JP2001299347A - 産業用パン酵母の遺伝的バックグラウンドに劣性を導入する方法 - Google Patents

産業用パン酵母の遺伝的バックグラウンドに劣性を導入する方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 産業用パン酵母の遺伝的バックグラウンドに
劣性を導入する方法を提供すること。 【解決手段】 産業用パン酵母の遺伝的バックグラウン
ドに、劣性対立遺伝子に基づく、酵母菌株の性質を導入
する方法であって、(a)劣性対立遺伝子に基づく所望
の性質を有する酵母を選択する工程と;(b)(a)で
選択した酵母を二倍体化して、ホモ接合型に関して選択
する工程と;(c)産業用パン酵母を二倍体化して、ホ
モ接合型に関して選択する工程と;(d)逆接合型を有
する、上記(b)と(c)において得られる菌株を接合
させて、四倍体接合体を得る工程と;(e)(d)で得
られた接合体を胞子形成させる工程と;(f)所望の性
質を示す菌株を選択する工程と;(g)逆接合型を有す
る、(f)で選択した菌株を任意に接合させる工程とを
含む前記方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、産業用パン酵母の
遺伝的バックグラウンドに、例えばlti性質のよう
な、劣性対立遺伝子に基づく、特定酵母菌株の性質を安
定に導入する新規な方法に関する。本発明はさらに、上
記方法によって得られる酵母菌株であって、ドウの製造
及び産業的規模でのそれからのベークト製品の製造に用
いることができる前記酵母菌株に関する。
【0002】
【従来の技術】市場では、現在、消費者が例えばピザー
クラスト、パン、クロワッサン等のような、多様な種類
のベークト食物を製造するために非常に種々なドウ製品
が入手可能である。これらの製品は一般に、ドウを発酵
させるプロセスに基づいて2つの主要なグループに、即
ち、化学的作用剤を用いてドウを発酵させるような製品
と、ドウ中に含有されるパン酵母の発酵活性によってド
ウを発酵させるような製品に分類することができる。
【0003】ドウのための発酵剤としての化学薬品の使
用は一般に利用されており、それらの挙動が予測可能な
化学反応に基づくものであり、ドウを発酵させるための
二酸化炭素発生量(体積)の特異的制御を可能にすると
いう利点を有する。二酸化炭素発生量と前記発生が行わ
れる瞬間とが制御可能であるので、長い貯蔵寿命後にも
ドウからのベークト製品(baked products)の製造を行う
ことができる。
【0004】それにも拘わらず、それによって得られる
最終ベークト製品はパン酵母を用いて発酵された製品に
比べて総合品質において劣っている。特に、前記製品の
テキスチャーは消費者にしばしば許容されず、製品は発
酵プロセス中に酵母によって発生されるフレーバー化合
物をも欠いている。
【0005】この理由から、食用ベークト製品の製造者
はかれらの製品にこのような化学薬品の使用をむしろ避
けようと試みて、パン酵母の使用に頼っている。しか
し、通常のパン酵母を含有する製品は“生きている微生
物”そのもの自体の使用に固有な、非常に多様な問題を
有している。
【0006】これらの問題の1つは、ドウ中の酵母の活
性が直線的に制御されることができないという事実にあ
る。この理由から、通常のパン酵母は例えば室温のよう
な一般的な貯蔵条件下又は冷蔵庫において一般的である
ような、より低温においてさえも、二酸化炭素の一貫し
た産生を結果として生じる実質的な活性を示すので、酵
母含有ドウ組成物はごく限られた期間のみ貯蔵できるに
過ぎない。所望の活性化度を越えた通常のパン酵母のこ
の連続的な活性はドウの感覚器官刺激的及びレオロジー
的性質に不利な影響を与えて、味及びテキスチャーの観
点から許容されない最終製品を生じる。
【0007】この特定の欠点を回避するための1つの試
みは、酵母の活性を最小に減ずるために、酵母含有ドウ
を通常はプレベークト(prebaked)形で約−20℃の凍結
温度において貯蔵することであった。
【0008】この目的に関して、EP−0442575
は、基質限定説を利用するドウ組成物の使用を教示す
る。したがって、ドウをマルターゼ陰性酵母によって、
その直接発酵可能な成分の全てが消耗されるまで発酵さ
せ、その後、このドウを長期間貯蔵のために凍結する。
使用の前に、凍結ドウを解凍して、化学作用剤を用いて
ドウをさらに発酵させる。しかし、このアプローチは、
凍結ドウ組成物から製造された製品が消費者のために新
鮮な、例えば冷蔵された、ドウ製品ほど便利ではない点
で不充分であることも実証されている。凍結ドウは解凍
して、たいていの場合に、ベーキングの前に予め活性化
しなければならず、ドウの徹底した活性化を回避するた
めに、この予めの活性化は消費者によるモニターリング
を必要とする。
【0009】その上、凍結ドウに由来する最終ベークト
製品のテキスチャーは、非凍結ドウから製造された製品
よりも劣ることが判明しており、酵母発酵に伴う特徴的
なフレーバーも劣っているか又はしばしば全く欠けてい
る。
【0010】新鮮な酵母を含有するドウ組成物の貯蔵問
題を克服するための他のアプローチは、低温不活性な酵
母菌株を開発して、ドウ中に用いることである。これら
の酵母菌株は、低温において本質的に不活性であるが、
高温になったときに、即ち活性化温度になったときに、
それらの活性を保有する酵母菌株である。
【0011】EP−0487878には、lti性質を
有する酵母を構築する方法であって、サッカロマイセス
セレヴィジエ(Saccharomyces cer
evisiae)の菌株に突然変異誘発処理を受けさせ
て、lti性質を有する少なくとも1種類の突然変異体
を選択して、逆接合型を有するサッカロマイセス セレ
ヴィジエの野性型一倍体菌株によって少なくとも1回も
どし交雑して、lti性質と逆接合型とを有する少なく
とも2種類のもどし交雑分離体を選択して、少なくとも
1回交雑し、このようにして得られた、増殖力と、lt
i性質と、ドウを膨張させる能力とを有する二倍体菌株
を選択する前記方法が記載されている。
【0012】さらに、異なるlti誘導体の構築が述べ
られている。このように、EP−0663441では、
ドウ中に含有されるマルトースとより不活発に反応する
lti菌株を構築する方法が記載されている。これらの
菌株は、lti性質を有する一倍体サッカロマイセス
セレヴィジエを、カタボライト抑制下にある活性マルタ
ーゼ遺伝子を有する一倍体サッカロマイセス セレヴィ
ジエと交雑させ、その後に分離帯を交雑させ、lti性
質、活性Mal表現型(Mal+)(マルターゼをコー
ドする遺伝子を誘導的に(野性型)又は構成的に発現す
る)を示す二倍体菌株を選択することによって、得られ
ることができ、増殖力を有する。
【0013】しかし、業界の製造者の観点からは、ドウ
組成物又はそれからの食用ベークト製品の製造に見られ
る主要な問題の1つは、妥当な経費でのドウの大規模生
産を可能にする酵母菌株を用いなければならないことで
ある。このためには、酵母菌株は高収率、高度なバイオ
マス産生及び/又は良好な乾燥性を有するべきである。
産業的規模でドウ組成物のこのような生産を可能にする
菌株はまだ限られた数でのみ入手可能であるにすぎず、
それゆえ、その遺伝的理由、即ち、これらの性質を惹起
する遺伝子はまだ不明である。このような菌株の例はL
evure Boulangeere Bleue(L
esaffre et Cie、パリ、フランスから入
手可能)、Fermipan(Fermipan Re
d、Gist−Brocades、デルフト、オランダ
から入手可能)、又はHS(Hefe Schwei
z、シュテットフルト、スイスから入手可能)である。
【0014】しかも、これらの産業用菌株は、たいてい
の上記技術的性質を示すとはいえ、例えば低温不活性又
はグルコース脱抑制又はトレハラーゼ欠乏又は一つ若し
くは幾つかの栄養要求性のような、新規の特別な性質を
さらに開発することは今まではできていない。
【0015】それ故、当業者がこのような性質を産業用
パン酵母の遺伝的バックグラウンドに導入することを可
能にする必要性が当該技術分野に存在する。しかし、酵
母菌株のこれらの性質は(a)劣性対立遺伝子(単数又
は複数)に最もしばしば基づいているので、このような
性質を産業用菌株の性質と組み合わせることは容易に達
成できる仕事ではない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
課題は産業用パン酵母の遺伝的バックグラウンドに既知
菌株の性質を導入するための手段を提供して、劣性対立
遺伝子によって与えられる性質と産業用パン酵母によっ
て与えられる性質の両方を有する新規な酵母を提供する
ことにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】この課題は、下記工程: (a)所望の性質を有する酵母を選択する工程と; (b)(a)で選択した酵母を二倍体化して、ホモ接合
型に関して選択する工程と; (c)産業用パン酵母を二倍体化して、ホモ接合型に関
して選択する工程と; (d)それぞれ、逆接合型を有する、上記(b)と
(c)において得られる菌株を接合させて、四倍体接合
体を得る工程と; (e)(d)で得られた接合体を胞子形成させる工程
と; (f)劣性の性質を示す菌株を選択する工程と; (g)(f)で選択した、逆接合型を有する菌株を任意
に接合させる工程とを含む方法によって解決されてい
る。
【0018】劣性対立遺伝子に基づくことが知られた、
産業用パン酵母の性質に組み合わせるための性質とし
て、下記性質を例示的に挙げることができる:不活性な
グルコースリプレッサーに又は不活性なトレハラーゼ
(単数又は複数種類)に由来する性質;栄養要求性及び
lti性質。好ましい実施態様によると、導入すべき対
立遺伝子はlti対立遺伝子である。特定の例は例え
ば、マルトース利用遺伝子を脱抑制して、小麦粉中の主
要な炭素源にスクロース増殖酵母(sucrose-grown yeas
t)を迅速に適応させることを可能にするカタボライトリ
プレッサー遺伝子(例えば:MIGI又はHXK2)、
トレハロース分解(例えば、中性トレハラーゼ(NTH
I)又は酸性トレハラーゼ(ATHI))に関与する遺
伝子の非機能性対立遺伝子であって、迅速なトレハロー
ス分解を回避して、酵母のトレハロース含量を間接的に
高めて、ストレス条件(例えば、乾燥、凍結、有害なレ
ベルのエタノールに対する耐性)に酵母をより耐性にす
る非機能性対立遺伝子、又はプラスミドの選択を可能に
する栄養要求性対立遺伝子(例えば、ura3、leu
2等)である。
【0019】本発明はまた、本発明の方法によって得ら
れる、新規な酵母菌株を提供する。これらの菌株は特に
下記に挙げる、親“産業用菌株”によって示される“産
業的可能性”を保有する: ・ 流加培養法(fed batch process)において糖1gか
ら生成される0.1〜0.5gのバイオマス産生、 ・ 流加培養法による酵母バイオマス産生中に実質的な
エタノール産生のないこと、 ・ 35gのモデルドウ中に160mgのドライイース
トを用いた場合に2時間のインキュベーション期間中に
30℃において少なくとも30mlの二酸化炭素発生を
生じる、56.4重量%の小麦粉、42.3重量%の
水、1.15重量%のNaCl、0.15重量%の(N
42SO4から成るドウ中での活性。
【0020】このようにして得られた菌株は親の産業用
菌株の性質と、例えば栄養要求性(単数又は複数種
類)、グルコース脱抑制、トレハラーゼ不活性(単数又
は複数種類)、好ましくはlti突然変異のような、産
業用パン酵母の遺伝的バックグラウンドに導入されるべ
き性質(単数又は複数種類)を示す菌株の劣性対立遺伝
子(単数又は複数種類)に由来する性質(単数又は複数
種類)との両方を有する。
【0021】他の好ましい実施態様によると、酵母菌株
は四倍体であり、サイズが大きく、このことはこれらの
酵母菌株を生産中の濾過工程に特に適したものにする。
【0022】他の好ましい実施態様によると、本発明の
lti酵母は、約3℃〜12℃の範囲の冷蔵庫温度にお
いて、3ml未満の二酸化炭素、好ましくは1ml未満
のCO2/時/gドウ(56.4重量%の小麦粉、4
2.3重量%の水、1.15重量%のNaCl、0.1
5重量%の(NH42SO4を含有するドウ35g中に
ドライイースト160mg)を発生する能力を有する。
【0023】他の好ましい実施態様によると、酵母菌株
はそれらが由来する菌株、即ち、親産業用菌株及び/又
は親lti菌株の活性よりも高い、発酵温度における活
性、さらに冷蔵庫温度(約3℃〜12℃)における、親
lti菌株の活性に比べて高い活性を含むCO2発生プ
ロフィルを示す。
【0024】このようなCO2発生プロフィルを示す酵
母菌株は、このような菌株が付加的な利益を与えること
で、ドウ組成物の製造に重要であると判明している。こ
れらの菌株によって、約30℃の温度(発酵温度)にお
ける酵母の増強した活性のために、まだドウの発酵時に
同じ結果を得ながら、ドウ組成物中に最少量の酵母を含
めることが可能になる。或いは、ドウ中に少ない酵母物
質が存在して、このことが貯蔵中のドウが過度膨張する
危険性をも減ずるので、ドウ組成物の貯蔵寿命を延長す
ることができる。
【0025】特に好ましい実施態様によると、この菌株
はFCL313(NCIMB 41002)、CL14
(NCIMB 41032)又はCL18(NCIMB
41033)であり、これらはブダペスト条約に従っ
てNational Collection of I
ndustrial and Marine Bact
eria Ltd.(アバーディーン、スコットラン
ド、英国)に寄託されている。
【0026】これらの新規な酵母菌株はドウ組成物の製
造に使用可能であり、結局はベークト製品の製造に使用
可能である。したがって、本発明は、本発明による酵母
菌株によって製造された製品をも包含する。
【0027】好ましい実施態様によると、“産業用性質
(industrial behavior)”を示す本発明による新規なl
ti菌株は、マルターゼ遺伝子を構成的にも非構成的に
も発現する菌株である。他方では、例えば、ドウ中に存
在するマルトースの消費に起因する酵母の過度活性を回
避するために、存在する他の成分によって抑制されるよ
うに、親lti酵母を選択することができる。本発明の
lti酵母菌株を含有するドウ組成物中に、異なる表現
型/遺伝子型を有する他のlti酵母菌株を付加的に用
いることができる。したがって、例えば、新規なlti
菌株と、例えばMal-lti菌株(マルトースを代謝
することができない酵母菌株)又はMal+lti菌株
のような、通常のlti菌株との混合物を用いることが
できる。当業者は例えばマルトースの存在、温度、存在
する任意の他の糖等のような、酵母活性に影響する要因
に従って、入手可能なlti菌株から適当な混合物を選
択して、ドウ組成物を望ましいCO2プロフィルに適応
させることができる。
【0028】ドウ組成物を製造する方法は水、小麦粉、
及び少なくとも1種類の新規な酵母菌株を混合すること
を含む。用いる小麦粉は商業的に入手可能な任意の小麦
粉であることができるが、存在する酵母菌株の糖源とし
て役立ちうる、ある一定量の損傷澱粉を含有する小麦粉
を用いることが場合によっては有利でありうる。水が一
般に、小麦粉の水和容量と、この容量を増減しうる、ド
ウ中に含有される他の成分の可能な影響とに従って、加
工可能なドウが形成されるまで加えられる。ドウは任意
に塩、好ましくは塩化ナトリウムを100重量部である
小麦粉量に基づいて0〜8重量部の量で含有することが
できる。さらに、エタノールがこの場合も100重量部
である小麦粉量に基づいて0〜8重量部の量で含まれる
ことができる。
【0029】酵母は、ドウの調製に用いる水の全量中で
又はその一部中で再水和したドライイーストとして加え
ることができる。約20〜40%の乾燥物質含量を有す
るプレスケーキの使用又は約10〜20%の乾燥物質含
量を有するイースト−クリーム(yeast-cream)の使用も
同様に、小麦粉に加える水を適当に調節しながら、考え
ることができる。
【0030】新規な酵母菌株の製造方法は工程(a)〜
(f)と任意に工程(g)を含む。工程(a)では、劣
性対立遺伝子に基づく、所望の性質を示す親酵母菌株を
選択する。
【0031】さらなる処理に関して、この菌株は接合型
に関してホモ接合である二倍体形で存在しなければなら
ない。したがって、以下の理論的オプションが生じる。
菌株は既に二倍体であり、ホモ接合型、即ち、a/a又
はα/αのいずれかを示す。しかし、たいていの場合
に、このことは該当しないので、その結果として、菌株
を注文に合わせて作製しなければならない。
【0032】接合型に関してホモ接合でない二倍体酵母
菌株から出発する場合、又は四倍体菌株から出発する場
合にさえも、これらの菌株を最初に一倍体形にしなけれ
ばならない。これは、例えば、Sherman,F.
G.R.等、[酵母遺伝学における実験室コース・マニ
ュアル](1986)、Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press(コール
ドスプリングハーバー、ニューヨーク州)に記載されて
いるような、当該技術分野において周知の方法に従って
菌株に胞子形成させることによって、達成することがで
きる。この方法は例えば、マイクロマニピュレータによ
る子嚢切開を含む。このために、胞子形成した培養物の
ループを無菌水中に移し、カタツムリ消化管液(snail j
uice)(Suc d’Helix pomatia,B
iosepra、フランス)をこれに加える。胞子が子
嚢から放出され始めるまで、数分間消化を行わせ、次
に、子嚢を分離して、寒天プレート上で画線培養する。
インキュベーションすると、胞子は一倍体酵母細胞から
成るコロニーを生成する。
【0033】これらの一倍体は分離して、a接合型又は
α接合型のいずれかを示し、このことは例えばX218
0−1A(a)又はX2180−1B(α)(Yeas
tGenetic Stock Center、分子細
胞生物学科、遺伝学部、カリフォルニア大学、バークレ
ー、カリフォルニア州、94720、アメリカ合衆国か
ら入手)のような標準菌株との交雑で検査することがで
きる。分離体の接合型は、分離体が逆接合型のテスター
菌株と接合体を形成することができるが、同じ接合型の
テスター菌株とは接合体を形成することができないこと
によって確認される。次に、所望の性質を示す菌株を選
択することができる。
【0034】その後、対応する一倍体菌株を再び二倍体
化する、これは例えば自発二倍体化の現象を利用するこ
とによって行うことができる(Sherman、上記文
献)。このために、各一倍体菌株を適当な液体培地中で
数週間、周囲温度又はやや高い温度において撹拌下で、
規則的に間隔をおいて継代培養しながら、増殖させるこ
とができる。時には、細胞をYPDプレート(以下参
照)上で培養して、増殖するコロニーを特に大きな変種
(varieties)に関してスクリーニングすることができ
る。大きなコロニーが検出されたときに、それらの倍数
性を既知倍数性のテスター菌株ともどし交雑させること
によって検査することができる。未知倍数性(一倍体又
は二倍体)であるがまだ接合型(a若しくはa/a;α
若しくはα/α)を示す菌株を既知倍数性(一倍体又は
二倍体)のテスター菌株と交雑させる。得られる接合体
は二倍体(一倍体x一倍体),三倍体(一倍体x二倍
体)又は四倍体(二倍体x二倍体)のいずれかである。
これらの接合体を胞子形成させ、典型的な数の胞子を上
述したように子嚢切開によって単離させた。三倍体接合
体はそれらの劇的に減少した胞子生存率(通常、0〜1
0%)によって容易に同定され、偶数倍数性の接合体
(二倍体又は四倍体)は通常50%を超える胞子生存率
を生じる。したがって、一倍体分離体は一倍体テスター
菌株との交雑では高い胞子生存率を生じるが、二倍体テ
スターとは低い胞子生存率を生じ、これに反して、二倍
体分離体は一倍体テスターとは低い胞子生存率を生じる
が、二倍体テスターとは高い胞子生存率を生じる。
【0035】他方では、一倍体菌株のみで出発した場合
には、上記で詳述したように二倍体化を行わなければな
らない。a/a又はα/α接合型を有し、パン酵母の遺
伝的バックグラウンドに導入すべき望ましい特性に関し
てホモ接合性である、このようにして得られた二倍体菌
株は次にさらなるプロセス工程に用いることができる。
【0036】工程(c)の親産業用パン酵母に関して
は、四倍体産業用パン酵母(例えば、LBB、HS、F
ermipan等)を胞子形成させ、接合型を示し、a
/a又はα/αのいずれかのホモ接合型である二倍体分
離体が選択される。
【0037】本発明の方法の工程(d)では、各々が特
定の接合型を有する、特定の特性を有する二倍体化菌株
と二倍体化産業用パン酵母とを組み合わせて、逆接合型
を有する菌株、即ち、a/aとα/αとを既知方法(S
herman、上記文献)で組み合わせて、四倍体接合
体aa/ααを生成する。二倍体親菌株のこのような交
雑に由来する四倍体接合体を次に工程(e)において再
び胞子形成させ、減数分裂した胞子を単離する。胞子形
成によって得られた胞子をパン酵母の遺伝的バックグラ
ウンドに与えるべき特定の特性に関して選択する(工程
(f))。
【0038】好ましい実施態様によると、プロセス工程
(a)〜(f)に従って得られる二倍体菌株をさらに多
倍数体化することができる。このために、(f)で得ら
れた菌株をそれらの接合型に関してホモ接合であるか否
かを検査して、逆接合型を有する菌株を交雑させる。多
倍数体化菌株は、それらの拡大化したサイズのために、
それらを容易に濾過することができるので、付加的な産
業上利益を有する。
【0039】産業用菌株として、例えば商業的に入手可
能な菌株、Fermipan(Fermipan St
andard(“Fermipan Red”Gist
−Brocades、オランダから入手可能なインスタ
ント活性なドライイースト)、又はLBB(“Levu
re Boulanger Bleue”、Le Sa
ffre、フランスから入手可能)、又はHS(Hef
e Schweiz、スイスから入手可能)のような、
任意の適当な菌株が使用可能である。当業者は、彼自身
の技術的熟練と経験に基づいて、またlti性質を導入
すべきであるそれぞれの遺伝的バックグラウンドに依存
して、適当な菌株を選択する。既知産業用菌株の一部は
四倍体性であるので、それらを所望の特性を有する二倍
体菌株と組み合わせる前に、二倍体化しなければならな
い。
【0040】好ましい実施態様では、所望の特性を示す
菌株は、例えば菌株L500[NCIMB 4032
9](これの構築方法はEP−0487878に詳述さ
れており、この資料は参照することにより本明細書に取
り込まれる)又は菌株LCG22[NCIMB 406
12](これの作製方法はEP−0663441に記載
されており、この資料は参照することにより本明細書に
取り込まれる)のような、lti菌株である。以下で
は、本発明を好ましい実施態様及び図面を参照して説明
する:
【0041】
【実施例】実施例1 新規な菌株の構築 lti酵母に産業用特徴を導入するために、次の遺伝子
型: α lts500 を有するlts500 lti突然変異体[NCIMB
40613]が用いられている。 この菌株をマルトース発酵菌株1403−7A: a MAL4c ura3 (Yeast Genetic Stock Cent
er、分子細胞生物学科、遺伝学部、カリフォルニア大
学、バークレー、カリフォルニア州、94720、アメ
リカ合衆国から入手)と交雑させた。(大文字は主要な
対立遺伝子を示し、小文字は劣性対立遺伝子を示す)。
【0042】接合体に胞子形成させ(Sherman、
上記文献)、減数分裂した胞子を次のように単離した。
胞子形成した培養物のループをEppendorf管中
に含有された0.2mlの無菌水中に懸濁させ、0.0
2〜0.04mlのカタツムリ消化管液)(Suc
d’Helix pomatia,Biosepra、
フランス)を加えた。懸濁液を室温において約4〜15
分間インキュベートした。この時間は菌株毎に変化させ
たが、適当な時間は顕微鏡を用いて観察して、胞子が子
嚢から放出され始めたときがほぼ適当であると見なされ
た。これは液体中の“爆発波”と胞子パッケージがより
散漫に配置されることによって表示された。インキュベ
ーション後に、1mlの無菌水を加えて、懸濁液を約5
分間遠心分離した。上澄み液を吸引で取り出し、ペレッ
トを約0.5mlの無菌水中に懸濁させ、遠心分離し、
上澄み液を廃棄した。胞子を約0.5mlの無菌水中に
懸濁させた後に、懸濁液を微細な白金ループで、適当な
サイズに切断した切開寒天パッチ(2%グルコース、1
%酵母エキス、0.5%ペプトン、2%寒天)の縁に画
線培養した。胞子間に2.5mm及び各四分子間に3m
mの間隔を保って、Leitzマイクロマニピュレータ
(Leitz、ドイツ)を用いて、四分子を切開した。
寒天パッチをYDP(YPD完全培地、2%Bacto
寒天(Difco)、1%Bacto酵母エキス(Di
fco)、2%Bactoペプトン(Difco);2
%グルコースによって凝固したもの)寒天プレート上で
移し、30℃において胞子がコロニーを形成するまでイ
ンキュベートし、これらのコロニーを次に、さらなる分
析のために、ようじ(tooth pick)で新たなYPD寒天プ
レート(上記)に移した。
【0043】このようにして得られた一倍体分離体をそ
れらの接合型(a又はα)に関して、それぞれ、例えば
X2180−1A(a)又はX2180−1B(α)
(Yeast Genetic Stock Cent
er、分子細胞生物学科、遺伝学部、カリフォルニア大
学、バークレー、カリフォルニア州、94720、アメ
リカ合衆国から入手可能)のような標準菌株とそれらを
交雑させることによって検査した。
【0044】この検査は、次のように行った。菌株をY
PD寒天プレ−ト(1%DifcoBacto酵母エキ
ス、2%Difco Bactoペプトン、2%グルコ
ース、2%寒天)上で一晩増殖させた。分離体の小アリ
コートにa−テスターの小アリコート及びα−テスター
の小アリコートをYPDプレート上で無菌木製ようじを
用いて混合した。30℃において5〜6時間インキュベ
ートした後に、両方のミックスを接合体の形成に関して
顕微鏡によって分析した。
【0045】親菌株はlti突然変異に関してホモ接合
であったので、全ての分離体は明白なlti表現型を示
し、標準方法(Sherman,F.G.R.等、[酵
母遺伝学における実験室コース・マニュアル](198
6)、Cold Spring Harbor Lab
oratory Press、コールドスプリングハー
バー、ニューヨーク州)によって判定して、マルトース
発酵性(Mal+)又はマルトース非発酵性(Mal-
のいずれか、及びウラシル原栄養性(URA3)又は栄
養要求性(ura3)のいずれかであった。
【0046】得られた種々な一倍体菌株から二倍体単離
体を得るために、自発二倍体化の現象を利用した。この
ために、特定の一倍体菌株を液体YPD培地(上記)中
で、約3〜4日間の間隔を置いて規則的に継代培養しな
がら、撹拌下で約30℃において12週間増殖させた。
時々、細胞をYPDプレート上で培養して、増殖するコ
ロニーを特に大きな変種に関してスクリーニングした。
大きなコロニーが検出されたときに、それらの倍数性を
一倍体テスター菌株(X2180−1A(a)、X21
80−1B(α)上記)又は二倍体テスター菌株(X2
180−1A/1A(a/a)、X2180−1B/1
B(α/α)、ETHZ菌株コレクション、Eidge
noessisch Technische Hoch
schule、チューリッヒ、スイス)とのもどし交雑
によって検査した。
【0047】結果として、次の性質を有する菌株を選択
した: (a)二倍体がlts500突然変異に関してホモ接合
性であり、明白なlti表現型を示した; (b)二倍体がURA3野性型対立遺伝子に関してホモ
接合性であり、原栄養性表現型を示した; (c)二倍体が少なくとも1つのMal4c対立遺伝子
を保持して、マルトース発酵性(Mal+)表現型を生
じた。
【0048】上記性質を示した菌株の選択は、次のよう
に行われた:Mal及びUra表現型は、標準方法(S
herman,F.G.R.等、[酵母遺伝学における
実験室コース・マニュアル](1986)、Cold
Spring Harbor Laboratory
Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨー
ク州)によって判定した。
【0049】YPD寒天プレート(1%Difco B
acto酵母エキス、2%Difco Bactoペプ
トン、2%グルコース、2%寒天)上で一晩増殖させた
酵母細胞の小さい層を新鮮なYPD寒天プレート上で画
線培養することによって、lti表現型を分析する。8
℃における2〜3週間のインキュベーション後に増殖反
応を検査する。
【0050】lti表現型に、全体的に産業用の遺伝的
バックグラウンドを組み合わせるために、次のlti遺
伝子型を有する菌株を選択して、さらなる実験に用い
た:RD1483−2C−2:α/α lts500/
lts500 MAL4c/MAL4c URA3/U
RA3.
【0051】この菌株に下記商業的パン酵母菌株の二倍
体分離体を組み合わせた: (1)LBB(Levure Boulangerer
e Bleue、LeSaffre) (2)Fermipan Standard(Gist
−Brocades)これらの二倍体分離体は、胞子形
成させ、その後に二倍体子嚢胞子を単離することによっ
て得た。二倍体lti菌株RD1483−2C−2に交
雑するために、接合型(したがって、ホモ接合性a/a
である)を示す二倍体分離体を選択した。
【0052】上記lti菌株と上記遺伝的産業用菌株の
種々な菌株との接合は次のように行った。逆接合型の菌
株をYPD寒天プレート上で画線培養して、プレートを
30℃において一晩インキュベートした。接合させるべ
き各菌株の少ないが、等しい量をYPD寒天プレート上
で混合して、30℃において5〜6時間インキュベート
した。接合体の形成を顕微鏡下で検査した。目視検査さ
れた接合体を次にLeitzマイクロマニピュレ−タ
(Leitz、ドイツ)によって引き出した。
【0053】これによって、下記四倍体分離体を単離す
ることができた: 1)LBB(Levure Boulangere Bleue、Le Saf fre)からの分離体 F−7 接合体として RD83−7 F−24 RD83−24 F−28 RD83−28 FZ15 FD1583 FZ24 FD2483 2)Fermipan Standard(Gist Brocades)から の分離体 FP5 接合体として PD583 FP6 PD683 FP10 PD1083 FP20 PD2083
【0054】四倍体接合体を胞子形成させ、減数分裂し
た胞子を、二倍体lti酵母菌株L500の胞子形成に
関して上述したように、単離した。1次分析でlti表
現型を示した胞子をそれらの接合挙動と胞子形成挙動と
に関して、それぞれ、さらに分析した。
【0055】実施例2 産業用性質に関する菌株の選択 産業用流加培養法における菌株の性能を判定するため
に、炭素源としてのエタノールと阻害性物質としてのア
セテートを含む好気性振とうフラスコ培養における増殖
速度を測定する試験を適用した。エタノール濃度は0.
7%の弱毒性(sub-toxic)レベルに選択し、アセテート
濃度(培地のpHを4.0に緩衝化することによって遊
離酸として存在)は、充分に機能する基準菌株(Lev
ure Boulangeere Bleue(LB
B)、Le Saffreから)と充分に機能しない基
準菌株(X2180、Yeast Genetic S
tock Center、UC Berkeley)と
の増殖速度の差異が最大になるように、最適化した。各
試験シリーズに、両方の基準菌株を含めて、試験した菌
株の性能を充分に機能する産業用菌株LBBの増殖速度
の%で表現する。
【0056】試験すべき菌株の細胞を試験管内の5ml
のYPD(1重量%Difco Bacto酵母エキ
ス、2重量%Difco Bactoペプトン、2重量
%グルコース)中で190rpmの回転シェーカー上、
30℃において一晩前培養する。この培養物の1mlを
用いて、100ml量のNE培地(0.67%w/vの
DIFCO酵母窒素塩基w/oアミノ酸、1%w/vの
Na2−コハク酸塩、1.12%v/vのHCl 5
M、0.7%w/vエタノール(オートクレーブ処理後
に添加))を含む振とうフラスコ(底部に4バッフルを
備えた500mlエーレンマイヤーフラスコ)前培養物
に接種して、インキュベーションを190rpmの回転
シェーカー上、30℃において24時間続けた。最終的
試験培養(底部に4バッフルを備えた500mlエーレ
ンマイヤーフラスコ)を100mlのNEA培地(0.
67%w/vのDIFCO酵母窒素塩基w/oアミノ
酸、1%w/vのNa2−コハク酸塩、1.12%v/
vのHCl 5M、0.7%w/vエタノール、0.3
%w/v氷酢酸(エタノールと酢酸はオートクレーブ処
理後に添加))の接種によって、OD600が約0.1で
あるように開始した。30℃における、190rpmの
回転シェーカー上でのインキュベーションを10時間に
わたって続け、OD600を2時間間隔で測定した。培養
物の指数増殖期中に増殖速度を確認した。LBB(10
0%)に比較して、寄託菌株の増殖速度は下記の値であ
る: (LBB 100%) FCL313 137% CL14 165% CL18 85% (X2180 約30〜40%)
【0057】実施例3 lti性質に関する菌株の選択 細胞を振とうフラスコ培養の2ステージで増殖させた。
1工程は前培養を含むものであり、この工程では、各菌
株の−80℃グリセロール凍結細胞懸濁液0.1mlを
4曝気バッフル付き500mlエーレンマイヤーフラス
コ中の200mlのYD培地(0.5%(w/v)Di
fco酵母エキス、2%グルコース)に接種して、30
℃で回転シェーカー上、180rpmにおいて72時間
インキュベートした。この懸濁液を次に、Sorval
l遠心分離機上、4℃において500rpmで5分間遠
心分離し、培地を廃棄した。細胞ペレットを200ml
の最少培地(0.67%(w/v)のDifco酵母窒
素塩基w/oアミノ酸、1.00%(Na2−コハク酸
塩)、0.2%サッカロース)中に再懸濁させ、培養を
4曝気バッフル付き500mlエーレンマイヤーフラス
コ中で30℃において6時間続けた。その後、さらに
0.4%(w/v)サッカロース(4mlの無菌20%
サッカロース溶液4ml)を加え、回転シェーカー上、
180rpm,30℃において振とうを一晩続けた。細
胞を氷冷蒸留水で3回洗浄し、各回に5000rpmに
おいて5分間遠心分離した。
【0058】モデルドウとして、通常のピザ−レシピを
比較的強力粉と共に選択した:成分は次の通りであっ
た:
【表1】
【0059】ドウを次のように調製した。全ての成分を
4℃に維持し、低温室(4℃)においてドウ調製を行っ
た。落花生油を30分間室温に放置することによって液
化させた。数グラムの酵母ケーキ(約30%乾燥物質)
を50ml Falconポリプロピレン管に計り入れ
ることによって、酵母スラリーを調製した。等量の冷水
道水を加えて、約15%乾燥物質のスラリーを得て、こ
のスラリーを激しく混合した。小麦粉と塩とを混合し
て、落花生油と水とを加え、この時点で上記で調製した
4mlの酵母スラリーを加えた。フラット・ビーター・
アタッチメントによってドウを4分間こねて、滑らかな
ドウを得た。100g片を切断して、これをRISOG
RAPHのガラス計量ジャーに移した。計量ジャーを密
封した後ただちに、測定を開始した。
【0060】ガス発生を120時間にわたって1時間間
隔で8℃において測定した。温度を12℃に上げて、ガ
ス発生を100〜120時間にわたって1時間間隔で測
定した。温度を30℃に上げて、ガス発生を6〜17時
間にわたって10分間間隔で測定した。ガス発生は各温
度におけるガス曲線の最初の勾配として算出した。30
℃と8℃における測定結果を図1に示す。
【0061】実施例4 リストした量で成分を用いて、モデルドウを調製した:
【表2】
【0062】ドウを100gのアリコートに分割して、
“Niesler”の容器(Biospectra A
G、シュリーレン、スイスから入手可能)に導入し、こ
の容器においてドウ組成物を4週間の期間にわたって約
8℃の温度に維持した。前記期間中に、CO2発生が測
定された。これらの測定結果は図1に示す。このように
調製したドウを1、2、3、4又は5週間後にベーキン
グしたときに、製品は優れたテキスチャーとフレーバー
を示し、これらは新たに混合したドウ組成物から製造さ
れた製品のテキスチャーとフレーバーに匹敵するもので
あった。
【図面の簡単な説明】
【図1】30℃と8℃において、それぞれ、得られた菌
株のCO2発生を示す。
【図2】種々の温度における種々の菌株のCO2発生を
絶対速度で例示するグラフを示す。
【図3】種々の温度における種々の菌株のCO2発生を
相対速度で例示するグラフを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:865) C12N 15/00 A Fターム(参考) 4B024 AA05 BA77 CA01 DA12 GA11 4B032 DB01 DK54 4B065 AA72X AA72Y AB01 AC20 BA01 CA42

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 産業用パン酵母の遺伝的バックグラウン
    ドに、劣性対立遺伝子に基づく、酵母菌株の性質を導入
    する方法であって、 (a)劣性対立遺伝子に基づく所望の性質を有する酵母
    を選択する工程と; (b)(a)で選択した酵母を二倍体化して、ホモ接合
    型に関して選択する工程と; (c)産業用パン酵母を二倍体化して、ホモ接合型に関
    して選択する工程と; (d)逆接合型を有する、上記(b)と(c)において
    得られる菌株を接合させて、四倍体接合体を得る工程
    と; (e)(d)で得られた接合体を胞子形成させる工程
    と; (f)所望の性質を示す菌株を選択する工程と; (g)逆接合型を有する、(f)で選択した菌株を任意
    に接合させる工程とを含む前記方法。
  2. 【請求項2】 所望の性質が、バイオマス産生及び/若
    しくは細胞分離及び/若しくは乾燥中に、及び/又は酵
    母ドウ製造及び/若しくは貯蔵及び/若しくはベーキン
    グ中に改良された性能を生じる(a)遺伝子の劣性対立
    遺伝子(単数又は複数)に基づくものである、請求項1
    記載の方法。
  3. 【請求項3】 遺伝子がカタボライト・リプレッサー遺
    伝子、中性若しくは酸性トレハラーゼをコードする遺伝
    子、生合成酵素をコードする遺伝子、又は対立遺伝子形
    (単数又は複数)においてlti−性質を生じる遺伝子
    である、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 所望の性質がlti性質である、請求項
    3記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方
    法によって得られるパン酵母。
  6. 【請求項6】 二倍体又は四倍体である、請求項5記載
    のパン酵母。
  7. 【請求項7】 lti性質を有する、請求項5記載のパ
    ン酵母。
  8. 【請求項8】 3〜12℃の冷蔵温度において3ml未
    満/gドウ/時間、好ましくは1ml未満のCO2産生
    を有する、請求項7記載のパン酵母。
  9. 【請求項9】 構成的に又は誘導的にマルターゼを発現
    する、請求項8記載のパン酵母。
  10. 【請求項10】 FCL313(NCIMB4100
    2)又はCL14(NCIMB41032)又はCL1
    8(NCIMB41033)である、請求項5記載のパ
    ン酵母。
  11. 【請求項11】 請求項5〜10のいずれか1項に記載
    の酵母を含有するドウ組成物。
  12. 【請求項12】 ベークトドウ製品の製造のための請求
    項10記載のドウ組成物の使用。
  13. 【請求項13】 請求項11記載のドウによって製造さ
    れたベークト製品。
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