JP2001113705A - ドライエッチング用金属マスク、これを備えたインクジェットプリンタヘッド及びその製造方法 - Google Patents

ドライエッチング用金属マスク、これを備えたインクジェットプリンタヘッド及びその製造方法

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JP2001113705A
JP2001113705A JP29745499A JP29745499A JP2001113705A JP 2001113705 A JP2001113705 A JP 2001113705A JP 29745499 A JP29745499 A JP 29745499A JP 29745499 A JP29745499 A JP 29745499A JP 2001113705 A JP2001113705 A JP 2001113705A
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Ichiro Kono
一郎 河野
Osamu Nakamura
修 中村
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】ドライエッチングに最適な金属マスクとこの金
属マスクを設けた高性能のインクジェットプリンタヘッ
ド及びその製造方法を提供する。 【解決手段】先ずスパッタ装置の成膜室のステージに、
多数のヘッドチップ最上層にオリフィス板を積層済みの
シリコンウェハをセットし、100℃〜150℃で30
分以上加熱した後20〜30℃(室温)に冷却する成膜
前処理を行い、次にオリフィス板の上に、純度99.9
99%以上のTi、真空圧4.0±1.2Pa、本スパ
ッタ電力70±25W、スパッタガスArの諸条件でス
パッタして、比抵抗3〜4mΩcm、非六法細密充填構
造、光学多重反射を示さない特性のTiの薄膜を成膜
し、このTi膜に吐出ノズルに対応するマスクパターン
を形成した後、ヘリコン波ドライエッチング装置により
孔空け加工を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドライエッチング
に最適な金属マスクとこの金属マスクを備えたインクジ
ェットプリンタヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、インクジェット方式のプリンタが
広く用いられている。このインクジェット方式によるプ
リンタには、インクを加熱し気泡を発生させてその圧力
でインク滴を飛ばすサーマル方式や、ピエゾ抵抗素子
(圧電素子)の変形によってインク滴を飛ばすピエゾ方
式等がある。これらは、色材たるインクをインク滴にし
て直接記録紙に向かって吐出し印字を行うから、粉末状
の印材であるトナーを用いる電子写真方式と比較した場
合、印字エネルギーが低くて済み、インクの混合によっ
てカラー化が容易であり、印字ドットを小さくできるの
で高画質であり、印字に使用されるインクの量に無駄が
無くコストパフォーマンスに優れており、このため特に
パーソナル用プリンタとして広く用いられている印字方
式である。
【0003】上記のサーマル方式には、インク滴の吐出
方向により二通りの構成がある。一つは発熱素子の発熱
面に平行な方向へインク滴を吐出する構成のサイドシュ
ータ型と呼称されるものであり、他の一つは発熱素子の
発熱面に垂直な方向にインク滴を吐出する構成のルーフ
シュータ型と呼称されるものである。
【0004】図12(a) は、そのようなルーフシュータ
型のインクジェットプリンタに配設されるインクジェッ
トプリンタヘッドのインク吐出面を模式的に示す平面図
であり、同図(b) は、そのA−A′断面矢視図、同図
(c) は、このインクジェットプリンタヘッドが製造され
るシリコンウェハを示す図である。
【0005】同図(c) に示すように、インクジェットプ
リンタヘッド(以下、単に印字ヘッドという)1は、シ
リコンウェハ2の上で、LSI形成処理技術と薄膜形成
処理技術とにより形成され、完成後にシリコンウェハ2
から個々に切り出されて採取される。
【0006】同図(a) に示すように、印字ヘッド1のイ
ンク吐出面には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シ
アン(C)及びブラック(Bk)の4種類のインクを吐
出する4列のノズル列3が形成されている。1列のノズ
ル列3には多数のノズル4が例えば25.4mm当り3
00ドットの解像度(1mm当り約12個の密度)で縦
1列に並んで配置されている。これらの各ノズル列3に
は不図示のインクカートリッジ等から各ノズル列3に対
応する色のインクがそれぞれ供給される。
【0007】この印字ヘッド1の内部構成は、同図(b)
に示すように、ヘッドチップ5上に、LSIからなる駆
動回路6と薄膜からなる抵抗発熱部7が形成され、この
抵抗発熱部7の一方の端部と駆動回路6を結ぶ個別配線
電極8が形成され、更に抵抗発熱部7の他方の端部と給
電用端子9とを接続する共通電極11が形成されてい
る。そして、これらの上に隔壁12が積層されている。
上記の抵抗発熱部7と個別駆動電極8は、それぞれ後か
ら形成されるノズル列3のノズル4の数だけ配設され
る。
【0008】そして、後から形成されるノズル列3に平
行に延在するインク供給溝13と、このインク供給溝1
3に連通してヘッドチップ5の下面に貫通するインク供
給孔14が穿設され、これらの上からオリフィス板15
が、熱と圧力を加えられて、下面の熱可塑性接着材によ
り隔壁12上に接着されて積層されている。このオリフ
ィス板15の積層により、隔壁12の厚さに対応する高
さおよそ10μmのインク通路16が、抵抗発熱部7と
インク供給溝13間に形成される。この後、オリフィス
板15に、インクを吐出する上述のノズル4が形成され
る。同図(a) に示すシリコンウェハ2の直径が例えば1
52.4mmであるとすると、上述したような印字ヘッ
ド1を90個以上採取することができる。
【0009】このような印字ヘッド1を作るに際し、オ
リフィス板15に上記のノズル4を形成するには、高速
ドライエッチングが出来て作業能率が上がるヘリコン波
エッチング装置を用いるとよい。尚、ヘリコン波は、固
体プラズマの中を伝搬する電磁波の一種で、別名ホイス
ラー(笛)波とも呼ばれ、高密度プラズマを発生させる
ものである。
【0010】図13(a) は、上記のドライエッチングの
ための前工程を行った製造途上の印字ヘッド1(但し、
1個の抵抗発熱部7及びその近傍部分のみを切り出して
示している)を示す図であり、同図(b) は、その印字ヘ
ッド1に対して、ヘリコン波エッチング装置でドライエ
ッチングを行っている状態を示す図である。尚、同図
(a),(b) には、ヘッドチップ5上の構成において、図1
2(a),(b) と同一の構成部分には同一の番号を付与して
示している。
【0011】同図(a) に示すように、オリフィス板15
は、接着材17a、ポリイミドフィルム18、接着材1
7bの3層で構成されている。接着材17a及び17b
の材料は、例えば熱可塑性ポリイミドやエポキシ系接着
材などであり厚さ約30μmのポリイミドフィルム18
の表裏に厚さ2〜5μm程度にコーテングされている。
このような接着材17aまたは17bのような熱可塑材
料はガラス転移点以上の温度になると急激に弾性率が低
下して粘着性が増加し接着効果を発揮する。
【0012】但し、この性質は、隔壁12に接着される
オリフィス板15の裏面の接着材17bに要求されてい
る性質であって、オリフィス板15の表面には必要のな
い性質である。それにも拘らず、オリフィス板15の裏
面の接着材17bだけでなく表面にも接着材17aが設
けられているのは、もし裏面の接着材17bだけである
とポリイミドフィルム18が製造工程の処理作業中に捲
き上がって具合が悪いからであり、同図(a) のように接
着材17aと17bによって表裏両面に同一の熱膨張特
性を持たせることによりポリイミドフィルム18が製造
工程の処理作業中に捲き上がる不具合を防止しているの
である。
【0013】このようなオリフィス板15を、上記接着
材17bの面をヘッドチップ5に向けて隔壁12の上に
載置して、上述したインク通路16に蓋を形成し、この
オリフィス板15を隔壁12に均一に固定接着するため
に、数10分の間、200〜250℃に加熱し、適宜の
圧力を加えて固定する。
【0014】続いて、マスク材としてAl、Cu又はT
aなどの厚さ0.5〜1μm程度の金属膜19を形成
し、これに図12(a) に示したノズル4に対応するパタ
ーン21を形成して、オリフィス板15を選択的にエッ
チングする為のマスクを形成する。通常、オリフィス板
15にノズル4を孔空けする場合にヘリコン波エッチン
グ装置を用いるときは、上記のようにAl、Cu又はT
aなどの金属膜35をマスクに使うことでポリイミドフ
ィルム18と金属膜19との選択比が概略50〜100
程度得られる。従って、約30μmのポリイミドフィル
ム18のエッチングには1μm以下の金属膜19のマス
クでも十分に可能である。
【0015】上記の金属膜19のマスクパターン21の
形成後、ヘッドチップ5、つまり図12(c) に示したシ
リコンウェハ2を、ヘリコン波エッチング装置に入れ
て、図13(b) に示すように、ドライエッチングによる
ノズル4の孔空けを行う。ヘリコン波エッチング装置に
よるドライエッチングのプロセスガスとしては酸素が用
いられる場合が多い。この処理用酸素O2 はヘリコン波
エッチング装置内で、図13(b) に示すように、酸素プ
ラズマ22となり、酸素イオン22−1、酸素ラジカル
原子22−2となって金属マスク面に吹き付けられ、パ
ターン21に従ってノズル4を穿設する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したよ
うに、ドライエッチング用のマスクとしては、選択比の
大きい金属マスクが用いられるが、この金属マスクに
は、エッチング対象物との密着性が強いこと、成膜
後にマイクロクラックが発生しないこと、エッチング
によって削られて発生する残渣が少ないこと、などが要
求される。
【0017】また、特にインクジェットプリンタヘッド
のオリフィス板の表面に被着する金属マスクの場合は、
更に耐薬品性に優れていることも要求される。ところ
が、従来のドライエッチング用の金属マスクとしては、
上述したようにAl、Cu、又はTa等が知られている
が、上記のからまでの4条件を満たすドライエッチ
ング用金属マスクは現在まで見出されていなかった。
【0018】即ち、Al膜は、両性元素であるため、酸
又はアルカリに曝されるとマスク膜が溶解する。特にイ
ンクジェットプリンタに使用されるインクにはPH9.
0以上のアルカリ性のものがあり、それがAl膜マスク
に付着するだけでAlマスクが溶解してしまう虞があ
る。またオリフィス板として最も一般的なポリイミドと
の密着性もあまり良くない。
【0019】また、Cu膜は、柔軟性があってスパッタ
率は高いが、ヘリコン波エッチングの場合、ラジカル原
子でポリイミド材を化学エッチングすると共にイオンで
ポリイミド材とマスクを物理的に叩いてエッチングする
ので、スパッタ率の高いCu膜マスクが削られ易く、こ
の削れがエッチング部分に再付着して残渣となり、しば
しばノズルのエッチング不良を引き起こす。
【0020】また、Ta膜はマイクロクラックが発生し
易いことが経験上判明している。このように、従来のマ
スク用金属膜は、それぞれ特有の欠点を有していた。図
14は、Ta等の金属膜19の表面に発生するマイクロ
クラックの例を示す図である。同図には金属膜19の右
下に99μmの縮尺を示している。この金属膜19のマ
スクで形成されるノズルそのものが、径20〜30μm
φ、並設ピッチ40μm程度の微細なものであるから、
同図に示すように、マスクの金属膜19の表面にマイク
ロクラック22が発生すると、ノズルから吐出されるイ
ンク滴の量、形状、飛翔方向等に悪影響を及ぼして印字
ヘッドで印字形成される画像の品質を低下させるという
問題が生じる。
【0021】本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、
ドライエッチングに最適な金属マスクとこの金属マスク
を用いた高性能のインクジェットプリンタヘッド及びそ
の製造方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】先ず、請求項1記載の発
明のインクジェットプリンタヘッドは、所定の間隔で並
設されインクを吐出させる為の圧カエネルギーを発生さ
せる複数のエネルギー発生素子からなるエネルギー発生
素子列と、上記エネルギー発生素子に対応して設けら
れ、上記エネルギー発生素子が発生させた圧力によりイ
ンクを所定方向に吐出させる複数の吐出ノズルと、を有
するインクジェットプリンタヘッドであって、上記吐出
ノズルのインク吐出口が形成されているオリフィス板の
表面に、上記吐出ノズルをエッチング形成した際のマス
ク手段としてのTiからなる金属マスク層が形成されて
いる。
【0023】上記オリフィス板は、例えば請求項2記載
のように、ポリイミドからなることが好ましい。また、
上記金属マスク層は、例えば請求項3記載のように、比
抵抗が3〜4mΩcmであることが好ましく、また、例
えば請求項4記載のように、非六法細密充填構造である
ことが好ましい。更に、上記金属マスク層は、例えば請
求項5記載のように、光反射試験において非多重反射性
を有することが好ましい。
【0024】次に、請求項6記載の発明のドライエッチ
ング用金属マスクは、Tiからなり、抵抗率が3mΩc
m以上で、実質的に光学的非多重反射性を備えるように
構成される。そのドライエッチングは、例えば請求項7
記載のように、ヘリコン波ドライエッチングであると良
い結果が得られる。
【0025】また、請求項8記載の発明のインクジェッ
トプリンタヘッドの製造方法は、インクに圧力を作用さ
せ、吐出ノズルから記録媒体に向けてインクを吐出させ
て記録を行うインクジェットプリンタの製造方法であっ
て、上記吐出ノズルの吐出口が形成されるべきオリフィ
ス板の表面にTi膜を4.0±1.2Paの圧力下で7
0±25Wの電力によりスパッタリング形成し、該Ti
膜を上記吐出ノズルをエッチング形成する際のマスクパ
ターンに形成し、該マスクパターンに従って上記吐出ノ
ズルをドライエッチングにより形成する。
【0026】上記ドライエッチングは、例えば請求項9
記載のように、へリコン波ドライエッチングである。ま
た、上記オリフィス板は、例えば請求項10記載のよう
に、ポリイミドからなる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら説明する。図1(a),(b),(c) は、一実施
の形態におけるインクジェットプリンタヘッドの製造方
法を工程順に示す図であり、それぞれ一連の工程におい
てヘッドチップの基板上に形成されていく状態の概略の
平面図と断面図を模式的に示している。尚、これらの図
には、説明の便宜上、いずれもフルカラー用のインクジ
ェットプリンタヘッドの1個の印字ヘッド(モノクロ用
インクジェットヘッドの構成と同じ)のみを示している
が、実際には後述するように、このような印字ヘッドが
複数個(通常は4個)連なった形状のものが、1個のヘ
ッドチップに形成される。また、同図(c) には36個の
吐出ノズルを示しているが、実際には、設計上の方針に
よって異なるが64個、128個、256個等、多数の
吐出ノズルが形成されるものである。
【0028】図2(a),(b),(c) は、上段に図1(a),(b),
(c) の平面図をそれぞれ一部を拡大して詳細に示してお
り、この図2(a),(b),(c) の中段には上段のB−B′断
面矢視図(同図(a) 参照)を示し、下段には上段のC−
C′断面矢視図(同図(a) 参照)示している。また、同
図(a),(b),(c) の中段に示す断面図は、それぞれ図1
(a),(b),(c) の下に示す断面図と同一のものである。
尚、図2(a),(b),(c) には、図示する上での便宜上、6
4個、128個又は256個のインク吐出ノズルを、5
個のインク吐出ノズルで代表させて示している。
【0029】最初に、基本的な製造方法について説明す
る。先ず、工程1として、直径が101.6mm以上の
シリコン基板にLSI形成処理により駆動回路とその端
子を形成すると共に、厚さ1〜2μmの酸化膜(Si O
2 )を形成し、次に、工程2として、薄膜形成技術を用
いて、タンタル(Ta)−シリコン(Si)−酸素
(O)からなる発熱抵抗体層と、Ti−W等の密着層を
介在させてAuなどによる電極膜を順次積層形成する。
そして、電極膜と発熱抵抗体層をフォトリソグラフィー
技術によって夫々パターニングし、ストライプ状の発熱
抵抗体層上の発熱部とする領域の両側に配線電極を形成
する。この工程で発熱部の位置が決められる。
【0030】図1(a) 及び図2(a) は、上記の工程1及
び工程2が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、ヘッドチップ25の一方の側端部近傍に駆動回路2
6が形成され、その上に形成された酸化膜からなる絶縁
層の上に、発熱抵抗体27が形成されている。発熱抵抗
体27の一方の端部に共通電極28が接続され、他方の
端部と駆動回路26との間に個別配線電極29が接続さ
れている。
【0031】上記の発熱抵抗体27、共通電極28、及
び個別配線電極29は1組となって条形状にパターン化
されて、各条が発熱素子を形成し、所定の間隔で平行に
並設されている。また、共通電極28には共通電極給電
端子31が上端部に形成されており(図1(a) 参照)、
これに並んで駆動回路端子32が形成されている(図1
(a) 参照)。
【0032】続いて、工程3として、個々の発熱抵抗体
27に対応するインク加圧室及びこれらのインク加圧室
にインクを供給するインク流路を形成すべく感光性ポリ
イミドなどの有機材料からなる隔壁部材をコーティング
により高さ20μm程度に形成し、これをフォトリソグ
ラフィー技術によりパターン化した後に、300℃〜4
00℃の熱を30分〜60分加えるキュア(乾燥硬化、
焼成)を行い、高さ10μm程度の上記感光性ポリイミ
ドによる隔壁をヘッドチップ上に形成・固着させる。更
に、工程4として、ウェットエッチングまたはサンドブ
ラスト法などにより上記ヘッドチップの面に細長く延在
するインク供給溝を形成し、更にこのインク供給溝に連
通しチップ下面に開口するインク給送孔を形成する。
【0033】図1(b) 及び図2(b) は、上述の工程3及
び工程4が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、インク供給溝33及びインク給送孔34が形成さ
れ、インク供給溝33の左側に位置する共通電極28部
分と、右方の個別配線電極29が配設されている部分、
及び各発熱抵抗体27と発熱抵抗体27の間に、隔壁3
5(シール隔壁35−1、35−2、区画隔壁35−
3)が形成されている。上記の隔壁35は、個別配線電
極29上のシール隔壁35−2を櫛の胴とすれば、各発
熱抵抗体27と発熱抵抗体27との間に伸び出す区画隔
壁35−3は櫛の歯に相当する形状をなしている。これ
により、この櫛の歯状の区画隔壁35−3を仕切り壁と
して、その歯と歯の間の付け根部分に発熱抵抗体27が
位置する微細な区画部が、発熱抵抗体27の数だけ形成
される。
【0034】この後、工程5として、ポリイミドからな
る厚さ10〜30μmのフィルムのオリフィス板を、そ
の両面又は片面に接着剤としての熱可塑性ポリイミドを
極薄に例えば厚さ2〜5μmにコーテングした状態のも
のを、上記積層構造の最上層つまり隔壁の上に載置し、
真空中で200〜250℃で加熱しながら、9.8×1
-4Paの数倍の圧力で加圧し、これを数10分続け
て、そのオリフィス板を固着させる。
【0035】続いて、工程6として、スパッタ装置で上
記のオリフィス板の上にTiの厚さ0.5〜1μm程度
の金属膜を蒸着する。更に、工程7として、オリフィス
板表面の上記Ti膜をパターン化して、ポリイミドを選
択的にエッチングするマスクを形成し、続いて、工程8
として、オリフィス板をヘリコン波によるドライエッチ
ングにより上記の金属膜マスクに従って20μmφ〜4
0μmφの孔空けをして多数の吐出ノズルを一括形成す
る。
【0036】図1(c) 及び図2(c) は、上述した工程5
〜工程8が終了した直後の状態を示している。すなわ
ち、オリフィス板36が共通給電端子31及び駆動回路
端子32の部分を除く全領域を覆っており、シール隔壁
35−2及び区画隔壁35−3によって形成されている
区画部も上を覆われて隔壁35の厚さ10μmに対応す
る高さの微細なインク加圧室37を形成して、その開口
をインク供給溝33方向に向けている。そして、これら
インク加圧室37の開口とインク供給溝33とを連通さ
せる高さ10μmのインク流路38が形成されている。
【0037】そして、オリフィス板36には、インク加
圧室37の発熱抵抗体27に対向する部分に吐出ノズル
39がドライエッチングによって形成されている。これ
により、64個、128個又は256個の吐出ノズル3
9を1列に備えた多数のモノカラーインクジェットヘッ
ド40がシリコンウェハ上に完成する。
【0038】このようにオリフィス板36を張り付け
て、その後で、下地のパターンつまり発熱抵抗体27の
位置に合わせて吐出ノズル39を加工することは、予め
吐出ノズル39を加工したオリフィス板36を張り合わ
せるよりも、遥かに生産性の高い実用性のある方法であ
る。尚、ドライエッチングにより吐出ノズル39を孔空
け加工する際の金属膜マスクについては後述する。
【0039】ここまでが、シリコンウェハの状態で処理
される。そして、最後に、工程7として、ダイシングソ
ーなどを用いてシリコンウェハをスクライブラインに沿
ってカッテングして、ヘッドチップ単位毎に個別に分割
し、実装基板にダイスボンデングし端子接続して実用単
位のモノカラーインクジェットヘッドが完成する。
【0040】上記のように1列の吐出ノズル39を備え
たモノカラーインクジェットヘッド40はモノクロ用イ
ンクジェットヘッドの構成であるが、通常フルカラー印
字においては、減法混色の三原色であるイエロー
(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色に、文字
や画像の黒部分に専用されるブラック(Bk)を加えて
合計4色のインクを必要とする。したがって最低でも4
列のノズル列が必要である。そして上述した製造方法に
よればモノカラーインクジェットヘッド40をモノリシ
ックに4列構成とすることは可能であり、各モノカラー
インクジェットヘッド40のノズル列の位置関係も今日
の半導体の製造技術により正確に配置することが可能で
ある。
【0041】図3(a) は、上述の図1及び図2に示した
ヘッドチップ25、駆動回路26、発熱抵抗体27、共
通電極28、個別配線電極29、共通電極給電端子3
1、駆動回路端子32、インク供給溝33、インク供給
孔34、隔壁35、オリフィス板36、インク加圧室3
7、インク流路38、吐出ノズル39の各部を1組とし
てなるヘッド素子つまりモノカラーインクジェットヘッ
ド40をやや大きく区画したヘッドチップ41上に4列
並べてフルカラーインクジェットヘッド42を構成し、
これにより1個のヘッドチップ41上に積層されたオリ
フィス板36に4列のノズル列43(43a、43b、
43c、43d)を形成した状態を示す図である。
【0042】また、図3(b) は、同図(a) のモノカラー
インクジェットヘッド40が4列並んだ構成を分かり易
く示すため、図1(a) に示した工程1〜工程2まで終了
した状態のものを示している。
【0043】この図3(a),(b) に示すように、フルカラ
ーインクジェットヘッド42は、4個のモノカラーイン
クジェットヘッド40(40a、40b、40c、40
d)が並んで配置され、例えばインク供給溝33aから
イエローインクがモノカラーインクジェットヘッド40
aの個々のインク加圧室37に供給され、ノズル列43
aから吐出される。また、インク供給溝33bからマゼ
ンタインクがモノカラーインクジェットヘッド40bの
個々のインク加圧室37に供給され、ノズル列43bか
ら吐出される。また、インク供給溝33cからシアンイ
ンクがモノカラーインクジェットヘッド40cの個々の
インク加圧室37に供給され、ノズル列43cから吐出
される。そして、インク供給溝33dからはブラックイ
ンクがモノカラーインクジェットヘッド40dの個々の
ノズル列43dに供給され、ノズル列43dから吐出さ
れる。
【0044】ところで、本発明においては上述した基本
的な製造方法における工程6において、オリフィス板3
6に吐出ノズル39を穿設するに際し、これに先立って
Tiの金属膜からなるマスクパターンをオリフィス板3
6の表面に形成している。
【0045】このTiの金属膜そのものが従来使用され
ていなかったものであるが、本実施の形態においては、
単にTi金属膜というだけでなく、Tiに各種見られる
性質の中の特殊な性質を帯びたものだけを選択してマス
クに使用し、これによって、従来の金属膜マスクに発生
した各種の不具合を解消している。以下これについて説
明する。
【0046】図4(a) 〜(e) は、金属膜とオリフィス板
(ポリイミドフィルム)との密着度を調べた試験の方法
を示す図である。同図(a) に示すオリフィス板36は、
図1〜図3に示したオリフィス板36であり、但し図4
(a) 〜(e) には、図1〜図3では図示を省略したが、オ
リフィス板36を、ポリイミドフィルム45とその両面
の熱可塑性ポリイミドの接着剤46とに構成を分けて示
している。このオリフィス板36を、図4(a) に示すよ
うに、シリコンウェハ50の上に張り付ける。このシリ
コンウェハ50は、図3(a) に示したヘッドチップ41
が多数形成される直径101.6mm以上のシリコンウ
ェハと同一のものを使用する。
【0047】次に、同図(b) に示すように、オリフィス
板36の上に試料の金属膜48を、膜厚7000Åにス
パッタ成膜する。続いて、同図(c) に示すように切り込
み49によって、同図(d) に示すように30mm平方の
範囲51内に2mm平方の大きさの切片52を碁盤目状
に形成する。
【0048】この碁盤目状の全面に、同図(e) に示すよ
うに適宜のセロハンテープ53を張り付けて、これを引
き剥がし、金属膜の残膜率{(全面積−剥離面積)/全
面積}を測定した。この試験を行うに当っては、「JI
Sハンドブック、K6766、金属表面のポリエチレン
皮膜試験方法、4.2.2、はく離試験」を参考とし
た。
【0049】図5(a) は、上記金属膜の残膜率試験の結
果を示す図表である。同図(a) に示すように、3種類の
金属Al、Ta、Tiについて行った残膜率試験におけ
る残膜率は、Alは84.4%、Taは100%、Ti
は100%であった。すなわち、ポリイミドフィルム4
5(実際には表面の熱可塑ポリイミドの接着剤46)と
の接着性では、TaとTiが良好であることが判明す
る。
【0050】次に、アルゴンとクリプトンの2種類のス
パッタガスの400eVイオンによるスパッタ率(ター
ゲットへの入射イオン数に対しターゲットから弾き出さ
れた原子数の比)を、4種類の金属Al、Cu、Ta、
Tiについて調べてみると、図5(b) に示すように、A
lは0.85及び0.75であってスパッタ率が比較的
高く、Cuは1.7及び1.95であってスパッタ率が
最も高く、Taは0.5及び0.75でスパッタ率がス
パッタガスによって変動する割合が大きい。そして、T
iは0.4及び0.35であってスパッタ率が最も低く
且つスパッタガスによってもスパッタ率は安定している
ことが判明する。
【0051】一般に金属成膜のスパッタ率が低いことは
ドライエッチングで削れにくいことを示すものであり、
この点からTiが極めて良好な金属膜マスクの素材とな
ることが判明する。
【0052】更に、マイクロクラックの発生要因を調べ
ることにした。マイクロクラックは図14に示したよう
に、金属膜の表面において一定の方向に微細な亀裂が発
生するものであり、エッチングの際の高熱とエッチング
終了後の冷却による金属膜の横軸方向と縦軸方向の体積
の変化に係わるものと思われる。体積の変化は熱膨張係
数とヤング率に関係する。ここでも4種類の金属Al、
Cu、Ta及びTiについて熱膨張係数とヤング率を調
べることにする。
【0053】図5(c) は、4種類の金属Al、Cu、T
a及びTiの熱膨張係数とヤング率を示す図表である。
同図(c) に示すように、これらの金属の熱膨張係数とヤ
ング率は、それぞれ、Alは23.9と0.757、C
uは16.2と1.36、Taは6.6と1.81、そ
して、Tiは8.4と1.14である。
【0054】このデータで判明するように、Taは他の
金属膜と比べて熱膨張係数が小さく且つヤング率が大き
い。Taをポリイミドのオリフィス板上に成膜すると図
14に示すようなマイクロクラックが容易に発生する
が、これはTaの熱膨張係数が小さく且つヤング率が大
きいためであることが容易に推定される。これに対して
Tiは熱膨張係数が2番目に小さく且つヤング率も2番
目に小さい。もし、熱膨張係数が最も小さく且つヤング
率が最も小さいものがあれば最適な素材ということがで
きるが目下のところそのようなものは見当たず一長一短
がある。つまり、上記4種類の金属の中では、Tiがマ
イクロクラックを発生させない性質(以下、抗マイクロ
クラック性という)が一番高いことが判明する。
【0055】このように残膜率、スパッタ率、体積変化
のいずれの面から見ても、Ti膜が他の金属膜よりもマ
スクパターンを形成するための金属膜として優れている
ことが判明する。この結果に基づいて、更に成膜時の条
件を種々変えて形成したTi膜について、その特性を調
査した。以下、これについて説明する。
【0056】図6(a) は、成膜時の条件を種々変えて形
成したTi膜の特性を示す図表である。同図(b) 〜(d)
は、その特性の一つであるテンションについて説明する
図である。同図(a) の図表は、左欄から右方へ、成膜条
件として成膜時圧力とその電力を示し、続いて試料番
号、それらの測定された特性として抵抗率、テンション
及び光学多重反射の有無を示している。
【0057】同図(a) に示すように、成膜時圧力と電力
による成膜条件を変えただけで、Ti膜の特性が大きく
変わることが判明する。上記の試料番号Ti11〜Ti
14の試料は、SiO2 /Si基板上に成膜したもので
あり、試料番号TiAとTiBの試料は、ポリイミドの
オリフィス板に形成したものである。参考までに最下欄
にTaの成膜試料も示している。
【0058】同図(a) に示すテンション(計測単位:μ
m)は、同図(b) に示す金属膜成膜前の基板54のそり
量をT1とし、同図(c) 又は同図(d) に示す金属膜55
を成膜後の基板54のそり量をT2として、式「T2−
T1」から算出されたものであり、同図(c) の場合はテ
ンションの値はプラスになり、これは金属膜55が引っ
張り応力を持つことを示している。また、同図(d) の場
合はテンションの値はマイナスであり、これは金属膜5
5が圧縮応力を持つことを示している。
【0059】同図(a) でテンションの値がプラスのもの
は試料番号Ti11、Ti13、Ti14及びTiAの
試料であり、テンションの値がマイナスのものは試料番
号Ti12及びTiBの試料である。これらの試料番号
のものを、ポリイミド材のオリフィス板に成膜した場
合、テンションの値がプラスで且つその値が大きくなる
ほど、マイククロラックの発生率が高くなる傾向がある
ことが実験により判明した。一方、テンションの値がマ
イナスのものはマイククロラックが発生していない。
【0060】上記のテンションの値がプラスの試料番号
Ti11、Ti13、Ti14及びTiAの試料の内、
抵抗率が小さい、すなわち金属的であると思われるもの
は試料番号Ti11、Ti14及びTiAの試料であ
る。これらと異なり試料番号Ti13の試料はテンショ
ンの値がプラスであって抵抗率が全体の中で一番大き
い、つまり極めて非金属的である。したがって、抵抗率
による金属性・非金属性だけからではテンションの良否
すなわち抗マイククロラック性は判断できないことが分
かる。
【0061】図7は、Ti膜の4種類の試料、試料番号
Ti11、Ti12、Ti3及びTi4について光学多
重反射の有無を調べた特性図である。光学多重反射が有
るものは、エネルギーeVが0.0〜1.5までの範囲
で、波状のパターンを示す。従って、図7の特性図は、
試料番号Ti11、Ti12の試料については光学多重
反射無し、試料番号Ti13の試料は光学多重反射が明
瞭であり、試料番号Ti14の試料では光学多重反射が
やや見られるという観測結果を示している。
【0062】また、図7には示していないが試料番号T
iA及びTiBの試料についても光学多重反射について
調べてみると、試料番号TiA及びTiBの試料共に光
学多重反射無しであった。上記の多重反射は表面に酸化
膜を形成し易いという特質を示すものであり、従って、
多重反射を示さないものは表面酸化膜を形成し難いとい
う特質を備えていることになる。表面酸化物を形成し難
い特質を有するものは、マイクロクラックを発生させ難
いということが分かっている。
【0063】試料番号Ti12及びTiBの試料は、テ
ンションがマイナス、抵抗率大(非金属的)及び光学多
重反射無しである。これらの測定データから、試料番号
Ti12及びTiBの試料は、ポリイミドのオリフィス
板との接着性が良く、不純物がやや含まれるものの、表
面酸化物を形成し難くマイクロクラックを発生させ難
い、ということができる。すなわち、吐出ノズルを形成
する際のマスク材料として優れていることが推定され
る。この試料番号Ti12及びTiBの試料の特性を他
と比較して更に調べるために、上記の各試料に対してX
線回折の測定を行った。
【0064】図8(a) は、典型的な金属TiのX線回折
の測定結果を示す図である。同図(a) の特性図では、指
数はTiのJCPDSカードから決定した。このX線回
折のパターンは、ブロードな3つのピークを示してお
り、金属の典型的な六方細密充填的構造を備えているこ
とを示している。また、同図(b) は、試料番号Ti11
とTi14の試料のX線回折のパターンを示しており、
同図(a) と同様にブロードな3つのピークを示し、これ
も金属の典型的な六方細密充填的構造を示している。こ
れらの試料番号Ti11とTi14の試料は、図6(a)
に示したように、他の試料に比べて抵抗率も小さい。つ
まり、いずれの面から見ても金属的である。
【0065】図9(a) は、試料番号Ti11〜Ti14
の試料の内、抵抗率が3.7mΩ・cm以上つまり非金
属的な特性を示す試料のX線回折のパターンを示す図で
ある。これらの試料番号Ti12及びTi13の試料
は、ブロードなピークの数が2つとなっていて少なく、
金属の典型的な六方細密充填的構造とは異なる。また、
双方ともパターンはほぼ同一である。ただし、図6(a)
に示したようにテンションは大きく異なる。
【0066】図9(b) は、試料番号TiA及びTiBの
試料のX線回折のパターンを示す図である。試料番号T
iAの試料は典型的な金属の六方細密充填的構造を持っ
ている。これに対し他方の試料番号TiBの試料は、吐
出ノズルの形成後にX線回折の測定を行っており、その
ために、他の試料と比べて膜厚と面積が小さく、したが
って、X線回折の強度は弱くなってはいるが、金属的で
ない試料番号Ti12又はTi13の試料と同一のパタ
ーンを示している。
【0067】ここで、上記のX線回折の測定と前述の光
学多重反射の結果から判明したことをまとめると、Ti
膜は次のように分類される。すなわち、X線回折の結果
からは、A.典型的な六方細密充填的構造を示すもの、
B.具体的な結晶構造は不明であるが上記以外の構造を
示すものに分類出来、また、光学多重反射の結果から
は、C.多重反射を示すもの(つまりTiの酸化膜を形
成し易いもの)、D.多重反射を示さないもの(つまり
Tiの酸化膜を形成し難いもの)に分類できる。マスク
用のTi膜として理想的なものは、上記のB及びDを同
時に満足する試料である。すなわち、試料番号Ti12
及びTiBの試料である。
【0068】これらの試料番号Ti12及びTiBの試
料の成膜条件は、図6(a) に示したように、共に成膜時
圧力は3.99Paつまり約4.0Pa、電力は70W
である。そして、この後の実験において、成膜時圧を
4.0±1.2Paの許容差の範囲に設定し、且つ電力
を70W±25Wの許容差の範囲に設定してスTiをパ
ッタリングしたところ、上記の資料番号Ti12又はT
iBと同様の比抵抗が3〜4mΩcmで、非六法細密充
填構造を成し、光学的非多重反射性を示すという特性を
備えたTi金属マスクが形成されることを確認すること
ができた。
【0069】図10(a) 〜(f) は、本発明のマスク用T
i膜のスパッタリングとそのマスクパターンによるエッ
チングの進行状態を詳細に示す図であり、説明の便宜
上、上述した工程の状態図を一部再掲している。
【0070】図10(a) は工程4までを終了した状態を
示しており、同図(b) は工程5を終了した状態を示して
いる。尚、同図(b) 以下に示すオリフィス板36には、
図4(a) 〜(e) に示したポリイミドフィルム45とその
両面の熱可塑性ポリイミドの接着剤46から成る詳細な
構造のオリフィス板36を示している。
【0071】この工程5を終了した後、上述した基本的
な製造方法における説明では説明を省略したが、先ず、
図10(c) に示すように、スパッタ装置の成膜室のステ
ージ56に、上記オリフィス板36を積層済みのヘッド
チップ(工程的には図1及び図2に示したヘッドチップ
25、最終的には図3に示したヘッドチップ41、つま
りこのヘッドチップ41が多数形成されているシリコン
ウェハ50)をセットして、100℃〜150℃で30
分以上加熱するスパッタ成膜前処理を行う。
【0072】この目的は、オリフィス板35(つまりポ
リイミド45)の脱水である。尚、スパッタ装置の成膜
室のステージ56に加熱機能がない場合には、スパッタ
装置の成膜室にシリコンウェハ50をセットする前に、
ホットプレートやオーブンなどでシリコンウェハへの加
熱を行っても良い。この加熱後は、シリコンウェハ50
の温度が20〜30℃(室温)に戻るまで冷却を行う。
【0073】続いて、工程6において、上記のスパッタ
装置により、図10(d) に示すように、オリフィス板3
6の上にTi膜57を形成する。このスパッタ成膜の処
理条件は、以下の通りである。
【0074】 ターゲット:Ti(純度99.999%以上) ターゲットと基板間距離:45mm 到達真空度:9×133×10-6Pa以下 スパッタガス:Ar スパッタガス流量:15sccm プレスパッタ:150W プレスパッタ圧力:10×0.133Pa プレスパッタ時間:5分 本スパッタ:70W 本スパッタ圧力:30×0.133Pa 本スパッタ時間:50分 Tiスパッタレート:115Å/min 尚、このスパッタリングの処理では、上記の到達真空圧
が0Paに近ずくほど、形成されるTi膜に発生する応
力が限りなくゼロに近くなり、Ti膜マスクにマイクロ
クラックが発生し難くなることが判明した。
【0075】上記のスパッタリング処理に次いで、工程
7で、同図(e) に示すように、オリフィス板36の表面
に形成された上記のTi膜57をパターン化して、吐出
ノズル孔空け加工用のマスクパターン58を形成する。
【0076】そして、これに続いて、ヘリコン波ドライ
エッチング装置により、上記Ti膜57のマスクパター
ン58に従って、ヘリコン波ドライエッチング装置によ
り、吐出ノズルの孔空け加工を行う。このヘリコン波ド
ライエッチングでは、同図(f) に示すように、ヘリコン
波ドライエッチング装置のステージ56にシリコンウェ
ハ50を載置し、メカチャック又は静電チャック法にて
固定し、ステージ56を低温サーキュレータ等で−10
℃以下に冷却し、この冷却を有効にし且つエッチングに
よるシリコンウェハ50の温度上昇を抑制するために、
シリコンウェハ50とステージ56の隙間にHe等の冷
媒ガス59を送り込み、上方から酸素を導入して酸素プ
ラズマ61を生成してヘリコン波エッチングを行う。
【0077】このヘリコン波エッチングの処理条件は以
下の通りである。 オリフィス板の厚み;16μm 到達真空度:5.6×10-4Pa プロセスガス(酸素):50sccm プロセス圧:0.5Pa ソースパワー:1000W バイアスパワー:300W プロセス時間:13分 サーキュレータ設定温度:−30℃ 冷却用He流量:10sccm ポリイミドのエッチングレート:約1.6μm/分 上記の条件において、オリフィス板36のジャストエッ
チング時間(シリコンウェハ50の全吐出ノズル39が
オリフィス板36に貫通・形成された時点までの経過時
間)が10分、その後、吐出ノズル39内のエッチング
残渣を除去するためのオーバーエッチング時間は3分で
ある。
【0078】図11は、上記のようにして、吐出ノズル
39の形成が終了した後のオリフィス板36上のTi膜
57の表面を示す図である。図14と比較してみると明
らかなようにマイクロクラックは発生しておらず極めて
平滑な表面を成していることが観察できる。
【0079】なお、上記実施形態では、ドライエッチン
グ用の金属マスク層をTi単体で形成しているが、これ
に限らず、本発明のドライエッチング用金属マスクは、
抵抗率が3mΩ以上で実質的に光学的非多重反射能性を
備えるように、Tiに他の物質を混ぜて形成してもよ
い。
【0080】また、本発明のドライエッチング用金属マ
スクは、ヘリコン波ドライエッチングに限らず、ECR
等の他のドライエッチング方法にも適用可能である。
【0081】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、ドライエッチング用の金属マスクを、抵抗率が3
mΩcm以上で、実質的に光学多重反射能を備えていな
いTiで形成することにより、酸及びアルカリ耐性が高
く、成膜する基材つまりエッチング対象物の例えばポリ
イミドオリフィス板や接着剤との密着性が高く、ドライ
エッチングの際にエッチング対象物との選択比が高くて
エッチング残渣の発生が少なく、且つノズルのエッチン
グ後もマイクロクラックが殆ど発生しないドライエッチ
ング用金属マスクを提供することが可能となり、また、
上述のような好適な特性を備えた金属マスクを設けるこ
とにより高度な印字品質を安定して得ることのできるイ
ンクジェットプリンタヘッド及びその製造方法を提供す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b),(c) は一実施の形態におけるインクジ
ェットプリンタヘッドの製造方法を工程順に示す図であ
る。
【図2】(a),(b),(c) の上段は図1(a),(b),(c) の平面
図の一部拡大図、中段は上段のA−A′断面矢視図、下
段は上段のB−B′断面矢視図である。
【図3】(a) はモノカラーインクジェットヘッドを4列
並べてフルカラーインクジェットヘッドを構成した図、
(b) は4列構成を分かり易く示すため工程2まで終了し
た状態のものを示す図である。
【図4】(a) 〜(e) は金属膜とポリイミドのオリフィス
板との密着度を調べた試験の方法を示す図である。
【図5】(a) は金属膜の残膜率試験の結果を示す図表、
(b) は2種のスパッタガスと4種の金属膜とのスパッタ
率の関係を示す図表、(c) は4種の金属の熱膨張係数と
ヤング率を示す図表である。
【図6】(a) は成膜時の条件を種々変えて形成したTi
膜の特性を示す図表、(b) 〜(d) はその特性の一つであ
るテンションについて説明する図である。
【図7】Ti膜の4種類の試料について光学多重反射の
有無を示す特性図である。
【図8】(a) は典型的な金属TiのX線回折の測定結果
を示す図、(b) は試料番号Ti11とTi14のX線回
折の測定結果を示す図である。
【図9】(a) は抵抗率が3.7mΩ・cm以上の試料の
X線回折の測定結果を示す図、(b) は試料番号TiA及
びTiBの試料のX線回折の測定結果を示す図である。
【図10】(a) 〜(f) は本発明のマスク用Ti膜のスパ
ッタリングとそのマスクパターンによるエッチングの進
行状態を示す図である。
【図11】本発明のマスク用Ti膜のヘリコン波エッチ
ング後のマイクロクラックが発生していない平滑な面を
示す図である。
【図12】(a) は従来のインクジェットプリンタヘッド
のインク吐出面を模式的に示す平面図、(b) はそのA−
A′断面矢視図、(c) はこのインクジェットプリンタヘ
ッドが製造されるシリコンウェハを示す図である。
【図13】(a) は従来のドライエッチングのための前工
程を行った製造途上の印字ヘッド1を示す図、(b) はそ
の印字ヘッドに対しヘリコン波エッチング装置でドライ
エッチングを行っている状態を示す図である。
【図14】Ta膜等の金属マスクの表面に発生するマイ
クロクラックの例を示す図である。
【符号の説明】
1 印字ヘッド 2 シリコンウェハ 3 ノズル列 4 ノズル 5 ヘッドチップ 6 駆動回路 7 抵抗発熱部 8 個別配線電極 9 給電用端子 11 共通電極 12 隔壁 13 インク供給溝 14 インク供給孔 15 オリフィス板 16 インク通路 17a、17b 接着材 18 ポリイミドフィルム 19 金属膜 21 パターン 22 マイクロクラック 25 ヘッドチップ 26 駆動回路 27 発熱抵抗体 28 共通電極 29 個別配線電極 31 共通電極給電端子 32 駆動回路端子 33(33a、33b、33c、33d) インク供給
溝 34 インク給送孔 35 隔壁 35−1、35−2 シール隔壁 35−3 区画隔壁 36 オリフィス板 37 インク加圧室 38 インク流路 39 吐出ノズル 40(40a、40b、40c、40d) モノカラー
インクジェットヘッド 41 ヘッドチップ 42 フルカラーインクジェットヘッド 43(43a、43b、43c、43d) ノズル列 44 シリコン基板 45 ポリイミドフィルム 46 接着剤 48 金属膜 49 切り込み 50 シリコンウエハ 51 30mm平方範囲 52 2mm平方切片 53 セロハンテープ 54 基板 55 金属膜 56 ステージ 57 Ti膜 58 マスクパターン 59 冷媒ガス

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の間隔で並設されインクを吐出させ
    る為の圧力エネルギーを発生させる複数のエネルギー発
    生素子からなるエネルギー発生素子列と、前記エネルギ
    ー発生素子に対応して設けられ、前記エネルギー発生素
    子が発生させた圧力によりインクを所定方向に吐出させ
    る複数の吐出ノズルと、を有するインクジェットプリン
    タヘッドであって、 前記吐出ノズルのインク吐出口が形成されているオリフ
    ィス板の表面に、前記吐出ノズルをエッチング形成した
    際のマスク手段としてのTiからなる金属マスク層が形
    成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ
    ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記オリフィス板は、ポリイミドからな
    ることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリ
    ンタヘッド。
  3. 【請求項3】 前記金属マスク層は、比抵抗が3〜4m
    Ωcmであることを特徴とする請求項1記載のインクジ
    ェットプリンタヘッド。
  4. 【請求項4】 前記金属マスク層は、非六法細密充填構
    造であることを特徴とする請求項1又は3記載のインク
    ジェットプリンタヘッド。
  5. 【請求項5】 前記金属マスク層は、光反射試験におい
    て非多重反射性を有することを特徴とする請求項1、3
    又は4記載のインクジェットプリンタヘッド。
  6. 【請求項6】 Tiからなり、抵抗率が3mΩcm以上
    で、実質的に光学的非多重反射能性であることを特徴と
    するドライエッチング用金属マスク。
  7. 【請求項7】 前記ドライエッチングは、ヘリコン波ド
    ライエッチングであることを特徴とする請求項6記載の
    ドライエッチング用金属マスク。
  8. 【請求項8】 インクに圧力を作用させ、吐出ノズルか
    ら記録媒体に向けてインクを吐出させて記録を行うイン
    クジェットプリンタの製造方法であって、 前記吐出ノズルの吐出口が形成されるべきオリフィス板
    の表面にTi膜を4.0±1.2Paの圧力下で70±
    25Wの電力によりスパッタリング形成し、 該Ti膜を前記吐出ノズルをエッチング形成する際のマ
    スクパターンに形成し、 該マスクパターンに従って前記吐出ノズルをドライエッ
    チングにより形成することを特徴とするインクジェット
    プリンタヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記ドライエッチングはへリコン波ドラ
    イエッチングであることを特徴とする請求項8記載のイ
    ンクジェットプリンタヘッドの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記オリフィス板は、ポリイミドから
    なることを特徴とする請求項8記載のインクジェットプ
    リンタヘッドの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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