JP2001316287A - アルツハイマー病の治療剤 - Google Patents

アルツハイマー病の治療剤

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Takekuni Ko
建国 胡
Makiko Kamata
真喜子 鎌田
Hachiro Nakagawa
八郎 中川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】新たなアミロイドβ蛋白質の抑制手段を見出し
て、この手段を用いたアルツハイマー病の治療剤を提供
すること。 【解決手段】体内の血圧の調整等に深く係わっているア
ンギオテンシン変換酵素が、アミロイドβ蛋白質の脳内
における蓄積を抑制する働きを有することを見出し、ア
ンギオテンシン変換酵素を有効成分とする、アルツハイ
マー病の治療剤を提供することにより、上記の課題を解
決し得ることを見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脳の変性疾患であ
るアルツハイマー病の治療剤に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】老人性痴呆症は、高齢化社会が進展する
につれて、ますます大きな問題としてクローズアップさ
れつつある。
【0003】老人性痴呆症の中でも、アルツハイマー病
は、厄介な痴呆症であることが知られている。すなわ
ち、脳出血や脳梗塞のような脳血管障害に伴って生じる
痴呆である脳血管性痴呆では、情報を受け取ったり命令
を発したりする大脳皮質が障害を受けていないものも多
く、投薬によって周辺症状に対してある程度の治療効果
を示すことが比較的多い。これに対して、アルツハイマ
ー病では、脳が、特徴的な病理的および生化学的病変を
示すことが知られており、神経細胞の脱落に伴う脳の著
しい萎縮の他に、アセチルコリン等の神経伝達物質の障
害や、アミロイドβ蛋白の脳内への蓄積に伴う老人斑の
形成、さらには、神経原繊維変化と呼ばれる異常繊維P
HF(paired helical filament) の神経細胞内への蓄積
等が認められる、現状においては不可逆進行性の脳疾患
である。
【0004】アルツハイマー病の治療薬の開発は、日々
行われており、例えば、アセチルコリン系賦活剤、β−
アミロイド凝固線維形成抑制剤、β−アミロイド除去活
性亢進剤、タウのリン硬化抑制剤、抗酸化剤、抗炎症
剤、脳神経促進剤、神経栄養因子、神経伝達改善剤、神
経ペプチド類、原因遺伝子に対するアンチセンス薬、女
性ホルモン、ワクチン等が、アルツハイマー病の治療に
用いられつつある。特に、初期のアルツハイマー病の中
核症状の治療薬として、最も有望とされている薬物は、
β−アミロイド蛋白質の産生抑制剤と神経細胞壊死阻害
剤が挙げられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】アルツハイマー病の治
療剤を開発する際の考え方として、例えば、β蛋白質
の生成の抑制や、その毒性の低減、PHFの生成の抑
制、神経成長因子(NGF)等による神経細胞変性の
抑制、神経伝達物質の障害の除去等が挙げられる。
【0006】最近、アルツハイマー病発症の第一次要因
が、アミロイドβ蛋白質(以下、Aβともいう)の脳内
における沈着(老人斑の形成)であり、これに次いで、
神経原繊維変化等が惹き起こされることが明らかにされ
つつある。よって、上記のに示すAβの抑制を試みる
ことは、アルツハイマー病の治療薬の開発のアプローチ
方法として、最も有効な方法の一つであることに間違い
はないと考えられる。
【0007】本発明が解決すべき課題は、新たなAβの
抑制手段を見出して、この手段を用いたアルツハイマー
病の治療剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、既に、ア
ンギオテンシン変換酵素の遺伝子多型と、日本人のアル
ツハイマー病の発症との間に、有意な相関が認められる
ことを見出した。すなわち、本発明者らは、アルツハイ
マー病患者では、II型の頻度が高く、逆に、DD型が
低いことを見出した[Neurosci.Letters,277:65-67(199
9)]。
【0009】本発明者は、ACEの活性が、II型では
DD型の半分以下であることから、ACEの活性がアル
ツハイマー病に何らかの関わりがあるのではないかと考
え、鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、体
内の血圧の調整等に深く係わっているアンギオテンシン
変換酵素が、Aβの脳内における蓄積を抑制する働きを
有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、アンギオテンシン変
換酵素を有効成分とする、アルツハイマー病の治療剤
(以下、本発明治療剤ともいう)を提供する発明であ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。 A.本発明治療剤の有効成分 本発明治療剤の有効成分として用いられるアンギオテン
シン変換酵素(以下、ACEともいう)は、主に血管内
皮細胞の膜酵素として存在し、アンギオテンシンIを加
水分解して、活性型のアンギオテンシンIIに変換する酵
素である。アンギオテンシンIIには、血管収縮作用とア
ルドステロン分泌促進作用が認められており、昇圧物質
として知られている。また、ACEには、内皮型と精巣
型の2つのアイソザイムが認められている。そのうち、
内皮型ACEは、血圧の維持に関係しているものと考え
られている(本願において、ACEという場合には、内
皮型ACEと精巣型ACEの双方を意味することとす
る)。
【0012】本発明治療剤の有効成分として、内皮型A
CEも精巣型ACEも、さらにこれらの混合物も用いる
ことができるが、本来、脳血管にも存在することが知ら
れている内皮型ACEを選択することが好ましい。
【0013】ACEは、天然物として存在するものを抽
出精製することにより得ることができる。天然のACE
は、哺乳動物の血管内皮細胞の膜酵素として存在し、具
体的には、血液や精液等に存在することが知られてお
り、常法により、抽出精製して得ることができる。特
に、精液中には、血液の100倍以上のACEが存在し
ている。故に、ACEの提供材料としては、哺乳動物の
精液を用いることが好ましい。また、哺乳動物の種類
は、特に問われないが、特に、ヒトの精液を用いること
が好ましい。ヒトの精液は、例えば、不妊検査等で用い
た精液の余りを用いることで、供給可能である。
【0014】哺乳動物の精液のうち、精漿には、内皮型
ACEが豊富に存在することが知られており、精子中に
は、精巣型ACEが存在することが知られている。精液
から、内皮型ACEを選択的に抽出精製する場合には、
精液のうち、精漿のみを分離して、ここから、通常公知
の酵素の精製法、例えば、塩析法、等電点沈澱法、ゲル
濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィ
ー、アフィニティクロマトグラフィー、HPLC法、電
気泳動法等を、適宜用いることによって、容易に内皮型
ACEを得ることができる。
【0015】また、同じく精液から、精巣型ACEを選
択的に抽出精製する場合には、精子膜に付着して存在す
る精巣型ACEと、精子内部全体に存在する精巣型AC
Eを抽出精製することにより得ることができる。
【0016】精子膜に付着して存在する精巣型ACEの
分離は、比較的容易である。すなわち、精液から、遠心
分離などの手段で精漿を除いて得た精子を洗浄すること
により行うことができる。この洗浄工程は、1回でほぼ
十分である。
【0017】また、精子内部に存在する精巣型ACEの
分離は、精子膜を破壊し、その内容物における精巣型A
CEを、分離することにより行うことができる。精子膜
の破壊は、一般的な動物細胞の破壊手段、例えば、界面
活性剤による細胞膜の破壊、超音波処理による細胞膜の
破壊、トリプシンなどのプロテアーゼによる蛋白質部分
の分解などを挙げることができる。これらの中で、界面
活性剤は、精巣型ACEが局在する細胞膜のみを特異的
に破壊して、蛋白質を変性させる能力が比較的緩徐であ
り、細胞膜の破壊手段として好適である。特に、Triton
X 100 などのアルキル・フェノール縮合型の陰イオン性
界面活性剤は、好適な界面活性剤として例示することが
できる〔Biochem.J.(1987)247:85〜93〕。
【0018】この精巣型ACEに富む画分から、通常公
知の酵素の精製法を用いることによって、容易に精巣型
ACEを得ることができる。ACEの型の別を問わず
に、本発明治療剤の有効成分として用いる場合には、上
記のようにして、別個に得た内皮型ACEと精巣型AC
Eを混合して用いることも可能であり、哺乳動物の精液
を、精漿と精子に分画することなしに、好ましくは、精
子膜を破壊して、ここから通常公知の酵素の精製法を用
いることによって、容易に内皮型ACEと精巣型ACE
の混合物を得ることができる。
【0019】また、内皮型ACEまたは精巣型ACEの
アミノ酸配列〔Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:9386-93
90(1988)〕を基に、蛋白質工学的手法(例えば、ACE
のアミノ酸配列を基に、ACEをコードする遺伝子をP
CR法等の遺伝子増幅法を用いて得て、かかるACE遺
伝子を、適切なホストに組み込み、かかるホストに組換
えACEを生産させる手法等)を駆使して、組換えAC
EまたはACEの活性部位を得て、これを本発明治療剤
の有効成分として用いることができる。
【0020】このようにして得た、ACEを有効成分と
することにより、アルツハイマー病(本願では、初老期
に発症するアルツハイマー病とアルツハイマー型老人性
痴呆症を併せて「アルツハイマー病」という)の治療剤
が提供され得る。
【0021】ACEを有効成分として投与することによ
り、アルツハイマー病の根本的な要因となる、Aβの凝
集と蓄積を抑制することが可能である。すなわち、AC
Eを有効成分として投与することにより、少なくとも、
アルツハイマー病の発症・進行を抑制することができ
る。
【0022】B.本発明治療剤の形態 本発明治療剤は、ACEを有効成分として配合するが、
これと共に、適切な医薬製剤担体を配合して、製剤組成
物の形態に調製することが可能である(ACEのみでも
勿論可能である)。医薬製剤担体としては、例えば、具
体的な剤型に応じて、適宜医薬製剤担体として慣用され
得る、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面
活性剤等の賦形剤や希釈剤を自由に選択することができ
る。製剤組成物の形態は、ACEをアルツハイマー病の
治療用途に効果に用い得る形態であれば特に限定され
ず、例えば、錠剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤等の固剤であ
っても、液剤、懸濁剤、乳剤等の注射剤形態とすること
もできる。また、ACEに適切な担体を添加することに
よって、用時に液状とするべき乾燥品とすることも可能
である。
【0023】このようにして得られる本発明治療剤の投
与量は、剤の投与方法、投与形態、患者の症状等に応じ
て適宜選択することが可能であり、特に限定されるべき
ものではないが、一般には、有効成分であるACEを、
約0.00001〜90質量%程度含有する製剤形態に
調製して、この製剤を、これに含有されるACE量が一
日成人当り、約0.1μg 〜100μg 程度となる範囲
で、一日1回または数回に分けて投与するのが好適であ
る。
【0024】このような各種の形態の医薬製剤は、その
形態に応じて適当な投与経路、例えば、注射剤形態の場
合には、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内投与等に
より、固剤形態の場合には、経口や経腸投与等により投
与され得る。
【0025】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明する。ただし、この実施例の記載は、本発明の技
術的範囲を限定することを意図するものではない。 〔製造例〕本発明治療剤の有効成分(ACE)の製造サンプル: 精液のサンプルは、男性ボランティアから得
た。これらのサンプルは、提供日または1週間以内に用
いられ、解析時までは4℃で冷蔵保存された。精漿は、
20mLの保存精液に対する15000×g 、20分間の
遠心によって分離した。
【0026】リシノプリル(Lisinopril)−COUPLED セ
ファロースの調製 この調製は、Hooperらの方法とEhlersらの方法を応用し
て行った。すなわち、エポキシ活性化セファロース6B(P
harmacia Biotech) を、0.1Nの水酸化ナトリウム中
のN-(4-Aminobenzoyl)- β-alanine(Adrich)で、16時
間室温で反応させた。エポキシ残基を、1Mグリシン
(pH10.0)でブロックし、修飾されたセファロー
スを精製水でよく洗浄し、ジオキサン(Wako) で仕上げ
た。セファロースは、N-Hydroxysuccinimide esterに活
性化され、0.3MのK2CO3 (pH11.0)水溶
液中のLisinopril(Sigma)(2.2mM)と、4℃で18時間反
応させた。反応性基は、1Mのグリシン(pH10.
0)でブロックした。その結果得られるリシノプリルセ
ファロースは、使用前によく洗浄した。
【0027】リシノプリルのカップリングは、カップリ
ング後のセファロース溶液におけるACE阻害の現象に
よりモニターされた。アフィニティゲルにおける共有結
合したリシノプリルの濃度は、0.5mmol/mL(ゲル) で
あることが判明した。
【0028】なお、リシノプリルは、ACEの活性部位
と結合することによって、ACE活性を阻害する低分子
(MW405.5 )インヒビターであり、降圧剤としても用い
られ得る。
【0029】ACEの精製 精漿を、Lisinoprilセファロースカラムにアプライし
た。バッファーB(20mM Hepes,0.3M KCl,
100μM ZnCl2 )で洗浄した後、カラムに結合し
た酵素を50mMのホウ化ナトリウム(pH9.50)で
溶出し、ACE活性アッセイによりモニターした。AC
Eを含有するフラクションを保存し、酢酸でpHを8.
30、NaClの最終濃度を0.15Mに再調整した。
その後、ACEのフラクションを、MW3000の膜に
よる限外濾過によって濃縮した。
【0030】内皮型ACEに対する特異抗体 ウサギ抗体は、精製した内皮型ACEに対するものを調
製した。初期免疫は、ACEのフロインドの完全アジュ
バンドとのエマルションを、ニュージーランド白ウサギ
に皮下注射して行った。その後、内皮型ACEとフロイ
ンドの不完全アジュバンドとのエマルションを、隔週で
皮下注射し、免疫強化を行った。IgG 画分は、5回の接
種の1週間後に集められた抗血清から精製した(4) 。特
異的IgG 画分は、抗原性ペプチドを結合したイムノアフ
ィニティーカラムによって精製した。抗体の蛋白量は、
BCAプロテインアッセイキット(Pierce製) を用いて
定量した。
【0031】ウエスタンブロッティング SDS-PAGEを、7.5%ポリアクリルアミドのゲルで行っ
た。単離された蛋白質は、電気泳動的にPVDF膜(Imm
obilon P;Millipore) 上に移動して、室温で1時間ブロ
ッキングバッファー(1%スキムミルク含有PBS)と
共にインキュベートした。3回の洗浄後、この膜を抗内
皮型ACE抗体(Chemicon)と共にインキュベートして、
さらに3回洗浄した。この膜を、抗ウサギIgG (ヤギ;Z
ymed)と共に、1時間室温でインキュベートした。洗浄
後、結合した抗体をケミルミネセンス(ECL;Amersham-Ph
armacia)で発色した(第1図:レーン3)。
【0032】なお、第1図のレーン1は、分子量マーカ
ーの電気泳動像〔クマシー(Coomasia)染色〕であり、同
レーン2は、上述の精製ACEの電気泳動像〔クマシー
(Coomasia)染色〕である。この第1図に示す結果によ
り、精漿から精製された蛋白質が、内皮型ACEと同じ
分子量であることが明らかになった。
【0033】ACE活性のアッセイ ACEの酵素活性は、基質としてp-hydroxyhippuryl-L-
histidyl-L-leucineを用いたACEカラーキット(富士
レビオ)で定量した。ACE活性は、505nmの吸光度
で計測した。
【0034】第2図に示すように、精漿から精製された
蛋白質に、確かにACE活性が認められた。そして、こ
のACE活性は、リシノプリルにより、濃度依存的に抑
制され(第2図A:縦軸がACE活性を示し、横軸がリ
シノプリルの濃度を示している)、10μM のリシノプ
リルにより、上記のACE活性が、98%以上抑制する
ことが明らかになった〔第2図B:縦軸がACE活性の
抑制率(%)を示し、横軸がリシノプリルの濃度を示し
ている〕。
【0035】これらのことにより、上記の精漿から精製
された蛋白質が、本発明治療剤の有効成分として用い得
る、内皮型ACEであることが明らかになった。
【0036】〔試験例〕ACEにおけるアミロイドβ−
蛋白質(Aβ)の抑制作用の検討 生体内においては、Aβの重合と脳組織での蓄積は、ア
ルツハイマー病の重要な病理学的特徴である「老人斑」
の形成に、最も重要な過程である。本試験例において、
in vitroのAβの重合モデルおよび蓄積モデルを用い
て、このAβの重合および蓄積に対するACEの抑制作
用を検討した。
【0037】Aβの蓄積に対する抑制作用の検討 Aβは、水溶液中で、自然に自己重合する性質を有して
いる。そして、非重合Aβには、細胞毒性は認められな
いが、重合したAβ(Aβの水溶液を37℃で3日以上
静置すると、Aβの重合傾向がはっきりと認められる)
には、細胞毒性が認められる。ここでは、この水溶液に
おけるAβの自己重合を、生体におけるAβの重合モデ
ルとして、ACEのAβの蓄積の抑制作用を検討した。
【0038】第3図は、このAβの蓄積に対する抑制効
果を検討した結果を示す図面である。第3図の縦軸は、
Aβの重合度(重合したAβと特異的に重合する、Thio
flavin T ThT結合法で測定した:値が大きいほどAβの
重合度が高いことを示している)であり、横軸に、被験
試料の種類を示している。
【0039】第3図に示すように、Aβの重合は、AC
Eの添加によって、濃度依存的に抑制された(特に、2
40μM のACEにより、Aβの重合度は、18%まで
抑制された)。なお、このAβの重合の抑制が、ACE
に特異的なものであるかを明らかにするために、ACE
に代えて、2倍量のBSAを添加したが、Aβの抑制作
用は全く認められなかった。また、予め、ACE抑制剤
であるリシノプリルと反応させたACEをAβに接触さ
せても、Aβの抑制作用は認められなかった。
【0040】このことにより、ACEには、Aβの重合
の抑制作用が認められることが明らかになった。なお、
形態学的に、Aβの重合現象およびACEの重合抑制効
果を確認するために、37℃で3日間静置したAβ溶液
を、銅製網に乗せ、これを電子顕微鏡を用いて観察した
(80000倍)。ACE無添加の場合(第4図A)
は、PBS中で重合したAB線維が明瞭に認められた
が、240μM のACEを添加したAB溶液中では、線
維状の重合Aβは殆ど認められなかった(第4図B)。
【0041】Aβの細胞毒性の抑制作用の検討 この試験では、Aβの毒性に対して、最も鋭敏に反応す
る細胞の一つである、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来の
PC12細胞を用いて、Aβの細胞毒性に対するACE
の作用について検討した。
【0042】具体的には、100μM のAβの水溶液
を、37℃で3日間静置して、Aβを十分に自己重合さ
せた後、この重合Aβの水溶液10μL を、1万個のP
C12細胞に添加して、細胞の生存率を検討した〔細胞
の生存率(%)は、Cell counting Kit 8 (和光純薬
製)を用いて求めた〕。
【0043】その結果を、第5図に示す。第5図に示す
ように、ACE無添加の場合(PBS)は、50%以上
の細胞死が認められた。しかしながら、ACEを添加す
ると、ACEの濃度依存的に、細胞生存率が上昇した
(特に、240μM のACEにより、細胞生存率は、8
0%にまで上昇した)。なお、この細胞毒性の抑制が、
ACEに特異的なものであるかを明らかにするために、
ACEに代えて、2倍量のBSAを添加したが、細胞毒
性の抑制作用は全く認められなかった。また、予め、A
CE抑制剤であるリシノプリルと反応させたACEを用
いても、細胞毒性の抑制作用は認められなかった。この
ことにより、ACEには、Aβの細胞毒性を抑制する作
用が認められることが明らかになった。
【0044】Aβの蓄積の抑制作用の検討 アルツハイマー病患者の脳切片上におけるAβ蓄積を、
ほぼ同様に、in vitroで再現できる、シンタロイドプレ
ート〔Synthaloid plate:QCB Inc.,U.S.A.,Nat.Biotec
hnol,15,258(1997) 〕を用いて、Aβの脳における蓄積
に対するACEの抑制作用を検討した。
【0045】具体的には、線維状Aβが固定化されたシ
ンタロイドプレートに、一定量の 125Iで標識したAβ
およびACEの濃度を変えたPBS溶液を添加し、37
℃で3時間静置した後、プレートを3回洗浄してから、
プレートに結合している標識Aβを、125Iの放射活性
として定量した。この結果を、第6図に示す〔縦軸は、
125Iの放射活性を示し、横軸は、ACE活性を示
す〕。
【0046】第6図に示すように、ACEの添加によ
り、ACEの濃度依存的に、Aβの蓄積が抑制されるこ
とが明らかになった。この結果により、ACEは、Aβ
の蓄積を抑制する作用があることが明らかになった。
【0047】以上示した試験結果により、ACEには、
アルツハイマー病の根本原因とも考えられる、脳内にお
けるAβの線維化および蓄積を抑制し、線維化Aβの細
胞毒性をも抑制する作用が認められた。このように、A
CEを有効成分とする、本発明治療剤は、アルツハイマ
ー病における典型現象である、老人斑の生成を抑制し得
ることが明らかになった。よって、本発明治療剤は、ア
ルツハイマーの治療(予防・進行抑制を含む)において
極めて有用であることが明らかになった。
【0048】なお、最近の研究報告によると、中枢に存
在するレニン−アンギオテンシンシステムにおいて、ア
ンギオテンシンは、血圧の調節のみならず、脳・血液関
門の維持、ニューロンのアポトーシスの抑制、中枢ドー
パミン放出の調整、学習と記憶等においても、重要な役
割を果たしているらしいことも見出されつつある。
【0049】
【発明の効果】本発明により、極めて有用なアルツハイ
マー病治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】精漿を精製して得たアンギオテンシン変換酵素
の電気泳動像を示す図面である。
【図2】リシノプリルによる、アンギオテンシン変換酵
素に対する抑制活性を検討した図面である。
【図3】アミロイドβ−蛋白質のAβの蓄積に対する抑
制作用を検討した結果を示す図面である。
【図4】アミロイドβ−蛋白質の重合現象について検討
した電子顕微鏡像(80000倍)を示した図面であ
る。
【図5】アンギオテンシン変換酵素のAβの細胞毒性抑
制作用について検討した図面である。
【図6】ACEのアミロイドβ−蛋白質の蓄積に対する
抑制効果について検討した図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 八郎 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 Fターム(参考) 4B050 CC01 DD11 FF14E FF16E LL01 4C084 AA02 BA44 CA17 DC02 NA14 ZA162

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アンギオテンシン変換酵素を有効成分とす
    る、アルツハイマー病の治療剤。
  2. 【請求項2】アンギオテンシン変換酵素が、内皮型のア
    ンギオテンシン変換酵素である、請求項1記載のアルツ
    ハイマー病の治療剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004039396A1 (ja) * 2002-10-29 2004-05-13 Gen Kondoh アンギオテンシン変換酵素含有薬剤
WO2005011736A1 (ja) * 2003-07-30 2005-02-10 Tohoku Techno Arch Co., Ltd. アルツハイマー病の予防および/または治療剤

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