JP2001226347A - チオウロニウム基を有する新規な化合物および前記化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用 - Google Patents

チオウロニウム基を有する新規な化合物および前記化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アニオン種認識蛍光センサーとして有用な化
合物の提供。 【構成】 アントラセンなどの蛍光特性を持つ有機基
に、該有機基のLUMOに励起された電子を消滅させ、
アニオンに対して特異的に結合する電子欠損型化学構造
と水素結合ドナーグループ(ルイス酸)としての特性を
併せ持つ構造の化学基、例えばチオウロニウム基を結合
した前記アニオンとの結合により前記蛍光特性が回復す
るアニオン種認識蛍光性化合物。 【化2】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前記一般式(I、
II)で表される新規なナフタレン誘導型チオウロニウ
ム化合物及び前記新規化合物のアニオン認識蛍光センサ
ーとしての使用、特にカルボキシレートやホスフェート
などのオキソアニオン種を認識して蛍光発信するアニオ
ン種認識蛍光センサーとしての使用、特に、臨床、生体
分析、環境分析、生産管理等の分野での使用に関する。
【0002】
【従来技術】生体重要化学種の選択的錯体形成に伴って
蛍光発信できる分子センサーの開発は基質-レセプター
相互作用の分子論的解明に寄与する学術的興味のみなら
ず、医療分析化学分野への適用等の実用面でも極めて重
要である。これまでに主にアルカリ・アルカリ土類金属
イオンに対する優れた蛍光センサーが開発されてきてい
る(A.Minita and R.Y.Tsien,J.Biol.Chem.,1989,264,1
9449;I.Aoki,T.Sasaki, and S.Shinkai,Chem.Commun.,1
992,730; G.Grynkiewicz,M.Poenie, and R.Y.Tsien,J.B
iol.Chem.,1985,260,3440など)が、アニオンに対する
関連センサー材料の開発例は少ない。これはアニオン
が、カチオン種と比較してイオンサイズが大きいこと
(同分子量および同電荷量で、対比した場合。)、アニ
オンは球状、直鎖状、平面状、四面体、八面体など様々
な形状を持ち、カチオンがほとんどが球形であるのと極
めて対称的であること、同程度のサイズのカチオンと比
較して溶媒和されやすいこと、更にプロトン化を受けや
すい性質を持つことなどにより、アニオンを認識するセ
ンサーの分子設計を困難なものにしてきた(C.Seel,A.G
alan, and J.de Mendoza,Top.Cur.Chem.,1995,175,10
2)。しかしながら、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチ
ドにみられるように有機アニオン種は生体内で重要な役
割を担ていることはよく知られている。そこで、リアル
タイムにアニオン種の動態を検定できるセンサーは医療
分析化学に分野において不可欠な材料といえる。こうし
た背景をうけて近年アニオン種を発光現象の変化などに
より、光学的に観察できる光学センサーの開発が注目さ
れている。
【0003】アニオン種の定量には、イオンクロマトグ
ラフィー、イオン選択性電極、または比色分析が可能で
あるが、検出感度では蛍光分析技術が勝っており、特に
微量成分の分析には重要な役割をしている。しかしなが
ら、検出感度のよいことは、検定条件にも影響を受けや
すいということが言える。そこで、アニオン認識部位
(アニオン結合特異性部位)と蛍光機能部位がスムーズ
に相互作用しうる(特定のアニオン種に特異的に結合す
ることと蛍光特性の変化の応答性が優れている)限りシ
ンプルな分子構造が望まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、アニオン種を特異的に結合し、かつ蛍光特性の変化
の応答性がよいアニオン検出用のセンサー化合物を提供
することにある。アニオン種を効果的に結合(特異的に
結合)するには、電子欠損型化学構造と、かつ水素結合
ドナーグループ(ルイス酸)としての特性を併せ持つこ
とがよいとされている。発明者らは、チオウロニウム基
が、アニオン種に対して前記性質を満たすことを見出す
と共に、またチオウロニウム基が蛍光特性を持つナフチ
ル基と結合させた場合、分子内で縮合芳香族環であるナ
フチル基等の蛍光が、これに結合したチオウロニウム基
により効果的に消光できる能力をもつことを発見した。
更に、チオウロニウム基にオキソアニオンのようなアニ
オン種が結合すると、チオウロニウム基の電子欠損性が
軽減される結果、ナフチル等の蛍光特性の回復(LUM
O−HOMO間の電子遷移に伴う発光現象の回復)を引
き起こすし、前記蛍光特性の変化をアニオン種の認識シ
グナル情報として読みとることができることを見出し、
前記本発明の課題を解決したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、一般式
(I、II)で表されるナフタレン誘導型チオウロニウ
ム化合物である。
【0006】
【化3】
【0007】〔式I中、RはHまたは置換基を有しても
よい低級アルキル基(炭素数5程度までのアルキル基)
を、R’はHまたは置換基を有してもよい低級アルキル
基(炭素数5程度までのアルキル基)、アルコキシ基又
はニトロ基いずれか1つの基をを表し、XはPF6又は
ClO4を表す。〕
【0008】
【化4】
【0009】(式II中、R、R’およびXは前記式I
におけるものと同じ意味を表す。A、A’は水素原子、
低級アルキル基、例えばメチル基、または置換基を有し
てもよい非環状のポリエーテル鎖又はAとA’が一緒に
なって環状もしくはポリエーテルを形成する基を表す。
ビナフチル基はラセミ体もしくは光学活性体である。)
また、本発明の第2は、前記一般式(I、II)で表さ
れるナフタレン誘導型チオウロニウム化合物のアニオン
種認識蛍光センサーとしての使用であるであり、好まし
くは、アニオン種が少なくとも1つのオキソアニオン種
であることを特徴とする前記蛍光センサーとしての使用
である。
【0010】
【本発明の実施の態様】本発明をより詳細に説明する。 A.前記本発明の前記式IおよびIIの化合物は、アセ
トニトリル、アルコールなどの有機溶剤はもとより、水
を含む溶媒、例えば、水:エタノールの混合溶媒にも溶
けるから(式2の化合物は水:エタノール=1:1の溶
媒に溶ける)、生体での観察にも利用でき可能性があ
る。また、一般式IIのAとA’とで環状ポリエーテル
鎖を形成する(クラウンエーテル構造を形成する)化合
物はアミノ酸類を認識する蛍光センサーとしての使用も
可能である。
【0011】B.一般式Iの合成経路は下記の反応式I
で表すことができる。
【0012】
【化5】
【0013】式中RがH(1)の化合物を原料とし、R
=Br(2)の化合物(2−ブロモメチルナフタレン)
を経て2−アミノメチルナフタレンを得、この化合物に
CH 3NCSを反応させて化合物(3)を得、化合物
(3)にベンジルブロミドを反応させてブロモ塩とし、
該ブロモ塩とAgPF6とのカウンターアニオン交換す
ることにより目的化合物(I)を得ることができる。
【0014】C.一般式IIの合成経路は下記の反応式
(II)で表すことができる。
【0015】
【化6】
【0016】式(a’)中A,A’がH(1’)の化合
物を出発原料とし、A,A’を所望の目的化合物(I
I)を得るための置換基とし、例えばメチル基(Me)
(2’)とする。次いで、式(b’)のRとしてホルミ
ル基(3’)を導入し、該ホルミル基を還元してヒドロ
キシメチル(4’)とし、該ヒドロキシ基をブロム置換
(5’)し、以降は、アミノメチル化(6’)、N−メ
チルチオウレイドメチル化(7’)を経て、目的化合物
(II)を得る。また(1’)のHをCH2OMeの保
護基に代え、式(b’)のRを化学修飾ことにより前記
一般式IIで定義した所望のA,A’とすることができ
る。
【0017】
【実施例】実施例1:本発明の(1)の化合物の合成 A.2−ブロモメチルナフタレン〔反応式1の(2)〕
の合成 アルゴン気流下、2−メチルナフタレン(1000mg、7.03
mmol)、N−ブロモサクシンイミド(NBS)(1314m
g,7.38mmol)、およびベンジルパーオキサイド(5mg、
0.02mmol)を乾燥四塩化炭素(12mL)に溶解させ、4時
間加熱還流させた。その後、アゾイソブチロニトリル
(AIBN)(12mg,0.07mmol)を加え、さらに24時
間加熱還流した。少量の水(5mL)を加え反応を失活さ
せたのち、クロロホルム(150mL)−水(50mL)で抽出
をおこない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、
無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、カ
ラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−300,展開
溶媒:10−20%(v/v)ヘキサン−クロロホル
ム)にかけて、白色結晶1,218mgを得た。収率78%であ
った。 分析結果:1H NMR(200MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)
4.68(s,2H,CH2)、7.47−7.54(m,3H,Ar-
H)、7.765−7.88(m,4H,Ar-H) B.2−アミノメチルナフタレンの合成 アルゴン気流下、2−ブロモメチルナフタレン〔500mg,
2.26mmol:反応式Iの(2)〕を乾燥DMF(30mL)に
溶かし、そこにカリウムフタルイミド(838mg,4.52mmo
l)を加え、90℃で3時間加熱撹拌する。反応終了
後、クロロホルム(150mL)−水(50mL)で抽出をおこ
ない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、無水硫
酸マグネシウムで乾燥させた。クロロホルム−ヘキサン
で再沈をおこない中間体N−置換フタルイミド(590m
g)を得る(収率92%)。この得られた中間体(51.3mg,
0.18mmol)をTHF(0.5mL/EtOH(1.5mL)に溶かし、
そこにヒドラジン・一水和物(0.1mL,2.1mmol)を加え
50℃で4−5時間加熱撹拝した。溶媒を留去し、クロ
ロホルム(30mL)−水(20mL)で抽出をおこない有機相
を水(20mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウム
で乾燥させた。再び溶媒を留去して黄色オイル状の2−
アミノメチルナフタレン(22mg)を得た。(収率77
%)。 分析結果:1H NMR(200MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)
1.62(s,2H,NH2)、4.04(s,2H,CH2)、7.4
2−7.52(m,3H,Ar-H)、7.76(d,J=0.6Hz,1
H,Ar-H)、7.80−7.85(m,3H,Ar-H)。
【0018】C.2−(N−メチルチオウレイド)メチ
ルナフタレン〔反応式1の(3)〕の合成 2−アミノメチルナフタレン(300mg,1.91mmol)をクロ
ロホルム(7mL)に溶かし、そこにCH3NCS(419mg,
5.73mmol)のクロロホルム溶液(3mL)を加えた。一昼
夜室温で撹拌し、反応終了後、クロロホルム(100mL)
−水(40mL)で抽出をおこない有機相を水(40mL)で3
回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾操させた。溶
媒を留去した後、クロロホルム−ジエチルエーテルで再
沈をおこない目的物(299mg)を得た。(収率68%)。 分析結果:1H NMR(300MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)
2.97(d,J=4.8Hz,3H,NH-CH3)、4.81(d,J=
4.05Hz,2H,Ar-CH2−NH)、5.96(brd,1H,NH)、
6.12(brd,1H,NH)、7.43(dd,J=1.8,8.4Hz,1
H,Ar-H)、7.46−7.52(m,2H,Ar-H)、7.75(d,J
=O.7Hz,1H,Ar-H)、7.80−7.85(m,3H,Ar-
H)。
【0019】D.ナフタレンーチオウロニウム誘導体
(1)の合成 アルゴン気流下、2−(N−メチルチオウレイド)メチ
ルナフタレン(338mg,1.47mmol)を乾燥エタノール(25
mL)に溶かし、そこにベンジルブロミド(281mg,1.64mm
ol)の乾燥エタノール溶液(5mL)を加えた。30−4
0℃にて4−5時間加熱撹拝し、溶媒を留去した。メタ
ノール−エチルエーテルで再沈をおこないブロモ塩54
4mgを得た。(収率92%)。次にそのブロモ塩(200m
g,0.50mmol)を乾燥エタノール(11mL)に溶かし、そこ
にAgPF6(126.6mg,0.50mmol)の乾燥エタノール溶
液(1.5mL)を加えてカウンターアニオンの交換をおこ
なった。逆相カラムクロマトグラフィー(MERCK Silica
lgel 60 Silanized,展開溶媒:エタノール)でAgBr
を除去し、溶媒を留去して目的物(232mg)を得た。
(約100%収率)。 分析結果:1H NMR(400MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)
3.07(s,3H,CH3)、4.32(s,2H,SCH2Ar)、
4.69(s.2H,ArCH2NH)、7.25−7.27(m,6
H,Ar-H)、7,67(brd,1H,Ar−H)、7.76−7.
80(m,3H,Ar-H);13C NMR(100.7MHz,CDC13)δ
(ppm)31.07(NHCH3)、35.89(SCH2Ph)、
48.52(ArCH2NH)125.08,126.63,127.25,127.68,1
28.04,128.96,129.07,129.17,129.37,131.80,133.08 an
d 133.16(Ar-C)167.85(NH-C+-);FAB-MS,m/z321〔M
+−PF6 -〕;Anal.Calcd for C20H21N2SPF6:C,51.
50;H,4.54;N,6.01. Found:C,51.66;H,4.53;N,5.98.
【0020】実施例2 本発明の化合物の蛍光センサー特性 化合物Iのアセトニトリル中での蛍光特性、およびアセ
テートイオンを添加した場合の蛍光特性の変化を図1に
示す。図1から、化合物1からは、2−メチルナフタレ
ンの同条件における蛍光強度に対して2%程度の微弱蛍
光しか観測されない。このことは、化合物1の電子欠損
部位であるチオウロニウム基が分子内で効率よくナフタ
レン部の一重項状態をクエンチしている(LUMO位に
励起された電子は、HOMO位に遷移することなくチオ
ウロニウムのLUMO位に移る)ものと思われる。そこ
で、そのチオウロニウム基と親和性をもつと類堆される
アセテートイオンをゲストアニオン(分子認識されるイ
オンを一般にゲスト分子と呼ばれることと対応する)と
して添加したところ、ナフタレン環の持つ発光強度の著
しい増大(回復)が観察される。そのスペクトル変化
は、ほぼ化学量論比のゲストイオンの添加で飽和に達
し、アニオンが存在しなかった場合の蛍光に対してして
410%の蛍光強度の増大が見られた。
【0021】この錯体形成モチーフを直接観測するた
め、核磁気共鳴装置による解析を実施した。その結果、
CD3CN中、アニオン結合部位近傍に位置する(●)
Naphtyl−CH2、(○)benzyl−CH2
S、(△)NHCH3〔それぞれの(CH2)、(C
2)、(CH3)〕のプロトンのそれぞれが、アセテー
トイオン〔(n−ブチル)4Nとの塩〕の添加に伴って
最大0.2ppmの高磁場シフトをもたらした(図2)
ことから、アセテートイオンはチオウロニウム部位に効
率よく結合していることが確かめられた。
【0022】実施例3 アニオン種に対する応答性。 図3のアニオン種、AcO-、(n−BuO)2P(O)
-、Cl-に対する化合物Iの応答挙動(錯体生成の平
衡定数)から、前記アニオン種との結合定数Ka
(M-1)は、それぞれ1.2×107、5.5×104、Cl-では
算出不可能、であることが分かった。このことから、は
アセテートイオンに強力に結合できるばかりでなく、オ
キソアニオン種に対しての良好な選択性を発現したこと
から、それら化学種に対する発光型分子センサーとして
有用であることが分かった。
【0023】実施例4 前記一般式(II)のビナフチル誘導型チオウロニウム
蛍光プローブの合成。 〔式(II)中、R、R’、A、A’及びXは前記した
とおりである。〕 化合物(II)は、チオウロニウム基を有するダイトピ
ック蛍光レセプター(Ditopic Fluorescent Receptor)
であり、α、ω−ジカルボキシレート類のレセプターと
して機能し、これらの化合物を認識できる機能を持つ。
【0024】A.2,2’−ジメトキシナフタレンの合
成〔前記反応式IIの(2’)の化合物〕 1,1’−ビ−2−ナフトール〔化合物(1’)〕(300
0mg、10.5mmol),K2CO3(5792mg、41.9mmol)を乾燥ア
セトン(100mL)に溶かし、アルゴン雰囲気下で30分
間加熱還流させた。次に反応系を冷却後、水冷撹拌しつ
つヨウ化メチル(2.6mL,41.9mmol)を滴下し、遮光下で再
び加熱還流させた。反応の終了を薄層クロマトグラフィ
ーで確認したら、水冷撹拌しつつ少量の水(30mL)を加
えて反応を失活させ、溶媒を減圧留去した。クロロホル
ム(250mL)1%(v/v)塩酸(150mL)で抽出をおこ
ない、有機相を1%(v/v)塩酸(150mL)で2回、飽
和NaCl水溶液(100mL)で1回洗浄した後、無水硫
酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、クロ
ロホルム−ヘキサンで再沈を行い白色粉末状の目的物を
2935mg(収率89%)得た。
【0025】分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3
(ppm)、3.77(s,6H,OCH3),7.11(d,J=8.4Hz,
2H,Ar-H),7.21(dt,J=1.5,6.8Hz,2H,Ar-H),7.
32(dt,J=1.5,6.6Hz,2H,Ar-H),7.46(d,J=9.2H
z,2H,Ar-H),7.87(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),7.98
(d,J=9.2Hz,2H,Ar-H)。
【0026】B.2,2’−ジメトキシ−3,3’−ジ
ホルミル−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物
(3’)〕 2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(2000m
g,6.36mmol),N,N,N’,N’−テトラメチルエチレ
ンジアミン(8.2mL,54.7mmol)を乾燥エチルエーテル(75m
L)に溶かし、0℃で撹拌した。そこにn−ブチルリチウ
ムの1.57Mヘキサン溶液(34.8mL,54.7mmol)をゆ
っくり滴下した。0℃のまま2時間撹拌し、その後室温
で17時間撹拌をおこなった。再び0℃にし、乾燥DM
F(8.4mL,108mmol)を加え、そのまま2時間撹拌し
た。飽和NH4Cl水溶液(50mL)を加え反応を失活さ
せ、溶媒を留去した。クロロホルム(200mL)−水(150
mL)で抽出をおこない有機相を水(100mL)で3回、飽
和NaCl水溶液(80mL)で1回洗浄した後、有機層を
無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した
後カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300,展開溶
媒:1.5%(v/v)酢酸エチル−クロロホルム)にかけて、黄
色オイル状の目的物1,816mgを得た。(収率77%) 分析結果:1H NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm)3.5
0(s,6H,OCH3)、7.36−7.54(m,4H,Ar-H),7.
18(d,J=8.2Hz,2H,Ar-H),8.07(d,2H,J=8.2Hz,Ar-
H),8.62(s,2H,Ar-H),10.56(s,2H,CHO)。
【0027】C.3.3’−ビス(ヒドロキシメチル)
−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合
成〔化合物(4’)〕 アルゴン雰囲気下2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビ
ナフタレン(260mg,0.70mmol)を乾燥エタノール(9.5m
L)−乾燥THF(2mL)に溶かし、そこにNaBH4
(93mg,2.46mmol)を加える。室温で4時間撹拌した
後、混合物を減圧条件下で濃縮した。そこにクロロホル
ム(50mL)−1%(v/v)塩酸(50mL)を加え、30
分間撹拌した。クロロホルム(150mL)−1%(v/
v)塩酸(100mL)で抽出をおこない有機相を水(100m
L)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥
し、溶媒を留去した。クロロホルム−ヘキサンで再沈
し、白色粉末状の目的物を218mg(収率83%)得
た。
【0028】分析結果:1H NMR(300MHz,DMSO-d6
δ(ppm)3.27(s,6H,OCH3),4.77(s,4H,C
H2),5.37(brs,2H,OH),6.94(d,J=8.5Hz,2H,A
r-H),7.23(t,J=7.5Hz,2H,Ar-H),7.40(t,J=7.
4Hz,2H,Ar-H),7.98(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.11
(s,2H,Ar-H)。
【0029】D.3.3’−ビス(ブロモメチル)−
2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成
〔化合物(5’)〕 アルゴン雰囲気下、3.3’−ビス(ヒドロキシメチ
ル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン
(300mg,0.80mmol)を乾燥THF(6mL)に溶かし、0℃
で撹拌した。そこに三臭化リン(0.19mL,2.00mmol)を5
分間かけて滴下した。室温に戻しそのまま3時間撹拌し
た。薄層クロマトグラフィーで反応の終了を確認し、溶
媒を留去した。クロロホルム(100mL)−水(100mL)で
抽出をおこない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した
後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300,展開溶媒
1.5%(v/v)酢酸エチル−クロロホルム)にかけて、黄色
オイル状の目的物355mgを得た。(収率89%) 分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)3.35
(s,6H,OCH3),4.73(d,J=9.6 Hz,2H,CH2),4.94
(d,J=9,5Hz,2H,CH2),7.20(d,J=8.5Hz,2H,Ar-H),
7.28(dt,J=1.1,8.5Hz,2H,Ar-H),7.42(dt,J=1.
1,1.5Hz,2H,Ar-H),7.88(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.
07(s,2H,Ar-H)。
【0030】E.3.3’−ビス(アミノメチル)−
2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成
〔化合物(6’)〕 アルゴン雰囲気下、3.3’−ビス(ブロモメチル)−
2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(351m
g,0.70mmol)を 乾燥DMF(9mL)に溶かし、そこにカリ
ウムフタルイミド(455mg,2.46mmol)を加える。90℃
で5時間加熱撹拌した後、溶媒を留去してクロロホルム
(150mL)−水(150mL)で抽出をおこない有機相を水
(100mL)で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾
燥し、溶媒を留去した後、クロロホルム−ヘキサンで再
沈をおこない白色のN−置換フタルイミド誘導体397
mgを得た。(収率95%)。得られたN−置換フタルイミ
ド誘導体(700mg,1.11mmol)をTHF(10mL)/エタノ
ール(20mL)に溶かし、そこにヒドラジン−水和物(0.
6mL,12.4mmol)を加え加水分解をおこなった。反応終了
後溶媒を留去し、クロロホルム(200mL)−水(150mL)
で抽出をおこない、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾
燥した。溶媒を減圧留去して目的物350mgを得た。
(収率80%)。
【0031】分析結果:1H NMR(200MHz,CDCl3
(ppm)1.76(s,4H,NH2),3.31(s,6H,OCH3),
4.075(d,J=14.8Hz,2H,CH2),4.18(d,J=14.8Hz,2H,
CH2),7.11-7.22(m,4H,Ar-H),7.39(dt,J=1.4,6.8Hz,2H),
7.88(d,J=8.0Hz,2H,Ar-H),7.94(s,2H,Ar-H).
【0032】F.3,3’−ビス(N−メチルチオウレ
イドメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナ
フタレンの合成〔化合物(7’)〕 3,3’−ビス(アミノメチル)−2,2’−ジメトキ
シ−1,1’−ビナフタレン(201mg,0.54mmol)をクロ
ロホルム(4mL)に溶かし、そこにCH3NCS(236mg,3.
23mmol)のクロロホルム溶液(2mL)を加えた。一昼夜
室温で撹拌し、反応終了後、クロロホルム(100mL)−
水(80mL)で抽出をおこなった。有機相を水(100mL)
で3回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥さ
せ、溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(ワ
コーゲルC-300,展開溶媒:3%メタノール−クロロホル
ム)にかける。クロロホルム−ヘキサンで再沈をおこな
い目的物165mgを得た。(収率59%)。
【0033】分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3
(ppm)3.00(d,J=4.8Hz,6H,NH-CH3),3.27(s,6H,
OCH3),4.76−5.12(m,4H,ArCH2),6.30−
6.34(m,2H,NH),6.57(brs,2H,NH),7.12
(d,J=8.5Hz,2H,Ar-H),7.23−7.28(m,2H,Ar-
H),7,41(dt,J=1.1,7.0Hz,2H,Ar-H),7.88
(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.00(s,2H,Ar-H);FAB
MS,m/e 518〔M+〕。
【0034】G.ビナフタレン−チオウロニウム誘導体
(II) アルゴン気流下、3,3’−ビス(N−メチルチオウレ
イドメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナ
フタレン(150mg,0.29mmol)を乾燥エタノール(10mL)
に溶かし、そこにベンジルブロミド(109mg,0.64mmol)
の乾燥エタノール溶液(3mL)を加えた。30−40℃
で4−5時間加熱撹拌し、溶媒を留去した後、逆相中圧
カラムクロマトグラフィー(MERCK Silicagel 60 Silan
aized (逆相シリカ),f=2cm,h=15cm,展開溶媒:50%(v/v)
イソプロパノール-水)にかけ、目的のブロモ塩(130m
g)を得た(収率52%)。このブロモ塩(73.5mg,0.085mmo
l)を乾燥エタノール(3mL)に溶かし、そこにAgPF
6(43.2mg,0.17mmol)の乾燥エタノール溶液(1.5mL)
を加えてカウンター交換をおこなった。逆相シリカゲル
カラムクロマトグラフィー(MERCK Silicalgel 60 Silan
ized,展開溶媒:エタノール)でAgBrを除去し、溶媒
を留去後目的物(80mg)を得た。(収率95%)、分析結果;
FAB−MS、m/z845〔M+−2PF6 -〕。
【0035】実施例5 ビナフタレン−チオウロニウム誘導体(II)のα、ω−
ジカルボキシレート類の認識特性を、アジピン酸塩
(△)、グルタル酸塩(○)、ピメリン酸塩(▲)及び
こはく酸塩(●)(いずれもn−Bu4N塩)に対する
認識性を観察することによって行った。その結果を図4
に示す。該特性曲線からα、ω−ジカルボキシレート類
の蛍光プローブとして有用であることが分かる。
【0036】なお、一般式(II)における、AとA’
がポリエーテル基またはAとA’とで環状ポリエーテル
鎖を形成する基とで環状ポリエーテル鎖を形成(クラウ
ンエーテル構造を形成)する基である化合物は、反応式
(II)における出発原料としてAとA’がポリエーテ
ル基またはAとA’とで環状ポリエーテル鎖を形成する
基をであるものを用いて合成できる。
【0037】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の前記一般式
(I、II)で表されるナフタレン誘導型チオウロニウ
ム化合物は、アニオン種、特に少なくともオキソアニオ
ン種の認識蛍光センサーとして、また、一般式IIにお
けるA,A’の基により導かれる構造によりアミノ酸認
識蛍光センサーとして有用な化合物を提供するものであ
り、生体に於ける種々の成分検出、又は反応の解析に寄
与するという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 化合物Iのアセトニトリル中での蛍光特性お
よびアセテートイオンを添加した場合の蛍光特性の変化
【図2】 アセテートイオン結合部位近傍に位置する
(●)Naphtyl−CH2、(○)benzyl−
CH2−S、(△)NHCH3〔それぞれの(CH2)、
(CH2)、(CH3)〕のプロトンのそれぞれのアセテ
ートイオン〔(n−ブチル)4Nとの塩〕の添加に伴う
高磁場シフトを示す
【図3】 アニオン種、AcO−(●)、(n−Bu
O)2P(O)O−(○)、Cl−(△)に対する化合
物Iの応答挙動
【図4】 化合物(II)のα、ω−ジカルボキシレート
類の認識特性〔アジピン酸塩(△)、グルタル酸塩
(○)、ピメリン酸塩(▲)及びこはく酸塩(●)(い
ずれもn−Bu4N塩)に対する認識性〕

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I、II)で表されるナフ
    タレン誘導型チオウロニウム化合物。 【化1】 (式中、RはHまたは置換基を有してもよい低級アルキ
    ル基を、R’はHまたは置換基を有してもよい低級アル
    キル基、アルコキシ基又はニトロ基いずれか1つの基を
    を表し、XはPF6又はClO4を表す。) 【化2】 (式中、R、R’およびXは前記式Iにおけるものと同
    じ意味を表す。A、A’は水素原子、低級アルキル基、
    ポリエーテル基またはAとA’とで環状ポリエーテル鎖
    を形成する基を表わす。ビナフチル基はラセミ体もしく
    は光学活性体である。XはPF6又はClO4を表す。)
  2. 【請求項2】 前記一般式(I、II)で表されるナフ
    タレン誘導型チオウロニウム化合物のアニオン種認識蛍
    光センサーとしての使用。
  3. 【請求項3】 アニオン種が少なくとも1つのオキソア
    ニオン種であることを特徴とする請求項2に記載の蛍光
    センサーとしての使用。
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