JP2001242190A - 四角錐台型5孔ピトー管を用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演算処理方法及び方式 - Google Patents
四角錐台型5孔ピトー管を用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演算処理方法及び方式Info
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Abstract
飛行速度ベクトル計測システムにおいて低速から超音速
までの広速度域で、速度の大きさと気流角を示す飛行速
度ベクトルと高度を示す静圧を、高精度で高更新率で演
算処理することができる演算処理アルゴリズムを提供す
る。 【解決手段】 演算処理方法は、迎角αと横滑り角βを
求める近似式を既知数の迎角圧力係数Cα,横滑り角圧
力係数Cβについての3次式の形とし、その各係数をル
ックアップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数Mにつ
いての5次までの多項式の形で表したものであり、多項
式の係数計算と、迎角α及び横滑り角βの算出は近似式
に既知数を入れて特定することで単純演算できるように
し、マッハ数がマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数
Cγを特定することでルックアップテーブルから瞬時に
割出せることと相まって広速度域飛行速度ベクトル計測
を高更新率で実行できる。
Description
ローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システ
ムに適用する低速から超音速までの広速度域において、
飛行速度ベクトル(速度の大きさと気流角)と静圧(高
度)を高精度で高更新率で演算処理することができる演
算処理アルゴリズムとそれを用いたシステムに関するも
のである。
角錐台型5孔プローブのピトー管を用いた飛行速度ベク
トル計測システムを開発し、特許権(日本国特許第2913
005号;米国特許第5423209号)を得ている。図中Aは正
面図であり、Bは一部断面側面図である。正面図Aに示
したように中央部に総圧孔があり、ピラミッド形の4斜
面にそれぞれ圧力孔群が設けられている。この特許発明
は「先端部が多角錐台型をなしてその頂点に遮蔽孔を設
け、該遮蔽孔の先端から遮蔽孔の径との関係で定まる一
定長だけ入った位置に、孔径より小径の全圧管を配設固
定すると共に、前記多角錐台型の各角錐面上にそれぞれ
圧力孔を配置してなる多角錐台型ピトー管型ブローブが
検出する各圧力情報を速度ベクトル演算処理器に入力し
て電気信号に変換し、該速度ベクトル演算処理器に予め
記憶させておいた速度ベクトルに対する前記ブローブ各
孔の圧力係数を用いて信号処理することによって、該圧
力情報と空気密度からブローブ軸に対する飛行速度ベク
トル(V、α、β)を算出すると共に、前記速度ベクト
ル演算処理器に姿勢方位基準装置の出力を入力させ、前
記機体軸に対する飛行速度ベクトル情報に、姿勢方位基
準装置からの情報を系合させることによって、対気飛行
速度ベクトルを算出することを特徹とする多角錐台型ピ
トー管型ブローブを用いた飛行速度ベクトル検出システ
ム。」である。このような構成を採ることによって、一
つの多角錐台型ピトー管型ブローブ及び演算処理器で、
従来の速度計、高度計、昇降計、マッハ計、ヨーメータ
ーの機能を果たすことができ、検出装置を減らすことが
できると共に、これらの情報を系合させて出力表示で
き、パイロットに信頼性の高い対気情報を提供すること
ができる。また、速度変化における圧力係数の影響が小
さく、複雑な補正を行う必要がなく、広角度範囲で精度
良く速度ベクトル情報を得ることができ、高度のコンピ
ュータを必要とすることなくヘリコプター等の垂直離陸
機を含む一般の航空機から宇宙往還機を含む極超音速機
まで、広範囲の飛行機に容易に搭載することができる。
さらに、風向を検出する圧力孔の速度変化における圧力
係数の影響が小さく、複雑な補正を行う必要がなく、広
角度範囲で精度良く速度ベクトル情報を検出でき、且つ
目詰まりや振動等による測定不良が発生するおそれもな
い、といった種々の優れた効果を奏する画期的な発明で
ある。
用いた飛行速度ベクトル計測システムの演算処理器にR
OM化して採用されているマッハ数M(又は速度V)と
角度算出に関する演算処理法には、当該プローブが圧
縮性を受ず、高速演算処理を要求されない低速度域に適
用したものと、低速から衝撃波を伴う超音速までの広
速度域に適用したものとがある。前者の当該プローブ
が圧縮性を受けない低速度域の演算処理は、予め求めて
おいた迎角と横滑り角および速度に関する各圧力校正係
数と、飛行時に得られる該5孔プローブの5つの圧力情
報をもとに迎角αと横滑り角βおよび速度(動圧q)の
3つのパラメータについてニュートン・ラフソン法(N
−R法)を用いた繰り返し計算にて解く処理技術であ
る。この技術は、前述した特許発明の明細書中に開示さ
れており、HOPEの小型自動着陸実証機(ALFLE
X)とNAL実験機への装備実績がある。
衝撃波を受けて超音速飛行する広速度域の演算処理方法
に関しては、やはり本出願人が開発した5つの圧力情報
を基礎データとし、はじめに何らかの処理方法を用いて
マッハ数Mを決定し、求まったマッハ数Mに基づいて角
度を決定する飛行速度ベクトル演算処理式が提示されて
いる[特許第2884502号「四角錐台型5孔プロー
ブを用いた広速度域飛行速度ベクトル計測システ
ム」]。この技術は、超音速風洞の気流計測へ適用した
実績がある。
算出法には2通りあり、一つは多分割の速度域毎にマッ
ハ数M算出式と各角度算出式を共に3次式の多項近似式
に置いて直接解く方式であり、もう一つは途中のマッハ
数算出の3次方程式の解法を省き、あらかじめ求めてあ
る気流角圧力係数とマッハ圧力係数からマッハ数Mを計
算してマッハ数テーブルを作成しておき、直接マッハ数
を読むルックアップテーブル方式である。前記、マッハ
数Mと角度を共に3次式から解く前者の方式のうち、マ
ッハ数M算出は該5孔プローブが検出する5つの圧力情
報を処理して得る総圧と四角錐台面上の4孔平均圧の差
圧を総圧で無次元化して得るマッハ圧力係数CM、四角
錐台面上4孔の上下差圧と左右差圧をそれぞれ総圧で無
次元化して得る各圧力係数Cα、Cβをさらに処理して
対気流角圧力係数Cγを得ておき、前記圧力係数CMか
ら多分割の速度領域を決定し、速度領域の決定に伴い、
速度領域毎に求めてある圧力校正係数と前記対気流角圧
力係数Cγとを用いて、3次式のマッハ数算出の演算処
理式を特定する。マッハ数Mは速度領域毎の該3次式を
解いて適切な根を決定することにより求める。そして、
角度の算出は、前記各圧力係数CαとCβと角度に対す
る各圧力校正係数とを用いて、同じく3次式の各角度α
角・β角度に関する演算処理式を解くことで求める。こ
こで、各演算処理式は、マッハ数算出用・α角算出用・
β角算出用とそれぞれに3次式であるため、それぞれに
3つの根(3つの根がすべて実根、若しくは1実根と2
虚根)が存在することになり、適切な根を選択するため
には複雑な判別手法を用いることになる。
マッハ数の決定に3次式を用いずに上記の5孔プローブ
を風洞に適用した校正風試時に得られる設定マッハ数M
と、該5孔プローブの角度α・β(気流軸に対するプロ
ーブの設定角度値)設定毎に得る5つの圧力情報からマ
ッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγを得ておき、
該マッハ数M、対気流角圧力係数Cγ,マッハ圧力係数
CMの3つのパラメータをもとに、横軸に対気流角圧力
係数Cγ、縦軸にマッハ圧力係数CMから成る直交平面
上にマッハ数Mをグラフ化したルックアップテーブル
(図5参照)を構成し、前記対気流角圧力係数Cγとマ
ッハ圧力係数CMを当てはめることでマッハ数Mを直
接、決定できるものである。このルックアップテーブル
は図5から分かるように速度領域毎に分割して作成され
ている。そして、気流角である迎角α・横滑り角βの算
出は、このルックアップテーブルから得られたマッハ数
Mと予め求めておいた迎角圧力校正係数Aijと前記マ
ッハ圧力係数Cαとを用いて迎角αに関する3次式を立
て、同様に前記マッハ数Mと予め求めておいた横滑り角
β圧力校正係数Bijと前記マッハ圧力係数Cβとにお
いて横滑り角βに関する3次式を立てて、該3次式を直
接解いて適切な根を選択することにより迎角αと横滑り
角βを求める方法である。この手法は、テーブル方式の
適用によりマッハ数Mの算出は容易となったが、迎角α
・横滑り角βという気流角算出には3次式を解き判別す
る作業が必要である。
飛行できる航空機に搭載する飛行速度ベクトル計測シス
テムの演算処理器は、圧力変換器・CPU・ROM・イ
ンタフェース等を含む構成であって、小型軽量であるこ
と、電磁環境に強いこと、また高精度すなわち信頼性と
演算処理能力が高いことが求められる。さらに演算処理
信号は外部接続の航空計器類と飛行制御装置に導入して
大気外乱に対する能動制御へ役立たせるためリアルタイ
ムで得られることが要求される。そのために、前記飛行
速度ベクトル計測システムの既設の演算処理器による3
次式解法を要する演算処理では十分でなく、新たな高精
度・高速演算処理が可能な方法が必要とされている。ち
なみに前記項の技術の適用は、基本的にN−R法を用
いる演算のため測定精度を上げるのに繰り返し計算回数
を増やす必要があり、高速処理は難しく高更新率の確保
には不向きの手法である。また、項の技術は、前述し
たように、テーブル方式の適用によりマッハ数Mの割出
しは容易となったが、α角・β角という気流角算出には
3次式を解く必要がある。特に各精度を上げるために適
用している多項近似式(3次式)を直接解くにも限度が
あり、3次式であることに基づき3つの根(3つの根が
すべて実根、若しくは1実根と2虚根)が存在するため
に、適切な根の決定には複雑な判定アルゴリズムを必要
とし、判定値を甘くすると測定精度に問題が生じること
になる。高精度と高更新率を得るにはやはり限界があ
る。そこで、超音速飛行機まで適用できる飛行速度ベク
トル計測システムとしては高信頼性・高精度・高更新率
が得られる新しい演算処理手法が望まれていた。
記の問題点を解決すること、すなわち四角錐台型5孔プ
ローブのピトー管を用いた飛行速度ベクトル計測システ
ムに適用する低速から超音速までの広速度域において、
速度の大きさと気流角を示す飛行速度ベクトルと高度を
示す静圧を、高精度で高更新率で演算処理することがで
きる演算処理アルゴリズムを提供することと、小型軽量
であり、電磁環境に強く、また高精度すなわち信頼性と
演算処理能力が高い上に、前記アルゴリズムを演算処理
装置に採用した高精度で高更新率で演算処理することが
できる飛行速度ベクトル計測システムを提供することに
ある。
めの本発明の演算処理方法は、迎角αと横滑り角βを求
める近似式を既知数の迎角圧力係数Cα,横滑り角圧力
係数Cβについての3次式の形とし、そしてその各係数
をルックアップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数M
についての多項式の形で表したものであり、該多項式の
係数計算の基になる各校正係数をまず風洞試験において
音速領域毎にテーブルとして記憶しておき、従来のよう
に3次の方程式を解くことなく、多項式の係数計算と、
迎角α及び横滑り角βの算出は近似式に既知数を入れて
特定することで単純演算できるようにし、マッハ数がマ
ッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγを特定するこ
とでルックアップテーブルから瞬時に割出せることと相
まって広速度域飛行速度ベクトル計測を高更新率で実行
でき、航空機に求められるリアルタイム運行制御に対応
できるものである。
要を図1の演算処理ブロック概念図を基に説明する。本
発明は低速から超音速までの広速度域における飛行にお
いて、検出した5つの圧力情報(総圧:PH,圧力群
1:Pb1,圧力群2:Pb2,圧力群3:Pb3,圧力群
4:Pb4)を図6に示したような5孔プローブ1から受
信し、飛行ベクトル(M,α,β)と静圧pと動圧qの
情報を精度よくかつリアルタイムで演算して表示装置・
飛行制御装置等3に送信するために、飛行速度ベクトル
計測システムの演算処理器2に適用される演算アルゴリ
ズムとその具体化に関する。前記の検出した5つの圧力
情報を圧力変換器24,図示していないCPU,記憶手段
(ROM25)等から構成される前記飛行速度ベクトル計
測システムの演算処理器2にまず導入し、圧力信号を電
気信号に変換してCPUのワークエリアに取り込む。該
5孔プローブの上下圧力孔の差圧(Pb1−Pb3)を中央
の総圧PHで割って無次元化する(1)式に代入して算
出した気流の迎角圧力係数Cαと、同様に左右圧力孔の
差庄(Pb2−Pb4)を中央の総圧PHで割って無次元化
する(2)式に代入して算出した気流の横滑り角圧力係
数Cβとを(3)式に代入して該5孔プローブ軸に対す
る気流の角度である対気流角の圧力係数Cγを得、更に
総圧PHと四角錐面上の4孔平均圧の差圧{PH−(Pb1
+Pb2+Pb3+Pb4)/4}を同様に中央の総圧PHで
無次元化する(4)式に代入してマッハ圧力係数CMを
得る第1次演算処理を実行する。この処理は図1中破線
で囲われた1次演算処理部21でなされる。
ッハ数と気流軸に対するプローブ角を種々に変化させて
設定し、前記の5孔プローブの検出情報から(3)
(4)式で得たマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数
Cγの関係グラフからマッハ数が決定できるように、広
速度領域に亘りマッハ数Mの値をテーブルとしてROM
等の記憶手段に蓄積しておき、実際の計測においては前
記第1次演算処理で得たマッハ圧力係数CMと対気流角
圧力係数Cγをこのマッハ数ルックアップテーブル上で
特定し、マッハ数を割出して決定する。このマッハ圧力
係数CMと対気流角圧力係数Cγの関係は図5と図2か
ら判るように、プローブ軸と気流軸とのなす角γが0の
場合は対気流角圧力係数Cγはマッハ圧力係数CMの値
の関係無く常に0、すなわちマッハ圧力係数CMの値は
グラフにおいてCγ=0上にある。両者は原点を通る1
次式の関係にあり、プローブ軸と記流軸とのなす角γが
増えるに従ってその傾斜が低くなるという関係にある。
次に迎角αと横滑り角βの求め方について説明する。該
迎角αと該横滑り角βを求める近似式を既知数の迎角圧
力係数Cα,横滑り角圧力係数Cβについての3次式の
形(5)(6)式とすると共に、その各係数A0,
A1,A2,A3とB0,B1,B2,B3をルックア
ップテーブルから瞬時に割出せるマッハ数Mについての
5次までの多項式の形で表すようにした。そしてそのマ
ッハ数Mについての多項式に関する係数“Aij”は迎
角圧力校正係数であり、係数“Bij”は横滑り角圧力
校正係数である。この圧力校正係数“Aij”と
“Bij”を決めるに先立ち迎角圧力係数Cα,横滑り
角圧力係数Cβと実気流迎角α,実気流横滑り角βの関
係曲線を図3に示す。図においてAは迎角圧力係数Cα
と実気流迎角αの関係を示し、Bは横滑り角圧力係数C
βと実気流横滑り角βの関係を示している。図3に示す
ように、あるマッハ数において実気流迎角αと迎角圧力
係数Cαのグラフはほぼ直線(一次式)で表される。同
様に、実気流横滑り角βと横滑り角圧力係数Cβのグラ
フもほぼ直線(一次式)で表される。しかし、厳密には
どちらも直線から少しずれるのでこの効果を容れるため
に、実気流迎角αを迎角圧力係数Cαの三次式(5)
で、実気流横滑り角βを横滑り角圧力係数Cβの三次式
(6)で表すことにした。そして、迎角圧力係数Cαの
各次の係数A0、A1、A2、A3と横滑り角圧力係数
Cβの各次の係数B0、B1、B2、B3のマッハ数に
よる変化をそれぞれマッハ数Mの5次までの多項式で表
した。
において取付けたプローブの軸方向(α,β)の下でマ
ッハ数を種々に設定した状態で得た5孔プローブが検出
した5つの圧力情報(PH,Pb1,Pb2,Pb3,Pb4)
を(1)(2)式に入れて得たCα,Cβデータと、該
設定値(迎角α、横滑り角β、マッハ数M)とを(5)
(6)式に用いて、該校正係数Aij,Bijを未知数と
して計算により求めるのであるが、正確を期するため多
くのデータを取って最小自乗法により処理し、複数の速
度領域に対応した4×6のマトリックス情報としてRO
M等の記憶手段に蓄積しておく。本発明の最大の特徴点
は迎角αと横滑り角βを求める近似式を(5)(6)式
として既知数のCα,Cβについての3次式の形で、そ
してその各係数をルックアップテーブルから瞬時に割出
せるマッハ数Mについての5次までの多項式の形で表し
た点にある。従って、従来のように3次の方程式を解く
必要はなく、5次まで式の係数計算も3次式の迎角αと
横滑り角βの算出も既知数に基づいて即座に実行でき、
マッハ数がルックアップテーブルから瞬時に割出せるこ
とと相まって航空機における運行制御にリアルタイムで
対応できるものである。
の算出は2次演算処理として実行する。すなわち本発明
の迎角αと横滑り角βの求め方は、記憶手段に蓄積され
ているルックアップテーブルから割出された前記マッハ
数Mと、やはり記憶手段に蓄積されている迎角αに対す
る迎角圧力校正係数Aijおよび1次演算処理で得た迎
角圧力係数Cαと、求める迎角α(未知量)との関係を
多項近似式で表した演算処理式(5)に基づいて、また
同様にマッハ数Mと、記憶手段に蓄積されている横滑り
角圧力校正係数Bijおよび1次演算処理で得た横滑り
角圧力係数Cβと、求める横滑り角β(未知量)との関
係を多項近似式で表した演算処理式(6)に基づいてそ
れぞれ演算により求めることになる。以上により、飛行
速度ベクトル(M,α,β)を決定することができる。
これが2次演算処理であり、図1中の破線で囲われた2
次演算処理部22で実行される。
されたマッハ数Mと検出された総圧PHに基づいて高度
情報に対応する静圧pと速度情報に対応する動圧qとを
第3次演算処理として算出する。この演算は圧縮性を考
慮する必要のない低速度領域と、音速に近づくにつれて
無視できなくなる圧縮性の影響を考慮した遷音速領域、
衝撃波面がプローブの直前にできるためそれを考慮する
必要のある超音速域とで演算式を異にする。マッハ数M
に応じた演算処理式、すなわち静圧算出式の(7−1)
式・(8−1)式・(9−1)式と動圧算出式の(7−
2)式・(8−2)式・(9−2)式の中からルックア
ップテーブルで割出されたマッハ数Mに対応する式を選
択して適用することで、静圧Pと動圧qを演算により求
めることができ、図1中の破線で囲われた第3次演算処
理部23で実行される。
報)と動圧の計測を精度よく高更新率で実行することが
でき、インターフェース26を介して表示装置・飛行制御
装置等3に送信される。本発明はこのような演算方法を
採用しそれをシステム化したことにより飛行制御装置の
検出部として求められるリアルタイム対応が可能となっ
た。
する。広速度域飛行速度ベクトル計測システムに組込ま
れるマッハ数算出用ルックアップテーブルは、事前に本
発明に係る5孔プローブを風洞内に種々の気流角で設置
し広帯域の流速状態を設定する風洞試験によりデータを
とって作成されるものである。本実施例のテーブルはマ
ッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの直交座標上
に該当するマッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγ
の交点にその時のマッハ数Mの値をプロットしていく点
では基本的には図5に示した従来のルックアップテーブ
ルと同様であるが、所定マッハ圧力係数CMと所定対気
流角圧力係数Cγの交点毎のマッハ数Mデータをとるの
ではなく、図2に示したようにプローブ軸と気流軸との
なす角γとマッハ圧力係数CMとの所定値の交点毎にマ
ッハ数Mデータをとるようにした。図から判るようにマ
ッハ圧力係数CMと対気流角圧力係数Cγの関係は気流
角γが一定である場合原点を通り気流角γに応じた傾斜
角をもつ線形特性を持っている。本実施例のルックアッ
プテーブルは上記したように気流角γとマッハ圧力係数
CMとの所定値の交点毎にマッハ数Mデータをとるよう
にしたので、テーブルの格子領域は従来のような定型の
長方形状では無く不定形の菱形となる。このようなテー
ブルの格子形態でデータをとるようにしたので、自然に
低速域ではデータを密にとり高速になるにしたがってデ
ータを粗に広くとりたい要望に対応したものとなる。し
かも広帯域の速度に対して連続した1テーブルとして得
ることができ、従来のように領域毎の異なるテーブルを
準備し選択したり境界データの整合をとるという厄介な
作業が不要となる。
める際に、演算上必要となる迎角圧力校正係数
“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”をデータと
して蓄積記憶しておくことが必要であり、これも事前の
風洞試験によって予め得ておくことになる。この校正係
数“Aij”と“Bij”は、前記の(5)(6)式の係
数を算出するためのマッハ数Mについての5次式までの
係数であるが、前述したように予め風洞試験により設定
した迎角α、横滑り角β、同じく設定したマッハ数M
と、その際5孔プローブが検出する5つの圧力情報を
(1)(2)式に入れて得たCα,Cβとを用いて
(5)(6)式における未知数として計算し、最小自乗
法を用いて適正値を決める、4×6のマトリックス情報
である。実際のこの計算はかなり厄介な作業となるが、
飛行時の計測と異なりリアルタイム処理を求められるも
のではないので十分に時間をかけて実行することができ
る。この校正係数は迎角αと横滑り角βの算出精度に影
響を与えるため、角度精度において0.1°以内を要求さ
れる場合には細かく領域を区分してデータを得ておくこ
とが必要となる。もし0.3〜0.5°以内程度の精度で良い
ならば全速度領域に同じ校正係数データを用いても問題
はない。一般的には3乃至6の速度領域に区分してデー
タを蓄積しておくことが適当である。多くの領域に区分
する場合は精度が求められる領域について細かく区分し
てデータを準備しておくことが合理的である。
アップテーブルと迎角圧力校正係数“Aij”と横滑り
角圧力校正係数“Bij”のデータを演算処理器2のR
OM等の記憶手段に事前に記憶させておく。この記憶手
段にはこの他各圧力変換器の係数、データの平滑式、各
種演算処理式、プローブ位置取付誤差補正値等の情報を
蓄積しておくものとする。以下に本実施例の演算処理動
作を図4のフローチャートにそって詳しく説明する。ス
タートでスイッチがONされるとステップ1(図中では
ST1と表示)でROM内の必要情報がRAM(ワーク
エリア)に読み込まれスタンバイ状態となる。ROMに
ある蓄積情報をワークエリアとなるRAMに読出してお
くのは、各ステップにおいて実行する演算において必要
情報をいちいちROMにまでとりにゆくことなく、ワー
クエリア内の作業として迅速に実行できるようにするた
めである。飛行が開始されると、ステップ2で5孔プロ
ーブの検出した圧力情報がとり込まれ圧力変換器により
電気信号(電圧値)に変換されるが、この際ROM内に
格納されていた当該変換器の特性係数を用いて変換が実
行される。5つの圧力情報(PH,Pb1,Pb2,Pb3,
Pb4)はステップ3で平滑化処理されるが、この平滑化
の演算はROMからRAMに読出したデータの平滑式に
基づいてなされる。該平滑化された各圧力データはステ
ップ4において、迎角圧力係数Cαは演算式(1)によ
り、横滑り角圧力係数Cβは演算式(2)により、対気
流角圧力係数Cγは演算式(3)により、マッハ圧力係
数CMは演算式(4)によりそれぞれ算出される。これ
らの演算式ももともとROM内に格納されているが、S
T1でRAM(ワークエリア)に読出されている。各圧
力係数が求まったところでステップ5ではルックアップ
テーブルを用いたマッハ数Mの割出し作業が行われる。
本実施例のルックアップテーブルは前述のように所定の
気流角γと所定のマッハ圧力係数CMとの交点毎にマッ
ハ数Mデータをとっているので、格子領域は長方形状で
は無く不定形の菱形である。特定された対気流角圧力係
数値Cγとマッハ圧力係数値CMがテーブル上の交点に
当たるときは該当するマッハ数をそのまま読み出せばよ
いのであるが、普通は上記の菱形領域内の座標点となる
ので、その場合には4隅のマッハ数から双1次補間を実
行してマッハ数Mを算出する。この際に使われる補間式
はルックアップテーブルと共に記憶手段に記憶してお
く。続いてステップ6で迎角αと横滑り角βとの演算を
行うが、この演算はマトリックス形態で記憶している迎
角圧力校正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“B
ij”のデータと先に割出したマッハ数値Mと迎角圧力
係数Cα及び横滑り角圧力係数Cβを、同じく記憶して
いる演算式(5)(6)に当てはめ演算を実行する。そ
の際演算に先立ちまずマッハ数Mの値に対応する角圧力
校正係数“Aij”と“Bij”のデータ表を選択する。
係数計算はマッハ数Mについての5次までの式、演算式
(5)(6)は迎角圧力係数Cα及び横滑り角圧力係数
Cβについての3次式となっているが、この多項式演算
は方程式を解くわけではなく、既知の値を代入して単純
計算を行うだけであるから、時間を要すること無く即座
に実行できる。以上の演算処理でプローブ軸に対する飛
行速度ベクトル(M,α,β)が決定されたことにな
る。
う。この演算はステップ3で得られた平滑化された総圧
PHとステップ5で割出されたマッハ数Mを演算式に代
入して実行するのであるが、演算式は飛行速度領域に対
応して静圧算出式の(7−1)式・(8−1)式・(9
−1)式と動圧算出式の(7−2)式・(8−2)式・
(9−2)式と複数個準備されているので、演算に先立
ちマッハ数Mの値に対応してまず演算式が選択特定さ
れ、それによって演算が実行される。ステップ8ではプ
ローブが機体軸に一致しているか否かのチェックがあ
り、プローブの取付に狂いがあればステップ9で予めプ
ローブ位置取付け誤差に対応する補正値を記憶してお
き、これを読み出して機体軸に対する飛行速度(マッハ
数M)を補正演算して算出する。さらにステップ10で迎
角αと横滑り角βについて誤差分を補正して修正する。
ステップ11では得られた値を表示装置や飛行制御装置に
計測信号として送信する。もしステップ8でプローブが
機体軸に一致していると判断された場合はステップ9,
10の補正は必要ないのでステップ7までに得られた値を
そのまま採用しステップ11に進む。ステップ11で値を送
信した後ステップ12では飛行が続行されるか否かの確認
が行われ、続行される場合にはステップ2に戻り新たな
検出情報に基づく演算が実行され、データの更新処理を
する。飛行が終了したときにはステップ12でストップと
なり作業を終了する。この計測演算フローは多項式の解
法作業を無くしたことにより高速処理が可能となって飛
行制御に求められていた高更新率に応えることができる
ものである。
いた広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて検
出情報から所望の計測データを演算処理するに際し、事
前の風洞試験によってマッハ圧力係数CMと対気流角圧
力係数Cγとマッハ数Mとの関係を直交する両圧力係数
Cγ,CM座標上に対応させてマッハ数Mを示す低速か
ら超音速までの広速度域について連続した1つのルック
アップテーブルを作成して演算処理器に記憶しておくこ
とにより、低速から超音速飛行に亘り逐次のマッハ圧力
係数CMと対気流角圧力係数Cγの値を該テーブルに当
てはめることで厄介な多項式解法を必要とせずにその時
点のマッハ数Mを直接割出すことができる。また、本発
明のルックアップテーブルは所定気流角γと所定マッハ
圧力係数CMとの交点毎にマッハ数Mデータをとるよう
にしたので、テーブルの格子領域は従来のような定型の
長方形状では無く不定形の菱形となり、このようなテー
ブルの格子形態でデータをとるようにしたことにより、
低速域ではデータを密にとり高速になるにしたがってデ
ータを粗に広くとりたい要望に自然に対応したものとな
っている。しかも広帯域の速度に対して連続した1テー
ブルとして得ることができ、従来のように領域毎の異な
るテーブルを準備し選択したり境界データの整合をとる
という厄介な作業が不要となる。
算に関して事前の風洞試験において得られた迎角圧力校
正係数“Aij”と横滑り角圧力校正係数“Bij”のデ
ータを複数の速度領域に対応してマトリックス形態で記
憶しているので、5孔プローブから検出される5つの圧
力データからまずCα,Cβ,Cγ,CMを演算し、さ
らに該Cγ,CM値からルックアップテーブルを用いて
マッハ数Mを得て、該マッハ数Mに対応した圧力校正係
数のマトリックス情報を選択すると共に上記の演算値を
(5)(6)式に当てはめるだけで迎角αと横滑り角β
の演算を即座に実行することが出来る。さらに、マッハ
数Mと総圧PHを該マッハ数Mに対応した演算処理式で
ある(7)(8)(9)式に代入すれば静圧p(高度)
と動圧qが即座に算出できる。
の方程式を解く必要がなく、マッハ数が準備されたルッ
クアップテーブルから瞬時に割出せることと、迎角αと
横滑り角βがやはり事前に準備されている圧力校正係数
のマトリックス情報から即座に演算できることと相まっ
て航空機における運行制御にリアルタイムで対応できる
飛行速度ベクトル値が高精度・高更新率で確保でき、計
測装置の機能向上が図られ、超音速実験機等へ搭載する
飛行速度ベクトル計測システムとして寄与できるもので
ある。
成概要図である。
係数と実気流角との関係を示すグラフであり、Aは迎角
に関し、Bは横滑り角に関する。
ある。
ルの格子形成(直交座標)概要図である。は飛行速度ベ
クトル決定に適用する演算処理式である。
係を示す図である。
流軸とのなす角 23 3次演算処理部 Cα 迎角圧力係数 3 表示装置・飛行制御装置等 Cβ 横滑り角圧
力係数 Aij 迎角圧力校正係数 Cγ 対気流角圧
力係数 Bij 横滑り角校正圧力 CM マッハ圧力
係数
Claims (5)
- 【請求項1】 四角錐台型5孔ピトー管プローブを用い
た広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて実行
される演算処理方法であって、前記5孔プローブが検出
する5つの圧力情報から上下圧力孔の差圧情報を総圧で
無次元化して得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧
力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の横
滑り角圧力係数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗
の和を平方根とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と
四角錐面上の4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化し
てマッハ圧力係数CMとを得る演算処理ステップと、該
演算処理器に広速度域における対気流角圧力係数Cγと
マッハ圧力係数CMとの平面座標上に対応するマッハ数
Mをあらかじめ求めて記憶しておいたマッハ数算出用ル
ックアップテーブルに、上記の算出Cγ値と算出CM値
を当てはめてその時点のマッハ数Mを割出すステップと
を含み、前記マッハ数算出用ルックアップテーブルは対
気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CMとの平面座標
上において所定の気流角γ値と所定のマッハ圧力係数C
M値との交点毎にマッハ数Mデータを記憶するようにし
たことを特徴とする飛行速度ベクトル計測値の演算処理
方法。 - 【請求項2】 マッハ数Mの割出しに際し、算出Cγ値
と算出CM値がマッハ数算出用ルックアップテーブル上
の所定値交点でない場合には、該当算出値の座標が存在
する菱形格子領域の4隅のマッハ数値から双1次補間を
実行してマッハ数Mを算出する請求項1に記載の飛行速
度ベクトル計測値の演算処理方法。 - 【請求項3】 四角錐台型5孔ピトー管プローブを用い
た広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおいて実行
される演算処理方法であって、前記5孔プローブが検出
する5つの圧力情報から上下圧力孔の差圧情報を総圧で
無次元化して得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧
力孔の差圧情報を総圧で無次元化して得られる気流の横
滑り角圧力係数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗
の和を平方根とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と
四角錐面上の4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化し
てマッハ圧力係数CMとを得る演算処理ステップと、該
演算処理器に広速度域における対気流角圧力係数Cγと
マッハ圧力係数CMとの平面座標上に対応するマッハ数
Mをあらかじめ求めて記憶しておいたマッハ数算出用ル
ックアップテーブルに、上記の算出Cγ値と算出CM値
を当てはめてその時点のマッハ数Mを割出すステップ
と、迎角αを求める迎角圧力係数Cαについての高次近
似式と横滑り角βを求める横滑り角圧力係数Cβについ
ての高次近似式に、上記の算出Cα値と算出Cβ値と上
記演算処理器に予め求め記憶している圧力校正係数とを
当てはめて迎角αと横滑り角βを求める演算ステップと
を含む飛行速度ベクトル計測値の演算処理方法。 - 【請求項4】 迎角αを求める迎角圧力係数Cαについ
ての高次近似式と横滑り角βを求める横滑り角圧力係数
Cβについての高次近似式は α=A0+A1Cα+A2Cα2+A3Cα3 但し A0=A00+A01M+A02M2+A03M3+
A04M4+A05M5 A1=A10+A11M+A12M2+A13M3+A14
M4+A15M5 A2=A20+A21M+A22M2+A23M3+A24
M4+A25M5 A3=A30+A31M+A32M2+A33M3+A34
M4+A35M5 β=B0+B1Cβ+B2Cβ2+B3Cβ3 但し B0=B00+B01M+B02M2+B03M3+
B04M4+B05M5 B1=B10+B11M+B12M2+B13M3+B14
M4+B15M5 B2=B20+B21M+B22M2+B23M3+B24
M4+B25M5 B3=B30+B31M+B32M2+B33M3+B34
M4+B35M5 とし、圧力校正係数“Aij”と“Bij”は、予め風洞
試験において設定した迎角α、横滑り角β、同じく設定
したマッハ数Mと、算出したCα,Cβとを前記高次近
似式の値に取り込むことで、未知数として計算して求め
たことを特徴とする請求項3に記載の飛行速度ベクトル
計測値の演算処理方法。 - 【請求項5】 四角錐台型5孔ピトー管プローブを用い
た広速度域飛行速度ベクトル計測システムの演算処理装
置であって、前記5孔プローブが検出する5つの圧力情
報を受け、上下圧力孔の差圧情報を総圧で無次元化して
得られる気流の迎角圧力係数Cαと左右圧力孔の差圧情
報を総圧で無次元化して得られる気流の横滑り角圧力係
数Cβおよび該CαとCβのそれぞれ二乗の和を平方根
とした対気流角圧力係数Cγと、該総圧と四角錐面上の
4孔平均圧の差圧情報を総圧で無次元化してマッハ圧力
係数CMとを得る第1演算処理部と、記憶手段に広速度
域における対気流角圧力係数Cγとマッハ圧力係数CM
との平面座標上に対応するマッハ数Mをあらかじめ求め
て記憶しておいたマッハ数算出用ルックアップテーブル
に、上記の算出Cγ値と算出CM値を当てはめてその時
点のマッハ数Mを割出す手段と、迎角αを求める迎角圧
力係数Cαについての高次近似式と横滑り角βを求める
横滑り角圧力係数Cβについての高次近似式に、上記の
算出Cα値と算出Cβ値と上記記憶手段に予め求め蓄積
している圧力校正係数とを当てはめて迎角αと横滑り角
βを求める演算手段とを含む第2演算処理部と、第1演
算処理部から総圧PH値と第2演算処理部からマッハ数
M値をえて静圧pと動圧qを算出する第3演算処理部と
からなり、算出したデータを表示装置と飛行制御装置に
送る広速度域飛行速度ベクトル計測システムにおける演
算処理方式。
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