JP2001176059A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

Info

Publication number
JP2001176059A
JP2001176059A JP35799799A JP35799799A JP2001176059A JP 2001176059 A JP2001176059 A JP 2001176059A JP 35799799 A JP35799799 A JP 35799799A JP 35799799 A JP35799799 A JP 35799799A JP 2001176059 A JP2001176059 A JP 2001176059A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
recording medium
magnetic recording
film
plastic substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP35799799A
Other languages
English (en)
Inventor
Tadaaki Oikawa
忠昭 及川
Hiroyuki Uwazumi
洋之 上住
Akira Saito
明 斎藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Electric Co Ltd filed Critical Fuji Electric Co Ltd
Priority to JP35799799A priority Critical patent/JP2001176059A/ja
Publication of JP2001176059A publication Critical patent/JP2001176059A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Magnetic Record Carriers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック基板の表面の平坦性と高い保磁
力を兼ね備え、さらに、シード層の成膜条件にかかわら
ず、高温高湿条件下においてもクラックおよび剥離が発
生しない耐久性に優れた磁気記録媒体を提供する。 【解決手段】 プラスチック基板表面に、それぞれ少な
くとも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、お
よび保護層が順次積層された磁気記録媒体であって、前
記緩衝層は原子量が47よりも小さい元素を主成分とす
る金属膜、および/または0〜100℃において線膨張
係数が20×10-6/Kより大きい金属膜から成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現在、コンピュー
タの外部記録装置として主流となっている磁性膜を具え
たハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気
記録媒体に関し、さらに詳しくは、今後巨大な市場へと
成長することが予想されるAV−HDD用途の磁気記録
媒体の中でも低価格帯において主流になるであろうプラ
スチック基板を使用した磁気記録媒体であって、表面の
平坦性を犠牲にすることなく記録層を制御して高い保磁
力を実現し、特に耐久性が改良された磁気記録媒体に関
する。
【0002】
【従来の技術】現在、HDDに用いられる磁気記録媒体
の面記録密度は、開発段階で20Gbits/in2
まで達している。このような磁気記録の高密度化にとも
なって、媒体表面上の単位ビットに相当する面積に含ま
れる結晶粒の数も1000個近くになっている。したが
って、磁気ノイズを低下させるためには結晶サイズが小
さく均一である磁性膜から成る記録層が必要とされる。
【0003】一方、一般的には、磁性粒の小径化によっ
て、記録された磁化方向を安定に保持する能力、すなわ
ち保磁力は低下する。
【0004】従来、媒体の熱安定性向上を意図して、成
膜を行う前に砥粒などを用いて基板表面の磁化方向に平
行に線状の細かな凹凸を形成した構造(テクスチャー構
造)を設けることが一般的である。そして、高密度の記
録媒体の記録層として最もよく用いられているCo系磁
性膜(Cr、Ta、Ptなどを含む合金膜)の場合は、
媒体表面に設けられたテクスチャーによってその結晶容
易軸の方向を制御して、3000〜4000Oeの高い
保磁力を実現している。
【0005】さらに、高保磁力を実現した高密度記録に
好適な磁気記録媒体として、磁気記録媒体の基板上に形
成するCrまたはCrTiの下地膜の厚みを所定の値に
設定したものも開発されている(特開平10−2894
35号公報)。
【0006】一方では、磁気記録の一層の高密度化によ
って一層小さな磁化領域を高いSN比で書き込むため
に、書き込み/読み出しヘッドを記録媒体表面に一層近
づけることが要求されるようになった。現在、ヘッド浮
上量は20Gbits/in2で19nm以下、50G
bits/in2で15nm以下と見積もられている。
そして、今後も磁気記録の高密度化に対応して磁気記録
媒体とデータR/W用ヘッドとの間隔を狭くすることが
求められると予想される。
【0007】しかしながら、高密度化に対応するために
必要とされる磁気記録媒体とデータR/W用ヘッドとの
間隔を狭くするということと、基板表面にテクスチャー
などの凹凸を設けることとは相反する要求である。した
がって、基板表面にテクスチャーなどの凹凸を設けるな
ど、表面平坦性を犠牲にして磁性膜の結晶性および磁気
特性を向上させるのではなく、平坦性を犠牲にせず、あ
るいは向上させながら、記録層を制御して高い保磁力を
実現する技術の提供が切望されている。
【0008】また、HDD用の磁気媒体の基板として
は、従来、アルミ合金、ガラスなどが用いられていた
が、最近では形状安定性に優れた樹脂の開発が進み、ア
ルミ合金やガラスに比べて成形がしやすく廉価な基板を
製造できるなどの理由から、ポリカーボネートやポリオ
レフィンなどの樹脂を射出成形してなる基板をHDD用
の磁気媒体に使用する試みがなされている。
【0009】そこで、本発明者らは、基板の表面の平坦
性を向上させ、且つ保磁力をも向上せしめた磁気記録媒
体として、図2に示すような、プラスチック基板と下地
層との間に、ある種の金属膜から成るシード層を設けた
磁気記録媒体、すなわち、プラスチック基板表面に、そ
れぞれ少なくとも1層の、Tiを主成分として含有する
シード層、下地層、記録層、および保護層が順次積層さ
れた磁気記録媒体を開発した(特願平11−20372
5号)。
【0010】また、プラスチック基板と金属膜との室温
付近の線膨張率を比較すると、ポリオレフィンやポリカ
ーボネートの線膨張率は6〜7×10-5/K、一方、C
oの線膨張率は1.2×10-5/Kであり、樹脂材料の
方が数倍大きい。金属膜とプラスチック基板との熱収縮
の違いおよび両者間の弱い密着性のために、プラスチッ
ク基板は、アルミ基板やガラス基板に比べて基板上の膜
が剥がれ易いという問題がある。磁気記録媒体は、一般
的に、日常の使用環境の変化に対しても十分な信頼性を
保持できるようにいくつかの信頼性加速試験が行われて
いる。この試験の1つに、例えば85℃で相対湿度80
%という高温高湿雰囲気に磁気記録媒体を長時間暴露し
た後、膜質の劣化を評価する項目があり、この試験によ
ってもプラスチック基板を用いた磁気記録媒体は、アル
ミ基板やガラス基板を用いたものに比べて耐久性が劣る
ということが明らかにされている。
【0011】そこで、本発明者らは、プラスチック基板
表面に、それぞれ少なくとも1層の、Tiを主成分とし
て含有するシード層、下地層、記録層、および保護層が
順次積層された磁気記録媒体において、さらに、プラス
チック基板とシード層との間に、金属膜、シリコン膜、
シリサイド膜、炭素含有絶縁膜、シリコン窒化膜、シリ
コン炭化膜、およびシリコン酸化膜からなる群から選択
された少なくとも1種の膜から成るバインダー層を設け
て、プラスチック基板とシード層との間の密着性を高め
た磁気記録媒体も開発した(特願平11−203725
号)。
【0012】しかしながら、例えば、SiN膜、炭素膜
(Diamond-like carbon)、TiC膜などのバインダー
膜は、温度変化が繰り返し生じるような環境下で使用す
ると膜表面にクラックが入ることがある。
【0013】また、Cr膜などのバインダー膜は、温度
変化が繰り返し生じるような環境下で使用すると、バイ
ンダー膜の成膜条件によっては剥離が生じる場合があ
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の課題
は、基板の表面の平坦性と高い保磁力を兼ね備え、さら
に、シード層の成膜条件にかかわらず、高温高湿条件下
でもクラックおよび剥離が発生しない耐久性に優れた磁
気記録媒体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このような
課題を解決するために、シード層の成膜にあたり成膜粒
子が衝突してプラスチック基板表面に及ぼすダメージを
緩和することにより、および/または、昇温降温にとも
なうプラスチック基板とシード層との膨張収縮の差を緩
和することにより、基板の表面の平坦性と高い保磁力を
維持したままプラスチック基板とシード層の剥離および
クラックの発生を防止し、耐久性に優れた磁気記録媒体
を提供できることを見出した。
【0016】すなわち、本発明の第1の形態である磁気
記録媒体は、プラスチック基板表面に、それぞれ少なく
とも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、およ
び保護層が順次積層された磁気記録媒体であって、前記
緩衝層は前記シード層の成膜粒子の衝突によるダメージ
を緩和できる層であることを特徴とする。
【0017】また、本発明の第2の形態である磁気記録
媒体は、第1の形態において、緩衝層は、原子量が47
よりも小さい元素を主成分とする金属膜から成ることを
特徴とする。
【0018】本発明の第3の形態である磁気記録媒体
は、プラスチック基板表面に、それぞれ少なくとも1層
の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、および保護層
が順次積層された磁気記録媒体であって、前記緩衝層
は、昇温降温にともなう前記プラスチック基板と前記シ
ード層との膨張収縮の差を緩和できる層であることを特
徴とする。
【0019】また、本発明の第4の形態である磁気記録
媒体は、第3の形態において、緩衝層は、0〜100℃
において線膨張係数が20×10-6/Kより大きい金属
膜から成ることを特徴とする。
【0020】本発明の第5の形態である磁気記録媒体
は、プラスチック基板表面に、それぞれ少なくとも1層
の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、および保護層
が順次積層された磁気記録媒体であって、前記緩衝層は
前記シード層の成膜粒子の衝突によるダメージを緩和で
き、且つ昇温降温にともなう前記プラスチック基板と前
記シード層との膨張収縮の差を緩和できる層であること
を特徴とする。
【0021】また、本発明の第6の形態である磁気記録
媒体は、第5の形態において、記緩衝層は、原子量が4
7よりも小さい元素を主成分とする金属膜であって、0
〜100℃において線膨張係数が20×10-6/Kより
大きい金属膜から成ることを特徴とする。
【0022】さらにまた、本発明の第7の形態である磁
気記録媒体は、第1〜第6の形態のいずれかの磁気記録
媒体において、記録層が、強磁性金属結晶粒子と該粒子
間に析出した絶縁体とから成ることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体は、それぞ
れ少なくとも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録
層、および保護層が順次積層されている。図1は好まし
いひとつの形態を表し、プラスチック基板表面に、緩衝
層、シード層、下地層、記録層、および保護層が順次連
続積層されて成る磁気記録媒体である。
【0024】本発明で使用されるプラスチック基板は、
慣用のいかなるプラスチック基板でもよい。具体的な基
板形成材料としては、ポリカーボネート、ポリオレフィ
ン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レート、ポリイミドなどを挙げることができる。特に、
ポリカーボネートおよびポリオレフィンを射出成形して
成る基板が好適に用いられる。
【0025】シード層とは、磁気記録媒体の表面の平坦
性を向上させ、且つ保磁力も向上せしめることができる
層である。このような機能を有する層は、具体的には、
Tiを主成分として含有する金属膜から成る。Tiを主
成分として含有する金属膜とは、Tiのみからなる金属
膜、Cr−Ti合金膜などを挙げることができる。保磁
力を向上せしめるという点ではTi膜が好ましい。
【0026】シード層の厚さは、5〜50nmであり、
好ましくは10〜20nm、さらに好ましくは5〜10
nmである。シード層は1層でも多層でもよい。
【0027】下地層は、下地層を形成する慣用のいかな
る成分から形成されてもよく、特に限定されない。具体
的には、Cr、Cr−W、Cr−V、Cr−Mo、Cr
−Si、Ni−Al、Co67Cr33、Mo、W、Pt、
Al23などから成る。
【0028】下地層の厚さは50nm以下であり、好ま
しくは30〜50nm、さらに好ましくは20〜30n
mである。下地層は1層でも多層でもよい。
【0029】記録層は、強磁性金属を含む磁性膜から成
り、好ましくは強磁性金属結晶粒子とその粒子間に析出
した絶縁体とから成る磁性膜から成る。アルミ合金やガ
ラスなどの基板と異なり、プラスチック基板を用いた場
合には、プラスチック材料固有のガラス転移温度以上の
高温、通常、約100〜300℃での成膜ができない。
そこで、常温付近の成膜温度でも高い保磁力を得るため
に、強磁性金属結晶粒子に絶縁体を混合した材料が好適
に用いられる。
【0030】強磁性金属結晶粒子とその粒子間に析出し
た絶縁体とから成る磁性膜は、グラニュラー膜と呼ばれ
ている膜である。グラニュラー膜は、例えば、従来のC
o系磁性膜を構成するCo、Cr、Ta、Ptなどの金
属元素にSiO2、Al23、Cr23などの安定な酸
化物を数%から数10%混入させた材料を、スパッタリ
ング法で成膜して、Co系の磁性材料の微粒子(この粒
子が単一のグレインに対応する)が、添加された酸化物
によって取り囲まれネットワーク構造を形成している。
グラニュラー膜は、従来の強磁性金属のみから構成され
る磁性膜と比較して、粒径を小さくしても比較的保磁力
が大きい熱的に安定な膜、すなわち、高保磁力を持つ膜
を常温成膜でも形成できる磁性膜である。
【0031】本発明の記録層として使用できる強磁性金
属を含む磁性膜は、具体的には、Co−Cr−Pt、C
o−Cr−Ta−Pt、CoCrTaPt−Cr23
CoPt−SiO2、CoCrTaPt−SiO2、(C
60Cr28Pt12)−(Cr 23)、(Co60Cr28
12)−(SiO2)、(Co60Cr28Pt12)−(Z
rO2)、(Co60Cr28Pt12)−(TiO2)、(C
60Cr28Pt12)−(Al23)などを成分とする磁
性膜である。(Co60Cr28Pt12)−(Cr 23)、
(Co60Cr28Pt12)−(SiO2)、(Co60Cr
28Pt12)−(ZrO2)、(Co60Cr28Pt12)−
(TiO2)、(Co60Cr28Pt12)−(Al23
から成るグラニュラー膜が特に好ましい。
【0032】記録層の厚さは、20nm以下であり、好
ましくは10〜20nmである。記録層は1層でも多層
でもよい。
【0033】保護層は、記録層を形成する磁性膜をヘッ
ドの衝撃、外界の腐食性物質などの腐食から保護する機
能を有する。このような機能を提供できる慣用のいかな
る成分から形成されてもよく特に限定されないが、具体
的には、炭素、窒素含有炭素、水素含有炭素などから成
る。
【0034】保護層の厚さは、10nm以下であり、好
ましくは5〜10nmである。保護層は1層でも多層で
もよい。
【0035】本発明の緩衝層は、シード層の成膜にあた
り成膜粒子が衝突してプラスチック基板表面に及ぼすダ
メージを緩和することができるか、または、昇温降温に
ともなうプラスチック基板とシード層との膨張収縮の差
を緩和することができる層である。両方の機能を有する
緩衝層が一層好ましい。
【0036】本発明者らは、種々の材料と成膜条件とを
組み合わせてプラスチック基板上に層を形成し耐久性を
検討した。結果は以下の表に示されるとおりであった。
【0037】
【表1】
【0038】成膜圧力:高(〜100mTorr)、低(数
mTorr) 高温高湿:1気圧、80℃、80%
【0039】上記の検討結果から、シード層とプラスチ
ック基板との間のバインダー層として用いることができ
る炭素膜、ケイ素膜、SiN膜などでは、剥離は発生し
ないが、膜表面にクラックが発生することがわかった。
すなわち、原子量の小さい元素を成膜した場合には、成
膜によるダメージが小さく膜の剥離は発生しないが、バ
インダー層の線膨張係数がプラスチック基板の線膨張係
数(60〜70×10 -6/K)より小さいため、昇温降
温によって引き起こされるプラスチック基板の膨張収縮
によってクラックが入るものと考えられる。そして、シ
ード層の線膨張係数もプラスチック基板の線膨張係数よ
り小さいため、このようなバインダー層を用いた場合に
は、シード層にもクラックが発生するものと考えられ
る。
【0040】したがって、シード層のクラックを防止す
るためには、上記のようなバインダー層に代えて、昇温
降温にともなうプラスチック基板とシード層との膨張収
縮の差を緩和することができる層を設ける必要がある。
【0041】そのような機能は、プラスチック基板とシ
ード層との間に、TiやCrよりも線膨張係数の大きい
金属膜、すなわち、0〜100℃において線膨張係数が
20×10-6/Kより大きい金属膜から成る緩衝層を設
けることによりもたらされる。このような金属膜は、A
l、NiAlなどである。
【0042】また、原子量の大きいTiやCrを用いた
場合には、成膜圧力が低い場合には金属粒子の平均自由
工程が長くなるため、成膜圧力の高い成膜条件の場合と
比較して成膜粒子が運動量の大きい状態でプラスチック
基板表面に衝突する確率が大きい。その結果、プラスチ
ック基板表面での成膜粒子のマイグレーションが大きく
なり緻密な膜を形成することができるが、基板に及ぼす
ダメージの程度は大きくなると考えられる。このように
プラスチック基板に及ぼされたダメージによって基板表
面から膜剥離が生じる。さらにまた、緻密な膜ができる
ことによって、プラスチック基板と膜との線膨張係数の
差が大きい場合には膜の表面にクラックが生じることが
ある。
【0043】一方、平均自由工程を短くする目的で成膜
圧力を上げた場合、膜剥がれはある程度抑えられるが、
膜の緻密さが低くなると同時に膜表面の凹凸も大きくな
る。
【0044】したがって、低い成膜圧力であってもシー
ド層とプラスチック基板との間の剥離を防止するには、
シード層の成膜にあたり成膜粒子が衝突してプラスチッ
ク基板表面に及ぼすダメージを緩和することが必要であ
る。
【0045】そのような機能は、プラスチック基板とシ
ード層との間に、TiやCrよりも原子量が小さい元
素、すなわち、原子量が47より小さい元素を主成分と
する金属膜から成る緩衝層によりもたらされる。
【0046】原子量が47より小さい元素を主成分とす
る金属膜とは、原子量が47より小さい元素を少なくと
も50%含み、シード層の成膜にあたり成膜粒子が衝突
してプラスチック基板表面に及ぼすダメージを緩和する
ことができるという機能を緩衝層にもたらす膜である。
【0047】金属膜を形成し得る原子量が47よりも小
さい元素は、アルミニウム、ケイ素などであり、そのよ
うな元素と合金を形成し得る元素は、ニッケル、鉄、マ
ンガン、銅、亜鉛、モリブデンなどである。このよう合
金の具体例は、Al、AlTi、AlSi、AlTa、
AlV、AlZr、NiAl、NiP、NiFe、Ni
Siなどである。シード層とプラスチック基板の線膨張
係数の差によって生じる、昇温降温にともなう両者の膨
張収縮の差を緩和することができる、Al膜、Alを少
なくとも50%含むNiAl合金膜が特に好ましい。
【0048】緩衝層の厚さは、上記のいずれの機能を提
供する場合でも、5〜100nmであり、好ましくは5
〜50nmであり、1層でも多層でもよい。
【0049】各層の形成方法は特に限定されるものでは
ないが、通常、各方式スパッタ法により成膜される。以
下の表に、ポリカーボネートまたはポリオレフィンから
成るプラスチック基板への各層のスパッタリング法によ
る代表的な成膜条件を示す。
【0050】
【表2】
【0051】本発明の磁気記録媒体は、記録層と保護層
との間に、記録層を形成するグラニュラー膜からのCo
が媒体表面に溶け出して生じる腐食を防止するために、
Co溶出防止膜を形成してもよい。
【0052】また、保護層の上にさらに潤滑層を設けて
もよい。潤滑層は、パーフルオロ−ポリエーテル、プラ
ズマ重合フッ化炭素などから成る。
【0053】本発明による緩衝層は、ディスク状、カー
ド状、または帯状などいかなる形態の磁気記録媒体にも
適用できる。
【0054】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】(実施例1、2)ポリオレフィンから成形
されたプラスチック基板上に、NiAl合金(50:5
0)から50nmの緩衝層を成膜し、順次、Tiから2
0nmのシード層、Crから50nmの下地層、Co系
材料から30nmの記録層、Tiから3nmのCo溶出
防止層、およびグラファイトから10nmの保護層を連
続して成膜した。シード層の成膜圧力は、実施例1が高
圧力(〜100mTorr)であり、実施例2が低圧力
(数mTorr)であった。
【0056】得られた磁気記録媒体を、1気圧で80
℃、80%という高温高湿条件下に、24時間および5
00時間放置した後の、プラスチック基板からの剥離の
有無、およびシード層のクラックの有無を観察した。結
果は表3に示す。
【0057】(比較例1、2)緩衝層を成膜することな
く、それ以外の層を実施例1と同様に成膜した。シード
層の成膜圧力は、比較例1が高圧力(〜100mTor
r)であり、比較例2が低圧力(数mTorr)であっ
た。
【0058】また、実施例1と同様に高温高湿耐久性試
験を行った。結果は表3に示す。
【0059】(対照例1、2)シード層を成膜すること
なく、それ以外の層を実施例1と同様に成膜した。下地
層の成膜圧力は、対照例1が高圧力(〜100mTor
r)であり、対照例2が低圧力(数mTorr)であっ
た。
【0060】また、実施例1と同様に高温高湿耐久性試
験を行い、プラスチック基板からの層剥離の有無、下地
層表面のクラックの有無を観察した。結果は表3に示
す。
【0061】(比較例3、4)緩衝層およびシード層を
成膜することなく、実施例1と同様にそれ以外の層を成
膜した。下地層の成膜圧力は、比較例3が高圧力(〜1
00mTorr)であり、比較例4が低圧力(数mTo
rr)であった。
【0062】また、実施例1と同様に高温高湿耐久性試
験を行い、プラスチック基板からの層剥離の有無、下地
層表面のクラックの有無を観察した。結果は表3に示
す。
【0063】(比較例5、6)炭素から20nmのシー
ド層を成膜した以外は、実施例1と同様に各層を成膜し
た。シード層の成膜圧力は、比較例5が高圧力(〜10
0mTorr)であり、比較例6が低圧力(数mTor
r)であった。
【0064】また、実施例1と同様に高温高湿耐久性試
験を行った。結果は表3に示す。
【0065】(比較例7、8)緩衝層およびシード層を
成膜せずに、炭素から20nmのバインダー層を成膜し
た以外は、実施例1と同様に各層を成膜した。バインダ
ー層の成膜圧力は、比較例7が高圧力(〜100mTo
rr)であり、比較例8が低圧力(数mTorr)であ
った。
【0066】また、実施例1と同様に高温高湿耐久性試
験を行った。結果は表3に示す。
【0067】
【表3】 * 下地層の成膜圧力および線膨張係数を示す。 ** バインダー層の線膨張係数を示す。
【0068】実施例1および2と、比較例1および2と
を比較すると、プラスチック基板とTiシード層との間
に緩衝層を設けたことにより、Tiシード層が高い成膜
圧力の条件下で成膜されても、低い成膜圧力条件下で成
膜されても、プラスチック基板とシード層との剥離も起
こらず、クラックも発生しないことがわかる。
【0069】対照例1および2と、比較例3および4と
を比較すると、プラスチック基板とCr下地層との間に
緩衝層を設けたことにより、下地層の成膜圧力条件にか
かわらず、高温高湿条件下に500時間放置した後にお
いてもプラスチック基板と下地層との剥離が起こらない
ことがわかる。また、下地層の成膜が低い圧力で行なわ
れた場合には、緻密で線膨張係数の小さい層となる結
果、高温高湿条件下ではクラックが発生していたが、線
膨張係数が20×10-6/Kより大きい緩衝層を設ける
ことによりクラックの発生を防止することができた。し
たがって、本発明の緩衝層は、シード層を具えない従来
の磁気記録媒体においても、その耐久性を改良できるこ
とがわかる。
【0070】比較例5および6と、比較例7および8と
を比較すると、いずれもプラスチック基板からの剥離は
ないが、クラックが発生していることがわかる。この結
果から、炭素から形成されているバインダー層に対して
は、緩衝層は有効ではないことがわかった。これは、炭
素は原子量が小さいため、成膜によるプラスチック基板
へのダメージが小さく、したがって膜の剥離は発生せ
ず、このような層は線膨張係数がプラスチック基板の線
膨張係数よりもあまりに小さいため、緩衝層を設けても
昇温降温によって引き起こされるプラスチック基板の膨
張収縮を緩和しきれず、クラックが入るからであると考
えられる。
【0071】
【発明の効果】本発明によると、プラスチック基板の表
面の平坦性と高い保磁力を兼ね備え、さらに、シード層
の成膜条件にかかわらず、高温高湿条件下においてもク
ラックおよび剥離が発生しない耐久性に優れた磁気記録
媒体を提供することができる。このような磁気記録媒体
は、磁気記録の一層の高密度化に十分に対応できるもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の形態の一実施例である磁気記録
媒体の断面概略図である。
【図2】従来例の磁気記録媒体の断面概略図である。
【図3】他の従来例の磁気記録媒体の断面概略図であ
る。
【符号の説明】
1、11 磁気記録媒体 2、21 プラスチック基板 3 緩衝層 4、41 シード層 5、51 下地層 6、61 記録層 7、71 保護層 81 バインダー層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 明 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 Fターム(参考) 5D006 BB07 CA01 CA05 CA06 CB01 DA03 FA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチック基板表面に、それぞれ少な
    くとも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、お
    よび保護層が順次積層された磁気記録媒体であって、前
    記緩衝層は前記シード層の成膜粒子の衝突によるダメー
    ジを緩和できる層であることを特徴とする磁気記録媒
    体。
  2. 【請求項2】 前記緩衝層は、原子量が47よりも小さ
    い元素を主成分とする金属膜から成ることを特徴とする
    請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 プラスチック基板表面に、それぞれ少な
    くとも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、お
    よび保護層が順次積層された磁気記録媒体であって、前
    記緩衝層は、昇温降温にともなう前記プラスチック基板
    と前記シード層との膨張収縮の差を緩和できる層である
    ことを特徴とする磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記緩衝層は、0〜100℃において線
    膨張係数が20×10-6/Kより大きい金属膜から成る
    ことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 プラスチック基板表面に、それぞれ少な
    くとも1層の、緩衝層、シード層、下地層、記録層、お
    よび保護層が順次積層された磁気記録媒体であって、前
    記緩衝層は前記シード層の成膜粒子の衝突によるダメー
    ジを緩和でき、且つ昇温降温にともなう前記プラスチッ
    ク基板と前記シード層との膨張収縮の差を緩和できる層
    であることを特徴とする磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記緩衝層は、原子量が47よりも小さ
    い元素を主成分とする金属膜であって、0〜100℃に
    おいて線膨張係数が20×10-6/Kより大きい金属膜
    から成ることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒
    体。
  7. 【請求項7】 前記記録層は、強磁性金属結晶粒子と該
    粒子間に析出した絶縁体とから成ることを特徴とする請
    求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
JP35799799A 1999-12-16 1999-12-16 磁気記録媒体 Pending JP2001176059A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35799799A JP2001176059A (ja) 1999-12-16 1999-12-16 磁気記録媒体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35799799A JP2001176059A (ja) 1999-12-16 1999-12-16 磁気記録媒体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001176059A true JP2001176059A (ja) 2001-06-29

Family

ID=18457019

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35799799A Pending JP2001176059A (ja) 1999-12-16 1999-12-16 磁気記録媒体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001176059A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6911256B2 (en) 2003-06-30 2005-06-28 Imation Corp. Buffer layers for magnetic media with a plastic substrate
US7160571B2 (en) 2001-12-25 2007-01-09 Fuji Electric Co., Ltd. Method of manufacturing a magnetic recording medium
US7270898B2 (en) 2002-04-04 2007-09-18 Fujitsu Limited Polycrystalline structure of ordered alloy and method of making the same
JPWO2007099754A1 (ja) * 2006-03-03 2009-07-16 コニカミノルタオプト株式会社 磁気記録媒体用基板及びその製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7160571B2 (en) 2001-12-25 2007-01-09 Fuji Electric Co., Ltd. Method of manufacturing a magnetic recording medium
US7270898B2 (en) 2002-04-04 2007-09-18 Fujitsu Limited Polycrystalline structure of ordered alloy and method of making the same
US6911256B2 (en) 2003-06-30 2005-06-28 Imation Corp. Buffer layers for magnetic media with a plastic substrate
JPWO2007099754A1 (ja) * 2006-03-03 2009-07-16 コニカミノルタオプト株式会社 磁気記録媒体用基板及びその製造方法
JP5062167B2 (ja) * 2006-03-03 2012-10-31 コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 磁気記録媒体用基板

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8003237B2 (en) Perpendicular magnetic recording disk and manufacturing method thereof
US8728637B2 (en) Corrosion resistant granular magnetic stack
US20020187368A1 (en) Magnetic recording medium and a method of manufacture thereof
JPH0883418A (ja) 磁気記録媒体および磁気記録再生装置
US6277484B1 (en) Magnetic recording media and method of producing the same
JPH08102033A (ja) 薄膜磁気記録ディスクおよびその製造方法
US5851628A (en) Magnetic recording medium and method for manufacturing the same
JP4207769B2 (ja) 垂直磁気記録媒体およびその製造方法
US6680133B2 (en) Magnetic recording medium and sputtering target
JP3892401B2 (ja) 垂直磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法、並びに垂直磁気記録ディスクの製造方法
JP2005521980A (ja) 磁気記録媒体及び磁気記憶装置
JP2001176059A (ja) 磁気記録媒体
JPH087250A (ja) 磁気記録媒体及びこれを用いた磁気記憶装置
US5981018A (en) Magnetic recording media used in a high-density hard disk drive
JP3705474B2 (ja) 磁気記録媒体
US20050064243A1 (en) Magnetic recording medium
JPH11219511A (ja) 磁気記録媒体および磁気記録装置
US20030207154A1 (en) Magnetic recording medium and magnetic disc drive
JPH09134518A (ja) 磁気記録媒体
JP4944471B2 (ja) 磁気ディスク及びその製造方法
JP2659016B2 (ja) 磁気記録媒体
JP2653204B2 (ja) 面内磁気記録媒体の製造方法
JP2004234746A (ja) 垂直磁気記録媒体の製造方法
JP4077964B2 (ja) 磁気記録媒体とその製造方法および磁気記憶装置
JP2001331934A (ja) 磁気記録媒体、その製造方法、磁気記録再生装置、およびスパッタリングターゲット

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040412

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040412

RD13 Notification of appointment of power of sub attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433

Effective date: 20050510

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20070206

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070612