JP2001321164A - 新規バクテリアセルロース産生微生物およびそれを利用した石油の増進回収方法 - Google Patents
新規バクテリアセルロース産生微生物およびそれを利用した石油の増進回収方法Info
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Abstract
その微生物が生産するバクテリアセルロース、バクテリ
アセルロースの製造方法、およびその微生物ならびにバ
クテリアセルロースの石油の増進回収法への利用方法を
提供する。 【解決手段】バクテリアセルロースを産生し、かつEnte
robacter属に属する微生物、特にEnterobacter sp. cJF
-002 (FERM P-17799)。当該微生物を利用して不溶性ポ
リマーであるバクテリアセルロースを製造する。上記微
生物及び該微生物が産生するバクテリアセルロースを石
油の増進回収に利用する。
Description
ースを産生する新規微生物、その微生物を利用したバク
テリアセルロースの製造方法、およびその微生物または
該微生物が産生するバクテリアセルロースを利用した石
油の増進回収方法に関する。
は、従来から、ある種の微生物が知られ、その微生物と
しては、例えばアセトバクター属、アルカリゲネス属、
シュードモナス属、アグロバクテリウム属、リゾビウム
属、スファエロチルス属、サルシナ属、アクロモバクタ
ー属、アエロバクター属、アゾトバクター属およびズー
グレア属に属する各種菌ある。それらのうちでも、特に
アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)が
著名であり、従来からアセトバクター属に属する微生物
は、高いセルロース生産能を有していることが知られて
いることから、バクテリアセルロースの工業的な製造に
用いられている〔Biochem.J., 158, 345 (1954)〕。
ら製造されるセルロースに較べ、フィブリルの断片幅が
2ケタ程度も小さいことを特徴とする。従って、このよ
うなバクテリアセルロースの離解物を紙状または固型状
に固化した物質は高い引張弾性率を示すため、フィブリ
ルの構造的特徴に基づくすぐれた機械特性が期待され、
各種産業用素材として応用されている。例えば、アセト
バクター・キシリナムATCC23769が生産するシ
ート状のバクテリアセルロースは医療用パッドに利用で
きることが知られている(特開昭59-120159号
公報)。
の生産性向上を目的として、培養条件の最適化やセルロ
ース生成促進因子の探索などが試みられている。例え
ば、特開昭62−265990号公報、特開昭63−2
02394号公報および特公平6−43443号公報な
どにバクテリアセルロースの製造方法に関する記載があ
る。バクテリアセルロース生産菌の培養に適当な栄養培
地としては、炭素源、ペプトン、酵母エキス、燐酸ナト
リウムおよびクエン酸からなる Schramm/Hestrin 培地
(Schramm ら、J. General Biology, ll, pp.123-129,
l954)が知られている。また、このような栄養培地に、
培地中の特定栄養素によるセルロース生成促進因子であ
る、イノシトール、フィチン酸およびピロロキノリンキ
ノン(PQQ)(特公平5-1718号公報)などを添
加したり、更には、カルボン酸又はその塩(特願平5-
191467号公報)、インベルターゼ(特願平5-3
31491号公報)およびメチオニン(特願平5-33
5764号公報)を添加することによって、セルロース
性物質の生産性が向上することが見い出されている。ま
た、セルラーゼ製剤をセルラーゼ活性を保持させた形で
微量添加することにより、収率が高まった例(特開昭6
3-74490号公報)や、失活させたセルラーゼ製剤
を生産培地に含有させる方法なども報告されている(特
開平2-238888号公報)。
の細菌である。このため、菌の生育は酸素を十分供給し
た方が良く、静置培養よりも数倍速いことから、酢酸発
酵などでは一般に通気撹拌培養が行われている。しかし
ながら、バクテリアセルロースの生産に関しては、静置
培養の方が効率的であることが知られている。このよう
な菌の性質を利用したバクテリアセルロースの製造方法
に関しては、例えば特開平1-243997号公報に、
セルロース性物質生産能を有する微生物を用いたバクテ
リアセルロースの製造方法として、まず通気塔培養槽中
で酸素含有ガスを通気しながら気泡培養し、続いてこれ
を棚段培養器に分注して培養面積を拡大して静置培養す
る方法が記載されている。
ム属等の好気性微生物を利用したバクテリアセルロース
の効率的な生産には、微生物の培養(増殖)とバクテリ
アセルロースの生産といった異なる条件下での二段階工
程が必要であるから、結果として生産工程が複雑にな
り、期待するほど大幅な生産コストの軽減が図られてい
ないのが実情である。バクテリアセルロースには前述の
ような多様な可能性が秘められているにも関わらず、今
日まで用途開発が余り進んでいない背景には、このよう
な生産コストに見合う用途が見つかっていないという生
産コスト面での問題があり、この問題を解決できれば、
さらに多様な用途展開が図れるものと期待される。
術(以下「微生物攻法」と称す)は、油層内に蓄積され
ている自噴エネルギーを利用した自噴採油(一次回収)
や油層内に水を圧入し、油を生産井に押し進めることに
よって減衰した生産能力を回復させる水攻法(二次回
収)の後に、なおも油層に残留する65〜70%以上の石油
を強制的に回収する三次採収技術の一つである。
下に棲息する微生物を利用する方法であるため、経済性
に優れており、また微生物の使い方によっては、原油回
収率の低迷原因を全て改善できる可能性をもっているな
どの理由から、近年注目されている石油の採取技術であ
る。
手段の一つに、微生物を油層内でinsitu 生育させ、微
生物にバイオフィルムなどの不溶性ポリマーを生産させ
ることによって、フラクチャーや破砕帯などの浸透性が
高く優先的に水で掃攻される流路を選択的にプラッギン
グし、水攻法の掃攻効率の改善ならびに石油回収効果を
期待する攻法がある。
過程でチャネリング現象(油層内の特定の高浸透率領域
のみを圧入水が通り抜けてしまう現象)を生じ、石油の
掃攻効率が著しく低下している油層に対して効果的と考
えられている。
が、不溶性のデキストランを生産するLeuconostoc mese
nteroides について油層モデルを用いた詳細なプラッギ
ング実験を行っており、多孔質メディアに対して明確な
プラッギングを観察している[Jack, T. R. and Dibla
sio, E., Thompson, B. G., and Ward, V., 1983 : Bac
terial Systems for Selective plugging in Secondary
Oil Production, Preprints, Symposia, Division of
Petroleum Chemistry, American Chemical Society, 2
7, 773-784; Jack, T. R. and Diblasio, E., 1985 :
Selective Plugging For Heavy Oil Recovery, In "Mic
robial Enhanced Oil Recovery", Vol. 1, Int'l. Bior
esources Journal, ed. by Zajic J. E. and Donaldson
E. C., Bioresource Publications, E1 Paso, TX, 213
-225; Jack, T. R. and Diblasio, E., 1985 : Microb
es and Oil Recovery, Proceedings of the Internatio
nalConference on Microbial Enhancement of Oil Reco
very, Fountainhead, Oklahoma, May 20-25, 1984. . e
d. by Zajic J. E. and Donaldson E. C., Petroleum B
ioresource, El Paso, pp. 205-212; Jack, T. R. and
Stehmeier, L., 1988 : Selective plugging in Water
ed Out Wells, In the proceedings of theSymposium o
n Application if Microorganisms to Petroleum Techn
ology, Bartlesville, Oklahoma, August 12-13, 1987,
ed. by Linville, W., U.S. Department of Energy, B
artlesville; Jack, T. R., Shaw, J. C., Wardlaw, N.
C.,and Costerton, J. W., 1989 ; Microbial Pluggin
g in Enhanced Oil Recovery, Chapter 7 in Microbial
Enhancement of Oil Recovery, ed. by Donaldson E.
C., Chilingarian, G. V., and Yen, T. F., Elsevier,
Amsterdam, pp.125-149の文献も参照されたい]。
desの至適生育温度範囲は20〜30℃と比較的低温であ
り、さらに、デキストランの生産温度範囲は10〜25℃、
至適生産温度範囲は10〜20℃程度の低温域であることか
ら、油層温度が30℃以上の油層に対しては、高浸透性領
域の効果的なプラッギングが期待できない。
テロ型乳酸菌(乳酸と同時にCO2やエタノール、酢酸を
生成する微生物)として知られており、自らが生産した
乳酸や酢酸などの有機酸によって著しい生育阻害を受け
ることから、大量培養に際しては、これらの代謝産物を
除去するための培養装置が必要となる。
リンなどのアミノ酸を必要とするため、大量培養に用い
る培地も自ずと高価になるなどの問題があった。
微生物としては、操業コストを可能な限り低減できる微
生物、すなわち、簡易な地上施設で、安価な培地を用い
て大量培養が可能であり、かつ、油層環境で活発に増殖
してバイオフィルムなどの不溶性ポリマーを生産しうる
微生物が好ましい。しかしながら、これらの条件を満た
す微生物はこれまでに発見されていない。
問題点に鑑みてなされたものであり、より安価なコスト
で前述する石油採取の微生物攻法に有効に利用できる、
新規なバクテリアセルロース産生微生物を提供すること
を目的とするものである。さらに本発明は、当該微生物
を利用したバクテリアセルロースの製造方法、並びにそ
の微生物ならびにそれが産生するバクテリアセルロース
を利用した石油の増進回収方法を提供することを目的と
するものである。
を解決すべく日夜鋭意研究を重ねていたところ、通性嫌
気性の細菌であって、水に不溶性のバクテリアセルロー
スを生産できる細菌を発見し、当該細菌が培地として安
価な廃糖蜜などを利用することによって大量培養できる
ことを見出し、このような性質等から当該細菌が石油採
取の微生物攻法に適して極めて有用な微生物であること
を確認した。本発明はかかる知見に基づいて開発された
ものである。
に掲げる新規なバクテリアセルロース産生微生物であ
る: (1) 配列番号1に記載の塩基配列を含む16S-rRNA遺伝
子を有することを特徴とする、Enterobacter 属に属す
るバクテリアセルロース産生微生物。 (2) 配列番号2に記載の塩基配列を含む16S-rRNA遺伝
子を有することを特徴とする、Enterobacter 属に属す
る(1)記載のバクテリアセルロース産生微生物。 (3) バクテリアセルロース生産能を有する、Enterobac
ter cloacae。 (4) Enterobacter sp. CJF-002(FERM P-17799)菌株
またはその変異株であるバクテリアセルロース産生微生
物。
る、上記微生物を利用したバクテリアセルロースの製造
方法である: (5) Enterobacter 属に属するバクテリアセルロース産
生微生物を培養し、培養物からバクテリアセルロースを
採取回収することを特徴とするバクテリアセルロースの
製造方法。 (6) Enterobacter 属に属するバクテリアセルロース産
生微生物を単糖類または二糖類の少なくとも1種を含有
する液体培地中で培養することを特徴とする(5)記載の
バクテリアセルロースの製造方法。 (7) 静置培養法によって培養することを特徴とする(5)
又は(6)に記載のバクテリアセルロースの製造方法。
の増進回収における用途を提供するものである。すなわ
ち、第三の本発明は、下記(8)〜(10)に掲げる、上記微
生物及びそれが産生するバクテリアセルロースを利用し
た石油の増進回収方法である: (8) Enterobacter 属に属するバクテリアセルロース産
生微生物または当該微生物が産生するバクテリアセルロ
ースを用いることを特徴とする石油の増進回収方法。 (9) Enterobacter 属に属するバクテリアセルロース産
生微生物を油層内で増殖させ、バクテリアセルロースを
産生させることを特徴とする(8)記載の石油の増進回収
方法。 (10) Enterobacter 属に属するバクテリアセルロース
産生微生物が上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のバクテ
リアセルロース産生微生物であることを特徴とする(8)
または(9)記載の石油の増進回収方法。
セルロースの製造方法は、微生物を利用した従来のバク
テリアセルロースの製造方法の欠点を解消するものであ
って、安価にしかも複雑な操作をすることなく、簡便に
バクテリアセルロースが製造できる点で有用な方法であ
る。また本発明の石油増進回収方法は、安価な培地で大
量培養でき、嫌気性条件下でも活発に増殖してバイオフ
ィルムなどの不溶性ポリマーを生産する性質を有する本
発明の微生物を利用するものであって、当該微生物の性
質に基づいて、微生物を予め地上施設で安価な培地で大
量培養し、次いで嫌気性の油層環境に導入して該油層環
境内で増殖させることによって油層内で不溶性ポリマー
を効率よく生産させることによって実施され、安価でし
かも水掃攻流路を選択的にプラッキングすることによっ
て優れた石油回収効果が期待できる有用な方法である。
微生物 本発明のバクテリアセルロース産生微生物は、Enteroba
cter属に属するバクテリアセルロース産生性の細菌であ
ることを特徴とする。
産生微生物には、Enterobacter属に属する細菌であっ
て、しかもその16S-rRNA遺伝子の塩基配列中に後述する
配列表の配列番号1に記載する塩基配列を含有するもの
が含まれる。尚、当該塩基配列は後述する本発明のバク
テリアセルロース産生微生物の性質を損なわないことを
限度として1若しくは数個の塩基が欠失、置換または付
加されることを何ら妨げるものではない。
rRNA遺伝子の任意箇所に位置することができるが、好ま
しくは16S-rRNA遺伝子の5’末端から数えて435〜469位
に位置することが好ましい。より好ましくは本発明のバ
クテリアセルロース産生微生物は、Enterobacter属に属
する細菌であって、16S-rRNA遺伝子が配列番号2に記載
する塩基配列を有するものである。また、当該塩基配列
も前記と同様に、本発明のバクテリアセルロース産生微
生物の性質を損なわないことを限度として1若しくは数
個の塩基が欠失、置換または付加されることを何ら妨げ
るものではない。
ロース産生微生物には、Enterobacter属に属する細菌で
あって、下記の菌学的特徴を有するものが含まれる。 A.形態的性質(寒天培地) (1) 細胞の形と大きさ:桿状、0.5-1.0μm×1.5-3.0μ
m (2) 運動性の有無: 有 B.培養的性質:各種培養条件下での生育 (1) 肉汁液体培養:(+) (2) 好気性条件下での生育(+) (3) 嫌気性条件下での生育(+)。
ゼ] (10) カタラーゼ:(+) (11) アルギニンジヒドロラーゼ:(+) (12) リジンジカルボキシラーゼ:(−) (13) オルニチンデカルボキシラーゼ:(+) (14) フェニルアラニンジアミナーゼ:(−) (15) ゼラチン分解性:(−) (16) マロン酸分解性:(−) (17) ONPG:(+) (18) 生育の範囲: 温度;4-45℃/pH;2.2-9.5 (19) L-アラビノースを利用した発酵性:(+) (20) イノシトール を利用した発酵性: (−) (21) D-ソルビトールを利用した発酵性:(−) (22) D-ラムノースからの酸の生成: (+) (23) D-マンニトールからの酸の生成:(+) (24) D-アドニトールからの酸の生成:(−) (25) D-ラフィノースからの酸の生成:(−) (26) D-スクロースからの酸の生成:(+) D.その他の特徴的性質: エスクリンの分解 (+)。
菌学的性質はEnterobacter cloacaeの菌学的性質と相同
性が高い。よって、本発明が対象とする微生物にはバク
テリアセルロース生産能を有するEnterobacter cloacae
が包含される。
産生微生物の具体的な一例として、平成12年3月29日付
けで日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に住所を有
する通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所特許
微生物寄託センターに、微生物の表示(寄託者が付した
識別のための表示)「Enterobacter sp. CJF-002」、受
託番号「FERM P-17799」として寄託されているEnteroba
cter属微生物(以下、単に「CJF-002」ともいう)を挙
げることができる。
には、上記の微生物を例えばNTG(ニトロソグアニジ
ン)などの変異剤を利用した化学的処理や放射線照射な
どの各種の物理的処理など、公知の方法によって変異処
理することにより創製される各種の変異株が含まれる。
変異剤を用いる化学的変異処理方法としては、例えばBi
o Factors, Vol. 1, p.297-302 (1988)および J. Gen.
Microbiol, Vol.135, p.2917-2929(1989) などに記載さ
れている方法を挙げることができる。当業者であればこ
れらの公知方法に基づいて本発明のバクテリアセルロー
ス産生微生物の変異株、特にCJF-002株の変異株を容易
に得ることができる。
微生物には、本発明の効果を妨げないことを限度に上記
菌学的性質並びにバクテリアセルロース産生能を実質的
に有する子孫(例えば、CJF-002株の継代培養微生物
等)や変異体が包含される。
には、水可溶性及び水不溶性の別なく、従来公知の又は
将来見出され得るバクテリアセルロースが包含され、例
えばセルロースおよびセルロースを主鎖とするヘテロ多
糖を含むもの、1,2結合、1,3結合及び1,6結合などのα-
あるいはβ-結合を有するグルカンを含むものが含まれ
る。ヘテロ多糖の場合、セルロース以外の構成成分に
は、特に制限されないが、通常マンノース、フラクトー
ス、ガラクトース、ラムノースなどの六単糖、キシロー
ス、アラビノース等の五単糖、ウロン酸など有機酸など
が含まれる。なおこれらの多糖は、単一物質であっても
よいし、また2種以上の多糖が水素結合などにより混在
していてもよい。
る本発明のバクテリアセルロース産生微生物を培地中で
培養することによって生成される。
生物を利用したバクテリアセルロースの製造方法を提供
するものである。本発明は、上記微生物を適当な培地で
培養し、得られる培養物からバクテリアセルロースを採
取回収することによって実施することができる。
の微生物がバクテリアセルロースを生成することのでき
る培地組成を有するものであればよく、各種の合成培地
並びに天然培地をいずれも用いることができる。好まし
くは単糖類や二糖類などの糖類を含有する液体培地であ
る。かかる糖類としては、グルコース、フルクトース及
びガラクトース等の単糖類;シュークロース、マルトー
ス、スクロース及びフラクトース等の二糖類;レバン等
の多糖類;マンニトール、ソルビトール及びエリスリッ
ト等の糖アルコールを挙げることができる。より好まし
くは単糖類または二糖類のいずれか1種の糖を含有する
液体培地である。またこれらの糖類に代えて、これらの
糖類を有する組成物を用いることもでき、例えば澱粉水
解物、シトラスモラセス、ビートモラセス、ケーンモラ
セス、ビート搾汁、サトウキビ搾汁、柑橘類等の果汁成
分を例示することができる。
ルクトース、ガラクトース、シュークロース、マルトー
ス、スクロース、フラクトース、マンニトール、ソルビ
トール、エリスリット、グリセリン、エチレングリコー
ル、澱粉、糖蜜、コーン・スティープ・リカー、麦芽エ
キス、澱粉水解物、シトラスモラセス、ビートモラセ
ス、ケーンモラセス、ビート搾汁、サトウキビ搾汁、柑
橘類等の各種果汁成分、有機酸等を単独または二種以上
混合したもの;窒素源としてアンモニウム塩(硫酸アン
モニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムな
ど)、硝酸塩(硝酸ナトリウム等)などの無機性窒素源
や、ファーマメディア、ペプトン、大豆粉、肉エキス、
酵母エキス、カゼイン、尿素、豆濃などの有機性窒素源
を単独または二種以上混合したものを挙げることができ
る。尚、有機性窒素源として、好適にはBact-Peptone,
Bact-Soytone, Yeast-Extract, 豆濃等の有機性含窒素
天然栄養源が例示できる。
養素としてアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸などを、
また無機塩類としてリン酸塩、鉄塩、マンガン塩、その
他の金属塩をそれぞれ単独あるいは2以上併用して用い
ることができる。
ることもでき、これら培地中の各成分の組成割合および
培地に対する菌体の接種(量、方法)などは、微生物の
使用目的や培養条件などに応じて当業者が適宜選択し得
るものである。
の培養は、上記組成を有する、予め高圧蒸気滅菌もしく
は濾過滅菌した培地あるいは無処理の培地に、本発明の
微生物を接種することによって開始される。
産生微生物は通性嫌気性細菌である。このため本発明の
方法は、好気性もしくは嫌気性条件下での培養であって
もセルロース生産性に影響を及ぼさず、バクテリアセル
ロースの生産コストを著しく軽減できることを特徴の1
つとするものである。
養によるバクテリアセルロースの製造は、培養形式に制
限を受けず、原則的に微生物の培養に用いられる公知の
方法を広く用いて実施できる。例えば静置培養、振盪培
養もしくは通気攪拌培養などの培養方法がいずれも使用
できる。好ましくは静置培養である。なお、攪拌培養と
は、培養液を攪拌しながら行なう培養法であり、例え
ば、簡便には、ジャーファーメンターおよびタンクなど
の攪拌槽;ならびにバッフル付きフラスコ、坂口フラス
コおよびエアーリフト型の攪拌槽;発酵ブロスのポンプ
駆動循環などの手段や装置を任意に選択して用いること
によって実施できる。なおこれらは1つ若しくは2種以
上を組み合わせて使用できる。また攪拌培養は、必要に
応じて、攪拌と同時に通気を行ないながら実施すること
もできる。通気は、例えば空気などの酸素を含有するガ
ス、ならびに例えばアルゴンおよび窒素などの酸素を含
有しないガスのいずれを用いて行うことができ、これら
ガスは培養系の条件に合わせて当業者により適宜、選択
できる。また、培養操作法においても公知の方法、例え
ば回分発酵法、流加回分発酵法、反復回分発酵法および
連続発酵法などが使用できるが、さらにこれら培養形
式、培養操作方法に適宜、修正又は変更を加えた方法も
使用することもできる。
性領域〜アルカリ性領域の広い範囲で実施できるが、通
常pH2.2〜9.5、好ましくはpH5.5〜9.3の範囲であ
る。また培養温度は、本発明の微生物が良好に生育する
温度、好適にはバクテリアセルロースが効率よく産生さ
れる温度が望ましく、通常4〜45℃、望ましくは25〜35
℃付近の温度が好ましい。
物の種類や特性並びに外部条件等に応じて適宜変更で
き、各種の状況に応じて、上記の範囲から最適条件を適
宜選択調製することができる。
バクテリアセルロースはそのまま回収してもよく、また
培養物中の菌体を始めとするバクテリアセルロース以外
の物質を除去する処理を施すこともできる。不純物を取
り除く方法としては、特に制限はされないが、水洗処
理、加圧脱水処理、希酸洗浄処理、アルカリ洗浄処理、
次亜塩素酸ソーダや過酸化水素などの漂白剤による処
理、リゾチームなどの菌体溶解酵素による処理、ラウリ
ル硫酸ソーダやデオキシコール酸などの界面活性剤によ
る処理、常温から200℃の範囲での加熱洗浄処理など
の方法が例示でき、これらは単独および併用して行うこ
とができる。
回収は、発酵生産物を回収採取する一般的な方法に準じ
て行うことができる。例えば、溶媒抽出、並びにゲルろ
過、分配及び吸着クロマトグラフィーなどの手段を単独
又は2種以上、任意の順序で組み合わせて用いることが
できる。例えば、バクテリアセルロースが水溶解性のも
のである場合は、該セルロースは培養液中に存在するの
で、常法に従って濾過や遠心分離などの方法で菌体を含
む固形物を除去して培養濾液を取得し、得られた濾液か
ら常法に従って、バクテリアセルロースを単離する。ま
たバクテリアセルロースが水不溶性のものである場合
は、該セルロースは培養物の不溶成分中(固形分)に存
在するので、常法に従って濾過や遠心分離などの方法で
菌体を含む固形物を取得し、得られた固形物の中から比
重、分子量や溶解性等の違いを利用して常法に従ってバ
クテリアセルロースを単離する。なお、単離されたバク
テリアセルロースは必要に応じて精製することもでき、
かかる精製は溶媒抽出法やカラムクロマトグラフィーな
どの常法に従って行うことができる。
確認は、後述する実施例において詳述するように、常法
に従って糖成分の組成を分析したり、糖成分の結合様式
を分析することによって行うことができる。
物並びに該微生物によって産生されるバクテリアセルロ
ースを利用する石油増進回収方法である。
は、本発明の微生物を油層に圧入して該油層内で増殖さ
せてバクテリアセルロースを産生させることを特徴とす
るものであり、油層内で産生されたバクテリアセルロー
スによって高浸透性領域が閉塞されることによって、効
率的なプラッキングを可能とし、水攻法の掃攻効率の改
善並びに石油の回収の高率化を図るものである。
明の微生物を油層内で増殖させて当該油層内でバクテリ
アセルロースを産生させる方法を含むものであればいか
なる方法でもよい。
具体的には、油田に建設された地上施設で予め前培養さ
れた本発明の微生物を含む培養液を、単独あるいはバク
テリアセルロースの生産に必要若しくは有用な培地成分
とともに、生産井から油層内に圧入し、次いで生産井の
稼働を一定期間停止して、該油層内で微生物の増殖およ
びバクテリアセルロースの生産を行ってバクテリアセル
ロースを油層内の高浸透性領域に導出させて閉塞し、引
き続き生産井を再稼働することによって石油を回収する
方法を挙げることができる。また、他の方法として、地
上施設で予め前培養された本発明の微生物の培養液を、
単独あるいはバクテリアセルロースの生産に必要若しく
は有用な培地成分とともに、圧入井から油層内に連続的
に圧入し、圧入した流体が油層内の高浸透性領域を通過
して生産井に到達するまでの間に、該高浸透性領域内で
微生物を増殖させ且つバクテリアセルロースを生産させ
て、バクテリアセルロースを高浸透性領域に導出して閉
塞させ、次いで常法の水攻法に従って石油を回収する方
法などを挙げることができる。
クテリアセルロース産生微生物は、前述する各種のEnte
robactorに属する微生物の中でも、水不溶性のバクテリ
アセルロースを産生する微生物であることが好ましい。
より好ましくはCJF-002株である。
は、バクテリアセルロースを効率的に産生できる菌体量
を確保するために、また産生油層内での微生物の増殖及
びバクテリアセルロースの産生効率を上げるために、前
述するように油層内に入れる前に予め地上施設で前培養
することが望ましい。かかる前培養に用いられる培地や
培養条件は、当該微生物が増殖できる培地成分及び培養
条件であれば特に制限を受けないが、地上施設から油層
内への送液ラインなどの閉塞トラブルを考慮すると、バ
クテリアセルロースの生産が抑制される培地若しくは培
地条件であるか、若しくは塊状のバクテリアセルロース
の生産が抑制される薬剤を添加した培地等を用いること
が好ましく、例えば、本発明の微生物の増殖のみをもた
らす炭素源を含有する培地や糖濃度の低い培地の使用、
低温条件下での培養、またはNaClあるいはセルラーゼな
どのバクテリアセルロースの塊化を抑制する薬剤を添加
した培地などが例示できる。
に説明するが、本発明はかかる実施例等に何ら制される
ものではない。実施例1 :不溶性ポリマー産生微生物の単離 微生物攻法に利用する微生物は、嫌気性条件である油層
内で確実に増殖しうるものが望ましく、さらに微生物に
よる選択的なプラッギングを目的とした攻法に対して
は、油層環境下でバイオフィルムなどの不溶性のポリマ
ーを生産するものであることが望ましい。
石油分公司(中華人民共和国吉林省松原市郭爾羅斯大路
76號)の扶余油田から油層岩を採取し、これを菌分離用
試料とした。具体的には、回収した油層岩のホールコア
(直径約11cm、長さ約17cm)を鉈を用いて破砕し、その
直後に、予めピック部を火炎滅菌しておいたピック型ハ
ンマーにて、破砕したコアの中心部分から小片を掻き落
としてこれを菌分離用試料として、滅菌済みのシャーレ
に封入した。
生物を単離した。具体的には、上記試料約2gを滅菌し
た乳鉢を用いて粒径が約0.5mm程度になるまで粉砕し、
得られた油層岩粉末に滅菌水5mlを加えて滅菌水中に
懸濁させた後、超音波処理(1分照射→1分静置)を10サ
イクル繰り返し、微生物を浮遊させた。さらに、これら
の微生物懸濁液を高圧蒸気滅菌した寒天培地に塗布し、
30℃で菌体の十分な増殖が目視で確認できるまで嫌気環
境下で培養を継続した。なお、上記寒天培地として、中
国産ビートモラセス(組成を表1に示す)を4%(v/
v)の割合で含む水溶液に寒天を15g/lの割合で加えて
調製したものを使用した。
テム(Becton Dickinson and Company社製)および添付の
プロトコルに従って構築した。
株の微生物が分離され、そのうちの2株がコロニー周辺
に顕著な粘性物質を生産するのが確認された。次にこれ
らの分離株を、4%(v/v)中国産ビートモラセス含有
水溶液を高圧蒸気滅菌して調製した液体培地に接種し、
気相部を窒素で3分間置換して培養系内を嫌気環境とし
た後、30℃で1日間静置培養して、培養液中への不溶性
ポリマーの生産状況を指標として(目視)、不溶性ポリ
マーを形成する菌株を単離した。当該菌は顕微鏡観察や
その菌体の大きさから、細菌であると認められた。
てEnterobacter属細菌(Enterobacter sp. CJF-002)
と命名し、平成12年3月29日に茨城県つくば市東町1丁
目1番3号に所在の通商産業省工業技術院生命工学工業
技術研究所に寄託した(受託番号 FERM P-17799)。以
下実施例において当該菌を単に「CJF-002株」と称す
る。
質) 実施例1にて単離されたCJF-002株の菌学的位置づけを
行うために、CJF-002株の形態的性質、培地における生
育状態および生理学的性質について分析した。 A.形態的性質 寒天培地を用いて、30℃で24時間の培養条件下で生
育した細菌について、次の形態学的性質が認められた。
学顕微鏡観察) (3) 運動性の有無:有 (4) コロニーの色:白色 (5) コロニーの形状:皺状の歪つな形状 B.培養的性質(培地における生育状態) (1) 肉汁液体培養:(+) (2) 好気性条件下での生育:(+) (3) 嫌気性条件下での生育:(+)。
桿菌の同定キットであるIDテスト・EB-20(日水製薬
製)を用いた。具体的には、高圧蒸気滅菌したNutrient
broth(Difco社製)液体培地に1白金耳のCJF-002株を
接種した後、30℃で一夜静置培養して前培養液を得た。
この前培養液をキットに添付のプロトコールに従って処
理し、生理学的性質に関する種々の測定を行った。結果
を以下に示す。
ゼ] (10) カタラーゼ:(+) (11) アルギニンジヒドロラーゼ:(+) (12) リジンジカルボキシラーゼ: (-) (13) オルニチンデカルボキシラーゼ:(+) (14) フェニルアラニンジアミナーゼ:(-) (15) ゼラチン分解性:(-) (16) マロン酸分解性:(-) (17) ONPG:(+) (18) 生育の範囲: 温度;4-45℃/pH;2.2-9.53 (19) L-アラビノースを利用した発酵性:(+) (20) イノシトールを利用した発酵性:(-) (21) D-ソルビトールを利用した発酵性:(-) (22) D-ラムノースからの酸の生成:(+) (23) D-マンニトールからの酸の生成:(+) (24) D-アドニトールからの酸の生成:(-) (25) D-ラフィノースからの酸の生成:(-) (26) D-スクロースからの酸の生成:(+) D.その他の特徴的性質: エスクリンの分解 (+)。
をBergey's Manual of Systematic Bacteriology[Vol.1
(1984), Vol.2(1986), Vol.3(1989), Vol.4(1989), Wil
liams& Wilkins, Baltimore]に記載される種々の微生物
の諸性質と対比したところ、本発明のCJF-002株は、こ
れまでに報告されているEnterobacter 属に属する細菌
の生理学的性質と最もよく一致していた。
子工学的側面から特徴付けるために、CJF-002株の16S-r
RNA遺伝子のクローニング、及びその塩基配列の決定
(解析)を行った。 (1)CJF-002株が保有する遺伝子のクローニング 鋳型DNAには、InstaGene Matrix法[Lamballerie et a
l., A one-step microbial DNA extraction method usi
ng "Chelex 100" suitable for gene amplification. R
es Microbiol 143: 785-790 (1992)] を用いて調製した
CJF-002株染色体DNAを用いた。そして、上流側プライマ
ーに、5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3'(配列番号:3)
を、下流側プライマーに、5'- AAAGGAGGTGATCCAGCC-3'
(配列番号:4)のプライマーを用い、Taq DNA ポリメ
ラーゼ(宝酒造社製)でPCR増幅した。PCRにおける変性
反応、アニーリング反応及び伸長反応はそれぞれ94℃で
1分、52℃で2分及び72℃で2分の条件で行い、かかる反
応サイクルを30回繰り返した。PCR増幅断片をpMOS Blue
T-vector Kit (Amersham International plc, 製)を
用いてプラスミドベクターにクローニングした。当該組
み換えプラスミドは、QIAquick Gel Extraction Kit(Q
IAGEN製)を用いて大量調製した。宿主菌として、E. co
li JM109[recA1, endA1, gryA96, thi, hsdR17, supE4
4, relA1, △(lac-proAB),F'(traD36, proAB+, lac1y,
lacZ △ M15)]を用いた。当該宿主大腸菌の形質転換
は、Sambrookら[Molecular Cloning, A Laboratory Man
ual 2nd ed. (1989)]の方法に従った。なお、培地はL
培地(トリプトン10 g/l、酵母エキス 5 g/l、NaCl 5 g
/l、グルコース 1 g/l、pH 7.2)を用い、抗生物質とし
て100μg/mlアンピシリンを用いた。 (2)CJF-002株が保有する遺伝子の解析 CJF-002株のクローンが保有する遺伝子の塩基配列を、
自動解析装置ABI DNA Sequencer (Perkin-Elmer Co.
製)とABI PRISM Dye Cycle Sequencing Kit(Perkin-E
lmer Co.製)を用いて解析し、微生物分類の重要な指標
の一つである、16S-rRNA遺伝子の塩基配列を解読した。
当該遺伝子配列を配列番号:2に示す。この配列を基
に、Gene Bank等の遺伝子データベースに登録された他
の微生物が保有する16S-rRNA遺伝子の配列と比較して両
者の相同性をみた。結果を表2に示す。なお、これらの
相同性解析にはBLAST search program[Altschul et a
l., Basic local alignment search tool. J. Mol. Bio
l., 215, 403-410 (1990)]を使用した。
-rRNA遺伝子の塩基配列はEnterobacter属細菌の16S-rRN
A遺伝子の塩基配列と98%以上の高い割合で一致してい
た。特にEnterobacter cloacaeの16S-rRNA遺伝子の塩基
配列と極めて高い割合で一致していた。
(生理学的性質等、化学的性質)から、本発明のCJF-00
2株はEnterobacter属に最も近縁にある細菌であると判
断された。
スの評価 実施例1で単離したCJF-002株に関して、当該微生物が
生産する不溶性ポリマー物質を以下の手順に従って評価
した。
ートモラセス液体培地と2.0%のスクロースを添加し
たPolysaccharide-production medium [Akihiko Shimad
a, Viva Origino, 23, 1, 52-53, 1995](以下「PPM
培地」と称す)の2種類の培地を基本培地とし、これら
を高圧蒸気滅菌処理した培地30mlをそれぞれ50ml容のバ
イアル瓶に分注して、CJF-002株を接種し、30℃で1日間
静置培養した。なお、上記CJF-002株には、予め高圧蒸
気滅菌したNutrient broth(Difco社製)液体培地を用
いて30℃で一夜静置培養したもの(前培養物)を用い
た。
2株が生産する不溶性ポリマーについてそれぞれ(1)糖成
分の組成、及び(2)糖成分の結合様式を分析した。な
お、これらの分析は、前記培養により得られた不溶性ポ
リマーを500mlの滅菌蒸留水で数回水洗し、次いで加熱
洗浄して得られた不溶性ポリマーの凍結乾燥品を用いて
行った。
を糖成分が含まれていないことを予め確認した市販のセ
ルラーゼで加水分解し、次いでこれらの加水分解物につ
いて、以下に示す条件で中性糖およびウロン酸の分析を
行うことにより実施した。尚、上記不溶性ポリマーは、
トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸及び硫酸などの有機酸
や無機酸では加水分解され難く、加水分解率はそれぞれ
12-13%、5-9%及び20-33%程度であった。一方、セル
ラーゼ等による酵素分解処理では65-75%の分解率が得
られた。なお、当該ポリマーの分解性はその生産条件、
すなわち、生産に使用した培地の違いより影響を受けな
かった。
ポリマーとPPM培地(2%スクロース含有)で得られた
不溶性ポリマーについて、各測定条件によって得られた
糖成分の組成比を表3に示す。
持時間は市販のグルコースの標品の保持時間と一致し、
その組成比は前記2種の液体培地で生産された不溶性ポ
リマーはいずれも97%以上であった。またグルコース以
外の糖成分としては、マンノース、アラビノース、ガラ
クトースが1%程度かそれ以下の濃度で検出された。一
方、グルクロン酸やガラクチュロン酸などのウロン酸は
いずれも検出されなかった。
ラフィー(GC)およびガスクロマトグラフィー質量分析
装置(GC-MS)を用いたメチル化分析で得られた結果か
ら推定した。
結乾燥品について、粉末NaOH法によってその糖成分を完
全メチル化し、生成したメチル化多糖をTFAにより加水
分解して単糖にした後、無水酢酸-ピリジン溶液にて還
元アセチル化して部分メチル化糖アルコールのアセチル
誘導体(部分メチル化アルジトールアセテート)の形に
した。これを下記の条件によるGC分析およびGC−M
S測定に供した。
た不溶性ポリマーのメチル化分析の結果を表4に示す。
トのガスクロマトグラムにおいて、主たるピークのマス
スペクトルは、1,4,5-トリ-O-アセチル-2,3,6-トリ-O-
メチルグルシトールの標準マススペクトルと一致し、1,
4結合の結合様式が推定された。さらに、ガスクロマト
グラムにおいて得られた各ピークとの面積比から、主た
るピークの組成比は、非還元末端グルコース(1,5-ジ-O
-アセチル-2,3,4,6-テトラ-O-メチルグルシトール)を
1とした場合29.22であり、かつ、他の1,3結合や1,6結
合などの組成比が0.5以下であったことから、前記不溶
性ポリマーの主要な結合様式は1,4結合であると推定さ
れた。以上のことから、前記不溶性ポリマーは1,4結合
のグルコースが主成分であることが明らかになった。
有機酸や無機酸では加水分解され難いが、グルコースの
β1,4結合を選択的に分解する基質特異性を有するセル
ラーゼによっては比較的容易に分解されるといった性質
を有しており、かかる性質を考え合わせると、前記不溶
性ポリマーはβ1,4結合のグルコースを主骨格とするセ
ルロースかあるいはそれに極めて類似した物質であると
判断された。
る分解性、および糖成分の組成などは、当該ポリマーの
生産条件、すなわち生産に使用した培地の違いによって
影響を受けない。このことから、PPM培地や中国産ビ
ートモラセス液体培地で生産された不溶性ポリマーは同
一かあるいは極めて類似した物質と推定される。これら
のことから、当該不溶性ポリマーの生産にはPPM培地
の様な人工培地だけでなく、製糖工場からの廃棄物であ
るモラセスなどの安価な天然物質を培地として利用でき
るものと考えられる。
性及びバクテリアセルロースの生産性 実施例1で単離したCJF-002株に関して、安価なモラセ
ス培地での増殖性およびバクテリアセルロースの生産性
を以下の手順に従って評価した。
蒸気滅菌した2mlの4%(v/v)中国産ビートモラセス液体
培地で30℃で一夜静置培養した。続いて本培養として、
高圧蒸気滅菌した0.1および1%(v/v)中国産ビートモラ
セス液体培地30mlを用いて、CJF-002株の初期濃度を2.2
×104 および2.2×102 CFU/mlとして30℃で72時間静置
培養を行った。培養期間中、培養から4、6、8、10、1
2、14、16、20、24、28、32、36、40、44、48、56、64
及び72時間後に培養物を採取し、各採取ポイントでのCJ
F-002株の増殖度を下記(1)に示す直接計数法を用いて評
価した。また同時に、培地中のバクテリアセルロース濃
度を下記の(2)の手順に従って測定して、バクテリアセ
ルロースの生産性を評価した。
またそのバクテリアセルロース内にも多数の菌体が存在
している。このため、次の分析方法により系内のCJF-00
2株の総菌数を測定した。すなわち、まず、採取した培
養液に500mMリン酸緩衝液(pH5.5)、0.2%ナリジクス
酸、およびセルラーゼ(糖成分不含)(1%溶液)を添
加し、30℃で10時間インキュベートする。ポリマーの分
解を目視で確認したら、その溶液に8%パラホルムアル
デヒドを添加して、菌体細胞を固定化する。次いで、固
定化菌体溶液をブラックフィルターでろ過し、2mlのPBS
(20mMリン酸buffer+130mM NaCl, pH7.4)で洗浄した
後、0.01%アクリジンオレンジ溶液(0.01M Tris-HCl,
pH7.4)で5分間染色し、検鏡する。 (2) バクテリアセルロース濃度の測定 採取した培養液に3倍量のアセトンを加えて、ポリマー
成分を析出させ(アセトン抽出)、遠心処理によってポ
リマー成分を回収した後、常温で一晩乾燥し、常法のph
enol-sulfuric acid reaction法にて糖濃度を測定す
る。
びバクテリアセルロースの生産性(図B)の経時変化を
示す。これから、CJF-002株の初期濃度が104 CFU/mlの
場合、培養10時間後に対数増殖期から定常期に移行し、
CJF-002株は極めて早期に増殖することが判明した。増
殖速度はモラセス濃度の違いによって左右されないが、
最大増殖濃度はモラセス濃度に依存し、中国産ビートモ
ラセスの濃度が1%の場合には約109 CFU/ml、0.1%の場
合には約108 CFU/mlであった。CJF-002株の初期濃度が1
02 CFU/mlの場合は、培養14時間後に対数増殖期から定
常期に移行し、初期濃度が104 CFU/mlの場合よりも4時
間程度後期にシフトした。この場合の増殖速度も中国産
ビートモラセスの濃度の違いによって左右されず、最大
増殖濃度も初期濃度が104 CFU/mlの場合と同様な結果と
なった。これらの結果から、CJF-002株の増殖速度を計
算すると対数増殖期の倍加時間(Doubling time)はお
よそ40分であることが判明した。
は、CJF-002株の初期濃度を104 CFU/ml、中国産ビート
モラセスの濃度を1%とした場合、培養開始後約14時間
までに0.2-0.25 g/lものバクテリアセルロースが生産さ
れ、その後はほぼ一定になることがわかった。また、CJ
F-002株の初期濃度が102 CFU/mlの場合には、培養開始
後約16-20時間までに同濃度のバクテリアセルロースが
生産された。中国産ビートモラセスの濃度が0.1%の場
合も、前記の結果と同様な傾向が見られたが、バクテリ
アセルロースの生産量は大きく低下し、最大でも0.05g/
l以下であった。
アセルロースの生産曲線との対比により、CJF-002株に
よるバクテリアセルロースの生産は、その増殖に約4時
間遅れて進行することが判明した。
対するモラセス濃度の影響 次に、CJF-002株のバクテリアセルロースの生産性に対
するモラセス濃度の影響について評価した。まず、CJF-
002株を高圧蒸気滅菌した2mlの4%(v/v)中国産ビートモ
ラセス液体培地を利用して30℃で一夜静置培養して前培
養液を調製し、該前培養液を用いて本培養を行った。本
培養には、高圧蒸気滅菌した0.001、0.01、0.1、1、5お
よび10%の中国産ビートモラセス液体培地30mlを用い、
CJF-002株の初期濃度を1.0×106 CFU/mlとして30℃で24
時間、静置培養した。培養終了後、CJF-002株の生菌数
をNutrient broth(Difco社製)寒天培地を用いたCF
U法(colony forming unit)により測定し、バクテリ
アセルロースの生産性を、培養液から取り出したバクテ
リアセルロースの乾燥重量を測定することにより評価し
た。
F-002株は中国産ビートモラセスの濃度が0.1%(v/v)以
上で増殖するが、バクテリアセルロースの生産は1%以
上の中国産ビートモラセス培地を用いた場合において活
発化し、10%濃度の液体培地を用いた場合には、0.4g/l
以上ものバクテリアセルロースが生産された。これらの
結果から、バクテリアセルロースの生産性はモラセス濃
度の上昇に依存して増大すること、並びにCJF-002株は
安価なモラセスを利用して極めて短時間に大量のバクテ
リアセルロースを生産できることが判明した。
るバイオフィルムの形成能力を評価した。
後、高圧蒸気滅菌した油層岩小片(厚さ3mm、直径37m
m、浸透率[Kair]607md)を1Lビーカー内に垂直に固定
し、そこに4%(v/v)の中国産ビートモラセスと合成油層
水成分を混和した液体培地500mlを注ぎ込んで、ここに
実施例6と同様な手法により調製したCJF-002株の前培
養液を初期濃度が1.0×106 CFU/mlになるように接種し
た。
株式有限公司吉林石油分公司の扶余油田に位置する生産
井から採取した、原油とともに生産される産出流体の化
学成分分析の結果に基づいて決定された、NaCl;1210 m
g/l、KCl;23 mg/l、NaHCO3;2820 mg/l、CaCl2;140 m
g/l、MgCl2;253 mg/l、FeCl3;2 mg/l、KH2PO4;10mg/
l、NaHSO4;3 mg/lの組成からなるものである [米林英
治, 田口充, 藤原和弘, 吉田信一郎, 榎本兵治, 微生物
攻法に関する研究の現状とフィールドテストへの展望,
石油技術協会誌, Vol. 61 (6), 487-493(1996)、Yo
nebayashi, H., Ono, K., Enomoto, H., Chida, T., Ho
ng, C. X., Fujiwara, K., MicrobialEnhanced Oil Rec
overy Field Pilot in a Waterflooded Reservoir, Soc
ietyof Petroleum Engineers, 38070(1997)なども参
照されたい]。
2株のバイオフィルムの形成能力を把握するため、およ
びCJF-002株を接種した前記液体培地の入った1Lビー
カーを嫌気ジャー(Becton Dickinson and Company,社
製)内に静置して油層内に類似した嫌気性の環境を構築
するとともに、1Lビーカー内に撹拌子を入れ、約1.7cm
/secの回転流速で培地を撹拌することにより、油層内の
流体の流れを加速試験的に再現した。さらに培養温度は
前記扶余油田の油層温度である30℃とし、36時間培養を
行った。
数をNutrient broth(Difco社製)寒天培地を用いたCF
U法により測定し、油層岩表面へのバイオフィルムの形
成状況を目視観察により評価した。
が形成されている状態を示す図面であり、この図からわ
かるようにバイオフィルムは油層岩全体を覆い尽くして
いた。また培養液中のCJF-002株の濃度は2.2×108 CFU/
mlであり、初期濃度よりも2オーダー以上高濃度であっ
たことから、油層岩表面に形成されたバイオフィルムは
CJF-002株が増殖することにより生産したバクテリアセ
ルロースに由来するものと推定された。これらの結果か
ら、CJF-002株は油層環境条件下で増殖し、強固なバイ
オフィルムを油層岩表面に形成することが判明した。ま
た、バイオフィルムの形成に要する時間も短時間である
ことから、CJF-002株は油層内で早期に高浸透性領域を
閉塞しうるものと考えられた。このことからCJF-002株
は、微生物攻法の短時間処理化乃至は効率化に多いに寄
与するものであり、微生物攻法の原料微生物として使用
することにより圧入操業コストを低減し得ることを示唆
するものである。
せた油層岩を用いて原油増進回収能力を評価した。ま
ず、中国石油天然気株式有限公司吉林石油分公司の扶余
油田から油層コアを採取し、深度359.2mのコア(直径約
11cm、長さ約17cm)からプラグコア(直径約3.7cm、長
さ約11cm、孔隙容積[PV];23.7ml、孔隙率[φ];29.4
%、浸透率[Kair];1051md)を準備した。次いでプラグ
コアを180℃で3日間乾熱滅菌し、実施例7に記載の合成
油層水に浸漬して、真空ポンプを用いて一昼夜脱気する
ことにより、プラグコア内の孔隙部分を合成油層水で飽
和した。続いて、当該プラグコアをコアホルダーに装着
し、121℃で240分滅菌した後、水浸透率を測定し、約5.
3PVの扶余油田産の原油を60 ml/minの流速でプラグコア
内に送液して、プラグコアの孔隙部分を原油で飽和させ
た。そして、前記合成油層水を40 ml/minの流速で再度
送液して、水攻法により回収されうるプラグコア内の原
油を全て回収することにより、水攻末期の油層を再現し
た(水飽和率[%PV];56.9%、油飽和率[%PV];31.6
%、浸透率[Kwater];208.0md)。
入を行った。まず、CJF-002株を高圧蒸気滅菌した0.1%
(v/v)の中国産ビートモラセス、合成油層水成分および
0.005%のセルラーゼ(糖成分不含)をそれぞれ混和し
た液体培地を使用して、30℃で24 時間培養した。次い
で、当該培養液を合成油層水に1:100の割合で混和し、
プラグコア内に10ml/minの流速で1日間圧入した。この
ときのCJF-002株の圧入濃度はおよそ106 CFU/mlであっ
た。なお、CJF-002株の圧入にあたっては、CJF-002株の
圧入溶液を適当容積のボトルに入れておき、これを送液
ポンプで順次プラグコア内に送液するという手順で行っ
たが、その際、CJF-002株がプラグコア内に圧入される
前にボトル内あるいは送液ライン内でバイオフィルムを
生産するのを抑止するため、ボトルおよび送液ラインの
温度を15℃に保持した。そして、前記手順で調製した新
鮮なCJF-002株の培養液に、高圧蒸気滅菌した0.1%(v/
v)の中国産ビートモラセス、合成油層水成分および0.01
%のセルラーゼ(糖成分不含)をそれぞれ混和したもの
を栄養源溶液として、前記CJF-002株の圧入と同条件で
プラグコア内に圧入し、さらに同条件で合成油層水を圧
入した。
溶出液について、総菌体濃度をNutrient broth(Difco社
製)寒天培地を用いたCFU法により測定し、さらにCJF
-002株の生存濃度を本発明者らが以前に確立した遺伝子
工学的手法を用いてモニタリングした [Fujiwara, K.,
Tanaka, S., Ohtsuka, M., Ichimura, N., Yonebayash
i, H., Hong, C. X., Enomoto, H., Evaluation of the
Use of Amplified 16SrRNA Gene-Restriction Fragmen
t Length Polymorphism Analysis to Detect Enterobac
ter cloacae and Bacillus licheniformis for Microbi
al Enhanced Oil Recovery Field Pilot, Sekiyu Gakka
ishi, 42 (5), 342-351 (1999)も参照されたい]。また
実験期間を通じて、回収された原油量およびプラグコア
内の圧力変化(各種溶液の圧入圧力と溶出圧力との差
圧)を評価するとともに、実験終了後のプラグコア内に
生存するCJF-002株の濃度をCFU法および上記遺伝子工学
的手法を用いて測定し、またバイオフィルム形成の有無
を実施例5に記載の方法により評価した。
養源溶液の圧入直後から、溶出液中のCJF-002株の濃
度、並びに圧入圧力と溶出圧力との差圧が上昇した。こ
れは、栄養源溶液の圧入によりCJF-002株がプラグコア
内で増殖し、それに伴ってバイオフィルムが形成された
ことを示唆する結果と考えられる。また、前記差圧の上
昇に少し遅れて原油回収率が上昇し、最高で25%もの原
油回収率が観測されたが、この結果は、プラグコアのな
かでも浸透性の高い領域がバイオフィルムにより閉塞さ
れ圧入流体の流路が変化して、圧入流体の水/油の置換
効率が改善されたことによると考えられる。さらに、圧
入実験終了後、プラグコア内に生存するCJF-002株の濃
度を測定したところ、プラグコア1g(乾燥重量)あた
り107 CFUのCJF-002株がプラグコア内にほぼ均一に分布
していることが判明し、またバイオフィルムの形成も確
認された。
気性環境である油層環境下で増殖し、バイオフィルムを
形成することができ、よって形成されたバイオフィルム
が油層の高浸透性領域を閉塞して、優れた原油増進回収
効果をもたらしうることが示唆された。
果 実施例1で単離したCJF-002株に関して、実油層におけ
る原油増進回収効果を評価した。実験は中国石油天然気
株式有限公司吉林石油分公司の扶余油田に位置する生産
井#22-264(実油層)に対して行い、圧入方法として
「圧入→密閉(生産中止)→生産再開」のプロセスを一
巡させる、1サイクルハフ&パフ攻法を採用した。以下
にCJF-002株の圧入実験の手順を示す。
(1%中国産ビートモラセスおよび0.01%のセルラーゼ
含有)を用いてCJF-002株を30℃で一夜静置培養し、得
られた前培養液を前記と同様な培地10L(8本)に接
種して、さらに30℃で一夜静置培養することにより、圧
入に使用するCJF-002株の培養液を得た。
量約12kL)を用意し、これらのタンク内部を蒸気滅菌処
理するとともに、1台目のタンクローリーに地上施設の
地下水貯蔵タンクから地下水をタンクローリーに積み込
み、そこに前記CJF-002株の10L培養液8本(平均9.1
×108 CFU/ml = 7.3×1010 CFU/80L)を混合して坑井
元まで運搬した。坑井元までの道路は悪路で、運搬には
約30分を要し、この間にタンク内の圧入溶液を撹拌して
いたことになる。坑井元では、タンクローリーと同様な
手順で加熱滅菌処理したポンプ車によって、坑井のアニ
ュラス部から圧入を行った。続いて2台目はスペーサー
として地下水のみを、3台目以降は、地下水で5%程度
を目処として希釈した中国産ビートモラセス溶液を前記
と同様な手順で順次圧入した(圧入総量:130kl)。こ
れらの圧入における圧入レートは平均するとおよそ0.5k
l/min(30 kl/h)であった。そして所定量の前記圧入溶
液を圧入後、アニュラス部に残留している当該溶液を全
て油層内に圧入するため、タンクローリー半載分に相当
する約6klの地下水を後押し水として圧入した。
がモラセスを利用して油層内で増殖し、バイオフィルム
を形成するのに要する期間を考慮して、坑井を10日間密
閉(生産中止)した。
し、生産井から産出される流体の産液量および含水率
(Water cut)の変化を測定することにより、石油増進
回収効果を評価した。さらに、生産再開後、チュービン
グ内に停滞している油層水を排出した後に、坑口装置の
ドレイン部から滅菌ボトル内に前記産出流体を経時的に
採取し、実施例8に記載の手法を用いて前記産出流体中
に生存するCJF-002株の濃度をモニタリングした。
体および原油の生産挙動を示した。CJF-002株の圧入に
より、前記産出流体の産液量がおよそ35%低下し、さら
に、4-5倍もの原油回収量の増加が認められた。また、
経時的に採取した前記産出流体中には、104-105 CFU/ml
程度のCJF-002株が高頻度に検出された。これらの結果
から、生産井#22-264の近傍油層に存在する高浸透性領
域が、CJF-002株の生産するバイオフィルムにより閉塞
されたことによって、産出流体の産液量の低下がもたら
され、さらにそれと同時に、油層内の流体の流路が変化
たことにより、未回収の原油が掃攻されて、原油回収量
が増加したものと考えられる。
を用いた原油掃攻撃実験及びハフ&パフテストの結果か
ら、CJF-002株は石油増進回収効果をもたらすことが確
認でき、当該菌が微生物攻法において極めて有効に利用
できる菌であることが判明した。
的であった、バクテリアセルロースを産生する新規微生
物、その微生物が生産するバクテリアセルロース、バク
テリアセルロースの製造方法、およびその微生物ならび
にバクテリアセルロースの石油の増進回収法への利用方
法が提供される。
地を用いて大量培養が可能であり、かつ嫌気性条件下で
活発に増殖してバイオフィルムなどの不溶性ポリマーを
生産しうる微生物であることから、微生物攻法による石
油回収を低コストで且つ効率よく実施するための微生物
として有用である。
境適合性材料の開発が急がれている昨今、天然材料とし
て注目されているバクテリアセルロースが安価に供給で
きるものと期待される。また、本発明において、微生物
攻法における微生物の効果的な利用手段の一つである、
微生物産生不溶性ポリマーによる高浸透性領域の選択的
なプラッギングに対して、本発明の微生物は効果的に利
用できることが判明し、多様な油田における石油の増進
回収も大いに期待される。
F-002株)をビートモラセス培地で培養した場合の、菌
の増殖性(図A)及びセルロースの生産性(図B)を示
す図である(実施例5)。
F-002株)の増殖性及びバクテリアセルロースの生産性
に対するビートモラセス濃度の影響を示す図である(実
施例6)。
状況を示す図である(実施例7)。尚、図Aは実験に使
用する前の油層岩小片の様子を示す図であり、図Bは油
層岩小片にCJF-002株を接種して培養した後の油層岩小
片の様子を示す図である(実施例7)。
用いて原油の増進回収能力を調べた結果を示す図であ
る。
果を示す図である。
Claims (10)
- 【請求項1】配列番号1に記載の塩基配列を含む16S-rR
NA遺伝子を有することを特徴とする、Enterobacter 属
に属するバクテリアセルロース産生微生物。 - 【請求項2】配列番号2に記載の塩基配列を含む16S-rR
NA遺伝子を有することを特徴とする、Enterobacter 属
に属する請求項1記載のバクテリアセルロース産生微生
物。 - 【請求項3】バクテリアセルロース生産能を有する、En
terobacter cloacae。 - 【請求項4】Enterobacter sp. CJF-002(FERM P-1779
9)菌株またはその変異株であるバクテリアセルロース
産生微生物。 - 【請求項5】Enterobacter 属に属するバクテリアセル
ロース産生微生物を培養し、培養物からバクテリアセル
ロースを採取回収することを特徴とするバクテリアセル
ロースの製造方法。 - 【請求項6】Enterobacter 属に属するバクテリアセル
ロース産生微生物を単糖類または二糖類の少なくとも1
種を含有する液体培地中で培養することを特徴とする請
求項5記載のバクテリアセルロースの製造方法。 - 【請求項7】静置培養法によって培養することを特徴と
する請求項5又は6に記載のバクテリアセルロースの製
造方法。 - 【請求項8】Enterobacter 属に属するバクテリアセル
ロース産生微生物または当該微生物が産生するバクテリ
アセルロースを用いることを特徴とする石油の増進回収
方法。 - 【請求項9】請求項1乃至4のいずれかに記載のバクテ
リアセルロース産生微生物または当該微生物が産生する
バクテリアセルロースを用いることを特徴とする石油の
増進回収方法。 - 【請求項10】請求項1乃至4のいずれかに記載のバク
テリアセルロース産生微生物を油層内で増殖させ、バク
テリアセルロースを産生させることを特徴とする請求項
8または9に記載の石油の増進回収方法。
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