JP2001321950A - シリンダブロック、及び該シリンダブロックの表面処理方法 - Google Patents

シリンダブロック、及び該シリンダブロックの表面処理方法

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JP2001321950A
JP2001321950A JP2000142745A JP2000142745A JP2001321950A JP 2001321950 A JP2001321950 A JP 2001321950A JP 2000142745 A JP2000142745 A JP 2000142745A JP 2000142745 A JP2000142745 A JP 2000142745A JP 2001321950 A JP2001321950 A JP 2001321950A
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JP
Japan
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cylinder block
welding
bore
bore surface
wear
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Tatsuo Nishihara
達夫 西原
Akira Yamauchi
亮 山内
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Suzuki Motor Corp
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Suzuki Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 肉盛溶接によってボア面に耐摩耗層を形成す
る際に、該肉盛溶接による溶接歪みを抑制するシリンダ
ブロックの表面処理方法を提供する。 【解決手段】 シリンダブロック1のボア面13に肉盛
溶接を施して該ボア面13に溶接ビード15を形成し、
該ボア面13と溶接ビード15に仕上げ加工を施すこと
によって、ボア面3に耐摩耗層5を形成するシリンダブ
ロックの表面処理方法であって、上記ボア面3に対して
耐摩耗層5の占める被覆面積率を75〜90%としてい
る。この耐耐摩耗層5の形状には、小刻みに波をうつら
せん状、及び複数の略直線状のものが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダブロック
のボア面に肉盛溶接によって耐摩耗層を形成する表面処
理方法、及びかかる方法によって表面処理を施したシリ
ンダブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、内燃機関の軽量化及び冷却性
能の向上化を図るために、スリーブレスのオールアルミ
ニウム製シリンダブロックを採用する傾向にある。この
シリンダブロック101には、図8に示すように、軽量
化を図るためにボア面103に肉盛溶接を用いて耐摩耗
層105を形成したり、また、特開平6−249057
号公報に記載されているように、アルミニウム製のシリ
ンダライナーを製造する技術も用いられている。
【0003】しかしながら、上記耐摩耗層105を十分
な耐摩耗性を備えた層にしようとすると、ある程度の高
い組成のアルミニウム合金を肉盛りする必要が生じ、ア
ルミニウムの組成が高いほど溶接歪みも大きくなる。ま
た、耐摩耗層105を形成する場合に、肉盛溶接によっ
て溶接ビードをらせん状にボア面103に形成するが、
図8に示すように、この隣接する溶接ビード同士を互い
に隙間がほとんどない状態に形成している。従って、シ
リンダブロック101のボア面103に肉盛溶接を施す
と、シリンダブロック101自体が歪んで後加工時に治
具にセットできなくなるおそれがあり、また、加工しろ
が多くなってコストアップの原因となるおそれもあっ
た。さらに、溶接歪みが大きすぎる場合は、耐摩耗層1
05に亀裂を生じるおそれもあった。特に気筒数が多け
れば多いほど溶接歪みは複雑になると共に、この歪みを
見込んだ寸法及び形状の素材を求めることは非常に困難
であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決し、肉盛溶接によってボア面に耐摩耗層を形成する
際に、該肉盛溶接による溶接歪みを抑制するシリンダブ
ロックの表面処理方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るシリンダブ
ロックの表面処理方法は、上記目的を達成するため、シ
リンダブロックのボア面に肉盛溶接を施して該ボア面に
溶接ビードを形成し、該ボア面と溶接ビードに仕上げ加
工を施すことによって、ボア面に耐摩耗層を形成するシ
リンダブロックの表面処理方法において、上記ボア面に
対して耐摩耗層の占める被覆面積率を75〜90%とす
る方法である。上記被覆面積率を75〜90%となるよ
うに、肉盛溶接の溶接ビード同士の間に間隙を設けるこ
とによって、溶接熱による歪みを抑制することができ
る。従って、アルミニウム合金からなるシリンダブロッ
クのように熱膨張率が大きい被処理物にも好適に適用す
ることができ、シリンダブロックの溶接歪みを小さくす
ることができる。また、耐摩耗層を形成するために、溶
接ビードとボア面に仕上げ加工を施す加工しろを少なく
することができて、製造コストを削減することができ
る。
【0006】また、本発明に係るシリンダブロックの表
面処理方法の一態様では、上記耐摩耗層を、シリンダボ
アの中心軸方向に沿って小刻みに往復させながらボア面
の周方向に沿ってらせん状に形成している。さらに、本
発明に係るシリンダブロックの表面処理方法の別の態様
では、上記シリンダボアの中心軸方向に沿って小刻みに
往復するウィービング速度とボア面の周方向に沿って移
動する周速度とを合成した相対的な溶接速度を1800
〜2200mm/分としている。この下限値である18
00mm/分は溶接電流が110A〜160Aの場合の
速度であり、上限値である2200mm/分は溶接電流
が140A〜190Aの場合の速度である。上記溶接速
度の範囲内で肉盛溶接を施すことによって、耐摩耗層の
溶込み深さを安定してほぼ一定に保持することができ
る。また、上記下限値である1800mm/分よりも遅
いと生産性が低下してしまい、上限値である2200m
m/分よりも大きいと、適正な溶込み深さである5〜7
mmを確保することができない。
【0007】そして、本発明に係るシリンダブロックの
表面処理方法の更に別の態様では、上記溶接ビードを、
シリンダボアの中心軸方向に沿って略直線状に複数設け
ると共に、これらの隣接する溶接ビード同士に間隙を設
けている。上記溶接ビードの形状は略直線状であるた
め、溶接作業が非常に容易になり、かつ、被覆面積率の
調整も簡単である。なお、本発明に係るシリンダブロッ
クは、上記の処理方法によって、そのボア面に表面処理
を施したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態に係
るシリンダブロックのボア面の表面処理方法について、
図面を用いて詳細に説明する。図1に示すように、上記
シリンダブロック1には、内部が筒状に貫通したシリン
ダボアが上下方向に形成されており、該シリンダボアの
内面を構成するボア面3には、周方向Cにらせんを描き
ながら耐摩耗層5が形成されている。この耐摩耗層5
は、後述するように、ボア面に肉盛り溶接を施して溶接
ビードを形成したのち、該溶接ビードを切削加工等によ
って削り込んだものである。また、ボア面3に対する耐
摩耗層5の面積は、75〜90%の被覆面積率で均等に
被覆されており、上段側と下段側の耐摩耗層同士5,5
の間隙は互いに極力小さくなるように形成されている。
【0009】また、溶接作業には、溶接トーチをシリン
ダボアの中心軸方向Aに沿って小刻みに往復させるウィ
ービングと呼ばれる溶接方法を採用しており、このウィ
ービングをさせながらボア面3を周方向Cに回転する。
このため、上記耐摩耗層5は、図2に示すように、Vの
字と逆Vの字とを交互に組み合わせた波形状に形成され
る。この耐摩耗層5の上端部5a同士の間隔をピッチ寸
法Pとし、上端部5aと下端部5bとの距離をウィービ
ング幅Wとし、耐摩耗層5の太さをビード幅Bとする
と、上下のウィービングの大きさはウィービング幅Wで
あり、溶接トーチが中心軸方向Aに一往復する間に、ボ
ア面3が回転して周方向Cに移動する距離がピッチ寸法
Pである。
【0010】そして、図3に示すように、中心軸方向A
に沿う速度のうち、ウィービング幅Wの中心部における
速度の最大値をV(w)とし、ボア面3が回転して周方向
Cに回転移動する速度をV(r)とすると、これら両速度
V(w)、V(r)を合成した相対速度Vは、V=〔[V(w) ]
2+[V(r) ]21/2 となる。該相対速度Vは、溶接トー
チがボア面3に対して移動する相対的な速度を総合的に
示しているため、この相対速度Vを一定の範囲内に調整
することによって、ボア面3への溶接ビードの溶込み深
さを一定に保持することができる。さらに、図2に示す
ように、上下に隣接する耐摩耗層5,5間の隙間は非常
に小さいため、ピストンが上下に摺動しても、常にピス
トンリングを確実に保持することができる。また、上記
ボア面3の耐摩耗層5の近傍部を切断した断面図を図4
に示す。この図4において、一点鎖線で示されている部
位が、仕上げ加工される前のボア面13及び肉盛溶接に
よって形成された溶接ビード15である。
【0011】つまり、まず、加工前のボア面13に肉盛
溶接を施すと、溶接ビード15がボア面13から突出し
た状態で形成されると共に、シリンタブロック1の母材
の内部まで溶け込んだ溶込層7が形成される。この溶込
層7のうち最も深い部位から溶接ビード15の表面まで
の厚さD1 は、5〜7mmである。次いで、該溶接ビー
ド15とボア面13を切削加工等によって削り込む仕上
げ加工を施すと、この仕上げ加工しろ分Sだけ厚さD1
が薄くなる。この結果、溶接ビード15と溶込層7に仕
上げ加工を施すことによって耐摩耗層5が形成され、そ
の厚さD2 は3〜4mmとなる。
【0012】さらに、プラズマ粉体肉盛溶接に用いる溶
接装置の溶接トーチ21の断面図を図5に示す。この図
5を用いて、溶接トーチ21の構造及び溶接作業の要領
を簡単に説明する。溶接トーチ21の中央部には、陰極
となるタングステン電極23及びプラズマガス25が送
られる貫通孔27が穿設されている。この貫通孔27の
外方には、粉末及びキャリアガス29、ないしはシール
ドガス31が送給される貫通孔33,35が形成されて
いる。また、溶接トーチ21の先端部からプラズマアー
ク37が発生し、該プラズマアーク37によってシリン
ダブロック1の表面が溶融されて溶融池39となると共
に、該溶融池39に上記粉末及びキャリアガス29が添
加されて耐摩耗層5が形成される。なお、仕上げ加工後
は、ボア面3よりも深さ方向に削り込むため、この加工
しろを見越した溶込み量が必要であり、添加する粉末も
高組成合金を用いる。
【0013】
【実施例】次いで、実施例によって更に本発明を具体的
に説明する。被処理物として、内径がφ100mmの単
気筒を有し、その材質がAC4B材であるシリンダブロ
ック1のボア面13に、表1に示す条件で、プラズマ粉
体肉盛溶接機によって耐摩耗層5を形成した。粉末溶加
材には、Al−23%Si−3%Co−3%Fe−3%
Ni−3%Cu−1%Mg(%は、全て重量%)合金粉
末を使用した。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】シリンダブロック1の回転速度及びウィー
ビング速度を調整しながら、溶接ビード15による被覆
面積率を55%から100%まで変化させて、5種類の
実験を行った。また、溶接電流値が130〜180Aと
なっているのは、溶接作業に伴って被処理物であるシリ
ンダブロック1に熱が溜まってくるのを考慮して、徐々
に溶接電流値を下げることを意味している。また、溶接
割れ及び水素によるブローホールを防止するため、シリ
ンダブロック1を約150℃に予熱してから、肉盛溶接
を施した。さらに、ウィービングとシリンダブロック1
の回転とのタイミングを合わせ、一回転後に、シリンダ
ボアの中心軸方向Aに沿って隣接する溶接ビード15,
15の互いの山と谷とが合致するように溶接を施した。
これによって、ボア面3に形成した溶接ビード15同士
の軸方向Aの隙間を小さくして、ピストンリングが引っ
かからないようにしている。
【0017】その溶接ビード15の形状等は、表2に示
すとおりであるが、このシリンダブロック1に仕上げ加
工を施したのち、エンジンに組み付けてベンチ耐久試験
を行った。このベンチ耐久試験は、回転数が7,000
rpmで、試験時間が25分で、合計25回繰り返して
行い、累計の回転数は、(7,000×25×25=)
4,375,000回転であった。耐久試験後のシリン
ダボアは、図6のグラフに示すように、被覆率が大きい
ほど、その内径寸法の増加量が小さくなるが、被覆率が
64%では内径寸法の増加寸法が著しく大きかった。ま
た、被覆面積率が100%(実施例1−1)では、溶接
歪み量が大きすぎて仕上げ加工を施すことができず、9
0%以下で仕上げ加工が可能となった。さらに、被覆面
積率が75%以下になると内径の増加量が著しく大きく
なり、60%以下(実施例1−5)ではピストンがシリ
ンダボアに焼き付いてしまったため、耐久試験を行うこ
とができなかった。以上の結果から、内燃機関のシリン
ダ内面に、後加工ができる程度の溶接歪みでかつ十分な
耐摩耗性を得るためには、被覆面積率を75〜90%の
範囲に設定すべきであることが判明した。
【0018】上記構成を有するによる作用を以下に説明
する。本発明は、上述した実施の形態に限定されること
なく、本発明の技術思想に基づいて種々の変形及び変更
が可能である。例えば、上記粉末溶加材としては、Al
−23%Si−3%Co−3%Fe−3%Ni−3%C
u−1%Mg合金粉を用いたが、本願の出願人が既に開
示している特開平10−30163号及び特開平10−
96087号において採用した溶加材、即ちAl−30
Cu−30Ag−13Si(重量%)を使用しても、本
発明と同等の効果を得ることができる。
【0019】また、耐摩耗層の形状としては、図1又は
図2に示したような波形状に限定されず、図7に示す耐
摩耗層45のように、シリンダボアの軸方向Aに沿って
直線状に形成すると共に、互いに一定の間隙を隔てて形
成させても良い。この場合においても、被覆面積率は7
5〜90%という要件を満たす必要がある。さらに、上
記実施の形態では、アルミニウム製のシリンダブロック
1を対象としているが、ディーゼルエンジンの鋳鉄シリ
ンダブロックでも、特開平9−314342号公報に記
載されているように、シリンダライナーの内面に肉盛溶
接をすることも可能であり、これをシリンダブロックに
直接に適用することが有効である。なお、熱源として
は、上記プラズマアークに限定されず、TIGアークや
レーザービームや電子ビームでも可能である。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、溶接歪みを抑制し、十
分な耐摩耗性を有する耐摩耗層を効率良く形成すること
ができ、また、安定した溶込み深さを得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシリンダブロックのボア面を示す
断面図である。
【図2】図1の耐摩耗層を拡大した正面図である。
【図3】ボア面の回転速度とウィービング速度とを合成
した相対速度を示すベクトル図である。
【図4】図2のX−X線による断面図である。
【図5】本発明に係る肉盛溶接に用いる溶接トーチの断
面図である。
【図6】実施例の結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係る耐摩耗層の変形例を示す断面図で
ある。
【図8】従来のシリンダブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】 1 シリンダブロック 3,13 ボア面 5,45 耐摩耗層 7 溶込層 15 溶接ビード 21 溶接トーチ 23 タングステン電極 25,33 貫通孔 29 粉末、キャリアガス 31 シールドガス 37 プラズマアーク 39 溶融池

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダブロックのボア面に肉盛溶接を
    施して該ボア面に溶接ビードを形成し、該ボア面と溶接
    ビードに仕上げ加工を施すことによって、ボア面に耐摩
    耗層を形成するシリンダブロックの表面処理方法であっ
    て、上記ボア面に対して耐摩耗層の占める被覆面積率を
    75〜90%とすることを特徴とするシリンダブロック
    の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 上記溶接ビードを、シリンダボアの中心
    軸方向に沿って往復させながらボア面の周方向に沿って
    らせん状に形成することを特徴とする請求項1に記載の
    シリンダブロックの表面処理方法。
  3. 【請求項3】 上記シリンダボアの中心軸方向に沿って
    往復するウィービング速度とボア面の周方向に沿って移
    動する周速度とを合成した相対的な溶接速度を1800
    〜2200mm/分とし、かつ、この下限値である18
    00mm/分は溶接電流が110A〜160Aの場合
    に、上限値である2200mm/分は溶接電流が140
    A〜190Aの場合であることを特徴とする請求項2に
    記載のシリンダブロックの表面処理方法。
  4. 【請求項4】 上記溶接ビードを、シリンダボアの中心
    軸方向に沿って略直線状に複数設けると共に、これらの
    隣接する溶接ビード同士に間隙を設けることを特徴とす
    る請求項1に記載のシリンダブロックのボア面の表面処
    理方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載された方
    法によって、そのボア面に表面処理を施したことを特徴
    とするシリンダブロック。
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