JP2001195723A - 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法Info
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- JP2001195723A JP2001195723A JP2000006523A JP2000006523A JP2001195723A JP 2001195723 A JP2001195723 A JP 2001195723A JP 2000006523 A JP2000006523 A JP 2000006523A JP 2000006523 A JP2000006523 A JP 2000006523A JP 2001195723 A JP2001195723 A JP 2001195723A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 磁気記録媒体の走行耐久性を向上させるとと
もに、磁気記録媒体によるヘッドの摩耗を低減する。 【解決手段】 非磁性基板上に磁性層として形成された
強磁性金属薄膜、当該強磁性金属薄膜上に形成された炭
素膜、および炭素膜上に形成された潤滑剤層を有する磁
気記録媒体であって、炭素膜が窒素原子およびフッ素原
子を含んで成る。
もに、磁気記録媒体によるヘッドの摩耗を低減する。 【解決手段】 非磁性基板上に磁性層として形成された
強磁性金属薄膜、当該強磁性金属薄膜上に形成された炭
素膜、および炭素膜上に形成された潤滑剤層を有する磁
気記録媒体であって、炭素膜が窒素原子およびフッ素原
子を含んで成る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、VTRおよび磁気
ディスク装置等に用いられる強磁性金属薄膜型磁気記録
媒体であって、強磁性金属薄膜である磁性層上に所定の
組成を有する炭素膜を保護層として形成した磁気記録媒
体およびその製造方法に関する。
ディスク装置等に用いられる強磁性金属薄膜型磁気記録
媒体であって、強磁性金属薄膜である磁性層上に所定の
組成を有する炭素膜を保護層として形成した磁気記録媒
体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録の分野においては、大容
量化、高速化、高画質・高音質化、および小型軽量化等
が要望されており、かかる要望に応えるべく、高密度記
録に適した強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発および
実用化が積極的にすすめられている。かかる磁気記録媒
体は、高密度記録が可能であることに加えて、実用信頼
性が高いこと、即ち、優れた走行安定性、耐久性、耐食
性および耐候性等を有し、また、記録・再生装置のヘッ
ドを摩耗させないものであることが望ましい。
量化、高速化、高画質・高音質化、および小型軽量化等
が要望されており、かかる要望に応えるべく、高密度記
録に適した強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発および
実用化が積極的にすすめられている。かかる磁気記録媒
体は、高密度記録が可能であることに加えて、実用信頼
性が高いこと、即ち、優れた走行安定性、耐久性、耐食
性および耐候性等を有し、また、記録・再生装置のヘッ
ドを摩耗させないものであることが望ましい。
【0003】そこで、一般的な磁気記録媒体は、図1に
模式的に示すように、非磁性基板(1)に磁性層として
強磁性金属薄膜(2)が形成され、当該強磁性金属薄膜
(2)上に炭素膜(3)および潤滑剤層(4)がこの順
に形成されて、炭素膜(3)が磁性層(2)を保護する
構成となっている。非磁性基板(1)の強磁性金属薄膜
(2)が設けられている面とは反対側の面には、磁気記
録媒体の走行安定性を向上させるためにバックコート層
(5)が形成される。
模式的に示すように、非磁性基板(1)に磁性層として
強磁性金属薄膜(2)が形成され、当該強磁性金属薄膜
(2)上に炭素膜(3)および潤滑剤層(4)がこの順
に形成されて、炭素膜(3)が磁性層(2)を保護する
構成となっている。非磁性基板(1)の強磁性金属薄膜
(2)が設けられている面とは反対側の面には、磁気記
録媒体の走行安定性を向上させるためにバックコート層
(5)が形成される。
【0004】炭素膜(3)は磁性層(2)の保護層とし
て、磁気記録媒体全体の実用信頼性に大きな影響を及ぼ
すものである。そこで、より優れた保護効果を得るべ
く、その組成や形成方法について種々の提案がなされて
いる。例えば、耐摩耗性および耐食性を向上させるため
に、高硬度で摩耗しにくいダイヤモンド状炭素膜を磁性
層上に形成することが、特開昭61−210518号公
報及び特開昭63−98824号公報等、多くの文献に
おいて提案されている。
て、磁気記録媒体全体の実用信頼性に大きな影響を及ぼ
すものである。そこで、より優れた保護効果を得るべ
く、その組成や形成方法について種々の提案がなされて
いる。例えば、耐摩耗性および耐食性を向上させるため
に、高硬度で摩耗しにくいダイヤモンド状炭素膜を磁性
層上に形成することが、特開昭61−210518号公
報及び特開昭63−98824号公報等、多くの文献に
おいて提案されている。
【0005】また、走行安定性及び耐久性を更に改善す
るべく、窒素原子を含んだダイヤモンド状炭素膜を磁性
層上に形成することが、例えば、特開平8−12414
9号公報や特開平11−39647号公報等において提
案されている。炭素膜の表面に、窒素原子を所定の割合
で含んだ炭素膜を形成したものも提案されている。
るべく、窒素原子を含んだダイヤモンド状炭素膜を磁性
層上に形成することが、例えば、特開平8−12414
9号公報や特開平11−39647号公報等において提
案されている。炭素膜の表面に、窒素原子を所定の割合
で含んだ炭素膜を形成したものも提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】窒素原子を含む炭素膜
によれば、硬度の高い保護層を形成できる。しかしなが
ら、例えば、窒素原子が炭素原子に対して0.05〜
0.2の割合で含まれるSP3結合主体の炭素膜は、膜
の硬度が高いためにヘッド摩耗を増大させることがあ
る。また、硬い膜は脆く剥離しやすいために、却って磁
気記録媒体の耐久性を低下させることがある。炭素膜の
表面に窒素原子を所定割合で含む炭素膜が形成されてい
る場合、炭素膜表面と潤滑剤層との間の結合力は増すも
のの、炭素膜表面が摩耗しはじめると急激に劣化が進行
するという問題がある。このように、従来の炭素膜はい
ずれも、更なる改善を要するものであった。
によれば、硬度の高い保護層を形成できる。しかしなが
ら、例えば、窒素原子が炭素原子に対して0.05〜
0.2の割合で含まれるSP3結合主体の炭素膜は、膜
の硬度が高いためにヘッド摩耗を増大させることがあ
る。また、硬い膜は脆く剥離しやすいために、却って磁
気記録媒体の耐久性を低下させることがある。炭素膜の
表面に窒素原子を所定割合で含む炭素膜が形成されてい
る場合、炭素膜表面と潤滑剤層との間の結合力は増すも
のの、炭素膜表面が摩耗しはじめると急激に劣化が進行
するという問題がある。このように、従来の炭素膜はい
ずれも、更なる改善を要するものであった。
【0007】本発明はかかる実情に鑑みてなされたもの
であり、電磁変換特性に悪影響を及ぼすことなく、磁気
記録媒体の耐久性を向上させるとともに、使用時のヘッ
ド摩耗を小さくし得る炭素膜を有して成る実用信頼性の
高い磁気記録媒体を提供することを課題とする。
であり、電磁変換特性に悪影響を及ぼすことなく、磁気
記録媒体の耐久性を向上させるとともに、使用時のヘッ
ド摩耗を小さくし得る炭素膜を有して成る実用信頼性の
高い磁気記録媒体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、非磁性基板上に磁性層として形成された
強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜上に形成された炭素
膜、および炭素膜上に形成された潤滑剤層を有する磁気
記録媒体であって、炭素膜が窒素原子およびフッ素原子
を含んで成ることを特徴とする磁気記録媒体を提供す
る。炭素膜は磁性層を保護するために設けられ、磁気記
録媒体に走行安定性、耐久性および耐食性等を付与す
る。フッ素原子は、窒素原子を含む炭素膜の保護機能を
改善し、磁気記録媒体の耐久性をより向上させるととも
にヘッド摩耗を有効に抑制する。この効果は、フッ素原
子の存在により炭素膜が軟らかくなることによってもた
らされると考えられるが、この推定は本発明を何ら拘束
するものではない。
め、本発明は、非磁性基板上に磁性層として形成された
強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜上に形成された炭素
膜、および炭素膜上に形成された潤滑剤層を有する磁気
記録媒体であって、炭素膜が窒素原子およびフッ素原子
を含んで成ることを特徴とする磁気記録媒体を提供す
る。炭素膜は磁性層を保護するために設けられ、磁気記
録媒体に走行安定性、耐久性および耐食性等を付与す
る。フッ素原子は、窒素原子を含む炭素膜の保護機能を
改善し、磁気記録媒体の耐久性をより向上させるととも
にヘッド摩耗を有効に抑制する。この効果は、フッ素原
子の存在により炭素膜が軟らかくなることによってもた
らされると考えられるが、この推定は本発明を何ら拘束
するものではない。
【0009】本発明においては、炭素膜に関するラマン
スペクトルにおいて1550cm-1付近にピークが存在
し、そのピーク強度(B)とバックグラウンドを差し引
いたピーク強度(A)の比(B/A)が1.2〜10で
あることが好ましい。図2に本発明の磁気記録媒体を構
成する炭素膜に関するラマンスペクトルの一例を示す。
ここで、ピーク強度(B)とは、ピーク点におけるブラ
ンクレベルからピーク点までの高さをいう。バックグラ
ウンドは、ピーク前後のスペクトルを結んだ仮想線(図
中、破線で表示)に相当し、バックグラウンドを差し引
いたピーク強度(A)とは、ピーク点におけるブランク
レベルからバックグラウンドまでの高さをピーク強度
(B)から差し引いたものをいう。
スペクトルにおいて1550cm-1付近にピークが存在
し、そのピーク強度(B)とバックグラウンドを差し引
いたピーク強度(A)の比(B/A)が1.2〜10で
あることが好ましい。図2に本発明の磁気記録媒体を構
成する炭素膜に関するラマンスペクトルの一例を示す。
ここで、ピーク強度(B)とは、ピーク点におけるブラ
ンクレベルからピーク点までの高さをいう。バックグラ
ウンドは、ピーク前後のスペクトルを結んだ仮想線(図
中、破線で表示)に相当し、バックグラウンドを差し引
いたピーク強度(A)とは、ピーク点におけるブランク
レベルからバックグラウンドまでの高さをピーク強度
(B)から差し引いたものをいう。
【0010】炭素膜に関するラマンスペクトルにおい
て、1550cm-1付近のピークは炭素膜中にダイヤモン
ド結合が存在することを示す。1550cm-1付近のB/
Aは炭素膜の硬度の指標の1つであり、この値が小さい
と炭素膜の硬度が増してヘッド摩耗を増加させ、また、
この値が大きいと膜が軟らかくなり、磁気記録媒体に十
分な耐久性を付与できず、繰り返し走行させた後の磁気
記録媒体の摩擦係数を増加させる。本発明においては、
適度な硬度を確保するとともに、ヘッド摩耗を小さくす
るべく、B/Aは上記の範囲内にあることが好ましい。
て、1550cm-1付近のピークは炭素膜中にダイヤモン
ド結合が存在することを示す。1550cm-1付近のB/
Aは炭素膜の硬度の指標の1つであり、この値が小さい
と炭素膜の硬度が増してヘッド摩耗を増加させ、また、
この値が大きいと膜が軟らかくなり、磁気記録媒体に十
分な耐久性を付与できず、繰り返し走行させた後の磁気
記録媒体の摩擦係数を増加させる。本発明においては、
適度な硬度を確保するとともに、ヘッド摩耗を小さくす
るべく、B/Aは上記の範囲内にあることが好ましい。
【0011】炭素膜における炭素に対するフッ素の原子
比は0.01〜0.15であることが好ましい。0.0
1未満である場合には、炭素膜が硬くなりすぎ、0.1
5を超える場合には、炭素膜が軟らかくなるとともに強
磁性金属薄膜との密着力が低下する。いずれの場合も磁
気記録媒体の耐久性を低下させ、繰り返し走行させた後
の磁気記録媒体の摩擦係数を増大させる。
比は0.01〜0.15であることが好ましい。0.0
1未満である場合には、炭素膜が硬くなりすぎ、0.1
5を超える場合には、炭素膜が軟らかくなるとともに強
磁性金属薄膜との密着力が低下する。いずれの場合も磁
気記録媒体の耐久性を低下させ、繰り返し走行させた後
の磁気記録媒体の摩擦係数を増大させる。
【0012】炭素膜における炭素に対する窒素の原子比
は、0.1〜0.6であることが好ましい。窒素原子の
占める割合が小さいと潤滑剤層の炭素膜への付着強度が
低下し、耐久性の低下を招く場合がある。窒素原子の占
める割合が大きいと炭素膜の連続性が損なわれ、磁性層
を十分に保護することができず、例えば、炭素が存在し
ない部分からガスが進入して磁性層に錆が生じる等の問
題を引き起こすことがある。
は、0.1〜0.6であることが好ましい。窒素原子の
占める割合が小さいと潤滑剤層の炭素膜への付着強度が
低下し、耐久性の低下を招く場合がある。窒素原子の占
める割合が大きいと炭素膜の連続性が損なわれ、磁性層
を十分に保護することができず、例えば、炭素が存在し
ない部分からガスが進入して磁性層に錆が生じる等の問
題を引き起こすことがある。
【0013】また、本発明において炭素膜がフッ素原子
および窒素原子に加えて酸素原子を含む場合、窒素原子
は、炭素膜における酸素に対する窒素の原子比が1.0
以上となるように、炭素膜中に含まれることが好まし
い。磁気記録媒体の炭素膜中における窒素原子の含有量
が酸素原子の含有量よりも少ない、即ち、酸素原子が炭
素膜に占める割合が多いと、繰り返し走行させた後の磁
気記録媒体の摩擦係数が増大しやすく、十分な耐久性を
有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
および窒素原子に加えて酸素原子を含む場合、窒素原子
は、炭素膜における酸素に対する窒素の原子比が1.0
以上となるように、炭素膜中に含まれることが好まし
い。磁気記録媒体の炭素膜中における窒素原子の含有量
が酸素原子の含有量よりも少ない、即ち、酸素原子が炭
素膜に占める割合が多いと、繰り返し走行させた後の磁
気記録媒体の摩擦係数が増大しやすく、十分な耐久性を
有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
【0014】このような磁気記録媒体は、非磁性基板の
一方の側に磁性層を形成した後、炭化水素系ガス、窒素
供給ガス、およびフッ素供給ガスを含む混合ガスを原料
ガスとするプラズマCVD法を実施して、磁性層上に、
窒素原子およびフッ素原子を含む炭素膜を形成する工程
を含む製造方法によって好ましく製造できる。プラズマ
CVD法は、常套的に採用されている炭素膜の形成方法
である。本発明の製造方法においては、原料ガスとして
窒素供給ガスおよびフッ素供給ガスを含む混合ガスを使
用することで、炭素膜に窒素原子およびフッ素原子が含
まれることを確保している。
一方の側に磁性層を形成した後、炭化水素系ガス、窒素
供給ガス、およびフッ素供給ガスを含む混合ガスを原料
ガスとするプラズマCVD法を実施して、磁性層上に、
窒素原子およびフッ素原子を含む炭素膜を形成する工程
を含む製造方法によって好ましく製造できる。プラズマ
CVD法は、常套的に採用されている炭素膜の形成方法
である。本発明の製造方法においては、原料ガスとして
窒素供給ガスおよびフッ素供給ガスを含む混合ガスを使
用することで、炭素膜に窒素原子およびフッ素原子が含
まれることを確保している。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な形態を説
明する。本発明の磁気記録媒体は、炭素膜が窒素原子お
よびフッ素原子を有する点に特徴を有する。フッ素原子
は、炭素膜における炭素に対するフッ素の原子比が好ま
しくは0.01〜0.15、より好ましくは0.05〜
0.15となるように、炭素膜に含まれる。また、窒素
原子は、炭素膜における炭素に対する窒素の原子比が好
ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.15〜
0.4となるように、炭素膜に含まれる。
明する。本発明の磁気記録媒体は、炭素膜が窒素原子お
よびフッ素原子を有する点に特徴を有する。フッ素原子
は、炭素膜における炭素に対するフッ素の原子比が好ま
しくは0.01〜0.15、より好ましくは0.05〜
0.15となるように、炭素膜に含まれる。また、窒素
原子は、炭素膜における炭素に対する窒素の原子比が好
ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.15〜
0.4となるように、炭素膜に含まれる。
【0016】さらに、本発明の磁気記録媒体において
は、炭素膜に関するラマンスペクトルにおいて1550
cm-1付近にピークが存在し、そのピーク強度(B)と
バックグラウンドを差し引いたピーク強度(A)の比
(B/A)が1.2〜10であることが好ましい。B/
Aは、1.3〜5であることがより好ましい。
は、炭素膜に関するラマンスペクトルにおいて1550
cm-1付近にピークが存在し、そのピーク強度(B)と
バックグラウンドを差し引いたピーク強度(A)の比
(B/A)が1.2〜10であることが好ましい。B/
Aは、1.3〜5であることがより好ましい。
【0017】また、炭素膜中にフッ素原子および窒素原
子に加えて酸素がさらに含まれる場合には、炭素膜にお
ける酸素に対する窒素の原子比は1.0以上であること
が好ましい。酸素原子は炭素膜に存在しないことが望ま
しいが、一般的に、プラズマCVD法で形成された炭素
膜中には酸素が不可避的に含まれる。炭素膜中の酸素原
子は、炭素膜を変質させ、磁気記録媒体の耐久性に好ま
しくない影響を及ぼすと考えられる。したがって、酸素
に対する窒素の原子比を上記のように規定していること
は、炭素膜中に占める窒素原子の割合を酸素の含有量と
の関係においても選択できることを示すとともに、炭素
膜における酸素原子の含有量を制限する必要があること
をも示している。
子に加えて酸素がさらに含まれる場合には、炭素膜にお
ける酸素に対する窒素の原子比は1.0以上であること
が好ましい。酸素原子は炭素膜に存在しないことが望ま
しいが、一般的に、プラズマCVD法で形成された炭素
膜中には酸素が不可避的に含まれる。炭素膜中の酸素原
子は、炭素膜を変質させ、磁気記録媒体の耐久性に好ま
しくない影響を及ぼすと考えられる。したがって、酸素
に対する窒素の原子比を上記のように規定していること
は、炭素膜中に占める窒素原子の割合を酸素の含有量と
の関係においても選択できることを示すとともに、炭素
膜における酸素原子の含有量を制限する必要があること
をも示している。
【0018】炭素膜は、炭化水素系ガスを主成分とし、
窒素を供給するガス、具体的には窒素含有ガスと、フッ
素を供給するガス、具体的にはフッ素含有ガスとを混合
したものを原料ガスとして実施する、プラズマCVD法
により形成できる。炭素膜は、非磁性基板上に予め形成
した磁性層である強磁性金属薄膜上に形成する。窒素含
有ガスとしては、例えば、窒素ガス、アンモニアがあ
り、フッ素含有ガスとしては、例えばフルオロカーボン
であるCF4、C2F6がある。炭化水素系ガスは、磁気
記録媒体の炭素膜をプラズマCVD法によって形成する
場合に通常用いられているものであってよく、メタン、
エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプ
タン、オクタン、ベンゼン、またはトルエン等を用いる
ことができる。原料ガスには、必要に応じて更にアルゴ
ン、キセノン、クリプトン等の不活性ガスが含まれてい
てよい。
窒素を供給するガス、具体的には窒素含有ガスと、フッ
素を供給するガス、具体的にはフッ素含有ガスとを混合
したものを原料ガスとして実施する、プラズマCVD法
により形成できる。炭素膜は、非磁性基板上に予め形成
した磁性層である強磁性金属薄膜上に形成する。窒素含
有ガスとしては、例えば、窒素ガス、アンモニアがあ
り、フッ素含有ガスとしては、例えばフルオロカーボン
であるCF4、C2F6がある。炭化水素系ガスは、磁気
記録媒体の炭素膜をプラズマCVD法によって形成する
場合に通常用いられているものであってよく、メタン、
エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプ
タン、オクタン、ベンゼン、またはトルエン等を用いる
ことができる。原料ガスには、必要に応じて更にアルゴ
ン、キセノン、クリプトン等の不活性ガスが含まれてい
てよい。
【0019】プラズマCVDによる炭素膜の形成は、具
体的には、反応容器中に原料ガスを導入し、容器内の圧
力を0.13〜130Paに保った状態で反応容器内部で
放電を発生させ、炭化水素系ガスのプラズマを発生させ
ることにより実施する。炭素膜の形成中、炭化水素系ガ
ス、フッ素含有ガス、および窒素含有ガスをそれぞれ所
定流量で反応容器中に導入し、反応容器中でそれらを混
合する。各ガスの供給量(例えば流量)を変化させれ
ば、炭素膜中のフッ素原子および窒素原子の組成比を変
えることができる。具体的には、例えば、炭化水素系ガ
スとして、トルエンを使用し、窒素含有ガスとして窒素
ガスを使用し、フッ素含有ガスとしてCF 4を使用する
場合、流量の比をトルエン:窒素:CF4=1:4〜1
2:0.05〜0.6程度とすれば、上記の好ましい割
合でフッ素原子および窒素原子を含む炭素膜を形成でき
る。
体的には、反応容器中に原料ガスを導入し、容器内の圧
力を0.13〜130Paに保った状態で反応容器内部で
放電を発生させ、炭化水素系ガスのプラズマを発生させ
ることにより実施する。炭素膜の形成中、炭化水素系ガ
ス、フッ素含有ガス、および窒素含有ガスをそれぞれ所
定流量で反応容器中に導入し、反応容器中でそれらを混
合する。各ガスの供給量(例えば流量)を変化させれ
ば、炭素膜中のフッ素原子および窒素原子の組成比を変
えることができる。具体的には、例えば、炭化水素系ガ
スとして、トルエンを使用し、窒素含有ガスとして窒素
ガスを使用し、フッ素含有ガスとしてCF 4を使用する
場合、流量の比をトルエン:窒素:CF4=1:4〜1
2:0.05〜0.6程度とすれば、上記の好ましい割
合でフッ素原子および窒素原子を含む炭素膜を形成でき
る。
【0020】放電形式は外部電極方式および内部電極方
式のいずれでもよく、放電周波数は実験的に決めること
ができる。放電の際に印加する電圧を変化させることに
よって、B/Aを変化させることができる。通常、電圧
が大きいとB/Aは小さくなり、電圧が小さいとB/A
は大きくなる傾向にある。B/Aはまた、原料ガスの圧
力を変化させることによっても変化させ得る。
式のいずれでもよく、放電周波数は実験的に決めること
ができる。放電の際に印加する電圧を変化させることに
よって、B/Aを変化させることができる。通常、電圧
が大きいとB/Aは小さくなり、電圧が小さいとB/A
は大きくなる傾向にある。B/Aはまた、原料ガスの圧
力を変化させることによっても変化させ得る。
【0021】本発明において、炭素膜は、短波長領域で
の再生出力を確保するために、3〜20nmの厚さとなる
ように形成することが好ましい。炭素膜の厚さは、炭素
膜を形成する際に炭素膜を付着させる対象(即ち、磁性
層を形成した非磁性基板)の搬送速度を変化させること
により、適宜変化させ得る。
の再生出力を確保するために、3〜20nmの厚さとなる
ように形成することが好ましい。炭素膜の厚さは、炭素
膜を形成する際に炭素膜を付着させる対象(即ち、磁性
層を形成した非磁性基板)の搬送速度を変化させること
により、適宜変化させ得る。
【0022】本発明の磁気記録媒体は、炭素膜の構成を
上記のようにする点を除いては、従来の磁気記録媒体と
同様である。したがって、その断面は図1に示すよう
に、比磁性基板(1)の一方の面に、磁性層である強磁
性薄膜(2)、保護層としての炭素膜(3)および潤滑
剤層(4)がこの順に形成され、非磁性基板(1)の他
方の面にバックコート層(5)が形成された構成とな
る。
上記のようにする点を除いては、従来の磁気記録媒体と
同様である。したがって、その断面は図1に示すよう
に、比磁性基板(1)の一方の面に、磁性層である強磁
性薄膜(2)、保護層としての炭素膜(3)および潤滑
剤層(4)がこの順に形成され、非磁性基板(1)の他
方の面にバックコート層(5)が形成された構成とな
る。
【0023】本発明の磁気記録媒体を構成する、炭素膜
(3)以外の部分は、常套の材料および方法を採用して
形成することができる。
(3)以外の部分は、常套の材料および方法を採用して
形成することができる。
【0024】例えば、非磁性基板(1)として、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポ
リアミドもしくはポリイミドから成るフイルム、アルミ
基板またはガラス基板等を使用することができる。
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポ
リアミドもしくはポリイミドから成るフイルム、アルミ
基板またはガラス基板等を使用することができる。
【0025】磁性層である強磁性金属薄膜(2)は、C
o、FeおよびNi等の強磁性金属、ならびにCo−N
iおよびCo−Cr等の合金から適宣選択される材料で
形成される。強磁性金属薄膜(2)は、イオンプレーテ
ィング法、スパッタリング法、または電子ビームを用い
た真空蒸着法等で形成することができる。真空蒸着は、
金属蒸気流の入射角を連続的に変化させて実施する斜方
蒸着法を採用して実施してよい。強磁性金属薄膜(2)
は、必要に応じて真空槽(または減圧槽)内に酸素を僅
かに導入して形成し、強磁性金属薄膜(2)内に酸素が
例えば金属酸化物(例えばCoO)の形態で含まれるよ
うにしてよい。強磁性金属薄膜(2)の厚さは50〜3
00nmが一般的である。
o、FeおよびNi等の強磁性金属、ならびにCo−N
iおよびCo−Cr等の合金から適宣選択される材料で
形成される。強磁性金属薄膜(2)は、イオンプレーテ
ィング法、スパッタリング法、または電子ビームを用い
た真空蒸着法等で形成することができる。真空蒸着は、
金属蒸気流の入射角を連続的に変化させて実施する斜方
蒸着法を採用して実施してよい。強磁性金属薄膜(2)
は、必要に応じて真空槽(または減圧槽)内に酸素を僅
かに導入して形成し、強磁性金属薄膜(2)内に酸素が
例えば金属酸化物(例えばCoO)の形態で含まれるよ
うにしてよい。強磁性金属薄膜(2)の厚さは50〜3
00nmが一般的である。
【0026】潤滑剤層(4)を構成する潤滑剤は、例え
ば、カルボキシル基等の極性基を分子中に導入した含フ
ッ素炭化水素系化合物であることが好ましい。潤滑剤層
(4)は、潤滑剤を適当な溶媒に溶解して調製した塗布
液を炭素膜(3)上に塗布後、乾燥させる湿式塗布法に
より形成できる。潤滑剤層(4)は有機蒸着法により形
成してもよい。
ば、カルボキシル基等の極性基を分子中に導入した含フ
ッ素炭化水素系化合物であることが好ましい。潤滑剤層
(4)は、潤滑剤を適当な溶媒に溶解して調製した塗布
液を炭素膜(3)上に塗布後、乾燥させる湿式塗布法に
より形成できる。潤滑剤層(4)は有機蒸着法により形
成してもよい。
【0027】バックコート層(5)は、ポリウレタン樹
脂、ニトロセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、カーボ
ンブラックおよび炭酸カルシウム等から選ばれる1つも
しくは複数の材料により形成される。バックコート層
(5)は、これらの材料を適当な溶媒に溶解または分散
させた塗布液を、非磁性基板(1)に塗布した後、溶媒
を乾燥させることによって形成できる。バックコート層
(5)の厚さは約0.5μmとすることが好ましい。
脂、ニトロセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、カーボ
ンブラックおよび炭酸カルシウム等から選ばれる1つも
しくは複数の材料により形成される。バックコート層
(5)は、これらの材料を適当な溶媒に溶解または分散
させた塗布液を、非磁性基板(1)に塗布した後、溶媒
を乾燥させることによって形成できる。バックコート層
(5)の厚さは約0.5μmとすることが好ましい。
【0028】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明
するが、本発明はこの実施例に限定されるものではな
い。
するが、本発明はこの実施例に限定されるものではな
い。
【0029】(試料1〜15)厚さ7μmのポリエチレ
ンテレフタレートフィルムを非磁性基板(1)として用
意した。このフィルム(1)の一方の面に、酸素雰囲気
下でCoを蒸着させ、酸化コバルトを含む厚さ180nm
の強磁性金属薄膜(2)を形成した。蒸着は、蒸着入射
角を連続的に変化させて実施した。
ンテレフタレートフィルムを非磁性基板(1)として用
意した。このフィルム(1)の一方の面に、酸素雰囲気
下でCoを蒸着させ、酸化コバルトを含む厚さ180nm
の強磁性金属薄膜(2)を形成した。蒸着は、蒸着入射
角を連続的に変化させて実施した。
【0030】蒸着後、ポリエチレンテレフタレートフィ
ルム(1)の他方の面に、バックコート層(5)を形成
した。バックコート層(5)はポリエステル樹脂および
カーボンを用いて湿式塗布法で形成し、乾燥後の厚さが
約0.5μmとなるように形成した。
ルム(1)の他方の面に、バックコート層(5)を形成
した。バックコート層(5)はポリエステル樹脂および
カーボンを用いて湿式塗布法で形成し、乾燥後の厚さが
約0.5μmとなるように形成した。
【0031】次に強磁性金属薄膜(2)の表面に、炭素
膜(3)を、プラズマCVD装置を用いて形成した。炭
素膜(3)の形成条件は次のとおりである。
膜(3)を、プラズマCVD装置を用いて形成した。炭
素膜(3)の形成条件は次のとおりである。
【0032】原料ガス:トルエンとアルゴンとの混合ガ
スに、窒素供給ガスとして窒素ガスを、フッ素含有ガス
としてテトラフルオロメタン(CF4)を混合したもの
を使用した。本実施例では、各ガスを独立して所定流量
で反応容器中に導入し、反応容器中でそれらが混合され
るようにした。各ガスの流量は、炭素膜中のフッ素原子
および窒素原子の組成比を変えるために、表1に示すよ
うに試料ごとに適宜変化させた。フッ素原子を含まない
炭素膜を形成する場合にはCF4の流量をゼロとし、窒
素原子を含まない炭素膜を形成する場合には窒素ガスの
流量をゼロとした。
スに、窒素供給ガスとして窒素ガスを、フッ素含有ガス
としてテトラフルオロメタン(CF4)を混合したもの
を使用した。本実施例では、各ガスを独立して所定流量
で反応容器中に導入し、反応容器中でそれらが混合され
るようにした。各ガスの流量は、炭素膜中のフッ素原子
および窒素原子の組成比を変えるために、表1に示すよ
うに試料ごとに適宜変化させた。フッ素原子を含まない
炭素膜を形成する場合にはCF4の流量をゼロとし、窒
素原子を含まない炭素膜を形成する場合には窒素ガスの
流量をゼロとした。
【0033】反応圧力:27Paとした。
【0034】印加電圧:直流電源を用いて0.8〜2.
5kVの範囲内にある一定電圧を印加した。ラマンスペ
クトルのピーク強度比(B/A)を変化させるために、
印加電圧は試料ごとに、表1に示すように適宜変化させ
た。
5kVの範囲内にある一定電圧を印加した。ラマンスペ
クトルのピーク強度比(B/A)を変化させるために、
印加電圧は試料ごとに、表1に示すように適宜変化させ
た。
【0035】
【表1】
【0036】各試料の炭素膜の元素組成をX線光電子分
光法で分析し、炭素膜における炭素に対するフッ素の原
子比(F/C)、炭素に対する窒素の原子比(N/C)
および酸素に対する窒素の原子比(N/O)を求めた。
また、各試料について、炭素膜のラマン分光分析を実施
し、得られたスペクトルから1550cm-1付近のピーク
のピーク強度比(B/A)を求めた。得られた結果を表
2に示す。
光法で分析し、炭素膜における炭素に対するフッ素の原
子比(F/C)、炭素に対する窒素の原子比(N/C)
および酸素に対する窒素の原子比(N/O)を求めた。
また、各試料について、炭素膜のラマン分光分析を実施
し、得られたスペクトルから1550cm-1付近のピーク
のピーク強度比(B/A)を求めた。得られた結果を表
2に示す。
【0037】次に、炭素膜(3)の表面に、含フッ素カ
ルボン酸(C5F11(CH2)10COOH)から成る潤滑
剤層(4)を湿式塗布法により、乾燥後の膜厚が4nm程
度となるように形成した。
ルボン酸(C5F11(CH2)10COOH)から成る潤滑
剤層(4)を湿式塗布法により、乾燥後の膜厚が4nm程
度となるように形成した。
【0038】以上のようにして作製したテープ素材をス
リッタで8mm幅に裁断し、8mmVTR用の磁気テープを
作製した。
リッタで8mm幅に裁断し、8mmVTR用の磁気テープを
作製した。
【0039】得られた8mmVTR用の磁気テープを、8
mmVTR(ソニー社製EVS−900)に装着し、40
℃80%RHの環境槽にて、繰り返し走行を300パス
実施し、走行後のヘッドの厚さ方向の摩耗量を測定し
た。
mmVTR(ソニー社製EVS−900)に装着し、40
℃80%RHの環境槽にて、繰り返し走行を300パス
実施し、走行後のヘッドの厚さ方向の摩耗量を測定し
た。
【0040】また、繰り返し走行を実施する前、および
実施した後の磁気テープについて、磁性層側表面の摩擦
係数を測定した。摩擦係数は、各試料を、摩擦部材(ス
テンレス製(SUS420J2、表面粗さ0.2S)、
外径6mm)への巻き付け角90°で摩擦部材に巻き付
け、テンション0.2Nの条件で試料を巻き出し、巻き
出しおよび巻き取り速度をともに14mm/秒とし、巻き
取り側においてテンションを測定して、巻き出し側のテ
ンションとの比からオイラーの式より計算して求めた。
実施した後の磁気テープについて、磁性層側表面の摩擦
係数を測定した。摩擦係数は、各試料を、摩擦部材(ス
テンレス製(SUS420J2、表面粗さ0.2S)、
外径6mm)への巻き付け角90°で摩擦部材に巻き付
け、テンション0.2Nの条件で試料を巻き出し、巻き
出しおよび巻き取り速度をともに14mm/秒とし、巻き
取り側においてテンションを測定して、巻き出し側のテ
ンションとの比からオイラーの式より計算して求めた。
【0041】試料1〜15の炭素膜のF/C、N/Cお
よびN/O、ピーク強度比(B/A)、ヘッド摩耗の評
価結果、ならびに繰り返し走行の実施前後の摩擦係数
を、それぞれ表2に示す。
よびN/O、ピーク強度比(B/A)、ヘッド摩耗の評
価結果、ならびに繰り返し走行の実施前後の摩擦係数
を、それぞれ表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】表2より、炭素膜中にF/Cが0.01〜
0.15となるようにフッ素原子が含まれ、かつ、N/
Cが0.1〜0.6となり、N/Oが1.0以上となる
ように窒素原子が含まれる磁気テープ(試料1〜5)は
いずれも、繰り返し走行させても、ヘッドの摩耗をそれ
ほど生じさせない。また、摩擦係数の増加も小さく、繰
り返し走行を実施した後も0.3より小さい摩擦係数を
維持していた。このことは、これらの磁気テープが耐久
性に優れていることを示している。
0.15となるようにフッ素原子が含まれ、かつ、N/
Cが0.1〜0.6となり、N/Oが1.0以上となる
ように窒素原子が含まれる磁気テープ(試料1〜5)は
いずれも、繰り返し走行させても、ヘッドの摩耗をそれ
ほど生じさせない。また、摩擦係数の増加も小さく、繰
り返し走行を実施した後も0.3より小さい摩擦係数を
維持していた。このことは、これらの磁気テープが耐久
性に優れていることを示している。
【0044】炭素膜にフッ素原子が含まれない磁気テー
プ(試料6)は、繰り返し走行を実施した後の摩擦係数
の増加が大きく、耐久性の点で劣るものであった。ま
た、試料7の摩擦係数の測定結果より、炭素膜が窒素原
子を含まない磁気テープは耐久性の点で劣ることが判
る。これらより、炭素膜に含まれる窒素原子とフッ素原
子は相乗的に炭素膜の保護機能を向上させていることが
判る。
プ(試料6)は、繰り返し走行を実施した後の摩擦係数
の増加が大きく、耐久性の点で劣るものであった。ま
た、試料7の摩擦係数の測定結果より、炭素膜が窒素原
子を含まない磁気テープは耐久性の点で劣ることが判
る。これらより、炭素膜に含まれる窒素原子とフッ素原
子は相乗的に炭素膜の保護機能を向上させていることが
判る。
【0045】F/Cが0.15よりも大きい磁気テープ
(試料8)については、ヘッド摩耗がやや大きく、耐久
性の点においても満足できるものではなかった。炭素膜
におけるN/Cが0.6よりも大きい磁気テープ(試料
9)においては走行中、炭素膜に剥離が生じ、剥離した
炭素膜がヘッドにダメージを与えたためにヘッド摩耗が
大きくなり、また、炭素膜が剥離して保護層が失われた
ために、当該磁気テープは耐久性の点でも劣っていた。
炭素膜におけるN/Cが0.1よりも小さい磁気テープ
(試料10)は、繰り返し走行させた後の摩擦係数が
0.3を超え、耐久性がやや劣るものであった。
(試料8)については、ヘッド摩耗がやや大きく、耐久
性の点においても満足できるものではなかった。炭素膜
におけるN/Cが0.6よりも大きい磁気テープ(試料
9)においては走行中、炭素膜に剥離が生じ、剥離した
炭素膜がヘッドにダメージを与えたためにヘッド摩耗が
大きくなり、また、炭素膜が剥離して保護層が失われた
ために、当該磁気テープは耐久性の点でも劣っていた。
炭素膜におけるN/Cが0.1よりも小さい磁気テープ
(試料10)は、繰り返し走行させた後の摩擦係数が
0.3を超え、耐久性がやや劣るものであった。
【0046】試料11のヘッド摩耗の評価結果より、炭
素膜に関するラマンスペクトルにおける1550cm-1付
近のピークのピーク強度比(B/A)が1.2以下であ
る磁気テープを用いると、ヘッドの摩耗量が大きくなる
ことが判る。また、試料12の摩擦係数の測定結果よ
り、同ピーク強度比(B/A)が10以上になると、耐
久性の点で劣ることが判る。
素膜に関するラマンスペクトルにおける1550cm-1付
近のピークのピーク強度比(B/A)が1.2以下であ
る磁気テープを用いると、ヘッドの摩耗量が大きくなる
ことが判る。また、試料12の摩擦係数の測定結果よ
り、同ピーク強度比(B/A)が10以上になると、耐
久性の点で劣ることが判る。
【0047】磁気テープの炭素膜における酸素に対する
窒素の原子比が1以下である磁気テープ(試料13〜1
5)は、F/CおよびN/Cが好ましい範囲内にある場
合でも、ヘッドを摩耗させる、あるいは繰り返し走行後
の摩擦係数が大きくなる傾向にある。このことは、炭素
膜における酸素原子の占める割合が窒素原子よりも大き
くなると、炭素膜の保護機能が低下する傾向にあること
を示唆している。
窒素の原子比が1以下である磁気テープ(試料13〜1
5)は、F/CおよびN/Cが好ましい範囲内にある場
合でも、ヘッドを摩耗させる、あるいは繰り返し走行後
の摩擦係数が大きくなる傾向にある。このことは、炭素
膜における酸素原子の占める割合が窒素原子よりも大き
くなると、炭素膜の保護機能が低下する傾向にあること
を示唆している。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気記録
媒体は、その炭素膜が窒素原子に加えてフッ素原子を含
むことを特徴とする。かかる特徴により、本発明の磁気
記録媒体は、炭素膜に窒素原子のみが含まれるものと比
べて、ヘッドを摩耗しにくく、また耐久性が向上したも
のとなる。さらに、炭素膜に関するラマンスペクトルに
おける1550cm-1付近のピーク強度比が所定範囲内に
あるように炭素膜を形成することにより、ヘッド摩耗の
低減および耐久性の向上をより図ることができる。
媒体は、その炭素膜が窒素原子に加えてフッ素原子を含
むことを特徴とする。かかる特徴により、本発明の磁気
記録媒体は、炭素膜に窒素原子のみが含まれるものと比
べて、ヘッドを摩耗しにくく、また耐久性が向上したも
のとなる。さらに、炭素膜に関するラマンスペクトルに
おける1550cm-1付近のピーク強度比が所定範囲内に
あるように炭素膜を形成することにより、ヘッド摩耗の
低減および耐久性の向上をより図ることができる。
【0049】本発明においては、炭素膜における炭素に
対するフッ素および窒素の原子比が所定範囲内にあるよ
うにして、炭素、窒素およびフッ素の組成を最適化する
ことにより、磁気記録媒体に良好な耐久性等を付与して
いる。また、酸素に対する窒素の原子比を規定すること
で窒素原子の含有量を更に最適化でき、これにより炭素
膜の保護性能は更に向上し得る。したがって、本発明の
磁気記録媒体は、それを構成する炭素膜が10nm以下と
極めて薄くても、繰り返しの走行に対して十分な耐久性
を有し、優れた実用信頼性を呈する。
対するフッ素および窒素の原子比が所定範囲内にあるよ
うにして、炭素、窒素およびフッ素の組成を最適化する
ことにより、磁気記録媒体に良好な耐久性等を付与して
いる。また、酸素に対する窒素の原子比を規定すること
で窒素原子の含有量を更に最適化でき、これにより炭素
膜の保護性能は更に向上し得る。したがって、本発明の
磁気記録媒体は、それを構成する炭素膜が10nm以下と
極めて薄くても、繰り返しの走行に対して十分な耐久性
を有し、優れた実用信頼性を呈する。
【図1】 本発明の磁気記録媒体の一例を模式的に示す
断面図である。
断面図である。
【図2】 本発明の磁気記録媒体の炭素膜に関するラマ
ンスペクトルの一例である。
ンスペクトルの一例である。
1 非磁性基板 2 強磁性金属薄膜 3 炭素膜 4 潤滑剤層 5 バックコート層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5D006 AA02 AA04 AA05 AA06 BB01 EA03 FA02 5D112 AA05 AA07 AA11 BC05 BC09 FA10 FB09
Claims (6)
- 【請求項1】 非磁性基板上に磁性層として形成された
強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜上に形成された炭素
膜、および炭素膜上に形成された潤滑剤層を有する磁気
記録媒体であって、炭素膜が窒素原子およびフッ素原子
を含んで成ることを特徴とする磁気記録媒体。 - 【請求項2】 炭素膜に関するラマンスペクトルにおい
て1550cm-1付近にピークが存在し、そのピーク強
度(B)とバックグラウンドを差し引いたピーク強度
(A)の比(B/A)が1.2〜10である請求項1に
記載の磁気記録媒体。 - 【請求項3】 炭素膜における炭素に対するフッ素の原
子比が0.01〜0.15である請求項1または請求項
2に記載の磁気記録媒体。 - 【請求項4】 炭素膜における炭素に対する窒素の原子
比が0.1〜0.6である請求項1〜3のいずれか1項
に記載の磁気記録媒体。 - 【請求項5】 炭素膜が酸素を含む場合、炭素膜におけ
る酸素に対する窒素の原子比が1.0以上である請求項
1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。 - 【請求項6】 非磁性基板の一方の側に磁性層を形成し
た後、炭化水素系ガス、窒素供給ガス、およびフッ素供
給ガスを含む混合ガスを原料ガスとするプラズマCVD
法を実施して、磁性層上に、窒素原子およびフッ素原子
を含む炭素膜を形成する工程を含む、磁気記録媒体の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000006523A JP2001195723A (ja) | 2000-01-14 | 2000-01-14 | 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000006523A JP2001195723A (ja) | 2000-01-14 | 2000-01-14 | 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001195723A true JP2001195723A (ja) | 2001-07-19 |
Family
ID=18535038
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000006523A Pending JP2001195723A (ja) | 2000-01-14 | 2000-01-14 | 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2001195723A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6764757B1 (en) * | 2000-07-10 | 2004-07-20 | Seagate Technology Llc | Recording medium with a lubricating layer having increased thermal stability |
US7537846B2 (en) | 2003-11-11 | 2009-05-26 | Hoya Corporation | Magnetic disk, method of manufacturing the magnetic disk and method of evaluating the magnetic disk |
WO2012060023A1 (ja) * | 2010-11-02 | 2012-05-10 | 富士電機株式会社 | 保護膜および該保護膜を備えた磁気記録媒体、保護膜を製造する方法 |
-
2000
- 2000-01-14 JP JP2000006523A patent/JP2001195723A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6764757B1 (en) * | 2000-07-10 | 2004-07-20 | Seagate Technology Llc | Recording medium with a lubricating layer having increased thermal stability |
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US8092931B2 (en) | 2003-11-11 | 2012-01-10 | Wd Media (Singapore) Pte. Ltd. | Magnetic disk, method of manufacturing the magnetic disk and method of evaluating the magnetic disk |
WO2012060023A1 (ja) * | 2010-11-02 | 2012-05-10 | 富士電機株式会社 | 保護膜および該保護膜を備えた磁気記録媒体、保護膜を製造する方法 |
JP2012099180A (ja) * | 2010-11-02 | 2012-05-24 | Fuji Electric Co Ltd | 保護膜および該保護膜を備えた磁気記録媒体 |
US8980448B2 (en) | 2010-11-02 | 2015-03-17 | Fuji Electric Co., Ltd. | Magnetic recording medium including an amorphous carbon protective film |
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