JP2001322828A5 - - Google Patents

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に設置された型母材の周囲にプラズマを発生させ、型母材にパルス電圧を印加することにより型母材周囲の前記プラズマからイオンのみを引き出し、このイオンを型母材の表面に注入若しくは付着又は注入及び付着の双方を行うことを特徴とする光学素子用成形型の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマが、金属又は炭素からなる導電性の固体のターゲットに電圧を印加して発生させたアークプラズマであることを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマが、窒素又は酸素のいずれかを含む雰囲気ガス中に設置された型母材に高周波電流を通電して発生させたプラズマであることを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型の製造方法。
【請求項4】
前記プラズマが、金属又は炭素からなる導電性の固体のターゲットに電圧を印加して発生させたアークプラズマと、窒素又は酸素のいずれかを含む雰囲気ガス中に設置された型母材に高周波電流を通電して発生させたプラズマとからなることを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型の製造方法。
【請求項5】
ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子用成形型において、
型母材の少なくとも成形面に白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオンが注入された注入層を有することを特徴とする光学素子用成形型。
【請求項6】
前記型母材の表面に形成された注入層上に、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオンを付着した膜を有することを特徴とする請求項5記載の光学素子用成形型。
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、非球面や自由曲面等の複雑な3次元形状であっても、垂直及び均一にイオンを注入、付着させることが可能な光学素子用成形型及びその製造方法を提供することを目的とする。
この方法では、型母材の表面近傍の雰囲気にあるプラズマに作用するため、型を固定的に保持した状態のままでも、光学素子用成形型として望まれる非球面、自由曲面などの複雑な3次元形状に対して、垂直にかつ均一にイオンを注入、付着することが可能となる。そのため型母材の表面に処理された層は、表面に対して垂直方向への厚さが均一であり、イオンの付着によって形成される膜の応力、密着強度も面形状の影響を受けずに均一となる。
型母材に印加されるパルス電圧の長さは1μs以上である必要がある。これはパルスの長さが1μs未満では型母材の表面に電界がかからないためイオンを全く動かすことができず、イオンを注入させたり付着させたりすることができないためである。実用上効率的なパルス電圧は10μs〜100μsの範囲内である。100μs以上ではパルスの効果が薄れてしまうため、あまり実用的ではない。
請求項5の発明は、ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子用成形型において、型母材の少なくとも成形面に白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオンが注入された注入層を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5記載の発明であって、前記型母材の表面に形成された注入層上に、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオンを付着した膜を有することを特徴とする。
この実施の形態では、固体のターゲット4として純度99.999%の白金を使用した。試料ホルダ5に型母材1をセットした後、真空容器3内の気圧を排気口3a及び3bより排気して1×10−4Pa以下に減圧する。そして、アーク電極8に60Vの電圧を印加し、トリガー電極7に4.5kVの電圧を瞬間的に印加してトリガー放電を起こさせた。
このようにして得られた白金膜の面粗さ(Ra)は0.0010μmであり、成膜前の型母材鏡面部分の面粗さ(Ra)0.0009μmよりも大きく粗くなることはなく、光学素子用成形型の成形面として十分の性能を有する粗さとなっていた。
このような実施の形態では、3次元形状の成形面を有する成形型に対しても、均一に元素を注入しさらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に優れた光学素子用成形型を得ることができる。
なお、この実施の形態では、固体のターゲットとして白金を用いたが、ニッケル、クロムなどの耐熱金属や、チタンアルミニウム、ニッケルクロム等の合金や、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム等の貴金属およびこれらの合金を用いても同様な効果が得られる。また、型母材として超硬合金を用いたが、ステンレス鋼、インコネルなどの耐熱金属やタングステン合金を用いても同様の効果が得られる。
この放電の回数よりなるプラズマの発生回数を、パルスバイアス電圧の変化と同時に変え、−15kVで100回、−10kVで200回、−5kVで300回、−1kVで1000回、−0.5kVで5000回、−0.2kV、−0.1kV、−0.1kVおよび0kVで20000回の条件で白金の成膜を行った。なお、アーク電極8による放電は、上述のように直流パルス電圧と同期しているため、直流パルス電圧が0kVのときであっても成膜は継続する。従って、この実施の形態では、直流パルス電圧が0kVであっても、成膜が継続している限りパルス電圧が印加されたという。
このように、この実施の形態では、炭化ケイ素に対して濡れ性が困難とされる白金を1μm以上の厚膜で成膜したにも関わらず、パルスバイアス電源の電圧を段階的に変えて成膜したことにより球面でも均一な厚さや応力で成膜された。このことによって、700℃以上の高温にも耐えることができた。また厚膜であるため、高温における反応性の高いガラス成分の拡散による成形型の劣化も発生しない。
このようにして製造された1対の成形型を用いて、酸化バリウム含有硝材(ガラス転移点:504℃)を窒素雰囲気下で570℃に加熱し、100kgfの荷重で連続成形した。この成形では、1000ショット目まで膜の剥がれやガラスの焼き付き等の不具合がなく、1000ショット以上の耐久性を得ることができた。
このように、この実施の形態では、3次元形状の成形面を有する成形型にも、均一に元素を注入し、さらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に優れた光学素子用成形型を得ることができた。又、複雑形状に対して成膜困難であった窒化クロム膜を、1工程で成形面のみならず成形面以外の面にも容易に且つ均一に製造することが可能となった。
このような実施の形態では、3次元形状の成形面を有する型母材に対しても、均一に元素を注入し、さらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に優れた光学素子用成形型とすることができた。又、プラズマ源となる固体のターゲットに加工が容易で、貴金属などに比べて非常に安価な炭素を用いることにより、一度に大量の消費を必要とする場合においても安いコストで生産することが可能となる。
【0065】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、3次元形状の成形面を有する成形型に対しても、成形型を固定したままで均一に元素を注入したり、また均一な厚さで成膜することができ、成形面の形状に起因する欠陥がなくなり、耐久性に優れた光学素子用成形型を得ることができると共に、膜と型母材の界面に傾斜層を設けることにより、型母材からの膜の剥離をなくすことができる。
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