JP2001116716A - 過酸化水素電極およびそれを用いた過酸化水素センサ、測定器 - Google Patents

過酸化水素電極およびそれを用いた過酸化水素センサ、測定器

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Abstract

(57)【要約】 【課題】測定精度が高く、良好な応答性を有するととも
に、長期使用に対する耐久性および高温安定性が良好で
あって広範囲の使用条件下において測定可能な過酸化水
素電極およびこれを用いたセンサ、測定器を提供するこ
と。 【解決手段】絶縁基板1上に作用極として機能する電極
2を設け、その上に、メタクリル酸樹脂のフルオロアル
コールエステルからなる制限透過層3を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薬液中の過酸化水
素の検出や定量を行う技術に関するものであり、特に、
半導体装置の製造に用いられる種々の薬液や、食品製造
プロセス中の殺菌および消毒工程に使用される薬液に含
まれる過酸化水素を、高精度で再現性良く定量する技術
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体装置製造の種々のプロセスにおい
て、還元剤として過酸化水素を用いた薬液が広く使用さ
れている。また、食品製造プロセスにおいては、殺菌お
よび消毒の目的で過酸化水素を含む薬液が用いられてい
る。これらのプロセスにおいては過酸化水素濃度が変動
すると薬液の性質が著しく変動するため、品質管理上、
薬液中の過酸化水素濃度を厳密に制御することが必要と
なる。
【0003】薬液中の過酸化水素濃度を測定する方法と
して、従来、吸光度測定による濃度測定が一般的に行わ
れていた。すなわち、測定対象となる薬液について過酸
化水素の吸収帯の吸光度を測定し、これを検量線データ
と対比することによって過酸化水素濃度の定量を行って
いた。このような方法で測定を行う過酸化水素濃度測定
装置の一例が特開平8−136450号公報に開示され
ている。この装置の概略構造を図10に示す。この装置
では、ポンプ61により純水を定常的に送液し、フロー
セル86bを内蔵する紫外吸収測定部86により紫外領
域の所定の波長における吸光度を連続測定する。紫外吸
収測定は、アンモニアによる吸収が無視できる240nm
以上の波長で行うことが望ましいとされている。測定
は、以下に示す4段階のステップで行われる。第1のス
テップでは、流路切替バルブ62および流路切替バルブ
72を実線状態にし、ポンプ63により洗浄薬液をルー
プ66に、ポンプ73により硫酸溶液をループ76a、
76bに送液し、ループ内をそれぞれの液体で満たす。
なお60℃に加熱されている洗浄薬液は、冷却器81で
冷却され洗浄薬液とともに配管に入った気泡は脱泡器8
2により除かれる。第2のステップでは、流路切替バル
ブ62および流路切替バルブ72を破線状態にする。こ
れによりポンプ61から流出する純水は、ループ76
a、ループ66、ループ76bを通過した後、混合器8
5に入る。細管内部の流動により、洗浄薬液と硫酸溶液
は混合器85内で混合された後、紫外吸収測定部86に
入る。この際の吸光度は洗浄薬液中の過酸化水素濃度の
みに依存し、図11のAあるいはCはこの時の信号の例
である。第3のステップでは、流路切替バルブ62のみ
を実線に戻し、再びループ66を洗浄薬液で満たす。ル
ープ76a、ループ76bは、純水で洗浄され、純水で
満たされる。第4のステップでは、流路切替バルブ62
を破線状態にする。ループ66の洗浄薬液が純水で希釈
され、紫外吸収測定部86に送液される。この際の吸光
度は、純水で希釈された洗浄薬液の吸光度であり、過酸
化水素とアンモニアの両方の濃度に依存する。図11の
BあるいはDはこのときの信号の例である。その後再び
第1のステップの状態に流路切替バルブ62および72
を戻す。得られた信号Aおよび信号Bの吸光度を、組成
が既知で、組成の異なる数種の薬液の吸光度を測定し作
成され、コンピュータに予め保存されている検量線デー
タと対照し、データ処理を行い、薬液中の過酸化水素と
アンモニアの定量を行う。ステップ1〜4を繰り返すこ
とにより薬液組成の連続モニタリングを行うことができ
るとされてきた。
【0004】また、他の方法としては特開平3−175
341号公報に示されているように、半導体プロセス用
薬剤含有水溶液と純水の近赤外吸収スペクトルとを比較
し、波長帯域800〜1400nmにおいて両者間に顕
著な有意差のある吸収帯を与える波長λiを選定する。
そして、濃度が既知の標準試料の800〜1400nm
における吸収スペクトルを測定して波長λiにおける吸
光度Aiを求め、濃度Cと吸光度Aiとの関係を分析して
検量式:C=Σαiiを作成する。この式において定数
αiは薬剤の種類、波長λi、及び波長λiの選択数によ
って決定される。そして、濃度が未知の試料水溶液の8
00〜1400nmにおける吸収スペクトルを測定して
波長λiにおける吸光度を求め、検量式に代入すれば、
試料溶液の濃度を迅速にかつ精度良く算出することがで
きるとしている。
【0005】吸光度測定以外の他の方法として、過酸化
水素定量電極を用いた測定方法がある。実公平6−43
734号公報には、過酸化水素の分解に対して触媒作用
を有する金属からなる電極部材と、電源装置への接続部
材とを用いて、印加後の電流値を測定し、主として食品
分野における溶液中の過酸化水素濃度を測定する方法が
開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記従来技術
は以下のような課題を有していた。
【0007】まず吸光度分析を用いた測定についての課
題について説明する。過酸化水素濃度を吸光によって測
定する場合、干渉物質による影響を防ぐことが困難とな
る。代表的な干渉物質としては不純物たとえばスラリー
等の沈殿物、チタン化合物、および有機酸があり、これ
らが過酸化水素の吸光に影響を及ぼし、測定精度を低下
させる。具体的には、沈殿物は吸光を妨げ、チタン化合
物や有機酸は過酸化水素の吸光値と重なるためである。
図15は、過酸化水素、スラリーおよび過酸化水素添加
スラリーの光吸収曲線を示すものである。図に示すよう
に、スラリーと過酸化水素はほぼ同じ波長領域に吸収帯
を有しており、過酸化水素添加スラリーにおける過酸化
水素の定量が困難であることがわかる。
【0008】また、特開平8−136450号公報記載
の方法は、図10に示されるように、ポンプ、フローセ
ル、流路切り替えバルブ、ループ、冷却器、配管、脱泡
器、混合器、紫外線吸収測定部、さらにデータ処理に使
用されるコンピュータ等が必要であるため、複雑で部品
数が多く、製造コストが高くなる。上記方法はこの点で
改善の余地を有していた。
【0009】一方、実公平6−43734号公報に示さ
れているような過酸化水素定量電極を用いた測定は、測
定試料に含まれる不純物が電極部材と反応して測定精度
を低下させたり、電極を汚染するという課題を有してい
た。また、測定試料中に過酸化水素が高濃度で存在する
場合、電極の感度が飽和してしまい正確な測定が困難に
なるという課題を有していた。
【0010】なお、過酸化水素濃度自体を測定するもの
ではないが、過酸化水素定量電極の上に固定化酵素層を
含む多層膜を形成した構造のバイオセンサが種々開発さ
れている。この種のセンサは、測定試料中の特定成分、
たとえばグルコースを、酵素反応によって過酸化水素に
変換し、生成した過酸化水素を定量するという方式のも
のである。特開平10−26601号公報にはこの種の
バイオセンサの一例が開示されている。このバイオセン
サの構造を図12に示す。絶縁基板31上に過酸化水素
電極32が形成され、その上にγ−アミノプロピルトリ
エトキシシラン膜33、アセチルセルロース膜34、パ
ーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜35、触媒機能を
もつ酵素を固定化した有機高分子膜36、ポリアルキル
シロキサン膜37がこの順で形成されている。しかしな
がら、このバイオセンサは、以下の点でなお改善の余地
を有していた。
【0011】このバイオセンサは、ポリアルキルシロキ
サンからなる制限透過膜を有しており、この膜により、
溶液中の過酸化水素の過酸化水素電極への透過を制限
し、1mM程度の高濃度の過酸化水素まで測定可能として
いる。ところが、この制限透過膜は強度が充分ではない
ため、上記電極を長期間使用した場合の耐久性が必ずし
も充分ではなかった。
【0012】以上のように、充分な測定精度、迅速な応
答性を有し、繰り返し測定の安定性にも優れた過酸化水
素濃度測定技術は見出されていないのが現状であった。
このため、半導体装置の製造や食品加工の分野におい
て、種々のプロセス上の課題が存在していた。これらの
課題について、以下、具体的に説明する。
【0013】まず半導体装置の製造における課題につい
て説明する。
【0014】半導体装置の製造においては、素子形成前
あるいは素子形成後における種々の段階でウェーハの洗
浄を行うことが必要となる。ウェーハ洗浄の代表的な技
術として、いわゆるRCA洗浄が広く利用されている
が、このRCA洗浄に含まれる工程の洗浄液として、通
常、酸または塩基と過酸化水素との混合液が用いられ
る。酸または塩基は、シリコン基板の一部を溶解させ、
パーティクル等をリフトオフさせる役割を果たす。一
方、過酸化水素は、シリコン基板の溶解の過剰な進行に
よる表面荒れを防止するという役割を果たす。このよう
な洗浄液を長期にわたって使用すると、過酸化水素の消
耗により液中過酸化水素濃度が低下し、その結果、基板
の表面荒れを防止する作用が低下することとなる。その
ため、表面液を継続的に使用するには適宜に過酸化水素
水を補充して表面荒れ防止能力を回復させる必要があ
る。従来は、洗浄後の基板の検査結果等を参考にして経
験的に定めた基準で、一定時間毎若しくは一定の処理数
毎に一定量の過酸化水素水を剥離液に補充していた。と
ころが、一定時間若しくは一定の処理数における洗浄液
の劣化の程度は必ずしも一様ではないため、一定量の過
酸化水素水の補充の繰返しでは表面荒れ防止能力が充分
には回復しなくなり、剥離槽内全液の更新を早期に行わ
ざるを得なくなる場合が多かった。このため洗浄液の使
用量が必要以上に増大してしまい、コスト増大を招く一
因となっていた。また、過酸化水素水の補充をきめ細か
く行うことが難しく、洗浄液の洗浄性能の変動を招くこ
とがあった。
【0015】過酸化水素濃度の厳密な管理は、レジスト
の剥離プロセスにおいても求められる。半導体基板上の
フォトレジストは、通常、酸素プラズマによるアッシン
グ処理を行った後、剥離液としてSPM(硫酸、過酸化
水素水の混合液)を用いた処理を行い、さらに剥離液と
してAPM(アンモニア、過酸化水素水の混合液)を用
いた処理を行うことによって剥離する。これらの剥離液
はフォトレジストを酸化、分解して基板から剥離する
が、その際、過酸化水素を消耗して液中の過酸化水素濃
度が低下し、その結果、剥離能力が急速に低下して処理
済の基板上にレジスト残渣を生じるようになる。このた
め、上記剥離液を継続的に使用するには適宜に過酸化水
素水を補充して剥離能力を回復させる必要がある。従来
は、剥離後の基板の検査結果等を参考にして経験的に定
めた基準で、一定時間毎若しくは一定の処理数毎に一定
量の過酸化水素水を剥離液に補充していた。ところが、
一定時間若しくは一定の処理数における剥離液の劣化の
程度は必ずしも一様ではないため、一定量の過酸化水素
水の補充の繰返しでは剥離能力が充分には回復しなくな
り、剥離槽内全液の更新を早期に行わざるを得なくなる
場合が多かった。このため剥離液の使用量が必要以上に
増大してしまい、コスト増大を招く一因となっていた。
また、過酸化水素水の補充をきめ細かく行うことが難し
く、剥離液の剥離性能の変動を招くことがあった。 さ
らに、過酸化水素濃度の厳密な管理は、化学的機械的研
磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)プロセスに
おいても求められる。CMPとは、ベアウェーハやシリ
コン酸化膜の形成されたウェーハを平坦化する技術であ
る。固体砥粒と酸化性物質を主成分とする研磨液を用
い、酸化性物質の酸化作用で研磨対象の表面を酸化しな
がら、固体砥粒によってその酸化物を機械的に除去する
のが基本的なCMPのメカニズムである。酸化性物質と
しては、通常、過酸化水素(H2O2)を必須成分として
含み、この他に、必要に応じて硝酸第二鉄(Fe(NO
33)などが適宜添加される。CMPにおける研磨速度
および研磨精度は研磨液の組成の微妙な差によって大き
く変動することから、CMP研磨液は常に最適な組成に
制御・管理されている必要がある。ところが従来のCM
Pにおいては、過酸化水素濃度を充分な精度で測定する
ことが困難であったため、上記のような研磨液の厳密な
管理を実現することは容易ではなく、研磨液の組成が経
時的に変化し、研磨液の性能、ひいては研磨速度が変動
するという問題を有していた。
【0016】また、たとえば銅配線を形成する際のメタ
ルCMPにおいては、銅膜とバリアメタル膜、層間絶縁
膜との研磨速度差に起因してディシングやエロージョン
といった問題が起こることが知られており、これらの問
題を解決するため、研磨液の組成を最適に設計し、さら
には、CMPの各段階で組成の異なる数種類の研磨液を
併用するといったことが行われている。すなわち、CM
P研磨液は、研磨対象となる膜の種類に対応して研磨速
度が適切になるように高度に組成が制御されているので
ある。したがって、研磨液の組成がわずかに変動した場
合でも、銅膜、バリアメタル膜、層間絶縁膜の各膜に対
する研磨速度がそれぞれ変動し、ディシングやエロージ
ョンの防止効果が失われることとなる。ディシングやエ
ロージョンが顕著となると、エレクトロマイグレーショ
ン耐性の低下や層間接続プラグのコンタクト抵抗の増
大、あるいは、配線構造の平坦性の悪化等、種々の問題
を引き起こすこととなる。以上のことから、メタルCM
Pにおいては、研磨液の組成を一定に維持することが特
に重要となる。
【0017】以上のように、半導体装置の製造における
ウェーハ洗浄やレジスト剥離、CMPプロセスにおいて
は、使用する薬液を高い精度で制御、管理することが特
に重要な技術的課題となっており、薬液の組成乃至薬液
性能を一定に維持するため、種々の検討がなされてい
る。ところが、過酸化水素濃度測定に関し、上記の目的
を達成するような高水準の測定技術は見出されていない
のが現状であり、過酸化水素濃度を迅速、正確、かつ安
定的に測定する技術が強く求められていた。加えて、レ
ジスト剥離液や洗浄液の使用に関しては、処理温度を5
0℃以上とする場合が多く、高温下での測定の安定性も
要求される。従来の過酸化水素定量電極を用いた電気化
学的な測定では、充分な高温下安定性は得られておら
ず、この点でも改善の余地を有していた。
【0018】以上、半導体装置の製造におけるプロセス
上の課題について述べたが、食品製造の分野において
も、測定精度および測定の安定性に関し、改善が求めら
れていた。食品製造の消毒工程や殺菌工程では、過酸化
水素を含む薬液が使用される。この薬液中の過酸化水素
濃度は厳密に制御、管理することが必要となる。ところ
が、食品中に含まれるタンパク質等は電極に付着しやす
いため、測定精度が低下し、特に長期使用時において感
度が著しく低下することがあった。また、従来技術にお
いては良好な制限透過性を示す制限透過膜が見出されて
おらず、このため、充分に広い測定レンジを得ることは
困難であり、特に高濃度の過酸化水素を測定することが
困難であった。
【0019】本発明は上記事情に鑑みなされたものであ
って、測定精度が高く、良好な応答性を有するととも
に、長期使用に対する耐久性および高温安定性が良好で
あって広範囲の使用条件下において測定可能な過酸化水
素電極およびこれを用いたセンサ、測定器を提供するこ
とを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明によれば、絶縁基板上に設けられた電極と、該電極の
少なくとも一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透過
層は、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なく
ともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント
基が結合したポリマーから主としてなることを特徴とす
る過酸化水素電極が提供される。
【0021】すなわち本発明の過酸化水素電極は、絶縁
基板上に設けられた電極(電極層)と、この電極上に設
けられた種々の機能を有する複数の層からなっている。
制限透過層は電極の少なくとも一部を覆うように形成さ
れるが、望ましくは、制限透過層が電極の大面積部分を
覆う形態とする。電極の形態は、通常、図1のように側
面よりも上面が大面積部分となる形態となるが、この場
合、少なくとも電極上部に制限透過層を形成することが
望ましい。
【0022】本発明の過酸化水素電極は、電極(電極
層)表面に過酸化水素が到達した際に流れる酸化電流を
測定することによって過酸化水素濃度を検出・定量する
ものである。制限透過層は電極表面へ到達する過酸化水
素の量を制限する役割を果たす。本発明の電極は制限透
過層を上記のような特定構造のポリマーによって構成さ
れているため、良好な制限透過性が得られ、高濃度の過
酸化水素を測定することが可能となり測定レンジが拡大
する。
【0023】上記制限透過層を構成するポリマーは、フ
ルオロアルキレンブロック(フルオロアルキレン単位)
を含有するペンダント基を有している。このため、スラ
リーや有機酸等の汚染物質の付着が抑制され、長期使用
した場合にも安定した出力特性を示す過酸化水素電極が
得られる。またフルオロアルキレンはほとんどの非フッ
素系溶剤や界面活性剤等の洗浄剤に溶けることがないた
め、耐薬品性の良好な過酸化水素電極が得られる。さら
に、100℃程度の温度下でも、電極が損傷することな
く、安定して測定することが可能である。
【0024】また、このポリマーはフッ素を含まないビ
ニル系重合体を主鎖とするため、他の有機高分子層との
密着性が良好である。このため、電極表面と制限透過層
との間に間隙が生じることがない。したがって、応答速
度の迅速化、および洗浄に要する時間の短縮化を図るこ
とができる。また、密着性が良好なために、層構造の耐
久性が向上し、100℃程度の温度にも耐え、長期使用し
た場合にも損傷の起こりにくい過酸化水素電極が得られ
る。ここで、上記フルオロアルキレンブロックを含有す
るペンダント基以外に、他の適当な側鎖、官能基が結合
していてもよい。たとえば−OH基、−COOH基等の
適度な極性を有する官能基を有することによって、電極
や他の有機高分子層との密着性をさらに高めることがで
きる。
【0025】さらに上記制限透過層を構成するポリマー
は、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくと
もフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基
が結合した特有の構造を有しているため、高濃度の過酸
化水素を無希釈で直接測定でき、測定濃度範囲を大幅に
拡大することができる。また、制限透過性が良好なため
制限透過層の層厚を薄くすることが可能となり、たとえ
ば0.1μm以下の層厚とすることができる。このた
め、応答速度の迅速化、および洗浄に要する時間の短縮
化を図ることができる。上記制限透過層は、ディップ
法、スピンコート法、スプレー法等の簡単な工程で均質
な薄膜を製造することが可能であり、量産性にも優れて
いる。
【0026】また本発明によれば、絶縁基板上に設けら
れた電極と、該電極の少なくとも一部を覆う制限透過層
とを有し、該制限透過層は、ポリカルボン酸(A)のフ
ルオロアルコールエステルから主としてなることを特徴
とする過酸化水素電極が提供される。
【0027】また本発明によれば、絶縁基板上に設けら
れた電極と、該電極の少なくとも一部を覆う制限透過層
とを有し、該制限透過層は、ポリカルボン酸(A)のフ
ルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)の
アルキルアルコールエステルとを含んでなることを特徴
とする過酸化水素電極が提供される。
【0028】さらに本発明によれば、絶縁基板上に設け
られた電極と、該電極の少なくとも一部を覆う制限透過
層とを有し、該制限透過層は、アルキルアルコールエス
テル基およびフルオロアルコールエステル基を有するポ
リカルボン酸エステル化合物から主としてなることを特
徴とする過酸化水素電極が提供される。
【0029】これらの過酸化水素電極は、絶縁基板上に
設けられた電極(電極層)と、この電極上に設けられた
種々の機能を有する複数の層からなっている。制限透過
層は電極の少なくとも一部を覆うように形成されるが、
望ましくは、制限透過層が電極の大面積部分を覆う形態
とする。電極の形態は、通常、図1のように側面よりも
上面が大面積部分となる形態となるが、この場合、少な
くとも電極上部に制限透過層を形成することが望まし
い。
【0030】本発明の過酸化水素電極は、電極(電極
層)表面に過酸化水素が到達した際に流れる酸化電流を
測定することによって過酸化水素濃度を検出・定量する
ものである。制限透過層は電極表面へ到達する過酸化水
素の量を制限する役割を果たす。本発明の電極は制限透
過層を上記のように特定構造のポリマーによって構成さ
れているため、良好な制限透過性が得られ、高濃度の過
酸化水素を測定することが可能となり測定レンジが拡大
する。
【0031】上記過酸化水素電極は、制限透過層の構成
材料としてポリカルボン酸のフルオロアルコールエステ
ルを用いている。ここで、ポリカルボン酸のフルオロア
ルコールエステルとは、ポリカルボン酸のカルボキシル
基の一部、または全部をフルオロアルコールでエステル
化したものである。またフルオロアルコールとはアルコ
ール中の水素のすべて、または少なくとも一つをフッ素
に置き換えたものである。
【0032】上記制限透過層の構成材料は、フルオロア
ルコールエステル基を有するため、スラリーや有機酸等
の汚染物質の付着が抑制され、長期使用した場合にも安
定した出力特性を示す過酸化水素電極が得られる。また
フルオロアルコールエステル基はほとんどの非フッ素系
溶剤や界面活性剤等の洗浄剤に溶けることがないため、
耐薬品性の良好な過酸化水素電極が得られる。さらに、
100℃程度の温度条件下においても、損傷を受けること
なく安定した出力を示す過酸化水素電極が得られる。
【0033】これらの過酸化水素電極は、制限透過層に
ポリカルボン酸主鎖を有するポリマーを用いている。ま
た、この主鎖に対してフルオロアルコールがエステル基
を介して結合している。電極との密着性が良好であり、
電極表面に形成された制限透過層との間に間隙が生じる
ことがない。したがって、応答速度の迅速化、および洗
浄に要する時間の短縮化を図ることができる。また、密
着性が良好なために、層構造の耐久性が向上し、長期使
用した場合にも損傷の起こりにくい過酸化水素電極が得
られる。ここで上記ポリカルボン酸からなる主鎖に対
し、フルオロアルコールエステル基以外の適当な官能基
が結合していてもよい。適度な極性を有する官能基を有
することによって、隣接する固定化酵素層等の他の有機
高分子層との密着性をさらに高めることができる。
【0034】さらに、上記制限透過層を構成するポリマ
ーは、ポリカルボン酸のカルボキシル基の一部または全
部がフルオロアルコールによりエステル化された特有の
構造を有しているため、たとえば過酸化水素センサ等に
用いた場合、測定濃度範囲を大幅に拡大することができ
る。また、制限透過性が良好なため制限透過層の層厚を
薄くすることが可能となる。たとえば、0.1μm以下
の層厚とすることができる。このため、応答速度の迅速
化、および洗浄に要する時間の短縮化を図ることができ
る。
【0035】なお上記制限透過層は、ディップ法、スピ
ンコート法、スプレー法等の簡単な工程で均質な薄膜を
製造することが可能であり、量産性にも優れている。
【0036】また、制限透過層を、(i)ポリカルボン酸
(A)のフルオロアルコールエステルと、ポリカルボン
酸(B)のアルキルアルコールエステルとを含んでなる
構成、あるいは(ii)アルキルアルコールエステル基およ
びフルオロアルコールエステル基を有するポリカルボン
酸エステル化合物から主としてなる構成とした場合、上
述の効果に加え、高温時の安定性が良好になるという利
点が得られる。過酸化水素電極は比較的高温下(たとえ
ば60℃程度)で保管・使用されることがある。上記構
成の制限透過層を備えた過酸化水素電極は、高温下に放
置しても測定感度がほとんど変化せず、安定性に優れて
いる。
【0037】以上述べた本発明の過酸化水素電極におい
て、電極と制限透過層とは、直接、接するように形成さ
れていてもよいし、これらの間に他の層が介在してもよ
い。たとえば、電極と制限透過層の間にシランカップリ
ング剤から主としてなる結合層を有する構成としたり、
この結合層と制限透過層との間にパーフルオロカーボン
骨格を有するイオン交換樹脂から主としてなるイオン交
換樹脂層を有する構成とすることもできる。同様に、こ
れらの間に他の層が介在してもよい。
【0038】なお、本発明の過酸化水素電極は、測定試
料中に含まれる過酸化水素を直接定量するものであり、
バイオセンサ等に用いられる酵素電極とは異なるもので
ある。酵素電極は、グルコース等の測定対象となる成分
を酵素によって過酸化水素に変換し、この過酸化水素を
定量することによってグルコース等の測定対象成分の濃
度を定量するものである。本発明の過酸化水素電極は、
このような酵素電極とは以下の点で相違する。 (i)酵素電極は測定試料中のグルコース等の特定成分を
測定対象とするのに対し、本発明の過酸化水素電極は測
定試料中の過酸化水素を測定対象とする。 (ii)酵素電極では上記酵素を含む層が必須となるが、本
発明の過酸化水素電極ではこのような酵素を含む層は不
要であり、むしろ測定感度、応答性を低下させる要因と
なることからこのような層を有しないことが好ましい。
【0039】また本発明によれば、上記の過酸化水素電
極を作用極として用いた過酸化水素センサが提供され
る。この過酸化水素センサは過酸化水素電極表面に上述
した特有の構造を有するポリマーからなる制限透過層を
設けているため、測定精度、応答性、高温安定性および
長期使用安定性に優れ、広範囲な測定条件下で使用する
ことが可能である。
【0040】さらに本発明によれば、上記過酸化水素セ
ンサを用いた種々の測定器が提供される。すなわち、本
発明によれば、上記過酸化水素センサと、該過酸化水素
センサから得られた電気信号を報知するデータ報知部と
を有してなることを特徴とする測定器が提供される。
【0041】また、上記過酸化水素センサと、該過酸化
水素センサから電気信号を得る電気化学測定回路部と、
該電気信号をもとに測定値を算出するデータ処理部と、
該測定値を報知するデータ報知部とを有してなることを
特徴とする測定器が提供される。 これらの測定器は、
特定構造の作用極を具備する過酸化水素センサを有して
いるため、高温安定性および長期安定性に優れ、広範囲
な測定条件下で使用することが可能である。その上、操
作方法が簡便であり、装置に不慣れな人でも簡単に取り
扱うことができる。
【0042】また本発明によれば、絶縁基板上に電極を
形成する工程と、該電極に直接、または他の層を介し
て、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少なくと
もフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基
が結合したポリマーを含む液を塗布した後、乾燥させ、
制限透過層を形成する工程とを含むことを特徴とする過
酸化水素電極の製造方法が提供される。
【0043】この過酸化水素電極の製造方法は、上記の
ような特定構造のポリマーを含む液を塗布・乾燥するこ
とにより制限透過層を形成する。このため、繰り返し測
定時における安定性、隣接する層との密着性、耐久性、
制限透過性等に優れる制限透過層を、良好な膜厚制御性
で形成することができる。また、上記の液は低粘度であ
るので、制限透過層を容易に薄い膜厚で形成することが
できる。具体的には、乾燥後において0.01〜3μm
の制限透過層を良好に形成することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】本発明において、「過酸化水素電
極」とは試料中の過酸化水素濃度を測定するための電極
であって、電極の上に制限透過層が設けられた構成を有
するものをいう。「過酸化水素センサ」は、上記過酸化
水素電極を含む素子部分をいうものとし、必要に応じ
て、対極、参照極を含むものとする。また、本発明にお
ける「測定器」とは、上記過酸化水素センサを含むシス
テムをいい、過酸化水素センサから得られた電気信号を
報知したり処理を行う種々の手段を備えたものをいう。
以下、本発明に係る過酸化水素電極、過酸化水素セン
サ、および測定器について詳細に説明する。 本発明の
過酸化水素電極は、測定対象中の過酸化水素の有無を判
断したり、測定対象中の過酸化水素濃度を定量すること
に用いられるが、過酸化水素定量用電極として用いた場
合に特に効果的である。本発明の過酸化水素電極は、高
い測定感度、広い測定レンジを有するからである。
【0045】本発明に係る第一の過酸化水素電極は、絶
縁基板上に設けられた電極と、該電極の少なくとも一部
を覆う制限透過層とを有し、該制限透過層は、フッ素を
含まないビニル系重合体に対し、少なくともフルオロア
ルキレンブロックを含有するペンダント基が結合したポ
リマーから主としてなることを特徴とする。
【0046】「主としてなる」とは、上記ポリマーが制
限透過層を構成する主成分となっていることをいい、た
とえば、制限透過層に対する上記ポリマーの含有率が5
0質量%以上であることをいう。
【0047】ここで、「フッ素を含まないビニル系重合
体」は、電極との密着性を良好にする役割を有する部分
であるから、特に構造の制限はないが、フッ素を含むも
のであってはならない。ペンダント基を除く重合体部分
にフッ素を含むと、電極や他の有機高分子層との密着性
が低下し、溶液の調整が困難となり、制限透過層を薄膜
として形成することが困難になる。
【0048】フッ素を含まないビニル系重合体は、炭素
−炭素結合からなる主骨格を有する重合体であり、好ま
しい例としては、不飽和炭化水素、不飽和カルボン酸、
および不飽和アルコールからなる群より選ばれた一種以
上のモノマーの単独重合体または共重合体が挙げられ
る。このうち特にポリカルボン酸が好ましい。このよう
な重合体を選択することによって、電極や他の有機高分
子層との密着性が特に良好となり、耐久性に優れる制限
透過層を得ることができる。また、ビニル系重合体に対
し、フルオロアルキレンブロックがエステル基を介して
結合していることが好ましい。エステル基は適度な極性
を有しているため、電極や他の有機高分子層との密着性
がより向上する。例として、ポリメタクリル酸1H,1
H−パーフルオロオクチルやポリアクリル酸1H,1
H,2H,2H−パーフルオロデシルなどが挙げられ
る。 フルオロアルキレンブロックを含有するペンダン
ト基とは、フルオロアルキレンを構成単位として含有す
るペンダント基をいう。フルオロアルキレンとは、アル
キレン基の水素の一部または全部をフッ素で置換したも
のをいう。ペンダント基のフッ素含有率、すなわち、ペ
ンダント基中に含まれるフッ素原子数をx、ペンダント
基中に含まれる水素原子数をyとしたときのx/(x+
y)の値は、好ましくは0.3〜1、さらに好ましくは
0.8〜1とする。このようにすることによって制限透
過層に対する汚染物質の付着が抑制され、また、良好な
制限透過性が得られる。 ペンダント基の炭素数は、好
ましくは3〜15、さらに好ましくは5〜10、もっと
も好ましくは8〜10とする。このようにすることによ
って、ペンダント基の長さが適度となって良好な製膜性
と制限透過性が得られ、電極や隣接する高分子層との密
着性も良好に維持される。
【0049】ビニル系重合体に対するペンダント基の結
合率、すなわちペンダント基の含有率は特に制限がな
く、他の高分子層材料や用途に応じて適宜な値とするこ
とができる。たとえば、0.1〜30%とする。このよ
うに撥水性を有するペンダント基の含有比率を適度な範
囲とすることで、良好な制限透過性と、電極や隣接する
高分子層に対する良好な密着性が得られる。ここでペン
ダント基の結合率とは、ビニル系重合体の主骨格となる
炭素−炭素結合に結合するすべての基に対するペンダン
ト基の占める割合をいう。たとえば、主鎖となるビニル
系重合体がポリアクリル酸であって、−COOH基の1
0%がエステル化されペンダント基となっている場合
は、−COOH基の結合率25%にエステル化率10%
を乗じて得られる2.5%がペンダント基の結合率とな
る。
【0050】制限透過層を構成するポリマーの分子量
は、好ましくは1000〜50000、さらに好ましく
は3000〜30000とする。分子量が大きすぎると
溶液の調整が困難となり、制限透過層の薄層化が困難と
なる。分子量が小さすぎると充分な制限透過性が得られ
ない。なお、ここでいう分子量とは数平均分子量をい
い、たとえばGPC(ゲル・パーミエーション・クロマ
トグラフィ)で測定することができる。
【0051】本発明に係る第二の過酸化水素電極は、絶
縁基板上に設けられた電極と、該電極の少なくとも一部
を覆う制限透過層とを有し、該制限透過層は、ポリカル
ボン酸(A)のフルオロアルコールエステルから主とし
てなることを特徴とする。なお、「主としてなる」と
は、上記ポリマーが制限透過層を構成する主成分となっ
ていることをいい、たとえば、制限透過層に対する上記
ポリマーの含有率が50質量%以上であることをいう。
【0052】また、本発明に係る第三の過酸化水素電極
は、絶縁基板上に設けられた電極と、該電極の少なくと
も一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透過層は、ポ
リカルボン酸(A)のフルオロアルコールエステルと、
ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコールエステルと
を含んでなることを特徴とする。
【0053】また、本発明に係る第四の過酸化水素電極
は、絶縁基板上に設けられた電極と、該電極の少なくと
も一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透過層は、ア
ルキルアルコールエステル基およびフルオロアルコール
エステル基を有するポリカルボン酸エステル化合物から
主としてなることを特徴とする。なお、「主としてな
る」とは、上記ポリマーが制限透過層を構成する主成分
となっていることをいい、たとえば、制限透過層に対す
る上記ポリマーの含有率が50質量%以上であることを
いう。
【0054】ポリカルボン酸(A)、(B)および上記
ポリカルボン酸エステル化合物を構成するポリカルボン
酸は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン
酸等のカルボン酸を構成単位を有する重合体をいう。た
とえばポリメタクリル酸、ポリアクリル酸またはこれら
の共重合体等が挙げられる。ポリカルボン酸(A)とポ
リカルボン酸(B)は、同種のものであっても異種のも
のであってもよい。
【0055】フルオロアルコールエステル基中に含まれ
るフッ素原子数をx、水素原子数をyとしたときに、x
/(x+y)で表される前記フルオロアルコールエステ
ル基のフッ素含有率は、好ましくは0.3〜1、さらに
好ましくは0.8〜1とする。このようにすることによ
って制限透過層に対する汚染物質の付着が抑制され、ま
た、良好な制限透過性が得られる。
【0056】フルオロアルコールエステルを構成するフ
ルオロアルコールの炭素数は、好ましくは3〜15、さ
らに好ましくは5〜10、もっとも好ましくは8〜10
とする。このようにすることによって、ペンダント基の
長さが適度となって良好な製膜性と制限透過性が得ら
れ、電極や隣接する高分子層との密着性も良好に維持さ
れる。 ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステル
のエステル化率は特に制限がなく、他の高分子層材料や
用途に応じて適宜な値とすることができる。たとえば、
0.1〜30%とする。エステル化率とは、主鎖のポリ
アクリル酸の有するカルボキシル基がエステル化された
割合をいう。エステル化率を上記の範囲とすることで、
撥水性を有するフルオロアルコールエステル基の含有率
が適度となり、良好な制限透過性、電極および隣接高分
子層に対する良好な密着性が得られる。
【0057】本発明において、前記フルオロアルコール
エステルを構成するフルオロアルコールは、一級アルコ
ールであることが好ましい。制限透過層に対する汚染物
質の付着が効果的に抑制され、また、酸、アルカリ、各
種有機溶媒に対する高い耐薬品性が得られるからであ
る。たとえばポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオ
ロオクチルやポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−
パーフルオロデシルを好ましく用いることができる。
【0058】制限透過層を、ポリカルボン酸(A)のフ
ルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)の
アルキルアルコールエステルとを含んでなる構成、ある
いは、アルキルアルコールエステル基およびフルオロア
ルコールエステル基を有するポリカルボン酸エステル化
合物から主としてなる構成とすると、高温安定性の良好
な過酸化水素電極が得られる。
【0059】「フルオロアルコールエステル」の好まし
い形態については上述したとおりである。
【0060】アルキルアルコールエステル部分のアルキ
ルアルコールとは、Cnn+2OH−(nは自然数)で表
される鎖状または環状のアルコールをいう。nは1以上
の整数であるが、好ましくは2〜10、より好ましくは
4〜8、最も好ましくは6である。たとえば、ヘキシル
基、シクロヘキシル基等が好ましく用いられる。このよ
うにすれば、過酸化水素電極を高温下に放置した場合の
安定性がさらに良好となる。
【0061】制限透過層を、ポリカルボン酸(A)のフ
ルオロアルコールエステルと、ポリカルボン酸(B)の
アルキルアルコールエステルとを含んでなる構成とする
場合、制限透過層に対するポリカルボン酸(A)のフル
オロアルコールエステルの含有率は、好ましくは50〜
99質量%、より好ましくは75〜99質量%、最も好
ましくは80〜95質量%とする。含有率が低すぎると
制限透過層の耐久性が低下する場合がある。また含有率
が高すぎると高温下に放置した際の安定性が充分に得ら
れない場合がある。一方、ポリカルボン酸(B)のアル
キルアルコールエステルの制限透過層に対する含有率
は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜2
5質量%、最も好ましくは5〜20質量%とする。含有
率が低すぎると高温下に放置した際の安定性が充分に得
られない場合がある。また含有率が高すぎると制限透過
層の耐久性が低下する場合がある。なお、ポリカルボン
酸(B)のアルキルアルコールエステルとは、ポリカル
ボン酸(B)の少なくとも一部が、上記アルキルアルコ
ールによりエステル化されてなるものであり、好ましい
例としてポリメタクリル酸シクロヘキシルが挙げられ
る。
【0062】アルキルアルコールエステル基およびフル
オロアルコールエステル基を有するポリカルボン酸エス
テル化合物を用いて制限透過層を構成する場合、各エス
テル基の好ましい形態は上述したとおりであり、その組
み合わせとして種々の形態のものを採用することができ
る。アルキルアルコールエステル基とフルオロアルコー
ルエステル基の比率は特に制限がないが、上記エステル
化合物中のフルオロアルコールエステル基の数をa、ア
ルキルアルコールエステル基の数をbとしたときのa/
bの値は、好ましくは50/50〜99/1、より好ま
しくは75/25〜99/1、最も好ましくは80/2
0〜95/5とする。
【0063】このようなポリカルボン酸エステル化合物
の例として、たとえば下記式(1)に示す繰り返し単位
を有する化合物が挙げられる。COO−R基をポリメタ
クリル酸シクロヘキシルとすれば、特に高温安定性が良
好となる。また、制限透過性も良好となる。
【0064】
【化1】 (nは2以上の整数、Xは0以上の整数、Yは1以上の
整数を示す。) このような化合物として、メタクリル酸1H,1H−パ
ーフルオロオクチルとメタクリル酸シクロヘキシルの共
重合体、あるいは、アクリル酸1H,1H,2H,2H
−パーフルオロデシルとメタクリル酸シクロヘキシルの
共重合体等が挙げられる。たとえば下記式(2)のよう
な、アクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロ
デシルとメタクリル酸シクロヘキシルの繰り返し単位を
有する化合物が好ましく用いられる。
【0065】
【化2】 (nは2以上の整数を示す。) 以上のような共重合体を用いれば、高温安定性が特に良
好となる上、制限透過性層等他の特性も良好となる。
【0066】以上述べたように、本発明の過酸化水素電
極の制限透過層は特定構造のポリマーにより構成される
が、構造や分子量の異なる2種以上のポリマーの混合物
により構成されていてもよい。
【0067】以上述べた過酸化水素電極において、制限
透過層を構成するポリカルボン酸(A)のフルオロアル
コールエステルおよびアルキルアルコールエステル基お
よびフルオロアルコールエステル基を有するポリカルボ
ン酸エステル化合物の分子量は、好ましくは1000〜
50000、さらに好ましくは3000〜30000と
する。分子量が大きすぎると溶液の調整が困難となり、
制限透過層の薄層化が困難となることがある。分子量が
小さすぎると充分な制限透過性が得られない場合があ
る。なお、ここでいう分子量とは数平均分子量をいう。
【0068】以上述べた過酸化水素電極において、制限
透過層の厚みは、好ましくは0.01〜3μm、さらに
好ましくは0.01〜1μm、最も好ましくは0.01
〜0.1μmとする。このような厚みとすることで、応
答速度の向上および洗浄時間の短縮化を図ることができ
る。
【0069】本発明の過酸化水素定量用センサの例を図
4に示す。この例では、作用極7として過酸化水素電極
を用い、石英基板上にさらに対極8と参照極9とを備え
た構造となっている。作用極7および対極8は白金電極
であり、参照極9は銀/塩化銀電極である。作用極7の
上部にγ−アミノプロピルトリエトキシシランを主成分
とする結合層4、メタクリル酸樹脂のフルオロアルコー
ルエステル層からなる制限透過層3が順次形成されてい
る。作用極7、対極8、参照極9はそれぞれ測定系に電
気的に接続されている。
【0070】上記の過酸化水素センサでは、同一の絶縁
基板1上に作用極、対極および参照極が設けられていた
が、これらを異なる基板上に形成してもよい。このよう
な過酸化水素センサの例を図5および図6に示す。図5
の過酸化水素センサでは、それぞれ異なる絶縁基板1上
に作用極7、対極8および参照極9が形成されている。
作用極7上には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラ
ンを主成分とする結合層4、メタクリル酸樹脂のフルオ
ロアルコールエステル層からなる制限透過層3が順次形
成されている。図6の過酸化水素センサでは、同一の絶
縁基板1上に作用極7と対極8を形成し、他の絶縁基板
1上に参照極9が形成されている。作用極7および対極
8上には、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを主
成分とする結合層4、メタクリル酸樹脂のフルオロアル
コールエステル層からなる制限透過層3が順次形成され
ている。なお、図ではアンペロメトリックタイプのセン
サの例を示したが、本発明の過酸化水素電極は、イオン
感受性電界効果型トランジスタタイプのセンサにも適用
できることはいうまでもない。
【0071】本発明に係る過酸化水素センサは、測定精
度が高く、良好な応答性を有するとともに、長期使用に
対する耐久性が良好であって、広範囲の使用条件下にお
いて測定可能であるため、このような性能が要求される
種々の用途に好適に使用される。 たとえば半導体装置
の製造におけるウェーハの洗浄液、レジスト剥離液、C
MP研磨液等の薬液の組成の制御、管理に好ましく用い
ることができる。これらの用途に用いた場合、従来にな
い高精度、迅速な応答性で過酸化水素濃度の測定が可能
となるため、必要な過酸化水素を速やかに、かつ正確に
補充することが可能となる。このため、従来技術に比
し、格段に優れた精度で薬液組成、薬液性能を一定に維
持することが可能となり、複数枚のウェーハ処理を行っ
た場合におけるバッチ毎の洗浄、レジスト剥離あるいは
研磨のばらつきを効果的に低減できる。また、薬液を総
交換する頻度を低減できるため、薬液コストを大幅に低
減できることができる。特に、CMP研磨液の組成の制
御、管理に用いた場合、ディッシングやエロージョンと
いった現象を安定的に防止することができ、また、これ
らの現象に関するバッチ間のばらつきを有効に低減する
ことができる。さらに、レジスト剥離液やウェーハ洗浄
液に用いた場合、これらの薬液を通常用いる温度領域、
たとえば40℃以上の温度領域でも安定的に測定できる
という利点が得られる。本発明のセンサは、高温下にお
いて安定的に測定可能だからである。
【0072】本発明の測定器は過酸化水素センサが着脱
自在に設けられていることが好ましい。過酸化水素電極
が破損もしくはした場合に、容易に交換できる構造とす
ることが望ましいからである。ここで、過酸化水素セン
サの部分のみが着脱自在になっている形態のほか、過酸
化水素センサと他の部分とを接続する配線や、過酸化水
素センサを含む部分が着脱自在になっている形態であっ
てもよい。たとえば図7(a)の構成の測定器におい
て、過酸化水素センサ10と電気化学測定回路部11と
の間の配線14が着脱自在になっていてもよく、また、
過酸化水素センサ10、配線14、および電気化学測定
回路部11からなる部分が着脱自在になっていてもよ
い。 本発明の測定器におけるデータ処理部は、過酸化
水素センサから得られた電気信号をもとに測定値を算出
する機能を有しており、たとえば、上記電気信号をアナ
ログ信号および/またはデジタル信号に変換し、測定値
を算出するという形態で動作する。
【0073】本発明の過酸化水素電極の製造方法は、絶
縁基板上に電極を形成する工程と、該電極に直接、また
は他の層を介して、フッ素を含まないビニル系重合体に
対し、少なくともフルオロアルキレンブロックを含有す
るペンダント基が結合したポリマーを含む液を塗布した
後、乾燥させ、制限透過層を形成する工程とを含むこと
を特徴とするものである。「フッ素を含まないビニル系
重合体に対し、少なくともフルオロアルキレンブロック
を含有するペンダント基が結合したポリマー」の好まし
い実施形態等については、本発明に係る第一乃至第四の
過酸化水素電極についての説明の部分で述べたのと同様
であり、たとえば、ポリカルボン酸のフルオロアルコー
ルエステルが例示され、ポリメタクリル酸1H,1H−
パーフルオロオクチル、ポリアクリル酸1H,1H,2
H,2H−パーフルオロデシル、あるいは、メタクリル
酸1H,1H−パーフルオロオクチルとメタクリル酸シ
クロヘキシルの共重合体、アクリル酸1H,1H,2
H,2H−パーフルオロデシルとメタクリル酸シクロヘ
キシルの共重合体等が挙げられる。
【0074】以下、図面を参照して本発明の実施形態に
ついてさらに説明する。
【0075】(第1の実施の形態)本実施形態について
図1を参照して説明する。本実施形態の過酸化水素電極
は、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2が設け
られ、そして、その上に、メタクリル酸樹脂のフルオロ
アルコールエステル層からなる制限透過層3が順次形成
されている。
【0076】絶縁性基材1の材料としては、セラミック
ス、ガラス、石英、プラスチック等の絶縁性の高い材料
から主としてなるものを用いることができる。耐水性、
耐熱性、耐薬品性および電極との密着性に優れた材料で
あることが好ましい。
【0077】電極2の材料としては、たとえば白金、
金、銀、炭素等から主としてなるものを用いることがで
き、このうち耐薬品性および過酸化水素の検出特性に優
れた白金が好ましく用いられる。絶縁性基材1上の電極
2は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真
空蒸着法、ケミカル・ベーパー・ディポジッション法、
電解法等により形成することができ、このうちスパッタ
リング法が望ましい。絶縁性基材1との密着性が良好で
あり、かつ、白金層を容易に形成できるからである。ま
た、絶縁性基材1と電極2の密着性を改善するために、
これらの間にチタン層やクロム層などを挟んでも良い。
【0078】制限透過層3を構成するメタクリル酸樹脂
のフルオロアルコールエステルとは、メタクリル酸樹脂
の一部、または全部をフルオロアルコールでエステル化
され、前記フルオロアルコールとはアルコール中の水素
のすべて、または少なくとも一つをフッ素に置き換えら
れたものである。たとえばポリメタクリル酸1H,1H
−パーフルオロオクチルやポリアクリル酸1H,1H,
2H,2H−パーフルオロデシルを用いることができ
る。なお、本発明においては、たとえばポリメタクリル
酸1H,1H−パーフルオロオクチルは、メタクリル酸
の一部または全部が1H,1H−パーフルオロオクチル
アルコールによりエステル化された重合体をいうものと
する。
【0079】この制限透過層3は、パーフルオロヘキサ
ン等のパーフルオロカーボンの溶媒で希釈したメタクリ
ル酸樹脂のフルオロアルコールエステル溶液を、電極2
上に滴下してスピンコート法により形成することができ
る。
【0080】溶液中のメタクリル酸樹脂フルオロアルコ
ールエステル濃度は、測定対象物質にもよるが、0.1
〜5質量%とすることが好ましく、0.3質量%程度と
することがさらに好ましい。この範囲とすることにより
良好な制限透過性が発現するからである。
【0081】なお制限透過層3の形成方法については、
均一な厚さの層が得られる方法であれば制限がなく、ス
ピンコート法以外にもスプレーコート法やディップ法な
ども用いることができる。
【0082】本実施形態の過酸化水素電極を過酸化水素
センサの構成部材として使用する場合、最外層の制限透
過層3が過酸化水素の拡散速度を制限し、過酸化水素が
電極2に到達した際の酸化電流を測定して過酸化水素の
濃度を知ることができる。測定時の電極系は、2極法の
場合には外部から既存の参照極を使用し、3極法の場合
は対極、参照極の両方を測定溶液中に同時に浸漬する。
【0083】(第2の実施の形態)次に、本実施形態に
ついて図2を参照して説明する。本実施形態の過酸化水
素電極は、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2
が設けられ、その上にγ−アミノプロピルトリエトキシ
シランから主としてなる結合層4が形成されている。そ
して、さらにその上にメタクリル酸樹脂のフルオロアル
コールエステル層からなる制限透過層3が順次形成され
ている。
【0084】電極2上に形成された結合層4は、その上
の制限透過層3と、絶縁性基材1および電極2との密着
性(結合力)を向上させる。また、絶縁性基材1の表面
のぬれ性を改善し、制限透過層3の膜厚の均一性を向上
させる効果もある。結合層4はシランカップリング剤か
ら主としてなる。シランカップリング剤の種類として
は、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシランが挙
げられるが、このうち、密着性、選択透過性の観点か
ら、アミノシランの一種であるγ−アミノプロピルトリ
エトキシシランが好ましい。結合層4は、例えばシラン
カップリング剤溶液をスピンコートすることにより形成
することができる。この際、シランカップリング剤濃度
は、1v/v%(体積/体積%)程度とすることが好まし
い。この濃度で充分な密着性が得られるためである。
【0085】(第3の実施の形態)次に、本実施形態に
ついて図3を参照して説明する。本実施形態の過酸化水
素電極は、絶縁基板1上に作用極として機能する電極2
が設けられ、その上にγ−アミノプロピルトリエトキシ
シランから主としてなる結合層4が形成されている。そ
して、さらにその上にパーフルオロカーボンスルホン酸
樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層
5、メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル層
からなる制限透過層3が順次形成されている。
【0086】パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナ
フィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層6は、純水
で50%に希釈したエタノールに溶解させて調製したパ
ーフルオロカーボンスルホン酸樹脂をγ−アミノプロピ
ルトリエトキシシランからなる結合層3上に滴下し、ス
ピンコート法で形成される。溶媒としては、たとえばイ
ソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコー
ルが用いられる。滴下するパーフルオロカーボンスルホ
ン酸樹脂の濃度は、好ましくは1〜10w/v%、さらに好
ましくは5〜7w/v%とする。このような範囲とすること
により、過酸化水素の電極反応に干渉する物質の影響を
排除する効果が顕著となるからである。
【0087】(第4の実施の形態)次に、本実施形態に
ついて図面を参照して説明する。本実施形態の過酸化水
素電極は、図4に示すように、絶縁基板1上に作用極
7、対極8および参照極9が設けられ、その上にγ−ア
ミノプロピルトリエトキシシランから主としてなる結合
層4が形成されている。そして、さらにその上に、メタ
クリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル層からなる
制限透過層3が順次形成されている。作用極7及び対極
8の材料は、第1及び第2の実施形態における電極2と
同様のものであればよい。参照極9の材料は銀/塩化銀
が用いられる。
【0088】このような構成とすると、作用極、対極、
参照極が一つの絶縁基板上に形成されるため、3極法に
よる正確な電気化学測定が可能になり、特に微小な電流
検出型の過酸化水素電極を実現することが可能になる。
さらに、第2の実施の形態と同様にして、結合層4と制
限透過層3との間にパーフルオロカーボンスルホン酸樹
脂からなるイオン交換樹脂層5を形成することも可能で
ある。
【0089】(第5の実施の形態)本実施形態は、本発
明に係る過酸化水素電極の製造方法の一例を示すもので
ある。
【0090】まず石英からなる基板上に、白金からなる
作用極と対極、および銀/塩化銀からなる参照極を形成
する。
【0091】次に各電極の表面および基板表面を洗浄す
る。洗浄方法としては、有機溶媒や酸等により洗浄する
方法や超音波洗浄器を用いて洗浄する方法を用いること
ができ、これらを併用することもできる。有機溶媒や酸
等としては、電極材料を損傷させないものが用いられ
る。有機溶媒としては極性溶媒が好ましく用いられ、ア
セトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール等の
アルコール系溶媒を用いることができる。また、酸とし
ては、希硫酸等が用いられる。このほか、電解カソード
水を用いることもできる。電解カソード水とは、純水等
を電気分解した際に陰極側に生成される液のことをい
う。電解カソード水は中性〜弱アルカリ性でありながら
高い還元性を有するため、基板や電極の損傷を抑えつ
つ、基板表面および付着粒子の表面の電位をともに負電
位とすることができ、脱離粒子の再付着を抑制すること
ができる。上記したうち、たとえば、アセトンおよび希
硫酸で順次洗浄するという方法が好ましく用いられる。
【0092】次いで、作用極、対極および参照極の表面
に結合層を形成する。前述のように、結合層を構成する
材料としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
等のシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0093】カップリング剤液等の塗布方法としては、
スピンコート法、スプレー法、ディップ法、加熱気流法
等が用いられる。スピンコート法とは、カップリング剤
等、結合層の構成材料を溶解または分散させた液をスピ
ンコーターにより塗布する方法である。この方法によれ
ば膜厚の薄い結合層を膜厚制御性良く形成することがで
きる。また、スプレー法とはカップリング剤液等を基板
に向けてスプレー噴霧する方法であり、ディップ法とは
基板をカップリング剤液等に浸漬する方法である。これ
らの方法によれば、特殊な装置を必要とせず、簡便な工
程で結合層を形成することができる。また加熱気流法と
は、基板を加熱雰囲気下に設置し、ここにカップリング
剤液等の蒸気を流動させる方法である。この方法によっ
ても膜厚の薄い結合層を膜厚制御性良く形成することが
できる。
【0094】カップリング剤液等の塗布後、乾燥を行
う。乾燥温度は特に制限がないが、通常、室温(25
℃)〜170℃の範囲で行う。乾燥時間は、温度にもよ
るが、通常は0.5〜24時間とする。乾燥は空気中で
行っても良いが、窒素等の不活性ガス中で乾燥させても
よい。たとえば、窒素を基板に吹き付けながら乾燥させ
る窒素ブロー法を用いることもできる。
【0095】結合層形成後、ポリカルボン酸のフルオロ
アルコールエステル溶液等を塗布し、制限透過層を形成
する。上記溶液の塗布方法としては、スピンコート法、
ディップ法、スプレー法、刷毛塗り法等が用いられ、こ
のうち膜厚制御性に優れるスピンコート法が好ましく用
いられる。スピンコート法を用いた場合、0.01〜3
μm程度の薄膜からなる制限透過層を制御性良く形成す
ることができる。また、基板を上記容積に浸漬するディ
ップ法により塗布を行い、次いで窒素ガスを吹き付けな
がら乾燥を行う方法としてもよい。この方法によれば、
簡便な方法で制限透過層を形成することができる。
【0096】以上のようにして、電極上に特定の機能を
有する種々の層が形成された過酸化水素電極が作製され
る。本実施形態では、作用極、対極、参照極のすべてに
対し、結合層、および制限透過層を設ける場合の例につ
いて説明したが、本発明の構成はこれに限定されず、た
とえば、作用極および対極上には結合層、制限透過層を
設け、参照極上には結合層と、参照極を保護するための
保護層とを順次積層することもできる。また、本実施形
態では作用極、対極、参照極の3極からなる過酸化水素
センサについて説明したが、白金からなる作用極と参照
極を石英基板上に設けた構成としてもよい。
【0097】(第6の実施の形態)本実施形態は、過酸
化水素センサ、電気化学測定回路部、データ処理部およ
びデータ報知部を具備した本発明の測定器の一例を示す
ものである。以下、図7(a)を参照して説明する。
【0098】この測定器は、図7(a)に示すように、
過酸化水素センサ10、電気化学測定回路部11、デー
タ処理部12およびデータ報知部13が、配線14によ
り接続された構成となっている。
【0099】過酸化水素センサ10は、たとえば、第1
から第4の実施形態で説明した過酸化水素電極を具備す
るものを用いることができる。過酸化水素センサ10は
交換が容易な脱着式とすることが好ましい。破損時には
過酸化水素センサ10のみを交換することにより、ラン
ニングコストを下げることが可能になるからである。
【0100】電気化学測定回路部11は、本実施形態で
はポテンシオスタットを用いるが、過酸化水素センサ1
0に対して定電位を印加し、電流値を測定できる回路で
あれば、特に限定されない。
【0101】データ処理部12は、パーソナルコンピュ
ータ(以下、パソコンと記述する)を用いるが、電気化
学測定回路部11からの信号を処理できるマイクロプロ
セッサ等の演算部を持つものであれば特に限定されな
い。データ処理部12で処理された信号は測定値に換算
され、データ報知部13で測定値として表示される。
【0102】データ報知部13は、本実施形態ではパソ
コン用のディスプレイを用いているが、データ処理部1
2によって処理されたデータを報知する機能を有するも
のであれば特に限定されない。データ処理部52によっ
て処理されたデータとは、データ処理部52で算出され
た測定値である。
【0103】配線54はこれらを接続できる電線であれ
ばよい。
【0104】本実施形態では、図7(a)に示すよう
に、過酸化水素センサ10、電気化学測定回路部11、
データ処理部12およびデータ報知部13が、配線14
により接続された構成としたが、図7(b)に示すよう
に、電気化学測定回路部11を設けずにデータ報知部1
3が直接に接続した構成とすることもできる。このよう
にした場合、過酸化水素センサ10から得られたアナロ
グ信号がそのままデータ報知部13に送られ、目盛と針
を用いた表示方法等により測定値が表示される。この場
合、表示された値を過酸化水素濃度に換算する表等を添
付すれば便利である。
【0105】
【実施例】以下、実施例により本発明をより詳細に説明
する。
【0106】(実施例1)まず10mm×6mmの石英
基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極
(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1
mm2)を形成した。 つづいて、全面に1v/v%のγ−
アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコート
して結合層を形成した。
【0107】その後、最外層(制限透過層)の構成を変
えて以下の2種類の過酸化水素電極を作製した。 (1)結合層の上に全面に、パーフルオロヘキサンを用
いて0.3質量%に調整したメタクリル酸樹脂のフルオ
ロアルコールエステルをスピンコートした後、乾燥を行
って制限透過層を形成し、第一の過酸化水素電極を作製
した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間
とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステ
ルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用し
た。フロラード722は、ポリメタクリル酸1H,1H
−パーフルオロオクチルであり、GPCで測定した平均
分子量(Mn)は約7000程度である。希釈液である
パーフルオロヘキサンは、住友スリーエム社製のフロラ
ード726を使用した。なお、同様にしてメタクリル酸
樹脂のフルオロアルコールエステルを石英基板上に直接
スピンコートしたサンプルについて膜厚測定を行った。
製膜後、超音波カッタで膜の一部を剥離し、凹凸を生じ
させ、その後、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメ
ンツ(株)社製SPI3800)により凹凸を測定することによ
り膜厚を測定した。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコ
ールエステル膜の厚みは約50nmであった。 (2)キシレンヘキサフルオライドを用いて0.3質量
%に調整したアクリル酸樹脂のフルオロアルコールエス
テルをスピンコートにより塗布した後、乾燥を行い、制
限透過層を形成した。以上により過酸化水素電極を作製
した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間
とした。塗布液は、ポリアクリル酸1H,1H,2H,
2H−パーフルオロデシルのキシレンヘキサフルオライ
ド溶液(アクリル酸樹脂含有率17%、キシレンヘキサ
フルオライド含有率83%、粘度20cps(25
℃))を、上記のように、さらにキシレンヘキサフルオ
ライドを添加して濃度調整したものを用いた。なお、同
様にしてアクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル
を石英基板上に直接スピンコートしたサンプルについて
膜厚測定を行った。製膜後、超音波カッタで膜の一部を
剥離し、凹凸を生じさせ、その後、原子間力顕微鏡(セ
イコーインスツルメンツ(株)社製SPI3800)により凹凸
を測定することにより膜厚を測定した。アクリル酸樹脂
のフルオロアルコールエステル膜の厚みは約100nm
であった。 (3)分光光度計(日立製作所(株)社製U-2010)と2ml
容の石英ガラスを用意し、300 nmの紫外吸収測定の準備
を整えた。過酸化水素を含まないスラリーを準備し、過
酸化水素を終濃度として、0.1、0.5、1.0、
1.5、2.0、2.5質量%になるように添加した。
そして、前述の3種類の測定方法の検量線を作成し、測
定値を評価した。印加電位は、参照極に対して作用極に
700mVとした。過酸化水素電極を用いて過酸化水素濃度
を測定した結果、実際の終濃度の過酸化水素濃度と過酸
化水素電極の測定値との相関係数は、メタクリル酸樹脂
のポリフルオロアルコールエステルをスピンコートした
過酸化水素電極の場合が0.991(図8(a))、アク
リル酸樹脂のポリフルオロアルコールエステルをスピン
コートした過酸化水素電極の場合が0.987を示した
(図8(b))。しかしながら、吸光光度装置による測定
値との相関係数は、0.970を示し(図8(c))、過
酸化水素電極を用いた場合よりも著しく測定精度が低下
した。高い相関係数が得られなかった理由としては、ス
ラリー中の金属および有機酸が過酸化水素と同値の吸光
を持つためであると考えられる。さらに、測定値が得ら
れるまでの応答時間についても評価したところ、過酸化
水素センサは10秒で測定値が得られたのに対し、吸光
光度装置では、発色するまでに時間を3分程度を要し
た。過酸化水素センサはほぼリアルタイムで測定するこ
とが可能であった。したがって、本発明による過酸化水
素電極はスラリー中の過酸化水素を高精度で測定するこ
とが可能であった。
【0108】(実施例2)まず10mm×6mmの石英
基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極
(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1
mm2)を形成した。 つづいて、全面に1v/v%のγ−
アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコート
して結合層を形成した。
【0109】キシレンヘキサフルオライドを用いて0.
3質量%に調整したアクリル酸樹脂のフルオロアルコー
ルエステルをスピンコートにより塗布した後、乾燥を行
い、制限透過層を形成した。以上により過酸化水素電極
を作製した。スピンコートの条件は3000rpm、3
0秒間とした。塗布液は、ポリアクリル酸1H,1H,
2H,2H−パーフルオロデシルのキシレンヘキサフル
オライド溶液(アクリル酸樹脂含有率17%、キシレン
ヘキサフルオライド含有率83%、粘度20cps(2
5℃))を、上記のように、さらにキシレンヘキサフル
オライドを添加して濃度調整したものを用いた。
【0110】以上のようにして作製した過酸化水素電極
を備えたセンサを、1.8質量%過酸化水素を含むスラ
リー中に浸漬して、毎日1回、20日間測定した。印加
電位は、参照極に対して作用極に700mVとした。また、
走査型電子顕微鏡(日本電子(株)社製JSM-5410 LV)に
て制限透過層表面を観察し、亀裂の発生状態を確認し
た。その結果、少なくとも20日間は安定したセンサ出
力を与え、制限透過層表面の亀裂の発生も認められなか
った。図9に20日間のセンサ出力の変動を示す。
【0111】(実施例3)まず10mm×6mmの石英
基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極
(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1
mm2)を形成した。 つづいて全面に1v/v%のγ−ア
ミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートし
て結合層を形成した後、5v/v%のパーフルオロカーボン
スルホン酸樹脂溶液をスピンコートしてパーフルオロカ
ーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイ
オン交換樹脂層を形成した。
【0112】そしてその上に0.3質量%の濃度のメタ
クリル酸樹脂フルオロアルコールエステル溶液を、スピ
ンコート法で製膜した。スピンコートの条件は、300
0rpm、30秒とした。メタクリル酸樹脂のフルオロ
アルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード
722を使用した。フロラード722の原液はメタクリ
ル酸樹脂のフルオロアルコールエステルに換算すると2
質量%である。希釈液であるパーフルオロヘキサンは、
住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。メ
タクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルの製膜条
件は、フロラード726で適宜希釈した濃度である。
【0113】以上のようにして作製した過酸化水素電極
を備えたセンサを、1.8質量%過酸化水素を含み、pH
を3、5、7に調整したスラリー中に浸漬して、毎日1
回、20日間測定した。印加電位は、参照極に対して作
用極に700mVとした。その結果、pHに関係なく、安定し
たセンサ出力を示した(図13)。
【0114】(実施例4)まず10mm×6mmの石英
基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極
(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1
mm2)を形成した。 つづいて1v/v%のγ−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合
層を形成した後、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホ
ン酸樹脂溶液をスピンコートしてパーフルオロカーボン
スルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交
換樹脂層を形成した。
【0115】(1)結合層の上に全面に、パーフルオロ
ヘキサンを用いて0.3質量%に調整したメタクリル酸
樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートし
て、第一の過酸化水素電極を作製した。スピンコートの
条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸
樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社
製のフロラード722を使用した。フロラード722
は、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチ
ルであり、GPCで測定した平均分子量(Mn)は約7
000程度である。希釈液であるパーフルオロヘキサン
は、住友スリーエム社製のフロラード726を使用し
た。
【0116】(2)結合層の上に全面に、アクリル酸1
H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルとメタクリ
ル酸シクロヘキシルの共重合体1.7質量%を含むキシ
レンヘキサフルオライド溶液を用意し、この溶液をスピ
ンコートして第二の過酸化水素電極を作製した。アクリ
ル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルとメ
タクリル酸シクロヘキシルの共重合比は約8:2であ
り、アクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロ
デシル基の数aと、メタクリル酸シクロヘキシル基の数
bの比率a/bは、約8/2であった。
【0117】以上のようにして作製した第1または第2
の過酸化水素電極を備えた2種類の過酸化水素センサ
を、1.8質量%過酸化水素を含み、温度を25、60
℃に調整したスラリー中に浸漬して、毎日1回、20日
間測定した。測定結果をそれぞれ、図14の(a)と(b)に
示す。印加電位は、参照極に対して作用極に700mVとし
た。その結果、温度に関係なく、安定したセンサ出力を
示し、特にアクリル酸1H,1H,2H,2H-パーフルオロ
デシルとメタクリル酸シクロヘキシルの共重合物からな
る制限透過層を持つ過酸化水素センサは、高温状態で特
に安定したセンサ出力を示した(図14)。
【0118】(実施例5) (1)まず5mm×6mmの石英基板上に白金からなる
作用極(面積7mm2)、同面積の石英基板上に同じく
白金からなる対極(面積4mm2)、および同面積の石
英基板上に銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2
をそれぞれ形成した。 (2)つづいて、10mm×6
mmの石英基板上に、白金からなる作用極(面積7 mm
2)と対極(面積4 mm2)、および5×5 mm2の石英
基板上に銀/塩化銀からなる参照極(面積1 mm2)を
それぞれ形成した。つづいて1v/v%のγ−アミノプロピ
ルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を
(1)の作用極、および(2)の作用極と対極に形成し
た後、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶
液をスピンコートしてパーフルオロカーボンスルホン酸
樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層を
それぞれ形成した。
【0119】(1)つづいて、結合層の上に全面、すな
わち作用極の全面にパーフルオロヘキサンを用いて0.
3質量%に調整したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコ
ールエステルをスピンコートして、第一の過酸化水素電
極を作製した。スピンコートの条件は3000rpm、
30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコー
ルエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を
使用した。フロラード722は、ポリメタクリル酸1
H,1H−パーフルオロオクチルであり、GPCで測定
した平均分子量(Mn)は約7000程度である。希釈
液であるパーフルオロヘキサンは、住友スリーエム社製
のフロラード726を使用した。
【0120】(2)つづいて、結合層の上に全面に、す
なわち、作用極と対極の全面に(1)と同様に0.3質
量%に調整したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコール
エステルをスピンコートして、第二の過酸化水素電極を
作成した。以上のようにして作製した第1または第2の
過酸化水素電極を備えた2種類の過酸化水素センサを、
1.8質量%過酸化水素を含むスラリー中に浸漬して、
繰り返し連続して10回測定し、繰り返し再現性を求め
た。繰り返し再現性は、繰り返し測定した際の測定値の
変動係数(C.V.値)を求めることによって評価し
た。変動係数とは標準偏差/平均値×100で表される
値を示す。なお、印加電位は参照極に対して作用極に70
0mVとした。その結果、第1の過酸化水素センサのC.
V.値は2.8%、第2の過酸化水素センサのC.V.
値は2.4%を示し、いずれも安定したセンサ出力を示
した。
【0121】(実施例6)本実施例は、図7(a)の構
成を有する測定器の一例を示すものである。
【0122】はじめに本実施例に係る測定器の過酸化水
素センサ部の作製手順について説明する。まず10mm
×6mmの石英基板上に白金からなる作用極(面積7m
2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照
極(面積1mm2)を形成した。つづいて、全面に1v/v
%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピ
ンコートして結合層を形成した。そしてその上に1.7
質量%のアクリル酸樹脂のポリフルオロアルコールエス
テル溶液をスピンコートして制限透過層を形成した。ア
クリル酸樹脂のポリフルオロアルコールエステルは、ポ
リアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフルオロデ
シルを使用した。希釈液はキシレンヘキサフルオライド
を使用した。スピンコートの条件は3000rpm、3
0秒とした。
【0123】以上のようにして電極部を形成した過酸化
水素センサを用い、図7(a)に示す構成の測定器を作
製した。電極部分とフレキシブル基板はワイヤーボンデ
ィングで結線し、フレキシブル基板と電気化学測定回路
部はピンジャック型の電線を用いて接続した。
【0124】電気化学測定回路は、北斗電工社製のポテ
ンシオスタットHOKUTODENKO POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT
HA150Gを使用した。データ処理装置は、日本電気(株)社
製のパーソナルコンピュータPC-9821RaII23を使用し
た。データ報知部53は、日本電気(株)社製のディスプ
レイPC-KP531を使用した。電気化学測定回路とデータ処
理装置とデータ報知部53とをピンジャック型の電線で
接続した。以上のようにして作製した過酸化水素電極を
備えた過酸化水素センサを、実際の半導体のスラリーを
含む洗浄液中の過酸化水素をモニタした。モニタ条件
は、同センサを製作したパイパス流路を持つ洗浄液に浸
漬し、1時間ごとに1回、パソコン中のメモリもしくは
ハードディスク中にセンサ出力値から換算された過酸化
水素濃度を記録した。モニタは7日間行われた。印加電
位は、参照極に対して作用極に700mVとした。その結
果、7日間の過酸化水素濃度をモニタすることができ、
一日および7日間の過酸化水素濃度の変動を把握するこ
とが可能であった。また、後日、得られたデータの解析
を行うことも可能であった。
【0125】また、過酸化水素センサ、電気化学測定回
路、データ処理装置は、いずれもピンジャック型の電線
で接続されているため、これらの間において脱着が容易
であり、必要に応じて交換が可能であることも示され
た。
【0126】(実施例7)本実施例はCMP研磨液の組
成管理に本発明のセンサを用いた例である。以下、図面
を参照して、本実施例で行ったCMPプロセスを用いた
銅配線構造の製造工程について説明する。まず図16
(a)に示すように、不図示のシリコン基板上にシリコ
ン酸化膜21を形成し、さらにその上にシリコン窒化膜
22(膜厚約100nm)およびシリコン酸化膜23
(膜厚約1000nm)をこの順で形成し、次いで、ド
ライエッチングによりシリコン窒化膜22に到達する複
数の配線溝20を形成した。
【0127】次に図16(b)に示すように、全面にT
aNからなるバリアメタル膜24をスパッタリング法に
より成膜した。膜厚は平坦部で約20nmとした。つづ
いてめっき法により銅膜25を形成した。銅膜25の膜
厚は、配線溝の無い平坦部で900nm程度とした。つ
づいてアニール処理を行った後、CMPを行った。CM
Pは図17に示す研磨装置を用いて行った。図中、ウェ
ーハ40とは、上述のようにして基板表面に成膜がなさ
れたものをいう。上述のように成膜されたウェーハ40
は、ウェーハキャリア41下面に設置される。ウェーハ
40の表面を研磨パッド42に接触させながら、ウェー
ハキャリア41と研磨パッド42の両方を一定速度で回
転させる。ウェーハ40と研磨パッド42の間に、ポン
プ45aにより供給口43aから第一の研磨液44が供
給される。
【0128】第一の研磨液44は、過酸化水素水、硝酸
鉄を含む溶液にアルミナ粒子を加えたものである。第一
の研磨液44の過酸化水素濃度は、過酸化水素センサ4
9aにより測定され、得られた測定値をもとに過酸化水
素の補充が行われる。過酸化水素センサ49aは、実施
例2で作製、評価したセンサと同じものを使用した。過
酸化水素センサ49aは測定データの処理を行う処理部
47aに接続している。処理部47aは送液ポンプ48
aを制御しており、これにより、第一の研磨液44への
過酸化水素水46aの補充量が制御される。過酸化水素
水の補充は、予め設定した濃度範囲を超えたときに補充
を行う方式とした。
【0129】上記の研磨装置を用いて一定時間研磨を続
けると、CMPの回転トルクが上昇した。このとき、基
板の断面構造は図16(c)に示す状態となっている。
すなわち、絶縁膜平坦部上の銅めっき膜25が除去さ
れ、バリアメタル膜24が露出した状態となっている。
バリアメタル膜24を構成するTaNは、銅めっき膜2
5を構成する銅よりも硬くCMPによる研磨がされにく
い。このため図16(c)のようにTaNが露出した状
態となると回転トルクが上昇するのである。
【0130】回転トルクが上昇した時点で、図17の研
磨装置の供給口43bから、ポンプ45bにより、ウェ
ーハ40と研磨パッド42の間に第二の研磨液50を供
給した。第二の研磨液50は過酸化水素水を含む溶液で
あり、第一の研磨液とは異なる過酸化水素濃度となって
いる。第一の研磨液は金属膜研磨に適した組成のスラリ
ーであり、第二の研磨液はバリアメタル膜および絶縁膜
を研磨するのに適した組成のスラリーとなっている。こ
のように異なる組成の研磨液を併用することにより、デ
ィッシングやエロージョンの少ない配線構造を得ること
ができる。
【0131】第二の研磨液50の過酸化水素濃度は、過
酸化水素センサ49bにより測定され、得られた測定値
をもとに過酸化水素の補充が行われる。過酸化水素セン
サ49bは、実施例2で作製、評価したセンサと同じも
のを使用した。過酸化水素センサ49bは測定データの
処理を行う処理部47bに接続している。処理部47b
は送液ポンプ48bを制御しており、これにより、第二
の研磨液50への過酸化水素水46bの補充量が制御さ
れる。過酸化水素水46bの補充は、予め設定した濃度
範囲を超えたときに補充を行う方式とした。
【0132】その後、所定時間研磨を続けることによ
り、図16(d)に示すような銅配線26を形成した。
CMPの終点は、CMPの回転トルクの変化を検知する
方法を用いて決定した。
【0133】以上のプロセスを複数回繰り返して行い、
複数枚のウェーハのCMP処理を行った。CMP処理
中、第一の研磨液44および第二の研磨液50の過酸化
水素濃度が経時的に変化するが、本実施例では過酸化水
素センサ49a、49bで得られた測定値をもとに過酸
化水素の補充を適宜に行ったため、研磨液の液組成を一
定に維持し、研磨性能を良好に維持することができた。
このため、ディッシングやエロージョンの少ない配線構
造を安定的に製造することができた。
【0134】(実施例8)本実施例はレジスト剥離液の
組成管理に本発明のセンサを用いた例である。図18は
本実施例で用いたレジスト剥離装置の概略図である。処
理槽58には剥離液52が満たされており、剥離液52
中に処理対象となるシリコンウェーハ51が浸漬した状
態で配置されている。剥離液52はアンモニアと過酸化
水素水を含む混合液(APM)からなり、不図示のヒー
タにより60℃に保たれている。剥離液52中には過酸
化水素センサ53が浸漬している。この過酸化水素セン
サ53は、実施例4で作製、評価した、アクリル酸1
H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルとメタクリル酸
シクロヘキシルの共重合物からなる制限透過層を持つ過
酸化水素センサ(図14(b)の評価結果に対応するセ
ンサ)と同じものを使用した。
【0135】過酸化水素センサ53は測定データの処理
を行う処理部54に接続している。処理部54は送液ポ
ンプ55を制御しており、これにより、過酸化水素水の
貯留された貯留槽57から処理槽58への過酸化水素水
56の補充量を制御している。
【0136】以上のような構成の剥離装置を用いて、複
数枚のウエーハのレジスト剥離を連続的に行った。過酸
化水素の補充は、過酸化水素濃度とレジスト剥離能力と
の関係を予め求めておき、レジスト剥離能力が一定の基
準値以下になったときに過酸化水素水56を補充する方
式とした。
【0137】本実施例では、特定構造の過酸化水素電極
を備えたセンサを用いたため、剥離液中の過酸化水素濃
度を精度良く定量することができた。このため、過酸化
水素濃度測定値に基づいて適切な量の過酸化水素を適宜
に補充し、液組成を厳密に制御、管理することができ、
レジスト剥離を安定的に行うことができた。
【0138】(実施例9)剥離液を基板洗浄液(アンモ
ニアと過酸化水素水の混合液)に変え、レジスト剥離装
置を洗浄装置に変えたこと以外は実施例8と同様にし
て、複数枚のベアウェーハについてRCA洗浄の一部の
工程を実施した。洗浄装置の概略構成は、図18のレジ
スト剥離装置と同様の構成を有するものである。実施例
8と同様、処理温度は60℃とした。過酸化水素の補充
は、過酸化水素濃度と洗浄能力との関係を予め求めてお
き、洗浄能力が一定の基準値以下になったときに、過酸
化水素水を補充する方式とした。
【0139】本実施例では、特定構造の過酸化水素電極
を備えたセンサを用いたため、洗浄液中の過酸化水素濃
度を精度良く定量することができた。このため、過酸化
水素濃度測定値に基づいて適切な量の過酸化水素を適宜
に補充し、液組成を厳密に制御、管理することができ、
安定的に洗浄を行うことができた。
【0140】上記したように、本発明の過酸化水素セン
サを半導体装置の製造に適用した場合、特に効果的であ
る。本発明は、過酸化水素電極やこれを用いた過酸化水
素センサ等を提供するものであるが、さらに以下に示す
ような方法、装置も提供される。(i)本発明の過酸化水
素センサを用いてCMP研磨液中の過酸化水素濃度を測
定することを特徴とする過酸化水素濃度測定方法。 (ii)過酸化水素を含有する研磨液を用いて半導体ウエー
ハを化学的機械的研磨する研磨装置において、本発明の
過酸化水素センサを備えたことを特徴とする研磨装置。 (iii)(ii)の研磨装置において、本発明の過酸化水素セ
ンサにより測定された研磨液中の過酸化水素濃度に基づ
き研磨液に対する過酸化水素の補充量が制御されるよう
にしたことを特徴とする研磨装置。 (iv)本発明の過酸化水素センサを用いてレジスト剥離液
中の過酸化水素濃度を測定することを特徴とする過酸化
水素濃度測定方法。 (v)過酸化水素を含有するレジスト剥離液を用いて半導
体ウエーハ上に設けられたレジスト膜を除去するレジス
ト剥離装置において、本発明の過酸化水素センサを備え
たことを特徴とするレジスト剥離装置。 (vi)(v)のレジスト剥離装置において、本発明の過酸化
水素センサにより測定されたレジスト剥離液中の過酸化
水素濃度に基づきレジスト剥離液に対する過酸化水素の
補充量が制御されるようにしたことを特徴とするレジス
ト剥離装置。 (vii)本発明の過酸化水素センサを用いてウエーハ洗浄
液中の過酸化水素濃度を測定することを特徴とする過酸
化水素濃度測定方法。 (viii)過酸化水素を含有する洗浄液を用いて半導体ウエ
ーハの洗浄を行う洗浄装置において、本発明の過酸化水
素センサを備えたことを特徴とする洗浄装置。 (ix)(viii)の洗浄装置において、本発明の過酸化水素セ
ンサにより測定された洗浄液中の過酸化水素濃度に基づ
き洗浄液に対する過酸化水素の補充量が制御されるよう
にしたことを特徴とする洗浄装置。
【0141】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の過酸化水
素電極およびこれを用いた過酸化水素センサは、特定構
造のポリマーにより構成された制限透過層を有するた
め、以下のような効果を奏する。
【0142】第一の効果は、充分に高い精度の測定値が
得られることである。汚染物質の付着が抑制される上、
過酸化水素定量を妨害する物質の影響を有効に排除でき
るからである。
【0143】第二の効果は、汚染物質の付着が抑制さ
れ、長期使用した場合にも安定した出力特性が得られる
ことである。これは、フルオロアルコールエステル基等
のフルオロアルキレンブロックを含有するペンダント基
はほとんどの非フッ素系溶剤や界面活性剤等の洗浄剤に
対して難溶性を示すことによる。したがって、たとえば
CMP用スラリー等の沈殿物や有機酸などの多様な化学
物質を含む成分系においても安定した繰り返し測定結果
が得られる。
【0144】第三の効果は、電極や他の有機高分子層と
の良好な密着性が得られ、応答速度の迅速化、洗浄に要
する時間の短縮化が図られるとともに、層構造の耐久性
が向上し、長期使用した場合にも損傷の起こりにくい過
酸化水素電極が得られることである。良好な密着性が得
られる理由は、制限透過層を構成するポリマーが、フッ
素を含まないビニル系重合体からなる主鎖を有すること
による。なお、ペンダント基が、エステル基を介して主
鎖に結合する構造をとることにより、さらに密着性改善
が図られる。
【0145】第四の効果は、良好な制限透過性が得ら
れ、測定濃度範囲を大幅に拡大できることである。良好
な制限透過性が得られる理由は、制限透過層を構成する
ポリマーが、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、
少なくともフルオロアルキレンブロックを含有するペン
ダント基が結合した特有の構造を有していることによ
る。
【0146】第五の効果は、制限透過性が良好なため制
限透過層の層厚を薄くすることが可能となり、応答速度
の迅速化、および洗浄に要する時間の短縮化が図られる
ことである。
【0147】第六の効果は、本発明の過酸化水素電極お
よび過酸化水素センサを半導体装置製造に際し使用され
る種々の薬液の過酸化水素濃度定量に適用することによ
り、薬液コストを大幅に低減でき、さらに、バッチ毎の
洗浄、レジスト剥離、研磨等のプロセスのばらつきを低
減できることである。
【0148】第七の効果は、食品製造プロセスの消毒お
よび殺菌工程に使用される過酸化水素濃度を連続してモ
ニタできることである。その理由は、食品中に含まれる
タンパク質等が電極に付着することがほとんどないた
め、高い測定精度を維持できるためである。
【0149】さらに本発明によれば、量産性に優れる過
酸化水素電極、過酸化水素センサが得られる。本発明の
過酸化水素電極は、その層構造を、各種溶液をスピンコ
ート法等により塗布することによって形成できるので、
既存のプレーナ製造工程の大部分を流用することが可能
であり、大量に、しかも低コストで生産が可能となるか
らである。
【0150】また、本発明の測定器は、特定構造の作用
極を具備する過酸化水素センサを有しているため、長期
安定性に優れ、広範囲な測定条件下で使用することが可
能である。その上、操作方法が簡便であり、装置に不慣
れな人でも簡単に取り扱うことができる。
【0151】また、本発明の過酸化水素電極の製造方法
は、特定構造のポリマー成分を含む液を塗布・乾燥する
ことにより制限透過層を形成するため、繰り返し測定時
における安定性、隣接する層との密着性、耐久性、制限
透過性等にすぐれる制限透過層を、膜厚制御性良く形成
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の過酸化水素電極の断面図である。
【図2】本発明の過酸化水素電極の断面図である。
【図3】本発明の過酸化水素電極の断面図である。
【図4】本発明の過酸化水素電極の断面図である。
【図5】本発明の過酸化水素センサの構成の一例を示す
図である。
【図6】本発明の過酸化水素センサの構成の一例を示す
図である。
【図7】本発明の測定器の構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の過酸化水素電極の測定精度を示す図で
ある。
【図9】本発明の過酸化水素電極の繰り返し測定の安定
性を示す図である。
【図10】従来の過酸化水素濃度を測定する装置を示す
図である。
【図11】従来の過酸化水素濃度を測定する装置の特性
を示す図である。
【図12】従来の過酸化水素電極の断面図である。
【図13】本発明の過酸化水素電極の安定性を示す図で
ある。
【図14】本発明の過酸化水素電極の安定性を示す図で
ある。
【図15】従来装置による過酸化水素の吸光度を示すデ
ータを示す図である。
【図16】CMPプロセスを用いた銅配線構造の製造工
程を説明する工程断面図である。
【図17】本発明の過酸化水素センサを備えたCMP研
磨装置の概略構成を示す図である。
【図18】本発明の過酸化水素センサを備えたレジスト
剥離装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板 2 電極 3 制限透過層 4 結合層 5 イオン交換樹脂層 7 作用極 8 対極 9 参照極 10 過酸化水素センサ 11 電気化学測定回路部 12 データ処理部 13 データ報知部 14 配線 20 配線溝 21 シリコン酸化膜 22 シリコン窒化膜 23 シリコン酸化膜 24 バリアメタル膜 25 銅膜 26 銅配線 31 絶縁基板 32 過酸化水素電極 33 γ−アミノプロピルトリエトキシシラン膜 34 アセチルセルロース膜 35 パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜 36 触媒機能をもつ酵素を固定化した有機高分子膜 37 ポリアルキルシロキサン膜 40 ウェーハ 41 ウェーハキャリア 42 研磨パッド 43 供給口 44 第一の研磨液 45a、45b ポンプ 46a、46b 過酸化水素水 47a、47b 処理部 48a、48b 送液ポンプ 49a、49b 過酸化水素センサ 50 第二の研磨液 51 シリコンウェーハ 52 剥離液 53 過酸化水素センサ 54 処理部 55 送液ポンプ 56 過酸化水素水 57 貯留槽 58 処理槽 61 ポンプ 62 流路切替バルブ 63 ポンプ 66 ループ 72 流路切替バルブ 73 ポンプ 76a ループ 76b ループ 81 冷却器 82 脱泡器 84 逆止弁 85 混合器 86 紫外吸収測定部 86a 紫外線光源 86b フローセル 86c 紫外線検出器 89 脱気装置

Claims (41)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁基板上に設けられた電極と、該電極
    の少なくとも一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透
    過層は、フッ素を含まないビニル系重合体に対し、少な
    くともフルオロアルキレンブロックを含有するペンダン
    ト基が結合したポリマーから主としてなることを特徴と
    する過酸化水素電極。
  2. 【請求項2】 前記ビニル系重合体は、不飽和炭化水
    素、不飽和カルボン酸、および不飽和アルコールからな
    る群より選ばれた一種以上のモノマーの単独重合体また
    は共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の過
    酸化水素電極。
  3. 【請求項3】 前記ビニル系重合体は、ポリカルボン酸
    であることを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素電
    極。
  4. 【請求項4】 前記フルオロアルキレンブロックは、前
    記ビニル系重合体に対しエステル基を介して結合してい
    ることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の過
    酸化水素電極。
  5. 【請求項5】 前記ペンダント基中に含まれるフッ素原
    子数をx、前記ペンダント基中に含まれる水素原子数を
    yとしたときに、x/(x+y)で表される前記ペンダ
    ント基のフッ素含有率が、0.3〜1であることを特徴
    とする請求項1乃至4いずれかに記載の過酸化水素電
    極。
  6. 【請求項6】 前記ペンダント基の炭素数が3〜15で
    あることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の
    過酸化水素電極。
  7. 【請求項7】 前記ポリマーの分子量が、1000〜5
    0000である請求項1乃至6いずれかに記載の過酸化
    水素電極。
  8. 【請求項8】 絶縁基板上に設けられた電極と、該電極
    の少なくとも一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透
    過層は、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエ
    ステルから主としてなることを特徴とする過酸化水素電
    極。
  9. 【請求項9】 絶縁基板上に設けられた電極と、該電極
    の少なくとも一部を覆う制限透過層とを有し、該制限透
    過層は、ポリカルボン酸(A)のフルオロアルコールエ
    ステルと、ポリカルボン酸(B)のアルキルアルコール
    エステルとを含んでなることを特徴とする過酸化水素電
    極。
  10. 【請求項10】 前記ポリカルボン酸(B)が、ポリメ
    タクリル酸、ポリアクリル酸、またはアクリル酸とメタ
    クリル酸の共重合体であることを特徴とする請求項9に
    記載の過酸化水素電極。
  11. 【請求項11】 前記ポリカルボン酸(B)のアルキル
    アルコールエステルは、ポリカルボン酸(B)のカルボ
    キシル基の少なくとも一部が、炭素数2〜10のアルキ
    ルアルコールによりエステル化されてなるエステル化合
    物であることを特徴とする請求項9または10に記載の
    過酸化水素電極。
  12. 【請求項12】 前記ポリカルボン酸(B)のアルキル
    アルコールエステルは、ポリメタクリル酸シクロヘキシ
    ルであることを特徴とする請求項11に記載の過酸化水
    素電極。
  13. 【請求項13】 前記ポリカルボン酸(A)が、ポリメ
    タクリル酸、ポリアクリル酸、またはアクリル酸とメタ
    クリル酸の共重合体であることを特徴とする請求項8乃
    至12いずれかに記載の過酸化水素電極。
  14. 【請求項14】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルに含まれるフルオロアルコールエス
    テル基中のフッ素原子数をx、水素原子数をyとしたと
    きに、x/(x+y)で表される前記フルオロアルコー
    ルエステル基のフッ素含有率が、0.3〜1であること
    を特徴とする請求項8乃至13いずれかに記載の過酸化
    水素電極。
  15. 【請求項15】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルに含まれるフルオロアルコールエス
    テル基を構成するフルオロアルコールの炭素数が3〜1
    5であることを特徴とする請求項8乃至14いずれかに
    記載の過酸化水素電極。
  16. 【請求項16】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルに含まれるフルオロアルコールエス
    テル基を構成するフルオロアルコールは、一級アルコー
    ルであることを特徴とする請求項8乃至15いずれかに
    記載の過酸化水素電極。
  17. 【請求項17】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルは、ポリメタクリル酸1H,1H−
    パーフルオロオクチルであることを特徴とする請求項1
    6に記載の過酸化水素電極。
  18. 【請求項18】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルは、ポリアクリル酸1H,1H,2
    H,2H−パーフルオロデシルであることを特徴とする
    請求項16に記載の過酸化水素電極。
  19. 【請求項19】 前記ポリカルボン酸(A)のフルオロ
    アルコールエステルの分子量が、1000〜50000
    である請求項8乃至18いずれかに記載の過酸化水素電
    極。
  20. 【請求項20】 絶縁基板上に設けられた電極と、該電
    極の少なくとも一部を覆う制限透過層とを有し、該制限
    透過層は、アルキルアルコールエステル基およびフルオ
    ロアルコールエステル基を有するポリカルボン酸エステ
    ル化合物から主としてなることを特徴とする過酸化水素
    電極。
  21. 【請求項21】 前記フルオロアルコールエステル基中
    のフッ素原子数をx、水素原子数をyとしたときに、x
    /(x+y)で表される前記フルオロアルコールエステ
    ル基のフッ素含有率が、0.3〜1であることを特徴と
    する請求項20に記載の過酸化水素電極。
  22. 【請求項22】 前記フルオロアルコールエステル基を
    構成するフルオロアルコールの炭素数が3〜15である
    ことを特徴とする請求項20または21に記載の過酸化
    水素電極。
  23. 【請求項23】 前記フルオロアルコールエステル基を
    構成するフルオロアルコールは、一級アルコールである
    ことを特徴とする請求項20乃至22いずれかに記載の
    過酸化水素電極。
  24. 【請求項24】 前記フルオロアルコールエステル基
    は、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチ
    ルであることを特徴とする請求項23に記載の過酸化水
    素電極。
  25. 【請求項25】 前記フルオロアルコールエステル基
    は、ポリアクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフル
    オロデシル基であることを特徴とする請求項23に記載
    の過酸化水素電極。
  26. 【請求項26】 前記アルキルアルコールエステル基の
    炭素数が2〜10であることを特徴とする請求項20乃
    至25いずれかに記載の過酸化水素電極。
  27. 【請求項27】 前記アルキルアルコールエステル基
    は、ポリメタクリル酸シクロヘキシルであることを特徴
    とする請求項26に記載の過酸化水素電極。
  28. 【請求項28】 前記制限透過層の厚みが、0.01μ
    m以上3μm以下である請求項1乃至27いずれかに記
    載の過酸化水素電極。
  29. 【請求項29】 前記電極と前記制限透過層との間に、
    シランカップリング剤から主としてなる結合層を有する
    ことを特徴とする請求項1乃至28いずれかに記載の過
    酸化水素電極。
  30. 【請求項30】 前記シランカップリング剤は、γ−ア
    ミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とす
    る請求項29に記載の過酸化水素電極。
  31. 【請求項31】 前記結合層と前記制限透過層との間
    に、パーフルオロカーボン骨格を有するイオン交換樹脂
    から主としてなるイオン交換樹脂層を有することを特徴
    とする請求項29または30に記載の過酸化水素電極。
  32. 【請求項32】 請求項1乃至31いずれかに記載の過
    酸化水素電極を作用極として用いた過酸化水素センサ。
  33. 【請求項33】 半導体ウェーハの化学的機械的研磨を
    行う際に用いられる研磨液の過酸化水素濃度測定に使用
    されることを特徴とする請求項32に記載の過酸化水素
    センサ。
  34. 【請求項34】 半導体ウェーハ上に設けられたレジス
    ト膜を除去する際に用いられるレジスト剥離液の過酸化
    水素濃度測定に使用されることを特徴とする請求項32
    に記載の過酸化水素センサ。
  35. 【請求項35】 半導体ウェーハを洗浄する際に用いら
    れる洗浄液の過酸化水素濃度測定に使用されることを特
    徴とする請求項32に記載の過酸化水素センサ。
  36. 【請求項36】 請求項32乃至35いずれかに記載の
    過酸化水素センサと、該過酸化水素センサから得られた
    電気信号を報知するデータ報知部とを有してなることを
    特徴とする測定器。
  37. 【請求項37】 請求項32乃至35いずれかに記載の
    過酸化水素センサと、該過酸化水素センサから電気信号
    を得る電気化学測定回路部と、該電気信号をもとに測定
    値を算出するデータ処理部と、該測定値を報知するデー
    タ報知部とを有してなることを特徴とする測定器。
  38. 【請求項38】 絶縁基板上に電極を形成する工程と、
    該電極に直接、または他の層を介して、フッ素を含まな
    いビニル系重合体に対し少なくともフルオロアルキレン
    ブロックを含有するペンダント基が結合したポリマーを
    含む液を塗布した後、乾燥させ、制限透過層を形成する
    工程とを含むことを特徴とする過酸化水素電極の製造方
    法。
  39. 【請求項39】 前記液をスピンコート法により塗布す
    ることを特徴とする請求項38記載の過酸化水素電極の
    製造方法。
  40. 【請求項40】 ディップ法により前記液を塗布した
    後、窒素ガスを吹き付けながら乾燥を行うことを特徴と
    する請求項38記載の過酸化水素電極の製造方法。
  41. 【請求項41】 前記制限透過膜の厚みを、乾燥後にお
    いて0.01μm以上3μm以下とすることを特徴とす
    る請求項38乃至40いずれかに記載の過酸化水素電極
    の製造方法。
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