JP2001270834A - ウドからの抽出物、その製造方法及びウドからの抽出物を含む消毒剤 - Google Patents

ウドからの抽出物、その製造方法及びウドからの抽出物を含む消毒剤

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JP2001270834A JP2001009818A JP2001009818A JP2001270834A JP 2001270834 A JP2001270834 A JP 2001270834A JP 2001009818 A JP2001009818 A JP 2001009818A JP 2001009818 A JP2001009818 A JP 2001009818A JP 2001270834 A JP2001270834 A JP 2001270834A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大腸菌、黄色ブドウ状球菌等の細菌に対して
高い抗菌性を有するが、抽出物を水で希釈して有効成分
の濃度が薄くなっても、保存中に微生物が増殖して変質
せず、安定性に優れるウドの抽出物を提供する。 【解決手段】 工程(1)ウド(学名:Aralia
cordata)の茎部以外の部分を細断、乾燥してウ
ドの乾燥断片を作り、工程(2)水により煮出して微生
物の栄養分となる水溶性栄養成分を除去した後、工程
(3)乾燥し、工程(4)乾燥したウドの断片から低級
アルコールにより有効成分を抽出し、工程(5)有効成
分を含む低級アルコール溶液を水で希釈してウドからの
抽出物を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウド(学名:Ar
alia cordata)からの抽出物、その製造方
法及びウドからの抽出物を含む消毒剤に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、食用としているウドの茎や葉から
エタノール等により抽出した抽出物を生鮮牛肉、生鮮レ
タスなどの匂い、味などを長期に維持するために食品保
存剤として使用する提案(特開平5−123140号公
報)や、ウドの茎や葉からエタノール等により抽出した
抽出物をヘルペスなどウィルスによる治療薬に用いる提
案(特開平6−219959号公報)や、ウドの茎や葉
からエタノール等により抽出した抽出物を入浴剤に用い
る提案(特開平10−7546号公報)がなされてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のウドの茎や葉か
らエタノール等により抽出した抽出物は、食品保存剤や
治療薬として抗菌性が必ずしも十分なものとは言えず、
エタノール可溶性の有効成分と共に微生物の栄養分とな
る水溶性栄養成分を包含しているため、抽出物を水で希
釈して有効成分の濃度が薄くなると保存中に微生物が増
殖して変質するという問題があった。本発明の第1の目
的は、従来の問題を解決し、効能的に優れた有効成分を
含むウドの抽出物であって、抽出物を水で希釈して有効
成分の濃度が薄くなっても保存中に微生物が増殖して変
質することがなく、安定性に優れる上、環境汚染や毒性
などの恐れがなく、安全に使用できるウドの抽出物を提
供することである。本発明の第2の目的は、このウドの
抽出物を容易に製造する方法を提供することであり、更
に本発明の第3の目的は、このウドの抽出物の新しい用
途を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は従来の問題
を解決するために鋭意研究した結果、ウドの各部から抽
出した抗菌性に差異があることを見出した。それによる
と、ウドの茎部からの抽出物よりも根部、葉部、小枝
部、花部等からの抽出物の方が抗菌性が優れていること
が判明した。又、抽出物保存中での微生物の増殖対策と
しては、微生物の栄養分となるグルコース、アミノ酸、
蛋白質、炭水化物などの水溶性栄養成分を除去すること
が有効であることが分かった。即ち、水溶性栄養成分を
除去したウドからエタノール等の低級アルコール或はエ
ーテル、ヘキサン、エステル等の低級アルコール以外の
有機溶媒により有効成分を抽出した抽出物は、大腸菌、
黄色ブドウ状球菌等の細菌に対して高い抗菌性を有する
ことを見い出した。更に、この有効成分を含む抽出物を
水で希釈することにより消毒剤として有効に使用できる
ことを見い出し、本発明を成すに到った。
【0005】本発明の請求項1は、ウドの茎部以外の部
分からの抽出物であって、大腸菌、黄色ブドウ状球菌な
どの細菌に対する高い抗菌性を有する有効成分を含有
し、微生物の栄養分となる水溶性栄養成分を含有しない
ことを特徴とするウドからの抽出物に関する。
【0006】本発明の請求項2は、下記の工程(1)〜
(6)により製造することを特徴とする請求項1記載の
ウドからの抽出物の製造方法に関する。 工程(1)ウドの茎部以外の部分を細断及び/又は粉
砕、乾燥してウドの乾燥断片及び/又は粉末を作る工程 工程(2)ウドの乾燥断片及び/又は粉末を水により煮
出して微生物の栄養分となる水溶性栄養成分を除去する
工程 工程(3)微生物の栄養分となる水溶性栄養成分を除去
したウドの断片及び/又は粉末を乾燥する工程 工程(4)乾燥したウドの断片及び/又は粉末から低級
アルコール或は低級アルコール以外の有機溶媒により有
効成分を抽出して有効成分を含む低級アルコール或は低
級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作り、低級アルコ
ール以外の有機溶媒を用いた場合は前記抽出溶液から低
級アルコール以外の有機溶媒溶液を取り除き、得られた
有効成分を低級アルコールに溶かし有効成分を含む低級
アルコール溶液を作る工程 工程(5)低級アルコールを用いて抽出した場合であっ
ても必要に応じて前記抽出溶液から低級アルコールを取
り除き、得られた有効成分を含む混合物から再度低級ア
ルコール以外の有機溶媒により有効成分を抽出して有効
成分を含む低級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作
り、次いでこの抽出溶液から低級アルコール以外の有機
溶媒溶液を取り除き、得られた有効成分を低級アルコー
ルに溶かし有効成分を含む低級アルコール溶液を作る工
程 工程(6)工程(4)或は工程(5)で得られた有効成
分を含む低級アルコール溶液を水で希釈する工程
【0007】本発明の請求項3は、請求項2記載の方法
において、工程(2)においてウドの乾燥断片及び/又
は粉末に対して3〜25質量倍の水を使用することを特
徴とする。
【0008】本発明の請求項4は、請求項2或は請求項
3記載の方法において、工程(4)において、乾燥した
ウドの断片及び/又は粉末に対して3〜25質量倍の低
級アルコール或は低級アルコール以外の有機溶媒を使用
することを特徴とする。
【0009】本発明の請求項5は、請求項2から請求項
4のいずれかに記載の方法において、工程(6)におい
て、有効成分を含む低級アルコール溶液に対して5〜5
00質量倍の水を用いて希釈することを特徴とする。
【0010】本発明の請求項6は、請求項1記載のウド
の茎部以外の部分からの抽出物を有効成分として含有す
る消毒剤に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態である
ウドの根部を用いた例について説明する。この場合、ウ
ドの根部とは根系全般であって、地上部以外の全ての部
分を含む。周知のように、ウドは日本全土の山地で自生
し畑で栽培もされる多年草であり、茎は太く円柱形で高
さは1.5m内外、葉は柄があり互生で毛があり、夏頃
に茎の上部に円錐形の散形花序をなし、淡緑色の小花を
つける。通常は茎部を食用に供する。本発明では、天然
物でも、栽培物でも、これらの混合物でもいずれも用い
ることができる。ウドは栽培による多量生産が可能であ
り、2〜3年肥培管理した根系を用いることが好まし
い。更に、株分けした根株を春から秋まで畑で肥培管理
し、充実した根系を用いることもできる。
【0012】ウド根部からの抽出物は、大腸菌、黄色ブ
ドウ状球菌等の細菌に対する高い抗菌性を有することか
ら、ウドの茎や葉などに含まれる有効成分[(−)−ピ
ラマ−8(14)15−ジエン−19酸、ファルカリン
ジオール、ジヒドロファルカリンジオール、アグノロー
ル(IUPACC名:5,5’ジアリル−2,2’−ジ
ヒドロキシビフェニル)]以外に、ウド根部特有の有効
成分を含むものと考えられる。しかし、ウド根部の有効
成分は、日常食用としているウドから抽出されるもので
あるため、毒性は認めることができず安全性が高いもの
である。
【0013】次に、ウド根部から有効成分を含む抽出物
を製造する方法について説明する。工程(1)におい
て、ウド根部を細断及び/又は粉砕し、それを乾燥して
乾燥断片(例えば、約2mm幅の断片)及び/又は粉末
(以下、まとめて断片と称すことがある)を作る。この
断片を更に粉砕した粉末を用いることもできる。粉砕の
程度は特に限定されない。乾燥の程度も特に限定されな
いが、含有水分が5質量%以下、好ましくは1質量%以
下になるように乾燥するのが好ましい。
【0014】工程(2)において、ウド根部の乾燥断片
を水により煮出して微生物の栄養分となるグルコース、
アミノ酸、蛋白質、炭水化物などの水溶性栄養成分を除
去する。使用する水の量は、ウド根部乾燥断片に対して
3〜25質量倍の水を使用することが好ましく、更に好
ましくはウド根部乾燥断片に対して5〜20質量倍、特
に好ましくは8〜15質量倍の水を使用することが望ま
しい。3質量倍未満の水の使用量では、水が馴染まず現
実的に調製が困難であり、25質量倍を超える水を使用
すると、不経済となる。ウド根部の乾燥断片を水により
煮出す条件は、グルコース、アミノ酸、蛋白質、炭水化
物等の水溶性栄養成分を水中に抽出して除去できるよう
な条件であれば特に限定されないが、約80〜100℃
で約30分〜2時間程度処理することにより、これらの
水溶性栄養成分をほぼ完全に水中に抽出して除去するこ
とができる。
【0015】工程(3)において、微生物の栄養分とな
る水溶性栄養成分を除去したウド根部の断片を、次の工
程(4)において低級アルコール或は低級アルコール以
外の有機溶媒による抽出処理を容易に効率よく行うため
に、乾燥する。乾燥の程度は特に限定されないが、含有
水分が5質量%、好ましくは1質量%以下になるように
乾燥するのが好ましい。
【0016】工程(4)において、乾燥したウド根部の
断片からエタノール、n−プロパノール、i−プロパノ
ール、n−ブタノール、i−ブタノール等の毒性がなく
安全性の高い炭素数2〜10程度の低級アルコールや、
これらの低級アルコールを含む水溶液(例えば、低級ア
ルコール80%の水溶液)、或はこれらの低級アルコー
ル以外のヘキサン、ジエチルエーテル等のエーテル、酢
酸エチル等のエステルなどの毒性がなく安全性の高い有
機溶媒により有効成分を抽出して有効成分を含む低級ア
ルコール或は低級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作
る。
【0017】低級アルコール以外の有機溶媒を用いた場
合は、前記抽出溶液から減圧蒸留等により低級アルコー
ル以外の有機溶媒溶液を取り除き、得られた有効成分を
低級アルコールに溶かし有効成分を含む低級アルコール
溶液を作る。
【0018】これらの低級アルコール或は低級アルコー
ル以外の有機溶媒による抽出は、公知の方法で行うこと
ができる。好ましい方法としては、ソックレー抽出器等
を用いて使用する低級アルコール或は低級アルコール以
外の有機溶媒の沸点下で還流させて抽出する方法を挙げ
ることができる。
【0019】使用する低級アルコール或は低級アルコー
ル以外の有機溶媒の量は、乾燥したウド根部の断片に対
して3〜25質量倍が好ましく、更に好ましくは5〜2
0質量倍、特に好ましくは8〜15質量倍が望ましい。
【0020】3質量倍未満では、大腸菌、黄色ブドウ状
球菌などの細菌に対する高い抗菌性を有する有効成分を
完全に低級アルコール或は低級アルコール以外の有機溶
媒中に抽出できない恐れがあり、25質量倍を超える低
級アルコール或は低級アルコール以外の有機溶媒を使用
すると、前記有効成分以外の雑成分が抽出されて効能が
低下する恐れがあると共に不経済となる。
【0021】次に、工程(5)において、低級アルコー
ルを用いて抽出した場合であっても、必要に応じて前記
抽出溶液から低級アルコールを減圧蒸留等により取り除
き、得られた有効成分を含む混合物(例えば、水中に有
効成分が懸濁した混合物)から再度低級アルコール以外
の有機溶媒により有効成分を抽出して有効成分を含む低
級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作り、次いでこの
抽出溶液から減圧蒸留等により低級アルコール以外の有
機溶媒溶液を取り除き、得られた有効成分を低級アルコ
ールに溶かし有効成分を含む低級アルコール溶液を作
る。工程(5)は例えば、有効成分の濃度の高い低級ア
ルコール溶液を作る場合などに用いられる。
【0022】更に、工程(6)において、工程(4)或
は工程(5)で得られた前記有効成分を含む低級アルコ
ール溶液を水で希釈する。前記有効成分を含む低級アル
コール溶液はそのまま使用することもできるが、通常は
水で希釈して使用に供する。希釈する水としては、有効
成分を含む低級アルコール溶液に対して5〜500質量
倍の水を使用することが好ましく、更に好ましくは6〜
200質量倍、特に好ましくは10〜100質量倍の水
を使用することが望ましい。5質量倍未満の水の使用量
では、有効成分の濃度が高すぎる場合があり、500質
量倍を超える水を使用すると、有効成分の濃度が低くす
ぎて効果が発揮できない恐れがある。
【0023】本発明のウド根部からの抽出物は、通常、
食用に供されているウドから抽出されたものであって、
従来の化学物質を主成分とする製品と異なり、環境汚染
や毒性等が少なく安全に使用できる。このウド根部から
の抽出物には、本発明の主旨を逸脱しない範囲におい
て、酸化防止剤、粘度調整剤、顔料、色素、香料等の添
加剤を添加することができる。
【0024】前記有効成分を含む低級アルコール溶液或
は前記有効成分を含む低級アルコール溶液を適量の水で
水で希釈した本発明のウド根部からの抽出物は、そのま
ま或は、濾過や遠心分離にかけ、固形のゴミ等の不溶物
や不純物を取り除いた後、消毒剤として使用することが
できる。
【0025】本発明の消毒剤は、傷口の消毒、手や身体
の消毒等をはじめ、各種の食器、包丁、まな板などの調
理器具、各種医療器具、原料肉などの各種食品原料、植
物の種子、果実、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥
料等の消毒に有効に用いることができる。
【0026】この消毒剤の使用にあたっては、使用量、
温度、時間などは、対象により異なるので適宜決めるこ
とが好ましい。
【0027】本発明の消毒剤は、消毒する対象物の露出
面を覆うように塗布したり、スプレイしたり、或は消毒
する対象物を消毒剤中に浸漬したりして消毒することが
できる。
【0028】又、本発明の消毒剤には本発明の主旨を逸
脱しない範囲において、他の消毒剤、殺菌剤、殺虫剤、
合成洗剤、石鹸などの成分を添加することができる。
【0029】次に、実施例及び比較例によって本発明を
説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。 (実施例1)ウド根部をカッターで約2mm幅程度に細
断し、それを通風下、常温で約24時間乾燥した乾燥断
片100gを水1kgに浸し、2時間煮沸して、微生物
の栄養分となるグルコース、アミノ酸、蛋白質、炭水化
物などの水溶性栄養成分を水中に抽出して除去した後、
水切り袋に入れ、大気中、室温下で24時間乾燥させ
た。乾燥したウド根部の断片に対して20質量倍の80
%エタノールを添加し、2時間還流した。得られた有効
成分を含むエタノール溶液に対して10質量倍の水によ
り希釈して本発明のウド根部からの抽出物を得た。
【0030】本発明のウド根部からの抽出物を食品分析
した結果、グルコース、アミノ酸、蛋白質、炭水化物な
どの水溶性栄養成分は含まれていなかった。
【0031】このようにして得られた本発明のウド根部
からの抽出物の大腸菌、黄色ブドウ状球菌等の細菌に対
する抗菌性を試験した結果を次に示す。
【0032】(抗菌性試験1)本発明のウド根部からの
抽出物1mlに大腸菌(Escherichia co
li K12及びEscherichia coli
B)を約10 個添加し、室温で30分〜24時間放
置した。放置した菌体液をLB倍地に植菌したところ、
個体・液体倍地ともに大腸菌の増殖は全く認められなか
った。
【0033】(抗菌性試験2)本発明のウド根部からの
抽出物1mlに黄色ブドウ状球菌(Staphyloc
occus aureus)を約10 個添加し、す
ぐに菌体液を20μlLB倍地に植菌したところ、個体
・液体倍地ともに黄色ブドウ状球菌の増殖は全く認めら
れなかった。
【0034】(抗菌性試験3)本発明のウド根部からの
抽出物を更に水で5〜10質量倍希釈し、黄色ブドウ状
球菌(Staphylococcus aureus
を約10 個添加し、室温で30分〜24時間放置し
た。放置した菌体液をLB倍地に植菌したところ、個体
・液体倍地ともに黄色ブドウ状球菌の増殖は全く認めら
れなかった。
【0035】(実施例2)実施例1で得たウド根部から
の抽出物を消毒剤として使用した。よく水洗した包丁に
大腸菌(Escherichia coli K12及
Escherichia coli B)を約10
個植菌したものを、実施例1で得たウド根部からの抽
出物を有効成分とする消毒剤中に、室温で1〜24時間
浸漬して消毒した。消毒した包丁から大腸菌が検出され
なかった。
【0036】(実施例3)実施例1で得たウド根部から
の抽出物を消毒剤として使用した。原料肉に黄色ブドウ
状球菌(Staphylococcus aureu
)を約10 個表面植菌したものを、実施例1で得
たウド根部からの抽出物を有効成分とする消毒剤中に、
室温で60分間浸漬して消毒した。消毒した原料肉から
黄色ブドウ状球菌が検出されなかった。
【0037】(実施例4)実施例1で得たウド根部から
の抽出物を消毒剤として使用した。植物の種子に黄色ブ
ドウ状球菌(Staphylococcus aure
us)を約10 個植菌したものに、実施例1で得た
ウド根部からの抽出物を有効成分とする消毒剤を室温で
スプレーして消毒した。消毒した植物の種子から黄色ブ
ドウ状球菌が検出されなかった。
【0038】(比較例1)ウド根部の乾燥断片を水で煮
沸して微生物の栄養分となるグルコース、アミノ酸、蛋
白質、炭水化物などの水溶性栄養成分を水中に抽出して
除去しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較の
ためのウド根部からの抽出物を得た。このウド根部から
の抽出物を実施例1と同様にして分析した結果、グルコ
ース、アミノ酸、蛋白質、炭水化物などの水溶性栄養成
分が多量に含まれていた。このウド根部からの抽出物を
シャーレに入れて開口したまま空気中に常温で長時間放
置すると微生物の増殖が認められた。このウド根部から
の抽出物は実施例1と同様にして大腸菌、黄色ブドウ状
球菌等の細菌に対する抗菌性を試験した結果、これらの
細菌に対する抗菌性が劣っていた。
【0039】(比較例2)ウドの茎部を用いたこと以外
は実施例1と同様にして比較のためのウド茎部からの抽
出物を得た。このウド茎部からの抽出物を実施例1と同
様にして分析した結果、グルコース、アミノ酸、蛋白
質、炭水化物などの水溶性栄養成分は含まれていなかっ
た。このウド茎部からの抽出物をシャーレに入れて開口
したまま空気中に常温で長時間放置しても微生物の増殖
が認められなかった。このウド茎部からの抽出物は、実
施例1と同様にして大腸菌、黄色ブドウ状球菌等の細菌
に対する抗菌性を試験した結果、これらの細菌に対する
抗菌性が劣っていた。
【0040】(比較例3)ウドの茎部を用いて比較例1
と同様にして比較のためのウド茎部からの抽出物を得
た。このウド茎部からの抽出物を実施例1と同様にして
分析した結果、グルコース、アミノ酸、蛋白質、炭水化
物などの水溶性栄養成分が多量に含まれていた。このウ
ド茎部からの抽出物をシャーレに入れて開口したまま空
気中に常温で長時間放置すると微生物の増殖が認められ
た。このウド茎部からの抽出物を実施例1と同様にして
大腸菌、黄色ブドウ状球菌等の細菌に対する抗菌性を試
験した結果、これらの細菌に対する抗菌性が劣ってい
た。
【0041】上記の実施例1〜4ではいずれもウドの根
部からの抽出物であったが、ウドの他の部分例えば葉
部、小枝部、花部からの抽出物についても実験をしてみ
た。更に、ウドは植物であるため、生育環境や生育時期
によって抽出物中の成分に差異が生じることが十分予想
されるので、その点をも加味して実験を行った。この実
験で用いたウドは梼原産(高知)で、生育時期は9月と
10月のものである。ウドからの抽出物の調製は、各部
分とも共通とし次の方法で行った。
【0042】(ウド抽出物の調製)試料を包丁で細かく
切断して80℃で乾燥した。十分量の蒸留水で1時間水
煮出しした。煮汁を捨てて試料を水道水で洗った後80
℃で乾燥した。10倍量(50g当たり500ml)の
80%エタノールで乾留抽出した。吸引濾過後の抽出液
を水煮抽出物として抗菌活性測定に用いた。
【0043】抗菌活性測定は共通とし、次の接触処理法
により行った。 (接触処理法)滅菌水で適当な濃度に希釈した抽出物1
00μlと滅菌水900μlとを混合した。2×10
個/mlの菌液10μlを添加し、ボルテックスミキサ
ーで懸濁した。30℃30分間静置して接触処理した。
処理液5μlを分取してLBプレート培地上に塗り広げ
た。30℃でコロニーが生じるまで培養した。コロニー
の数を計測した。
【0044】コロニー数の計測結果と抗菌活性結果とを
表1及び表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】これらの結果によると、9月のウドは葉部
の水煮抽出物が最大の抗菌活性(200U/ml)を示
し、茎部に抗菌活性は無かった。根部の抗菌活性は比較
的低かった(50U/ml)。又、9月のウドと比べて
10月のウドは葉部、小枝部に抗菌活性が確認できたが
比較的低かった(50U/ml)。茎部には抗菌活性は
無かった。
【0048】9月のウドでは葉部からの抽出物が最大の
抗菌活性を示した。10月のウドの抗菌活性は9月のウ
ドと比較して、葉部では大きく低化し、小枝部、小根部
では上昇した。9月のウド、10月のウドとも茎部には
抗菌活性は殆ど見られなかった。今回の試験で抗菌成分
がウドの根部だけに存在するのではなく、地上部にも存
在することが分かった。又、葉部の試験結果について、
1回目は抗菌活性が低かったが、2回目以降上昇した。
抗菌成分には活性型と不活性型とがあり、相互に変換反
応が存在する可能性がある。
【0049】次に、産地の異なるウドで実験してみた。
この実験に用いたウドは、群馬産と高知産でいずれも生
育時期は11月のものであり、高知産のウドは先の梼原
産のものではなく窪川産のものである。この窪川産のウ
ドは群馬産のウドと同じ品種である。梼原産のウドは群
馬産のウドとは品種が異なる。
【0050】群馬産のウドと高知窪川産のウドのそれぞ
れ根部から抽出した抽出物を用いて、ブドウ状球菌に対
する抗菌活性の実験を行った。抽出物の調製は先の実験
の場合と同じであるが、この場合は特に乾燥条件が抗菌
活性に与える影響を検討するため、乾燥は80℃と自然
乾燥との二つの方法で行った。抗菌活性の測定方法は先
の実験に準じて行った。
【0051】この実験結果を表3、表4に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】これらの結果によると、群馬産のウドは自
然乾燥の方が80℃乾燥に比してよい結果となった。ド
ラフト乾燥のみで抽出したものについては200U/m
l以上の抗菌活性が認められた。尚、先の実験でのウド
葉部からの抽出物と同様に保存中に抗菌活性が上昇する
傾向があった。
【0055】一方、窪川産のウドも自然乾燥の方が80
℃乾燥に比してよい結果となった。群馬産のウドと窪川
産のウドとを比較すると、抗菌試験の初期は窪川産ウド
の方が高い抗菌活性を示した。最終的に自然乾燥のみで
処理したウドは、群馬産のウド窪川産のウド共どちらも
ほぼ同レベルの抗菌活性を示した。窪川産のウドにおい
ても、保存中に抗菌活性が上昇する傾向がみられた。
【0056】ウドの品種が同じであれば、産地の相違に
よって抗菌活性に多少の相違はみられるが大差ないこと
が分かった。又、ウド根部からの抽出物は、保存中に抗
菌活性が上昇する傾向があること、抗菌活性は80℃乾
燥では上昇し難いこと、2度の乾燥共ドラフト乾燥の方
が良いことが分かった。時間を掛けて自然乾燥したウド
からより高い抗菌活性を有する抽出物が得られると考え
られる。
【0057】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のウド(茎部以外
の部分)からの抽出物は、抗菌性に優れた有効成分を含
む新規抽出物であって、大腸菌、黄色ブドウ状球菌等の
細菌に対して高い抗菌性を有し、グルコース、アミノ
酸、蛋白質、炭水化物等の微生物の栄養となる水溶性栄
養成分が含まれていないと、抽出物を水で希釈して有効
成分の濃度が薄くなっても、保存中に微生物が増殖して
変質することがなく、安定性に優れる上、環境汚染や毒
性等の恐れがなく、安全に使用できるものである。本発
明の請求項1記載のウドからの抽出物は、通常、食用に
供されているウドから抽出されたものであり、従来の化
学物質を主成分とする製品と異なり、環境汚染や毒性等
が少なく安全に使用できる。
【0058】本発明の請求項2記載の製造方法により、
本発明のウドからの抽出物を容易に製造することができ
る。
【0059】本発明の請求項3記載の製造方法により、
エタノール等の低級アルコール或は低級アルコール以外
の有機溶媒に可溶性の有効成分を水中に抽出してしまう
ことなく、微生物の栄養となる水溶性栄養成分を完全に
水中に抽出して除去することができる。
【0060】本発明の請求項4記載の製造方法により、
ウドの有効成分以外の雑成分を抽出することなく、大腸
菌、黄色ブドウ状球菌等の細菌に対する高い抗菌性を有
する有効成分を容易に且つ完全に低級アルコール或は低
級アルコール以外の有機溶媒中に抽出することができ
る。
【0061】本発明の請求項5記載の製造方法により、
ウドの優れた抗菌性を発揮すべく適当な有効成分の濃度
を有する抽出物を得ることができる。
【0062】本発明の請求項6記載の消毒剤は、傷口の
消毒、手や身体の消毒等をはじめとし、各種の食器、包
丁、まな板などの調理器具、各種医療器具、原料肉等の
各種食品原料、植物の種子、果実、医薬品、漢方薬品、
化粧品、飼料、肥料等の消毒に有効に用いることができ
る。この消毒剤は、従来の化学物質を主成分とする製品
と異なり、環境汚染や毒性等が少なく安全に使用でき
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀池 道郎 高知県南国市物部乙200 高知大学農学部 生物資源科学科内 (72)発明者 金 哲史 高知県南国市物部乙200 高知大学農学部 生物資源科学科内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウド(学名:Aralia corda
    ta)の茎部以外の部分からの抽出物であって、大腸
    菌、黄色ブドウ状球菌などの細菌に対する高い抗菌性を
    有する有効成分を含有し、微生物の栄養分となる水溶性
    栄養成分を含有しないことを特徴とするウドからの抽出
    物。
  2. 【請求項2】 下記の工程(1)〜(6)により製造す
    ることを特徴とする請求項1記載のウドからの抽出物の
    製造方法。 工程(1)ウドの茎部以外の部分を細断及び/又は粉
    砕、乾燥してウドの乾燥断片及び/又は粉末を作る工程 工程(2)ウドの乾燥断片及び/又は粉末を水により煮
    出して微生物の栄養分となる水溶性栄養成分を除去する
    工程 工程(3)微生物の栄養分となる水溶性栄養成分を除去
    したウドの断片及び/又は粉末を乾燥する工程 工程(4)乾燥したウドの断片及び/又は粉末から低級
    アルコール或は低級アルコール以外の有機溶媒により有
    効成分を抽出して有効成分を含む低級アルコール或は低
    級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作り、低級アルコ
    ール以外の有機溶媒を用いた場合は前記抽出溶液から低
    級アルコール以外の有機溶媒溶液を取り除き、得られた
    有効成分を低級アルコールに溶かし有効成分を含む低級
    アルコール溶液を作る工程 工程(5)低級アルコールを用いて抽出した場合であっ
    ても必要に応じて前記抽出溶液から低級アルコールを取
    り除き、得られた有効成分を含む混合物から再度低級ア
    ルコール以外の有機溶媒により有効成分を抽出して有効
    成分を含む低級アルコール以外の有機溶媒の溶液を作
    り、次いでこの抽出溶液から低級アルコール以外の有機
    溶媒溶液を取り除き、得られた有効成分を低級アルコー
    ルに溶かし有効成分を含む低級アルコール溶液を作る工
    程 工程(6)工程(4)或は工程(5)で得られた有効成
    分を含む低級アルコール溶液を水で希釈する工程
  3. 【請求項3】 工程(2)においてウドの乾燥断片及び
    /又は粉末に対して3〜25質量倍の水を使用すること
    を特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 工程(4)において、乾燥したウドの断
    片及び/又は粉末に対して3〜25質量倍の低級アルコ
    ール或は低級アルコール以外の有機溶媒を使用すること
    を特徴とする請求項2或は請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 工程(6)において、有効成分を含む低
    級アルコール溶液に対して5〜500質量倍の水を用い
    て希釈することを特徴とする請求項2から請求項4のい
    ずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載のウドの茎部以外の部分か
    らの抽出物を有効成分として含有する消毒剤。
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