JP2001327281A - 新規なバシルス・ポリミキサ菌及びバシルス・ズブチリス菌 - Google Patents

新規なバシルス・ポリミキサ菌及びバシルス・ズブチリス菌

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JP2001327281A
JP2001327281A JP2000149568A JP2000149568A JP2001327281A JP 2001327281 A JP2001327281 A JP 2001327281A JP 2000149568 A JP2000149568 A JP 2000149568A JP 2000149568 A JP2000149568 A JP 2000149568A JP 2001327281 A JP2001327281 A JP 2001327281A
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bacillus
streptomyces
bacillus subtilis
polymixer
subtilis
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Kaoru Indo
馨 印藤
Takeshi Kanzaki
健 神前
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Nisshin Seifun Group Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ジャガイモのそうか病やサツマイモの立ち枯
れ病等を引き起こすストレプトミセス属の植物病原菌に
対して高い拮抗性を有する有用微生物の提供。 【解決手段】 ストレプトミセス属の植物病原菌に対し
て拮抗性を有する新規なバシルス・ポリミキサ[特にバ
シルス・ポリミキサNT−104(FERM P−17
822)]およびストレプトミセス属の植物病原菌に対
して拮抗性を有する新規なバシルス・ズブチリス[特に
バシルス・ズブチリスNT−107(FERM P−1
7823)]、並びに前記の新規な細菌の少なくとも一
方からなる植物病原菌防除剤および該新規な細菌を含有
する堆肥。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なバシルス・
ポリミキサ菌およびバシルス・ズブチリス菌、前記の細
菌の少なくとも一方を含有する植物病原菌防除材および
堆肥に関するものである。本発明の新規な菌、それを含
む植物病原菌防除材および堆肥は、ストレプトミセス属
の植物病原菌、特にストレプトミセス・スキャビーズ、
ストレプトミセス・ターギディスキャビーズおよびスト
レプトミセス・イポメアからなる植物病原菌に対して高
い拮抗性を有しており、それらの植物病原菌によって引
き起こされる植物の病気の防除に有効である。
【0002】
【従来の技術】ジャガイモのそうか病は、ジャガイモに
多発する病気であり、そうか病に罹ったジャガイモは、
表面に直径が約5〜10mm程度の褐色のかさぶた状の
病斑ができ、外観が不良になるばかりでなく、デンプン
の含有量の低下や品質の低下を引き起こし、もはや商品
価値がなくなる。ジャガイモのそうか病は、ストレプト
ミセス・スキャビーズ、ストレプトミセス・アシディス
キャビーズなどのストレプトミセス属菌によって引き起
こされることが知られている。また、サツマイモの立ち
枯れ病は、サツマイモに多発する病気であり、立ち枯れ
病に罹ったサツマイモは、葉や茎が生育途中で枯れ塊茎
には黒色の病斑が生じ、著しく商品価値が低下する。サ
ツマイモの立ち枯れ病は、ストレプトミセス・イポメア
などのストレプトミセス属菌によって引き起こされるこ
とが知られている。さらに、ストレプトミセス属菌によ
って引き起こされる植物の病気としては、前記した以外
にも、テンサイまたはダイコンのそうか病、ジャガイモ
の象皮病などが知られている。
【0003】植物に発生する病気の防除対策としては、
従来、薬剤を用いる方法や、病気を引き起こす病原菌に
対して抵抗性のある品種を選んで植える方法等が採用さ
れており、特に薬剤による防除方法が汎用されてきた。
しかしながら、薬剤による方法は、ヒトや他の生物の体
内への薬剤の蓄積や残留、刺激臭、河川や地下水への薬
剤の流入や浸込み、生態系の破壊等の自然環境の破壊や
汚染等を生じており、大きな社会問題になっている。ま
た、病原菌に抵抗性のある品種を選んで生育させる方法
では、生育させる品種が限定されてしまい、しかも生育
環境や土壌が必ずしもその品種に適合しない場合が多い
ため問題が多い。
【0004】上記のような状況下に、薬剤によらずに、
植物病原菌に対して拮抗性を有する微生物を用いて植物
の病気を防除することが行われるようになっている。植
物病原菌に対して拮抗性を有する微生物による植物の病
気の防除は、薬剤散布によって生じている自然環境の汚
染、生態系の破壊、残留農薬の問題がなく、また病原菌
に抵抗性のある品種を選んで生育させる場合におけるよ
うな品種の選択の必要や制限がないため、望ましい方法
として注目されている。特開平2−48509号公報に
は、バシルス属に属する細菌であるKF−44菌株をジ
ャガイモのそうか病などの防除に用いることが記載され
ている。しかし、この公報には、前記KF−44菌株が
バシルス属に属するものであることまでは判明したが、
その種名を同定するには至らなかったとしており、バシ
ルス属のどの種に属する細菌がジャガイモのそうか病な
どの防除に有効であるかは明らかにされていない。
【0005】また、特開平8−175920号公報およ
び特開平8−175921号公報には、バシルス・ズブ
チリスに属するFERM−14616菌株およびFER
M−14617菌株の胞子が植物病原菌の防除に有効で
あることが記載されている。しかし、これらの公報に
は、バシルス・ズブチリスFERM−14616菌株お
よびFERM−14617菌株が、ストレプトミセス属
菌によって引き起こされる植物の病気の防除に有効であ
ることは記載されておらず、したがってバシルス・ズブ
チリスFERM−14616菌株およびFERM−14
617菌株が、ストレプトミセス・スキャビーズ(St
reptomyces scabies)、ストレプト
ミセス・ターギディスキャビーズ(Streptomy
ces turgidiscabies)などのストレ
プトミセス属菌によって引き起こされるジャガイモのそ
うか病の防除や、ストレプトミセス・イポメア(Str
eptomyces ipomoeae)などのストレ
プトミセス属菌によって引き起こされるサツマイモの立
ち枯れ病の防除に有効であることは全く記載されていな
い。かかる点から、ジャガイモのそうか病やサツマイモ
の立ち枯れ病などを引き起こすストレプトミセス属の病
原菌に対して高い拮抗性を有する有用微生物が求められ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的はジャガ
イモのそうか病やサツマイモの立ち枯れ病などを引き起
こすストレプトミセス属の植物病原菌に対して高い拮抗
性を有する有用微生物を提供することである。さらに、
本発明の目的は、ジャガイモのそうか病やサツマイモの
立ち枯れ病などを引き起こすストレプトミセス属の植物
病原菌に対して高い拮抗性を有する有用微生物を含む植
物病原菌防除材および堆肥を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ジャガイ
モのそうか病やサツマイモの立ち枯れ病などを引き起こ
すストレプトミセス属の植物病原菌に対して高い拮抗性
を有する有用微生物を見い出すべく、極めて多数の糸条
菌や細菌類について、ストレプトミセス属の植物病原菌
に対する拮抗性の有無や強弱を確認するためのスクリー
ニング作業を繰り返した。そして、バシルス属の細菌の
なかに、ストレプトミセス属の植物病原菌に対して高い
拮抗性を有する2種類の菌株が存在することを見い出し
た。そこで、それら2種の菌株を、ペプトン・グルコー
ス培地を用いて30℃で選択的に培養して、その形態的
および生理的な性質を詳細に調査したところ、その形態
的および生理的な性質から、一方の菌株はバシルス・ポ
リミキサに属し、もう一方の菌株はバシルス・ズブチリ
スに属することが判明した。
【0008】そして、それら2種の菌株について、その
特性を更に詳細に調べたところ、従来既知のバシルス・
ポリミキサは、L−アラビノース、D−キシロースおよ
びL−ラムノースの利用性を有しているのに対して、本
発明者らが見い出したバシルス・ポリミキサは、L−ア
ラビノース、D−キシロースおよびL−ラムノースの利
用性を有しておらず、従来のバシルス・ポリミキサとは
異なる新規な菌株であることが判明した。また、もう一
方の菌株であるバシルス・ズブチリスについてもその特
性を更に詳細に調べたところ、従来既知のバシルス・ズ
ブチリスは、L−アラビノース利用性を有しているのに
対して、本発明者らが見い出したバシルス・ズブチリス
は、L−アラビノース利用性を有しておらず、従来のバ
シルス・ズブチリスとは異なる新規な菌株であることが
判明した。
【0009】本発明者らは、上記の新規なバシルス・ポ
リミキサおよびバシルス・ズブチリスのストレプトミセ
ス属の植物病原菌に対する拮抗性について調べたとこ
ろ、従来既知のバシルス・ポリミキサおよびバシルス・
ズブチリスに比べて、ストレプトミセス属の植物病原菌
に対する拮抗性が高く、特にジャガイモのそうか病を引
き起こすストレプトミセス・スキャビーズおよびストレ
プトミセス・ターギディスキャビーズ、並びにサツマイ
モの立ち枯れ病を引き起こすストレプトミセス・イポメ
アに対して高い拮抗性を有し、これらのストレプトミセ
ス属の植物病原菌の防除、およびそれによって引き起こ
されるジャガイモのそうか病やサツマイモの立ち枯れ病
の発生防止に有効であることを見出して本発明を完成し
た。
【0010】すなわち、本発明は、(1) ストレプト
ミセス属の植物病原菌に対して拮抗性を有するバシルス
・ポリミキサである。そして、本発明は、(2) スト
レプトミセス・スキャビーズ、ストレプトミセス・ター
ギディスキャビーズおよびストレプトミセス・イポメア
に対して高い拮抗性を有する前記(1)のバシルス・ポ
リミキサである。
【0011】更に、本発明者らは、ストレプトミセス属
の植物病原菌、特にストレプトミセス・スキャビーズ、
ストレプトミセス・ターギディスキャビーズおよびスト
レプトミセス・イポメアに対して高い拮抗性を有する上
記した新規なバシルス・ポリミキサを、バシルス・ポリ
ミキサNT−104(Bacillus polymy
xa NT−104)と命名し、工業技術院生命工学工
業技術研究所にFERM P−17822として寄託し
た。したがって、本発明は、(3) バシルス・ポリミ
キサNT−104(Bacillus polymyx
NT−104;FERM P−17822)であ
る。
【0012】さらに、本発明は、(4)ストレプトミセ
ス属の植物病原菌に対して拮抗性を有するバシルス・ズ
ブチリスである。そして、本発明は、(5) ストレプ
トミセス・スキャビーズ、ストレプトミセス・ターギデ
ィスキャビーズおよびストレプトミセス・イポメアに対
して高い拮抗性を有する前記(4)のバシルス・ズブチ
リスである。
【0013】そして、本発明者は、ストレプトミセス属
の植物病原菌、特にストレプトミセス・スキャビーズ、
ストレプトミセス・ターギディスキャビーズおよびスト
レプトミセス・イポメアに対して高い拮抗性を有する上
記した新規なバシルス・ズブチリスを、バシルス・ズブ
チリスNT−107(Bacillus subtil
is NT−107)と命名し、工業技術院生命工学工
業技術研究所にFERM P−17823として寄託し
た。したがって、本発明は、(6) バシルス・ズブチ
リスNT−107(Bacillus subtili
NT−107;FERM P−17823)であ
る。
【0014】さらに、本発明は、(7) 前記(1)〜
(3)のいずれかのバシルス・ポリミキサおよび前記
(4)〜(6)のいずれかのバシルス・ズブチリスのう
ちの少なくとも1種を含むことを特徴とする植物病原菌
防除材;(8) ストレプトミセス・スキャビーズ、ス
トレプトミセス・ターギディスキャビーズおよび/また
はストレプトミセス・イポメアからなる植物病原菌に対
するものである前記(7)の植物病原菌防除材;およ
び、(9) 前記(1)〜(3)のいずれかのバシルス
・ポリミキサおよび前記(4)〜(6)のいずれかのバ
シルス・ズブチリスのうちの少なくとも1種を含むこと
を特徴とする堆肥;である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。上記したようにペプトン・グルコース培地を使用
して選択的に培養して得られた新規な菌株であるバシル
ス・ポリミキサNT−104(Bacillus po
lymyxa NT−104;FERM P−1782
2)(以下「バシルス・ポリミキサNT−104」とい
う)の形態的性質、培養的性質および生理学的性質は以
下のとおりである。
【0016】[バシルス・ポリミキサNT−104の形
態的性質]バシルス・ポリミキサNT−104をペプト
ン・グルコース培地を用いて30℃で3日間培養して、
単純乾燥法を用いて走査電子顕微鏡試料を調製して、そ
の形態的性質を調べたところ、下記の表1に示すとおり
であった。
【0017】[バシルス・ポリミキサNT−104の培
養的性質および生理的性質]バシルス・ポリミキサNT
−104を肉汁培地を用いて、“The Genus
Bacillus”USDAに記載されている方法にし
たがって培養した。その際に、培養時の運動性の有無、
カタラーゼ活性の有無、嫌気下での生育の有無、V−P
反応(アセトイン産生能)の有無、V−Pブロス(14
日培養後)のpHを調査したところ、表1に示すとおり
であった。また、培地にグルコース、デンプン、クエン
酸ナトリウムまたは7%塩化ナトリウムを添加して培養
を行ってグルコースからの酸およびガスの生成の有無、
デンプンの分解の有無、クエン酸ナトリウムの利用の有
無を調査したところ、表1に示すとおりであった。さら
に、培地のpHおよび温度を表1のように変えて生育の
有無と調査すると共に、7%塩化ナトリウムの存在下で
生育の有無を調査した。その結果を、下記の表1に示
す。
【0018】
【表1】
【0019】上記の表1に示したバシルス・ポリミキサ
NT−104の形態的性質、培養的性質および生理学性
質は、“The Genus Bacillus”US
DAに記載されている従来既知のバシルス・ポリミキサ
が有する形態的性質、培養的性質および生理学的性質と
同じであり、かかる点から、バシルス・ポリミキサNT
−104はバシルス・ポリミキサに属する菌株であるこ
とが判明した。この新規なバシルス・ポリミキサNT−
104は、北海道内の畑作物圃場の土壌より分離した。
【0020】また、バシルス・ポリミキサNT−104
の炭素源の利用性の試験を、“International Journa
l of Systematic Bacteriology”Vol.16, No.
3,p.313−340(July 1966)に記載
されている方法にしたがって行った。すなわち、バシル
ス・ポリミキサNT−104を下記の表2に示す培地1
を用いて28℃で72時間平板培養により培養した後、
ワーリングブレンダーを用いて菌体を分散させ、続いて
遠心分離(5000rpmで30分間)した後、同量の
滅菌水を加え、これに菌体を分散させた。この操作を2
度繰り返して培地成分を完全に取り除いて接種菌液を調
製した。この接種菌液を、各種炭素源を添加した下記の
表2に示す培地2と、炭素源を添加していない以外は培
地2と同じ組成を有する培地(コントロール)(表記せ
ず)を有するそれぞれのプレートに塗布し、28℃で7
日間培養した後、培地2におけるバシルス・ポリミキサ
NT−104の生育状態を、コントロール用の培地にお
けバシルス・ポリミキサNT−104の生育状態と比較
して、その各炭素源の利用性の有無を判定したところ、
下記の表3に示すとおりであった。
【0021】更に、標準的なバシルス・ポリミキサとし
て一般に取り扱われている従来既知のバシルス・ポリミ
キサ(IFO 15309)についても、上記と同様に
して各炭素源の利用性の有無を判定したところ、下記の
表3に示すとおりであった。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】上記の表3の炭素源の利用性の結果が示す
ように、既知のバシルス・ポリミキサ(IFO 153
09)は、L−アラビノース、D−キシロースおよびL
−ラムノースの利用性を有しているのに対して、バシル
ス・ポリミキサNT−104は、L−アラビノース、D
−キシロースおよびL−ラムノースの利用性を有してお
らず、炭素源の利用性において既知のバシルス・ポリミ
キサと異なっており、かかる点で新規な菌株であること
が判明した。
【0025】また、ペプトン・グルコース培地を使用し
て選択的に培養して得られたバシルス・ズブチリスNT
−107(Bacillus subtilis NT−
107;FERM P−17823)(以下「バシルス
・ズブチリスNT−107」という)の形態的性質、培
養的性質および生理学的性質を以下のようにして調べ
た。
【0026】[バシルス・ズブチリスNT−107の形
態的性質]バシルス・ズブチリスNT−107をペプト
ン・グルコース培地を用いて30℃で3日間培養して、
単純乾燥法を用いて走査電子顕微鏡試料を調製して、そ
の形態的性質を調べたところ、下記の表4に示すとおり
であった。
【0027】[バシルス・ズブチリスNT−107の培
養的性質および生理的性質]バシルス・ズブチリスNT
−107を肉汁培地を用いて、“The Genus
Bacillus”USDAに記載されている方法にし
たがって培養した。その際に、培養時の運動性の有無、
カタラーゼ活性の有無、嫌気下での生育の有無、V−P
反応(アセトイン産生能)の有無、V−Pブロス(14
日培養後)のpHを調査したところ、表1に示すとおり
であった。また、培地にグルコース、デンプン、クエン
酸ナトリウムまたは7%塩化ナトリウムを添加して培養
を行ってグルコースからの酸およびガスの生成の有無、
デンプンの分解の有無、クエン酸ナトリウムの利用の有
無を調査したところ、表4に示すとおりであった。
【0028】
【表4】
【0029】上記の表4に示したバシルス・ズブチリス
NT−107の形態的性質、培養的性質および生理学性
質は、“The Genus Bacillus”US
DAに記載されている従来既知のバシルス・ズブチリス
が有する形態的性質、培養的性質、生理学的性質と同じ
であり、かかる点から、バシルス・ズブチリスNT−1
07はバシルス・ズブチリスに属する菌株であることが
判明した。この新規なバシルス・ズブチリスNT−10
7は、茨城県内の森林の土壌より分離した。
【0030】また、バシルス・ズブチリスNT−107
の炭素源の利用性の試験を、上記の表2に示した培地を
用いてバシルス・ポリミキサNT−104の場合と同様
に行ったところ、下記の表5に示すとおりであった。更
に、標準的なバシルス・ズブチリスとして一般に取り扱
われている従来既知のバシルス・ズブチリス(IFO
13719)についても、上記と同様にして各炭素源の
利用性の有無を判定したところ、下記の表5に示すとお
りであった。
【0031】
【表5】
【0032】上記の表5の炭素源の利用性の結果が示す
ように、既知のバシルス・ズブチリス(IFO 137
19)は、L−アラビノースの利用性を有しているのに
対して、バシルス・ズブチリスNT−107はL−アラ
ビノースの利用性を有しておらず、炭素源の利用性にお
いて既知のバシルス・ズブチリスと異なっており、かか
る点で新規な菌株であることが判明した。
【0033】本発明の新規なバシルス・ポリミキサおよ
びバシルス・ズブチリスの培養は、従来既知のバシルス
・ポリミキサおよびバシルス・ズブチリスの培養に通常
使用されている培地(例えば標準寒天培地やペプトン・
グルコース培地など)を使用して常法にしたがって行え
ばよい。特に、ペプトン、グルコース、KH2PO4およ
びMgSO4を含有するペプトン・グルコース培地、そ
のうちでもペプトンを1%、グルコースを1%、KH2
PO4を0.1%、およびMgSO4を0.05%の割合
で含有する初期pHが6.8のペプトン・グルコース培
地を用いると、増殖が活発に行われるので望ましい。そ
の場合に、滅菌した培地に、新規なバシルス・ポリミキ
サおよび/またはバシルス・ズブチリスを接種して、約
25〜30℃で2〜3日程度培養することによって増殖
させることができる。例えば、上記した組成を有するペ
プトン・グルコース培地を用いて28℃の温度にコント
ロールしながらジャーファーメンターなどを用いて好気
的状態で培養すると、3日間で該新規なバシルス・ポリ
ミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスの菌数が1
7〜108CFU/gにまで増殖する。なお、本明細書
でいうCFUとはコロニーフォーミングユニット(Co
lony Forming Units)の略で、培地
上でカウントできる菌数を示す。
【0034】本発明の新規なバシルス・ポリミキサおよ
びバシルス・ズブチリスは、ストレプトミセス属の植物
病原菌に対して高い拮抗性を有し、特にストレプトミセ
ス・スキャビーズ、ストレプトミセス・ターギディスキ
ャビーズおよびストレプトミセス・イポメアに対して高
い拮抗性を有しており、ストレプトミセス・スキャビー
ズおよびストレプトミセス・ターギディスキャビーズに
よって引き起こされるジャガイモのそうか病、およびス
トレプトミセス・イポメアによって引き起こされるサツ
マイモの立ち枯れ病の防除に特に有効である。
【0035】本発明の新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスを含む植物病原菌の防
除材または堆肥を用いてストレプトミセス属の植物病原
菌を防除するに当たっては、該バシルス・ポリミキサお
よび/またはバシルス・ズブチリスを培養して増殖させ
てから植物に施す方法、すなわち防除材や堆肥などに含
まれる該バシルス・ポリミキサおよび/またはバシルス
・ズブチリス菌の数を増殖しておいてから植物に施す
と、ストレプトミセス属の植物病原菌を効果的に防除す
ることができる。限定されるものではないが、一般に、
植物病原菌防除材または堆肥1g当たり該新規なバシル
ス・ポリミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスが
約108CFU以上含まれるものを使用するとその防除
効果が良好に発揮される。
【0036】上記により増殖させた新規なバシルス・ポ
リミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスをストレ
プトミセス属の植物病原菌の防除材として用いるに当た
っては、 (i) 増殖させた該新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスを集菌せずにそのまま
液体培地ごと防除材として用いて植物に直接施したりま
たは植物生育用土壌に施す方法; (ii) 遠心分離やその他の適当な方法により前記で増
殖させた該新規なバシルス・ポリミキサおよび/または
バシルス・ズブチリスを集菌し、必要に応じて純水等で
洗浄して、湿菌体を回収しその湿菌体をジャガイモやサ
ツマイモなどの植物に直接施したり、またはそれらの植
物を育てる土壌に施してストレプトミセス属の植物病原
菌の防除を行う方法; (iii) 増殖させた該新規なバシルス・ポリミキサお
よび/またはバシルス・ズブチリスを集菌せずにまたは
集菌してから、滅菌した固体培地に接種して一定期間固
体培養した後に、それをジャガイモやサツマイモなどの
植物に直接施したり、またはそれらの植物を育てる土壌
に施してストレプトミセス属の植物病原菌の防除を行う
方法; (iv) 増殖させた該新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスを集菌せずにまたは集
菌してから、或いは上記(iii)の方法で固体培養して
から、吸着材に吸着させて防除材を形成し、それをジャ
ガイモやサツマイモなどの植物に直接施したり、または
それらの植物を育てる土壌に施してストレプトミセス属
の植物病原菌の防除を行う方法;などを採用することが
できる。
【0037】上記(i)の方法を採用する場合は、培養
液中に含まれる培地成分や培養によって生成した二次代
謝産物が植物に影響を与えることがあるので、水によっ
て100〜1000倍程度に希釈して植物に散布した
り、土壌に施すことが好ましい。特に、上記した(iii)
の方法を採用する場合は、増殖させた該新規なバシルス
・ポリミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスを、
滅菌した固体培地で一定期間固体培養して順化(馴化)
してから土壌に施すので、土壌における定着性が向上し
ており、該バシルス・ポリミキサおよび/またはバシル
ス・ズブチリスを土壌中で上記の所定の値にまで1週間
程度の期間で円滑に増殖させることができる。上記(ii
i)の方法を行うに場合は、その固体培養は、固体培地
として例えば滅菌処理した堆肥などを用いて、20〜3
0℃程度の温度で、約3〜5日間培養を行って、それを
土壌に施すようにするとよい。
【0038】また、吸着材を用いる上記した(iv)の方
法による場合は、該新規なバシルス・ポリミキサおよび
/またはバシルス・ズブチリスを土壌中で一層良好に定
着させて増殖させることができ、好ましい。吸着材とし
ては、微生物を物理的または化学的に吸着できるもので
あればよく、例えばバーミキュライト、ゼオライトのよ
うな吸着性鉱物材料(特に粉状物や粒状物)、木炭や活
性炭等の炭類、化学合成された多孔質ポリマー等を使用
することができる。該新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスの吸着材への吸着方法
としては、湿菌体を集菌してからまたは集菌せずにその
まま吸着材と混合する方法、湿菌体を約1〜5倍量の水
に分散させて吸着材と混合する方法、湿菌体を固体培養
してから水に分散させて吸着材と混合する方法等を採用
することができる。該新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスと吸着材との割合は特
に限定されないが、通常、該バシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスの湿菌体を用いる場合
は、湿菌体1重量部に対して、吸着材約1〜3重量部と
しておくのがよい。上記により得られる吸着材に吸着さ
せた新規なバシルス・ポリミキサおよび/またはバシル
ス・ズブチリスは、そのままの状態でストレプトミセス
属の植物病原菌の防除に用いてもよいし、水分含量が多
い場合は約15〜30重量%の水分含量になるまで半乾
燥して該半乾燥状態でストレプトミセス属の植物病原菌
の防除に用いてもよいし、または保存してもよい。半乾
燥処理を行う場合は、菌の生育に悪影響を与えない温度
下で行う必要があり、通常、約30〜50℃の温度で乾
燥するのがよい。
【0039】更に、上記で調製した新規なバシルス・ポ
リミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスの吸着体
を、直接そのままストレプトミセス属の植物病原菌の防
除に用いる代わりに、堆肥や他の成分に添加して用いて
もよい。新規なバシルス・ポリミキサおよび/またはバ
シルス・ズブチリスを添加した堆肥は、肥料効果と、ス
トレプトミセス属の植物病原菌に対する拮抗性の両方の
効果を兼備することができる。新規なバシルス・ポリミ
キサおよび/またはバシルス・ズブチリス或いはそれを
吸着体に吸着させたものは、製造の完了した堆肥に加え
ても、または堆肥用の原料に加えて堆肥の製造と同時に
該新規なバシルス・ポリミキサおよび/またはバシルス
・ズブチリスの増殖を行わせてもよい。
【0040】新規なバシルス・ポリミキサおよび/また
はバシルス・ズブチリスを堆肥原料中に加える場合は、
堆肥1g当たり(乾物換算)、該新規なバシルス・ポリ
ミキサおよび/またはバシルス・ズブチリスが約108
CFU以上含まれるようにすることが好ましい。
【0041】新規なバシルス・ポリミキサおよび/また
はバシルス・ズブチリスを含む本発明の堆肥は、ジャガ
イモやサツマイモなどの植物用の堆肥を製造するのに通
常採用されている方法および条件を採用して製造するこ
とができる。発酵させる前の堆肥用原料に新規なバシル
ス・ポリミキサおよび/またはバシルス・ズブチリス或
いはそれを吸着材に吸着させた吸着体を添加して、堆肥
の発酵と該新規なバシルス・ポリミキサおよび/または
バシルス・ズブチリスの増殖を同時に行ってもよいし、
発酵により堆肥を予め製造しておき、発酵後の堆肥に新
規なバシルス・ポリミキサおよび/またはバシルス・ズ
ブチリス或いはその吸着体を加えて、水分含量を約40
〜70%、特に50〜60%に調節し、約25〜50℃
の温度で、約3〜5日間そのまま放置するか、または時
々撹拌して、堆肥中で新規なバシルス・ポリミキサおよ
び/またはバシルス・ズブチリスを増殖させてもよく、
いずれの場合も、ストレプトミセス属の植物病原菌に対
して拮抗性を有する新規なバシルス・ポリミキサおよび
/またはバシルス・ズブチリスを多量に含む本発明の堆
肥を得ることができる。特に、本出願人の出願にかかる
特開平6−327356号公報に記載しているように、
堆肥として小麦フスマなどの有機質物質をベースとして
なる堆肥を用い、これに必要に応じてフミン酸、多孔質
および/または吸着性の無機物質を加えて、それに上記
した新規なバシルス・ポリミキサおよび/またはバシル
ス・ズブチリスを含有させると、ストレプトミセス属の
植物病原菌に対する防除効果の極めて高い堆肥を得るこ
とができる。
【0042】
【実施例】以下に実施例などにより本発明について具体
的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されな
い。
【0043】《実施例1》 (1)バシルス・ポリミキサNT−104の拮抗性試
験: (i) バシルス・ポリミキサNT−104を標準寒天
培地を用いて28℃で3日間培養してバシルス・ポリミ
キサNT−104のコロニーを得た。 (ii) 土壌100gに水100mlを添加し、121
℃で20分間加熱処理した後、ブフナーロートで濾過し
て、土壌熱水抽出液を得た。この抽出液100mlに、
KH2PO4 0.2gおよび寒天15.0gを加え、1
21℃で20分間加熱処理した後、直径8cmの滅菌済
プラスチック製シャーレに15mlずつ注入し、冷却し
て、平板培地を作成した。 (iii) 上記(ii)で作成した平板培地の中心に、上
記(i)で得られたバシルス・ポリミキサNT−104
のコロニーを1白金耳スポット接種し、28℃で24時
間放置した後、ジャガイモのそうか病を引き起こす病原
菌の1種であるストレプトミセス・スキャビーズの胞子
の懸濁液を培地の全面に均一に噴霧し、28℃に7日間
放置し、該放置後の阻止円の直径を測定したところ、下
記の表6に示すとおりであった。 (iv) また、上記(ii)で作成した平板培地の全面
に、ストレプトミセス・スキャビーズ胞子の懸濁液を均
一に噴霧接種し、その直後に、培地の中心に、上記
(i)で得られたバシルス・ポリミキサNT−104の
コロニーを1白金耳スポット接種し、28℃で7日間放
置し、該放置後の阻止円の直径を測定したところ、下記
の表6に示すとおりであった。
【0044】(2)バシルス・ポリミキサ(IFO 1
5309)の拮抗性試験: (i)バシルス・ポリミキサ(IFO 15309)
(財団法人発酵研究所より入手)を標準寒天培地を用い
て28℃で3日間培養してバシルス・ポリミキサ(IF
O 15309)のコロニーを得た。 (ii) 上記(1)の(ii)と同じ平板培地を作成し、
この平板培地の中心に、上記(i)で得られたバシルス
・ポリミキサ(IFO 15309)のコロニーの1白
金耳スポット接種し、28℃で24時間放置した後、ス
トレプトミセス・スキャビーズ胞子の懸濁液を培地の全
面に均一に噴霧し、28℃に7日間放置し、該放置後の
阻止円の直径を測定したところ、下記の表6に示すとお
りであった。 (iii) 上記(1)の(ii)と同じ平板培地を作成
し、この平板培地の全面にストレプトミセス・スキャビ
ーズ胞子の懸濁液を均一に噴霧接種し、その直後に、培
地の中心に上記(i)で得られたバシルス・ポリミキサ
(IFO 15309)のコロニーの1白金耳をスポッ
ト接種し、28℃で7日間放置し、該放置後の阻止円の
直径を測定したところ、下記の表6に示すとおりであっ
た。
【0045】
【表6】
【0046】上記の表6の結果から明らかなように、本
発明のバシルス・ポリミキサNT−104によって形成
された阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ポリミキ
サ(IFO 15309)によって形成された阻止円の
直径に比べて大幅に大きくなっており、バシルス・ポリ
ミキサNT−104は、従来既知のバシルス・ポリミキ
サに比べて、ストレプトミセス属の植物病原菌(ストレ
プトミセス・スキャビーズ)に対して高い拮抗性を有し
ていることがわかる。
【0047】《実施例2》 (1)バシルス・ズブチリスNT−107の拮抗性試
験: (i) バシルス・ズブチリスNT−107を標準寒天
培地を用いて28℃で3日間培養してバシルス・ズブチ
リスNT−107のコロニーを得た。 (ii) 実施例1の(ii)と全じ平板培地を作成し、こ
の平板培地の全面にストレプトミセス・スキャビーズ胞
子の懸濁液を均一に噴霧接種し、その直後に上記(i)
で得られたバシルス・ズブチリスNT−107のコロニ
ーを1白金耳スポット接種し、28℃で7日間放置し、
該放置後の阻止円の直径を測定したところ、下記の表7
に示すとおりであった。 (iii) 上記(ii)で用いたのと同じ平板培地の全面
にストレプトミセス・スキャビーズ胞子の懸濁液を均一
に噴霧接種し、噴霧接種の18時間後に、培地の中心
に、上記(i)で得られたバシルス・ズブチリスNT−
107のコロニーを1白金耳スポット接種し、28℃で
7日間放置し、該放置後の阻止円の直径を測定したとこ
ろ、下記の表7に示すとおりであった。
【0048】(2)バシルス・ズブチリス(IFO 1
3719)の拮抗性試験: (i) バシルス・ズブチリス(IFO 13719)
(財団法人発酵研究所より入手)を標準寒天培地を用い
て28℃で3日間培養してバシルス・ズブチリス(IF
O 13719)のコロニーを得た。 (ii) 実施例1の(ii)と全じ平板培地を作成し、こ
の平板培地の全面にストレプトミセス・スキャビーズ胞
子の懸濁液を均一に噴霧接種し、その直後に上記(i)
で得られたバシルス・ズブチリス(IFO 1371
9)を1白金耳スポット接種し、28℃で7日間放置
し、該放置後の阻止円の直径を測定したところ、下記の
表7に示すとおりであった。 (iii) 上記(ii)で用いたのと同じ平板培地の全面
にストレプトミセス・スキャビーズ胞子の懸濁液を均一
に噴霧接種し、噴霧接種の18時間後に、培地の中心
に、上記(i)で得られたバシルス・ズブチリス(IF
O 13719)のコロニーを1白金耳スポット接種
し、28℃で7日間放置し、該放置後の阻止円の直径を
測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0049】
【表7】
【0050】上記の表7の結果から明らかなように、本
発明のバシルス・ズブチリスNT−107によって形成
された阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ズブチリ
ス(IFO 13719)によって形成された阻止円の
直径に比べて大幅に大きなっており、本発明のバシルス
・ズブチリスNT−107は、従来既知のバシルス・ズ
ブチリスに比べて、ストレプトミセス属の植物病原菌
(ストレプトミセス・スキャビーズ)に対して高い拮抗
性を有していることがわかる。
【0051】《実施例3》 (1)バシルス・ポリミキサNT−104およびバシル
ス・ズブチリスNT−107の拮抗性試験: (i) ポテトデキストロース寒天平板培地を用いて、
バシルス・ポリミキサNT−104およびバシルス・ズ
ブチリスNT−107のそれぞれを28℃で3日間培養
してそれぞれのコロニーを得た。 (ii) 上記(i)で用いたのと同じポテトデキストロ
ース寒天平板培地の全面にストレプトミセス・スキャビ
ーズ胞子の懸濁液を均一に噴霧接種し、8時間放置した
後に、上記(i)で得られたバシルス・ポリミキサNT
−104又はバシルス・ズブチリスNT−107のコロ
ニーを1白金耳スポット接種し、28℃で7日間放置
し、該放置後の阻止円の直径を測定したところ、下記の
表8に示すとおりであった。
【0052】(2)バシルス・ポリミキサ(IFO 1
5309)およびバシルス・ズブチリス(IFO 13
719)の拮抗性試験: (i) ポテトデキストロース寒天平板培地を用いて、
従来既知のバシルス・ポリミキサ(IFO 1530
9)およびバシルス・ズブチリス(IFO 1371
9)(いずれも財団法人発酵研究所より入手)のそれぞ
れを28℃で3日間培養してそれぞれのコロニーを得
た。 (ii) 上記(i)で用いたのと同じポテトデキストロ
ース寒天平板培地の全面にストレプトミセス・スキャビ
ーズ胞子の懸濁液を均一に噴霧接種し、8時間放置した
後に、上記(i)で得られたバシルス・ポリミキサ(I
FO 15309)又はバシルス・ズブチリス(IFO
13719のコロニーを1白金耳スポット接種し、2
8℃で7日間放置し、該放置後の阻止円の直径を測定し
たところ、下記の表8に示すとおりであった。
【0053】
【表8】
【0054】上記の表8の結果から明らかなように、本
発明のバシルス・ポリミキサNT−104によって形成
された阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ポリミキ
サ(IFO 15309)によって形成された阻止円の
直径に比べて大幅に大きくなっており、従来既知のバシ
ルス・ポリミキサに比べて、ストレプトミセス属の植物
病原菌(ストレプトミセス・スキャビーズ)に対する拮
抗性に優れていることがわかる。また、本発明のバシル
ス・ズブチリスNT−107によって形成された阻止円
の直径は、従来既知のバシルス・ズブチリス(IFO
13719)によって形成された阻止円の直径に比べて
大幅に大きくなっており、従来既知のバシルス・ズブチ
リスに比べて、ストレプトミセス属の植物病原菌(スト
レプトミセス・スキャビーズ)に対する拮抗性に優れて
いることがわかる。
【0055】《実施例4》ストレプトミセス・スキャビ
ーズ胞子の懸濁液の代わりに、ジャガイモのそうか病を
引き起こす別の病原菌であるストレプトミセス・ターギ
ディスキャビーズの胞子懸濁液を用いた以外は、実施例
3と同様に行って、バシルス・ポリミキサNT−104
の接種により形成された阻止円の直径およびバシルス・
ポリミキサ(IFO 15309)の接種により形成さ
れた阻止円の直径、並びにバシルス・ズブチリスNT−
107の接種により形成された阻止円の直径およびバシ
ルス・ズブチリス(IFO 13719)の接種により
形成された阻止円の直径をそれぞれ測定したところ、下
記の表9に示すとおりであった。
【0056】
【表9】
【0057】上記の表9の結果から明らかなように、本
発明のバシルス・ポリミキサNT−104によって形成
された阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ポリミキ
サ(IFO 15309)によって形成された阻止円の
直径に比べて大幅に大きくなっており、従来既知のバシ
ルス・ポリミキサに比べて、ストレプトミセス属の植物
病原菌(ストレプトミセス・ターギディスキャビーズ)
に対する拮抗性に優れていることがわかる。また、本発
明のバシルス・ズブチリスNT−107によって形成さ
れた阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ズブチリス
(IFO 13719)によって形成された阻止円の直
径に比べて大幅に大きくなっており、従来既知のバシル
ス・ズブチリスに比べて、ストレプトミセス属の植物病
原菌(ストレプトミセス・ターギディスキャビーズ)に
対する拮抗性に優れていることがわかる。
【0058】《実施例5》 (ii) ストレプトミセス・スキャビーズ胞子の懸濁液
の代わりに、サツマイモの立ち枯れ病を引き起こす病原
菌であるストレプトミセス・イポメアの胞子懸濁液を用
いた以外は、実施例3と同様に行って、バシルス・ポリ
ミキサNT−104の接種により形成された阻止円の直
径およびバシルス・ポリミキサ(IFO15309)の
接種により形成された阻止円の直径、並びにバシルス・
ズブチリスNT−107の接種により形成された阻止円
の直径およびバシルス・ズブチリス(IFO 1371
9)の接種により形成された阻止円の直径をそれぞれ測
定したところ、下記の表10に示すとおりであった。
【0059】
【表10】
【0060】上記の表10の結果から明らかなように、
本発明のバシルス・ポリミキサNT−104によって形
成された阻止円の直径は、従来既知のバシルス・ポリミ
キサ(IFO 15309)によって形成された阻止円
の直径に比べて大幅に大きくなっており、従来既知のバ
シルス・ポリミキサに比べて、ストレプトミセス属の植
物病原菌(ストレプトミセス・イポメア)に対する拮抗
性に優れていることがわかる。また、本発明のバシルス
・ズブチリスNT−107によって形成された阻止円の
直径は、従来既知のバシルス・ズブチリス(IFO 1
3719)によって形成された阻止円の直径に比べて大
幅に大きくなっており、従来既知のバシルス・ズブチリ
スに比べて、ストレプトミセス属の植物病原菌(ストレ
プトミセス・イポメア)に対する拮抗性に優れているこ
とがわかる。
【0061】《実施例6》 (i) バシルス・ポリミキサNT−104およびバシ
ルス・ズブチリスNT−107の各々を、ペプトン・グ
ルコース培地(ペプトン、グルコース、KH2PO4、M
gSO4を含有する液体培地)を用いて、28℃で3日
間培養して増殖させた。 (ii) バーク堆肥と小麦フスマを9:1の重量比で混
合し、この混合物を121℃で30分間高圧滅菌した
後、上記(i)で増殖したバシルス・ポリミキサNT−
104またはバシルス・ズブチリスNT−107のコロ
ニーを、該混合物に対して約105〜106CFU/gの
割合で接種して28℃で7日間増殖させて、バシルス・
ポリミキサNT−104またはバシルス・ズブチリスN
T−107を約108CFU/gの割合で含有する資材
をそれぞれ製造した。 (iii) 上記(ii)で得られた資材を、土壌1000
2(10アール)当たり資材の量が5トンとなるよう
に、土壌全面に施して良く混和した後、ジャガイモ(男
爵)の種芋を、等間隔に10m2(0.1アール)当た
り24個ずつ定植するという作業を3反復行った。 (iv) 定植3カ月後に、新塊茎(新ジャガイモ)を掘
り出し、そうか病の発生状況を下記の方法で調査したと
ころ、以下の表11に示すとおりであった(試験区1お
よび試験区2)。 (v) 対照として、バシルス・ポリミキサNT−10
4またはバシルス・ズブチリスNT−107を含有しな
い上記と同様の資材を用いて、上記と同様にしてジャガ
イモを定植して3カ月後にそうか病の発生状況を同様に
して調査したところ、下記の表11のとおりであった
(試験区3)。 (v) 参考のため、バシルス・ポリミキサNT−10
4またはバシルス・ズブチリスNT−107の代わり
に、フルアジナム(化学農薬)(石原産業株式会社製
「フロンサイド」)を0.5%の割合で添加した上記と
同様の資材を用いて、上記と同様にしてジャガイモを定
植して3カ月後にそうか病の発生状況を同様にして調査
したところ、下記の表11のとおりであった(試験区
4)。
【0062】[ジャガイモにおけるそうか病の発生状況
の調査]ジャガイモにおけるそうか病の発生状況を、下
記の発病度および防除価により評価した。 (1)そうか病の発病度:ジャガイモの表面を観察し
て、そうか病の病斑数が0個を指数0、病斑数が1〜3
個を指数1、病斑数が4〜10個を指数2、病斑数が1
1〜20個を指数3および病斑数が21個以上を指数4
とし、各試験区ごとに指数0〜4に該当するジャガイモ
の数を数え、以下の式によりそうか病の発病度を求め
た。
【0063】
【数1】そうか病の発病度(%)={(1×n1+2×
2+3×n3+4×n4)/(4×n)}×100 [式中、n1、n2、n3およびn4は発病指数1、2、3
および4のそれぞれに該当するジャガイモの数、nは調
査したジャガイモの総数を示す。]
【0064】(2)防除価:以下の式によりそうか病の
防除価を求めた。
【0065】
【数2】 そうか病の防除価(%)=100−(A/B)×100 [式中、Aはそれぞれの試験区(試験区1、2および
4)におけるそうか病の発病度(%)、Bは試験区3に
おけるそうか病の発病度(%)を示す。]
【0066】
【表11】
【0067】上記の表11の結果から、バシルス・ポリ
ミキサNT−104またはバシルス・ズブチリスNT−
107を配合した資材を用いてなる試験区1と試験2で
は、これらの菌を配合していない試験区3(対照区)に
比べてそうか病の発病度が大幅に低く、そうか病の防除
に有効であることがわかる。また、上記表11の結果か
ら、バシルス・ポリミキサNT−104またはバシルス
・ズブチリスNT−107を配合した資材を用いてなる
試験区1と試験2では、そうか病の防除において、化学
農薬を用いた試験区4と同程度またはそれを凌駕する効
果を有することがわかる。
【0068】
【発明の効果】本発明の新規なバシルス・ポリミキサお
よびバシルス・ズブチリスは、ストレプトミセス属の植
物病原菌、特にストレプトミセス・スキャビーズ、スト
レプトミセス・ターギディスキャビーズおよびストレプ
トミセス・イポメアに対して高い拮抗性を有する。その
ため、本発明の新規なバシルス・ポリミキサおよびバシ
ルス・ズブチリス、並びにこれらの細菌の少なくとも一
方を含有する植物病原菌の防除材および堆肥は、前記し
たストレプトミセスの植物病原菌によって引き起こされ
る植物の種々の病気、例えば、ジャガイモのそうか病、
サツマイモの立ち枯れ病、テンサイまたはダイコンのそ
うか病、ジャガイモの象皮病の防除に有効であり、特に
ジャガイモのそうか病およびサツマイモの立ち枯れ病の
防除に有効である。本発明の新規なバシルス・ポリミキ
サおよび/またはバシルス・ズブチリスを用いてストレ
プトミセス属の植物病原菌によって引き起こされる植物
の病気を防除する場合は、農薬などの薬剤を用いないの
で、薬剤の使用によって従来生じていたヒトや他の生物
の体内への薬剤の蓄積や残留の問題、自然環境の汚染、
それに伴う生態系の破壊などの問題が生じない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12N 1/20 (C12N 1/20 C12R 1:12) C12R 1:12) (C12N 1/20 (C12N 1/20 C12R 1:125) C12R 1:125) Fターム(参考) 4B065 AA15X AA19X AC12 AC13 AC20 BA22 CA47 CA49 4H011 AA01 AA03 BA01 BB22 BC18 DA13 DD03 DD04 DG06 4H061 AA01 CC47 DD07 EE66 HH44

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ストレプトミセス属の植物病原菌に対し
    て拮抗性を有するバシルス・ポリミキサ。
  2. 【請求項2】 ストレプトミセス・スキャビーズ、スト
    レプトミセス・ターギディスキャビーズおよびストレプ
    トミセス・イポメアに対して高い拮抗性を有する請求項
    1に記載のバシルス・ポリミキサ。
  3. 【請求項3】 バシルス・ポリミキサNT−104(F
    ERM P−17822)。
  4. 【請求項4】 ストレプトミセス属の植物病原菌に対し
    て拮抗性を有するバシルス・ズブチリス。
  5. 【請求項5】 ストレプトミセス・スキャビーズ、スト
    レプトミセス・ターギディスキャビーズおよびストレプ
    トミセス・イポメアに対して高い拮抗性を有する請求項
    4に記載のバシルス・ズブチリス。
  6. 【請求項6】 バシルス・ズブチリスNT−107(F
    ERM P−17823)。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれか1項のバシルス
    ・ポリミキサおよび請求項4〜6のいずれか1項のバシ
    ルス・ズブチリスのうちの少なくとも1種を含むことを
    特徴とする植物病原菌防除材。
  8. 【請求項8】 ストレプトミセス・スキャビーズ、スト
    レプトミセス・ターギディスキャビーズおよび/または
    ストレプトミセス・イポメアからなる植物病原菌に対す
    るものである請求項7に記載の植物病原菌防除材。
  9. 【請求項9】 請求項1〜3のいずれか1項のバシルス
    ・ポリミキサおよび請求項4〜6のいずれか1項のバシ
    ルス・ズブチリスのうちの少なくとも1種を含むことを
    特徴とする堆肥。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100563298B1 (ko) * 2003-11-17 2006-03-27 제주도 감자 더뎅이 병 방제효과를 갖는 스트렙토마이세스 속 균주
WO2007040131A1 (ja) 2005-09-30 2007-04-12 Suntory Limited サーファクチンを含有する農作物のそうか病防除用組成物
KR100769360B1 (ko) 2006-12-22 2007-10-31 대한민국 신규한 바실러스 서브틸리스 에스37-2 균주 및 이를유효성분으로 하는 미생물비료
KR101212047B1 (ko) 2009-12-31 2012-12-13 대한민국 작물생육을 촉진하는 신규 락토바실러스 파라케피리 naas-1균주
CN103725630A (zh) * 2013-12-06 2014-04-16 大连三科生物工程有限公司 一种拮抗马铃薯疮痂病的微生物菌剂
CN105505836A (zh) * 2016-01-27 2016-04-20 黑龙江省科学院微生物研究所 一株枯草芽孢杆菌、防治马铃薯疮痂病的枯草芽孢杆菌微生物菌剂的制备方法及其使用方法

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