JP2001271821A - 締結装置および締結方法 - Google Patents

締結装置および締結方法

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JP2001271821A
JP2001271821A JP2000152944A JP2000152944A JP2001271821A JP 2001271821 A JP2001271821 A JP 2001271821A JP 2000152944 A JP2000152944 A JP 2000152944A JP 2000152944 A JP2000152944 A JP 2000152944A JP 2001271821 A JP2001271821 A JP 2001271821A
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nut
diameter
fastening
bolt
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Hiroshi Imai
啓 今井
Yutaka Imai
豊 今井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小さい締め付けトルクによって被締結部材を
ねじ部材により締結することができ、かつ緩み難くでき
るようにする。 【解決手段】 締結装置は小径の雄ねじ22が形成され
たボルト21と、被締結部材に配置され、大径の雌ねじ
32が形成された静止ナット31とを有し、雄ねじ22
と雌ねじ32はいずれも同じ向きのねじであり、リード
が相互に相違している。ボルト21と静止ナット31の
間には、回転ナット41がねじ結合されるようになって
おり、回転ナット41の内周面には雄ねじ22に噛み合
う小径の雌ねじ42が形成され、外周面には雌ねじ32
に噛み合う大径の雄ねじ43が形成されている。それぞ
れを噛み合わせた状態で、回転ナット41を回転させる
と、回転ナット41の内側と外側のねじのリードの差を
進み量として回転ナット41を介して被締結部材11,
12が締結される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はねじ結合する複数の
ねじ部材を用いて被締結部材を締結する締結技術に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ボルトとナットを用いて被締結部材を締
結するには、被締結部材の貫通孔に装着されたボルトの
突出部にナットをねじ結合つまり螺合し、工具を用いて
ナットを回転させることにより、ねじのリード角による
楔効果によってボルトに軸力を発生させるようにしてお
り、ボルトとナットとのねじ面の摩擦およびナットの座
面の摩擦によって締結状態が維持される。
【0003】しかしながら、ボルトとナットを締め付け
た後にこれらに加わる振動や衝撃などの外力によって締
め付け荷重が変動してボルトが緩むことがある。特に、
被締結部材の厚みが小さく、ボルトのねじ外径に比して
長さが短いボルトを用いて高軸荷重で締め付ける場合に
は、ナットが僅かでも緩むと、軸力が緩和されて当初の
締め付け力を失うことになる。
【0004】たとえば、橋梁や建物などの建造物を建造
する際に継手部材の締結には、部材間に生じる摩擦力に
よって応力を伝達するように高力ボルトを用いた摩擦接
合工法が使用されているが、一般にボルト径に比して継
手部材の厚さが小さくかつ有効締め付け長さが短い場合
には、非常に大きな締め付けトルクが必要となる。なぜ
ならば、高力ボルトを用いる場合には、ボルト、ナット
の材料としてF8TやF10Tの高価な材料を使用して
ナット座面の面粗さを大きくし、摩擦係数を大きくする
ことにより、大きな締め付けトルクと座面での大きな摩
擦力を発生させて被締結部材である継手部材に加わる外
力によってナットが緩み側に回転するのを防止すること
ができるが、ボルトの軸力発生には直接関与せず、むし
ろ締め付けには余分となる回転トルクを必要とするから
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ナットの緩みを防止す
るには、締結用のナットと緩み止め用のロックナットと
の2つのナットをボルトにねじ結合させるようにしたダ
ブルナット方式があり、ダブルナットの改良型として
は、特許第2651364 号公報に示されるように、2つのナ
ットに径が相違したねじを形成するようにした緩み止め
技術がある。
【0006】しかしながら、このような従来の締結方式
では、いずれも締結用のナットをボルトに締結する際に
は、ナットの座面を被締結部材の表面に沿って滑らせる
ようにしてナットを回転させる必要があり、ボルトにナ
ットを締め付けるには、軸力の発生に直接関与しない余
分な回転トルクが必要となる。
【0007】本発明の目的は、小さい締め付けトルクに
よって被締結部材をねじ部材により締結することができ
るようにすることにある。
【0008】本発明の他の目的は、ねじ部材の緩みを防
止し得るようにすることにある。
【0009】本発明の他の目的は、ねじ部材の締め付け
トルクを高い精度で設定し得るようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の締結装置は、被
締結部材に突出して設けられ、第1のリードを有する小
径雄ねじが形成された雄ねじ部材と、前記被締結部材に
配置され、前記第1のリードとは相違した第2のリード
を有し前記小径雄ねじと同じ向きの大径雌ねじが形成さ
れた雌ねじ部材と、前記小径雄ねじに対応した第1のリ
ードを有し前記小径雄ねじにねじ結合する小径雌ねじが
内周面に形成されるとともに、前記大径雌ねじに対応し
た第2のリードを有し前記大径雌ねじにねじ結合する大
径雄ねじが外周面に形成された締結ねじ部材と、前記締
結ねじ部材の少なくとも1箇所の径方向面に軸方向移動
距離測定可能とする基準面を形成し、対応する前記被締
結部材または前記大径雌ねじ部材との間の軸方向距離を
設定する基準面が設けられた構造を有し、前記締結ねじ
部材を前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部材とにねじ結合し
た状態で前記締結ねじ部材を回転させることにより、前
記第1と第2のリードの差を進み量Lとし、前記大径ね
じのねじピッチをPとするとき、締結力による前記被締
結部材、大径雌ねじ部材および締結ねじ部材の総圧縮歪
み量dL1 と前記小径雄ねじ部材の伸び歪み量dL2 の
総和軸方向歪み量がP/L倍拡大され、前記基準面間の
移動距離DをD=(P/L)×(dL1 +dL2 )によ
り締結力を設定するようにしたことを特徴とする。
【0011】本発明の締結装置においては、前記小径雄
ねじまたは前記大径雄ねじにねじ結合するロックナット
を有することを特徴とする。また、前記締結ねじ部材に
前記雌ねじ部材または前記被締結部材に接触する自己ロ
ック面を設けたことを特徴とする。
【0012】本発明の締結装置においては、さらに、前
記雌ねじ部材にそれぞれ前記締結ねじ部材がねじ結合さ
れる複数の大径雌ねじを形成したことを特徴とし、前記
大径雌ねじを前記被締結部材に形成したことを特徴とす
る。また、前記大径雄ねじおよび大径雌ねじをそれぞれ
鋸歯ねじとしたことを特徴とする。また、前記締結ねじ
部材の小径雌ねじと大径雄ねじに挟まれた円筒部肉厚
を、前記雄ねじ部材の軸応力と同等またはそれ以上の高
圧縮応力となるようにし、材料弾性限界内で軸方向に圧
縮変形され、ねじ部にかかる荷重の分布を均一化し緩み
を防止することを特徴とする。
【0013】本発明の締結方法は、第1のリードを有す
る小径雄ねじが形成された雄ねじ部材と前記第1のリー
ドとは相違した第2のリードを有し前記小径雄ねじと同
じ向きの大径雌ねじが形成された雌ねじ部材とを被締結
部材に配置するとともに、前記小径雄ねじにねじ結合す
る小径雌ねじと前記大径雌ねじにねじ係合する大径雄ね
じとを有する締結ねじ部材を前記雄ねじ部材と前記雌ね
じ部材との間に組み付ける仮止め工程を有し、請求項1
記載の基準面間の移動距離DをD=(P/L)×(dL
1 +dL2 )の関係により締結力を設定し、前記締結ね
じ部材を摩擦座面排除による締め付けトルク減少の効果
を利用し回転締め付け力により締め付けることを特徴と
する。
【0014】本発明の締結方法は、第1のリードを有す
る小径雄ねじが形成された雄ねじ部材と前記第1のリー
ドとは相違した第2のリードを有し前記小径雄ねじと同
じ向きの大径雌ねじが形成された雌ねじ部材とを被締結
部材に配置するとともに、前記小径雄ねじにねじ結合す
る小径雌ねじと前記大径雌ねじにねじ係合する大径雄ね
じとを有する締結ねじ部材を前記雄ねじ部材と前記雌ね
じ部材との間に組み付ける仮止め工程と、前記雄ねじ部
材に引張力を加えるかまたは加熱することにより前記雄
ねじ部材を軸方向に伸ばす引き伸ばし工程と、伸ばされ
た状態のもとで前記締結ねじ部材を回転させるねじ締め
工程とを有し、請求項1記載の基準面間の移動距離Dを
D=(P/L)×(dL1 +dL2 )の関係により締結
力を設定し、締め付けることを特徴とする。
【0015】本発明の締結方法にあっては、前記引き伸
ばし工程と前記ねじ締め工程とを連続的または断続的に
複数回繰り返すことを特徴とする。また、前記仮り止め
工程において、頭部にフランジ部が形成された前記締結
ねじ部材を使用する場合に、そのフランジ部と前記大径
雌ねじ部材の対応する径方向面の間に締め付け初期設定
のためのU字形溝付の仮止めシムを利用することを特徴
とする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。
【0017】図1は本発明の一実施の形態である締結装
置を示す断面図であり、図1にあっては、2つの被締結
部材11,12を締結した状態が示されている。
【0018】この締結装置は被締結部材11,12に形
成された貫通孔13を貫通する雄ねじ部材としてのボル
ト21を有し、このボルト21の軸部には雄ねじ22が
形成され、軸部の端部に設けられた頭部23は一方の被
締結部材11の表面に接触するようになっている。ただ
し、この頭部23をワッシャを介して被締結部材11の
表面に接触させるようにしても良い。
【0019】被締結部材12の表面側には雌ねじ部材と
しての静止ナット31が配置されるようになっており、
この静止ナット31は雌ねじ32を有している。雄ねじ
22の有効径をD1 、ピッチをP1 とし、雌ねじ32の
有効径をD2 、ピッチをP2とすると、雌ねじ32の有
効径D2 は雄ねじ22の有効径D1 よりも大きくなって
おり、雌ねじ32のピッチP2 は雄ねじのピッチP1 よ
りも小さくなっている。つまり、D1 <D 2、P1 >P
2 に設定されている。ただし、雄ねじ22のピッチと雌
ねじ32のピッチが相違していれば、雄ねじ22のピッ
チP1 を雌ねじのピッチP2 より小さくしても良いが、
この場合にはP1 >P2 のときの回転ナット41の回転
方向とは逆方向とし、回転ナット41が被締結部材11
から離れる方向に移動する時にボルトが締まる方向とな
る。また、この場合には図4(A),(B)に示したよ
うなセルフロック機構はないが、締め付けトルク値が小
さくなることに変わり無く、その他の効果も同様であ
る。
【0020】ボルト21と静止ナット31は、締結ねじ
部材としての回転ナット41を介して締結されるように
なっており、この回転ナット41は全体的にほぼ円筒形
状となっている。回転ナット41にはボルト21の雄ね
じ22に螺合つまりねじ結合する雌ねじ42が内周面に
形成され、静止ナット31の雌ねじ32にねじ結合する
雄ねじ43が外周面に形成されている。しかも、図1に
示す場合には、締結完了時には回転ナット41の先端面
44、つまり被締結部材11の表面と対向する面が被締
結部材11には接触しないように先端面44と被締結部
材11の表面との間には隙間が形成され、回転ナット4
1はボルト21および静止ナット31にねじ結合され
る。
【0021】回転ナット41の後端部には頭部つまりフ
ランジ部45が設けられており、それぞれのねじが右ね
じとなっているので、回転ナット41を右方向に回転さ
せて回転ナット41を締め付け回転させるときには、フ
ランジ部45に工具を引っ掛けることになる。このフラ
ンジ部45の先端側の径方向面45aは、静止ナット3
1の径方向面との間の距離を設定する基準面となってお
り、基準面45aと静止ナット31の径方向面との間の
距離を基準として、締め付けストロークの設定と測定と
が行われる。
【0022】また、回転ナット41の被締結部材側の端
面を設定基準面として図4(B)のセルフロック状態を
始点として、軸方向締め付け量相当分を回転ナット41
を緩み方向に事前に戻し、初期ストロークを設定するか
またはフランジ部45がもうけられていない図2(F)
や図2(G)の形状の場合でも、被締結部材に対して反
対側の端面から静止ナット31の端面までの距離でスト
ロークの設定と測定とを行う。
【0023】軸力の設定方法は、回転ナット41をボル
ト21と静止ナット31とにねじ結合した状態で回転ナ
ット41を回転させることにより、前記小径第1ねじピ
ッチP1 と大径第2ねじピッチP2 のリードの差を進み
量Lとし、締結力による前記被締結部材12、静止ナッ
ト31および回転ナット41の総圧縮歪み量dL1 と、
前記小径雄ねじ部材の伸び歪み量dL2 の総和軸方向歪
み量がP2 /L倍に比例拡大され、前記基準面間の移動
距離DをD=(P2 /L)×(dL1 +dL2)により
締結力を設定する。
【0024】図2(A)〜(G)は回転ナット41の端
部の形状を示す図であり、図2(A)は端部に六角形の
フランジ部45が設けられた回転ナット41を示し、図
2(B)は端部に四角形のフランジ部45が設けられた
回転ナット41を示し、図2(C)は2つの平坦面が形
成された円形のフランジ部45を有する回転ナット41
を示し、図2(D)は外周面に工具係合用の孔46が複
数個形成された円形のフランジ部45を有する回転ナッ
ト41を示し、図2(E)は工具係合用の溝47が端面
に形成された円形のフランジ部45を有する回転ナット
41を示す。さらに、図2(F)はフランジ部を設ける
ことなく、回転ナット41の端面に工具係合用の溝47
を複数形成するようにした回転ナット41を示し、図2
(G)はフランジ部を設けることなく、回転ナット41
の端部外周面に複数の工具係合用の孔46を形成するよ
うにした回転ナット41を示す。
【0025】図3(A),(B)はそれぞれねじの変形
例を示す拡大断面図であり、図1において符号3で示し
た部分に相当する部分を示す。図1に示した回転ナット
41の雄ねじ43と雌ねじ42はいずれメートル並目ね
じとなっており、これらに対応してねじ結合するねじも
メートル並目ねじとなっているが、ねじの形式として
は、メートル台形ねじや鋸歯ねじなど種々のねじとする
ことができる。
【0026】図3(A)は雄ねじ43と雌ねじ32を鋸
歯ねじとし、雄ねじ22と雌ねじ42をメートル並目ね
じとした場合を示し、図3(B)はそれぞれのねじを台
形ねじとした場合を示し、それぞれのねじが噛み合った
状態、つまりねじ結合した状態を示す。なお、全図にお
いては、ピッチの相違が誇張して描かれている。
【0027】前述のように、ボルト21の雄ねじ22は
小径雄ねじとなっており、回転ナット41の雌ねじ42
は小径雄ねじ22にねじ結合する小径雌ねじとなってお
り、さらに、回転ナット41の雄ねじ43は大径雄ねじ
となっており、静止ナット31の雌ねじ32は大径雄ね
じ43にねじ結合する大径雌ねじとなっている。しか
も、全てのねじは図示する場合には右ねじとなってい
る。ただし、ねじの向きが同じであれば、全てのねじを
左ねじとしても良い。
【0028】したがって、ボルト21を被締結部材1
1,12の貫通孔13内に貫通させ、静止ナット31を
被締結部材11の表面に静止させて配置した状態で、回
転ナット41をボルト21および静止ナット31にねじ
結合させて回転させると、回転ナット41は小径雌ねじ
42のピッチP1 と、大径雄ねじ43のピッチP2 との
ピッチ差の進みピッチ、つまり進み量ないしストローク
で締め付けられることになる。
【0029】この締め付け操作に際しては、まず、静止
ナット31と回転ナット41とを基準面45aと静止ナ
ット31の径方向面30との間の距離が初期値となるよ
うに仮止めした状態で被締結部材12に配置する。この
初期値を設定するために、基準面45aと径方向面30
との間にU字形状のシムを挟み込むようにすると、両面
間の距離を正確に設定することができる。その状態でボ
ルト21を貫通孔13から挿入して回転ナット41の雌
ねじ42にねじ結合する。頭部23が被締結部材11の
表面に接触した状態で、締め付け作業を行うことになる
が、その際には、前述したシムよりも厚みの小さいシム
を基準面45aと径方向面30との間に差と込み、フラ
ンジ部45の基準面45aがシムに接触するまで回転ナ
ット41を回転させることにより容易に高精度で締め付
け量を設定することができる。
【0030】ところで、ボルトの雄ねじやナットの雌ね
じなどのねじのリードとは、つる巻線(helix) に沿って
軸のまわりを一周するときに軸方向に進む距離を言い、
ねじの軸線を含む断面上で互いに隣接するねじ山の相対
応する2点間の距離を軸線に平行に測った値はピッチと
言われる。したがって、1条ねじはピッチ(p) とリード
(l) は等しいが、一般にi 条のねじでは、l=ipの関係が
成立する。
【0031】図示するボルト21および静止ナット31
のねじはいずれも1条ねじであり、リードはピッチと同
一であり、リードとピッチとが同義となっている。雄ね
じ22のピッチP1 が雌ねじ32のピッチP2 よりも大
きいので、リードも大きくなるが、雄ねじ22を2条ね
じとすれば、雄ねじ22と雌ねじ32のピッチを同一と
しても、雄ねじ22のリードを雌ねじ32のリードより
も大きくすることができる。
【0032】つる巻線の傾斜角度はリード角と言われ、
ナットを回転させると、リード角に応じた楔効果によっ
て軸力が発生することから、締め付け力が拡大されてボ
ルトとナットにより被締結部材は締め付けられることに
なる。したがって、リード角を小さくすればする程、締
め付け力は拡大されることになるが、1対のねじのリー
ド角を小さくすると、ねじ山の幅寸法が小さくなってね
じの強度を保つことができないので、リード角を小さく
することには限度がある。
【0033】これに対して、本発明にあっては、小径雌
ねじ42と大径雄ねじ43とのピッチ差により回転ナッ
ト41を介してボルト21と静止ナット31とをねじ結
合するようにしたので、それぞれのねじのリード角やピ
ッチをねじ強度を保持し得る程度の値としても、実質の
リードを小さくすることができる。
【0034】この結果、図1に示すように、締結装置を
用いて被締結部材11,12を締結した状態のもとで、
振動や衝撃などの外力が加わっても、実質のねじの進み
量が小さいことから、回転ナット41が緩むことを防止
できる。また、静止ナット31が外力による単純緩みに
対しては、以下にも述べるように、その座面径が大き
く、ねじ径に対しリードが小さく非常に緩み難いことに
加えて、ショットピーニングなどの簡単な面加工でその
座面の摩擦抵抗を大きくすることにより、積極的な緩み
防止効果も得ることができる。
【0035】しかも、少ないトルクつまり締め付け回転
力により大きな軸力を得ることができる。つまり、静止
ナット31は手作業あるいは工具を用いて被締結部材1
1,12に配置させるだけで良く、実質の軸力は静止ナ
ット31とボルト21との間にそれぞれ異なるピッチと
なった小径雌ねじ42と大径雄ねじ43とを有する回転
ナット41を締め付けることにより、ピッチP1とピッ
チP2の差に基づくリード角により設定されるので、楔
角度を小さくすることができ、所定の軸力を得るまでの
回転角度は大きくなるが、所定の軸力を得るための締め
付けトルクを小さくすることができる。
【0036】この締め付けトルクを小さくすることがで
きる効果は、特に座面の摩擦係数が大きい場合には顕著
になる。つまり、従来は、ねじ面の摩擦だけでなくナッ
トの座面での摩擦も締め付けトルクとして与えなければ
ならないが、本発明では先端面44と被締結部材12と
の間に隙間が形成されており、回転ナット41は着座面
での滑り摩擦が発生しないので、小さい締め付けトルク
でねじ締めを行うことができる。ただし、小径雌ねじ4
2と大径雄ねじ43の2対のねじ面で摩擦することにな
るが、内側の回転ナット41のねじ面は外側の静止ナッ
ト31のねじ面に対しては、ボルト締め付け時において
は、緩める方向の回転となる。しかも、ナット座面の加
工とは異なり機械加工によりねじ面の面粗さは比較的簡
単に精度よく仕上げることが可能であり、ねじ噛み合い
部へ潤滑剤を塗布しねじ面での摩擦係数を小さくでき
る。これにより、小さい締め付けトルクを追加するのみ
で、軸力に変換されることがない不要な座面摩擦による
余分な締め付けトルクがなくなり、小さなトルクでねじ
締めを行うことができる。むしろ実質のリード角が減少
するので、少ない回転力で大きな締め付け力を得ること
ができる。
【0037】従来のボルトとナットに潤滑剤を塗布し、
ねじ面も座面も潤滑状態が良い場合で一般には摩擦係数
は0.15程度である。通常のメートル並目ねじでこの最も
低い実用摩擦係数0.15のもとで、従来のボルト、ナット
を用いた場合と、本発明の締結装置を用いた場合とにお
いて同一の軸力を発生させたときの必要トルクの値と緩
みトルクの値を比較したところ、締め付け側で座面摩擦
で消費されるトルクよりも本発明の回転ナット41のね
じの緩め側トルク力が小さいか同等であり、かつ緩み側
起動トルクは通常のボルト、ナットを用いた場合よりも
大きくなり、外力に対する緩み防止効果は実質リード角
の最小化に加え、本発明の特徴として発生することを確
認した。
【0038】また、JISでは規格化されていないが諸
外国の規格では認定され使用されているねじ山形状とし
て鋸歯ねじ(Buttress ねじ) がある。この鋸歯ねじの特
徴として、メートルねじのような通常の60度対称のね
じ山に比べ、ねじ荷重を軸にほぼ垂直な面で受けるた
め、径方向に応力を発生しにくく、ねじに懸かる軸方向
応力分布が均一で分散し易く、薄肉部材にねじ溝を切る
場合に強度的に有利と言われ、さらに振動や衝撃による
緩み防止効果が大きいねじ形状であると考えられてい
る。この特徴により特殊な用途の飛行機のプロペラ、大
砲の筒結合、プレスの支柱等の特に軸力が高い薄肉のね
じ結合や振動、衝撃のある部分の締結に使用されてい
る。この鋸歯ねじを本発明の回転ナット41と静止ナッ
ト31のねじ山に応用すると、さらに少ないトルクで大
きい軸力を得ることができるとともに、振動や衝撃によ
る緩み防止効果を高めることができる。
【0039】回転ナット41の先端面44は被締結部材
には接触せず、回転ナット41は座面を有していないの
で、ナットの締め付けと緩めとを繰り返しても、安定し
た締め付け力が保証されることになる。つまり、従来で
はナットの座面を高い締め付け力により着座させること
になるが、このような着座面での回転摩耗の発生がない
ため、座面を損傷させることが防止される。
【0040】通常の短いボルトで締め付ける場合は前述
のように緩みが懸念され、これを積極的に防止するため
スプリングワッシャー等を座面に配置することが多い
が、特にこれを緩める時スプリングワッシャーの端面角
が座面に食付き座面の粗れを生じ、再度締め付ける時に
座面の摩擦係数が大きくなり、結果として、前回の所定
締めつけトルクで締め付けても軸力は減衰することにな
るばかりか、トルク管理で代用的に軸力を管理されてい
るトルク法に不確定な要素をもつことになる。
【0041】この座面の損傷を防ぐためにスプリングワ
ッシャーに加えて、さらに平ワッシャーを用いることが
あるが、これは前記のような理由で、万一スプリングワ
ッシャーが平ワッシャーの面で回転摩擦で傷を与えた場
合には締め付けられている被締結部材を保護し、安価な
平ワッシャーのみを交換すると言うのがその目的であ
る。
【0042】このようにナットの座面の保護は繰り返し
使用のための安定した締付力に重要な要素であるととも
に、通常のナットをトルク法で締め付ける場合は、新た
な部材で最初に締め付けるときにおいても座面の面仕上
げ精度のバラツキが軸力に大きく影響を与えることは言
うまでもない。したがって、トルク法で座面の摩擦状態
に締付力の精度が影響を受けない構造はよりトルク法に
よるボルト締めの発生軸力への代用特性を安定させる重
要な要素であり、本発明はこの点でも優れた効果を得る
ことができる。
【0043】このような、軸力安定効果が得られるとい
う座面不使用という特徴を有することから、本発明にあ
っては、座面の摩擦回転が不要であることを利用して、
締め付けトルクの増加をもたらすことなく、静止ナット
31の自己緩み止め機能を向上するために、ショットブ
ラストなどで静止ナット31の座面の面粗度を大きく
し、摩擦係数を大きくすることができる。
【0044】本発明にあっては、従来のような緩み止め
ナットを用いることなく、ボルトとナットの緩みを防止
することができるが、通常のダブルナットのように緩み
止め用のロックナットを用いるようにしても良い。つま
り、図1において、二点鎖線で示すように、ボルト21
の突出部にロックナット51をねじ結合して回転ナット
41の端面に接触させるようにしても良く、回転ナット
41の大径雄ねじ43にロックナット52をねじ結合し
て静止ナット31の端面に接触させるようにしても良
い。
【0045】図4(A),(B)は、本発明の他の実施
の形態である締結装置を示す断面図であり、図4(A)
は回転ナット41のフランジ部45を静止ナット31の
端面に接触させるようにした場合を示し、図4(B)は
回転ナット41の先端面44を被締結部材の表面に接触
させるようにした場合を示す。
【0046】図4に示す場合には、回転ナット41の軸
方向の締め付け代を適切に設定すれば、緩み止めナット
51,52を用いることなく、回転ナット41のそれぞ
れの面がセルフロック面つまり自己ロック面となり、セ
ルフロック機構を有する締結装置となる。つまり、この
タイプでは、回転ナット41のフランジ部45や先端面
44が接触したときに所定の軸力が発生するように締め
付け開始当初の回転ナット41と被締結部材との締め代
間隔を適切に設定すれば、隙間がゼロとなって所定の軸
力が発生した後に、さらに回転ナット41を締め付け方
向に回転させれば、余分なトルクによる軸力の反力が接
触面に発生し、回転ナット41はより積極的にロックさ
れることになる。
【0047】前述のように、ねじ締め付け後に軸方向で
の締結部材間の圧着でねじの緩みを防止するロック方法
に加え、噛み合いねじ面の荷重分布を均一にし、緩みの
防止効果を増強することができる。つまり、ねじにかか
る軸荷重がねじ部の一端に集中しねじ形状の永久変形を
生じたり、熱や経時によるクリープ現象により集中高荷
重ねじ部が変形し、軸荷重減衰を防止するために回転ナ
ット41の小径雌ねじと大径雄ねじに挟まれる円筒部肉
厚を意図的にボルト21の軸応力と同等またはそれ以上
の高圧縮応力となるように比較的薄肉とし、結果として
材料弾性限度内で軸方向に圧縮変形され、ねじ部にかか
る荷重の分布を均一化し緩みを防止することができる。
この時の回転ナット41の円筒部の圧縮応力は所要軸力
を円筒部断面積で除算すれば求めることができ、軸応力
に対し簡単に適切な肉厚が決定できる。
【0048】図5は本発明の他の実施の形態である締結
装置を示す断面図であり、雌ねじ部材としての静止ナッ
ト31aには複数の大径雌ねじ32が形成されている。
【0049】図6は本発明のさらに他の実施の形態であ
る締結装置を示す断面図であり、この場合には被締結部
材11に締結される被締結部材を雌ねじ部材つまり静止
ナット31bとし、これに複数の大径雌ねじ32が形成
されている。したがって、この場合には、締結のみに使
用する静止ナット31aを使用することが不要となり、
コスト面でも有利となる。
【0050】図5および図6に示す場合には、ボルト2
1および回転ナット41は前述した締結装置と同様とな
っており、静止ナットを回転させることなく、固定させ
た状態として回転ナット41を介して静止ナットとボル
トとをねじ結合するようにしたことから、これらの図に
示すような構造の締結装置とすることができる。このよ
うに、1つの部材に複数の大径雌ねじ32を形成した場
合としては、圧力容器や大径シャフトに設けられたフラ
ンジ部を静止ナット31a,31bとして、フランジ部
で他の部材に締結する場合に有用となる。
【0051】ただし,図5および図6に示す場合には、
静止ナット31a,31bを回転できないので、締結操
作は次のように行う。まず、予めそれらの大径雌ねじ3
2に回転ナット41をボルト軸方向の適切な位置(この
適切なボルト軸方向位置については後述する)までねじ
込み、その位置で仮止め(別の仮止めナットを使用する
かレンチ等で保持し)し、被締結部材の貫通孔にボルト
21を差し込み、ボルト21を頭部23で回転しながら
回転ナット41の小径雌ねじ42にねじ結合し、ボルト
頭部23の座面と静止ナット31a,31bで被締結部
材に着座させ、この状態から、回転ナット41を回転し
トルクを与えることにより締め付けるという手順が必要
である。
【0052】ボルト21としては、頭部23を有してい
ない植え込みボルトつまりスタッドボルトを使用するこ
とも可能であり、その場合には、ボルトを頭部で回転さ
せることができないので、スタッドボルトの植え込み端
に対して反対側のねじ部先端に、そのねじ谷径より小さ
い6角形、4角形、工具用の溝等の工具が係合する部分
を形成し、工具を用いてボルトの初期回転位置を設定す
ることになる。スタッドボルトを使用することは、図5
および図6に示したように静止ナットを回転することが
できない場合に限られず、回転させることができる静止
ナット31が使用される場合にも適用することが可能で
ある。
【0053】図7は本発明の他の実施の形態である締結
装置を示す断面図であり、相互に離れた状態の2つの被
締結部材11,12を、その間に配置させた回転ナット
41により締結するようにした場合を示す。しかも、こ
の場合には被締結部材12は静止ナット31となってお
り、回転ナット41のフランジ部45は被締結部材であ
る静止ナット31と他の被締結部材11との間のスペー
スに向けられ、回転ナット41を締め付け側又は緩め側
に回転させることにより、ボルト21の軸力を調整した
り、被締結部材11と31の距離を調整することが可能
となる。この場合においても、ロックナット53をボル
ト21にねじ結合し、ボルト21の頭部23とロックナ
ット53により被締結部材11を締結するようにしても
良い。
【0054】図8は本発明の他の実施の形態である締結
装置を示す断面図であり、この場合には円筒形状の静止
ナット31の端部には底壁部33が設けられており、底
壁部33の内径をボルト21の外径に近づけることによ
り、静止ナット31が被締結部材12に接触する面積つ
まり座面が大きくなっている。これにより、静止ナット
31の面圧を下げることができるとともに、回転ナット
41の静止ナット31に対する軸方向の移動量を制限す
ることができる。さらに、回転ナット41の先端面44
を底壁部33の内面に接触させることによりセルフロッ
クさせることも可能となる。
【0055】従来のようなボルトとナットを用いて締結
する場合には、実際の締め付け軸力を測定するのにスト
レンゲージやボルトに測定用の穴を明け、その穴の深さ
の締め付け前後での差を測定棒とマイクロゲージで測定
したり、穴底面の反射超音波を利用する方法等がある。
【0056】いずれも測定コストが高価であるばかり
か、測定に時間がかかり面倒である。それに比較して本
発明の締結装置にあっては、回転ナット41と静止ナッ
ト31のねじピッチの相違により実際のねじピッチが小
さくなり、回転ナット41の回転角度に対し縮小された
進み量となる。これにより、回転ナット41は通常のナ
ットに比べ何倍かの角度に拡大回転され、さらにこれに
より回転ナット41と静止ナット31の相対軸方向移動
距離も実際の締結部材間の歪量の何倍かに拡大される。
つまり、回転ナット41と静止ナット31の端面間距離
差を締め付け前後で測定すれば、その測定値はボルトの
伸び量と被締結部材等の圧縮歪量の和として現れるた
め,非常に高い測定精度を特別な測定装置を使用するこ
となく、単純にノギス、ダイアルゲージ、マイクロメー
タやシックネスゲージ等で直接測定できることになる。
静止ナット31と回転ナット41の大小のねじの噛み合
いは、軸力によって相互に逆軸方向に荷重がかかり、雄
ねじと雌ねじ間の軸方向隙間が無くなるため、ねじの形
状公差の影響は受けず、ねじ成形時のねじピッチの精度
のみに影響を受けることになるが、一般にねじ山形状の
バラツキはねじ等級により様々に公差が設定されてお
り、これと比較してもねじピッチの精度は通常非常に高
く、ねじピッチの誤差は実質皆無と考えられる。
【0057】このように、ねじピッチ差を利用すること
により、回転ナット41の回転角度が拡大されて現れる
ため、ボルト21の伸び量を含めた変形量の測定精度を
高くすることができ、現実的なボルト軸力の測定や設定
を高精度で行うことができる。このボルトの伸び値と被
締結部材の圧縮歪値をそれらの材料の弾性係数とボルト
荷重断面積と有効締め付け量により計算すれば、ボルト
にかかる荷重が正確に実測されることになる。特に、複
数のボルトを用いて締結する場合には、数カ所で前述の
回転ナット41と静止ナット31の端面の締め付け前と
規定トルクでの締め付け後の変化量の関係をデータにと
り、規定トルク値でなく、この回転ナット41の移動変
化量(軸方向移動量またはトルク回転数及び角度)でボ
ルトの所定軸力を管理する事が可能となる。
【0058】ボルト21に懸かる軸力は、回転ナット4
1の回転角度に比例し、かつ軸方向移動量に比例するこ
とはねじのピッチの大きさに関係無く成り立つが、本発
明の締結装置では、締結部材の少量の軸方向歪量であっ
ても、実質リードが小さく回転ナット41の所要回転角
度が(ボルトねじリード/実質リード)で拡大される。
一方、この回転角度が拡大されることにより、回転ナッ
ト41は静止ナット31の大径ねじのリードに従い拡大
回転され、軸方向に移動する為、静止ナット31に対す
る軸方向相対移動量は締結部材間の歪みの総量(または
ボルト軸力)に確定できる倍率(大径ねじリード/実質
リード)で比例拡大される。換言すれば、回転ナット4
1のトルク回転角度および軸方向移動量の設定や測定で
高精度なボルトの軸力の管理が可能である。
【0059】特に、被締結部材にガスケットが挟まれて
いる締結においては、既知のガスケットの潰し代に上述
の軸方向倍率を乗じた値を上述の端面距離の変化量に加
算することにより簡単に所要ボルト軸力が設定できるこ
とからも理解できるように、直接軸方向でボルト荷重と
同一方向、かつ同一単位で軸力設計管理ができることに
より、回転ナット41の回転角度変化量への変換法より
軸方向移動量による軸力管理方法が優れている。
【0060】また、この軸力と回転ナット41の締め付
け移動量との関係において、回転ナット41の端面から
静止ナット31の端面までの距離の変化量の測定は上述
の汎用の測定工具でおこなえるが、特に回転ナット41
に6角等のフランジ部45がある場合はその下面と静止
ナット31の端面との間の隙間をシックネスゲージ等で
調整または測定することもできる。
【0061】このことより派生的に予め決定した厚さの
U字形の仮ワッシャーを準備し回転ナット41のフラン
ジ部45の下部と静止ナット31の端面の隙間に仮ワッ
シャーを組み込み、このU字形仮ワッシャーを介し回転
ナット41と静止ナット31を仮締め結合し、その状態
でボルト21を回転し静止ナット31の座面を被締結部
材に着座させれば、複数のボルトに対し簡単に回転ナッ
ト41を適正で均一な締め付け代を仮U字形ワッシャー
で確保しながら締め付け初期状態を創ることができる。
トルクレンチ等での締め付け作業開始前にこの仮U字形
ワッシャーをU字の開き方向から軽く叩くかペンチ等で
引き抜き、取り外し所定の均一な回転ナット41と静止
ナット31との間の締め代を確保するという施工方法が
可能となる。 [トルクの計算結果] 1.ナット座面が低摩擦係数である時のトルク力の比較 トルク一般式: 締め付側 Ms=Q・{(D2/2)・tan(r+b)+R・mz}… 緩め側 My=Q・{(D2/2)・tan(r-b)+R・mz}… 注:上記、式ともに、第1項がねじ面の摩擦による
トルクで第2項がナット座面の摩擦によるトルクであ
る。
【0062】 Ms:締め付側トルク My:緩め側トルク Q: 軸力(締付力) D2:ねじの有効径 r: ねじ面の摩擦角 b: ねじのリード角 R: 座面の平均半径 mz:座面の摩擦係数 ねじ面の摩擦係数をmn、ねじ条数をi、ねじのピッチ
をp、ねじ山角度をaとする。通常iは1条でi=1 、
ねじ山角度はメートルねじ、ユニファイねじ共に標準が
60度、ウイットねじでは55度である。また、日本の
工業規格には無いが、鋸歯ねじのように荷重を受ける面
が水平または水平に近いねじ(Buttressねじ) がある。
特に鋸歯ねじを静止ナット31と回転ナット41との間
のねじに使用するとより少ないトルクで大きな軸力を得
ることができることは特筆すべきことである。
【0063】また、D2は雄ねじ外径(一般にはねじの
呼び径)をD0とすると、 メートルねじ、ユニファイねじでは:D2=D0−0.6495・p ウイットねじでは: D2=D0−0.6403・p 鋸刃状ねじでは: D2 =D0−0.6 ・p である。
【0064】rはtan(r)=mn/(cos(a/2)) であり、b
はtan(b)=i ・p/(π・D2)であることから、各々の
角度はアークタンジェントで求められる。ただし、鋸歯
ねじでは約a=0である。
【0065】以上のナットの締付けにおける関係式を用
い、ここではメートルねじを例にとって通常のナットを
使用しトルク法で締めつける場合と本発明の締結装置の
場合とについて軸力とトルクの関係を下記に説明する。
なお、この例で使用する面摩擦係数はねじ面も座面も0.
15とする。
【0066】例1:M30並目ねじ(p=3.5)で強度区
分4.6 (Q=保証荷重12,800kgf)の場合: A)通常ナット D2=27.73 mm、r=9.826 度、b=2.301 度、ナット
の平均座径を1.32×ねじ外径、つまりR=1.32・30/2=
19.8mmとして、軸荷重12,800kgf をえるための締めつけ
に必要なトルク値は: Ms=Q・{(D2/2)・tan(r+b)+R・mz}=38134+38016 =76,150kgmm=約76.2kgm これを緩める為の必要トルク値は: My=Q・{(D2/2)・tan(r-b)+R・mz}=23443+38016 =61,459kgmm=約61.5kgm B)本発明の締結装置 前述した通常ナットの場合と同様に、ボルト21のねじ
はM30の並目ねじ(ピッチ3.5 mm)とし、回転ナット
41のボルト21にねじ結合する雌ねじ42はM30、
p=3.5 mmとする。また、回転ナット41の外周面に形
成される雄ねじ43の仕様は内外ねじに挟まれる筒状部
の肉厚を要求軸力との関係で必要材料強度と必要肉厚を
考慮して決定し、そのねじピッチは要求軸力とトルクの
所要倍率を考慮し常に先のボルト側のねじピッチより小
さく自由に決定する。回転ナット41はボルト21にね
じ結合するねじ面(小径雌ねじ)と静止ナット31にね
じ結合するねじ面(大径雄ねじ)とが互いに軸方向の反
対方向に応力を生じるため、この大小のねじに挟まれた
円筒部では軸方向及び肉厚方向共に応力が対向して圧縮
応力となり、材料強度上好ましい方向に力が働くことに
より、特に極端にこの回転ナット41の肉厚を大きくす
る必要はない。また、通常発生するねじ噛み合いの最初
の数山に応力が集中するため、特に高負荷ボルトではね
じ山が永久変形したりクリープ現象を起こすことが知ら
れているが、本発明における回転ナット41では薄肉円
筒状の内外径に相対向するねじが設けられた構造のた
め、軸方向での圧縮応力による変形がむしろ、ねじ山に
かかる荷重分布を均一化する効果を発生するよう計画的
に回転ナット41の肉厚を設定することも可能である。
【0067】ここでの例としては、静止ナット31及び
標準締めつけ工具類の入手性を考慮しM30より3段大
きい標準メートル細目ねじ、M39(ピッチ3.0 mm)を
利用し、回転ナット41の外径にはM39、ピッチ3.0
の大径雄ねじ43を形成した。そのM39の雄ねじ43
にねじ結合する静止ナット31としては、標準のM39
メートル細目ねじを使用し、前記A)の場合と同様の軸
荷重に付いて計算をする。この時、M39に相当するね
じに上記の鋸歯ねじを使用する場合もねじ角度0(a=
0)として同時に計算し結果のみを括弧内に併記する。
なお、組み立て手順は、先ず回転ナット41をボルト2
1の雄ねじ22にねじ結合し、座面とその相対する回転
ナット41の先端面44に充分な締め代(隙間)をのこ
す位置、つまりこの例では当荷重でのボルトの所定伸び
量と被締結部材の歪みの和と同量以上の隙間を確保した
状態で外側のM39の静止ナット31を回転ナット41
の大径雄ねじ43にねじ結合し、その被締結部材の座面
に着座するように手締めまたはスパナ等で軽く締め付け
る。
【0068】回転ナット41の先端面44の必要隙間は
軸力を与えるために回転ナット41を締め付ける時に、
締めつけ反力を受ける外側のM39の静止ナットはその
細目ねじに沿って軸力を緩和する方向へ移動するため、
実質のボルトへの軸力はその小径ねじ(M30)と大径
ねじ(M39)とのピッチの差の分が軸力発生に寄与し
これにより実質のピッチがその差、3.5 −3.0 =0.5 mm
となる。つまり、{ボルトのねじピッチ/ (ボルトのね
じピッチ―回転ナットの外側ねじのピッチ)}=3.5/
(3.5 −3.0 )=7であり、通常のナットでの締め付け
回転量(角度)の7倍の締め付け角度精度に拡大される
ことになり、一方、回転ナットの静止ナットに対する軸
方向移動量はその1回転当たり0.5 mmであると同時に、
その移動量がボルトの伸び量と被締結部材の歪みの和の
6倍(大径ねじのピッチ/実質ピッチ=3.0/0.5 =6)の
値が静止ナット31と回転ナット41の相対軸方向移動
量と同値である。したがって、上述のように、この例で
は締め付ける前に予測ボルト伸び量と圧縮歪み量の和の
6倍と同等またはそれ以上の隙間を確保しなければなら
ない。
【0069】ちなみに、ボルトの軸力が12,800kgfの
時,M30のボルトはその有効断面積が、JIS規格B
1051の表より561 mm2 で、これによりボルト材の弾
性係数(ヤング率)を21,000kg/ mm2 とし、締め付けら
れる部材の厚さをボルト径の3倍と仮定すると;有効締
めつけ厚さは一般に3 x30+50 =約140 mmと考えて、ボ
ルトの予想伸び量はdLは、 dL=(12800/561)x(140/21000)=0.1521 mm =約0.
16 mm 被締結部材の圧縮歪量は予め計算で求めることはできる
が,圧縮側部材の座面面圧による圧縮応力の分布につい
ては諸説あり、一般的な計算式が確立していない為、実
測により確認するのが好ましい。すなわち、被締結部材
の圧縮歪は回転ナット41を規定トルクで締め付け、そ
の締め付け前と締め付け後の移動量を知り、その値をね
じピッチ倍率(この例では6)で除した値がボルトの伸
び量と被締結部材の圧縮歪量の和であることより、この
歪和よりボルトの計算した予想伸び量を減じた値を圧縮
歪量として知ることができる。これを数本のボルトで確
認し、回転ナット41の移動量と規定トルク値との関係
を評価し、実用的にトルク値以外の軸力管理要素として
利用することが可能である。この時の回転ナット41の
軸方向移動量がボルトの伸び量と圧縮歪量の和の6倍に
拡大されることを利用し、軸力を直接測定や設定できる
が、実質のねじピッチが小さいことを利用し、つまり上
述のねじピッチ倍率を利用し、トルク締め回転数と角度
で正確に軸方向の移動量を計算する方法もある。
【0070】いま、例として仮にこの圧縮歪を平均0.04
mm とすると、つまり、回転ナット41の座面との初期
隙間は6×(0.16+0.04)=約1.2 mm以上ある状態で外側
のM39の静止ナット31が座面に軽く着座した状態
で、回転ナット41を回転し締め付ければよい。これを
回転数と角度で表せば、0.2/(3.5−3.0)=0.4 回転、ま
たは144 度である。
【0071】ここで、静止ナット31にM39でねじピ
ッチ3.0 を選択したが、回転ナット41の肉厚強度とピ
ッチ差は要求軸力と所要トルクを考慮し自由に決定で
き、材料の選択によっては、M39以外の径のねじで
も、大小両方のねじで挟まれる部分の肉厚をトルク時の
捩じり応力と軸圧縮応力がその材料耐力を超えないよう
に充分な強度を持つように設計する。さらに意図的に回
転ナット41の大小両方のねじで挟まれる円筒部分の弾
性限度内での適切な軸方向圧縮歪みを生じさせることに
よりねじ荷重分布の均一化を計画しその肉厚を設計して
も良い。ねじピッチは3.5 mm以下であれば特に制約はな
いが、ボルト側のねじピッチに近過ぎると回転数と軸力
(伸び)の倍率精度は向上するが、最終締め付けまでト
ルク回転量が増え、場合によってはむしろ作業性が悪く
なることに留意しなければならない。すなわち、ボルト
荷重が小さい場合は、より市場性のあるM39よりも小
さいM36のねじをねじピッチ2.0 mmなどの極細めねじ
を選択し、前述の内外ねじで挟まれる部分の必要肉厚を
確保しても良いし、また、ボルト荷重が大きくなれば、
所要締め付けトルクも、捩じり応力も大きくなるので、
M42などのより大きい径のねじを選択し、内外ねじで
挟まれる部分の肉厚を大きくとる必要がある。
【0072】以上の締めつけ初期状態を確保する為の手
順は上記のように単独で回転ナット41を配置した後
に、静止ナット31を組み付ける方法でなくとも、回転
ナット41と静止ナット31を予めその位置関係を確保
して組み合わせ、その組み合わせた複合ナットをボルト
21のねじにねじ結合し静止ナット31の座面が着座す
るように組み立ててもよく、その他にも、それを助ける
補助部材、仮止め工具を利用することで、簡単にこの初
期締めつけ状態をつくることができる。また、逆にこの
特徴を利用し、最初から計画的に回転ナット41の先端
面44が静止ナット31の座面より所定のボルト荷重に
相当する伸び量と、被締結部材の歪み量を考慮した分量
だけの隙間を設定した状態で締めつければ、回転ナット
41が締め付けられ着座した時、トルク値が急に大きく
なる為、この点が所定の軸荷重を発生しているトルクで
あることが簡易的にわかる為トルク値とこの着座接地の
両方で締めつけ力の管理が可能となる。
【0073】また、摩擦係数のバラツキ等により一般に
トルク法では同一トルク値で締め付けても発生軸力のバ
ラツキはプラス、マイナス30%と言われていることと
比較すれば、トルク値の管理ができない状況でもこの着
座点の管理方法でも実用上充分な精度が確保できる。
【0074】回転ナット41の端面を被締結部材に更に
圧接すれば特に別のロックナットを用いる事無くダブル
ロックナットと同様な回り止め効果を追加でき、他の方
法としては回転ナット41のフランジ部45つまり頭部
が6角等の形状であれば、その頭部の座面と静止ナット
31が所定締め付けトルクを与えた後、更に圧接着座す
る様に締め付ければ、この方法でも余分ば回り止め用の
別のロック用ナットを使用しないでもダブルロックナッ
トと同様な回り止め効果を追加することも出来る。
【0075】次に、上記の締めつけ初期状態から内側ナ
ット部材を締めつけることにより発生する軸力と緩める
時のトルク値を検証する。
【0076】当該ナット構造では、M30ボルトと回転
ナット41のねじ関係においては、回転ナット41は着
座せず座面でのトルク消費はない。また回転ナット41
と静止ナット31のねじ関係においても静止ナット31
は座面の着座ないし接触はあるが、回転ナット41を回
転し、軸力を発生する為、回転力の反力を受ける面は回
転ナット41の外側雄ねじM39と標準M39のナット
のねじ面であり、静止ナット31の座面は固定のままで
トルクの消費はない。つまり、第、第式の第2項は
計算から除外することができる。
【0077】締めつけ時:M30のボルト21と回転ナ
ット41間のトルク値Ms1は:D21=27.73 mm、r
1=9.826 度、b1=2.301 度、として、 Ms1=Q・{(D21/2)・tan(r1+b2)+0}… 締めつけ側トルク =38134 kgmm=約38.1kgm 回転ナット41の大径ねじをM39、p=3.0 mmとし、
対応する外側の静止ナット31であるM39のナットは
ねじの緩み側に回転することになるから、前述のねじの
公式により、ねじの各要素数値を求め、緩め側トルク式
の第1項により計算すると、トルク値 My1は:D2
2=37.05 mm、r2=9.826 度、b2=1.476 度とし
て、 My1=Q・{(D22/2) ・tan(r2-b2)+0}… 緩め側トルク =34803 kgmm=約34.8 kgm (鋸歯ねじでは、D22=37.2 mm 、r2=8.531 度
で、My1=29.5 kgm)したがって、締めつけトルクM
st=38.1+34.8 =72.9 kgmとなる。(鋸歯ねじではM
st=38.1+29.5 =67.6 kgm) 緩め時:M30のボルト21と回転ナット41間のトル
ク値My2は:D21=27.73mm、r1=9.826 度、b
1=2.301 度、として、 My2=Q・{(D21/2) ・tan(r1-b1)+0}… 緩め側トルク =23443 kgmm=約23.4 kgm 回転ナット41の大径ねじM39、p=3.0 mmとし、対
応する静止ナット31をM39のナットはねじの締め側
に回転することになるから、前述のねじの公式により、
ねじの各要素数値を求め、締め側トルク式の第1項によ
り計算すると、トルク値Ms2は:D22=37.05 mm、
r2=9.826 度、b2=1.476 度として、 Ms2=Q・{(D22/2) ・tan(r2+b2)+0}… 締め側トルク =47393 kgmm=約47.4 kgm (鋸歯ねじでは37.2mm、r2=8.531 度で、Ms2=4
2.0 kgm) したがって、緩めトルクは、Myt=23.4+47.4 =70.8
kgm(鋸刃状ねじではMyt=23.4+42.0 =65.4 kgm)
となる。
【0078】静止ナット31が単独で緩む場合の緩みト
ルクは、その座面平均径をねじ外径の1.32倍、つまり39
×1.32=51.5mmとし、座面の摩擦係数が非常に良く、最
も緩み易い状態で、それを0.15とねじ面と同等の面粗度
として緩み側トルク式により計算する。
【0079】Tg =34.8+12800 ・(51.5/2)・(0.15)=
34.8+49.4=84.2 kgm この値は上記の締め付けトルク値72.9 kg より大きくな
り、静止ナット31の座面粗度が非常に良く緩み易い状
態であっても緩み難く、前述したように、座面の加工精
度を悪くするか、積極的に面粗度を粗くすることにより
簡単に座面摩擦係数を0.25-0.70 にすることができるた
め、回り止めロックがない状態でも実質上、静止ナット
自体が緩み難い構造であることは明らかである。これは
鋸歯ねじなどねじ山の形状には関係なく、また、軸力に
も関係なくどの場合にも適用することができる特徴であ
り、以下の例では重複しての説明は省略する。 2.ナット座面が高摩擦係数である時のトルク力の比較 ナット座面が高摩擦係数を持つように被締結部材の座面
を敢えてショットピーニング等で粗く加工した結果、高
座面摩擦力を利用する高力ボルト摩擦の例を検討する。
【0080】ねじ面での摩擦係数は低い方が好ましく、
前述した例1の0.15を通常の摩擦係数と考えこれを使用
する。本発明の締結装置には関与しないが、通常のボル
ト、ナットの組み合わせにおいては、接合面の表面処理
の状態に応じて様々な数値が使用されている。その値は
油や光明丹塗布の潤滑状態で0.15から0.25、磨き肌で、
0.20から0.35、黒皮のままでは0.20から0.35、ブラスト
処理面では0.40から0.70、浮き錆びを除去した赤錆面で
は0.45から0.70という実測値が日本建築学会等の資料に
示されている。実際には更に面を意図的に粗し0.5 以上
の座面摩擦係数で高力ボルトを使用している場合があ
る。ここの比較計算例では建築基準法との整合性等を考
慮し座面摩擦係数を0.45とする。
【0081】基本のねじトルク−軸力の計算式は前述の
例1と同様である。使用するボルト、ナット相当部品の
サイズは前述した場合と同様にM30メートルねじと
し、その材料は摩擦接合で使用される場合の高力ボルト
(F10T)の施工を具体的な比較計算の対象とし、そ
の必要とされる軸力を2面摩擦で短期許容耐力を基準に
計算に使用する締め付け軸力を33,000 kgfとする。その
他では前述のように座面摩擦係数を0.45とし、その他の
数値は例1と同様の数値を使用する。計算式は前述と同
様であり割愛しデータ要素値と結果のみを記す。 A)通常ナット D2=27.73 mm、r=9.826 度、b=2.301 度、ナット
の平均座径を1.32×ねじ外径として、つまり R=1.32
・30/2=19.8mmとしてmn=0.15、mz=0.45として、
軸荷重33,000kgf をえるための締めつけに必要なトルク
値は: Ms=Q・{(D2/2)・tan(r+b)+R・mz}=98314+294030 =392344 kgmm =約393 kgm これを緩める為の必要トルク値は: My=Q・{(D2/2)・tan(r-b)+R・mz}=60439+294030 =354469 kgmm =約355 kgm B)本発明の締結装置 締めつけ時:M30のボルト21と回転ナット41間の
トルク値Ms1は:D21=27.73mm、r1=9.826
度、b1=2.301 度、として、 Ms1=Q・{(D21/2) ・tan(r1+b1)+0}… 締めつけ側トルク =98314 kgmm=約98.4 kgm 回転ナット41の大径ねじM39、p=3.0 mmとし、対
応するM39の静止ナット31はねじの緩み側に回転す
ることになるから、前述のねじの公式により、ねじの各
要素数値を求め、緩め側トルク式の第1項により計算す
ると、トルク値 My1は:D22=37.05 mm、r2=
9.826 度、b2=1.476 度として、 My1=Q・{(D22/2) ・tan(r2-b2)+0}… 緩め側トルク =89727 kgmm=約89.7 kgm (鋸歯ねじでは、D22=37.2mm,r2=8.531 度で、
My1=76.0kgm ) したがって、締めつけトルクMst=98.4+89.7 =約18
8 kgm (鋸歯ねじでは、Mst=98.4+74.0 =177.4 kgm ) 緩め時:M30のボルト21と回転ナット41間のトル
ク値My2は:D21=27.73mm、r1=9.826 度、b
1=2.301 度、として、 My2=Q・{(D21/2) ・tan(r1-b1)+0}… 緩め側トルク =60439 kgmm=約60.5kgm 回転ナット41の大径ねじM39、p=3.0 mmとし、対
応する静止ナット31は、ねじの締め側に回転すること
になるから、前述のねじの公式により、ねじの各要素数
値を求め、締め側トルク式の第一項により計算すると、
トルク値Ms2は:D22=37.05 mm、r2=9.826
度、b2=1.476 度として、 Ms2=Q・{(D22/2) ・tan(r2+b2)+0}… 締め側トルク =122186 kgmm =約122.2 kgm (鋸歯ねじではD22=37.2mm,r2=8.531 度で、M
s2=108.2 kgm ) したがって、緩めトルクMyt=60.5+122.2=182.7 kg
m (鋸歯ねじではMyt=60.5+108.2=168.7 kgm )と
なる。 3.上記1,2例と同様にの座面の低、高摩擦係数の場
合で他のねじ径の組み合わせについても検証し表1に示
す。ただし、ねじ面での摩擦係数はすべて0.15として計
算する。括弧内は鋸歯ねじで静止ナットと回転ナットを
結合する場合のトルク数値である。
【0082】
【表1】
【0083】のように、特にボルトの接合座面の面粗度
が粗く、摩擦係数が大きい場合は本発明では大幅に所要
軸力を発生させる為の必要トルク値が小さいことが判明
する。特に、静止ナットと回転ナット間のねじ形状を鋸
歯(Buttress ねじ) にすれば、小さいトルクでより大き
い軸力を得ることが可能である。これにより、使用する
トルク発生装置(リミットトルクレンチ、油圧トルクレ
ンチ、電動トルクレンチ等)の締め付け工具容量の小さ
いものでも必要軸力を得ることができ、作業性も向上
し、経済的である。また、表1でも理解できるように、
締め付けトルクに比較し緩め側トルクの割合が高くなる
ことは実質ねじピッチが小さいことに加え、より緩み難
い特徴を備えている。
【0084】図9は表1の最上段のメートル並み目ねじ
M30(ねじピッチ3.5 mm)をトルクを76.2 kgmで締め
付けた時、ねじ面の摩擦係数が0.15で、座面の摩擦係数
が0.15から0.70まで変化した時の軸力と座面の摩擦係数
との関係を示す特性線図である。
【0085】また、図9においては、本発明でのメート
ルねじM30(ピッチ3.5 mm)の回転ナットと、メート
ル細目ねじM39(ピッチ3.0 mm)およびねじ径39mm
鋸歯ねじ(ピッチ3.0 mm)の静止ナットとの組み合わせ
により同等の76.2kgm のトルクで締め付けた場合の特性
も示してある。
【0086】本発明では座面の摩擦係数に左右されるこ
とがない為、もし比較するのなら、静止ナットのねじの
噛み合い部の面摩擦係数のバラツキと比較することにな
るが、前述の通りねじ加工における面粗さは座面と比べ
比較的粗さのバラツキを良く管理できる為,一般には0.
12から0.20程度と考えられる。回転ナットの小径雌ねじ
の噛み合い部での摩擦係数は上記の通常ボルトの例と同
様に0.15とし、大径雄ねじの噛み合い部での摩擦係数が
0.12から0.20まで変化したときの関係も図9に示してあ
る。
【0087】図9に示すように、通常のボルトとナット
の組み合わせでは、座面の摩擦係数は0.12〜0.75までの
変化を示す。ただし、そのボルトのねじ部の摩擦係数は
他の例と同様に0.15とした。このように、通常のナット
とボルトを結合する場合は座面の面粗さの加工精度管理
が難しく、座面摩擦係数が大きく変動する可能性があ
り、結果として同一締め付けトルクでも軸力が大きく変
動することが一目瞭然である。一方、本発明における内
外のねじの組み合わせによりトルク締めの時、座面の回
転により摩擦でトルク消費がなく、ねじ込み反力を外側
ねじで受けるので、ねじの面摩擦係数の管理のみで良
く、一般にねじ面の加工精度はコントロールし易く、通
常では0.15程度に仕上げるのは問題ないが、比較のため
に、図9においては回転ナットの摩擦係数は0.12〜0.20
まで変動する時のデータを示す。
【0088】図9から明らかなように、同一締め付けト
ルクでも本発明のねじ構造ではより高い軸力をバラツキ
が少なく締め付けることができる。さらに、ねじピッチ
3.0mmでねじ径39mmの鋸歯ねじを静止ナットに使用する
場合は、5-10%程度軸力が向上することが判る。また、
座面の面仕上げ精度が良く、座面摩擦抵抗が低い場合は
低トルクで高軸力を得る特徴は顕著ではないが、座面を
高精度で加工できない場合や特に高力ボルトでの摩擦接
合法のような座面摩擦係数を故意に大きくする場合手は
非常に大きなトルク節減の効果があり、低トルクでバラ
ツキの少ない安定高精度の軸力を確保できる。
【0089】図10はテンショナーを用いた締結方法を
示す図であり、前述した締結装置を用いて被締結部材1
1,12を締結するには、図10(A)に示すように、
まず、回転ナット41が静止ナット31に対して所定の
位置関係となるように予め組み付けた状態として、静止
ナット31を貫通孔13に合わせて被締結部材12に配
置する。これにより、静止ナット31の座面が被締結部
材12に着座する。さらに、ボルト21を被締結部材1
1,12に配置させるべく、貫通孔13内に挿入して、
頭部23が被締結部材11の表面に接触するまでボルト
21を矢印で示すように回転させるか、または静止ナッ
ト31と回転ナット41を同期させて共に回転させるこ
とによりボルト21に締め付け着座させる。
【0090】この時、ボルト頭部側で回転してもそれぞ
れのナット31,41側を回転して仮締めしても良い
が、いずれの場合も静止ナット31と回転ナット41の
締め付け開始の設定値がずれないようにする。つまり、
静止ナット31と回転ナット41の相対位置がずれない
ように保持しながらボルト21に仮締めする必要があ
る。また、図10(A)に示すようにフランジ部45を
有する回転ナット41が使用される場合には、フランジ
部45と静止ナット31の端面との間にU字形状のシム
を軽く仮止めした状態でボルト21に締め付けて着座さ
せ、テンショナーで締め付ける直前にシムを取り外すよ
うにしても良い。
【0091】ボルト21を回転ナット41に軽く締め付
けると、図11(A)に示すように、それぞれのねじの
噛み合い部の軸方向一方側が隙間となり、他方側は密着
した状態となる。
【0092】このようにして仮止め工程が終了した状態
のもとで、静止ナット31と回転ナット41の初期設定
寸法(L0 またはL1)がボルト組付時にずれることな
く、所定の値であることを確認した後、図10(B)に
示すテンショナー60を静止ナット31の上に装着し、
静止ナット31も同時に固定される。これにより、通常
ナットのテンショナー締め付けでは発生しないが、本工
法では締め付け時に静止ナット31に予め圧縮応力が作
用し、締め付け完了時のテンショナーの油圧開放による
軸力の減衰度を改善できる。また、通常ナットをテンシ
ョナーで締め付ける場合、通常ナットの外周で被締結部
材にテンショナー60を設置することが不可能な場合が
あるが、本工法では静止ナット31の外径の範囲以内で
テンショナーを設置でき、ボルト間ピッチの制約が緩和
される。
【0093】テンショナー60は静止ナット31に配置
される架台61を有しており、内側シリンダ62と外側
シリンダ63とが架台61に取り付けられ、内側シリン
ダ62は外側シリンダ63に対して軸方向に移動自在で
あり、内側シリンダ62にはピストン64が取り付けら
れている。
【0094】内外のシリンダ62,63の間には油室6
5が形成されており、この油室65内に給排ポート66
から油圧を供給することにより、内側シリンダ62は引
張方向に駆動される。油室65の反対側にはばね室67
が設けられており、この中に組み込まれたばね部材68
によってピストン64には引張方向と逆の方向に駆動さ
れる。
【0095】内側シリンダ62内にはボルト21の雄ね
じ22にねじ結合する雌ねじが形成された回転体71が
回転自在に組み込まれており、この回転体71には内側
シリンダ62の端面に接触するフランジ部72が設けら
れ、このフランジ部72にハンドル73が取り付けられ
るようになっている。ハンドル73を操作して回転体7
1を回転させることにより、ボルト21と回転体71と
をねじ結合することができる。
【0096】これらがねじ結合された状態のもとで、油
室65に油圧を供給すると、ボルト21には引張力が加
えられて、ボルト21は引き伸ばされる。この引き伸ば
し工程により、図11(B)に示すように、それぞれの
ねじの噛み合い部のうち密着していた軸方向一方側に隙
間が生じることになり、その状態では回転ナット41を
自由に回転させることができる。この状態のもとで、架
台61に設けられた窓部74から工具を挿入して回転ナ
ット41をねじ締め回転させると、ねじの噛み合い部の
軸方向一方側に生じた隙間がなくなり、噛み合い部の一
方側は図11(A)に示すように密着状態となる。
【0097】この状態でボルト21に対する引張力を解
除すると、ボルト21は軸方向に収縮するので、回転ナ
ット41には回転力を加えることなく、ボルト21に軸
力を加えることができる。
【0098】回転ナット41は内周面と外周面との両方
にねじが設けられており、それぞれがねじの噛み合い部
を持ち、内外両方のねじが軸方向の隙間つまり遊びを持
っている。それぞれの隙間は所定の公差の範囲内である
が、回転ナット41は内外のねじを有しているので、単
一のねじ結合の場合の約2倍の遊び代を持つことにな
り、大きな軸方向の遊び代を利用してテンショナー60
によりボルト21の締め付けを行うことができる。
【0099】前述した引き伸ばし工程と締め付け工程と
複数回繰り返すことにより、締め付け力を任意の値に高
めることができ、両方の工程を間欠的に行っても連続的
に行っても良い。
【0100】図10に示すテンショナー60は回転ナッ
ト41を工具を用いて回転させるようにしているが、架
台61に回転ナット41と係合する回転部材を取り付け
るようにして、回転ナット41の回転操作を架台61の
外側に設けられた回転部材により行うようにしても良
い。また、回転部材を手動で回転させることなく、トル
ク制御機構を有する空気圧モータや電動モータにより回
転させるようにしても良く、その場合には、回転ナット
41が回転自由になったときに自動的に回転部材を介し
て回転ナット41を回転駆動し、内外のねじの噛み合い
部の軸方向一方側に図11(A)に示すように隙間がな
くなったら自動的にナットの回転を停止させることがで
き、連続的にボルト21に引張力を加えながら、回転ナ
ット41を所定の締め付け位置までねじ込むことができ
る。
【0101】一方、回転ナット41を緩めるには、テン
ショナー60により締め付け状態の軸力よりも僅かに大
きな引張力をボルト21に加えることになる。これによ
り、ねじの噛み合い部に、図11(B)に示すような隙
間が発生し、引張力を減衰させながら回転ナット41を
緩む方向に回転させることができる。
【0102】回転ナット41をレンチなどにより回転さ
せて高軸力を発生させるには、大きなレンチを用いなけ
ればならず、物理的制約により難しい場合があるが、テ
ンショナーを用いることにより、そのような制約を受け
ることなく、受圧面積を拡大させることが比較的容易で
あり、ピストンとシリンダとを多段にすることにより高
軸力を発生させることができる。
【0103】また、複数の締結装置を用いて被締結部材
を同時に締結する場合には、複数のテンショナーを用い
て締め付け力を発生させることにより、複数のボルト2
1の締め付け力を同時に均一に設定することができる。
【0104】ボルト21に加えられる軸力は、回転ナッ
ト41の回転角度や軸方向移動量を架台61に設けられ
た位置センサや、回転部材の回転数を回転センサによっ
て検出することにより容易に高精度で検出することがで
き、回転角度や軸方向移動量が所定値となったときに自
動的にテンショナーの作動を停止させるようにしても良
い。
【0105】テンショナーを用いて回転ナット41を回
転させると、回転ナット41には大きな回転力を加える
必要がないので、図2(F),(G)に示すように、フ
ランジ部を有しない回転ナットとすることができ、テン
ショナーを小形化することができる。
【0106】また、通常のナットをテンショナーで締め
付ける際には、テンショナー自身の歪み量も含めて一度
に所要軸力の数割りも高い軸力でプリロードを与えねば
ならないが、本発明の締結装置をテンショナーで締め付
ける場合には、ねじの噛み合い部の隙間が開く程度の軸
力を発生させながら連続的に最終的な軸力まで締め付け
ることができるので、所要軸力に対して僅かに余分な軸
力発生能力で締め付けることができ、ボルト材料がプリ
ロード荷重により材料耐力を超える危険性を防止でき
る。
【0107】図12はヒータを用いた締結方法を示す図
であり、ボルト21の内部に形成されたヒータ取付孔7
6の中にヒータ77を組み込んで、ヒータ77の熱エネ
ルギーでボルト21を加熱することによりボルト21は
熱膨張することになる。ボルト21と静止ナット31と
の間には仮止め治具78が取り付けられている。この仮
止め治具78は、静止ナット31にねじ止めされる止め
ボルト79と仮止め治具78のヘッド部をボルト21に
固定する止めボルト80とを有し、回転ナット41を回
転させる際におけるボルト21と回転ナット41とが回
転方向にずれないようにこれらを仮止めしている。
【0108】このように、ヒータを用いる場合には、ボ
ルトへの加熱による伸び量と他の締結部材との温度差管
理の複雑さを不要とし、作業熟練度や経験に基づくデー
タへ依存しないで高精度を確保できることにより、異種
混合で多数のボルトを同時に締結するときにも容易に締
め付け作業を行うことができ、残留軸力を高精度で設定
することができる。
【0109】前述の雄ねじ部材に引張力を加えるかまた
は加熱することにより締結する場合において、その軸力
を設定し、測定する方法は主に回転ナット41の軸方向
移動距離により行う。
【0110】その具体的軸力管理方法は、回転ナット4
1をボルト21と静止ナット31とにねじ結合した状態
で回転ナットを回転させることにより、前記小径第1ね
じピッチP1 と大径第2ねじピッチP2 のリード差を進
み量Lとし、締結力による被締結部材12,静止ナット
31および回転ナット41の総圧縮歪み量dL1 と前記
小径雄ねじ部材の伸び量dL2 の総和軸方向歪み量がP
2 /L倍に比例拡大され、前記基準面間の移動距離Dを
D=(P2 /L)×(dL1 +dL2 )により締結力を
設定する方法である。
【0111】図12に示すヒータ77は電熱線式である
が、燃焼ガス式や高周波誘導加熱式などを用いることが
でき、被締結部材に対して多数のボルト21を同時に加
熱する場合に有利となる。
【0112】ヒータを用いて熱膨張を利用して締め付け
る場合には、ボルト21をその材料の結晶変態温度以下
に加熱するようにし、締め付けなければならない軸方向
歪み量以上に加熱による熱膨張が発生した時点で回転ナ
ット41を回転させる。ナットの設定が終了した時点で
熱源を除去し、一般的には放熱空冷により、ボルト21
や回転ナット41などが環境温度に平衡した時点で所定
のボルト軸力が発生することになる。
【0113】また、ヒータを用いた締結方法にあって
は、締結部材の構造と剛性(ヤング率、耐力)のみで正
確に最終的な残留軸力を設定できるようにする。つま
り、回転ナット41と静止ナット31を適切な位置関係
に組み合わせたサブアッセンブリ状態とし、ボルト21
の加熱伸び量が最終残留軸力を発生させる伸び以上にな
ったときに、ボルト21と静止ナット31の回転ずれが
生じないようにして回転ナット41を所定の寸法だけね
じ込む。
【0114】回転ナット41の静止ナット31に対する
予め設定すべき移動量をより単純に設定する方法として
は以下のような方法がある。
【0115】すなわち、回転ナット41と静止ナット3
1の締め付け前の位置設定はフランジ付きの回転ナット
を採用し、静止ナット31の端面との隙間に締め代と同
一厚みのU字形状のシムなどを挟み、相互に軽く仮締め
した状態でボルト21を着座させ、ボルトの予熱工程が
完了して回転ナットを締め付ける際にこのU字形状のシ
ムを取り外し、シムの厚さに対応した隙間がなくなるま
で回転ナットを回転させれば、自動的に所定の残留軸力
を得ることかできる。
【0116】ただし、シムを用いなくとも、静止ナット
31と回転ナット41とを締め代を持たせて相対位置関
係を設定して加熱前の状態とし、ボルト21を静止ナッ
ト31と回転ナット41とに対して相対位置関係がずれ
ないように保持したままねじ込んで被締結部材に着座さ
せるようにしても良い。この場合には、加熱後に回転ナ
ットと静止ナットが端面で密着する位置まで締め込め
ば、自動的に所定の残留軸力が設定されることになる。
【0117】このように、ヒータを用いる場合には、異
種混合で多数のボルトを同時に締結するときにも容易に
締め付け作業を行うことができ、残留軸力を高精度で設
定することができる。
【0118】また、ヒータを用いてボルト21を熱膨張
させる場合には、ある程度の伸び量が確保された状態で
回転ナット41を所定のストロークだけ静止ナット31
に進むように回転させれば良いので、伸び量が所定値と
なるように温度管理をすることが不要となる。つまり、
従来のように、ボルトとナットのみにより締結する場合
には、ボルトとナットの温度差が所定値となるように、
正確に温度管理を行う必要があるが、加熱前における回
転ナット41の静止ナット31に対する位置関係を基準
とし、ボルト21を伸ばした加熱後に回転ナット41を
所定の回転数ないしストロークだけ回転ナットを進めれ
ば、締め付け力を高精度に設定することができるので、
温度差を高精度に管理することが不要となる。
【0119】本発明は前記実施の形態に限定されるもの
ではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能で
あることはいうまでもない。
【0120】
【発明の効果】(1).本発明によれば、ねじの実際のリー
ドは大小のねじのリード差ないしピッチ差となるので、
ねじ山の幅寸法を小さくすることなく、実際のリードを
小さくすることができ、ねじ部材相互の緩み止めを達成
することができる。
【0121】(2).実際のリードを小さくすることがで
き、かつナット底面での摩擦回転が不要なので、ねじ部
材に小さなトルクを加えるだけで、大きな軸力を発生さ
せることができる。
【0122】(3).回転ナットの端面を被締結部材に接触
させなくとも締結を行うことができので、ナットの端面
の損傷発生を防止することができる。
【0123】(4).静止ナットを回転させることが不要と
なるので、1つの静止ナットに複数のボルトを取り付け
ることができる。
【0124】(5).回転ナットの回転角度に対する軸方向
のリードの進み量を少なくすることができるので、回転
ナットの回転移動角度と軸方向移動量が比例拡大され、
ボルト軸力を高精度で設定や測定することができる。
【0125】(6).雄ねじ部材や締結ねじ部材に緩み止め
用のロックナットをねじ結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である締結装置を示す断
面図である。
【図2】(A)〜(G)はそれぞれ回転ナットの形状を
示す斜視図である。
【図3】(A),(B)はそれぞれねじの変形例におけ
る図1の符号3で示した部分に相当する部分を示す拡大
断面図である。
【図4】(A),(B)は本発明の他の実施の形態であ
る締結装置を示す断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の形態である締結装置
を示す断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態である締結装置
を示す断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態である締結装置
を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である締結装置を示す
断面図である。
【図9】摩擦係数と軸力の関係を示すグラフである。
【図10】(A)は回転ナットと静止ナットとボルトと
を予め組み付けた状態のもとでボルトをねじ結合してい
る状態を示す断面図であり、(B)はテンショナーによ
りボルトを引き伸ばしている状態を示す断面図である。
【図11】(A)はねじの噛み合い部の軸方向の一方側
が隙間となった状態を示す断面図であり、(B)は軸方
向の他方側が隙間となった状態を示す断面図である。
【図12】ボルトに熱エネルギーを加えてボルトを軸方
向に伸ばすヒータを示す断面図である。
【符号の説明】
11,12 被締結部材 13 貫通孔 21 ボルト(雄ねじ部材) 22 雄ねじ(小径雄ねじ) 23 頭部 31 静止ナット(雌ねじ部材) 32 雌ねじ(大径雌ねじ) 41 回転ナット(締結ねじ部材) 42 雌ねじ(小径雌ねじ) 43 雄ねじ(大径雄ねじ) 44 先端面 45 フランジ部 60 テンショナー 77 ヒータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 598119061 今井 慧 埼玉県朝霞市宮戸1丁目1番24号 (72)発明者 今井 啓 埼玉県朝霞市宮戸1丁目1番24号 (72)発明者 今井 豊 埼玉県朝霞市宮戸1丁目1番24号

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被締結部材に突出して設けられ、第1の
    リードを有する小径雄ねじが形成された雄ねじ部材と、 前記被締結部材に配置され、前記第1のリードとは相違
    した第2のリードを有し前記小径雄ねじと同じ向きの大
    径雌ねじが形成された雌ねじ部材と、 前記小径雄ねじに対応した第1のリードを有し前記小径
    雄ねじにねじ結合する小径雌ねじが内周面に形成される
    とともに、前記大径雌ねじに対応した第2のリードを有
    し前記大径雌ねじにねじ結合する大径雄ねじが外周面に
    形成された締結ねじ部材と、 前記締結ねじ部材の少なくとも1箇所の径方向面に軸方
    向移動距離測定可能とする基準面を形成し、対応する前
    記被締結部材または前記大径雌ねじ部材との間の軸方向
    距離を設定する基準面が設けられた構造を有し、 前記締結ねじ部材を前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部材と
    にねじ結合した状態で前記締結ねじ部材を回転させるこ
    とにより、前記第1と第2のリードの差を進み量Lと
    し、前記大径ねじのねじピッチをPとするとき、締結力
    による前記被締結部材、大径雌ねじ部材および締結ねじ
    部材の総圧縮歪み量dL1 と前記小径雄ねじ部材の伸び
    歪み量dL2 の総和軸方向歪み量がP/L倍拡大され、
    前記基準面間の移動距離DをD=(P/L)×(dL1
    +dL2 )により締結力を設定するようにしたことを特
    徴とする締結装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の締結装置において、前記
    小径雄ねじまたは前記大径雄ねじにねじ結合するロック
    ナットを有することを特徴とする締結装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の締結装置において、前記
    締結ねじ部材に前記雌ねじ部材または前記被締結部材に
    接触する自己ロック面を設けたことを特徴とする締結装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3のいずれか1項に
    記載の締結装置において、前記雌ねじ部材にそれぞれ前
    記締結ねじ部材がねじ結合される複数の大径雌ねじを形
    成したことを特徴とする締結装置。
  5. 【請求項5】 請求項1,2,3または4のいずれか1
    項に記載の締結装置において、前記大径雌ねじを前記被
    締結部材に形成したことを特徴とする締結装置。
  6. 【請求項6】 請求項1,2,3,4または5のいずれ
    か1項に記載の締結装置において、前記大径雄ねじおよ
    び大径雌ねじをそれぞれ鋸歯ねじとしたことを特徴とす
    る締結装置。
  7. 【請求項7】 請求項1,2,3,4,5または6のい
    ずれか1項に記載の締結装置において、前記締結ねじ部
    材の小径雌ねじと大径雄ねじに挟まれた円筒部肉厚を、
    前記雄ねじ部材の軸応力と同等またはそれ以上の高圧縮
    応力となるようにし、材料弾性限界内で軸方向に圧縮変
    形され、ねじ部にかかる荷重の分布を均一化し緩みを防
    止することを特徴とする締結装置。
  8. 【請求項8】 第1のリードを有する小径雄ねじが形成
    された雄ねじ部材と前記第1のリードとは相違した第2
    のリードを有し前記小径雄ねじと同じ向きの大径雌ねじ
    が形成された雌ねじ部材とを被締結部材に配置するとと
    もに、前記小径雄ねじにねじ結合する小径雌ねじと前記
    大径雌ねじにねじ係合する大径雄ねじとを有する締結ね
    じ部材を前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部材との間に組み
    付ける仮止め工程を有し、 請求項1記載の基準面間の移動距離DをD=(P/L)
    ×(dL1 +dL2 )の関係により締結力を設定し、前
    記締結ねじ部材を摩擦座面排除による締め付けトルク減
    少の効果を利用し回転締め付け力により締め付けること
    を特徴とする締結方法。
  9. 【請求項9】 第1のリードを有する小径雄ねじが形成
    された雄ねじ部材と前記第1のリードとは相違した第2
    のリードを有し前記小径雄ねじと同じ向きの大径雌ねじ
    が形成された雌ねじ部材とを被締結部材に配置するとと
    もに、前記小径雄ねじにねじ結合する小径雌ねじと前記
    大径雌ねじにねじ係合する大径雄ねじとを有する締結ね
    じ部材を前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部材との間に組み
    付ける仮止め工程と、 前記雄ねじ部材に引張力を加えるかまたは加熱すること
    により前記雄ねじ部材を軸方向に伸ばす引き伸ばし工程
    と、 伸ばされた状態のもとで前記締結ねじ部材を回転させる
    ねじ締め工程とを有し、請求項1記載の基準面間の移動
    距離DをD=(P/L)×(dL1 +dL2 )の関係に
    より締結力を設定し、締め付けることを特徴とする締結
    方法。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の締結方法において、前
    記引き伸ばし工程と前記ねじ締め工程とを連続的または
    断続的に複数回繰り返すことを特徴とする締結方法。
  11. 【請求項11】 請求項8または9記載の締結方法にお
    いて、前記仮り止め工程において、頭部にフランジ部が
    形成された前記締結ねじ部材を使用する場合に、前記フ
    ランジ部と前記大径雌ねじ部材の対応する径方向面の間
    に締め付け初期設定のためのU字形溝付の仮止めシムを
    利用することを特徴とする締結方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007170088A (ja) * 2005-12-22 2007-07-05 Tama Home Kk 鉄筋用ナット
JP2009144774A (ja) * 2007-12-12 2009-07-02 Ntn Corp 回転伝達装置
JP2010156364A (ja) * 2008-12-26 2010-07-15 Mitsubishi Electric Corp 締結用部材及びロータリ圧縮機
KR101052583B1 (ko) 2011-01-31 2011-07-28 (주)하이드로훼스트 어댑터식 유압인장너트
CN112228337A (zh) * 2020-11-17 2021-01-15 段宏康 一种往复泵阀盖的拆装结构

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