JP4042090B2 - シリンダブロックの溶射方法 - Google Patents

シリンダブロックの溶射方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクケースのないシリンダブロックにおいて、そのボア面に溶射皮膜を形成する際に、複数のシリンダブロックを同時にかつ効率的に処理する溶射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、アルミニウム合金からなる内燃機関のシリンダブロックにおいては、ボア面の耐久性を向上させるために、その表面に耐摩耗性や耐焼付性に優れた皮膜を形成する方法が採用されており、その方法の一つとして溶射が挙げられる。
ここで、溶射とは、金属又は金属酸化物等からなる粉末や線材を熱源の中に供給し、瞬間的に加熱、溶融させ、溶滴となった粒子を被処理材に高速で衝突及び溶着させることにより、この被処理剤の表面に皮膜を形成する方法である。この溶射は、皮膜及び被処理材の材質を選択する自由度が高いことから、前述したシリンダブロックのボア面の表面処理として実用化され、多くの提案がなされている。
この溶射を用いた従来の技術として、例えば、特公昭59−6188号公報では、テーブル上にシリンダブロックを固定し、クランプしたまま回転させ、溶射ガンを上下動させることで、ボア面に溶射をする方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の技術では、溶射をシリンダブロック1台ずつ行っているため、1台を処理するごとにクランプとアンクランプを繰り返さなくてはならないなどの付帯作業が多く発生した。このため、生産効率が低く、特に気筒数の少ない単気筒シリンダブロックでは、その問題が顕著であった。従って、1回で複数のシリンダブロックを溶射を行うことが望まれているが、従来はそのような技術はなかった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、特にクランクケースのない型式のシリンダブロックにおいて、複数個同時にそれらのボア面に溶射することにより、生産性が高く、かつ品質に優れたシリンダブロックの溶射方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るシリンダブロックの溶射方法は、前記目的を達成するため、シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して斜め上方又は直角方向から溶射フレームを噴射するステップとを含み、前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、ボアの軸方向一端部のみのボア面側を周方向に沿って面取り加工をし、この一端部が上側になるように複数のシリンダブロックを段積みし、これによって上下のシリンダブロック間のボア合せ部に凹部を形成するとともに、この凹部を、溶射皮膜の膜厚がt、凹部のボア径方向の深さがL1、凹部の軸方向の高さがL2の場合に、L1≧2t、かつ、L2≧2tとなるように形成することを特徴とする。
【0006】
シリンダブロックのボア一端を面取り形状とし、面取り側を上方にしてシリンダブロックを段積みすると、上下のシリンダブロックのボア合せ面には凹部が形成される。この状態で、ボア面に対して斜め上方あるいは直角方向から噴射すると、面取り加工がされていない上側のシリンダブロックのボア下端部によって、溶射フレームが遮られる。よって、段積みしたシリンダブロック間で溶射皮膜が分断された状態になる。なお、前記凹部の形状は特に限定されることなく種々の形状、例えば断面略三角形、断面略扇形状などを採用することができる。
さらに、溶射皮膜の2倍近くの直径を有する孔の場合は、封孔してしまうものの、凹部のボア径方向の深さであるL1、凹部の高さであるL2が溶射皮膜の膜厚tの2倍以上であれば、溶射皮膜が一体となって連続することがないため、溶射終了後、シリンダブロックを外す際に溶射皮膜を剥離させることがない。
よって、この溶射方法によれば、複数個のシリンダブロックに同時に溶射を施すことができるため、シリンダブロックの生産性を大幅に向上させることができる。
【0007】
本発明に係るシリンダブロックの溶射方法の別の態様は、シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して斜め上方から溶射フレームを噴射するステップとを含み、前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、ボアの軸方向両端部のボア面側を周方向に沿って面取り加工をし、この面取り加工した切欠部同士を合わせることによって上下のシリンダブロック間のボア合せ部に凹部を形成するとともに、この凹部を、軸方向と噴射方向がなす噴射角度がθ、上側のシリンダブロックの切欠面と軸方向がなす角度がα、溶射皮膜の膜厚がt、凹部のボア径方向の深さがL 1 、凹部の軸方向の高さがL 2 の場合に、θ≦α<90°、L 1 ≧2t、かつ、L 2 ≧2tとなるように形成することを特徴とする方法である。
【0008】
発明に係るシリンダブロックの溶射方法の更に別の態様は、シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して溶射フレームを噴射するステップとを含み、前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、シリンダブロック同士を上下に間隔を隔てて配設すると共に、この間隔Dが、溶射皮膜の膜厚をtとした場合に、D≧2tとなるように形成することを特徴とする方法である。
この溶射方法によれば、シリンダブロック間に隙間を設けて段積みすることにより、ボア面は不連続となる。よって、溶射皮膜を形成した際に、段積みしたシリンダブロック間で溶射皮膜が分断された状態となり、溶射終了後シリンダブロックを外す際に溶射皮膜を剥離させることがない。よって、品質に優れたシリンダブロックを製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に係るシリンダブロックの溶射方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施の形態に係るシリンダブロックの溶射方法は、特にクランクケースがないタイプのシリンダブロックにおいて、複数のシリンダブロックをそのボア中心軸がほぼ一致するように上下方向に段積みし、ボアを見かけ上一つの円筒になるようにセットした状態で、ボア面に溶射を施す方法である。この場合、段積みしたシリンダブロック同士の間で溶射皮膜が連続して形成させないようにすることによって、溶射終了後にシリンダブロックを外す際に溶射皮膜を剥離させないようにすることができる。
【0011】
図1(a)は、ボア面1に溶射を施す前のシリンダブロック3の一例を示す断面図である。該シリンダブロック3には、軸方向にボア5が貫通して設けられており、該ボア5の内周面であるボア面1はピストンの摺動面になっている。
また、シリンダブロック3の上面は、シリンダヘッド面15に形成され、下部はスカート部17に形成されている。このシリンダブロック3は、スカート部17の下部側にクランクケースが設けられていないタイプのものである。
また、図1(b)に示すように、シリンダブロック3のスカート部17のボア面下端部は、周方向に沿って面取り加工が施された切欠面7に形成されており、一点鎖線で示す面取り加工前の形状9と比較すると、前記切欠面7によってボア面1の下端部が外周方向に向けて斜め下方に広がるように形成されている。
【0012】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態は、ボア面1の端部を面取り加工したシリンダブロック3を段積みし、シリンダブロック3,3同士の間に前記切欠面7による凹部を形成した状態でボア面1に溶射を施す方法である。
【0013】
まず、図1(b)のようにボア面下端部に面取り加工を施したシリンダブロック3を上下逆に反転させて、切欠面7によって切欠部11が形成されたスカート部側を上側にし、シリンダヘッド面15を下側にして、図2に示すように、2個のシリンダブロック3,3を段積みする。このとき、上下のボア面1,1同士が径方向にずれないようにするため、それぞれのシリンダブロック3,3のボア中心軸が一致するように固定治具21で位置決め及び固定をする。
【0014】
シリンダブロック3のシリンダヘッド面15とフィン6には、予め、位置決め用の凹部又は穴23(図1(a)参照)が設けられており、これらの凹部又は穴23に固定用治具21の凸部25を嵌合させて位置決め及び固定を行う。
この状態では、図3にも示すように、下側のシリンダブロック3におけるスカート部側の面13と上側のシリンダブロック3のシリンダヘッド面15とが当接しており、この当接部の内周側端部(ボア合せ部)には、前記シリンダヘッド面15と切欠面7とによって断面略直角三角形の凹部27が形成されている。
【0015】
次いで、被処理物であるシリンダブロック3を回転させながら、ボア5内に溶射ガン29を挿入して上下に移動させることによって、ボア面1の全体に溶射皮膜31を形成させることができる。
このとき、図3に示すように、ボア合せ部に形成された凹部27には、溶射ガン29から噴射される溶射フレーム33に対して影となる部位が発生する。溶射ガン29から溶射フレーム33を噴射して溶射を施す場合は、略垂直方向に配置されたボア面1に対して、斜め上方から噴射角度θをもって噴射する。この噴射角度θは、通常30〜90°の範囲にあり、前記凹部27を形成するシリンダヘッド面15と切欠面7の一部とには、ボア面1の角部1aで妨げられて溶射フレーム33が噴射されない。
また、ボア面1に対して直角方向から噴射する場合(θ=90°)については、シリンダヘッド面15に対して水平方向に溶射されるため、シリンダヘッド面15には、溶射皮膜31は形成されない。
【0016】
従って、ボア面1に形成された溶射皮膜31は、上下のシリンダブロック3,3間の影となる部位において分断され、溶射終了後のシリンダブロック3を固定治具21から外す際に溶射皮膜31を剥離させることがない。また、お互いのシリンダブロック3,3には、前述したようにシリンダヘッド面15とスカート部側の面13とが密着したまま溶射を施すため、互いのボア面1,1以外の不要な部分に溶射皮膜31が形成されるのを防止する効果も得られ、シリンダブロック3,3間のマスキングが不要となる。
【0017】
この面取り加工をした凹部27の望ましい寸法範囲は、図3に示すように、溶射皮膜の膜厚をt、凹部の深さをL1、凹部の高さをL2とすると、L1≧2t、かつ、L2≧2tである。
ここで、溶射は溶融させた原料を被処理材に高速で噴射して溶着させることによって、被処理材の表面に皮膜を形成する表面処理方法であるため、小さな穴などは封孔できることが知られている。本発明者らは、鋭意検討した結果、溶射皮膜31の厚さtの約2倍(2t)近くの直径の穴であれば、溶射を施すことによって封孔処理を行うことが可能であることを見出し、前記の凹部27の寸法を見出したものである。よって、段積みしたシリンダブロック3,3間の凹部27が溶射により封孔されることなく、シリンダブロック3,3間で溶射皮膜31を分断させるためには、前記条件のL1≧2t、かつ、L2≧2tが必要であり、面取り寸法を大きくとる方が溶射皮膜31の分断効果が大きくなる。ここで、L1、L2の上限値は、その製品特性を考慮した設計値とすべきであり、例えば5mmである。
【0018】
なお、シリンダブロック3のボア端部には、バリ取りなどの目的のために通常の面取り55が加工されている場合がある。しかし、本発明で言及している面取りはこれとは異なり、図4に示すように、バリ取りなどを目的とした面取り55が設けられている場合は、その面取り55から更に前記L1、L2の寸法条件を満たす面取りをして切欠面7を形成する。
一方、図5(a)に示すように、上下のシリンダブロック3,3のボア面1,1が連続するようにセットすると、ボア面1に形成される溶射皮膜31も上下のシリンダブロック3で連続した一体の溶射皮膜31になってしまう。その結果、図5(b)に示すように、溶射終了後にシリンダブロック3を外すと、溶射皮膜31が剥離してしまう。
【0019】
また、図6(a)に示すように、切欠面7を設けたスカート部側の面13を上側にし、切欠面7のないシリンダヘッド面15を下側にしてシリンダブロック3を段積みした場合は、形成された凹部27が溶射フレームに対して影にならないため、この状態で溶射を施すと、溶射皮膜31は上下のシリンダブロック3,3で連続した一体のものとなってしまう。この結果、シリンダブロック3を外すと、図6(b)に示すように、溶射皮膜31を剥離させてしまい、さらに、面取りされていない下側のシリンダブロック3のシリンダヘッド面15において、溶射皮膜31の不要な部分35に皮膜31が形成されてしまうという問題が生じる。
【0020】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態においては、図7では、その一例として、シリンダヘッド面15のボア端部を面取り加工し、このシリンダヘッド面15,15同士を当接し、シリンダブロック3,3の各々の切欠部を合わせることによって、断面略二等辺三角形の凹部41を形成している。
この場合も、前記第1の実施形態で述べたように、噴射角θで斜め上方からボア面1に溶射フレーム33を噴射するため、以下の寸法条件を満足する凹部41であれば、溶射フレーム33に対して影になる部位が発生し、凹部41で溶射皮膜31が分断され、溶射終了後シリンダブロック3を外す際に、溶射皮膜31を剥離させることがない。また、不要な部分に溶射皮膜31が形成されるのを防ぐ効果も得られる。
【0021】
前記凹部41の寸法条件としては、図8に示すように、溶射ガン29の移動方向に対する溶射フレーム33の噴射角度をθ、上側のシリンダブロック3の切欠面7とボア面1とがなす角度をα、凹部41の深さをL1、凹部41の高さをL2とすると、θ≦α<90°、L1≧2t、L2≧2tであることが必要である。また、L1、L2の上限値は、前記第1の実施形態の場合と同様に5mmである。
【0022】
ここで、θ≦α<90°という角度範囲は、凹部41の一部が溶射フレーム33に対して影となり、溶射皮膜31が凹部41に形成されにくくなる範囲である。特に、α=90°のときは第1の実施の形態と同じ状態となり、α>90°では面取り形状とは言えないため、θ≦α<90°となる。また、図7と図8に示すように、段積みした上下のシリンダブロック1,1の切欠部の形状が同一である必要はなく、図9に示すように、上下のシリンダブロック3,3の切欠面7,7'のように形状が異なっていても、θ、L1、L2がそれぞれ前記の条件を満たしていれば問題ない。
以上のように、面取り加工は、第1の実施の形態のように、シリンダブロック3,3のボア端部のどちらか一端で行い、面取りした端部が上側になるように段積みするか、第2の実施の形態のように、ボア端部のどちらか一端を面取りし、この面取りした端部を合わせるように段積みするか、あるいは両端を面取りしても良い。
【0023】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、ボア面端部に面取り加工をしないで、段積みしたシリンダブロック間に隙間を形成する方法である。つまり、図10と図11に示すように、第1の実施形態と同様に固定治具でシリンダブロック3,3同士を位置決め及び固定をするが、この固定治具43の高さを図2のものよりも大きくして、上下のシリンダブロック3,3の間に隙間Dを設けることにより、ボア面1に溶射を施すと、隙間Dにおいて溶射皮膜31が分断されるため、溶射終了後、シリンダブロック3を外すときに溶射皮膜31を剥離させることがない。
この隙間Dの範囲は、溶射皮膜31の膜厚をt、隙間をDとすると、D≧2tであることが必要となる。
【0024】
これは、前述したように、溶射皮膜31を形成した際に、隙間Dが封孔されることなく、シリンダブロック3,3間で溶射皮膜31を分断させる条件として望ましい。ただし、Dを大きくすると、ボア面1以外の溶射皮膜31の不要な部分にも皮膜31が形成されてしまい、溶射後に不要な皮膜31を取り除く工程が必要となることもあるため、前記条件を満たす範囲内でできるだけDの値は小さい方が望ましい。これを踏まえると、Dの好ましい上限値は、例えば、1mm以下である。
【0025】
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
[実施例1]
クランクケースのないシリンダブロックのスカート部側のボア端部に表1に示す寸法条件で面取り加工をした。そして、同じ寸法条件で面取りをしたシリンダブロックを各々3台ずつ用意して、面取り側(スカート部側)を上側にして段積みをし、表2に示す溶射条件で、ボア面にプラズマ溶射法により溶射皮膜を形成した。溶射ガンから噴射される溶射フレームの角度θは、溶射ガンの移動方向に対して45°とし、また、溶射材料は炭素鋼粉末とした。
溶射終了後、シリンダブロックを外す際に、ボア上端と下端のいずれかにおいて、溶射皮膜の剥離や欠けなどが発生したものを不良として、不良の発生数を調査した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004042090
【0027】
【表2】
Figure 0004042090
【0028】
この表1から判るように、L1、L2が溶射皮膜の膜厚の2倍である500μm=0.5mmを共に超えると、不良の発生がなく、品質の安定した溶射皮膜を形成することができた。
【0029】
[実施例2]
クランクケースのないシリンダブロックを3台用意し、シリンダブロック間の隙間Dを1mmとして段積みし、ボア面に溶射皮膜を形成した。この溶射条件と溶射フレームの角度、溶射材料は実施例1と同様とした。
この結果、n=3回(シリンダ数:9ケ)の溶射を行ったが、シリンダブロックを外す際に、溶射皮膜の剥離や欠けなどは、1つも発生しなかった。
【0030】
なお、本発明は、前述した実施の形態に示すものに限定されることなく、本発明の技術思想に基づいて種々の変更及び変形が可能である。
例えば、シリンダブロック3,3間に隙間を設ける方法としては、前述したように、シリンダブロック3,3間に固定用治具21,43をセットし、該固定用治具21,43の高さ調整による方法に限定されずこれ以外にも慣用の手段によって隙間を形成することができる。
【0031】
また、溶射皮膜31を形成する際に、被処理物であるシリンダブロック3を回転させて溶射ガン29を固定させる方法を実施形態として挙げたが、シリンダブロック3でなく溶射ガン29を回転させるようにしても良い。溶射方式についても、プラズマ溶射、アーク溶射、高速フレーム溶射などを適用することができる。さらに、シリンダブロック3の気筒数は特に制限されず、段積みの個数についても制限されない。
【0032】
なお、図12に示すように、搬送パレットにシリンダブロック3を複数個セットして、ライン53上で搬送しながら連続的に溶射するシステムにおいて、段積みにしたシリンダブロック3を更に横方向に並べることにより、更に効率良く溶射することができる。この方法は、特に単気筒などの気筒数の少ないシリンダブロック3に溶射する場合に有効である。また、本発明の技術は、ショットブラストなどの溶射前処理にも応用可能であり、前処理工程から溶射処理まで一連の状態で処理することにより、更に大きな効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係るシリンダブロックの溶射方法によれば、特にクランクケースのない型式のシリンダブロックにおいて、複数個同時にそれらのボア面に溶射することができるので、生産性が高く、かつ品質に優れたシリンダブロックを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本図のうち、(a)は本発明の溶射に用いるシリンダブロックの断面図、(b)は(a)の要部を拡大した断面図である。
【図2】第1の実施の形態の溶射を施している状態を示す断面図である。
【図3】図2の要部を拡大した断面図である。
【図4】第1の実施の形態に適用できる切欠部の形状を示す断面図である。
【図5】本図のうち、(a)は切欠部を設けないで上下のシリンダブロックに溶射を施した場合の断面図、(b)は(a)のシリンダブロックを外した状態の断面図である。
【図6】本図のうち、(a)は図2のシリンダブロックの位置関係を上下逆にして溶射を施した断面図、(b)は(a)のシリンダブロックを外した状態の断面図である。
【図7】第2の実施の形態の溶射を施している状態を示す断面図である。
【図8】図7の要部を拡大した断面図である。
【図9】第2の実施の形態に適用できる切欠部の形状を示す断面図である。
【図10】第3の実施の形態の溶射を施している状態を示す断面図である。
【図11】図10の要部を拡大した断面図である。
【図12】ライン上で搬送しながら連続的にシリンダブロックに溶射する状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ボア面
3 シリンダブロック
5 ボア
7 切欠面
11 切欠部
13 スカート部側の面
15 シリンダヘッド面
21,43 固定用治具
23 位置決め用凹部
25 凸部
27,41 凹部
29 溶射ガン
31 溶射皮膜
33 溶射フレーム
51 搬送パレット
53 ライン

Claims (3)

  1. シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して斜め上方又は直角方向から溶射フレームを噴射するステップとを含み、
    前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、ボアの軸方向一端部のみのボア面側を周方向に沿って面取り加工をし、この一端部が上側になるように複数のシリンダブロックを段積みし、これによって上下のシリンダブロック間のボア合せ部に凹部を形成するとともに、この凹部を、溶射皮膜の膜厚がt、凹部のボア径方向の深さがL1、凹部の軸方向の高さがL2の場合に、L1≧2t、かつ、L2≧2tとなるように形成することを特徴とするシリンダブロックの溶射方法。
  2. シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して斜め上方から溶射フレームを噴射するステップとを含み、
    前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、ボアの軸方向両端部のボア面側を周方向に沿って面取り加工をし、この面取り加工した切欠部同士を合わせることによって上下のシリンダブロック間のボア合せ部に凹部を形成するとともに、この凹部を、軸方向と噴射方向がなす噴射角度がθ、上側のシリンダブロックの切欠面と軸方向がなす角度がα、溶射皮膜の膜厚がt、凹部のボア径方向の深さがL1、凹部の軸方向の高さがL2の場合に、θ≦α<90°、L1≧2t、かつ、L2≧2tとなるように形成することを特徴とするシリンダブロックの溶射方法。
  3. シリンダブロックのボア面に溶射を施すシリンダブロックの溶射方法において、複数のシリンダブロックを、そのボア合せ部に隙間を設けて軸方向に積み重ねるステップと、この状態で溶射ガンを用いてボア面に対して溶射フレームを噴射するステップとを含み、
    前記ボア合せ部に隙間を設けるステップが、シリンダブロック同士を上下に間隔を隔てて配設すると共に、この間隔Dが、溶射皮膜の膜厚をtとした場合に、D≧2tとなるように形成することを特徴とするシリンダブロックの溶射方法。
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