JP2001226288A - 腹膜劣化抑制剤および腹膜透析液 - Google Patents

腹膜劣化抑制剤および腹膜透析液

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JP2001226288A
JP2001226288A JP2000038745A JP2000038745A JP2001226288A JP 2001226288 A JP2001226288 A JP 2001226288A JP 2000038745 A JP2000038745 A JP 2000038745A JP 2000038745 A JP2000038745 A JP 2000038745A JP 2001226288 A JP2001226288 A JP 2001226288A
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peritoneal
hgf
cells
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peritoneal dialysis
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JP2000038745A
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Ichiro Hirahara
一郎 平原
Takashi Yamamoto
敬 山本
Ichihiro Umeyama
一大 梅山
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Terumo Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】腹膜の劣化を抑制できる新規な腹膜劣化抑制剤
を提供すること。 【解決手段】本発明の腹膜劣化抑制剤は、HGFを含有
することを特徴とする。本発明の腹膜劣化抑制剤は、H
GFの他に、さらに糖類を含有することが好ましい。腹
膜劣化抑制剤は、かかる糖類を、HGF1ngに対して1
μg〜10g程度含有することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腹膜劣化抑制剤お
よび腹膜透析液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】腎機能が低下もしくは喪失した患者に対
して、人工透析が広く行われている。この人工透析は、
本来腎臓が果たしている血液浄化作用を腎臓に代わって
行う血液浄化療法であり、生体内から水を除去すること
によって体液の組成を一定に保つとともに、体液中の老
廃物、例えば尿素等を除去することを主な目的としてい
る。人工透析としては、ダイアライザーを含む血液体外
循環回路を用いた血液透析の他に、腹膜透析が知られて
いる。
【0003】腹膜透析では、腹膜で囲まれた腹腔内に浸
透圧の高い腹膜透析液を貯留することによって、生体内
の余分な水と老廃物を取り除く。すなわち、腹膜透析で
は、腹腔内に貯留した腹膜透析液と体液との間に生じる
浸透圧格差により、腹膜毛細血管から腹腔内の腹膜透析
液に生体内の余分な水が移動し、これによって、生体内
の余分な水と老廃物が取り除かれる。
【0004】この腹膜透析は、血液透析に比べて、循環
系や生体内部環境へ与える影響が少ないといった利点を
持っている。ところで、腹膜透析液を長期にわたって腹
腔内に反復貯留すると、腹膜微小血管内皮細胞が傷害を
受ける場合がある。この腹膜微小血管内皮細胞が傷害を
受けると、限外濾過能を有する腹膜微小血管が破綻す
る。この結果、腹膜の劣化がおき、腹膜透析の施行が困
難になる。
【0005】この場合、腹膜の劣化に対する有効な治療
剤や防止剤が未だに開発されていないため、腹膜透析の
継続を断念しなければならない。
【0006】しかしながら、腹膜透析は、前述した循環
系や生体内部環境へ与える影響が少ないといった利点に
加えて、通院の頻度が少なく、自宅や職場で行うことが
でき、患者の拘束時間が少ないといった利点を有してい
る。したがって、腹膜の劣化を抑制し、腹膜透析を長期
にわたって継続できれば、腎機能が低下もしくは喪失し
た患者に対して計り知れない利益をもたらすことができ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、腹膜
の劣化を抑制できる新規な腹膜劣化抑制剤、および腹膜
透析液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(11)の本発明により達成される。
【0009】(1) HGF(Hepatocyte Growth Fact
or)を含有することを特徴とする腹膜劣化抑制剤。
【0010】(2) さらに糖類を含有することを特徴
とする上記(1)に記載の腹膜劣化抑制剤。
【0011】(3) 前記糖類は、単糖類である上記
(2)に記載の腹膜劣化抑制剤。
【0012】(4) 前記糖類は、グルコースである上
記(2)に記載の腹膜劣化抑制剤。
【0013】(5) 前記糖類を、前記HGF1ngに対
して1μg〜10g含有する上記(2)ないし(4)の
いずれかに記載の腹膜劣化抑制剤。
【0014】(6) 腹膜透析液に配合して使用される
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の腹膜劣化抑
制剤。
【0015】(7) 上記(1)ないし(6)のいずれ
かに記載の腹膜劣化抑制剤を含有することを特徴とする
腹膜透析液。
【0016】(8) 腹膜透析液中における前記HGF
の濃度が、0.01〜1000ng/mLである上記(7)
に記載の腹膜透析液。
【0017】(9) pHが4.0〜9.0である上記
(7)または(8)に記載の腹膜透析液。
【0018】(10) pHが4.0〜6.5である上
記(7)ないし(9)のいずれかに記載の腹膜透析液。
【0019】(11) 0.1〜10W/V%の濃度の糖
類を含有する上記(7)ないし(10)のいずれかに記
載の腹膜透析液。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の腹膜劣化抑制剤は、HGF(Hepatocyte Growt
h Factor、肝細胞増殖因子)を含有することを特徴とす
る。
【0021】本発明者は、腹膜の劣化の防止を可能とす
べく、腹膜劣化防止能を有する物質を、日夜探求してき
た。そして、様々な物質を調査し、試行錯誤を重ねた結
果、本発明者は、当初肝実質細胞増殖因子として見出さ
れた(Miyazawa, K. et al.Biochem. Biophys. Res. Co
mmun. 163, 967 (1989))HGFが、腹膜の劣化を抑
制、防止できることを、突き止めた。このHGFを含有
する腹膜劣化抑制剤を患者に投与すれば、腹膜の劣化を
抑制することが可能となる。
【0022】なお、本明細書におけるHGFには、野生
型(wild type)はもちんのこと、例えばアミノ酸残基
や糖鎖等が修飾、置換、欠損、挿入もしくは付加された
改変体、誘導体、変異体(mutant type)なども含む。
【0023】本発明の腹膜劣化抑制剤は、HGFの他
に、さらに糖類を含有することが好ましい。この場合の
糖類には、例えば腹膜劣化抑制剤が液中に溶解している
場合、該液中に溶解している糖類を含む。後述するよう
に、本発明者は、糖類が加わると、HGFが有する細胞
活性低下防止作用が高まることを発見した。このような
糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マ
ンノース、フルクトース等の単糖類、スクロース、マル
トース、ラクトース、トレハロース等の二糖類、グリコ
ーゲン、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、オリゴ
グリコシルスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオ
リゴ糖等の多糖類、マルチトール、エリスリトール、キ
シリトール等の糖アルコールなどが挙げられる。
【0024】その中でも特に、糖類としては、単糖類が
より好ましい。単糖類は、水への溶解度も高く、患部細
胞まで効率よく到達でき、しかも、細胞内に浸透しやす
い。さらにその中でも、本発明の腹膜劣化抑制剤が含有
する糖類としては、グルコースが最適である。後述する
実施例からも分かるように、腹膜劣化抑制剤がグルコー
スを含有していると、HGFの細胞活性維持作用が大き
く増大する。
【0025】このように、腹膜劣化抑制剤が糖類を含有
する場合、腹膜劣化抑制剤は、かかる糖類を、HGF1
ngに対して1μg〜10g程度含有することが好まし
く、0.1〜500mg程度含有することがより好まし
い。糖濃度をこの範囲内とすると、HGFが有する細胞
活性低下防止作用を最も効率よく高めることができる。
なお、腹膜劣化抑制剤は、糖類を含有していなくてもよ
い。また、腹膜劣化抑制剤は、他の成分を含有していて
もよい。
【0026】このような腹膜劣化抑制剤は、液状、すな
わち液に溶解した状態であることが好ましい。これによ
り、本発明の腹膜劣化抑制剤を、腹膜組織内(目的部
位)に効率よくデリバリーできるようになる。なお、腹
膜劣化抑制剤(HGF)を溶解させる液としては、例え
ば、薬液(例えば、生理食塩水、Locke液、Rin
ger液、Tyrode液、Earle液、Krebs
液、Dulbecco液、PBS等の等張液、腹膜透析
液、腹腔洗浄液など)、水(純水、蒸留水、滅菌水な
ど)等が挙げられる。なお、腹膜劣化抑制剤は、患者へ
の投与時に液に溶解させてもよい。また、腹膜劣化抑制
剤を、粉末、顆粒等の状態で目的部位に直接投与しても
構わない。
【0027】本発明の腹膜劣化抑制剤は、腹腔内に直接
投与することが好ましい。腹腔内に直接投与すれば、本
発明の腹膜劣化抑制剤を、目的部位である腹膜組織に選
択的かつ効率よくデリバリーすることができる。しか
も、腹腔内に直接投与すれば、特殊なデリバリー方法を
用いて腹膜劣化抑制剤をデリバリーしなくても、効果的
に薬効が得られるようになる。また、投与後に患部に到
達するまでのHGFのロスが極めて少ない。さらには、
腹腔内に直接投与すると、腹膜劣化抑制剤はしばらく腹
腔内に滞留するので、患者に対して低侵襲であり、投与
量も少なくて済む。加えて、他の臓器、生体組織に与え
る影響を最小限に留めることができる。
【0028】腹膜劣化抑制剤を腹腔内に直接投与する方
法としては、例えば、腹膜透析液に混ぜて腹膜透析時に
腹腔内に投与する方法、液状の腹膜劣化抑制剤を、腹膜
透析用カテーテルを介し、腹腔内に直接投与する方法な
どが挙げられる。
【0029】なお、腹膜劣化抑制剤がRinger液等
の等張液に溶解したものであると、等張液の浸透圧は生
体の浸透圧に近いので、生体組織に対して与える負担が
最小限のものとなる。また、腹膜劣化抑制剤が腹膜透析
液に溶解したものであると、腹膜透析を行うついでに患
者に対して腹膜劣化抑制剤を投与することができ、患者
に対して別途腹膜劣化抑制剤を投与する手間が省ける。
なお、本発明の腹膜劣化抑制剤は、例えば、腹膜透析時
に腹膜透析液に混注する形態の薬剤(粉末、液体など)
としても提供できる。
【0030】前述したように、本発明の腹膜劣化抑制剤
は、比較的少ないHGF量で薬効が得られる。このた
め、腹膜劣化抑制剤が液に溶解している場合、かかる液
中のHGFの濃度は、好ましくは例えば0.01〜10
00ng/mL程度とすることができ、より好ましくは例え
ば0.1〜100ng/mL程度とすることができ、さらに
好ましくは例えば0.5〜50ng/mL程度とすることが
できる。なお、液中のHGFの濃度をこの範囲外として
も構わない。腹膜劣化抑制剤が液に溶解している場合、
かかる液のpHは、後述する理由と同様の理由から、例
えば、4.0〜9.0程度とすることができる。さらに
は、かかる液のpHは、4.5〜6.5程度とすること
ができる。後述するように、本発明の腹膜劣化抑制剤
は、液のpHをこのような低pHにしても、好適にその
効果を発揮できる。
【0031】なお、腹膜劣化抑制剤は、腹腔内に直接投
与しなくてもよい。例えば、本発明の腹膜劣化抑制剤
を、透析用カテーテルを介さずに、静脈注射により投与
してもよい。以上、本発明の腹膜劣化抑制剤の投与法の
例を示したが、腹膜(患部)で腹膜劣化抑制剤が作用す
れば、投与方法は特に限定はしない。
【0032】前述したように、腹膜劣化抑制剤を腹膜透
析液に混ぜて腹膜透析時に腹腔内に投与(腹膜透析液に
配合して使用)すれば、腹膜透析を行うついでに患者に
対して腹膜劣化抑制剤を投与することができ、患者に対
して別途腹膜劣化抑制剤を投与する手間が省ける。そこ
で、以下、本願第2の発明である腹膜透析液について述
べる。
【0033】本発明の腹膜透析液は、前述したような腹
膜劣化抑制剤を含有することを特徴とする。本発明の腹
膜透析液は、腹膜透析を行うという腹膜透析液本来の機
能に加えて、腹膜の劣化を抑制できるという効果を併せ
持つ。
【0034】この場合、腹膜透析液中のHGFの濃度
は、前記と同様の理由から、0.01〜1000ng/mL
程度とすることが好ましく、0.1〜100ng/mL程度
とすることがより好ましく、0.5〜50ng/mL程度と
することがさらに好ましい。
【0035】このような腹膜透析液のpHは、例えば、
生理的に許容範囲内のもの(例えば4.0〜9.0程
度)とすることができる。ところで、腹膜透析では、一
般的に、腹膜透析液のpHを低くすれば低くするほど、
腹膜が劣化しやすいことが知られている。ところが、前
記腹膜劣化抑制剤は、後述するように、低pH条件下で
も腹膜組織細胞の細胞傷害保護作用と細胞活性維持作用
が好適に得られる。したがって、本発明の腹膜透析液で
は、腹膜透析液のpHを低くしても、前記腹膜劣化抑制
剤の薬効により、腹膜の劣化を引き起こしにくい。この
ため、本発明では、腹膜透析液のpHを比較的低く(例
えば4.0〜6.5程度、特に4.8〜6.0程度)し
ても、好適に腹膜の劣化を防止できる。
【0036】腹膜透析液は、糖類を含有することが好ま
しい。前述したように、糖類が加わると、HGFの細胞
活性維持作用が高まるからである。このとき、腹膜透析
液中の糖類の濃度は、0.1〜10W/V%程度とするこ
とが好ましく、1〜5W/V%程度とすることがより好ま
しい。糖濃度をこの範囲内とすると、腹膜透析液中のH
GFは、腹膜劣化防止能を極めて顕著に発揮することが
でき、腹膜透析による腹膜の劣化をさらに好適に防止で
きるようになる。
【0037】以上述べた腹膜劣化抑制剤および腹膜透析
液に用いられるHGFは、例えば、以下のようにして得
ることができる。以下に示すように、遺伝子工学的手法
によりHGF遺伝子を細胞内に導入し、かかる細胞にH
GFを産生させ、このHGFを精製すると、安定かつ大
量にHGFを得ることが可能である。なお、例えば医薬
品等として問題が無い純度が得られれば、本発明は、H
GFの調製方法を特に限定するものではない。
【0038】[1]まず、HGFをコードし得るDNA
(HGF DNA)を用意する。
【0039】[2]次に、用意したHGF DNAを例
えばプラスミドに組み込む等して、HGF発現用ベクタ
ーを構築する。このとき好適に用いられるベクター(プ
ラスミド)を数例例示すると、例えば、pSVL発現ベクタ
ー、pSG発現ベクター、pKCR発現ベクター、pCAGGS発現
ベクター、pAdD26SVpA発現ベクター等の哺乳動物発現用
ベクターなどが挙げられる。なお、宿主細胞中でHGF
を産生できれば、ベクターは、これらの発現ベクターに
限定はしないことは言うまでもない。
【0040】[3]次に、得られた発現ベクターを宿主
細胞にトランスフェクションし、HGFを発現可能な形
質転換細胞を得る。この時使用する宿主細胞には、コス
(COS)1細胞、コス7細胞、チャイニーズハムスター卵巣
細胞(CHO)等の哺乳動物細胞を用いることが望ましい。
なお、活性型もしくは活性型に変換可能なHGFが得ら
れれば、宿主細胞には、哺乳動物細胞以外の細胞、例え
ば、昆虫細胞、酵母、原核生物等を用いても構わない。
【0041】好適なトランスフェクションの方法として
は、例えば、リポフェクチン(ギブコBRL社製)等のリ
ポソームを用いる方法、リン酸カルシウム法(Chen, C.
et al. Mol. Cell. Biol. 7, 2745 (1987))、DEAE-デ
キストラン法(Maes, R. et al.Biochem Biophis Acta
134, 269 (1967))、エレクトロポレーション法などが挙
げられる。トランスフェクションの方法は、発現ベクタ
ーが効率良くトランスフェクションされれば、他の方法
でもよい。以上述べた方法以外にも、例えば、バキュロ
ウィルスベクター(例えばBacPAK8やBacPAK9(東洋紡社
製)など)等のウィルスベクターを用いて形質転換細胞
を作成してもよい。本発明者はSf9等の昆虫細胞の系
で、活性を有するHGFが効率良く大量に得られること
を確認している。
【0042】[4]次に、得られた細胞(形質転換細
胞)を培養し、かかる細胞にHGFを産生させる。この
場合の培地としては、MEM(ミニマムエッセンシャル培
地)、α-MEM、 RPMI1640培地、DME培地(ダルベッコ改
変イーグル培地)、F12/DME培地、フィッシャー培地、
ウイリアム培地などを例として挙げることができる。必
要に応じて、培地に添加物を加えてもよい。
【0043】培養は、通常、30〜40℃くらいで、
0.1〜10%程度の二酸化炭素存在下、1〜7日程度
行われるが、細胞が生育すれば培養条件はこれに限定し
ない。なお、培養細胞は形質転換細胞でなくてもよく、
例えば、HGFを産生する能力を元来有する細胞を培養
することにより、HGFを産生させてもよい。
【0044】[5]培養を行った後、培養上清を回収
し、HGFを含有する試料を得る。これ以外にも、例え
ば、牛、羊、豚や蚕等のトランスジェニック生物の組
織、臓器、血液などから、HGFを含有する試料を得て
もよい。さらには、通常の生物の臓器や組織、血液など
から、HGFを含有する試料を得てもよい。
【0045】[6]次に、試料を精製することにより、
HGFを得ることができる。例えば、クロマトグラフィ
ー法、低分子の除去操作等を行うことにより、試料を精
製することができる。この場合のクロマトグラフィー法
としては、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー法、S
−セファロース等のイオン交換樹脂を用いたイオン交換
クロマトグラフィー法、抗HGF抗体、ヘパリン等のア
フィニティー担体を用いたアフィニティークロマトグラ
フィー法などが挙げられる。また、低分子の除去法とし
ては、例えば、蒸留水、リン酸緩衝液、生理食塩水等に
よる透析、限外ろ過、ゲル濾過などが挙げられる。な
お、例えば医薬品等として適切な純度のHGFが得られ
れば、他の精製法でHGFを精製しても構わない。
【0046】得られたHGFに適当な添加剤や補助剤を
加えてもよい。このようにして、腹膜劣化抑制剤を得る
ことができる。得られた腹膜劣化抑制剤は、例えば、フ
ィルターを用いた濾過滅菌などの除菌処理を施し、次い
でバイアル等の容器に封入(または貯留)して、保存す
ることができる。また、容器に入れた後、例えば、腹膜
劣化抑制剤を凍結乾燥等して、固体状にしてもよい。こ
れにより、腹膜劣化抑制剤の長期保存が容易となる。本
発明者は、通常の凍結乾燥では、HGFの活性が低下し
にくいことを確認している。その後、腹膜劣化抑制剤を
形成して錠剤にしてもよい。
【0047】
【実施例】☆☆HGFの調製☆☆ 以下のようにしてHGFを調製した。なお、以下に記載
の方法は、HGFの調製法の一例にすぎない。
【0048】<1>HGFのcDNAの調製 <1.1>まず、HGFのcDNAの塩基配列(Nature
342,440−443 (1989); Miyazawa, K. et al. Bioche
m. Biophys. Res. Commun. 163, 967 (1989)参照)を基
に、PCR(Polymerase Chain Reaction)用のプライ
マーを合成した。具体的には、翻訳領域の5’末端(翻
訳開始点)から上流に47〜82番目の塩基を含む領域
(5’プライマー)と、3’末端側の終止コドンから下
流に1〜37番目の塩基を含む領域(3’プライマー)
を基に、それぞれのプライマーを合成した。
【0049】<1.2>次に、ヒト卵巣腫瘍由来細胞H
UOCA−III(ちなみに同様の細胞はFERM BP
−2311として寄託されている)からSDS・フェノ
ール法によりRNAを調製し、このRNAを鋳型として
M-MLV逆転写酵素を用いて、cDNAを合成した。
【0050】<1.3>次に、上記<1.1>で合成し
たPCR用のプライマーを用いてPCR法を行い、上記
<1.2>で合成したcDNAを増幅し、PCR産物を
得た。
【0051】<1.4>次に、このPCR産物85μL
に、10μLの10xBamHl反応用緩衝液(1.5
M NaCl、60mM トリス緩衝液/pH7.9、60
mMMgCl2)と5μLの制限酵素BamHl(15uni
ts/μl;ニッポンジーン社製)とを加えて、37℃で
1時間保温し、PCR産物の消化を行った。
【0052】<1.5>次に、この消化物に対して、ア
ガロースゲル電気泳動を行った。その結果、約2.3K
bのDNA断片が1本だけ確認された。ターゲットとす
るHGF遺伝子の予想鎖長は約2.3Kbである(上記
<1.1>に示した文献参照)から、このDNA断片が
HGFのcDNAであると考えられる。
【0053】<1.6>次に、泳動ゲルから2.3Kb
のDNAバンド部分を切り出し、ゲル中のDNAを、Se
phaglas Band Prep Kit(アマシャムファルマシアバイ
オテク(以下単に「ファルマシア」という)社製)を用
いて精製した。これにより、HGFのcDNAを得た。
【0054】<2>HGF発現プラスミドの構築 上記<1>で得られたHGFのcDNAをほ乳動物細胞
用発現ベクターに組み込んだ。
【0055】まず、発現ベクターpCDL−SRα29
6(Takebe,Y.et al. Mol. Cell. Biol. 8, 466 (198
8).)のプロモーター領域の下流にBgl2認識部位を設け
た後、この発現ベクターを制限酵素Sal1で消化した。次
に、このSal1消化断片とpSG5(フナコシ社製)のf1
oriを含むSal1消化断片とを結合させて、pGMベクタ
ーを構築した。次に、このpGMベクターを制限酵素Bg
l2で消化し、この消化断片にHGFのcDNAのBamH1
断片(上記<1>参照)を結合することにより、pGM
/HGFベクター、すなわちHGF発現プラスミドを作
製した。
【0056】<3>宿主細胞へのトランスフェクション 得られたHGF発現プラスミドを、DEAE―デキスト
ラン法により、COS1細胞にトランスフェクションし
た。まず、直径90mmのシャーレに、6×105個のC
OS1細胞をまき、一晩、37℃、5%二酸化炭素存在
下で培養した。この培養した細胞を燐酸緩衝液(PB
S)で2回洗浄した後、シャーレに5μgのpGM/H
GFベクターを含む4mLのDEAE―デキストラン培
地(DMEM培地/50mM トリス pH7.4/0.4 mg/
mL DEAE―デキストラン)を加え、37℃で2.5時
間保温することにより、pGM/HGFベクター、すな
わちHGF発現プラスミドを細胞内に取り込ませた。
【0057】<4>形質転換細胞の培養 トランスフェクション後、得られた形質転換細胞を燐酸
緩衝液(PBS)で2回洗浄し、シャーレに5%牛胎児
血清を含むDMEM培地を10mL加えた後、5%二酸
化炭素存在下、37℃で、形質転換細胞を3日間培養し
た。
【0058】<5>培養終了後、培養上清を回収した。
【0059】<6>HGFの精製 回収した培養上清、すなわち試料中に含まれているHG
Fを、ヘパリンアフィニティークロマトグラフィーによ
り精製した。
【0060】このシステムには島津社製のLC7A型高速液
体クロマトグラフを用い、カラムにはTSK−Hepa
rin 5PWカラム(東ソー)を使用した。まず、カ
ラムを0.5M塩化ナトリウム/10mM燐酸緩衝液(p
H7.4、次工程および次々工程も同じ)で平衡化した
後、培養上清すなわち試料をカラムにかけ、HGFを担
体に吸着させた。次に、0.5M塩化ナトリウム/燐酸
緩衝液でカラムを洗浄した後、流速0.5mL/分、燐酸緩
衝液存在下で、60分間かけて0.5Mから2.0Mまで
の塩濃度勾配をかけることにより、HGFを溶出させ
た。そして、溶出時間20〜22分の画分を、HGF溶
出画分とした。その後、得られた溶出画分(溶出時間2
0〜22分の画分)を、0.01%の3-[(3-Cholamidopr
opyl)dimethylammonio]-1-propanesulfonate(CHAP
S)を含む10mM燐酸緩衝液(PBS、pH7.4)で
一晩透析することにより、HGFの精製品を得た。
【0061】得られた精製品がHGFであることを、抗
HGF抗体を用いたウエスタンブロットにより確認し
た。まず、得られた精製品に対して、Laemmliらの方法
(Laemmli. et al. Nature 277, 680 (1970))に従い、
8.5%ポリアクリルアミドゲル上でSDSポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動を行った。この時、分子量マーカ
ーとして、ウサギ筋肉由来ホスホリラーゼ(分子量9
7,400ダルトン)、ウシ血清アルブミン(分子量6
6,200ダルトン)、オボアルブミン(分子量45,0
00ダルトン)を用いた。泳動終了後、ゲルを0.01
M 3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸/1
0%メタノール(以後、CAPS緩衝液と称す)に浸
し、緩衝液の置換を行った。次に、このゲルの上に、予
めCAPS緩衝液で親水化したポリビニルジフルオリド
膜(PVDF膜、ファルマシア社製)をかぶせ、さらに
100mV(CV)の電圧を1.5時間かけることにより、ゲ
ル中のタンパク質を膜にブロッティングした。ブロッテ
ィング後、膜を3%ウシ血清アルブミン−TTBS(2
0mM Tris/0.15M NaCl/0.1% Twe
en20)に浸し、室温で2時間振盪した。振盪後、膜
上にブロッティングされたタンパク質と一次抗体とを反
応させるために、20mg/mL抗HGF抗体(特殊免疫研
究所製)/3%ウシ血清アルブミン−TTBSに膜を浸
し、室温で2時間振盪した。タンパク質と一次抗体とを
反応させた後、膜をTTBSで3回洗浄し、二次抗体と
反応させた。二次抗体には、アルカリフォスファターゼ
標識した抗マウス抗体(ストラタジーン社製)を3%ウ
シ血清アルブミン−TTBSで5000倍希釈したもの
を用いた。二次抗体との反応終了後、膜をTTBSで3
回洗浄し、picoblue immunoscreening kit(anti-mouse)
(ストラタジーン社製)により発色させた。その結果、
抗HGF抗体と反応した分子量66,000ダルトンの
バンドが観察されたことから、得られた精製品がHGF
であることが確認された。
【0062】☆☆以下、本発明を、具体的実施例に沿っ
て説明する。以下に示す実施例では、グルコース濃度が
糖濃度に対応している。以下の実施例で使用した腹膜微
小血管内皮細胞は、次のようにして用意した。まず、S
Dラット雄の腹膜から微小血管を摘出した。次に、かか
る微小血管から、腹膜微小血管内皮細胞を酵素法により
分離した。次に、得られた腹膜微小血管内皮細胞を、Hu
-Media-MvG(微小血管内皮細胞増殖用低血清液体培地、
クラボウ社製)を用い、ゼラチンコートプレート上に
て、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。
【0063】(実施例1) HGFによる腹膜微小血管
内皮細胞の傷害保護作用 以下のようにして、HGFによる腹膜微小血管内皮細胞
の傷害保護作用を調べた。
【0064】(1−1)まず、ラット腹膜微小血管内皮
細胞を、50000細胞/穴の細胞濃度で48穴プレー
トにまき、10%牛胎児血清/DME培地で1晩培養し
た。 (1−2)次に、プレート上の細胞が70〜80%コン
フルエントになったことを確認した後、細胞を、試験液
で洗浄した。試験液には、腹膜透析液(バクスター社製
「PD-4 1.5」、pH5.2、グルコース濃度1.36W/
V%)、またはリンゲル液(テルモ社製「ソルラク
ト」、pH6.8、糖不含)を用いた。
【0065】(1−3)次に、これらの細胞を、HGF
(腹膜劣化抑制剤)を10ng/mL含有させた試験液に4
時間暴露した。なお、糖の量は、HGF1ngあたりに換
算すると、それぞれ、1.36mg(PD-4 1.5)、0g
(リンゲル液)である。 (1−4)暴露後、試験液上清中の乳酸脱水素酵素(LD
H)をCytotoxity Detection kit(ロシュ・ダイアグノス
ッティックス社製)にて測定し、細胞傷害を調べた。
【0066】得られた結果を図1に示す。さらには、比
較対照として、前記(1−3)で試験液にHGFを含有
させなかった以外は前記と同様の実験を行った。これら
の結果も併せて図1に示す。
【0067】(実施例2) HGFによる腹膜微小血管
内皮細胞の活性低下防止作用 以下のようにして、HGFによる腹膜微小血管内皮細胞
の活性低下防止作用を調べた。
【0068】(2−1)まず、ラット腹膜微小血管内皮
細胞を、50000細胞/穴の細胞濃度で48穴プレー
トにまき、10%牛胎児血清/DME培地で1晩培養し
た。 (2−2)次に、プレート上の細胞が70〜80%コン
フルエントになったことを確認した後、細胞を、試験液
で洗浄した。試験液には、腹膜透析液(テルモ社製「ぺ
リトリック135」、グルコース濃度1.35W/V%)、腹
膜透析液(テルモ社製「ぺリトリック250」、グルコー
ス濃度2.50W/V%)、腹膜透析液(テルモ社製「ぺ
リトリック400」、グルコース濃度4.00W/V%)、ま
たはリンゲル液(テルモ社製「ソルラクト」、糖不含)
を用いた。
【0069】(2−3)次に、これらの細胞を、HGF
(腹膜劣化抑制剤)を10ng/mL含有させた試験液に3
0分間暴露した。なお、糖の量は、HGF1ngあたりに
換算すると、それぞれ、1.35mg(ぺリトリック13
5)、2.50mg(ぺリトリック250)、4.00mg(ぺ
リトリック400)、0mg(リンゲル液)である。 (2−4)次に、試験液を0.3mM WST-1、0.02mM
1-Methoxy PMSを含むフェノールレッド不含10ng/mL
HGF/10%牛胎児血清/DME培地に交換し、培養
を継続した。
【0070】(2−5)3時間培養後、培養上清を96
穴プレートに100μL分取し、450nm − 690nm
の吸光度を測定した。得られた結果を図2に示す。さら
には、比較対照として、前記(2−3)および(2−
4)でHGFを含有させなかった以外は前記と同様の実
験を行った。また、試験液の代わりにフェノールレッド
不含DME培地を用いたことと、実験中(前記(2−
3)、(2−4))培地にHGFを一切含有させなかっ
たこと以外は、前記と同様の実験を行った。これらの結
果も併せて図2に示す。
【0071】(実施例3) 様々なpHの腹膜透析液に
対するHGFによる腹膜微小血管内皮細胞の傷害保護作
用 腹膜透析液は、生理条件に比べてpHが低いものが多
い。そして、この低pHが、腹膜透析液による血管内皮
細胞の傷害の一因と考えられる。そこで、様々なpHの
腹膜透析液を用いて、HGFによる腹膜微小血管内皮細
胞の傷害保護作用を調べた。
【0072】(3−1)まず、ラット腹膜微小血管内皮
細胞を、50000細胞/穴の細胞濃度で48穴プレー
トにまき、10%牛胎児血清/DME培地で1晩培養し
た。 (3−2)次に、プレート上の細胞が70〜80%コン
フルエントになったことを確認した後、細胞を、試験液
で洗浄した。試験液には、テルモ社製ぺリトリック13
5(グルコース濃度1.35W/V%)をベースに、pH
を4.8、5.8、6.8にそれぞれ調整した腹膜透析
液を用いた。
【0073】(3−3)次に、これらの細胞を、HGF
を10ng/mL含有させた試験液に30分間暴露した。な
お、糖の量は、HGF1ngあたりに換算すると、すべ
て、1.35mgである。 (3−4)次に、試験液をフェノールレッド不含10%
牛胎児血清/DME培地に交換し、培養を継続した。
【0074】(3−5)3.5時間培養後、培養上清中
のLDHをCytotoxity Detection kitにより測定し、細胞
傷害を調べた。得られた結果を図3に示す。さらには、
比較対照として、前記(3−3)で試験液にHGFを含
有させなかった以外は前記と同様の実験を行った。ま
た、試験液の代わりに10%牛胎児血清(FCS)/D
ME培地を用い、実験中(前記(3−3))、培地にH
GFを一切含有させなかった以外は、前記と同様にし
て、実験を行った。これらの結果も併せて図3に示す。
【0075】(実施例4) 様々なpHの腹膜透析液に
対するHGFによる腹膜微小血管内皮細胞の活性低下防
止作用 様々なpHの腹膜透析液を用いて、HGFによる腹膜微
小血管内皮細胞の活性低下防止作用を調べた。
【0076】(4−1)まず、ラット腹膜微小血管内皮
細胞を、50000細胞/穴の細胞濃度で48穴プレー
トにまき、10%牛胎児血清/DME培地で1晩培養し
た。 (4−2)次に、プレート上の細胞が70〜80%コン
フルエントになったことを確認した後、細胞を、試験液
で洗浄した。試験液には、テルモ社製ぺリトリック13
5をベースに、pHを4.8、5.8、6.8にそれぞ
れ調整した腹膜透析液を用いた。
【0077】(4−3)次に、これらの細胞を、HGF
を10ng/mL含有させた試験液に30分間暴露した。 (4−4)次に、試験液をフェノールレッド不含10%
牛胎児血清/DME培地に交換し、培養を継続した。
【0078】(4−5)3.5時間培養後、培養上清
に、上清中の濃度が0.3mMとなるようにWST-1を、上
清中の濃度が0.02mMとなるように1-Methoxy PMS
を、それぞれ添加した。
【0079】(4−6)次に、96穴プレートにこの培
養上清を100μL分取し、450nm − 690nmの吸
光度を測定した。得られた結果を図4に示す。さらに
は、比較対照として、前記(4−3)でHGFを含有さ
せなかった以外は前記と同様の実験を行った。また、試
験液の代わりに10%牛胎児血清/DME培地を用い、
実験中(前記(4−3))、培地にHGFを一切含有さ
せなかった以外は、前記と同様にして、実験を行った。
これらの結果も併せて図4に示す。
【0080】(実施例5) 急性毒性試験 非臨床試験におけるHGFの毒性LD50は、1mg/Kg
(ラット)以上であった。
【0081】(まとめ)以下、結果を考察する。
【0082】図1に示すように、HGFを含有していな
い腹膜透析液に暴露した腹膜微小血管内皮細胞では、吸
光度すなわちLDH濃度が高かった。これは、細胞が大
きな傷害を受けたことを意味する。これに対し、HGF
を含有する腹膜透析液に暴露した細胞では、LDH濃度
が低いものとなっていた。これは、細胞が受けた傷害が
小さいことを意味する。これらの結果から、HGFを投
与することにより、腹膜微小血管内皮細胞の傷害を抑制
できたことが確認された。
【0083】HGFを含有していないリンゲル液に暴露
した腹膜微小血管内皮細胞では、吸光度すなわちLDH
濃度は低かった。本来リンゲル液は、浸透圧、pH、塩
濃度等が生理的条件に近いので、リンゲル液が細胞に与
えるダメージは極めて小さい。しかし、この場合でも、
HGFを投与することにより、LDH濃度が若干低下し
た。かかる結果からも、HGFを投与することにより、
腹膜微小血管内皮細胞の傷害を抑制できることが推測で
きる。なお、かかる結果から、本発明が、リンゲル液
等、生体にダメージを与えにくいものにHGFを添加す
ることを妨げるものでないことは、言うまでもない。
【0084】ところで、腹膜透析による腹膜の劣化は、
主として、腹膜透析液により腹膜微小血管内皮細胞が傷
害を受け、腹膜微小血管が破綻することにより引き起こ
されることが知られている。
【0085】そして、HGFを投与すれば、腹膜微小血
管内皮細胞の傷害を抑制できる。したがって、HGFを
投与すれば、腹膜微小血管内皮細胞の傷害により引き起
こされる腹膜微小血管の破綻、さらには、腹膜の劣化を
抑制できることは、容易に推察できる。
【0086】図2に示すように、HGFを含有していな
い試験液に暴露した腹膜微小血管内皮細胞では、吸光
度、すなわちミトコンドリアデヒドロゲナーゼによりW
SF1から変換されるFormazan濃度が低かった。これ
は、細胞活性が低いことを意味する。これに対し、HG
Fを含有する腹膜透析液に暴露した細胞では、吸光度が
高くなっていた。これは、細胞の活性が高いことを意味
する。これらの結果から、HGFを投与することによ
り、腹膜微小血管内皮細胞の活性が高まることが確認さ
れた。腹膜微小血管内皮細胞の活性が高まることも、腹
膜の劣化の抑制に寄与するものと考えられる。
【0087】特筆すべきは、糖類を含有していないリン
ゲル液に比べて、糖類を含有する腹膜透析液に細胞を暴
露した方が、HGFによる細胞の活性作用が高まってい
たことである。しかも、糖濃度が増大するにつれ、細胞
の活性も高まっていた。これに対し、HGFを含有しな
い腹膜透析液およびリンゲル液では、細胞活性はほぼ一
定であった。かかる結果から、HGFとともに糖を投与
すると、すなわちHGFに糖が加わると、HGFが有す
る腹膜微小血管内皮細胞の活性を高める作用が、さらに
増大することが分かる。
【0088】図3に示すように、HGFを含有していな
い腹膜透析液に暴露した腹膜微小血管内皮細胞では、p
Hが低くなるにつれ、細胞傷害が大きくなっていた。こ
れに対し、HGFを含有する腹膜透析液に暴露した細胞
では、pHが4.8または5.8の場合でも、細胞傷害
が小さかった。しかも、これらの細胞では、中性域(p
H6.8)でHGF不含の腹膜透析液に準ずる程度にま
で、細胞傷害が抑制されていた。中性域(pH6.8)
の腹膜透析液においても、HGFを投与することによ
り、細胞傷害が若干抑制されていた。
【0089】これらの結果から、腹膜透析液が細胞の劣
化を引き起こしやすい低pHのものであっても、HGF
を投与すれば、好適に腹膜微小血管内皮細胞の細胞傷害
を抑制できることが分かる。ゆえに、低pHの腹膜透析
液でも、HGFを投与すれば、極めて好適に腹膜の劣化
を抑制できることが容易に推測できる。なお、かかる結
果から、本発明が、中性域の腹膜透析液にHGFを添加
することを妨げるものでないことは、言うまでもない。
【0090】図4に示すように、HGFを含有していな
い腹膜透析液に暴露した腹膜微小血管内皮細胞では、p
Hが低くなるにつれ、細胞活性が低下していた。これに
対し、HGFを含有する腹膜透析液に暴露した細胞で
は、pHが4.8または5.8の場合においても、細胞
活性が大きく高められていた。中性域(pH6.8)の
腹膜透析液においても、HGFを投与することにより細
胞活性が若干高められていた。これらの結果から、低p
Hの腹膜透析液でも、HGFを投与すれば、好適に細胞
活性の低下を抑制できることが分かる。したがって、低
pHの腹膜透析液でも、HGFを投与すれば、極めて好
適に腹膜の劣化を抑制できることが推測できる。
【0091】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、腹
膜の劣化を抑制することができる。ゆえに、本発明によ
れば、腹膜透析をより長期にわたってより健全に施行す
ることが可能となる。よって、本発明は、例えば腎機能
が低下もしくは喪失した患者等に、多大な利益をもたら
すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における腹膜微小血管内皮細胞の細胞傷
害の程度を示すグラフである。
【図2】実施例における腹膜微小血管内皮細胞の細胞活
性の程度を示すグラフである。
【図3】実施例における腹膜微小血管内皮細胞の細胞傷
害の程度を示すグラフである。
【図4】実施例における腹膜微小血管内皮細胞の細胞活
性の程度を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 梅山 一大 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 Fターム(参考) 4C077 AA06 BB01 EE03 GG09 KK01 KK11 PP21 PP29 4C084 AA02 BA44 DB62 MA05 NA14 ZA812 ZC212

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 HGF(Hepatocyte Growth Factor)を
    含有することを特徴とする腹膜劣化抑制剤。
  2. 【請求項2】 さらに糖類を含有することを特徴とする
    請求項1に記載の腹膜劣化抑制剤。
  3. 【請求項3】 前記糖類は、単糖類である請求項2に記
    載の腹膜劣化抑制剤。
  4. 【請求項4】 前記糖類は、グルコースである請求項2
    に記載の腹膜劣化抑制剤。
  5. 【請求項5】 前記糖類を、前記HGF1ngに対して1
    μg〜10g含有する請求項2ないし4のいずれかに記
    載の腹膜劣化抑制剤。
  6. 【請求項6】 腹膜透析液に配合して使用される請求項
    1ないし5のいずれかに記載の腹膜劣化抑制剤。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の腹
    膜劣化抑制剤を含有することを特徴とする腹膜透析液。
  8. 【請求項8】 腹膜透析液中における前記HGFの濃度
    が、0.01〜1000ng/mLである請求項7に記載の
    腹膜透析液。
  9. 【請求項9】 pHが4.0〜9.0である請求項7ま
    たは8に記載の腹膜透析液。
  10. 【請求項10】 pHが4.0〜6.5である請求項7
    ないし9のいずれかに記載の腹膜透析液。
  11. 【請求項11】 0.1〜10W/V%の濃度の糖類を含
    有する請求項7ないし10のいずれかに記載の腹膜透析
    液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004269461A (ja) * 2003-03-11 2004-09-30 Terumo Corp 腹膜劣化防止剤
JP2007077026A (ja) * 2005-09-09 2007-03-29 Terumo Corp 腹膜劣化抑制剤および腹膜透析液
JP2018534117A (ja) * 2015-11-20 2018-11-22 ヘパ ウォッシュ ゲーエムベーハーHepa Wash GmbH 体外での二酸化炭素除去のための方法

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