JP2001242498A - 強誘電体の分極反転方法、並びに光波長変換素子およびその作製方法 - Google Patents

強誘電体の分極反転方法、並びに光波長変換素子およびその作製方法

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JP2001242498A
JP2001242498A JP2000050587A JP2000050587A JP2001242498A JP 2001242498 A JP2001242498 A JP 2001242498A JP 2000050587 A JP2000050587 A JP 2000050587A JP 2000050587 A JP2000050587 A JP 2000050587A JP 2001242498 A JP2001242498 A JP 2001242498A
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ferroelectric
electric field
crystal
polarization
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JP2000050587A
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English (en)
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Yasukazu Nihei
靖和 二瓶
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Fujifilm Holdings Corp
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Fuji Photo Film Co Ltd
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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 単分極化された強誘電体結晶の一表面に、所
定のパターンを有する電極を形成し、この電極を介して
強誘電体結晶の表裏に電場を印加することにより、該強
誘電体結晶に前記電極のパターンに対応した局部的な分
極反転部を形成する方法において、面内で均一に分極反
転の成長を制御可能とする。 【解決手段】 単分極化された強誘電体結晶1の一表面
1aに、所定のパターンを有する電極2を形成し、この
電極2を介して強誘電体結晶1の表裏に電場を印加する
ことにより、該強誘電体結晶1に電極2のパターンに対
応した局部的な分極反転部を形成する方法において、前
記電場の印加を、電場印加条件を変えて2段階以上に分
けて行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は強誘電体の分極反転
方法に関し、さらに詳しくは、分極反転の成長を強誘電
体各部で均一に制御できるようにした強誘電体の分極反
転方法に関するものである。
【0002】また本発明は、上述のような強誘電体の分
極反転方法を応用した光波長変換素子の作製方法およ
び、その方法により作製された光波長変換素子に関する
ものである。
【0003】
【従来の技術】非線形光学効果を有する強誘電体の自発
分極(ドメイン)を周期的に反転させた領域を設けた光
波長変換素子を用いて、基本波を第2高調波に波長変換
する方法が既にBleombergenらによって提案されている
(Phys.Rev.,Vol.127,No.6,1918(1962)参照)。この方
法においては、分極反転部の周期Λを、 Λc=2π/{β(2ω)−2β(ω)} ……(1) ただしβ(2ω)は第2高調波の伝搬定数 β(ω)は基本波の伝搬定数 で与えられるコヒーレント長Λcの整数倍になるように
設定することで、第2高調波の位相整合を取ることがで
きる。非線形光学材料のバルク結晶を用いて波長変換す
る場合は、位相整合する波長が結晶固有の特定波長に限
られるが、上記の方法によれば、任意の波長に対して
(1)式を満足する周期Λを選択することにより、効率良
く位相整合(いわゆる疑似位相整合)を取ることが可能
となる。
【0004】上述のような周期分極反転構造を形成する
方法の1つとして、特開平7−72521号に示される
ように、単分極化された非線形光学効果を有する強誘電
体結晶の一表面に所定のパターンの周期電極を形成した
後、この電極と、上記一表面と反対の表面側に配したコ
ロナワイヤーとにより強誘電体結晶をコロナ帯電させて
そこに電場を印加し、該強誘電体結晶の上記電極に対向
する部分を局部的な分極反転部とする方法が知られてい
る。
【0005】またこのコロナ帯電を利用する他、例えば
特開平4−335620号に示されるように、所定パタ
ーンの周期電極を形成した表面の反対側の強誘電体表面
に全面電極を形成し、この全面電極と周期電極とにより
強誘電体に直接的に電場を印加して、局部的な分極反転
部を形成する方法も知られている。
【0006】なお、以上説明した従来方法で強誘電体の
分極を反転させる場合、いずれの方法においても、印加
電圧や印加電流等の電場印加条件は、電場印加を開始し
てから分極反転が終了するまでの間ずっと一定に保つよ
うにしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のよう
な電極を用いて強誘電体結晶に分極反転部を形成する場
合、分極反転のパターンが微細になるほど、面内(周期
電極を形成した表面と平行な面内)で均一に分極反転の
成長を制御することは困難となっている。
【0008】つまり、面内のある部分では分極反転が十
分に進行していないのに、他の部分では分極反転が進行
して分極反転部が広く形成されてしまう、といったこと
が起こり得る。例えば、周期電極を用いて非線形光学結
晶に周期分極反転構造を形成する場合は、周期電極の周
期が短くなるほど、隣接する分極反転部同士がつながる
ことが起こりやすくなり、周期分極反転構造の周期を均
一にすることが困難になる。
【0009】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
であり、微細な分極反転のパターンを形成する場合で
も、面内で均一に分極反転の成長を制御することができ
る強誘電体の分極反転方法を提供することを目的とす
る。
【0010】また本発明は、強誘電体である非線形光学
結晶に周期性の優れた周期分極反転構造を形成すること
ができる、光波長変換素子の作製方法を提供することを
目的とする。
【0011】さらに本発明は、周期分極反転構造の周期
性が優れた光波長変換素子を提供することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による第1の強誘
電体の分極反転方法は、前述したように単分極化された
強誘電体結晶の一表面に、所定のパターンを有する電極
を形成し、この電極を介して前記強誘電体結晶の表裏に
電場を印加することにより、該強誘電体結晶に前記電極
のパターンに対応した局部的な分極反転部を形成する方
法において、前記電場の印加を、電場印加条件を変えて
2段階以上に分けて行なうことを特徴とするものであ
る。
【0013】なお、この強誘電体の分極反転方法におい
ては、上記2段階以上の電場印加のうち第1段階の電場
印加を、それ以降の段階より比較的高電場かつ比較的短
時間の電場印加条件で行なうことが望ましい。より具体
的に、この第1段階の電場印加は、印加電圧5kV以
上、印加電流1000μA以上、印加時間10ms以下の条件
で行なうのが望ましい。
【0014】また、本発明による第2の強誘電体の分極
反転方法は、前述したように単分極化された強誘電体結
晶の一表面に、所定のパターンを有する電極を形成し、
この電極を介して前記強誘電体結晶の表裏に電場を印加
することにより、該強誘電体結晶に前記電極のパターン
に対応した局部的な分極反転部を形成する方法におい
て、電場印加を行なう前に、強誘電体結晶に対して降下
温度幅ΔT=50℃以上の降温熱処理を施すことを特徴と
するものである。
【0015】より具体的に上記降温熱処理は、降温速度
Δv=−1℃/s以上(絶対値が1以上ということを意
味する)として行なうのが望ましい。またこの降温熱処
理は、強誘電体結晶に低温気体を吹き付けたり、あるい
は、室温以下の雰囲気中に強誘電体結晶を放置すること
によってなされ得る。
【0016】なお、以上説明した本発明による第1およ
び第2の強誘電体の分極反転方法は、前記強誘電体結晶
の一表面と反対側の表面側にコロナワイヤーを配し、こ
のコロナワイヤーと前記電極とを用いて、コロナ帯電法
により前記電場の印加を行なう場合に適用されると特に
効果的である。
【0017】また、本発明による第1および第2の強誘
電体の分極反転方法は、強誘電体結晶が、LiNb
1−x (0≦x≦1)結晶、またはそれにMg
O、ZnOもしくはScがドープされた結晶である場合
に適用されると特に効果的である。
【0018】他方、本発明による光波長変換素子の作製
方法は、以上説明した本発明による強誘電体の分極反転
方法において、前記単分極化された強誘電体結晶として
非線形光学結晶を用いるとともに、前記電極として周期
パターンを有する周期電極を用い、前記非線形光学結晶
に前記電極の周期パターンに対応した周期分極反転構造
を形成することを特徴とするものである。
【0019】この本発明による光波長変換素子の作製方
法においては、前記電極の周期パターンの線幅を0.3μ
m以下として、1.0μm〜4.6μmの周期で分極反転部が
繰り返す周期分極反転構造を形成することが望ましい。
【0020】
【発明の効果】一般に強誘電体の分極を反転させる際に
は、まず反転の核が発生し、その反転核を中心に反転成
長して行くことが実験により確認されている。そして、
先に述べた通り従来方法では、電場印加を開始してから
分極反転が終了するまでの間電場印加条件をずっと一定
に保つようにしているため、上記の反転核発生と反転成
長とが同時に促進されるようになる。つまり、強誘電体
の反転核発生部でも未発生部でも反転成長が並行して進
行するため、電場印加の初期の段階で反転核が高密度に
発生した部分では分極反転部が既に比較的広く成長して
いるのに対し、電場印加の初期の段階で反転核がまばら
に発生した部分では分極反転部が余り成長していないと
いうように、強誘電体の面内において分極反転の成長が
不均一になってしまうのである。
【0021】そこで、反転核がまばらに発生した部分に
おいて分極反転部が所望の広さに成長するまで電場印加
を続けていると、反転核が高密度に発生した部分では分
極反転部が成長し過ぎて、隣接する微細パターンの分極
反転部同士がつながってしまう、といった不都合が発生
する。このようなことがあるため、前述した光波長変換
素子の周期分極反転構造を形成する際には、分極反転部
の周期が短いほど隣接する分極反転部同士がつながりや
すくなり、均一な分極反転パターンを得ることが困難と
なる。
【0022】それに対して本発明による第1の強誘電体
の分極反転方法においては、強誘電体結晶に対する電場
印加を、電場印加条件を変えて2段階以上に分けて行な
うようにしたので、第1段階では強誘電体の面内のあら
ゆる部分で反転核が高密度に発生し得るような電場印加
条件を設定し、それに続く段階では分極反転を成長させ
るのに適した電場印加条件を設定することが可能とな
り、強誘電体の面内で均一に分極反転の成長を制御でき
るようになる。そこで、微細な分極反転のパターンを形
成する場合でも、隣接する分極反転部同士がつながって
しまうことを防止可能となる。
【0023】基本的には、第1段階の電場印加条件を、
それ以降の段階より比較的高電場かつ比較的短時間の条
件とすれば、上述したように強誘電体の面内のあらゆる
部分で反転核を高密度に発生させることができる。その
ような電場印加条件とは、より具体的には、前述したよ
うに印加電圧5kV以上、印加電流1000μA以上、印加
時間10ms以下の条件である。
【0024】なお、上記第1段階で設定する比較的高電
場の電場印加条件をそのままずっと最後まで保持する
と、強誘電体にヒビが入ったり、最悪の場合は強誘電体
が破壊することもある。そこで、第2段階以降における
分極反転を成長させるのに適した電場印加条件とは、一
般には、第1段階よりも低電場の条件となる。
【0025】また、本発明による第2の強誘電体の分極
反転方法において、電場印加を行なう前に、強誘電体結
晶に対して降下温度幅ΔT=50℃以上の降温熱処理を施
すと、焦電効果によって、強誘電体の面内のあらゆる部
分で反転核を高密度に発生させることができる。
【0026】すなわち、強誘電体は一般に焦電特性を有
し、温度変化に伴う自発分極の増減に比例して表面に電
荷が生じる。特に急激に温度変化した場合は、瞬間的に
分極変化に伴う高い表面電荷が生じる。そして、温度降
下時に生じる表面電荷は自発分極の逆の極性となるた
め、分極反転が生じ、反転核が発生する。
【0027】このようにして反転核を発生させる際に、
降下温度幅ΔT=50℃以上とすれば、反転核を高密度に
発生させることができるので、それに引き続いて電場印
加を行なえば、強誘電体の面内で均一に分極反転の成長
を制御できるようになる。そこで、微細な分極反転のパ
ターンを形成する場合でも、隣接する分極反転部同士が
つながってしまうことを防止可能となる。
【0028】なお上記降温熱処理において、降温速度Δ
v=−1℃/s以上としておけば、より高密度に反転核
を発生させることができる。通常は、例えば強誘電体を
100℃から自然冷却させる場合等でも、降温速度Δvは
−1℃/s以上となる。ただし、特にこの降温速度Δv
を規定しなくても、本発明の目的を達成できる程度に高
密度に反転核を発生させることは可能である。
【0029】他方、本発明による光波長変換素子の作製
方法は、以上説明した第1あるいは第2の強誘電体の分
極反転方法を適用して周期分極反転構造を形成するもの
であるから、分極反転部の周期が非常に小さい場合で
も、隣接する分極反転部同士がつながってしまうことを
防止して、分極反転部の周期性が良好で波長変換特性の
優れた光波長変換素子を作製可能となる。本発明による
光波長変換素子はこの方法によって作製されたものであ
るから、波長変換特性に優れたものとなる。
【0030】なお、本発明による光波長変換素子の作製
方法において、電極の周期パターンの線幅を0.3μm以
下として、1.0μm〜4.6μmの周期で分極反転部が繰り
返す周期分極反転構造を形成すれば、波長が 640nm〜
940nmの範囲にある基本波が入射されたとき、上記周
期を疑似位相整合のための1次の周期として、波長が32
0nm〜 470nmの範囲にある第2高調波を生成する光
波長変換素子を得ることも可能になる。このような光波
長変換素子は、紫外域の第2高調波を得る上で極めて有
用なものである。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態
による強誘電体の分極反転方法の工程を概略的に示すも
のである。本実施形態では、強誘電体結晶として非線形
光学結晶を用いるとともに、電場印加用の電極として周
期パターンを有する周期電極を用い、非線形光学結晶に
上記電極の周期パターンに対応した周期分極反転構造を
形成して、光波長変換素子を作製する。
【0032】この図1中、1は非線形光学効果を有する
強誘電体である、MgOが5mol%ドープされたLiN
bO(MgO−LN)結晶の基板である。このMg
O−LN基板1は単分極化処理がなされて厚さ0.3 mm
に形成され、最も大きい非線形光学定数d33が有効に
利用できるようにZ面でカット、光学研磨されている。
【0033】このMgO−LN基板1の−Z面1a上に
Crをスパッタして例えば厚さ50nmのCr薄膜を形成
した後、フォトリソグラフィーとドライエッチングによ
り、同図(1)に示されるCr薄膜からなる周期電極2
を形成する。この周期電極2は、図2に概略平面形状を
示す通り、例えば基板1のX軸方向に一定の周期Λで繰
り返す多数の電極指2aを備えてなるものである。な
お、これらの電極指2aは全て共通の基部から延ばされ
たもので、互いに電気的に導通する状態となっている。
【0034】図2に示される通り、本例において周期電
極2の長さ(X軸方向寸法)は5mm、幅(Y軸方向寸
法)は2mmである。そして周期電極2の周期Λ、つま
り電極指2a部分のピッチは2.4μmである。この周期
Λ=2.4μmは、後述するように紫外域の第2高調波を
得るために設定されたものであって、可視域の第2高調
波を得る場合よりも極めて小さい。
【0035】次に図1(2)に示すように、周期電極2
を接続線3を介して高圧電源4に接続するとともに、M
gO−LN基板1の+Z面1bに向かい合う位置に配し
たコロナワイヤー5を、接続線6を介して高圧電源4に
接続する。それによりMgO−LN基板1に、コロナ帯
電により電場が印加される。なお本実施形態では、電場
印加時の温度は60℃である。
【0036】この電場印加により、図1(3)に示すよ
うに、MgO−LN基板1の−Z面1aの周期電極2が
形成されていた箇所から+Z面1bまで貫通する分極反
転部7が形成される。これらの分極反転部7は、周期電
極2の周期Λと同じ周期で繰り返して、周期分極反転構
造を構成するものとなる。
【0037】このとき電場印加は、条件をそれぞれ変え
て2段階に行なわれる。図3は、この電場印加時の印加
電流波形を示すものである。図示されるように第1段階
の電場印加は、印加電流を−2000μA(印加電圧10k
V)、印加時間を2.5ms(ミリ・秒)に設定してなさ
れる。そしてそれに続く第2段階の電場印加は、印加電
流を−600μA(印加電圧3kV)、印加時間を1sに
設定してなされる。
【0038】以上のように、第1段階の電場印加条件
を、第2段階より比較的高電場かつ比較的短時間の条件
とすれば、MgO−LN基板1のZ面内のあらゆる部分
で反転核を高密度に発生させることができる。また、電
場印加時間を比較的短くしているから、高電場であって
も、MgO−LN基板1の破壊を招くようなことはな
い。そして第2段階の電場印加条件を、比較的低電場か
つ比較的長時間の条件とすることにより、この第2段階
において、MgO−LN基板1の破壊を防止しつつ反転
成長を促進させることができる。このようにすることに
より、分極反転のパターンが微細であっても、隣接する
分極反転部同士がつながってしまうことを防止可能とな
る。
【0039】図4は、本実施形態の方法により分極反転
させる場合の、MgO−LN基板1のZ面内での分極反
転部の成長の様子を概略的に示すものである。同図中斜
線を付した部分が、分極反転部を示している。また同図
の(1)、(2)がそれぞれ、第1段階、第2段階の電
場印加が終了した時点の状態を示している。
【0040】一方図6には、従来方法により分極反転さ
せる場合の、分極反転部の成長の様子を概略的に示して
ある。なおこの場合の印加電流波形は、図5に示すも
の、つまり本実施形態における第2段階の印加電流波形
と同じ(印加電流:−600μA、印加電圧3kV、印加
時間:1s)であり、また電場印加時の温度は60℃であ
る。そして図6の(1)、(2)がそれぞれ、この電場
印加の初期の状態、電場印加が終了した時点の状態を示
している。
【0041】図6(1)に示される通り、従来方法によ
る場合は、電場印加の初期段階で反転核は比較的まばら
に発生している。そのため、同図(2)のように分極反
転がZ面内で不均一に成長し、隣接する分極反転部同士
がつながってしまうようなことも起こり得る。
【0042】それに対して本実施形態の場合は、図4
(1)に示される通り、電場印加の第1段階で反転核は
高密度に発生している。そのため、同図(2)のように
分極反転がZ面内で均一に成長し、周期電極2のパター
ン通りの分極反転パターンが得られ、隣接する分極反転
部同士がつながってしまうことも防止できる。
【0043】なお、図4および図6に示す分極反転部の
成長の様子は、前述した通り概略的なものであるが、こ
のような傾向は、MgO−LN基板1に形成された分極
反転部を光学顕微鏡により観察して、実際に確認したも
のである。
【0044】以上説明した第1の実施形態により周期分
極反転構造を形成したMgO−LN基板1の+X面およ
び−X面を研磨し、そこに適宜のコートを施して、実際
に光波長変換素子を作製した。そして図7に示すよう
に、この光波長変換素子10に、Arレーザー励起チタン
サファイアレーザー11から発せられた波長λ=780n
mのレーザー光12を、集光レンズ13により集光して入射
させた。
【0045】この基本波としてのレーザー光12は、光波
長変換素子10により波長λ=390nmの紫外域の第2
高調波14に変換された。このときの波長変換効率を測定
し、その測定値から上記光波長変換素子10の非線形光学
定数dを求めたところ、d=8pm/Vであった。
【0046】また先に説明した従来方法、つまり図5に
示す印加電流波形で分極反転させたMgO−LN基板か
ら、上記と同様にして比較例としての光波長変換素子を
作製した。この光波長変換素子も図7のように使用し
て、第2高調波を発生させた。このときの波長変換効率
を測定し、その測定値から上記比較例の光波長変換素子
の非線形光学定数dを求めたところ、d=5pm/Vで
あった。
【0047】以上説明の通り、本発明方法により作製さ
れた光波長変換素子10は、従来方法による光波長変換素
子と比較して非線形光学定数が著しく向上しており、こ
の点からも、本発明方法によれば分極反転を均一に成長
させて、分極反転の微細な周期パターンを正確に形成可
能であることが裏付けられた。
【0048】次に、図8を参照して本発明の第2実施形
態について説明する。なおこの図8において、図1中の
要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての
説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0049】この第2実施形態でも、強誘電体結晶とし
て非線形光学結晶を用いるとともに、電場印加用の電極
として周期パターンを有する周期電極を用い、非線形光
学結晶に上記電極の周期パターンに対応した周期分極反
転構造を形成して、非線形光学材料を作製する。
【0050】本実施形態においては、まず図8(1)に
示されるように、単分極化処理がなされたMgO−LN
基板1の−Z面1a上にCr薄膜からなる周期電極2を
形成する。このMgO−LN基板1および周期電極2
は、第1実施形態で用いたものと同じものである。
【0051】次に図8(2)に示すように、周期電極2
が形成されたMgO−LN基板1をカーボン支持体20の
上に載置し、赤外線加熱炉により150℃に加熱する。こ
のとき、MgO−LN基板1は赤外線を吸収しないが、
赤外線を吸収するカーボン支持体20からの熱伝導により
MgO−LN基板1が加熱される。
【0052】MgO−LN基板1の温度が150℃に到達
した後、低温N ガス21を吹き付けることにより、M
gO−LN基板1を−5℃/sの降温速度で25℃まで高
速冷却する。なお、このときの雰囲気は、大気あるいは
とする。また降温速度は、N ガス21の噴射状態
によって制御することができる。
【0053】この降温熱処理を施した後、図8(3)に
示すように、第1実施形態で用いたのと同様の手段を用
いて、MgO−LN基板1に電場を印加する。このとき
の電場印加は、電場印加条件を1通りに設定して1段階
で行なう。この電場印加は、図5に示した印加電流波形
(印加電流:−600μA、印加電圧3kV、印加時間:
1s)でなされ、また電場印加時の温度は60℃である。
【0054】以上説明のように、電場印加を行なう前
に、MgO−LN基板1に対して降下温度幅ΔT=50℃
以上の降温熱処理を施すと、焦電効果によって、MgO
−LN基板1のZ面内のあらゆる部分で反転核を高密度
に発生させることができる。そこで、それに引き続いて
電場印加を行なえば、MgO−LN基板1のZ面内で分
極反転が均一に成長し、周期電極2の微細パターン通り
の分極反転パターンが得られ、隣接する分極反転部同士
がつながってしまうことも防止できる。
【0055】以上説明した第2の実施形態により周期分
極反転構造を形成したMgO−LN基板1の+X面およ
び−X面を研磨し、そこに適宜のコートを施して、実際
に光波長変換素子を作製した。そしてこの場合も図7に
示すように、作製された光波長変換素子10に、Arレー
ザー励起チタンサファイアレーザー11から発せられた波
長λ=780nmのレーザー光12を、集光レンズ13によ
り集光して入射させた。
【0056】この基本波としてのレーザー光12は、光波
長変換素子10により波長λ=390nmの紫外域の第2
高調波14に変換された。このときの波長変換効率を測定
し、その測定値から上記光波長変換素子10の非線形光学
定数dを求めたところ、第1実施形態におけるのと同様
にd=8pm/Vであった。
【0057】以上説明の通り、第2実施形態の方法で作
製された光波長変換素子10も、従来方法による光波長変
換素子と比較して非線形光学定数が著しく向上してお
り、この点からも、第2実施形態の方法によれば分極反
転を均一に成長させて、分極反転の微細な周期パターン
を正確に形成可能であることが裏付けられた。
【0058】なお、MgO−LN基板1の降温速度を−
1℃/s未満(絶対値が1未満)と比較的遅くすると、
反転核の密度が低くなりやすい。
【0059】また、MgO−LN基板1を100℃以上に
加熱した場合には、室温への自然冷却でも−1℃/s以
上の冷却速度が得られており、特に降温速度を制御しな
くても反転核が高密度に得られることが確認された。一
方、MgO−LN基板1を室温未満の低温雰囲気中へ放
置することによっても、急速冷却を行なうことができ
る。
【0060】次に、図9を参照して本発明の第3実施形
態について説明する。この第3実施形態の方法は第1実
施形態の方法と比べると、MgO−LN基板1に形成す
る分極反転部のパターンおよび電場印加条件が異なるだ
けで、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0061】図9は、この第3実施形態の方法で用いら
れる電場印加用電極の形状を示している。図中左半分に
示した電極30は、長さ1mmのレンズ型電極であり、各
電極間の間隔は100μmとされている。また図中右半分
に示した電極31は、一辺が1mmのプリズム型電極であ
る。両電極30、31とも、図2に示した周期電極2と同様
にCr蒸着によって形成され、そして電場印加に際して
この周期電極2と同様に用いられる。
【0062】この場合の印加電流波形は、図10に示す
通りである。つまり図3に示した第1実施形態のものと
比較すると、第2段階の印加時間が1sから10sに延ば
された点が異なるものである。また電場印加時の温度は
100℃である。その他の電場印加条件は第1実施形態に
おけるのと同じであり、電場印加は2段階になされる。
それにより本例においても分極反転が均一に成長し、電
極30、31のパターン通りの分極反転パターンが得られる
ことが確認された。
【0063】次に、本発明の第4実施形態について説明
する。この第4実施形態の方法は第2実施形態の方法と
比べると、MgO−LN基板1に形成する分極反転部の
パターンおよび印加電流波形が異なるだけで、その他の
点は第2実施形態と同様である。この第4実施形態の方
法で用いられる電場印加用電極の形状は第3実施形態に
おけるのと同じ、つまり図9に示されるものである。
【0064】この場合の印加電流波形は、図11に示す
通りである。つまり図5に示した第2実施形態のものと
比較すると、印加時間が1sから10sに延ばされた点が
異なるものである。また電場印加時の温度は100℃であ
る。その他の電場印加条件は第2実施形態におけるのと
同じである。
【0065】そしてこの電場印加に先行して、第2実施
形態におけるのと同様に、MgO−LN基板1に対して
降温熱処理がなされる。この降温熱処理の条件は、第2
実施形態と同様である。それにより本例においても分極
反転が均一に成長し、電極30、31のパターン通りの分極
反転パターンが得られることが確認された。
【0066】以上説明したようにして、レンズ型電極30
やプリズム型電極31のパターンに対応した形状の分極反
転部を強誘電体に形成できれば、その分極反転部に電極
を形成し、この電極を介して電界をかけることにより分
極反転部の屈折率を電気光学効果によって変化させるこ
とができる。これにより強誘電体中の光路を、レンズ作
用やプリズム作用によって制御することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による強誘電体の分極反
転方法の工程を示す概略図
【図2】上記第1実施形態の方法で用いられた周期電極
の平面図
【図3】上記第1実施形態の方法における印加電流波形
を示すグラフ
【図4】上記第1実施形態の方法における分極反転部の
成長の様子を示す概略図
【図5】印加電流波形の別の例を示すグラフ
【図6】従来方法における分極反転部の成長の様子を示
す概略図
【図7】上記第1実施形態の方法により作製された光波
長変換素子の使用状態を示す概略図
【図8】本発明の第2実施形態による強誘電体の分極反
転方法の工程を示す概略図
【図9】本発明の第3実施形態による強誘電体の分極反
転方法で用いられた電場印加用電極の平面図
【図10】上記第3実施形態の方法における印加電流波
形を示すグラフ
【図11】本発明の第4実施形態による強誘電体の分極
反転方法における印加電流波形を示すグラフ
【符号の説明】
1 MgO−LN基板 1a MgO−LN基板の−Z面 1b MgO−LN基板の+Z面 2 周期電極 2a 周期電極の電極指 4 高圧電源 5 コロナワイヤー 7 分極反転部 10 光波長変換素子 20 カーボン支持体 21 低温N ガス 30 レンズ型電極 31 プリズム型電極

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単分極化された強誘電体結晶の一表面
    に、所定のパターンを有する電極を形成し、 この電極を介して前記強誘電体結晶の表裏に電場を印加
    することにより、該強誘電体結晶に前記電極のパターン
    に対応した局部的な分極反転部を形成する方法におい
    て、 前記電場の印加を、電場印加条件を変えて2段階以上に
    分けて行なうことを特徴とする強誘電体の分極反転方
    法。
  2. 【請求項2】 前記2段階以上の電場印加のうち第1段
    階の電場印加を、それ以降の段階より比較的高電場かつ
    比較的短時間の電場印加条件で行なうことを特徴とする
    請求項1記載の強誘電体の分極反転方法。
  3. 【請求項3】 前記第1段階の電場印加を、印加電圧5
    kV以上、印加電流1000μA以上、印加時間10ms以下
    の条件で行なうことを特徴とする請求項2記載の強誘電
    体の分極反転方法。
  4. 【請求項4】 単分極化された強誘電体結晶の一表面
    に、所定のパターンを有する電極を形成し、 この電極を介して前記強誘電体結晶の表裏に電場を印加
    することにより、該強誘電体結晶に前記電極のパターン
    に対応した局部的な分極反転部を形成する方法におい
    て、 前記電場印加を行なう前に、前記強誘電体結晶に対して
    降下温度幅ΔT=50℃以上の降温熱処理を施すことを特
    徴とする強誘電体の分極反転方法。
  5. 【請求項5】 前記降温熱処理を、降温速度Δv=−1
    ℃/s以上として行なうことを特徴とする請求項4記載
    の強誘電体の分極反転方法。
  6. 【請求項6】 前記降温熱処理が、前記強誘電体結晶に
    低温気体を吹き付ける処理であることを特徴とする請求
    項4または5記載の強誘電体の分極反転方法。
  7. 【請求項7】 前記降温熱処理が、室温以下の雰囲気中
    に前記強誘電体結晶を放置する処理であることを特徴と
    する請求項4または5記載の強誘電体の分極反転方法。
  8. 【請求項8】 前記強誘電体結晶の一表面と反対側の表
    面側にコロナワイヤーを配し、このコロナワイヤーと前
    記電極とを用いて、コロナ帯電法により前記電場の印加
    を行なうことを特徴とする請求項1から7いずれか1項
    記載の強誘電体の分極反転方法。
  9. 【請求項9】 前記強誘電体結晶が、LiNbTa
    1−x (0≦x≦1)結晶、またはそれにMg
    O、ZnOもしくはScがドープされた結晶であること
    を特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の強誘電
    体の分極反転方法。
  10. 【請求項10】 請求項1から9いずれか1項記載の強
    誘電体の分極反転方法において、 前記単分極化された強誘電体結晶として非線形光学結晶
    を用いるとともに、 前記電極として周期パターンを有する周期電極を用い、 前記非線形光学結晶に前記電極の周期パターンに対応し
    た周期分極反転構造を形成することを特徴とする光波長
    変換素子の作製方法。
  11. 【請求項11】 前記電極の周期パターンの線幅を0.3
    μm以下として、1.0μm〜4.6μmの周期で分極反転部
    が繰り返す周期分極反転構造を形成することを特徴とす
    る請求項10記載の光波長変換素子の作製方法。
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