JP2001276981A - 耐硫化割れ性に優れた接合体およびその製造方法 - Google Patents
耐硫化割れ性に優れた接合体およびその製造方法Info
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Abstract
方法を提供する。 【解決手段】 Ni含有量が1質量%以下である低合金
鋼または炭素鋼からなる鉄基部材間にNi基インサート
材3が介装され、インサート材が加熱・溶融されること
によって製造される接合体であって、接合体における鉄
基部材部分はロックウェル硬さHRC22以下であり、
かつ接合体中のNiを5.0質量%以上含有する接合層
におけるCr含有量が2.0〜10.0質量%である体
硫化割れ性に優れた接合体である。そしてインサート材
の加熱・溶融温度がインサート材の液相線温度以上、1
300℃以下で接合する接合体である。
Description
囲気で使用される配管や機械部品等、硫化水素に対する
耐応力腐食割れ性が求められる部位に使用される接合体
およびその製造方法に係わり、より詳細には硫化水素に
対する耐応力腐食割れ性に優れた接合体、および優れた
耐応力腐食割れ性を維持することを可能ならしめるよう
にした接合体の製造方法の技術分野に属するものであ
る。
て用いられる構造物や機器は硫化水素(H2 S)を含
む雰囲気にさらされる。この様な環境下で使用される部
材は、例え部材の破壊強度以下で使用していたとして
も、環境と負荷応力との相互作用により破壊に至る場合
があり、本雰囲気にて使用される部材には硫化水素雰囲
気に対する耐応力腐食割れ性(耐硫化水素割れ性)が要
求される。本環境下で使用される部材やその部材の溶接
・接合に対してはNACE(National Associationof C
orrosion Engineers) MR−0175−94等にて規
格化されており,ろう付としては銀ろう付が推奨されて
いる。
に推奨されている銀ろう付で部材を接合した場合、接合
体の強度特性は接合層の銀の影響を強く受ける。すなわ
ち、銀自体の強度があまり高くないため、鋼母材と比較
して接合体の強度は低いものとなる。そのため化学工
業、石油精製用の配管や機械部品等に用いる際、接合体
の設計限界は強度が低い接合部の強度によって支配さ
れ、鋼母材の強度を十分に活かして使用することができ
なかった。
よくないことが知られている。ぬれ性がよくない場合、
接合部に欠陥を生じやすく、接合体の強度低下や気密性
の欠如という問題を生じる場合があった。
報において提案されている接合方法では、低融点材料と
して、Crを5質量%以上含有する融点1150℃以下
のNi基合金を用い、所定の接合面圧、加熱範囲におい
て低融点接合材料の融点以上、被接合材であるステンレ
ス鋼の融点以下に120秒以上加熱することによって母
材と同等以上の耐食性、かつ強度および曲げ性に優れた
接合部を得ることが示されている。
62685号公報によると、接合する母材はCrを9質
量%以上含有するステンレス鋼に限定される。本文中の
記載にもあるように、十分な耐食性を確保するために母
材中のCrは9質量%以上が必要とされる。確かに、9
質量%以上のCrを含有するステンレス鋼を用いること
によって優れた耐食性を得ることは可能であるが、問題
として9質量%以上のCrを含有するステンレス鋼は価
格が高く、そのために機器全体が高価になるという問題
があった。
94において、硫化水素雰囲気での使用が認められてい
る低合金鋼や炭素鋼には価格が安いというメリットがあ
る。したがって、腐食環境が穏やかな部分には安価な炭
素鋼や低合金鋼を用い、機器全体としてコストを下げた
いという要求がある。
炭素鋼を接合した場合、接合部が必ずしも十分な耐硫化
割れ性および接合強度を持っておらず、使用中に接合部
で破断する場合があるという問題点があった。
なされたもので、接合部にNi基インサート材を介装さ
せ、インサート材の成分を被接合部材に拡散させること
によって、耐硫化割れ性に優れた接合体およびその製造
方法を提供することを目的とする。
解決するために、従来例に係わる拡散接合、すなわち、
被接合部材同士の間にインサート材を挟み、インサート
材の溶融温度以上、被接合部材の溶融温度以下に加熱し
インサート材のみを溶融させてインサート材成分を、被
接合部材中に拡散させ、被接合部材同士を接合する液相
拡散接合において、接合部のCr濃度に着目して鋭意研
究を重ね本発明をなしたものである。
ある低合金鋼または炭素鋼からなる鉄基部材間にNi基
インサート材が介装され、前記インサート材が加熱・溶
融されることによって製造される接合体であって、前記
接合体における前記鉄基部材部分はロックウェル硬さH
RC22以下であり、且つ接合体中のNiを5.0質量
%以上含有する接合層におけるCr含有量が2.0〜1
0.0質量%であることを特徴とする耐硫化割れ性に優
れた接合体である。
クロム化合物層の厚さを5μm以下とすることによって
優れた強度特性が得られる。
化学工業向けの機器、例えば使用中に内圧が作用する配
管の接合に好適に使用することができる。
含有量が1質量%以下である低合金鋼または炭素鋼から
なる鉄基部材間にNi基インサート材を介装し、前記イ
ンサート材を加熱・溶融することによって鉄基部材間を
接合し、その後、熱処理によって前記接合体における前
記鉄基部材部分のロックウェル硬さがHRC22以下と
なるように硬さ調整を行なう接合体の製造方法であっ
て、前記鉄基部材中のCr濃度をX質量%、前記Ni基
インサート材中のCr濃度をY質量%としたとき、X、
Y、が下記(1)式を満足するとともに、前記加熱・溶
融温度をインサート材の液相線温度以上、1300℃以
下にすることを特徴とする。 15≦X+Y≦25(0≦X≦8、8≦Y≦20)……………………(1)
より100℃以上、1300℃以下とすることにより、
優れた強度特性の接合体を得ることができる。
た接合体を得る方法について種々の検討を行なった。特
に接合後における接合層の組成に着目し、接合層の組成
と耐硫化割れ性との関係について鋭意研究を行なった。
その結果、Ni含有量が1質量%以下である低合金鋼ま
たは炭素鋼を接合するに際して、強度および耐硫化割れ
性に優れた接合体を得るためには接合層内のCr濃度が
重要であるという知見を得て、本発明に至ったものであ
る。そして接合層内のCr濃度と接合体の耐硫化割れ性
について各種の試験を行なった結果、母材に関わらず接
合層内のCr濃度が2.0質量%以上、10.0質量%
以下の場合に、接合体は優れた耐硫化割れ性を有するこ
とを見出した。なお、接合層内のCr濃度、Ni濃度な
どは、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等
により測定したものである。
接合層の耐食性が低く、硫化水素を含む雰囲気において
接合体を使用すると接合層内にき裂を生じ破断する。C
r濃度が10.0質量%以上の場合には、接合層でCr
の化合物を生成し易いために接合層のCr化合物層が厚
く、このCr化合物層近傍でCrが欠乏するため、接合
層の耐硫化割れ性が低下する。なお、接合層内にCrの
化合物を生成している場合には局所的にCr濃度が上昇
し、局所的に10.0質量%以上の濃度を示す場合があ
る。本発明のCr濃度はこのような化合物を除外し、接
合層のマトリックスの組成で定めるものとする。
は、Ni濃度が5.0質量%以上である層として定義さ
れるが、本接合層の厚さは2.0mm以下であることが
望ましい。接合層の厚さが2.0mmを超える場合、接
合層の強度が接合体全体の強度を支配し、接合層が低強
度であるために接合体の強度が低くなる。
安定した強度を得るために母材間のインサート材を溶融
させることによって接合するのが好ましい。その際,接
合層のCr濃度が決まる過程について鋭意検討を行なっ
た。インサート材を加熱・溶融したとき、若干量ではあ
るが母材側の鋼の溶融を生じる。したがって、溶融した
母材によって希釈を受ける分、インサート材の濃度は接
合前とは異なった成分となる。前述した接合層内のCr
濃度が2.0質量%以上、10.0質量%以下の接合層
を有する接合体を得るためには、Ni含有量が1質量%
以下である低合金鋼または炭素鋼のCr濃度をX質量
%、インサート材のCr濃度をY質量%としたとき、下
記(1)式を満足するようにインサート材を選択し、前
記インサート材を低合金鋼、炭素鋼間に介装し、インサ
ート材の液相線温度以上、1300℃以下で加熱溶融す
ることによって前記低合金鋼、もしくは炭素鋼間を接合
するのが有効である。なお、インサート材の形態として
はアモルファス合金等の箔のみでなく、めっき膜や溶射
皮膜などでもよい。 15≦X+Y≦25(0≦X≦8、8≦Y≦20)……………………(1)
以下の場合、もしくは低合金鋼、炭素鋼のCr濃度とイ
ンサート材のCr濃度との合計(X+Y)が15質量%
未満の場合には、接合層のCr濃度が2.0質量%以下
となるため、硫化水素を含有する雰囲気では接合層内に
硫化割れが生じる。逆にインサート材のCr濃度(Y)
が20質量%を超える場合、もしくは低合金鋼、炭素鋼
のCr濃度とインサート材のCr濃度との合計(X+
Y)が25質量%を超える場合には、母材の希釈を受け
ても接合層内のCr濃度が高く、接合層内に生成するC
r化合物量が多くなる。このCr化合物近傍ではCr濃
度が急激に低下するため、接合体の耐硫化割れ性が低下
する。
が5μm以下の場合、破壊の起点が接合層にないため、
接合体に負荷が作用した場合でも母材で破断し、強度、
延性を兼ね備えた接合体となる。接合層内におけるCr
化合物層の厚さは、図1に示すように、200〜500
倍の光学顕微鏡で観察した任意の接合部断面において見
られる円換算粒径で0.5μm以上のCr化合物のう
ち、最も離れた2化合物間の距離をもってCr化合物層
の厚さと定義する。なお、上記光学顕微鏡で観察される
0.5μm以上の化合物がCr化合物であるか否かは、
この化合物をEPMAにより調べた結果、Crが含まれ
ていることを確認できればCr化合物と判断する。
(ボロン)が含まれる場合が多いが、Bは接合層内にて
Crとの化合物を生成する。その結果、接合層内、特に
Cr化合物近傍において急激なCr濃度の低下を招き、
接合層の耐硫化割れ性が低下する。そのため、インサ−
ト材に含まれるB濃度は3.0質量%以下であることが
望ましい。B濃度が3.0質量%を超える場合には、C
rとの化合物量が増加するため,接合層の耐硫化割れ性
が低下し、使用中に接合層内にて破断する。B濃度の下
限であるが、インサート材中のBはインサート材の融点
を下げる目的があるため、B量が少ないインサート材は
高融点となり、接合時に母材強度が劣化する。通常、母
材の劣化を避けるために低融点のインサート材を用い、
極力、低温加熱して接合するので、インサート材のB濃
度は好ましくは1.0質量%以上が望ましい。ただし、
母材強度は接合後の後熱処理によって回復可能であるた
め、接合後の後熱処理によって母材強度の回復を図る場
合には、インサート材中のB濃度の下限は特に制限を受
けない。使用可能なインサート材を表1に非限定的に例
示する。
度であるが、インサート材の液相線温度以上、1300
℃以下で最も優れた接合体の強度が得られる。加熱温度
がインサート材の液相線温度以下の場合、インサート材
のうち局所的に溶融しない部分があり、その部分が低強
度となるため、接合体の強度が低くなる。加熱温度が1
300℃を超える場合、インサート材が溶融している際
の母材溶解量が多く、インサート材中のCr濃度が低下
するため、接合層の耐硫化割れ性が劣化する。
100℃高温で、かつ1300℃以下の場合、接合層内
におけるCr化合物層の厚さが5μm以下となり、母材
にて破断する、強度、延性に優れた接合体が得られる。
水素を含有する雰囲気にて使用される合金として、NA
CE規格STD.MR−0175−94に記載されてい
る通り、Ni含有量が1.0質量%以下であり、かつロ
ックウェル硬さ(HRC)が22以下であればよい。使
用可能な鉄基合金を非限定的に例示すると、具体的には
C:0.38〜0.45質量%、Mn:0.70〜1.
00質量%、P:0.025質量%以下、S:0.02
4質量%以下、Si:0.15〜0.30質量%、C
r:0.75〜1.10質量%、Mo:0.15〜0.
25質量%、Fe:残部、等が挙げられる。これら低合
金鋼、炭素鋼以外を用いた場合、母材自体の耐硫化割れ
性が低いため,使用中、母材自体の破断を生じ使用でき
ない。
規格STD.MR−0175−94に記載の硬さである
ロックウェル硬さ(HRC)22以下にて使用する必要
がある。しかし、前記接合温度に加熱して接合した場
合、接合前には鉄基合金母材を所定の硬さに調質してあ
ったとしても、接合後には所定の硬さを外れてしまう場
合がある。その原因は鉄基合金の種類により異なるが、
一つの例としては接合後の冷却で鉄基合金母材が焼入れ
されたことに起因する。その場合、適正な温度にて焼戻
しを行なうか、もしくは鉄基合金母材の靭性も回復させ
るのであれば、再度、焼入れ、焼戻しを行なう必要があ
る。その温度条件は鉄基合金母材それぞれで異なるが、
例えばクロムモリブデン鋼SCM5の場合には900℃
以上で焼き入れ、その後、700℃以上で焼戻しを行な
うのが望ましい。
雰囲気であり、かつ硫化割れを生じる環境下でも好適に
使用することができるが、その雰囲気としては、液体と
しての水が存在し、かつ全圧が0.4MPa以上で、か
つ硫化水素の分圧が0.0003MPa以上の雰囲気と
して定義される。特に微量の塩素イオンを含む環境下で
は硫化割れが促進されるが、本発明の接合体はこのよう
な環境下においても使用に耐え得るものである。
実施例1は、表2に示す組成の鉄基合金製ブロックを、
表3に示す各種組成のインサート材を介装させて、加熱
・溶融してブロック同士を接合した例である。ブロック
同士の接合は、図2に示すように、鉄基合金製ブロック
1とブロック2との間に厚さ65μmのアモルファス箔
インサート材3を介装して加熱・溶融して行なった。接
合時の面圧はブロックの自重のみで0.003MPaと
なった。接合した後、表4に示す条件で後熱処理を行な
った接合体から引張試験片、応力腐食割れ試験片を切り
出し、それぞれについて試験を行ない接合体の強度評価
を行なった。
2mmであり、平行部の中央において負荷方向に対して
接合面が直角になるように加工した。また、応力割れ試
験片の寸法は、長さ65mm、幅15mm、厚さ1.5
mmであり、長さ65mmの中央に接合面がくるように
加工した。そして図3に示すように、試験片を試験治具
にセットして応力を負荷し、硫化水素を含む雰囲気中で
の応力腐食割れ試験(硫化割れ試験)に供した。試験雰
囲気としては、図3に示す負荷状態の試験片を12pp
mの塩素イオンを含む水中に浸し、その溶液を分圧0.
032MPaのH2Sで飽和させたものである。なお、
図3の負荷状態において、引張側面に作用する負荷応力
は表4に示すように、母材耐力(523N/mm2)の
60%となるように調整した。試験時間は720時間と
し、720時間保持後にクラックの有無を調査した。ま
た、前記ブロックについて、母材のロックウェル硬さ
(Cスケール)を測定した。実施例1の接合条件、後熱
処理条件、母材硬さおよび試験結果を表4に示す。
2.0質量%以上、10.0質量%以下の場合には硫化
水素を含む雰囲気中における応力腐食割れ性に優れてい
るため、試験雰囲気での硫化割れは認められない。接合
層のCr濃度が2.0質量%未満の場合には硫化水素に
対する接合層の耐応力腐食割れ性が低いため、接合層内
にて破断を生じた。接合層内のCr濃度が10.0質量
%を超える場合には接合層内のCr化合物量が多く、C
r化合物近傍でCrが欠乏しているため、接合層の耐硫
化割れ性が低い。また、接合後に適切な後熱処理を施し
て、低合金鋼、炭素鋼の硬さをHRC22以下に調整す
ることにより、接合部のみならず母材も硫化割れを生じ
ない接合体が得られる。さらに、接合層内のCr化合物
層の厚さが5μm以下の場合、破壊の起点が接合層内に
ないため、引張試験を行なっても母材で破断し、耐硫化
割れ性とともに強度、延性を兼ね備えた接合体となる。
が、Ni含有量が1質量%以下の低合金鋼または炭素鋼
のCr濃度をX質量%、B含有量が3.0質量%以下で
あるNi基インサート材のCr濃度をY質量%としたと
き、下記(1)式を満足するNi基インサート材を、N
i含有量が1質量%以下の低合金鋼または炭素鋼間に介
装し、インサート材の液相線温度以上、1300℃以下
に加熱・溶融することによって前記低合金鋼または炭素
鋼間を接合した場合には、接合部の耐硫化割れ性に優れ
た接合体が得られる。しかし、上記条件を外れた条件で
接合した接合体は、接合層のCr濃度が低い、もしくは
接合層内に生成したCr化合物による、Cr化合物近傍
のCrの欠乏層により、接合体の耐硫化割れ性が低下す
る。 15≦X+Y≦25(0≦X≦8、8≦Y≦20)……………………(1)
基合金製ブロックを、表3に示す各種組成のインサート
材を介装させて、加熱・溶融してブロック同士を接合し
た例である。ブロック同士の接合は、実施例1と同じで
図2に示すように、鉄基合金製ブロック1とブロック2
との間にインサート材3を介装して加熱・溶融して行な
った。接合した後、表6に示す条件で後熱処理を行なっ
た接合体から引張試験片、応力腐食割れ試験片を切り出
し、それぞれについて試験を行ない接合体の強度評価を
行なった。
形状は実施例1と同じで、同様に前記ブロックについ
て、母材のロックウェル硬さ(Cスケール)を測定し
た。そして応力腐食割れ試験(硫化割れ試験)の試験雰
囲気としては、0.030MPaのH2Sの飽和水溶液
である。試験片には、図3に示す負荷状態において、引
張側面に作用する負荷応力は表6に示すように、母材耐
力の50%となるように調整した。試験時間は実施例1
と同じく、720時間とし、720時間保持後にクラッ
クの有無を調査した。実施例2の接合条件、後熱処理条
件、母材硬さおよび試験結果を表6に示す。
2.0質量%以上、10.0質量%以下の場合には硫化
水素を含む雰囲気中における応力腐食割れ性に優れてい
るため、試験雰囲気での硫化割れは認められない。接合
層のCr濃度が2.0質量%未満の場合には硫化水素に
対する接合層の耐応力腐食割れ性が低いため、接合層内
にて破断を生じた。接合層内のCr濃度が高い場合には
接合層内に多くのCr化合物量を生成し、Cr化合物近
傍でCrが欠乏しているため、接合層の耐硫化割れ性が
低い。また、接合後に適切な後熱処理を施して、低合金
鋼、炭素鋼の硬さをHRC22以下に調整することによ
り、接合部のみならず母材も硫化割れを生じない接合体
が得られる。しかし、母材硬さが前述の値以上の場合に
は、接合部に硫化割れが生じなくても、母材に硫化割れ
が生じ母材で破断する。さらに、接合層内のCr化合物
層の厚さが5μm以下の場合、破壊の起点が接合層内に
ないため、引張試験を行なっても母材で破断し、耐硫化
割れ性とともに強度、延性を兼ね備えた接合体となる。
が、Ni含有量が1質量%以下の低合金鋼または炭素鋼
のCr濃度をX質量%、B含有量が3.0質量%以下で
あるNi基インサート材のCr濃度をY質量%としたと
き、下記(1)式を満足するNi基インサート材を、N
i含有量が1質量%以下の低合金鋼または炭素鋼間に介
装し、インサート材の液相線温度以上、1300℃以下
に加熱・溶融することによって前記低合金鋼または炭素
鋼間を接合した場合には、接合部の耐硫化割れ性に優れ
た接合体が得られる。しかし、上記条件を外れた条件で
接合した接合体は、接合層のCr濃度が低い、もしくは
接合層内に生成したCr化合物による、Cr化合物近傍
のCrの欠乏層により、接合体の耐硫化割れ性が低下す
る。 15≦X+Y≦25(0≦X≦8、8≦Y≦20)……………………(1)
本発明の耐硫化割れ性に優れた接合体は、接合層内のC
r濃度を2.0〜10.0質量%の範囲に限定し、かつ
接合後に後熱処理を行ない母材硬さをロックウェル硬さ
HRC22以下に抑制しているため、硫化水素を含む雰
囲気で使用しても硫化割れは生じず、石油精製、石油化
学等で使用される機器、例えば配管等の接合部の接合に
最適である。
を説明する図である。
を説明する図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 Ni含有量が1質量%以下である低合金
鋼または炭素鋼からなる鉄基部材間にNi基インサート
材が介装され、前記インサート材が加熱・溶融されるこ
とによって製造される接合体であって、前記接合体にお
ける前記鉄基部材部分はロックウェル硬さHRC22以
下であり、かつ接合体中のNiを5.0質量%以上含有
する接合層におけるCr含有量が2.0〜10.0質量
%であることを特徴とする耐硫化割れ性に優れた接合
体。 - 【請求項2】 前記接合層内におけるクロム化合物層の
厚さが5μm以下である請求項1に記載の耐硫化割れ性
に優れた接合体。 - 【請求項3】 接合部が請求項1または2に記載の接合
体からなる石油精製または化学工業用配管。 - 【請求項4】 接合部が請求項1または2に記載の接合
体からなる機械部品。 - 【請求項5】 Ni含有量が1質量%以下である低合金
鋼または炭素鋼からなる鉄基部材間にNi基インサート
材を介装し、前記インサート材を加熱・溶融することに
よって鉄基部材間を接合し、その後、熱処理によって前
記接合体における前記鉄基部材部分のロックウェル硬さ
がHRC22以下となるように硬さ調整を行なう接合体
の製造方法であって、前記鉄基部材中のCr濃度をX質
量%、前記Ni基インサート材中のCr濃度をY質量%
としたとき、X、Y、が下記(1)式を満足するととも
に、前記加熱・溶融温度をインサート材の液相線温度以
上、1300℃以下にすることを特徴とする請求項1ま
たは2に記載の接合体の製造方法。 15≦X+Y≦25(0≦X≦8、8≦Y≦20)……………………(1) - 【請求項6】 前記加熱・溶融温度が前記液相線温度よ
り100℃以上、1300℃以下である請求項5に記載
の接合体の製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008544862A (ja) * | 2005-07-07 | 2008-12-11 | アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 加工部品及び微細構造化された構成部品を結合するための方法 |
-
2000
- 2000-03-30 JP JP2000094111A patent/JP4268310B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
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JP2008544862A (ja) * | 2005-07-07 | 2008-12-11 | アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 加工部品及び微細構造化された構成部品を結合するための方法 |
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