JP2001280426A - 無段変速機用ベルトにおける金属エレメントの組み合わせ方法 - Google Patents

無段変速機用ベルトにおける金属エレメントの組み合わせ方法

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JP2001280426A JP2000090203A JP2000090203A JP2001280426A JP 2001280426 A JP2001280426 A JP 2001280426A JP 2000090203 A JP2000090203 A JP 2000090203A JP 2000090203 A JP2000090203 A JP 2000090203A JP 2001280426 A JP2001280426 A JP 2001280426A
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    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G5/00V-belts, i.e. belts of tapered cross-section
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 左右のプーリ当接面の厚さに偏差を有する金
属エレメントを使用しても、プーリのV面との間にエッ
ジコンタクトが発生しないようにする。 【解決手段】 無段変速機用ベルト15の金属エレメン
ト32の左右のプーリ当接面39の厚さta,tbを測
定し、所定個数の金属エレメント32の左右のプーリ当
接面39の厚さta,tbの偏差の総和が所定範囲とな
るように前記所定個数の金属エレメント32を選択し、
選択した金属エレメント32をランダムに組み合わせて
組み付ける。ドライブプーリ6の出口付近で強い押し力
を受けた金属エレメント32がヨーイングしても、その
プーリ当接面39がドライブプーリ6のV面38にエッ
ジコンタクトしなくなって摩耗が防止され、またプーリ
当接面39の厚さta,tbに偏差がある金属エレメン
ト32が使用可能になってコストダウンが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無端状の金属リン
グを複数枚積層した金属リング集合体と、金属リング集
合体に積層状態で支持された多数の金属エレメントとか
ら構成され、ドライブプーリおよびドリブンプーリに巻
き掛けられて両プーリ間で駆動力の伝達を行う無段変速
機用ベルトにおける金属エレメントの組み合わせ方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】無段変速機用ベルトにおいて、厚さの異
なる複数種類の金属エレメントを準備し、これら複数種
類の金属エレメントを所定の個数比率でランダムに組み
合わせることにより運転時の騒音を低減するものが、特
許第2532253号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、かかる無段
変速機用ベルトの金属エレメントは金属板をファインブ
ランキングして製造されるが、その金属エレメントの厚
さ、特に金属エレメントの左右のプーリ当接面の厚さは
製品のロット毎に異なっている。すなわち、同一ロット
内の金属エレメントの左右のプーリ当接面の厚さの偏差
には共通の特徴があり、ロット毎に金属エレメントの左
側のプーリ当接面が右側のプーリ当接面よりも厚い場合
と、右側のプーリ当接面が左側のプーリ当接面よりも厚
い場合とがある。
【0004】金属エレメントのプーリ当接面がドライブ
プーリあるいはドリブンプーリのV面に係合していると
き、その金属エレメントがヨーイングするとプーリ当接
面の前後のエッジがプーリのV面にエッジコンタクト
し、プーリのV面に異常摩耗が発生して変速特性や耐久
性に悪影響が及ぶことになる。
【0005】金属ベルトに含まれる多数の金属エレメン
トが全て同一ロットのものから構成されている場合、多
数の金属エレメントが強い押し力で相互に密着すると、
それぞれの金属エレメントの左右のプーリ当接面の厚さ
の偏差が累積されるため、金属エレメントが大きくヨー
イングしてプーリへの巻きつき部分において前記エッジ
コンタクトが発生する可能性がある。
【0006】かかる不具合は、左右のプーリ当接面の厚
さの偏差が小さい金属エレメントだけを選択して使用す
れば解決されるが、このようにすると金属エレメントの
歩留りが低下してコストアップの要因となる問題が発生
する。
【0007】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもの
で、左右のプーリ当接面の厚さに偏差を有する金属エレ
メントを使用しても、プーリのV面との間にエッジコン
タクトが発生しないようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載された発明によれば、無端状の金属
リングを複数枚積層した金属リング集合体と、金属リン
グ集合体に積層状態で支持された多数の金属エレメント
とから構成され、ドライブプーリおよびドリブンプーリ
に巻き掛けられて両プーリ間で駆動力の伝達を行う無段
変速機用ベルトにおいて、金属エレメントの左右のプー
リ当接面の厚さを測定する工程と、所定個数の金属エレ
メントの左右のプーリ当接面の厚さの偏差の総和が所定
範囲となるように前記所定個数の金属エレメントを選択
する工程と、前記選択した金属エレメントをランダムに
組み合わせて金属リング集合体に組み付ける工程とを含
むことを特徴とする無段変速機用ベルトにおける金属エ
レメントの組み合わせ方法が提案される。
【0009】上記構成によれば、金属エレメントの左右
のプーリ当接面の厚さを測定し、所定個数の金属エレメ
ントの左右のプーリ当接面の厚さの偏差の総和が所定範
囲となるように前記所定個数の金属エレメントを選択し
て、それらの金属エレメントをランダムに組み合わせて
金属リング集合体に組み付けるので、ドライブプーリの
出口付近で強い押し力を受けた金属エレメントがヨーイ
ングしても、そのプーリ当接面がドライブプーリのV面
にエッジコンタクトするのが防止される。これにより、
ドライブプーリのV面の損傷を防止して耐久性の向上を
図りながら、左右のプーリ当接面の厚さに偏差がある金
属エレメントを使用することを可能とし、金属エレメン
トの歩留りを向上させてコストダウンを図ることができ
る。
【0010】また請求項2に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、前記所定個数は、ドライブプ
ーリ内で押し力が作用する金属エレメントの個数である
ことを特徴とする無段変速機用ベルトにおける金属エレ
メントの組み合わせ方法が提案される。
【0011】上記構成によれば、ドライブプーリ内で押
し力が作用する所定個数の金属エレメントについて、左
右のプーリ当接面の厚さの偏差の総和が所定範囲となる
ように設定するので、プーリ当接面がドライブプーリの
V面にエッジコンタクトするのが一層確実に防止され
る。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】図1〜図8は本発明の一実施例を示すもの
で、図1は無段変速機を搭載した車両の動力伝達系のス
ケルトン図、図2は金属ベルトの部分斜視図、図3はド
ライブプーリの出口付近における金属エレメントの整列
状態を示す図、図4はドライブプーリおよびドリブンプ
ーリに巻き掛けられた金属ベルトの金属エレメント間の
押し力の分布を示す図、図5は金属エレメントのプーリ
当接面の総合偏差とドライブプーリのV面の摩耗量との
関係を示すグラフ、図6はドライブプーリおよび金属エ
レメントの模式的な部分正面図、図7は図6の7−7線
断面図、図8は2つのロットの金属エレメントを組み合
わせてエッジコンタクトを回避した状態を示す図であ
る。
【0014】尚、本実施例で用いる金属エレメントの前
後方向、左右方向、半径方向の定義は図2に示されてい
る。半径方向はその金属エレメントが当接するプーリの
半径方向として定義されるもので、プーリの回転軸に近
い側が半径方向内側であり、プーリの回転軸に遠い側が
半径方向外側である。また左右方向は金属エレメントが
当接するプーリの回転軸に沿う方向として定義され、前
後方向は金属エレメントの車両の前進走行時における進
行方向に沿う方向として定義される。
【0015】図1は自動車に搭載された金属ベルト式無
段変速機Tの概略構造を示すもので、エンジンEのクラ
ンクシャフト1にダンパー2を介して接続されたインプ
ットシャフト3は発進用クラッチ4を介して金属ベルト
式無段変速機Tのドライブシャフト5に接続される。ド
ライブシャフト5に設けられたドライブプーリ6は、ド
ライブシャフト5に固着された固定側プーリ半体7と、
この固定側プーリ半体7に対して接離可能な可動側プー
リ半体8とを備えており、可動側プーリ半体8は油室9
に作用する油圧で固定側プーリ半体7に向けて付勢され
る。
【0016】ドライブシャフト5と平行に配置されたド
リブンシャフト10に設けられたドリブンプーリ11
は、ドリブンシャフト10に固着された固定側プーリ半
体12と、この固定側プーリ半体12に対して接離可能
な可動側プーリ半体13とを備えており、可動側プーリ
半体13は油室14に作用する油圧で固定側プーリ半体
12に向けて付勢される。ドライブプーリ6およびドリ
ブンプーリ11間に、左右の一対の金属リング集合体3
1,31に多数の金属エレメント32を支持してなる金
属ベルト15が巻き掛けられる(図2参照)。それぞれ
の金属リング集合体31は、12枚の金属リング33を
積層してなる。
【0017】ドリブンシャフト10には前進用ドライブ
ギヤ16および後進用ドライブギヤ17が相対回転自在
に支持されており、これら前進用ドライブギヤ16およ
び後進用ドライブギヤ17はセレクタ18により選択的
にドリブンシャフト10に結合可能である。ドリブンシ
ャフト10と平行に配置されたアウトプットシャフト1
9には、前記前進用ドライブギヤ16に噛合する前進用
ドリブンギヤ20と、前記後進用ドライブギヤ17に後
進用アイドルギヤ21を介して噛合する後進用ドリブン
ギヤ22とが固着される。
【0018】アウトプットシャフト19の回転はファイ
ナルドライブギヤ23およびファイナルドリブンギヤ2
4を介してディファレンシャル25に入力され、そこか
ら左右のアクスル26,26を介して駆動輪W,Wに伝
達される。
【0019】而して、エンジンEの駆動力はクランクシ
ャフト1、ダンパー2、インプットシャフト3、発進用
クラッチ4、ドライブシャフト5、ドライブプーリ6、
金属ベルト15およびドリブンプーリ11を介してドリ
ブンシャフト10に伝達される。前進走行レンジが選択
されているとき、ドリブンシャフト10の駆動力は前進
用ドライブギヤ16および前進用ドリブンギヤ20を介
してアウトプットシャフト19に伝達され、車両を前進
走行させる。また後進走行レンジが選択されていると
き、ドリブンシャフト10の駆動力は後進用ドライブギ
ヤ17、後進用アイドルギヤ21および後進用ドリブン
ギヤ22を介してアウトプットシャフト19に伝達さ
れ、車両を後進走行させる。
【0020】このとき、金属ベルト式無段変速機Tのド
ライブプーリ6の油室9およびドリブンプーリ11の油
室14に作用する油圧を、電子制御ユニットU1からの
指令で作動する油圧制御ユニットU2で制御することに
より、その変速比が無段階に調整される。即ち、ドライ
ブプーリ6の油室9に作用する油圧に対してドリブンプ
ーリ11の油室14に作用する油圧を相対的に増加させ
れば、ドリブンプーリ11の溝幅が減少して有効半径が
増加し、これに伴ってドライブプーリ6の溝幅が増加し
て有効半径が減少するため、金属ベルト式無段変速機T
の変速比はLOWに向かって無段階に変化する。逆にド
リブンプーリ11の油室14に作用する油圧に対してド
ライブプーリ6の油室9に作用する油圧を相対的に増加
させれば、ドライブプーリ6の溝幅が減少して有効半径
が増加し、これに伴ってドリブンプーリ11の溝幅が増
加して有効半径が減少するため、金属ベルト式無段変速
機Tの変速比はTOPに向かって無段階に変化する。
【0021】図2に示すように、金属板から打ち抜いて
成形した金属エレメント32は、概略台形状のエレメン
ト本体34と、金属リング集合体31,31が嵌合する
左右一対のリングスロット35,35間に位置するネッ
ク部36と、ネック部36を介して前記エレメント本体
34の上部に接続される概略三角形のイヤー部37とを
備える。エレメント本体34の左右方向両端部には、ド
ライブプーリ6およびドリブンプーリ11のV面38,
38(図6参照)に当接可能な一対のプーリ当接面3
9,39が形成される。また金属エレメント32の進行
方向前側および後側には、該進行方向に直交するととも
に相互に平行な前後一対の主面40,40が形成され、
また進行方向前側の主面40の下部には左右方向に延び
るロッキングエッジ41を介して傾斜面42が形成され
る。更に、前後に隣接する金属エレメント32,32を
結合すべく、イヤー部37の前後面に凸部43fおよび
凹部43rが形成される。
【0022】図3は、金属ベルト15を構成する各金属
エレメント32の左側のプーリ当接面39の厚さtaが
小さく、右側のプーリ当接面39の厚さtbが大きい場
合に、それら金属エレメント32がドライブプーリ6か
ら離れる直前の状態を示している。金属エレメント32
がドライブプーリ6から離れた弦部では、凸部43fお
よび凹部43rが相互に深く嵌合するために金属エレメ
ント32のヨーイングは発生しないが、プーリ巻き付き
部では隣接する金属エレメント32どうしがロッキング
エッジ41を支点にして相互にピッチングして凸部43
fおよび凹部43rの嵌合が浅くなるため、金属エレメ
ント32間の押し力が強いと前記左右のプーリ当接面3
9,39の厚さta,tbの偏差が累積してヨーイング
が発生し、金属エレメントのプーリ当接面39,39が
ドライブプーリ6のV面38,38にエッジコンタクト
し、該V面38,38に異常摩耗を発生させて耐久性を
低下させる原因となる。この異常摩耗は、特にベルト式
無段変速機Tの変速比がTOP状態にあるときに、ドラ
イブプーリ6の出口付近で顕著に発生するものである。
以下、その理由を図4に基づいて説明する。
【0023】図4は、高速運転状態でドライブプーリ6
の有効半径がドリブンプーリ11の有効半径よりも大き
くなった状態(変速比がTOP状態)での、金属ベルト
15の金属エレメント32間の押し力の分布を示してお
り、前記押し力Eはドライブプーリ6の出口寄りのe点
から次第に増加し、出口のb点で最大値となり、またド
リブンプーリ11の入口のc点の直後で最大値になり、
そこから次第に減少して出口のd点で0になる。このと
き、プーリのV面38,38の異常摩耗が発生し易いの
はドライブプーリ6の出口付近のe点およびb点間であ
り、ドリブンプーリ11のc点およびd点間には顕著な
異常摩耗は発生しない。
【0024】その理由は、ドライブプーリ6の出口付近
のe点およびb点間では金属エレメント32間の押し力
Eが次第に増加するので左右のプーリ当接面39,39
の厚さta,tbの偏差が累積して大きなヨーイングが
発生し易く、しかもドライブプーリ6の有効半径が大き
くなっているためにe点およびb点間に存在する金属エ
レメント32の数が多くなって偏差の累積が促進される
ためと考えられる。一方、ドリブンプーリ11側では金
属エレメント32間の押し力Eが増加するのはc点の直
後の僅かな領域であり、そこからd点に向かって押し力
Eが速やかに減少し、しかもドリブンプーリ11の有効
半径が小さくなっているので、c点の直後のの押し力E
が増加する領域に存在する金属エレメント32の数が少
ないためと考えられる。本実施例の金属ベルト15の金
属エレメント32の総数は430個であり、そのうちド
ライブプーリ6のe点およびb点間に存在する金属エレ
メント32の数は約44個である。
【0025】図5のグラフは、その横軸が430個の金
属エレメント32の左右のプーリ当接面39,39の厚
さta,tbの偏差であるta−tbの総和の絶対値、
つまり|Σ(ta−tb)|を示し、縦軸がドライブプ
ーリ6のV面38,38の摩耗量を示している。ここ
で、上記|Σ(ta−tb)|を総合偏差と定義する。
尚、このときの無段変速機Tの運転状態は、入力回転数
が6000rpm、入力トルクが165N・m、変速比
が0.61、運転時間が100時間であり、これは車両
の3万kmの走行距離に相当するものである。
【0026】同グラフから明らかなように、ドライブプ
ーリ6の摩耗量はドリブンプーリ11の摩耗量を上回っ
ており、かつ430個の金属エレメント32の総合偏差
が上限値である0.48mmを越えると摩耗量が急増し
ている。総合偏差が上限値0.48mmの状態とは、ド
ライブプーリ6のe点およびb点間で金属エレメント3
2のプーリ当接面39,39がV面38,38にエッジ
コンタクトを開始する臨界状態に対応する。即ち、総合
偏差を上限値0.48mm以下に保持すれば、ドライブ
プーリ6のV面38,38の摩耗量を15μm以下に抑
えて必要な耐久性を確保することができることになる。
ドライブプーリ6のV面38,38の粗れを防止するに
は、V面38,38の摩耗量を15μm以下に抑えるこ
とが望ましい。
【0027】次に、図6および図7に基づいて、金属エ
レメント32のプーリ当接面39,39がV面38,3
8にエッジコンタクトする条件を考察する。尚、図7に
おいて金属エレメント32の板厚tは誇張して表現して
ある。
【0028】本実施例の金属エレメント32は、板厚t
が1.5mm、プーリ当接面39,39の半径方向中央
における左右幅Lが23mmであり、ドライブプーリ6
は、V面38,38の角度θが0.192rad、プー
リ当接面39,39の中央に対応する巻き付き半径rが
65.2mmである。
【0029】図7から、金属エレメント32のプーリ当
接面39,39が当接するドライブプーリ6のV面半径
Rは、 R=r/ sinθ=341.8(mm) で与えられる。またφは、 φ={円弧長ab/2π×R}×2π で与えられるが、V面半径Rは他と比べて遙に大きいた
め、円弧長abはt/2で置き換えることができ、前記
φは、 φ={(t/2)/2π×R}×2π =t/2R =0.002194(rad) で与えられる。従って、エッジコンタクトが発生するク
リアランスSは、 S=L× sinφ=0.05(mm) で与えられることが分かる。
【0030】ここで、430個の金属エレメント32の
総合偏差|Σ(ta−tb)|が上限値0.48mmで
あるとき、金属エレメント32の1個当たりの左右のプ
ーリ当接面39,39の厚さta,tbの偏差であるt
a−tbは、 0.48÷430=0.0011162(mm) となる。従って、ドライブプーリ6のe点およびb点間
に存在する44個の金属エレメント32の偏差ta−t
bの累積値は、 0.0011162×44=0.04915(mm) であって0.05mm未満となり、エッジコンタクトの
発生を回避することができる。
【0031】
【表1】
【0032】表1にはロット番号〜の金属エレメン
ト32の偏差ta−tbの平均値と、その標準偏差とが
示される。これらの値は、各ロットから所定個数の金属
エレメント32を抜き取って左右のプーリ当接面39,
39の厚さta,tbを実際に測定することにより得る
ことができる。
【0033】〜のロット中の偏差ta−tbの平均
値が負値のロット(つまり、〜のロット)から第1
ロットを選択し、前記平均値が正値のロット(つまり、
〜のロット)から第2ロットを選択し、図8に示す
ように、第1ロットのNa個の金属エレメント32と、
第2ロットのNb個の金属エレメント32とを組み合わ
せることにより、Na+Nb個=430個のエレメント
32の総合偏差を上限値である0.48mm以下に抑え
ることができる。即ち、第1ロットの金属エレメント3
2の偏差ta−tbの平均値をΔt1とし、第2ロット
の金属エレメント32の偏差ta−tbの平均値をΔt
2としたとき、 |Δt1×Na+Δt2×Nb|≦0.48(mm) が成立するように第1ロットのNa個と第2ロットのN
b個とを決定する。
【0034】例えば、第1ロットとして偏差ta−tb
の平均値が3.1μmののロットを選択し、第2ロッ
トとして偏差ta−tbの平均値が−4.5μmのの
ロットを選択した場合、Na=260個、Nb=170
個とすれば、総合偏差を0.041mm(≦0.48m
m)に抑えることができ、またNa=250個、Nb=
180個とすれば、総合偏差を0.035mm(≦0.
48mm)に抑えることができる。
【0035】また、のロットやのロットのように偏
差ta−tbの平均値の絶対値が1.1μmの場合に
は、単一のロットから430個の金属エレメント32を
選択しても、総合偏差を0.48mm以下に抑えること
ができるため、2つのロットの金属エレメント32を組
み合わせる必要はない。
【0036】ところで、第1ロットのNa個の金属エレ
メント32と第2ロットのNb個の金属エレメント32
とを組み合わせる場合、それら合計430個の金属エレ
メント32をランダムに組み合わせれば、ドライブプー
リ6のe点およびb点間に存在する44個の金属エレメ
ント32の偏差ta−tがの累積してもエッジコンタク
トの発生を回避することができる。しかしながら、連続
して配置された44個の金属エレメント32に含まれる
第1ロットの金属エレメント32の個数と第2ロットの
金属エレメント32の個数との比率が一方に偏在してい
ると、その部分でエッジコンタクトが発生する可能性が
ある。
【0037】このような不具合を解消してエッジコンタ
クトを一層確実に防止するには、44個の金属エレメン
ト32を1グループとし、その44個の金属エレメント
32に含まれる第1ロットの金属エレメント32の個数
と第2ロットの金属エレメント32の個数との比率が、
前記NaおよびNbの比率と等しくなるように設定す
る。そして、合計44個の金属エレメント32から成る
前記グループを更に複数グループ直列に接続して合計4
30個の金属エレメント32を構成することにより、第
1ロットの金属エレメント32と第2ロットの金属エレ
メント32の配列のランダム性を高めてエッジコンタク
トを一層確実に防止することができる。
【0038】以上のように、左右のプーリ当接面39,
39の厚さが異なる2つのロットの金属エレメント32
を所定の比率で選択してランダムに組み合わせることに
より、ドライブプーリ6の出口付近で強い押し力を受け
た金属エレメント32がヨーイングしても、その金属エ
レメント32のプーリ当接面39,39がドライブプー
リ6のV面38,38にエッジコンタクトするのを防止
することができる。その結果、エッジコンタクトによる
ドライブプーリ6のV面38,38の損傷が防止される
だけでなく、左右のプーリ当接面39,39の厚さに偏
差があるロットの金属エレメント32を無駄なく使用す
ることが可能となり、金属エレメント32の歩留りの向
上によるコストダウンが可能になる。
【0039】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
【0040】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明
によれば、金属エレメントの左右のプーリ当接面の厚さ
を測定し、所定個数の金属エレメントの左右のプーリ当
接面の厚さの偏差の総和が所定範囲となるように前記所
定個数の金属エレメントを選択して、それらの金属エレ
メントをランダムに組み合わせて金属リング集合体に組
み付けるので、ドライブプーリの出口付近で強い押し力
を受けた金属エレメントがヨーイングしても、そのプー
リ当接面がドライブプーリのV面にエッジコンタクトす
るのが防止される。これにより、ドライブプーリのV面
の損傷を防止して耐久性の向上を図りながら、左右のプ
ーリ当接面の厚さに偏差がある金属エレメントを使用す
ることを可能とし、金属エレメントの歩留りを向上させ
てコストダウンを図ることができる。
【0041】また請求項2に記載された発明によれば、
ドライブプーリ内で押し力が作用する所定個数の金属エ
レメントについて、左右のプーリ当接面の厚さの偏差の
総和が所定範囲となるように設定するので、プーリ当接
面がドライブプーリのV面にエッジコンタクトするのが
一層確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機を搭載した車両の動力伝達系のスケ
ルトン図
【図2】金属ベルトの部分斜視図
【図3】ドライブプーリの出口付近における金属エレメ
ントの整列状態を示す図
【図4】ドライブプーリおよびドリブンプーリに巻き掛
けられた金属ベルトの金属エレメント間の押し力の分布
を示す図
【図5】金属エレメントのプーリ当接面の総合偏差とド
ライブプーリのV面の摩耗量との関係を示すグラフ
【図6】ドライブプーリおよび金属エレメントの模式的
な部分正面図
【図7】図6の7−7線断面図
【図8】2つのロットの金属エレメントを組み合わせて
エッジコンタクトを回避した状態を示す図
【符号の説明】
6 ドライブプーリ 11 ドリブンプーリ 31 金属リング集合体 32 金属エレメント 33 金属リング 39 プーリ当接面 ta 左側のプーリ当接面の厚さ tb 右側のプーリ当接面の厚さ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無端状の金属リング(33)を複数枚積
    層した金属リング集合体(31)と、金属リング集合体
    (31)に積層状態で支持された多数の金属エレメント
    (32)とから構成され、ドライブプーリ(6)および
    ドリブンプーリ(11)に巻き掛けられて両プーリ
    (6,11)間で駆動力の伝達を行う無段変速機用ベル
    トにおいて、 金属エレメント(32)の左右のプーリ当接面(39)
    の厚さ(ta,tb)を測定する工程と、 所定個数の金属エレメント(32)の左右のプーリ当接
    面(39)の厚さ(ta,tb)の偏差の総和が所定範
    囲となるように前記所定個数の金属エレメント(32)
    を選択する工程と、 前記選択した金属エレメント(32)をランダムに組み
    合わせて金属リング集合体(31)に組み付ける工程
    と、を含むことを特徴とする無段変速機用ベルトにおけ
    る金属エレメントの組み合わせ方法。
  2. 【請求項2】 前記所定個数は、ドライブプーリ(6)
    内で押し力が作用する金属エレメント(32)の個数で
    あることを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機用
    ベルトにおける金属エレメントの組み合わせ方法。
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