JP2001332145A - 高温超電導膜の作製方法 - Google Patents

高温超電導膜の作製方法

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JP2001332145A
JP2001332145A JP2000148764A JP2000148764A JP2001332145A JP 2001332145 A JP2001332145 A JP 2001332145A JP 2000148764 A JP2000148764 A JP 2000148764A JP 2000148764 A JP2000148764 A JP 2000148764A JP 2001332145 A JP2001332145 A JP 2001332145A
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temperature
heat treatment
superconducting film
precursor
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JP2000148764A
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Ataru Ichinose
中 一瀬
Mitsugi Akita
調 秋田
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Central Research Institute of Electric Power Industry
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Central Research Institute of Electric Power Industry
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属製の基板の酸化および拡散を抑制し、基
板およびバッファ層の材質の選択を広範囲にする。 【解決手段】 蒸発源となる物質を用いて基板上に前駆
体を作製する前駆体作製工程(ステップ1)と、前駆体
の作製された基板を熱処理して酸化物超電導膜を作製す
る熱処理工程(ステップ2)とを有する高温超電導膜の
作製方法において、蒸発源となる物質にはフッ化物を含
むと共に、熱処理工程は、全圧PがP≦10mTorr
(約1.33Pa)で、酸素分圧Poが0.1mTor
r(約1.33×10−2Pa)≦Po≦10mTor
r(約1.33Pa)の真空雰囲気中で、基板の温度T
bを400℃≦Tb≦750℃にすることにより行われ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温超電導膜の作
製方法に関する。更に詳述すると、本発明は高温超電導
テープ線材の作製に適した高温超電導膜の作製方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】BaFを蒸発源に用いてY(イットリ
ウム)系高温超電導膜を作製する方法が開発されている
(P.M.Mankeiwich、Appl. Phys. Lett. 51(1987)175
3)。この方法は、Baと水との反応を抑えることによ
り、特性の同じ高温超電導体の作製の再現性を高めるた
めに行われた。この方法では、BaF以外の原料に金
属を用いて、これらの原料を基板上に蒸着させて前駆体
の薄膜を作製する。そして、電気炉中で、酸素ガスを流
しながら800℃〜920℃の雰囲気にこの前駆体の膜
を晒して熱処理を行う。これにより、高温超電導体の薄
膜を作製することができる。このとき、電気炉内は流し
た酸素で充満されるので、全圧は1気圧より多少高くな
ると共に酸素分圧は全圧とほとんど同じになる。
【0003】また、BaFを蒸発源に用いてY系高温
超電導膜を作製する方法は、厚膜化および高速成膜を実
現するためにも適用されている。この場合、前述と同様
にBaF以外の原料に金属を用いて、これらの原料を
基板上に蒸着させて前駆体の膜を作製する。その後、電
気炉中で、低酸素分圧で水蒸気を含んだ約1気圧の混合
ガス雰囲気に晒して熱処理を行う。
【0004】このときの酸素分圧は約100〜300m
Torr(約13.3〜40.0Pa)であり、また反
応速度を速くするために水蒸気圧は25〜100Tor
r(約3.33〜13.3kPa)にしている。そし
て、上述の作成方法に比べて酸素分圧を下げたため、熱
処理温度を725℃〜800℃に下げることができる。
この作成方法によれば、高温超電導体の厚膜化および高
速成膜を実現することができる。
【0005】また、金属製の基板を利用するときには、
その表面に酸化物から成るバッファ層を形成している。
このバッファ層は、金属基板の拡散を防止するためのバ
リア層として機能すると共に、金属基板と高温超電導膜
との中間の格子定数を有するようにして高温超電導膜の
薄膜をエピタキシャル成長させるための調整層として機
能する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た酸素分圧が1気圧程度の雰囲気中で熱処理する高温超
電導膜の作製方法では、酸素分圧が大きいので熱処理の
反応を安定させるために高温が必要になってしまう。こ
のため、高温超電導膜を薄膜に作製するにもかかわら
ず、酸素と前駆体との固相反応を利用して高温超電導体
を作製するときの熱処理温度よりも少し低い程度の80
0℃〜920℃というかなり高温の熱処理を行わなけれ
ばならない。よって、この作製方法により高温超電導膜
を半導体あるいは金属の基板上に作製しようとすると、
金属の拡散反応を促進してしまい好ましくない。しか
も、この作製方法では酸素分圧が大きいので、高温超電
導膜を半導体あるいは金属の基板上に作製しようとする
と基板が酸化され易い。
【0007】また、低酸素分圧で水蒸気を含んだ雰囲気
中で熱処理する高温超電導膜の作製方法では、BaF
をHOと反応させているので、HF(フッ化水素)が
生成してしまう。そして、HFは高い反応性を有してい
るので、これが金属基板のバッファ層と反応して高温超
電導膜の特性を劣化させてしまう。これを防止するため
に、高温超電導膜の形成可能な基板材料やバッファ層の
種類が限られてしまう。現状ではYバッファ層上
に特性の優れた超電導膜は得られていない。そして、約
100〜300mTorr(約13.3〜40.0P
a)の分圧となる酸素が含まれていることから、この作
製方法によっても半導体あるいは金属製の基板が酸化さ
れ易い。また、熱処理温度が725℃〜800℃という
高温であるので、この作製方法によっても金属の拡散反
応を促進してしまうおそれがある。
【0008】そこで、本発明は、金属製の基板の酸化お
よび拡散を抑制し、基板およびバッファ層の材質の選択
を広範囲にできる高温超電導膜の作製方法を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本願発明者が種々の実験・研究を重ねた結果、蒸
発源にY,BaF,Cuを用いて基板上に前駆体を作
製し、この前駆体に真空雰囲気中で酸素を吹きかけなが
ら熱処理を行うことで熱処理温度および酸素分圧を従来
よりも大きく低減した状態でYBaCu7−z
酸化物超電導体を作製することに成功した。また、蒸発
源にYF,Ba,Cuを用いた場合、あるいは蒸発源
にYF,BaF,Cuを用いた場合も同様に、熱処
理温度および酸素分圧を従来よりも大きく低減した状態
でYBaCu7−zの酸化物超電導体を作製する
ことに成功した。
【0010】かかる知見に基づいて発明された請求項1
記載の発明は、蒸発源となる物質を用いて基板上に前駆
体を作製する前駆体作製工程と、前駆体の作製された基
板を熱処理して酸化物超電導膜を作製する熱処理工程と
を有する高温超電導膜の作製方法において、蒸発源とな
る物質にはフッ化物を含むと共に、熱処理工程は、全圧
PがP≦10mTorr(約1.33Pa)で、酸素分
圧Poが0.1mTorr(約1.33×10−2
a)≦Po≦10mTorr(約1.33Pa)の真空
雰囲気中で、基板の温度Tbを400℃≦Tb≦750
℃にすることにより行われるようにしている。なお、本
明細書中で「真空雰囲気」とは、気体が完全に排除され
た雰囲気を意味せず、全圧PがP≦10mTorr(約
1.33Pa)で、酸素分圧Poが0.1mTorr
(約1.33×10−2Pa)≦Po≦10mTorr
(約1.33Pa)となる極めて減圧された雰囲気を意
味している。
【0011】したがって、低酸素分圧の雰囲気中で熱処
理を行っていることから従来のように高酸素分圧の雰囲
気中で熱処理する場合に比べて反応温度を400℃〜7
50℃に低く抑えることができるので、基板として半導
体あるいは金属を利用しても高温による金属の拡散を極
めて抑制することができる。よって、基板として利用で
きる材質の種類を多くして基板選択の範囲を広げること
ができる。
【0012】また、酸素分圧が従来よりも極めて小さい
ので、基板として半導体あるいは金属を利用しても基板
の酸化を抑制することができる。よって、基板として利
用できる材質の種類を多くして基板選択の範囲を広げる
ことができる。
【0013】さらに、酸素分圧だけでなく雰囲気全体を
極めて小さくしているので、熱処理工程において前駆体
の中のフッ素が吸い出されて表面上に出易くなる。この
ため、従来の技術と同様あるいはそれ以上の反応速度で
高温超電導体を作製することができる。しかも、作製の
高速化により厚膜化を図ることができる。
【0014】しかも、水蒸気を添加する必要が無いの
で、HFの生成を可能な限り抑えることができる。この
ため、基板材料の選定範囲を拡大することができる。
【0015】ここで、熱処理時の基板温度を400℃未
満にした場合は、反応性が低く酸化物超電導体の結晶性
が良くならず、酸化物超電導膜が生成されたとしても優
れた超電導特性が期待できない。すなわち、400℃を
挟んで酸化物超電導体の構造が異なると考えられる。ま
た、10mTorr(約1.33Pa)の雰囲気中で
は、750℃を超える温度領域でY系酸化物超電導体の
結晶の不安定領域に入ってしまうので、良好な特性の超
電導膜を作製し難くなってしまう。これらの理由によ
り、熱処理の基板温度は400℃以上、750℃以下に
する。
【0016】また、熱処理時の雰囲気の全圧を10mT
orr(約1.33Pa)を超える大きさにした場合
は、前駆体からフッ素が出難くなるので高温超電導体の
作製速度が遅くなってしまう。しかも、前駆体にフッ素
が残留しやすく、超電導特性が悪くなってしまう。この
ため、熱処理時の雰囲気の全圧は10mTorr(約
1.33Pa)以下にする。
【0017】さらに、熱処理時の酸素分圧を0.1mT
orr(約1.33×10−2Pa)未満にすると、高
温超電導体を作製するのに必要な酸素が不足してしま
う。また、熱処理時の酸素分圧が10mTorr(約
1.33Pa)を超えると、基板として半導体あるいは
金属を利用したときに基板が酸化してしまうおそれがあ
る。これらの理由により、熱処理時の酸素分圧は0.1
mTorr(約1.33×10−2Pa)以上、10m
Torr(約1.33Pa)以下にする。
【0018】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の酸化物超電導膜の作製方法において、熱処理は基板
に酸素を吹きかけながら行われるようにしている。した
がって、熱処理の際に前駆体と酸素との反応が促進され
るので、高温超電導体の作製を迅速化することができ
る。
【0019】さらに、請求項3記載の発明は、請求項1
または2記載の酸化物超電導膜の作製方法において、フ
ッ化物はBaFとYFとの少なくとも一方であるよ
うにしている。したがって、BaやYを利用してYBa
Cu7−zの酸化物超電導体を作製することがで
きる。ここで、Baは空気中で不安定な物質であるが、
本発明ではBaを基板に蒸着させて、真空雰囲気中で熱
処理を行っているので、Baは空気に殆ど晒されること
が無く分解し難くなる。このため、Baを利用しても高
性能の高温超電導体を作製することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。図1に本
発明の高温超電導膜の作製方法の実施形態の流れ図を示
す。この高温超電導膜の作製方法は、蒸発源となる物質
を用いて基板上に前駆体を作製する前駆体作製工程(ス
テップ1)と、前駆体の作製された基板を熱処理して酸
化物超電導膜を作製する熱処理工程(ステップ2)とを
有している。
【0021】蒸発源となる物質はフッ化物を含むように
している。ここでのフッ化物としてはBaFとYF
との少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
そして、蒸発源のフッ化物以外の原料としては、Y,C
u,Ba等の金属と酸化物(例えば、YやBaO
)のいずれかを用いるようにしている。ここでは、蒸
発源はY,BaF,Cuとしている。
【0022】また、熱処理工程は、全圧PがP≦10m
Torr(約1.33Pa)で、酸素分圧Poが0.1
mTorr(約1.33×10−2Pa)≦Po≦10
mTorr(約1.33Pa)の真空雰囲気中で、基板
の温度Tbを400℃≦Tb≦750℃にすることによ
り行われるようにしている。このため、低酸素分圧中で
熱処理を行っていることから反応温度を400℃〜75
0℃に低く抑えることができるので、基板として半導体
あるいは金属を利用しても高温による金属の拡散を抑制
することができる。また、酸素分圧が従来よりも極めて
小さいので、基板として半導体あるいは金属を利用して
も基板の酸化を抑制することができる。これらのことか
ら、基板として利用できる材質の種類を多くして基板選
択の範囲を広げることができる。さらに、真空雰囲気中
で熱処理されることにより、前駆体の中のフッ素が吸い
出されて表面上に出易くなる。このため、従来の技術と
同様あるいはそれ以上の反応速度で高温超電導体を作製
することができる。
【0023】真空雰囲気は酸素のみから成るようにして
いる。但し、実際には熱処理を行うチャンバの残留ガス
が若干混合してしまうので酸素以外の成分が極微量含ま
れることになるが、熱処理に悪影響を与える程では無
い。
【0024】基板としては金属テープを利用している。
この場合、前駆体がエピタキシャル成長できるように金
属テープ表面に予めYやYSZ、CeO、La
AlO、NdGaO等のバッファ層を形成してお
き、このバッファ層に対して前駆体を作製するようにす
る。
【0025】また、熱処理は基板に酸素を吹きかけなが
ら行われるようにしている。これにより、前駆体と酸素
との反応が促進されるので、高温超電導体の作製を迅速
化することができる。
【0026】上述した高温超電導膜の作製方法の手順を
以下に説明する。
【0027】前駆体作製工程では、蒸発源としてY,B
aF,Cuを蒸発させる。蒸発源の蒸発方法として
は、従来と同様に電子ビーム、抵抗加熱、レーザ、イオ
ンビーム等のいずれかを選択して使用することができ
る。よって、前駆体を作製するために各種の蒸着方法を
選択できるので、作製する高温超電導膜にとって最も適
したものを選択することができる。
【0028】そして、蒸発源の各物質は別々に蒸発させ
て同時に基板に吹き付けて蒸着する。このとき、蒸着さ
れたY,BaF,Cuの金属元素の組成比が1:2:
3に成るように、各材質の蒸発速度を制御する。このよ
うに蒸着されることにより、前駆体が形成される。
【0029】前駆体を作製するときには、雰囲気の圧力
を5×10−5Torr(約6.67mPa)以下にす
ることが好ましい。この程度に減圧することにより、原
料の蒸発が安定になり、前駆体の組成比のずれが小さく
なる。このため、後の熱処理により均質な酸化物超電導
膜が得られるようになる。
【0030】また、前駆体を作製するときの基板の温度
は室温〜約400℃程度であることが好ましい。これ
は、前駆体を作製するときに基板を400℃以上に加熱
すると室温で作製した前駆体と異なる結晶性のものが生
成されることがあり、この生成物が後の熱処理において
反応を抑制して酸化物超電導膜の作製に悪影響を及ぼす
おそれがあるからである。
【0031】前駆体の作製後に熱処理工程を実行する。
この工程では、当該基板を熱処理して酸化物超電導膜を
作製する。
【0032】熱処理は、全圧が10mTorr(約1.
33Pa)以下で、酸素分圧が0.1mTorr(約
1.33×10−2Pa)〜10mTorr(約1.3
3Pa)の真空雰囲気中で行う。このため、低酸素分圧
の真空雰囲気中で熱処理を行っていることから反応温度
を400℃〜750℃程度に低く抑えることができる。
このように基板温度を従来よりも低く抑えられるので、
基板として半導体あるいは金属を利用しても高温による
金属の拡散を抑制することができる。しかも、従来のよ
うに750℃を超えるような熱処理を行う場合に比べ
て、熱処理に必要な設備を簡略化することができる。
【0033】また、熱処理は基板に酸素を吹きかけなが
ら行うようにする。これにより、前駆体と酸素との反応
が促進されるので、高温超電導体の作製を迅速化するこ
とができる。このようにしてYBaCu7−z
酸化物超電導体を作製することができる。
【0034】本実施形態の高温超電導膜の作製方法によ
れば、基板として金属テープを利用しているので、電力
機器への適用効果が特に大きい可撓性の高温超電導線材
を作製することができる。
【0035】また、熱処理の際に酸素分圧と温度を制御
するだけで超電導線膜を作製可能であるため、プロセス
を著しく簡素化することができる。このため、低コスト
かつ短時間で高温超電導線材を作製することができる。
【0036】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。例えば本実施形態では基板に酸素を吹きかけなが
ら熱処理するようにしているが、これには限られず基板
に酸素を吹きかけずに熱処理するようにしても良い。こ
の場合も、全圧が10mTorr(約1.33Pa)以
下で、酸素分圧が0.1mTorr(約1.33×10
−2Pa)〜10mTorr(約1.33Pa)の真空
雰囲気中で、基板の温度を400℃〜750℃にして熱
処理を行うことができるので、基板として半導体あるい
は金属を利用しても高温による金属の拡散を抑制するこ
とができる。
【0037】また、本実施形態では蒸発源をY,BaF
,Cuとしているが、これには限られずYF,B
a,Cuとしても良い。あるいは、蒸発源をYF,B
aF,Cuとしても良い。また、本実施形態では蒸発
源のフッ化物としてBaFとYFとの少なくとも一
方を含むものとしているが、これには限られずCuF
としても良い。いずれの場合も蒸発源にフッ化物が含ま
れているので、低酸素分圧かつ低温熱処理の条件下で金
属基板に対して良好な高温超電導膜を迅速に作製するこ
とができる。また、前駆体を作製するために各種の蒸発
源および蒸着方法を選択できるので、作製する高温超電
導膜に対して最も適したものを選択することができる。
【0038】本実施形態では基板として金属テープを利
用しているが、これには限られず金属フィルム等の他の
可撓性を有するものや、金属板等の可撓性を有しないも
のとしても良い。あるいは金属以外の材質、例えばSi
等の半導体から成る基板やセラミックス製の基板を使用
しても良い。これらの場合、前駆体のエピタキシャル成
長を考慮する必要がない場合があるので、基板にバッフ
ァ層を形成しなくても良いこともある。このような非金
属製の基板を用いても、真空雰囲気中で熱処理されるこ
とによりフッ素が前駆体の中から雰囲気中に出易くなる
ので、従来の技術と同様あるいはそれ以上の反応速度で
高温超電導体を作製することができる。
【0039】
【実施例】表1に示す条件により実施例1〜5と比較例
とを作製した。
【表1】
【0040】(実施例1)前駆体作成工程では、Y,B
aF,Cuの各原料を電子線で蒸発させて、室温でS
rTiO(100)単結晶基板に直付けにより蒸着し
た。熱処理工程では、基板を680℃に加熱し、酸素を
106ml/minの流量で基板付近に流しながら30
分間の熱処理を行った。試料から50cm離れた箇所で
の酸素分圧は0.5mTorr(約6.67×10−2
Pa)であった。その後、基板温度を7分かけて520
℃に下げ、酸素分圧を20分かけて100Torr(約
13.3kPa)まで上げて、基板ヒータの電源を切っ
た。これにより、酸化物超電導膜が作製された。
【0041】この酸化物超電導膜のX線回折図を図2に
示す。同図に示すように、YBCO膜はc軸配向したエ
ピタキシャル膜が成長している。
【0042】また、この酸化物超電導膜の超電導特性を
磁束量子干渉計(SQUID)で測定した。その結果を
図3に示す。同図に示すように、超電導性を示す温度T
cは88Kであり、低温での信号の大きさは十分に大き
く、バルクの超電導性を示している。したがって、本実
施例の試料は酸化物超電導膜として実用可能なものであ
ることが判明した。
【0043】(実施例2)SrTiO(100)単結
晶基板上にバッファ層であるYを蒸着したものを
基板に利用して、上述の実施例1と同様の手順で酸化物
超電導膜を作製した。
【0044】この酸化物超電導膜のX線回折図を図2に
示す。同図に示すように、実施例1のものと同様にYB
CO膜はc軸配向したエピタキシャル膜が成長してい
る。そして、図中符号1で示すように、YのX線
回折のピークが見られることから、バッファ層の存在が
確認される。
【0045】また、この酸化物超電導膜の超電導特性を
磁束量子干渉計で測定した。その結果を図3に示す。同
図に示すように、超電導性を示す温度Tcは88Kであ
り、低温での信号の大きさは十分に大きく、バルクの超
電導性を示している。したがって、本実施例の試料は酸
化物超電導膜として実用可能なものであることが判明し
た。
【0046】したがって、実施例1,2を比較すると、
図2に示すようにc軸配向である点で同一であると共
に、図3のようにほぼ同等の急な立ち上がりを示してい
ることから、いずれの実施例についても高い超電導特性
を有していると言える。よって、SrTi−O基板の
バッファ層の有無に拘わらず、良好な特性の酸化物超電
導膜を得ることができた。
【0047】ここで両者を詳細に比較すると、実施例2
の方が急な立ち上がりを示していることから実施例2の
方がより高い性能であると言える。これは、実施例2は
バッファ層を設けているので、前駆体がよりエピタキシ
ャル成長できたためと考えられる。
【0048】(実施例3)前駆体作成工程では、Y
,Ba,Cuの各原料を電子線で蒸発させてSrT
iO(100)単結晶基板に室温で蒸着した。熱処理
工程では、基板を715℃に加熱し、酸素を84ml/
minの流量で基板付近に流しながら30分間の熱処理
を行った。酸素分圧は0.4mTorr(約5.33×
10−2Pa)であった。その後は実施例1と同様に、
基板温度を7分かけて520℃に下げ、酸素分圧を20
分かけて100Torr(約13.3kPa)まで上げ
て、基板ヒータの電源を切った。これにより、酸化物超
電導膜が作製された。
【0049】この酸化物超電導膜のX線回折図を図4に
示す。同図に示すように、この酸化物超電導膜はa軸配
向膜である。このため、c軸配向の超電導膜に比較する
と大電流を流すことは困難である。
【0050】また、この酸化物超電導膜の超電導特性を
磁束量子干渉計で測定した。その結果を図5に示す。同
図に示すように、超電導性を示す温度Tcは81Kであ
り、低温での信号の大きさは十分に大きく、バルクの超
電導性を示している。したがって、本実施例の試料は酸
化物超電導膜として実用可能なものであることが判明し
た。この試料はa軸配向膜であるため、実施例1,2に
比べてTcが低く抑えられていると考えられる。
【0051】(実施例4)SrTiO(100)単結
晶基板上にYを蒸着したものを基板として利用し
て、上述の実施例3と同様の手順で酸化物超電導膜を作
製した。
【0052】この酸化物超電導膜のX線回折図を図4に
示す。同図に示すように、この酸化物超電導膜はc軸配
向膜である。
【0053】また、この酸化物超電導膜の超電導特性を
磁束量子干渉計で測定した。その結果を図5に示す。同
図に示すように、超電導性を示す温度Tcは87Kであ
り、低温での信号の大きさは十分に大きく、バルクの超
電導性を示している。したがって、本実施例の試料は酸
化物超電導膜として実用可能なものであることが判明し
た。この試料でのTcは原料にBaFを用いた実施例
1,2のTcとほぼ同等である。
【0054】したがって、実施例3,4を比較すると、
図4に示すように実施例3はa軸配向であるのに対し実
施例4はc軸配向である点で異なると共に、図5に示す
ように実施例3の立ち上がりは鈍いのに対し実施例4の
立ち上がりは急である点で、バッファ層を有する実施例
4の方が良好な特性の酸化物超電導膜を得ることができ
た。しかし、実施例3のように基板に直に酸化物超電導
膜を作製したものでも、十分に実用になるものを得るこ
とができた。
【0055】(実施例5)酸素分圧を0.38mTor
r(約5.07×10−2Pa)にして、上述の実施例
4と同様の手順で酸化物超電導膜を作製した。この酸化
物超電導膜のX線回折図を図6に示す。同図に示すよう
に、符号2のピークが存在するので、この酸化物超電導
膜はc軸配向膜である。
【0056】(比較例)酸素分圧を0.36mTorr
(約4.80×10−2Pa)にして、上述の実施例4
と同様の手順で酸化物超電導膜を作製した。この酸化物
超電導膜のX線回折図を図6に示す。同図に示すよう
に、実施例4,5に見られるピーク2が存在せず、超電
導相からの回折線がほとんど観察されていない。つま
り、熱処理温度715℃、かつ酸素分圧0.36mTo
rr(約4.80×10−2Pa)の条件では、超電導
相が不安定領域に入るため、超電導相を得れなかった。
【0057】実施例4,5および比較例を比較して分か
るように、酸素分圧と熱処理温度とは超電導相の形成に
密接な関係がある。そして、基板温度と酸素分圧の相互
関係が超電導相の安定領域に存在すれば、実施例4,5
に示す条件以外でも超電導相を得ることができる。例え
ば、基板温度を530℃まで低下させれば、基板から5
0cm離れた所での酸素分圧が0.1mTorr(約
1.33×10−2Pa)でも超電導相を得ることがで
きた。
【0058】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、請求項1
記載の酸化物超電導膜の作製方法によれば、低酸素分圧
の雰囲気中で熱処理を行っていることから反応温度を4
00℃〜750℃に低く抑えることができるので、基板
として半導体あるいは金属を利用しても高温による金属
の拡散を抑制することができる。また、酸素分圧が従来
よりも極めて小さいので、基板として半導体あるいは金
属を利用しても基板の酸化を抑制することができる。よ
って、基板として各種金属や半導体を容易に利用するこ
とができるようになるので、フレキシブルな金属基板上
に作製したバッファ層上にこのプロセスを適用すること
により、超電導特性が優れ可撓性のある例えば金属テー
プのような高温超電導線材を得ることができる。
【0059】また、酸素分圧だけでなく雰囲気全体を極
めて小さくしているので、熱処理工程において前駆体の
中のフッ素が吸い出されて表面上に出易くなる。このた
め、従来の技術と同様あるいはそれ以上の反応速度で高
温超電導体を作製することができる。よって、電力機器
への適用効果が大きい高性能の高温超電導線材を迅速に
作製することができる。このような高温超電導線材の作
製の高速化の達成により、厚膜化も図ることができるよ
うに成る。
【0060】しかも、水蒸気を添加する必要が無いの
で、HFの生成を可能な限り抑えることができる。この
ため、基板材料の選定範囲を金属や半導体にまで拡大す
ることができる。
【0061】また、本発明の作製方法によれば、熱処理
の際に酸素分圧と温度を制御するだけで超電導膜が作製
可能であるため、プロセスを著しく簡素化することがで
きる。このため、低コストかつ短時間で高温超電導膜を
作製することができる。
【0062】また、請求項2記載の酸化物超電導膜の作
製方法によれば、熱処理は基板に酸素を吹きかけながら
行われるので、熱処理の際に前駆体と酸素との反応が促
進されて高温超電導体の作製を迅速化することができ
る。
【0063】さらに、請求項3記載の酸化物超電導膜の
作製方法によれば、フッ化物はBaFとYFとの少
なくとも一方であるので、BaやYを利用してYBa
Cu 7−zの酸化物超電導体を作製することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高温超電導膜の作製方法の実施形態を
示すフローチャートである。
【図2】実施例1,2の各試料のX線回折パターンを示
すグラフである。
【図3】実施例1,2の各試料のSQUID帯磁率計に
よる磁化の温度依存性の測定結果を示すグラフであり、
図中小さいグラフは分岐部分の拡大図である。
【図4】実施例3,4の各試料のX線回折パターンを示
すグラフである。
【図5】実施例3,4の各試料のSQUID帯磁率計に
よる磁化の温度依存性の測定結果を示すグラフであり、
図中小さいグラフは分岐部分の拡大図である。
【図6】実施例4,5および比較例のX線回折パターン
を示すグラフである。
【符号の説明】
S1 前駆体作製工程 S2 熱処理工程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K029 AA23 BA42 BA50 BC04 EA03 EA05 EA08 GA01 4M113 AD35 AD36 AD68 BA04 BA11 BA29 CA34 CA44 5G321 AA04 CA21 CA26 DB35 DB46 DB47

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蒸発源となる物質を用いて基板上に前駆
    体を作製する前駆体作製工程と、前記前駆体の作製され
    た前記基板を熱処理して酸化物超電導膜を作製する熱処
    理工程とを有する高温超電導膜の作製方法において、前
    記蒸発源となる物質にはフッ化物を含むと共に、前記熱
    処理工程は、全圧PがP≦10mTorr(約1.33
    Pa)で、酸素分圧Poが0.1mTorr(約1.3
    3×10−2Pa)≦Po≦10mTorr(約1.3
    3Pa)の真空雰囲気中で、前記基板の温度Tbを40
    0℃≦Tb≦750℃にすることにより行われることを
    特徴とする酸化物超電導膜の作製方法。
  2. 【請求項2】 前記熱処理は前記基板に酸素を吹きかけ
    ながら行われることを特徴とする請求項1記載の酸化物
    超電導膜の作製方法。
  3. 【請求項3】 前記フッ化物はBaFとYFとの少
    なくとも一方であることを特徴とする請求項1または2
    記載の酸化物超電導膜の作製方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6610428B2 (en) * 1997-06-18 2003-08-26 Massachusetts Institute Of Technology Controlled conversion of metal oxyfluorides into superconducting oxides
JP2004335546A (ja) * 2003-04-30 2004-11-25 Central Res Inst Of Electric Power Ind 高温超電導膜の作製方法

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