JP2001252908A - 難燃性・耐熱性木材の製造方法 - Google Patents

難燃性・耐熱性木材の製造方法

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JP2001252908A
JP2001252908A JP2000064550A JP2000064550A JP2001252908A JP 2001252908 A JP2001252908 A JP 2001252908A JP 2000064550 A JP2000064550 A JP 2000064550A JP 2000064550 A JP2000064550 A JP 2000064550A JP 2001252908 A JP2001252908 A JP 2001252908A
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wood
heat
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boron
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Shiro Saka
志朗 坂
Hisashi Miyato
久士 宮藤
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Sumitomo Forestry Co Ltd
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Sumitomo Forestry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い難燃性と耐熱性を木材に付与することが
できる難燃性・耐熱性木材の製造方法を提供する。 【解決手段】 ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシ
ドおよびリンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種
のキンゾクアルコキシドに、アルカリ金属化合物または
/およびアルカリ土類金属化合物を添加した溶液を木材
中に含浸させ、木材細胞空隙内で、これらを加水分解ま
たは加熱分解し、次いで重縮合させて不燃性の金属酸化
物を生成させることによって、木材に高い難燃性と耐熱
性とを付与することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は難燃化かつ耐熱化した木
材を製造する方法に関する。更に詳細には、ケイ素アル
コキシド、ホウ素アルコキシドおよびリンアルコキシド
から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドにアル
カリ金属化合物または/およびアルカリ土類金属を混合
した溶液を木材中に含浸させて、これらを加水分解また
は過熱分解し、重縮合させることにより、アルカリ金属
化合物または/およびアルカリ土類金属化合物由来の成
分を含有するSiO2、B23、P25などの不燃性の
金属酸化物を生成させることによって木材に難燃性及び
耐熱性を付与して、難燃性・耐熱性木材を製造する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】木材を利用するにあたって、その特徴で
ある「燃える」、「腐る」、「寸法が狂う」といった性
質が欠点となり、そのために利用が制限されていること
が多い。特に平成2年6月に建築基準法が改正され、開
口部に木材が使用できるようになったが、甲種で60
分、乙種で20分という耐火炎貫通遮炎性基準をクリア
せねばならず、木をそのまま使用してもこの基準を越え
ることは難しい。
【0003】本発明者らはこれらの欠点を改良した木材
の開発に鋭意検討した結果、木材にケイ素アルコキシド
を含浸させ、加水分解・重縮合によりケイ素酸化物(S
iO 2)を木材細胞空隙に生成・固定させることによ
り、難燃性、耐腐朽性、寸法安定性に優れた改質木材を
見出した〔日本木材学会誌38(11)、1043(1
992)〕。この製造方法は、金属アルコキシドのゾル
−ゲル法に基づくもので、金属アルコキシド−水−アル
コール−触媒の出発溶液において、金属アルコキシドは
加水分解と自己重縮合により金属酸化物のゾルになる。
溶液は更に反応が進んでゲルとなる。この反応を、木材
細胞内で行わせることで木材の金属酸化物による無機質
複合化は実現する。
【0004】しかしながら、木材と金属酸化物との複合
化のプロセスは、用いる金属アルコキシドの加水分解速
度に大きく依存し、その金属酸化物の木材細胞内分布は
調製条件で大きく異なることがこれまでの研究で明らか
になってきた。例えば、加水分解速度の小さいケイ素ア
ルコキシドを用いた木材の無機質複合化では、用いた木
材が調湿試片(木材中に含まれる水はすべて結合水で細
胞壁内にのみ存在)の場合にはケイ素アルコキシドの加
水分解・重縮合反応は結合水の存在する細胞壁内でのみ
進行し、細胞内腔が空隙の無機質複合化木材が得られ
る。この複合化木材は、木材の有する軽くて強く断熱性
に富む特性を維持したもので、木材の多孔質特性を維持
しながら寸法安定性や難燃性、耐腐朽性を付与した改質
木材となる〔日本木材学会誌39(3)、301(19
93)〕。しかし、用いる木材が飽水試片(細胞壁内の
みならず細胞内腔にも水が満たされたもの)の場合に
は、細胞壁内のみならず、内腔をも金属酸化物が埋め尽
くしたケイ素酸化物による無機質複合化木材となること
が明らかとなった〔日本木材学会誌39(3)、301
(1993)〕。
【0005】ところが、ひとたび用いる金属アルコキシ
ドが変わると全く異なった分布の無機質複合化木材が得
られる。例えば、加水分解速度の大きいチタンアルコキ
シドを用いた場合、調湿試片では細胞内腔のみにチタン
酸化物(TiO2)が生成し、飽水試片では試片の外表
面にのみ酸化物が生成するのみで、試片内部は金属酸化
物による複合化ができない等の知見が得られている〔日
本木材学会誌39(3)、308(1993)〕。
【0006】更に、これらの知見をもとに、金属酸化物
の細胞内分布と付与される機能との関連を調べてみる
と、細胞壁内に選択的に金属酸化物を複合化することに
より、わずかな金属酸化物の生成で効果的に諸機能を発
現しうることが明らかとなった。このような複合化が可
能なものとしてケイ素アルコキシドやホウ素アルコキシ
ド、リンアルコキシドからのSiO2、B23、P25
の金属酸化物による無機質複合化木材が挙げられる。し
かしながら、これらを単独で用いて新建築基準法に適合
した開口部の部材として、或いは建築内装材や外装材と
しても使用しうる難燃効果を達成することは困難であ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような観点からケ
イ素アルコキシド、ホウ素アルコキシド及びリンアルコ
キシドのうち少なくとも2種以上の金属アルコキシドを
用いた無機質複合化木材が検討され、特にこれら全てを
用いた3成分系のSiO2−P25−B23無機質複合
化木材で、極めて高い難燃性が付与されることが明らか
になった。〔日本木材学会誌42(1)、81(199
6)〕。しかしながら、これらの研究は難燃性のみに注
目したもので、同時に耐熱性が重要であることを認識し
たものではない。
【0008】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
新しい建築基準法に基づいて、開口部の部材として適用
できる上に、さらに建築内装材や外装材として使用でき
る難燃かつ耐熱性の木材を容易に且つ確実に製造するこ
とができる製造方法を提供しようとするものである。な
お、本明細書で述べる難燃性とは、昇温を伴う熱処理過
程において、処理試験体の重量減少率が無処理試験体に
比べ緩やかで残存率が高いことを意味し、また、耐熱性
とは重量減少を抑制し、かつ、より高温域まで熱分解を
抑えてその重量を保持できる性質のことを意味してい
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成するため鋭意研究を行った結果、ケイ素アルコキシ
ド、ホウ素アルコキシドおよびリンアルコキシドから選
ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドと、アルカリ
金属化合物または/およびアルカリ土類金属化合物の混
合溶液を木材に含浸させ、その後これらを加水分解もし
くは加熱分解させ更に重縮合させることによって、不燃
性のSiO2、B23、P25の金属酸化物に変え、木
材を難燃かつ耐熱性を有するものに改質しようとするも
のである。この中で、これまでの研究で最も難燃性の高
かったSiO2−B23−P25無機質複合化木材より
もさらに難燃性が向上し、かつ700℃までの高温領域
まで耐熱性を有する新規な難燃性かつ耐熱性の改質木材
が得られ、本発明を完成するに至った。
【0010】従って、本発明はケイ素アルコキシド、ホ
ウ素アルコキシドおよびリンアルコキシドから選ばれる
少なくとも1種の金属アルコキシドの溶液を木材中に含
浸させる際に、アルカリ金属化合物または/およびアル
カリ土類金属化合物を添加して木材細胞空隙内でこれら
を加水分解又は加熱分解し、重縮合させることを特徴と
する難燃性かつ耐熱性の改質木材の製造方法を提供す
る。
【0011】即ち、本発明の改質木材の製造方法におい
ては、ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシドおよび
リンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の金属ア
ルコキシドの溶液を木材に含浸させる際に、アルカリ金
属化合物または/およびアルカリ土類金属化合物を添加
して、ゾル−ゲル法により加水分解又は加熱分解、続い
て重縮合させることによって、ケイ素アルコキシド、ホ
ウ素アルコキシドおよびリンアルコキシドから選ばれる
少なくとも1種の金属アルコキシドを金属酸化物に変化
させることで、非常に優れた難燃かつ耐熱性を木材に付
与することができる。
【0012】本発明の製造方法によれば、木材の持つ本
来の風合いを損なうことなく、新しい建築基準法に基づ
いて、開口部の部材として適用できる上に、更に建築内
装材や外装材として使用できる難燃・耐熱木材を容易か
つ確実に製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明につき更に詳しく説明
すると、本発明の難燃性・耐熱性木材の製造方法は、木
材をケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシドおよびリ
ンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の金属アル
コキシドと、アルカリ金属化合物または/およびアルカ
リ土類金属化合物とを併用して処理するものである。
【0014】ここで、この発明で用いられる原料木材と
しては特に限定されず、例えば原木丸太、製材品、スラ
イス単板、合板、パーティクル状又は繊維状のもの、も
しくはそれらを用いてパーティクルボードやファイバー
ボードにしたもの、さらには木材を代表とする林産資源
及びその廃棄物や、農産及び水産資源及びその廃棄物な
ど地球上に存在するすべてのセルロース系及びリグノセ
ルロース系資源などが挙げられ、それらを加工するため
に用いる樹脂などの種類についても限定されない。
【0015】本発明で用いるケイ素アルコキシド、ホウ
素アルコキシドおよびリンアルコキシドから選ばれる少
なくとも1種の金属アルコキシドは、好ましくは下記一
般式 (1) R1 aM(OR2m-a (1) で示されるものである。
【0016】ここで、Mはケイ素、ホウ素またはリン原
子である。mはケイ素、ホウ素またはリン原子の価数、
aはm未満の自然数または0である。R1およびR2は炭
素原子数1から12、特に1から4の非置換又は置換一
価炭化水素であり、好ましい例としては、メチル、エチ
ル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オク
チル、デシル、ドデシル等のアルキル基が挙げられる。
これらのアルキル基は、たとえば、フッ素、塩素などの
ハロゲン原子で置換されていてもよい。なお、R1およ
びR2としては炭素数が12より大きい、例えばステア
リル基のような長鎖アルキル基になると、乾燥工程の後
も可燃成分として木材中に残るためかえって燃焼を助長
するので、炭素数1から4のメチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピル、ブチル基が特に好ましい。
【0017】上記式(1)で表わされる金属アルコキシ
ドの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラ
ン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシ
シラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキ
シシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロ
ポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルト
リメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロ
ピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラ
ン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テ
トラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのケ
イ素アルコキシド;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチ
ル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチルなどのホウ
素アルコキシド;亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエ
チル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチルなど
のリンアルコキシドが挙げられる。これらのケイ素アル
コキシド、ホウ素アルコキシド、リンアルコキシドはそ
の一種を単独で又は2種以上を併用して用いることがで
きる。例えば、ケイ素アルコキシドとホウ素アルコキシ
ド、ケイ素アルコキシドとリンアルコキシド、ホウ素ア
ルコキシドとリンアルコキシド、ケイ素アルコキシドと
ホウ素アルコキシドとリンアルコキシドとの組合わせな
どが挙げられる。
【0018】本発明で用いるアルカリ金属化合物として
は、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリ
ウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;リチウ
ムアセチルアセトネート、ナトリウムアセチルアセトネ
ート、カリウムアセチルアセトネート等のアルカリ金属
アセチルアセトネート;酢酸リチウム、酢酸ナトリウ
ム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩;シュウ酸リ
チウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム等のア
ルカリ金属シュウ酸塩などが挙げられる。アルカリ土類
金属化合物としてはマグネシウムメトキシド、カルシウ
ムメトキシド、ストロンチウムメトキシド、バリウムメ
トキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド;マグネシ
ウムアセチルアセトネート、カルシウムアセチルアセト
ネート、ストロンチウムアセチルアセトネート、バリウ
ムアセチルアセトネート等のアルカリ土類金属アセチル
アセトネート、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢
酸ストロンチウム、酢酸バリウム等のアルカリ土類金属
酢酸塩、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、
シュウ酸ストロンチウム、シュウ酸バリウム等のアルカ
リ土類金属シュウ酸塩などが挙げられる。このような化
合物を上記した金属アルコキシドに対し、モル比で0.
01以上、好ましくはモル比で0.5以上、より好まし
くは金属アルコキシド1モルに対し1モル以上加えるの
がよい。
【0019】本発明の製造方法は上記のケイ素アルコキ
シド、ホウ素アルコキシドおよぴリンアルコキシドから
選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドの溶液にア
ルカリ金属化合物または/およびアルカリ土類金属化合
物を加え、これに調湿木材を含浸させ、加水分解又は加
熱分解、続いて重縮合させることによって金属酸化物を
生成し、木材を乾燥させて製造するものである。
【0020】ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシド
およびリンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の
金属アルコキシドの溶液を作る際には、それらそのまま
の溶液を用いてもよく、また、アルコール、アセトン、
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素のような溶媒で希釈し
たものを用いてもよい。ケイ素アルコキシド、ホウ素ア
ルコキシドおよびリンアルコキシドから選ばれる1種の
金属アルコキシドの単独溶液又は2種以上の金属アルコ
キシドの混合溶液に、アルカリ金属化合物または/およ
びアルカリ土類化合物を添加した溶液を木材に含浸させ
る場合には、木材は調湿状態でも飽水状態でもいずれで
もかまわないが、予め木材の水分含有率を10から50
重量%に調湿しておくことが好ましい。アルカリ金属化
合物または/およびアルカリ土類金属化合物を添加した
金属アルコキシドの溶液に木材を浸漬するか、この溶液
を木材に減圧又は加圧注入法により適用するのがよい。
次に、金属アルコキシドにアルカリ金属化合物または/
およびアルカリ土類金属化合物を添加した溶液を含浸さ
せた木材を、木材が熱分解しない範囲、好ましくは50
から110℃で乾燥する。この過程で金属アルコキシド
は加水分解及び加熱分解、続いて重縮合し金属酸化物に
変化する。加水分解工程は、酸性触媒、アルカリ性触
媒、金属有機酸塩、有機金属化合物等の混合触媒を用い
てもよい。金属アルコキシドを含浸させた木材を加熱乾
燥することにより、これらの金属アルコキシドを完全に
金属酸化物に変化させることもできる。
【0021】上記アルカリ金属化合物または/およびア
ルカリ土類金属化合物を添加した金属アルコキシドの単
独溶液又は混合溶液を木材に含浸させ、室温で1から7
日程度10から15mmHgの減圧下で保持し、液から
取り出し、室温下で1日程度放置した後、50から11
0℃で半日から2日程度加熱乾燥することが好ましい。
【0022】
【発明の効果】本発明に係る難燃性・耐熱性木材の製造
方法によれば、ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシ
ドおよびリンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種
の金属アルコキシドと共にアルカリ金属化合物または/
およびアルカリ土類金属化合物を用いることによって、
金属アルコキシド単独使用に比べ、より高い難燃性かつ
耐熱性を木材に付与することができる。また、本発明で
は木材固有の多孔性、低比重、易加工性(切削性、保釘
力、接着性、塗装性等)を阻害することなく耐腐朽性能
及び寸法安定性も付与することができる。本発明に係る
難燃性・耐熱性木材の製造方法を実施することによっ
て、新建築基準法に適合した開口部の部材として、或い
は建築内装材や外装材としても使用し得る難燃かつ耐熱
化された木材を大量生産することができる等の特徴を有
するものである。
【0023】実施例 次に実施例と比較例を挙げて本発明の内容を詳しく説明
するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるもので
はない。
【0024】実施例1メチルトリメトキシシランとナトリウムメトキシドを用
いた難燃性・耐熱性木材の製造 (1)難燃性・耐熱性木材の製造 アセトン及び水によりそれぞれ24時間ソックスレー抽
出したベイツガ辺材(30mm×30mm、厚さ5m
m)を試験片として用いた。この試験片の含水率は約2
5%であった。メチルトリメトキシラン[CH3Si
(OCH33]、メチルアルコール[CH3OH]、酢
酸からなる反応溶液(モル比0.03:1:0.01)
にナトリウムメトキシドをモル比で0.06添加した反
応溶液を用い、この中にベイツガの試験片を室温で浸漬
し、15mmHgの減圧下で3日間含浸処理した。その
後試験片を60℃で24時間、105℃で24時間加熱
処理し、試験片中でのゲルの熟成を行ってNa2O S
iO2無機質複合化木材を得た。 (2)難燃性・耐熱性木材の評価 〔A〕 この改質木材における金属酸化物等による重量
増加率(WPG)は以下に示す表1から判るように2
6.0%であった。この試験片を用い、熱重量測定装置
による測定を行った結果は図1の通りで、250℃付近
で重量減少が見られるが、約650℃まで表面燃焼が抑
えられた結果、300℃から650℃までの重量減少が
少なくなっており、難燃性が発現されていることが分か
る。さらに、示差熱分析装置による測定結果は図2の通
りで、250℃ 300℃付近でわずかな発熱が見られ
るが、その後は約650℃まで表面燃焼が抑えられてお
り、無処理木材(比較例1)で見られる350℃付近で
の発炎燃焼及び430℃付近で見られる表面燃焼が、完
全に抑えられ極めて高い難燃かつ耐熱性が発現されたこ
とを示している。さらに、650℃以上の温度での急激
な発熱は、該処理木材の耐熱性が650℃までの温度領
域で保持されていることを示している。燃焼実験の結果
は図3の通りで、炭化部は小さく、燃焼が抑えられてお
り、高い難燃性と耐熱性が得られていることが分かる。
【0025】〔B〕 改質木材の物性測定は下記の方法
で行った。 1)重量増加率(WPG) アセトン及び水によりそれぞれ24時間ソックスレー抽
出した未処理試験片の絶乾重量(Wu)を求める。次
に、この試験片を無機質複合化した後105℃で24時
間乾燥して、改質木材の絶乾重量(Wt)を求めて、以
下の式から改質木材の重量増加率(WPG)を算出す
る。 WPG(%)=[(Wt−Wu)/Wu]×100 2)熱重量測定 熱重量測定装置((株)島津製作所製 TGA−50)
により、改質木材の昇温過程での重量変化のTG曲線を
得る。ここで、170℃での重量を100%とし、重量
変化が残存率(%)として示される。なお、残存率は木
材及び処理木材の熱処理過程での難燃性および耐熱性の
指標となるもので、その値が大きい程、難燃性、耐熱性
が高いことを意味している。 3)示差熱分析 示差熱分析装置((株)島津製作所製 DTA−50)
により、改質木材の昇温過程でのDTA曲線を得る。こ
こでの発熱量は、無処理木材および処理木材の熱処理過
程での難燃性および耐熱性の指標となるもので、発熱量
が少ないほど難燃かつ耐熱性に優れていることを意味し
ている。また、急激な発熱ピークによりその耐熱性の限
界を知ることが可能である。 4)燃焼実験 未処理試験片(30mm×5mm×5mm)と改質木材
(30mm×5mm×5mm)を床面に対して30度傾
けた状態で、お互いの先端が接触するようにV字型にセ
ットし、その接触した先端部からバーナーにて加熱を行
った。5秒間加熱し、その燃焼状態の違いについて観察
した。
【0026】〔C〕 実施例1で得られたNa2O−S
iO2無機質複合化木材の難燃・耐熱機構について解明
するため、それらを様々な温度で処理し、顕微鏡観察を
行った結果を図4に示す。図中(a)は室温、(b)は
300℃、(c)は450℃、(d)は650℃処理で
あり、(e)は(d)の拡大図である。室温処理
((a))で細胞内腔に無機物が見られるが、300℃
処理及び450℃処理((b)及び(c))では見られ
ないことから、温度上昇と共に無機物が溶融し、細胞壁
表面および細胞壁内を被覆することで、木材への熱及び
酸素の供給が遮断され、かつ細胞内ではアルカリ金属成
分による炭化作用により、高い難燃性と耐熱性が得られ
たものと考えられる。しかしながら、650℃処理
((d)及び(e))で再び細胞内腔に無機物が観察さ
れたことから、アルカリ金属成分の移動と化学変化によ
り650℃付近以上で表面燃焼が起こったものと推察し
た。
【0027】さらに、燃焼実験後の改質木材試験片内部
について電子顕微鏡観察を行った結果を図5に示す。な
お、(a)は無処理の燃焼試験後、(b)はNa2
SiO2無機質複合化木材の燃焼試験後、(c)は
(b)の拡大図である。改質木材内部に発泡構造が形成
されていることが分かる。この発泡構造による断熱効果
により熱の供給が妨げられたことも、高い難燃性かつ耐
熱性が得られた要因の一つであると思われる。
【0028】実施例2メチルトリメトキシシランと酢酸ナトリウムを用いた難
燃性・耐熱性木材の製造 実施例1において、ナトリウムメトキシドの代わりに酢
酸ナトリウムを用いて同様の操作法によってNa2O−
SiO2無機質複合化木材を得た。得られた結果は、表
1、図1及び図2の通りであり実施例1と同様、極めて
優れた難燃性・耐熱性が示された。
【0029】比較例1無処理木材の特性 実施例1および2と同様の条件にて、無処理木材に対し
熱重量測定装置による測定、示差熱分析による測定及び
燃焼実験を行った。得られた結果は、図1、図2および
図3に示す通り350℃付近で発炎燃焼、430℃付近
で表面燃焼により発熱し重量減少して、難燃性・耐熱性
が極めて低いことが示された。図3において、試験片の
長さが他の試験片に比べ短いのは、完全燃焼し灰化して
しまったためである。
【0030】比較例2メチルトリメトキシシラン単独による木材の改質 アセトン及び水によりそれぞれ24時間ソックスレー抽
出したベイツガ辺材(30mm×30mm、厚さ5m
m)を調湿して得られた含水率が約25%の試験片に、
メチルトリメトキシラン、メタノール、酢酸からなる反
応溶液(モル比0.03:1:0.01)を減圧下で3
日間室温にて含浸した。その後試験片を60℃で24時
間、105℃で24時間処理し、ゲルの熟成を行ってS
iO2無機質複合化木材を得た。この複合化木材の金属
酸化物による重量増加率(WPG)は11.0%であっ
た。この試験片を用い、熱重量測定装置による測定、示
差熱分析装置による測定及び燃焼実験を行った。得られ
た結果は、図1、図2及び図3に示す通りで、無処理木
材(比較例1)よりも難燃性は向上しているものの、そ
の効果は低い。
【0031】実施例3ホウ酸トリメチルとナトリウムメトキシドを用いた難燃
性・耐熱性木材の製造 実施例1において、メチルトリメトキシシランの代わり
にホウ酸トリメチルを用いて同様の操作法によってNa
2O−B23無機質複合化木材を得た。得られた結果
は、表1、図6及び図7の通りであり、約700℃まで
表面燃焼が抑えられた結果、400℃から700℃での
重量減少が少なく、極めて高い難燃性及び耐熱性が示さ
れた。
【0032】比較例3ホウ酸トリメチル単独による木材の改質 比較例2で、メチルトリメトキシシランの代わりにホウ
酸トリメチルを用い、反応溶液中でのそのモル比を1と
して同様の操作法によりB23無機質複合化木材を得
た。得られた結果は、表1、図6及び図7の通りであ
り、難燃性は示されているが、重量が400℃から80
0℃まで徐々に減少し、耐熱性に乏しいことが明らかで
ある。
【0033】実施例4メチルトリメトキシシラン、ホウ酸トリメチルおよびナ
トリウムメトキシドを用いた難燃性・耐熱性木材の製造 アセトン及び水によりそれぞれ24時間ソックスレー抽
出したベイツガ辺材(30mm×30mm、厚さ5m
m)を調湿して得られた含水率が約25%の試験片に、
メチルトリメトキシラン、ホウ酸トリメチル、メチルア
ルコール、酢酸からなる反応溶液(モル比0.03:
0.003:1:0.01)にナトリウムメトキシドを
モル比で0.03添加した反応溶液を用い、この中にベ
イツガの試験片を室温で浸漬し、15mmHgの減圧下
で3日間含浸処理した。その後試験片を60℃で24時
間、105℃で24時間加熱処理し、試験片中でのゲル
の熟成を行ってNa2O−SiO2−B23無機質複合化
木材を得た。得られた結果は、表1、図8及び図9の通
りであり、約700℃まで表面燃焼が抑えられた結果、
400℃から700℃での重量減少が少なく、極めて高
い難燃性及び耐熱性が示された。
【0034】比較例4テトラエトキシシランおよびホウ酸トリメチルの金属ア
ルコキシド単独による木材の改質 アセトン及び水によりそれぞれ24時間ソックスレー抽
出したベイツガ辺材(30mm×30mm、厚さ5m
m)を調湿して得られた含水率が約25%の試験片に、
テトラエトキシシラン、ホウ酸トリメチル、エチルアル
コール、酢酸からなる反応溶液(モル比1:0.1:
1:0.01)を用い、この中にベイツガの試験片を室
温で浸漬し、15mmHgの減圧下で3日間含浸処理し
た。その後試験片を60℃で24時間、105℃で24
時間加熱処理し、試験片中でのゲルの熟成を行ってSi
2−B23無機質複合化木材を得た。得られた結果
は、表1、図8及び図9の通りであり、難燃性は示され
ているが、重量が400℃から600℃まで徐々に減少
し、耐熱性に乏しいことが明らかである。
【0035】比較例5テトラエトキシシラン、ホウ酸トリメチルおよび亜リン
酸トリメチルの金属アルコキシド単独による木材の改質 比較例4で、反応溶液にさらに亜リン酸トリメチルを、
反応溶液中でのそのモル比を0.1として加え、同様の
操作法によりSiO2−B23−P25無機質複合化木
材を得た。得られた結果は、表1、図8及び図9の通り
であり、難燃性は示されているが、重量が300℃から
600℃まで徐々に減少し、耐熱性に乏しいことが明ら
かである。
【0036】
【表1】
【0037】上記実施例及び比較例での熱重量測定、示
差熱分析および燃焼実験の結果から明らかなように、金
属アルコキシド単独のみの含浸系(比較例)に比べ、ア
ルカリ金属化合物または/およびアルカリ土類金属化合
物を併用した系(実施例)では残存率が大きく、さらに
急激な発熱反応が650から700℃のかなりの高温領
域まで抑えられており、これらの化合物添加が難燃性の
みならず耐熱性向上に、大きく寄与していることが明ら
かとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例および比較例で得られた改質木
材の重量増加率(WPG)の測定結果を示す。
【図2】図2は、実施例および比較例で得られた改質木
材の示差熱分析装置により測定した示差熱分析結果を示
す。
【図3】図3は、実施例および比較例で得られた改質木
材の燃焼実験の結果を示す。
【図4】図4は、実施例1で得られた難熱性・耐熱性木
材を様々な温度で処理した後の走査型電子顕微鏡観察の
結果を示す。
【図5】図5は、実施例1で得られた難燃性・耐熱性木
材を燃焼実験した後の木材内部の走査型電子顕微鏡観察
の結果を示す。
【図6】図6は、実施例および比較例で得られた改質木
材の重量増加率(WPG)の測定結果を示す。
【図7】図7は、実施例および比較例で得られた改質木
材の示差熱分析装置により測定した示差熱分析結果を示
す。
【図8】図8は、実施例および比較例で得られた改質木
材の重量増加率(WPG)の測定結果を示す。
【図9】図9は、実施例および比較例で得られた改質木
材の示差熱分析装置により測定した示差熱分析結果を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮藤 久士 京都府宇治市五ヶ庄京大宿舎9−542 Fターム(参考) 2B230 CA01 CA02 CA15 CA19 CA30

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシ
    ドおよびリンアルコキシドから選ばれる少なくとも1種
    の金属アルコキシドに、アルカリ金属化合物または/お
    よびアルカリ土類金属化合物を混合した溶液を木材中に
    含浸させ、木材細胞空隙内でこれらを加水分解又は加熱
    分解し、重縮合させることを特徴とする難燃性・耐熱性
    木材の製造方法。
  2. 【請求項2】 金属アルコキシドとして、ケイ素アルコ
    キシドを用いる、請求項1に記載の難燃性・耐熱性木材
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 金属アルコキシドとして、ホウ素アルコ
    キシドを用いる、請求項1に記載の難燃性・耐熱性木材
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 金属アルコキシドとして、リンアルコキ
    シドを用いる、請求項1に記載の難燃性・耐熱性木材の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 金属アルコキシドとして、ケイ素アル
    コキシドおよびホウ素アルコキシドを用いる、請求項1
    に記載の難燃性・耐熱性木材の製造方法。
  6. 【請求項6】 金属アルコキシドとして、ケイ素アルコ
    キシドおよびリンアルコキシドを用いる、請求項1に記
    載の難燃性・耐熱性木材の製造方法。
  7. 【請求項7】 金属アルコキシドとして、ホウ素アルコ
    キシドおよびリンアルコキシドを用いる、請求項1に記
    載の難燃性・耐熱性木材の製造方法。
  8. 【請求項8】 金属アルコキシドとして、ケイ素アルコ
    キシド、ホウ素アルコキシドおよびリンアルコキシドを
    用いる、請求項1に記載の難燃性・耐熱性木材の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 金属アルコキシドが下記一般式(1) R1 aM(OR2m-a (1) (式中、R1およびR2は炭素原子数1から12の非置換
    又は置換一価炭化水素を示し、Mはケイ素、ホウ素また
    はリン原子、mはケイ素、ホウ素またはリン原子の価
    数、aはm未満の自然数または0である。)で示される
    ものである請求項1から8のいずれかに記載の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014516837A (ja) * 2011-07-11 2014-07-17 エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー 木材を処理するための方法および組成物

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