JP2001279303A - Ti−Al金属間化合物部材の製造方法 - Google Patents

Ti−Al金属間化合物部材の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ti−Al金属間化合物から複雑形状部材を鍛
造する。 【解決手段】 下鍛造プレート8及び上鍛造プレート9
の温度は焼結後のブランク材の温度と等しくなるようコ
ントロールされている。具体的には900〜1100℃の範囲
となっている。この範囲はTi−Al金属間化合物の超塑
性領域、即ち、異常に大きな延びを示す現象が起こる領
域であり、この温度領域内で恒温鍛造、即ち、金型温度
を加工する材料の超塑性温度と同一の温度にして行う鍛
造で複雑な形状の部材を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はTi−Al金属間化合
物からなる部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Ti−Al金属間化合物は高温(800℃
付近)での強度及び耐食性に優れ、比較的軽量であるた
め、航空機、ロケットまたは自動車のエンジン部品等の
材料として、インコネルに代表されるNi系耐熱合金に
代るものとして注目されている。
【0003】Ti−Al金属間化合物の製造方法として
は、特開平5−271823号公報、特開平5−117
716号公報及び特開平11−172351号公報等が
提案されている。
【0004】特開平5−271823号公報に開示され
る内容は、Ti粉末とAl粉末とを混合して加圧すること
で成形体を形成し、この成形体をTiまたはTi合金製の
容器(カプセル)に封入し、容器ごと熱間静水圧処理
(HIP)するようにしたもので、容器にTiまたはTi
合金を用いることで、これらを酸素及び窒素のゲッター
として作用せしめ、品質安定化を図っている。
【0005】特開平5−117716号公報には、メカ
ニカルアロイング法やメカニカルグライディング法によ
って2種以上の金属微粉末混合体を製造し、この金属微
粉末混合体をプラズマ焼結法により焼結することが開示
され、特に金属粉末として、Ti及びAlが挙げられてい
る。
【0006】また、特開平11−172351号公報に
は、TiとAlとをモル比で1:1に配合し、これをボー
ルミルを用いて混合粉末とし、この混合粉末を上下の電
極(パンチ)間で圧縮しながらパルス通電して焼結せし
める方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した何れの方法も
Ti粉末及びAl粉末からTi−Al金属間化合物を製作す
るまでの提案であり、いずれもTi−Al金属間化合物の
形状は丸棒状であり、この丸棒素材から複雑形状の部材
をどのように製造するかについては解決されていない。
【0008】特に、Ti−Al金属間化合物は高温での強
度及び耐食性に優れる反面、常温では極めて脆く、塑性
加工や機械加工での形状付与が困難であるため、実用化
の障害になっている。そこで、溶解鋳造法も考えられて
いるが、この鋳造法には真空プラズマスカル溶解装置な
どの極めて高価な装置が必要で、鋳型は潮解性のあるカ
ルシア(CaO)を用いるため、取り扱いが面倒で、更
に鋳造欠陥を生じやすいため、鋳造後にHIP処理が必
要となり、このHIP処理中に変形する不利もある。し
たがって、溶解鋳造法も実際には使用することができな
い。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく本
発明に係るTi−Al金属間化合物部材の製造方法は、T
i粉末とAl粉末またはAl合金粉末を混合し、この混合
粉末を型内に充填した後、パンチ間で圧粉しつつ混合粉
末に通電し、その際に発生する熱により焼結せしめてT
i−Al金属間化合物を作製し、次いで焼結の際の熱を利
用し連続してTi−Al金属間化合物に恒温鍛造を施すよ
うにした。
【0010】常温ではTi−Al金属間化合物は極めて脆
く、形状の付与が困難であるが、通電焼結の際に発生す
る熱をそのまま利用し、成形型の温度をTi−Al金属間
化合物の温度と略等しくした恒温鍛造(900℃〜11
00℃)にてTi−Al金属間化合物を成形することで、
Ti−Al金属間化合物は超塑性を示し、タービンブレー
ドなどの複雑形状部材を簡単に製造することができる。
尚、一旦冷えてからTi−Al金属間化合物を再加熱して
鍛造すると、結晶粒が粗大化し強度低下を招き、成形時
に割れも生じやすくなる。
【0011】Ti粉末はatm%で51〜52%とし、残部
をAlまたはAl合金とするのが好ましい。これはTiを
50%以下にすると、TiAl相の他に、脆く部材を脆化
させやすいAl比率の高いTiAl2相やTiAl3相が生成
されるため、Tiを51〜52%とする。この組成にす
ることでTi3Al相が微量ながら含まれるが、延性を阻
害することはない。
【0012】また、前記Ti−Al金属間化合物は、0.5a
tm%〜0.8atm%のMnを含有せしめることが可能であ
る。このMnをAl合金の形態で供給する場合には、Mn
を1.0atm%〜1.6atm%含有する形で供給すればよい。M
nを含有せしめることで、Ti−Al金属間化合物の延性
を向上せしめることができる。ただし、0.5atm%未満で
は添加の効果が少なく、また0.8atm%を超えるとTiAl
相中にMnが固溶しきれず、Mnが単体で析出してしま
う。したがって上記範囲が好ましい。
【0013】また、通電焼結する前に、混合粉末をメカ
ニカルアロイング法により合金化しておくことも可能で
ある。このように合金化しておくと、通電焼結によって
5μm以下の結晶粒が現れ、組織が緻密化して強度が更
に向上する。
【0014】本発明に係る製造方法が適用される部材と
しては、タービンブレード等が考えられるが、これ以外
の薄肉耐熱用部材に本発明は広く適用される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付
図面に基づいて説明する。ここで、図1は加圧パターン
を示すグラフ、図2〜図8は焼結から成形までの工程を
説明した図である。
【0016】原材料粉末として、平均粒径15〜40μ
mのTi粉末(純度99.99%以上)と平均粒径15
〜40μmのAl粉末(純度99.99%以上)を用意
し、Ti:Al=51:49(atm%)となるようにArガ
ス中で混合する。Arガス中で行うのは、Ti粉末および
Al粉末とも非常に反応性に富むためである。
【0017】混合後にメカニカルアロイング法によって
合金化せしめた。尚、合金化せずに次工程に進んでもよ
いが、合金化することにより、組織の緻密化が図れるの
で、実施例ではアトライタを用いて合金化した。
【0018】合金化の際には一旦真空雰囲気とした後
に、再度5〜20%の窒素ガスを含むArガスを導入す
る。窒素ガスを添加することで、焼結後のTiAlの収率
を向上せしめることができる。
【0019】Ti粉末とAl粉末との混合時間は50時間
行った。混合時間を30時間未満とした場合には、合金
化が十分に図れず、一方100時間を超えて混合すれば
アモルファス化した合金が得られるが、アモルファス化
する必要はないので、混合時間は30〜100時間とす
る。
【0020】次いで上記の合金化した混合粉末を図2に
示す焼結装置を用いて焼結せしめる。焼結装置は2分割
された半円環状のグラファイトダイス1,1をシリンダ
ユニット2,2で進退可能とし、前進位置にあるグラフ
ァイトダイス1,1で形成される空間に下方から下パン
チ3を臨ませ、グラファイトダイス1,1内面と下パン
チ3上面との間で形成される凹部に前記混合粉末を充填
した。
【0021】この後、図3に示すように、上パンチ4と
下パンチ3により混合粉末を圧粉する。加圧パターンは
図1に示した通りである。また、上パンチ4と下パンチ
3とも電極としての機能を有しており、これら上パンチ
4と下パンチ3を介して混合粉末を圧粉しつつ通電する
ことで混合粉末からなる成形体を焼結する。焼結の条件
は50℃/minで950℃まで昇温し、5分間保持すると同時
に、上下のパンチにより49MPa(0.5ton/cm2)で加圧し
焼結した。以上の操作により図3、図4に示すような円
柱状のブランク材が得られる。
【0022】焼結条件のうち、昇温速度としては20〜80
℃/minが好ましい。20℃/min未満で行うと、粒径が粗大
化し、逆に80℃/minを超えると、昇温速度に反応が追従
せず、未反応の部分が残留してしまうためである。
【0023】焼結条件のうち、保持温度は900〜1100℃
が好ましい。900℃未満では焼結を促進する液層が生成
されず、焼結時間が非常に長くなってしまい、逆に1100
℃を超えた温度では、再溶融してしまう。
【0024】焼結条件のうち、加圧は29〜68.6MPa(0.3
〜0.7ton/cm2)で行うことが好ましい。29MPa未満では
成形後に密度の向上が十分に図れず、68.6MPaを超える
とダイスに働く応力が増大してダイスの寿命が低下す
る。
【0025】上記の範囲で焼結を行うことで、図6
(a)及び(b)に示すような、20μm程度の粒径と
50μm程度の粒径が混ざり合った結晶組織が得られ
る。20μm程度の結晶粒は後述する恒温鍛造による超
塑性加工に有効であり、50μm程度の結晶粒は靱性を
向上する効果がある。
【0026】以上の如くして、合金化した混合粉末を焼
結することでTi−Al金属間化合物からなるブランク材
を得たならば、図5に示すようにグラファイトダイス
1,1が後退するとともに下パンチ3内に軸方向に挿入
されていたノックアウトピン5によってブランク材を下
パンチ3から持ち上げる。
【0027】次いで、図7に示すように別のダイス6,
6がダイス1,1とは90°異なる方向から前進し、ブ
ランク材を円環状に囲むとともに下パンチ3の外側面に
沿って下サブパンチ7が下パンチ3の上面と面一になる
まで上昇する。そして、この下サブパンチ7とブランク
材との間に下鍛造プレート8を挿入する。この下鍛造プ
レート8の上面は複雑形状をなす成形面になっている。
また、下鍛造プレート8の挿入方法はブランク材を持ち
上げた状態で下パンチ3と下サブパンチ7の上に下鍛造
プレート8をセットするか、ブランク材をそのままにし
て側方から下鍛造プレート8を滑り込ませる方法のいず
れでもよい。
【0028】次いでブランク材の上に下面が複雑形状を
なす成形面となった上鍛造プレート9をセットし、一
方、上パンチ4の外側面に沿って下降する上サブパンチ
10を設け、これら上パンチ4及び上サブパンチ10の
下面を上鍛造プレート9の上面に当接せしめ、上パンチ
4及び上サブパンチ10を図8に示すように下降せしめ
る。
【0029】ここで、前記下鍛造プレート8及び上鍛造
プレート9の温度は焼結後のブランク材の温度と等しく
なるようコントロールされている。具体的には900〜110
0℃の範囲となっている。この範囲はTi−Al金属間化
合物の超塑性領域、即ち、異常に大きな延びを示す現象
が起こる領域であり、この温度領域内で恒温鍛造(金型
温度を加工する材料の超塑性温度と同一の温度にして行
う鍛造)することにより、図9に示すタービンブレード
のような複雑な形状の部材を得ることができる。
【0030】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
微細で緻密な組織を持ち高温での強度及び耐食性に優れ
るTi−Al金属間化合物に、複雑形状を付与できるの
で、高効率、低騒音、高出力という相反する特性が同時
に要求される航空機のジェットエンジンや発電用ガスタ
ービンエンジンのブレード等の製造方法として極めて有
用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧パターンを示すグラフ
【図2】焼結型に混合粉末を充填した状態を示す図
【図3】図2に示す状態から混合粉末を圧縮した状態を
示す図
【図4】図3の状態の平断面図
【図5】焼結型のダイスが後退した状態を示す図
【図6】(a)はTi−Al金属間化合物の金属組織の模
式図、(b)は(a)の一部の拡大図
【図7】焼結が終了したTi−Al金属間化合物を鍛造装
置にセットした状態を示す図
【図8】Ti−Al金属間化合物の成形が完了した状態を
示す図
【図9】Ti−Al金属間化合物部材の一例としてのター
ビンブレードを示す図
【符号の説明】
1…グラファイトダイス、2…シリンダユニット、3…
下パンチ、4…上パンチ、5…ノックアウトピン、6…
ダイス、7…下サブパンチ、8…下鍛造プレート、9…
上鍛造プレート、10…上サブパンチ。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ti粉末とAl粉末またはAl合金粉末を
    混合し、この混合粉末を型内に充填した後、パンチ間で
    圧粉しつつ混合粉末に通電し、その際に発生する熱によ
    り焼結せしめてTi−Al金属間化合物を作製し、次いで
    焼結の際の熱を利用し連続してTi−Al金属間化合物に
    恒温鍛造を施すことを特徴とするTi−Al金属間化合物
    部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のTi−Al金属間化合物
    部材の製造方法において、前記Ti−Al金属間化合物
    は、0.5atm%〜0.8atm%のMnを含有することを特徴と
    するTi−Al金属間化合物部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のTi−Al金属間化合物
    部材の製造方法において、前記混合粉末をメカニカルア
    ロイング法により合金化し、この合金をパンチ間で圧粉
    しつつ通電してTi−Al金属間化合物を作製することを
    特徴とするTi−Al金属間化合物部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の
    Ti−Al金属間化合物部材の製造方法において、前記T
    i−Al金属間化合物部材は薄肉耐熱用部材であることを
    特徴とするTi−Al金属間化合物部材の製造方法。
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