JP2001200084A - 生分解性でかつ機械的特性や熱賦形性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡体、及び生分解性でかつ機械的特性や寸法安定性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡成形品 - Google Patents

生分解性でかつ機械的特性や熱賦形性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡体、及び生分解性でかつ機械的特性や寸法安定性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡成形品

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JP2001200084A
JP2001200084A JP2000007650A JP2000007650A JP2001200084A JP 2001200084 A JP2001200084 A JP 2001200084A JP 2000007650 A JP2000007650 A JP 2000007650A JP 2000007650 A JP2000007650 A JP 2000007650A JP 2001200084 A JP2001200084 A JP 2001200084A
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resin
acetate
weight
biodegradable
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JP2000007650A
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Motoyasu Nakanishi
幹育 中西
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Suzuki Sogyo Co Ltd
Original Assignee
Suzuki Sogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 セルロース・アセテート系樹脂発泡体を用い
て得られた生分解性でかつ機械的特性や寸法安定性に優
れた成形品を提供する。 【解決手段】 発泡性樹脂組成物はセルロース・アセテ
ート系樹脂100重量部に対して10〜100重量部の
割合で、コーンスターチ、米粉、デンプン、木粉、藁、
もみがら、おから、麩、キチン及びキトサンから選ばれ
る少なくとも1種の生分解性付与材を含有すること、さ
らにはセルロース・アセテート系樹脂100重量部に対
して10〜100重量部の割合でポリエチレン、ポリプ
ロピレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれ
る少なくとも1種の改質材を含有し、熱賦形、圧縮成
形、真空成形又は圧空成形してなる生分解性でかつ機械
的特性や寸法安定性に優れたセルロース・アセテート系
樹脂発泡成形品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性でかつ機
械的特性や熱賦形性にも優れたセルロース・アセテート
系樹脂発泡体及び生分解性でかつ機械的特性や寸法安定
性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡成形品
に関し、さらに詳しくは、主原料となるセルロース・ア
セテート系樹脂に特定の生分解性付与材又はさらに改質
材としてのポリオレフィン系樹脂を添加した発泡性樹脂
組成物を水発泡させることにより製造してなる、生分解
性でかつ機械的特性や熱賦形性にも優れたセルロース・
アセテート系樹脂発泡体、及び生分解性でかつ機械的特
性や寸法安定性にも優れたセルロース・アセテート系樹
脂発泡成形品に関する。そして、本発明のセルロース・
アセテート系樹脂発泡体や発泡成形品は、従来のセルロ
ース・アセテート系樹脂発泡体や発泡成形品に欠けてい
た生分解性を維持しながらも機械的特性、熱賦形性、寸
法安定性等に優れるという特性のため、断熱材、緩衝
材、食品包装容器、農業・建設・土木用フィルムなどの
各種用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】従来、合成樹脂からなる発泡体は、多種
多様のものが製造され、食品包装容器、水質浄化材、断
熱材、緩衝体等の幅広い分野で活用されてきた。近年、
これら合成樹脂発泡体の需要は、年々増加する傾向にあ
り、このため廃棄される量も年々増加して、環境問題、
公害問題として、大きく社会的にクローズアップされて
きている。しかし、廃棄合成樹脂発泡体を再生利用する
には、社会的規模の様々な対応が求められ、一方、焼却
処分するには、有害ガスの発生防止、高熱発生による焼
却炉の劣化防止など、山積されている問題が多く、廃棄
処理が容易である発泡体の開発が強く望まれている。
【0003】このような要求に対して、これら合成樹脂
(例えばポリスチレン等)を生分解性樹脂で置換えた発
泡体が種々提案されている。例えば、特開平5−320
405号公報、特開平6−32928号公報などには、
セルロースアセテートなどのセルロースエステル誘導体
からなる発泡体が開示されている。この発泡体は、断熱
材、緩衝材、食品包装容器などとして利用されている。
また、生分解性樹脂としては、上記セルロースアセテー
トなどのセルロースエステル誘導体の他、例えば、アミ
ロースや木粉のエステル誘導体、セルロース−キトサン
混合体、ポリヒドロキシン酪酸及びその誘導体、プルラ
ン、ポリエステル−ナイロン共重合体、デンプンとポリ
エチレンとのブレンド体など種々の生分解性樹脂が知ら
れており、これらを用いて発泡体を製造する試みも種々
なされている。しかし、これまでに得られたセルロース
アセテートを始めとする生分解性樹脂からなる発泡体
は、用いた生分解性樹脂などの種類により多少の差はあ
るものの、生分解性の面では満足できる域に達していて
も、機械的特性、熱賦形性、寸法安定性等の他の特性面
では未だ充分とはいえないのが現状であった。一方、近
年、かかるセルロース・アセテート系樹脂発泡体の用途
開発が進むにつれて、従来はあまり重要視されなかっ
た、生分解性と、機械的特性、熱賦形性、寸法安定性等
の他の特性とを兼備したセルロース・アセテート系樹脂
発泡体に対する需要が高まり、その結果、生分解性を維
持しながらも、成形品に賦形する際の型内成形が容易で
あり、しかも寸法安定性や機械的特性が良好であるセル
ロース・アセテート系樹脂発泡体の実用的な技術開発が
強く望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来のセルロース・アセテート系樹脂発泡体がもつ問題
点を解消し、主原料となるセルロース・アセテート系樹
脂に特定の生分解性付与材又はさらに改質材としてのポ
リオレフィン系樹脂を添加した発泡性樹脂組成物を水発
泡させることにより得られた、製造するのに複雑な工程
が必要でなく、しかも生分解性でかつ機械的特性や熱賦
形性にも優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡体、
及びこのセルロース・アセテート系樹脂発泡体を用いて
得られた、生分解性でかつ機械的特性や寸法安定性にも
優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡成形品を提供
することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
対し鋭意研究を重ねた結果、セルロース・アセテート系
樹脂を主原料とする発泡性樹脂組成物中に、コーンスタ
ーチ、米粉、デンプン、木粉、藁、もみがら、おから、
麩、キチン及びキトサンから選ばれる少なくとも1種の
生分解性付与材を特定の割合で添加することにより、セ
ルロース・アセテート系樹脂発泡体により高い生分解性
が付与されることを見出し、さらには、上記発泡性樹脂
組成物中に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及
びエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくと
も1種の改質材を特定の割合で添加することより、セル
ロース・アセテート系樹脂発泡体が、驚くべきことに、
生分解性を維持しながらも、成形品に賦形する際の型内
成形が容易であり、しかも寸法安定性や機械的特性が良
好であることを見出した。そして、本発明は、これらの
知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0006】すなわち、本発明によれば、(1)セルロ
ース・アセテート系樹脂を主成分として含有する発泡性
樹脂組成物を押し出しすると同時に水分の気化膨張力に
より発泡させることにより製造してなるセルロース・ア
セテート系樹脂発泡体において、上記発泡性樹脂組成物
は、セルロース・アセテート系樹脂100重量部に対し
て10〜100重量部の割合で、コーンスターチ、米
粉、デンプン、木粉、藁、もみがら、おから、麩、キチ
ン及びキトサンから選ばれる少なくとも1種の生分解性
付与材(A)を含有することを特徴とする、生分解性で
かつ機械的特性や熱賦形性にも優れたセルロース・アセ
テート系樹脂発泡体が提供される。
【0007】また、本発明によれば、(2)上記発泡性
樹脂組成物は、さらに、セルロース・アセテート系樹脂
100重量部に対して10〜100重量部の割合で、ポ
リエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びエチレン−酢
酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の改質材
(B)を含有することを特徴とする、上記(1)記載の
セルロース・アセテート系樹脂発泡体が提供される。
【0008】さらに、本発明によれば、(3)上記発泡
性樹脂組成物は、さらに、生分解性可塑剤(C)、生分
解性調整剤(D)、及び発泡調整剤(E)から選ばれる
少なくとも1種の物質を含有することを特徴とする、前
記(1)又は(2)記載のセルロース・アセテート系樹
脂発泡体が提供される。
【0009】さらにまた、本発明によれば、(4)上記
生分解性可塑剤(C)は、ポリアルキレングリコール、
多価アルコール及びポリカプロラクトンから選ばれる少
なくとも1種であり、その含有量は、セルロース・アセ
テート系樹脂100重量部に対して10〜30重量部の
割合であることを特徴とする、上記(3)記載のセルロ
ース・アセテート系樹脂発泡体、或いは、(5)上記生
分解性調整剤(D)は、酸化チタン類からなる光触媒で
あり、その含有量は、セルロース・アセテート系樹脂1
00重量部に対して0.1〜50重量部の割合であるこ
とを特徴とする、上記(3)記載のセルロース・アセテ
ート系樹脂発泡体、或いは、(6)上記発泡調整剤
(E)は、タルクであり、その含有量は、セルロース・
アセテート系樹脂100重量部に対して5〜50重量部
の割合であることを特徴とする、上記(3)記載のセル
ロース・アセテート系樹脂発泡体が提供される。
【0010】さらにまた、本発明によれば、前記(1)
〜(6)記載のセルロース・アセテート系樹脂発泡体を
所望の形状に熱賦形、圧縮成形、真空成形、又は圧空成
形してなることを特徴とする、生分解性でかつ機械的特
性や寸法安定性にも優れたセルロース・アセテート系樹
脂発泡成形品が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0012】1.セルロース・アセテート系樹脂 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体に用いら
れるセルロース・アセテート系樹脂は、天然物に近い化
学構造を持つために環境中の微生物等によって分解する
性能、すなわち生分解性能を持っているものであり、セ
ルロース・アセテートを主成分として含むものである。
副成分として、本発明の目的を損なわない範囲でさらに
配合してもよい他の生分解性樹脂は、特に限定されるも
のではなく、一般に生分解性樹脂として用いられている
ものならば何でも使用することができる。これらに該当
するものとしては、例えば、スターチ系生分解性樹脂、
セルロース系生分解性樹脂などが挙げられる。
【0013】セルロース・アセテート系樹脂中で主成分
として含まれるセルロース・アセテートは、通常、綿の
実から得られるリンター、又は木材パルプのセルロース
に酢酸を反応させることにより製造される。本発明のセ
ルロース・アセテート系樹脂発泡体に用いられるセルロ
ース・アセテートとしては、通常「酢酸セルロース」と
して市販されているグレードのものならば何でもよい
が、その中でも、セルロースの酢酸エステル化度が、セ
ルロースに結合している酢酸の重量割合で表される酢化
度でいって45%以上であるようなものがよく、特に酢
化度が47〜60%(セルロース1単位当たりの結合ア
セチル基の数は1.9〜2.8)のものが好ましい。酢
化度が45%未満の場合には、溶融温度が高くなりすぎ
るため、安定して発泡体に溶融成形することが困難とな
る。
【0014】セルロース・アセテートは、物性面では、
軟質又は中硬質のものがよく、表面硬度がロックウェル
硬さで、H=80〜100のもの、衝撃強度が20〜
30kg−cm/cmのものが好ましく用いられる。さ
らに、成形加工性の観点から、軟化して流動を始める軟
化点(流出温度)が150〜170℃のもの、ASTM
D 648に規定された荷重18.6kgf/cm
の条件での熱変形温度が、44〜55℃のものが好まし
く用いられる。一方、硬質のものでは、安定して発泡体
に溶融成形することが困難となる。
【0015】また、本発明のセルロース・アセテート系
樹脂発泡体に用いられるセルロース・アセテート系樹脂
には、単に酢酸基をもつアセテートの他に、プロピオン
酸或いは酪酸を混合使用したセルロース・アセトプロピ
オネートや、セルロース・アセトブチレートも含まれ、
溶融点、吸水率、溶剤に対する溶解性等の観点から酸の
混合比率を適宜選択して使用できる。
【0016】さらに、セルロース・アセテート系樹脂発
泡体は、セルロースアセテート自体より遊離する酢酸臭
を除去するために、食品包装容器、水質浄化材、断熱
材、緩衝体等の用途にあっては、通常、行う弱アルカリ
溶液処理等を施してもよく、また、育苗ポットや防草シ
ートなどに用いられる場合には、酢酸自身が抗菌性付与
のために役立つことから、酢酸臭を除去するための後処
理を行う必要がなく、発泡体中にセルロースアセテート
から遊離した酢酸が残存してもよい。
【0017】また、本発明のセルロース・アセテート系
樹脂発泡体に用いられるセルロース・アセテート系樹脂
は、生分解性能を持っている。しかし、自然界において
これを分解する微生物、すなわちバクテリアの存在密度
が低い場合もあり、この場合、生分解も比較的ゆっくり
行われる。ところが、素材を調整することにより、生分
解も含む分解速度を促進させることが可能である。例え
ば、生分解性樹脂中に、生分解性調整剤として、光触媒
を含有させると、紫外線照射等を受ける自然環境下で
は、生分解とは別に新たに光分解が起こり、この場合に
は、生分解と光分解の両作用により分解速度が一層促進
されることになる。その光触媒としては、酸化チタン
類、酸化亜鉛、カドミウムサルファイトなどの公知の光
触媒を挙げることができ、中でも酸化チタン類が無害で
あって、化学的に安定、かつ安価でもあり、好ましく用
いられる。酸化チタン類としては、例えば、石原産業株
式会社製の光触媒用酸化チタンSTシリーズ、及びST
Sシリーズのものを挙げることができる。
【0018】生分解性樹脂中への生分解性調整剤として
の光触媒の含有量は、必要に応じて、発泡体の光分解能
力を調節するために、適宜増減することができるが、通
常、生分解性樹脂、すなわちセルロース・アセテート系
樹脂100重量部に対して、光触媒0.1〜50重量部
であり、好ましくは0.5〜10重量部である。光触媒
の含有量が0.1重量部未満では、光分解効果が小さす
ぎ、一方、50重量部を超えると、発泡性や成形性に支
障が生じる恐れがある。
【0019】2.生分解性可塑剤(C) 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体におい
て、発泡体を円滑に得るために用いられる特定の生分解
性可塑剤成分は、前記セルロース・アセテート系樹脂の
軟化点より低い温度の融点を有する生分解性可塑剤から
なり、ポリアルキレングリコール、多価アルコール及び
ポリカプロラクトンから選ばれる少なくとも1種であ
る。
【0020】ポリアルキレングリコールとしては、エチ
レンオキサイド(オキシエチレン)、プロピレンオキサ
イド(オキシプロピレン)又は両者の混合物を原料とし
て開環重合して製造されるポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコールなどであり、中でもポリエチレ
ングリコールは、生分解性等の点から、特に好ましく用
いられる。また、ポリオキシアルキレングリコールのモ
ノエーテル、ジエーテル、ジオールを用いてもよい。さ
らに、ポリオキシアルキレングリコールとしては、オキ
シエチレンとオキシプロピレンのブロック又はランダム
重合でもよく、生分解性等の点からオキシエチレンとオ
キシプロピレンの割合は、オキシエチレンの割合が50
重量%〜100重量%が好ましい。これらのポリアルキ
レングリコール又はポリオキシアルキレングリコールの
分子量は、特に限定する必要はないが、20000程度
以下、特に200〜2000が好ましい。
【0021】生分解性可塑剤として用いることができる
多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、
1,3ブタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン
などを挙げることができ、生分解性を有する高沸点のも
のである。
【0022】さらに、生分解性可塑剤として用いること
ができるポリカプロラクトンとしては、次の一般式で表
される脂肪族ポリエステルが挙げられるが、この脂肪族
ポリエステルの市販品としては、例えば、日本ユニカー
株式会社販売の「トーン」(商品名)がある。
【0023】
【化1】
【0024】(式中、Rは、脂肪族部分を表し、nは正
の整数である。)
【0025】本発明において、生分解性可塑剤の一つと
して用いるポリカプロラクトンは、生分解性であるばか
りでなく、非水溶性であり、さらに、好都合なことに
は、加熱によりセルロース・アセテート系樹脂を可塑化
する働きがあるため、可塑剤として働き、通常セルロー
ス・アセテート系樹脂発泡体を製造する際に必要な可塑
剤を何ら添加しなくても、セルロース・アセテート系樹
脂発泡体が得られ、その上、水溶性可塑剤を用いていな
いため、水分との接触による可塑剤の溶出といった弊害
をも回避することができるという利点がある。
【0026】また、本発明に用いられる特定の生分解性
可塑剤は、上記のように、融点がセルロース・アセテー
ト系樹脂の軟化点以下であることが必要である。そのう
ち、好ましい融点は、100℃以下、特に好ましい融点
は、60℃近傍である。このような融点を有する生分解
性可塑剤を生分解性樹脂に添加すると、生分解性樹脂中
の水分の沸点が上昇するため、セルロース・アセテート
系樹脂発泡体は、緻密かつ均一となり、品質の均一で良
質なセルロース・アセテート系樹脂発泡体が簡単且つ容
易に得ることが可能となる。一方、融点がセルロース・
アセテート系樹脂の軟化点以上である可塑剤、例えば高
分子量のポリエチレングリコールやポリカプロラクトン
を用いると、生分解性であっても、可塑化する働きをし
ないため、良好なセルロース・アセテート系樹脂発泡体
が得られない。
【0027】本発明において、生分解性可塑剤の配合量
は、セルロース・アセテート系樹脂100重量部に対し
て、20〜50重量部、好ましくは25〜45重量部の
範囲であることが重要である。配合量が20重量部未満
であると、セルロース・アセテート系樹脂を可塑化する
働きが乏しく、満足する発泡体が得られない。一方、5
0重量部を超えると、その可塑化する効果が過度とな
り、好ましくない。
【0028】3.改質材(B) 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体において
は、セルロース・アセテート系樹脂自体が元来具備する
生分解性を維持しながらも、機械的特性、熱賦形性、寸
法安定性等の他の特性を付与するために、改質材として
機能するポリオレフィン系樹脂が用いられる。本発明で
用いられる改質材としてのポリオレフィン系樹脂は、低
密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン
(HDPE)、線状低密度ポリエレン(LLPE)、低
分子量ポリエチレン(LMWPE)及び高分子量ポリエ
チレン(HMWPE)等のポリエチレン樹脂、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合
体、並びにポリプロピレン樹脂等であり、ポリエチレン
樹脂やポリプロピレン樹脂が経済性の点から好ましく用
いることができ、また、ポリエチレン、中でも低分子量
ポリエチレン(LMWPE)が生分解性の点から最も好
ましく用いることができる。
【0029】ポリオレフィン系樹脂を添加することによ
り、本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体に
は、経済性に加えて、例えば、曲げ強さや引張り強さを
増すことができ、加工性と機能性を高めることができ
る。通常、安定で化学的に飽和したポリオレフィン系樹
脂を必要に応じて適量添加して、得られるセルロース・
アセテート系樹脂発泡体の各種用途や使用態様に適合さ
せることができる。
【0030】本発明において、改質材成分であるポリオ
レフィン系樹脂の配合量は、セルロース・アセテート系
樹脂100重量部に対して、10〜100重量部、好ま
しくは10〜50重量部の範囲であることが重要であ
る。配合量が10重量部未満であると、熱融着性が十分
でなく、得られた発泡体自体の引張り強度等の機械的特
性が向上せず、発泡体成形品として、満足する性能のも
のが得られない。一方、100重量部を超えると、機械
的性能や経済性に優れるものの、得られた発泡体全体の
生分解性能に問題が生じてくる。特に、改質材成分であ
るポリオレフィン系樹脂が、好ましい配合量である10
〜50重量部の範囲にあると、得られた発泡体は、生分
解性能と機械的特性が適度となり、その結果、発泡成形
品の使用期間中は分解せず、用済み後は土壌中で分解消
滅を可能となる生分解性であって、焼却処理をしても有
毒ガスや焼却炉劣化の問題がなく、寸法安定性や機械的
特性にも優れているものとなり得る。
【0031】4.生分解性付与材(A) 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体におい
て、セルロース・アセテート系樹脂自体が元来生分解性
を有しているが、改質材としてポリオレフィン系樹脂を
用いているために、その生分解性能を維持し付与する生
分解性付与材が発泡性樹脂組成物中の必須成分として用
いられる。
【0032】本発明で用いられる生分解性付与材は、コ
ーンスターチ、米粉、デンプン、木粉、藁、もみがら、
おから、麩(小麦の皮)、キチン及びキトサンから選ば
れる少なくとも1種である。コーンスターチは、とうも
ろこしデンプン(粒子径が約15μm)であり、米粉
(粒子径が約5μm)もデンプンの一種であり、デンプ
ンとしては、デンプン粒子径の比較的小さいものを用い
ることができる。また、キチンは、カニやエビなどの甲
殻類や、ハマグリやカキなどの貝類など生物中に分布す
る塩基性多糖類であり、キトサンは、キチンを加水分解
して脱アセチル化した塩基性高分子である。
【0033】一般に、高分子物質やプラスチックの微生
物分解は、まず初めに、微生物が体外に分泌する加水分
解酵素によって、高分子鎖がバラバラに切断されて低分
子量の化合物となり、次いで、分解生成物は、微生物体
内に取り込まれて、各種の生体分子や二酸化炭素と水に
代謝される。そして、酵素の触媒作用は、高い基質特異
性を示す点に特徴があるために、酵素の分解速度は、プ
ラスチックの分子構造によって大きく変化する。したが
って、微生物による生分解性は、酵素による分解速度と
ともに、環境中でその酵素を分泌する微生物の密度分布
に影響される。すなわち、ある環境では、生分解性物質
であっても、その生分解性物質を分解する酵素を分泌す
る微生物が無い又は少なければ、生分解性能を有しない
ことになる。そのため、どのような環境中でも、本発明
のセルロース・アセテート系樹脂発泡体が分解又は分解
を促進するために、本発明で用いられる生分解性付与材
は、セルロース・アセテート系樹脂や生分解性可塑剤と
異なる種類の物質である生分解性付与材が好ましい。具
体的には、セルロース系や生分解性可塑剤(すなわち、
ポリアルキレングリコール、多価アルコール及びポリカ
プロラクトン)以外のコーンスターチ、米粉、デンプ
ン、おから、キチン及びキトサンが好ましく、中でも経
済性の点から、コーンスターチやおからなどが特に好ま
しい。
【0034】さらに、生分解性について、詳述すると、
本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体におい
て、直接的生分解性成分は、前記したセルロース・アセ
テート系樹脂と生分解性可塑剤に、この生分解性付与材
を加えたものであるが、該直接的生分解性成分に、熱可
塑性ポリマー成分、すなわちポリオレフィン系樹脂であ
る改質材成分を組合せて、はじめて実用的なセルロース
・アセテート系樹脂発泡体となるものである。この実用
的なセルロース・アセテート系樹脂発泡体は、緩衝材や
包装材、農業・建設・土木用フィルムとしての使用に適
し、その意図された目的や用途に使用されている間は、
その発泡体としての優れた特性と構造的完全性を保持
し、その目的を達成したときは、適当な環境下で分解作
用により分解するものである。
【0035】その生分解する作用機構は、明確になって
いないが、本発明者は、次のように推察している。すな
わち、有用物体から無害な生成物への分解過程におい
て、直接的生分解性成分と熱可塑性ポリマー成分からな
るセルロース・アセテート系樹脂発泡体は、三つの分解
段階を経る。第1段階は、直接的生分解性成分の生物的
除去や分解により、セルロース・アセテート系樹脂発泡
体の重量減少を生じ、高多孔性物質を生成する過程であ
る。第2段階は、第1段階の高多孔性化により、熱可塑
性ポリマー成分の主鎖である長鎖炭素−炭素結合の露出
面積を増加させ、その炭素−炭素結合が酸化劣化して、
短鎖化する過程である。第3段階は、短鎖化した炭素−
炭素結合や低分子量断片が微生物により代謝分解する過
程である。
【0036】したがって、本発明の発泡性樹脂組成物に
は、直接的生分解性成分(すなわち、セルロース・アセ
テート系樹脂、生分解性可塑剤及び生分解性付与材成
分)と、限定された有効期間を有する安定化成分(すな
わち、熱可塑性ポリマー成分)とを含有することに特徴
があり、特に、どのような環境下でも微生物による第1
段階の直接的生分解性成分の生物的除去や分解が促進さ
れるように異なった3種類の生分解性成分を含有するこ
とに特徴があり、さらに、第2段階の酸化劣化を促進す
る過酸化物を含有する成分、すなわちパーオキサイド価
やアルデヒド価の高い油脂やケトン類を、生分解調整剤
として生分解又は形態崩壊するまでの期間に応じて適宜
添加することが望ましい。また、熱可塑性ポリマー成
分、すなわちポリオレフィン系樹脂を分解するため又は
分解を促進するために、ポリオレフィン系樹脂に、分解
性付与添加剤として市販されている光分解性付与添加剤
及び生分解性付与添加剤を添加・含有してもよい。光分
解性付与添加剤としては、ジチオカルバミン酸の鉄ある
いは銅塩、ベンゾフェノン、ジルコニウムのカルボン酸
塩、ステアリン酸セリウム、酸化チタン、及びそれらの
組合せなどが挙げられ、また、生分解性付与添加剤とし
ては、自動酸化剤(例えば、遷移金属類)や、ノボン・
ジャパン社製の商品名「デグラノボン」等が挙げられ
る。
【0037】5.発泡性樹脂組成物 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体に用いら
れる発泡性樹脂組成物は、前記した如く、セルロース・
アセテート系樹脂に、所定量の特定生分解性可塑剤と、
改質材としてのポリオレフィン系樹脂と、生分解性付与
材と、発泡剤としての水分とを配合することにより調製
される。発泡剤としての水分の配合割合は、セルロース
・アセテート系樹脂、生分解性可塑剤、ポリオレフィン
系樹脂及び生分解性付与材からなる樹脂成分100重量
部に対して、3〜100重量部、好ましくは5〜50重
量部である。この発泡剤としての水分の配合量も、生分
解性可塑剤の配合量と同様に、本発明のセルロース・ア
セテート系樹脂発泡体を製造する場合の重要なファクタ
ーである。得られた発泡体が、例えばシート状とならず
に異形バラ状などとなった場合は、水分の配合量を増加
させることにより、発泡を最適にし、例えばシート状に
することができる。
【0038】本発明に用いられる発泡性樹脂組成物に
は、前述したように、生分解性可塑剤として、ポリアル
キレングリコール、多価アルコール及びポリカプロラク
トンから選ばれる少なくとも1種を配合するものである
が、さらに必要に応じて、本発明の目的を損なわない範
囲で、他の可塑剤を配合してもよい。可塑剤としては、
加熱により、生分解性樹脂を可塑化するものであれば、
特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂がセルロー
ス・アセテート系樹脂の場合には、フタル酸メチル等の
フタル酸エステル、リン酸トリブチル等のリン酸エステ
ル、セバシン酸ジオクチルやアジピン酸ジオクチル等の
二塩基酸エステルなどが適宜選ばれる。しかし、この可
塑剤を添加する場合には、発泡体が例えば、シート状に
ならない恐れがあるので、特に注意が必要である。そう
した場合には、特定の生分解性可塑剤又は添加する可塑
剤を低粘度のものにするなどして、適宜、発泡体を例え
ば、シート状にすることができる。
【0039】さらに、上記発泡性樹脂組成物には、本発
明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤等を配合して
もよく、例えば、熱安定剤、発泡調整剤、発泡助剤、増
量材、生分解調整剤や分解性付与添加剤等が挙げられ
る。中でも、タルク、酸化珪素、酸化チタン(光触媒用
のものより、粒径が大のもの)、酸化マグネシウム、酸
化アルミニウム、珪酸カルシウム等の無機系微粒子、セ
ルロース粉末、キチン、キトサン、木粉、ステアリン酸
金属塩等の有機系微粒子などの発泡調整剤、特にタルク
は、該生分解性樹脂組成物に、好適な発泡性を付与する
ことができるので、均一でかつ高度に発泡した発泡体が
容易に得られる。このような発泡調整剤は、それぞれ単
独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。さら
に発泡性を向上させたり、発泡体製造時に副生される酸
性物質を中和させると共にガスを発生させる目的で、例
えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナト
リウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の無機微粒子
を併用してもよい。また、増量材として、オカラ、木
粉、麩(小麦の皮)、米粉、澱粉、コーンスターチ、ソ
フトフェライト、ハードフェライト、古紙等を添加する
こともできる。さらに、生分解調整剤や分解性付与添加
剤として、前記したように、油脂やケトン類(例えば、
芳香族ケトン系化合物)、ジチオカルバミン酸の鉄ある
いは銅塩、ベンゾフェノン、ジルコニウムのカルボン酸
塩、ステアリン酸セリウム、酸化チタン、自動酸化剤
(例えば、遷移金属類)、ノボン・ジャパン社製の商品
名「デグラノボン」、及びそれらの組合せ等を添加する
こともできる。
【0040】本発明に用いられる発泡性樹脂組成物の好
ましい態様として、セルロース・アセテート系樹脂に、
特定の生分解性可塑剤と、改質材としてのポリオレフィ
ン系樹脂、生分解性付与材、発泡調整剤としてのタル
ク、及び発泡剤としての水分からなる生分解性樹脂組成
物が挙げられ、また、この生分解性樹脂組成物には、上
記した増量材を添加してもよい。この発泡調整剤として
タルクの発泡性樹脂組成物に対する配合量は、セルロー
ス・アセテート系樹脂100重量部に対して、5〜50
重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲である。配
合量が5重量部未満であると、タルクを配合した効果が
現れず、不均一で粗い発泡体が形成されやすく、一方5
0重量部を超えると、タルクの2次凝集が起こりやすく
なるため、やはり不均一で粗い発泡体が形成されやすく
なる。
【0041】6.セルロース・アセテート系樹脂発泡体
及びその製造方法 本発明のセルロース・アセテート系樹脂発泡体は、前記
の発泡性樹脂組成物を、Tダイ又はノズルから押し出し
すると同時に水分の気化膨張力により発泡させることに
より製造される。そのため、本発明のセルロース・アセ
テート系樹脂発泡体は、生分解性樹脂としてセルロース
・アセテートを主成分として含むものにより構成したこ
とを特徴とするものであるが、さらに次の特徴を有して
いる。 (1)水によって発泡させている。 (2)素材の主成分が生分解性であるため、汎用プラス
チック発泡体に比べて様々な廃棄処理に対処できる。
尚、改質材成分として、汎用プラスチックのポリオレフ
ィン系樹脂を含有しているが、前記したように、生分解
性特性は、損なわれない。特に、異なった3種類の生分
解性成分を含有しているため、種々の環境においても、
生分解することが期待できる。 (3)改質材成分として、汎用プラスチックのポリオレ
フィン系樹脂を含有しているため、汎用プラスチック発
泡体と同等の特性を有している。 (4)生分解性樹脂がセルロース・アセテートを主成分
としているために、抗菌性に優れている。 (5)スターチ系の生分解性樹脂発泡体などに比べて雰
囲気湿度によって衝撃性能が変動しなくて、強度的に優
れている。
【0042】上記のセルロース・アセテート系樹脂発泡
体は、前述の如く、発泡性樹脂組成物を押し出しすると
同時に水分の気化膨張力により発泡させることにより製
造されるが、さらに、この製法を詳記すると、以下のよ
うになる。セルロース・アセテート系樹脂、特定の生分
解性可塑剤、ポリオレフィン系樹脂(改質材)、生分解
性付与材、発泡調整剤(タルクなど)及び水分(発泡
剤)を含有する発泡性樹脂組成物は、所定の割合で調製
された後、前方にTダイ又は押出ノズルを有する筒状容
器内(例えば、混練押出機)に投入される。筒状容器内
に水分を投入する方法としては、発泡用の生分解性樹脂
組成物に予め所定量の水分を含有させるようにしてもよ
いし、或いは生分解性樹脂や特定の生分解性可塑剤など
の生分解性樹脂配合物と共に水そのものをホッパ内に直
接添加してもよく、生分解性樹脂配合物と水分とが一緒
に供給されさえすればよい。また、その投入割合は、前
記したように、セルロース・アセテート系樹脂、生分解
性可塑剤、ポリオレフィン系樹脂及び生分解性付与材か
らなる樹脂成分100重量部に対して、水分が3〜10
0重量部、好ましくは5〜50重量部であることが望ま
しい。
【0043】次いで、この生分解性樹脂組成物は、前記
Tダイ又はノズルに押送するまでの間に、120〜25
0℃、好ましくは180〜220℃の温度で加熱溶融混
練され、その結果、流動状の加熱加圧状態とされた後、
リップ幅又は細孔口径が例えば0.5〜5mmのTダイ
又はノズルから押し出される。溶融混練時間は、単位時
間当たりの吐出量、溶融混練温度などにより異なってく
るので一概に決定することはできないが、該混合物が均
一に溶融混練されるに十分な時間であればよい。また、
吐出部のTダイ又は押出ノズルの温度は、前記溶融混練
温度と同じでもよいが、吐出できる範囲内で該温度より
も低温にしてもよい。ここで、溶融混練に使用される押
出機は、高温高圧下となって水分がセルロースアセテー
ト中に無理やり溶解されるようになっている限り、どの
ようなタイプの押出機でもよいが、通常は1軸又は2軸
のスクリュータイプの押出機が用いられる。その後、T
ダイ又はノズルから吐出された溶融生分解性樹脂組成物
は、その温度及び水分量によって発泡開始位置が異なっ
てくるが、通常はダイ部又はノズル部より約0.1mm
離れた位置から発泡が開始され、発泡を終えた後、押出
し口の形状に合った、形態の発泡体が、二次成形の工程
がなくても得ることができる。Tダイ(又はノズル)の
押出し口の形状は、丸、三角、四角、矩形、星形、中空
等いずれであってもよく、また、細孔や異形のものにす
ることもでき、発泡体の用途や目的に応じて適宜選択す
ればよいが、通常、四角又は丸である。
【0044】7.生分解性樹脂発泡成形品及びその製造
方法 本発明により得られたセルロース・アセテート系樹脂発
泡体は、前記したように、Tダイ又は押出ノズルの形状
により種々の形態を有するが、その押出された原材を所
定の寸法に切断してそのまま使用する場合や、板状発泡
体を所望の形状に真空成形する場合を除き、通常は、セ
ルロース・アセテート系樹脂発泡体を、発泡体の大きさ
が短軸方向の切断面積を円に換算したときの直径が3〜
20mm、好ましくは5〜10mmの範囲にあるところ
のビーズ状又はペレット状に切断した後、熱賦形等によ
り各種用途に応じた形態に二次成形し、生分解性樹脂発
泡成形品として利用される。発泡体の二次成形方法は、
従来から公知の熱賦形方法が好適である。この熱賦形方
法としては、通常、プラスチック分野でシート材料など
を成形する手段として常用されている圧縮成形(プレス
成形)、真空成形、圧空成形や、熱プレスによる方法、
加熱バス中で加熱する方法、熱風乾燥処理機により熱風
を吹き付ける方法、水蒸気又は加熱水蒸気を型内に導入
する方法などがあり、これらから適宜選択することがで
きる。
【0045】発泡体を型内に充填して熱賦形する際の温
度は、適宜選ばれるが、あまりに低温すぎると、発泡体
間の接着不良が発生しやすく、逆にあまりに高温すぎる
と、低融点の生分解性樹脂の熱劣化、着色、発泡体の収
縮などが生じやすいため、通常は80〜200℃の範囲
であることが望ましい。さらに、熱賦形させる際に、バ
インダーを発泡体に付着せしめて発泡体間の接着強度を
増すことも、必要に応じて用いられる。その際、バイン
ダーは、生分解性であり非水溶性であることが、本発明
の目的からして望ましい。
【0046】本発明により得られた生分解性樹脂発泡成
形品は、前述したように、種々の特徴・利点を有してい
る。すなわち、発泡成形品の使用期間中は分解せず、用
済み後は土壌中で分解消滅を可能となる生分解性であっ
て、焼却処理をしても有毒ガスや焼却炉劣化の問題がな
く、寸法安定性や機械的特性にも優れている。したがっ
て、その特徴を生かした各種用途に用いることができ、
用途としては、特に限定されないが、具体的用途として
は、例えば、食品包装容器、水質浄化材、断熱材、緩衝
材、農業・建設・土木用フィルム等を例示することがで
きる。
【0047】
【実施例】以下に、本発明について実施例及び比較例を
挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実
施例に特に限定されるものではない。
【0048】[実施例1〜3][セルロース・アセテー
ト系樹脂発泡体の製造と評価] 実施例1は、生分解性樹脂として、軟質の帝人株式会社
製セルロース・ジアセテート(表面硬度(H):8
5、衝撃強度:25kgf・cm/cm、流出温度:
155℃、熱変形温度:48℃、酢化度:57%)(基
準:100重量部)と、生分解性可塑剤として、日本ユ
ニカー株式会社販売のポリカプロラクトン(商品名:T
ONEポリマー P−767、融点:60℃、密度:
1.145g/cm 、分子量:4万)(40重量
部)とを用い、改質材として、低密度ポリエチレン(L
DPE)(30重量部)、生分解性付与材として、コー
ンスターチ(30重量部)、発泡調整剤として、タルク
(14重量部)を添加して、生分解性樹脂配合物とし、
これに、発泡剤として、水分(31重量部)を添加し
て、混練押出機のホッパーに供給し、180℃の温度で
加熱溶融混練した後、ダイ幅500mm、リップ幅0.
5mmを有するTダイ部から押し出して、生分解性樹脂
の発泡体を得た。組成を表1に示す。実施例2は、生分
解性可塑剤として、ポリカプロラクトンの替わりに、分
子量1000のポリエチレングリコール(40重量部)
を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、生分解性樹
脂の発泡体を得た。組成を表1に示す。実施例3は、生
分解性可塑剤として、ポリカプロラクトンの替わりに、
分子量1000のポリエチレングリコール(40重量
部)を用い、また、改質材として、ポリエチレン樹脂を
増量(80重量部)し、更に、光触媒として、粉末状酸
化チタン光触媒A(石原テクノ株式会社製のST−0
1;X線粒径=7nm)を1.0重量部を用い、また、
発泡剤として、水分(40重量部)を増量した以外は、
実施例1と同様の方法で、生分解性樹脂の発泡体を得
た。組成を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】[比較例1〜3]比較例1は、改質材とし
て、低密度ポリエチレンを用いない以外は、実施例1と
同様に行い、生分解性発泡体を得た。比較例2は、生分
解性付与材として、コーンスターチを用いない以外は、
実施例1と同様に行い、生分解性発泡体を得た。比較例
3は、改質材として、低密度ポリエチレンを増量(15
0重量部)し、また、発泡剤として、水分(50重量
部)を増量した以外は、実施例2と同様に行い、発泡体
を得た。組成を表1に示す。
【0051】次に、これらの得られた6種類の発泡体を
型内に充填して、熱風乾燥処理機により熱風を吹き付け
る方法により、150℃で20分間熱賦形させ、評価試
験に供することができる大きさの発泡成形品を得た。得
られた成形品について、以下の評価試験を実施した。結
果を表1に示す。
【0052】生分解性:発泡成形品を土壌面に一定時間
放置し、その分解状況を重量変化率(%)の測定及び目
視評価した。 ◎生分解性合格(優れる) ○合格(普通) ×不合格
(劣る) 曲げ強度等:JIS K7221(硬質発泡プラスチッ
クの曲げ試験方法)に準拠し、寸法、有効長:200m
m、幅:50mm、高さ:40mmの試験片について、
曲げ強度を測定し、曲げ強度の測定値を相互比較して合
否を判定した。押出発泡性:押し出し、発泡、成形する
際の、作業性や条件設定の難易度、仕上げ外観、発泡度
合い等に支障、不利があるかを評価し総合判断する。
【0053】これらの評価結果から、実施例1〜3は、
比較例1〜3に対し、発泡体の機械的特性又は生分解性
に優れることが判明した。特に、比較例1は、改質材と
して、低密度ポリエチレンを含有しない組成物である
が、機械的特性に問題があり、また、比較例2は、生分
解性付与材として、コーンスターチを含有しない組成物
であるが、生分解性評価に問題があり、比較例3は、改
質材として、低密度ポリエチレンを増量(150重量
部)した組成物であるが、生分解性評価に問題があるこ
とが判明した。特に、実施例3は、低密度ポリエチレン
を増量(80重量部)した組成物であるが、光触媒の効
果もあり、発泡体の機械的特性と生分解性ともに優れ
る。したがって、生分解性樹脂組成物に、改質材とし
て、ポリオレフィン系樹脂、例えば低密度ポリエチレ
ン、及び生分解性付与材として、例えばコーンスターチ
を特定量含有することにより、生分解性と機械的特性を
両立できることが判明した。
【0054】
【発明の効果】本発明のセルロース・アセテート系樹脂
発泡体は、セルロース・アセテート系樹脂に、該樹脂の
軟化点より低い融点を有する特定の生分解性可塑剤と、
改質材としてのポリオレフィン系樹脂と、生分解性付与
材とを各特定量配合してなる生分解性樹脂配合物を原料
とし、かつ発泡剤として水分を用いる特殊な発泡体製法
を適用したことにより、容易に得られる。このセルロー
ス・アセテート系樹脂発泡体を用いた発泡成形品は、発
泡成形品の使用期間中は分解せず、生分解性を有するた
め、用済み後に於いて焼却の必要性がなく、土壌中で容
易に分解消滅する。そのため、焼却による有害物質の放
出、焼却炉の損傷等から解放され自然汚染の恐れがな
い。しかも、従来のセルロース・アセテート系樹脂発泡
体に比較して、寸法安定性や機械的特性及び熱賦形性に
優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡体が得られ
る。したがって、本発明のセルロース・アセテート系樹
脂発泡体は、その特徴を生かし、食品包装容器、水質浄
化材、断熱材、緩衝材、農業・建設・土木用フィルム等
の各種分野に使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 3/02 C08L 3/02 23/06 23/06 23/12 23/12 55/00 55/00 // B29K 1:00 B29K 1:00 105:04 105:04 105:16 105:16 Fターム(参考) 4F074 AA01 AA02 AA03 AA17 AA22 AA24 AA68 AA76 AC17 AC32 AD04 BA34 BC11 CA22 CA24 CC32X CC34X DA32 DA33 DA34 DA46 DA57 DA58 4F208 AA01 AA07 AA10 AA11 AB01 AB07 AB15 AG20 MA01 MA02 MA05 MB01 MG13 MG22 4J002 AB021 AB042 AB052 AH002 BB033 BB063 BB123 CF024 CF194 DE136 DJ046 EC046 EC056 FD024 FD026 FD206

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロース・アセテート系樹脂を主成分
    として含有する発泡性樹脂組成物を押し出しすると同時
    に水分の気化膨張力により発泡させることにより製造し
    てなるセルロース・アセテート系樹脂発泡体において、
    上記発泡性樹脂組成物は、セルロース・アセテート系樹
    脂100重量部に対して10〜100重量部の割合で、
    コーンスターチ、米粉、デンプン、木粉、藁、もみが
    ら、おから、麩、キチン及びキトサンから選ばれる少な
    くとも1種の生分解性付与材(A)を含有することを特
    徴とする、生分解性でかつ機械的特性や熱賦形性にも優
    れたセルロース・アセテート系樹脂発泡体。
  2. 【請求項2】 上記発泡性樹脂組成物は、さらに、セル
    ロース・アセテート系樹脂100重量部に対して10〜
    100重量部の割合で、ポリエチレン樹脂、ポリプロピ
    レン樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれ
    る少なくとも1種の改質材(B)を含有することを特徴
    とする、請求項1記載のセルロース・アセテート系樹脂
    発泡体。
  3. 【請求項3】 上記発泡性樹脂組成物は、さらに、生分
    解性可塑剤(C)、生分解性調整剤(D)、及び発泡調
    整剤(E)から選ばれる少なくとも1種の物質を含有す
    ることを特徴とする、請求項1乃至2記載のセルロース
    ・アセテート系樹脂発泡体。
  4. 【請求項4】 上記生分解性可塑剤(C)は、ポリアル
    キレングリコール、多価アルコール及びポリカプロラク
    トンから選ばれる少なくとも1種であり、その含有量
    は、セルロース・アセテート系樹脂100重量部に対し
    て10〜30重量部の割合であることを特徴とする、請
    求項3記載のセルロース・アセテート系樹脂発泡体。
  5. 【請求項5】 上記生分解性調整剤(D)は、酸化チタ
    ン類からなる光触媒であり、その含有量は、セルロース
    ・アセテート系樹脂100重量部に対して0.1〜50
    重量部の割合であることを特徴とする、請求項3記載の
    セルロース・アセテート系樹脂発泡体。
  6. 【請求項6】 上記発泡調整剤(E)は、タルクであ
    り、その含有量は、セルロース・アセテート系樹脂10
    0重量部に対して5〜50重量部の割合であることを特
    徴とする、請求項3記載のセルロース・アセテート系樹
    脂発泡体。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載のセル
    ロース・アセテート系樹脂発泡体を所望の形状に熱賦
    形、圧縮成形、真空成形、又は圧空成形してなることを
    特徴とする、生分解性でかつ機械的特性や寸法安定性に
    も優れたセルロース・アセテート系樹脂発泡成形品。
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