熱し気泡を発生させてその圧力でインク滴を
飛ばすサーマルジェット方式や、ピエゾ抵抗素子(圧電
素子)の変形によってインク滴を飛ばすピエゾジェット
方式等がある。これらは、記録材たるインクをインク滴
にして印字ヘッドのノズルから噴射させて、そのインク
滴を紙、布などの被記録材に吸収させて文字や画像等の
記録(印字、印刷)を行なうものであり、騒音の発生が
少なく、特別な定着処理を要することもなく、インクの
無駄の無い印字方法である。
【0003】また、従来は専らモノクロ印字のプリンタ
だけであったが、現在では、むしろフルカラー印字のプ
リンタが主流となっている。フルカラー印字は、通常、
減法混色の三原色であるイエロー(黄色)、マゼンタ
(赤色染料名)及びシアン(緑味のある青色)の3色の
インクを用い、ものによっては、文字や画像の黒色部分
に専用されるブラック(黒)を加えた4色のインクを用
いて行なわれる。
【0004】図6(a) は、そのような印字を行うインク
ジェットプリンタに搭載されて印字を実行するモノクロ
用のサーマルインクジェットプリンタヘッド(以下、単
に印字ヘッドという)を模式的に示す図であり、同図
(b) は、4色フルカラー用の印字ヘッドを示す図、同図
(c) は、同図(a) のA−A′断面矢視図または同図(b)
のB−B′断面矢視図であり、同図(d) は、同図(a) 又
は同図(b) に示す印字ヘッドが製造されるシリコンウエ
ハを示す図である。尚、同図(a) に示す印字ヘッド1−
1及び同図(b) に示す印字ヘッド1−2は、いずれも印
字される用紙側から見た印字ヘッド1−1、1−2のイ
ンク吐出面を示している。
【0005】図6(a) に示すように、印字ヘッド1−1
は、チップ基板2の表面(インク吐出面)に天板3を積
層され、その天板3にはドライエッチング等の孔空け加
工による多数の吐出ノズル4が縦一列に(同図(b) の印
字ヘッド1−2では縦4列に)配置されてノズル列5を
形成し、チップ基板2の上記ノズル列方向の一方の端部
(同図(a),(b) では上端部)には、共通給電端子6と駆
動回路端子7が形成されている。
【0006】図6(a) の印字ヘッド1−1は前述したよ
うにモノクロプリンタ用の印字ヘッドであり、同図(b)
の印字ヘッド1−2は、同図(a) の印字ヘッド1−1の
構成を、このチップ基板2よりも大きいチップ基板8上
に、モノリシックに4列並べて形成したものである。上
記の印字ヘッド1−1又は1−2は、いずれも、同図
(d) に示すように、4×25.4mm或は6×25.4
mm等の大きさのシリコンウエハ9の上に多数(例えば
90個以上)区画されたチップ基板2又は8上において
製造される。
【0007】同図(c) を用いて各チップ基板2又は9に
形成される印字ヘッド1−1、1−2の内部構造を簡単
に説明する。先ず、チップ基板2(又は9、以下同様)
の表層部の所定の位置に、LSI形成処理技術により、
MOSトランジスタ等からなる駆動回路11が形成され
ている。
【0008】更に、チップ基板2の表面には、薄膜形成
処理技術により、ストライプ状の複数の発熱抵抗体の発
熱部12、この発熱部12と上記駆動回路11のドライ
バとを接続する個別配線電極13、発熱部12に駆動電
圧を供給する共通電極14、及び図6(a) に示す共通給
電端子6と駆動回路端子7が形成されている。ここで、
印字ドットを形成するための各発熱素子は、個々の発熱
部12とその両端の領域に積層された個別配線電極13
と共通電極14とで形成されている。
【0009】また、上記個別配線電極13、発熱部12
及び共通電極14を挟んで駆動回路11の反対側には、
サンドブラスト法等のドライエッチング加工により発熱
部12にインクを供給する溝状の共通インク溝15が基
板表面側に形成され、この共通インク溝15に外部から
のインクを供給するためのインク供給孔16が基板裏面
に貫通させて形成されている。共通インク溝15は発熱
部12の並設方向(図6(c) では紙面垂直方向)に細長
い溝状に延設されており、この共通インク溝15に連通
する例えば2個のインク供給孔16が裏面に貫通させて
形成されている。
【0010】そして、これらの上に、フォトリソグラフ
ィー技術により隔壁17(シール隔壁17−1、17−
2、加圧室隔壁17−3)が積層されている。加圧室隔
壁17−3は、隣接する発熱素子を個々に仕切るように
形成されており、これにより、シール隔壁17−2及び
加圧室隔壁17−3により発熱素子の発熱部12を三方
から取り囲むインク加圧室18が形成されている。
【0011】更に、この隔壁17の上に天板3が積層さ
れている。この天板3に覆われて、隔壁17の高さに対
応するおよそ10μmの高さのインク供給路19が、イ
ンク加圧室18と共通インク溝15間に形成される。そ
して、上記の天板3には、特には図示しない金属膜マス
クに基づいてドライエッチングして形成された直径およ
そ20〜30μmの吐出ノズル4が上記発熱部に対向す
るように配置されている。
【0012】この後、ダイシングソーなどを用いてシリ
コンウエハ10をチップ基板2毎にカッティングして個
々に採取し、その採取したチップ基板2の背面をアルミ
ニウム材等の放熱板を兼ねる親基板にダイボンデング
し、ワイヤボンディングにより端子接続し、樹脂保護層
を形成して、同図(a) に示す印字ヘッド1−1又は同図
(b) に示す印字ヘッド1−2のような実用単位の印字ヘ
ッドが完成する。
【0013】ところで、品質改善の為の実験過程におい
て、上記のような印字ヘッド1−1、1−2により印字
を実行するに際して、駆動回路11により発熱部12を
発熱させるべく電極に通電すると、発熱部12で膜気泡
が発生するばかりでなく、共通電極14や個別配線電極
13及び共通インク溝15やインク供給孔16の内壁に
も微細な気泡が発生する。
【0014】このようにインク流路内に気泡が発生する
と、インクの安定した流量を確保することができず、ま
た、インク滴を吐出する際の圧力の伝わり方にも悪影響
を及ぼすようになり、全体としてインクの良好な吐出性
能を阻害し、印字品質を顕著に低下させるという問題が
発生する。
【0015】そこで、上記の微細気泡発生の要因を調べ
てみると、次のようなことが判明した。通常のインクジ
ェットプリンタ用のインクは一般に弱電解質溶液であ
る。そして、駆動回路11の論理回路には駆動回路端子
7(図6(a) 参照)を介して5Vの信号用電源電圧が供
給され、共通電極14には共通給電端子6(図6(a) 参
照)を介して発熱駆動用電源から15〜20Vの駆動電
圧が供給されている。また、チップ基板2は接地されて
いる。そして、発熱部12とこれに接続する共通電極1
4と個別配線電極13の一部、及びインク供給溝15と
インク供給孔16の内壁は、インクに直接曝されてい
る。
【0016】他方、駆動回路11の不図示の駆動トラン
ジスタからなるドライバがオフのときは、共通電極1
4、発熱部12及び個別配線電極13は同電位になって
おり、チップ基板2との間には、15〜20Vの電位差
が生じている。また、駆動回路11の不図示の論理回路
により、いずれかのドライバが選択されてオンとなり、
共通給電端子6、共通電極14、発熱部12、個別配線
電極13及び接地配線と順次電流が流れて、選択された
発熱部12が発熱するときにおいても、個別配線電極1
3の電位は発熱部12での電圧降下分共通電極14より
低くなっているだけである。
【0017】したがって、ドライバのオン/オフに拘ら
ず、発熱駆動用電源がオンしている間は、共通電極1
4、発熱部12及び個別配線電極13は、接地されたチ
ップ基板2との間に略15〜20Vの電位差が生じてお
り、共通電極14及び個別配線電極13と、インク供給
溝15及びインク供給孔16の内壁との間に、インクの
固有抵抗を介した電気回路が形成される。
【0018】そして、この電気回路に流れる電流による
電気化学反応によりインクが電気分解され、陽極側であ
る共通電極14、発熱部12、及び個別配線電極13で
は酸素が発生し、陰極側であるインク供給溝15及びイ
ンク供給孔16の内壁には水素が発生する。そして、こ
れらが微細な気泡となってインク吐出に悪影響を及ぼす
ということが判明した。
【0019】また、図6(c) には図示しなかったが、発
熱部12を発熱駆動する個別配線電極13及び共通電極
14は、下地電極膜と上部電極膜から成る二層構造の電
極層で形成されている。そして、個別配線電極13及び
共通電極14は、単に表面部ばかりでなく上記二層構造
の電極の側壁も常時インクに接触している。
【0020】一般に、固体または液体の異種の導電体の
相が接触したとき、両相の外部電位(表面すぐ外側の真
空部分の電位)の間に生じる電位差をボルタ電位差また
は接触電位差というが、両相が電荷を持たない金属であ
る場合、その接触電位差によって、電子の仕事関数の小
さい金属から大きい金属に向かってトンネル効果と呼ば
れる電子の移動が発生する。
【0021】このような電子の移動は本来は両金属中の
電子の電気化学的ポテンシャルが等しくなるところで平
衝に達するが、上部電極膜(例えばAu)と下地電極膜
(例えばW−Ti)の場合は、その側壁がインクという
電解質の中に存在するため平衝反応に到達することが無
く、アノード溶解反応が連続的に生じて接合部から腐蝕
反応(電蝕作用)がどんどん進行し、ついには印字ヘッ
ドの構造破壊を引き起こす。
【0022】そこで、共通電極14、発熱部12及び個
別配線電極13から成る発熱素子の少なくともインクと
接触する部分を適宜の絶縁膜で被覆すれば上述した微細
気泡発生の不具合や連続的アノード溶解反応による電極
破壊のような不具合は解消できるはずであると考えられ
た。そして、一般にそのような絶縁膜としては、例え
ば、物理的な気相成長法であるPVD(Physical Vapor
Deposition )法によるスパッタ又は真空蒸着によるS
iO2 、TaSiO等の酸化物からなる絶縁膜の成膜、
あるいは化学的気相成長法であるCVD(Chemical Vap
or Deposition )法によるSiO2 、SiN等の絶縁膜
を成膜する方法などが提案されている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の絶縁
膜は、いずれも配線電極との良好な密着性が得られない
とう問題点を有していた。特に、配線電極がAuの場合
に、密着性が悪い。そのように、絶縁膜と配線電極とに
良好な密着性が得られないと、やがては絶縁膜と配線電
極との間に剥離を引き起こし、この剥離によって絶縁膜
に亀裂が発生する。絶縁膜に亀裂が発生すると、その亀
裂からインクが進入し、上述した電極とインク間の絶縁
不良によるインクの電気分解に基づく微細気泡の発生
や、インクとの接触による電極の腐食とこの腐蝕からく
る断線や電極剥離等による信頼性低下などのの悪影響が
再び発生して、絶縁膜を形成した意味が失われてしまう
という問題に発展する。
【0024】本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、
密着性と絶縁性に優れた保護膜が被着された発熱素子を
備え信頼性に富むサーマルインクジェットプリンタヘッ
ドとその製造方法を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】先ず、請求項1記載の発
明のサーマルインクジェットプリンタヘッドは、インク
を加熱して発生させる気泡の圧力によりインクを所定方
向に噴射させて記録を行うサーマルインクジェットプリ
ンタヘッドであって、少なくとも表面部が絶縁層である
絶縁性基板と、該絶縁性基板上に配設され、発熱抵抗体
からなる発熱部に一対の電極を接続してなる複数の発熱
素子と、少なくとも上記発熱素子に被着された酸化物絶
縁膜と、を備え、上記酸化物絶縁膜は、上記電極又は発
熱部と接する底面部よりも表面部の方が酸素含有率が高
くなるように構成される。
【0026】上記酸化物絶縁膜は、例えば請求項2記載
のように、上記電極又は発熱部と接する底面層と該底面
層に重畳した表面層からなる2層構造膜であることが好
ましく、また、例えば請求項3記載のように、上記底面
部から上記表面部にかけて酸素含有率が徐々に高くなる
単層構造膜であっても良い。そして、上記酸化物絶縁膜
は、例えば請求項4記載のように、上記底面部における
3eVの光の透過率が65%以下であり、上記表面部に
おける3eVの光の透過率が65%より大であるように
形成してもよく、また、例えば請求項5記載のように、
上記底面部における光の屈折率が2.2より大きく、上
記表面部における光の屈折率が2.2以下であるように
形成してもよい。
【0027】そして、上記サーマルインクジェットプリ
ンタヘッドは、例えば請求項6記載のように、上記酸化
物絶縁膜はTa−Si−O系膜であり、上記電極はAu
で構成されることが好ましい。また、上記発熱抵抗体
は、例えば請求項7記載のように、少なくともTa、S
i、Oの3元素を含む電気抵抗体で構成されることが好
ましい。
【0028】次に、請求項8記載のサーマルインクジェ
ットプリンタヘッドの製造方法は、インクを加熱して発
生させる気泡の圧力によりインクを所定方向に噴射させ
て記録を行うサーマルインクジェットプリンタヘッドの
製造方法であって、少なくとも表面部が絶縁層である絶
縁性基板上に発熱抵抗体からなる発熱部に一対の電極を
接続してなる複数の発熱素子を設置する工程と、少なく
とも上記発熱素子に酸化物絶縁膜をスパッタリングによ
り被着する絶縁膜形成工程と、を備え、上記絶縁膜形成
工程において、上記酸化物絶縁膜の上記電極又は発熱部
と接する底面部を形成するときのスパッタリング装置の
チャンバ内に導入するガス中の酸素ガスの第1の割合
が、上記酸化物絶縁膜の表面部を形成するときの上記チ
ャンバ内に導入するガス中の酸素ガスの第2の割合より
も小さいように構成される。
【0029】そして、上記チャンバ内に導入するガス
は、例えば請求項9記載のように、ArとO2 の混合ガ
スであり、上記第1の割合が2〜2.5%であり、上記
第2の割合が3〜3.5%であるようすることが好まし
い。また、上記チャンバ内に導入するガス中の酸素ガス
の割合を、例えば請求項10記載のように、スパッタリ
ング経過時間と共に増加させることが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら説明する。図1(a) は、第1の実施の形
態におけるサーマルインクジェットプリンタヘッド(以
下、印字ヘッド)の発熱素子の近傍の構造(図6(c) 参
照)を隔壁と天板を除いて示す拡大図であり、同図(b)
は、そのC−C′断面矢視図である。本実施形態の印字
ヘッドは、図6に示した印字ヘッド1−1と略同様の製
造工程を経て製造されるが、同一シリコン基板上にプリ
ンタヘッド部と駆動回路を搭載したモノリシック型印字
ヘッドではなく、一枚のガラス基板等の絶縁性基板上に
複数のプリンタヘッド部を形成して分割した後に駆動回
路とボンデイングする印字ヘッドである。
【0031】図1(a),(b) に示すように、この印字ヘッ
ド20は、絶縁性基板21の上に条形にパターン化され
た発熱抵抗体膜22が配置されている。そして、この発
熱抵抗体膜22の発熱部22aとなる部分の両側に、同
じくパタ−ン化されて積層された下地電極層23と上部
電極膜24からなる二層構造の個別配線電極25と共通
電極26が配置されている。これにより、これら発熱部
22a、個別配線電極25及び共通電極26によって形
成される条形の発熱素子が絶縁性基板21の表面に多数
並設されて形成される。
【0032】上記の絶縁性基板21は例えばガラス基板
であり、発熱抵抗体膜22は例えばTa−Si−O−N
系化合物からなる厚さおよそ500nmの薄膜であり、
発熱部22aは電圧を印加されて発熱する部分である。
そして、発熱部22aの両側に積層される下地電極層2
3は例えばW−Ti系からなる厚さ100nm〜300
nmの薄膜であり、この上に積層される上部電極膜24
は例えばAuからなる厚さ300nm〜1000nmか
らなる薄膜である。
【0033】このように、電極を二層構造にするのは、
発熱抵抗体膜22と電気良導体である上部電極膜24と
では良い接着性が得られないため、発熱抵抗体膜22と
上部電極膜24との両方に良い接着性を有する下地電極
層23を介在させる必要があるからである。
【0034】ところで、SiO2 やTaSiOあるいは
SiN等の絶縁膜がAu等の電極膜との接着性が良くな
いことは前述した。そこで、本例では、発熱素子に被覆
する酸化物絶縁膜29を、上部電極膜24及び基板21
表面と直接密着すべき底面部としての上部電極膜24の
Auに高い密着性を有する高抵抗層27と、上部電極膜
24のAuとは密着性はやや劣るが高抵抗層27とは高
い密着性を有する表面部としての絶縁層28を高抵抗層
27の上に積層した2層構造に形成している。ここで、
酸化物絶縁膜29は、発熱素子の絶縁性基板21と接す
る面以外の面、つまり表面だけでなく両側面及び端面を
含むインクと接触する可能性のある露出面を全て被覆す
るように被着されている。
【0035】上記の高抵抗層27及び絶縁層28はいず
れもTa−Si−O系膜から成り、酸素の含有率が異な
るだけの構成となっている。そして、Ta−Si−O系
膜は酸素の含有率の程度によって絶縁性やAuとの密着
性が変化する特性があることが実験の結果判明してい
る。
【0036】図2(a) は、上記の酸化物絶縁膜29を形
成するときのTa−Si−O系膜の成膜条件と抵抗率と
の関係を示す図表であり、同図(b) は、同じくその成膜
条件と金(Au)との密着性との関係を示す図表であ
り、同図(c) は、同じくその成膜条件とシリコン基板の
絶縁保護膜(パッシベーション膜:Si3 4 )との密
着性との関係を示す図表である。同図(a),(b),(c) は、
いずれも左端上から試料番号1〜試料番号7を示し、中
央欄には成膜条件を示している。
【0037】上記Ta−Si−O系膜の成膜には、マグ
ネトロンスパッタ装置を使用した。そして、ターゲット
には、Ta:SiO2 =60:40のHIP焼結体ター
ゲットを使用した。また、成膜時にスパッタ装置のチャ
ンバ内にArとO2 の混合ガス「Ar+O2 」を導入し
ている。同図(a),(b),(c) の中央欄の成膜条件はこの導
入する混合ガス「Ar+O2 」中の酸素ガスの割合(体
積%)を示したものである。この成膜時における混合ガ
ス「Ar+O2 」中の酸素ガスの割合は、同図(a),(b),
(c) に示す例では、表の上から0.5%、2%、2.5
%、3%、3.5%、4%、及び6%となっている。
【0038】同図(a) の右端欄には試料毎に測定した抵
抗率が示されている。同図(a) に示すように、酸素導入
量が増加するにつれて試料膜の抵抗率は増大する。すな
わち、上から最初の試料番号1の試料の抵抗率は8.1
mohm.cm、次の試料番号2の試料の抵抗率は10
kohm.cmとなっており、酸素導入量が増加するに
つれて順次高抵抗体に変化していくことを示している。
【0039】そして、酸素導入量が2.5%以上である
3番目の試料番号3の試料から試料番号7の試料では、
抵抗率の測定が不可能であり、いずれも実質的に絶縁体
であることを示している。
【0040】また、同じ試料番号1〜7の試料について
金(Au)との接着性について調査してみると、同図
(b) の右端欄に示すように評価できることが判明する。
これらの評価において、剥離や密着性の良し悪しの評価
は、目視又は顕微鏡観察によっており、剥離やピンホー
ルのないものは密着性良好としている。ただし試料番号
1については未評価である。
【0041】このような観察の結果、試料番号2の試料
は(同図(a) で判明しているように絶縁体ではなく高抵
抗体であるが)、Auとの密着性は特に良好であり、強
度もあることが観察された。また、試料番号3及び4に
ついては、密着性が良好であることが観察され、そして
試料番号5〜7については成膜後数時間又は直後から剥
離が発生することが観察された。
【0042】また、これらの事実は、単なる試料による
観察のみでなく、実際に印字ヘッドを作る全工程を通過
後、つまり最終段階の隔壁形成やオリフィス板の積層な
どの終了後における観察においても同様であった。
【0043】これらの実験結果を総合すると、試料番号
1は抵抗率が低いので導体に近く、したがって絶縁膜と
して使用することはできない。試料番号5〜7では、A
uとの剥離が見られる。
【0044】残る試料番号2、3及び4について考察す
ると、特に試料番号2の試料はAuとの密着性が他の試
料に比較して極めて良好である。但し、この試料番号2
の試料は絶縁体ではない、しかし極めて高い抵抗率を有
している。
【0045】他方、試料番号3及び4は絶縁体である。
そして、これら試料番号3及び4はAuとの密着性は良
好であるが試料番号2の試料に比較するとやや劣る。し
かし組成的に酸素の量が異なるだけで他の点では同質で
ある試料番号2の試料とは親和性があり相互の密着性が
極めて高いことが容易に推定される。
【0046】上述したTa−Si−O系酸化物絶縁膜を
成膜するときの導入ガス中の酸素ガス割合と、得られる
酸化物絶縁膜の抵抗率及びAu電極との密着性の関係か
ら、酸化物絶縁膜29の底面部を成膜するときは、導入
酸素ガス濃度は3%以下が好ましく、その内でも2〜
2.5%がより好ましい。
【0047】また、酸化物絶縁膜29の表面部を成膜す
るときは、導入酸素ガス濃度は2.5%以上が好まし
く、その内でも3%以上で3.5%未満がより好まし
い。ところで、チャンバ内に導入する酸素導入量を正確
に設定することはできても、これは成膜時の成膜方法で
あって、成膜後の各試料番号の試料の構成を示す指針に
はならない。
【0048】例えば、成膜後の各試料にどれだけの酸素
が含有されているかの組成の測定では、試料番号1〜2
の抵抗体膜で酸素含有率は50〜70モル%、試料番号
5〜7の絶縁体膜では酸素含有率は72〜80モル%で
あるが、これらには測定誤差が含まれており正確とは言
い難いから、酸素含有率により酸化物絶縁膜が抵抗体膜
か絶縁体膜かの判別することは困難である。
【0049】そこで、測定が比較的容易で正確に行うこ
とができる光透過率を用いて各試料番号の試料の特性を
決定することにした。先ず、上述した各試料番号の試料
を石英ガラス基板に成膜したものの光透過の測定を行っ
た。
【0050】図3(a) は、成膜時の酸素導入量が2%、
4%及び6%の場合の試料番号2、6及び7の光反射率
の測定結果を示す図であり、同図(b) は、成膜時の酸素
導入量が2.5%、3%及び3.5%の場合の試料番号
3、4及び5の光反射率の測定結果を示す図である。同
図(a),(b) において、バンドギャップは約5eV程度で
あり、これについては試料番号2〜7のどの試料も大差
ない。又、全ての試料で多重反射の影響が見られる。
【0051】ここで、同図(a) に見られる特徴的なこと
は、成膜時の酸素導入量が2%の試料番号2の場合に、
3e∨での透過率が40%程度と、他の試料番号6又は
7の試料に比べて透過率が低いことである。この透過率
の低い試料番号2の試料の抵抗率は図2(a) から10k
ohm.cmであることが判明している。即ち絶縁体と
は言い難い試料である。換言すれば、透過率が相対的に
低い試料は絶縁性が低い試料であると考えられる。
【0052】他方、図3(b) に示す成膜時の酸素導入量
が2.5%、3%及び3.5%の試料番号3、4及び5
の試料の透過率の測定結果では、多重反射の影響を考慮
しても、酸素導入量2.5%の試料番号3の試料の透過
率は、同図(a) の試料番号2の試料ほどではないが、試
料番号4〜7の試料に比べると低い。したがって、この
試料番号3の試料も、図2(a) では抵抗率の測定が不可
能であるほどの抵抗率ではあったが、絶縁性はさほど良
くない試料であると考えられる。
【0053】これに対して、図3(b) の試料番号4及び
5、並びに同図(a) に示した試料番号6及び7の各試料
は、3e∨での透過率が70%を超えている。これらの
試料は、図2(a) から、高い絶縁性を持つものであるこ
とが判明している。これらのことは、成膜中の酸素導入
量が増えるに従い、即ち、膜中の酸素量が増えるに従い
絶縁性が向上することを示している。
【0054】これらの図3(a),(b) と上述の図2(a) か
ら、3eVの光の透過率が、65%以下(導入酸素量2
%の試料番号2の試料参照)では強い密着層であり、3
eVの光の透過率が、65%より大きいと絶縁層である
と判定することができる。
【0055】図4は、上記と同一の試料について、光の
屈折率を調べた特性図である。尚、この屈折率は、上述
した透過率のデータの多重反射における極小値(ボト
ム)の値から計算している。また、屈折率は試料の膜厚
によって変化する。同図に示す例では、試料の膜厚を1
30〜142nmの範囲で成膜している。この図4と前
述の図2(a) から、屈折率が、2.2以下(導入酸素量
2.5%の試料番号3以上の試料参照)では絶縁体膜で
あり、屈折率が、2.2より大であるとAuとの強い密
着性を備えた抵抗体膜であると判定することができる。
【0056】ここで、Ta−Si−O系酸化物絶縁膜を
絶縁体膜とするには、酸素導入量を3%以上とすればよ
いが、成膜条件の信頼性を考えた場合には、酸素導入量
は3.5%以上は欲しいところである。但し酸素導入量
が増加するにつれて絶縁性は増すが、Au電極等の金属
配線との密着性が悪化することは前述した通りである。
また、密着性が特に良いものは高抵抗性を備えてはいる
が絶縁体ではないことも前述した通りである。
【0057】そこで、本例においては、上述した判定
と、図2(a),(b) に示される各試料の特性に基づいて、
図1(a),(b) に示した印字ヘッド20を、酸化物絶縁膜
29の二層構造を成す下部層の高抵抗層27を試料番号
2と同様の条件で厚さをおよそ10nmで成膜し、上部
層の絶縁層28を試料番号3又は4と同様の条件で厚さ
をおよそ100nmで成膜して、2層構造の絶縁保護膜
としている。すなわち、Auの上部電極膜24の上に
は、高抵抗層27として強い密着性を有する高抵抗体の
Ta−Si−O膜を形成し、更にその上に、絶縁層28
として高い絶縁性のTa−Si−O膜を形成している。
この酸化物絶縁膜29の好適厚さは、およそ0.1〜
0.3μmである。
【0058】これにより、下部層の高抵抗層27は、図
2(b) の試料番号2の特性に示すAuとの特に優れた密
着性により上部電極膜24に強固に密着する。また、試
料番号2の特性は、図2(a) に示すように絶縁体ではな
いが極めて高い抵抗体である。この構造で問題になるの
は、上記の非絶縁性による電極間の電流リークであり、
例えば図1(b) の両方向矢印Dに示すようなリーク電流
が考えられる。
【0059】ここで、試料番号2の試料と同一条件で成
膜した抵抗体(下部層の高抵抗層27)の抵抗率の概略
を計算する。この抵抗体は、絶縁性の高い上部層の絶縁
層28とAu配線電極との間に形成して密着強度を増す
ための膜であるから、膜厚は薄くてよい。具体的には数
百オングストローム以下で十分である。また一般に発熱
抵抗体膜22の発熱部22aの抵抗値は数ohmから数
百ohmである。
【0060】ここで、説明を分かり易くするために、高
抵抗層27の膜厚を100Å、抵抗発熱体の抵抗値を1
00ohmとする。この抵抗発熱体に100mAの電流
を流してインクに膜気泡をを発生させることを考える。
インクと抵抗発熱体及び配線電極との間には、図1(a),
(b) に示す2層構造の酸化物絶縁膜29の上部層の絶縁
層28によって絶縁性が保たれている。
【0061】しかし、配線電極間は、下部層の高抵抗層
27によって電気的に接続状態となっている。この高抵
抗層27の厚さを上記のように100Åとする。この高
抵抗層27は、試料番号2の試料と同等の特性の膜であ
るから、この場合のシート抵抗値は約10Gohm/□
である。図1(a),(b) に示す個別配線電極25間の縦横
の比を10:1とした場合、各電極間の抵抗値は約1G
ohmとなる。この場合、各電極間のリーク電流は、駆
動電圧10Vで0.01μAとなり、これは十分に無視
できるリーク電流量である。
【0062】また、実際にも1μA程度のリーク電流量
は十分に許容範囲内であり、したがって、図1(a),(b)
に示す下部層の高抵抗層27としては、抵抗率が100
ohm.cm以上あれば使用可能である。
【0063】そして、上記のような観点から、実際にA
u膜上に下地酸化膜として試料番号2の試料と同様の条
件「Ar+O2 」の酸素量2%で膜厚10nmで成膜
し、その上に上部酸化膜として試料番号3の試料と同様
の条件「Ar+O2 」の酸素量6%で適宜の膜厚、例え
ば100nm程度で成膜して、Au膜との密着性の確認
を行って見ると、良好な結果が得られた。勿論、インク
との絶縁性は上部酸化膜によって充分に得られている。
【0064】以上、Auのような金属配線とTa−Si
−O系の酸化物絶縁層との密着性について説明してきた
が、このような酸化物絶縁層の密着性の問題は、金属配
線以外でも発生する。すなわち、一般に、シリコンウエ
ハを用いて電子回路を作成しようとする場合には、シリ
コン基板の表面にSi3 4 等からなる絶縁性の保護膜
(パッシベーション膜)を形成した上に、図1(a),(b)
に示すような配線パターンを形成する。そして、その場
合もそれらの配線パターンの上に、酸化物絶縁膜29を
形成する必要があるが、工程上の理由で、配線パターン
間のSi3 4等からなる絶縁性保護膜上にも一括して
形成する場合が多い。。
【0065】図2(c) に示した図表は、上記同様に酸化
物絶縁膜の成膜時の酸素濃度を2%、2.5%、3%、
3.5%、6%と変化させて、Ta−Si−O系酸化物
絶縁膜とSi3 4 層との密着性を調べたものである。
同図(c) では、上述したAu膜上に形成したと同じ試料
番号1〜7の試料について、右端欄にSi3 4 層との
密着性についての評価が示されており、試料番号1につ
いては未評価、試料番号2〜5については密着性が良好
であることが観察され、試料番号6については未評価、
試料番号7についてはクラックの発生が観察されてい
る。
【0066】上記の密着性の評価も、Ta−Si−O系
の酸化物絶縁層を成膜した後、隔壁を形成し、貫通孔を
穿設してから、観察したものである。この場合も、成膜
時の酸素ガス濃度が2〜3.5%の場合で密着性が良好
であり、酸素ガス濃度が6%の場合は密着強度が弱く、
クラックが発生している。従って、酸化物絶縁膜の底面
部としての高抵抗層を、成膜時の酸素ガス濃度を2〜3
%にして成膜すれば、Au等の金属電極だけでなくSi
3 4 等の窒化珪素絶縁保護膜に対しても密着性に優れ
た酸化物絶縁膜が得られる。つまり、本発明になる二層
構造の酸化物絶縁層の適用は、金属配線のみならず例え
ばSi3 4 層のような非金属に対しても有効に作用す
る。
【0067】尚、上述した実施形態では、Ta−Si−
O系の酸化物絶縁層を密着性を重視した下部層と絶縁性
を重視した上部層の2層構造としているが、下面が密着
性に富み、上面が絶縁性に富む構造であれば2層構造に
限るものではなく、単体の層構造であっても良い。これ
を第2の実施の形態として説明する。
【0068】図5(a),(b) は、第2の実施の形態におけ
る印字ヘッドの発熱素子の近傍の構造を隔壁と天板を除
いて示す拡大図、(b) はその丸Dで示す部分の構造を示
す更なる拡大図である。尚、同図(a),(b) には、図1
(a),(b) と同一構成部分には図1(a),(b) と同一の番号
を付与して示している。
【0069】同図(a),(b) に示す印字ヘッドのTa−S
i−O系の酸化物絶縁層29′は、この酸化物絶縁層2
9′を形成するに際してスパッタ装置に導入する混合ガ
ス「Ar+O2 」の酸素濃度を最初は2%程度に小さく
して底面部が金属電極との密着性に富み、且つ、スパッ
タリングを継続しながら次第に酸素濃度を上げて最終的
には3%まで大きくして表面部が絶縁性に富む構造とし
た、単体の絶縁保護層の構造を有している。
【0070】上述のように酸化物絶縁膜を酸素含有率が
発熱素子等に接する底面部から表面部に向かって徐々に
高くなる単層構造に形成しても、第1実施形態の2層構
造のものと同様に、発熱素子の金属電極との密着性に優
れると共に十分な絶縁性を備えた酸化物絶縁膜を得るこ
とができる。そして、酸化物絶縁膜が単層構造であるか
ら、少ない製造工程数で容易に製造することができる。
【0071】なお、上記第1、第2の実施形態では、酸
化物絶縁膜をTa−Si−O系絶縁膜とし、金属電極を
Au電極としているが、本発明はこれらの組合せに限る
ものではなく、他のNiやAl等のAu電極以外の金属
電極にTa−Si−O系以外のCr等の酸化物絶縁膜を
被覆する場合等にも適用できる。
【0072】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、発熱素子に被覆する酸化物絶縁膜を、配線電極に
接触する底面部よりもその表面部の方が酸素含有率の高
い構造とするので、配線電極との密着性が高められると
共に、発熱素子をインクに対して確実に絶縁できる十分
な絶縁性を備えた酸化物絶縁膜が得られ、これにより、
インクの電気分解に基づく微細気泡の発生や、インクと
の接触による電極の腐食が確実に防止され、信頼性に富
むサーマルインクジェットプリンタヘッドとその製造方
法を提供することが可能となる。
【0073】また、本発明の製造方法においては、酸化
物絶縁膜をスパッタリングにより成膜する工程におい
て、導入する混合ガス中の酸素ガス濃度を変えることに
より酸素含有率を変化させるから、発熱素子に接触する
底面部よりその表面部の方が酸素含有率の高い酸化物絶
縁膜を容易に形成することができる。
【0074】その場合、成膜工程中において酸素ガス濃
度を連続的に変化させることにより、酸素含有率が発熱
素子等に接する底面部から表面部に向かって徐々に高く
なる単層構造の酸化物絶縁膜を少ない工程でより容易に
形成することができる。これにより、密着性と絶縁性に
優れた保護膜が被着された発熱素子を備え信頼性に富む
サーマルインクジェットプリンタヘッドをより容易に製
造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) は第1実施形態における印字ヘッドの発熱
素子の近傍の構造を隔壁とオフィリス板を除いて示す拡
大図、(b) はそのC−C′断面矢視図である。
【図2】(a) は第1実施形態の印字ヘッドに用いるべき
酸化物絶縁膜の成膜条件と抵抗率の関係を示す図表、
(b) は同じくAuとの密着性の関係を示す図表、(c) は
同じくシリコン基板の保護膜との密着性の関係を示す図
表である。
【図3】(a) は酸化物絶縁膜成膜時の酸素導入量が2
%、4%及び6%の試料の光反射率の測定結果を示す
図、(b) は同じく2.5%、3%及び3.5%の試料の
光反射率の測定結果を示す図である。
【図4】図2(a),(b),(c) に示す試料と同一の試料につ
いて光の屈折率を調べた特性図である。
【図5】(a) は第2実施形態の印字ヘッドの発熱素子の
近傍の構造を隔壁とオフィリス板を除いて示す拡大図、
(b) はその丸Dで示す部分の構造を示す更なる拡大図で
ある。
【図6】(a) は従来のインクジェットプリンタに搭載さ
れるモノクロ用印字ヘッドを模式的に示す図、(b) は4
色フルカラー用印字ヘッドを示す図、(c) は(a) のA−
A′断面矢視図または(b) のB−B′断面矢視図、(d)
は(a) 又は(b) の印字ヘッドが製造されるシリコンウエ
ハを示す図である。
【符号の説明】 1−1、1−2 印字ヘッド 2 チップ基板 3 天板 4 吐出ノズル 5 ノズル列 6 共通給電端子 7 駆動回路端子 8 チップ基板 9 シリコンウエハ 11 駆動回路 12 発熱抵抗体 12−1 発熱部 13 個別配線電極 14 共通電極 15 共通インク溝 16 インク供給孔 17 隔壁 17−1、17−2 シール隔壁 17−3 加圧室隔壁 18 インク加圧室 19 インク供給路 20 印字ヘッド 21 絶縁性基板 22 発熱抵抗体膜 22a 発熱部 23 下地電極層 24 上部電極膜 25 個別配線電極 26 共通電極 27 高抵抗層 28 絶縁層 29 酸化物絶縁膜

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを加熱して発生させる気泡の圧力
    によりインクを所定方向に噴射させて記録を行うサーマ
    ルインクジェットプリンタヘッドであって、 少なくとも表面部が絶縁層である絶縁性基板と、 該絶縁性基板上に配設され、発熱抵抗体からなる発熱部
    に一対の電極を接続してなる複数の発熱素子と、 少なくとも前記発熱素子に被着された酸化物絶縁膜と、 を備え、 前記酸化物絶縁膜は、前記電極又は発熱部と接する底面
    部よりも表面部の方が酸素含有率が高いことを特徴とす
    るサーマルインクジェットプリンタヘッド。
  2. 【請求項2】 前記酸化物絶縁膜は、前記電極又は発熱
    部と接する底面層と該底面層に重畳した表面層からなる
    2層構造膜であることを特徴とする請求項1記載のサー
    マルインクジェットプリンタヘッド。
  3. 【請求項3】 前記酸化物絶縁膜は、前記底面部から前
    記表面部にかけて酸素含有率が徐々に高くなる単層構造
    膜であることを特徴とする請求項1記載のサーマルイン
    クジェットプリンタヘッド。
  4. 【請求項4】 前記酸化物絶縁膜は、前記底面部におけ
    る3eVの光の透過率が65%以下であり、前記表面部
    における3eVの光の透過率が65%より大であること
    を特徴とする請求項1記載のサーマルインクジェットプ
    リンタヘッド。
  5. 【請求項5】 前記酸化物絶縁膜は、前記底面部におけ
    る光の屈折率が2.2より大きく、前記表面部における
    光の屈折率が2.2以下であることを特徴とする請求項
    1記載のサーマルインクジェットプリンタヘッド。
  6. 【請求項6】 前記酸化物絶縁膜は、Ta−Si−O系
    膜であり、前記電極はAuであることを特徴とする請求
    項1、2、3、4又は5記載のサーマルインクジェット
    プリンタ。
  7. 【請求項7】 前記発熱抵抗体は、少なくともTa、S
    i、Oの3元素を含む電気抵抗体であることを特徴とす
    る請求項1記載のサーマルインクジェットプリンタヘッ
    ド。
  8. 【請求項8】 インクを加熱して発生させる気泡の圧力
    によりインクを所定方向に噴射させて記録を行うサーマ
    ルインクジェットプリンタヘッドの製造方法であって、 少なくとも表面部が絶縁層である絶縁性基板上に発熱抵
    抗体からなる発熱部に一対の電極を接続してなる複数の
    発熱素子を設置する工程と、 少なくとも前記発熱素子に酸化物絶縁膜をスパッタリン
    グにより被着する絶縁膜形成工程とを備え、 前記絶縁膜形成工程において、前記酸化物絶縁膜の前記
    電極又は発熱部と接する底面部を形成するときのスパッ
    タリング装置のチャンバ内に導入するガス中の酸素ガス
    の第1の割合が、前記酸化物絶縁膜の表面部を形成する
    ときの前記チャンバ内に導入するガス中の酸素ガスの第
    2の割合よりも小さいことを特徴とするサーマルインク
    ジェットプリンタヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記チャンバ内に導入するガスは、Ar
    とO2 の混合ガスであり、前記第1の割合が2〜2.5
    %であり、前記第2の割合が3〜3.5%であることを
    特徴とする請求項8記載のサーマルインクジェトプリン
    タヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記チャンバ内に導入するガス中の酸
    素ガスの割合を、スパッタリング経過時間と共に増加さ
    せることを特徴とする請求項8記載のサーマルインクジ
    ェットプリンタヘッドの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014198460A (ja) * 2013-03-14 2014-10-23 株式会社リコー 液体吐出ヘッド及び画像形成装置
JP2015039774A (ja) * 2013-08-20 2015-03-02 株式会社リコー 液体吐出ヘッド及び画像形成装置

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JP2014198460A (ja) * 2013-03-14 2014-10-23 株式会社リコー 液体吐出ヘッド及び画像形成装置
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